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特許7394463YAP1/WWRT1阻害組成物およびGLS1阻害組成物を投与するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】YAP1/WWRT1阻害組成物およびGLS1阻害組成物を投与するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/409 20060101AFI20231201BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231201BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231201BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231201BHJP
   A61K 31/473 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 31/06 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20231201BHJP
   A61K 45/06 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
A61K31/409
A61K31/501
A61K47/34
A61K9/14
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P9/12
A61P43/00 111
A61P43/00 105
C12N15/12 ZNA
A61K31/473
A61P9/00
A61P11/06
A61P31/04
A61P31/06
A61P35/00
A61K45/06
A61P43/00 123
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020528156
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018062013
(87)【国際公開番号】W WO2019104038
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】62/589,706
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501102988
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ -オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh PA 15260,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アチャリヤ,アビナブ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ステファン ユ-ワ
(72)【発明者】
【氏名】リトル,スティーブン アール
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/130889(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258082(US,A1)
【文献】特許第7079937(JP,B2)
【文献】PNAS,2016年,E5328-E5336,https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1611406113
【文献】Mol. Cancer Ther.,2012年,11(6),pp.1269-1278
【文献】J. Clin. Invest.,2016年,126(9),pp.3313-3335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00-45/08
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマー、ベルテポルフィンまたはその塩、およびCB-839またはその塩を含む治療粒子を含む組成物であって、肺高血圧症の治療を必要とする対象における肺高血圧症を治療するための、組成物
【請求項2】
前記生体適合性ポリマーがポリ(乳酸-co-グリコール)酸を含む、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
ポリ(乳酸-co-グリコール)酸組成物が多孔質構造である、請求項2に記載の組成物
【請求項4】
前記粒子が、約1~5マイクロメートルのサイズである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月22日に出願された米国仮出願第62/589,706号明細書に対する利益を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に組み込むものとする。本発明は、国立衛生研究所(National Institute of Health)の補助金番号R01 HL124021の下で政府の支援を受けて実施された。政府は本発明について一定の権利を有している。
【背景技術】
【0002】
肺高血圧症(PH)およびその特に重度のサブタイプである肺動脈高血圧症(PAH)は、世界的に罹患率が増加しているが、治療の選択肢が不十分である、よく理解されていない血管疾患である。この疾患の治療のために承認された血管拡張薬は十数種類以上あるが、それでも現在の治療法では死亡率が高いままである。病変肺血管系の細胞レベルおよび分子レベルでは、PHは代謝調節異常、前増殖性状態、ならびに有害な肺血管の再構築および硬直によって特徴付けられる。したがって、最近では、PHの分子レベルでの起源を標的とした新規な薬理学的アプローチの開発が行われており、疾患修飾の機会を示すことができると考えられる。それでも必要なことは、肺疾患の治療の改善である。
【発明の概要】
【0003】
YAP1/WWTR1阻害剤およびグルタミナーゼ阻害剤を含む粒子ならびにそれらの使用方法が開示される。
【0004】
一態様では、生体適合性ポリマー、YAP1/WWRT1阻害剤(例えば、ベルテポルフィンなど)、およびグルタミナーゼ阻害剤(例えば、CB-839および/またはC968など)を含む治療粒子(例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)粒子)が本明細書で開示される。
【0005】
また、YAP1/WWRT1阻害剤およびグルタミナーゼ阻害剤が、対象への投与後約1日~約3日に粒子から放出される、前述のいずれかの態様の治療粒子が本明細書で開示される。
【0006】
一態様では、前述のいずれかの態様の治療粒子を対象に投与することを含む、そのような治療を必要とする対象の肺疾患(例えば、肺血管疾患、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、肺硬直症(pulmonary stiffness)、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、肺気腫、喘息、肺塞栓症、急性肺疾患、敗血症、結核、サルコイドーシス、微生物感染による肺炎症(例えば、肺炎およびインフルエンザなど)、または肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がんなど))を治療する方法が本明細書で開示される。
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、いくつかの実施形態を図示し、説明と一緒に、開示された組成物および方法を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】PHの効果的な改善のためのYAP1/WWRT1およびグルタミナーゼ経路の局所的な阻害を示す図である。
図2】PLGA微小粒子は吸入のためのサイズ範囲内にあり、持続的にベルテポルフィンおよびCB-839を放出することを示す図である。図2Aは、CB-839を単独で封入した、ベルテポルフィンを単独で封入した、およびベルテポルフィンを封入した微小粒子を有するCB-839の走査型電子顕微鏡像が、滑らかな表面形態を示すことを示す。図2Bは、動的光散乱実験から得られた微粒子のサイズ分布を示しており、全ての微小粒子の平均微小粒子サイズがおよそ1μmであることを示している。図2Cは、CB-839-ベルテポルフィンを封入した、またはCB-839のみを封入したPLGA微小粒子からのCB-839の放出速度を示す。図2Dは、CB-839-ベルテポルフィンを封入した、またはベルテポルフィンのみを封入したPLGA微小粒子からのベルテポルフィンの放出速度を示す。
図3】PLGA微小粒子がラットの肺にペイロードを送達することを示す図である。無色素に対して、近赤外色素IR780を封入したPLGA微小粒子を気管内投与した後のラットの肺の蛍光画像を、投与後0日目と7日目に画像化した。
図4】in vivoでベルテポルフィンとCB-839を同時に送達することにより、モノクロタリン曝露ラットにおけるPHの血行動態兆候が改善されることを示す図である。図4Aは、腹腔内(i.p.)注射を介したモノクロタリン(MCT)の使用によるPHの誘導と、それに続く治療のための微小粒子の投与(i.t.=気管内)についての研究デザインを示す。図4Bは、ベルテポルフィン(Vert)およびCB-839を送達するPLGA微小粒子が、ブランク微小粒子の対照と比較して、フルトン指数(RV/LV+S質量)および右室収縮期血圧(RVSP)を有意に減少させることを示す。図4Cは、ベルテポルフィン(Vert)を単独で送達するPLGA微小粒子がフルトン指数を有意に減少させ、RVSPはラットが死んだため比較することができなかったことを示す。図4Dは、CB-839を単独で送達するPLGA微小粒子が、ブランク微小粒子の対照と比較して、フルトン指数またはRVSPを有意に減少させないことを示す。
図5】モノクロタリン曝露ラットにおけるGLS1およびYAP1/WWRT1の同時薬理学的阻害が、肺血管細胞増殖および肺血管再構築を減少させることを示す図である。図5Aは、肺の肺細動脈(直径10μm未満)の代表的な画像を示す(青-核;赤-PCNA;緑-α-SMA;スケールバー=20μm)。図5Bは、CB-839およびベルテポルフィン併用群のα-SMA陽性血管細胞のPCNAの割合が、生理食塩水およびブランク微小粒子(MP)の陰性対照よりも有意に低く、単剤治療単独とは有意に異なることを示す(n=5~12;±SEM;-未治療を除くすべての条件でp<0.05)。図5Cは、未治療群に正規化した場合、ベルテポルフィン+CB-839併用治療群の血管の壁厚は、単剤治療または生理食塩水およびブランク微小粒子(MP)の陰性対照のいずれかよりも有意に低いことを示す(n=10~12血管;±SEM;-未治療を除くすべての条件でp<0.05;$-すべての条件でp<0.05)。
図6】MCT曝露ラットにおけるGLS1およびYAP1/WWRT1の同時薬理学的阻害が、肺細動脈におけるコラーゲン沈着および架橋コラーゲンを減少させることを示す図である。図6Aは、肺組織のピクロシリウスレッド染色の代表的な画像を示し、線維性コラーゲン沈着(赤-明視野)および架橋線維性コラーゲン集合体(赤-コラーゲンタイプI、および緑-コラーゲンタイプIII、直交偏光画像を使用、スケールバー=40μm)を示す。図6Bは、非偏光下でのピクロスシリウスレッド染色の%面積の定量化を示し(任意単位-a.u.として表される)、CB-839およびベルテポルフィンの組合せは、生理食塩水およびブランク微小粒子(MP)の陰性対照と比較して、肺細動脈コラーゲン沈着を有意に減少させ、単剤治療単独とは有意に異なることを示す(n=6~10;±SEM;-未治療を除くすべての条件でp<0.05)。図6Cは、偏光下でのピクロスシリウスレッド染色の%面積の定量化を示す(任意単位-a.u.として表される)。図6Cは、CB-839およびベルテポルフィンの併用群は、生理食塩水およびブランク微小粒子(MP)の陰性対照と比較して、肺細動脈架橋コラーゲンを有意に減少させ、ベルテポルフィン単独治療とは有意に異なることを示す(n=6~10;±SEM;-未治療およびCB-839を除くすべての条件でp<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本化合物、組成物、物品、装置、および/または方法が開示され、記載される前に、それらは、特別の定めのない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノロジー方法に限定されず、または特別の定めのない限り、特定の試薬に限定されず、当然変化し得るものであると理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、限定することを意図していないことが理解される。
【0010】
A.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形(「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」)は、文脈からそうでないことが明白である場合を除き、複数形の指示対象も含む。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0011】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書中で表され得る。このような範囲を表示する場合、別の実施形態は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、前に「約」を付けて値を近似値として表す場合、その特定の値が別の実施形態を形成すると理解される。各範囲の終点は、他の終点との関連においても、他の終点とは独立しても有意であることがさらに理解されるであろう。また、本明細書に開示されているいくつかの値があり、それぞれの値は、それぞれの値自体に加えて、その特定の値についての「約」として本明細書に開示されていることも理解されよう。例えば、「10」という値が開示されていれば、次いで「約10」も開示されている。また、ある値が開示されている場合、「その値以下」、「その値以上」、および値の間の可能な範囲も開示されていることは、当業者に適切に理解されるように、理解される。例えば、「10」という値が開示されていれば、「10以下」だけでなく「10以上」も開示されている。また、出願全体では、データはいくつかの異なるフォーマットで提供され、このデータは、終点、始点、およびデータポイントの任意の組合せの範囲を表していることが理解される。例えば、特定のデータポイント「10」と特定のデータポイント「15」とが開示されている場合、10と15との間だけでなく、10および15よりも大きい、それら以上、それらよりも小さい、それら以下、それらに等しい値も開示されていると考えられることが理解される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されていることが理解される。例えば、10と15とが開示されている場合には、11、12、13および14も開示されている。
