(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】電気手術システム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61B18/18 100
(21)【出願番号】P 2021559610
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2020053916
(87)【国際公開番号】W WO2020221485
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506480(JP,A)
【文献】特表2010-505573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/047555(US,A1)
【文献】特表2013-525075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号を供給するように構成された電気手術用発電機と、
生体組織の治療領域に挿入するための電気手術器具であって、
前記マイクロ波エネルギーと前記エレクトロポレーション信号とを受信するために前記電気手術用発電機に接続された同軸ケーブルと、
前記マイクロ波エネルギー及び前記エレクトロポレーション信号を受信するために前記同軸ケーブルの遠位端に結合された棒状の放射先端部分であって、その遠位端から前記治療領域に前記マイクロ波エネルギーを放射し、前記治療領域の生体組織をエレクトロポレーションするための前記エレクトロポレーション信号を使用してその遠位端に電場を確立するための前記放射先端部分と、
生体組織を前記治療領域から離して運ぶための導管と、
を含む、前記電気手術器具と、
生体組織を受け取るために前記導管と流体連通しているサイトメータであって、前記受け取った生体組織における第1の所定の細胞型の存在を検出するためのサイトメータと、
を備える、電気手術システム。
【請求項2】
前記放射先端部分は、
前記マイクロ波エネルギーを受け取り、伝送するための近位同軸伝送線であって、内部導体と、外部導体と、前記内部導体を前記外部導体から分離する誘電材料と、を含む前記近位同軸伝送線と、
前記近位同軸伝送線の遠位端に取り付けられた遠位針先端部であって、前記近位同軸伝送線の遠位端から長手方向に延びる剛性誘電体スリーブを含む前記遠位針先端部と、を含み、
前記棒状の放射先端部分は、前記同軸ケーブルの直径よりも小さい直径を有し、
前記剛性誘電体スリーブは、前記近位同軸伝送線の前記内部導体に電気的に接続され、前記近位同軸伝送線の前記外部導体の遠位端を超えて延びる細長い導電性素子を取り囲み、前記細長い導電性素子は、前記マイクロ波エネルギーの半波長変成器として動作して、前記マイクロ波エネルギーを前記遠位針先端部から生体組織に放射し、
前記細長い導電性素子は、遠位針先端部の遠位端に露出した活性電極で終端し、
前記活性電極は、前記近位同軸伝送線の前記外部導体の前記遠位端に電気的に接続されている対極板から軸方向に離間され、前記活性電極及び前記対極板は、前記遠位針先端部で生体組織のエレクトロポレーションのための前記電場を確立するように構成される、
請求項1に記載の電気手術システム。
【請求項3】
前記近位同軸伝送線の前記誘電材料は、前記剛性誘電体スリーブよりも柔軟である、請求項2に記載の電気手術システム。
【請求項4】
前記活性電極は、前記細長い導電性素子と同心上に配置された導電性リングである、請求項2または3に記載の電気手術システム。
【請求項5】
前記導電性リングは、前記導電性リングを通って長手方向に延びるチャネルを有し、前記細長い導電性素子の一部は、前記チャネル内に含まれる、請求項4に記載の電気手術システム。
【請求項6】
前記遠位針先端部は、前記導電性リングの遠位端に取り付けられた先端要素を含む、請求項5に記載の電気手術システム。
【請求項7】
前記先端要素の遠位端は、尖っている、請求項6に記載の電気手術システム。
【請求項8】
前記外部導体の遠位部分は、前記剛性誘電体スリーブの近位部分に重なる、請求項2~7のいずれかに記載の電気手術システム。
【請求項9】
前記導管は、前記内部導体及び前記細長い導電性素子のボアを含む、請求項2~8のいずれかに記載の電気手術システム。
【請求項10】
前記ボアは、0.4mmの最大直径を有する、請求項9に記載の電気手術システム。
【請求項11】
前記導管は、前記生体組織を前記ボアから離れて運ぶために、前記内部導体に接続された少なくとも1つのパイプを含む、請求項9または10に記載の電気手術システム。
【請求項12】
前記導管は、前記近位同軸伝送線の前記軸上に出口を含み、前記マイクロ波エネルギー及び前記エレクトロポレーション信号は、前記近位同軸伝送線の前記軸に対してある角度で前記放射先端部分に接続される、請求項11に記載の電気手術システム。
【請求項13】
前記マイクロ波エネルギー及び前記エレクトロポレーション信号は、前記近位同軸伝送線の前記軸に沿って前記放射先端部分に供給され、前記生体組織は、前記近位同軸伝送線の前記軸に対して角度が付けられた前記少なくとも1つのパイプを使用して抽出される、請求項11に記載の電気手術システム。
【請求項14】
前記導管は、前記放射先端部分と一体化されている、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【請求項15】
前記放射先端部分は、1.067mm以下の最大外径を有する、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【請求項16】
患者の体内に挿入するための可撓性挿入コードを有する外科用スコープデバイスをさらに備え、前記可撓性挿入コードは、その長さに沿って延びる器具チャネルを有し、前記電気手術器具は、前記器具チャネル内に適合する寸法にされる、
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【請求項17】
前記治療領域から反射して戻るマイクロ波電力を検出するための検出器と、
前記検出された反射マイクロ波電力の変化に基づいて、前記治療領域の生体組織の第2の所定の細胞型を検出するためのコントローラと
をさらに備える、
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【請求項18】
前記電気手術用発電機のインピーダンスを前記放射先端部分と整合させるように構成されたインピーダンス整合機構をさらに備える、
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【請求項19】
前記サイトメータと、
前記導管と流体連通して、そこから生体組織を抽出する吸引ポンプと、
前記抽出された生体組織の細胞を流体に懸濁してサンプルを生成するためのサンプル生成器と、を備える、
細胞識別アセンブリをさらに備え、
前記サイトメータは、前記サンプルを使用して、前記第1の所定の細胞型の前記存在を検出する、
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【請求項20】
前記導管と流体連通する流体注入機構であって、前記治療領域に流体を注入するための前記流体注入機構をさらに備える、
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の電気手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波エネルギーを生体組織に供給し、生体組織に対してエレクトロポレーションを実行するための電気手術システムに関する。詳細には、電気手術システムは、治療領域から生体組織を抽出するための導管を有する電気手術器具と、抽出された生体組織における特定の細胞型の存在を識別するためのサイトメータまたはセルソータとを含む。電気手術システムは、腫瘍などの組織を焼灼するように構成されてよい。
【背景技術】
【0002】
電磁(EM)エネルギー、そして特にマイクロ波及び高周波(RF)エネルギーは、生体組織を切断し、凝固させ、焼灼する能力があるため、電気手術に有用であることが見出されている。典型的には、EMエネルギーを体組織に送達するシステムは、EMエネルギー源を含む発電機と、エネルギーを組織に送達するために、発電機に接続される電気手術器具とを含む。従来の電気手術器具は、多くの場合、患者の体内に経皮的に挿入されるように設計されている。しかし、例えば標的部位が動いている肺または胃腸(GI)管の薄壁部分にある場合、器具を体内に経皮的に配置することは困難な場合がある。他の電気手術器具は、気道や、または食道もしくは結腸の内腔などの体内の経路を通すことができる外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡)により、標的部位に送達することができる。これにより、低侵襲性の治療が可能になって、患者の死亡率を低下させ、術中及び術後の合併症率を低下させることができる。
【0003】
マイクロ波EMエネルギーを使用する組織焼灼は、生体組織が主に水から構成されているという事実に基づいている。人間の軟器官組織は、通常、水分含有量が70%~80%である。水分子には永久的な電気双極子モーメントがあり、これは、分子全体に電荷の不均衡が存在することを意味する。この電荷の不均衡により、時間変化する電場を印加することによって生成される力に応答して、分子が回転して電気双極子のモーメントが印加された電場の極性と整合するので、分子が移動する。マイクロ波周波数では、急速な分子の振動が摩擦の加熱を引き起こし、その結果、熱の形で場のエネルギーが散逸する。これは誘電加熱として知られている。
【0004】
この原理は、マイクロ波焼灼療法で利用され、マイクロ波周波数で局所的な電磁場を印加することにより、標的組織の水分子が急速に加熱され、組織の凝固と細胞死が起こる。肺及びその他の器官における様々な状態を治療するために、マイクロ波放射電気手術器具を使用することが知られている。例えば、肺では、喘息の治療、及び腫瘍または病変の焼灼にマイクロ波放射を用いることができる。
【0005】
別のタイプの腫瘍治療は、エレクトロポレーション(または電気透過化)として知られる効果を利用する。この技術では、電気パルスが生体組織に印加されて、標的部位の細胞膜にナノスケールの細孔が開く。細孔は、通常は細胞膜を通過できない抗がん剤または他の物質が細胞に入るのを可能にする。次に、細孔は再封して細胞内に物質を捕捉してよく、細胞内で、治療効果を引き起こし得る(例えば、細胞を破壊するため)。エレクトロポレーションを使用して、細胞膜に永続的なナノスケールの細孔を作成することも知られている。これらの細孔は再封しないので、細胞の恒常性を破壊し、最終的に細胞死を引き起こす。この技術は、不可逆的エレクトロポレーションまたは非熱不可逆的エレクトロポレーションとして知られる。マイクロ波エネルギーを使用するなどの熱焼灼とは異なり、不可逆的エレクトロポレーションは細胞外基質を保存する。
【0006】
誘電泳動(DEP)は、誘電体粒子が不均一な電場にさらされたときに、誘電体粒子に力がかかる現象である。この力は、粒子を帯電させる必要はない。全ての粒子は、電場の存在下で誘電泳動活性を示す。ただし、力の強さは、媒体と粒子の電気的特性、粒子の形状とサイズ、及び電場の周波数に強く依存する。その結果、特定の周波数の場は、大きな選択性で粒子を操作することができる。誘電泳動は、様々なタイプの粒子を操作、輸送、分離、及び選別するために使用することができる。生体細胞には誘電特性があるため、誘電泳動は医療用途を有する。例えば、がん細胞を健康な細胞から分離する器具が作られている。
【0007】
本発明は上記考慮事項に照らして考案された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
最も一般的には、本発明は、マイクロ波エネルギーを生体組織に供給し、生体組織に対してエレクトロポレーションを実行するための電気手術システムを提供する。システムは、器具の遠位端の治療領域から生体組織を抽出するための電気手術器具を含む。システムは、抽出された生体組織内の特定の細胞型またはカテゴリ(例えば、がん性細胞、健康な細胞、がん幹細胞)の存在を識別するためのサイトメータまたはセルソータを含む。システムは、マイクロ波エネルギーを器具から治療領域に放射し、治療領域内の生体組織のエレクトロポレーションのために器具に電場を確立するようにさらに構成される。マイクロ波エネルギーは、組織測定、組織焼灼、または薬物の活性化(例えば、焼灼せずに組織を加熱)を実行するために使用されてよい。実行されるエレクトロポレーションは、可逆的(別名、一時的)エレクトロポレーションまたは非熱的不可逆的(別名、永久的)エレクトロポレーションであってよい。
【0009】
電気手術器具は、マイクロ波エネルギーを使用した組織焼灼と、低侵襲的なエレクトロポレーションとを行うことができる放射先端部分を有し得る。電気手術器具を使用して、マイクロ波焼灼及びエレクトロポレーションを別々に(例えば、順次に)または同時に実行してよい。放射先端部分は、外科用スコープデバイスを介した膵臓への挿入に適した寸法とされて、既知のRF焼灼技術に代わる迅速かつ正確な技術を提供し得る。膵臓内の腫瘍を低侵襲手術を使用して治療できるようにすることで、治療的理由と緩和的理由の両方のために、焼灼及び/またはエレクトロポレーション治療を使用することが実行可能な選択肢となり得る。
【0010】
本発明は膵臓で特定の用途を見出し得るが、肺、脳などの治療が厄介な他の部位での使用にも適している可能性がある。本明細書に開示される器具構造は、様々な設定で使用するための適切な長さ及び剛性を放射先端部分に提供することを可能にする。
【0011】
同じ器具を使用してマイクロ波焼灼とエレクトロポレーションを実行する機能を組み合わせることにより、器具を変更する必要なく、電気外科処置中に治療モダリティを迅速に変更することが可能である。標的組織をより効果的に治療するために、及び/または治療時間を最小限にするために、マイクロ波焼灼及びエレクトロポレーションを補完的に使用してよい。放射先端部分の直径が小さいため、放射先端部分を使用してマイクロ波エネルギーを組織に送達するとき、放射先端部分が熱くなる可能性がある。過度の加熱は健康な周囲の組織に損傷を与え得るため、マイクロ波エネルギーの適用後、放射先端部分が冷えるまで待つ必要があることが多い。本発明の器具を用いると、放射先端部分の過度の加熱を回避するために、マイクロ波エネルギーによる治療とエレクトロポレーションとを交互に行うことが可能である。これにより、全体的な治療時間を最小限に抑えることが可能である。
【0012】
