(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】アラート出力システム、アラート出力方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20231201BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20231201BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231201BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/08 A
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2019029454
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-12-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 福太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲郎
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001995(JP,A)
【文献】特開2010-117882(JP,A)
【文献】特開2017-146735(JP,A)
【文献】特開2009-193494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - G06Q 10/10
30/00 - G06Q 30/08
50/00 - G06Q 50/20
50/26 - G06Q 99/00
G08B 19/00 - G08B 31/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する検出手段と、
前記位置情報と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記施工現場の要注意領域の中に、前記要注意領域に係る特定の作業員
の声掛けに対する返事の有無に基づいて、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定
し、前記特定の作業員と間接的にコミュニケーションを取れている作業員だったとしても、当該作業員が前記特定の作業員と直接的にコミュニケーションが取れていなければ、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定する判定手段と、
前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定された場合には、所定のアラートを出力せず、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する出力手段と、
を含むことを特徴とするアラート出力システム。
【請求項2】
前記要注意領域は、前記施工現場における建設機械の作業範囲であり、
前記特定の作業員は、前記建設機械の操縦者であり、
前記判定手段は、前記作業範囲の中に前記操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定し、
前記出力手段は、前記作業範囲の中に前記操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアラート出力システム。
【請求項3】
前記要注意領域は、前記施工現場における作業グループの作業範囲であり、
前記特定の作業員は、前記作業グループの管理者であり、
前記判定手段は、前記作業範囲の中に前記管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定し、
前記出力手段は、前記作業範囲の中に前記管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアラート出力システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、当該作業員に前記アラートを出力する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のアラート出力システム。
【請求項5】
前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記特定の作業員に前記アラートを出力する、
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のアラート出力システム。
【請求項6】
前記出力手段は、前記要注意領域の中に存在する、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員の位置及び名前の少なくとも一方を示す情報とともに、前記特定の作業員に前記アラートを出力する、
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のアラート出力システム。
【請求項7】
前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在する状態から、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しない状態になった場合に、前記アラートの出力を停止する、
ことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のアラート出力システム。
【請求項8】
前記アラート出力システムは、所定の条件に基づいて、前記作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットするリセット手段を更に含み、
前記検出手段は、前記リセット手段によるリセットが行われた後に、前記作業員同士のコミュニケーションを再び検出可能である、
請求項1~7の何れかに記載のアラート出力システム。
【請求項9】
前記コミュニケーションは、前記作業員同士の会話であり、
前記検出手段は、音声検出手段が検出した音声に基づいて、前記作業員同士の会話を検出し、
前記判定手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員との会話に参加していない作業員が存在するか否かを判定し、
前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員との会話に参加していない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する、
ことを特徴とする請求項1~8の何れかに記載のアラート出力システム。
【請求項10】
施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する検出ステップと、
前記位置情報と前記検出ステップの検出結果とに基づいて、前記施工現場の要注意領域の中に、前記要注意領域に係る特定の作業員
の声掛けに対する返事の有無に基づいて、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定
し、前記特定の作業員と間接的にコミュニケーションを取れている作業員だったとしても、当該作業員が前記特定の作業員と直接的にコミュニケーションが取れていなければ、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定する判定ステップと、
前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定された場合には、所定のアラートを出力せず、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするアラート出力方法。
【請求項11】
施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段、
前記作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する検出手段、
前記位置情報と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記施工現場の要注意領域の中に、前記要注意領域に係る特定の作業員
の声掛けに対する返事の有無に基づいて、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定
し、前記特定の作業員と間接的にコミュニケーションを取れている作業員だったとしても、当該作業員が前記特定の作業員と直接的にコミュニケーションが取れていなければ、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定する判定手段、
