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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】水密扉ユニット
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20231201BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20231201BHJP
   E06B 7/16 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 F
E06B7/16 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020090401
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185294
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000252207
【氏名又は名称】六菱ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】前野 広大
(72)【発明者】
【氏名】上田 奏一朗
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175088(JP,A)
【文献】実公昭47-002205(JP,Y1)
【文献】特開2013-060735(JP,A)
【文献】特開2015-166543(JP,A)
【文献】実開昭51-099248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 1/00-1/70
E06B 7/00-7/36
B63B 19/00-19/28,43/00-43/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部の貫通孔に開閉可能に取り付けられる水密扉ユニットであって、
前記貫通孔に挿入される筒部を有するとともに一方開口に前記壁部の外面において前記貫通孔の一方開口の外周部位に対向配置される鍔を有する取付金具と、
前記壁部の内面に対向配置されるように前記取付金具の筒部の外周面に外嵌されるとともに前記筒部の外周面に内周縁が接合される固定リングと、
前記鍔にヒンジ結合されて前記貫通孔の一方開口を開閉可能とするための扉と、を備え、
前記筒部および前記鍔の少なくとも一方と前記壁部との間には、密封部材が設けられており、
前記取付金具の鍔の径方向に離隔した二ヶ所には、外側へ向けて開放する環状溝が設けられており、
前記二つの環状溝内には、それぞれシールリングが個別に装着されており、
前記二つのシールリングは、前記扉の閉塞状態において当該扉の内面に撓んで圧接されるリップを有しており、
前記二つのシールリングのうち外径側に位置するシールリングのリップは、先端が径方向内向きとされており、
前記二つのシールリングのうち内径側に位置するシールリングのリップは、先端が径方向外向きとされており、
前記扉には、前記各リップの対向間に向けて開放する加圧孔および圧力抜き孔が離隔して設けられている、ことを特徴とする水密扉ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の水密扉ユニットにおいて、
前記密封部材は、前記筒部の外周面および前記鍔の内面と前記壁部との対向間、ならびに前記固定リングと前記壁部との対向間にそれぞれ充填される止水材とされる、ことを特徴とする水密扉ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の水密扉ユニットにおいて、
前記密封部材は、前記筒部の外周面と前記壁部との対向間に充填される止水材と、前記鍔の外周縁に当該鍔と前記壁部との対向間を塞ぐように設けられるコーキング材と、前記固定リングの外周縁に当該固定リングと前記壁部との対向間を塞ぐように設けられるコーキング材と、を含むことを特徴とする水密扉ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水密扉ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、「建屋内での水の浸入を防ぐエリアの枠の開口部に開閉可能に設置されるものであって、開閉ハンドルと、該開閉ハンドルの回転に連動して移動するカンヌキとを備え、前記ハンドルを閉方向に回転することにより前