(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース
(51)【国際特許分類】
A61C 1/05 20060101AFI20231201BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61C1/05 A
A61C1/08 Z
(21)【出願番号】P 2022113255
(22)【出願日】2022-07-14
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊地 智
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 智美
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第213372610(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-2040314(KR,B1)
【文献】特開平06-296623(JP,A)
【文献】特許第6195284(JP,B2)
【文献】特開平06-047060(JP,A)
【文献】特開昭55-076642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/05
A61C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にタービン室を形成すると共に、当該タービン室内に軸受の外輪を固定した前記軸受の内輪にて支持されたロータを圧縮空気により回転させ、当該ロータの回転軸中心に装着された歯科用回転器具にて歯牙の切削を行う歯科用ハンドピースにおいて、
前記タービン室に圧縮空気を供給する供給管路の途中に第1逆流防止弁と、
前記タービン室から圧縮空気を排気する排気管路の途中に
並列に複数個配列した構造の第2逆流防止弁と、を備え、
前記歯科用回転器具の先端に過負荷が生じた場合に、前記軸受の内輪側で生ずる前記歯科用回転器具の芯振れを抑えるように、前記タービン室内の圧力分布を均一化して回転の慣性を維持し、前記歯科用回転器具の特異な振動の発生を防止する、
歯科用ハンドピース。
【請求項2】
前記軸受の外輪は、前記タービン室内に着脱可能に内装されたカートリッジ内に固定されている、
請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項3】
前記第1逆流防止弁及び前記第2逆流防止弁は、圧縮空気の入出力の圧力差に応じて開口量が変化する一方通行バルブからなり、
前記第1逆流防止弁は、前記圧縮空気を前記タービン室に供給する方向に配置され、
前記第2逆流防止弁は、前記タービン室の圧縮空気を排気する方向に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項4】
前記第2逆流防止弁は、バルブの開き易さが前記第1逆流防止弁と同等か、または、前記第1逆流防止弁よりもバルブを開き難くした構造である、
請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項5】
前記第1逆流防止弁及び前記第2逆流防止弁を構成する部材は、形状、サイズ、材質、材質の硬度の何れかによって開弁圧を調整可能な構造である、
請求項4に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項6】
前記第1逆流防止弁と第2逆流防止弁は、前記圧縮空気の供給源である接続ホースとのジョイント部の近傍の供給管路及び排気管路に夫々設けられている、
請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項7】
前記第1逆流防止弁及び前記第2逆流防止弁は、ダックビルバルブである、
請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
図8Aは、従来の歯科用ハンドピース100のタービン室200の状態を示す要部拡大横断面図である。
図8Bは、従来の歯科用ハンドピース100の過負荷(切削バーに無理な力が加わっている状態)のときのタービン室200の状態を示す説明図である。また、
図8Cは、従来の歯科用ハンドピース100のロータ300に過負荷F100が加わったときの状態を示す説明図である。
【0003】
供給管路400のエア供給圧力をP4、排気管路500のエア排気圧力をP5とすると、無負荷状態(切削バーが歯牙に接触していない状態)では、ロータ300にかかる負荷が殆どないので、
P4≒P5
となる。
しかし、ロータ300に過負荷F100が生じると、
図8B及び
図8Cに示すように、ロータ300の回転が減速したり滞ったりするため、供給管路400側と排気管路500側で圧力に差が生じ、タービン室内の圧力分布は、
P4>P5
となり、タービン室内の圧力分布は均一ではない。
【0004】
一般に、
図8A、
図8B及び