電気手術器具はまた、組織抽出または組織生検を実行する能力を有する。このようにして、サイトメータまたはセルソータによる検査のために治療領域から生体組織を取得することができる。例えば、検査は、生体組織が、例えば、健康な細胞、がん性細胞、がん幹細胞などの1つまたは複数の所定の細胞型を含むかどうかを決定することを含み得る。ある実施形態では、サイトメータは、2つ以上の異なる細胞型またはカテゴリ、例えば、健康な細胞とがん細胞、またはがん幹細胞とがん細胞を区別することができ得る。従って、サイトメータを使用して腫瘍の存在を識別することができる。また、がん細胞を検出すると、前述のマイクロ波治療及び/またはエレクトロポレーション治療を、例えば、腫瘍を焼灼するために、治療領域に適用することができる。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号を供給するように構成された電気手術用発電機と、生体組織の治療領域に挿入するための電気手術器具であって、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号を受信するために電気手術用発電機に接続された同軸ケーブルと、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号を受信するための同軸ケーブルの遠位端に結合された棒状の放射先端部分であって、マイクロ波エネルギーをその遠位端から治療領域に放射し、エレクトロポレーション信号を使用してその遠位端に電場を確立して治療領域の生体組織をエレクトロポレーションするための放射先端部分と、生体組織を治療領域から運ぶための導管とを含む電気手術器具と、生体組織を受け取るための導管と流体連通しているサイトメータであって、受け取られた生体組織における第1の所定の細胞型の存在を検出するためのサイトメータとを備える電気手術システムが提供される。特定の細胞型の存在を検出することは、1つまたは複数の異なる細胞型からその特定の細胞型を選別または分類できることを含み得ることに留意されたい。例えば、がん性細胞は、がん性細胞を検出するために、健康な細胞から選別(例えば、分離)されてよい。健康な細胞は保存または廃棄されてよい。「がん性細胞」の分類は、1つまたは複数の異なる細胞型を含み得るが、それらはすべてがん性であることに留意されたい。また、「健康な細胞」の分類は、1つまたは複数の異なる細胞型を含み得るが、それらはすべて非がん性である。
【0014】
放射先端部分は、マイクロ波エネルギーを受け取り、伝えるための近位同軸伝送線であって、内部導体と、外部導体と、内部導体を外部導体から分離する誘電材料とを含む近位同軸伝送線と、近位同軸伝送線の遠位端に取り付けられた遠位針先端部であって、近位同軸伝送線の遠位端から長手方向に延びる剛性誘電体スリーブを含む遠位針先端部とを含み、棒状の放射先端部分は、同軸ケーブルの直径より小さい直径を有し、剛性誘電体スリーブは、近位同軸伝送線の内部導体に電気的に接続され、近位同軸伝送線の外部導体の遠位端を超えて延びる細長い導電性素子を囲み、細長い導電性素子は、マイクロ波エネルギーの半波長変成器として動作して、遠位針先端部から生体組織内にマイクロ波エネルギーを放射するように構成され、細長い導電性素子は、遠位針先端部の遠位端に露出された活性電極で終端し、活性電極は、近位同軸伝送線の外部導体の遠位端に電気的に接続された対極板から軸方向に離間され、活性電極及び対極板は、遠位針先端部に生体組織のエレクトロポレーションのための電場を確立するように構成される。
【0015】
遠位針先端部は、その電気的長さがマイクロ波エネルギーの半波長に対応する場合、半波長変成器として構成されてよい。遠位針先端部を半波長変成器として構成することの利点は、構成要素間の境界面、例えば、同軸ケーブルと近位同軸伝送線との間、及び近位同軸伝送線と遠位針先端部との間の反射を最小限に抑えることである。後者の境界面での反射係数は、インピーダンスの変動が大きいため、通常は大きくなる。半波長構成は、支配的な反射係数が近位同軸伝送線と組織との間の境界面の反射係数になるように、これらの反射を最小化する。近位同軸伝送線のインピーダンスは、マイクロ波エネルギーの周波数で良好な整合を提供するために、予想される組織インピーダンスと同一またはそれに近いものとなるように選択されてよい。
【0016】
放射先端部分の構成の結果として、同軸伝送線のインピーダンスは、遠位針先端部構造の(より小さな)インピーダンスではなく、組織によって「見える」可能性がある。遠位針先端部の物理的長さは、自由空間のマイクロ波エネルギーの半波長に対応する必要はない(実際におそらく対応しない)。なぜならば、遠位針先端部の形状と、遠位針先端部の近位同軸伝送線との相互作用は、遠位針先端部が半波長変成器として電気的に動作することを可能にしながら、遠位針先端部の物理的長さを制御するように選択できるからである。
【0017】
同軸ケーブルは、エレクトロポレーション信号を伝達するように構成されてよく、エレクトロポレーション信号は、棒状の放射先端部分によって受信されると、遠位針先端部で生体組織のエレクトロポレーションのための電場を確立する。活性電極は、遠位針先端部の表面に配置されてよい。
【0018】
エレクトロポレーション波形は、細胞膜に細孔を開くように構成された1つまたは複数の高電圧エネルギーパルスを含み得る。本発明は、治療薬が治療部位に存在し、それによって細胞膜の細孔を開くことにより、治療薬が細胞に入るのを容易または可能にするシナリオで使用されてよい。言い換えれば、本発明は、従来のエレクトロポレーション手順で使用されてよい。ある実施形態では、治療薬(例えば、薬物または局所化学療法)は、電気手術器具の導管を介して治療部位に導入されてよい。
【0019】
あるいは、またはさらに、エレクトロポレーションのためのエネルギーは、細孔を恒久的に開くように構成されてよく、それにより、細胞膜に不可逆的な破壊を引き起こし、細胞を死に至らしめる。言い換えれば、この器具は不可逆的エレクトロポレーション(IRE)に使用することができる。
【0020】
エレクトロポレーション波形は、1つまたは複数の急速な高電圧パルスを含み得る。本発明はこの範囲に限定される必要はないが、各パルスは、1nsから10msの範囲、好ましくは1nsから100μsの範囲のパルス幅を有し得る。可逆的エレクトロポレーションには、より短い持続時間のパルス(例えば、10ns以下)が好ましい場合がある。不可逆的エレクトロポレーションの場合、可逆的エレクトロポレーションと比較して、より長い持続時間のパルスまたはより多くのパルスが使用されてよい。
【0021】
好ましくは、各パルスの立ち上がり時間は、パルス持続時間の90%以下、より好ましくはパルス持続時間の50%以下、最も好ましくはパルス持続時間の10%以下である。より短いパルスの場合、立ち上がり時間は100psのオーダーになる場合がある。いくつかの例では、エレクトロポレーション波形は、高周波(RF)または低周波電磁信号であってよい。
【0022】
各パルスは、10Vから10kVの範囲、好ましくは1kVから10kVの範囲の振幅を有し得る。各パルスは、接地電位からの正のパルス、または接地電位からの正と負のパルスを交互に繰り返すシーケンスであってよい。
【0023】
エレクトロポレーション波形は、単一のパルスまたは複数のパルス、例えば、パルスの周期列であってよい。波形は、50%以下、例えば、0.5%から50%の範囲のデューティサイクルを有してよい。
【0024】
一例では、一連の10から100パルスで送達される200msのオーダーのパルス幅を不可逆的エレクトロポレーションに使用してよい。一例では、エレクトロポレーション波形は、送達の間が約1分で3回送達される振幅1.5kVの10×300μsのパルスを含み得る。この波形は、肝細胞癌の細胞アポトーシスまたは死を引き起こすことができる。
【0025】
エレクトロポレーション波形は、所望の効果に応じて選択された治療期間中に送達されてよい。例えば、治療期間は短くてよい、例えば、1秒未満、または数秒、または約1分であってよい。あるいは、治療期間はより長くてよい、例えば最大1時間であってよい。
【0026】
同軸ケーブルは、近位端で電気手術用発電機に接続可能である従来の低損失同軸ケーブルであってよい。同軸ケーブルは、誘電材料によって外部導体から分離された中心導体を有し得る。同軸ケーブルは、ケーブルを絶縁し、保護するための外部保護シースをさらに含んでよい。いくつかの例では、保護シースは、組織がケーブルに付着するのを防ぐために、非粘着材料から作製されてよい、または非粘着材料でコーティングされてよい。放射先端部分は、同軸ケーブルの遠位端に位置し、同軸ケーブルに沿って伝達されるEMエネルギーを受け取るように接続されている。
【0027】
近位同軸伝送線は、同軸ケーブルの遠位端に接続されてよい。詳細には、近位同軸伝送線の内部導体及び外部導体は、それぞれ、同軸ケーブルの中心導体及び外部導体に電気的に接続されてよい。近位同軸伝送線で使用される材料は、同軸ケーブルで使用される材料と同じであっても異なっていてもよい。近位同軸伝送線で使用される材料は、近位同軸伝送線の所望の可撓性及び/またはインピーダンスをもたらすように選択されてよい。例えば、近位同軸伝送線の誘電材料は、標的組織とのインピーダンス整合を改善するように選択されてよい。
【0028】
近位同軸伝送線の構成要素の寸法は、可撓性同軸ケーブルのインピーダンスと同一か、またはそれに近いインピーダンス(例えば、約50Ω)を提供するように選択されてよい。内部導体は、高導電性の材料、例えば、銀から形成されてよい。
【0029】
放射先端部分は、可撓性同軸ケーブルに、それらの間の接合部を覆って取り付けられたカラーまたはコネクタによって固定されてよい。カラーは、導電性であってよく、例えば真ちゅうから形成されてよい。カラーは、外部導体を可撓性同軸ケーブルの外部導体と電気的に接続し得る。
【0030】
放射先端部分の外径は、同軸ケーブルの外径よりも小さい。これは、放射先端部分の標的組織への挿入を容易にし、放射先端部分の操作性を改善し得る。この構成は、十二指腸壁を通して膵臓への放射先端部分の挿入を容易にし得るので、膵臓の腫瘍の治療に特に適している可能性がある。
【0031】
放射先端部分は、組織がそれに付着するのを防ぐために、付着防止コーティング(例えば、PTFE製)を含み得る。付着防止コーティングはパリレンCまたはパリレンDから形成されてよい。付着防止コーティングは、エレクトロポレーション信号の組織への効率的な送達を容易にするために露出している活性電極と対極板とを除いて、放射先端部分の全長に沿って形成されてよい。付着防止コーティングは、焼灼のアクティブゾーンに対応する長さに沿ってのみ、例えば、(活性電極及び対極板を除いて)遠位端から2cm後方に延びる領域に沿ってのみ適用されてよい。針が部分的にしかコーティングされていない場合、針は、針を熱くし得る熱エネルギーの蓄積の影響を受けにくくなる。
【0032】
いくつかの実施形態では、対極板は、近位同軸伝送線の外部導体の遠位部分によって形成されてよい。このように、放射先端部分は、エレクトロポレーション波形を受信したときに、双極エレクトロポレーション電気手術器具として機能し得る。外部導体の遠位部分を対極板として使用することにより、電場を遠位針先端部の周囲に局在化させてよく、その結果、エレクトロポレーションを遠位針先端部の周囲の領域で実施し得る。外部導体の遠位部分は、近位同軸伝送線の遠位端に、遠位針先端部に隣接して位置してよい。外部導体がニチノールまたは他の何らかの可撓性導電性材料から形成される場合、対極板は、ニチノールよりも高い導電性を有する材料の外部導体の遠位部分に形成されたコーティングを含み得る。材料は、例えば、銀であってよい。エレクトロポレーション信号の効率的な送達を容易にするために、活性電極及び対極板は、研磨されてよい、すなわち、可能な限り滑らかにされてよい。
【0033】
細長い導電性素子は、その長さに沿ってマイクロ波エネルギーを放射して、遠位針先端部の周囲に位置する領域の組織を焼灼してよい。場合によっては、細長い導電性素子は、遠位針先端部内に延びる内部導体の遠位部分であってよい。
【0034】
活性電極は、細長い導電性素子に電気的に接続されている。このようにして、エレクトロポレーション波形は、細長い導電性素子を介して活性電極に送達されてよい。活性電極はまた、例えば、遠位針先端部の周囲にマイクロ波エネルギーの放出を集中させるために、放射先端部分のマイクロ波放射プロファイルを形成するのに役立ち得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、活性電極は、細長い導電性素子と同軸に配置された導電性リングであってよい。換言すれば、導電性リングの中心軸は、細長い導電性素子の長手方向軸と整列し得る。これは、エレクトロポレーション波形を長手方向軸を中心に対称的に組織に送達するのに役立ち得る。これは、軸対称のマイクロ波放射プロファイルを提供するのにも役立ち得る。
【0036】
導電性リングは、その内部に長手方向に延びるチャネルを有してよく、細長い導電性素子の一部は、チャネル内に含まれてよい。このようにして、細長い導体は、チャネル内の活性電極に電気的に接続されてよい。チャネルの直径は、細長い導電性素子の外径と実質的に一致する寸法にされてよく、その結果、チャネルは、細長い導電性素子の周りに締まりばめを形成し得る。これは、細長い導電性素子に対して活性電極を固定するのに役立ち得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、遠位針先端部は、導電性リングの遠位端に取り付けられた先端要素を含み得る。先端要素は、誘電材料で作られてよい。先端要素の誘電材料は、放射先端部分と標的組織との間のインピーダンス整合を改善するように選択されてよい。先端要素の一部は、チャネル内に突出して、先端要素をチャネルに対して所定の位置に保持してよい。
【0038】
先端要素の遠位端を尖らせてよい(例えば、鋭利にしてよい)。これは、標的組織への遠位針先端部の挿入を容易にし得る。例えば、これは、十二指腸壁または胃壁を通して膵臓への器具の挿入を容易にし得る。
【0039】
遠位誘電体スリーブは、その内部に、細長い導電性素子を受け入れるためのボアを形成してよい。遠位誘電体スリーブは、近位同軸伝送線の誘電材料とは異なる材料で作製されてよい。
【0040】
遠位誘電体スリーブは、近位同軸伝送線の誘電材料よりも高い剛性を有し得る。遠位誘電体スリーブの剛性を高くすると、遠位針先端部の標的組織への挿入が容易になり、一方、近位同軸伝送線の剛性を低くすると、放射先端部が曲げやすくなり得る。これにより、器具を標的組織に挿入することも依然可能なまま、狭く曲がりくねった経路を通って器具を誘導することを可能にし得る。例えば、近位同軸伝送線の誘電材料は、可撓性誘電材料(例えば、PTFE)で作られてよく、遠位誘電体スリーブは、例えばセラミック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはガラス充填PEEKで作られてよい。遠位針先端部の先端要素は、遠位誘電体スリーブと同じ材料で作られてよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、遠位誘電体スリーブは、ジルコニアを含み得る。本発明者らは、ジルコニアが遠位針先端部を組織に挿入するための良好な剛性を提供することを発見した。さらに、本発明者らは、ジルコニア遠位誘電体スリーブを使用することにより、標的組織との良好なインピーダンス整合を提供し得ることを見出した。
【0042】
