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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】異方導電性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/00 20060101AFI20231201BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01R11/01 501G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018223508
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020087819
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】荻野 勉
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-289730(JP,A)
【文献】特開2013-069629(JP,A)
【文献】特開2009-140869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ブロックと、前記基材ブロック中に長手方向が一方向に揃って配置された複数の導電線と、を備える導電線固定化ブロックを準備して、
前記導電線固定化ブロックをスライスカットすることにより、
基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通し、端部にバリを有する導電線と、を備える切り出しシートを得る工程と、
前記切り出しシートの表面をレーザー加工することにより、前記導電線のバリを有する端部が前記基材シートの表面から突出した突出部を有する突出加工済シートを得る工程と、
前記突出加工済シートの表面及び前記突出部に対して、粒子を吹き付けることにより、 前記突出部のバリが除去された異方導電性シートを得る工程と、を含む、
異方導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記粒子の吹き付けを乾式で行い、下記に記載の異方導電性シートを得る、請求項に記載の異方導電性シートの製造方法。
<異方導電性シート>
前記異方導電性シートは、第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートであって、
エラストマーによって形成された基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通する複数の導電線と、を備え、
前記導電線の少なくとも一方の端部が前記基材シートの表面から突出する突出部を有し、
前記突出部がバリを有さない滑らかな形状である。
【請求項3】
前記突出部が、前記基材シートの表面から切り立っている請求項2に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項4】
前記導電線の前記基材シート内にある部分の直径に対する、前記突出部の直径が95~105%である請求項2又は3に記載の異方導電性シートの製造方法
【請求項5】
前記突出部の上面の中央には、凹部又は平坦部があり、前記凹部又は前記平坦部を囲む辺縁部が面取りされた滑らかな形状である請求項2~4の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法
【請求項6】
前記粒子の吹き付けを湿式で行い、下記に記載の異方導電性シートを得る、請求項に記載の異方導電性シートの製造方法。
<異方導電性シート>
前記異方導電性シートは、第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートであって、
エラストマーによって形成された基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通する複数の導電線と、を備え、
前記導電線の少なくとも一方の端部が前記基材シートの表面から突出する突出部を有し、
前記突出部がバリを有さない滑らかな形状である。
【請求項7】
前記突出部の露出部分の形状が、球欠状又は半球状である請求項6に記載の異方導電性シートの製造方法
【請求項8】
前記導電線の前記基材シート内にある部分の直径に対する、前記突出部の直径が105%超である請求項6又は7に記載の異方導電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイス同士を接続するために、微細な電極同士を接続するシート状の圧接型コネクター(以下、異方導電性シート)が用いられている。一般に、異方導電性シートは、基材シートと、基材シートを貫通する複数の導電線とを備え、第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する。接続対象であるデバイスが有する接続端子は、デバイスの表面から陥没した凹部内に配置されていることがある。このような陥没電極に対して異方導電性シートの表面に露出した導電線を押し込んで接続することを容易にするために、シート表面から突出した導電線を備えた異方導電性シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-140574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート表面から突出した突出部を有する導電線は、接続対象の陥没電極に接続しやすい利点がある一方、接続時に導電線の突出部が陥没電極に突き刺さって傷を付ける問題がある。接続対象であるデバイスの保護の観点から、デバイスの電極に対する傷付けを防止することが求められている。
