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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】通気ユニット
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20231201BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/24 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20231201BHJP
   H01M 50/317 20210101ALI20231201BHJP
【FI】
H05K5/06 E
H01M50/204 101
H01M50/233
H01M50/24
H01M50/30
H01M50/317 201
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018117314
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019220592
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】仲山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽三
(72)【発明者】
【氏名】植村 高
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】篠塚 隆
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-252508(JP,A)
【文献】特開2006-324086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/204
H01M50/233
H01M50/24
H01M50/30
H01M50/317
H0K5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が筐体の外側と内側との間で流通するのを許容する通気体と、
前記通気体を支持するとともに、前記筐体に形成された開口部に装着される支持部材と、
前記筐体の前記開口部の周囲の外表面と前記支持部材との間に配置されて当該支持部材と当該筐体との間の隙間をシールするシール部材と、
を備え、前記筐体の前記開口部に装着されることで前記通気体を介して前記筐体の外側と内側との間の通気を行う通気ユニットであって、
前記支持部材は、前記シール部材が取り付けられる取付部と、当該取付部の周囲に設けられた壁部とを有し、
前記シール部材が前記支持部材と前記筐体との間に装着された状態で、当該シール部材と当該支持部材の前記壁部における外面との間の距離が5.0mm以上であり、かつ、当該シール部材の線径の2.1倍以上であり、かつ、当該支持部材が当該筐体の前記開口部に装着される前の状態で、当該シール部材と当該支持部材の当該壁部における外面との間の距離が5.75mm以上である
通気ユニット。
【請求項2】
前記支持部材の前記壁部における前記筐体の前記外表面と対向する部位は、当該外表面と平行であり、前記外面は当該外表面と垂直である
請求項1に記載の通気ユニット。
【請求項3】
前記支持部材が前記筐体の開口部に装着された状態で、前記壁部における当該筐体の前記外表面と対向する部位と、当該外表面との距離が、0.05~2.0mmである
請求項1又は2に記載の通気ユニット。
【請求項4】
前記シール部材は、線径が2.4mmの環状の部材である
請求項1から3のいずれか1項に記載の通気ユニット。
【請求項5】
前記筐体内の圧力である内圧が当該筐体外の圧力である外圧よりも所定圧力以上高くなったときに、当該筐体内から当該筐体外への通気を許容し、当該内圧と当該外圧との圧力差が当該所定圧力未満である場合には、通気を阻止する状態に復帰可能な通気部材をさらに備える
請求項1から4のいずれか1項に記載の通気ユニット。
【請求項6】
前記通気体は、前記内圧と前記外圧との圧力差が前記所定圧力未満である場合も前記筐体内と当該筐体外との間で気体が流通するのを許容する
請求項5に記載の通気ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用のバッテリパック等の電装部品のケース内と外部との間で空気の出入りを許容する通気部品が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の通気部品は、円環状をなす合成樹脂製の防爆弁ケースと、この防爆弁ケースとパックケースとの間をシールするOリングと、防爆弁ケースの中央開口部を閉塞するようにケースに取り付けられる円形のシート状の通気膜と、この通気膜の外側に重ねて配置される円形板状の合成樹脂製のプロテクタと、からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-168293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の電装部品に装着される通気ユニット(通気部品)においては、電装部品の筐体と、通気膜を支持する部材との間の隙間から水等が浸入することを抑制するために、電装部品の筐体と通気膜を支持する部材との間にOリング等のシール部材を設けている。しかしながら、高圧水噴射による洗車作業において、高圧水がシール部材に直接かかり、シール部材が変形するおそれがある。そして、シール部材が変形すると、筐体内に水等が浸入するおそれがある。
本発明は、筐体内への水等の浸入を抑制することができる通気ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、気体が筐体(120)の外側と内側との間で流通するのを許容する通気体(10)と、前記通気体(10)を支持するとともに、前記筐体(120)に形成された開口部(121)に装着される支持部材(20)と、前記筐体(120)の前記開口部の周囲の外表面(120a)と前記支持部材(20)との間に配置されて当該支持部材(20)と当該筐体(120)との間の隙間をシールするシール部材(30)と、を備え、前記筐体(120)の前記開口部(121)に装着されることで前記通気体(10)を介して前記筐体(120)の外側と内側との間の通気を行う通気ユニット(1)であって、前記支持部材(20)は、前記シール部材(30)が取り付けられる取付部(224)と、当該取付部(224)の周囲に設けられた壁部(21)とを有し、前記シール部材(30)が前記支持部材(20)と前記筐体(120)との間に装着された状態で、当該シール部材(30)と当該支持部材(20)の前記壁部(21)における外面(21a)との間の距離が5.0mm以上である通気ユニット(1)である。
