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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】蛍光X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
G01N23/223
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020528702
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2019018757
(87)【国際公開番号】W WO2020008727
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018127494
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】尾形 潔
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】表 和彦
(72)【発明者】
【氏名】本野 寛
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 直樹
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-107005(JP,A)
【文献】特開2014-222191(JP,A)
【文献】特開2017-181309(JP,A)
【文献】特開2016-206031(JP,A)
【文献】特開平05-052775(JP,A)
【文献】特開平07-128263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の元素を含む試料に対してX線を照射するX線照射ユニットと、当該試料から放出された蛍光X線を検出するX線検出ユニットとを備えた蛍光X線分析装置において、
前記X線検出ユニットは、複数のX線検出器を含み、
前記X線照射ユニットからのX線が照射される前記試料のX線照射部位に対し、その周囲に、当該試料から放出される蛍光X線を取り込む姿勢で、前記複数のX線検出器を配置するとともに、それら各X線検出器は個別に移動自在としてあり、
さらに、前記複数のX線検出器のうち、前記試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器を、当該回折X線が入射しない位置へ移動させる制御部を備えたことを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項2】
複数の元素を含む試料に対してX線を照射するX線照射ユニットと、当該試料から放出された蛍光X線を検出するX線検出ユニットとを備えた蛍光X線分析装置において、
前記X線検出ユニットは、複数のX線検出器を含み、
前記X線照射ユニットからのX線が照射される前記試料のX線照射部位に対し、その周囲に、当該試料から放出される蛍光X線を取り込む姿勢で、前記複数のX線検出器を配置するとともに、
前記試料と前記各X線検出器との間に、X線を遮蔽するX線遮蔽扉をそれぞれ開閉自在に設け、
さらに、前記複数のX線検出器のうち、前記試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器に対し、前記X線遮蔽扉を閉塞する制御部を備えたことを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項3】
複数の元素を含む試料に対してX線を照射するX線照射ユニットと、当該試料から放出された蛍光X線を検出するX線検出ユニットとを備えた蛍光X線分析装置において、
前記X線検出ユニットは、複数のX線検出器を含み、
前記X線照射ユニットからのX線が照射される前記試料のX線照射部位に対し、その周囲に、当該試料から放出される蛍光X線を取り込む姿勢で、前記複数のX線検出器を配置してあり、
且つ、前記複数のX線検出器のうち、前記試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器からの検出信号を除外し、それ以外のX線検出器からの検出信号に基づいて蛍光X線分析を行う分析部を備えたことを特徴とする蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料に含まれる複数の元素のうち、あらかじめ測定対象に選定した元素(測定対象元素)から放出される蛍光X線を検出することにより、当該測定対象元素を分析する蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、複数枚の半導体基板(半導体ウエハ)を高さ方向に積層する三次元実装技術の開発が進められている。かかる半導体デバイスの三次元実装においては、半導体基板の最上層に形成した電極上に半田バンプと称する突起物が設けられ、この半田バンプを介して各半導体基板の電極を電気的に接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
半導体デバイスの製造工程においては、従来から半導体基板上に成膜された薄膜を測定対象として、製造工程内でのその場分析のニーズが高い。本出願人は、このニーズに応えるべく、X線を用いた薄膜検査装置を提案してきた。
ところが、上述した三次元実装される半導体デバイスの製造工程においては、半導体基板上の薄膜測定のみならず、半田バンプを測定対象に加えたいという新たなニーズが生まれている。