記カンヌキが移動して前記枠に保持することにより固定され、前記枠の開口部を閉じている状態では、パッキンを前記枠に設けられている扉枠に押し付けることにより水密性を確保している水密扉において、前記パッキンを前記扉枠に押し付ける方向とは逆方向の水頭圧が掛る水密扉端部側面に、パッキン機能低下防止金具を設置すると共に、該パッキン機能低下防止金具と対向する前記扉枠の面に、前記パッキン機能低下防止金具と噛み合う金具受け枠を設け、かつ、前記パッキン機能低下防止金具は、その先端がL字状に形成されており、前記パッキンを前記扉枠に押し付ける方向とは逆方向の水頭圧が掛った場合に、前記パッキン機能低下防止金具のL字状の先端部と前記金具受け枠とが噛み合う」ということが記載されている。
【0003】
この特許文献1の構成によれば、「指定方向とは逆方向に水頭圧がかかった場合でも水密性を確保できることは勿論、扉としての利便性を損なわず容易に開閉でき、しかも、既設設備に対して大幅な改造を加えることなく、指定方向と、これとは逆方向の両方向からの水頭圧に耐え得る水密性能を付加することができるので、この種、水密扉には有効である」ということが記載されている。
【0004】
例えば特許文献2には、「壁部Wの出入口10に支持材7が埋め込まれており、壁部Wの出入口10における外側角部に繋止部材8が取り付けられており、支持材7と繋止部材8とが連結部材9で連結されており、これら支持材7と繋止部材8と連結部材9の組立体に枠部材2を内嵌固定し、この枠部材2の開口に扉部材3が開閉可能に設けられており、枠部材2と壁部Wとの間にコーキング材17が充填されている」ということが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「枠部材2側に第1止水部材26が設けられており、扉部材3側に第2止水部材36が設けられており、扉部材3の閉塞時に第1止水部材26が扉側凸部32に変形密着されるとともに、第2止水部材36が枠側凸部20に変形密着されることにより、枠部材2と扉部材3との間を水密に保持する」ということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5706356号公報
【文献】特開2007-23540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、L字形状の扉枠をコンクリート製の壁部の内側開口端の縦角部に設けているということが窺えるものの、前記扉枠を前記壁部にどのような形態で固定しているかが不明である。このようなことから、前記特許文献1からは、比較的簡易に施工可能な構成でありながら、前記壁部に前記扉枠を十分な強度で取り付けることを可能とするという技術思想を窺い知ることはできないし、さらに、そのような構成において比較的簡素な構成でありながら十分な密封性能を確保するという技術思想を窺い知ることはできない。
【0008】
ちなみに、この特許文献1の前記扉枠を前記コンクリート製の壁部に固定する形態については、一般にアンカーボルトを用いることが考えられる。その場合、一般に前記コンクリート製の壁部の内部に鉄筋が埋め込まれている関係より、前記アンカーボルトを打設する際に前記鉄筋を避けるようにする必要がある等、前記扉枠の設置作業が煩雑になることが懸念される。
【0009】
上記特許文献2では、壁部Wの出入口10に枠部材2を固定するために多数の要素(支持材7、繋止部材8ならびに連結部材9等)が必要になるとともに、その施工に手間がかかることが懸念される。
【0010】
また、特許文献2では、第1止水部材26と第2止水部材36とを枠部材2側と扉部材3側とに振り分けて設けているために、密封のための構成が煩雑になっていることが指摘される。この他、特許文献2では、第1止水部材26と第2止水部材36とを扉側凸部32と枠側凸部20とで押し潰すように変形密着させるようにしているために、扉部材3を閉塞する際に過大な力が必要になることが懸念される。
【0011】