ここで、前記支持部材(20)の前記壁部(21)における前記筐体(120)の前記外表面(120a)と対向する部位(223)は、当該外表面(120a)と平行であり、前記外面(21a)は当該外表面(120a)と垂直であっても良い。
また、前記支持部材(20)が前記筐体(120)の開口部(121)に装着された状態で、前記壁部(21)における当該筐体(120)の前記外表面(120a)と対向する部位(223)と、当該外表面(120a)との距離が、0.05~2.0mmであっても良い。
また、前記シール部材(30)は、線径が2.4mmの環状の部材であっても良い。
また、前記筐体(120)内の圧力である内圧が当該筐体(120)外の圧力である外圧よりも所定圧力以上高くなったときに、当該筐体(120)内から当該筐体(120)外への通気を許容し、当該内圧と当該外圧との圧力差が当該所定圧力未満である場合には、通気を阻止する状態に復帰可能な通気部材(250)をさらに備えても良い。
また、前記通気体(10)は、前記内圧と前記外圧との圧力差が前記所定圧力未満である場合も前記筐体(120)内と当該筐体(120)外との間で気体が流通するのを許容しても良い。
【0006】
なお、本欄における上記符号は、本発明の説明に際して例示的に付したものであり、この符号により本発明が減縮されるものではない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筐体内への水等の浸入を抑制することができる通気ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る通気ユニットが適用されるバッテリパックが搭載された車両の概略構成を示す図である。
図2】バッテリパックの概略構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る通気ユニットを示す斜視図である。
図4】第1の実施形態に係る通気ユニットを構成する部品の斜視図である。
図5】第1の実施形態に係る通気ユニットの断面図である。
図6】高圧耐水試験結果を示した図である。
図7】第2の実施形態に係る通気ユニットを示す斜視図である。
図8】第2の実施形態に係る通気ユニットを構成する部品の斜視図である。
図9】第2の実施形態に係る通気ユニットの断面図である。
図10】防爆弁が第1流路R1を開いた状態を示す図である。
図11】(a)は、内圧調整部品を保持部材に挿入する前の状態を示す図である。(b)は、内圧調整部品を保持部材に挿入した後の状態を示す図である。
図12】防爆弁の機能を検査した後の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る通気ユニット1が適用されるバッテリパック100が搭載された車両200の概略構成を示す図である。図1は、車両200を横から見た図である。
図2は、バッテリパック100の概略構成を示す図である。
車両200は、車両本体の前部に設けられたモータユニット201と、車両本体の底部に設けられてモータユニット201に電力を供給するバッテリパック100とを備えている。車両200は、モータユニット201が出力する駆動力にて前輪を駆動する電気自動車である。
【0010】
バッテリパック100は、バッテリ110と、バッテリ110を制御する制御装置(不図示)と、バッテリ110の状態を検出する各種センサ(不図示)と、バッテリ110や制御装置を収容する筐体120とを備えている。
また、バッテリパック100は、筐体120に装着され、筐体120の内部の圧力と筐体120の外部の圧力との間の圧力差を調整する通気ユニット1を備えている。通気ユニット1は、中心線Cの方向(以下、「中心線方向」と称する場合がある。)が地面と水平となるように筐体120に装着されている。
【0011】
{通気ユニット1}
図3は、第1の実施形態に係る通気ユニット1を示す斜視図である。図4は、第1の実施形態に係る通気ユニット1を構成する部品の斜視図である。図5は、第1の実施形態に係る通気ユニット1の断面図である。以下では、図3図5の上側を「上方」、下側を「下方」と称す場合がある。
【0012】
通気ユニット1は、気体が筐体120の外部(外側)と筐体120の内部(内側)との間で流通するのを許容する通気体の一例としての通気膜10を備えている。また、通気ユニット1は、通気膜10を支持するとともに、筐体120に形成された開口部の一例としての挿入孔121に装着される支持部材の一例としての支持体20を有している。また、通気ユニット1は、筐体120の挿入孔121の周囲の外表面120aと支持体20との間に配置されて支持体20と筐体120との間の隙間をシールするシール部材の一例としてのOリング30を有している。また、通気ユニット1は、通気膜10に高圧水などが直接接触しないように保護するカバー40を有している。
なお、本発明において通気ユニットは、「前記筐体の開口部に装着されることで前記通気体を介して前記筐体の外側と内側との間の通気を行う」ものであるが、通気ユニット1は、筐体120の挿入孔121に装着されることで筐体120の外側と内側をつなぐ唯一の通気路が、通気膜10に覆われている構造となるため、通気膜10を介して筐体120の外側と内側を通気することになる。
【0013】
《支持体20》
支持体20は、円盤状の円盤状部21と、筐体120の挿入孔121に挿入される挿入部22とを有している。支持体20の中央部には、円盤状部21及び挿入部22を貫通することにより、中心線方向の一方側と他方側とを連通する連通孔23が形成されている。
【0014】
円盤状部21は、挿入部22側とは異なる方向に環状に突出し、通気膜10を支持する支持突出部211を有している。
また、円盤状部21は、上部に、カバー40を保持する保持部212を有している。保持部212は、周方向に等間隔に3箇所設けられている。各保持部212は、円盤状部21の外周面21aから内側に直線状に凹んだ直線部212aと、直線部212aの下方において直線部212aからさらに内側に凹んだ凹部212bとを有している。凹部212bに、カバー40の後述する延出部42の内側突出部42aが嵌め込まれることで、支持体20はカバー40を保持する。
なお、本発明において支持部材は、「前記通気体を支持するとともに、前記筐体に形成された開口部に装着される」ものであるが、支持部材は、1部品である必要はなく、2部品以上で構成されていても良い。支持体20は、円盤状部21と挿入部22が一体化された1部品であるが、例えば円盤状部21と挿入部22とが分離され、2部品で構成されているものが例示できる。また、カバー40のような通気膜10を保護する構造が、支持体20に組み込まれていて、支持部材として1部品となっているものも例示できる。
【0015】
また、円盤状部21における筐体120の挿入孔121の周囲の外表面120aと対向する部位である対向面223は、外表面120aと平行となるように形成されている。本実施の形態においては、外表面120aが中心線方向に垂直な面であり、対向面223も中心線方向に垂直な面である。