【0005】
本発明は、接続するデバイスの電極の傷付けが防止された異方導電性シート、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートであって、基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通する複数の導電線と、を備え、前記導電線の少なくとも一方の端部が前記基材シートの表面から突出する突出部を有し、前記突出部がバリを有さない滑らかな形状である、異方導電性シート。
[2] 前記突出部が、前記基材シートの表面から切り立っている[1]に記載の異方導電性シート。
[3] 前記導電線の前記基材シート内にある部分の直径に対する、前記突出部の直径が95~105%である[1]又は[2]に記載の異方導電性シート。
[4] 前記突出部の上面の中央には、凹部又は平坦部があり、前記凹部又は前記平坦部を囲む辺縁部が面取りされた滑らかな形状である[1]~[3]の何れか一項に記載の異方導電性シート。
[5] 前記突出部の露出部分の形状が、球欠状又は半球状である[1]に記載の異方導電性シート。
[6] 前記導電線の前記基材シート内にある部分の直径に対する、前記突出部の直径が105%超である[1]又は[5]に記載の異方導電性シート。
[7] 基材ブロックと、前記基材ブロック中に長手方向が一方向に揃って配置された複数の導電線と、を備える導電線固定化ブロックを準備して、前記導電線固定化ブロックをスライスカットすることにより、基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通し、端部にバリを有する導電線と、を備える切り出しシートを得る工程と、前記切り出しシートの表面をレーザー加工することにより、前記導電線のバリを有する端部が前記基材シートの表面から突出した突出部を有する突出加工済シートを得る工程と、前記突出加工済シートの表面及び前記突出部に対して、粒子を吹き付けることにより、前記突出部のバリが除去された異方導電性シートを得る工程と、を含む、異方導電性シートの製造方法。
[8] 前記粒子の吹き付けを乾式で行い、[1]~[4]の何れか一項に記載の異方導電性シートを得る、[7]に記載の異方導電性シートの製造方法。
[9] 前記粒子の吹き付けを湿式で行い、[1]、[5]又は[6]に記載の異方導電性シートを得る、[7]に記載の異方導電性シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の異方導電性シートが備える導電線の端部はバリを有さず、滑らかである。この導電線を備えた異方導電性シートによれば、接続対象であるデバイスに圧接する際に、導電線の端部がデバイスの電極を傷付けることを防止することができる。
本発明の異方導電性シートの製造方法によれば、導電線の端部のバリを除去しながら、導電線の端部を滑らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一例である異方導電性シート10の斜視図である。
図2図1の異方導電性シート10のII-II断面図である。
図3】異方導電性シート10の突出部Pの部分断面図である。
図4】異方導電性シート10の突出部Pの別の実施形態の部分断面図である。
図5】本発明の実施形態の一例である異方導電性シート20の斜視図である。
図6図2の異方導電性シート20のV- V断面図である。
図7】異方導電性シート20の突出部Pの部分断面図である。
図8】異方導電性シート20の突出部Pの別の実施形態の部分断面図である。
図9】異方導電性シートの製造に用いられる導電線固定化ブロックの製造方法の一例を示す模式図である。
図10】実施例で製造した切り出しシートの一方の主面を撮影した写真(a)と、そのSEM像(b)である。
図11】実施例で製造した突出加工済シートの一方の主面を撮影した写真(a)と、そのSEM像(b)である。
図12】実施例においてドライブラスト加工により導電線の突出部のバリを除去して、突出部の表面を滑らかにした異方導電性シートの一方の主面を撮影した写真(a)と、そのSEM像(b)である。
図13】実施例においてウェットブラスト加工により導電線の突出部のバリを除去して、突出部の表面を滑らかにした異方導電性シートの一方の主面を撮影した写真(a)と、そのSEM像(b)である。
図14】実施例で製造した切り出しシートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像である。
図15】実施例で製造した突出加工済シートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像である。
図16】実施例においてドライブラスト加工により導電線の突出部のバリを除去して、突出部の表面を滑らかにした異方導電性シートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像である。