このような事情に鑑み、本発明は、水密扉ユニットにおいて、比較的簡易に施工可能な構成でありながら、壁部に扉の取付要素を十分な強度で取り付け可能とするとともに、比較的簡素な構成でありながら十分な密封性能を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、壁部の貫通孔に開閉可能に取り付けられる水密扉ユニットであって、前記貫通孔に挿入される筒部を有するとともに一方開口に前記壁部の外面において前記貫通孔の一方開口の外周部位に対向配置される鍔を有する取付金具と、前記壁部の内面に対向配置されるように前記取付金具の筒部の外周面に外嵌されるとともに前記筒部の外周面に内周縁が接合される固定リングと、前記鍔にヒンジ結合されて前記貫通孔の一方開口を開閉可能とするための扉と、を備え、前記筒部および前記鍔の少なくとも一方と前記壁部との間には、密封部材が設けられており、前記取付金具の鍔の径方向に離隔した二ヶ所には、外側へ向けて開放する環状溝が設けられており、前記二つの環状溝内には、それぞれシールリングが個別に装着されており、前記二つのシールリングは、前記扉の閉塞状態において当該扉の内面に撓んで圧接されるリップを有しており、前記二つのシールリングのうち外径側に位置するシールリングのリップは、先端が径方向内向きとされており、前記二つのシールリングのうち内径側に位置するシールリングのリップは、先端が径方向外向きとされており、前記扉には、前記各リップの対向間に向けて開放する加圧孔および圧力抜き孔が離隔して設けられている、ことを特徴としている。
【0013】
この構成では、前記扉を前記壁部に開閉可能に取り付けるために、前記取付金具の鍔と前記固定リングとで前記壁部を厚み方向から挟むようにするとともに、当該固定リングの内周縁を前記取付金具の外周面に接合することにより、前記取付金具および前記固定リングを前記壁部に固定するようにしている。
【0014】
これにより、前記取付金具および前記固定リングがシンプルな形状で、かつ全体として比較的簡易に施工することが可能な構成でありながら、前記取付金具および前記固定リングを前記壁部に十分な強度で取り付けることが可能になる。
【0015】
さらに、上記構成では、前記密封部材によって前記取付金具と前記壁部の貫通孔との嵌め合い部分を密封し、また、前記扉を閉塞した状態で前記密封装置によって前記扉の内面と前記取付金具の鍔との間を密封しているから、本発明に係る水密扉ユニットを比較的簡素な構成でありながら十分な密封性能(止水性)と安全性を確保することができる。
【0016】
また、本発明のように前記密封装置を前記取付金具の鍔の内部に装着している場合、仮に前記扉の内面に前記密封装置を外付け設置する場合と異なり、前記扉の内面に出っ張りができなくなるので、見栄えが良くなるとともに、人が出入りする際に引っ掛かる等といった心配が無くなる。さらに、上記構成によれば、前記扉の外側空間の圧力が上昇したときに、前記扉の内面に対する前記外径側のシールリングのリップの接触圧が減少するものの、前記扉の内面に対する前記内径側のシールリングのリップの接触圧が増大するようになる。一方、前記扉の内側空間の圧力が上昇したときに、前記扉の内面に対する前記内径側のシールリングのリップの接触圧が減少するものの、前記扉の内面に対する前記外径側のシールリングのリップの接触圧が増大するようになる。
これにより、前記扉の外側から内側への水通過を防止することができるとともに、前記扉の内側から外側への水通過を防止することができる。
しかも、上記構成によれば、前記扉を閉塞した状態において前記加圧孔から規定圧力で一定時間加圧することにより、前記二つのシールリングの漏洩検査を比較的簡易に行えるようになる。
【0017】
ところで、上記水密扉ユニットにおいて、前記密封部材は、前記筒部の外周面および前記鍔の内面と前記壁部との対向間、ならびに前記固定リングと前記壁部との対向間にそれぞれ充填される止水材とされる構成とすることが好ましい。
【0018】
また、上記水密扉ユニットにおいて、前記密封部材は、前記筒部の外周面と前記壁部との対向間に充填される止水材と、前記鍔の外周縁に当該鍔と前記壁部との対向間を塞ぐように設けられるコーキング材と、前記固定リングの外周縁に当該固定リングと前記壁部との対向間を塞ぐように設けられるコーキング材と、を含む構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る水密扉ユニットによれば、取付金具および固定リングがシンプルな形状で、かつ全体として比較的簡易に施工することが可能な構成でありながら、壁部に前記取付金具および前記固定リングを十分な強度で取り付けることが可能になるとともに、比較的簡素な構成でありながら十分な密封性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る水密扉ユニットの第1実施形態で、図2の(1)-(1)線断面を矢印方向から見た図である。
図2図1の水密扉ユニットの正面図である。
図3図2の水密扉ユニットの分解斜視図である。
図4】本発明に係る水密扉ユニットの第2実施形態の横断面図である。
図5】本発明に係る水密扉ユニットの第3実施形態の横断面図である。
図6】本発明に係る水密扉ユニットの第4実施形態の横断面図である。