そして、円盤状部21は、対向面223から上方に環状に凹んだ環状凹部224を有している。環状凹部224には、Oリング30が嵌め込まれている。環状凹部224の深さは、Oリング30の線径よりも小さく設定されている。環状凹部224の幅(環状凹部224の半径方向の大きさ)は、Oリング30の線径よりも大きく設定されている。
【0016】
対向面223は、環状凹部224よりも内側(中央部側)の面である内側対向面223aと、環状凹部224よりも外側の面である外側対向面223bとにより構成される。そして、本実施の形態においては、外側対向面223bは、内側対向面223aよりも予め定められた距離δだけ上方となるように形成されている。距離δは、0.05mm~2.0mmであることを例示することができる。
なお、本発明において支持部材は、「前記シール部材が取り付けられる取付部と、当該取付部の周囲に設けられた壁部とを有し」ているが、取付部は環状凹部224のように構造として明確なものである必要はなく、実質的にシール部材を取り付けられる部分が存在すれば良い。例えば、環状凹部224の内側部分の壁部や外側部分の壁部は、環状凹部224のようにOリング30に接近する構造でなくても良い。Oリング30と接近することになる内側部分か外側部分の壁部が存在すると、Oリング30の位置決めが容易となって好ましいが、これらは必須ではない。
【0017】
対向面223及び環状凹部224が上述のように形成されていることで、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着された状態で、内側対向面223aと外表面120aとが接触し、外側対向面223bは、外表面120aとの間に距離δ分の隙間を形成する。そして、Oリング30は、環状凹部224を形成する面と外表面120aとでつぶされて、支持体20と外表面120aとに接触し、支持体20と外表面120aとの間の隙間をシールする。
なお、本発明において、「前記支持部材が前記筐体の開口部に装着された状態で、前記壁部における当該筐体の前記外表面と対向する部位と、当該外表面との距離が、0.05~2.0mmである」ことが好ましいが、外表面と対向する部位と外表面との距離は、実際に筐体の開口部に装着された状態で測定せずに、挿入部22の寸法やOリング30の硬度等に基づいて設計値として理論的に判断しても良い。ちなみに、その誤差は0.5mm以下に抑えることも可能である。外表面と対向する部位と外表面との距離は、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下、最も好ましくは0.5mm以下であり、好ましくは0.1mm以上である。
【0018】
円盤状部21の外周面21aは、中心線方向に平行な面を有する。つまり、外周面21aは、対向面223及び外表面120aに垂直な面を有する。
【0019】
挿入部22は、筐体120に形成された挿入孔121と略同径の外径を有する円筒状である。
挿入部22は、筐体120に挿入開始される側である先端部に、外面から半径方向の外側に突出した外側突出部221を有している。外側突出部221は、周方向に等間隔に4箇所設けられている。挿入部22の外側突出部221が筐体120に形成された切り欠き121aに対向する位置とした状態で、挿入部22を筐体120に形成された挿入孔121に挿入し、外側突出部221が筐体120内に入った位置で中心線C回りに回転させることで支持体20を筐体120に嵌め込む。これにより、通気ユニット1は、筐体120に装着される。挿入部22の外側突出部221が、筐体120に形成された挿入孔121の下方に位置し、外側突出部221が筐体120の内側の面に突き当たることで支持体20が筐体120から脱落することが抑制される。
【0020】
支持体20の材料としては、特に限定されないが、成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、エラストマー以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂など又はこれらの複合材であることを例示することができる。その他、支持体20の材料としては、熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維などの強化材や金属などを複合し、耐熱性、耐湿性、寸法安定性、剛性などが向上した複合材料であることを例示することができる。
支持体20の成形方法は、特に限定されるものではなく、例えば射出成形、圧縮成形または切削などを例示することができる。
【0021】
《通気膜10》
通気膜10は、円盤状に成形された膜である。通気膜10の外径は、支持体20の円盤状部21の支持突出部211の外径よりも大きい。通気膜10は、連通孔23を覆うように支持突出部211に支持されている。支持する手法としては、通気膜10を支持突出部211に溶着することで接合することを例示することができる。その他、通気膜10と支持突出部211とを、接着剤や両面テープにて接着しても良い。また、通気膜10と支持体20とをインサート成形にて一体化しても良い。また、通気膜10を支持体20にカシメても良い。
【0022】
通気膜10の材料、構造、形態は、十分な透気量が確保できるものであれば特に限定されない。例えば、通気膜10は、フッ素樹脂多孔体およびポリオレフィン多孔体から選ばれる少なくとも1種であることを例示することができる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などを例示することができる。ポリオレフィンのモノマーとしては、エチレン、プロピレン、4-メチルペンテン-1、1-ブテンなどを例示することができ、これらのモノマーを単体で重合したりまたは共重合したりして得たポリオレフィンを用いることができる。また、上記したポリオレフィンを2種類以上ブレンドしたものであっても良いし、層構造としたものであっても良い。なかでも、通気膜10は、小面積でも通気性が維持でき、筐体120内への水や塵の侵入を阻止する機能が高いPTFE多孔体であることが特に好ましい。
【0023】
なお、通気膜10の少なくとも片面に補強材を積層しても良い。補強材の材料、構造、形態は、特に限定されないが、通気膜10よりも孔径が大きく通気性に優れた材料、例えば、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、金属多孔体、金属メッシュなどが好適である。耐熱性が要求される場合は、ポリエステル、ポリアミド、アラミド樹脂、ポリイミド、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン、金属などからなる補強材が好ましい。
【0024】
《Oリング30》