【0012】
本明細書および後続の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語を参照する。
【0013】
「含む(Comprising)」は、組成物、方法などが、列挙された要素を含むことを意味するが、他の要素を除外するものではないことを意図している。組成物および方法を定義するために使用される場合、「から本質的になる(Consisting essentially of)」とは、列挙された要素を含むが、組合せにとっていかなる本質的に重要な他の要素も除外することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義されるような要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法、ならびにリン酸緩衝生理食塩水、保存剤などの薬学的に許容される担体から微量汚染物質を排除しないであろう。「からなる(Consisting of)」とは、本発明の組成物を投与するための他の成分の微量元素および実質的な方法ステップを超えるものを除外することを意味する。これらの移行句のそれぞれによって定義された実施形態は、本発明の範囲内である。
【0014】
「生体適合性」とは、一般的に、一般的にレシピエントに無毒であり、対象に重大な有害作用を引き起こさない材料およびその任意の代謝物または分解生成物を表す。
【0015】
「組成物」は、活性剤(単数または複数)(例えば、ベルテポルフィン、C968および/またはCB-839組成物)と、別の化合物または組成物、不活性(例えば、検出可能な薬剤または標識)または活性、例えばアジュバントとの組合せを含むことが意図されている。
【0016】
「対照」とは、比較の目的で実験に使用される代替の対象または試料のことである。対照は「陽性」または「陰性」であり得る。
【0017】
「制御放出」または「持続放出」とは、in vivoで所望の薬物動態プロファイルを達成するために、所与の剤形から薬剤を制御された様式で放出することを意味する。「制御放出」薬剤送達の一態様は、薬剤放出の所望の速度を確立するために、製剤および/または剤形を操作する能力である。
【0018】
「ポリマー」とは、天然または合成の比較的高分子量の有機化合物を表し、その構造は反復の小単位である、モノマーで表すことができる。ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレン、ゴム、セルロースが含まれる。合成ポリマーは、一般的にはモノマーの付加重合または縮合重合によって形成される。「コポリマー」という用語は、2つ以上の異なる反復単位(モノマー残基)から形成されたポリマーを表す。限定されない例として、コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、またはグラフトコポリマーであり得る。また、ある特定の態様では、ブロックコポリマーの様々なブロックセグメントは、それ自体がコポリマーを含み得ることが企図される。「ポリマー」という用語は、天然ポリマー、合成ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマーまたはコポリマー、付加ポリマーなど、ならびに薬学的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロエージェント(proagent)、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、フラグメント、アナログなどを含むがこれに限定されるものではない、あらゆる形態のポリマーを包含する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「調節する」とは、遺伝子発現量、タンパク質発現量、症状、疾患、組成物、状態、または活性の量の変化(増加または減少のいずれか)を生じさせることを意味する。
【0020】
「増加」は、より多くの遺伝子発現、タンパク質発現、症状の量、疾患、組成物、状態、または活性をもたらすあらゆる変化を指すことができる。増加は、状態、症状、活性、組成物における統計的に有意な量の個別の、中位の、または平均的な増加であり得る。したがって、増加は、統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の増加であり得る。
【0021】
「減少」は、より少ない遺伝子発現、タンパク質発現、症状の量、疾患、組成物、状態、または活性をもたらすあらゆる変化を指すことができる。物質はまた、物質を含む遺伝子産物の遺伝的出力が、物質を含まない遺伝子産物の出力よりも相対的に少ない場合に、遺伝子の遺伝的出力を減少させることが理解される。また、例えば、減少とは、以前に観察されていた症状よりも症状が少なくなるような、障害の症状の変化であり得る。減少は、状態、症状、活性、組成物における統計的に有意な量の個別の、中位の、または平均的な減少であり得る。したがって、減少は、統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であり得る。
【0022】
場合によっては、所望の生物学的または医学的応答は、数日、数週間、または数年の期間にわたって組成物の複数の投与量を対象に投与した後に達成される。「薬学的有効量」、「治療有効量」、または「治療有効用量」という用語は、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはグルタミナーゼ阻害組成物のような組成物のその量を含み、それが投与されると、治療される疾患の症状の1つまたは複数の発症を防止し、またはある程度緩和するのに十分な量である。治療有効量は、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはグルタミナーゼ阻害組成物のような組成物、疾患およびその重症度、投与経路、投与時間、排泄率、薬物の組合せ、治療を行う医師の判断、剤形、および治療を受ける対象の年齢、体重、健康状態、性別および/または食生活などによって異なる。本発明の方法の文脈では、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはグルタミナーゼ阻害組成物の薬学的または治療的有効量または用量は、肺高血圧症、肺動脈高血圧症および/または肺血管硬直症を治療するのに十分な量を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「防止する」、「防止すること」、「防止」という用語およびそれらの文法的な変形は、疾患および/またはその付随症状の1つもしくは複数の発生または再発を部分的にもしくは完全に遅らせるか、または排除する方法、または対象が疾患を獲得もしくは再獲得することを妨げる方法、また対象が疾患もしくはその付随症状の1つもしくは複数を獲得または再獲得するリスクを低減する方法を指す。
【0024】
「肺血管疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、肺血管高血圧症を意味し、肺高血圧症(PH)および肺動脈高血圧症(PAH)の両方を含む。肺血管疾患は、肺血管硬直によって引き起こされるか、または肺血管硬直を含むことができる。
【0025】
「塩」とは、本明細書に開示された化合物の双性イオン形態であり、本明細書に定義されているように、水溶性または油溶性または分散性であり、治療的に許容されるものであることを意味する。塩は、化合物の最終的な単離および精製の間に、または遊離塩基の形の適切な化合物と好適な酸とを反応させることによって別々に調製することができる。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000, p.704、および”Handbook of Pharmaceutical Salts : Properties, Selection, and Use,” P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth, Eds., Wiley-VCH, Weinheim, 2002に見出される。塩の例としては、これらに限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、およびカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機酸塩が挙げられる。
【0026】
代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、硫酸水素塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、パラトルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)、およびウンデカン酸塩を含む。また、本明細書に開示された化合物中の塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステリルの塩化物、臭化物、ヨウ化物;ならびにベンジル、フェネチルの臭化物を四級化したものであり得る。治療的に許容される付加塩を形成するために用いられ得る酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸のような無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸のような有機酸を含む。また、塩類は、アルカリ金属またはアルカリ土類イオンと化合物を配位させて形成することもできる。したがって、本明細書に開示された化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などを形成することができる。
【0027】
塩基性付加塩は、カルボキシ基を金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩のような好適な塩基と反応させるか、またはアンモニアもしくは有機第一級、第二級、第三級アミンと反応させることにより、化合物の最終的な単離および精製の間に調製することができる。治療的に許容される塩のカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム、ならびに、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェニルアミン、1-エフェンアミン(ephenamine)、およびN,N’-ジベンジルエチレンジアミンのような非毒性の第四級アミンカチオンを含む。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、およびピペラジンを含む。
【0028】
「プロドラッグ」とは、生理的条件下で、治療的に活性な化合物に変換される化合物を意味する。プロドラッグは、不活性(または著しく活性の低い)形態で投与される。投与されると、プロドラッグは体内(in vivo)で活性化合物に代謝される。Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism : Chemistry, Biochemistry, and Enzymology (Testa, Bernard and Mayer, Joachim M. Wiley-VHCA, Zurich, Switzerland 2003)、に記載されるように、本明細書に開示されるある特定の化合物は、プロドラッグとしても存在し得る。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて化合物を提供する、構造的に修飾された形態の化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境下で化学的または生化学的方法によって化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、好適な酵素または化学試薬を用いて経皮パッチリザーバ(transdermal patch reservoir)内に配置されると、緩やかに化合物に変換され得る。プロドラッグは、状況によっては、化合物、または親薬物よりも投与が容易であるため、多くの場合有用である。例えば、プロドラッグは、経口投与によって生物が利用可能である一方で、親薬物はそうではない。親薬物と比較して、プロドラッグはまた、医薬組成物中での溶解性が改善されている可能性がある。プロドラッグの加水分解的切断または酸化的活性化に依存するものなど、多岐にわたるプロドラッグ誘導体が当技術分野で公知である。プロドラッグの例としては、限定されないが、エステル(「プロドラッグ」)として投与された後、代謝的に加水分解されて活性体であるカルボン酸になる化合物がある。追加の例としては、化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0029】
好適なプロドラッグを選択して調製するための方法は、例えば、以下の、T. Higuchi and V. Stella, “Prodrugs as Novel Delivery Systems,”Vol. 14, ACS Symposium Series, 1975、H. Bundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985、およびBioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に提供される。活性化合物のプロドラッグは、従来のエステルであり得る。プロドラッグとして利用されているいくつかの一般的なエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C~CまたはC~C24)エステル、コレステロールエステル、アシルオキシメチルエステル、カルバメート(carbamates)およびアミノ酸エステルである。好ましくは、本明細書に開示された化合物のプロドラッグは、薬学的に許容される。
【0030】
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むが、これらに限定されない哺乳動物などの動物を含むと本明細書で定義される。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが企図される。広範な態様では、許容される置換基としては、有機化合物の非環状および環状、分岐状および非分岐状、炭素環および複素環、ならびに芳香族および非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、1つまたは複数(例えば、「二置換」、「三置換」などと呼ばれる)である可能性があり、適切な有機化合物については同じである、または異なる可能性がある。本開示の目的のために、窒素および酸素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、有機化合物の許容される置換基によって、いかなる形でも限定されることを意図しない。また、「置換」または「で置換された」という用語には、そのような置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従う、ならびに置換によって安定な化合物、例えば再配列、環状化、脱離などによる変換を自然発生的に受けない化合物が得られる、という暗黙の条件が含まれる。また、本明細書で使用される場合、「置換」または「で置換された」は、1つの置換基が他の置換基と融合した立体配置を包含することを意味する。例えば、アリール基で置換されたアリール基(逆もまた同様)は、一方のアリール基が単一のシグマ結合を介して第2のアリール基に結合していることを意味し、また、2つのアリール基が融合していること、例えば、一方のアルキル基の2つの炭素が他方のアリール基の2つの炭素と共有されていることを意味し得る。