図7】本発明に係る水密扉ユニットの第5実施形態の横断面図で、図2の(1)-(1)線断面を矢印方向から見た図に対応している。
図8】本発明に係る水密扉ユニットの第6実施形態で、図2の(1)-(1)線断面を矢印方向から見た図に対応している。
図9】本発明に係る水密扉ユニットの第7実施形態で、図11の(9)-(9)線断面を矢印方向から見た図である。
図10図9に示す実施形態で、図11の(10)-(10)線断面を矢印方向から見た図である。
図11図9および図10に示す水密扉ユニットの漏洩検査を行う際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1から図3に本発明の第1実施形態を示している。図例の水密扉ユニットは、壁部1に設置されるものであって、取付金具2、固定リング3、扉4、密封装置としてのシールリング5等を備えている。
【0039】
壁部1は、例えばコンクリート製とされており、その所定位置には正面視矩形状の貫通孔1aが設けられている。
【0040】
取付金具2は、四角い筒部21と、鍔22と、を有している。鍔22は、筒部21の中心軸線の一方開口端に径方向外向きに延出するように一体に設けられている。筒部21と鍔22とには補強材23が架設されている。
【0041】
この取付金具2の筒部21が壁部1の貫通孔1aに挿入されていて、鍔22が壁部1の外面において貫通孔1aの一方開口の外周部位に当接するように配置されている。
【0042】
固定リング3は、四角い環状板からなり、取付金具2の筒部21の外周面において他方開口寄りの位置に外嵌されている。
【0043】
この固定リング3の内周縁が壁部1の内面に当接されていて、この当接部分が取付金具2の筒部21の外周面に例えば溶接等により接合されている。
【0044】
そして、鍔22の外周縁には密封部材としてのコーキング材6が設けられており、また、固定リング3の外周縁には密封部材としてのコーキング材7が設けられている。これにより、鍔22の外周縁と壁部1との間ならびに固定リング3の外周縁と壁部1との間がそれぞれ塞がれている。
【0045】
扉4は、外板4aと、内板4bと、枠体4cと、を組み合わせた構成であり、外板4a、内板4bならびに枠体4cは金属材で形成されている。枠体4cの断面形状は、内周が開放するようなコ字形とされている。
【0046】
外板4aと枠体4cの外鍔部4dとが重ね合わされているとともに、当該重ね合わせ部分がボルト44およびナット45で締結されることにより固定されている。一方、内板4bと枠体4cの内鍔部4eとが重ね合わされているとともに、当該重ね合わせ部分の外周縁および内周縁が例えば溶接により接合されている。
【0047】
これらのことにより、扉4の外側空間で増水したときに、外板4a側から扉4の内部空間に水が浸入しうるものの、当該扉4の内部空間に浸入した水が内板4bを越えて扉4の内側空間へ通過することを防止できるようになる。
【0048】
この扉4は、取付金具2の鍔22にヒンジ41を介して結合されていて、壁部1の貫通孔1aの一方開口を開閉するものである。この扉4には、ロックハンドル42と、ラッチ43と、動力伝達機構(図示省略)と、が設けられている。
【0049】
なお、前記動力伝達機構は、ロックハンドル42とラッチ43との間で動力を伝達するものである。この動力伝達機構の詳細な構成についての図示や説明は省略するが、一般に市販されているいろいろなタイプの中から任意のものを採用することができる。
【0050】
そして、ロックハンドル42の回転に連動して、ラッチ43が取付金具2の鍔22に設けられているラッチ受け24に係止することで扉4を閉塞するロック状態になる一方、ラッチ43をラッチ受け24から離脱させることで扉4を開放自在とするアンロック状態になる。
【0051】
シールリング5は、取付金具2の鍔22に設けられて扉4の内板4bとの対向間を密封するものである。
【0052】
具体的に、シールリング5は、扉4の閉塞状態において扉4の内板4bに撓んで圧接されるリップ5aを有している。
【0053】
その一方で、取付金具2の鍔22における内径側には、断面がコ字形の環状溝25が設けられている。
【0054】
この環状溝25には、シールリング5が装着される。なお、環状溝25からシールリング5が抜け出さないように、環状溝25の開口の内周縁には、径方向外向きに突出する抜け止め片26が設けられている。
【0055】
ここで、扉4を閉塞した状態では、扉4の内板4bが鍔22の外面に接触されるようになっているとともに、リップ5aが弾性的に撓んで扉4の内板4bに圧接されるようになっている。
