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特許7394493抗癌剤および多孔性シリカ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】抗癌剤および多孔性シリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/52 20170101AFI20231201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231201BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231201BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20231201BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231201BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20231201BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20231201BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20231201BHJP
   A61K 9/14 20060101ALN20231201BHJP
   A61K 31/519 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
A61K47/52
A61P35/00
A61K38/16
A61P35/02
B82Y5/00
B82Y40/00
A61K47/02
A61K47/54
A61K38/10
A61K38/08
C07K7/08
A61K9/14
A61K31/519
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022505382
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2020010168
(87)【国際公開番号】W WO2021020945
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/880,733
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2020-0096209
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
【住所又は居所原語表記】(DM Tower, Bangbae-dong) 103, Bangbae-ro, Seocho-gu, Seoul 06683 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チョル ヘ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533543(JP,A)
【文献】国際公開第2018/202818(WO,A1)
【文献】特許第6426288(JP,B2)
【文献】韓国登録特許第1528197(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第1388958(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0226935(US,A1)
【文献】Oncotarget,2018年,9(41),pp.26466-26490
【文献】Expert Opin. Ther. Targets,20(2),2016年,pp.167-178
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,2011年,100(8),pp.3294-3306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
B82Y
C07K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌活性ペプチドが組み込まれた多数の多孔性シリカ粒子を含み、各前記多孔性シリカ粒子の外部表面に多数の窒素含有基が位置し、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸が結合し
前記多孔性シリカ粒子は、粒径が50~500nmであり、気孔の直径が7~25nmであり、
前記抗癌活性ペプチドの長さは、5aa~50aaであることを特徴とする抗癌剤。
【請求項2】
前記窒素含有基中の0.9%以下に前記葉酸が結合している、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項3】
前記窒素含有基中の11%以上に前記葉酸が結合している、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項4】
前記窒素含有基中の0.001%~0.3%に前記葉酸が結合している、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項5】
前記抗癌活性ペプチドは、二硫化結合によって前記多孔性シリカ粒子に結合している、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項6】
前記多孔性シリカ粒子は、不規則に配置された多数の気孔を含む、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項7】
前記抗癌活性ペプチドは、その末端にC(GG)n(nは1~3)のアミノ酸配列を有するリンカーを含む、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項8】
前記抗癌活性ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項9】
前記多孔性シリカ粒子は、BET表面積が280m/g~680m/gである、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項10】
前記抗癌活性ペプチドは、前記多孔性シリカ粒子に1:1~20の重量比で組み込まれる、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項11】
注射剤である、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項12】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、尿道癌、尿管癌、腎盂癌、食道癌、喉頭癌、胃癌、胃腸管癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、卵胞癌腫、黒色腫、肺癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平細胞癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、乳頭癌、膀胱癌、肝癌、胆管癌、骨癌、ヘアリー細胞癌、口腔癌、口唇癌、舌癌、唾液腺癌、咽頭癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、腎癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、脳癌、中枢神経系の癌、腹膜癌、肝細胞癌、ホジキン又は白血病である、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項13】
前記多孔性シリカ粒子は、前記外部表面の前記窒素原子の量が0.1mmol/g以上である、請求項1に記載の抗癌剤。
【請求項14】
多孔性シリカ粒子の内部気孔が界面活性剤で満たされた状態で前記多孔性シリカ粒子の外部表面に窒素含有基を導入する第1ステップと、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸を結合させる第2ステップと、前記多孔性シリカ粒子の前記内部気孔を満たしていた前記界面活性剤を除去する第3ステップと、前記多孔性シリカ粒子に活性ペプチドを組み込む第4ステップとを含
前記多孔性シリカ粒子は、粒径が50~500nmであり、気孔の直径が7~25nmであり、
前記活性ペプチドの長さは、5aa~50aaであることを特徴とする、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記界面活性剤は、CTAB(cetyltrimethylammonium bromide)、TMABr(hexadecyltrimethylammonium bromide)、TMPrCl(hexadecyltrimethylpyridinium chloride)およびTMACl(tetramethylammonium chloride)からなる群より選択される、請求項14に記載の活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記活性ペプチドは、前記多孔性シリカ粒子に1:1~20の重量比で結合する、請求項14に記載の活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【請求項17】
前記葉酸は、前記多孔性シリカ粒子100重量部に対して0.01~10重量部処理される、請求項14に記載の活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【請求項18】
第1ステップの前に、前記界面活性剤およびシリカ前駆物質を溶媒に入れて撹拌し、気孔が前記界面活性剤で満たされた小気孔シリカ粒子を製造するステップをさらに含む、請求項14に記載の活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【請求項19】
第1ステップの前に、前記小気孔シリカ粒子を膨張剤と反応させて前記小気孔を膨張させるステップをさらに含む、請求項18に記載の活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【請求項20】
