(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】藻類除去装置及び藻類処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20230101AFI20231201BHJP
E02B 15/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C02F1/40 B
E02B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020034505
(22)【出願日】2020-02-29
【審査請求日】2022-11-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)試験の実施による公開 試験日 令和1年7月1日から11月30日 試験場所 千波湖(茨城県水戸市千波町3080)
(73)【特許権者】
【識別番号】512078708
【氏名又は名称】有限会社アルファサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 吉男
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129589(JP,A)
【文献】特開2000-303438(JP,A)
【文献】特開2007-319002(JP,A)
【文献】特開2004-008948(JP,A)
【文献】特開2001-017994(JP,A)
【文献】特開2017-136567(JP,A)
【文献】特開2008-138441(JP,A)
【文献】特開2005-046672(JP,A)
【文献】特開2017-154098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-78
E02B15/00-10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沼や
池の閉鎖水域の表層水中に浮遊する藻類を収集する藻類収集手段を備えた藻類除去装置において、
前記藻類収集手段は、
前記閉鎖水域の表層水中に浮くことが可能な複数本の第1棒状部材を放射状に配置して、前記浮遊する藻類が流入する流入口が流出口よりも拡径された逆ハの字状の収集水路を放射状に複数形成した藻類収集部と、
前記閉鎖水域の表層水中に浮くことが可能な複数本の第2棒状部材を、前記複数の収集水路の前記流出口に連続して平行に配置して、前記複数の収集水路で収集された藻類を前記複数の収集水路のうちの1つの収集水路に誘導する複数の誘導水路を形成する藻類誘導部と、
前記複数本の第1棒状部材及び前記複数本の第2棒状部材を連結固定する連結固定部材と、を少なくとも備え
、
前記藻類収集手段は、
前記第1棒状部材に吊設され、前記第1棒状部材と略同等の幅を有するシート状部材と、
前記シート状部材を前記表層水中に垂下させる錘部材と、を更に有する藻類除去装置。
【請求項2】
前記1つの収集水路には、前記複数の収集水路で収集した藻類を回収する藻類回収手段が配置される請求項1に記載の藻類除去装置。
【請求項3】
前記複数の収集水路は4水路であって、4本の前記第1棒状部材が90°間隔で放射状に配置されている請求項1又は2に記載の藻類除去装置。
【請求項4】
前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材は両端が水密された塩ビパイプである請求項1から3の何れか1項に記載の藻類除去装置。
【請求項5】
前記収集水路の前記第1棒状部材は入れ子構造によって伸縮自在である請求項1から4の何れか1項に記載の藻類除去装置。
【請求項6】
前記藻類収集手段は、
前記複数の収集水路の逆ハの字角度の変動を防止する逆ハの字角度変動防止手段を更に有し、
前記逆ハの字角度変動防止手段は、
前記収集水路を形成する複数本の第1棒状部材の前記流入口の位置にそれぞれ立設されたピン部材と、
前記ピン部材の隣接するピン部材同士を緊張した状態で連結する紐状部材と、で構成されている請求項1から
5の何れか1項に記載の藻類除去装置。
【請求項7】
前記複数の誘導水路には、前記誘導水路の表層水に前記収集水路から前記藻類回収手段へ向いた水流を発生させる水流発生手段が設けられている請求項2に記載の藻類除去装置。
【請求項8】
前記藻類回収手段は、前記藻類収集手段で藻類と一緒に収集された前記閉鎖水域のゴミ類を分離して前記藻類を選択的に回収する機構を備えている請求項2に記載の藻類除去装置。
【請求項9】
前記藻類回収手段は、
前記収集した藻類を含む前記表層水が流通可能な門型の装置フレームと、
前記装置フレーム内に前記表層水の流通方向に直交して横向きに配置され、周面にゴミ分離用のフィルタが形成されるとともに側面に浮遊藻類を表層水と一緒に吸引して取り込む吸引配管の一方端部及び前記フィルタを洗う水を吐出する吐出配管の一方端部を内部に導く導入口が開口された円筒状のゴミ分離ドラムと、
前記装置フレームに回転自在に片持ち支持され、前記ゴミ分離ドラムの両端部周面をそれぞれ3点支持する合計6個の支持ローラと、
前記6個の支持ローラの少なくとも1つに回転動力を付与して前記ゴミ分離ドラムを回転する回転動力手段と、
前記装置フレームに固定され、前記ゴミ分離ドラムの下部が前記表層水中に浸漬するように前記装置フレームを浮かせる浮き部材と、
前記ゴミ分離ドラム内に設けられ、前記吸引配管に連通状態で支持されるとともに前記ゴミ分離ドラムの軸芯方向に長いスロット形状の吸引口が前記表層水中に位置するように形成された吸引ノズルと、
前記ゴミ分離ドラム内に設けられ、前記吐出配管に連通状態で支持されるとともに前記ゴミ分離ドラムの軸芯方向に長いスロット形状の吐出口が前記表層水の水面上に位置するように形成された吐出ノズルと、
前記ゴミ分離ドラムの外面に突起した状態で複数枚設けられ、前記ゴミ分離ドラムの軸芯方向に長い板状のスキーマと、を備えている請求項2に記載の藻類除去装置。
【請求項10】
請求項2に記載の藻類除去装置と、
前記藻類除去装置の前記藻類収集手段で収集されてから前記藻類回収手段で回収された藻類を破壊する多段渦巻ポンプ構造の藻類破壊手段と、を備えたことを特徴とする藻類処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類除去装置及び藻類処理システムに係り、特に湖沼や池等の閉鎖水域に発生した藻類を収集する藻類収集手段を備えた藻類除去装置及び藻類収集手段で収集した藻類を回収した後、最終的に処理するまでの藻類処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業の発展や人口の増加などにより、湖沼や池等の閉鎖水域において水中のリンや窒素の栄養分濃度が増加し、閉鎖水域が富栄養化状態になり易い。この結果、アオコや赤潮等と呼ばれる植物性プランクトンである藻類が大量発生し、水が緑色や赤色に濁ってしまう現象がしばしば見られる。
【0003】
富栄養化した水から速やかに栄養分を取り除くことができれば、水草や適度な植物性プランクトンで水を浄化することは可能である。しかし、水に溶けた栄養分を速やかに取り除くことは難しく、アオコや赤潮等の藻類が大量発生し易い。
【0004】
大量発生したアオコや赤潮等の藻類を放置すると、その水域の酸素濃度が低下して魚が死んだり、水辺やその水域の水を水源とする水道水に異臭がしたりする被害が発生する。この為、閉鎖性水域が富栄養化する原因を改善すると同時に、水中のこれらの藻類を排除する必要がある。
【0005】
例えば藻類の代表例であるアオコは、比較的に球状な藍藻類(数ミクロン程度のミクロシスチス:Microcystisが主な構成)であり、細胞内のガス胞によって水面から数cm程度下の表層水中に浮遊している。そして、アオコが大量発生すると、数十~数百μmスケールの立体構造を有するアオコの群体がマット状になって水面を覆う。アオコの群体は数百以上の細胞が一定の規則性を有して集合したものである。このような群体状のアオコの処理方法としては、例えば特許文献1や特許文献2がある。
【0006】
特許文献1では、取水ポンプで吸い込んだ群体状のアオコを含む水を、超音波照射器に通してアオコを破壊することによりアオコの比重を重くした後、遠心濃縮機及び遠心脱水機にかけて脱水して固形物化することで、閉鎖性水域からアオコを効率よく回収する方法が提案されている(超音波方式)。