Oリング30は、中心線Cを通る平面で切断した断面が円形である環状の部材である。断面の円の径(線径)は、2.4mmであることを例示することができる。また、Oリング30は、内径39.7mm、外径44.5mmであることを例示することができる。また、Oリング30の材料としての硬度(日本工業規格JIS K6253:2012 タイプAデュロメータ)は、A50~A70であることを例示することができる。Oリング30の材質は、合成ゴム、又は、これに類似した弾性物質である。合成ゴムとしては、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系、シリコーン系であることを例示することができる。
なお、シール部材がOリングである場合、Oリングの線径は、通常0.5~5.0mmで、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.4mm以上、特に好ましくは1.6mm以上であり、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.5mm以下、特に好ましくは3.0mm以下である。
また、Oリングの材料としての硬度(日本工業規格JIS K6253:2012)は、通常A20~A90で、好ましくはA30以上、より好ましくはA40以上、さらに好ましくはA50以上であり、好ましくはA80以下である。
【0025】
《カバー40》
カバー40は、円盤状の頂部41と、頂部41における最外周部から支持体20側に延びた延出部42とを有している。
頂部41の外径は、通気膜10の外径よりも大きく、頂部41は、通気膜10と所定の間隔を隔てた位置にて通気膜10を覆っている。
延出部42は、周方向に等間隔に3箇所形成されている。延出部42は、延出部42における支持体20側の端部に、内側に突出した内側突出部42aを有している。内側突出部42aが支持体20の円盤状部21に形成された凹部212bに嵌め込まれることで、カバー40は、支持体20に保持される。延出部42と延出部42との間の隙間が、筐体120内と筐体120外との間を流通する気体の流路の一部として機能する。
カバー40は、支持体20の材料と同じであることを例示することができる。
【0026】
なお、カバー40と支持体20とを一体化する手法としては、上述した、カバー40の内側突出部42aを支持体20に形成された凹部212bに嵌め込むことに限定されない。例えば、カバー40と支持体20とを、加熱溶着、超音波溶着、振動溶着、接着剤による接着、螺合などにて一体化しても良い。
カバー40にて、通気膜10を覆うことで、外力によって通気膜10が損傷することや、砂、泥などが通気膜10の表面に蓄積することで通気が阻害されることなどが抑制される。
【0027】
《支持体20の円盤状部21の外周面21aの大きさについて》
上述したように構成された通気ユニット1において、支持体20の円盤状部21の外周面21aの大きさは、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着された状態の、Oリング30と外周面21aとの間の距離Laが5.0mm以上となるように設定されている。これは、支持体20の円盤状部21と、筐体120の外表面120aとの間の隙間より、筐体120内へ水等が浸入することを抑制するためである。
【0028】
図6は、高圧耐水試験結果を示した図である。
通気ユニット1に対する高圧耐水試験は、筐体120に通気ユニット1を取り付けた状態で、日本工業規格JISD5020:2016に基づくIPX9K試験に準拠して、水の温度が25℃の条件で行った。そして、筐体120の内部に水が侵入したか、筐体120の内部に水が侵入しなかったかを判断し、水が侵入した場合に×、水が侵入しなかった場合に○と判定した。
【0029】
Oリング30として、内径39.7mm、外径44.5mm、線径2.4mm、シリコーン材で、硬度が異なる3種類の協和シール工業株式会社製のOリングを用いた。3種類の硬度として、タイプAデュロメータで70°、60°、50°と異ならせた。また、支持体20のサンプルとして、円盤状部21の外周面21aの径(外径)が異なる5種類を用いた。5種類として、外周面21aの径を48mm、54mm、56mm、58mm、60mmと異ならせた。外周面21aの径を48mm、54mm、56mm、58mm、60mmと異ならせた場合には、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着される前の状態の、支持体20の円盤状部21の外周面21aとOリング30との間の距離Lbが、それぞれ1.75mm、4.75mm、5.75mm、6.75mm、7.75mmとなる。
【0030】
(1)サンプルNO.1、2、3、6、7は、それぞれ支持体20の円盤状部21の外周面21aの径のみが異なり、それぞれ、距離Lbが、5.75mm、6.75mm、7.75mm、4.75mm、1.75mmと異なる。高圧耐水試験の結果は、図6に示すように、距離Lbが、5.75mm、6.75mm、7.75mmである場合に、筐体120の内部に水が侵入せず、判定は○であった。一方、図6に示すように、距離Lbが、4.75mm、1.75mmである場合に、筐体120の内部に水が侵入し、判定は×であった。
【0031】
(2)サンプルNO.3、4、5は、支持体20の円盤状部21の外周面21aの径が60mmと同じであり、かつ、Oリング30の形状が同じであり、Oリング30の硬度のみが、それぞれ、70°、60°、50°と異なる。高圧耐水試験の結果は、図6に示すように、いずれのサンプルにおいても筐体120の内部に水が侵入せず、判定は○であった。
【0032】
(3)サンプルNO.7、8、9は、支持体20の円盤状部21の外周面21aの径が48mmと同じであり、かつ、Oリング30の形状が同じであり、Oリング30の硬度のみが、それぞれ、70°、60°、50°と異なる。高圧耐水試験の結果は、図6に示すように、全てのサンプルにおいて、筐体120の内部に水が侵入し、判定は×であった。
【0033】
上記(1)により、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着される前の状態の距離Lbが5.75mm以上である場合に判定は○であり、距離Lbが4.75mm以下である場合に判定は×である。距離Lbが5.75mmである場合には、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着された状態の距離Laは5.0mmであると考えられることから、距離Laが5.0mm以上である場合に、筐体120の内部に水が侵入しないものと考えられる。
そして、上記(2)及び(3)により、支持体20の形状、及び、Oリング30の形状が同じであれば、Oリング30の硬度を異ならせても判定の結果は変わらないことが分かる。
【0034】
図6に示した高圧耐水試験結果に鑑み、本実施の形態に係る通気ユニット1においては、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着された状態の、Oリング30と、支持体20の円盤状部21の外周面21aとの間の距離Laが5.0mm以上となるように設定されている。そして、これにより、図6の試験結果に示すように、筐体120内への水等の浸入が抑制される。