【0032】
「任意の」または「任意に」とは、続いて記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよく、記載には前記事象または状況が起こる場合と起こらない場合とが含まれることを意味する。
【0033】
本出願全体において、各種出版物を参照した。これらの出版物の開示は、それが属する技術分野の現状をより詳細に説明するため、その全体が参照により本出願に組み込まれる。開示された参考文献はまた、この参考文献に基づく文章において考察される、これらに含まれる資料について、本明細書中で個々にかつ具体的に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
B.組成物
本開示の組成物を調製するために使用される成分、ならびに本明細書中で開示される方法において使用される組成物自体が開示される。これらのおよび他の材料が本明細書で開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示され、これらの化合物の種々の個々のおよび集団的な組合せおよび順列の具体的な参考は明示的に開示されないかもしれないが、各々、本明細書で具体的に企図され説明されることが理解される。例えば、特定の治療粒子が開示され、議論され、治療粒子を含むいくつかの分子に対して行われ得るいくつかの修飾が議論される場合、具体的に考えられるのは、反対に具体的に示されない限り、治療粒子の可能なそれぞれかつ全ての組合せおよび順列、ならびに修飾である。したがって、分子A、B、およびCのクラスが開示され、ならびに分子D、E、およびFのクラスが開示され、組合せ分子の例であるA-Dが開示されている場合、それぞれが個別に列挙されていなくても、それぞれが個別におよび集合的に企図される意味の組合せ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると考えられる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも開示されている。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されていると考えられる。この概念を、開示された組成物の作製および使用方法におけるステップを限定されずに含む本出願のすべての態様に適用する。したがって、実施することができる種々のさらなるステップが存在する場合、開示された方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組合せを用いてこれらのさらなる各ステップを実施することができると理解される。
【0035】
肺高血圧症(PH)は、世界的に罹患率が増加しており、世界保健機関の5大分類(WHO PH グループ1~5)に分類されているが、治療の選択肢が不十分である、よく理解されていない血管疾患である。この疾患の治療のために承認された血管拡張薬は十数種類以上あるが、それでも現在の治療法では死亡率が高いままである。病変肺血管系の細胞レベルおよび分子レベルでは、PHは代謝調節異常、前増殖性状態、有害な肺血管の再構築および硬直によって特徴付けられる。したがって、最近では、PHの分子起源を標的とした新規な薬理学的アプローチの開発が行われており、疾患修飾の機会を示すことができる。本明細書では、血管硬直とPHを促進する代謝調節異常との間に重要な分子的関係があることが示されている。すなわち、血管硬直がYAP1/WWRT1共転写因子を機械的活性化(mechanoactivate)し、グルタミナーゼ(GLS1および/またはGLS2)の誘導を介してグルタミノリシスを誘導することで、増殖する肺血管細胞の代謝ニーズを維持し、in vivoでPHを駆動することが明らかになった。
【0036】
本明細書に開示された分子的洞察は、血管硬直のパラダイムを、単に長年の血管機能障害の結果としてではなく、むしろ血管細胞増殖およびPHの発症の特異的な代謝原因として前進させた。重要なことは、YAP1(ベルテポルフィン)および/またはグルタミナーゼ(CB-839および/またはC968)の薬理学的インヒビターにより、PHのモノクロタリンラットモデルにおいてPHが実質的に逆転することが実証されたことである。全身に送達された場合、これらの薬物は、病変した血管細胞の過剰増殖表現型を減少させることにより、PHの血行動態および病理組織学的兆候を改善した。その結果、生体適合性ポリマー、YAP1/WWRT1阻害剤(例えば、ベルテポルフィン)、およびCB-839および/またはC968、またはCB-839もしくはC968の任意の塩、プロドラッグ、または誘導体を含むがこれらに限定されないグルタミナーゼ(GLS1および/またはGLS2を含むがこれらに限定されない)阻害剤、を含む組成物治療ナノ粒子が本明細書に開示される。
【0037】
上記のように、治療粒子はYAP1/WWTR1阻害剤を含む。Yes関連タンパク質(YAP1は本明細書ではYAPとも呼ばれる)およびそのホモログWWRT1(WWドメイン含有転写調節タンパク質1(配列番号2を参照)としても知られ、時にTAZとも呼ばれる)は、細胞増殖およびアポトーシス遺伝子の抑制を調節する転写調節因子である。一部の実施形態では、WWRT1ポリヌクレオチドは、配列番号1の配列を含むWWRT1ポリペプチド、または配列番号1と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、または配列番号1の一部を含むポリペプチドをコードする。配列番号1のWWRT1ポリペプチドは、成熟したWWRT1の未熟な形態または加工前の形態を表してもよく、したがって、配列番号1のWWRT1ポリペプチドの成熟した部分または加工された部分が本明細書に含まれる。
【0038】
「YAP」という用語は、本明細書では、YAP1、Yes関連タンパク質1、またはYap65としても知られるYAPポリペプチドを表し、ヒトでは、YAP1遺伝子によってコードされる。「YAPポリヌクレオチド」という用語は、YAPをコードするポリヌクレオチドを表し、YAP1遺伝子のその全体またはそのフラグメントを含む。一部の実施形態では、YAPポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、以下の、HGNC:16262、Entrez Gene:10413、Ensembl:ENSG00000137693、OMIM:606608、およびUniProtKB:P46937のような、1つまたは複数の公的に利用可能なデータベースで同定されるものである。一部の実施形態では、YAPポリヌクレオチドは、配列番号2の配列を含むYAPポリペプチド、または配列番号2と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、または配列番号2の一部を含むポリペプチドをコードする。配列番号2のYAPポリペプチドは、成熟したYAPの未熟な形態または加工前の形態を表してもよく、したがって、配列番号2のYAPポリペプチドの成熟した部分または加工された部分が本明細書に含まれる。
【0039】
「YAP1/WWRT1阻害剤」という用語は、本明細書では、対象または血管細胞に投与した場合、YAP1および/またはWWRT1の発現を低下させ、および/または構成成分を不活性化する任意の組成物を表す。一部の実施形態では、「YAP1/WWRT1阻害剤」という用語は、本明細書では、対象または血管細胞に投与した場合、YAP1および/またはWWRT1を低下または不活性化し、肺高血圧症、肺動脈高血圧症および/または血管硬直を低減させる結果をもたらす任意の組成物を表す。本明細書で使用される場合、YAP1/WWRT1阻害剤(すなわち、YAP1/WWRT1インヒビター)は、YAP1/WWRT1の転写機能を阻害する任意の低分子、ペプチド、タンパク質、抗体、および/または機能性核酸(siRNA、RNA、アプタマー)を含む。YAP1/WWRT1インヒビターの例としては、これらに限定されないが、ベルテポルフィン、XMU-MP-1(4-((5,10-ジメチル-6-オキソ-6,10-ジヒドロ-5H-ピリミド[5,4-b]チエノ[3,2-e][1,4]ジアゼピン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド)、Super-TDU(SVDDHFAKSLGDTWLQIGGSGNPKTANVPQTVPMRLRKLPDSFFKPPE(配列番号5)、ペプチド17PQTVPF(3-Cl)RLRKNlePASFFKPPE(配列番号6)、CA3(以下に示す)、
【0040】
【化1】
ならびに薬学的に許容される、薬理学的に活性な、塩、エステル、アミド、プロエージェント、プロドラッグ、誘導体、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、フラグメント、および/またはそれらのアナログ、が挙げられる。
【0041】
「ベルテポルフィン」という用語は、本明細書では、化学名3-[(23S,24R)-14-エテニル-5-(3-メトキシ-3-オキソプロピル)-22,23-ビス(メトキシカルボニル)-4,10,15,24-テトラメチル-25,26,27,28-テトラアザヘキサシクロ[16.6.1.13,6.18,11.113,16.019,24]オクタコサ-1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18(25),19,21-ドデカエン-9-イル]プロパン酸を有し、以下に示す、および/または米国特許第5,707,608号明細書、米国特許第5,798,345号明細書、および/または米国特許第5,756,541号明細書に記載されているような化学構造を有する化学的組成物を表す。
【0042】
【化2】
【0043】
グルタミナーゼ(GLS1および/またはGLS2を含むが、これらに限定されない)は、ヒトではK-グルタミナーゼとしても知られており、GLS遺伝子によってコードされる。「GLS1ポリヌクレオチド」という用語は、GLS1をコードするポリヌクレオチドを表し、GLS遺伝子のその全体またはそのフラグメントを含む。一部の実施形態では、GLS1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、以下の、HGNC:4331、Entrez Gene:2744、Ensembl:ENSG00000115419、OMIM:138280、およびUniProtKB:O94925のような、1つまたは複数の公的に利用可能なデータベースで同定されるものである。一部の実施形態では、GLS1ポリヌクレオチドは、配列番号3(KGAアイソフォームとして知られる)の配列を含むGLS1ポリペプチド、または配列番号3と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、もしくは約98%以上の相同性を有するポリペプチド配列、または配列番号3の一部を含むポリペプチドをコードする。配列番号3のGLS1ポリペプチドは、成熟したWWRT1の未熟な形態または加工前の形態を表してもよく、したがって、配列番号3のGLSポリペプチドの成熟した部分または加工された部分が本明細書に含まれる。いくつかの例では、GLS1ポリペプチドは、その配列が配列番号4に記載のように配列番号3と異なるGACアイソフォームであり、以下の通りである。
551-669:VKSVINLLFA...TVHKNLDGLL→HSFGPLDYES...YRMESLGEKS。
【0044】
本明細書の開示は、一態様ではグルタミナーゼ阻害剤、グルタミナーゼインヒビターを含む粒子を提供する。「グルタミナーゼ阻害剤」という用語は、本明細書では、対象または血管細胞に投与した場合、GLS1を低下または不活性化(一部または全部)する任意の組成物を表す。一部の実施形態では、「グルタミナーゼ阻害剤」という用語は、本明細書では、対象または血管細胞に投与した場合、GLS1を低下または不活性化し、また、肺高血圧症、肺動脈高血圧症および/または血管硬直を治療する任意の組成物を表す。グルタミナーゼ阻害組成物の非限定的な例は、CB-839;C968;6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON);BPTES(N,N’-[チオビス(2,1-エタンジイル-1,3,4-チアジアゾール-5,2-ジイル)]ビス-ベンゼンアセトアミド);2-フェニル-N-(5-{4-[5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]ピペラジン-1-イル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;2-フェニル-N-{5-[1-(5-フェニルアセチルアミノ-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル)-ピペリジン-4-イルオキシ}-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル}-アセトアミド;N-{5-[1-(5-アセチルアミノ-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル^-アセトアミド;2-フェニル-N-[5-({1-[5-(2-フェニルアセトアミド),3,4-チアジアゾール-2-イル]アゼチジン-3-イル}オキシ)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]アセトアミド;N-{5-[1-(5-アミノ-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル}-2-フェニルアセトアミド;N-(5-{[1-(5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アゼチジン-3-イル]アミノ}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-2-フェニルアセトアミド;2-(ピリジン-3-イル)-N-(5-(4-((5-(2-(ピリジン-3-イル)アセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;2-シクロプロピル-N-(5-(4-((5-(2-シクロプロピルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;2-フェニル-N-{6-[1-(6-フェニルアセチルアミノ-ピリダジン-3-イル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-ピリダジン-3-イル}-アセトアミド;2-フェニル-N-(5-(4-((5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