【0004】
半田バンプは、例えば、Sn(0.97)、Ag(0.03)の組成をもつ無鉛半田により形成される。これら半田バンプを構成するSn(錫)やAg(銀)を蛍光X線分析により測定する場合、含有量の少ないAgからの蛍光X線の放出量が少ないため、特にAgについての蛍光X線分析を高精度に行うことができなかった。
【0005】
また、試料にX線を照射した場合、試料からは蛍光X線に加え、回折X線が反射してきてX線検出器へ同時に入射することがある。この場合、X線検出器に入射した回折X線は、蛍光X線分析においてはノイズとなり、測定精度を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで、特許文献2や特許文献3の従来技術には、試料を回転させてX線検出器に回折X線が入射しないように調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-140364号公報
【文献】特開平5-126768号公報
【文献】特許第4884553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、試料中の含有量が少ないことが原因で従来の技術では高精度な測定が困難な元素についても、高精度に測定することができる蛍光X線分析装置の提供を目的とする。
【0009】
さらに本発明は、特許文献1又は2に開示された従来技術を踏まえ、さらに高精度で、しかも測定時間の短縮を図り得る高スループットな蛍光X線分析装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の元素を含む試料に対してX線を照射するX線照射ユニットと、当該試料から放出された蛍光X線を検出するX線検出ユニットとを備えた蛍光X線分析装置において、
X線照射ユニットは、試料に含まれる複数の元素のうち測定対象に選定した測定対象元素と、当該元素よりもエネルギ吸収端の値が大きい隣接元素とに着目し、測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きく、且つ隣接元素のエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線を、試料に照射する構成であることを特徴とする。
【0011】
このように測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きく、且つ隣接元素のエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線を試料に照射すると、測定対象元素に対するX線の励起効率が上がり、測定対象元素から多くの蛍光X線が放出される。
そのため、試料中の含有量が少ないことが原因で従来の技術では高精度な測定が困難な元素についても、高精度に測定することが可能となる。
【0012】
なお、試料に含まれる複数の元素から測定対象に選定した複数の測定対象元素のうち、エネルギ吸収端の値が大きい隣接元素が存在しないときもある。その場合、X線照射ユニットは、測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きい値のエネルギのX線を、試料に照射する構成とすればよい。
このようなX線を試料に照射することで、測定対象元素に対するX線の励起効率が上がり、測定対象元素から多くの蛍光X線が放出される。
【0013】
例えば、AgとSnの元素を含む半田を試料とし、これらAg及びSnの各元素をそれぞれ測定対象元素に選定して測定するには、X線照射ユニットを次のように構成すればよい。
すなわち、X線照射ユニットは、測定対象元素に選定したAgのエネルギ吸収端よりも値が大きく、且つ当該Agよりもエネルギ吸収端の値が大きい隣接元素でもあるSnのエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線と、測定対象元素に選定したSnのエネルギ吸収端よりも大きい値のエネルギのX線とを、試料に照射するように構成する。
【0014】
これにより、半田バンプのように、Agの含有量が少ない物質を試料としても、AgでのX線の励起効率が上がり、Agから多くの蛍光X線が放出される。そのため、例えば、半田バンプに含有されたAgの元素についても、高精度に測定することが可能となる。
【0015】
上述したX線照射ユニットは、例えば、連続X線を放出するX線源と、X線源から放出された連続X線を入射して、エネルギの大きさが異なる複数種類のX線を取り出す多波長ミラーと、を含む構成によって実現することができる。
【0016】
ここで、多波長ミラーは、複数種類の薄膜を積層してなる多層膜を含んだ構成とする。そして、多層膜は、薄膜の膜厚、膜質及び積層数を調整することで所望のエネルギを有するX線のみを回折するように構成する。さらに、多波長ミラーは、深さ方向に薄膜の膜厚、膜質及び当該薄膜の積層数が異なる複数種類の多層膜を積層することで、エネルギの大きさが異なる複数種類のX線を回折する構成とする。
【0017】
かかる多波長ミラーにより、X線源から放出される連続X線から、測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きく、且つ隣接元素のエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線を取り出して試料に照射することが可能となる。
【0018】
また、本発明において、X線検出ユニットは、複数のX線検出器を含む構成とすることが好ましい。