前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定された場合には、所定のアラートを出力せず、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラート出力システム、アラート出力方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施工現場では、作業員の注意が不足していたり、作業員が作業に集中しすぎていたりすると事故が発生することがあり、安全性を向上させるための技術が検討されている。例えば、特許文献1には、RFIDタグを利用して、フォークリフトなどの建設機械の周囲の領域に作業員がいるか否かを検知し、作業員がいると判定された場合に警報を鳴らす技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、作業員の周囲で騒音が発生していると、作業員は警報に気付かないことがある。また、騒音が比較的少なかったとしても、作業員は、作業に集中しすぎていると警報に気付かないこともある。このような場合、作業員は、接近する建設機械に気付くことができないので、施工現場における安全性を担保できないことがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、施工現場における安全性を担保することが可能なアラート出力システム、アラート出力方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るアラート出力システムは、施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する検出手段と、前記位置情報と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記施工現場の要注意領域の中に、前記要注意領域に係る特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する判定手段と、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、所定のアラートを出力する出力手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るアラート出力方法は、施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得ステップと、前記作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する検出ステップと、前記位置情報と前記検出ステップの検出結果とに基づいて、前記施工現場の要注意領域の中に、前記要注意領域に係る特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する判定ステップと、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、所定のアラートを出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段、前記作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する検出手段、前記位置情報と前記検出手段の検出結果とに基づいて、前記施工現場の要注意領域の中に、前記要注意領域に係る特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する判定手段、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、所定のアラートを出力する出力手段、としてコンピュータを機能させる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記要注意領域は、前記施工現場における建設機械の作業範囲であり、前記特定の作業員は、前記建設機械の操縦者であり、前記判定手段は、前記作業範囲の中に前記操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定し、前記出力手段は、前記作業範囲の中に前記操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記要注意領域は、前記施工現場における作業グループの作業範囲であり、前記特定の作業員は、前記作業グループの管理者であり、前記判定手段は、前記作業範囲の中に前記管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定し、前記出力手段は、前記作業範囲の中に前記管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、当該作業員に前記アラートを出力する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、前記特定の作業員に前記アラートを出力する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記出力手段は、前記要注意領域の中に存在する、前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員の位置及び名前の少なくとも一方を示す情報とともに、前記特定の作業員に前記アラートを出力する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在する状態から、前記要注意領域の中に前記特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しない状態になった場合に、前記アラートの出力を停止する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記アラート出力システムは、所定の条件に基づいて、前記作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットするリセット手段を更に含み、前記検出手段は、前記リセット手段によるリセットが行われた後に、前記作業員同士のコミュニケーションを再び検出可能である。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記コミュニケーションは、前記作業員同士の会話であり、前記検出手段は、前記作業員同士の会話を検出し、前記判定手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員との会話に参加していない作業員が存在するか否かを判定し、前記出力手段は、前記要注意領域の中に前記特定の作業員との会話に参加していない作業員が存在すると判定された場合に、前記アラートを出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工現場における安全性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るアラート出力システムの全体構成を示す図である。
【
図2】アラート出力システムが利用される施工現場の一例を示す図である。
【
図3】作業員端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図4】アラート出力システムが適用される場面の一例を示す図である。
【
図5】アラート出力システムが適用される場面の一例を示す図である。
【
図6】アラート出力システムが適用される場面の一例を示す図である。
【
図7】アラート出力システムで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図8】作業員データのデータ格納例を示す図である。
【
図9】アラート出力システムで実行される処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.アラート出力システムの全体構成]
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態に係るアラート出力システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、アラート出力システムSは、サーバ10と、複数の作業員端末20と、を含む。なお、
図1では、サーバ10を1台だけ示しているが、サーバ10は複数台あってもよい。また、作業員端末20は、少なくとも作業員の数だけ用意すればよく、任意の台数であってよい。
【0020】
サーバ10は、サーバコンピュータである。例えば、サーバ10は、制御部11、記憶部12、及び通信部13を含む。制御部11は、少なくとも1つのプロセッサを含む。制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。記憶部12は、主記憶部及び補助記憶部を含む。例えば、主記憶部はRAMなどの揮発性メモリであり、補助記憶部は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。通信部13は、有線通信又は無線通信用の通信インタフェースを含み、例えば、ネットワークを介してデータ通信を行う。
【0021】