【0007】
また、特許文献2では、取水ポンプで吸い込んだ群体状のアオコを含む水を、筒体の両端から対向噴射させて筒体内で水を衝突させることにより、群体状のアオコを細かく分断することが提案されている(対向噴射方式)。また、特許文献2には、アオコのガス胞を破壊して沈降し易くした後、元の閉鎖性水域に戻すことが提案されている。アオコの群体構造を細かく分断し、またガス胞を破壊して沈降し易くして閉鎖性水域に戻せば、閉鎖性水域に存在する動物プランクトンによる捕食が促進され、閉鎖性水域におけるアオコの増殖を抑制することができる。
【0008】
このように、閉鎖水域からアオコを採取した後のアオコ処理に関しては各種の提案がなされている。しかし、閉鎖水域に発生したアオコを如何に効率的に収集して回収するかに関する技術は十分とは言えない。
【0009】
例えば、特許文献3には、藻類を衝撃で破壊する衝撃殺藻装置を備えた水質保全装置が開示され、川の被保全水域に設置された事例が開示されている。この水質保全装置は、表層水中に含まれる藻類を水質保全装置の衝撃殺藻装置に導くための誘導手段を備えている。
【0010】
この誘導手段は、河川の上流側への表層水の流れを遮る上流側フェンスと、下流側への表層水の流れを遮る下流側フェンスと、上流側フェンスに逆ハの字状に向いており、上流側から下流側への風が吹いたときに表層水を水質保全装置の取水口に導く導流フェンスと、表層水を導流フェンスから衝撃殺藻装置に導く水路とで構成されている。
【0011】
これにより、河川の下流側から上流側に吹く風につられて表層水が流され、表層水中の藻類が上流側フェンス近傍に集められ、その後、上流側から下流側に吹く風につられて表層水が流され、上流側フェンス近傍に集められた藻類の大部分が導流フェンスを介して取水口に取り込まれるというものである。即ち、特許文献3の誘導手段は、上流側から下流側への一方向の風によって表層水が流されたときに藻類の収集効果が高まるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平8-33888号公報
【文献】特開2006-238703号公報
【文献】特開2002-079293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献3の藻類を収集するための誘導手段は、河川には効果的かもしれないが、湖沼や池等の閉鎖水域のように風の吹く向きによって表層水の流れる方向がその都度変化し、表層水中に浮いた藻類の流れもそれに応じて変化する場合には効果的と言えない。
【0014】
即ち、従来技術の水質保全装置の誘導手段は、1方向のみの表層水の流れ(上述の上流側から下流側への流れ)にしか対応できない。これにより、湖沼や池等の閉鎖水域のように風の吹く向きによって表層水の流れる方向がその都度変化し、表層水中に浮いた藻類の流れもそれに応じて変化する場合には、風の吹く向きに応じて誘導手段の向きをその都度変える必要がある。あるいは風の吹く向きに予め複数基の水質保全装置を配置しておく必要がある。したがって、閉鎖水域における藻類の収集及び回収効率が悪いと共に複数基配置する場合には装置コストが高くなる。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、湖沼や池等の閉鎖水域に発生した藻類を風の向きに関係なく効率的に収集することができる藻類収集手段を備えた藻類除去装置及び藻類収集手段で収集した藻類を回収して藻類を最終的に処理するまでの藻類処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の藻類除去装置は目的を達成するために、沼や池等の閉鎖水域の表層水中に浮遊する藻類を収集する藻類収集手段を備えた藻類除去装置において、藻類収集手段は、閉鎖水域の表層水中に浮くことが可能な複数本の第1棒状部材を放射状に配置して、浮遊する藻類が流入する流入口が流出口よりも拡径された逆ハの字状の収集水路を放射状に複数形成した藻類収集部と、閉鎖水域の表層水中に浮くことが可能な複数本の第2棒状部材を、複数の収集水路の流出口に連続して平行に配置して、複数の収集水路で収集された藻類を複数の収集水路のうちの1つの収集水路に誘導する複数の誘導水路を形成する藻類誘導部と、複数本の第1棒状部材及び複数本の第2棒状部材を連結固定する連結固定部材と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の藻類除去装置によれば、閉鎖水域の表層水中に浮くことが可能な複数本の第1棒状部材を放射状に配置することによって、浮遊する藻類が流入するための逆ハの字状の収集水路を東西南北の全方位に向けて複数形成するようにした。また、閉鎖水域の表層水中に浮くことが可能な複数本の第2棒状部材を、複数の収集水路の流出口に連続して平行に配置して、複数の収集水路で収集された藻類を複数の収集水路のうちの1つの収集水路に誘導する複数の誘導水路を形成するようにした。そして、連結固定部材によって、複数本の第1棒状部材及び複数本の第2棒状部材を連結固定することで藻類収集手段を一体的に構築した。
【0018】
これにより、湖沼や池等の閉鎖水域のように風の吹く向きによって表層水の流れる方向がその都度変化し、藻類の流れる方向もそれに応じて変化する場合であっても、藻類の大分部は何れかの収集水路(1つ又は複数)に流れ込むようにすることができる。
【0019】
本発明の藻類除去装置の態様としては、1つの収集水路には、複数の収集水路で収集した藻類を回収する藻類回収手段が配置されることが好ましい。これにより、藻類の収集と回収との両方を一度に行うことが可能な藻類除去装置を構築した。
【0020】
これにより、複数の収集水路の何れかに流れ込んだ藻類は誘導水路を通って藻類回収手段に導かれて藻類回収手段で回収される。
【0021】
したがって、湖沼や池等の閉鎖水域に発生した藻類を風の向きに関係なく効率的に収集して回収することができるだけでなく、複数の収集水路ごとに藻類回収手段を備える必要がないので、藻類除去装置のコストも低く抑えることができる。
【0022】
本発明の藻類除去装置の態様としては、複数の収集水路は4水路であって、4本の第1棒状部材が90°間隔で放射状に配置されていることが好ましい。3水路でも放射状の収集水路は可能であるが、3水路の場合には1つの収集水路の逆ハの字角度が120°になる。これにより、風の向きによっては、収集水路にせっかく流れ込んだ藻類が再び収集水路から流れ出てしまう危険がある。
【0023】
また、収集水路が5本以上になると、その分だけ誘導水路の水路数を多くする必要があり、1本あたりの誘導水路の水路幅が狭くなる。これにより、導入水路における表層水の流れが滞留し易くなるので、収集水路で収集した藻類を藻類回収手段で回収する回収効率が低下する危険がある。
【0024】
本発明の藻類除去装置の態様としては、第1棒状部材及び第2棒状部材は両端が水密された塩ビパイプであることが好ましい。塩ビパイプは、軽量性、耐衝撃性、耐食性、耐久性、加工性に優れ価格的にも安価であると共に、両端が水密されて内部に空気が溜まった塩ビパイプは表層水中に水路を形成できる程度に適度に浮くことができる。
【0025】
本発明の藻類除去装置の好ましい態様としては、収集水路の第1棒状部材は入れ子構造によって伸縮自在であることが好ましい。閉鎖水域の大きさや形状は画一的ではないので、第1棒状部材を入れ子構造にすることで、閉鎖水域の大きさに応じて収集水路の大きさを可変できるだけでなく、藻類除去装置を設置する閉鎖水域の形状に応じて複数本の第1棒状部材の長さをそれぞれ変えることで、複雑な形状の閉鎖水域にも対応できる。
【0026】
本発明の藻類除去装置の態様としては、藻類収集手段は、第1棒状部材に吊設され、第1棒状部材と略同等の幅を有するシート状部材と、シート状部材を表層水中に垂下させる錘部材と、を更に有することが好ましい。
【0027】
これにより、収集水路に流れ込んだ藻類が第1棒状部材を潜って再び閉鎖水域に戻ってしまうことを確実に防止できる。
【0028】
