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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60H1/34 651B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019093659
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020185966
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】木村 文彦
(72)【発明者】
【氏名】神尾 建一
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001663(JP,A)
【文献】特開2011-156930(JP,A)
【文献】特開2016-013758(JP,A)
【文献】特開2013-086659(JP,A)
【文献】実開昭62-160255(JP,U)
【文献】実開平03-073852(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が通過する通風路が内部に形成され、この空気が吹き出す吹出口を端部に有するとともに、前記吹出口に向かい前記通風路の通気方向と交差する所定方向に縮小する縮小部を有するケース体と、
このケース体の内部の通風路を前記所定方向に少なくとも3つに分割する隔壁と、
この隔壁により分割された通風路の流量を調整する調整部材とを備え、
前記隔壁は、前記吹出口側の端部が、前記吹出口に向かい前記所定方向に傾斜され、
前記調整部材は、前記隔壁により分割された前記通風路の流量を回動角度に応じて調整する回動フィンであり、前記隔壁側の一端部とその一端部に対して前記通気方向の上流側に位置する他端部との中間位置よりも前記一端部側に回動軸を有し、回動操作時に前記他端部が前記ケース体に近接するとともに前記一端部が前記回動軸を基準として前記所定方向において前記他端部とは反対側に位置する前記隔壁に近接する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
隔壁の吹出口側の端部は、前記吹出口に向かいケース体の縮小部に沿って傾斜されている
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
ケース体は、隔壁に対し吹出口とは反対側に、前記吹出口に向かい所定方向に拡大する拡大部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
隔壁の他端部は、吹出口から離れる方向に向かい所定方向に縮小されている
ことを特徴とする請求項3記載の風向調整装置。
【請求項5】
隔壁の他端部は、調整部材の端部に対し吹出口から離れる方向に延びて配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の風向調整装置。
【請求項6】
調整部材は、最大回動操作時に一端部が隔壁に近接し、他端部がケース体に近接することで、前記一端部が近接する前記隔壁と前記ケース体との間の通風路以外の通風路を閉塞する
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の風向調整装置。
【請求項7】
格子状に形成されて吹出口を覆う格子部材を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体の内部の通風路が複数に分割された風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソールなどの車両の各部に設置され、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
近年、デザイン性を重視した風向調整装置としては、横幅が縦幅に比べ相当大きい、薄型のものが求められることがある。その場合、風向を制御するためのフィンを多数設置するスペースを取ることが難しい。そこで、風路内を複数に分割するとともに、吹出口を中心側に向かい縮小して、分割された各風路に流量を調整する調整体を配置したもの(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、風路内を複数に分割し、各流路の通気を調整する調整体を備え、隔壁の吹出口に対向する下流端部を縮小するとともに、中央の風路の吹出口に臨む位置に風向調整用のフィンを配置したもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-86659号公報 (第5-8頁、図3
