(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】全固体電池用固体電解質の製造方法、これによって製造された固体電解質及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20231201BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20231201BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231201BHJP
H01M 4/62 20060101ALN20231201BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20231201BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20231201BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2019008332
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123188
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 容 準
(72)【発明者】
【氏名】呉 必 建
(72)【発明者】
【氏名】閔 泓 錫
(72)【発明者】
【氏名】尹 龍 燮
(72)【発明者】
【氏名】金 思 欽
(72)【発明者】
【氏名】成 柱 詠
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072210(JP,A)
【文献】特開2012-224520(JP,A)
【文献】特開2000-128514(JP,A)
【文献】特開2016-027563(JP,A)
【文献】由淵想ほか,液相法で作製したLi6PS5Br電解質の全固体電池への応用,第57回電池討論会講演要旨集,2016年,p.403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 10/058
H01M 4/62
H01B 1/06
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質前駆体及び溶媒を混合させる段階と、
前記溶媒に前記固体電解質前駆体を溶解させて電解質混合液を形成する段階と、
前記溶媒を除去するために前記電解質混合液を乾燥させて電解質乾燥混合物を形成する段階と、
前記電解質乾燥混合物を熱処理して結晶化した(Crystallized)固体電解質を形成する段階と、を含み、
前記結晶化した固体電解質は、PS
4
3-
を含むアルジロダイト型結晶構造を有
し、
前記溶媒はアセトニトリル(Acetonitrile)であり、
ミリング(milling)工程を含まないことを特徴とする全固体電池用固体電解質の製造方法。
【請求項2】
前記固体電解質前駆体は、リチウム(Li)元素、硫黄(S)元素、リン(P)元素、臭素(Br)元素、ヨード(I)元素、硫化リチウム(Li
2S)、五硫化二リン(P
2S
5)、臭化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用固体電解質の製造方法。
【請求項3】
前記電解質混合液で、リチウム(Li):リン(P):硫黄(S):塩素(Cl)の組成比(モル比)は6:1:5:1であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用固体電解質の製造方法。
【請求項4】
前記電解質乾燥混合物を形成する段階で、
前記乾燥は25℃~200℃の温度で1時間~3時間実施することを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用固体電解質の製造方法。
【請求項5】
前記結晶化した固体電解質を形成する段階で、
前記熱処理は400℃~600℃の温度で実施することを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全固体電池用固体電解質の製造方法、これによって製造された固体電解質及びこれを含む全固体電池に係り、より詳しくはミリング工程なしに高収率を有するとともに省エネルギーが可能な全固体電池用固体電解質の製造方法、これによって製造された固体電解質及びこれを含む全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、二次電池は自動車、電力貯蔵システムなどの大容量貯蔵電池を始めとして、携帯電話、カムコーダー、ノートブック型パソコンなどの小型携帯電子器機の高性能エネルギー源として広く使われている。二次電池の適用分野が広くなるにしたがって携帯電子器機の小型化と長期間連続使用を目標として部品の軽量化及び低消費電力化に対する研究が進行中であり、このような小型でありながらも高容量を実現することができる二次電池が要求されている。