図8Cに示すように、歯科用ハンドピース100である歯科用エアタービンは、作動時に、供給管路400の先端から圧縮空気(エア供給圧力P4)をタービン室200に供給し、軸受600で支持されたロータ300を回転させた後、排気管路500から圧縮空気(エア排気圧力P5)を放出している(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-104251号公報
【文献】特許第6195284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2等に記載の一般の歯科用ハンドピース100では、ロータ300の回転中心に装着された歯科用回転器具(切削バー)の先端に過負荷F100が生じた場合、歯科用回転器具の回転が低下する。その際には、供給管路400の先端から放出される圧縮空気(エア供給圧力P4)の遠心方向の力によって、軸受600で支持されたロータ300の回転バランスが失われて芯振れを生じ、芯振れの発生によって歯科用回転器具(切削バー)の特異な振動(いわゆる「弾かれ」、「びびり」、「たたき」)を起こしていた。
【0007】
なお「弾かれ」とは、歯牙切削中に切削バーが切削抵抗により歯牙から跳ねるような振動を含み、
「びびり」とは、歯牙と切削バーの加工点を振動源として、切削抵抗による小さな振動がタービンの振動特性によって拡大された振動を含み、
「たたき」とは、切削バーが歯牙に滑らかに接触せず、断続的に打撃を与え続ける振動、を含む。
【0008】
ロータ300を支持する軸受600は、羽根を挟んで上下に設けられたボールベアリング900で構成されている。ボールベアリング900の外輪は、Oリングを緩衝材としてエアタービンヘッド700のハウジング800(またはカートリッジ)に固定されている。そのボールベアリング900の内輪側は、摩擦低減のために、比較的緩めで与圧含めて遊びがある状態で配置されている。そのため、内輪の遊び分でロータ300に傾きθ100が生じると芯振れを生じる。
【0009】
そこで、本発明は、歯科用回転器具(切削バー)の先端に過負荷F100が生じた場合に、ロータの回転バランスを安定させて、歯牙切削時に発生する歯科用回転器具(切削バー)の特異な振動(いわゆる「弾かれ」、「びびり」、「たたき」)を抑制することができる歯科用ハンドピースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る歯科用ハンドピースは、内部にタービン室を形成すると共に、当該タービン室内に軸受の外輪を固定した前記軸受の内輪にて支持されたロータを圧縮空気により回転させ、当該ロータの回転軸中心に装着された歯科用回転器具にて歯牙の切削を行う歯科用ハンドピースにおいて、前記タービン室に圧縮空気を供給する供給管路の途中に第1逆流防止弁と、前記タービン室から圧縮空気を排気する排気管路の途中に並列に複数個配列した構造の第2逆流防止弁と、を備え、前記歯科用回転器具の先端に過負荷が生じた場合に、前記軸受の内輪側で生ずる前記歯科用回転器具の芯振れを抑えるように、前記タービン室内の圧力分布を均一化して回転の慣性を維持し、前記歯科用回転器具の弾かれ(特異な振動)を防止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、歯科用回転器具(切削バー)の先端に過負荷が生じた場合に、ロータの回転バランスを安定させて、特異な振動を抑制することができる歯科用ハンドピースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピースを示す一部断面を有する側面図である。
【
図2】ハンドピースヘッドの要部拡大縦断面である。
【
図3A】
図1のIIIA-IIIA拡大断面図である。
【
図3B】
図1のIIIB-IIIB拡大断面図である。
【
図5A】第1逆流防止弁及び第2逆流防止弁の設置状態を示す要部分解拡大斜視図である。
【
図5B】ノーマリーオープンタイプのダックビルバルブを示す中央縦断面図である。
【
図5C】ノーマリークローズタイプのダックビルバルブを示す中央縦断面図である。
【
図5D】本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピースを示す図で、第1逆流防止弁と第2逆流防止弁の設置状態を示す要部拡大横断面図である。
【
図6A】無負荷時のタービン室の状態を示す説明図である。
【
図6B】過負荷発生時のタービン室の状態を示す説明図である。
【
図6C】過負荷安定時のタービン室の状態を示す説明図である。
【
図6D】過負荷安定時のロータの状態を示す説明図である。
【
図7A】本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピースの変形例を示す図で、カートリッジタイプのハンドピースヘッドの要部拡大縦断面図である。
【
図7B】本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピースの変形例を示す図で、カートリッジタイプのハンドピースヘッドの分解斜視図である。
【
図8A】従来の歯科用ハンドピースのタービン室の状態を示す要部拡大横断面図である。
【
図8B】従来の歯科用ハンドピースの過負荷(切削バーに無理な力が加わっている状態)のときのタービン室の状態を示す説明図である。
【