;(R)-2-フェニル-N-(5-(3-((5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アミノ)ピロリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;N-(5-{[(3S)-1-(5-アセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)ピロリジン-3-イル]アミノ}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;N-(5-{[(3R)-1-(5-アセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)ピロリジン-3-イル]アミノ}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;2-フェニル-N-(5-{[(3R)-1-[5(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]ピロリジン-3-イル]オキシ}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;2-フェニル-N-(5-(3-((5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;N-(5-{[(3R)-1-(5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)ピロリジン-3-イル]オキシ}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-2-フェニルアセトアミド;2-フェニル-N-{5-[(3S)-3-({[5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]オキシ}メチル)ピロリジン-1-イル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}アセトアミド;2-フェニル-N-{5-[(3R)-3-({[5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]オキシ}メチル)ピロリジン-1-イル]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}アセトアミド;(+)-(アンチ)-2-フェニル-N-{5-[3-(5-フェニルアセチルアミノ-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルアミノ)シクロペンチルアミノ]-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル}-アセトアミド;2-フェニル-N-{6-[1-(5-フェニルアセチルアミノ-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル)ピペリジン-4-イルオキシ]-ピリダジン-3-イル}-アセトアミド;N-(6-{1-[5-(2-ピリジン-2-イル-アセチルアミノ)-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル]-ピペリジン-4-イルオキシ}-ピリダジン-3-イル)-2-(3-トリフルオロメトキシ-フェニル)-アセトアミド;2-フェニル-N-{5-[1-(5-フェニルアセチルアミノ-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル)-ピペリジン-4-イルメトキシ]-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル}-アセトアミド;(S)-2-フェニル-N-(5-(3-((5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アミノ)ピロリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;(S)-2-フェニル-N-(5-(3-((5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)オキシ)ピロリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アセトアミド;N-(5-((1-(5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)アゼチジン-3-イル)オキシ)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-2-フェニルアセトアミド;2-(ピリジン-2-イル)-N-{5-[(1-{5-[2-(ピリジン-2-イル)アセトアミド]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}ピペリジン-4-イル)アミノ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}アセトアミド;2-(ピリジン-3-イル)-N-{5-[(1-{5-[2-(ピリジン-3-イル)アセトアミド]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}ピペリジン-4-イル)アミノ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}アセトアミド;2-(ピリジン-2-イル)-N-{5-[(1-{5-[2-(ピリジン-2-イル)アセトアミド]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}ピペリジン-4-イル)オキシ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}アセトアミド;2-(ピリジン-4-イル)-N-{5-[(1-{5-[2-(ピリジン-4-イル)アセトアミド]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}ピペリジン-4-イル)アミノ]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}アセトアミド;2-シクロプロピル-N-[5-(4-{[5-(2-フェニルアセトアミド)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]アミノ}ピペリジン-1-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]アセトアミド;または,グルタミナーゼインヒビターの教示のためにその内容全体を参照により本明細書に組み込む、2015年1月10日に出願された米国特許出願第15/516,002号明細書に記載され、以下に示すような式A:
【0045】
【化3】
(式中、Aは環であり、
およびYは、それぞれ独立して、適切な原子価のNまたはCであり、
およびXは、それぞれ独立して-NH-、-0-、-CH-0-、-NH-CH-、または-N(CH)-CH-であり、XおよびXのうちの少なくとも1つが-CH-0-、-NH-CH-、または-N(CH)-CH-であるとき、-CH-がAに直接接続されていることを条件とし、
aおよびbはそれぞれ独立して0または1であり、
cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり、
およびZはそれぞれ独立して複素環であり、
およびRは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアラルキル、任意に置換されていてもよいシクロアルキル、アミノ、任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されていてもよいアルキルアルコキシ、任意に置換されていてもよいアルキルアリールオキシ、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、または任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキルであり、
およびYがそれぞれCである場合、aは1であり、かつbは1であることを条件とし、
およびYがそれぞれNである場合、aは0であり、かつbは0であることを条件とし、
がNであり、およびYがCである場合、a=0かつb=1であることを条件とし、
がCであり、およびYがNである場合、a=1かつb=0であることを条件とし、
c=0かつd=0である場合、RおよびRは両方ともアミノであり、
cが1であり、かつdが1である場合、RおよびRの両者はアミノではなく、
cが0であり、かつdが1である場合、Rはアミノであり、Rは、任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアラルキル、任意に置換されていてもよいシクロアルキル、任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されていてもよいアルキルアルコキシ、任意に置換されていてもよいアルキルアリールオキシ、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、または任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキルであり、
cが1であり、かつdが0である場合、Rはアミノであり、Rは、任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアラルキル、任意に置換されていてもよいシクロアルキル、任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されていてもよいアルキルアルコキシ、任意に置換されていてもよいアルキルアリールオキシ、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、または任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキルである)を有する他の任意のグルタミナーゼインヒビター、ならびに、本明細書に開示されたグルタミナーゼインヒビターのいずれかの、薬学的に許容される、薬理学的に活性な、塩、エステル、アミド、プロエージェント、プロドラッグ、誘導体、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、フラグメント、および/またはそれらのアナログである。
【0046】
「C968」という用語は、本明細書で、以下に示すような化学構造を有する化学組成物、および/または5-(3-ブロモ-4-(ジメチルアミノ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの名称を有する化学組成物を指す。
【0047】
【化4】
【0048】
「CB-839」という用語は、本明細書で、以下に示すような化学構造を有する化学組成物、および/または米国特許第8,604,016号明細書、および/または米国特許第8,865,718号明細書に記載の化学組成物を指す。
【0049】
【化5】
【0050】
本明細書に開示されているように、YAP1/WWRT1インヒビターとグルタミナーゼインヒビターを添加剤または相乗剤として併用することは、PHに対して特に魅力的である。したがって、PHにおけるグルタミノリシスの機械的活性化の同定は、この破壊的な疾患の新規な臨床治療戦略を開発するための応用研究の舞台を直接開くものである。しかし、YAPとGLS1とは、普遍的に存在し、グルタミン代謝だけでなく、全身の細胞増殖や臓器サイズの制御にも活性であることが既に知られているため、副作用を最小限に抑えながら、PHにおけるYAPとGLS1阻害の効果的な慢性治療を設計するには、全身送達ではなく、局所送達が必要となる。ベルテポルフィンとCB-839との吸入による局所肺送達は、この目標を達成することができる。そのようにするために、肺血管コンパートメント(図1)を標的とするために、単独でまたは組み合わせて、ベルテポルフィンおよびCB-839の吸入および制御放出形態として適用するための生体適合性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)など)薬物送達システムを備える治療粒子が本明細書で生成された。
【0051】
一態様では、生体適合性ポリマーを含む治療粒子が本明細書に開示される。このような生体適合性ポリマーは、YAP1/WWRT1インヒビターおよび/またはグルタミナーゼインヒビターの送達のための構造を提供することができ、また、YAP1/WWRT1阻害剤および/またはグルタミナーゼ阻害剤を組織内にゆっくりと放出するのに役立つことができる。本明細書で使用される場合、生体適合性ポリマーには、これらに限定されないが、多糖;親水性ポリペプチド;ポリ-L-グルタミン酸(PGS)、ガンマ-ポリグルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-セリン、またはポリ-L-リジンなどのポリ(アミノ酸);ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリ(エチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレングリコールおよびポリアルキレンオキシド;ポリ(オキシエチル化ポリオール);ポリ(オレフィンアルコール);ポリビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);ポリ(サッカライド);ポリ(ヒドロキシ酸);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)などのポリヒドロキシ酸;ポリ3-ヒドロキシ酪酸またはポリ4-ヒドロキシ酪酸などのポリヒドロキシアルカノエート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);チロシンポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアミド(合成ポリアミドおよび天然ポリアミドを含む)、ポリペプチドおよびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート);疎水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリリン酸;ポリヒドロキシ吉草酸;ポリアルキレンシュウ酸;ポリアルキレンコハク酸;ポリ(マレイン酸)、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。生体適合性ポリマーはまた、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ塩化ビニルポリスチレン、およびポリビニルピロリドン、それらの誘導体、直鎖状、それらの分岐状のコポリマー、ブロックコポリマー、ならびにそれらの混合物を含むことができる。