【0003】
特に、二次電池の一つであるリチウム二次電池は、ニッケル-マンガン電池又はニッケル-カドミウム電池に比べ、エネルギー密度が高く、単位面積当たり容量が大きく、自己放電率が低く、寿命が長いという利点がある。また、電圧が一時的に下がるメモリ効果がなく、使用の利便性及び長寿命の特性を有する。しかし、次世代電気自動車用バッテリーとしてリチウムイオン電池は、過熱による安全性問題、低いエネルギー密度及び低出力などの問題点を有している。特に、リチウム二次電池は可燃性の有機溶媒を電解質溶媒として使うため、物理的な破損による短絡発生時に火事及び爆発の可能性が高く、実際に多数の事故が発生している。
【0004】
したがって、最近安全性を高めるために、電解質として液体電解質ではなくて固体電解質を用いる全固体電池に対する関心が高くなっている。全固体電池は可燃性の液体電解質の代わりに不燃性又は難燃性の固体電解質を使うことにより、液体電解質で発生する発火の問題がなく、バイポーラ(Bipolar)構造制御が可能であるため、嵩エネルギー密度を従来に比べて5倍程度高めることができる利点がある。このように、全固体電池の核心的な構成要素である固体電解質の物質群としては、酸化物系と硫化物系が主に使われている。
【0005】
一方、従来は、Li
2
S及びP
2
S
5
を混合してからガラス化し、出発原料を使って硫化物系固体電解質を製造する方法が用いられていた。従来の固体電解質製造方法はおよそ500万ウォン/kg程度であり、その素材の値段が非常に高いLi
2
Sのような化合物を出発原料として使い、量産、粒度制御に限界があるため、大容量エネルギー貯蔵技術の要求による電池の商用化に大きな障害物となる。したがって、これを克服することができる新しい固体電解質合成方法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ミリング工程のない溶液法による固体電解質の製造方法を提供すること、結晶化した固体電解質を高収率で生産すること、
また、二次電池に適した固体電解質のリチウムイオン伝導度及び全固体電池の放電容量を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による全固体電池用固体電解質の製造方法は、固体電解質前駆体及び溶媒を混合させる段階と、前記溶媒に前記固体電解前駆体を溶解させて電解質混合液を形成する段階と、前記溶媒を除去するために前記電解質混合液を乾燥させて電解質乾燥混合物を形成する段階と、前記電解質乾燥混合物を熱処理して結晶化した(Crystallized)固体電解質を形成する段階とを含むことを特徴とする。
【0009】
前記全固体電池用固体電解質の製造方法はミリング(milling)工程を含まないことを特徴とする。
【0010】
前記固体電解質前駆体は、リチウム(Li)元素、硫黄(S)元素、リン(P)元素、臭素(Br)元素、ヨード(I)元素、硫化リチウム(Li
2
S)、五硫化二リン(P
2
S
5
)、臭化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0011】
前記溶媒は、エタノール(Ethanol)、プロパノール(Propanol)、ブタノール(Butanol)、炭酸ジメチル(Dimethyl carbonate)、酢酸エチル(Ethyl acetate)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-Dimethoxyethane)、プロピレングリコールジメチルエーテル(Propylene glycol dimethyl ether)、アセトニトリル(Acetonitrile)及びこれらの組合せからなる群から選択されるものであることを特徴とする。
【0012】
前記電解質混合液で、リチウム(Li):リン(P):硫黄(S):塩素(Cl)の組成比(モル比)は6:1:5:1であることを特徴とする。
【0013】
前記電解質乾燥混合物を形成する段階で、前記乾燥は25℃~200℃の温度で1時間~3時間実施することを特徴とする。
【0014】
前記結晶化した固体電解質を形成する段階で、前記熱処理は400℃~600℃の温度で実施することを特徴とする。
【0015】
前記結晶化した固体電解質は、アルジロダイト(Argyrodite)型結晶構造を有していることを特徴とする。
【0016】
前記結晶化した固体電解質は、PS
4
-3
を含むアルジロダイト型結晶構造を有していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記製造方法によって製造された固体電解質及びこれを含む全固体電池を含むことを特徴とする。
【0018】