そして、X線照射ユニットからのX線が照射される試料のX線照射部位に対し、その周囲に、当該試料から放出される蛍光X線を取り込む姿勢で、複数のX線検出器を配置する。それら各X線検出器は個別に移動自在とする。
さらに、複数のX線検出器のうち、試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器を、当該回折X線が入射しない位置へ移動させる制御部を備えた構成とする。
【0019】
X線検出ユニットをこのように構成することで、試料から回折してきた回折X線がノイズとしてX線検出器に入射することを回避してS/Nの向上を図ることができる。しかも、試料から放出される蛍光X線を試料の周囲に配置した複数のX線検出器に入射させて、蛍光X線の検出強度を上げることができる。
【0020】
また、複数のX線検出器を含むX線検出ユニットは、次のように構成することもできる。
すなわち、X線照射ユニットからのX線が照射される試料のX線照射部位に対し、その周囲に、当該試料から放出される蛍光X線を取り込む姿勢で、複数のX線検出器を配置する。試料と各X線検出器との間には、X線を遮蔽するX線遮蔽扉をそれぞれ開閉自在に設ける。
そして、複数のX線検出器のうち、試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器に対し、X線遮蔽扉を閉塞する制御部を備えた構成とする。
【0021】
また、複数のX線検出器を含むX線検出ユニットは、次のように構成することもできる。
すなわち、X線照射ユニットからのX線が照射される試料のX線照射部位に対し、その周囲に、当該試料から放出される蛍光X線を取り込む姿勢で、複数のX線検出器を配置する。さらに、複数のX線検出器のうち、試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器からの検出信号を除外し、それ以外のX線検出器からの検出信号に基づいて蛍光X線分析を行う分析部を備えた構成とする。
【0022】
X線検出ユニットを上述したように構成しても、回折X線によるS/Nの低下を回避して、高精度な蛍光X線分析を実現することができる。しかも、試料から放出される蛍光X線を試料の周囲に配置した複数のX線検出器に入射させて、蛍光X線の検出強度を上げることができる。
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きく、且つ隣接元素のエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線を試料に照射すると、測定対象元素に対するX線の励起効率が上がり、測定対象元素から多くの蛍光X線が放出される。そのため、試料中の含有量が少ないことが原因で従来の技術では高精度な測定が困難な元素についても、高精度に測定することが可能となる。
【0024】
また、複数のX線検出器を含むX線検出ユニットで上述したように本発明を構成することで、試料から回折してきた回折X線の影響を除去してS/Nの向上を図ることができる。しかも、試料から放出される蛍光X線を試料の周囲に配置した複数のX線検出器に入射させて、蛍光X線の検出強度を上げることができる。その結果、高精度で、かつ測定時間の短縮を図り得る高スループットな蛍光X線分析を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1Aは、本発明の第1実施形態に係る蛍光X線分析装置の主要部を模式的に示す一部断面正面図である。図1Bは、同じく底面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る蛍光X線分析装置の制御・分析処理系統を示すブロック図である
図3図3は、X線照射ユニットに含まれる多波長ミラーの構成を模式的に示す断面図である。
図4図4は、三次元実装される半導体基板の半田バンプに含有されたAgとSnのX線吸収端を示すグラフである。
図5図5は、測定対象の微小部へX線を収束して照射するための多波長ミラーの構成例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
図7図7Aは、本発明の第2実施形態に係る蛍光X線分析装置の主要部を模式的に示す一部断面正面図である。図7Bは、同じく底面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る蛍光X線分析装置の制御・分析処理系統を示すブロック図である
図9図9は、本発明の第2実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の第3実施形態に係る蛍光X線分析装置の制御・分析処理系統を示すブロック図である
図11図11は、本発明の第3実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
図12図12Aは、本発明の第4実施形態に係る蛍光X線分析装置の主要部を模式的に示す一部断面正面図である。図12Bは、同じく底面図である。
図13図13は、本発明の第4実施形態に係る蛍光X線分析装置の制御・分析処理系統を示すブロック図である
図14図14は、本発明の第4実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
10:試料台、
11:試料位置決め機構、20:X線照射ユニット、21:多波長ミラー、22:多層膜、30:X線検出ユニット、31:X線検出器、32:X線検出器駆動機構、33:枠体、33a:真空室、34:移動テーブル、35:冷却部材、36:X線遮蔽扉、40:中央処理装置、41:位置決めコントローラ、42:X線照射コントローラ、43,44:駆動コントローラ、50:光学顕微鏡、51:フォーカスコントローラ