例示的な生分解性ポリマーには、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ無水物、ポリ(アクリル酸)、ポリグリコリド、ポリ(ウレタン)、ポリカーボネート、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、それらの誘導体、直鎖状および分岐状のコポリマーおよびブロックコポリマー、ならびにそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、粒子は、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、および/またはメタクリル酸PVA(m-PVA)などの生体適合性および/または生分解性ポリエステルまたはポリ無水物を含む。本明細書に開示されたミセルに使用することができるジブロックコポリマーの他の例は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸グリコール)酸、ポリ(乳酸コ-グリコール)酸(PLGA)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体などのポリマーを含む。粒子は、以下のポリエステル:グリコール酸単位(本明細書では「PGA」と呼ばれる)、ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、ポリ-D,L-ラクチドなどの乳酸単位(総称して本明細書では「PLA」と呼ばれる)、およびポリ(e-カプロラクトン)などのカプロラクトン単位(総称して本明細書では「PCL」と呼ばれる)を含むホモポリマー、ならびに例えば、乳酸:グリコール酸の比率で特徴付けられるポリ(乳酸-co-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)の様々な形態のような乳酸とグリコール酸単位を含むコポリマー(本明細書で総称して「PLGA」と呼ばれる)、ならびにポリアクリレートおよびそれらの誘導体のうちの1つまたは複数を含有することができる。例示的なポリマーはまた、ポリエチレングリコール(PEG)と前述のポリエステルとのコポリマー、例えば様々な形態のPLGA-PEGまたはPLA-PEGコポリマーを含む。したがって、生体適合性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)など)、YAP1/WWRT1阻害剤(例えば、ベルテポルフィンなど)、およびグルタミナーゼ阻害剤(例えば、CB-839および/またはC968など)を含む治療粒子が本明細書で開示される。
【0052】
生体適合性ポリマーの空隙率(細孔の大きさまたは数のいずれか)が、粒子内にカプセル化されている任意のYAP1/WWRT1阻害剤および/またはグルタミナーゼ阻害剤の放出速度に影響を与え得ることが理解され、本明細書において企図されている。したがって、治療粒子の製造に使用されるポリマーが多孔質である治療粒子と、治療粒子の製造に使用されるポリマーが非多孔質である治療粒子が本明細書に開示される。一部の態様では、YAP1/WWRT1阻害剤および/またはグルタミナーゼ阻害剤は、異なるポリマーによって二重にカプセル化され得る(すなわち、阻害剤をカプセル化しているポリマーは、次に、異なる分解速度を有し得る別のポリマーによってカプセル化される)。
【0053】
粒子は、意図された使用のために任意の所望のサイズを有していてもよいことが理解され、本明細書において企図されている。例えば、粒子は、約10nm~約50μmの任意の直径を有していてもよい。粒子は、約100nmから約40μm、約500nmから約30μm、約1μmから約20μm、約10μmから約15μmの直径を有することができる。例えば、粒子は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900nm、1、2、3、4、5、6、7、89、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50μmの直径を有することができる。
【0054】
上記のように、生体適合性ポリマーのポリマーメイクアップ、空隙率、およびサイズは、粒子中のYAP1/WWRT1インヒビターおよび/またはグルタミナーゼインヒビターの放出速度に影響を及ぼす可能性がある。一態様では、YAP1/WWRT1インヒビターおよび/またはグルタミナーゼインヒビターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、60、72時間、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、45、60、75、90、120、150、または180日間の期間にわたって粒子から放出され得ることが企図される。一部の実施形態では、粒子の大きさおよび空隙率は、ベルテポルフィンおよびグルタミナーゼインヒビターが1日から180日以内、より具体的には約1日から約30日の間、さらに具体的には約1日から約7日の間、最も具体的には約1日から約3日の間に放出され得るような、高速放出速度を可能にする。最後に、一部の実施形態では、グルタミナーゼインヒビターと併せた粒子のサイズは、肺における粒子の免疫媒介クリアランスを防止することができる。
【0055】
一態様では、本明細書に開示される治療粒子は、YAP1/WWRT1阻害剤とグルタミナーゼ阻害剤の両方を含み得るが、有効な治療であるためには、グルタミナーゼ阻害剤がYAP1/WWRT1阻害剤と同じ治療粒子中に投与される必要はないことが理解され、本明細書において企図されている。したがって、生体適合性ポリマーおよびYAP1/WWRT1阻害剤を含むが、グルタミナーゼ阻害剤は含まない治療粒子(第1の治療薬剤)が本明細書で開示される。また、生体適合性ポリマーおよびグルタミナーゼ阻害剤を含むが、YAP1/WWRT1阻害剤は含まない治療粒子(第2の治療薬剤)が本明細書で開示される。別々の治療粒子上にあるように設計されている場合、第1および第2の治療粒子は、第1および第2の治療粒子の両方を単回投与するために同じ治療組成物に製剤化され得る(すなわち、単一の製剤として)ことが理解される。したがって、一態様では、生体適合性ポリマー、YAP1/WWRT1阻害剤、およびグルタミナーゼ阻害剤を含む治療粒子を含む医薬組成物が本明細書で開示される。あるいは、生体適合性ポリマーとYAP1/WWRT1阻害剤とを含む第1の治療粒子と、生体適合性ポリマーとグルタミナーゼ阻害剤とを含む第2の治療粒子とを含む医薬組成物が本明細書で開示される。また、生体適合性ポリマーおよびYAP1/WWRT1阻害剤またはグルタミナーゼ阻害剤を含む治療粒子を含む医薬組成物も開示される。
【0056】
本明細書に開示された治療粒子は、肺疾患の治療、低減、阻害、および/または防止に用いることができる。一態様では、肺疾患(例えば、肺血管疾患、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、肺硬直症、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、肺気腫、喘息、肺塞栓症、急性肺疾患、敗血症、結核、サルコイドーシス、微生物感染による肺炎症(例えば、肺炎およびインフルエンザなど)、または肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がんなど))の治療を必要とする対象における肺疾患を治療する、阻害する、低減するおよび/または防止する方法であって、本明細書に開示された生体適合性ポリマー、YAP1/WWRT1阻害剤、および/またはグルタミナーゼ阻害剤を含む治療粒子のいずれかの治療有効量を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示される。
【0057】
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」という用語およびそれらの文法的変形は、本明細書で使用される場合、疾患の1つまたは複数の付随症状の強度を部分的にまたは完全に遅延させ、緩和し、軽減し、または低減し、および/または疾患の1つまたは複数の原因を緩和し、軽減し、または妨げることを含む。本発明に記載の治療は、防止的に、予防的に、緩和的に、または治療的に適用してもよい。予防的治療は、発生前(例えば、明らかな疾患の徴候が現れる前)、発生初期(例えば、疾患の初期徴候および症状が現れた時点)、または疾患の発症が確立した後に、対象者に投与される。予防的投与は、感染の症状が現れる前に数日から数年にわたって行われることがある。場合によっては、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」という用語およびそれらの文法的変形は、対象の治療前と比較して、または一般集団または研究集団におけるそのような症状の発生率と比較して、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、および/または血管硬直を部分的にまたは完全に低減させることを含む。5%、10%、20%、30%、40%以上の低減が可能である。
【0058】
対象への「投与」には、治療粒子と、粒子上に送達された任意のYAP1/WWRT1阻害剤および/またはグルタミナーゼ阻害剤とを、前記粒子と併用して、対象へ導入または送達する任意の経路(同時投与、同時投与または逐次投与を含む)が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻内、直腸、経膣、吸入、埋め込みリザーバ経由、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、クモ膜下、腹腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術)などを含む任意の好適な経路で実施することができる。本明細書で使用される「同時投与(Concurrent administration)」、「併用投与(administration in combination)」、「同時投与(simultaneous administration)」または「同時に投与された(administered simultaneously)」とは、化合物が同じ時点で、または実質的に互いに直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、観察された結果が、同じ時点で化合物を投与した場合に達成された結果と区別がつかないように、十分に近い時点で投与される。「全身投与」とは、例えば、循環器系またはリンパ系への入口を介して、対象の身体の広範な領域(例えば、身体の50%超)に薬剤を導入または送達する経路を介して、対象に薬剤を導入または送達することを指す。これに対して、「局所投与」とは、領域または投与点に直接隣接する領域に薬剤を導入または送達する経路を介して対象に薬剤を導入または送達することを表し、治療的に有意な量の薬剤を全身に導入することはない。本明細書で使用される場合、「局所鼻内投与」とは、組成物の鼻および鼻道への一方または両方の鼻孔を介した送達を意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による送達、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化を介した送達を含み得る。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴機構による送達を介して鼻または口を介し得る。送達はまた、挿管を介して呼吸器系(例えば、肺)の任意の領域に直接行うことができる。例えば、局所的に投与された薬剤は、投与点の局所近傍では容易に検出可能であるが、対象の身体の遠位部分では検出されないか、または無視できる量で検出可能である。投与には、自己投与と他者による投与が含まれる。
【0059】
一態様では、本明細書に開示される生体適合性ポリマー、YAP1/WWRT1阻害剤、および/またはグルタミナーゼ阻害剤を含む治療粒子のいずれかを対象に投与することを含む、対象における肺疾患を治療/低減/防止/阻害する開示された方法は、肺疾患の治療、低減、防止、および/または阻害のために適切な任意の頻度で治療粒子を投与することを含み得る。例えば、治療粒子は、少なくとも12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48時間に1回、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日に1回、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月毎に1回患者に投与され得る。一態様では、粒子は、少なくとも週に1、2、3、4、5、6、7回投与される。
【0060】
治療粒子は、YAP1/WWRT1インヒビターとグルタミナーゼインヒビターとのいずれか、またはYAP1/WWRT1インヒビターとグルタミナーゼインヒビターとの両方を含むように製剤化され得ることが理解され、本明細書において企図されている。治療粒子が、YAP1/WWRT1インヒビターまたはグルタミナーゼインヒビターのいずれかを含む場合、生体適合性ポリマーとYAP1/WWRT1阻害剤を含むがグルタミナーゼ阻害剤は含まない治療粒子を、生体適合性ポリマーとグルタミナーゼ阻害剤とを含むがYAP1/WWRT1阻害剤は含まない第2の治療粒子と一緒に組成物中に製剤化して単回投与するか、または代替的に、第1および第2の治療粒子を別々に製剤化して同時または逐次投与する、肺疾患の治療方法が本明細書で企図される。一態様では、生体適合性ポリマーおよびYAP1/WWRT1阻害剤を含む第1の治療粒子が、生体適合性ポリマーおよびグルタミナーゼ阻害剤を含む第2の治療粒子とは別に製剤化される場合、第1の治療薬および第2の治療薬の投与順序がいずれであるかは問題ではないことが理解され、本明細書において企図されている。一態様では、第2の治療薬は、第1の治療薬の投与後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55秒、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、42、48、60、72時間に投与され得る(第2の治療薬を先に投与した場合はその逆も可である)。
【0061】
一態様では、有効な治療であるためには、グルタミナーゼ阻害剤がYAP1/WWRT1阻害剤と同じ治療粒子中に投与される必要はないことが理解され、本明細書において企図されている。上記のように、グルタミナーゼ阻害剤は、単独の組成物として、またはグルタミナーゼインヒビターを含むがYAP1/WWRT1インヒビターは含まない第2の治療粒子の一部としてのいずれかで投与され得る。組成物中の、または第2の治療粒子としてのグルタミナーゼ阻害剤は、全身的または局所的に(すなわち、本明細書に開示される任意の肺への投与経路によって肺に)投与することができる。
【0062】
1.医薬品担体/医薬製品の送達