いくつかの実施形態では、外部導体の遠位部分が、遠位誘電体スリーブの近位部分と重なってよい。言い換えれば、遠位誘電体スリーブの近位部分は、外部導体の遠位部分内に含まれてよい。これは、遠位針先端部と近位同軸伝送線との間の接続を強化するのに役立ち得る。
【0043】
外部導体の遠位部分が遠位針先端部の近位部分に重なる放射先端部分の長さは、近位伝送線と遠位針先端部との間に中間同軸伝送線を形成し得る。中間同軸伝送線は、必要な電気的長さ(半波)を得ながら、より短い物理的長さを可能にするために、近位同軸伝送線よりも高い誘電率を有し得る。マイクロ波周波数では、遠位針先端部の遠位部分は、中間同軸伝送線に接続されたオープンエンドの装荷モノポールとして機能し得る。遠位針先端部はまた、焼灼ゾーンを形成するためにオープンエンドの同軸モノポールで終わる単一の構造と見なされてよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、遠位誘電体スリーブは、一対の協働部品によって形成されてよく、協働部品のそれぞれは、細長い導体を受け入れるためにその表面に形成された長手方向の溝を有する。遠位誘電体スリーブのこのような構造は、放射先端部分の組み立てを容易にし得る。協働部品が組み立てられて遠位誘電体スリーブを形成するとき、協働部品の溝は、細長い導体が受け入れられるボアを形成し得る。協働部品は、接着剤を使用して一緒に固定されてよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、近位同軸伝送線の外部導体は、ニチノールで形成されてよい。例えば、外部導体は、ニチノール管で形成されてよい。本発明者らは、ニチノールが、十二指腸壁を貫通できる力を伝えるのに十分な長手方向の剛性を有することを見出した。さらに、ニチノールの可撓性は、放射先端部分の曲げを容易にし得るので、狭い曲がった経路を通して器具を誘導し得る。従って、ニチノールの外部導体を形成することで、膵臓の腫瘍を治療するための器具の使用を容易にし得る。
【0046】
導電性外層は、外部導体の外面上に形成されてよく、導電性外層は、ニチノールよりも高い導電性を有する。導電性外層は、放射先端部分におけるマイクロ波エネルギーの損失を低減し、遠位針先端部へのマイクロ波エネルギー送達の効率を改善するのに役立ち得る。導電性外層の厚さは、放射先端部分の可撓性に対する導電性外層の影響を最小限にするために、ニチノールの厚さよりも薄くてよい。
【0047】
放射先端部分は、30mm以上、好ましくは40mmの長さを有し得るが、100mmの長さがあってもよい。この長さは、膵臓内のすべての場所で治療領域へのアクセスを可能にし得る。放射先端部分は、1.2mm以下の最大外径を有し得る。例えば、最大外径は、19G(1.067mm)または22G(0.7176mm)と類似または同じであってよい。これは、治癒の過度の遅延を引き起こさないように、器具の挿入が原因の貫通穴を減少または最小化し得る。貫通穴のサイズを最小化することはまた、貫通孔が開いたまま治癒し、消化管と体腔との間に瘻または不必要なチャネルを引き起こすという望ましくない状況を回避し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、内部導体は、可撓性同軸ケーブルの遠位端から延びてよく、内部導体は、可撓性同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続され、内部導体は、可撓性同軸ケーブルの中心導体の直径よりも小さい直径を有し得る。これにより、放射先端部分の可撓性を改善し得る。例えば、内部導体の直径は、0.2mmから0.4mmであってよい。内部導体の直径は、放射先端部分に沿った損失(及び加熱)を決定する主要なパラメータが、内部導体の直径の関数である導体損失であることを考慮に入れてよい。その他の関連パラメータは、遠位誘電体スリーブ及び近位同軸伝送線の誘電材料の誘電率と、外部導体に使用される直径と材料とである。
【0049】
一実施形態では、導管は、放射先端部分と一体化されてよい。例えば、導管は、内部導体及び細長い導電性素子の中空チャネルまたはボアであってよい。また、放射先端部分が先端要素を含む場合、導管は、先端要素の中空チャネルまたはボアであってよい。この構成は、コンパクトなシステムの利点を提供する。良好な導体において本明細書で提案されるマイクロ波エネルギーの表皮深さは、伝達されるエネルギーに実質的に影響を与えることなく、内部導体及び細長い導電性素子が中空になるのに十分に小さいため、達成可能である。
【0050】
ある実施形態では、導管は、生体組織をボアから離れて運ぶために内部導体に接続された少なくとも1つのパイプを含む。
【0051】
一実施形態では、導管は、近位同軸伝送線の軸に沿って延び、軸上に出口を含む。この実施形態では、同軸ケーブルは、エンドフィードではなくサイドフィードであってよい、すなわち、コネクタは、近位同軸伝送線に対して角度を有して、すなわち、構造の長さに対して90°で配置されてよい。このように、マイクロ波エネルギーとエレクトロポレーション信号は、放射先端部分に対して角度を有して接続されているが、生体組織は、電気手術器具の長手方向軸に沿って抽出される。代替実施形態では、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号は、近位同軸伝送線の軸に沿って(すなわち一直線に)放射先端部分に供給され、生体組織は、近位同軸伝送線の軸に対して角度を有する(例えば、構造の長さに対して90°である)少なくとも1つのパイプを使用して抽出される。このように、マイクロ波エネルギーとエレクトロポレーション信号は、電気手術器具の長手方向軸と一直線の放射先端部分に接続されるが、生体組織は、角度を有して抽出される。
【0052】
電気手術システムは、患者の体内に挿入するための可撓性挿入コードを有する外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡)をさらに備えてよく、可撓性挿入コードはその長さに沿って延びる器具チャネルを有し、電気手術器具は器具チャネル内に適合する寸法にされる。
【0053】
本明細書では、用語「外科用スコープデバイス」は、侵襲的処置中に患者の体内に導入される剛性または可撓性の(例えば、操作可能な)導管である挿入管を備えた任意の外科用デバイスという意味で使用されてよい。挿入管は、器具チャネルと(例えば、光を伝えて挿入管の遠位端で治療部位を照らす、及び/または治療部位の画像をキャプチャするための)光チャネルとを含み得る。器具チャネルは、侵襲的な手術用ツールを受け入れるのに適した直径を有し得る。器具チャネルの直径は5mm以下であってよい。本発明の実施形態では、外科用スコープデバイスは、超音波対応の内視鏡であってよい。
【0054】
電気手術システムは、電気手術用発電機によって供給されるマイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号を制御するためのコントローラを含み得る。例えば、コントローラを使用して、マイクロ波エネルギーの電力または周波数を設定してよい。また、コントローラを使用して、エレクトロポレーション信号のパルス幅、パルスデューティサイクル、またはパルス振幅を設定してよい。このようにして、コントローラは、例えば組織を測定または組織を焼灼するためのマイクロ波エネルギーの効果、及び例えば可逆的エレクトロポレーションまたは不可逆的エレクトロポレーションを実行するためのエレクトロポレーション信号の効果を制御するための機構を提供する。
【0055】
使用中、電気手術システムによって送達されるマイクロ波電力は、異なるタイプの生体組織の異なるインピーダンス値のために、異なる量によって反射される場合があり、これは、放射先端部分と接触組織の間のインピーダンスの不一致に対応する。このような反射は、発電機からのマイクロ波エネルギーの出力電力レベルを選択するときに考慮されてよい。あるいは、システムは、電気手術器具に送達される電力を監視及び調整してよい。例えば、システムは、治療領域から反射して戻るマイクロ波電力を検出するための検出器を含んでよく、コントローラは、検出された反射マイクロ波電力の変化に基づいてマイクロ波放射の制御可能な電力レベルを調整してよい。
【0056】
電気手術器具は、組織の測定を実行する能力を有してよい。組織の誘電特性を測定する能力(測定された情報)は、腫瘍が存在することが疑われる組織の領域に電気手術器具が最初に挿入されたときにがん性組織を見つけるという点で重要な利点を提供し得る。すなわち、多数の組織サンプルを採取する必要が無くなる可能性がある。また、この方法で組織の特性を測定する能力により、偽陰性が発生するリスクを低減し得る。具体的には、反射電力の変化、例えば、電気手術器具と生体組織との間の境界面から戻るマイクロ波信号の大きさの変化は、電気手術器具の遠位端に存在する物質の種類の変化を示し得る。コントローラは、例えば健康な組織からがん性組織への特定の予想される変化を認識するように構成されてよい。ある実施形態では、コントローラは、特定の組織型が検出されたときに(例えば、ユーザインタフェースを介して)システムのユーザに通知してよい。
【0057】
検出器はまた、電気手術器具に送達される順方向電力を検出するように構成されてよい。従って、コントローラは、生体組織に送達される電力の量を決定することができてよい。コントローラは、検出された順方向及び反射マイクロ波電力に基づいてマイクロ波放射の制御可能な電力レベルを調整して、所定のエネルギー送達プロファイルに従ったマイクロ波エネルギーを送達するように構成されてよい。コントローラは、検出された反射マイクロ波電力の変化に基づいて、複数の所定のプロファイルから所定のエネルギー送達プロファイルを選択するように構成されてよい。
【0058】
所定の各エネルギー送達プロファイルは、組織型とリンクされてよい。例えば、血液へのエネルギー送達プロファイルは、壊れた血管を密封する温度の上昇を引き起こすのに十分な電力の送達を確実にするように構成されてよい。また、がん性組織へのエネルギー送達プロファイルは、組織を焼灼するのに十分な電力の送達を確実にするように構成されてよい。
【0059】
コントローラは、電気手術器具の遠位端で生体組織のインピーダンスの大きさ(及び/または位相)を測定し、測定されたインピーダンスに従って所定のエネルギー送達プロファイルを選択するように構成されてよい。
【0060】
正確な検出を確実にするために、システムは、反射電力を順方向電力から分離するように構成されてよい。例えば、システムは、発電機、器具、及び検出器の間に接続されたサーキュレータを含んでよく、発電機からのマイクロ波エネルギーの順方向経路は、サーキュレータの第1のポートから第2のポートに進み、器具からのマイクロ波エネルギーの反射経路は、サーキュレータの第2のポートから第3のポートに進み、検出器は、サーキュレータの第3のポートからの電力出力を結合するように接続された第1の方向性結合器を含む。
【0061】
順方向電力を検出するために、検出器は、電力入力をサーキュレータの第1のポートに結合するように接続された第2の方向性結合器を含み得る。
【0062】
順方向経路と反射経路の間の分離を改善するために、1つまたは複数の追加のサーキュレータが、第2の方向性結合器とサーキュレータとの間に接続されてよい。本発明は、順方向信号と反射信号との間に必要な分離を提供するための1つまたは複数のサーキュレータの使用に限定されない、すなわち、指向性の値が高い方向性結合器、例えば導波管結合器が使用されてよい。
【0063】
電気手術用発電機のマイクロ波エネルギー源は、調整可能な出力周波数を有し得る。例えば、エネルギー源に複数の発振器があってよく、各発振器は増幅器に選択的に接続可能である。あるいは、エネルギー源は可変周波数発電機を含み得る。周波数は、例えば、治療する組織または治療領域のサイズに応じて、使用前に選択されてよい。コントローラは、例えば、反射マイクロ波電力の変化に基づいて、使用中の周波数を調整するように構成されてよい。
【0064】
このシステムは、電気手術器具の放射先端部分のインピーダンスを、外科的処置(例えば、トンネリング)中に器具の遠位端の生体組織と整合させるように配置されたインピーダンス整合機構を含み得る。放射先端部分に提示されるインピーダンスの変動に基づくインピーダンス調整及び/またはエネルギープロファイル調整を使用して、トンネリング手順中に一定の直径を有する焼灼のトラックが確実に作成されてよい。
【0065】
サイトメータ(別名セルソータ)は、サイトメータが電磁場を使用して誘電泳動(DEP)力で細胞を選択的に電気操作して、細胞の電磁場に対する感受性に応じて細胞が異なる物理的位置またはビンに動的に分類されるという点で、誘電泳動セルソータであってよい。すなわち、第1の所定の細胞型(例えば、がん性細胞)を特定の電磁場に曝露することによって、その細胞に第1の物理的位置(例えば、ウェルまたはビン)への第1の軌道を採用させてよく、一方、他の細胞(例えば、健康な細胞)を同じ電磁場に曝露することによって、これらの細胞に第2の物理的位置への第2の軌道を採用させてよい。このようにして、がん性細胞と非がん性(例えば健康な)細胞はグループに選別または分類され、各グループは異なる場所に配置される。このようにして、特定の場所(例えば、第1の物理的位置)における細胞の存在を識別することは、第1の所定の細胞型(例えば、がん性細胞)の存在を決定または検出するための機構を提供する。
【0066】
また、サイトメータは、治療部位から細胞を抽出し、抽出された細胞を細胞選別のために準備し、次にサイトメータを使用して第1の所定の細胞型の存在を識別するように機能する細胞識別アセンブリ(またはモジュール)の一部であってよい。例えば、細胞識別アセンブリは、電気手術器具の遠位端の治療領域から生体組織を抽出するように、導管と流体連通している(例えば、接続されている)吸引ポンプを含み得る。また、細胞識別アセンブリは、サンプルまたはサイトメータサンプルを生成するために、抽出された生体組織からの細胞を流体中に懸濁するサンプル生成器を含み得る。次に、1つまたは複数の特定の細胞型の存在を決定するために、抽出された生体組織の細胞に対して細胞選別を実行できるように、サンプルがサイトメータに提供される。ある実施形態では、サイトメータは、がん幹細胞を識別するように構成される。別の実施形態では、サイトメータは、健康な細胞とがん性細胞、またはがん幹細胞とがん性細胞を区別するように構成される。
【0067】
システムは、導管と流体連通する流体注入機構をさらに備えてよく、流体注入機構は、治療領域に流体(例えば、薬物または局所化学療法剤)を注入するように動作可能である。例えば、流体注入機構は、導管と流体連通しているタンク(またはコンパートメントまたは容器)、及びタンクから電気手術器具の遠位端の治療領域に流体を注入するための吸引ポンプを含み得る。流体注入機構は、細胞識別アセンブリの構成要素の少なくともいくつか(例えば、吸引ポンプまたは容器)を共有し得る。例えば、流体ラインは、電気手術器具から離れて延びて、接合部で2つの別個の経路に分岐してよい。接合部は、電気手術器具からサイトメータまでの第1の経路(例えば、細胞検出用)と、流体注入機構から電気手術器具までの第2の経路(例えば、流体注入用)の間で選択を行うために(例えば、コントローラによって)制御可能な1つまたは複数の弁を含み得る。