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
以下の実施形態では、三次元実装される半導体基板(半導体ウエハ)に設けられた半田バンプの検査に好適な蛍光X線分析装置の構成を説明するが、本発明の用途はこれに限定されないことは勿論である。
【0028】
〔第1実施形態〕
まず、図1A図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る蛍光X線分析装置を説明する。
図1A図1B及び図2に示すように、本実施形態に係る蛍光X線分析装置は、試料台10、試料位置決め機構11、X線照射ユニット20、X線検出ユニット30の各構成要素を備えている。
試料台10の表面には、試料(半導体基板)Sが配置される。
試料位置決め機構11は、試料台10を駆動して、試料台10に配置された試料Sにおける被測定箇所(すなわち、X線照射部位)を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に位置決めする構成である。
【0029】
X線照射ユニット20は、エネルギの大きさが異なる複数種類のX線を照射する機能を備えており、その構造の詳細は後述する。
X線検出ユニット30は、複数のX線検出器31を備えている。各X線検出器31は、試料Sの被測定箇所に対して、その周囲に配置され、試料Sから放射された蛍光X線を取り込んで検出する構成となっている。
また、X線検出ユニット30は、各X線検出器31をそれぞれ駆動するX線検出器駆動機構32を備えている。各X線検出器31は、それぞれX線検出器駆動機構32によって個別に駆動され、配置位置を変更できる構成となっている。
【0030】
図1A図1Bに示すように、本実施形態では、枠体33にX線照射ユニット20、X線検出器31、X線検出器駆動機構(図示せず)を組み込んだ一体構造としてある。X線照射ユニット20は、枠体33の中央部に搭載してあり、その周囲を取り囲むように複数(図1では8個)のX線検出器31が枠体33に搭載してある。枠体33には内部に真空室33aが形成され、この真空室33a内に複数のX線検出器31が配置してある。真空室33a内は、図示しない真空ポンプにより真空吸引されて真空状態となる。
【0031】
X線検出器駆動機構32は、例えば、小形モータにより駆動される移動テーブル34によって構成することができる。具体的には、枠体33の真空室33a内に複数の移動テーブル34を移動自在に設置し、それらの移動テーブル34にそれぞれX線検出器31を搭載する。また、X線検出ユニット30は、X線検出器31の底面にペルチェクーラー等の冷却部材35を配置し、X線検出器31を冷却する構成としてもよい。
【0032】
図2に示すように、本実施形態に係る蛍光X線分析装置は、コンピュータにより構成された中央処理装置40を備えている。中央処理装置40は、あらかじめ組み込まれた制御プログラムに従って、各種コントローラに指令信号を送り、各構成要素の動作を制御する。さらに、中央処理装置40は、あらかじめ組み込まれた分析プログラムに従って、X線検出器31からのX線の検出信号を処理して、試料Sの蛍光X線分析を実行する。
【0033】
すなわち、中央処理装置40は、位置決めコントローラ41に指令信号を出力し、この指令信号に従って、位置決めコントローラ41が試料位置決め機構11を駆動して、試料Sの被測定箇所を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に位置決めする。
なお、本実施形態では、図示しない離間した位置に光学顕微鏡50による観察位置が設けてあり、その観察位置で光学顕微鏡50によりあらかじめ試料Sの被測定箇所を認識し、その認識した被測定箇所を、試料位置決め機構11により光学顕微鏡50の観察位置からX線の収束点まで移動する構成となっている。
【0034】
また、中央処理装置40は、X線照射コントローラ42に指令信号を出力し、この指令信号に従って、X線照射ユニット20がX線を照射する。X線照射ユニット20は、例えば、100マイクロメータ以下(望ましくは50マイクロメータ以下)の微小部にX線を収束させる機能を備えており、そのX線の収束点はあらかじめ位置決めしてある。このX線の収束点に、試料Sの被測定箇所が位置決めされる。
【0035】
複数のX線検出器駆動機構32は、各々駆動コントローラ43によって駆動制御されている。中央処理装置40は、各駆動コントローラ43に指令信号を出力し、この指令信号に従って、駆動コントローラ43がX線検出器駆動機構32を駆動して、X線検出器31を移動させる。
かかる機能を備えた中央処理装置40は、複数のX線検出器31のうち、試料Sから回折してきた回折X線を検出したX線検出器31を、当該回折X線が入射しない位置へ移動させる「制御部」を構成する。
【0036】
ここで、X線照射ユニット20の構成を更に詳細に説明する。
X線照射ユニット20は、連続X線を放出するX線源と、多波長ミラー21とを含む構成となっている。多波長ミラー21は、X線源から放出された連続X線を入射して、エネルギの大きさが異なる複数種類のX線を取り出す機能を有している。
【0037】
図3は多波長ミラー21の構成を模式的に示す断面図である。なお、切断面を示すハッチング(斜線)は省略してある。
多波長ミラー21は、複数種類の多層膜22を積層して形成してある。多層膜22は、複数種類の薄膜を積層した構成となっている。各多層膜22は、深さ方向に薄膜の膜厚、膜質及び薄膜の積層数を調整することで、エネルギの大きさが異なる複数種類のX線を回折できるように製作される。