【文献】特開2016-53426号公報 (第8-13頁、図1-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1記載の風向調整装置の場合、中央部の風路を挟む一側及び他側の風路を通過する空調風同士が吹出口の中央部に向かって絞り込まれる。そのため、中央部の風路を通過して吹出口から吹き出される直進風を、これらの空調風により相殺しないようにするための構成を別途必要とする。
【0006】
また、特許文献2記載の風向調整装置の場合、風向は基本的に吹出口のフィンのみで制御するため、風向制御をより向上することが望まれる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素な構成で良好な風向制御が可能な風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の風向調整装置は、空気が通過する通風路が内部に形成され、この空気が吹き出す吹出口を端部に有するとともに、前記吹出口に向かい前記通風路の通気方向と交差する所定方向に縮小する縮小部を有するケース体と、このケース体の内部の通風路を前記所定方向に少なくとも3つに分割する隔壁と、この隔壁により分割された通風路の流量を調整する調整部材とを備え、前記隔壁は、前記吹出口側の端部が、前記吹出口に向かい前記所定方向に傾斜され、前記調整部材は、前記隔壁により分割された前記通風路の流量を回動角度に応じて調整する回動フィンであり、前記隔壁側の一端部とその一端部に対して前記通気方向の上流側に位置する他端部との中間位置よりも前記一端部側に回動軸を有し、回動操作時に前記他端部が前記ケース体に近接するとともに前記一端部が前記回動軸を基準として前記所定方向において前記他端部とは反対側に位置する前記隔壁に近接するものである。
【0009】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、隔壁の吹出口側の端部は、前記吹出口に向かいケース体の縮小部に沿って傾斜されているものである。
【0010】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、ケース体は、隔壁に対し吹出口とは反対側に、前記吹出口に向かい所定方向に拡大する拡大部を有するものである。
【0011】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項3記載の風向調整装置において、隔壁の他端部は、吹出口から離れる方向に向かい所定方向に縮小されているものである。
【0012】
請求項5記載の風向調整装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の風向調整装置において、隔壁の他端部は、調整部材の端部に対し吹出口から離れる方向に延びて配置されているものである。
【0013】
請求項6記載の風向調整装置は、請求項1ないし5いずれか一記載の風向調整装置において、調整部材は、最大回動操作時に一端部が隔壁に近接し、他端部がケース体に近接することで、前記一端部が近接する前記隔壁と前記ケース体との間の通風路以外の通風路を閉塞するものである。
【0014】
請求項7記載の風向調整装置は、請求項1ないし6いずれか一記載の風向調整装置において、格子状に形成されて吹出口を覆う格子部材を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の風向調整装置によれば、ケース体に吹出口に向かい通風路の通気方向と交差する所定方向に縮小する縮小部を形成するとともに、ケース体の内部の通風路を所定方向に少なくとも3つに分割する隔壁の吹出口側の端部を、吹出口に向かい所定方向に傾斜させ、かつ、調整部材の回動軸を隔壁側の一端部とその反対側の他端部との中間位置よりも一端部側として、調整部材の回動操作時に、他部がケース体に近接して一端部が所定方向において回動軸を基準として他端部とは反対側に位置する隔壁に近接するようにすることで、調整部材の回動によって、分割された通風路に配分された風の吹出口の位置での互いの干渉が効果的に制御され、簡素な構成で良好な風向制御が可能となる。
【0016】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、隔壁の吹出口側の端部が吹出口に向かいケース体の縮小部に沿って傾斜されていることにより、隔壁により分割された通風路を通過する風が縮小部と隔壁の吹出口側の端部との間で整流されるので、風向制御性を向上できる。
【0017】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、隔壁に対し吹出口とは反対側に、吹出口に向かい所定方向に拡大する拡大部をケース体に有することにより、調整部材による流量の調整が拡大部により補助されて確実に行われ、風向制御性を向上できる。