【0068】
本明細書において、用語「内部」とは、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(例えば、軸)に対して半径方向により近いことを意味する。用語「外部」とは、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(軸)から半径方向により離れていることを意味する。
【0069】
本明細書では、用語「導電性(conductive)」は、文脈による別段の指示がない限り、導電性(electrically conductive)という意味で使用される。
【0070】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」とは、細長い電気手術器具の端部を指す。使用時、近位端は、RF及び/またはマイクロ波エネルギーを供給するための発電機に近く、遠位端は発電機から遠い。
【0071】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を指して広く使われてよいが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲を指す。マイクロ波EMエネルギーの好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzを含み、5.8GHzが好まれる場合がある。デバイスは、これらのマイクロ波周波数のうちの複数の周波数でエネルギーを送達してよい。
【0072】
「高周波」または「RF」という用語は、300kHz~400MHzの周波数を示すために使用されてよい。「低周波数」または「LF」という用語は、30kHz~300kHzの範囲の周波数を意味し得る。
【0073】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明の実施形態である電気手術システムの概略図である。
【
図2(a)】本発明の実施形態である電気手術システムの一部を示すブロック図である。
【
図2(b)】
図2(a)のサイトメータの概略図を示す。
【
図3】本発明の実施形態による電気手術器具の概略断面側面図である。
【
図4(a)】
図3の電気手術器具の遠位端の概略断面側面図である。
【
図4(b)】
図3の電気手術器具の近位端の概略断面側面図である。
【
図5】本発明の実施形態で使用し得る活性電極の概略図を示す。
【
図6】本発明の実施形態で使用し得る先端要素の概略図を示す。
【
図7】本発明の実施形態で使用し得る遠位誘電体スリーブの一部の概略図を示す。
【
図8】本発明で使用することができる別の先端要素の概略斜視図である。
【
図9】
図8の先端要素を含む器具の遠位先端部分の断面図である。
【
図10】
図3の電気手術器具の代替の近位端の概略断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
この説明では、焼灼という用語は、がん性組織の領域、例えば、腫瘍の焼灼、または電気手術器具が健康な組織の層を通過するときに作られたトラックまたはチャネルを密封するための焼灼を指してよい。後者は一般に低レベルの電力を必要とし、電気手術器具が組織を通って戻るときに制御された量のエネルギーが様々な組織型内に放たれることを確実にするために、途中で見られる組織インピーダンスに一致する動的エネルギーでトラック焼灼を行ってよい。しかしながら、本発明は、動的インピーダンス整合が実施されている制御された焼灼を実行することに限定される必要はない。
【0076】
ある実施形態では、実質的にGB特許出願第1819683.2号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているような電気手術器具が使用される。この電気手術器具は、PCT/GB2007/003842(参照によりその全体が組み込まれる)に実質的に記載されている3機能性アンテナとして、または、PCT/GB2010/001858(参照によりその全体が組み込まれる)に実質的に記載されている電気手術器具として実行できるように変更される。例えば、電気手術器具は、生検組織(例えば、体液または細胞)を抽出するためのチャネルを含むように変更される。さらに、組み合わせは、次に、細胞識別アセンブリまたはサイトメータ(別名セルソータ)を含むように変更されて、生検によって得られた細胞を、例えば、健康な細胞とがん性細胞、またはがん性細胞とがん幹細胞のいずれかに分類できるようにする。使用時、電気手術器具を使用して、細胞を感作させるために、すなわち、細胞膜(または細孔)を開いて細胞をマイクロ波エネルギーに対してより敏感にするために、細胞に対してエレクトロポレーションを行うことができる。また、薬物(例えば、局所化学療法剤)は、例えば、生検チャネルを介して感作された細胞に送達することができ、次に、マイクロ波エネルギーを使用して、化学療法剤を活性化することができる。さらに、不可逆的エレクトロポレーションを細胞に対して行って、細胞を焼灼することができる。さらに、焼灼はマイクロ波エネルギーを使用して行うことができる。
【0077】
図1は、侵襲的電気手術器具の遠位端にマイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーションのためのエネルギーを供給することができる電気外科焼灼装置1の概略図である。システム1は、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーションのためのエネルギーを制御可能に供給するための発電機2を備える。エレクトロポレーションのためのエネルギーは、高周波(RF)または低周波(LF)帯域のパルスまたは正弦波(例えば、連続波電磁波)エネルギーを含み得る。
【0078】
この目的のために好適な発電機が、参照により本明細書に組み込まれるWO2012/076844に記載されている。発電機は、送達に適切な電力レベルを判定するために、器具から戻って受信される反射信号を監視するように構成されてよい。例えば、発電機は、最適な送達電力レベルを判定するために、器具の遠位端で見込まれるインピーダンスを計算するように構成されてよい。
【0079】
発電機2は、インタフェースケーブル4によってインタフェースジョイント6に接続されている。示されている例では、インタフェースジョイント6はまた、流体フローライン7を介して流体システム8に接続されている。いくつかの例では、流体システム8は、収集タンク(または容器)、及びポンプを含む。収集タンクは、遠位端アセンブリ(以下を参照)に近い治療部位から生検組織(体液または細胞)を収集するために使用されてよく、ポンプを使用して組織サンプルをタンクに吸引してよい。さらに、流体システム8は、流体(例えば、薬物または局所化学療法剤)を治療部位に導入するための機構を含み得る。いずれの場合でも、流体フローライン7は、インタフェースジョイント6と流体システム8との間で流体を運ぶ。流体システム8はまた、生検組織の1つまたは複数の特定の細胞型の存在を識別するために生検組織の細胞を選別するためのサイトメータまたはセルソータを含む。例えば、サイトメータは、細胞を、健康な細胞、がん細胞、がん幹細胞のうちの1つまたは複数として分類するように構成されてよい。ある実施形態では、サイトメータは、健康な細胞とがん性細胞、またはがん性細胞とがん幹細胞のいずれかを区別するように動作可能である。
【0080】
インタフェースジョイント6は、例えば、1つまたは複数の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向(前後)の動きを制御するために、トリガをスライドさせることによって動作可能な器具制御機構を収容することができる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御をもたらすために、インタフェースジョイント上に複数のスライド式トリガがあってよい。インタフェースジョイント6の機能は、発電機2、流体システム8、及び器具制御機構からの入力を、インタフェースジョイント6の遠位端から延びる単一の可撓性シャフト12に組み合わせることである。
【0081】
可撓性シャフト12は、外科用スコープデバイス14の器具(作業)チャネルの全長を通して挿入可能であり、外科用スコープデバイス14は、本発明の実施形態では、内視鏡超音波装置を含み得る。
【0082】
外科用スコープデバイス14は、いくつかの入力ポートと、器具コード20がそこから延びる出力ポートとを有する本体16を含む。器具コード20は、複数の内腔を取り囲む外部ジャケットを備える。複数の内腔は、本体16から器具コード20の遠位端まで様々なものを移送する。複数の内腔のうちの1つは、可撓性シャフト12を受け入れるための器具チャネルである。他の内腔は、例えば、遠位端で照明を提供するために、または遠位端から画像を収集するために、光放射を伝えるチャネルと、超音波信号を伝達するための超音波信号チャネルとを含み得る。本体16は、遠位端を見るための接眼部22を備えてよい。
【0083】
内視鏡超音波デバイスは、一般的には、超音波信号チャネルの出射孔を越えて、器具コードの遠位先端に、超音波トランスデューサを備える。超音波トランスデューサからの信号は、好適なケーブル26によって、器具コードを伝わってプロセッサ24に返信されてよく、プロセッサ24は、既知の方法で画像を生成することができる。器具チャネルが、器具コード内に形成されて、器具チャネルを出る器具が超音波システムの視野を通るように向けられて、標的部位における器具の位置に関する情報を提供し得る。
【0084】
可撓性シャフト12は、外科用スコープデバイス14の器具チャネルを通過し、器具コードの遠位端で(例えば、患者の内部へ)突出する形に作られた遠位アセンブリ18(
図1では縮尺どおりに描かれていない)を有する。
【0085】
以下に述べる遠位アセンブリ18の構造は特に、超音波内視鏡(EUS)デバイスとともに使用するように設計されてよく、それにより、遠位端アセンブリ18の最大外径は、2.0mm以下、例えば1.9mm未満(より好ましくは、1.5mm未満)であり、可撓性シャフト12の長さは1.2m以上にすることができる。ある実施形態では、遠位端アセンブリ18の最大外径は、約19G(1.067mm)または22G(0.7176mm)である。
【0086】
本体16は、可撓性シャフト12に接続するための電源入力ポート28を含む。以下に説明するように、可撓性シャフト12の近位部分は、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーションエネルギーを発電機2から遠位アセンブリ18に伝達することができる従来の同軸ケーブルを含み得る。
【0087】
上記のように、器具コード20の少なくとも遠位端の位置を制御できることが望ましい。本体16は、器具コード20を通って延びる1本または複数の制御ワイヤ(図示せず)により、器具コード20の遠位端に機械的に結合された制御アクチュエータを備えてよい。制御ワイヤは、器具チャネル内、または制御ワイヤ自体の専用チャネル内を移動してよい。制御アクチュエータは、レバーもしくは回転可能なノブ、または他の既知の任意のカテーテル操作デバイスであってよい。器具コード20の操作は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)画像から組み合わせられた仮想3次元マップを使用して、ソフトウェアで支援してよい。
【0088】
一般的に、遠位アセンブリ18(別名針アンテナまたはアンテナ構造)の一実施形態は、誘電測定を行う目的または十分に高いレベルのマイクロ波エネルギーを生体組織に導入して制御した組織焼灼を引き起こす目的で、マイクロ波エネルギーを順方向及び逆方向に伝達することを可能にして、誘電情報の測定を可能にし、制御された組織焼灼または組織測定を引き起こしながら、マイクロ波信号の伝播を可能にする環境設定を混乱させることなく組織サンプル(体液または細胞)を抽出できるようにする任意の適切なアンテナ構造を含む。さらに、アンテナ構造は、組織(例えば細胞)のエレクトロポレーション(例えば、可逆的または不可逆的エレクトロポレーション)を実行するために、エレクトロポレーション信号を使用して電場を確立するケーブルでなければならない。
【0089】
本発明は、アンテナ内の中心導体が直径約0.3~0.5mmであるという事実を利用するが、動作周波数が14.5GHzのとき、適切な導電性材料に沿って、マイクロ波エネルギーのほとんどすべてが流れるまたは輸送されることを可能にするために必要な壁厚は、約0.01mmにすぎない。従って、理論的には、中心導体の中心を除去して、チャネルとして利用可能な直径約0.2~0.4mmのボア(または導管)を残すことができ、チャネルは、例えば、固形塊内の嚢胞または細胞から体液を除去するために、治療部位に流体を注入または治療部位から流体を抽出するために使用できる。このチャネルは、針アンテナに出入りする他の液体及び/または固体の輸送にも使用できることに留意することは大切である。例えば、流体、薬物(例えば、局所化学療法剤)、特定の組織マーキング及び/または識別用のイメージングまたは造影剤である。
【0090】
この説明では、以下の機能を実行し得るアンテナ構造及びシステムについて説明する。
-誘電情報を測定して、健康な組織とがん性組織の型、状態、場所を判断すること。
【0091】
-針の先端が腫瘍の中心、または治療が必要な可能性のある他の生体組織の内側にあることを確認して、針生検を行うこと。
【0092】
-針生検を行って、生検組織に細胞選別またはサイトメトリを使用して、特定の細胞型(がん性細胞など)の存在を識別すること。
【0093】
-腫瘍またはその他の不健康な組織構造と健康な組織の小さな領域(安全マージン)とを(マイクロ波エネルギー及び不可逆的エレクトロポレーションによって)制御可能に焼灼すること。
【0094】
-可逆的エレクトロポレーションを介して細胞を制御可能に感作して、細胞膜(または細孔)を開き、細胞がマイクロ波焼灼の影響を受けやすくすること。
【0095】
-感作された細胞内に薬物(例えば、局所化学療法剤)を送達し、次にマイクロ波エネルギーを使用して(例えば、焼灼せずに加熱することにより)薬物を活性化すること。
【0096】
-治療中及び治療後にさらに針生検を行うこと、及び
-針の引き抜き中に針アンテナによって作られたチャネルを(マイクロ波エネルギーまたは不可逆的エレクトロポレーションによって)制御可能に焼灼して、播種を防ぐこと。
【0097】
組織測定、組織生検、及び組織焼灼を含む複合手順により、最初の試行中にがん性組織(体液または細胞)の位置を特定でき、針チャネル(またはトラック)は制御された焼灼にさらされるため、針アンテナの遠位先端またはその周辺に存在し得るがん性細胞が死に至るので、がん性細胞をチャネルを通して引き戻すリスクを軽減できる。
【0098】