なお、本発明において、「前記シール部材が前記支持部材と前記筐体との間に装着された状態で、当該シール部材と当該支持部材の前記壁部における外面との間の距離が5.0mm以上である」が、シール部材と壁部における外面との間の距離は、実際に筐体の開口部に装着された状態で測定せずに、環状凹部224、Oリング30、支持体20の寸法等に基づいて設計値として理論的に判断しても良い。ちなみに、Oリングの位置に自由度がある場合は、支持体20とOリング30の平面視における中心を一致させ、圧縮したときのOリング30の径の変化を予測して把握する。例えば、線径2.4mmOリングの場合、圧縮率20%程度でその幅が約2.8mm程度になるため、それを考慮してシール部材と壁部における外面との間の距離を決定すれば良い。シール部材と外面との間の距離は、好ましくは5.2mm以上、より好ましくは5.5mm以上、さらに好ましくは5.7mm以上、特に好ましくは6.5mm以上、最も好ましくは7.5mm以上であり、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは12mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
【0035】
以上、説明したように、第1の実施形態に係る通気ユニット1は、気体が筐体120の外側と内側との間で流通するのを許容する通気体の一例としての通気膜10と、通気膜10を支持するとともに、筐体120に形成された開口部の一例としての挿入孔121に装着される支持部材の一例としての支持体20と、を備えている。また、通気ユニット1は、筐体120の挿入孔121の周囲の外表面120aと支持体20との間に配置されて支持体20と筐体120との間の隙間をシールするシール部材の一例としてのOリング30を備えている。支持体20は、Oリング30が取り付けられる取付部の一例としての環状凹部224と、環状凹部224の周囲に設けられた壁部の一例としての円盤状部21とを有している。そして、Oリング30が支持体20と筐体120との間に装着された状態で、Oリング30と、支持体20の円盤状部21における外面の一例としての外周面21aとの間の距離Laが5.0mm以上である。
【0036】
このように構成された第1の実施形態に係る通気ユニット1は、筐体120内の圧力(内圧)と筐体120外の圧力(外圧)との間に圧力差が生じた場合には、通気膜10を介して筐体120内と筐体120外との間で気体を流通させることで圧力差を解消する。つまり、支持体20に形成された連通孔23、カバー40の延出部42と延出部42との間の隙間などにより構成される流路を介して、気体が筐体120内と筐体120外との間を流通する。内圧と外圧との間に圧力差が生じた場合には、通気膜10を介して気体がこの流路を流通することで圧力差が解消される。また、通気ユニット1によれば、図6の試験結果に示すように、支持体20の円盤状部21と、筐体120の外表面120aとの間の隙間より、筐体120内へ水等が浸入することが抑制される。つまり、通気ユニット1によれば、高圧水噴射による洗車作業においても、高圧水がOリング30に直接かかり難いため、Oリング30が変形することが抑制される。その結果、Oリング30が変形することに起因して、筐体120内へ水等が浸入することが抑制される。
【0037】
また、他の観点から捉えると、通気ユニット1において、Oリング30は、中心線Cを通る平面で切断した断面が円形である環状の部材であり、Oリング30が支持体20と筐体120との間に装着された状態で、Oリング30と、支持体20の円盤状部21の外周面21aとの間の距離Laは、Oリング30の断面の直径である線径の2.1倍以上である。例えば、Oリング30の線径が2.4mmである場合、距離Laは、5.0mm以上である。
【0038】
また、通気ユニット1においては、支持体20の円盤状部21における筐体120の外表面120aと対向する部位の一例である対向面223は、外表面120aと平行であり、円盤状部21の外周面21aは外表面120aと垂直である。対向面223と外表面120aとが平行であることにより、例えば、対向面223と外表面120aとが平行ではなく、内側から外側にかけて対向面223と外表面120aとの間の隙間が大きくなるように傾斜している場合と比べて、高圧水がOリング30に直接かかり難いため、Oリング30が変形することが抑制される。また、外周面21aが外表面120aと垂直であることにより、例えば、外周面21aと、外周面21aよりも内側に位置する外表面120aとのなす角が鈍角となるように、外周面21aが外表面120aに対して傾斜している場合と比べて、高圧水がOリング30に直接かかり難いため、Oリング30が変形することが抑制される。
【0039】
また、通気ユニット1においては、支持体20が筐体120の挿入孔121に装着された状態で、支持体20の外側対向面223bと、筐体120の外表面120aとの距離δが、0.05~2.0mmである。これにより、距離δが2.0mmより大きい場合と比べて、高圧水がOリング30に直接かかり難いため、Oリング30が変形することが抑制される。
【0040】
なお、上述した第1の実施形態に係る通気ユニット1においては、支持体20の挿入部22を筐体120の挿入孔121に挿入し、挿入部22の外側突出部221が筐体120の内側の面に突き当たることで支持体20が筐体120から脱落することが抑制される。しかしながら、通気ユニット1を筐体120に装着する手法としては、特に限定されない。例えば、支持体20を筐体120に対して圧入しても良い。また、例えば、挿入部22に、外側突出部221を設ける代わりに、円筒状である挿入部22の外周面に雄ねじを形成し、筐体120に形成した雌ねじ、又は、筐体120に固定されたナットの雌ねじにねじ込むことで通気ユニット1を筐体120に装着しても良い。
【0041】
また、Oリング30は、中心線Cを通る平面で切断した断面が円形状であるが、特に円形状に限定されない。Oリング30の断面は、矩形やX形状であっても良い。かかる場合も、支持体20が筐体120に装着された状態の、Oリング30と支持体20の外周面21aとの間の距離Laが5.0mm以上となるように設定する際には、Oリング30における最も外側の部位を基準にすると良い。
【0042】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係る通気ユニット2を示す斜視図である。図8は、第2の実施形態に係る通気ユニット2を構成する部品の斜視図である。図9は、第2の実施形態に係る通気ユニット2の断面図である。
第2の実施形態に係る通気ユニット2は、第1の実施形態に係る通気ユニット1に対して防爆弁250と保持部材270を備えている点が異なる。以下、第2の実施形態に係る通気ユニット2について、第1の実施形態に係る通気ユニット1と異なる点について説明し、第1の実施形態に係る通気ユニット1と同じ点については同じ符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0043】