【0018】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項3記載の風向調整装置の効果に加えて、隔壁の他端部を、吹出口から離れる方向に向かい所定方向に縮小することにより、調整部材による流量の調整が、拡大部とともに、隔壁の他端部によって補助されて確実に行われ、風向制御性をより向上できる。
【0019】
請求項5記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、調整部材の回動角度が小さくても分割された風路への流量の配分を設定することが可能となるため、調整部材を小型化することが可能になる。
【0020】
請求項6記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし5いずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、吹出口から吹き出される空調風の方向を、調整部材の端部が近接する隔壁とケース体との間の通風路を通過する空調風の気流方向に偏らせることができる。
【0021】
請求項7記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし6いずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、吹出口を格子部材で覆うことにより、吹出口から異物が飛び出すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置の断面図である。
図2図1の一部の拡大図である。
図3】同上風向調整装置の斜視図である。
図4】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置の断面図である。
図5】本発明の第3の実施の形態の風向調整装置の断面図である。
図6】本発明の第4の実施の形態の風向調整装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1において、10は風向調整装置である。風向調整装置10は、例えば自動車などの車両に備えられた空調装置などからの風の向き、すなわち風向を調整する空調用のものである。風向調整装置10は、図示しないが、自動車の内装部材、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール、オーバーヘッドコンソール部、センタピラーあるいはドアトリムなどの被設置部に設置されている。
【0025】
本実施の形態の風向調整装置10は、薄型に形成されている。つまり、風向調整装置10は、長手方向と短手方向とを有している。風向調整装置10は、空調風が通過する通風路11を内部に形成するケース体12を備えている。以下、風向調整装置10は、説明を明確にするために、通風路11を通過する空調風の下流側、つまり乗員側を一端側または前側(矢印FR方向)、上流側を他端側または後側(矢印RR方向)とし、前後方向に対して交差(直交)する長手方向の一方側及び他方側を左右方向とし、短手方向の一方側及び他方側を上下方向(矢印U方向及び矢印D方向)として説明するが、これらの方向は風向調整装置10の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0026】
ケース体12は、筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース体12は、角筒状に形成されている。また、ケース体12の一端部である前端部には、通風路11の下流端となる吹出口15が形成されている。吹出口15は、ケース体12の断面の長手方向に沿って長手状に形成されている。つまり、吹出口15は、左右方向に長手状に形成されている。本実施の形態において、吹出口15は、横長の長方形状である。さらに、ケース体12の他端部である後端部は、空調風をダクトなどの風路から通風路11に受け入れる受入口16となっている。受入口16から吹出口15へと空調風が通風路11を通過する。また、ケース体12には、吹出口15に向かい、つまり下流側に向かい所定方向である短手方向、本実施の形態では上下方向に縮小する縮小部17が形成されている。本実施の形態において、ケース体12の縮小部17を除く部分は、断面形状が一定、または、略一定の一般部18となっている。さらに、ケース体12の一端部である前端部には、意匠部19が形成されている。ケース体12は、複数のケース部材に分割されていてもよい。
【0027】
縮小部17は、通風路11の断面積を上流側から下流側に向かい縮小するように形成されている。縮小部17は、ケース体12の一端部に位置し、一端部が吹出口15と連なっている。縮小部17は、吹出口15を挟んで、ケース体12の軸方向に対し傾斜する(一方及び他方の)ガイド面17a,17bを備えている。ガイド面17a,17bは、吹出口15に向かい、互いに接近するように傾斜している。ガイド面17a,17bは、吹出口15の長手方向の縁部に連なっている。本実施の形態において、ガイド面17a,17bは、吹出口15の長辺部に連なっている。すなわち、ガイド面17a,17bは、吹出口15の長手方向に沿って形成されている。また、本実施の形態において、ガイド面17a,17bは、一定の傾斜角度で傾斜するテーパ面となっているが、これに限られず、傾斜角度が除変する湾曲面でもよい。