図8C】、従来の歯科用ハンドピースのロータに過負荷が加わったときの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、
図1~
図6Dを参照して、本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピース1を説明する。
なお、本実施形態では、
図1に示す歯科用ハンドピース1において、ハンドピースヘッド2側を前方向、ジョイント部3側を後方向として説明する。また、各部品においても同様とする。
【0014】
≪歯科用ハンドピース≫
図1に示す歯科用ハンドピース1は、歯科の治療に用いられる医療機器である。歯科用ハンドピース1は、例えば、ハンドピースヘッド2と、ジョイント部3と、供給管路4と、排気管路5(
図3B参照)と、第1逆流防止弁7と、第2逆流防止弁8(
図3A参照)と、アングル11と、グリップ12と、ジョイント本体13と、パイプガイド14と、中間パイプ15,16(
図3A参照)と、スプレイ用パイプ18と、を備えている。その歯科用ハンドピース1は、ジョイント部3に取り付けられる不図示のホース等を歯科用ユニットに接続して、所望の歯科用回転器具21をハンドピースヘッド2の工具保持部材29に取り付けて使用される。
【0015】
なお、歯科用ハンドピース1は、ハンドピースヘッド2と、ジョイント部3と、供給管路4、排気管路5(
図3B参照)と、第1逆流防止弁7と、第2逆流防止弁8(
図3A参照)と、を備えていれば、機能、構造、種類等は特に限定されない。以下、ハンドピースヘッド2にロータ22を内蔵している歯科用ハンドピース1を例に挙げて説明する。
【0016】
図2に示すように、歯科用ハンドピース1は、内部にタービン室2eを形成すると共に、タービン室2e内に軸受24,25の外輪24b,25bをシール材O1,O2を緩衝材として固定した軸受24,25の内輪24a,25aにて支持されたロータ22を圧縮空気により回転させ、ロータ22の回転軸中心に装着された歯科用回転器具21にて歯牙の切削、歯面の研磨等に使用を行う装置である。
【0017】
また、歯科用ハンドピース1は、歯科用回転器具21の先端に過負荷が生じた場合に、軸受24,25の内輪24a,25a側で生ずる歯科用回転器具21の振れを抑えるように、タービン室2e内の圧力分布を均一化して回転の慣性を維持し、歯科用回転器具21の弾かれ(特異な振動)を防止する機能を有している。
【0018】
<ハンドピースヘッド>
図1に示すように、ハンドピースヘッド2は、歯科用回転器具21が着脱可能に取り付けられる工具保持部材29を中央部に略上下方向に向けて設けた部位である。ハンドピースヘッド2は、歯科用ハンドピース1のグリップ12の先端部に配設された略円筒状のハウジング2aを備えて成る。ハンドピースヘッド2とジョイント部3とは、ステンレス鋼等の金属によって形成されている。
【0019】
図2に示すように、ハンドピースヘッド2には、ロータ22と、回転軸23と、軸受24,25と、シール材O1,O2と、軸受保持部材26と、環状部材27と、プッシュキャップ28と、ばね部材SPと、工具保持部材29と、が配置されている。
【0020】
ハウジング2aは、ハンドピースヘッド2の筐体を形成する金属製の略円筒状部材から成る。ハウジング2aの後部側の側面には、アングル11を連結するための首部2bが突出形成されている。
【0021】
図2に示すように、首部2bは、ハンドピースヘッド2のアングル11側に形成された突起である。首部2bの後端側の外周部には、アングル11が外嵌されている。
図1に示すように、首部2bの後端部2cには、供給管路4及び排気管路5(
図3B参照)の前端部がろう付けされている。
【0022】
<ロータ>
図2に示すように、ロータ22は、回転軸23の外周部に固定されて回転軸23及び歯科用回転器具21を回転駆動させるための回転体である。ロータ22は、例えば、供給管路4(
図6A~
図6C参照)を経て供給される圧縮空気を吹き付けることによって高速回転される羽根車から成る。
【0023】
<回転軸>
回転軸23は、下部側に工具着脱用の開口穴を有する筒状の軸部材から成る。このため、回転軸23に装着された歯科用回転器具21は、ロータ22及び工具保持部材29と共にその回転軸23と一体に回転するように設置されている。
【0024】
<軸受>
軸受24,25は、その回転軸23の上部及び下部を回転自在に支持する上下一対の軸受部材である。軸受24,25は、内輪24a,25aと、外輪24b,25bと、転動体24c,25cと、を備えたベアリングから成る。
内輪24a,25aは、回転軸23の外周に設けられた円筒体から成る。
外輪24b,25bは、内輪24a,25aに転動体24c,25cを介在して対向配置された円筒体から成る。
転動体24c,25cは、内輪24a,25aと外輪24b,25bとの間に転動自在に介在された複数の円柱形状の部材から成る。なお、転動体24c,25cは、リテーナによって回転自在に支持された鋼球であってもよい。
【0025】
<シール材>
図2に示すように、シール材O1,O2は、軸受24,25の外周面中央に外嵌されたゴム製のOリング、または、ゴム製の環状パッキンから成る。