このデバイスは、上記の機能の任意の組み合わせを実行するために使用できることに留意されたい。例えば、このデバイスは、(i)誘電情報を測定して、健康な組織及びがん性組織の型、状態、及び場所を判断する、(ii)がん性組織の位置を特定する際に、針の先端が腫瘍の中心の内側にあることを確信して針生検を行う、(iii)生検組織に細胞選別またはサイトメトリを使用して、特定の細胞型(例:がん幹細胞)の存在を識別する、(iv)可逆的エレクトロポレーションによって細胞を制御可能に感作して、細胞膜(または細孔)を開き、細胞がマイクロ波焼灼の影響を受けやすくする、(v)感作された細胞内に薬物(例えば、局所化学療法剤)を送達し、次にマイクロ波エネルギーを使用して(例えば、焼灼せずに加熱することにより)薬物を活性化する、且つ、(vi)針の引き抜き中に針アンテナによって作られたチャネルを(マイクロ波エネルギーまたは不可逆的エレクトロポレーションを介して)制御可能に焼灼して播種を防止する、ために使用できる。
【0099】
生体系から組織を除去する代わりに、またはそれに加えて、本発明を使用して材料(例えば、化学療法剤)を生体系に沈着させることが望ましい場合もある。この動作モードでは、組織測定及び特性評価機能を使用して、材料(固体または液体)を高精度で配置する必要がある身体の領域を特定してよく、材料を正確な希望の場所に沈着させてよい(低電力マイクロ波周波数トランシーバの使用に関連する機能がこれを容易にする)。本発明のこの態様は、例えば、特定の薬物または放射性染料を体内に沈着させるのに特に有用であり得る。この着想は小線源療法で使用されてよい。薬物が送達される正確な場所を標的とする能力は、必要な薬物の濃度及び量を最小化するという点で大きな利点を提供し得る。
【0100】
焼灼ゾーンを拡大するために、中心管を使用して焼灼された組織を吸引または除去し得ることにも留意されたい。これは、焼灼された組織が焦げた場合に特に有用な場合がある。組織が除去されると、焼灼プロセスが再び開始され、プロセスが数回繰り返される場合がある。
【0101】
本発明は、がん性腫瘍に関連する体液または細胞を除去することに限定されず、針アンテナは、標的組織内の生検組織の位置を正確に特定する必要がある身体の敏感な領域から他の組織を除去するために使用されてよい。これらの用途では、本発明は測定モードでのみ操作されてよい。
【0102】
本発明の特徴は、焼灼中に生検チャネルを通して水または生理食塩水をポンプで送り、針アンテナを可能な限り低温に保つことであってよい。大きな病変を治療することが望ましい用途でこの特徴を使用することが有利な場合がある。この場合、例えば、直2cmを超える球形の腫瘍を治療する場合、または、長期間にわたって電力を供給する必要がある場合など、マイクロ波出力のレベルを、通常の条件下で治療モードで操作するときに使用されるレベルから上げることが必要な場合がある。例えば、直径10cmの球形の病変を治療するために、最大100Wの連続波(CW)電力を10分間生成することが必要な場合がある。
【0103】
あるいは、生検を使用して、焼灼効果を増強することができる材料、例えば、装置で達成可能な焼灼体積を増やすことができる材料(例えば、損失性生体適合性材料)を導入してよい。マイクロ波エネルギーは内部導体の外側部分にのみ流れるため、針内の材料の存在は、生成されるマイクロ波場に影響を与えない場合がある。
【0104】
一実施形態では、生検チャネルを使用して、焼灼中に針先から壊死または焦げた組織を吸引してよい。これは、針を整合させる必要がある焦げた組織を除去するので、動的インピーダンス整合が実装されている場合に特に有益である。通常、焦げた組織は、チューナがない場合に針が一致するように設計されている負荷とは非常に異なる負荷を示す。
【0105】
生検装置
図2(a)は、システム全体の一部のブロック図を示す。この構成は、(i)生検、(ii)マイクロ波エネルギーによる組織焼灼、及び(iii)組織測定の操作モードを、上記の遠位端アセンブリ及び針アンテナを含み得る電気手術器具104を使用して行うのを可能にする。上記のように、電気手術器具104は、エレクトロポレーションを実行するようにも構成されているが、明確にするために、エレクトロポレーション機能を可能にするために必要な装置は
図2(a)に示されていないことを理解されたい。
【0106】
装置100は、マイクロ波エネルギーを電気手術器具104に送達するように接続されたマイクロ波エネルギー電源102を有する第1の(治療)チャネルを備える。電気手術器具104は、吸引ポンプ106によって提供される吸引を使用して、治療部位から生検組織(体液または細胞)を収集するための導管(図示せず)を含む。
【0107】
電源102は、安定した周波数、例えば、14.5GHzで信号を出力するように構成された発振器108、例えば、電圧制御発振器または誘電体共振発振器を備える。発振器108は、その周波数を一定に保つために、位相ロックループ構成(図示せず)で安定した水晶基準に接続されてよい。発振器の出力は、パワースプリッタ110(例えば、3dBスプリッタ)の入力ポートに接続され、パワースプリッタ110は、出力信号を、治療チャネルと測定チャネル(以下で説明する)とに分離する。測定チャネルは必要ない場合がある(すなわち、任意選択である)ので、スプリッタ110は任意選択であってよい。治療チャネル上のスプリッタ110からの出力は、可変減衰器112によって受信され、可変減衰器112の機能は、治療チャネルの全体の出力電力レベルを調整可能に制御するために、コントローラ114からの制御信号C1の制御下で信号の振幅を変化させることである。可変減衰器112からの出力は、スイッチ116(例えば、PINダイオードスイッチ)によって受信され、スイッチ116の機能は、パルス動作(または別の変調フォーマット、すなわち、最大値に達すると、三角形の波形またはランプが突然ゼロに低下する)を可能にするために、コントローラ114からの制御信号C2の制御下で信号を変調することである。他の可能な形状は、連続波または方形波パルス信号、ガウス形状プロファイル、または丸みを帯びたプロファイルを含む。スイッチ116からの出力は、電力増幅器118(例えば、MMIC増幅器のアレイ)によって受信され、電力増幅器118の機能は、信号の電力レベルを治療に適したレベルに増幅することである。電力増幅器118の特定の実施形態は、Triquint製TGA4521-EPU MMICであり、その出力は、より高い電力のTriquint製TGA4046-EPU MMICの入力にカスケード接続されている。TGA4521-EPUデバイスは、最大47GHzの周波数で適切な駆動信号を使用して飽和状態に駆動されると、15dBのゲインと23dBm(200mW)の電力レベルを生成することができ、TGA4046-EPUデバイスは、最大46GHzの周波数で適切な駆動信号を使用して飽和状態に駆動されると、16dBのゲインと33dBm(2W)の電力レベルを生成することができる。この実施形態では、システムは、46GHzの周波数及び2dBmの出力電力を出力するソース発振器108を使用して駆動されて、カスケード構成で接続された第2のMMICの出力で2Wの電力を生成することを可能にし得る。電源発振器108は、誘電体共振器発振器である、Castle Microwave社製、部品番号OFD-KF460105-01を通して入手可能なデバイスであってよく、これは、最大5dBmの出力電力を生成することができ、±25MHzの機械的同調範囲、±4ppm/度の周波数安定度、及び100kHzオフセットで-95dBc/Hzの位相ノイズを有する。
【0108】
上記のように、可変減衰器112を使用して増幅器118に入力される電力を制御することにより、出力電力レベルの制御が可能になる。
【0109】
出力電力レベルは、電源102と電気手術器具104との間で治療チャネルに接続される検出器120からの情報に基づいて動的に制御されてよい。この実施形態では、検出器120は、電源102から電気手術器具104への順方向信号と、電気手術器具104から戻る反射信号との両方を検出するように配置されている。他の実施形態では、検出器は、反射信号のみを検出してよい。さらに別の実施形態では、検出器は完全に省略されてよい。
【0110】
検出器120は、増幅器118の出力からの電力を結合するように接続された順方向結合器122を備える。結合器122の結合ポートは、スイッチ124に接続され、スイッチ124の機能は、ヘテロダイン検出器126による測定のために伝達されるコントローラ114からの制御信号C3の制御下で順方向結合電力または反射結合電力のいずれかを選択することである。治療チャネル上の順方向結合器122の出力は、第1のサーキュレータ128の第1のポートによって受信され、第1のサーキュレータ128の機能は、電気手術器具104から戻る反射信号を電源102から分離することである。治療チャネル上の順方向信号は、第1のサーキュレータ128の第1のポートからその第2のポートに移動し、第2のポートから出力される。第1のサーキュレータ128の第2のポートで受信された反射信号は、第3のポートに移動し、パワーダンプ負荷130に出力される。第1のサーキュレータ128の第2のポートからの出力は、第2のサーキュレータ132の第1のポートで受信され、第2のサーキュレータ132の機能は、反射信号を順方向信号から分離しながら反射信号を反射方向結合器に向けて伝達することである。治療チャネル上の順方向信号は、第2のサーキュレータ132の第1のポートから第2のポートに移動し、第2のポートから出力される。電気手術器具104からの反射信号は、第2のサーキュレータ132の第2のポートで受信され、そこから第3のポートに移動して出力される。第2のサーキュレータ132の第3のポートの出力は、反射方向結合器134によって受信され、反射方向結合器134の機能は、反射信号からの電力を結合することである。結合器134を通過した後、反射信号はパワーダンプ負荷136に吸収される。反射電力結合器134の結合ポートは、選択されると、ヘテロダイン検出器126に伝達されるようにスイッチ124に接続される。この構成で2つのサーキュレータを使用することは有利であるが、本発明は2つの使用に限定されない、すなわち、1つ、3つ、またはそれ以上を使用してよい。
【0111】
治療チャネル上の検出器120からの出力は、インピーダンス調整機構138によって受信され、インピーダンス調整機構138の機能は、治療チャネル上の構成要素のインピーダンスを、組織内にあるときの電気手術器具104のインピーダンスと整合させて、組織への効率的な電力伝達を促進することである。インピーダンス調整機構138は任意選択であってよい。本実施形態では、インピーダンス調整機構138は、コントローラ114からの制御信号C4の制御下で3つのスタブを挿入可能な空洞を備える。インピーダンス調整機構138は、WO2005/115235に記載されているようなものであってよい。インピーダンス調整機構は、以下で説明するように、電気手術器具の挿入(トンネリング)中にのみ動作可能であってよい。インピーダンス調整機構は、この構成に限定される必要はない。すなわち、インピーダンス調整機構は、発電機の出力とアンテナの間のマイクロストリップまたは他の伝送線に接続された単一または複数の電力バラクタもしくは電力PINダイオード、または発電機の出力とアンテナの間の一定インピーダンスのマイクロストリップもしくは他の伝送線に沿って移動することもできる可変チューニングスタブとして構成される可変(または調整可能な)長さのマイクロストリップ(またはストリップライン)を備え得る。すべての同調位置は、可変スタブの長さを変更することによって達成されてよく、マイクロストリップまたは同軸線に沿った同調位置の移動は、関心周波数で最大で負荷波長の半分の間に制限される場合がある。
【0112】
インピーダンス調整機構138からの出力は、スイッチ140によって受信され、スイッチ140の機能は、コントローラ114からの制御信号C5の制御下で、電気手術器具104に入力するために治療チャネル信号または測定チャネル信号のいずれかを選択することである。このスイッチは、導波管スイッチ、電力バラクタ/PINダイオードスイッチ、同軸スイッチなどであってよい。
【0113】
スイッチ140からの出力信号は、電気手術器具104上のコネクタ144で終端された可撓性伝送ケーブル142(例えば、同軸ケーブル)によって電気手術器具104に伝達される。ケーブル142は、電気手術器具104の一部を形成し得る。コネクタ144は、電気手術器具104の遠位端からマイクロ波放射場を放出するように構成されたアンテナ(または放射先端部分)146を含むアンテナ(図示せず)に信号を転送する。マイクロ波放射の周波数及び電気手術器具に送信される信号の電力レベルは、マイクロ波放射場が、例えば、組織焼灼、組織測定、または組織内に含まれる薬物(例えば、化学療法剤)の活性化などのシステムの様々な機能を可能にする組織内の構成を採用するように、選択される。
【0114】
電気手術器具104の導管またはボア(図示せず)は、電気手術器具104の遠位端に1つまたは複数の開口を含む。導管の近位端は、輸送パイプ148を介して、収集タンクまたは容器150は、電気手術器具104の遠位端に存在する生検組織(体液または細胞)を収集するために使用される収集タンクまたは容器150に接続される。ポンプ106を使用して、電気手術器具104内の導管(ここでは図示されず)に沿って組織サンプルを吸引し、輸送パイプ148を通してタンク150に組織を吸引する。システムに漏れがないことを確実にする必要がある。弁151を使用して、組織がポンプ106内に向けられないことを確実にする。コントローラ114を使用して、ポンプ106の動作を制御する。容器内の組織のレベルを監視するために、組織容器150内に流体レベルモニタまたはセンサ(図示せず)を取り付けることが望ましい場合があり、コントローラ114を使用して、レベルモニタまたはセンサからの信号を処理してよく、この情報は、ユーザインタフェース152を使用して表示されてよい。コントローラ114はまた、弁(図示せず)の動作を制御するために使用されてよく、弁は、容器150を空にするために使用される。この弁の動作は、レベルセンサから取得した情報に基づいてよい。
【0115】
容器150は、容器150内に含まれる細胞を異なるグループに選別または分類するように動作可能なサイトメータ(またはセルソータ)153を備える。例えば、サイトメータ153は、容器150からの細胞を、健康な細胞、がん細胞、がん幹細胞のうちの1つまたは複数として分類するように構成されてよい。ある実施形態では、サイトメータ153は、健康な細胞とがん性細胞、またはがん性細胞とがん幹細胞のいずれかを区別するように動作可能である。さらに、容器150及び/またはサイトメータ153は、コントローラ114に結合されて、コントローラ114は、サイトメータ153によって実行される分類または選別に基づいてシステム(例えば、電気手術器具及び電気手術用発電機)の動作を制御するために使用される。サイトメータ153のさらなる詳細は、
図2(b)を参照して以下に記載する。
【0116】
ユーザは、ユーザインタフェース152を介してコントローラ114とインタラクトすることができ、ユーザインタフェース152は、タッチスクリーンディスプレイ、メンブレンキーパッド、及びLCD/LEDディスプレイなどであってよい。