作業員端末20は、施工現場における作業員が操作するコンピュータである。施工現場とは、施工が行われる場所であり、例えば、建築現場、工事現場、又は解体現場と呼ばれることもある。施工現場では、任意の施工が行われてよく、例えば、建物、道路、橋、トンネル、又はダムなどが施工される。作業員とは、施工現場で作業を行う者であり、例えば、建設機械の操縦者、作業グループの管理者、現場監督、鉄筋工、型枠工、コンクリート工、又は仮設工などである。建設機械は、重機とも呼ばれる機械であり、例えば、クレーン、ショベルカー、又はフォークリフトなどである。
【0022】
例えば、作業員端末20は、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(タブレット型コンピュータやスマートグラスを含む)、又は携帯電話機(スマートフォンを含む)等である。制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、表示部25、位置検出部26、及び音声検出部27を含む。制御部21、記憶部22、及び通信部23は、それぞれ制御部11、記憶部12、及び通信部13と同様のハードウェア構成である。操作部24は、入力デバイスであり、例えば、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイスやキーボード等である。操作部24は、操作内容を制御部21に伝達する。表示部25は、例えば、液晶表示部又は有機EL表示部等である。
【0023】
位置検出部26は、地球上の位置を検出するための装置であり、例えば、GPSセンサ(GPS受信機)を含む。例えば、位置検出部26は、衛星からの信号を受信し、位置情報として緯度経度情報を取得する。なお、位置の検出方法自体は、公知の種々の手法を適用可能であり、位置検出部26は、検出方法に応じた装置を利用すればよく、複数の検出方法を複合的に利用して、検出精度を高めてもよい。
【0024】
例えば、GPS以外のGNSS(例えば、GLONASS、Galileo、又はQZSS)を利用する場合には、位置検出部26は、利用するGNSSに応じた受信機を含む。また例えば、Beacon測位を利用する場合には、位置検出部26は、Beacon受信機を含む。また例えば、UWB測位を利用する場合には、位置検出部26は、UWB信号を発信するタグを含み、施工現場にはUWB信号を受信する複数のセンサが配置されている。また例えば、Wi-Fi測位を利用する場合には、位置検出部26は、Wi-Fi用の通信インタフェースを含む。また例えば、音波測位を利用する場合には、位置検出部26は、音波検出センサを含む。また例えば、デッドレコニング測位を利用する場合には、位置検出部26は、ジャイロセンサや加速度センサなどの各種センサを含む。また例えば、IMES測位を利用する場合には、位置検出部26は、GPSセンサ、ジャイロセンサ、及び加速度センサといった複数のセンサを含む。また例えば、Visual-SLAM測位を利用する場合には、位置検出部26は、カメラや深度センサなどを含む。また例えば、RFID測位を利用する場合には、位置検出部26は、RFID受信機を含む。
【0025】
音声検出部27は、少なくとも1つのマイクを含み、音声を検出する。
【0026】
なお、記憶部12,22に記憶されるものとして説明するプログラム及びデータは、ネットワークを介してサーバ10又は作業員端末20に供給されるようにしてもよい。また、サーバ10及び作業員端末20の各々のハードウェア構成は、上記の例に限られず、種々のハードウェアを適用可能である。例えば、サーバ10及び作業員端末20の各々は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を読み取る読取部(例えば、光ディスクドライブやメモリカードスロット)や外部機器と直接的に接続するための入出力部(例えば、USB端子)を含んでもよい。この場合、情報記憶媒体に記憶されたプログラムやデータが読取部又は入出力部を介して、サーバ10及び作業員端末20の各々に供給されるようにしてもよい。
【0027】
[2.アラート出力システムの概要]
アラート出力システムSは、施工現場の安全性を担保するために用いられる。施工現場では、建設機械などの機材の欠陥によって事故が発生することもあるが、作業員の注意不足や過度な集中などのように、作業員自身が原因で事故が発生することが多い。従来、このような事故を防ぐ方法として、声掛け作業を徹底することが行われている。しかし、声掛け作業を徹底しても、作業員の注意が不足していたり、作業に集中しすぎていたりした場合には、作業員に声が届かないことがある。
【0028】
また、施工現場にロードコーンやフェンスなどを配置し、注意すべき領域を明示する方法も知られているが、作業員が視覚的に認識していなければ意味がなく、作業員が気付かないことがある。また、従来技術で説明したように、建設機械が警告を出力して注意を促す方法では、周囲の騒音などによって作業員が気付かないこともあるし、作業員の注意が不足していたり作業に集中していたりすると気付かないこともある。
【0029】
また、建設機械の作業範囲に作業員が侵入した場合に、建設機械を強制停止させることも考えられるが、強制停止による二次災害(例えば、吊り荷の落下や積み荷の荷崩れ)が発生する危険性があり、作業員の注意不足や過度な集中などに対する根本的な対策にもならない。また、注意すべき領域に作業員が侵入した場合に強制的にアラートを出力することも考えられるが、施工現場において注意すべき領域は流動的なため、強制的にアラートを出力する手法では限界がある。例えば、クレーンの作業範囲であったとしても、荷を吊るすための玉掛け作業中であれば安全と考えられるので、このような場合にまでアラートを出力すると、むしろ作業の邪魔になってしまう。
【0030】
そこで、本実施形態のアラート出力システムSは、施工現場における作業員同士のコミュニケーションを検出し、施工現場の要注意領域の中に、建設機械の操縦者や作業グループの管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在する場合に、アラートを出力するようにしている。
【0031】
コミュニケーションとは、作業員同士の意思疎通であり、例えば、会話、チャット、又はジェスチャなどである。要注意領域とは、施工現場において注意すべき領域であり、例えば、建設機械の作業範囲、管理者の管理範囲、危険な機材を使って作業をする作業員の周辺、資材が積まれている領域、足場周辺の領域、又は車両の通行範囲などである。要注意領域は、コミュニケーションの判定の対象となる領域、施工現場における危険が発生しうる領域、又は施工現場において監視すべき領域ということもできる。アラートとは、コミュニケーションが取れていないことを示す通知(警告又は警報)であり、例えば、視覚的、聴覚的、又は触覚的に行われる。
【0032】
図2は、アラート出力システムSが利用される施工現場の一例を示す図である。
図2の例では、作業員Aは、建設機械30を操縦して資材の運搬作業を担当する。建設機械30は、作業員Aの操縦によって施工現場を移動するので、建設機械30の付近にいる他の作業員は、建設機械30の動作に注意する必要がある。このため、アラート出力システムSは、作業員Aの作業員端末20が取得した位置情報に基づいて、要注意領域40を設定する。要注意領域40は、任意のサイズ及び形状であってよく、ここでは、作業員Aの周囲nメートル(nは任意の正数であり、例えば、1メートル~30メートル程度)とする。
図2の例では、要注意領域40の中に作業員B~Dの3人がいるものとする。
【0033】
例えば、作業員Aは、建設機械30を移動させるときに、作業員B~Dに「移動するよ!」といった声掛けを行う。これに対し、作業員B~Dの各々は、返事をしたり手を上げるなどのリアクションをしたりする。全員が返事などをした場合には、要注意領域40内にいる全員が作業員Aとコミュニケーションを取れており、建設機械30の存在に気付いているので、安全性は担保されている。一方、作業員B~Dの中に、返事などをしなかった作業員がいた場合、その作業員は、注意不足や過度な集中などにより、建設機械30の存在に気付いていない可能性があるので、アラート出力システムSは、アラートを出力する。
【0034】
例えば、アラート出力システムSは、作業員A~Dの各々の作業員端末20が検出した音声に基づいて、作業員Aとの会話が成立しているか否かを判定し、要注意領域40の中に、作業員Aとの会話が成立していない作業員が存在するか否かを判定する。アラート出力システムSは、作業員Aとの会話が成立していない者が存在すると判定された場合に、アラートを出力する。アラートは、作業員Aの声掛けに気付いていない者などに出力されてもよいが、ここでは、作業員Aに出力される場合を説明する。
【0035】
図3は、作業員端末20に表示される画面の一例を示す図である。
図3に示すように、作業員端末20には、施工現場における作業を支援するアプリケーションがインストールされており、表示部25に、当該アプリケーションの画面Gが表示される。ここでは、作業員Aの画面を例に挙げるので、建設機械30の操縦を支援するための画面が表示されることになる。以降の説明では、個々の画面を区別する必要があるときは、G1~G3といったように、Gの符号の後に数字を付して説明する。