前記全固体電池は、前記固体電解質を含む固体電解質層と、前記固体電解質を含み、前記固体電解質層の一面に配置される正極と、前記正極に対向するように前記固体電解質層の他面に配置される負極とを含むことを特徴とする。
【0019】
前記正極は活物質及び導電材をさらに含み、前記負極はリチウム(Li)元素を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば高収率の結晶化した固体電解質を生産することができる。
また、ミリング工程なしに結晶化した固体電解質を生産するので、製造過程で省エネルギーが可能である。
さらに、既存のミリング工程で使った高価な出発原料を使用せずに結晶化した固体電解質を生産するので、製造コストを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例による全固体電池用固体電解質の製造工程を示す図である。
【
図2】本発明の実施例による全固体電池用固体電解質の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例による全固体電池用固体電解質の製造に使用する製造装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施例による全固体電池用固体電解質のラマン(Raman)グラフである。
【
図5】本発明の一実施例による全固体電池用固体電解質のX線回折分析(X-ray diffraction spectoscopy、XRD)結果イメージである。
【
図6】本発明の一実施例による全固体電池用固体電解質を適用した全固体電池に対して充放電を実施して放電容量を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を添付図面に基づいてより詳細に説明する。
【0023】
図1及び
図2は本発明の実施例による全固体電池用固体電解質の製造方法を概略的に示す工程模式図及びフローチャートである。
図1に示す通り、本発明による全固体電池用固体電解質の製造方法が従来の製造方法と最も区別される点は、ミリング(milling)工程なしに溶液法によって固体電解質を製造するという点である。すなわち、本発明の固体電解質製造方法は、高収率の結晶化した固体電解質を生産しながら、ミリング工程を省略するので、省エネルギーが可能である。また、ミリング工程に使われるボール(ball)の汚染による不純物の生成を抑制することができる。また、既存のミリング工程で使った出発原料が大部分高価であるため、本発明の固体電解質の製造方法は製造コストを節減する経済的効果を有する。一方、本発明で、溶液法とは、ミリング工程を含まず、固体電解質前駆体及び溶媒の混合工程、溶解及び/又は反応工程、熱処理工程などによって固体電解質を製造する後述の工程及び方法を言う。
【0024】
具体的には、
図2に示す通り、本発明の実施例による全固体電池用固体電解質の製造方法は、固体電解質前駆体及び溶媒を混合させる段階(S100)、溶媒に固体電解前駆体を溶解させて電解質混合液を形成する段階(S200)、溶媒を除去するために電解質混合液を乾燥させて電解質乾燥混合物を形成する段階(S300)、及び電解質乾燥混合物を熱処理して結晶化した(Crystallized)固体電解質を形成する段階(S400)を含む。
より具体的に説明すれば、本発明による固体電解質の製造方法において、固体電解質前駆体は、リチウム(Li)元素、硫黄(S)元素、リン(P)元素、臭素(Br)元素、ヨード(I)元素、硫化リチウム(Li
2
S)、五硫化二リン(P
2
S
5
)、臭化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。特に、本発明の固体電解質前駆体は、リチウム(Li)元素、硫黄(S)元素、硫化リチウム(Li
2
S)及び五硫化二リン(P
2
S
5
)を含むが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、本発明による固体電解質の製造方法において、溶媒は、エタノール(Ethanol)、プロパノール(Propanol)、ブタノール(Butanol)、炭酸ジメチル(Dimethyl carbonate)、酢酸エチル(Ethyl acetate)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-Dimethoxyethane)、プロピレングリコールジメチルエーテル(Propylene glycol dimethyl ether)、アセトニトリル(Acetonitrile)及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。特に、本発明の溶媒はアセトニトリル(Acetonitrile)を含むが、これに限定されるものではない。
【0026】