図17】実施例においてウェットブラスト加工により導電線の突出部のバリを除去して、突出部の表面を滑らかにした異方導電性シートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像である。
図18】実施例で製造した切り出しシートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したコンピュータ・グラフィックス(CG)と、その断面形状を表した解析図である。
図19】実施例で製造した突出加工済シートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したCGと、その断面形状を表した解析図である。
図20】実施例においてドライブラスト加工により導電線の突出部のバリを除去して、突出部の表面を滑らかにした異方導電性シートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したCGと、その断面形状を表した解析図である。
図21】実施例においてウェットブラスト加工により導電線の突出部のバリを除去して、突出部の表面を滑らかにした異方導電性シートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したCGと、その断面形状を表した解析図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪異方導電性シート≫
本発明の第一態様は、第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートである。本発明の異方導電性シートは、樹脂からなる基材シートと、前記基材シートの一方の主面から他方の主面へ向かう厚さ方向に貫通する複数の導電線とを備える。前記導電線の少なくとも一方の端部が前記基材シートの少なくとも一方の主面から突出する突出部を有し、前記突出部がバリを有さない滑らかな形状である。
【0010】
本明細書において、導電線の端部の「バリ」とは、導電線を物理的手段によって切断した際に、切断面に生じる鋭く尖った部分を意味し、いわゆる加工バリのことである。前記物理的手段としては、例えば、導電線に刃物を当てること、導電線を長さ方向に引っ張ったり、導電線を捩じったりすること等が挙げられる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の例を説明する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本発明の一例である異方導電性シート10の一方の主面1aを示す。異方導電性シート10は、矩形のシート状であり、その短手方向をα方向、その長手方向をβ方向、その主面に対する垂線方向を厚さ方向とする。
異方導電性シート10の他方の主面1bは、一方の主面の反対側の面であり、一方の主面と同様の構成である。異方導電性シート10は複数の略円柱状の導電線2からなる導電部とそれ以外の絶縁部とを備え、導電部が島部分で、絶縁部が海部分である海島構造を形成している。各導電線は互いに独立し、絶縁部によって互いの絶縁性が保たれている。各導電線2は、一方の主面1aから他方の主面1bへ貫通する配線を形成している。各導電線2の長さ方向は、一方の主面及び他方の主面に対して、垂直でもよいし、傾いていてもよい。
【0012】
基材シート1を構成する樹脂は、公知の樹脂によって形成されている。例えば、エラストマー、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、活性エネルギー線重合性樹脂、触媒重合性樹脂等の公知の硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、未硬化状態で適度な粘性を呈するエラストマーが好ましい。
前記エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化後の寸法変化や反りが生じ難く、圧縮永久歪が小さく、耐熱性が高い、シリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムは、縮合型、付加型のいずれでもよい。
基材シートを構成する樹脂には、公知の添加剤、例えば樹脂の重合を促す触媒、樹脂同士の架橋を促す架橋剤、シランカップリング剤、接着助剤、抗酸化剤、染料、顔料、充填剤、レベリング剤等が含まれていてもよい。
【0013】
導電線2の材料は、導電性物質であればよく、公知の導電線が適用される。具体的な導電性物質としては、例えば、真鍮、銅、銀、金、プラチナ、パラジウム、タングステン、ベリリウム銅、りん青銅、ニッケルチタン合金等の金属、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ紡績糸等の炭素材料が挙げられる。これらの中でも、物理的手段によって切断した場合にバリが生じやすい材料は金属である。
導電線2は、前記導電性物質からなる芯線の外周を被覆する導電性の被覆層を有していてもよい。被覆層の材料としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅等が挙げられる。芯線の材料と被覆層の材料は互いに異なることが好ましい。被覆層は1層でもよいし、2層以上でもよい。例えば、内側の1層目の被覆層がニッケルからなる層であり、外側の2層目の被覆層が金からなる層である、多層構造が挙げられる。