【0056】
そして、扉4を閉塞した状態において、扉4の外側空間の圧力(外圧)が上昇したときにリップ5aの接触圧(シール面圧)が増加するようになる一方で、扉4の内側空間の圧力(内圧)が上昇したときにリップ5aの接触圧が減少するようになる。
【0057】
次に、上述した水密扉ユニットを壁部1に設置するための手順を説明する。
【0058】
まず、取付金具2の筒部21を壁部1の貫通孔1a内に挿入し、取付金具2の鍔22を壁部1の外面に当接させる。
【0059】
そして、壁部1の内側から固定リング3を取付金具2の筒部21の外周面において先端側に嵌合して、この固定リング3を壁部1の内面に当接させるとともに、固定リング3の内周縁を取付金具2の筒部21の外周面に当接させる。
【0060】
このように、取付金具2の鍔22と固定リング3とで壁部1を厚み方向から挟むようにした後、固定リング3の内周縁を取付金具2の筒部21の外周面に例えば溶接等により接合する。
【0061】
そして、鍔22の外周縁に密封部材としてのコーキング材6を塗布し、さらに固定リング3の外周縁に密封部材としてのコーキング材7を塗布し、取付金具2の鍔22における環状溝25内にシールリング5を装着する。
【0062】
このようにしてから、取付金具2の鍔22に扉4をヒンジ41により結合する。この扉4を閉塞すると、シールリング5のリップ5aが取付金具2の鍔22に撓んで圧接される状態になる。
【0063】
以上説明したように本発明を適用した第1実施形態によれば、扉4を壁部1に開閉可能に取り付けるために、取付金具2の鍔22と固定リング3とで壁部1を厚み方向から挟むようにするとともに、当該固定リング3の内周縁を取付金具2の外周面に接合することにより、取付金具2および固定リング3を壁部1に固定するようにしている。
【0064】
これにより、取付金具2および固定リング3がシンプルな形状で、かつ全体として比較的簡易に施工することが可能な構成でありながら、取付金具2および固定リング3を壁部1に十分な強度で取り付けることが可能になるので、扉4を強固に取り付けることが可能になる。
【0065】
しかも、密封部材としてのコーキング材6,7によって取付金具2と壁部1の貫通孔1aとの嵌め合い部分を密封するようにしたうえで、密封装置としてのシールリング5によって扉4を閉塞した状態で当該扉4の内面と取付金具2の鍔22との間を密封するようにしているから、本発明に係る水密扉ユニットを比較的簡易な構成でありながら十分な密封性能(止水性)と安全性を確保することができる。
【0066】
また、第1実施形態のように密封装置としてのシールリング5を取付金具2の鍔22の環状溝25内に装着している場合、仮に扉4の内面に前記密封装置を外付け設置する場合と異なり、扉4の内面に出っ張りができなくなるので、見栄えが良くなるとともに、人が出入りする際に引っ掛かる等といった心配が無くなる。
【0067】
この他、第1実施形態では、扉4を閉塞する際にシールリング5のリップ5aが弾性的に撓んで扉4の内板4bに圧接されるために、上記特許文献2のように第1、第2止水部材を押し潰す形態と異なり比較的小さい力で扉4を閉塞することが可能になる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0069】
(1)図4には本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、取付金具2の筒部21を壁部1の貫通孔1aに所定の隙間を介して挿入しているとともに、鍔22を壁部1の外面において貫通孔1aの一方開口の外周部位に所定の隙間を介して対向配置していて、前記各隙間に密封部材としての止水材8を充填している。この止水材8は、例えば無収縮モルタル等が挙げられる。
【0070】
そして、取付金具2の鍔22の外周に環状片22aを設け、この環状片22aの先端を壁部1の外面に当接させるようにしている。また、四角い環状板からなる固定リング3の外周に環状片31を設け、この環状片31の先端を壁部1の内面に当接させるようにしている。
【0071】
なお、固定リング3は、取付金具2の筒部21の外周面において他方開口寄りの位置に外嵌されていて、その内周縁が壁部1の内面に当接されているとともに、当該当接部分が取付金具2の筒部21の外周面に例えば溶接等により接合されている。
【0072】
このような取付金具2における鍔22の環状溝25内に単一のシールリング5が装着されている点ならびにその他の構成については、第1実施形態と基本的に同様とされている。この第2実施形態でも第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0073】