【0028】
そして、縮小部17と連なる吹出口15は、本実施の形態において、空調風の吹出し方向に向かい拡大されるように形成されている。つまり、吹出口15は、縮小部17のガイド面17a,17bと連なる(一方及び他方の)吹出しガイド面15a,15bを備えている。吹出しガイド面15a,15bは、吹出口15の長辺部をなしている。すなわち、吹出口15の長辺部全体が吹出しガイド面15a,15bとなっている。吹出しガイド面15a,15bは、吹出口15の長手方向に沿って配置されている。吹出しガイド面15a,15bは、ガイド面17a,17bに対し、屈曲状に連なっている。すなわち、吹出しガイド面15a,15bは、縮小部17のガイド面17a,17bに対し、(一方及び他方の)狭窄部15c,15dの位置で連なっている。吹出口15は、狭窄部15c,15dの位置で所定方向である上下方向に最も狭くなっており、吹出しガイド面15a,15bにより前方向に向かい拡大されている。すなわち、狭窄部15c,15dにより、吹出口15の所定方向である上下方向の最小寸法が設定されている。本実施の形態において、吹出しガイド面15a,15bは、一定の傾斜角度で傾斜するテーパ面となっているが、これに限られず、傾斜角度が除変する湾曲面でもよい。図示される例では、吹出しガイド面15a,15bは、吹出口15の所定方向の中心、つまり本実施の形態では上下方向の中心を挟んで反対側のガイド面17a,17bと平行、または、略平行に傾斜している。つまり、吹出しガイド面15aは、ガイド面17bと平行、または、略平行に傾斜し、吹出しガイド面15bは、ガイド面17aと平行、または、略平行に傾斜する。
【0029】
一般部18は、縮小部17の他端部と連なって形成されている。本実施の形態において、一般部18は、断面積が一定の角筒状となっている。また、本実施の形態において、一般部18の他端部、つまり縮小部17と反対側の端部が受入口16となっている。
【0030】
意匠部19は、吹出口15の周囲に面状に拡がり、例えば自動車の内装部材の一部などをなす部分である。意匠部19を貫通して吹出口15が形成されている。意匠部19は、ケース体12の軸方向と交差または直交する方向に延びる板状に形成されている。本実施の形態において、意匠部19は、吹出口15の吹出しガイド面15a,15bと連なっている。意匠部19は、ケース体12と一体でもよいし別体でもよい。
【0031】
また、ケース体12の内部、つまり通風路11には、隔壁22が配置されている。隔壁22は、固定フィンとも呼び得るもので、ケース体12に対し非可動の板状に形成されている。隔壁22は、通風路11をケース体12の所定方向である短手方向、本実施の形態では上下方向に少なくとも3つに分割する。また、隔壁22は、通風路11を所定方向である短手方向、本実施の形態では上下方向に対称、または、略対称に分割する。本実施の形態において、隔壁22は、通風路11を3つに分割する。つまり、本実施の形態において、隔壁22には、一方及び他方の隔壁25,26が設定されている。一方の隔壁25とケース体12との間、一方の隔壁25と他方の隔壁26との間、及び他方の隔壁26とケース体12との間に、それぞれ分岐風路11a,11b,11cが形成される。分岐風路11a,11b,11cは、吹出口15に対し、所定方向に対称、または、略対称に配置される。
【0032】
一方及び他方の隔壁25,26は、ケース体12の所定方向である短手方向、本実施の形態では上下方向に並んで互いに離れて配置される。すなわち、一方及び他方の隔壁25,26は、ケース体12の軸方向、言い換えると通風路11を通過する空調風の流れ方向に互いにずれることなく配置されている。一方及び他方の隔壁25,26は、ケース体12の中心軸を挟んで位置している。また、一方及び他方の隔壁25,26は、所定方向である上下方向に対称、または、略対称に位置している。一方及び他方の隔壁25,26は、ケース体12の一端部寄りに配置されている。一方及び他方の隔壁25,26は、吹出口15に対して通風路11の上流側に離れた位置で通風路11の下流側に配置されている。また、一方及び他方の隔壁25,26は、ケース体12内において、少なくとも一部が縮小部17の内方に配置されている。すなわち、一方及び他方の隔壁25,26は、縮小部17に対し通風路11を通過する空調風の上流下流方向、つまりケース体12の軸方向である前後方向に一部がオーバーラップする位置に配置されている。本実施の形態において、一方及び他方の隔壁25,26は、一端部がそれぞれ縮小部17の内方に配置されている。また、一方及び他方の隔壁25,26は、他端部がそれぞれ一般部18の内方に配置されている。つまり、本実施の形態の一方及び他方の隔壁25,26は、縮小部17から一般部18に亘り延びている。さらに、一方及び他方の隔壁25,26は、所定方向である上下方向の最大距離が、吹出口15の所定方向である上下方向の最小寸法よりも大きく設定されている。つまり、分岐風路11bは、吹出口15よりも所定方向である上下方向に広い部分を有している。