下側のシール材O1は、ハウジング2aの内壁に形成した環状溝2fに収納された状態で、シール材O1の軸心側が軸受24の外輪24bに当接した状態に配置されている。
上側のシール材O2は、軸受保持部材26の内壁に形成した環状溝26aに収納された状態で、シール材O2の軸心側が軸受25の外輪25bに当接した状態に配置されている。
【0026】
<軸受保持部材>
軸受保持部材26は、上側の軸受25の外周面及び上面と、シール材O2と、を覆うように配置されて、それらを保持する略円筒状の部材である。軸受保持部材26には、前記した環状溝26aと、上側の開口部周縁に凹設されたばね受部26bと、が形成されている。
【0027】
<環状部材>
環状部材27は、ハウジング2aの上側開口部2dに装着された金属製のリング部材から成る。環状部材27は、軸受保持部材26及びプッシュキャップ28の外周に配置されて、それらを支持する部材である。
【0028】
<プッシュキャップ>
プッシュキャップ28は、ばね部材SPのばね力に抗してこのプッシュキャップ28を押圧操作することによって回転軸23を押し込むことで、歯科用回転器具21を回転軸23から離脱させるための操作部材である。プッシュキャップ28は、環状部材27の開口縁に上下動可能に内嵌された略円板形状の部材から成る。
【0029】
<ばね部材>
ばね部材SPは、上側の軸受25とプッシュキャップ28との間に介在されて、プッシュキャップ28を上方向に付勢するための付勢部材である。ばね部材SPは、例えば、圧縮円錐コイルばねから成る。
【0030】
<歯科用回転器具>
歯科用回転器具21は、例えば、回転軸23の下側開口穴内に取り付けられる柄部と、その下側開口穴から下側に突出した状態に設けられる先細状の針部と、を有する周知の構造の切削工具から成る。なお、歯科用回転器具21は、工具保持部材29に取り付けられて供給管路4(
図6A参照)から供給される圧縮空気によって回転するものであれば、その種類、構造等は特に限定されない。
【0031】
<ジョイント部>
図1に示すように、ジョイント部3は、供給管路4、排気管路5(
図3B参照)の後端部と、歯科用ユニット(図示省略)に接続されたチューブ(図示省略)の先端部と、を接続する部位であり、その形状、構造等は、特に限定されない。ジョイント部3は、その一例を挙げると、ジョイント本体13の後端部に一体形成された筒状のカプラ取付部13aに嵌着された円筒状のカプラ受から成る。
【0032】
<供給管路>
図1、
図4あるいは
図5Aに示すように、供給管路4は、ハンドピースヘッド2のタービン室2eとジョイント部3とを、ジョイント本体13、中間パイプ15、第1逆流防止弁7、パイプガイド14、供給パイプ41等を介在して連通させるための流路である。供給管路4は、ハンドピースヘッド2からジョイント部3に亘ってアングル11及びグリップ12内に配置された金属製の管状部材から成る供給パイプ41によって主に構成されている。
供給パイプ41は、ロータ22(
図2参照)を回転させるための圧縮空気を供給するためのパイプである。
【0033】
<排気管路>
図3B、
図5Aあるいは
図6Aに示すように、排気管路5は、ハンドピースヘッド2のタービン室2eとジョイント部3とを、ジョイント本体13、中間パイプ16、パイプガイド14等を介在して連通させるための流路である。排気管路5は、ハンドピースヘッド2からジョイント部3に亘ってアングル11及びグリップ12内に配置された二本の金属製の管状部材から成る排気パイプ51によって主に構成されている。
【0034】
排気パイプ51は、ロータ22(
図2参照)を回転させた圧縮空気を排気するためのパイプである。供給パイプ41及び排気パイプ51の前端部は、ハンドピースヘッド2の後端部2cに、ろう付け等によって接合されている。供給パイプ41及び排気パイプ51の後端部は、パイプガイド14内に嵌着されている。
なお、供給パイプ41及び排気パイプ51の本数は、特に限定されず、適宜変更しても構わない。また、排気パイプ51は、その一部または全部をパイプ構造にせずに、ハンドピース筐体内部の隙間を通って第2逆流防止弁8に接続してもよい。
【0035】
<スプレイ用パイプ>
図1に示すスプレイ用パイプ18は、水を供給するための水供給用のパイプと、その水と共にエアを供給してミスト(霧)を生成するためのチップ用エアを供給するパイプとの2本から成る。つまり、2本のスプレイ用パイプ18は、歯科用回転器具21を冷却して作業効率をよくしたり、また、治療中に血液等で汚れた患部を視認し易くしたりする目的で、異物等を吹き飛ばすために使用される。
【0036】
<光ファイバ>
図1に示す光ファイバ6は、ジョイント本体13内に設けられたLED(図示省略)から発せられた光を光ファイバ設置孔11bに導いて、患部に放して照明するための光導体である。光ファイバ6は、後端がパイプガイド14に固定され、前端が光ファイバ設置孔11bに支持されている。
【0037】
<アングル>
図1に示すように、アングル11は、供給パイプ41、排気パイプ51(
図3B参照)及び光ファイバ6を覆う部材である。アングル11は、ハンドピースヘッド2の後端部2cからグリップ12の先端部までを、供給パイプ41及び排気パイプ51(
