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  • 特許-非乳化系油性化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】非乳化系油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20231201BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231201BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20231201BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231201BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/895
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019104992
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020196690
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ガンキャンピン
(72)【発明者】
【氏名】渡辺つかさ
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269676(JP,A)
【文献】特開2010-163373(JP,A)
【文献】特開2010-163375(JP,A)
【文献】特開2016-210764(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031079(WO,A1)
【文献】Sun-Block, MINTEL GNPD [ONLINE], 2007.02,[検索日 2023.08.18],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.661066)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/891
A61K 8/02
A61K 8/31
A61K 8/37
A61K 8/40
A61K 8/49
A61K 8/895
A61Q 17/04
A61Q 19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5~10質量%の非乳化型シリコーンエラストマー(但し、粉体の処理に使用される架橋型オルガノポリシロキサンを除く。)と、
9~25質量%の紫外線吸収剤と、
0.5~3質量%の融点が60~95℃のワックスと、
を含み、
前記非乳化型シリコーンエラストマーが、ジメチコンクロスポリマーである、
非乳化系油性化粧料。
【請求項2】
硬度が1~25gである請求項1記載の非乳化系油性化粧料。
【請求項3】
前記ワックスが炭化水素ワックスである請求項1または2記載の非乳化系油性化粧料。
【請求項4】
前記非乳化型シリコーンエラストマーがイソドデカン希釈物である請求項1~いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
【請求項5】
シリコーンエラストマー型界面活性剤をさらに含む請求項1~いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
【請求項6】
前記非乳化型シリコーンエラストマーの含有量が化粧料全量に対して1~7質量%である請求項1~いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非乳化系の油性化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、太陽光線中の紫外線をカットし、紫外線による悪影響から肌を守
ることを目的としており、その基剤としては、水性成分を外相(連続相)とする水中油型乳化化粧料と油性成分を外相(連続相)とする油中水型乳化化粧料の乳化タイプと、油性化粧料の非乳化タイプが挙げられる。
【0003】
いずれのタイプであっても、皮膚への紫外線照射を遮断して高いSPF(Sun Protection Factor)値を得るために、日焼け止め化粧料には固形紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を高配合する必要がある。固形紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合するためには油分を高配合する必要があるが、油分を高配合するとべたつきを抑えることができない。
【0004】
このような観点から、紫外線散乱剤を配合することなく高いSPF値を達成する試みがなされており、油中水型乳化化粧料では、油分にデキストリン脂肪酸エステルおよび/またはショ糖脂肪酸エステルを配合することにより、高いSPF値を達成できることが記載されている(特許文献1)。
【0005】
また、水中油型乳化化粧料では、特許文献2において、特定の固形油および/または半固形油を配合することにより、高いSPF値を達成できることが記載されている。さらに、特許文献3にはアルキル変性シリコーンレジンワックスを配合することにより、SPF値を増強させることが可能である旨、記載されている。
【0006】
一方、油性化粧料では、特許文献4において、シリコーンエラストマー型界面活性剤を配合することにより、紫外線防御効果が増強された皮膚外用剤が記載されている。油性化粧料はコクがあるという利点を有するものの、裏を返すとべたつきがあるという本質的な問題を有している。このべたつきを解消する手段の1つとして化粧料にエラストマーを配合する手法が知られている。例えば、特許文献5にはシリコーンエラストマーを配合した油性化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-126832号公報
【文献】特開2017-66140号公報
【文献】国際公開第2018/62469号
【文献】特開2015-83561号公報
【文献】特表2013-501795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、シリコーンエラストマーを配合すると、油性化粧料のべたつきは抑制されるが、SPF値が低下することが判明した。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、エラストマーを配合してもSPF値を増強させることが可能であって、使用性に優れる非乳化系油性化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の非乳化系油性化粧料は、