(2)図5には本発明の第3実施形態を示している。この第3実施形態では、第2実施形態の取付金具2の鍔22の環状片22aおよび固定リング3の環状片31を無くして、鍔22の外周縁に密封部材としてのシールリング6Aを設けるとともに、固定リング3の外周縁に密封部材としてのシールリング7Aを設けることにより、鍔22の外周縁と壁部1との対向間ならびに固定リング3の外周縁と壁部1との対向間をそれぞれ密封するようにしている。
【0074】
このような取付金具2における鍔22の環状溝25内に単一のシールリング5が装着されている点ならびにその他の構成については、第1実施形態と基本的に同様とされている。この第3実施形態でも第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0075】
(3)図6には本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態では、第2実施形態の取付金具2の鍔22と壁部1との対向間および固定リング3と壁部1との対向間の止水材8を無くして、筒部21の外周面と壁部1との対向間に充填している止水材8を残すようにしている。
【0076】
そして、鍔22および固定リング3を壁部1にそれぞれ当接させるようにしたうえで、第1実施形態と同様に鍔22の外周縁に密封部材としてのコーキング材6を設けるとともに、固定リング3の外周縁に密封部材としてのコーキング材7を設けることにより、鍔22の外周縁と壁部1との対向間ならびに固定リング3の外周縁と壁部1との対向間をそれぞれ密封するようにしている。
【0077】
このような取付金具2における鍔22の環状溝25内に単一のシールリング5が装着されている点ならびにその他の構成については、第1実施形態と基本的に同様とされている。この第4実施形態でも第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0078】
(4)図7には本発明の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、第1実施形態で示した全体構成をベースとして、特許請求の範囲に記載している密封装置を二つのシールリング51,52にしている。
【0079】
具体的に、鍔22の内径側には、二条の環状溝25A,25Bが径方向隣り合わせに離隔して設けられている。
【0080】
二条の環状溝25A,25Bには、シールリング51,52がそれぞれ装着されている。
【0081】
このシールリング51,52は、共に弾性材からなり、リップ51a,52aを有している。二つのシールリング51,52のリップ51a,52aそれぞれの先端は、共に径方向外向きになっている。
【0082】
内径側の環状溝25Aにおいて内径側周壁面の開口側には、径方向外向きに突出する抜け止め片26Aが設けられている。この抜け止め片26Aは、内径側のシールリング51の抜け出しを防止する。
【0083】
また、二条の環状溝25A,25Bの間の隔壁25Cの先端における外周縁には、径方向外向きに突出する抜け止め片26Bが設けられている。この抜け止め片26Bは、外径側のシールリング52の抜け出しを防止する。
【0084】
その他の構成については、第1実施形態と基本的に同様とされている。この第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用、効果が得られることに加えて、次のような作用、効果が得られる。扉4を閉塞した状態において、扉4の外側空間の圧力が上昇したときに扉4の内面に対する外径側のシールリング52のリップ52aの接触圧(シール面圧)が増大するようになり、外径側のシールリング52から圧力がリークしたときに扉4の内面に対する内径側のシールリング52のリップ52aの接触圧(シール面圧)が増大するようになる。これにより、扉4の外側から内側への水通過を防止する密封性能(止水性)と安全性が第1実施形態に比べて向上するようになっている。
【0085】
(5)図8には本発明の第6実施形態を示している。この第6実施形態では、第5実施形態の二つのシールリング51,52のうち、内径側のシールリング51のリップ51aを径方向内向きにしている。
【0086】
そして、二条の環状溝25A,25Bの間の隔壁25Cの先端における外周縁に径方向外向きに突出する抜け止め片26Aが設けており、さらに、隔壁25Cの内周縁にも径方向内向きに突出する抜け止め片26Bが設けられている。
【0087】