一方、本発明による固体電解前駆体を溶媒に溶解させて電解質混合液を形成する段階(S200)で、溶解後、電解質混合液は、好ましくはリチウム(Li):リン(P):硫黄(S):塩素(Cl)の組成比(モル比)が6:1:5:1であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。
本発明による固体電解前駆体を溶媒に溶解させて電解質混合液を形成する段階(S200)の後、溶媒を除去するために電解質混合液を乾燥させて電解質乾燥混合物を形成する段階(S300)で、電解質混合液は25℃~200℃の温度で乾燥することができる。電解質混合液を25℃以下の温度で乾燥する場合、溶解した電解質混合液が完全に乾燥しないこともある。一方、電解質混合液を200℃以上の温度で乾燥する場合、電解混合液の不均一な気化(vaporization)によって最終に製造される固体電解質の組成が変わることがある。したがって、目的とする固体電解質のイオン伝導度又は放電容量より低い性能の固体電解質及びこれを含む電池を製造することができる。よって、溶解した電解質混合液に対して乾燥工程は、例えば25℃、50℃、100℃、150℃又は200℃で実施することができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
乾燥工程は1時間~3時間実施する。例えば、溶解した電解質混合液に対する乾燥工程は、真空乾燥装備を用いて、好ましくは25℃で1~3時間、50℃で1~3時間、100℃で1~3時間、150℃で1~3時間、又は200℃で1~3時間実施するが、これに限定されるものではない。
電解質混合液を1時間以下で乾燥する場合、溶解した電解質混合液が完全乾燥しないこともある。電解質混合液を3時間以上乾燥する場合、電解混合液の不均一な気化によって最終に製造される固体電解質の組成が変わることがある。
また、本発明による溶媒を除去するために電解質混合液を乾燥させて電解質乾燥混合物を形成する段階(S300)の後、電解質乾燥混合物を熱処理して結晶化した固体電解質を形成する段階(S400)で、熱処理工程は400℃~600℃の温度で実施する。このように、電解質乾燥混合物の熱処理工程によって固体電解質の結晶が成長する。熱処理工程は400℃~600℃の温度で実施する。このように、電解質乾燥混合物の熱処理工程によって固体電解質の結晶が成長する。
【0028】
電解乾燥混合物を400℃以下の温度で熱処理する場合、不均一な結晶化が進み、最終に製造される固体電解質が不均一な結晶構造を含むことがある。一方、電解乾燥混合物を600℃以上の温度で熱処理する場合、最終に製造される固体電解質で目的としない結晶相が現れることがある。
電解乾燥混合物の熱処理工程は、例えば400℃、450℃、500℃、550℃及び600℃からなる群から選択したいずれか温度で実施することが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、本発明による製造方法(S100~S400)によって製造された固体電解質は結晶化した固体電解質を含み、特にアルジロダイト(Argyrodite)型結晶構造を有する。ここで、アルジロダイト(Argyrodite)型とは、結晶質状態を意味する。特に、本発明による製造方法(S100~S400)によって製造された結晶化した固体電解質は、PS
4
-3
を含むアルジロダイト型結晶構造を有するが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の製造方法(S100~S400)によって製造された結晶化した固体電解質は、他の化合物(例えば、Li
6
PS
5
Cl)を含むアルジロダイト型結晶構造を有することもある。
【0029】
一方、前述したように、電解乾燥混合物を400℃以下の温度で熱処理する場合、不均一な結晶化が進んでアルジロダイト型結晶が減少し、不均一な結晶構造が形成される。一方、電解乾燥混合物を600℃以上の温度で熱処理する場合、最終に得られる固体電解質でアルジロダイト(Argyrodite)型以外の望まない結晶構造が生成される。よって、製造された固体電解質のイオン伝導度又は放電容量が減少することがある。
図3は本発明の実施例による全固体電池用固体電解質の製造に使用する製造装置を概略的に示す図である。説明の便宜上、
図1及び
図2に基づいて説明したものと違う点を主として説明する。
図3に示す通り、前述した本発明による固体電解質の製造方法(
図2のS100~S400参照)の一部又は全部を製造装置で実施することができる。このような製造装置は、反応器、反応器上に形成された注入口、反応器内の物質を撹拌する撹拌器、反応器の外面に形成された恒温槽及び反応器の内部と連結された減圧器を含む。例えば、固体電解質前駆体及び溶媒が注入口を通じて反応器に位置することができる。反応器に位置する固体電解質前駆体及び溶媒は撹拌器によって一定の速度で撹拌されて混合及び溶解される(
図2のS100及びS200参照)。また、このような混合及び溶解は恒温槽及び/又は減圧器によって一定の温度及び/又は一定の圧力で維持して実施される。