請求項1419のいずれか一項に記載の多孔性シリカ粒子の製造方法を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗癌剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤および多孔性シリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は世界で最も罹患率が高い癌のひとつであり、癌細胞表面のER、PR、HER2などのホルモン受容体の発現レベルが診断および治療において非常に重要であることが知られている。それ故に、従来の治療法の1つは、このような受容体またはタンパク質を標的とする抗体を使用することである。しかし、この治療法の効率は細胞表面のバイオマーカーに依存して変化する。このような治療法の代替療法として、オートファジー現象が魅力的な試みとなってきた。
【0003】
オートファジーは、細胞恒常性の維持または栄養素の補充のために細胞内のタンパク質または細胞小器官を分解する機構である。オートファジーは細胞を健康に維持するのに必須となる機構であるので、不均衡になったオートファジーは細胞の誤作動を引き起こす可能性がある。乳癌などのいくつかの癌はオートファジー欠損であることが知られている。この場合、オートファジーは腫瘍形成と密接に関連している。PI3KC3複合体の形成中にオートファジー小体の開始に重要な役割を果たすBeclin1タンパク質は、乳癌の治療に適用するために注目された。特に、18個のアミノ酸を有するBec1ペプチドが確認され、これはBeclin1タンパク質と同様の活性および治療効果を示した。このことから、オートファジー誘導ペプチド、Bec1は乳癌の新しい治療薬候補となった。
【0004】
しかしながら、ペプチドの疎水性の特性は、bec1ペプチドを乳癌細胞に送達するのに大きな障害となった。この問題を解消するために、TAT9、10などの細胞透過性ペプチドを併用したが、この方法では癌細胞へのbec1の標的化された送達を達成することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗癌剤を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、多孔性シリカ粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.抗癌活性ペプチドが組み込まれた多数の多孔性シリカ粒子を含み、各前記多孔性シリカ粒子の外部表面に多数の窒素含有基が位置し、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸が結合している抗癌剤。
【0008】
2.前記項目1において、前記窒素含有基中の0.9%以下に前記葉酸が結合している抗癌剤。
【0009】
3.前記項目1において、前記窒素含有基中の11%以上に前記葉酸が結合している抗癌剤。
【0010】
4.前記項目1において、前記窒素含有基中の0.001%~0.3%に前記葉酸が結合している抗癌剤。
【0011】
5.前記項目1において、前記抗癌活性ペプチドは、二硫化結合によって前記多孔性シリカ粒子に結合している抗癌剤。
【0012】
6.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は不規則に配置された多数の気孔を含む抗癌剤。
【0013】
7.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、粒径が50~500nmであり、気孔の直径が7~25nmである抗癌剤。
【0014】
8.前記項目1において、前記抗癌活性ペプチドは、長さが5aa~50aaである抗癌剤。
【0015】
9.前記項目1において、前記抗癌活性ペプチドは、その末端にC(GG)n(nは1~3)のアミノ酸配列を有するリンカーを含む抗癌剤。
【0016】
10.前記項目1において、前記抗癌活性ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗癌剤。
【0017】
11.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、BET表面積が280m/g~680m/gである抗癌剤。
【0018】
12.前記項目1において、前記抗癌活性ペプチドは、前記多孔性シリカ粒子に1:1~20の重量比で組み込まれる抗癌剤。
【0019】
13.前記項目1において、注射剤である抗癌剤。
【0020】
14.前記項目1において、前記癌は、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、尿道癌、尿管癌、腎盂癌、食道癌、喉頭癌、胃癌、胃腸管癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、卵胞癌腫、黒色腫、肺癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平細胞癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、乳頭癌、膀胱癌、肝癌、胆管癌、骨癌、ヘアリー細胞癌、口腔癌、口唇癌、舌癌、唾液腺癌、咽頭癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、腎癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、脳癌、中枢神経系の癌、腹膜癌、肝細胞癌、ホジキン又は白血病である抗癌剤。
【0021】
15.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、前記外部表面の前記窒素原子の量が0.1mmol/g以上である抗癌剤。
【0022】
16.多孔性シリカ粒子の内部気孔が界面活性剤で満たされた状態で前記多孔性シリカ粒子の外部表面に窒素含有基を導入する第1ステップと、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸を結合させる第2ステップと、前記多孔性シリカ粒子の前記内部気孔を満たしていた前記界面活性剤を除去する第3ステップと、前記多孔性シリカ粒子に活性ペプチドを組み込む第4ステップとを含む、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【0023】
17.前記項目16において、前記界面活性剤は、CTAB(cetyltrimethylammonium bromide)、TMABr(hexadecyltrimethylammonium bromide)、TMPrCl(hexadecyltrimethylpyridinium chloride)およびTMACl(tetramethylammonium chloride)からなる群より選択される、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【0024】
18.前記項目16において、前記活性ペプチドは前記多孔性シリカ粒子に1:1~20の重量比で結合される、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【0025】
19.前記項目16において、前記葉酸は、前記多孔性シリカ粒子100重量部に対して0.01~10重量部処理される、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【0026】
20.前記項目16において、第1ステップの前に、前記界面活性剤及びシリカ前駆物質を溶媒に入れて攪拌して、気孔が前記界面活性剤で満たされた小気孔シリカ粒子を製造するステップをさらに含む、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【0027】
21.前記項目20において、第1ステップの前に、前記小気孔シリカ粒子を膨張剤と反応させて前記小気孔を膨張させるステップをさらに含む、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法。
【0028】
22.前記項目16~21のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子の製造方法を含む、前記項目1~15のいずれかに記載の抗癌剤の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明の抗癌剤は、抗癌活性ペプチドの癌に対する標的送達能に優れている。
【0030】
本発明の抗癌剤は、生体内環境で沈殿を形成せず、安定性に非常に優れている。
【0031】
本発明の抗癌剤は、様々な癌腫に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、Bec1ペプチドを担持したFabBALL及びそれを用いて標的細胞にタンパク質を送達することを示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
図3図3は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
図4図4は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の製造工程中の小気孔粒子の顕微鏡写真である。
図5図5は、本発明の一実施形態による小気孔粒子の顕微鏡写真である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の気孔直径別の顕微鏡写真である。DDV(Degradable Delivery Vehicle)は、実施例の粒子であり、括弧内の数字は粒子の直径を、下付き文字の数字は気孔の直径を意味する。例えば、DDV(200)10は、粒子直径が200nm、気孔直径が10nmである実施例の粒子を意味する。
図7図7は、BALL及びペプチドの特性を示すものである。(a)はFabBALLのTEM画像である(スケールバー(scale bar)=200nm)。(b)はFabBALLの流体力学的(hydrodynamic)な粒径分布である。(c)は各表面改質されたBALLのゼータ電位である。(d)はMALDI-TOF MSによって測定されたBec1ペプチドのマススペクトルである。