通気ユニット2は、筐体120の内部(筐体120内)の圧力である内圧が筐体120の外部(筐体120外)の圧力である(外圧)よりも所定圧力以上高くなったときに筐体120内から筐体120外へ気体が通過するのを許容し、内圧が外圧よりも所定圧力以上高くない場合には筐体120内から筐体120外へ気体が通過するのを許容しない通気部材の一例としての防爆弁250を備えている。
【0044】
また、通気ユニット2は、内圧と外圧との圧力差が所定圧力未満である場合も筐体120内と筐体120外との間で気体が流通するのを許容する内圧調整部品220を備えている。
また、通気ユニット2は、内圧調整部品220を保持するとともに、筐体120に装着される保持部材270と、保持部材270と筐体120との間に配置されて保持部材270と筐体120との間をシールするOリング30とを備えている。
【0045】
(内圧調整部品220)
内圧調整部品220は、保持部材270に装着されるとともに筐体120内と筐体120外とを連通する連通孔233が形成された支持体230を有している。
また、内圧調整部品220は、連通孔233を覆うように支持体230に取り付けられた通気膜10を有している。通気膜10は、内圧と外圧との圧力差が所定圧力未満である場合も筐体120内と筐体120外との間で気体が流通するのを許容する。
また、内圧調整部品220は、通気膜10に高圧水などが直接接触しないように保護するカバー40を有している。
【0046】
《支持体230》
支持体230は、通気膜10を支持するための支持部231と、保持部材270に挿入される挿入部232とを有している。支持体230の中央部には、支持部231及び挿入部232を貫通する貫通孔により連通孔233が形成されている。
【0047】
支持部231は、中央部に連通孔233が形成された円盤状の部位である。支持部231の外径は、挿入部232の外径よりも大きい。支持部231は、連通孔233の周囲に、挿入部232側とは異なる方向に突出した環状の支持突出部231aを有している。
支持部231における外周部には、周方向に等間隔に3箇所の直線部231bが設けられている。各直線部231bの下端部には、内側に凹んだ凹部231cが形成されている。凹部231cに、カバー40の延出部42の内側突出部42aが嵌め込まれることで、支持体230はカバー40を保持する。
【0048】
挿入部232は、保持部材270に形成された後述する中央部貫通孔271bと略同径の外径を有する円筒状である。
挿入部232は、保持部材270に挿入開始される側である先端部に、周方向に沿って分割された6つの脚部232aを有している。6つの脚部232aの内の3つの脚部232aは、外面から半径方向の外側に突出した外側突出部232bを有している。脚部232aの外側突出部232bが、保持部材270に形成された中央部貫通孔271bの下方に位置し、外側突出部232bが保持部材270の後述する底部271に突き当たることで支持体230が保持部材270から脱落することが抑制される。
【0049】
支持体230の材料や成形方法は、第1の実施形態に係る支持体20の材料や成形方法と同じであることを例示することができる。
【0050】
(保持部材270)
保持部材270は、円盤状の底部271と、底部271から中心線方向に上方に突出し、内圧調整部品220の通気膜10やカバー40の側方に設けられた側部272と、底部271から中心線方向に下方に突出し、筐体120に装着される部位である装着部273とを有している。また、保持部材270は、側部272の下部から中心線方向に直交する方向に外側に突出した外側突出部274を有している。
【0051】
底部271は、中央部に、中心線方向に上方に突出した中央突出部271aを有している。中央突出部271aの中央部には、内圧調整部品220を保持するための貫通孔である中央部貫通孔271bが形成されている。中央部貫通孔271bに、内圧調整部品220の支持体230の挿入部232の脚部232aが挿入され、脚部232aの複数の外側突出部232bが、中央部貫通孔271bよりも下方において、中央部貫通孔271bの孔径よりも拡がることで、内圧調整部品220が保持部材270から脱落することが抑制される。
また、底部271には、中央突出部271aの周囲に、複数の貫通孔が形成されている。以下では、中央突出部271aの周囲に形成された貫通孔を、周囲貫通孔271cと称す。
【0052】
側部272は、内圧調整部品220の通気膜10やカバー40の外周部を覆うように円筒状に設けられている。側部272の上端面は、内圧調整部品220を保持部材270に装着する際に内圧調整部品220を挿し込む治具の突き当て面として機能する。ゆえに、中心線方向における側部272の上端面の位置は、内圧調整部品220のカバー40の上端面の位置と同じである。
【0053】
装着部273は、円筒状の円筒状部273aと、円筒状部273aの外周面から外側に突出した突出部273bとを有している。突出部273bは、円筒状部273aの下端部に、周方向に等間隔に4箇所設けられている。
装着部273の突出部273bが筐体120に形成された切り欠き121aに対向する位置とした状態で、円筒状部273aを筐体120に形成された挿入孔121に挿入し、突出部273bが筐体120内に入った位置で中心線回りに回転させることで保持部材270を筐体120に嵌め込む。これにより、通気ユニット2は、筐体120に装着される。
【0054】
外側突出部274は、円筒状の部位である。外側突出部274の外周面274aは、中心線方向に平行な面であり、筐体120の挿入孔121の周囲の外表面120aに垂直な面である。
外側突出部274及び底部271における筐体120の挿入孔121の周囲の外表面120aと対向する部位である対向面275は、外表面120aと平行となるように形成されている。本実施の形態においては、外表面120aが中心線方向に垂直な面であり、対向面275も中心線方向に垂直な面である。
そして、保持部材270は、対向面275から上方に環状に凹んだ環状凹部276を有している。環状凹部276には、Oリング30が嵌め込まれている。環状凹部276の深さは、Oリング30の線径よりも小さく設定されている。環状凹部276の幅は、Oリング30の線径よりも大きく設定されている。
【0055】
対向面275は、環状凹部276よりも内側(中央部側)の面である内側対向面275aと、環状凹部276よりも外側の面である外側対向面275bとにより構成される。そして、本実施の形態においては、外側対向面275bは、内側対向面275aよりも予め定められた距離δだけ上方となるように形成されている。距離δは、0.05mm~2.0mmであることを例示することができる。
【0056】