【0117】
ヘテロダイン検出器126は、固定周波数源156からの基準信号と、スイッチ158を介して検出器120または測定チャネル(以下で説明する)上の検出器からの測定信号とを受信するように構成されたミキサ154を備える。混合後、出力信号はフィルタ160を通過して、従来の方法でデジタル信号プロセッサ162を使用して、より低い周波数差信号のみが大きさの測定、及び任意選択で位相の測定に利用できるようにする。ハードウェアソリューションを使用して、大きさ及び位相の情報を抽出してもよい。すなわち、直交IQミキサを使用してよい。測定結果は、コントローラ114に送信され、コントローラ114で、デバイスの制御に関連する後続の操作で使用される。
【0118】
使用中、検出器120によって生成された信号から得られた測定値は、電気手術器具104の遠位端で生体組織に送達されている電力量の指標を提供する。送達される電力の変化は、電気手術器具104の遠位端における組織の型の変化を示し得る。コントローラ114は、測定値に基づいてエネルギー送達プロファイルを選択してよい。基本的に、治療領域で発生する加熱の体積と量を決定するのは、マイクロ波周波数と出力電力レベルの組み合わせである。
【0119】
健康な細胞によって反射されるエネルギーの量は、がん性細胞によって反射されるエネルギーの量とは異なり得る。検出器はこの変化を検出してよく、コントローラは、所与の変化ががん性細胞の出現に対応することを認識するように構成されてよい。反射エネルギーの量の変化は、異なる細胞型に伝達されるエネルギーの量に影響を与え得る。装置は、これを考慮するように調整可能であってよい。例えば、コントローラ114は、検出器からの信号を使用して送達されるエネルギーの量を監視し、必要に応じて出力電力レベルを調整してよい。電気手術器具の端部と接触組織との間のインピーダンス不一致による反射係数の変化に関係なく、手順中に反射係数が可能な限りゼロに近いままであることを保証するために、動的インピーダンス整合を実装してもよい。
【0120】
発振器108の周波数は、例えば、治療領域のサイズに応じて調整可能であってよい。周波数が高くなると、侵入の深さは小さくなる。
【0121】
この装置は、トンネリングプロセス、すなわち電気手術器具を治療領域に挿入するプロセスを支援するために使用されてよい。電気手術器具は、痛みを引き起こさずにアンテナを挿入するためのチャネルを形成するために、電気手術器具が挿入されるときにマイクロ波エネルギーを放射するように構成されてよく、失血を防ぎ、患者が経験する不快感のレベルを低減する。トンネリングプロセスでは、電気手術器具が、均一なチャネルが生成されるように組織構造を加熱するために、限定された浸透深さで集束熱を生成することが望ましい。治療領域への経路上には多くの異なる組織構造が存在し得るため、装置の感度と電力レベルの動的調整が必要になる場合がある。これを容易にするために、測定チャネルが、発振器108と電気手術器具104との間に備えられてよい。測定チャネルの目的は、電気手術器具で低電力信号を出力することであり、これにより、そこに存在する組織の特性を測定することができる。治療チャネルを通る信号の電力レベルは、測定チャネルを使用して行われた測定に基づいて選択されてよい。この構成により、組織内に均一なチャネルを生成することができる。
【0122】
測定チャネル上のスプリッタ110からの出力は、測定チャネルからの電力を結合するように接続された順方向結合器164によって受信される。結合器164の結合ポートは、スイッチ166に接続され、スイッチ166の機能は、コントローラ114の制御下で、ヘテロダイン検出器126による測定のために伝達される順方向結合電力または反射結合電力のいずれかを選択することである。測定チャネル上の順方向結合器164の出力は、サーキュレータ168の第1のポートによって受信され、サーキュレータ168の機能は、電気手術器具104から戻る反射信号を電源102から分離することである。測定チャネル上の順方向信号は、サーキュレータ168の第1のポートからその第2のポートに移動し、第2のポートから出力される。サーキュレータ168の第2のポートで受信された反射信号は、第3のポートに移動し、パワーダンプ負荷170に出力される。サーキュレータ168の第2のポートからの出力は、方向性結合器172によって受信され、方向性結合器172は、順方向電力方向性結合器として構成され、キャリアキャンセル回路の一部を形成する。方向性結合器172からの出力は、サーキュレータ174の第1のポートに供給される。サーキュレータ174の第2のポートは、スイッチ140を介して電気手術器具104に接続されている。サーキュレータ174の第3のポートは、方向性結合器176の入力に接続され、方向性結合器176は、順方向電力方向性結合器として構成され、キャリアキャンセル回路の一部を形成する。サーキュレータ174の機能は、順方向信号から反射信号を分離しながらヘテロダイン検出器126に向かって反射信号を伝達することである。測定チャネル上の順方向信号は、第2のサーキュレータ174の第1のポートから第2のポートに移動し、そこで出力される。電気手術器具104からの反射信号は、サーキュレータ174の第2のポートで受信され、そこから第3のポートに移動して出力される。サーキュレータ174の第3のポートの出力は、キャリアキャンセル回路の一部である方向性結合器176によって受信される。結合器176を通過した後、スイッチ166に接続された反射信号は、選択されたとき、ヘテロダイン検出器126に伝達される。
【0123】
キャリアキャンセル回路は、サーキュレータ168、174によって提供される分離に追加して、分離を提供する。キャリアキャンセル回路は、順方向結合器172、位相調整器178、調整可能な減衰器180、及び第2の順方向結合器176を備える。キャリアキャンセル回路は、結合器172の結合ポートから順方向信号の一部を取得し、位相及び電力レベルを調整して、その信号が、サーキュレータ174の第3のポートに到達する不要な信号と180°位相がずれ、振幅が同じになるようにして、不要な信号成分を打ち消すことができるように、機能する。キャリアキャンセル信号は、第2の順方向結合器176を使用して、サーキュレータ174の第3のポートの出力に注入される。
【0124】
測定チャネルは、反射信号をヘテロダイン検出器126に直接(すなわち、結合器を介さずに)提供するので、測定チャネルで送達される電力は、治療チャネルで送達される電力よりもはるかに少なくなり得る。
【0125】
スイッチ140、158は、治療チャネルまたは測定チャネルのいずれかを選択するために一緒に切り替わるように構成されている。装置は、電気手術器具の遠位端の組織を監視するために、トンネリング中に定期的に測定チャネルに切り替えられてよい。関心生体組織内に送達されるエネルギープロファイル(指定された期間にわたる電力レベル)を適切に調整できるように、この測定情報を使用してよい。測定情報はまた、電気手術器具の端部のインピーダンスを接触組織と整合させるために、すなわち、反射係数が可能な限りゼロに近くなることを確実にするために使用される電力整合ネットワークの調整の根拠として使用されてよい。
【0126】
治療チャネル上の方向性結合器122、134の構成は、この実施形態のさらなる利点を提供する。従来、順方向結合器及び逆方向結合器は、同じ経路に挿入される、例えば、増幅器の出力と電気手術器具への入力の間に挿入される。これにより、不要な信号が必要な(測定)信号と類似の大きになり得るので、測定信号の感度(またはシステムのダイナミックレンジ)が制限される可能性がある。これは、アンテナと負荷インピーダンスの不一致が小さいために反射信号が小さいときに特に関係がある。本発明では、例えば、システムインピーダンスが50Ωで負荷インピーダンスが46Ωである(すなわち、入射電力の4.17%が反射して戻る)場合、この状況で測定を行うことが重要な場合がある。この場合の問題は、必要な測定信号と反対方向に移動する分離ポートからの不要な信号が、必要な信号と類似の大きさになる可能性があるため、測定信号をノイズ信号から区別することができない。従来のシステムでは、順方向信号と逆方向信号の分離は、方向性結合器の結合係数(サンプリングされた入射電力)と指向性(結合器が順方向進行波と逆方向進行波をどれだけうまく区別するか)にのみ依存し、順方向信号と逆方向信号の間の総分離(dB)は、結合係数(dB)と指向性(dB)の合計に等しくなる。
【0127】
反射信号がエネルギー送達プロファイルを(例えば、コントローラ114を介して)自動的に制御するために使用される場合、この問題は悪化し得る。なぜなら測定結合器と負荷の間の経路損失、すなわち、ケーブルとアンテナ/電気手術器具シャフト等の挿入損失のために、順方向信号が反射信号よりも大きいという事実のために、反射信号が破損するからである。
【0128】
本発明は、順方向結合器及び逆方向結合器をそれぞれ、電力増幅器(または測定チャネル内の発振器)の出力とサーキュレータの第1のポートへの入力との間、及びサーキュレータの第3のポートとパワーダンプ負荷の間に移動することによって、動的インピーダンス整合または調整がない配置におけるこれらの問題を克服し得る。
【0129】
順方向信号結合器と第1のサーキュレータの第1のポートとの間に1つまたは複数の追加のサーキュレータ(第3のポートと接地との間に50のダンプ負荷が接続されている)を挿入することにより、順方向信号と逆方向信号との間のさらなる分離または測定感度の向上を達成してよく、反射信号の測定には最後のサーキュレータが使用される。追加の各サーキュレータは、逆方向の電力信号がサーキュレータの不要な電力フロー分離によって順方向の電力信号を破損するという点で分離を増加させる。つまり、20dBの不要な経路の分離を有する3つの追加のサーキュレータは、全体の分離を60dB増加させる。
【0130】
治療モードでは、ユーザインタフェース152は、組織に送達されるエネルギー投与量、治療時間、及び他の任意の有用な及び/または関連する情報を示し得る。治療モードでは、ユーザインタフェース152は、マイクロ波治療及びエレクトロポレーション治療の両方に関する情報(例えば、パルス幅、デューティサイクル、振幅など)を提供し得ることに留意されたい。生検モードでは、ユーザインタフェース152は、サイトメータ153によって検出された細胞の型、容器150に含まれる組織のレベル、及びポンプ106が作動されたときを示すことが望ましい場合がある。測定モードでは、ユーザインタフェース152は組織型及び/または組織の状態を示すまたは表示することが望ましい場合がある。また、生検モード及び/または測定モードでは、がん性組織が検出されたときに可聴アラームを鳴らしたり、表示を点滅させたりすることも望ましい場合がある。
【0131】
上記のように、電気手術器具104もエレクトロポレーションを実行するように構成されているが、明確にするために、エレクトロポレーション機能を可能にするために必要な装置は
図2(a)には示されていない。ある実施形態では、エレクトロポレーション実行する装置は、WO2012/076844に記載されているように、発電機の一部である。この装置は、いくつかの方法で
図2(a)のシステムに組み込むことができる。例えば、装置は、スイッチ140に接続することができる、すなわち、スイッチ140は、エレクトロポレーション信号を電気手術器具104に送達するための追加の第3の位置を有するように変更されてよい。あるいは、2つの位置を有する追加のスイッチをスイッチ140の遠位側に挿入することができ、一方の位置は可撓性伝送ケーブル142をスイッチ140に接続し、他方の位置は可撓性伝送ケーブル142をエレクトロポレーション装置に接続する。いずれの場合でも、
図2(a)のシステムは、マイクロ波エネルギーに加えて、エレクトロポレーション信号を電気手術器具104に提供するように更新することができる。エレクトロポレーション信号及びマイクロ波エネルギーは、別々にまたは同時に電気手術器具104に送達されてよい。
【0132】
図2(a)では、サイトメータ153が容器150の一部として含まれる。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、容器150、ポンプ106、弁151、及びサイトメータ153のうちの1つまたは複数は、同一の物理的装置に組み合わされてよい。例えば、容器150は、サイトメータ153内の領域(例えば、検出領域)であってよく、ポンプ106及び弁151は、治療領域からサイトメータ153に選別のために細胞を引き込むように機能するサイトメータ153の一部であってよい。すなわち、容器150、ポンプ106、弁151、及びサイトメータ153は、コントローラ114に接続され、コントローラ114によって制御される単一の装置によって置き換えられてよい。この組み合わせ(別名細胞識別アセンブリ)は、容器150、ポンプ106、弁151、及びサイトメータ153の機能のすべてまたは一部を有し得る。従って、細胞識別アセンブリは、電気手術器具104を使用して、治療部位から生検組織(例えば、体液及び細胞)を取得するように動作可能であってよい。細胞識別アセンブリは、生検組織からサンプルを生成し、サンプルの細胞を選別して、例えば、がん細胞、がん幹細胞、健康な細胞、非がん細胞等の1つまたは複数の異なる細胞型の存在を検出するように動作可能であってよい。さらに、細胞識別アセンブリは、特定の細胞型(例えば、がん性細胞またはがん幹細胞)の存在をコントローラ114に通知するために、コントローラ114に検出信号を提供してよい。このようにして、コントローラ114は、例えば、がん幹細胞を検出する際に検出信号に基づいて様々な動作を実行することができ、コントローラ114は、特定のパルスプロファイルを使用して特定の持続時間の間エレクトロポレーション及び/または特定の持続時間の間、特定の電力でのマイクロ波焼灼を実行するように装置を制御することができる。従って、細胞識別アセンブリは、生検組織内の特定の細胞型を検出し、その検出をコントローラ114に通知するための機構を提供し、その結果、コントローラ114は、通知に基づいてシステムを制御することができる。
【0133】
図2(a)を参照して前述したように、いくつかの実施形態は、治療部位で生体組織によって反射されるマイクロ波エネルギーの量の変化を検出する検出器120を含むことができる。次に、コントローラ114は、所与の変化ががん性細胞の出現に対応することを認識するように構成することができる。従って、検出器120及びコントローラ114は、マイクロ波エネルギーを使用して第1の検出段階を実行することができる。さらに、実施形態は、サイトメータ153を使用して生検サンプル中の特定の細胞型の存在または不在を識別する細胞識別アセンブリを含む。従って、細胞識別アセンブリは、第2の検出段階を実行することができる。例えば、第1の検出段階は、健康な細胞からがん性細胞を識別するために使用でき、第2の検出段階は、他のがん性細胞からがん幹細胞を識別するために、識別されたがん性細胞に対して実行することができる。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、第2の検出段階を使用して、第1の検出段階の結果を確認してよい。また、他のいくつかの実施形態では、第1の検出段階は存在せず、第2の検出段階のみが存在する。