本発明の藻類除去装置の態様としては、藻類収集手段は、複数の収集水路の逆ハの字角度の変動を防止する逆ハの字角度変動防止手段を更に有し、逆ハの字角度変動防止手段は、収集水路を形成する複数本の第1棒状部材の流入口の位置にそれぞれ立設されたピン部材と、ピン部材の隣接するピン部材同士を緊張した状態で連結する紐状部材と、で構成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、収集水路の逆ハの字角度が設定よりも拡がってしまうのを防止できると共に、収集水路の破損を防止できる。即ち、収集水路を構成する第1棒状部材の長さが長い場合には、風の吹く向きに流れる表層水の流れで第1棒状部材が湾曲し、逆ハの字角度が設定よりも拡がってしまう場合が考えられる。逆ハの字角度が設定よりも拡がると、上述の3水路の場合でも説明したが、風の向きによっては、収集水路にせっかく流れ込んだ藻類が再び収集水路から流れ出てしまう危険がある。また、逆ハの字角度の拡がりが大きい場合には第1棒状部材が折れる等の破損につながる。
【0030】
本発明の藻類除去装置の態様としては、複数の誘導水路には、誘導水路の表層水に収集水路から藻類回収手段へ向いた水流を発生させる水流発生手段が設けられていることが好ましい。
【0031】
表層水の流れに同伴して収集水路に流れ込んだ藻類は誘導水路を通って藻類回収手段に回収される。この場合、表層水の流れは逆ハの字の収集水路から水路幅が狭い誘導水路に変わるので、誘導水路内に表層水の滞留が発生する懸念がある。誘導水路の水路幅を広くすれば解決できるが、藻類回収手段の藻類を表層水と一緒に吸引する吸引ノズルの幅との関係で水路幅が制限される。
【0032】
本発明における誘導水路には、誘導水路の表層水に収集水路から藻類回収手段へ向いた水流を発生させる水流発生手段を備えたので、誘導水路内に表層水の滞留が発生するのを防止できる。これにより、閉鎖水域の藻類を一層効率的に収集して回収することができる。
【0033】
本発明の藻類除去装置の態様としては、藻類回収手段は、藻類収集手段で藻類と一緒に収集された閉鎖水域のゴミ類を分離して藻類を選択的に回収する機構を備えていることが好ましい。
【0034】
本発明の藻類除去装置の態様としては、藻類回収手段は、収集した藻類を含む表層水が流通可能な門型の装置フレームと、装置フレーム内に前記表層水の流通方向に直交して横向きに配置され、周面にゴミ分離用のフィルタが形成されるとともに側面に浮遊藻類を表層水と一緒に吸引して取り込む吸引配管の一方端部及び前記フィルタを洗う水を吐出する吐出配管の一方端部を内部に導く導入口が開口された円筒状のゴミ分離ドラムと、装置フレームに回転自在に片持ち支持され、ゴミ分離ドラムの両端部周面をそれぞれ3点支持する合計6個の支持ローラと、6個の支持ローラの少なくとも1つに回転動力を付与してゴミ分離ドラムを回転する回転動力手段と、装置フレームに固定され、ゴミ分離ドラムの下部が表層水中に浸漬するように装置フレームを浮かせる浮き部材と、ゴミ分離ドラム内に設けられ、吸引配管に連通状態で支持されるとともにゴミ分離ドラムの軸芯方向に長いスロット形状の吸引口が表層水中に位置するように形成された吸引ノズルと、ゴミ分離ドラム内に設けられ、吐出配管に連通状態で支持されるとともにゴミ分離ドラムの軸芯方向に長いスロット形状の吐出口が表層水の水面上に位置するように形成された吐出ノズルと、ゴミ分離ドラムの外面に突起した状態で複数枚設けられ、ゴミ分離ドラムの軸芯方向に長い板状のスキーマと、を備えることが好ましい。
【0035】
ここで、「表層水が流通可能」とは、表層水が滞らないで流れることを意味する。
【0036】
本発明の藻類回収手段によれば、湖沼、池、河川、閉鎖性海域等のアオコ等の浮遊藻類が大量発生した閉鎖性水域に、ゴミ分離ドラムの下部が表層水中に浸漬するように浮遊藻類収集装置を浮かべる。これにより、ゴミ分離ドラム内に設けられた吸引ノズルの吸引口が表層水中に浸漬する。
【0037】
そして、ゴミ分離ドラムを回転させるとともに吸引配管に吸引力を付与する。ゴミ分離ドラムの回転によって、ゴミ分離ドラムの外面に突起された複数枚のスキーマは、浮遊藻類収集装置の周囲に浮遊する浮遊藻類を掻き集めるとともに、門型の装置フレームの前門側からゴミ分離ドラムの下部を通過して後門側に流通する表層水の流れを形成する。
【0038】
この表層水の流れにより、スキーマで掻き集められた浮遊藻類は表層水と一緒にゴミ分離ドラムのフィルタを通過して吸引口から吸引配管に取り込まれる。一方、スキーマで浮遊藻類と一緒に掻き集められたゴミ類はゴミ分離ドラムのフィルタで分別され、表層水の流れに乗って装置フレームの後面から閉鎖性水域に戻る。
【0039】
また、吐出ノズルからゴミ分離ドラムのフィルタ内面に水を吐出してフィルタを自動洗浄するので、フィルタが目詰まりしにくい。更には、装置フレームを門型形状とし、装置フレームに回転自在に片持ち支持される6個の支持ローラでゴミ分離ドラムの両端部周面を3点支持するようにした。したがって、門型の装置フレームの前門側からゴミ分離ドラムの下部を通過して後門側に流通する表層水の流れが、装置フレームや支持ローラによって邪魔されないので、浮遊藻類がゴミ分離ドラムの近辺で滞留することがない。
【0040】
これにより、アオコ等の浮遊藻類のみを選択的に収集することができ、メンテナンスもほとんど必要ない藻類回収手段を提供することができる。
【0041】
本発明の藻類処理システムは目的を達成するために、請求項2に記載の藻類除去装置と、藻類除去装置の前記藻類収集手段で収集されてから藻類回収手段で回収された藻類を破壊する多段渦巻ポンプ構造の藻類破壊手段と、を備えたことを特徴とする。
【0042】
本発明の藻類処理システムによれば、湖沼や池等の閉鎖水域に発生した藻類を藻類収集手段によって風の向きに関係なく効率的に収集し、藻類と一緒に収集されたゴミ類を藻類回収手段で分離して藻類のみを選択的に回収し、回収した藻類を藻類破壊手段で最終的に処理するまでの一連の藻類処理システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の藻類除去装置によれば、湖沼や池等の閉鎖水域に発生した藻類を藻類収集手段によって風の向きに関係なく効率的に収集することができる。更には、藻類除去装置において、1つの収集水路に、複数の収集水路で収集した藻類を回収する藻類回収手段を配置することにより、藻類の収集と回収との両方を一度に効率的に行うことが可能な藻類除去装置を構築することができる。
【0044】
また、本発明の藻類処理システムは、本発明の藻類除去装置を備えているので、収集及び回収した藻類を最終的に処理するまでの一連の藻類処理システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図3】藻類除去装置の主として藻類収集手段を説明する説明図
【
図4】藻類収集手段の収集水路が3水路の場合の説明図
【
図5】藻類収集手段の収集水路が7水路の場合の説明図
【
図6】収集水路の第1棒状部材を伸縮自在にした態様の説明図
【
図7】収集水路の第1棒状部材に表層水中に垂下するシート部材と逆ハの字角度変動防止手段を設けた態様の説明図
【
図8】藻類収集手段の導入水路に設けた水流発生手段の説明図
【
図11】藻類回収手段のパンチングメタル形式のゴミ分離ドラム周辺の斜視図
【
図12】藻類回収手段の金網形式のゴミ分離ドラム周辺の斜視図
【
図15】多段渦巻ポンプ構造の藻類破壊装置の説明図
【
図16】藻類処理システムの主として藻類収集手段の作用を説明する説明図
【
図18】浮遊藻類処理システムに脱気手段を設けた説明図
【
図19】本発明の藻類処理システムにおいて、藻類回収手段と藻類破壊装置とを一体化した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付図面にしたがって本発明の藻類除去装置及び藻類処理システムの好ましい実施の形態について説明する。
【0047】
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0048】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を" ~ "を用いて表す場合は、" ~ "で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0049】
[藻類処理システム]