対向面275及び環状凹部276が上述のように形成されていることで、保持部材270が筐体120の挿入孔121に装着された状態で、内側対向面275aと外表面120aとが接触し、外側対向面275bは、外表面120aとの間に距離δ分の隙間を形成する。そして、Oリング30は、環状凹部276を形成する面と外表面120aとでつぶされて、保持部材270と外表面120aとに接触し、保持部材270と外表面120aとの間の隙間をシールする。
【0057】
そして、通気ユニット2において、保持部材270の外側突出部274の外周面274aの大きさは、保持部材270が筐体120の挿入孔121に装着された状態の、Oリング30と外周面274aとの間の距離Laが5.0mm以上となるように設定されている。これは、保持部材270と、筐体120の外表面120aとの間の隙間より、筐体120内へ水等が浸入することを抑制するためである。
【0058】
保持部材270の材料は、防爆弁250の材料よりも硬い材料である。例えば、成形が容易な熱可塑性樹脂や金属であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、エラストマー以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂など又はこれらの複合材であることを例示することができる。その他、保持部材270の材料としては、熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維などの強化材や金属などを複合し、耐熱性、耐湿性、寸法安定性、剛性などが向上した複合材料であることを例示することができる。
保持部材270の成形方法は、特に限定されるものではなく、例えば射出成形、圧縮成形、ダイカスト、切削などを例示することができる。また、ダイカスト後に切削することで保持部材270を成形しても良い。
【0059】
(防爆弁250)
防爆弁250は、中央に設けられた環状の環状部251と、環状部251の外周部から中心線方向に対して傾斜した方向に下方に延びた傾斜部252とを有している。
環状部251の内径は、支持体230の挿入部232の外径以下であり、環状部251の外径は、支持体230の支持部231の外径や保持部材270の中央突出部271aの外径よりも大きい。防爆弁250は、環状部251が支持体230の挿入部232に圧入されることで支持体230に支持される。
【0060】
傾斜部252は、環状部251の外周部の全周から斜め下方に延びており、図9で見た場合、上方に位置する上面252aと、下方に位置する下面252bと、保持部材270の底部271と接触するように中心線方向と直交する接触面252cとを有している。接触面252cが保持部材270の底部271の上面に接触する位置は、底部271に形成された周囲貫通孔271cよりも外側である。つまり、接触面252cにおける中心線Cからの半径は、中心線Cから、周囲貫通孔271cの最外部までの距離よりも大きい。
【0061】
防爆弁250は、環状部251が支持体230の支持部231と保持部材270の底部271の中央突出部271aとの間に挟み込まれる。そして、環状部251が支持体230の支持部231と保持部材270の中央突出部271aとの間に挟み込まれた状態で、接触面252cが保持部材270の底部271の上面と接触する。接触面252cが保持部材270の底部271の上面に接触することで、保持部材270の底部271に形成された周囲貫通孔271cを介して筐体120内と筐体120外との間で気体が流通する第1流路R1(図10参照)を閉じる。
【0062】
防爆弁250は、弾性体であり、材料としては、ある一定の範囲において、熱を加えても軟化することが無く、耐熱性が高い、熱硬化性エラストマーや熱硬化性ゴムであることを例示することができる。
そして、防爆弁250は、環状部251が支持体230の支持部231と保持部材270の底部271の中央突出部271aとの間に挟み込まれることで、支持体230と保持部材270との間をシールする。つまり、支持体230と保持部材270との間から、液体および固体が筐体120外から筐体120内へ侵入することを阻止するとともに気体が筐体120内と筐体120外との間で流通するのを阻止する。
【0063】
図10は、防爆弁250が第1流路R1を開いた状態を示す図である。
防爆弁250は、筐体120内の圧力である内圧が筐体120外の圧力である外圧よりも所定圧力以上高くなったときに弾性変形して、接触面252cが保持部材270の底部271から離れ、第1流路R1を開く。
言い換えれば、防爆弁250は、内圧と外圧との圧力差が所定圧力未満である場合には接触面252cが保持部材270の底部271に接触することで第1流路R1を閉じる。そして、内圧が外圧よりも所定圧力以上高くなったときに弾性変形して接触面252cが保持部材270の底部271から離れて第1流路R1を開くように、傾斜部252の形状(上面252aと下面252bとの間の幅)や材料が定められる。
【0064】
なお、防爆弁250は、内圧よりも外圧の方が高い場合には、接触面252cが保持部材270の底部271に接触し続け第1流路R1を閉じたままとなる。これにより、第1流路R1を介して液体および固体が筐体120外から筐体120内へ侵入することを阻止するとともに気体が筐体120内と筐体120外との間で流通するのを阻止する。
【0065】
(作用)
以上のように構成された通気ユニット2においては、筐体120内の圧力(内圧)と筐体120外の圧力(外圧)との間に圧力差が生じた場合には、通気膜10を介して筐体120内と筐体120外との間で気体を流通させることで圧力差を解消する。つまり、支持体230の支持部231に形成された連通孔233、カバー40の延出部42と延出部42との間の隙間などにより構成される流路が、気体が筐体120内と筐体120外との間を流通する第2流路R2として機能する。内圧と外圧との間に圧力差が生じた場合には、通気膜10を介して気体が第2流路R2を流通することで圧力差が解消される。
【0066】
また、バッテリ110の異常時等、筐体120内の圧力(内圧)が急上昇した場合には、防爆弁250の接触面252cが保持部材270の底部271から離れ、第1流路R1を開くように弾性変形する。これにより、第1流路R1を介して筐体120内から筐体120外へ気体が流出し、筐体120内の圧力(内圧)と筐体120外の圧力(外圧)との間の圧力差が解消される。
【0067】
(組み立て)
以上のように構成された通気ユニット2は、以下のように組み立てられる。
先ず、内圧調整部品220の支持体230に通気膜10を支持(例えば溶着)させるとともに、カバー40の内側突出部42aを支持体230に形成された凹部231cに嵌め込むことで内圧調整部品220を組み立てる。内圧調整部品220を組み立てた後、内圧調整部品220の支持体230の挿入部232に防爆弁250の環状部251を圧入することで内圧調整部品220と防爆弁250とを一体化する。その他、一体化する手法としては、防爆弁250を内圧調整部品220の支持体230に溶着することで接合することを例示することができる。また、防爆弁250と内圧調整部品220の支持体230とを、接着剤や両面テープにて接着しても良い。また、防爆弁250と内圧調整部品220の支持体230とをインサート成形にて一体化しても良い。そして、防爆弁250を支持した内圧調整部品220を、保持部材270の底部271に形成された中央部貫通孔271bに挿入する。