【0134】
ある実施形態では、
図2(a)のシステムは、電気手術器具102の導管及び輸送パイプ148を介して治療領域に流体(例えば、薬物または化学療法剤)を送達するようにさらに構成することができる。ある実施形態では、容器150は、治療領域に送達される流体を貯蔵するためのコンパートメント(図示せず)を含んでよく、1つまたは複数の弁(図示せず)は、組織抽出のための電気手術器具からサイトメータ153への第1の経路、及び流体送達のためのコンパートメントから電気手術器具への第2の経路を選択的に開閉してよい。1つまたは複数の弁は、コントローラ114によって制御可能であってよい。ポンプ106は、第2の経路に沿って電気手術器具に流体を注入するために逆方向に駆動可能であってよい、または別個の注入ポンプが提供されてよい。別の実施形態では、コンパートメントは、容器150から分離されてよく、切り替え可能な接合部(図示せず)で輸送パイプ148に接合してよい。切り替え可能な接合部は、第1及び第2の経路を選択的に開閉して組織抽出及び流体送達を可能にするためにコントローラ114によって制御可能であってよい。さらなる実施形態では、輸送パイプ148と容器150またはサイトメータ153との間の接続は、輸送パイプ148を容器150またはサイトメータ153から取り外して、次にコンパートメントに再度取り付ける、及びその逆が可能であるように、取り外し可能であってよい。従って、ある実施形態では、
図2(a)のシステムは、流体(例えば、薬物または化学療法剤)を治療領域に注入することができるように、電気手術器具102の導管と流体連通する流体注入機構を有する。
【0135】
サイトメータ機器
次に、
図2(a)を参照して上記したサイトメータ(またはセルソータ)153をより詳細に説明する。ある実施形態では、サイトメータ153は、細胞または粒子の集団の物理的特性及び化学的特性を検出及び測定するフローサイトメータであってよい。別の実施形態では、サイトメータ153は、例えば、ラマン分光法を使用して1つまたは複数の特定の細胞型の存在を検出する(または区別する)分光計(例えば、小型分光計)であってよい。
【0136】
ある実施形態では、サイトメータ153は、Menarini-Silicon Biosystems製のDEPArray(登録商標)システムなどの市販の既製のサイトメータを含み得る。
【0137】
ある実施形態では、サイトメータ153による選別のためのサンプルを生成するサンプル生成器を備えてよい。サンプル生成器は、容器150、サイトメータ153の一部であってよい、または容器150及びサイトメータ153の両方に接続された別個の要素であってよい。いずれの場合でも、サンプル生成器は、容器150からの細胞を流体(例えば、緩衝液)に懸濁することによって分析用のサンプルを形成し、次に、サンプルをサイトメータ153に提供する(例えば、注入する)。流体は、流体リザーバから提供されてよく、流体リザーバは、容器150、サイトメータ153の一部であってよい、または容器150及びサイトメータ153の両方に接続された別個の要素であってよい。いずれの場合も、サンプルは、異なる細胞型(例えば、がん幹細胞対他の細胞)間の電磁シグネチャの違いに基づいて細胞選別が行われるサイトメータ153の検出領域を通して理想的には一度に1つの細胞を流すように焦点を合わせてよい。水力流体操作と電磁操作を組み合わせた実施形態では、細胞は、特定の電磁信号に対する細胞の感受性に応じて、異なる物理的位置またはビンに動的に選別される。具体的には、
図2(b)に示すように、MHz領域の電磁場を使用して、誘電泳動(DEP)力で細胞を選択的に電気操作する。
図2(b)は、サイトメータ153の入力領域182(例えば、マイクロ流体チャネル)に入る細胞のサンプルを示す。サンプルは、がん幹細胞と1つまたは複数の他の型の細胞とを含む懸濁液を含む。入力領域182は、サンプルの細胞が実質的に単一のファイルで流れるように構成されてよい(例えば、寸法であってよい)。入力領域182は、細胞のサンプルが検出領域184に流入するように、検出領域184と流体連通している。検出領域184は、電極186の第1のアレイと電極188の第2のアレイとの間にマイクロ流体チャネルを含む。電極186の第1のアレイは、電子部品(例えば、AC電源を含む)からなる第1の駆動回路187に接続され、電極188の第2のアレイは、電子部品(例えば、AC電源を含む)からなる第2の駆動回路189に接続される。第1及び第2の駆動回路は、同じ電子回路の一部であってよい。いずれの場合でも、第1及び第2の駆動回路は、電磁信号を第1及び第2のアレイに印加して、細胞のサンプルを選別領域190内の特定の位置に選別する。具体的には、選別領域190は、第1のビン192及び第2のビン194を含む。検出領域184に入る細胞は、それに印加される電磁信号のために、第1及び第2のアレイによって生成される電磁場によって偏向(例えば、移動)される。所与の細胞の軌道は、細胞の特性(例えば、細胞ががん幹細胞であるかどうか)と電磁信号とに依存する。従って、電磁信号は、がん幹細胞(例えば、第1の所定の細胞型)が第1のビン192への第1の軌道をたどり、非がん幹細胞(すなわち、第1の所定の細胞型ではない)が第2のビン194への第2の軌道をたどるように選択することができる。このようにして、サイトメータ153に入る細胞のサンプルは、異なるビンに選別される。次に、サイトメータ153を使用して、第1のビン192内の細胞の存在または不在を決定することにより、所与のサンプル中のがん幹細胞の存在または不在を検出することができる。この決定は、サイトメータ153自体によって、または別個の検出装置(例えば、容器150の一部である)によって行うことができる。いずれの場合も、がん幹細胞の存在及び/または不在を示すために検出信号を生成することができる。この検出信号は、システムの動作がその指示に基づくことができるように、コントローラ114に送信することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、単一のビン、例えば、ビン192のみが提供されてよいことが理解されるべきである。このようにして、関心のある型の細胞(例えば、がん幹細胞)のみを収集することができ、他のすべての細胞型は廃棄することができる。
【0139】
ある例では、トンネリング手順中に、電気手術器具104は、(例えば、患者を手術する外科医によって)ポンプ106と共に使用されて、容器150内の生検細胞の第1のセットを取得してよく、サイトメータ153を使用して、生検細胞の第1のセットにがん幹細胞が含まれていないことを識別してよい。この場合、コントローラ114は、がん細胞が検出されなかったことを(例えば、ユーザインタフェース152を介して)単にユーザに通知してよい。従って、ユーザは、自信を持って電気手術器具104をさらに患者にトンネリングしてよい。この一連の操作は、1回または複数回繰り返されてよい。ある時点で、サイトメータ153は、がん幹細胞の存在を検出し、検出信号をコントローラ114に送信して、コントローラ114にがん幹細胞の存在を通知してよい。検出信号を受信すると、コントローラ114は、いくつかの異なる操作を実行してよい。例えば、コントローラ114は、がん幹細胞が検出されたことを(例えば、ユーザインタフェース152を介して)ユーザに通知してよい。追加的または代替的に、コントローラ114は、電気手術器具104及びシステムの他の部分を使用して、何らかの形の治療操作を開始してよい。治療操作は、がん幹細胞の細孔を開くために(すなわち、がん幹細胞を感作するために)第1の期間、一時的なエレクトロポレーションを実行すること、感作されたがん幹細胞に薬物(例えば局所化学療法剤)を注入すること、マイクロ波エネルギーを使用して注入された薬を活性化すること、第2の期間、マイクロ波エネルギーを使用して、がん幹細胞を焼灼すること、及び、がん幹細胞に対して、第3の期間、(すなわち、細胞を焼灼するために)不可逆的エレクトロポレーションを実行することのうちの1つまたは複数を含み得る。もちろん、システムは、がん幹細胞の検出時にそのような操作を自動的に(例えば、コントローラ114を介して)実行するように構成することができるが、ユーザがそのような操作を手動で実行できるように、システムは、がん幹細胞の存在を(例えば、ユーザインタフェース152を介して)ユーザに通知することのみも可能である。
【0140】
上記の例は、がん幹細胞と他の細胞型を区別するサイトメータ153に焦点を当てている。しかしながら、サイトメータ153は、他の細胞型またはカテゴリを区別するように構成できることが理解されるべきである。例えば、サイトメータ153は、健康な細胞とがん性細胞の間、またはがん性細胞とがん幹細胞の間、または血液細胞と脂肪細胞の間を区別するように構成することができる。この文脈において、「構成された」という表現は、1つの細胞型またはカテゴリを1つまたは複数の他の細胞型またはカテゴリとは異なるように流用する、検出領域184のアレイに印加するための特定の電磁信号を選択することを含むことに留意されたい。
【0141】
また、上記のように、他のいくつかの実施形態では、容器150、ポンプ106、弁151、及びサイトメータ153のうちの1つまたは複数を、同一の物理的装置に組み合わせてよい。例えば、容器150、ポンプ106、弁151、及びサイトメータ153は、コントローラ114に接続され、コントローラ114によって制御される単一の装置(別名、細胞識別アセンブリ)によって置き換えられてよい。
【0142】
電気手術器具
本発明の一実施形態による電気手術器具200は、
図3及び
図4に示されている。
図3は、電気手術器具200の遠位端の概略断面側面図を示す。
図4aは、電気手術器具200の遠位部分の拡大断面側面図を示し、
図4bは、電気手術器具200の近位部分の拡大断面側面図を示す。電気手術器具200は、
図1の遠位アセンブリ118、または
図2(a)の電気手術器具104を提供し得る。
【0143】
電気手術器具200は、可撓性同軸ケーブル202と、同軸ケーブル202の遠位端に取り付けられた放射先端部分204とを含む。同軸ケーブル202は、外科用スコープデバイスの器具チャネルを通って移動するのに適した従来の可撓性50Ω同軸ケーブルであってよい。同軸ケーブルは、誘電材料210によって分離される中心導体206及び外部導体208を含む。同軸ケーブル202は、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション信号を受信するために、近位端で電気手術用発電機に接続可能である。
【0144】
放射先端部分204は、近位同軸伝送線212と、近位同軸伝送線212の遠位端に取り付けられた遠位針先端部214とを含む。近位同軸伝送線212は、同軸ケーブル202の遠位端で同軸ケーブル202の中心導体206に電気的に接続されている内部導体216を含む。内部導体216は、中心導体206よりも外径が小さく、銀などの高い導電率を有する材料でできている。
【0145】
内部導体216は、その近位部分に沿って、近位誘電体スリーブ218によって囲まれている。近位誘電体スリーブは、柔軟な絶縁材料、例えば、PTFEなどで作られてよい。遠位誘電体スリーブ220は、内部導体216の遠位部分を覆って取り付けられて、放射先端部分214を形成する。遠位誘電体スリーブ220は、近位誘電体スリーブ218よりも高い剛性を有する硬質絶縁材料で形成されている。例えば、遠位誘電体スリーブ220は、ジルコニアで作られてよい。
【0146】
近位同軸伝送線212は、近位誘電体スリーブ218の周りに取り付けられた外部導体222によって完成される。外部導体222は、導電性材料の可撓性管によって形成されている。管は、生体組織(例えば十二指腸壁)を貫通することができる力を伝達するのに十分な長手方向の剛性を有するように構成され、同時に、器具が外科用スコープデバイスの器具チャネルを通って移動できるような適切な横方向の柔軟性を示す。本発明者らは、ニチノールが外部導体222に特に適した材料であることを見出した。ニチノール管は、近位同軸伝送線212に沿った伝送損失を低減するために、例えばその内面に導電性コーティングを含み得る。このコーティングは、ニチノールよりも高い導電率を有する材料、例えば銀などによって形成されてよい。
【0147】
内部導体216は、組織接続パイプ101との境界面から放射先端部分214の遠位先端へのボア(またはチャネルまたは導管)217を画定する中空部分を含み、そこで、生体組織は、内部導体216に吸引される。内部導体216はまた、内部導体216の中心導体206と、内部導体216の組織接続パイプ101との接続との間に中実(すなわち中空ではない)部分を有してよい。内部導体216のボア217は、固体部分と内部導体216の遠位先端との間の壁の厚さが、マイクロ波エネルギーの輸送が内部導体216の中心部分の除去によって影響を受けないような直径を有し、中空部分の壁は、それ自体を支持し、電気手術器具が製造されるときに容易に組み立てられることを可能にする十分な強度を有する。マイクロ波エネルギーの大部分が確実に伝達されるようにするために、内部導体216の中空部分の壁の厚さは、少なくとも5または6の表皮深さであることが好ましい。表皮深さは、材料の特性と操作の頻度によって決まる。例えば、内部導体216の中空部分の壁の厚さは、約5ミクロンであってよい。接続パイプ101は、内部導体216のボア217を、収集容器150(または細胞識別アセンブリ)に取り付けられた
図2(a)の輸送パイプ148に接続する。パイプ101は、誘電材料または導体から作られてよい。同軸構造の特性インピーダンスを維持し、構造内の不連続性を最小限に抑えるために、パイプ101は、誘電体スリーブ218の材料と同様の材料で作られることが好ましい。パイプ101に使用される位置、サイズ、及び材料は、同軸構造に設定された横電磁(TEM)場に影響を及ぼし得るが、電場分布へのいかなる変化も、パイプ101の近くの構造内に整合変成器を備えることによって補償され得る。整合変成器は、導電性ピンまたは誘電体ポストであり得るチューニングスタブであってよい。接続パイプ101の効果を整合させる手段が必要な場合、整合構造は、単に、誘電体スリーブ218の比誘電率の変化、または接続パイプ101の領域の外部導体222の壁を通して挿入された追加のピンであってよい。整合構造の特定の実施形態は、電気手術器具200の特定の形状に依存し、使用する最良の整合構造を決定するために、完全な電気手術器具の電磁場シミュレーションを実行することが必要な場合がある。小さな供給チャネル217及び小さな接続パイプ101の場合、接続パイプ101を構造に含めることによって生じる場の不連続性は無視できるほど小さいので、無視してよいことに留意されたい。本発明は、単一の供給パイプ101の使用に限定されない。生検(または材料)チャネル217内のフローの阻害を最小限にするために、複数の供給パイプを使用することが好ましい場合がある。例えば、