図3B参照)及び光ファイバ6を覆うようにして装着され略円筒状の部材から成る。アングル11は、首部嵌着部11aと、光ファイバ設置孔11bと、グリップ挿設部11cと、中空部11dと、を有している。アングル11は、金属または樹脂によって形成されている。アングル11は、側面視して略円弧状に曲がって形成されている。
【0038】
首部嵌着部11aは、ハンドピースヘッド2の首部2bを嵌着するため前側開口部である。
光ファイバ設置孔11bは、光ファイバ6の先端部が着脱自在に挿設される開口部である。光ファイバ設置孔11bは、アングル11の先端部下側に形成されている。
グリップ挿設部11cは、円筒形状のグリップ12の前側開口部内に挿設される部位である。グリップ挿設部11cは、アングル11の後端部に形成された開口部から成る。
中空部11dは、供給パイプ41及び排気パイプ51(
図3B参照)及び光ファイバ6を挿設するためアングル11内の設置空間である。
【0039】
<グリップ>
図1に示すように、グリップ12は、使用者が手で握って操作するための部位である。グリップ12は、供給管路4、排気管路5(
図3B参照)及び光ファイバ6の後端部を内蔵したパイプガイド14と、ジョイント部3を外嵌したジョイント本体13と、を収容した略円筒状の部材から成る。グリップ12には、グリップ12の前側開口縁とアングル11のグリップ挿設部11cとの間に設置されるシール材O3を設置するための環状溝12aと、ジョイント部3の段差部3aに係止する係止部12bと、を有している。
【0040】
<ジョイント本体>
図1に示すように、ジョイント本体13は、ジョイント部3と、中間パイプ15と、第1逆流防止弁7と、スプレイ用パイプ18と、を保持するための部材である。ジョイント本体13は、グリップ12内に挿着されている。
【0041】
<第1逆流防止弁>
図1及び
図4に示すように、第1逆流防止弁7は、圧縮空気の入出力の圧力差に応じて開口量が変化する一方通行バルブ(逆止弁)から成る。第1逆流防止弁7は、タービン室2eに圧縮空気を供給する供給管路4の途中に設けられている。
図5Aに示すように、第1逆流防止弁7は、例えば、先細形状の中空状のバルブ部71と、バルブ部71の先端部に形成されたスリット72と、バルブ部71の基端部に形成されたフランジ部73と、を有したゴム製のダックビルバルブ(ダックビルパッキン)から成る。
図4に示すように、第1逆流防止弁7は、フランジ部73内に中間パイプ15を挿着した状態で、圧縮空気をタービン室2e(
図6A参照)に供給する方向に向けて、ジョイント本体13の第1逆流防止弁設置孔13b内に挿着されている。
【0042】
<第2逆流防止弁>
図3Aに示すように、第2逆流防止弁8は、圧縮空気の入出力の圧力差に応じて開口量が変化する一方通行バルブ(逆止弁)から成る。第2逆流防止弁8は、タービン室2eから圧縮空気を排気する排気管路5(
図3B参照)の途中に設けられている。
図5Aに示すように、第2逆流防止弁8は、例えば、先細形状の中空状の左右一対のバルブ部81と、左右のバルブ部81の先端部にそれぞれ形成されたスリット82と、左右のバルブ部81の基端部に形成された半円板形状のフランジ部83と、を有したゴム製のダックビルバルブ(ダックビルパッキン)から成る。このため、第2逆流防止弁8は、
図5Dに示すように、並列に複数個配列した構造になっている。
図3Aに示すように、第2逆流防止弁8は、フランジ部83内に中間パイプ16を挿着した状態で、圧縮空気をジョイント部3(
図1参照)に排出する方向に向けて、パイプガイド14の中間パイプ設置孔14b内に挿着されている。
図6A~
図6Cに示すように、第2逆流防止弁8は、バルブ部81の開き易さが第1逆流防止弁7と同等か、または、第1逆流防止弁7のバルブ部71よりもバルブ部81を開き難くした構造になっている。
【0043】
また、
図5B及び
図5Cに示すように、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8を構成する部材は、形状、サイズ、材質、材質の硬度の何れかによって開弁を調整可能な構造になっている。
また、
図3A、
図3B、
図4あるいは
図5Aに示すように、第1逆流防止弁7と第2逆流防止弁8は、圧縮空気の供給源である接続ホース(図示省略)とのジョイント部3(
図1参照)の近傍の供給管路4及び排気管路5に夫々設けられている。
【0044】
<中間パイプ>
図3A及び
図4に示すように、中間パイプ15,16は、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8のフランジ部73,83に挿着されて、ゴム製のフランジ部73,83を内側から保持する金属製の円筒部材から成る。
【0045】
<パイプガイド>
図3A、
図3B、
図4あるいは
図5Aに示すように、パイプガイド14は、供給パイプ41と、左右一対の排気パイプ51に連通する中間パイプ16と、光ファイバ6と、左右一対のスプレイ用パイプ18と、を支持する円筒状の部材である。
図5Aに示すように、パイプガイド14には、供給パイプ設置孔14aと、左右一対の中間パイプ設置孔14bと、光ファイバ設置孔14cと、左右一対のスプレイ用パイプ設置孔14dと、が穿設されている。
【0046】
≪作用≫
次に、
図1~