図8図8は、FabBALLの特性を示すものである。(a)は、放出された4-チオピリドン(324nm)のUV-vis吸収によって測定されたロード効率である。(b)は、蛍光(fluorescence,ex/em:492/517)によって測定されたフルオレセイン・コンジュゲートBec1ペプチドの放出プロファイルである。(c)は、Bec1ペプチドを担持したFabBALLで12時間処理された細胞における局在化(localization)を示す(青:DAPI、緑:fluorescein labelled Bec1、赤:Cy3 labelled FabBALL、スケールバー=15μm)。
図9図9は、FabBALLがオートファジー媒介細胞死を引き起こすことを示すものである。(a)は、様々な濃度のBec1ペプチドが単独またはFabBALLと共に処理された場合のMCF-7細胞の生存率である。(b)は、様々な濃度のFabBALL、abBALL+bec1およびFabBALL+bec1で処理されたMCF-7細胞の生存率である。(c)は、PBS、bec1、FabBALL、およびFabBALL+bec1で処理されたLC3-GFPを発現するMCF-7細胞の蛍光画像である(青:DAPI、緑:GFP、スケールバー=20μm)。(d)は、各グループのLC3 punctaの数である(n=100)。
図10図10は、様々な癌細胞株に対する抗癌活性を示すものである。(a)は前立腺癌細胞株PC-3における結果である。
図11図11は、様々な癌細胞株に対する抗癌活性を示すものである。(b)は前立腺癌細胞株LNCaPにおける結果である。
図12図12は、様々な癌細胞株に対する抗癌活性を示すものである。(c)は卵巣癌細胞株HeLaにおける結果である。
図13図13は、粒子における窒素含有基に対する葉酸の割合による溶液安定性の観察結果である。
図14図14は、多孔性シリカ粒子の気孔配置を示す概略図である。
図15図15は、実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明は抗癌剤に関する。
【0035】
本発明の抗癌剤は、抗癌活性ペプチドが組み込まれた多数の多孔性シリカ粒子を含み、各多孔性シリカ粒子の外部表面に多数の窒素含有基が位置し、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸が結合している。
【0036】
本発明による多孔性シリカ粒子は、抗癌活性ペプチドが組み込まれている。抗癌活性ペプチドは気孔の内部に担持されていてもよい。
【0037】
例えば、抗癌活性ペプチドは、二硫化結合によって気孔内部に結合することができる。癌細胞は細胞内リソソームにグルタチオン(glutathione)が高濃度で存在するため、癌細胞内で前記二硫化結合が切断されて抗癌活性ペプチドが特異的に放出され得る。
【0038】
二硫化結合は、例えば、多孔性シリカ粒子の気孔内部の硫黄含有基と抗癌活性ペプチド末端の硫黄含有基との反応によって形成されたものであってもよい。硫黄含有基は、例えば、メルカプト基、メルカプトアルキル基などであってもよい。
【0039】
多孔性シリカ粒子は、気孔内部の硫黄含有基の割合が高くて、抗癌活性ペプチドの担持率が高いものであってもよい。例えば、気孔内部の硫黄原子の割合が0.05mmol/g以上であってもよい。具体的には、0.1mmol/g以上、0.2mmol/g以上、0.3mmol/g以上などであってもよいが、これらに限定されるものではない。上限は、例えば1mmol/g、0.7mmol/g、0.5mmol/g、0.4mmol/gなどであってもよい。これは元素分析によって確認される値であってもよい。
【0040】
抗癌活性ペプチドは、末端にC(GG)n(nは1~3)リンカーを含むことができる。
【0041】
前記リンカーのC(システイン)は二硫化結合をなすのに使用することができ、GG(ジグリシン)はペプチドの機能には影響を与えずにペプチドが気孔内部から適正な距離を離隔するようにして、多孔性シリカ粒子からより容易に脱離させることができる。
【0042】
抗癌活性ペプチドは、抗癌活性を有しつつ、二硫化結合を成すことができる官能基を有するか、又はその官能基を結合できるものであればその種類は限定されるものではなく、例えば配列番号1の配列からなるペプチドであってもよい。二硫化結合において、例えば抗癌活性ペプチドは、N末端またはC末端にシステイン(C)を有するものであってもよい。
【0043】
抗癌活性ペプチドとしては、適用しようとする癌種に合った抗癌活性を有するものであれば公知のものも制限なく使用することができる。公知のペプチドが二硫化結合できないものであれば、例えば、その配列のN末端またはC末端にシステインがさらに結合されたペプチドを使用することができる。
【0044】
抗癌活性ペプチドの長さは、例えば5aa~50aaであってもよく、具体的には5aa~40aa、5aa~30aa、8aa~25aa、10aa~25aa、12aa~25aa、15aa~25aaなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記長さは、リンカーを含む長さであってもよい。
【0045】
抗癌活性ペプチドは、N末端またはC末端にPK(pharmacokinetics)の改善のための当該分野で公知の官能基をさらに有するものであってもよい。これは、例えば、脂肪酸、コレステロール、アルキル基、ポリエチレングリコールなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。脂肪酸は、例えば炭素数8~22の脂肪酸であってもよく、アルキル基は、例えば炭素数1~20のアルキル基であってもよい。
【0046】
抗癌活性ペプチドは、2つ以上のペプチドの複合体であってもよい。例えば、二硫化結合などの当分野で公知のリンカーで複数のペプチドが結合されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
抗癌活性ペプチドの粒子への担持割合は、例えば、多孔性シリカ粒子と抗癌活性ペプチドとの重量比が1:1~20であってもよい。重量比が前記範囲内であると、ペプチドが十分に担持され、ペプチドが担持されていない空の多孔性シリカ粒子が発生することを防止することができる。例えば、前記範囲内で1:1~20、1:3~20、1:3~15、1:5~15、1:6~14、1:6~12、1:6~10などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
多孔性シリカ粒子は、外部表面に葉酸が結合し、癌細胞表面の葉酸受容体に特異的に結合して癌細胞内に移入することができる。
【0049】
多孔性シリカナノ粒子は、外部表面に窒素含有基を有する。これにより、外部表面に葉酸が結合することができる。
【0050】
多孔性シリカナノ粒子は、外部表面の窒素含有基の割合が高くてもよい。例えば、外部表面の窒素原子の割合は0.1mmol/g以上であってもよい。具体的には、0.5mmol/g以上、1mmol/g以上、1.5mmol/g以上、2mmol/g以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。上限は、例えば10mmol/g、5mmol/g、3mmol/g、2.5mmol/gなどであってもよい。この値は、元素分析によって確認することができる。
【0051】
多孔性シリカ粒子は、外部表面ができるだけ前記窒素含有基を有するように前記置換基を導入する化合物を処理して表面改質したものであってもよい。
【0052】
窒素含有基は、例えばアミノ基、アミノアルキル基などであってもよい。これは、例えば、多孔性シリカ粒子の外部表面のシラノール基にアミノアルキル基を結合して生成したものであってもよい。アミノアルキル基は、例えばアミノプロピル基であってもよい。窒素含有基は、例えば、多孔性シリカ粒子の外部表面に前記窒素含有基を有するアルコキシシランを処理して行うことができる。具体的には、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]aniline)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などであってもよい。
【0053】
窒素含有基を有する化合物は、例えば、多孔性シリカ粒子100重量部に対して0.1~10重量部、具体的には0.1~5重量部、より具体的には1~5重量部、さらに具体的には1~3重量部処理したものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
多孔性シリカ粒子の外部表面の葉酸は、外部表面の窒素含有基の少なくとも一部に結合している。これにより、多孔性シリカ粒子が沈殿を形成することなく、優れた分散安定性を示すことができる。例えば、窒素含有基中の0.9%以下または11%以上に結合していてもよい。具体的には、葉酸は窒素含有基中の0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下に結合していてもよい。その場合、下限は、例えば0.001%、0.005%、0.01%、0.03%、0.05%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。葉酸は前記上下限のすべての可能な組み合わせを満たすように結合することができる。また、具体的に葉酸は、窒素含有基中の11%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上に結合していてもよい。上限は100%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
前記の結合割合は、例えば、葉酸の処理量を変えることによって調整することができる。
【0056】
前記の結合割合は、例えば、多孔性シリカ粒子の外部表面に導入された窒素含有基の量に対する反応時に添加された葉酸の量で計算することができる。例えば、窒素含有基の量は元素分析によって導出される量であってもよい。具体例としては、元素分析の結果、多孔性シリカ粒子の外部表面の窒素原子の割合が2.1mmol/gである場合、葉酸の割合を窒素含有基の0.1%(モル比)にするために、粒子50mgに0.046mgの葉酸を添加して反応させることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
葉酸と窒素含有基の結合は、例えばアミド結合であってもよく、具体的にはEDCカップリングによるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