【0033】
また、隔壁22の吹出口15側の一端部は、吹出口15に向かい縮小部17に沿って傾斜されている。本実施の形態において、一方及び他方の隔壁25,26は、吹出口15側の一端部が、縮小部17に沿って傾斜する一方及び他方の傾斜部28,29となっている。一方及び他方の傾斜部28,29は、本実施の形態において、縮小部17のガイド面17a,17bと平行、または、略平行に傾斜している。つまり、一方及び他方の傾斜部28,29は、吹出口15に向かい互いに接近するように傾斜している。
【0034】
一方の傾斜部28は、分岐風路11a側が(第一の)一方の整流面28a、分岐風路11b側が(第二の)一方の整流面28bとなっている。一方の整流面28aが、縮小部17のガイド面17aに対向して位置している。このため、分岐風路11aの下流側は、吹出口15に向かうように傾斜している。
【0035】
他方の傾斜部29は、分岐風路11c側が(第一の)他方の整流面29a、分岐風路11b側が(第二の)他方の整流面29bとなっている。他方の整流面29aが、縮小部17のガイド面17bに対向して位置している。このため、分岐風路11cの下流側は、吹出口15に向かうように傾斜している。
【0036】
そして、図2に示すように、一方の傾斜部28の一方の整流面28aは、吹出口15の吹出しガイド面15bと平行、または、略平行であり、かつ、同一面上にない位置にある。一方の傾斜部28の一方の整流面28aは、吹出口15の吹出しガイド面15bに対し、吹出口15の中心側にずれて位置している。すなわち、一方の整流面28aは、その仮想延長面が、吹出しガイド面15bに対し吹出口15の内側となる位置となっている。
【0037】
同様に、他方の傾斜部29の他方の整流面29aは、吹出口15の吹出しガイド面15aと平行、または、略平行であり、かつ、同一面上にない位置にある。他方の傾斜部29の他方の整流面29aは、吹出口15の吹出しガイド面15bに対し、吹出口15の中心側にずれて位置している。すなわち、他方の整流面29aは、その仮想延長面が、吹出しガイド面15aに対し吹出口15の内側となる位置となっている。
【0038】
さらに、本実施の形態において、一方及び他方の傾斜部28,29の一端部間の距離は、吹出口15の所定方向である上下方向の最小寸法より小さくなっている。
【0039】
また、図1に示すように、ケース体12の内部、つまり通風路11には、調整部材31が可動的に配置されている。調整部材31は、隔壁22により分割された通風路11の流量を動作に応じて調整する。すなわち、調整部材31は、分岐風路11a,11b,11cを通過する空調風の流量を動作に応じて調整する。また、調整部材31は、空調風の流路切り換えのガイドの機能を有している。本実施の形態において、調整部材31は、回動角度に応じて空調風の流量を調整する板状の回動フィンである。調整部材31は、図3に示す操作部32により操作されることで所定方向の一方及び他方、本実施の形態では上下方向に回動するようになっている。操作部32は、本実施の形態において、意匠部19にて吹出口15の側方に形成された開口部33から露出して乗員により操作可能となっている。図示される例において、操作部32は、例えば操作ダイヤルであるが、操作レバーや摘みなどでもよい。
【0040】
図1に示す調整部材31は、隔壁22に対し少なくとも一部が通風路11の上流側に位置する。調整部材31は、一端部31aを隔壁22側、つまり通風路11の下流側とし、他端部31bをその反対側、つまり通風路11の上流側として配置されている。また、調整部材31は、少なくとも他端部31bが隔壁22よりも通風路11の上流側に位置する。調整部材31の他端部31bは、調整部材31を最大に回動させた状態で一般部18に対し当接または近接するようになっている。
【0041】
さらに、本実施の形態において、調整部材31は、隔壁22の間に位置する。すなわち、調整部材31は、ケース体12の所定方向である短手方向、本実施の形態では上下方向において、一方及び他方の隔壁25,26の中間、または、略中間の位置にある。調整部材31は、ケース体12の中心軸を含む位置に配置されている。調整部材31の一端部31aは、分岐風路11bに挿入されていてもよいし、分岐風路11bより上流にあってもよい。
【0042】