非乳化型シリコーンエラストマーと、
紫外線吸収剤と、
0.5~3質量%のワックスと、
を含むものである。
【0011】
非乳化型シリコーンエラストマーはジメチコンクロスポリマーであることが好ましい。
【0012】
非乳化系油性化粧料の硬度は1~25gであることが好ましい。
【0013】
ワックスの融点は60~95℃であることが好ましい。
【0014】
ワックスは炭化水素ワックスであることが好ましい。
【0015】
非乳化型シリコーンエラストマーはイソドデカン希釈物であることが好ましい。
【0016】
本発明の非乳化系油性化粧料はシリコーンエラストマー型界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
【0017】
非乳化型シリコーンエラストマーの含有量は化粧料全量に対して1~7質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非乳化系油性化粧料は、
非乳化型シリコーンエラストマーと、
紫外線吸収剤と、
0.5~3質量%のワックスと、
を含むものであるので、エラストマーを配合してもSPF値を増強させることが可能であって、使用性に優れるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は実施例1、比較例1および比較例2の化粧料の紫外線吸収スペクトルの測定結果である。縦軸のAbs.はAbsorbanceの略語である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の非乳化系油性化粧料(以下、単に化粧料ともいう)は、非乳化型シリコーンエラストマーと、紫外線吸収剤と、0.5~3質量%のワックスと、を含むものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0021】
(非乳化型シリコーンエラストマー)
非乳化型シリコーンエラストマーはシリコーンエラストマーがポリオキシアルキレン基を含まないことを意味する。
以下、単に非乳化型シリコーンエラストマーをシリコーンエラストマーとも称する。
【0022】
シリコーンエラストマーとしては、例えば、ジメチコンクロスポリマーや、ビニル変性ジメチコンクロスポリマー、具体的には、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーなどの架橋型シリコーン樹脂粉末を挙げることができる。これらのシリコーンエラストマーは単独でも、二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0023】
シリコーンエラストマーは、架橋型シリコーン樹脂粉末と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ、例えば、Dowsil EL-8048(東レ・ダウコーニング社製、イソドデカン希釈物、イソドデカン約83.5~86.5%、ジメチコンクロスポリマー約13.5~16.5%)、Dowsil 9041(東レ・ダウコーニング社製、ジメチコン約84.0%、ジメチコンクロスポリマー約16.0%)、KSG-18A、KSG-16、KSG-15AP(以上、信越化学工業社製)、エラストマーブレンドDC9045(東レ・ダウコーニング社製)などを挙げることができる。
【0024】
本発明の化粧料におけるシリコーンエラストマーの含有量は、化粧料全量に対し、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~8質量%、さらには1.2~7質量%であることが好ましい。含有量が0.5質量%以上であることで紫外線防御効果をより増強することができ、10質量%以下とすることでより良好な使用感とすることができる。なお、上記のシリコーンゲルに溶媒として含まれる溶媒はここでいうシリコーンエラストマーの含有量からは除去される。
【0025】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0026】
また、トリアジン誘導体、具体的には、2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン(チノソーブS)、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン(ユビナールT150)等が好ましく挙げられる。
さらに、ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」)等が好ましく挙げられる。
また、ベンジリデンショウノウ誘導体としては、3-ベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリル(Mexoryl)SD」;シメックス社)、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSL」;シメックス社)、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム(例えば「メギゾリルSO」;シメックス社)、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSX」;シメックス社)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリルSW」;シメックス社)等が好ましく挙げられる。
【0027】
紫外線吸収剤の含有量は、化粧料全量に対し、9~25質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、9~20質量%の範囲である。紫外線吸収剤の含有量が9質量%以上であることで、より紫外線防御効果を充分なものすることができる。また、25質量%以下とすることで、より軽い使用感とすることができる。
【0028】
(ワックス)
ワックスとしては、固体油脂、ロウ類、炭化水素、高級アルコールが挙げられる。例えば、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油等の固体油脂;カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ等のロウ類:ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックス;ベヘニルアルコール、セタノール、バチルアルコール等の高級アルコール;シリコンワックス等が例示される。