図1は、本発明の藻類処理システム10の実施の形態の全体構成図であり、主として、藻類除去装置12と、藻類除去装置12によって収集及び回収した藻類を破壊する藻類破壊装置14とで構成される。また、閉鎖水域に浮遊する藻類の一例としてアオコの例で以下に説明する。
【0050】
藻類処理システム10の説明として、閉鎖水域15のアオコを収集した後、閉鎖水域15から回収し、最終的にアオコを破壊処理するまでのプロセスの流れに沿って装置を順番に説明する。
【0051】
(藻類除去装置)
藻類除去装置12は、主として、閉鎖水域15の表層水中に浮遊するアオコを収集する藻類収集手段12Aと、収集した藻類を閉鎖水域15から回収する藻類回収手段12Bとで構成される。なお、本実施の形態の藻類除去装置12は、藻類収集手段12Aと藻類回収手段12Bとの両方を備えた例で説明するが、藻類収集手段12Aのみの構成の場合も本発明の藻類除去装置12に含む。
【0052】
<藻類収集手段>
図2は、藻類収集手段12Aを閉鎖水域15に設置した俯瞰図であり、
図3は藻類収集手段12Aの上面図である。
【0053】
図2及び
図3に示すように、藻類収集手段12Aは、主として、藻類収集部13と、藻類誘導部17と、藻類収集部13及び藻類誘導部17を一体的に連結固定する連結固定部材19とで構成される。本実施の形態では、連結固定部材19として井桁構造のものを使用したが、これに限定されるものではない。
【0054】
藻類収集部13は、閉鎖水域15の表層水中に浮くことが可能な複数本の第1棒状部材13A、13A…を放射状に配置して、浮遊するアオコが流入する流入口13Bが流出口13Cよりも拡径された逆ハの字状の収集水路13D、13D…を放射状に複数形成することによって構成される。そして、複数の収集水路13Dのうちの一つに藻類回収手段12Bが浮遊した状態で配置される。
【0055】
なお、収集水路13Dを3水路以上形成することで、収集水路13Dを放射状に配置することができる。しかし、
図2及び
図3に示すように、4本の第1棒状部材13Aを90°間隔で放射状に配置して収集水路13Dを4水路とし、収集水路13Dの逆ハの字状角度θを90°にすることが一層好ましい。
【0056】
この理由は、
図4に示すように、3水路の場合には1つの収集水路13Dの逆ハの字状角度θが120°の鈍角になるので、収集水路13Dに流れ込んだアオコが再び収集水路13Dから流れ出てしまう危険がある。例えば、
図4の矢印P方向から風が吹いた場合、風に対して流入口13Bが向き最もアオコを収集し易い収集水路13D内には矢印Q方向の表層水の流れが生じるので、収集水路13Dに収集されたアオコが再び収集水路13Dから流れ出てしまう危険がある。
【0057】
一方、
図5に示すように、収集水路が5水路以上になると、その分だけ藻類誘導部17の誘導水路17Bの水路数を多くする必要があり、1本あたりの誘導水路17Bの水路幅Wが狭くなる。したがって、誘導水路17Bにおいて表層水の流れが滞留し易くなる。これにより、収集水路13Dで収集したアオコが藻類回収手段12Bに効率的に流れ難くなる危険がある。ちなみに、誘導水路17Bでの表層水の滞留を防止するには、1本あたりの誘導水路17Bの水路幅Wは100mm以上であることが好ましい。
【0058】
したがって、本発明の実施の形態では、収集水路13Dを4水路とし、4本の第1棒状部材13A同士が90°間隔で放射状に配置されている場合で以下に説明する。
【0059】
また、藻類誘導部17は、閉鎖水域15の表層水中に浮くことが可能な複数本の第2棒状部材17A、17A…を、複数の収集水路13Dの流出口13Cに連続して平行に配置して、複数の収集水路13Dで収集されたアオコを藻類回収手段12Bに向けて誘導する複数の誘導水路17B、17B…を形成することによって構成される。
【0060】
そして、連結固定部材19によって、収集水路13Dを形成する複数本の第1棒状部材13Aと、誘導水路17Bを形成する複数本の第2棒状部材17Aを連結固定して一体化する。これにより、藻類収集手段12Aが構築される。
【0061】
第1棒状部材13A及び第2棒状部材17Aは、水に浮くことができ、閉鎖水域15の表層水の流れをガイド可能な太さの棒状部材であれば特に限定されないが、両端が水密された塩ビパイプであることが好ましい。塩ビパイプは、軽量性、耐衝撃性、耐食性、耐久性、加工性に優れ価格的にも安価であると共に、両端が水密されて内部に空気が溜まった塩ビパイプは表層水の水路を形成できる程度に適度に浮くことができる。
【0062】
第1棒状部材13A及び第2棒状部材17Aの直径は、風の吹く向きに流れる表層水の流れをガイドでき、且つ表層水の流れに同伴して浮遊するアオコが乗り越えたり潜り込んだりして収集水路13Dや誘導水路17Bから流れ出てしまわない程度の太さがあればよい。また、第1棒状部材13A及び第2棒状部材17Aの直径が太すぎると、重くなり取扱いに不便であるだけでなく、誘導水路17Bの水路幅を狭める原因になる。具体的には、第1棒状部材13A及び第2棒状部材17Aの直径は、50~100mm程度であることが好ましい。
【0063】
また、第1棒状部材13Aと第2棒状部材17Aとは別個の棒状部材として予め形成し、後から継手部材(図示せず)で繋ぐこともできる。しかし、塩ビパイプは加工し易いので、本実施の形態のように、第1棒状部材13Aと第2棒状部材17Aを連続した1本の塩ビパイプで形成することができる。例えば、
図3に示すように、2本の塩ビパイプの一端部側をへの字状に折曲加工して第2棒状部材17Aの部分を形成し、更に2本の塩ビパイプの一端部側をフック状に折曲加工して第2棒状部材17Aの部分を形成する。そして、4本の塩ビパイプを
図3のように並べると共に4本の塩ビパイプを連結固定部材19で一体的に固定する。これにより、藻類収集手段12Aを形成することができる。
【0064】
また、
図6に示すように、収集水路13Dで使用する第1棒状部材13Aは入れ子構造によって伸縮自在であることが好ましい。閉鎖水域15の大きさや形状は画一的ではないので、第1棒状部材13Aを入れ子構造にすることで、閉鎖水域15の大きさに応じて収集水路13Dの大きさを可変できる。更には、第1棒状部材13Aを入れ子構造にすることによって、閉鎖水域15の形状に応じて複数本の第1棒状部材13Aの長さをそれぞれ変えることで、複雑な形状の閉鎖水域15にも対応した収集水路13Dを形成できる。
【0065】
この場合、入れ子構造にすることによって水密性が失われないように、水密手段を設けることが好ましい。水密手段としては、水密にできればどのようなものでもよいが、例えば
図6に示す構造とすることができる。
図6に示すように、太い第1棒状部材13A1と細い第1棒状部材13A2との伸縮ストローク部分Sを螺合構造21にすると共に、嵌合する境界位置にシール部材23(例えばOリング)を設ける。これにより、第1棒状部材13Aを入れ子構造にしても水密性を維持することができる。
【0066】
図7は、藻類収集手段12Aの好ましい態様で、
図7の(A)は収集水路13Dを形成する第1棒状部材13Aを側面から見た図であり、
図7の(B)は第1棒状部材13Aを一方端側から見た図である。
【0067】
図7に示すように、藻類収集手段12Aは、第1棒状部材13Aに吊設され、第1棒状部材13Aと略同等の幅を有するシート状部材25と、シート状部材25を表層水中に垂下させる錘部材27と、を更に有する。符号29は、シート状部材と錘部材とを結ぶ紐状部材である。これにより、収集水路13Dに流れ込んだアオコが第1棒状部材13Aの下を潜って再び閉鎖水域15に戻ってしまう危険を確実に回避することができる。
【0068】
また、
図2~
図5及び
図7に示すように、複数の収集水路13Dの逆ハの字角度θの変動を防止する逆ハの字角度変動防止手段31を更に有することが好ましい。逆ハの字角度変動防止手段31は、収集水路13Dを形成する複数本の第1棒状部材13Aの流入口13Bの位置にそれぞれ立設されたピン部材31Aと、ピン部材31Aの隣接するピン部材31A同士を緊張した状態で連結する紐状部材31Bと、で構成される。
【0069】