多孔性シリカ粒子はシリカ(SiO)素材の粒子であり、ナノサイズの粒径を有することができる。
【0059】
多孔性シリカ粒子は多孔性粒子であり、ナノサイズの気孔を有し、その表面及び/又は気孔の内部に抗癌活性ペプチドを担持することができる。
【0060】
多孔性シリカ粒子の気孔は、不規則に配置されていてもよい。通常の多孔性シリカ粒子は規則的な気孔構造(ordered pore structure)を有するが、本発明に係る多孔性シリカ粒子は、不規則な気孔構造(non-ordered pore structure)を有するものであってもよい。これにより、抗癌活性ペプチドが排出される経路がより不規則で長くなり、ペプチドをより徐放的に放出できる。多孔性シリカ粒子は、例えば図14図15に示すような不規則な気孔配置を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が7~25nmであってもよい。平均気孔直径は、前記範囲内で、例えば7~25nm、前記範囲内で、例えば7~25nm、7~23nm、10~25nm、13~25nm、7~20nm、7~18nm、10~20nm、10~18nmなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
多孔性シリカ粒子は、例えば球状粒子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
多孔性シリカ粒子の粒径は、例えば50~500nmであってもよい。前記範囲内で、例えば50~500nm、50~400nm、50~300nm、100~450nm、100~400nm、100~350nm、100~300nm、150~400nm、150~350nm、200~400nm、200~350nm、250~400nm、180~300nm、150~250nmなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0064】
多孔性シリカ粒子のBET表面積は、例えば280~680m/gであってもよい。例えば、前記範囲内で、280m/g~680m/g、280m/g~600m/g、280m/g~500m/g、280m/g~400m/g、300m/g~650m/g、300m/g~600m/g、300m/g~550m/g、300m/g~500m/g、300m/g~450m/g、350m/g~450m/gなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
多孔性シリカ粒子は、気孔のg当たりの体積が例えば0.7ml~2.2mlであってもよい。例えば、前記範囲内で0.7ml~2.0ml、0.8ml~2.2ml、0.8ml~2.0ml、0.9ml~2.0ml、1.0ml~2.0mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。g当たりの体積が小さすぎると、分解速度が速くなりすぎることがあり、大きすぎると、製造が困難であるか、完全な形状を有しないことがある。
【0066】
多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径5nm未満の小気孔粒子の気孔が平均直径7~25nmに拡張されたものであってもよい。これにより、気孔直径が大きくなって、大きいか長いペプチドを気孔内部に担持することができ、気孔直径に比べて粒径自体は大きくないため、細胞内への送達及び吸収が容易である。
【0067】
前記抗癌活性ペプチドと葉酸の結合は、気孔内部に界面活性剤が満たされている多孔性シリカ粒子の外部表面を、窒素含有基を有するように改質するステップと、前記窒素含有基に葉酸を結合させるステップと、多孔性シリカ粒子の気孔内部の界面活性剤を除去するステップと、気孔内部に抗癌活性ペプチドを二硫化結合で結合させるステップと、を含むことができる。
【0068】
多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程を経て製造したものであってもよい。前記小気孔の粒子は、溶媒に界面活性剤とシリカ前駆物質を入れて攪拌及び均質化して得られるものであってもよく、気孔拡張は、前記の得られた小気孔粒子に気孔膨張剤を処理して行われてもよい。
【0069】
この場合、気孔内部に界面活性剤が満たされた状態で粒子が得られるが、このとき、気孔の外部表面を、窒素含有基を有するように改質することができる。これは前述のように、窒素含有基を有する化合物を処理して行われてもよい。気孔内部に界面活性剤が満たされた状態で表面改質を行うことにより、気孔内部ではなく気孔外部のみが窒素含有基を有するように改質することができる。
【0070】
その後、多孔性シリカ粒子に葉酸を処理することで、前記窒素含有基に葉酸に結合させることができる。
【0071】
例えば、葉酸は前述の割合を満たすように処理することができる。
【0072】
その後、気孔内部に抗癌活性ペプチドを結合させるために、気孔内部の界面活性剤を除去する。
【0073】
気孔内部の界面活性剤は、例えば酸処理によって行うことができる。具体的には、酸を含むアルコールで処理して行うことができる。酸は、例えば塩酸であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0074】
アルコールは、例えば炭素数1~3のアルコールであってもよく、具体的にはエタノールであってもよい。
【0075】
酸処理は撹拌下で行うことができ、例えば4~24時間、具体的には8~24時間、より具体的には12~20時間行うことができる。
【0076】
酸処理は加熱下で行うことができ、例えば80℃~150℃、具体的には90℃~130℃で行うことができる。
【0077】
その後、気孔内部に抗癌活性ペプチドを二硫化結合で結合させる。
【0078】
二硫化結合の形成のために、多孔性シリカ粒子は、気孔内部が硫黄含有基を有するように改質されたものであってもよい。これは、例えば硫黄含有基を有する化合物を処理して行われてもよい。これは硫黄含有基を有するアルコキシシランであってもよく、具体的には(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
これに硫黄含有基を有する抗癌活性ペプチドを処理すると、二硫化結合が形成されながら抗癌活性ペプチドが結合できる。
【0080】
抗癌活性ペプチドの結合は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子と抗癌活性ペプチドを混合して行うことができる。
【0081】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができる。
【0082】
また、前記溶媒としては、PBS(リン酸緩衝食塩水)、SBF(疑似体液)、ホウ酸塩-緩衝食塩水(Borate-buffered saline)、トリス-緩衝食塩水(Tris-buffered saline)などを使用することもできる。
【0083】
表面改質は、例えば溶媒に分散した多孔性シリカ粒子を前述の化合物と反応させて行うことができる。
【0084】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他のジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはトルエンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
前記多孔性シリカ粒子の前述した化合物との反応は、例えば、加熱下で行うことができる。加熱は、例えば80℃~180℃、例えば、前記範囲内で80℃~160℃、80℃~150℃、100℃~160℃、100℃~150℃、110℃~150℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
前記多孔性シリカ粒子の前述した化合物との反応は、例えば4時間~20時間、例えば、前記範囲内で4時間~18時間、4時間~16時間、6時間~18時間、6時間~16時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~14時間などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
各工程間では洗浄を行うことができる。
【0088】
前記洗浄は水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、具体的には3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0089】
粒子の製造方法の具体例は以下の通りである。
【0090】
前記小気孔の粒子は、例えば平均気孔直径が1nm~5nmの粒子であってもよい。
【0091】
前記小気孔の粒子は、溶媒に界面活性剤とシリカ前駆物質を入れて攪拌して得ることができる。
【0092】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他のジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはメタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
前記溶媒において、水と有機溶媒の混合溶媒の使用時の割合は、例えば、水と有機溶媒を1:0.7~1.5の体積比、例えば1:0.8~1.3の体積比で使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
前記界面活性剤は、例えば、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TMABr(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、TMPrCl(塩化ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)、TMACl(塩化テトラメチルアンモニウム)などであってもよく、具体的にはCTABを使用することができる。
【0095】