かかる多波長ミラー21によって、X線源から放出される連続X線から所望の大きさのエネルギを有する複数種類のX線a,b,c,dを取り出すことが可能となる。
【0038】
本実施形態では、多波長ミラー21を、試料Sに含まれる複数の元素のうち測定対象に選定した測定対象元素と、当該元素よりもエネルギ吸収端の値が大きい隣接元素とに着目して多層膜22を製作している。すなわち、多波長ミラー21は、測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きく、且つ隣接元素のエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線を取り出すように多層膜22が調整してある。
【0039】
また、試料Sに含まれる複数の元素から測定対象に選定した複数の測定対象元素のうち、エネルギ吸収端の値が大きい隣接元素が存在しないときもある。そのときは、測定対象元素のエネルギ吸収端よりも大きい値のエネルギのX線を取り出すように、多層膜22を調整する。
【0040】
ここで、半導体基板に形成された半田バンプを測定対象とし、半田バンプに含まれるSnとAgを測定対象元素に選定して、蛍光X線分析を実施する場合おける多波長ミラー21の具体例について説明する。
既述したように、半田バンプは、例えば、Sn(0.97)、Ag(0.03)の組成をもつ無鉛半田により形成される。これら半田バンプを構成する元素のうち、特にAgは含有量が少ないため、蛍光X線分析に際しては、このAgからの蛍光X線の放出量を多くするように、半田バンプに照射するX線のエネルギ特性を調整することが好ましい。
【0041】
そこで、多波長ミラー21は、測定対象元素に選定したAgのエネルギ吸収端よりも値が大きく、且つ当該Agよりもエネルギ吸収端の値が大きい隣接元素でもあるSnのエネルギ吸収端以下の値を示すエネルギをもつX線が、回折して取り出されるように、多層膜22の一つを調整する。
このように多層膜22の一つを調整することで、半田バンプを形成する元素のうち、含有量の少ないAgについてもX線の励起効率が上がり、Agから多くの蛍光X線が放出される。
【0042】
また、多波長ミラー21は、測定対象元素に選定したSnのエネルギ吸収端よりも大きい値のエネルギのX線が、回折して取り出されるように、別の多層膜22の一つを調整する。
【0043】
図4は、半田バンプに含有されたAgとSnのX線吸収端を示すグラフである。
同図から、半田バンプ(無鉛半田)を構成するSn(0.97)及びAg(0.03)のX線(K)の吸収端は、Snが29.2keVであり、Agが25.5keVであることがわかる。
【0044】
そこで、多波長ミラー21は、Agのエネルギ吸収端である25.5keVよりも値が大きく、且つ当該Agよりもエネルギ吸収端の値が大きい隣接元素でもあるSnのエネルギ吸収端29.2keV以下のエネルギ(同図にEで示す範囲内のエネルギ)のX線が、回折して取り出されるように、多層膜22の一つを調整する。
【0045】
また、多波長ミラー21は、Snのエネルギ吸収端である29.2keVよりも大きい値のエネルギのX線が、回折して取り出されるように、別の多層膜22の一つを調整する。
【0046】
ここで、取り出すX線のエネルギは、測定対象元素のエネルギ吸収端になるべく近い値のエネルギであることが好ましい。エネルギの大きさが選択対象元素のエネルギ吸収端近傍であるX線を照射することで、当該測定対象元素の励起効率がいっそう高くなり、さらに多くの蛍光X線が放出される。
【0047】
このように多層膜22を調整して多波長ミラー21を製作することで、半田バンプに含まれるSnとAgに対するX線の励起効率が上がり、これらの測定対象元素から多くの蛍光X線が放出される。したがって、これらの測定対象元素に対し、高精度な蛍光X線分析を実施することが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態では、上述した2種類の多層膜22に加え、半導体基板に形成された薄膜を測定対象として蛍光X線分析を実施するために、当該薄膜からの励起効率が良好な8~10keVのエネルギのX線が回折して取り出されるように調整した別の多層膜22も積層形成してある。
【0049】
また、本実施形態においては、測定対象が直径20~200μm程度の半田バンプという微小部にX線を収束して照射する必要がある。そこで、例えば、図5に示すように、X線の反射面(表面)21aを凹面に湾曲させた2枚の多波長ミラー21,21を用意し、それら各多波長ミラー21,21の表面21aが互いに直交するように配置することで、微小部へのX線の収束を実現している。すなわち、一方の多波長ミラー21でX線を幅方向に収束させ、他方の多波長ミラー21でX線を長さ方向に収束させることができる。
なお、図5では、多波長ミラー21,21を、Kirkpatrick-Baez(KB)と呼ばれる直列方式で配置したが、互いに1辺が接するSide-by-side方式で配置することもできる。
【0050】
次に、半田バンプを有する半導体基板を試料Sとして、上述した構成の蛍光X線分析装置により蛍光X線分析を実施する際の動作を説明する。
図6は本実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
【0051】