これにより、収集水路13Dの逆ハの字角度θが設定よりも拡がってしまうのを防止できると共に、収集水路13Dの破損を防止できる。即ち、収集水路13Dを構成する第1棒状部材13Aの長さが長い場合には、風の吹く向きに流れる表層水の流れで第1棒状部材13Aが湾曲し、逆ハの字角度θが設定よりも拡がってしまう場合が考えられる。逆ハの字角度θが設定よりも拡がると、上述の3水路の場合でも説明したが、風の向きによっては、収集水路13Dにせっかく流れ込んだアオコが再び収集水路13Dから流れ出てしまう危険がある。また、逆ハの字角度θの拡がりが大きい場合には第1棒状部材13Aが折れる等の破損につながる。
【0070】
上記説明では、藻類収集手段12Aを構成する収集水路13Dと誘導水路17Bとのうち、収集水路13Dについて主として説明した。しかし、収集水路13Dで収集したアオコを如何に効率的に藻類回収手段12Bまで誘導するかが重要になる。したがって、複数の誘導水路17Bには、誘導水路17Bの表層水に収集水路13Dから藻類回収手段12Bへ向いた水流を発生させる水流発生手段33を設けることが一層好ましい。
【0071】
図8は、誘導水路17Bに水流発生手段33を設けた上面図であり、
図9は
図8の水流発生手段33を主として説明する部分拡大斜視図である。
【0072】
図8及び
図9に示すように、水流発生手段33は、3本の誘導水路17Bにそれぞれ設けられた3基の水車33Aと、3基の水車33Aの中心を貫通支持する回転軸33Bと、誘導水路17Bを構成する4本の第2棒状部材17Aの上にそれぞれ設けられ、回転軸33Bを回転自在に支持する4基の軸受33Cと、回転軸33Bを矢印F方向に回転させる回転動力機構33Dとで構成される。
【0073】
回転動力機構33Dとしては、回転軸33Bの一端に第1プーリ33Eを設け、井桁構造の連結固定部材19の上に設けたモータ33Fの回転軸33Gに取り付けた第2プーリ33Hとにタイミングベルト33Jで掛け渡すことで構成されている。
【0074】
なお、モータ33F及び軸受33Cは防水性のものを使用することが良く、軸受33Cとしては樹脂軸受を使用することができる。また、本発明の実施の形態の藻類処理システム10では、システム全体をコントロールする制御部(図示せず)は、閉鎖水域の陸地に配置した藻類破壊装置14に設置されている。したがって、モータ33Fには、制御部からの無線指示によって制御するための無線付帯設備を設け、水流発生手段33のコントロール(例えばモータ33FのON-OFFや水車33Aの回転速度等)を行うことが好ましい。
【0075】
これにより、誘導水路17Bに藻類回収手段12Bに向いた表層水の水流が発生するので、収集水路13Dによって収集されたアオコは、誘導水路17Bを速やかに流れて藻類回収手段12Bに達する。したがって、アオコを藻類回収手段12Bで一層効率的に回収することができる。
【0076】
なお、
図9において、第2棒状部材17Aの先端部17A1(藻類回収手段12Bの側)の径を細くしている。これは、誘導水路17Bの先端部を拡径することで、水車33Aによる表層水の強制的な水流に対する誘導水路17Bの水流抵抗が生じにくくなるので、誘導水路の流れを一層スムーズに行うことができる。
【0077】
(藻類回収手段)
図2及び
図3に示すように、藻類回収手段12Bは、藻類収集手段12Aの放射状に形成されている複数の収集水路13Dの1つに浮いた状態で配置される。
【0078】
図10は、藻類回収手段12Bの斜視図である。
図10に示すように、藻類回収手段12Bは、主として、装置フレーム26と、ゴミ分離ドラム28と、ゴミ分離ドラム28を装置フレーム26に回転自在に支持する複数の支持ローラ30、30…と、ゴミ分離ドラム28を回転させるモータ32(回転動力手段)と、装置フレーム26を浮かせる浮き部材34と、吸引ノズル36と、吐出ノズル38と、複数枚のスキーマ40、40…とで構成される。
【0079】
そして、藻類収集手段12Aの収集水路13Dで収集されて誘導水路17Bを通って藻類回収手段12Bに集められたアオコは藻類回収手段12Bの吸引ノズル36から表層水と一緒に吸引される。なお、以下の説明において、アオコを含む表層水を以下「アオコ含有水」と言うことにする。
【0080】
装置フレーム26は、アオコ含有水が流通可能な門型形状に形成される。即ち、左右に対向して立設された四角形な一対の脚フレーム26A、26Aの上端同士を四角形な上面フレーム26Bで連結した門型形状をしたフレーム構造を有する。この門型の装置フレーム26によって、アオコ含有水を停滞させることなく装置フレーム26の前門側A(
図10の表面側)から後門側B(
図10の裏面側)に流通可能な水路が形成される。
【0081】
装置フレーム26の材質としては、水に対して腐食しにくい材質であれば特に限定しないが、ステンレス又は硬質樹脂を好適に使用することができる。なお、装置フレーム26は、表層水を停滞させることなく流通可能なフレーム構造であれば、上記した門型形状に限定されない。
【0082】
ゴミ分離ドラム28は、円筒形状に形成され、装置フレーム26のフレーム構造内に表層水の流通方向に直交して横向きに配置される。ゴミ分離ドラム28の大きさは、例えば直径が300mm~500mm程度、長さが500mm~1500mm程度に形成される。ゴミ分離ドラム28の材質は、水に対して腐食しにくい材質であれば特に限定しないが、ステンレスを好適に使用することができる。
【0083】
また、
図11及び
図12に示すように、ゴミ分離ドラム28の周面にはフィルタ42が形成され、周面両端部に支持ローラ30が接するための平坦部44が形成される。更に、ゴミ分離ドラム28の側面には側板46が設けられ、側板46にはアオコを表層水と一緒に吸引して取り込む吸引配管20の一方端部及びフィルタ42を洗う水を吐出する吐出配管22の一方端部をゴミ分離ドラム28内に導くための導入口48が開口されている。
【0084】
図11のゴミ分離ドラム28は、フィルタ42をパンチングメタルで形成したものであり、
図12のゴミ分離ドラム28はフィルタ42を金網で形成したものである。パンチングメタル及び金網の目開き(孔径D)は、2mm~5mmの範囲が好ましい。
【0085】
従来技術で述べたように、アオコの群体は数十~数百μmのスケールであり、フィルタ42の目開きが2mm以上であればアオコ含有水中の群体状のアオコがフィルタ42を通過可能であり、5mm以下であれば、アオコ含有水中のゴミ類等がフィルタ42を通過しないようにできる。また、詳細は後記するが、フィルタ42の目開きが5mm以下であれば、藻類破壊装置14のインペラを目詰まりさせることもない。
【0086】
また、
図10に示すように、ゴミ分離ドラム28は、装置フレーム26の対向する一対の脚フレーム26A,26Aにそれぞれ3個ずつ回転自在に片持ち支持された合計6個の支持ローラ30によってゴミ分離ドラム28の両端部周面(平坦部44)がそれぞれ3点支持される。
【0087】
3点支持する3個の支持ローラ30のうち、2個の支持ローラ30はゴミ分離ドラム28の端部周面の下部位置を同一の水平レベルで支持し、残りの支持ローラ30はゴミ分離ドラム28の端部周面の上端位置を支持する。3個の支持ローラ30を結ぶ形状が正三角形になるようにすることが好ましい。
図10では、ゴミ分離ドラム28の端部周面の上端位置を支持する支持ローラ30は、装置フレーム26から下方に突起させたフランジ26Cに支持させている。
【0088】
また、支持ローラ30は、装置フレーム26側の円板状の大径部30Aと、大径部30Aに連続する円柱状の小径部30Bとで段差構造に形成され、ゴミ分離ドラム28の端部周面に小径部30Bが接するとともに端部側面に大径部30Aが接する。このように、支持ローラ30を段差構造にすることにより、ゴミ分離ドラム28の軸芯方向へのズレを防止している。
【0089】
なお、支持ローラ30は、装置フレーム26に片持ち支持された軸30Cに軸受(図示せず)を介してローラ部を設ける態様、又は装置フレーム26に固定した軸受に支持ローラ30の軸30Cを支持させる態様の何れでもよい。この場合、軸受は水中での回転に好適な樹脂軸受を使用することが好ましい。
【0090】
また、上面フレーム26Bから水平に突出したフランジ26Dにモータ32が設置され、モータ32の回転軸32Aにプーリ50が設けられる。モータ32は、藻類収集手段12Aで述べたと同様に防水性のモータを使用することが好ましいと共に、藻類破壊装置14の制御部からの無線指示によって制御するための無線付帯設備を設け、コントロール(例えばモータのON-OFFや水車の回転速度等)を行うことが好ましい。