前記界面活性剤は、例えば、溶媒1リットル当たりに1g~10g、例えば、前記範囲内で1g~8g、2g~8g、3g~8gなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記シリカ前駆物質は、溶媒に界面活性剤を添加して攪拌した後に添加することができる。シリカ前駆物質は、例えば、TMOS(テトラメチルオルソシリケート)、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0097】
前記攪拌は、例えば10分~30分間行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0098】
前記シリカ前駆物質は、例えば溶媒1リットル当たりに0.5ml~5ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~4ml、0.5ml~3ml、0.5ml~2ml、1ml~2mlなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
必要に応じて、触媒として水酸化ナトリウムをさらに使用することができるが、これは溶媒に界面活性剤を添加した後、シリカ前駆物質の添加前に撹拌しながら添加することができる。
【0100】
前記水酸化ナトリウムは、例えば、1M水酸化ナトリウム水溶液を基準で溶媒1リットル当たりに0.5ml~8ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~5ml、0.5ml~4ml、1ml~4ml、1ml~3ml、2ml~3mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0101】
前記シリカ前駆物質の添加後に溶液を攪拌して反応させることができる。攪拌は、例えば2時間~15時間行うことができ、例えば、前記範囲内で3時間~15時間、4時間~15時間、4時間~13時間、5時間~12時間、6時間~12時間、6時間~10時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。攪拌時間(反応時間)が短すぎると、結晶核生成(nucleation)が不足することがある。
【0102】
前記攪拌の後には、溶液を熟成(aging)させることができる。熟成は、例えば、8時間~24時間行うことができ、例えば、前記範囲内で8時間~20時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~16時間、10時間~14時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0103】
その後、反応産物を洗浄及び乾燥して多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0104】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0105】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができ、具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0106】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他のジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0108】
前記洗浄は、遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0109】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば、2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0110】
先に例示した方法により製造される粒子は、その表面及び気孔内部に、反応に用いられた残留有機物質(界面活性剤など)が残っていることがあるので、それを除去するために洗浄が行われるものであり得る。通常、この有機物質の除去のために、酸処理(または酸性の有機溶媒処理)を行うことができるが、本発明は、この酸処理を行わないため、洗浄後も気孔内部に残留有機物質が残っているものであり得る。
【0111】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されず、真空状態で行うこともできる。
【0112】
その後、前記で得られた多孔性シリカ粒子の気孔を拡張することができる。気孔の拡張は、小気孔シリカ粒子を気孔膨張剤と反応させて行うことができる。
【0113】
前記気孔膨張剤としては、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン、トリペンチルベンゼン、トリヘキシルベンゼン、トルエン、ベンゼンなどを使用でき、具体的にはトリメチルベンゼンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
また、前記気孔膨張剤としては、例えばN,N-ジメチルヘキサデシルアミン(N,N-dimethylhexadecylamine、DMHA)を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0115】
前記気孔の拡張は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子を気孔膨張剤と混合し、加熱して反応させて行うことができる。
【0116】
前記溶媒は、例えば、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
前記多孔性シリカ粒子は、例えば、溶媒1リットル当たりに10g~200g、例えば、前記範囲内で10g~150g、10g~100g、30g~100g、40g~100g、50g~100g、50g~80g、60g~80gなどの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
前記多孔性シリカ粒子は、溶媒中に均一に分散されているものであってもよく、例えば、溶媒に多孔性シリカ粒子を添加して超音波分散したものであってもよい。混合溶媒を使用する場合には、第1の溶媒に多孔性シリカ粒子を分散した後、第2の溶媒を添加したものであってもよい。
【0119】
前記気孔膨張剤は、例えば、溶媒100体積部に対して10~200体積部、前記範囲内で10~150体積部、10~100体積部、10~80体積部、30~80体積部、30~70体積部などの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
前記反応は、例えば120℃~190℃で行うことができる。例えば、前記範囲内で120℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、130℃~170℃、130℃~160℃、130℃~150℃、130℃~140℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
前記反応は、例えば6時間~96時間行うことができる。例えば、前記範囲内で30時間~96時間、30時間~96時間、30時間~80時間、30時間~72時間、24時間~80時間、24時間~72時間、36時間~96時間、36時間~80時間、36時間~72時間、36時間~66時間、36時間~60時間、48時間~96時間、48時間~88時間、48時間~80時間、48時間~72時間、6時間~96時間、7時間~96時間、8時間~80時間、9時間~72時間、9時間~80時間、6時間~72時間、9時間~96時間、10時間~80時間、10時間~72時間、12時間~66時間、13時間~60時間、14時間~96時間、15時間~88時間、16時間~80時間、17時間~72時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0122】
前記例示した範囲内で時間および温度を調節して、反応が過剰せずに十分に行われるようにすることができる。例えば、反応温度が低くなると反応時間を増やしたり、反応温度が高くなると反応時間を短くしたりすることができる。反応が十分でないと、気孔の拡張が十分でないことがあり、反応が進行しすぎると、気孔の過剰拡張により粒子が崩壊することがある。
【0123】
前記反応は、例えば、段階的に昇温して行うことができる。具体的には、常温から前記温度まで0.5℃/分~15℃/分の速度で段階的に昇温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~15℃/分、3℃/分~15℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0124】
前記反応は、攪拌下で行うことができる。例えば100rpm以上の速度で攪拌することができ、具体的には100rpm~1,000rpmの速度で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
前記反応後は、反応液を徐々に冷却することができ、例えば、段階的に減温して冷却することができる。具体的には、前記温度から常温まで0.5℃/分~20℃/分の速度で段階的に減温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~20℃/分、3℃/分~20℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0126】
前記冷却後に反応産物を洗浄および乾燥し、気孔が拡張された多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0127】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0128】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上、10回以下、例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回などであってもよい。
【0129】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができ、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0131】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0132】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0133】