その他の構成については、第5実施形態と基本的に同様とされている。この第6実施形態では、第1実施形態と同様の作用、効果が得られることに加えて、次のような作用、効果が得られる。扉4を閉塞した状態において、扉4の外側圧力が上昇したときに外径側のシールリング52のリップ52aの接触圧(シール面圧)が増加するようになる一方で、扉4の内側圧力が上昇したときに内径側のシールリング51のリップ51aの接触圧(シール面圧)が増加するようになる。このように、扉4の外側から内側への水通過を防止する密封性能(止水性)と安全性を確保できるとともに、扉4の内側から外側への水通過を防止する密封性能(止水性)と安全性を確保できるようになっている。
【0088】
(6)図9から図11には本発明の第7実施形態を示している。この第7実施形態では、第5実施形態の二つのシールリング51,52のうち、外径側のシールリング52のリップ52aを径方向内向きにしている。
【0089】
これにより、二つのシールリング51,52のリップ51a,52aそれぞれの先端が向かい合うようになっている。
【0090】
さらに、第5実施形態に示す隔壁25Cの抜け止め片26A,26Bを無くすとともに短くしている。その代わりに、内径側の環状溝25Aの内径側周壁面の開口縁に抜け止め片26Aを設ける一方で、外径側の環状溝25Bの外径側周壁面の開口縁に抜け止め片26Bを設けるようにしている。
【0091】
ここで、扉4の外側空間の圧力が上昇すると、外径側のシールリング52のシール面圧(リップ52aの接触圧)が減少するものの、内径側のシールリング51のシール面圧が増加するようになる。
【0092】
一方、扉4の内側空間の圧力が上昇すると、内径側のシールリング51のシール面圧が減少するものの、外径側のシールリング52のシール面圧が増加するようになる。このように、外圧または内圧の上昇に伴い、二つのシールリング51,52のいずれか一方のシール面圧が増加するようになる。これにより、扉4の外側から内側への水通過を防止する密封性能(止水性)と安全性を確保できるとともに、扉4の内側から外側への水通過を防止する密封性能(止水性)と安全性を確保できるようになる。
【0093】
そして、扉4の内板4bにおいて上下に離隔した二ヶ所には、二つのシールリング51,52の各リップ51a,52aの対向間に向けて開放する加圧孔11と、圧力抜き孔12とが設けられている。
【0094】
なお、加圧孔11および圧力抜き孔12は、例えば図11に示すように、180度対向する上下位置に配置されており、通常時には不図示のプラグが装着されることにより閉塞されている。
【0095】
そして、漏洩検査を行う際には、前記プラグを取り外して、図11に示すように、加圧孔11に加圧管13を接続する一方で、圧力抜き孔12に圧力抜き管14を接続する。加圧管13には、開閉弁15および水圧供給源16が設けられている。圧力抜き管14には、ゲージ17および圧力抜き弁18が取り付けられている。
【0096】
ここで、例えば水圧供給源16により加圧孔11に所定の水圧を加え、その状態を所定時間継続するようにし、その間において二つのシールリング51,52からの水分の漏洩の有無を目視にて確認することが考えられる。
【0097】
その他の構成については、第5実施形態と基本的に同様とされている。この第7実施形態でも第1実施形態と同様の作用、効果が得られることに加えて、次のような作用、効果が得られる。二つのシールリング51,52の定期的な点検を容易に行うことができる。
【0098】
(6)上記第2、第3、第4実施形態に示す密封装置(単一のシールリング5)については、第5、第6、第7実施形態に示すような密封装置(二つのシールリング51,52)に置き換えることが可能である。
【0099】
(7)上記各実施形態において、図示していないが、例えば固定リング3を壁部1にアンカーボルト等で留めるようにしてもよい。その場合、水密扉ユニットの取り付け強度をさらに高めることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、水密扉ユニットに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 壁部
1a 貫通孔
2 取付金具
21 筒部
22 鍔
23 補強材
24 ラッチ受け
25 環状溝
3 固定リング
4 扉
4a 外板
4b 内板
4c 枠体
41 ヒンジ
42 ロックハンドル
43 ラッチ
44 ボルト
45 ナット
5 シールリング(密封装置)
5a リップ
6,7 コーキング材(密封部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11