【0091】
一方、ゴミ分離ドラム28の上端位置を支持する一対の支持ローラ30のうちの一方の回転駆動用の支持ローラ30にもプーリ52が設けられる。
図12では、プーリ52として支持ローラ30の大径部30Aを兼用する場合で図示したが、プーリ52を別途設けてもよい。
【0092】
そして、モータ32のプーリ50と支持ローラ30のプーリ52との間に無端状のタイミングベルト54が掛け渡される。これにより、モータ32を駆動するとタイミングベルト54を介して回転駆動用の支持ローラ30が回転し、更にゴミ分離ドラム28が回転する。この場合、回転駆動用の支持ローラ30の回転動力がゴミ分離ドラム28に伝達され易いように、回転駆動用の支持ローラ30の小径部30Bの周面とゴミ分離ドラム28の端部である平坦部44の周面をゴム性にして滑らないようにしたり、小径部30Bの周面と平坦部44の周面に軸芯方向に平行なストライプ溝を複数形成したりしてもよい。
【0093】
浮き部材34は、装置フレーム26の左右両側の脚フレーム26Aに固定され、ゴミ分離ドラム28の下部が表層水中に浸漬するように装置フレーム26を浮上させる。浮き部材34としては、特に限定されず、発泡スチロール、両端が閉塞された空洞な樹脂製の筒体(例えば塩ビパイプ)等を使用できる。
【0094】
図10及び
図13に示すように、吸引ノズル36は、ゴミ分離ドラム28内に設けられ、吸引配管20に連通状態で支持される。また、吸引ノズル36は、ゴミ分離ドラム28の軸芯方向に長いスロット形状の吸引口36Aが表層水中に浸漬するように形成される(
図1参照)。
【0095】
したがって、上記した浮き部材34は、吸引ノズル36の吸引口36Aが表層水中に浸漬するように、浮力を調整することができることが好ましい。浮き部材34の浮力を調整する方法としては、例えば両端が閉塞された空洞な樹脂製の筒体の内部に入れるウエイト調整部材の量を変える方法がある。
【0096】
また、吸引ノズル36は、装置フレーム26の前門側Aの方向を向いて斜め下向きに配置される(
図10参照)。更に、吸引ノズル36は、吸引配管20に連通される連通口(図示せず)よりも吸引口36Aが大きなラッパ管状に形成される(
図13参照)。吸引口36Aのスロット形状の開口面積はスキーマ40の矩形面積よりも大きいことが好ましい。これにより、装置フレーム26の前門側Aから後門側Bに流れるアオコ含有水が吸引ノズル36の吸引口36Aから取り込まれ易くなっている。
【0097】
図10及び
図14に示すように、吐出ノズル38は、ゴミ分離ドラム28内に設けられ、吐出配管22に連通状態で支持される。また、吐出ノズル38は、ゴミ分離ドラム28の軸芯方向に長いスロット形状の吐出口38Aが表層水の水面上に露出するように形成される(
図1参照)。また、吐出ノズル38は、吐出配管22に連通される連通口(図示せず)よりも吐出口38Aが小さな逆ラッパ管状に形成される(
図14参照)。これにより、吐出ノズル38の吐出口38Aから洗浄水を勢いよくゴミ分離ドラム28のフィルタ42内面に吹き付けることができ、フィルタ42の洗浄効果を高めることができる。
【0098】
なお、
図1に示すように、ゴミ分離ドラム28の外側に、フィルタ42の外面を洗浄する洗浄ノズル56を設ければ、フィルタ42の洗浄効果を更に高めることができる。この場合、洗浄ノズル56は分岐配管58を介して吐出配管22の途中に連通されるようにすることが好ましい。これにより、洗浄水のための配管を別途設ける必要がない。
【0099】
図10に示すように、スキーマ40は、ゴミ分離ドラム28の外面に突起した状態で複数枚設けられ、ゴミ分離ドラム28の軸芯方向に長い四角板状に形成される。したがって、スキーマ40はゴミ分離ドラム28の回転と一緒に回転し、藻類収集手段12Aの誘導水路17Bから流れてきたアオコを掻き集める。スキーマ40の数は特に限定しないが、ゴミ分離ドラム28の周方向に等間隔で4枚以上であることが好ましい。
【0100】
そして、藻類回収手段12Bの吸引ノズル36によって吸引されたアオコ含有水は、陸地に配置された藻類破壊装置14に送液される。
図1に示すように、藻類回収手段12Bは、吸引配管20と吐出配管22とにより藻類破壊装置14に連結される。また、吐出配管22に圧力調整手段16が設けられるとともに、圧力調整手段16と藻類破壊装置14との間に圧力計24が設けられる。
【0101】
次に、藻類処理システム10の藻類破壊装置14について説明する。
【0102】
(藻類破壊装置)
図15の(A)は多段渦巻ポンプ構造の浮遊藻類破壊装置14の全体構成図であり、(B)は多段渦巻ポンプ構造の内部の一部を拡大した断面図である。
【0103】
多段渦巻ポンプ構造の藻類破壊装置14は、ケーシング62内にインペラ64(羽根車)を備えたインペラ室66を複数段形成し、1段の場合より圧力が上がるように構成したものである。浮遊藻類破壊装置14は、陸地18に設置した架台68上に設置される。
【0104】
図15(A)に示すように、円筒形状のケーシング62の一方端側の側面中央部にポンプ入口70が開口され、他方端部に形成され内部に排出室が形成された排出部72の周面にポンプ出口74が開口される。そして、ポンプ入口70に吸引配管20の他方端が接続され、ポンプ出口74に吐出配管22の他方端が接続される。
【0105】
また、排出部72に隣接してインペラ64を回転するモータ76が配置される。モータ76の回転軸76Aはケーシング62を貫通して取り付けられ、ケーシング62と回転する回転軸76Aとの間隙から水が漏れないように軸シール(図示せず)が施される。なお、回転軸76Aを支持する軸受については図示を省略している。
【0106】
また、ケーシング62内は3枚の仕切壁78によって4つのインペラ室66に分割され、4段の多段渦巻ポンプ構造に形成される。なお、
図15では4段の多段渦巻ポンプ構造の一例で説明するが、段数は4段~10段の範囲であることが好ましい。また、圧力は0.5MPa(5kgf/cm
2)以上の能力を有することが好ましい。
【0107】
また、3枚の仕切壁78の中心部には連通口80がそれぞれ開口される。そして、4つのインペラ室66にはそれぞれインペラ64が配設され、それぞれのインペラ64は3つの連通口80を通して配設されたモータ76の回転軸76Aに支持される。仕切壁78に形成された連通口80の直径はモータ76の回転軸76Aの直径よりも大きく形成され、連通口80を介して4つのインペラ室66が連通される。
【0108】
図15(B)に示すように、インペラ64は、複数枚からなる羽根64Aの両側を2枚のシュラウト64B(側板)で覆い、2枚のシュラウト64Bのうちのポンプ入口70側のシュラウト中心部に吸込口82を形成し、周縁部に排出隙間84を形成したクローズド型のインペラ64が設けられる。インペラ64の排出隙間84の幅Wは4mm~10mmが好ましく、より好ましくは5mm~7mmである。
【0109】
そして、モータ76を駆動して4枚のインペラ64を高速回転すると、インペラ64の外周部が遠心力の作用で高圧になり、インペラ64の中心部は遠心力がほとんど作用しないため低圧になる。これにより、ケーシング62のポンプ入口70が低圧になりポンプ入口70に吸引力が発生し、この吸引力によって藻類回収手段12Bの吸引ノズル36からアオコ含有水が吸引される。
【0110】
また、
図1に示すように、吐出配管22の途中には、圧力調整手段16が設けられるとともにポンプ出口74と圧力調整手段16との間に圧力計24が設けられる。圧力調整手段16は、吐出配管22の流路を絞ることによって多段渦巻ポンプ構造の吐出圧力を高めるものであり、吐出圧力を0.5MPa(5kgf/cm
2)以上、1.0MPa(10kgf/cm
2)以下に調整することが好ましい。
【0111】
クローズド型のインペラ64は、液体に効率良く遠心力を与えることができるが、インペラ64の排出隙間84は上記の如く狭く、アオコ含有水中のアオコ等の異物が詰まり易い。したがって、藻類回収手段12Bのゴミ分離ドラム28のフィルタ42の目開きを、インペラ64の排出隙間84の幅Wよりも小さく設定することが好ましい。
【0112】
[アオコ処理方法]
次に、上記の如く構成された藻類処理システム10によって閉鎖水域に発生したアオコを藻類収集手段12Aで収集した後、藻類回収手段12Bで回収し、最終的に藻類破壊装置14でアオコを破壊するまでの処理方法を説明する。