基材シート1の内部にある導電線2の直径は、例えば、5μm~50μmとすることができる。導電線2の直径には前記導電性の被覆層を含む。導電線2の端部にバリがある場合、通常は、端部の直径は基材シート1の内部にある部分の直径よりも大きい。ここで、導電線2の直径は、導電線2の長さ方向に直交する断面を含む最小円の直径である。
導電線2の長さ方向に対して直交する方向の断面の形状は、特に制限されず、略円形、略楕円形、略四角形、その他の多角形等が挙げられる。安定した接続を得る観点から、略円形又は略楕円形であることが好ましい。
導電線2は中実でもよいし、部分的又は全体的に中空であってもよい。一例として、導電線2の長さ方向に見て中央部分が中実で、少なくとも一方の端部が中空である構造が挙げられる。この例の場合、中空である端部を長さ方向に見ると、導電線2の中心が凹状である。
導電線2の形状は、例えば、略円柱状、略楕円柱状、帯状、板状等が挙げられる。
異方導電性シート10が有する複数の導電線2の直径、断面形状及び構成材料は、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
異方導電性シート10の平面視の形状は矩形に限定されず、円形、楕円形、多角形、その他の任意の形状が採用できる。
異方導電性シート10の縦×横のサイズは特に限定されず、例えば、0.2cm×0.2cm~5cm×5cmとすることができる。
異方導電性シート10の厚さは、例えば、50μm以上3000μm以下とすることができる。ここで、異方導電性シート10の厚さは、両主面から突出した導電線2の突出部Pの高さを含む。
異方導電性シート10の形態、サイズ、厚さ等は、各主面にそれぞれ接続する電子デバイスの形状や端子の配置に合わせて適宜設定される。
【0015】
異方導電性シート10の各主面における導電線2の配置は、X列×Y行の2次元アレイ状の配置である。導電線2の配置はこの例に限定されず、任意の配置パターンが採用される。X列×Y行において、例えば、X,Yはそれぞれ独立に10~1000の任意の整数とすることができる。配置パターンは、2次元アレイ状でもよく、ジグザグ状でもよく、その他の任意のパターンでもよく、無作為なランダム配置でもよい。
【0016】
図1及び図2に示すように、異方導電性シート10の各導電線2の一方の端部2a及び他方の端部2bは、基材シート1の一方の主面1a及び他方の主面1bからそれぞれ突出している。主面から突出した部分の全体が突出部Pである。
【0017】
各突出部Pの先端の露出部分Pyはバリを有しない滑らかな形状である。突出部Pの側面Psは、円筒形であり、略円柱状の導電線2の長さ方向に沿う面であり、導電線2の先端の露出部分Pyにおける略円形の頂面及び底面を除いた側面に含まれる。
以下、前記頂面と前記底面とを区別せずに、突出部Pの上面という。突出部Pの上面の中央には、凹部(不図示)又は平坦部がある。突出部Pの上面と、側面Psとの境界である縁は滑らかに面取りされている。つまり、突出部Pの上面における中央を囲む辺縁部は面取りされた滑らかな形状である。
【0018】
各突出部Pの側面Psの一部である根元Pzは、基材シート1の樹脂が各主面からせり上がった被覆部Cによって被覆されている。被覆部Cは側面Psの周りを囲んでいる。被覆部Cによって被覆されていない側面Psの他部は露出した露出部分Pyである。各突出部Pは、被覆部Cを含めて見ても、被覆部Cを含まずに見ても、基材シート1の主面から切り立っている。
【0019】
突出部Pの高さh1は、基材シート1の主面を基準として、例えば、1μm~100μmが好ましく、5μm~60μmがより好ましく、10μm~40μmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象であるデバイスの接続端子に突出部Pが接触しやすくなり、接続性が向上する。また、突出部Pの柔軟性が高まるので、接続時に突出部Pがデバイスの接続端子を傷付ける恐れが低減する。
上記範囲の上限値以下であると、接続時に突出部Pが折れ曲がることを防止することができる。また、接続時に突出部Pが側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
突出部Pの高さh1は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの高さh1を測定した値の平均値として求められる。
複数の突出部Pの各々の高さは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
基材シート1の主面を基準として、被覆部Cの高さh2は、突出部Pの高さh1と同じでもよいが、接続の安定性を高める観点から、低いことが好ましい。高さh1に対する高さh2の比(h2/h1)は、例えば、0.3~0.9が好ましく、0.4~0.8がより好ましく、0.5~0.7がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスの接続端子から導電線2の突出部Pに対して応力が加わる際に、被覆部Cが突出部Pを支持して、突出部Pの折れ曲がりを抑制することができる。上記範囲の上限値以下であると、デバイスの接続端子に対する突出部Pの接触がより確実となるので、接続性が向上する。
被覆部Cの高さh2は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの各々について、被覆部Cの最も高い箇所の高さh2を測定した値の平均値として求められる。