また、調整部材31の回動軸31cは、隔壁22側の一端部31aとその反対側の他端部31bとの中間位置よりも一端部31a側に配置されている。つまり、回動軸31cから一端部31aまでの距離よりも、回動軸31cから他端部31bまでの距離が長い。すなわち、調整部材31は、回動中心が偏芯されている。
【0043】
次に、第1の実施の形態の作用を説明する。
【0044】
調整部材31を一方向に回動させた状態、例えば図1の二点鎖線L1に示すように、調整部材31により分岐風路11b,11cの流量を抑制する状態とすると、受入口16から通風路11を通過する空調風は、分岐風路11aの流量が大きくなり、縮小部17のガイド面17a及び隔壁22の一方の整流面28a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流(矢印W1に示す)が支配的となり、縮小部17のガイド面17b及び隔壁22の他方の整流面29a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流(矢印W2に示す)の吹出口15の位置での干渉が弱くなる。このため、吹出口15から吹き出される空調風の方向が、分岐風路11aを通過する空調風の気流方向に偏る。つまり、本実施の形態では、吹出口15から下方に向かい空調風が吹き出される。
【0045】
一方、調整部材31を他方向に回動させた状態、例えば図1の二点鎖線L2に示すように、調整部材31により分岐風路11a,11bの流量を抑制する状態とすると、受入口16から通風路11を通過する空調風は、分岐風路11cの流量が大きくなり、縮小部17のガイド面17b及び隔壁22の他方の整流面29a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流(矢印W2に示す)が支配的となり、縮小部17のガイド面17a及び隔壁22の一方の整流面28a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流(矢印W1に示す)の吹出口15の位置での干渉が弱くなる。このため、吹出口15から吹き出される空調風の方向が、分岐風路11cを通過する空調風の気流方向に偏る。つまり、本実施の形態では、吹出口15から上方に向かい空調風が吹き出される。
【0046】
さらに、図1の実線に示すように、調整部材31を回動方向の中立位置とした状態では、受入口16から通風路11を通過する空調風は、各分岐風路11a,11b,11cにそれぞれ流入する。このとき、分岐風路11aに流入した空調風は、縮小部17のガイド面17a及び隔壁22の一方の整流面28a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流(矢印W1に示す)となり、分岐風路11bに流入した空調風は、縮小部17のガイド面17b及び隔壁22の他方の整流面29a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流(矢印W2に示す)となるが、これらの流量が略等しくなることから、吹出口15の上流側の隔壁22の間の位置でこれらが互いに相殺しあう。また、分岐風路11bに流入した空調風は、隔壁22の一方の整流面28bと他方の整流面29bとにより絞り込まれた状態で吹出口15へと直線状に向かう。そのため、分岐風路11bに流入した空調風(矢印W3に示す)は、縮小部17のガイド面17a及び隔壁22の一方の整流面28a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流と、縮小部17のガイド面17b及び隔壁22の他方の整流面29a間に沿って整流されて吹出口15に向かい流れる気流とに相殺されにくく、吹出口15から直線状に吹き出される。つまり、本実施の形態では、吹出口15から直進風が吹き出される。
【0047】
そして、調整部材31の回動角度に応じて、上記の分岐風路11a,11b,11cへの空調風の配分が調整されて変化するため、これらの配分比によって、互いの気流が吹出口15の位置で干渉しあうことで吹出口15から吹き出される空調風の風向が制御される。
【0048】
このように、第1の実施の形態によれば、ケース体12に吹出口15に向かい所定方向に縮小する縮小部17を形成するとともに、ケース体12の内部の通風路11を所定方向に少なくとも3つに分割する隔壁22の吹出口15側の端部を、吹出口15に向かい所定方向に傾斜させることで、調整部材31によって、分割された通風路である分岐風路11a,11b,11cに配分された空調風の吹出口15の位置での互いの干渉が効果的に制御され、簡素な構成で良好な風向制御が可能となる。そのため、省スペースで機構が成立するとともに、風向制御のための機構部品点数を抑制できるので、低コストで製造できる。
【0049】