【0113】
図16は、閉鎖水域15の一例として、瓢箪形状の沼15Aに発生したアオコが吹き溜まりに堆積している図であり、堆積されたアオコを本発明の実施の形態の藻類処理システム10によって処理する一例である。
【0114】
図16において、網目形状で示した部分は、沼15AにM方向の風が吹いたときに、沼15Aの一方側の吹き溜まり部に堆積したアオコ群体35,35を示す。また、ドット形状で示した部分は、沼15AにN方向の風が吹いたときに、沼15Aの他方側の吹き溜まり部に堆積したアオコ群体37,37を示す。
【0115】
この場合、沼15Aの広さや形によって、アオコを収集及び回収する藻類除去装置12Aの設置数や設置場所を適宜選定することができるが、ここでは瓢箪形状の沼15Aの両端エリアに藻類除去装置12Aをそれぞれ(合計2基)設けた場合で説明する。
【0116】
先ず、藻類除去装置12における藻類収集手段12Aの作用について説明する。
【0117】
図16に示すように、藻類収集手段12Aの藻類収集部13は、浮遊するアオコが流入するための逆ハの字状の収集水路13Dを放射状に4水路形成している。これにより、4水路の収集水路13Dは、沼15Aの東西南北の全方位をカバーすることができる。また、本実施の形態では、4水路の収集水路13Dのうち、アオコ群体35,37が堆積された吹き溜まりに流入口13Bが向いていない収集水路13Dに藻類回収手段12Bを配置することで、主として残りの3水路でアオコを収集するようにした。
【0118】
これにより、沼15Aに矢印M、N,K,Rの何れかの向きの風が吹いて表層水の流れる方向が変化し、表層水の流れに乗ってアオコ群体35,37の流れる方向もそれに応じて変化する場合であっても、アオコ群体35,37の大分部は何れかの収集水路13D(1つ又は複数)に流れ込む。
【0119】
したがって、沼15Aに発生したアオコを、沼15Aに吹く風の向きに関係なく効率的に収集することができる。更には、複数の収集水路13Dごとに藻類回収手段12Bを備える必要がないので、藻類回収手段12Bの装置コストも低く抑えることができる。
【0120】
図16では、2基の藻類除去装置12を使用したが、沼15Aの大きさが小さい場合には、沼15Aの中央部に1基の藻類除去装置12を設定することで対応も可能である。
【0121】
そして、4水路の収集水路13Dの何れかに流れ込んだアオコは誘導水路17Bを通って藻類回収手段12Bに導かれ、藻類回収手段12Bで回収される。
【0122】
ちなみに、
図17は、従来技術(特許文献3)の誘導手段39Aを備えた水質保全装置39でアオコ群体35,37を収集する場合である。
【0123】
従来技術の水質保全装置39の誘導手段39Aは、1方向のみの表層水の流れにしか対応できないので、
図17に示すように、吹き溜まり部に堆積した4つのアオコ群体35,37を収集するには、アオコ群体35,37ごとに4基の水質保全装置39を設置しなくてはならず、効率が悪いと共に装置コストが高くなる。
【0124】
また、本発明の好ましい態様の藻類収集手段12Aは、収集及び回収の効率を高めるための以下の好ましい構成を行っている。
【0125】
即ち、収集水路13Dの第1棒状部材13Aにシート状部材25を表層水中に垂下させるようにしたので、収集水路13Dに流れ込んだアオコを確実に収集できる。
【0126】
また、本発明における好ましい態様の藻類収集手段12Aでは、収集水路13Dの第1棒状部材13Aを入れ子構造にして伸縮自在にしたので、沼15Aの大きさに応じて収集水路13Dの大きさを可変できる。更には、収集水路13Dの第1棒状部材13Aを入れ子構造にして伸縮自在にしたので、沼15Aの形状に応じて複数本の第1棒状部材13Aの長さをそれぞれ変えることで、収集水路13Dの逆ハの字角度θを維持したまま、複雑な形状の沼15Aにも放射状に収集水路13Dを形成することができる。
【0127】
上記の如く、藻類収集手段12Aの収集水路13Dで収集されたアオコは、誘導水路17Bを通って藻類回収手段12Bで回収される。
【0128】
この回収において、本発明における好ましい態様の藻類収集手段12Aでは、複数の誘導水路17Bに収集水路13Dから藻類回収手段12Bへ向いた表層水の水流を発生させる水流発生手段33を設けるようにした。これにより、誘導水路17B内に表層水の滞留が発生するのを防止できるので、沼15Aに発生したアオコ群体35,37を一層効率的に収集して回収することができる。
【0129】
次に、藻類回収手段12Bの作用を説明する。
【0130】
藻類回収手段12Bは、藻類収集手段12Aでアオコと一緒に収集された沼15Aのゴミ類を分離してアオコを選択的に回収する機構を備えている。即ち、ゴミ分離ドラム28内に設けられた吸引ノズル36の吸引口36Aが表層水中に浸漬する。ただし、ゴミ分離ドラム28の側板46に形成した導入口48が表層水中に浸漬しないようにする。
【0131】
そして、藻類回収手段12Bのモータ32を駆動して、ゴミ分離ドラム28を
図1の矢印方向Xに回転させる。これにより、ゴミ分離ドラム28の外面に突起された複数枚のスキーマ40によって、藻類回収手段12Bの周囲に浮遊するアオコが掻き集められると共に、門型の装置フレーム26の前門側Aからゴミ分離ドラム28の下部を通過して後門側Bにアオコ含有水の流れが形成される。
【0132】
この場合、装置フレーム26を前門側Aから後門側Bにアオコ含有水が流通可能な門型形状とし、さらに装置フレーム26に回転自在に片持ち支持された6個の支持ローラ30でゴミ分離ドラム28の両端部周面を3点支持するようにしたので、アオコやゴミ類が装置フレーム26や支持ローラ30に引っ掛かり、アオコ含有水の流れを停滞させることを防止できる。これにより、アオコ含有水中のアオコを吸引ノズル36の吸引口36Aから効率的に吸引することができるだけでなく、ゴミ類が滞留しないのでメンテナンスが容易になる。
【0133】
また、装置フレーム26に回転自在に片持ち支持された6個の支持ローラ30でゴミ分離ドラム28の両端部周面を3点支持することにより、ゴミ分離ドラム28を安定に支持することができる。一方、スキーマ40でアオコと一緒に掻き集められたゴミ類は、ゴミ分離ドラム28のフィルタ42で分離され、門型の装置フレーム26の前門側Aから後門側Bに流れる表層水の流れに乗って装置フレーム26の後門側Bから沼15Aに戻る。
【0134】
これにより、アオコ等の浮遊藻類のみを選択的に収集することができ、メンテナンスもほとんど必要ない藻類回収手段12Bを提供することができる。
【0135】
そして、吸引ノズル36の吸引口36A吸引されたアオコ含有水は、吸引配管20を通ってアオコを破壊する藻類破壊装置14に送られる。
【0136】
次に、藻類回収手段12Bで回収したアオコを破壊する藻類破壊装置14の作用について説明する。
【0137】
即ち、多段渦巻ポンプ構造の藻類破壊装置14のモータ76を駆動して、4つのインペラ64を高速回転させる。これにより、藻類破壊装置14のケーシング62のポンプ入口70に吸引力が発生するので、吸引配管20を介して藻類回収手段12Bの吸引ノズル36に吸引力が付与される。したがって、スキーマ40で掻き集められたアオコ含有水はゴミ分離ドラム28のフィルタ42を通過して吸引ノズル36の吸引口36Aから吸引配管20に取り込まれ、吸引配管20を流れて藻類破壊装置14に送液される。
【0138】
藻類破壊装置14に送液されたアオコ含有水は、ケーシング62のポンプ入口70から1段目のインペラ室66に取り込まれる。そして、アオコ含有水は1段目のインペラ64の吸込口82から吸い込まれ、遠心力によって排出隙間84からケーシング62の内面に向かって高圧で吐出される。
【0139】
これにより、アオコ含有水中のアオコがケーシング62の内面に勢い良く衝突するので、アオコの群体が細かく分断処理されるとともに、アオコの細胞のガス胞が破壊処理される。更には、藻類破壊装置14のケーシング62内に一定の高圧(0.5MPa以上)を加えることでアオコの細胞のガス胞を効率的に破壊することができる。
【0140】
この場合、アオコ等の浮遊藻類の種類によって、分断処理及び破壊処理に適切な藻類破壊装置14の圧力が異なるので、圧力調整手段16によって調整することが好ましい。