中央処理装置40は、キーボード等の操作部からオペレータが指定した、入射X線に対する半導体基板の面方位と配置方向を入力すると(ステップS1)、中央処理装置40が位置決めコントローラ41に指令信号を出力し、位置決めコントローラ41が試料位置決め機構11を駆動して、試料台10に配置した半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に位置決めする(ステップS2)。
【0052】
このとき、半導体基板は、同基板を形成する結晶の面方位(結晶方位)が、オリフラ等を基準にしてあらかじめ設定した方向となるよう試料台10に配置してある。中央処理装置40は、試料台10の上で、結晶の面方位があらかじめ設定した方向に配置された半導体基板を、オペレータに指定された面方位とその配置方向に合わせた状態で、半導体基板の被測定箇所を照射X線の収束点に位置決めする。
【0053】
このように結晶の面方位を指定された方向に合わせて位置決めされた半導体基板は、X線の照射方向に対してどの方向に回折X線が現れるか、そのおおよその方向が解る。そこで、回折X線が現れる方向に配置してあるX線検出器31を、その回折X線が入射しない位置へ移動させる(ステップS3)。これにより、半導体基板から現れた回折X線の、X線検出器31への入射をあらかじめ低減することができる。
具体的には、中央処理装置40は、当該X線検出器31を移動させるX線検出器駆動機構32の駆動コントローラ43に指令信号を出力する。この指令信号に従って、その駆動コントローラ43がX線検出器駆動機構32を駆動して、当該X線検出器31を回折X線が入射しない位置へ移動させる。
【0054】
ここで、中央処理装置40は、各X線検出器31から入力したX線の検出信号(X線のスペクトル)を比較して、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力しているX線検出器31の有無をチェックする(ステップS4)。
【0055】
そして、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力するX線検出器31の存在を認めた場合には、中央処理装置40がステップS3に戻り、当該X線検出器31を移動させるX線検出器駆動機構32の駆動コントローラ43に指令信号を出力し、当該X線検出器31の位置を移動させて、回折X線が入射しないように調整する。
【0056】
ステップS4において、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力するX線検出器31の存在が確認されなかったときは、半導体基板の被測定箇所に設けられた半田バンプに対してX線を照射し、蛍光X線分析を実施する(ステップS5)。
すなわち、中央処理装置40は、X線照射コントローラ42に指令信号を出力し、この指令信号に従って、X線照射ユニット20が半導体基板の被測定箇所にX線を照射する。そして、各X線検出器31が半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)から放出された蛍光X線を検出し、その検出信号を中央処理装置40が入力して、蛍光X線分析が実行される。
その後、蛍光X線分析の分析結果を出力して(ステップS6)、測定動作が終了する。
【0057】
このように、半導体基板(試料)Sから回折してきた回折X線がノイズとしてX線検出器31に入射することを回避する状況を形成した上で、蛍光X線分析を実施することができるので、S/Nが向上し高精度な分析結果を得ることができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、図7A図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る蛍光X線分析装置を説明する。
なお、先に説明した第1実施形態に係る蛍光X線分析装置と同一の構成要素又は相当する構成部分要素には、同一符号を付して、その構成要素の詳細な説明を省略することがある。
【0059】
本実施形態に係る蛍光X線分析装置は、図1A図1Bに示した第1実施形態に係る装置構造において、各X線検出器31を移動させるX線検出器駆動機構32に代えて、各X線検出器31の前方にX線を遮蔽するためのX線遮蔽扉36を開閉自在に設けた構成としてある(図7A図7B参照)。X線遮蔽扉36は、例えば、鉛やタングステンなどX線を透過させにくい材料で製作することが好ましい。このX線遮蔽扉36を閉塞することによって、各X線検出器31に入射しようとするX線を遮断することができる。
X線遮蔽扉36は、例えば、小形モータ等の駆動機構をもって開閉する構成とすることができる。
【0060】
図8示すように、複数のX線遮蔽扉36の駆動機構は、各々駆動コントローラ44によって駆動制御されている。中央処理装置40は、各駆動コントローラ44に指令信号を出力し、この指令信号に従って、駆動コントローラ44がX線遮蔽扉36の駆動機構を駆動して、X線遮蔽扉36を開閉させる。
かかる機能を備えた中央処理装置40は、複数のX線検出器31のうち、試料から回折してきた回折X線を検出したX線検出器31に対し、X線遮蔽扉36を閉塞する「制御部」を構成する。
【0061】
図9は本実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
中央処理装置40は、キーボード等の操作部からオペレータが指定した、入射X線に対する半導体基板の面方位と配置方向を入力すると(ステップS11)、中央処理装置40が位置決めコントローラ41に指令信号を出力し、位置決めコントローラ41が試料位置決め機構11を駆動して、試料台10に配置した半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に位置決めする(ステップS12)。