【0030】
一方、本発明において、全固体電池は、正極、負極及び上述した製造方法(
図2のS100~S400参照)によって製造された固体電解質を含む固体電解質層を含む。より具体的に、本発明の実施例による全固体電池は、上述した製造方法(
図2のS100~S400参照)によって製造された固体電解質を含む固体電解質層、固体電解質を含み、固体電解質層の一面に配置される正極、及び正極に対向するように固体電解質層の他面に配置される負極を含む。
特に、本発明による全固体電池において、正極は、上述した製造方法(
図2のS100~S400参照)によって製造された固体電解質以外に、活物質(例えば、Nbを含む正極活物質)及び導電材(例えば、炭素(C)含有導電材)をさらに含む。また、本発明による全固体電池において、負極は、リチウム(Li)元素を含む。
【0031】
以下、実施例及び評価例に基づいて本発明をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は例示的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:全固体電池用固体電解質の製造
溶液法によって固体電解質を製造するために次のような段階を実施した。
出発物質として、Li粉末(シグマアルドリッチ社製)、S粉末(シグマアルドリッチ社製)、P
2
S
5
粉末(シグマアルドリッチ社製)及びLiCl粉末(シグマアルドリッチ社製)を使った。これらをLi
6
PS
5
Clのような組成比(モル比)となるように、Li粉末1.29g、S粉末2.98g、P2S5粉末4.14g、LiCl粉末1.57gを秤量及び混合して混合粉末を準備した。混合粉末とアセトニトリル(Acetonitrile)溶媒100gを100ml反応器(
図3の‘反応器’参照)に入れ、混合して混合溶液を製造した。混合溶液を約200℃で2時間真空乾燥して残留のアセトニトリル(Acetonitrile)を除去した。その後、乾燥した混合粉末を550℃で5時間熱処理して結晶化することによって固体電解質を得た。
【0032】
実施例2:固体電解質を含む全固体電池の製造
【0033】
製造された固体電解質を圧縮成形して500μmの厚さの固体電解質層を形成した。正極として、活物質(NbコートされたNCM622)、固体電解質層に使用された固体電解質と同一組成の固体電解質及び導電材(Super C)を含む粉末を使い、固体電解質層の一面に5.8mg/cm
2
の活物質ローディング量及び30μmの厚さで形成した。負極として100μmの厚さのリチウムホイル(Lithium Foil)を使い、形成された正極に対向するように固体電解質層の他面に形成した。
【0034】
評価例1:固体電解質のラマン(Raman)分光法による分析(Raman spectroscopy)
図4に示す通り、本発明の一実施例(実施例1)で製造した固体電解質の混合物でPS
4
-3
結晶が形成されることを確認することができる。これは、本発明による溶液法を用いて固体電解質を製造するとき、固体電解質前駆体の結晶相フレームが作られることを意味する。
評価例2:固体電解質のリチウムイオン伝導度の測定
実施例1によって製造した固体電解質を圧縮成形して測定用成形体(直径13mm、厚さ0.6mm)に製造した。成形体に10mVの交流電位をかけた後、1×10
6
~100Hzの周波数スイープ(sweep)を実施してインピーダンス(impedence)値を測定することによってリチウムイオン伝導度を確認した。その結果、実施例1によって製造された固体電解質を含む成形体はリチウムイオン伝導度が1.0×10
-3
S/cmと測定された。すなわち、本発明の固体電解質が優れたイオン伝導度を有することを意味する。
評価例3:固体電解質のX線回折分析(X-ray diffraction spectoscopy、XRD)
【0035】
図5を参照すると、実施例1で得られた固体電解質のXRD結果イメージからアルジロダイト(Argyrodite)結晶相のピーク(peak)を確認することができる。すなわち、本発明の溶液法によって固体電解質のアルジロダイト結晶相が形成されることを意味する。
【0036】
評価例4:全固体電池の放電容量の測定
【0037】
図6に示す通り、実施例2によって製造した全固体電池の測定された放電容量が分かる。全固体電池に対して0.02Cの律速(C-rate)で2.0V~3.58Vの電圧範囲で定電流(Constant current)の条件で充放電を実施して放電容量を測定した。その結果、本発明の実施例2で製造した全固体電池は約160mAh/gの放電容量を有することを確認した。すなわち、本発明の製造方法によって製造される固体電解質及び全固体電池が充分に優れた性能を示すことが分かる。
【0038】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。