複数の突出部Pが有する各々の被覆部Cの高さは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
被覆部Cの突出部Pに対する支持力を向上する観点から、図示の様に、被覆部Cは突出部Pの側面Psを周回していることが好ましい。
被覆部Cに被覆された突出部Pの弾性力を充分に発揮させて、突出部Pが接続対象であるデバイスの接続端子を傷付けることを充分に抑制する観点から、突出部Pの先端(頂面、底面)へ向けて、被覆部Cの厚みが徐々に薄くなっていることが好ましい。ここで「被覆部Cの厚み」は、導電線2の長さ方向に対して直交する向きの被覆部Cの厚みを意味する。被覆部Cの厚みが先端へ向けて徐々に薄くなっており、且つ被覆部Cが側面Psの周囲を周回していると、被覆部Cは先端へ向けて徐々に縮径する。
被覆部Cの厚みは、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの各々について、被覆部Cの外観を観察することにより判断することができる。
より正確を期す場合には、図示の様に導電線2の長さ方向に沿う異方導電性シート10の断面を切り出して、その断面を拡大観察手段で観察し、被覆部Cの厚みを測定して求められる。
複数の突出部Pが有する各々の被覆部Cの厚みは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
図3に示すように、導電線2の基材シート1内にある部分の直径R1を100%としたとき、直径R1に対する、突出部Pの露出部分Pyの直径R2は、95~105%であることが好ましい。つまり、直径R2/直径R1で表される比が0.95~1.05であることが好ましい。直径R2が、導電線2の本来の直径R1に近い程度に細いと、隣接する導電線2同士のピッチL1を狭くして、導電線2を高密度に配置することができる。通常、基材シート1の内奥にある導電線2の直径R1は、加工バリの形成の影響を受け難く、製造時に配置した導電線2の直径と同じである。
なお、突出部Pのバリが除去されていない場合には、前記比(R2/R1)は1.3以上になることが多い。
【0023】
隣接する突出部Pの先端同士の距離(ピッチ)L1は、例えば、10μm~200μmが好ましく、20μm~100μmがより好ましく、30μm~60μmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスの接続端子から突出部Pが応力を受けて側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
上記範囲の上限値以下であると、接続対象のデバイスが有する接続端子同士の狭ピッチに対応することが容易になる。
前記距離L1は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10組の突出部Pの先端の中心同士の距離を測定した値の平均値として求められる。
【0024】
本実施形態では被覆部Cがある場合を例示したが、本発明の異方導電性シートにおいて、被覆部Cは任意の構成であり、被覆部Cを有さず、突出部Pの側面Psの全体が露出していてもよい。例えば、図4に示すように被覆部Cを有しない実施形態が例示できる。
【0025】
基材シート1の一方の主面1aにおける導電線2の配線密度は、例えば、25本/mm~10000本/mmが好ましく、100本/mm~5000本/mmがより好ましく、300本/mm~2500本/mmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスが有する接続端子同士の狭ピッチに対応することが容易になる。
上記範囲の上限値以下であると、接続対象のデバイスの接続端子から突出部Pが応力を受けて側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
前記配線密度は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、基材シート1の一方の主面を観察して、任意の領域にある配線の本数を数えて、単位面積(mm)当たりの配線の本数に換算することにより求められる。前記「任意の領域」の面積は、5mm角~50mm角の範囲とする。
【0026】
基材シート1の一方の主面1a及び他方の主面1bにおいて、主面の一部の領域が他部の領域よりも高くされていてもよい。つまり、異方導電性シート10の主面の厚さは、シートの全領域にわたって同一であってもよいし、一部の領域が厚くなっていてもよいし、一部の領域が薄くなっていてもよい。
基材シート1の厚さとしては、例えば、0.05mm~2.0mmとすることができる。
基材シート1の厚さは、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、基材シート1の厚さ方向の断面から任意に選択した10箇所の厚さを測定した値の平均値として求められる。
【0027】
<第二実施形態>
図5は、本発明の一例である異方導電性シート20の一方の主面21aを示す。異方導電性シート20の構成は、突出部Pの形状の他は、第一実施形態の異方導電性シート10の構成と同様である。
【0028】
図5及び図6に示すように、異方導電性シート20の各導電線22の一方の端部22a及び他方の端部22bは、基材シート21の一方の主面21a及び他方の主面21bからそれぞれ突出している。主面から突出した部分の全体が突出部Pである。
【0029】