図3に示される単一の供給パイプ101の代わりに4つの供給パイプが使用され得る。発生し得る阻害の可能性を最小限に抑えるために、パイプの総断面が生検チャネル217の断面と等しくなるように4つの供給パイプを配置することが好ましい場合がある。この場合、生検サンプル(または他の材料)は、外部導体222の壁の4つの出口(または材料が体内に送達される場合は入口)から収集される。供給パイプ間の間隔は、システムへの単一の供給パイプ101の導入によって引き起こされる不整合を最小化するように調整されてよい。すなわち、これは、別個のインピーダンス変成器(または整合スタブ)を導入する必要性を排除し得る。
【0148】
外部導体222は、遠位誘電体スリーブ220の近位部分に重なって、近位同軸伝送線212の遠位部分を形成する。重複領域は、中間同軸伝送線と見なされてよい。遠位誘電体スリーブ220は、近位誘電体スリーブ218よりも高い誘電率を有するので、外部導体222と遠位誘電体スリーブ220との間の重複領域は、所望の電気的長さを維持しながら、放射先端部分212の物理的長さを短縮することを可能にする。外部導体222と遠位誘電体スリーブ220の間の重複部分の長さと、近位及び遠位の誘電体スリーブの誘電体材料とは、放射先端部分212の所望の電気的長さを取得するように選択されてよい。
【0149】
遠位針先端部214は、内部導体216の遠位端に取り付けられた活性電極224を含む。活性電極は、導電性材料(例えば真ちゅう)の円筒形片で、円筒形片の中に中央チャネル226が延びている。活性電極は、電極の斜視図(a)及び電極の断面側面図(b)を示す
図5により詳細に示されている。内部導体216の遠位端は、チャネル226の内側に突出し、そこで、活性電極224に電気的に(例えば、はんだ付けまたは溶接された接続を介して、または導電性接着剤を用いて)接続される。活性電極の外径は、遠位誘電体スリーブ220の外径と実質的に一致するので、遠位針先端部214は、滑らかな外面を有する。
【0150】
尖った先端要素228は、標的組織への器具の挿入を容易にするために、活性電極224の遠位面に取り付けられている。先端要素228は、好ましくは、遠位誘電体スリーブ220(例えば、ジルコニア)と同じ材料で作られる。先端要素228は、先端要素の側面図(a)、先端要素の斜視図(b)、及び先端要素の背面図(c)を示す
図6により詳細に示されている。先端要素228の例示的な寸法は、
図6(a)及び6(c)に示されている。先端要素228は、その近位側から延びる突起232を有する円錐形本体230を有する。突起232は、先端要素228を所定の位置に保持するために、活性電極224のチャネル226の内側に適合するように形作られている。先端要素228は、例えば接着剤を使用して、活性電極224に固定されてよい。先端要素228はまた、その内部を通って延びるチャネル235を有する。より具体的には
図6bに見られるように、チャネル235は、入口237及び出口238を有する。入口237は、チャネル235がボア217に延長部を提供するように、内部導体216のボア217の遠位端と整列するように配置される(例えば、サイズ設定及び位置決めされる)。出口238は、先端要素224の側面部分に示されているが、他のいくつかの実施形態では、出口238は、先端要素228の頂点に配置され得ることが理解されるべきである。従って、チャネル235は、
図3及び
図4aに示されるように、屈曲部を有する場合と有さない場合がある。
【0151】
近位誘電体スリーブ218及び遠位誘電体スリーブ220は、内部導体216上をスライドする管として形成されてよい。一実施形態では、遠位誘電体スリーブ220は、内部導体216の周囲に取り付けられた一対の協働部品から構成されてよい。
図7は、遠位誘電体スリーブ220を形成するために使用され得る部品700の例を示す。
図7は、部品の側面図(a)、部品の斜視図(b)、及び部品の正面図(c)を示す。部品700の例示的な寸法は、
図7(a)及び
図7(c)に示されている。部品700は、その長さに沿って延びる長手方向の溝702を有する剛性誘電材料(例えば、ジルコニア)の半円筒形片である。一対の部品700を一緒に組み立てて遠位誘電体スリーブ220を形成してよく、その結果、各部品700の溝702は一緒になって、内部導体216が受け入れられるチャネルを形成する。2つの部品700は、例えば、接着剤を使用して一緒に固定されてよい。遠位誘電体スリーブ220のこのような構造は、放射先端部分212の組み立てを容易にし得る。一対の協働部品を含む同様の構造を近位誘電体スリーブ218に使用してもよい。
【0152】
近位同軸伝送線212は、カラー(またはコネクタ)236によって同軸ケーブル202の遠位端に固定されている。カラー236は、近位同軸伝送線212を所定の位置に固定するためのラジアル圧着として機能し得る。カラー236はまた、近位同軸伝送線212の外部導体218に、同軸ケーブル202の外部導体208を電気的に接続するように配置されてよい。従って、カラー236は、導電性材料、例えば真ちゅうなどから形成される。カラー236は、
図2(a)のコネクタ144の少なくとも一部を提供し得る。
【0153】
図8及び9は、遠位先端の代替構成を示す。この構成では、尖った先端要素と活性電極は、単一の先端要素250に組み合わされている。先端要素250は、例えば円錐形を有する遠位の尖った先端252を含み、内部導体216の遠位部分を受け入れるためのボア256を内部に有する近位円筒形部分254と一体的に形成される。前と同様に、先端要素250は、内部導体216の中空内部(すなわち、ボア217)を出口238に接続する内部チャネル235を有する。先端要素250は、銀などの単一片の導電性材料から製造されてよい。使用中、マイクロ波エネルギー及びエレクトロポレーション波形を有するエネルギーは、同軸ケーブル202から放射先端部分に伝達されてよい。同軸ケーブル202から受け取られたエネルギーは、近位同軸伝送線212に沿って遠位針先端部214に伝達されてよく、遠位針先端部214で、標的組織に送達されてよい。
【0154】
マイクロ波エネルギーでは、遠位針先端部214は、マイクロ波エネルギーを標的組織に送達するための半波長変成器として機能するように構成される。言い換えれば、遠位針先端部214の電気的長さは、マイクロ波エネルギーの半波長に対応し得る。このようにして、マイクロ波エネルギーは、標的組織を焼灼するために、標的組織に効率的に送達されてよい。
【0155】
マイクロ波焼灼中の放射先端部分212の加熱を最小限にするために、マイクロ波エネルギーは、パルスで送達されてよい。本発明者らは、以下に列挙されるエネルギー送達サイクルまたはプロファイルが、放射先端部分212の加熱を最小限に抑えながら、マイクロ波エネルギーの効率的な送達を可能にし得ることを見出したが、下記の他のエネルギー送達サイクルも可能である。
【0156】
・10msのマイクロ波エネルギー送達とそれに続く90msのオフ(すなわち、マイクロ波エネルギー送達無し)
・10msのマイクロ波エネルギー送達とそれに続く50msのオフ
・10msのマイクロ波エネルギー送達とそれに続く30msのオフ
・100msのマイクロ波エネルギー送達とそれに続く900msのオフ
・100msのマイクロ波エネルギー送達とそれに続く500msのオフ
・100msのマイクロ波エネルギー送達とそれに続く300msのオフ
エレクトロポレーションエネルギーが放射先端部分に伝達されるとき、電場は、活性電極224と外部導体222の遠位部分239(遠位端)との間に設定され得る。このようにして、(露出され得る)外部導体222の最遠位端または端部終端は、エレクトロポレーションエネルギーの対極板として動作してよい。電場は、遠位針先端部214の周囲に位置する組織のエレクトロポレーション(例えば、不可逆的エレクトロポレーション)を引き起こし得る。活性電極224は、器具の長手方向軸に対して実質的に対称に配置されているので、エレクトロポレーション波形によって引き起こされる電場は、軸対称となり得る。他の例では、治療領域は、例えば、活性電極の適切な構成によって、非対称であってよい。
【0157】
電気手術器具200は、同軸ケーブルに沿って生体組織に伝達されるマイクロ波及びエレクトロポレーションエネルギーを送達するための焼灼装置として使用するように構成される。電気手術器具200は、特に、外科用スコープデバイス(例えば、超音波内視鏡(EUS)装置)の器具チャネルを通して治療部位に挿入するのに適しているように設計されている。治療部位は膵臓であってよく、それにより、外科用スコープデバイスの器具コードが十二指腸に挿入され、次に電気手術器具200が伸ばされて十二指腸の壁を貫通して膵臓に侵入して治療が行われる。
【0158】
電気手術器具は、この文脈での使用に適したものにするいくつかの機能を有し得る。器具の放射先端部分212は、望ましくは、40mm以上の長さを有し、最大外径は、約19G(1.067mm)または22G(0.7176mm)である。これにより、例えば膵臓内にある腫瘍に到達するのに十分な長さの針を確保でき、治癒を促進するために貫通穴が大きすぎないことを保証できる。
【0159】
図3は、電気手術器具200の寸法例を示す。第1の例では、近位誘電体スリーブ218の長さに対応する、参照番号240によって示される寸法は、37.0mmであってよい。外部導体222と遠位誘電体スリーブ220との間の重なりの長さに対応する、参照番号242によって示される寸法は、4.70mmであってよい。外部導体222の遠位端から活性電極224の遠位端までの距離に対応する、参照番号244によって示される寸法は、3.00mmであってよい。
図9に示される先端要素を使用する第2の例では、寸法240は37.0mmであり、寸法242は8.30mmであり、寸法244は5.00mmである。
【0160】
図10は、電気手術器具200の近位端の代替構成を示す。この実施形態では、電気手術器具200の遠位端は、上記の
図4(a)に示されている通りである。遠位端が
図10の右側(すなわち、
図4(b)の反対側)に位置していることに留意されたい。上記のように、電気手術器具200は、誘電材料218によって内部導体216から分離された外部導体222を含む同軸供給構造を有する。内部導体216は、器具の遠位端の治療部位から生検組織(例えば、細胞または体液)を除去するためのチャネル217を画定するために中空である。しかしながら、この代替構成では、供給構造はサイドフィードである、すなわち、マイクロ波エネルギーは、供給構造の軸に対して角度を付けられた方向から、すなわち軸に対して90°から器具200に供給される。上記と同様に、マイクロ波エネルギーはケーブルアセンブリ202から送達される。しかしながら、今回は、ケーブル202は、コネクタ300を介して器具200に接続されている。コネクタ300は、
図2(a)のコネクタ144の一部を形成し得る。コネクタ300は、従来のもの、例えば、N型、SMA型、またはMCXであってよい。コネクタ300は、コネクタ300から誘電材料218を通って内部導体216に接触するように延びる中心ピン302を有する。コネクタ300はまた、外部導体222と電気的に接触する導電性外部スリーブ304を有する。エネルギー供給が効率的であることを保証するために、内部導体216(302)及び外部導体222(304)は、器具200の近位端306で互いに電気的に接触して、短絡状態を作り出し、中心ピン302は、短絡位置から4分の1波長の奇数倍である距離で内部導体216に接触して、この点で最大電場を生成する。これは、
図10に参照記号「d」として示されている。
【0161】
サイドフィード構成の利点は、生検組織(例えば、体液または細胞)が、例えば、器具200の近位端306に取り付けられた可撓性抽出管101を通して、同軸構造の軸に沿って抽出できることである。従って、抽出経路には鋭い角がなく、スムーズな流れを促進し得る。プラグ308を取り付けて、器具200と抽出管101との間の境界面の周囲を密封して、漏れを防いでよい。
【0162】
前述の記載または以下の請求項または添付の図面中で開示され、特定の形態で、または、開示される機能を実行するための手段、または、開示される結果を得るための方法もしくはプロセスと言う観点から表された特徴は、多様な形態で本発明を実現するために、必要に応じて、別々に、またはこのような特徴を任意に組み合わせて利用されてよい。
【0163】
本発明は前述の例示的な実施形態と共に記載されているが、本開示が与えられた時に多くの等価な修正及び変更は当業者には明らかである。従って、上記の本発明の例示的な実施形態は、限定的ではなく例示的なものとみなされる。記載される実施形態への様々な変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに行われてよい。
【0164】
あらゆる疑義を回避するために、本明細書において提供される任意の理論的説明は、読者の理解を進める目的のために提供される。本発明者は、これらの理論的説明のいずれによっても束縛されることを望まない。
【0165】
本明細書において使用されるいずれのセクションの見出しも編集目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0166】
以下の請求項を含む本明細書の全体を通じて、文脈上異ならない限り、用語「~を有する(have)」、「~を備える(comprise)」、及び「~を含む(include)」、並びに「~を有する(having)」、「~を備える(comprises)」、「~を備える(comprising)」、及び「~を含む(including)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を包含するが、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0167】
本明細書及び添付の請求項において使用される時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確にそうでないと示さない限り、複数の指示物を包含することに留意されたい。範囲は、「約」ある特定の値から及び/または「約」他の特定の値として、本明細書において表現され得る。このような範囲が表現される場合に、別の実施形態は、ある特定の値から及び/または他の特定の値までを包含する。同様に、値が近似として表現される場合に、先行詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるだろう。数値に関連する「約」という用語は、任意選択であり、例えば±10%を意味する。
【0168】
用語「好ましい(preferred)」及び好ましくは(preferably)」は、本明細書では、いくつかの状況の下で特定の利点を提供し得る本発明の実施形態を指して使用される。しかしながら、他の実施形態も同一の状況または異なる状況下で好ましいことがあることが認識されよう。1つまたは複数の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味または示唆せず、開示の範囲から、または請求項の範囲から他の実施形態を除外することを意図していない。