【0036】
例えば、画面G1に示すように、作業員A又は建設機械30を中心として、要注意領域40が表示される。要注意領域の中にいる作業員B~Dの各々は、作業員端末20を所持しているので、位置検出部26により位置情報が取得される。作業員B~Dの各々の位置情報は、サーバ10にアップロードされ、作業員B~Dの各々の位置が画面G1に表示される。
図3の例では、作業員B~Dの各々を示す三角形のアイコンが画面G1に表示され、作業員Aは、作業員B~Dの各々の相対位置を知ることができる。
【0037】
本実施形態では、画面G1において、作業員Aと作業員B~Dの各々との会話が成立しているか否かが識別できるようになっている。例えば、作業員Aとの会話が成立している作業員については、第1の表示態様(
図3では白抜き)のアイコンで表示され、作業員Aとの会話が成立していない作業員については、第2の表示態様(
図3では網掛け)のアイコンで表示される。画面G1の時点では、作業員Aが声掛けをしておらず、誰との会話も成立していないので、作業員B~Dの各々のアイコンは、第2の表示態様で表示される。
【0038】
例えば、作業員Aが周囲に対して声掛けをすると、返事が返ってきた作業員については、会話が成立したと判定されてアイコンの表示態様が変わる。例えば、画面G2に示すように、作業員Aの声掛けに対して作業員BとDが返事をしたとすると、作業員BとDの各々のアイコンが第1の表示態様となる。作業員BとDは、返事をしており建設機械30の存在に気付いているので、作業員BとDの安全性が担保されている。
【0039】
一方、作業員Aの声掛けに対して作業員Cが返事をしなかったとすると、作業員Cのアイコンは第2の表示態様のままとなる。作業員Cは、返事をしておらず建設機械30の存在に気付いていないので、作業員Cの安全性は担保されていない可能性が高い。このため、画面G2に示すように、「Cさんに注意して下さい!」といったメッセージがアラートとして表示される。これにより、作業員Aは、誰に気を付けたらよいかを容易に把握することができる。
【0040】
その後、作業員Aは、作業員Cに対して「Cさん、聞こえた!?」といった再度の声掛けをして返事が返ってくると、画面G3に示すように、作業員Cのアイコンが第1の表示態様となり、アラートが消去される。これにより、要注意領域40の中にいる作業員B~Dが建設機械30の存在に気付いていることが確認され、全ての作業員の安全性が担保される。なお、アラート出力システムSは、種々の場面に適用可能であり、
図2及び
図3に例示した場面に限られない。以降、他の適用場面の例について説明する。
【0041】
図4~
図6は、アラート出力システムSが適用される場面の一例を示す図である。
図4では、作業員E~Hの4人が作業グループに所属しており、作業グループの管理者である作業員Eが声掛けをする場面が示されている。作業グループが予め決まっている場合には、作業員E~Hの各々が予め会話の相手として登録されていてもよい。要注意領域40は、作業員Eの管理対象となる領域を示すことになり、例えば、作業員Eを中心とした領域となる。作業員F~Hは、作業員Eの管理下に置かれるので、原則として要注意領域40の中で作業をする。
【0042】
作業員Eは、常に周囲に注意を払い、鉄筋を持った作業員や建設機械30が付近を通過するなどのように、作業員F~Hに注意してほしい状況になったか否かを確認する。注意してほしい状況になった場合、作業員Eは、作業員F~Hに対して声掛けをする。これに対し、作業員FとGが返事をしたとすると、作業員FとGは、作業員Eの声掛けに気付いて周囲に注意するので、安全性が担保される。
【0043】
一方、作業員Hが返事をしなかったとすると、作業員Hは、作業員Eの声掛けに気付いておらず周囲に注意していない可能性がある。この場合、作業員Eの作業員端末20には、
図3と同様のアラートが出力され、作業員Eは、作業員Hに対して再度の声掛けをする。作業員Hから返事が返ってくると、作業員Eの声掛けに気付いて周囲に注意するので、安全性が担保される。このため、作業員Eの作業員端末20におけるアラートは消去される。以上により、要注意領域40の中にいる全ての作業員の安全性が担保される。
【0044】
なお、本実施形態では、作業員Hは、管理者である作業員Eと直接的にコミュニケーションを取れていなければアラートが出力され、作業員F又はGとコミュニケーションを取れていたとしても(即ち、作業員Eと間接的にコミュニケーションが取れていたとしても)、アラートが出力されるものとする。この点については、後述する
図5と6も同様である。
【0045】
図5には、作業員Iが建設機械30Aを操縦し、作業員
Jが建設機械30Bを操縦する場面が示されている。
図5に示すように、建設機械30Aを中心として要注意領域40Aが設定され、建設機械30Bを中心として要注意領域40Bが設定される。これら要注意領域40Aと40Bの個々の設定方法は、
図2を参照して説明した通りである。ここでは、要注意領域40Aの中で作業員KとLが作業をしており、要注意領域40Bの中で作業員LとMが作業をしているものとする。
【0046】
作業員Iは、建設機械30Aを移動させる場合に、周囲に対して声掛けをする。これに対し、作業員KとLが返事をしたとすると、要注意領域40A内にいる全員が建設機械30Aの存在に気付いており、要注意領域40A内の安全性が担保されていることになる。なお、作業員JとMについては、要注意領域40Aから離れた場所におり、建設機械30Aにあまり気を付ける必要がないので、特に返事をしなくてよい。
【0047】
同様に、作業員Jは、建設機械30Bを移動させる場合に、周囲に対して声掛けをする。これに対し、作業員Mだけが返事をしたとすると、作業員Mは建設機械30Bの存在に気付いているが、作業員Lは、建設機械30Aに集中してしまい、建設機械30Bの存在に気付いていない可能性がある。この場合、作業員Jの作業員端末20には、
図3と同様のアラートが出力され、作業員Jは、作業員Lに対して再度の声掛けをして作業員Lから返事が返ってくると、アラートが消去される。この場合、要注意領域40B内にいる全員が建設機械30Bの存在に気付いており、要注意領域40Bの安全性が担保される。なお、作業員IとKについては、要注意領域40Bから離れた場所におり、建設機械30Bにあまり気を付ける必要がないので、特に返事をしなくてよい。
【0048】
図6には、作業員Nが建設機械30を操縦して荷を下ろす場面が示されている。この場合、作業員は荷の落下などに注意する必要があるので、要注意領域40は、荷の下方に設定される。例えば、荷の玉掛け作業をする場所や荷を下ろす場所が予め決められている場合には、要注意領域40は、当該場所付近に設定される。また例えば、荷を吊るしたり下ろしたりする場所が流動的である場合には、荷やフックなどに位置検出部26と同様の構成を配置し、荷やフックなどの位置情報を検出することで要注意領域40が設定される。
【0049】
図6の例では、要注意領域40の中で、作業員OとPが作業をしているものとする。作業員Nは、建設機械30で荷を移動させる場合に、作業員OとPに声掛けをする。これに対し、作業員Oだけが返事をしたとすると、作業員Pは、荷の存在に気付いていない可能性がある。この場合、作業員Nの作業員端末20には、
図3と同様のアラートが出力され、作業員Nは、作業員Pに対して再度の声掛けをして作業員Pから返事が返ってくると、アラートが消去される。この場合、要注意領域4
0内にいる全員が荷の存在に気付いており、要注意領域40内の安全性は担保されている。なお、作業員Qについては、要注意領域4
0から離れた場所におり、荷にあまり気を付ける必要がないので、特に返事をしなくてよい。
【0050】
以上のように、本実施形態のアラート出力システムSでは、施工現場における作業員同士のコミュニケーションを検出し、施工現場の要注意領域40の中に、操縦者や管理者などとコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する。アラート出力システムSは、要注意領域40の中に、操縦者や管理者などとコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、アラートを出力することで、施工現場における安全性を担保する。以降、本技術の詳細について説明する。
【0051】
[3.本実施形態で実現される機能]
図7は、アラート出力システムSで実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、アラート出力システムSでは、データ記憶部100、位置情報取得部101、検出部102、判定部103、出力部104、及びリセット部105が実現される。本実施形態では、これら各機能がサーバ10によって実現される場合を説明するが、後述する変形例のように、各機能は、作業員端末20などの他のコンピュータによって実現されてもよい。
【0052】
[データ記憶部]
データ記憶部100は、記憶部12を主として実現される。データ記憶部100は、施工現場における安全性を担保するために必要なデータを記憶する。例えば、データ記憶部100は、作業員に関する各種情報が格納された作業員データDTを記憶する。作業員データDTは、施工現場における作業状況を示すデータということもできる。