各突出部Pの先端はバリを有しない滑らかな形状である。突出部Pの先端には被覆部Cで被覆されていない露出部分Pyがある。露出部分Pyの形状は、球欠状又は半球状である。ここで「球欠状」又は「半球状」は立体幾何学で定義される数学的に厳密な意味に限られず、凸曲面形状に包含され、球欠又は半球に近似され得る形状であり、略球欠又は略半球である。球欠状又は半球状の形状は、基材シート1の厚さ方向に潰された扁平な形状に変形されていてもよい。
【0030】
一般に、球と平面が交わるとき、この平面の一方の側にある球面の部分は「球冠」と呼ばれ、「球冠」とこの平面で囲まれた立体は「球欠」と呼ばれる。この平面が球の中心を通るとき、一方の球欠は「半球」と呼ばれる。ここで、球によって切り取られる平面は「割平面」と呼ばれ、割平面の縁を構成する円は「交円」と呼ばれる。交円の中心から割平面に立てた垂線は「交円の軸」と呼ばれ、交円の軸は球の中心を通る。
【0031】
露出部分Pyの形状が球欠状又は半球状であるとき、交円の軸の長さは、図6のh1とh2の差である。デバイスとの接続の安定性を向上する観点から、交円の軸の長さは、球欠を構成する球の半径よりも長いことが好ましい。
【0032】
突出部Pの高さh1は、基材シート1の主面を基準として、例えば、1μm~100μmが好ましく、5μm~60μmがより好ましく、10μm~40μmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象であるデバイスの接続端子に突出部Pが接触しやすくなり、接続性が向上する。また、突出部Pの柔軟性が高まるので、接続時に突出部Pがデバイスの接続端子を傷付ける恐れが低減する。
上記範囲の上限値以下であると、接続時に突出部Pが折れ曲がることを防止することができる。また、接続時に突出部Pが側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
突出部Pの高さh1は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの高さh1を測定した値の平均値として求められる。
複数の突出部Pの各々の高さは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
基材シート21の主面を基準として、被覆部Cの高さh2は、突出部Pの高さh1よりも低い。高さh1に対する高さh2の比(h2/h1)は、例えば、0.3~0.9が好ましく、0.4~0.8がより好ましく、0.5~0.7がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスの接続端子から導電線2の突出部Pに対して応力が加わる際に、被覆部Cが突出部Pを支持して、突出部Pの折れ曲がりを抑制することができる。上記範囲の上限値以下であると、デバイスの接続端子に対する突出部Pの接触がより確実となるので、接続性が向上する。
被覆部Cの高さh2は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの各々について、被覆部Cの最も高い箇所の高さh2を測定した値の平均値として求められる。
複数の突出部Pが有する各々の被覆部Cの高さは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
図7に示すように、本実施形態においては、導電線22の基材シート21内にある部分の直径R1を100%としたとき、直径R1に対する、突出部Pの露出部分Pyの直径R2は、100%超であり、105%超130%未満であることが好ましい。つまり、直径R2/直径R1で表される比が1.0超であり、1.05超1.30未満であることが好ましい。このように直径R2が、導電線2の本来の直径R1によりも太いと接続安定性が向上する。
【0035】
本実施形態では被覆部Cがある場合を例示したが、本発明の異方導電性シートにおいて、被覆部Cは任意の構成であり、被覆部Cを有さず、突出部Pの側面Psの全体が露出していてもよい。例えば、図8に示すように被覆部Cを有しない実施形態が例示できる。
【0036】
≪異方導電性シートの製造方法≫
本発明の第二態様は、下記の工程A~工程Cを含む異方導電性シートの製造方法である。
まず、基材ブロックと、前記基材ブロック中に長手方向が一方向に揃って配置された複数の導電線と、を備える導電線固定化ブロックを準備する。
工程Aは、前記導電線固定化ブロックをスライスカットすることにより、基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通し、端部にバリを有する導電線と、を備える切り出しシートを得る工程である。
工程Bは、前記切り出しシートの表面をレーザー加工することにより、前記導電線のバリを有する端部が前記基材シートの表面から突出した突出部を有する突出加工済シートを得る工程である。
工程Cは、前記突出加工済シートの表面及び前記突出部に対して、粒子を吹き付けることにより、前記突出部のバリが除去された異方導電性シートを得る工程である。
【0037】
<準備>
導電線固定化ブロックは、従来の異方導電性シートを形成する公知方法によって作製することができる。例えば、次の方法が挙げられる。