上記のように、組成物はまた、薬学的に許容される担体中でin vivoで投与することができる。「薬学的に許容される」とは、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、核酸またはベクターとともに、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、対象に投与される場合がある。担体は、当業者には周知のように、当然のことながら、活性成分のいかなる分解も最小限に抑え、対象におけるいかなる有害な副作用も最小限に抑えるように選択されるであろう。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は一般に、成分が毒性学的および製造試験の必要な基準を満たしていること、または米国食品医薬品局が作成した非活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)に含まれていることを意味する。
【0063】
「薬学的に許容される担体」という用語は、一般に安全で非毒性である医薬組成物を調製するのに有用な担体または賦形剤を意味し、獣医学的および/またはヒトの医薬的使用または治療的使用に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、および油/水または水/油エマルジョンのようなエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤のような標準的な薬学的担体のいずれかを包含する。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、医薬製剤で使用するための当技術分野で周知であり、以下にさらに説明する任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または他の材料を包含する。「担体」という用語は、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(油/水または水/油エマルジョンなど)および/または様々なタイプの湿潤剤、ならびにポリ(乳酸-co-グリコール酸)のような、本明細書ではPLGAとも呼ばれる生体適合性ポリマーを含む。また、医薬組成物は、保存剤を含むことができる。本明細書および特許請求の範囲で使用される「薬剤学的に許容される担体」は、そのような担体の1つおよび2つ以上を含む。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、医薬製剤で使用するための当技術分野で周知であり、以下にさらに説明する任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または他の材料に限定されないがこれらを包含する。
【0064】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微小粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれている)であってもよい。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して、特定の細胞型を標的とする場合がある。以下の参考文献は、腫瘍組織に特定のタンパク質を標的とするための本技術の使用例である(Senter, et al., Bioconjugate Chem., 2:447-451, (1991)、Bagshawe, K.D., Br. J. Cancer, 60:275-281, (1989)、Bagshawe, et al., Br. J. Cancer, 58:700-703, (1988)、Senter, et al., Bioconjugate Chem., 4:3-9, (1993)、Battelli, et al., Cancer Immunol. Immunother., 35:421-425, (1992)、Pietersz and McKenzie, Immunolog. Reviews, 129:57-80, (1992)、およびRoffler, et al., Biochem. Pharmacol, 42:2062-2065, (1991))。「ステルス(stealth)」などのビヒクルおよび他の抗体コンジュゲートリポソーム(結腸癌への脂質媒介薬物ターゲティングを含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介ターゲティング、リンパ球指向腫瘍ターゲティングおよびin vivoのマウスグリオーマ細胞に高度に特異的な治療レトロウイルスターゲティング。以下の参考文献は、腫瘍組織に特定のタンパク質を標的とするための本技術の使用例である(Hughes et al., Cancer Research, 49:6214-6220, (1989)、およびLitzinger and Huang, Biochimica et Biophysica Acta, 1104:179-187, (1992))。一般的に、受容体は、構成的またはリガンド誘導性のどちらかのエンドサイトーシスの経路に含まれる。これらの受容体は、クラスリンでコートされた孔の中に集められ、クラスリンでコーティングされたビヒクルを通して細胞に侵入し、受容体が選別される酸性化エンドソームを通過し、次いで、細胞表面へ再生するか、細胞内に貯蔵されるか、またはリソソームにおいて分解される。内在化経路は、栄養素取込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見進入、リガンドの解離および分解、ならびに受容体レベル調節などの様々な機能に役立つ。多くの受容体が、細胞型、受容体濃度、リガンド型、リガンド価およびリガンド濃度に応じて1つより多くの細胞内経路に依存する。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子機構および細胞機構は、概説されている(Brown and Greene, DNA and Cell Biology 10:6, 399-409 (1991))。
【0065】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、治療的に使用され得る。
【0066】
好適な担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed. A. R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA 1995に記載されている。典型的には、その製剤を等張とするため、製剤に適切量の薬学的に許容される塩を使用する。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液pHは、好ましくは約5から約8、およびより好ましくは約7から約7.5である。さらに担体としては、抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどであり、そのマトリックスが形状化された製品の形態で、たとえばフイルム、リポソームまたは微小粒子である、持続放出調製物が挙げられる。ある種の担体が、例えば、投与される組成物の投与経路および濃度に応じて、より好ましいものであり得ることは、当業者には明らかであろう。
【0067】
医薬担体は当業者に公知である。これらは、最も典型的に、薬物をヒトに投与するための標準的担体であり、滅菌水、生理食塩水および生理学的pHの緩衝溶液のような溶液が挙げられる。組成物は、筋肉内、皮下に投与され得る。他の化合物は、当業者によって使用される標準的手法にしたがって投与される。
【0068】
医薬組成物は、最適な分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤などを含んでいてもよい。また、医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1つまたは複数の活性成分を含んでいてもよい。
【0069】
医薬組成物は、局所治療または全身治療が望ましいかに応じて、また、治療する範囲に応じて、いくつかの方法で投与することができる。投与は、局所的に(眼内に、膣内に、直腸内に、鼻腔内に、を含む)、経口的に、吸入により、または、非経口的に、例えば、点滴静注、皮下注射、腹腔内注射、もしくは筋肉内注射により行ってもよい。開示された抗体は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、腔内(intracavity)投与、経皮投与が可能である。
【0070】
非経口投与のための調製物としては、滅菌水溶液もしくは非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオレエートなどの注射用有機エステルである。水性担体は、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれ、生理食塩水および緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液または不揮発性油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養補充物、電解質補充物(例えば、リンガーデキストロースに基づくもの)などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化物質、キレート剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加物が存在してもよい。
【0071】
局所投与のための製剤は、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴薬、坐薬、スプレー剤、液剤、および散剤を含んでもよい。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤なども必要かまたは望ましい場合がある。
【0072】
経口投与の組成物には、散剤もしくは顆粒剤、水もしくは非水性媒体における懸濁剤または液剤、カプセル剤、サシェ剤もしくは錠剤が含まれる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合がある。
【0073】
いくつかの組成物は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの有機酸、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、ならびにモノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、およびアリールアミン、置換エタノールアミンなどの有機塩基と反応させることにより形成される、薬学的に許容される酸付加塩または塩基付加塩として潜在的に投与されてもよい。
【0074】
b)治療用途
組成物を投与するための有効投与量およびスケジュールは経験的に決定されてもよく、そのような決定を行うことは当技術分野の範囲内である。組成物を投与するための投与量の範囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果をもたらすのに十分な大きさのものである。投与量は、望まない交差反応、アナフィラキシー反応などのような有害な副作用を引き起こすほど大きなものであってはならない。一般に、この投与量は、年齢、状態、性別、患者における疾患の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるか否かに伴って変化し、当業者によって決定され得る。投与量は、何らかの禁忌の事象において、個々の医師によって調整され得る。投与量は変化する可能性があり、1日に1回または複数の用量で、1日または数日投与され得る。手引きは、所定のクラスの医薬製品のための適切な投与量についての文献において見出され得る。例えば、抗体の適切な用量を選択する際の手引きは、抗体の治療用途に関する文献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies, Ferrone et al., eds., Noges Publications, Park Ridge, N.J., (1985) ch.22 and pp.303-357、Smith et al., Antibodies in Human Diagnosis and Therapy, Haber et al., eds., Raven Press, New York (1977) pp. 365-389に見出され得る。単独で使用される抗体の典型的な1日の投与量は、上記の要因にもよるが、1日あたり、体重あたりで約1μg/kgから最大で100mg/kg以上の範囲になることがある。
【0075】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を得るために十分な量の薬剤を指す。「効果がある」とされる薬剤の量は、対象の年齢および一般的な状態、特定の薬剤(単数または複数)など、多くの要因により、対象によって変わる。したがって、定量化された「有効量」を指定できるとは限らない。しかし、どのような対象の場合でも、適切な「有効量」は、日常的な実験を用いて、当業者によって決定され得る。また、本明細書で使用される場合、および特に明記されていない限り、薬剤の「有効量」は、治療有効量と予防上有効な量の両方をカバーする量を指すこともできる。治療効果を得るために必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、体重などの要因によって異なる場合がある。投薬計画は、最適な治療応答をもたらすように調整することができる。例えば、いくつかに分けた用量を毎日投与してもよく、または治療状況の必要性によって指定される通りに比例して用量を低減してもよい。
【0076】
「薬学的有効量」、「治療有効量」、または「治療有効用量」という用語は、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはGLS1阻害組成物のような組成物のその量を含み、それが投与されると、治療される疾患の症状の1つまたは複数の発症を防止し、またはある程度緩和するのに十分な量である。治療有効量は、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはGLS1阻害組成物のような組成物、疾患およびその重症度、投与経路、投与時間、排泄率、薬剤の組合せ、治療を行う医師の判断、剤形、および治療を受ける対象の年齢、体重、健康状態、性別および/または食生活などによって異なる。本方法の文脈では、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはグルタミナーゼ阻害組成物の薬学的または治療有効量または用量は、肺高血圧症、肺動脈高血圧症および/または肺血管硬直症など、また肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、肺気腫、喘息、肺塞栓症、急性肺疾患、敗血症、結核、サルコイドーシス、微生物感染による肺炎症(例えば、肺炎およびインフルエンザなど)、および肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がんなど)を含むがこれに限定されるものではない肺疾患を治療するのに十分な量を含む。
【0077】
「薬理学的に活性」(または単に「活性」)は、「薬理学的に活性な」誘導体またはアナログのように、親化合物と同じタイプの薬理学的活性を有し、かつほぼ同等の程度の薬理学的活性を有する誘導体またはアナログ(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝物、異性体、フラグメントなど)を指すことができる。