図6Dを参照して本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピース1の作用を説明する。
【0047】
このようにして形成された歯科用ハンドピース1は、ハンドピースヘッド2に歯科用回転器具21を取り付けて、圧縮空気を供給してロータ22が回転駆動されることで、歯科用回転器具21が回転して患者の歯牙を治療することが可能となる。
【0048】
このように、本発明に係る歯科用ハンドピース1は、
図2または
図6A~
図6Cに示すように、内部にタービン室2eを形成すると共に、タービン室2e内に軸受24,25の外輪24b,25bを固定した軸受24,25の内輪24a,25aにて支持されたロータ22を圧縮空気により回転させ、ロータ22の回転軸中心に装着された歯科用回転器具21にて歯牙の切削を行う歯科用ハンドピース1において、タービン室2eに圧縮空気を供給する供給管路4の途中に第1逆流防止弁7と、タービン室2eから圧縮空気を排気する排気管路5の途中に第2逆流防止弁8と、を備え、歯科用回転器具21の先端に過負荷が生じた場合に、軸受24,25の内輪24a,25a側で生ずる歯科用回転器具21の振れを抑えるように、タービン室2e内の圧力分布を均一化して回転の慣性を維持し、歯科用回転器具21の弾かれを防止する。
【0049】
かかる構成によれば、歯科用ハンドピース1は、タービン室2e内での圧力分布を均一化することにより、入力側遠心方向の給気による偏荷重を軽減させることができると共に、不安定な軸状態で回転する歳差運動を軽減させることができる。これにより、歯科用ハンドピース1は、軸受24,25の内輪24a,25a側で生ずる歯科用回転器具21の傾きを抑制することができるので、芯振れによって生ずる歯科用回転器具21の弾かれを解消することができる。
このように、本発明の歯科用ハンドピース1は、供給管路4側及び排気管路5側の管路夫々に逆流防止弁(第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8)を設けた。そして、歯科用回転器具21の先端に過負荷が生じてロータ22に圧縮空気の遠心方向からの力が加わった場合には、軸受24,25の内輪24a,25a側で生ずる歯科用回転器具21の振れを抑えるように、タービン室2e内の圧力分布を均一化して、ロータ22の回転バランスを安定させ、歯科用回転器具21の特異な振動(いわゆる「弾かれ」、「びびり」、「たたき」)を抑制して弾かれを解消した。その結果、本発明の歯科用ハンドピース1は、歯科用回転器具21を常に安定した状態に回転させることができるので、歯牙の切削、歯面の研磨等を行った際に、切削面及び研磨面を綺麗に仕上げることができる。
【0050】
図6Aは、無負荷時のタービン室2eの状態を示す説明図である。
図6Bは、過負荷発生時のタービン室2eの圧力分布を示す説明図である。
図6Cは、過負荷安定時のタービン室2eの圧力分布を示す説明図である。
図6Dは、過負荷安定時のロータ22の状態を示す説明図である。
また、
図6A~
図6Dに示すように、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、圧縮空気の入出力の圧力差に応じて開口量が変化する一方通行バルブからなり、第1逆流防止弁7は、圧縮空気をタービン室2eに供給する方向に配置され、第2逆流防止弁8は、タービン室2eの圧縮空気を排気する方向に配置されている。
【0051】
かかる構成によれば、
図6Aに示すように、無負荷時(切削バーが歯牙に接触していない時)では、ロータ22に負荷がかからず回転するため、供給管路4のエア供給圧力をP4、排気管路5のエア排気圧力をP5とすると、タービン室2e内の圧力分布は、供給管路4側と排気管路5側とがほぼ等しくなり、
P4≒P5
となる。即ち、
歯科用ハンドピース1は、無負荷時に、ロータ22が安定して回転するので供給管路4に供給された圧力P4の大量の圧縮空気が第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8を通過する。
【0052】
図6Bに示すように、歯科用ハンドピース1は、過負荷発生時(切削バーに無理な力が加わっている時)に、ロータ22が芯振れを起こし安定して回転せず、第2逆流防止弁8を通過する圧縮空気量が減少する。このため、第2逆流防止弁8の開口量は減り、タービン室2e内の圧力分布は均等ではなく、供給管路4側と排気管路5側で圧力に差が生じ、
P4>P5
となる。
つまり、歯科用ハンドピース1は、過負荷発生時に、ロータ22の羽根がスムーズに回らず、第2逆流防止弁8に圧縮空気が流れ難くなり、第2逆流防止弁8のバルブが開き難いため、排気管路5側に空気抵抗がかかる。このため、
図6Bに実線で示すように、第2逆流防止弁8は、過負荷発生時にバルブを閉じようとする。
その後、第2逆流防止弁8のバルブが閉じかかると、
タービン室2e内の供給管路4側と排気管路5側との圧力差がなくなり、
図6C及び
図6Dに示すように歯科用ハンドピース1は、過負荷安定時に、第1逆流防止弁7と第2逆流防止弁8で挟まれたタービン室2e内の圧力分布が、
P4≒P5
となり均一化することによって、芯振れが発生するのを抑制することができる。