本発明の抗癌剤は、担持された抗癌活性ペプチドを体内に安定的に送達し、癌細胞内でターゲットに放出することができる。
【0134】
本発明の抗癌剤の対象となる癌は、表面に葉酸受容体を過剰発現する全ての癌であり、例えば、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、泌尿生殖器癌、睾丸腫、食道癌、喉頭癌、胃癌、胃腸管癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、卵胞癌腫、黒色腫、肺癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平細胞癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、乳頭癌、膀胱癌、肝癌、胆管癌、腎臓、骨癌、骨髄疾患、リンパ系疾患、ヘアリー細胞癌、口腔及び咽頭(経口)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、唾液腺癌、咽頭癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、脳癌、中枢神経系の癌、腹膜癌、肝細胞癌、頭部癌、頸部癌、ホジキン、白血病などであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0135】
前記癌は、抗癌剤耐性癌であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0136】
本発明の抗癌剤は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化することができる。本発明で用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せず投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を意味する。液状溶液に製剤化される組成物において薬学的に許容可能な担体は、滅菌および生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液及び静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0137】
本発明の抗癌剤は、いずれの剤型にも適用可能であり、経口用または非経口用の剤形に製造することができる。本発明の薬学的剤形は、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。より具体的には、本発明の抗癌剤は注射剤であってもよい。本発明の抗癌剤は生体環境、血液等で沈殿を形成しないものであり、薄い注射針でも投与可能であるので、注射剤製剤である場合に特に好ましく用いることができる。
【0138】
本発明の抗癌剤は、薬学的に有効な量で投与する。有効容量は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定できる。本発明の薬学的組成物は、個々の治療剤として投与してもよく、他の治療剤と併用して投与してもよい。また、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記の要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0139】
本発明の抗癌剤の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が非常に多様である。適正な投与量は、例えば、患者の体内に蓄積された薬物の量及び/又は使用される本発明の送達体の具体的な効能程度によって異なり得る。例えば、体重1kg当たりに0.01μg~1gであってもよい。日、週、月、または年の単位期間に、単位期間当たりに一回または数回に分けて投与してもよく、若しくはインフュージョンポンプを用いて長期間連続して投与してもよい。反復投与の回数は、薬物の体内滞在時間、体内薬物濃度などを考慮して決定する。疾患の治療経過によっては、治療された後でも再発防止のために組成物を投与することができる。
【0140】
本発明の抗癌剤は、同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上、または有効成分の溶解性及び/又は吸収性を維持/増加させる化合物をさらに含有することができる。
【0141】
また、本発明の抗癌剤は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当該分野で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0142】
また、本発明は、活性ペプチドが組み込まれた多孔性シリカ粒子の製造方法に関する。
【0143】
本発明の方法は、多孔性シリカ粒子の内部気孔が界面活性剤で満たされた状態で前記多孔性シリカ粒子の外部表面に窒素含有基を導入する第1ステップと、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸を結合させる第2ステップと、前記多孔性シリカ粒子の内部気孔を満たしていた前記界面活性剤を除去する第3ステップと、前記多孔性シリカ粒子に活性ペプチドを組み込む第4ステップとを含む。
【0144】
第1ステップでは、多孔性シリカ粒子の内部気孔が界面活性剤で満たされた状態で、前記多孔性シリカ粒子の外部表面に窒素含有基を導入する。
【0145】
界面活性剤は、例えば、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TMABr(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、TMPrCl(塩化ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)、TMACl(塩化テトラメチルアンモニウム)などであってもよく、具体的にはCTABを使用することができる
【0146】
気孔内部に界面活性剤が満たされた状態で表面改質を行うことにより、気孔内部ではなく気孔外部のみが窒素含有基を有するように改質することができる。
【0147】
窒素含有基は、例えばアミノ基、アミノアルキル基などであってもよい。これは、例えば、多孔性シリカ粒子の外部表面のシラノール基にアミノアルキル基を結合して生成したものであってもよい。アミノアルキル基は、例えばアミノプロピル基であってもよい。窒素含有基は、例えば、多孔性シリカ粒子の外部表面に前記窒素含有基を有するアルコキシシランを処理して行うことができる。具体的には、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]aniline)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などであってもよい。
【0148】
窒素含有基を有する化合物は、例えば、多孔性シリカ粒子100重量部に対して0.1~10重量部、具体的には0.1~5重量部、より具体的には1~5重量部、さらに具体的には1~3重量部処理したものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0149】
多孔性シリカ粒子は、前述の方法で製造されたものであってもよい。本発明の方法は、前述の多孔性シリカ粒子を製造するステップをさらに含むことができる。
【0150】
多孔性シリカ粒子は、前述の仕様を有するものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0151】
第2ステップでは、前記窒素含有基の少なくとも一部に葉酸を結合させる。
【0152】
外部表面に窒素含有基を有する多孔性シリカ粒子を葉酸と反応させると、葉酸を窒素含有基に結合させることができる。
【0153】
葉酸は、例えば、窒素含有基中の0.9%以下または11%以上に結合していてもよい。具体的には、葉酸は窒素含有基中の0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下に結合していてもよい。その場合、下限は例えば0.001%、0.005%、0.01%、0.03%、0.05%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。葉酸は前記上下限のすべての可能な組み合わせを満たすように結合することができる。また、具体的には葉酸は、窒素含有基中の11%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上に結合していてもよい。上限は100%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0154】
前記の結合割合は、例えば葉酸の処理量を変えることによって調整することができる。
【0155】
前記の結合割合は、例えば、多孔性シリカ粒子の外部表面に導入された窒素含有基の量に対する反応時に添加された葉酸の量で計算することができる。例えば、窒素含有基の量は元素分析によって導出された量であってもよい。
【0156】
葉酸は、例えば、多孔性シリカ粒子100重量部に対して0.001~200重量部、具体的には0.001~100重量部、0.001~50重量部、0.001~30重量部、0.001~10重量部、0.001~5重量部、0.001~3重量部、0.001~1重量部、0.001~0.5重量部、0.01~10重量部、0.01~5重量部、0.01~3重量部、0.01~2重量部、0.1~10重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部、0.1~2重量部、10~200重量部、10~150重量部、10~100重量部、20~200重量部、20~150重量部、20~100重量部、20~50重量部、30~200重量部、30~150重量部、30~100重量部、50~200重量部、50~150重量部、50~100重量部などの量で処理できるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