図9に示すように、基材シートVの表面に未硬化の第一樹脂層101を形成する。第一樹脂層101の表面101aに複数の導電線102を、導電線102の長さ方向を揃えて平行に一定のピッチで配置する(図9(a))。次いで各導電線102を覆うように第一樹脂層101の表面に未硬化の第二樹脂層107を形成した後、加熱硬化することにより、コアシート104を得る(図9(b))。続いて、複数枚のコアシート104を準備し、不要な基材シートVを取り除いて、不図示の接着層を介して、複数枚のコアシート104(図示例では4枚)を積層したシート積層体108を得る(図9(c))。ここでコアシート104を積層する際、各コアシート104が有する導電線102の長さ方向を揃える。
以上で得られたシート積層体108は、導電線固定化ブロックの一例である。
以下、シート積層体108を導電線固定化ブロックとして用いる場合の工程A~Cの実施形態を例示する。
【0038】
<工程A>
導電線固定化ブロックであるシート積層体108の表面108aから刃を入れて、導電線102の長さ方向を横切るように所望の厚さで積層方向(α方向)に切断することにより、切り出しシート(従来の異方導電性シート)110を得る(図9(d))。
切り出しシート110は、複数のコアシート104から形成された基材シートと、前記基材シートを厚さ方向に貫通し、端部にバリを有する導電線102と、を備える。
【0039】
<工程B>
切り出しシート110の一方の主面110a及び他方の主面110bのうち少なくとも一方に対して、導電線102を融解し難く、主面を構成する樹脂を融解し易い種類のレーザー光を照射することによって、導電線102のバリを有する端部が基材シートの主面から突出した突出部Pを有する突出加工済シートを得る。
突出部Pを形成するレーザー照射方法としては、基本的には従来と同様でよく、例えば、特許文献1の記載に基づき、炭酸ガスレーザーを用いる方法が挙げられる。レーザー照射の際に、出力、繰り返し周波数、ビーム径、レーザー走査速度等を適宜調整することにより被覆部Cの形成の有無を調整することができる。
【0040】
被覆部Cの形成を容易にする観点から、レーザー照射中の切り出しシート110及びその周辺の温度を低く保つこと、例えば0~25℃の温度範囲とすることが好ましい。被覆部Cの形成に温度が関与するメカニズムは次のように推測される。一般に、レーザー照射された切り出しシート110の主面は加熱され、主面を構成する樹脂が燃焼したり蒸発したりする。この際に、切り出しシート110自体又はその周辺の温度を前記加熱の温度よりも低く保つことによって、前記樹脂と異なる材料からなり、熱伝導性が前記樹脂よりも高い導電線102の周囲の温度が、導電線102から離れた部分よりも低くなる。そうすると、導電線102の周囲における主面の樹脂の除去が、導電線102から離れた部分の樹脂の除去よりも相対的に遅くなる。この結果、導電線102の突出部Pの周囲に被覆部Cが容易に形成されると考えられる。切り出しシート110自体又はその周辺の温度を低く保つ方法として、例えば、切り出しシート110を金属製のステージに載置する、切り出しシート110の周囲の空気を強制的に換気する等の方法が挙げられる。金属製のステージは、さらにステージ表面を冷却する冷却機構を備えていてもよい。冷却機構としては、例えば、水、空気等の冷媒をステージ表面の近傍に流通させる機構が挙げられる。
【0041】
<工程C>
前記突出加工済シートの一方の主面及び他方の主面のうち少なくとも一方に対して、粒子を吹き付けることにより、突出部Pのバリが除去された異方導電性シートを得る。
(1)吹き付ける投射材の中に、液状の分散媒を実質的に含まず、粒子を含む乾式のブラスト法を適用すると、異方導電性シート10を例として説明した第一実施形態の異方導電性シートを製造することができる。
(2)吹き付ける投射材の中に、液状の分散媒と粒子を含む湿式のブラスト法を適用すると、異方導電性シート20を例として説明した第二実施形態の異方導電性シートを製造することができる。
【0042】
吹き付ける粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機化合物、鉄、鋼、アルミ、ニッケル、コバルト、銅等の金属やこれらの合金、合成樹脂やゴム等の有機物が挙げられる。無機化合物、金属、有機物を組み合わせた複合材料であってもよい。
乾式のブラスト法においては、有機物又は有機物を含む複合材料が好ましい。湿式のブラスト法においては、無機化合物又は無機化合物を含む複合材料が好ましい。
【0043】
吹き付ける粒子の粒径は、ブラスト条件にもよるが、例えば、体積平均で1μm~100μmの範囲が好ましい。
【0044】
上記(1)(2)のブラスト法は公知の加工装置によって実施することができる。ブラスト条件は、使用する加工装置の製造元が推奨する適切な条件に基づいて適宜設定される。
【0045】
[異方導電性シートの使用方法]
本発明の異方導電性シートの用途としては、公知の圧接型コネクタと同じ用途が挙げられる。電子デバイスの端子の導通試験を行う検査用途の他、例えば、電子機器内に備えられた複数の電子デバイス同士を接続する等のいわゆる実装用途にも適用できる。
【実施例
【0046】
特許文献1に記載された方法を参照して以下の方法で切り出しシートを得た。
まず、ポリエステルフィルムの上に未硬化のシリコーンゴムコンパウンド(信越化学工業社製)からなる厚さ約0.03mmの塗膜を形成し、この塗膜上に直径17μmの金属線を0.1mm程度の間隔でそれぞれ平行に配置した。これらの金属線を覆う、別のシリコーンゴムコンパウント層を形成し、加熱硬化することにより、コアシートを得た。
次に、複数枚のコアシートを準備して、互いの金属線の長さ方向を平行に揃えて積層することにより、導電線固定化ブロックを得た。続いて、金属線の長さ方向に対して直交する向きで導電線固定化ブロックをスライスカットすることにより、切り出しシートを得た。