【0053】
図8は、作業員データDTのデータ格納例を示す図である。
図8に示すように、作業員データDTには、作業員ID、作業員の氏名、作業員の種別、端末ID、位置情報、及びコミュニケーション情報が格納される。作業員IDは、作業員を一意に識別する情報であり、例えば、社員番号などである。種別は、作業員の役割を示し、例えば、管理者、操縦者、又は管理者の管理対象となる作業員などである。端末IDは、作業員端末20を一意に識別する情報であり、例えば、作業員端末20の個体識別番号、電話番号、又はメールアドレスなどである。
【0054】
位置情報は、作業員端末20の位置検出部26により検出された位置情報が格納される。位置情報は、後述する位置情報取得部101によって取得され、作業員データDTに格納される位置情報は、位置情報取得部101によって随時更新される。
【0055】
コミュニケーション情報は、作業員同士のコミュニケーションに関する情報である。例えば、コミュニケーション情報は、コミュニケーションが取れている作業員の組み合わせを示す。ここでは、作業員ごとにコミュニケーション情報が格納されるので、コミュニケーション情報には、当該作業員とコミュニケーションが取れている他の作業員が示される。
図8のデータ格納例であれば、作業員Aのコミュニケーション情報には、作業員BとDの作業員IDが示されているので、作業員Aと作業員Bとのコミュニケーションと、作業員Aと作業員Dとのコミュニケーションと、が成立していることが示されている。コミュニケーション情報は、後述する検出部102の処理によって随時更新される。
【0056】
なお、データ記憶部100に記憶されるデータは、上記の例に限られない。データ記憶部100は、任意のデータを記憶してよく、例えば、建設機械30が位置検出部26と同様の構成を含む場合には、データ記憶部100は、建設機械30の位置情報を記憶してもよい。また例えば、データ記憶部100は、判定部103により設定された要注意領域40を示す情報を記憶してもよい。また例えば、要注意領域40が予め定められている場合には、データ記憶部100は、当該予め定められた要注意領域40を示す情報を記憶してもよい。また例えば、作業グループが予め決められている場合には、データ記憶部100は、作業グループごとに、当該作業グループの管理者と、当該作業グループに属する作業員と、の各々の作業員IDを格納するデータを記憶してもよい。
【0057】
[位置情報取得部]
位置情報取得部101は、制御部11を主として実現される。位置情報取得部101は、施工現場における作業員の位置に関する位置情報を取得する。位置情報は、作業員の位置を示す情報ということもできるし、作業員の作業員端末20の位置を示す情報ということもできる。本実施形態では、作業員端末20の位置検出部26により位置情報が検出されるので、位置情報取得部101は、各作業員端末20から、当該作業員端末20を保有する作業員の位置情報を取得する。
【0058】
例えば、作業員端末20は、位置検出部26を利用して定期的に位置情報を取得し、自身の記憶部22に記憶された端末IDとともに、サーバ10に位置情報を送信する。サーバ10の位置情報取得部101は、作業員端末20から端末IDと位置情報を取得すると、作業員データDTを参照し、作業員端末20の端末IDが格納されたレコードの位置情報を更新する。これにより、作業員データDTに格納される各作業員の位置情報は、最新の状態が保たれる。なお、作業員端末20は、作業員が操作部24から所定の操作をした場合などのように、不定期的に位置情報を送信してもよい。
【0059】
[検出部]
検出部102は、制御部11を主として実現される。検出部102は、作業員同士で行われるコミュニケーションを検出する。コミュニケーションを検出するとは、コミュニケーションの有無を検出すること、コミュニケーションをしている作業員の組み合わせを検出すること、又はコミュニケーションの内容を検出することである。検出部102は、コミュニケーションの検出結果に基づいて、作業員データDTに格納されたコミュニケーション情報を更新する。
【0060】
コミュニケーションの検出方法(検出アルゴリズム)自体は、種々の手法を適用可能であり、コミュニケーションの内容に応じた検出方法を利用すればよい。本実施形態では、コミュニケーションの一例として、作業員同士の会話を説明するので、検出部102は、作業員同士の会話を検出する。例えば、検出部102は、作業員端末20の音声検出部27により検出された音声と、公知の会話検出方法と、に基づいて、作業員同士の会話を検出する。
【0061】
例えば、作業員端末20の音声検出部27が複数のマイクを含み、マイクが互いに一定距離離されて配置されている場合、検出部102は、複数のマイクの各々で検出された音声の音圧の比に基づいて、当該作業員端末20の作業員(以降、自分と記載する。)が発話しているか、他の作業員が発話しているかを判定する。音圧は、発声点からマイクまでの距離の二乗に略反比例して減衰するため、発声点とマイクが近い領域では急激に低下し、これらが遠い領域ではほとんど変化しない。このため、検出部102は、作業員端末20の音声検出部27の複数のマイクの音圧比が閾値以上であれば、自分が発話していると判定し、音圧比が閾値未満であれば他の作業員が発話していると判定する。
【0062】
検出部102は、音声検出部27が検出した音声の発話者を分離し、自分の発話と他の作業員の発話とが交互に繰り返されていたり、これらが適度に重なっていたりした場合に、コミュニケーションが成立していると判定する。一方、検出部102は、同時に発話している時間が長かったり、誰も発言していない時間が長かったりした場合に、コミュニケーションが成立していないと判定する。なお、コミュニケーションの成立状態は、特にリセットされなくてもよいが、本実施形態では、所定の条件によってリセットされ、後述するリセット部105は、例えば、コミュニケーションが成立したと判定した作業員同士が、一定時間の間、コミュニケーションが成立していないと判定した場合などに、これらの作業員のコミュニケーションが成立しなくなったと判定する。
【0063】
図2及び
図3の場合を例に挙げると、検出部102は、作業員A~Dの各々の作業員端末20から音声を取得し、自分の発話と他の作業員の発話を分離する。検出部102は、作業員A,B,Dについて、自分の発話と他の作業員の発話とが交互に繰り返されたり、適度に重なっていたりした場合に、作業員A,B,Dの間でコミュニケーションが成立していると判定し、作業員A,B,Dのコミュニケーション情報にその旨を格納する。一方、検出部102は、作業員Cについては、自分の発話が検出されなかった場合に、作業員AとCとの間でコミュニケーションが成立していないと判定し、コミュニケーション情報にその旨を格納する。
【0064】
なお、会話の検出方法は、音圧を利用した方法に限られない。例えば、声紋認証を利用するのであれば、検出部102は、音声検出部27が検出した音声の声紋を検出することで、発話者を特定してもよい。発話者を分離した後の処理については、上述した通りである。また、会話以外にチャットやジェスチャをコミュニケーションツールとして利用する場合には、検出部102は、利用するツールに応じた検出方法でコミュニケーションを検出すればよい。
【0065】
例えば、チャットを利用するのであれば、検出部102は、チャットの発言者やメッセージの内容を参照し、コミュニケーションが取れている作業員を検出してもよい。また例えば、ジェスチャを利用するのであれば、検出部102は、カメラの画像を解析したり、作業員の体に取り付けた加速度センサやジャイロセンサなどを利用したりしてジェスチャを特定し、コミュニケーションが取れている作業員を検出してもよい。また例えば、声掛けに対する反応として作業員が操作部24の所定のボタンを押すようにする場合には、検出部102は、操作部24の検出信号に基づいてコミュニケーションを検出してもよい。
【0066】
[判定部]
判定部103は、制御部11を主として実現される。判定部103は、位置情報と検出部102の検出結果とに基づいて、施工現場の要注意領域40の中に、要注意領域40に係る特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する。判定部103は、位置情報に基づいて、要注意領域40の中にいる作業員を特定し、検出部102の検出結果に基づいて、当該作業員と特定の作業員との間でコミュニケーションが取れているか否かを判定する。本実施形態では、コミュニケーションツールとして会話を説明するので、判定部103は、要注意領域40の中に特定の作業員との会話に参加していない作業員が存在するか否かを判定することになる。
【0067】
特定の作業員とは、要注意領域40の対象となる作業員であり、例えば、建設機械30の操縦者、作業グループの管理者(職長・リーダー)、注意を要する資材を運ぶ作業員、又は注意を要する作業を行う作業員である。別の言い方をすれば、特定の作業員は、要注意領域40を設定する際の基準となる作業員である。例えば、特定の作業員が建設機械30の操縦者である場合には、特定の作業員は、要注意領域40内で建設機械30を操縦する作業員ということができる。また例えば、特定の作業員が管理者である場合には、特定の作業員は、要注意領域40の中の作業員の監督責任がある作業員ということができる。