第3ステップでは、前記多孔性シリカ粒子の内部気孔を満たしていた前記界面活性剤を除去する。
【0158】
気孔内部の界面活性剤は、例えば酸処理によって行うことができる。具体的には、酸を含むアルコールで処理して行うことができる。酸は、例えば塩酸であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0159】
アルコールは、例えば炭素数1~3のアルコールであってもよく、具体的にはエタノールであってもよい。
【0160】
酸処理は撹拌下で行うことができ、例えば4~24時間、具体的には8~24時間、より具体的には12~20時間行うことができる。
【0161】
酸処理は加熱下で行うことができ、例えば80℃~150℃、具体的には90℃~130℃で行うことができる。
【0162】
第4ステップでは、前記多孔性シリカ粒子に活性ペプチドを組み込む。
【0163】
活性ペプチドは、例えば気孔内部に二硫化結合で結合させることができる。
【0164】
二硫化結合の形成のために、多孔性シリカ粒子は、気孔内部が硫黄含有基を有するように改質されたものであってもよい。これは、例えば硫黄含有基を有する化合物を処理して行われてもよい。これは硫黄含有基を有するアルコキシシランであってもよく、具体的には(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0165】
これに硫黄含有基を有する活性ペプチドを処理すると、二硫化結合が形成されながら抗癌活性ペプチドが結合することができる。
【0166】
活性ペプチドの結合は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子と活性ペプチドを混合することによって行うことができる。
【0167】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができる。
【0168】
また、前記溶媒として、PBS(リン酸緩衝食塩水)、SBF(疑似体液)、ホウ酸塩-緩衝食塩水(Borate-buffered saline)、トリス-緩衝食塩水(Tris-buffered saline)などを使用することもできる。
【0169】
表面改質は、例えば溶媒に分散した多孔性シリカ粒子を前述の化合物と反応させて行うことができる。
【0170】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他のジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはトルエンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
前記多孔性シリカ粒子の前述した化合物との反応は、例えば、加熱下で行うことができる。加熱は、例えば80℃~180℃、例えば、前記範囲内で80℃~160℃、80℃~150℃、100℃~160℃、100℃~150℃、110℃~150℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
前記多孔性シリカ粒子の前述した化合物との反応は、例えば4時間~20時間、例えば、前記範囲内で4時間~18時間、4時間~16時間、6時間~18時間、6時間~16時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~14時間などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
各工程間では洗浄を行うことができる。
【0174】
前記洗浄は水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0175】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明することとする。
【0176】
実施例
実施例1.多孔性シリカ粒子
1.多孔性シリカ粒子の製造
(1)多孔性シリカ粒子の製造
1)小気孔粒子の製造
2L丸底フラスコに蒸留水(DW)の960mlとMeOHの810mlを入れた。前記フラスコにCTABを7.88g入れた後、攪拌しながら1M NaOHの4.52mlを素早く入れた。10分間攪拌して均一な混合液を得た後、TMOSの2.6mlを入れた。6時間攪拌して均一に混合した後、24時間熟成し、反応液を得た。
【0177】
その後、前記反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0178】
その後、70℃のオーブンで乾燥し、1.5gの粉末状の小気孔多孔性シリカ粒子(気孔平均直径2nm、粒径200nm)を得た。
【0179】
2)気孔の拡張
1.5gの小気孔多孔性シリカ粒子の粉末をエタノール10mlに添加して超音波分散し、水10ml、TMB(trimethyl benzene)10mlを添加して超音波分散し、分散液を得た。
【0180】
その後、前記分散液をオートクレーブに入れて160℃、48時間反応させた。
【0181】
反応は25℃で開始し、10℃/分の速度で昇温して行った。その後、オートクレーブ内で1~10℃/分の速度で徐々に冷却した。
【0182】
冷却した反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0183】
その後、70℃のオーブンで乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径17.2nm、粒径200nm)を得た。
【0184】
(2)多孔性シリカ粒子の製造
気孔拡張時の反応条件を140℃、72時間に変更した以外は、前記1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0185】
(3)多孔性シリカ粒子の製造(10Lスケール)
5倍大きな容器を使用し、各物質をいずれも5倍の容量で使用した以外は、実施例1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0186】
(4)多孔性シリカ粒子の製造(粒径300nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水920ml、メタノール850mlを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0187】
(5)多孔性シリカ粒子の製造(粒径500nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水800ml、メタノール1,010ml、CTAB 10.6gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0188】
(6)多孔性シリカ粒子の製造(粒径1,000nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水620ml、メタノール1,380ml、CTAB 7.88gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0189】
(7)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径4nm)
気孔拡張時にTMBを2.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0190】
(8)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径7nm)
気孔拡張時にTMBを4.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0191】
(9)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径17nm)
気孔拡張時にTMBを11ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0192】
(10)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径23nm)
気孔拡張時にTMBを12.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0193】
(11)多孔性シリカ粒子の製造
小気孔粒子の製造時に蒸留水900ml、メタノール850ml、CTAB 8gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0194】
2.粒子の形成及び気孔拡張の確認
実施例1-1-(1)~(3)の粒子の小気孔粒子、製造された多孔性シリカ粒子を顕微鏡で観察し、小気孔粒子が均一に生成されているか、気孔が十分に拡張されて多孔性シリカ粒子が均一に形成されているかを確認した(図2~5)。
【0195】
図2は、実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の写真、図3は、実施例1-1-(2)の多孔性シリカ粒子の写真であり、気孔が十分に拡張された球状の多孔性シリカ粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0196】
図4は、実施例1-1-(1)の小気孔粒子の写真、図5は、実施例1-1-(1)と1-1-(3)の小気孔粒子の比較写真であり、球状の小気孔粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0197】
3.気孔直径及びBET表面積の計算
実施例1-1-(1)の小気孔粒子、実施例1-1-(1)、(7)、(8)、(10)、(11)の多孔性シリカ粒子の表面積を計算した。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)方法により計算し、気孔直径の分布は、バーレット-ジョイナー-ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)方法により計算した。
前記各粒子の顕微鏡写真を図6に、計算の結果を下記表1に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
4.表面改質