【0062】
このとき、半導体基板は、同基板を形成する結晶の面方位(結晶方位)が、オリフラ等を基準にしてあらかじめ設定した方向となるよう試料台10に配置してある。中央処理装置40は、試料台10の上で、結晶の面方位があらかじめ設定した方向に配置された半導体基板を、オペレータに指定された面方位とその配置方向に合わせた状態で、半導体基板の被測定箇所を照射X線の収束点に位置決めする。
【0063】
このように結晶の面方位を指定された方向に合わせて位置決めされた半導体基板は、X線の照射方向に対してどの方向に回折X線が現れるか、そのおおよその方向が解る。そこで、回折X線が現れる方向に配置してあるX線検出器31に対し、X線遮蔽扉36を閉塞する(ステップS13)。これにより、半導体基板から現れた回折X線の、X線検出器31への入射をあらかじめ低減することができる。
具体的には、中央処理装置40は、当該X線遮蔽扉36を閉塞させる駆動機構の駆動コントローラ44に指令信号を出力する。この指令信号に従って、その駆動コントローラ44が駆動機構を駆動して、当該X線遮蔽扉36を閉塞する。
【0064】
ここで、中央処理装置40は、各X線検出器31から入力したX線の検出信号(X線のスペクトル)を比較して、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力しているX線検出器31の有無をチェックする(ステップS14)。
【0065】
そして、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力するX線検出器31の存在を認めた場合には、中央処理装置40がステップS13に戻り、当該X線検出器31に対するX線遮蔽扉36を閉塞する駆動機構の駆動コントローラ44に指令信号を出力し、当該X線遮蔽扉36を閉塞させて、当該X線検出器31に回折X線が入射しないように調整する。
【0066】
ステップS14において、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力するX線検出器31の存在が確認されなかったときは、半導体基板の被測定箇所に設けられた半田バンプに対してX線を照射し、蛍光X線分析を実施する(ステップS15)。その後、蛍光X線分析の分析結果を出力して(ステップS16)、測定動作が終了する。
【0067】
このように、半導体基板(試料)Sから回折してきた回折X線がノイズとしてX線検出器31に入射することを回避する状況を形成した上で、蛍光X線分析を実施することができるので、S/Nが向上し高精度な分析結果を得ることができる。
【0068】
〔第3実施形態〕
次に、図10及び図11を参照して、本発明の第3実施形態に係る蛍光X線分析装置を説明する。
なお、先に説明した第1及び第2実施形態に係る蛍光X線分析装置と同一の構成要素又は相当する構成部分要素には、同一符号を付して、その構成要素の詳細な説明を省略することがある。
【0069】
本実施形態に係る蛍光X線分析装置は、図1に示した第1実施形態に係る装置構造において、各X線検出器31を移動させるX線検出器駆動機構32と駆動コントローラ43を取り除いた構成としてある(図10参照)。
中央処理装置40は、各X線検出器31から入力したX線の検出信号(X線のスペクトル)を比較して、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力しているX線検出器31の有無をチェックする。そして、中央処理装置40は、複数のX線検出器31のうち、回折X線を検出したX線検出器31からの検出信号を除外する。
すなわち、本実施形態では、中央処理装置40が、回折X線を検出したX線検出器31からの検出信号を除外し、それ以外のX線検出器31から入力した検出信号に基づいて蛍光X線分析を行う「分析部」を構成する。
【0070】
図11は本実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
【0071】
中央処理装置40は、キーボード等の操作部からオペレータが指定した、入射X線に対する半導体基板の面方位と配置方向を入力すると(ステップS21)、中央処理装置40が位置決めコントローラ41に指令信号を出力し、位置決めコントローラ41が試料位置決め機構11を駆動して、試料台10に配置した半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に位置決めする(ステップS22)。
【0072】
続いて、中央処理装置40は、X線照射コントローラ42に指令信号を出力し、この指令信号に従って、X線照射ユニット20が半導体基板の被測定箇所にX線を照射するとともに、各X線検出器31からの検出信号を入力する。そして、入力したX線の検出信号(X線のスペクトル)を比較して、回折X線の入射により異常値を示すX線検出器31からの検出信号を除外する(ステップS23)。
【0073】
中央処理装置40は、かかる除外処理によって、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力するX線検出器31の存在が確認されなくなった後(ステップS24)、蛍光X線分析を実施する(ステップS25)。
すなわち、中央処理装置40は、X線照射コントローラ42に指令信号を出力し、この指令信号に従って、X線照射ユニット20が半導体基板の被測定箇所にX線を照射する。そして、各X線検出器31が半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)から放出された蛍光X線を検出し、その検出信号を中央処理装置40が入力して、蛍光X線分析が実行される。