【0068】
判定部103は、施工現場における要注意領域40を特定する。例えば、要注意領域40が予め定められているのであれば、判定部103は、データ記憶部100に記憶された要注意領域40を参照することによって、要注意領域40を特定する。また例えば、特定の作業員の位置に応じて要注意領域40が設定されるのであれば、判定部103は、作業員データDTに格納された種別を参照することによって、特定の作業員を判別し、当該特定の作業員の位置情報に基づいて、要注意領域40を設定する。例えば、判定部103は、データ記憶部100上に、施工現場を示す2次元的な平面又は3次元的な空間を構築し、当該平面又は空間に要注意領域40を設定する。平面は、2つの座標軸によって表現され、2次元座標によって位置が示される。空間は、3つの座標軸によって表現され、3次元座標によって位置が示される。
【0069】
なお、要注意領域40のサイズ及び形状を示す情報は、予めデータ記憶部100に記憶されているものとする。例えば、要注意領域40は、特定の作業員を含むようにして設定される。作業員の種別に応じて、要注意領域40の形状やサイズが変わってもよい。例えば、移動速度の速い建設機械30の操縦者については広い要注意領域40が設定されてもよいし、管理対象の作業員の人数が多い管理者については広い要注意領域40が設定されてもよい。
【0070】
要注意領域40が設定されると、判定部103は、作業員データDTに格納された各作業員の位置情報に基づいて、要注意領域40の中にいる作業員を特定する。判定部103は、各作業員の位置情報が示す位置が要注意領域40に含まれるか否かを判定する。判定部103は、要注意領域40に含まれる作業員については、要注意領域40の中にいると判定し、要注意領域40に含まれない作業員については、要注意領域40の中にいないと判定する。
【0071】
要注意領域40の中にいる作業員が特定されると、判定部103は、作業員データDTに格納された当該作業員のコミュニケーション情報に基づいて、特定の作業員とコミュニケーションが取れているか否かを判定する。例えば、判定部103は、コミュニケーション情報が示す作業員に特定の作業員の作業員IDが含まれていれば、特定の作業員とコミュニケーションが取れていると判定し、特定の作業員の作業員IDが含まれていなければ、特定の作業員とコミュニケーションが取れていると判定しない。
【0072】
判定部103は、要注意領域40の中にいる全ての作業員(特定の作業員を除く)について、特定の作業員とコミュニケーションが取れているか否かを判定する。判定部103は、要注意領域40の中にいる全ての作業員について、特定の作業員とコミュニケーションが取れている場合には、特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定し、要注意領域40の中にいる少なくとも1人の作業員について、特定の作業員とコミュニケーションが取れていない場合には、特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定する。
【0073】
例えば、
図2,5-6の例であれば、要注意領域40は、施工現場における建設機械30の作業範囲であり、特定の作業員は、建設機械30の操縦者である。判定部103は、要注意領域40である作業範囲の中に操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する。判定部103は、建設機械30の操縦者の作業員端末20の位置情報に基づいて、要注意領域40を設定する。
【0074】
例えば、ショベルカーやフォークリフトのように建設機械30が移動して作業をする場合には、建設機械30の周辺が作業範囲になるので、判定部103は、操縦者の位置を含むように要注意領域40を設定する。別の言い方をすれば、判定部103は、操縦者の位置から所定距離未満の領域を要注意領域40として設定する。また例えば、クレーンのように建設機械30の付近ではなく、多少離れた場所に注意を払う場合には、当該多少離れた場所が作業範囲になるので、判定部103は、操縦者の位置から所定方向に所定距離だけ離れた位置を含むように要注意領域40を設定する。
【0075】
判定部103は、作業員データDTに格納された各作業員の位置情報に基づいて、上記のように設定した要注意領域40の中にいる作業員を特定し、建設機械30の操縦者とコミュニケーションが取れているか否かを判定する。要注意領域40の中にいる作業員を特定する方法と、コミュニケーションが取れているか否かを判定する方法と、については先述した通りである。
【0076】
なお、建設機械30に位置検出部26と同等の構成を持たせる場合には、判定部103は、建設機械30の位置情報に基づいて、要注意領域40を設定してもよい。例えば、ショベルカーやフォークリフトが建設機械30に相当する場合、判定部103は、建設機械30から位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて要注意領域40を設定する。また例えば、クレーンが建設機械30に相当する場合、判定部103は、クレーンのフック部や吊り荷などの位置を位置情報として取得し、当該位置情報に基づいて要注意領域40を設定する。
【0077】
また例えば、
図4の例であれば、要注意領域40は、施工現場における作業グループの作業範囲であり、特定の作業員は、作業グループの管理者である。この場合の作業範囲は、管理者の監督責任のある範囲ということができる。判定部103は、作業範囲の中に管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する。判定部103は、管理者の作業員端末20の位置情報に基づいて、要注意領域40を設定する。
【0078】
例えば、管理者の周辺が作業範囲になる場合、判定部103は、管理者の位置を含むように要注意領域40を設定する。別の言い方をすれば、判定部103は、管理者の位置から所定距離未満の領域を要注意領域40として設定する。また例えば、管理者が多少離れた場所から作業員を監視する場合には、当該多少離れた場所が作業範囲になるので、判定部103は、管理者の位置から所定方向に所定距離だけ離れた位置を含むように要注意領域40を設定する。判定部103は、作業員データDTに格納された各作業員の位置情報に基づいて、上記のように設定した要注意領域40の中にいる作業員を特定し、管理者とコミュニケーションが取れているか否かを判定する。要注意領域40の中にいる作業員を特定する方法と、コミュニケーションが取れているか否かを判定する方法と、については先述した通りである。
【0079】
なお、
図2,4-6の例では、要注意領域40が動的に設定される場合を説明したが、
また、要注意領域40は、予め定められた固定領域であってもよい。例えば、資材置場の周辺を要注意領域40とする場合には、要注意領域40は、施工現場内に定められた資材置場周辺の領域となる。また例えば、クレーンが荷を吊る場所や移動させる場所が予め決められている場合には、これらの場所を要注意領域40としてもよい。また例えば、要注意領域40は、その日の施工計画から計算されてもよいし、作業員端末20や施工責任者のコンピュータによって指定されてもよい。
【0080】
[出力部]
出力部104は、制御部11を主として実現される。出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、所定のアラートを出力する。出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定されている間は、アラートを出力せず、当該作業員が存在すると判定されたことに応じてアラートを出力する。本実施形態では、コミュニケーションツールとして会話を説明するので、出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員との会話に参加していない作業員が存在すると判定された場合に、アラートを出力することになる。
【0081】
また、本実施形態では、画面Gにおいて視覚的にアラートが出力されるので、例えば、出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、その旨を示すメッセージを表示させたり、当該作業員のアイコンの表示態様を変化させたりすることによって、アラートを出力する。表示態様とは、見た目であり、例えば、色、輝度、形状、又はサイズなどである。
【0082】
なお、アラートが視覚的に行われる場合、出力部104は、画面G以外を利用してアラートを出力してもよい。例えば、作業員端末20がLEDライトなどの発光部を含む場合には、出力部104は、発光部を発光させることによりアラートを出力してもよい。また、アラートは聴覚的に行われてもよく、出力部104は、スピーカやイヤホン等の音声出力部から、所定の音声をアラートとして出力してもよい。また、アラートは触覚的に行われてもよく、出力部104は、作業員端末20内のバイブレータを振動させることによってアラートを出力してもよい。