その後、ロータ22が安定して回転し始めると、第2逆流防止弁8に圧縮空気が流れ、第2逆流防止弁8のバルブを開き、芯振れすることなく、
図6Aのように大量の圧縮空気が第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8を通過するようになる。
【0053】
また、
図6A~
図6Cに示すように、第2逆流防止弁8は、バルブの開き易さが第1逆流防止弁7と同等か、または、第1逆流防止弁7よりもバルブを開き難くした構造である。
【0054】
かかる構成によれば、第2逆流防止弁8は、バルブの開き易さが第1逆流防止弁7と同等の逆流防止弁であっても、排気管路5側を開放して大気圧とするよりも、圧力分布を均一化することができる。
また、第2逆流防止弁8は、第1逆流防止弁7よりもバルブを開き難くした構造であることによって、過負荷時に、タービン室2e内の圧力分布を均一化することで、芯振れが発生するのを抑制することができる。
【0055】
また、
図5B及び
図5Cに示すように、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8を構成する部材は、形状、サイズ、材質、材質の硬度の何れかによって開弁圧を調整可能な構造である。
【0056】
かかる構成によれば、例えば、
図5Bに示すノーマルオープンタイプのダックビルバルブで構成した第1逆流防止弁7A及び前記第2逆流防止弁8Aは、バルブ部71A,81Aが断面視してストレート状の略三角形状に形成されている。一般に、ダックビルバルブは、サイズを大きくするほど、開弁圧を低くして流量を多くすることができる。
これに対して、
図5Cに示す第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8は、バルブ部71,81が断面視して斜面が湾曲した形状(R形状)の略三角形状に形成されたノーマルクローズタイプのバルブから成る。このような形状のバルブ部71,81を有する第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8は、ハウジング2aに装着することで、スリット72,82を閉じる作用が働く。このため、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8は、低い逆圧時の逆止能力を向上させることができる。
【0057】
また、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8は、バルブ部71,81の硬度を硬いほど開弁し難くすることができる。よって、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8は、給気よりも排気を開弁し難くすることで、ハンドピースヘッド2内の圧力変位を抑える働きがある。
これと同様に、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、バルブ部71,81のサイズを小さくするほど開弁し難くすることができる。
また、
図5Cに示すように、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、バルブ部71,81のバルブ形状をストレートよりR形状にした方が開弁し難くすることができる。
また、第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8は、例えば、ビニルメチルシリコンゴム(VMQ)、フルオロビニルメチルシリコンゴム(FVMQ)およびエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の材質を用いることができ、その材質の違いにより開弁圧及び流量の調整をしてもよい。これらの材質は、FVMQ、EPDM、VMQの順で開弁し難くすることができる。
このように、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、形状、サイズ、材質、材質の硬度によって、開弁圧及び流量の調節が可能であるので、芯振れが発生するのを抑制することが可能となる。
【0058】
また、
図5Dに示すように、第2逆流防止弁8は、並列に複数個配列した構造である。
【0059】
かかる構成によれば、歯科用ハンドピース1は、第2逆流防止弁8を排気管路5に並列に複数個(例えば、2個)配列したことによって、バルブ部81を開弁し難くすることができる。第2逆流防止弁8は、1個あたりの逆流防止弁に流れる圧縮空気量を減らすことができるので、開弁するための所定の圧力に達せず、バルブ部81を開弁させる圧縮空気の圧力を減少させることができる。
【0060】
また、
図3A、
図3B、
図4あるいは
図5Aに示すように、第1逆流防止弁7と第2逆流防止弁8は、圧縮空気の供給源である接続ホース(図示省略)とのジョイント部3(
図1参照)の近傍の供給管路4及び排気管路5に夫々設けられている。
【0061】
かかる構成によれば、第1逆流防止弁7と第2逆流防止弁8とは、ジョイント部3(