【0141】
1段目のインペラ64の排出隙間84から吐出されたアオコ含有水は、1段目の仕切壁78の連通口80から2段目のインペラ室66に流速を上げて流入し、2段目のインペラ64によって1段目のインペラ64と同様の分断処理及び破壊処理が行われる。同様に、アオコ含有水は3段目及び4段目のインペラ64によって更に分断処理及び破壊処理が繰り返された後、排出部72のポンプ出口74から吐出配管22に排出される。
【0142】
このように、多段渦巻ポンプ構造の藻類破壊装置14は、インペラ64の段数が増えるごとにアオコ含有水の流速が上昇してインペラ64の排出隙間84からケーシング62の内面にアオコ含有水が勢いよく衝突してアオコを破壊する衝突破壊と、ケーシング62内に一定の高圧(0.5MPa以上)を加えてアオコを破壊する圧力破壊との2つの破壊作用を多段に行うことができる。これにより、アオコ含有水中のアオコの群体を効率的に分断及び破壊することができる。
【0143】
ちなみに、アオコ含有水に含有されるアオコの全てを分断及び破壊した場合を100%とした場合、従来の藻類破壊装置のアオコの分断処理効果及び破壊処理効果は80%程度が限界であったが、本発明における藻類破壊装置14は略90%以上にすることができる。即ち、本発明の藻類処理システム10で採用した藻類破壊装置14でアオコ含有水を処理することによって、分断処理や破壊処理での未処理なアオコを略無くすことができる。これにより、本発明の藻類処理システム10で処理したアオコ含有水を沼15Aに戻してもアオコの増殖を確実に抑制することができる。
【0144】
上記の藻類破壊装置14によるアオコの分断処理及び破壊処理において、アオコ含有水中に気泡が混在している場合、藻類破壊装置14において圧力低下が生じ、分断処理及び破壊処理の効果が低減し易い。
【0145】
この対策として、
図18に示すように藻類破壊装置14と吸引配管20との間に脱気槽60(脱気手段)を設けることが好ましい。即ち、藻類回収手段12Bの吸引ノズル36で吸引されたアオコ含有水を脱気槽60に流入させて貯留することにより、アオコ含有水中の気泡を脱気する。この場合、吸引ノズル36の吸引力として、藻類破壊装置14で発生する吸引力を利用できないので、吸引配管20に取水ポンプ(図示せず)を備える。
【0146】
そして、藻類破壊装置14を縦向きに配置して、ケーシング62のポンプ入口70が脱気槽60に貯留されたアオコ含有水中の槽底近くに位置するように設置する。これにより、藻類破壊装置14に取り込まれるアオコ含有水中の気泡を無くすことができるので、分断処理及び破壊処理の効果を低減させることがない。
【0147】
なお、
図18では、脱気手段として脱気槽60を設けることで説明したが、吸引配管20の途中に真空ポンプを備えた脱気装置(図示せず)を配設するようにしてもよい。
【0148】
なお、藻類破壊装置14で分断処理及び破壊処理がなされた後の処理水をアオコ含有処理水と言うことにする。
【0149】
次に、藻類破壊装置14から吐出配管22に排出されたアオコ含有処理水は、吐出ノズル38の吐出口38Aからゴミ分離ドラム28の内面に向けて勢いよく吐出される。これにより、ゴミ分離ドラム28の表面にポリエチレン袋等のゴミが張り付いていても、ゴミ分離ドラム28の内側から吐出される水により、張り付いたゴミを吹き飛ばしてフィルタ42から引きはがすことができる。
【0150】
また、吐出配管22から分岐した分岐配管58によって、吐出配管22を流れるアオコ含有処理水の一部は洗浄ノズル56からゴミ分離ドラム28のフィルタ42の外面に向けて勢いよく吐出される。フィルタ42の洗浄能力を有する吐出圧力としては0.1MPaあればよい。したがって、藻類破壊装置14の圧力が0.5MPa以上を確保し、且つ吐出ノズル38及び洗浄ノズル56からの吐出圧力が0.1MPaになるように圧力調整手段16を調整すればよい。
【0151】
これにより、アオコ含有処理水によってゴミ分離ドラム28のフィルタ42を自動洗浄することができる。この場合、アオコ含有処理水中のアオコは、従来技術で述べたアオコの群体(数十~数百μmスケール)よりも更に細かいので、フィルタ42を目詰まりさせることはない。
【0152】
そして、自動洗浄によりフィルタ42から除去されたゴミ類は、門型の装置フレーム26の前門側Aから後門側Bに至る表層水の流れによって装置フレーム26の後門側Bから沼15Aに戻る。
【0153】
これにより、本発明の浮遊藻類処理システム10は、藻類収集手段12Aによって、沼15A等の閉鎖水域15に吹く風の向きに関係なく、アオコを効率的に収集して、藻類回収手段12Bで回収できるだけでなく、藻類回収手段12Bのメンテナンスがほとんど必要ない。更には、上記構造の藻類破壊装置14によって優れた分断処理効果及び破壊処理効果を達成することができる。
【0154】
なお、図示しないが、アオコ含有処理水が吐出ノズル38の吐出口38Aからゴミ分離ドラム28の内面に向けて勢いよく吐出されることを利用して、水圧で水車のようにゴミ分離ドラム28を回転することでモータ32を使用しない構成は可能である。即ち、ゴミ分離ドラム28の内面に水車の羽根を複数枚形成し、吐出ノズル38の吐出口38Aからのアオコ含有処理水を羽根に当てることでゴミ分離ドラム28を回転させる。
【0155】
[藻類処理システムの別形態]
図19の藻類処理システム10は、上記した藻類回収手段12Bの装置フレーム26に多段渦巻ポンプ構造の浮遊藻類破壊装置14を搭載して一体型とした場合の斜視図である。上記した別体型の藻類処理システム10も一体型の浮遊藻類処理システム10も構成する部材は同様であるので、構成部材の説明は省略する。
【0156】
また、
図19の一体型の浮遊藻類処理システム10には、別体型で説明した圧力計24、洗浄ノズル56、脱気槽60(脱気手段)については図示していない。
【0157】
このように、藻類処理システム10を一体型にすることにより、藻類処理システム10をコンパクト化できるだけでなく、運搬等の取り扱いが容易になる。また、一体型の場合、藻類回収手段12Bのゴミ分離ドラム28を回転させるモータ32、及び藻類破壊装置14のインペラ64を回転させるモータ76の電源装置(図示せず)を装置フレーム26に搭載すれば、湖沼、池、河川、閉鎖性海域等の閉鎖性水域15を自由に移動させて浮遊藻類の処理を行うことができる。
【0158】
なお、上記した処理システム10でアオコを処理する例で説明したが、赤潮にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0159】
10…藻類処理システム、12…藻類除去装置、12A…藻類収集手段、12B…藻類回収手段、13…藻類収集部、13A…第1棒状部材、13A1…太い第1棒状部材、13A2…細い第1棒状部材、13B…流入口、13C…流出口、13D…収集水路、14…藻類破壊装置、15…閉鎖水域、15A…沼、16…圧力調整手段、17…藻類誘導部、17A…第2棒状部材、17A1…第2棒状部材の先端部、17B…誘導水路、18…陸地、19…連結固定部材、20…吸引配管、21…螺合構造、22…吐出配管、23…シール部材、24…圧力計、25…シート状部材、26…装置フレーム、26A…脚フレーム、26B…上面フレーム、26C…フランジ、26D…フランジ、27…錘部材、28…ゴミ分離ドラム、29…紐状部材、30…支持ローラ、30A…大径部、30B…小径部、30C…軸、31…逆ハの字角度変動防止手段、31A…ピン部材、31B…紐状部材、32… モータ、33A…水車、33B…回転軸、33C…軸受、33D…回転動力機構、33E…第1プーリ、33F…モータ、33G…モータの回転軸、33H…第2プーリ、33J…タイミングベルト、34…浮き部材、35、37…アオコ群体、36…吸引ノズル、36A…吸引口、38…吐出ノズル、38A…吐出口、40…スキーマ、42 …フィルタ、44…ゴミ分離ドラムの平坦部、46…ゴミ分離ドラムの側板、48…側板の導入口、50、52…プーリ、54…タイミングベルト、56…洗浄ノズル、58…分岐配管、60…脱気槽、62…ケーシング、64…インペラ、64A…羽根、64B…シュラウト、66…インペラ室、68…架台、70…ポンプ入口、72…排出部、74…ポンプ出口、76…モータ、76A…回転軸、78…仕切壁、80…仕切壁の連通口、82…吸込口、84…排出隙間