【0083】
例えば、
図2,5-6の例であれば、要注意領域40は建設機械30の作業範囲であり、特定の作業員は建設機械30の操縦者なので、出力部104は、作業範囲の中に操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、アラートを出力する。出力部104は、作業範囲の中に操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定されている間は、アラートを出力せず、当該作業員が存在すると判定されたことに応じてアラートを出力する。
【0084】
また例えば、
図4の例であれば、要注意領域40は作業グループの作業範囲であり、特定の作業員は作業グループの管理者なので、出力部104は、作業範囲の中に管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、アラートを出力する。出力部104は、作業範囲の中に管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定されている間は、アラートを出力せず、当該作業員が存在すると判定されたことに応じてアラートを出力する。
【0085】
本実施形態では、操縦者又は管理者などの特定の作業員の作業員端末20にアラートが出力されるので、出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、特定の作業員にアラートを出力する。出力部104は、特定の作業員にアラートを出力し、他の作業員についてはアラートを出力しないようにしてもよい。例えば、出力部104は、特定の作業員端末20に対し、アラートを出力させるための情報(例えば、画像データ、音声データ、又はバイブレータの振動を指示するコマンド)を送信する。
【0086】
なお、アラートの出力対象となるのは、他の作業員であってもよい。例えば、出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、当該作業員にアラートを出力してもよい。他にも例えば、出力部104は、要注意領域40の中にいる作業員全員にアラートを出力してもよいし、不特定多数の作業員にアラートを出力してもよい。
【0087】
また例えば、出力部104は、要注意領域40の中に存在する、特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員の位置及び名前の少なくとも一方を示す情報とともに、特定の作業員にアラートを出力してもよい。視覚的にアラートを出力するのであれば、当該情報は作業員の位置を示すアイコンであったり、作業員の名前を示すテキスト又は画像であったりする。これらの情報は、データ記憶部100に予め記憶されているものとする。なお、聴覚的にアラートを出力するのであれば、作業員の位置や名前を示す音声が出力されてよい。
【0088】
また例えば、出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在する状態から、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しない状態になった場合に、アラートの出力を停止する。出力部104は、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定されてから、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在しないと判定されるまでの間、アラートを出力する。
【0089】
なお、アラートを停止させる条件は、上記の例に限られず、任意の条件のもとで停止してよい。例えば、アラートは、一定期間出力された後に自動的に停止してもよいし、アラートの出力対象となった作業員が所定の操作を行った場合に停止してもよい。
【0090】
[リセット部]
リセット部105は、制御部11を主として実現される。リセット部105は、所定の条件に基づいて、作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットする。所定の条件とは、予め定められた条件であればよく、例えば、コミュニケーションの成立が確認されてから一定時間が経過すること、コミュニケーションが成立した作業員同士の距離(又は、操縦者や管理者などの特定の作業員との距離)が閾値以上になること、操縦者や管理者などが作業員端末20で所定の操作をすること、又は、危険な作業が行われる時刻が決められている場合に当該時刻が近づくことなどである。
【0091】
コミュニケーションの成立状態のリセットとは、作業員同士がコミュニケーションを取れている状態から取れていない状態にすること(コミュニケーションが成立している状態から成立していない状態にすること)である。本実施形態では、コミュニケーションの成立状態がコミュニケーション情報に示されるので、リセット部105は、作業員同士がコミュニケーションを取れていない状態になるように、コミュニケーション情報を設定する。
【0092】
例えば、リセット部105は、リアルタイムクロック又はGPS信号等に基づいて取得した現在日時に基づいて、上記一定時間が経過したか否かを判定したり、所定の時刻が近づいたか否かを判定したりする。なお、当該一定時間は、操縦者や管理者などにより指定可能であってもよいし、特に編集できないようにしてもよい。また例えば、リセット部105は、作業員の位置情報に基づいて、上記作業員同士の距離が閾値以上になったか否かを判定する。また例えば、リセット部105は、操縦者や管理者などの作業員端末20において、リセットするための操作が行われたか否かを判定する。
【0093】
リセット部105は、上記で説明した所定の条件が満たされたと判定されない場合には、作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットせず、上記で説明した所定の条件が満たされたと判定された場合に、作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットする。検出部102は、リセット部105によるリセットが行われた後に、作業員同士のコミュニケーションを再び検出可能となる。リセット後に作業員同士のコミュニケーションが検出された場合、検出部102は、先述した処理により、コミュニケーション情報を更新する。
【0094】
[4.本実施形態において実行される処理]
図9は、アラート出力システムSで実行される処理を示すフロー図である。
図9に示す処理は、制御部11が記憶部12に記憶されたプログラムに従って動作することによって実行される。また、以降説明する処理は、
図7に示す機能ブロックにより実行される処理の一例である。なお、サーバ10と各作業員端末20とは、予め通信可能に接続されているものとする。
【0095】
図9に示すように、まず、制御部11は、施工現場にいる各作業員の作業員端末20から、位置検出部26により検出された位置情報と、音声検出部27により検出された音声と、を取得する(S1)。作業員端末20は、位置検出部26の検出信号に基づいて位置情報を生成し、音声検出部27の検出信号に基づいて音声データを生成する。作業員端末20は、記憶部22に記憶された端末IDとともに、位置情報と音声データを送信する。なお、ここでは、サーバ10が、作業員端末20を使用する作業員を予め特定しているものとするが、作業員がどの作業員端末20を使ってもよいことにする場合には、作業員に作業員IDを入力させ、作業員端末20から当該作業員IDを受信してもよい。
【0096】
制御部11は、S1で受信した位置情報を作業員データDTに格納する(S2)。S2においては、制御部11は、作業員データDTを参照し、位置情報とともに受信した端末IDが格納されたレコードを特定し、当該レコードに位置情報を格納する。
【0097】
制御部11は、S1で受信した音声に基づいて、作業員データDTのコミュニケーション情報を更新する(S3)。S3においては、制御部11は、先述した会話検出方法に基づいて、コミュニケーションが取れている作業員の組み合わせを特定し、当該作業員の作業員IDをコミュニケーション情報に格納する。なお、S3においては、制御部11は、先述したように、所定の条件に基づいて、作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットしてもよい。例えば、制御部11は、最後にコミュニケーションの成立が確認されてから一定時間が経過した作業員の組み合わせについては、当該作業員の作業員IDをコミュニケーション情報から削除し、作業員同士のコミュニケーションが成立していない状態に戻してもよい。
【0098】
制御部11は、作業員データDTに格納された操縦者及び管理者の各々の位置情報に基づいて、要注意領域40を設定する(S4)。S4においては、制御部11は、作業員データDTを参照し、種別が操縦者又は管理者の作業員の位置情報に基づいて、要注意領域40を設定する。例えば、記憶部12には、予め施工現場の地図データ又は設計図データが記憶されており、制御部11は、地図データ又は設計図データが示す施工現場上に要注意領域40を設定する。なお、要注意領域40が予め記憶部12に定められている場合には、当該要注意領域40が読み出されて設定される。