【0068】
図11(a)は、内圧調整部品220を保持部材270に挿入する前の状態を示す図である。図11(b)は、内圧調整部品220を保持部材270に挿入した後の状態を示す図である。
内圧調整部品220を保持部材270に形成された中央部貫通孔271bに挿入する際、保持部材270の側部272の外径よりも大きな面、例えば保持部材270の側部272の外径よりも大きな径の円が下端面301である治具300にて内圧調整部品220のカバー40の頂部41を加圧する。そして、図11(b)に示すように、治具300の下端面301が保持部材270の側部272に突き当たるまで保持部材270に対して内圧調整部品220を押し込む。これにより、支持体230の挿入部232の脚部232aの外側突出部232bが保持部材270の底部271に形成された中央部貫通孔271bの下方に位置する。そして、支持体230の外側突出部232bが保持部材270の底部271に突き当たることで内圧調整部品220が保持部材270から脱落することが抑制される。
【0069】
(検査)
第2の実施形態に係る通気ユニット2においては、通気ユニット2を組み立てた後、防爆弁250が機能するか否かを容易に検査することができる。つまり、防爆弁250の傾斜部252の下面252b側の圧力を、傾斜部252の上面252a側の圧力よりも所定圧力以上高くしたときに、防爆弁250の接触面252cが保持部材270の底部271から離れ、第1流路R1を開くことを検査することができる。
例えば、防爆弁が一部部品の破壊や脱落を伴って開動作するものである場合には、防爆弁が機能するか否かを検査するには実際に破壊や脱落が伴うため容易に検査することができない。例えば、検査にて破壊させたものを製品として用いることは困難である。
これに対して、通気ユニット2においては、防爆弁250が弾性変形して接触面252cが保持部材270の底部271から離れ第1流路R1を開く。そのため、検査が終了した後には、接触面252cが保持部材270の底部271に接触して第1流路R1を閉じるので、検査後には製品として用いることができる。
【0070】
図12は、防爆弁250の機能を検査した後の状態の一例を示す図である。図12に示した状態においては、傾斜部252の上面252aと下面252bとが環状部251を支点として反転する(上面252aが内側(中心線C側)に位置し、下面252bが外側に位置する)ように変形している。
防爆弁250の傾斜部252の下面252b側の圧力を、傾斜部252の上面252a側の圧力よりも所定圧力以上高くしたことに起因して、図12に示す状態に変形したとしても、防爆弁250の材料が熱硬化性エラストマーや熱硬化性ゴムであることで、再度接触面252cが保持部材270の底部271に接触して第1流路R1を閉じるように復帰可能である。このことからも、通気ユニット2によれば、例えば防爆弁が一部部品の破壊や脱落を伴って開動作するものである場合と比較して、通気ユニット2を組み立てた後に防爆弁250が機能するか否かを容易に検査することができる。
【0071】
なお、上述した第2の実施形態においては、内圧調整部品220と防爆弁250とを一体化する態様を例示しているが特にかかる態様に限定されない。例えば、内圧調整部品220と防爆弁250とを一体化していない状態で保持部材270に別々に組み付けても良い。かかる場合においても、内圧調整部品220が保持部材270に装着された場合に防爆弁250の環状部251は内圧調整部品220と保持部材270との間で圧縮された状態で両者に挟み込まれ、内圧調整部品220と保持部材270との間のシールを行うことが望ましい。
【0072】
以上、説明したように、第2の実施形態に係る通気ユニット2は、通気膜10と、通気膜10を支持するとともに、筐体120に形成された開口部の一例としての挿入孔121に装着される支持部材の一例としての、支持体230及び保持部材270と、を備えている。また、通気ユニット2は、筐体120の挿入孔121の周囲の外表面120aと保持部材270との間に配置されて保持部材270と筐体120との間の隙間をシールするOリング30を備えている。保持部材270は、Oリング30が取り付けられる取付部の一例としての環状凹部276と、環状凹部276の周囲に設けられた壁部の一例としての、底部271、側部272及び外側突出部274とを有している。そして、Oリング30が保持部材270と筐体120との間に装着された状態で、Oリング30と、保持部材270の外側突出部274における外面の一例としての外周面274aとの間の距離Laが5.0mm以上である。
【0073】
このように構成された第2の実施形態に係る通気ユニット2によれば、図6の試験結果に示すように、保持部材270と、筐体120の外表面120aとの間の隙間より、筐体120内へ水等が浸入することが抑制される。つまり、通気ユニット2によれば、高圧水噴射による洗車作業においても、高圧水がOリング30に直接かかり難いため、Oリング30が変形することが抑制される。その結果、Oリング30が変形することに起因して、筐体120内へ水等が浸入することが抑制される。
【0074】
また、通気ユニット2においては、筐体120内の圧力である内圧が筐体120外の圧力である外圧よりも所定圧力以上高くなったときに、筐体120内から筐体120外への通気を許容し、内圧と外圧との圧力差が所定圧力未満である場合には、通気を阻止する状態に復帰可能な防爆弁250をさらに備える。これにより、出荷時の検査を可能にしつつ、バッテリ110の異常時等、筐体120内の圧力(内圧)が急上昇した場合の差圧解消と、通常時の差圧解消とを実現できる。
【0075】
なお、上述した第2の実施形態に係る通気ユニット2においては、保持部材270の装着部273を筐体120の挿入孔121に挿入し、装着部273の突出部273bが筐体120の内側の面に突き当たることで保持部材270が筐体120から脱落することが抑制される。しかしながら、通気ユニット2を筐体120に装着する手法としては、特に限定されない。例えば、保持部材270を筐体120に対して圧入しても良い。また、例えば、装着部273に、突出部273bを設ける代わりに、円筒状である円筒状部273aの外周面に雄ねじを形成し、筐体120に形成した雌ねじ、又は、筐体120に固定されたナットの雌ねじにねじ込むことで通気ユニット2を筐体120に装着しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1,2…通気ユニット、10…通気膜、20,230…支持体、30…Oリング、250…防爆弁、270…保持部材
図1
図2
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図12