隔壁22の吹出口15側の端部が吹出口15に向かいケース体12の縮小部17に沿って傾斜されていることにより、隔壁22により分割された通風路である分岐風路11a,11cを通過する空調風が縮小部17と隔壁22の吹出口15側の端部(一方及び他方の傾斜部28,29)との間で整流されるので、風向制御性を向上できる。
【0050】
しかも、一方の傾斜部28の一方の整流面28a、及び、他方の傾斜部29の他方の整流面29aは、吹出口15の吹出しガイド面15b,15aと平行、または、略平行であり、かつ、一方の整流面28a及び他方の整流面29aの仮想延長面が、吹出しガイド面15b,15aに対し吹出口15の内側となる位置であるため、縮小部17と隔壁22の吹出口15側の端部(一方及び他方の傾斜部28,29)との間で整流された風が吹出口15の縁部に吹き付けられず、損失が少ない状態で排出可能である。
【0051】
調整部材31の回動軸31cを隔壁22側の一端部31aとその反対側の他端部31bとの中間位置よりも一端部31a側とすることにより、調整部材31の回動角度が小さくても、つまり角度が浅くても分岐風路11a,11b,11cのそれぞれへの流量の調整が可能となり、通気抵抗の急激な増加を抑制できる。したがって、空調風の圧力損失を抑制でき、良好な風向制御が可能になる。
【0052】
調整部材31が吹出口15に対して通風路11の上流側に離れて位置することで、吹出口15から風向調整装置10の内部構造が見えにくく、見栄えがよい。
【0053】
また、縮小部17によって吹出口15を薄くできるため、風向調整装置10を配置するパネルのデザインの自由度を向上できる。
【0054】
次に、第2の実施の形態について図4を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
本実施の形態の風向調整装置10は、ケース体12に、隔壁22に対し吹出口15とは反対側、つまり通風路11の上流側に拡大部35が形成されているものである。すなわち、本実施の形態のケース体12は、拡大部35の位置で括れている。
【0056】
拡大部35は、通風路11の断面積を上流側から下流側に向かい拡大するように形成されている。拡大部35は、ケース体12の他端部に位置している。本実施の形態において、拡大部35は、一般部18に対し、縮小部17とは反対側である他端部に連なって位置している。また、拡大部35は、通風路11を通過する空調風の上流下流方向、つまりケース体12の軸方向である前後方向において、調整部材31とオーバーラップする範囲に配置されている。さらに、拡大部35は、調整部材31の回動軸31cに対し、少なくとも吹出口15とは反対側である後側(下流側)に延びている。本実施の形態において、拡大部35は、ケース体12の軸方向すなわち前後方向において、調整部材31の一端部31aと他端部31bとの間の範囲にある。
【0057】
また、拡大部35は、ケース体12の軸方向に対し傾斜する(一方及び他方の)傾斜面35a,35bを備えている。傾斜面35a,35bは、受入口16に向かい、互いに接近するように傾斜している。傾斜面35a,35bの傾斜角度は、任意に設定してよいが、本実施の形態においては、ガイド面17a,17bと反対方向に同角度となるように設定されている。つまり、本実施の形態において、傾斜面35aは、縮小部17のガイド面17bと平行、または、略平行となっており、傾斜面35bは、縮小部17のガイド面17aと平行、または、略平行となっている。なお、本実施の形態において、傾斜面35a,35bは、一定の傾斜角度で傾斜するテーパ面となっているが、これに限られず、傾斜角度が除変する湾曲面でもよい。
【0058】
また、本実施の形態において、ケース体12には、拡大部35に対し、一般部18とは反対側に連なる上流側一般部36が形成されている。上流側一般部36は、拡大部35の他端部と連なって形成されている。本実施の形態において、上流側一般部36は、断面積が一定の角筒状となっている。上流側一般部36は、一般部18よりも所定方向である短手方向、本実施の形態では上下方向の寸法が小さく設定されている。また、本実施の形態において、上流側一般部36の他端部、つまり拡大部35と反対側の端部が受入口16となっている。また、調整部材31の他端部31bは、調整部材31を最大に回動させた状態で上流側一般部36に対し当接または近接するようになっている。
【0059】
そして、調整部材31を一方向に回動させた状態、例えば図4の二点鎖線L1に示すように、調整部材31により分岐風路11b,11cの流量を抑制する状態としたときに、調整部材31の傾斜と、その傾斜に沿う拡大部35の傾斜面35aの傾斜とにより、分岐風路11aへと確実に空調風が整流される。
【0060】