【0078】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療有効量」または「治療有効用量」とは、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。一部の実施形態では、所望の治療結果は、I型糖尿病の管理である。一部の実施形態では、所望の治療結果は、肥満の管理である。所与の治療薬の治療有効量は、一般的に、治療される障害または疾患の種類および重症度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因に関連して変化する。この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するのに有効な治療薬の量、または治療薬の送達速度(例えば、一定時間にわたる量)を指すこともできる。正確な、望ましい治療効果は、治療すべき状態、対象の耐性、投与されるべき薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療薬の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、および当業者に理解される他の様々な要因に応じて変化する。場合によっては、所望の生物学的または医学的応答は、数日、数週間、または数年の期間にわたって組成物の複数の投与量を対象に投与した後に達成される。
【0079】
「薬学的有効量」、「治療有効量」、または「治療有効用量」という用語は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医によって求められる組織、システム、動物、またはヒトの生物学的もしくは医学的応答を引き出す、YAP1/WWRT1阻害組成物および/またはGLS1阻害組成物のような組成物の量を指す。一部の実施形態では、所望の応答は、肺高血圧症、肺動脈高血圧症および/または肺血管硬直症のような血管疾患の治療である。そのような治療は、右室収縮期圧(RVSP)、右室肥大(フルトン指数、RV/LV+S)、血管再構築、および細動脈筋化(arteriolar muscularization)のうちの1つまたは複数を決定することによって定量化することができる。
【0080】
また、上記が本発明の好ましい実施形態に関するものであり、その中で数多くの変更が、本発明の範囲から逸脱することなく実施され得ることも理解されるべきである。以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、実施例は何ら本発明の範囲に対する限定としては解釈されない。反対に、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明の記載を読んだ後に当業者に提示され得る様々な他の実施形態、変更、およびそれらの均等物に頼ることができるということは、明らかに理解されよう。本明細書で参照したすべての特許、特許出願、および出版物は、すべての目的のためにその内容全体を参照により組み込む。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.生体適合性ポリマー、YAP1/WWRT1阻害剤、およびグルタミナーゼ阻害剤を含む治療粒子。
2.前記生体適合性ポリマーがポリ(乳酸-co-グリコール)酸を含む、上記1に記載の治療粒子。
3.ポリ(乳酸-co-グリコール)酸組成物が多孔質構造である、上記2に記載の治療粒子。
4.GLS1阻害組成物が、CB-839、またはその塩、プロドラッグもしくは誘導体である、上記1から3のいずれかに記載の治療粒子。
5.GLS1阻害組成物が、C968、またはその塩、プロドラッグもしくは誘導体である、上記1から3のいずれかに記載の治療粒子。
6.YAP1/WWRT1阻害組成物が、ベルテポルフィン、またはその塩、プロドラッグもしくは誘導体である、上記1から5のいずれかに記載の治療粒子。
7.約1~5マイクロメートルのサイズである、上記1から6のいずれかに記載の治療粒子。
8.前記YAP1/WWRT1阻害剤およびグルタミナーゼ阻害剤が、対象に投与して約1日~約3日後に前記ポリ(乳酸-co-グリコール)酸組成物から放出される、上記1から7のいずれかに記載の治療粒子。
9.肺疾患の治療を必要とする対象における肺疾患を治療する方法であって、上記1から8のいずれかに記載の治療粒子を前記対象に投与することを含む方法。
10.前記肺疾患が、肺血管疾患、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、肺硬直症、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、肺気腫、喘息、肺塞栓症、急性肺疾患、敗血症、結核、サルコイドーシス、または肺がんを含む、上記9の肺疾患を治療する方法。
【実施例
【0081】
C.実施例
以下の実施例は、本明細書で主張する化合物、組成物、物品、装置および/または方法をいかに製造し、評価するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されており、純粋に例示的なものであることを意図しており、開示を限定することを意図していない。数値(例えば量、温度など)に関する正確性を確実にするための努力がなされてきたが、いくつかの誤差および偏差が説明されるべきである。特に断らない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0082】
1.吸入PLGAカプセル化粒子を介したYAP1およびGLS1の同時薬理学的阻害は肺高血圧症を改善する
肺高血圧症(PH)は、世界的に罹患率が増加しているが、治療の選択肢が不十分である、よく理解されていない血管疾患である。この疾患の治療のために承認された血管拡張薬は十数種類以上あるが、それでも現在の治療法では死亡率が高いままである。病変肺血管系の細胞レベルおよび分子レベルでは、PHは代謝調節異常、前増殖性状態、有害な肺血管の再構築および硬直によって特徴付けられる。したがって、最近では、PHの分子起源を標的とした新規な薬理学的アプローチの開発が行われており、疾患修飾の機会を示すことができると考えられる。本明細書では、血管硬直とPHを促進する代謝調節異常との間に重要な分子的関係があることが示されている。すなわち、血管硬直がYAP1/WWRT1共転写因子を機械的活性化し、グルタミナーゼ(GLS1)の誘導を介してグルタミノリシスを誘導することで、増殖する肺血管細胞の代謝ニーズを維持し、in vivoでPHを誘導することが明らかになった。
【0083】
これらの分子的洞察は、血管硬直のパラダイムを、単に長年の血管機能障害の結果としてではなく、むしろ血管細胞増殖およびPHの発症の特異的な代謝原因として前進させた。重要なことは、YAP1(ベルテポルフィン)およびグルタミナーゼ(例えば、CB-839および/またはC968など)の薬理学的インヒビターにより、PHのモノクロタリンラットモデルにおいてPHが実質的に逆転することが実証されたことである。全身に送達された場合、これらの薬物は、病変した血管細胞の過剰増殖表現型を減少させることにより、PHの血行動態および病理組織学的兆候を改善した。YAPシグナル伝達とグルタミン代謝とがPHの病因において直接的に重要であることを強調する追加の研究結果が独立して報告されている。具体的には、YAPインヒビターであるベルテポルフィンは、加齢黄斑変性の治療薬として既にFDAに承認されている薬物である。CB-839は、腎臓がんを対象に臨床試験中のグルタミナーゼインヒビターである(臨床試験NCT02071862)。したがって、ベルテポルフィンとCB-839とは、ヒトにおけるPHの治療に転用するための有望な候補である。添加剤または相乗剤としてのそれらの併用は、PHに対して特に魅力的である。したがって、PHにおけるグルタミノリシスの機械的活性化の同定は、この破壊的な疾患の新規な臨床治療戦略を開発するための応用研究の舞台を直接開くものである。
【0084】
しかし、YAP1とGLS1とは、普遍的に存在し、グルタミン代謝だけでなく、全身の細胞増殖や臓器サイズの制御にも活性であることが既に知られているため、副作用を最小限に抑えながら、PHにおけるYAP1とGLS1阻害の効果的な慢性治療を設計するには、全身送達ではなく、局所送達が必要となる。ベルテポルフィンとCB-839との吸入による局所肺送達は、この目標を達成することができる。そのようにするために、肺血管コンパートメント(図1)を標的とするために、単独でまたは組み合わせて、ベルテポルフィンおよびCB-839の吸入および制御放出形態として適用するためのポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)薬物送達システムが本明細書で生成された。
【0085】
a)材料および方法
(1)PLGA微小粒子作製
PLGA微小粒子は、単一のエマルジョン-エバポレーション技術を用いて作製した。全ての微小粒子には、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA-50:50 ラクチド:グリコリド、エステル末端)(MW:38,000~54,000)(粘度:0.45~0.6dL/g)(Sigma Aldrich、MO)を利用した。具体的には、50mgのPLGAを4mlのジクロロメタン(DCM-Sigma Aldrich、MO)に溶解した。単剤のカプセル化のために、CB-839またはベルテポルフィン4mgを、PLGAを含有するDCMに直接溶解した。組合せ薬物のカプセル化の場合、CB-839およびベルテポルフィンのそれぞれ4mgを、PLGAを含むDCMに添加した。IR780微小粒子の場合、5mgのIR780を、PLGAを含有するDCM溶液に添加した。ブランク粒子生成の場合は、DCMに溶解したPLGAをそのまま使用した。次に、この溶液を2%ポリビニルアルコール(PVA、MW約25,000、98%加水分解;PolySciences)60mlに添加し、10,000rpmで3分間ホモジナイズした(L4RT-A、Silverson、Fisher Scientficを通じて入手した)。次いで、ホモジナイズした混合物を、撹拌プレート上の1%PVAの40mlに添加し、DCMを蒸発させるために2時間放置した。2時間後、微小粒子を遠心分離(2000g、5分、4℃)し、脱イオン水で5回洗浄し、48時間凍結乾燥した(Virtis Benchtop K凍結乾燥機、Gardiner、NY)。
【0086】
(2)微小粒子の特性評価、カプセル化と放出速度の評価。
微小粒子の形態を、走査型電子顕微鏡(SEM-JEOL JSM6510)を用いて特徴付け、ブランク微小粒子の平均サイズを動的光散乱(Malvern,Worcestershire,UK)を用いて決定した。PLGA微小粒子からの薬物の放出速度は、1mgの微小粒子を、薬物とともにまたはなしで、1mLの0.2%tween80(Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)中、37℃で回転ローテーター上の遠心チューブ中でインキュベートすることによって決定した。10日間毎日、チューブを2000gで5分間遠心分離し、上清0.8mLを回収して-20℃で凍結し、0.8mLの新鮮な0.2%tween80とチューブ内で置き換えた。次いでこれらのチューブをインキュベーターへ戻した。
【0087】
ベルテポルフィンの濃度を評価するために、UV-可視光分光プレートリーダー(SpectraMax、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を利用した。吸光スペクトルは、ベルテポルフィンの最大吸収ピークが440nmであることを示した。この波長を使用して標準曲線をプロットし、微小粒子から放出されたベルテポルフィンの濃度を決定した。微小粒子から放出されたベルテポルフィンの累積量を定量化し、カプセル化効率百分率および充填百分率を決定するために利用した。
【0088】
CB-839の濃度を評価するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC Ultimate 3000、Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)プロトコールを開発した。具体的には、18Cカラム、5μm、4.6×150mmを利用し、80:20の水:メタノールの移動相で、1mL/分の流量で10分間、210nmの吸光度で記録した。0.2%のtween80中のCB-839の標準曲線を作成し、経時的に放出される薬物の濃度を定量するために利用した。微小粒子から放出されたCB-839の累積量を、カプセル化効率百分率および充填百分率を決定するために利用した。
【0089】
(3)細胞培養。
ヒト初代肺動脈内皮細胞(PAEC)をEGM-2細胞培養培地(Lonza)で増殖させ、3~6継代で実験を行った。
【0090】
(4)動物。
モノクロタリン処理ラット:雄のSprague-Dawleyラット(10~14週齢)に、時間0で60mg/kgのモノクロタリンを注射した。曝露後0~4週間目、右心カテーテル法を行い、続いて以下に記載されているように、RNA抽出またはOCT包埋のために肺組織の採取を行った(セクション:組織採取)。0、7、14日目に、イソフルラン麻酔ラットを用いて、生理食塩水対PLGA微小粒子(生理食塩水0.25mL中に1用量あたり1mgの微小粒子)の気管内エアロゾル投与を行った。
【0091】
(5)ラット肺の組織採取。
生理的測定後、直接右心室穿刺により、心肺組織を採取する前に、肺血管を1ccの生理食塩水で静かに洗い流し、血球の大部分を除去した。心臓を取り出し、続いて右心室(RV)と左心室+中隔(LV+S)の切開と計量を行った。臓器を、次いで、組織学的調製のために採取する、またはその後のホモジナイズおよびRNAおよび/またはタンパク質の抽出のために液体N2中で瞬間凍結した。特に肺組織をさらに処理するために、切除する前に、肺を、右心室カニューレ挿入を介して一定の低圧(約10mmHg)でPBSで洗い流し、続いてOCT(Sigma Aldrich)を用い、約20cm H2Oの圧力で左肺の気管膨張を行った。肺組織をOCTに包埋し、5μmのクライオスタット切片にスライスされる前に、-80℃で保存するために液体Nの上で凍結した。
【0092】
(6)肺切片の凍結染色および共焦点免疫蛍光。
クライオスタット切片を、OCT包埋肺組織から5~10μmで切断し、ゼラチンコーティング済み組織学的スライドに乗せた。スライドを10~20分間室温で解凍し、10分間洗浄緩衝液中で戻した。すべての切片を10%ロバ血清中でブロッキングし、一次抗体およびAlexa 488、568および647コンジュゲート二次抗体(Thermo Fisher Scientific)に免疫蛍光のために曝露した。DAPIはSigma-Aldrichより入手した。α-SMAに対する一次抗体(ab32575;1/1000およびab21027;1/300)はAbcamから購入した。PCNAに対する一次抗体(13-3900、1/100)はThermo Fisher Scientificから購入した。写真はNikon A1共焦点顕微鏡を使用して得た。気管支気道に関連していない、所与の組織切片(>10血管/切片)に存在する小肺血管(Small pulmonary vessel)(<100μm直径)を分析のために選択した(N>5匹動物/グループ)。染色の強度は、ImageJソフトウェア(NIH)を使用して定量した。血管の厚さを計算した。すべての測定は、条件を盲検化して行った。