その後、蛍光X線分析の分析結果を出力して(ステップS26)、測定動作が終了する。
【0074】
このように、半導体基板(試料)Sから回折してきた回折X線がノイズとしてX線検出器31に入射することを回避する状況を形成した上で、蛍光X線分析を実施することができるので、S/Nが向上し高精度な分析結果を得ることができる。
【0075】
〔第4実施形態〕
次に、図12A図14を参照して、本発明の第4実施形態に係る蛍光X線分析装置を説明する。
なお、先に説明した第1乃至第3実施形態に係る蛍光X線分析装置と同一の構成要素又は相当する構成部分要素には、同一符号を付して、その構成要素の詳細な説明を省略することがある。
【0076】
本実施形態に係る蛍光X線分析装置は、図12A図12Bに示すように、枠体33の中央部に光学顕微鏡50を搭載するとともに、枠体33における光学顕微鏡50の側方位置に、X線照射ユニット20を搭載した構成となっている。複数のX線検出器31(図12Bでは7個)は、光学顕微鏡50を囲むようにその周囲に配置して枠体33に搭載してある。
X線照射ユニット20は、光学顕微鏡50の下方位置、すなわち光学顕微鏡50が観察できる位置に、照射X線の収束点を位置決めしてある。
【0077】
図13に示すように、中央処理装置40は、フォーカスコントローラ51に指令信号を出力し、この指令信号に従って、フォーカスコントローラ51が光学顕微鏡50の焦点を下方に設けた照射X線の収束点に合わせる。そして、光学顕微鏡50から送られてくる画像信号から照射X線の収束点を画像認識し、その収束点をリアルタイムに観察する。
実際には、後述するように、照射X線の収束点に粗く位置決めされた試料(半導体基板)Sの被測定箇所(半田バンプ)に焦点を合わせ、この被測定箇所を観察している。
【0078】
中央処理装置40は、光学顕微鏡50により照射X線の収束点を観察しながら、位置決めコントローラ41に指令信号を出力し、試料位置決め機構11を駆動して、試料Sの被測定箇所を照射X線の収束点へ高精度に位置決めする。
【0079】
図14は本実施形態に係る蛍光X線分析装置による蛍光X線分析の実施動作を示すフローチャートである。
【0080】
中央処理装置40は、キーボード等の操作部からオペレータが指定した、入射X線に対する半導体基板の面方位と配置方向を入力すると(ステップS31)、中央処理装置40が位置決めコントローラ41に指令信号を出力し、位置決めコントローラ41が試料位置決め機構11を駆動して、試料台10に配置した半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に粗く位置決めする(ステップS32)。
【0081】
続いて、中央処理装置40がフォーカスコントローラ51に指令信号を出力し、光学顕微鏡50の焦点を半導体基板の被測定箇所に合わせるとともに、光学顕微鏡50からの画像信号を中央処理部が入力して、当該被測定箇所を観察する(ステップS33)。
【0082】
そして、中央処理部は、光学顕微鏡50からの画像信号に基づき被測定箇所を観察しながら、位置決めコントローラ41に指令信号を出力する。この指令信号により位置決めコントローラ41が試料位置決め機構11を駆動して、試料台10に配置した半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)を、X線照射ユニット20から照射されるX線の収束点に高精度に位置決めする(ステップS34)。
【0083】
続いて、中央処理装置40は、X線照射コントローラ42に指令信号を出力し、この指令信号に従って、X線照射ユニット20が半導体基板の被測定箇所にX線を照射するとともに、各X線検出器31からの検出信号を入力する。そして、入力したX線の検出信号(X線のスペクトル)を比較して、回折X線の入射により異常値を示すX線検出器31からの検出信号を除外する(ステップS35)。
【0084】
中央処理装置40は、かかる除外処理によって、回折X線の入射により異常値を示す検出信号を出力するX線検出器31の存在が確認されなくなった後(ステップS36)、蛍光X線分析を実施する(ステップS37)。
すなわち、中央処理装置40は、X線照射コントローラ42に指令信号を出力し、この指令信号に従って、X線照射ユニット20が半導体基板の被測定箇所にX線を照射する。そして、各X線検出器31が半導体基板の被測定箇所(半田バンプ)から放出された蛍光X線を検出し、その検出信号を中央処理装置40が入力して、蛍光X線分析が実行される。
その後、蛍光X線分析の分析結果を出力して(ステップS38)、測定動作が終了する。
【0085】
このように、半導体基板(試料)Sから回折してきた回折X線がノイズとしてX線検出器31に入射することを回避する状況を形成した上で、蛍光X線分析を実施することができるので、S/Nが向上し高精度な分析結果を得ることができる。
しかも本実施形態の構成によれば、光学顕微鏡50を利用してリアルタイムに半導体基板の被測定箇所を観察しながら、照射X線の収束点に対して高精度に半導体基板の被測定箇所を位置決めすることができる。
【0086】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
例えば、X線照射ユニット20は、多波長ミラー以外の光学機器を利用して、エネルギの大きさが異なる複数種類のX線を試料へ照射できるように構成してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14