【0099】
制御部11は、S4で設定された要注意領域40の中にいる作業員を特定する(S5)。S5においては、制御部11は、作業員データDTに格納された各作業員の位置情報を取得し、当該位置情報が示す位置が要注意領域40に含まれる作業員を特定する。
【0100】
制御部11は、施工現場における作業の終了時刻よりも前か否かを判定する(S6)。S6においては、制御部11は、リアルタイムクロック等を利用して現在日時を取得し、記憶部12に予め記憶された終了時刻が訪れたか否かを判定する。
【0101】
終了時刻よりも前であると判定された場合(S6;Y)、制御部11は、S4で設定された要注意領域40の中に、当該要注意領域40に係る操縦者又は管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在するか否かを判定する(S7)。S7においては、制御部11は、要注意領域40ごとに、当該要注意領域40の中にいる作業員のコミュニケーション情報を参照し、当該要注意領域40に係る操縦者又は管理者の作業員IDが格納されているか否かを判定する。
【0102】
コミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合(S7;Y)、制御部11は、操縦者又は管理者の作業員端末20に対し、アラートを出力する(S8)。S8においては、制御部11は、操縦者又は管理者の作業員端末20に対し、メッセージを送信したり、作業員のアイコンの表示態様を変更する旨の指示を送信したりする。なお、操縦者又は管理者の作業員端末20では、アプリケーションが予め起動しており、画面Gが表示されているものとする。アプリケーションは、作業員データDTを定期的に参照して作業員の位置情報を取得し、作業員のアイコンの位置の更新等を行う。
【0103】
一方、終了時刻よりも前であると判定されない場合(S6;N)、又は、コミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定されない場合(S7;N)、制御部11は、アラートの出力を停止する(S9)。S9においては、制御部11は、操縦者又は管理者の作業員端末20に対し、メッセージの表示停止指示を送信したり、作業員のアイコンの表示態様を元に戻す旨の指示を送信したりする。なお、アラートが出力されている作業員端末20が無い場合には、S9の処理は実行されない。
【0104】
制御部11は、施工現場における作業の終了時刻が訪れたか否かを判定する(S10)。S10の処理は、S6の処理と同様である。終了時刻が訪れたと判定されない場合(S10;N)、S1の処理に戻る。終了時刻が訪れたと判定された場合(S10;Y)、本処理は終了する。
【0105】
アラート出力システムSによれば、施工現場における作業員同士のコミュニケーションを検出し、施工現場の要注意領域40の中に、操縦者や管理者などとコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、アラートを出力することで、施工現場における安全性を担保することができる。このため、注意不足や過度な集中といった人が原因の事故の発生を防止することができる。また、余計なアラートが出力されると作業員の作業の邪魔になってしまうが、コミュニケーションが成立している場合にはアラートが出力されないので、作業員の作業の邪魔になることを防止できる。
【0106】
また、建設機械30の作業範囲である要注意領域40の中に操縦者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、アラートが出力され、建設機械30の存在を確実に気付かせることができるので、例えば、建設機械30と作業員が接触したり、吊り荷と作業員が接触したりといった事故を防止し、施工現場における安全性を担保することができる。
【0107】
また、管理者が管理する作業グループの作業範囲である要注意領域40の中に管理者とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、アラートが出力され、管理者による注意に確実に気付かせることができるので、作業グループに分かれて作業が行われる場合の安全性を担保することができる。
【0108】
また、要注意領域の中にいる、特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員に対してアラートが出力されることで、コミュニケーションが取れておらず、危険が及ぶ可能性のある作業員に確実に気付かせることができる。
【0109】
また、特定の作業員に対してアラートが出力されることで、特定の作業員に声掛け等をさせて、コミュニケーションが取れていない作業員に確実に気付かせることができる。
【0110】
また、施工現場の要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在すると判定された場合に、当該作業員の位置及び名前の少なくとも一方を示す情報とともにアラートが出力されるので、どの作業員のコミュニケーションが取れていないかを特定しやすくなる。その結果、作業員への声掛け等をしやすくなり、施工現場における安全性を効果的に担保することができる。
【0111】
また、要注意領域40の中に特定の作業員とコミュニケーションが取れていない作業員が存在する状態から存在しない状態になった場合に、アラートの出力を停止することで、いつまでもアラートが出力されて作業の邪魔になるといったことを防止し、作業をし易くなる。
【0112】
また、所定の条件に基づいて、作業員同士のコミュニケーションの成立状態をリセットすることで作業員の声掛けを徹底させることができる。例えば、一定時間が経過するたびにリセットすることで、一定時間ごとに作業員の声掛けを徹底させることができる。また例えば、コミュニケーションが成立した作業員同士の距離が閾値以上になった場合にリセットすることで、いったん持ち場を離れて戻ってきた作業員に対する声掛けを徹底させることができる。また例えば、操縦者や管理者などが所定の操作をした場合にリセットすることで、操縦者や管理者などが必要と感じた場面で声掛けを徹底させることができる。また例えば、所定の時刻が近づいたときにリセットすることで、危険な作業をする時刻などが近づいたときに声掛けを徹底させることができる。
【0113】
また、コミュニケーションとして、ジェスチャなどよりも確実性の高い会話をさせることで、施工現場における安全性を効果的に担保することができる。
【0114】
[5.変形例]
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0115】
例えば、実施形態では、操縦者又は管理者と直接的にコミュニケーションが成立しているときに、コミュニケーションが取れていると判定される場合を説明したが、操縦者又は管理者と間接的にコミュニケーションが成立していれば、コミュニケーションが取れていると判定されるようにしてもよい。例えば、
図2の例であれば、作業員Aは作業員BとDと直接的にコミュニケーションが取れており、作業員Cは、作業員Aの声掛けには応じなかったが、作業員B又はDと会話をしている場合、作業員Cは、作業員B又はDを通じて建設機械30の存在に気付くことがある。このように、判定部103は、他の作業員を介して特定の作業員とのコミュニケーションが成立していれば、コミュニケーションが取れていると判定してもよい。
【0116】
また例えば、複数のコミュニケーションツールが組み合わされてもよい。例えば、操縦者の声掛けに対して作業員が手を上げることによってコミュニケーションが取られてもよい。また例えば、操縦者によるチャットメッセージの入力に対して作業員が発話することによってコミュニケーションが取られてもよい。また例えば、マイクやヘッドフォンなどを利用した無線通信又は電話によってコミュニケーションが取られてもよい。
【0117】
また例えば、実施形態では、サーバ10によって各機能が実現される場合を説明したが、アラート出力システムSに複数のコンピュータが含まれている場合に、各コンピュータで機能が分担されてもよい。例えば、データ記憶部100がサーバ10とは異なるデータベースサーバによって実現されてもよい。また例えば、作業員端末20によって各機能が実現されてもよい。また例えば、サーバ10と作業員端末20との間で機能が分担されてもよい。また例えば、複数のサーバ10が存在する場合に、これら複数のサーバ10が連携することによって機能が分担されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
S アラート出力システム、10 サーバ、20 作業員端末、11,21 制御部、12,22 記憶部、13,23 通信部、24 操作部、25 表示部、26 位置検出部、27 音声検出部、30 建設機械、40 要注意領域、100 データ記憶部、101 位置情報取得部、102 検出部、103 判定部、104 出力部、105 リセット部、G 画面、DT 作業員データ。