実施例1-1-(1)の100mgのナノ粒子(BALL)を10mLのトルエンに分散し、110℃に加熱した。温度が110℃に達した時点で、2mlの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を添加し、16時間還流した。15分間8500rpmで遠心分離して粒子(aBALL、BALLに窒素含有基を結合)を得、エタノール及び蒸留水で交互に2回洗浄した。
【0200】
沈殿物を得、エタノール下で葉酸0.1mg、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)1.2mg、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)2mgと反応させた。
【0201】
15分間8500rpmで遠心分離して粒子(FaBALL、aBALLに葉酸を結合)を得、エタノール及び蒸留水で交互に10回洗浄した。
【0202】
得られた粒子をHCl/塩酸溶液(1:5v/v)に移し、110℃で16時間還流した。15分間8500rpmで遠心分離してCTABが除去された粒子を得、エタノール及び蒸留水で交互に10回洗浄した。
【0203】
得られた粒子を10mLトルエンに分散し、110℃に加熱した。温度が110℃に達したとき、1mlの3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)を添加し、16時間還流した。15分間8500rpmで遠心分離して粒子(FabBALL、FaBALLにメルカプトプロピル基を結合、気孔内部の硫黄原子の割合は0.3mmol/g)を得、エタノール及び蒸留水で交互に10回洗浄した。
【0204】
5.粒子特性の評価
得られたFabBALLをTEMで観察し、粒径を測定した。そして、各BALLのゼータ電位を測定した(図7)。
【0205】
6.葉酸量の評価
図13に示すように、葉酸の処理量を変えた以外は実施例1-4の方法と同様にして表面改質を行い、粒子の沈殿が生じるかどうかを確認した。
【0206】
粒子の窒素含有基(アミノプロピル基)に対する葉酸の量を0%、0.01%、0.1%、1%、10%及び100%とした。これは葉酸の添加量を変えて調整した。具体的には、元素分析によりアミノプロピル基の導入量を確認し(窒素原子の割合は2.1mmol/g)、窒素含有基に対する葉酸のモル比を1:1(100%)、10:1(10%)、 100:1(1%)、1000:1(0.1%)、10000:1(0.01%)にするために、粒子12mgに葉酸をそれぞれ19mg、1.9mg、0.19mg、0.019mg、0.0019mg添加し、EDCをそれぞれ41mg、4.1mg、0.41mg、0.041mg、0.0041mg添加し、NHSは25mg、2.5mg、0.25mg、0.025mg、0.0025mg添加した。
【0207】
改質して得られた粒子をPBSに8mg/mlの濃度で添加し、葉酸量が1%、10%の場合には沈殿が形成された。
【0208】
7.粒子の染料標識
実施例1-2で得られた粒子10mgを水1mlに浮遊し、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(N-hydroxysuccinimyl ester)-活性(activated)Cyanine3(Cy3-NHS)20μgを混合した。混合液は攪拌下で16時間反応させた。非反応の蛍光染料は、エタノールおよび水で10回洗浄して除去した。乾燥して染料標識された粒子を得、水に再分散した。
【0209】
8.細胞の培養
MCF-7細胞(autophagy deficient breast cancer cell overexpressing folate receptor)を、50units/mLペニシリン/ストレプトマイシン溶液および10% ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum、FBS)を混合したRPMI1640培地で培養した。
【0210】
9.細胞内流入の評価
FabBALLおよびabBALLのMCF-7細胞へのエンドサイトーシス(endocytosis)効率の差を評価した。染料標識されたFabBALLおよびabBALLをMCF-7細胞に処理し、蛍光強度を評価した。平均蛍光強度はFabBALLの方がabBALLよりも2倍高かった(図8c)。
【0211】
実施例2.ペプチドのロード及び放出
1.ペプチドの合成
Bec1ペプチド(CGGTNVFNATFHIWHSGQFGT、配列番号1)をリンクアミドレジン(Rink amide resin)を用いて、固相(solid-phase)合成法により合成した。蛍光標識のために、3eqのフルオレセイン(fluorescein)、3eqのNHSおよび3eqのEDCをペプチドに添加した。得られたペプチドはHPLCで精製し、MALDI-ToF質量分析(Mass spectrometry)で確認した。
【0212】
2.ロード効率の測定
過剰量の4,4-ジピリジルジスルフィド(4,4-dipyridyldisufide)を実施例1-2-5の粒子に添加し、エタノールで3回洗浄した。その後、互いに異なる量の粒子を20%DMSO溶液下の固定量のBec1ペプチドに添加し、1時間反応させた。15分間8500rpmで遠心分離して上澄液を得、324nmにおける吸光度を測定した。残りのペプチドの濃度は、4-チオピリドン(4-thiopyridone)の標準曲線(standard curve)と比較して計算した。ペプチドは、FabBALLに約10%w/wだけロードされた(図8a)。
【0213】
3.ペプチドの放出
実施例1-2-4の粒子100μgと蛍光標識されたBecペプチド10μgを、異なる濃度のGSHを有する160μlの1×PBS中で混合した。DMSOの40μlを添加してBec1ペプチドを溶解し、蛍光強度を測定した。放出されるペプチドの量は、Bec1ペプチドの最初の蛍光に基づいて計算した。
【0214】
GSHが存在しないときは、12時間の間、3%以下のペプチドのみが放出されたが、10mMまたは2mMのグルタチオン(GSH)の存在下では、ペプチドがFabBALLから12時間以内に30%多く放出された(図8b)。これは、ペプチドの放出が還元環境に依存し、サイトプラズム内でさらに促進されることを示している。
【0215】
4.細胞毒性の評価
MCF-7細胞を96ウェル細胞培養プレートに10,000細胞/ウェルで播種(seeding)した。1日後、異なる濃度の各粒子(4~500μg/mL)を各ウェルで血清含有培地で1日間処理した。その後、培地をMTTアッセイキット(assay kit)10μlを含有する無血清培地に交換して4時間培養し、上澄液をアスピレーションした。各ウェルにDMSOを加えてホルマザンを溶解し、1時間反応させた。吸光度は570nm波長で測定し、細胞生存率は非処理群との相対値として計算した。
【0216】
細胞生存率は、Bec1ペプチドを担持したFabBALLとBec1ペプチドをMCF-7細胞に処理した後、MTTアッセイで比較した。Bec1ペプチドのみを処理した場合には、細胞生存率は非処理群と比較して大きく変化しなかった。これに対して、Bec1ペプチドを担持したFabBALLを処理した場合には、細胞生存率が大幅に減少した(図9a、b)。FabBALLは、Bec1ペプチドの標的送達に高い効率を示すことを確認した。
【0217】
5.細胞内ペプチドの放出測定のための細胞の蛍光画像
MCF-7細胞をガラス底の12ウェル細胞培養プレートに100,000細胞/ウェルで播種した。1日後、染料標識された粒子5μgと蛍光標識されたbec1ペプチド0.5μgを混合し、細胞は無血清培地下で複合体で互いに異なる期間(1、2、3、6、12、24時間)処理された。粒子で処理された細胞を4%PFA溶液で15分間固定し、1xPBS溶液で2回洗浄した。細胞の核はDAPI溶液で染色した。画像はデルタビジョン顕微鏡(Delta-vision microscope)から得た。
【0218】
蛍光標識されたFabBALLをMCF-7細胞に処理し、Bec1ペプチドが効果的に放出されるかを確認した。12時間後、緑色蛍光標識されたBec1ペプチドの蛍光がかなりの量で確認された。これはペプチドがFabBALLからサイトプラズム内で良好に放出されることを示す(図8d)。
【0219】
6.LC3 GFPを発現するMCF-7細胞株の構築およびGFP-LC3 punctaの数の測定
リポフェクタミン(lipofectamine)2000を用いて、LC3-GFPプラスミドをMCF-7細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされたMCF-7は、3ヶ月間G418の800μg/mLで選択された。GFPの発現は、1ヶ月以上観察し、プラスミドが適切に挿入されたことを確認した。LC3-GFPを発現するMCF-7細胞を100,000個播種した。
【0220】
染料標識された粒子40μgとbec1ペプチド4μgを混合し、無血清培地下で細胞に6時間処理した。細胞を4%PFAで固定し、核をDAPIで染色した。画像はデルタビジョン顕微鏡(Delta-vision microscope)から得、GFP-LC3 punctaの数を各群ごとに100個の細胞で測定した。
【0221】
LC3タンパク質はオートファゴソーム(autophagosome)のエロンゲーション(elongation)過程に関与するバイオマーカーであり、オートファジーの進行によってその発現レベルが増加することが知られている。この観点から、GFP punctaの増加は、オートファジーが首尾よく誘導されたことを示す。Bec1ペプチドのみを処理した場合には、非常に少ないGFP punctaが観察された。これに対して、Bec1ペプチドを担持したFabBALLを処理した場合には、多量のGFP punctaが確認された(図9c、d)。
【0222】
7.様々な癌細胞株における効果の確認
前記MCF-7における細胞毒性の評価と同様の方法で、PC-3、LNCaP、HeLa細胞における細胞毒性を評価した。
【0223】
これらの細胞株の全てにおいて、Bec1ペプチドを担持したFabBALLを処理した場合に有効な効果が示されることを確認した(図10~12)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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【配列表】
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