同様に、調整部材31を他方向に回動させた状態、例えば図4の二点鎖線L2に示すように、調整部材31により分岐風路11a,11bの流量を抑制する状態としたときに、調整部材31の傾斜と、その傾斜に沿う拡大部35の傾斜面35bの傾斜とにより、分岐風路11cへと確実に空調風が整流される。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、隔壁22に対し吹出口15とは反対側に、吹出口15に向かい所定方向に拡大する拡大部35をケース体12に有することにより、調整部材31による流量の調整が拡大部35により補助されて確実に行われ、風向制御性を向上できる。
【0062】
次に、第3の実施の形態について図5を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の風向調整装置10は、第2の実施の形態の風向調整装置10において、隔壁22の吹出口15とは反対側の他端部が、調整部材31の一端部31aに対し、吹出口15から離れる方向、つまり通風路11の上流側に延びているものである。本実施の形態では、一方及び他方の隔壁25,26の他端部と、調整部材31の一端部31aとが、通風路11の上流下流方向、つまり前後方向にオーバーラップして位置している。
【0064】
また、隔壁22の吹出口15とは反対側の他端部は、吹出口15から離れる方向、つまり通風路11の上流側に向かい所定方向に縮小するように傾斜されている。本実施の形態では、一方及び他方の隔壁25,26の他端部が、拡大部35に沿って傾斜する一方及び他方の整流傾斜部38,39となっている。一方及び他方の整流傾斜部38,39は、本実施の形態において、拡大部35の傾斜面35a,35bと平行、または、略平行に傾斜している。つまり、一方及び他方の整流傾斜部38,39は、吹出口15から離れる方向に向かい互いに接近するように傾斜している。一方及び他方の整流傾斜部38,39は、調整部材31の回動角度を規制する規制部となっている。一方及び他方の整流傾斜部38,39は、調整部材31が回動した状態で調整部材31の一端部31aに近接して位置する。一方及び他方の整流傾斜部38,39は、調整部材31が回動した状態で調整部材31の一端部31aが当接するストッパの機能を有していてもよい。
【0065】
一方の整流傾斜部38は、分岐風路11a側が(第一の)一方の整流傾斜面38a、分岐風路11b側が(第二の)一方の整流傾斜面38bとなっている。一方の整流傾斜面38aが、拡大部35の傾斜面35aに対向して位置している。
【0066】
他方の整流傾斜部39は、分岐風路11c側が(第一の)他方の整流傾斜面39a、分岐風路11b側が(第二の)他方の整流傾斜面39bとなっている。他方の整流傾斜面39aが、拡大部35の傾斜面35bに対向して位置している。
【0067】
そして、調整部材31を一方向に回動させた状態、例えば図5の二点鎖線L1に示すように、調整部材31により分岐風路11b,11cの流量を抑制する状態としたときに、調整部材31の傾斜と、その傾斜に沿う一方の整流傾斜部38の一方の整流傾斜面38aと拡大部35の傾斜面35aの傾斜とにより、分岐風路11aへと確実に空調風が整流される。
【0068】
同様に、調整部材31を他方向に回動させた状態、例えば図5の二点鎖線L2に示すように、調整部材31により分岐風路11a,11bの流量を抑制する状態としたときに、調整部材31の傾斜と、その傾斜に沿う他方の整流傾斜部39の他方の整流傾斜面39aと拡大部35の傾斜面35bの傾斜とにより、分岐風路11cへと確実に空調風が整流される。
【0069】
このように、本実施の形態によれば、隔壁22の他端部を、吹出口15から離れる方向に向かい所定方向に縮小することにより、調整部材31による流量の調整が、拡大部35とともに、隔壁22の他端部(一方及び他方の整流傾斜部38,39)によって補助されて確実に行われ、風向制御性をより向上できる。
【0070】
また、この場合には、調整部材31の回動角度が小さくても分岐風路11a,11b,11cへの空調風の流量の配分を設定することが可能となるため、調整部材31を小型化することが可能になる。
【0071】
なお、上記の第1の実施の形態において、隔壁22の吹出口15とは反対側の他端部を、調整部材31の一端部31aに対し、吹出口15から離れる方向、つまり通風路11の上流側に延ばして形成してもよい。
【0072】
また、上記の各実施の形態において、図6に示す第4の実施の形態のように、吹出口15を、格子部材である格子状のパネル41で覆い、吹出口15から異物が飛び出すことを防止してもよい。
【0073】
さらに、上記の各実施の形態において、風向調整装置10は、例えばコンソールボックスの後端部に設けられる後部座席の乗員用としても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 風向調整装置
11 通風路
12 ケース体
15 吹出口
17 縮小部
22 隔壁
31 調整部材
31a 一端部
31b 他端部
31c 回動軸
35 拡大部
41 格子部材であるパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6