図1参照)の近傍の供給管路4及び排気管路5に夫々設けられていることで、安価な構成で、歯科用ハンドピース1内に取り付けることが可能である。このため、第1逆流防止弁7と第2逆流防止弁8は、メンテナンスを容易に行うことができる。このように、歯科用ハンドピース1は、第1逆流防止弁7と第2逆流防止弁8とを有している。このため、接続ホース(図示省略)から供給される空気圧や流量にばらつきがあっても、タービン室2e内でそのばらつきを吸収して、歯科用回転器具21(
図1参照)の弾かれを防止することができる。
【0062】
また、
図5Aに示すように、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、ダックビルバルブである。
【0063】
第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、ダックビルバルブであることで、弾性素材を一体成形して作製されるので、弁球及びコイルばねを用いるチェックバルブよりも、部品点数及びコストを削減することができる。また、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、一部品から成るので、構造が簡素で、気体通路への組付作業が容易である。なお、ダックビルバルブは、ロート形状、テーパ形状、あるいは、スリットを入れた四方開放形状のものも含む。
【0064】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図7Aは、本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピース1の変形例を示す図で、カートリッジタイプのハンドピースヘッド2Aの要部拡大縦断面図である。
図7Bは、本発明の実施形態に係る歯科用ハンドピース1の変形例を示す図で、カートリッジタイプのハンドピースヘッド2Aの分解斜視図である。
【0066】
前記実施形態で説明した歯科用ハンドピース1は、
図2に示すようなスタンダードタイプのものに限定されず、
図7A及び
図7Bに示すように、カートリッジタイプの歯科用ハンドピース1Aであってもよい。つまり、歯科用ハンドピース1Aは、軸受24,25の外輪24b,25bが、タービン室2e内に着脱可能に内装されたカートリッジ20内に固定されていてもよい。
【0067】
この場合、カートリッジ20は、ロータ22を軸支した軸受24,25を、カートリッジ上ケース20aとカートリッジ下ケース20bとによって上下方向から挟持するように収容してユニット化している。そのカートリッジ20は、ハウジング2a内に収容し、プッシュキャップ28を装着した環状部材27をハウジング2aに挿着することで、ハンドピースヘッド2Aに取り付けることができる。
【0068】
かかる構成によれば、歯科用ハンドピース1Aは、カートリッジタイプであるので、カートリッジ20を、タービンヘッドにあるタービン室2Ae内で着脱自在にしっかりと固定させることができる。このため、歯科用ハンドピース1Aは、カートリッジ20を容易に交換することができるので、メンテナンス性に優れている。
なお、この場合、カートリッジ20内で軸受24,25の内輪24a,25a側では、摩擦低減のため、比較的緩めで与圧を含めて遊びがあるので、歯科用回転器具21の先端に過負荷が生じたときに、歯科用回転器具21(
図2参照)の芯振れが発生し易くなる。その芯振れは、前記した第1逆流防止弁7及び前記第2逆流防止弁8でタービン室2Ae内の圧力分布を均一化することで、芯振れを抑制することができる。
【0069】
[その他の変形例]
また、
図5Aに示すように、前記実施形態では、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8の一例として、ダックビルバルブの場合を説明したが、第1逆流防止弁7及び第2逆流防止弁8は、ダイアフラムバルブ、アンブレラバルブ(傘状弁)、ダックビルバルブ、四方開放形状バルブ等を組み込んだ接手構造であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B 歯科用ハンドピース
2e,2Ae タービン室
3 ジョイント部
4 供給管路
5 排気管路
7,7A,7B 第1逆流防止弁
8,8A 第2逆流防止弁
20 カートリッジ
21 歯科用回転器具
22 ロータ
24,25 軸受
24a,25a 内輪
24b,25b 外輪
24c,25c 転動体
【要約】 (修正有)
【課題】歯牙切削時に発生する歯科用回転器具(切削バー)の特異な振動を抑制することができる歯科用ハンドピースを提供する。
【解決手段】歯科用ハンドピース1は、内部にタービン室2eを形成すると共に、タービン室2e内に軸受24,25の外輪24b,25bを固定した軸受24,25の内輪24a,25aにて支持されたロータ22を圧縮空気により回転させ、ロータ22の回転軸中心に装着された歯科用回転器具21にて歯牙の切削を行う。供給管路の途中には、第1逆流防止弁を備えている。排気管路の途中には、第2逆流防止弁を備えている。歯科用回転器具21の先端に過負荷が生じた場合には、軸受24,25の内輪24a,25a側で生ずる歯科用回転器具21の芯振れを抑え、タービン室2e内の圧力分布を均一化して回転の慣性を維持し、歯科用回転器具21の特異な振動の発生を防止する。
【選択図】
図2