【0047】
得られた切り出しシートの一方の主面を上方から、切り出しシートの厚さ方向に見て、CCDカメラで撮影した写真と、走査型電子顕微鏡で撮像したSEM像を図10に示す。また、切り出しシートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像を図14に示す。さらに、切り出しシートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したコンピュータ・グラフィックス(CG)と、その断面形状を表した解析図を図18に示す。図中、断面形状を分析した箇所を破線部分で示した。
以上の画像を処理した結果、切り出しシートの主面に露出している導電線の端部の平均直径は約23μmであった。端部にはバリがあるため、端部の直径は導電線の直径よりも太くなっていた。
【0048】
次に、金属製ステージに密着させた切り出しシートの主面に対して炭酸ガスレーザーを一様に照射し、主面の表層のシリコーンゴムを燃焼させてエッチングすることにより、突出部P及び被覆部Cを形成し、突出加工済シートを得た。
【0049】
得られた突出加工済シートの一方の主面を上方から、突出加工済シートの厚さ方向に見て、CCDカメラで撮影した写真と、走査型電子顕微鏡で撮像したSEM像を図11に示す。また、突出加工済シートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像を図15に示す。さらに、突出加工済シートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したCGと、その断面形状を表した解析図を図19に示す。図中、断面形状を分析した箇所を破線部分で示した。
以上の画像を処理した結果、突出加工済シートの主面に形成された突出部における導電線の露出した端部の平均直径は約23μmであった。端部には依然としてバリがあるため、端部の直径は導電線の直径よりも太くなっていた。
【0050】
[ドライブラスト加工]
ドライブラスト加工用の市販の加工装置を用いて、合成樹脂粒子(平均径約10μm)を投射して、突出部Pのバリを除去し、被覆部Cも多少削り取った。このドライブラスト加工により、前述した第一実施形態の異方導電性シート10と同様の異方導電性シートを得た。
【0051】
得られた第一実施形態の異方導電性シートの一方の主面を上方から、シートの厚さ方向に見て、CCDカメラで撮影した写真と、走査型電子顕微鏡で撮像したSEM像を図12に示す。また、異方導電性シートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像を図16に示す。さらに、異方導電性シートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したCGと、その断面形状を表した解析図を図20に示す。図中、断面形状を分析した箇所を破線部分で示した。
以上の画像を処理した結果、異方導電性シートの主面に形成された突出部における導電線の露出した端部の平均直径は約17μmであった。端部のバリが除去されて、端部の形成時に生じた変形も除去されたので、端部の直径は導電線の直径とほぼ同等であった。露出した端部の形状は略円筒形であり、円筒の平坦な上面の中央には前記スライスカット時に生じた変形に由来する微小な凹部が形成されていた。この凹部を囲む辺縁部は面取りされた滑らかな形状であった。露出した端部の側面、及び被覆部を含めた突出部全体の側面は、異方導電性シートの主面から切り立っていた。
【0052】
[ウェットブラスト加工]
ウェットブラスト加工用の市販の加工装置を用いて、水に分散されたアルミナ粒子(平均径約20μm)を投射して、突出部Pのバリを除去した。このウェットブラスト加工により、前述した第二実施形態の異方導電性シート20と同様の異方導電性シートを得た。
【0053】
得られた第二実施形態の異方導電性シートの一方の主面を上方から、シートの厚さ方向に見て、CCDカメラで撮影した写真と、走査型電子顕微鏡で撮像したSEM像を図13に示す。また、異方導電性シートの一方の主面を斜め上方から撮像したSEM像を図17に示す。さらに、異方導電性シートの一方の主面を、レーザー顕微鏡による三次元撮影法によって測定した表面形状を示したCGと、その断面形状を表した解析図を図21に示す。図中、断面形状を分析した箇所を破線部分で示した。
以上の画像を処理した結果、異方導電性シートの主面に形成された突出部における導電線の露出した端部の平均直径は約22μmであった。端部のバリが除去されていた分、直径は小さくなっていた。ただし、端部の形成時に生じた変形は残っていたので、端部の直径は導電線の直径よりも太くなっていた。露出した端部の形状は球欠状であり、交円の軸の長さは球の半径よりも長かった。
【符号の説明】
【0054】
1…基材シート、1a…一方の主面、1b…他方の主面、2…導電線、2a…導電線の端部、2b…導電線の端部、10…異方導電性シート、21…基材シート、21a…一方の主面、21b…他方の主面、22…導電線、22a…導電線の端部、22b…導電線の端部、20…異方導電性シート、C…被覆部、P…突出部、Ps…突出部の露出した側面、Py…突出部の露出部分、Pz…突出部の根元
図1
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