【0093】
(7)ピクロシリウスレッド染色および定量。
ピクロシリウスレッド染色は、0.1%ピクロシリウスレッド(Direct Red80、Sigma-Aldrich)で染色された5μmの切片を使用して達成され、線維性コラーゲンを明らかにするためにWeigertのヘマトキシリンで対比染色した。次いで、切片を、分析器および互いに平行及び直交に配向した偏光子を使用して連続的に画像化した。顕微鏡条件(ランプの明るさ、コンデンサー開口部、対物レンズ、ズーム、露光時間、およびゲインパラメータ)は、すべての試料の撮画を通して維持された。線維性構造を表す直交配向偏光子を通過する光のみを含む(すなわち、黒い背景からの残留光を除く)各実験の適切な対照切片に最小の閾値を設定した。閾値は、各実験内のすべての条件にわたってすべての画像に対して維持された。閾値化された光によってカバーされた転写領域の面積を計算し、条件毎に少なくとも10個の切片/血管を共に平均化した(NIH ImageJソフトウェア)。
【0094】
(8)肺全体の蛍光イメージング。
IR780色素をカプセル化したPLGA微小粒子またはブランク微小粒子の合計1mgを、イソフルラン麻酔下のラットに気管内投与した。ラットを7日間ケージに戻した。7日後、ラットの別のセットに、IR780色素をカプセル化したPLGA微小粒子の1mgを気管内投与した。すべてのラットを屠殺し、肺を採取した。肺の中の蛍光を、ICG励起および発光フィルターを使用するIVIS200(Perkin Elmer)を使用して決定した。
【0095】
(9)統計。
細胞培養実験は、各反復について、少なくとも3回、少なくとも3連で行った。実験群と対照群との平均値の間の少なくとも20%の差を、検出力80%、標準偏差10%で測定するために、各群の動物数を算出した。本研究のための固有の患者試料数は、主に臨床的な利用可能性によって決定された。げっ歯類組織のin situ発現/組織学的解析、およびマウスとラットの肺血管血行動態を盲検で実施した。培養細胞を使用したin vitro実験またはin situでの定量のための数値定量は、平均値±標準偏差(SD)を表す。げっ歯類またはヒト試薬を使用した生理学的実験のための数値定量は、平均値±平均の標準誤差(SEM)を表す。顕微鏡写真は、関連する各コホートでの実験の代表的なものである。データ分布の正規性は、Shapiro Wilk検定によって決定した。対の試料は、正規分布データのための両側Studentのt検定で比較したが、マン・ホイットニーUノンパラメトリック検定を、非正規分布データのために使用した。グループ間の比較については、一元配置ANOVAおよびポストホック(post-hoc)Tukey検定を実施した。0.05未満のP値は有意と考えられた。
【0096】
(10)試験の承認。
動物実験はすべてピッツバーグ大学の承認を得た。
【0097】
b)結果
(1)PLGA微小粒子は、ベルテポルフィンとCB-839をカプセル化し、同時に放出する。
ベルテポルフィンとCB-839とを放出し、YAP1/WWRT1とGLS1とを同時にブロックすることができる制御放出製剤を開発するために、PLGAベースの微小粒子を生成した。具体的には、水中油型エマルジョンを利用し、ベルテポルフィン単独、CB-839単独、またはベルテポルフィンとCB-839を一緒に油相に直接溶解して微小粒子を生成した。微小粒子のサイズは、肺に最適な沈着のために1~5μmの範囲(走査型電子顕微鏡と動的光散乱-図2A、2Bとを使用して観察されるように)であるように最適化された。組合せ送達微小粒子では、ベルテポルフィンのカプセル化効率百分率(%±SD)および充填百分率(mg/mg±SD)は、それぞれ46.5±5%および0.09±0.01であると決定され、CB-839のカプセル化効率百分率および充填百分率は、それぞれ22±4%および0.04±0.007であると決定された。単剤製剤では、CB-839のカプセル化効率百分率および充填百分率はそれぞれ46.9±5%および0.09±0.01と観察され、ベルテポルフィンのカプセル化効率百分率および充填百分率はそれぞれ85±9%および0.16±0.02と決定された。さらに、異なる製剤からのベルテポルフィンおよびCB-839の放出速度は、ベルテポルフィンが6日間持続的に放出され、CB-839が10日間放出されることを示した(図2C、2D)。
【0098】
(2)PLGA微小粒子は7日間、ラットの肺にその薬物ペイロードを沈着させる。
制御放出を介して薬物の拡大された有効性を確実にするために、PLGA微小粒子から沈着した薬物が治療の期間中、肺組織に維持されることを判定した。これを行うために、近赤外センサーであるIR780色素をカプセル化したPLGA微小粒子を生成した。IR780色素をカプセル化した微小粒子またはブランク微小粒子を、単回の気管内エアロゾル投与を介してラットに投与した。次いでこれらのラットを、粒子送達後0日目または7日目に屠殺し、肺と心臓の組織を採取し、色素の存在について画像化した。ラットの肺に微小粒子の薬物ペイロードが沈着することが観察され、この単一のペイロードは、7日間肺に保持された(図3)。
【0099】
(3)ベルテポルフィンとCB-839を送達するPLGA微小粒子は、モノクロタリン曝露ラットのin vivoにおける肺高血圧の複数の指標を改善する。
ベルテポルフィンとCB-839を担持したPLGA微小粒子を、単独または組み合わせて、in vivoで試験し、疾患のげっ歯類モデルでPHを予防するそれらの能力を決定した。具体的には、0日目にモノクロタリン(MCT)注射を使用してラットにPHを誘導し、様々なグループで研究した。ブランクの微小粒子、単独でベルテポルフィンをカプセル化した微小粒子、単独でCB-839をカプセル化した微小粒子、またはベルテポルフィン+CB-839の両方をカプセル化した微小粒子、を0日目から3週間、毎週ラットに気管内送達した(図4A)。3週目の終わりに、血行動態(右室収縮期圧、RVSP、これはRV/LV+S質量比または右室肥大の指標であるフルトン指数と同様に、肺動脈圧の代替である)、PHの組織学的マーカー(肺細動脈のαSMA厚によって定量化された血管再構築、およびピクロシリウスレッド染色によって定量化された血管マトリックス再構築)、および分子マーカー(増殖マーカーであるPCNA)を様々な対照薬群間で定量化した。
【0100】
モノクロタリン(MCT)PHラットでは、両方の薬物のPLGAベースの同時送達は、ブランクの微小粒子と比較して、RVSPおよびフルトン指数の有意かつ実質的な減少をもたらした(図4B)。連続的なI.P.投与を介して全身的に送達された単剤単独での有効性と同様に、ベルテポルフィン単独でも有意な減少を促進し(図4C)、CB-839は、同様の改善(図4D)に関して有意ではない傾向を示した。肺組織の共焦点in situ染色とα-平滑筋アクチン(α-SMA)染色を介して平滑筋細動脈(<100μm直径)の厚さの定量化によって(図5A)、生理食塩水またはブランクの微小粒子を持つモノクロタリンPHラットの病理組織学的肺血管再構築は、両方の薬物の同時PLGA送達によって最も頑健に低減した(図5C)。比較すると、ベルテポルフィン送達単独でも再構築を減少させたが、薬物の組合せと比較して、程度が低く(図5C)、CB-839送達単独では、再構築の改善に関してわずかではあるが、有意ではない傾向を示した。肺細動脈の増殖マーカーPCNAのin situ染色によって、生理食塩水またはブランク粒子の対照では、ベルテポルフィン+CB-839の組合せのみが血管PCNAレベルの上昇を有意に減少させ(図5B)、ベルテポルフィンまたはCB-839単独では、血管PCNA発現のわずかではあるが有意ではない減少を示した。最後に、肺血管マトリックス再構築のレベルを定量化するためのin situピクロシリウスレッド染色によって、生理食塩水またはブランク粒子対照と比較して、肺細動脈コラーゲン沈着(非偏光光)およびコラーゲン架橋(偏光)の両方の有意な減少を示したのは、ベルテポルフィン+CB-839の組合せのみであった(図6)。したがって、すべての指標は、併用薬物送達により有意で実質的な改善を実証した。いくつかの指標では、ベルテポルフィンまたはCB-839単独で改善を示した。しかしベルテポルフィン単独でもCB-839単独でもなく、薬物送達の組合せのみが、すべてのPHの指標にわたって有意な改善を示した。
【0101】
c)考察
これらの知見は、PLGA微小粒子カプセル化が、ベルテポルフィンとCB-839の制御された持続的な肺血管送達に効果的であることを明らかにしている。これらのデータはまた、このようなPLGAをベースとした薬物の組合せを同時に肺送達することが、in vivoでのPHの改善に有効であり、複数の疾患指標を考慮した場合に、PLGAをベースとした薬物送達単独よりも良好に機能することを証明している。したがって、これらの結果は、肺血管疾患、およびおそらく健康と疾患の両方に影響を与えるPH以外の肺状態のための特定の次世代の薬物の組合せの開発に関して幅広い意味合いを持っている。
【0102】
局所送達と併用薬物療法とを組み合わせることで、この手法は、PHの新規治療法の開発に関して浮上してきた重要な懸念事項に対処する。これまでのPHにおける薬物開発は、3つの主要な血管拡張経路を標的とした化合物に焦点を当ててきたが、この疾患で試験されている次世代の薬物の大部分は、罹患した肺血管細胞の増殖性やしばしば代謝性のがんのような表現型を標的としたものである。実際、受容体チロシンキナーゼインヒビターなどの化学療法薬を再利用するという概念が注目されており、現在も研究が続けられている。同時に、ジクロロアセテートやバルドキソロンのようないくつかの代謝療法は、PHの代謝機能障害を逆転させることを目的とした臨床試験が進行している。それにもかかわらず、このような抗増殖療法や代謝療法の効果は広範囲に及ぶため、これらの治療法は意図しないオフターゲット作用や全身的な作用により、大きな危険性を伴うのではないかとの懸念が高まっている。RTKインヒビターイマチニブは、その血行動態的利益および肺血管の利益があるにもかかわらず、PHにおいて実質的な有害作用があることが臨床試験データで実証されており、この考えを裏付けるものとなっている。PLGA微小粒子を、局所組織およびPHにおける次世代治療法のような肺血管送達に使用することにより、影響を受ける組織の範囲を限定するだけでなく、血管細胞への薬物の局所的な有効濃度を最大化し、その結果、投与に必要な薬物を全体的に減少させることを可能にすることによって、これらの問題に効果的に対処することができる。
【0103】
この手法によって軽減されるPHにおける新規薬理学的治療法を開発する際の別の懸念は、単一の分子または経路のみを標的とした所与の次世代の薬物の有効性の問題への対処である。PHにおける代謝再プログラム化と過剰増殖状態とを取り巻く、複雑さの極端なネットワークとメカニズムの重複とを考えると、単一の増殖因子や代謝因子を標的とすることで、その単剤の有益な効果を無効にする代償応答を引き起こす可能性が高い。YAP-GLS1軸と同様に、同じ病原性経路にある複数の標的を系統的に阻害することで、より実質的な効力と疾患修飾を達成できる可能性が高くなる。実際、ベルテポルフィンとCB-839との組合せは、PLGAをベースとした薬物送達のみの場合よりも、PHの複数の指標において優れた効果を発揮するという知見は、この考えをより強固なものにしている。これらの頑強な効果と局所送達を組み合わせることで、全身毒性の可能性も軽減され、特に病変した肺や肺血管系において、このような効力を発揮することが可能となる。
【0104】
本研究の別の到来は、局所的に送達されるPH治療薬の開発の新たな方向性を反映している。プロスタサイクリンの吸入を含む現在のPH治療は、末梢血管系に対する全身的な副作用を低減させる傾向があるが、吸入治療として効果的に使用できる長時間作用型の制御放出型プロスタサイクリン製品の開発は遅れている。本明細書で提供される作業では、PLGAベースの微小粒子を含む溶液は、いくつかの理由から選択された。具体的には、PLGA微小粒子は、米国FDAの優れた承認実績を有している。さらに、薬物はカプセル化され、これらの微小粒子から持続的に放出され得る。微小粒子は、肺への効果的な送達および肺細動脈を標的とするために、異なるサイズ範囲(この報告では1~5μm)で設計することができる。カプセル化された薬物の放出速度は、3~4週間の薬物の持続放出が達成されるように調整することができる。さらに、これらの製剤は、マクロファージ媒介の食作用およびクリアランスを防止するために、異なる分子で機能化することも可能である。最後に、高負荷容量(>50%重量/粒子重量)を提供する金属-有機フレームワークのような他のカプセル化および送達戦略を、肺への大量のベルテポルフィンおよびCB-839の同時送達のために利用することができる。
【0105】
最後に、YAPとGLS1を同時に標的とするPLGAカプセル化薬の肺送達は、PHをはるかに超える肺疾患に有効であり得る。例えば、PHの発症とは無関係な特発性肺線維症では、グルタミノリシスと同様にYAP1/WWRT1活性の増大が病原性に重要である証拠がある。さらに大きな範囲で、YAP1/WWRT1活性化は、肺がんを含む複数タイプのがんの主要な治療候補として浮上している。同様に、特定のタイプの肺がんの発症と進行は、グルタミノリシスに顕著な依存性を示している。この結果は、PLGAによるベルテポルフィンとCB-839の送達の直接的な効果を検証したものではないが、PLGA粒子イメージングは、エアロゾル化された気管内送達が肺実質だけでなく肺血管系の実質的なカバレッジを達成できることを示している(図3)。したがって、この特定の併用薬物送達の橋渡しおよび臨床的有用性は、肺疾患の多様な側面にわたって幅広い可能性があり得る。
【0106】
結論として、エアロゾル化されたPLGA微小球の肺送達は、肺組織への局所的な持続的な薬物送達に有効である。このシステムを使用して、YAP-GLS1回路を標的とした薬物の組合せを送達すると、in vivoのPHの複数の指標が頑強に改善され、PLGAベースの薬物送達単独よりも総合的に優れた性能が発揮される。これらの知見は、PHおよびおそらく他の肺疾患における局所特異的、持続的、および組み合わせた治療法のさらなる開発のために、本当に必要な基盤を確立する。
【0107】
D.参考文献
【0108】
【表1-1】
【0109】
【表1-2】
【0110】
【表1-3】
【0111】
【表1-4】
【0112】
E.配列
配列番号1 WWRT1ポリペプチドアミノ酸配列
【0113】
【化6】
配列番号2 YAPポリペプチドアミノ酸配列
【0114】
【化7】
配列番号3 GLS1アミノ酸配列
【0115】
【化8】
配列番号4 GLS1ポリペプチドは、GACアイソフォームのアミノ酸配列である
【0116】
【化9】
配列番号5 Super-TDUアミノ酸配列
【0117】
【化10】
配列番号6 ペプチド17アミノ酸配列
【0118】
【化11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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