【0029】
ワックスの融点は、60~95℃であることが好ましい。融点が60℃以上であることで、紫外線防御効果がより期待でき、95℃以下であることで、シリコーンエラストマーの使用性を損なうことなく製剤を調製することができる。
【0030】
上記のワックスの中でも、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックスは、紫外線防御効果の観点からより好ましい。
【0031】
化粧料におけるワックスの含有量は、化粧料全量に対して、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.8~4質量%である。ワックスの量が0.5質量%以上であることで、紫外線防御効果がより期待できる。また、5質量%以下とすることで適度な油感とすることができる。
【0032】
本発明の化粧料の硬度は、1~25gであることが好ましい。より好ましくは5~24gである。ここで、硬度は、常温下(25℃)においてカードメーター(アイテクノエンジニアリング(株)製、感圧軸11.3mmΦ/200g荷重値)を用いて測定したものを意味する。硬度が1g以上25g以下であることで、使用性をより向上させることができる。
【0033】
本発明の化粧料の粘度は、30℃において10000mPa・s以上であることが好ましく、12000mPa・s以上であることがより好ましい。粘度が10000mPa・s以上であることで、使用性をより向上させることができる。
【0034】
(シリコーンエラストマー型界面活性剤)
本発明の化粧料はシリコーンエラストマー型界面活性剤を含んでいてもよい。本発明で使用されるシリコーンエラストマー型界面活性剤としては、シリコーン骨格にポリオキシアルキレン構造を導入したポリエーテル変性シリコーンが好ましく用いられる。例えば、シリコーン鎖をポリオキシアルキレン鎖で架橋した架橋物、シリコーン鎖に側鎖としてポリオキシアルキレン基を導入した側鎖型のポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0035】
シリコーンエラストマー型界面活性剤の具体例としては、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-15ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン、(ジメチコン/(PEG10/15))クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の架橋型ポリエーテル変性シリコーンが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して配合することもできる。なお、PEGはポリエチレングリコールである。
【0036】
また、シリコーンエラストマー型界面活性剤は、界面活性剤と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよく、市販されているシリコーンゲルを使用することができる。例えば、KSG-210、KSG-710、KSG-360Z(以上、信越化学工業社製)等が例示される。
【0037】
シリコーンエラストマー型界面活性剤の含有量は、通常は、0.05~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。含有量が0.05質量%以上であることで製剤の安定性をより向上させることができ、20質量%以下であることで使用性をより向上させることができる。なお、上記のシリコーンゲルに溶媒として含まれる油分は油分として分類され、シリコーンエラストマー型界面活性剤の含有量からは除去される。
【0038】
(油分)
本発明の化粧料は上記必須成分以外の通常化粧料において用いられる油分を含んでいてもよく、特に限定されるものではない。具体例として、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン等の液体油脂;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べヘン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、べヘニルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリルグリセロールエーテル、モノパルミチルグリセロールエーテル、コレステロール、フィトステロール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、ジオクタン酸エチレングリコール、リンゴ酸次イソステアリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ぺンタオリスリトール、トリオクタン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルシクロぺンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等のシリコーン油が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
本発明の化粧料には上記成分に加えて、本発明の効果に影響のない限り、通常化粧品に用いられる成分、例えば、粉末成分、保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、殺菌防腐剤、その他の薬剤、色素、香料等を配合することができ、常法に応じて製造される。
【0040】
粉末成分としては、例えば、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト(絹雲母)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン(酸化チタンコーテッドマイカ)、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス、窒化ホウ素、赤色228号、赤色226号、青色404号等を挙げることができる。
【0041】
とりわけ樹脂粉末を配合すると、使用感触等がより向上するため好ましい。樹脂粉末としては、例えば、シリコーン樹脂粉末、ウレタン樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、アクリル系ゴム、ポリオレフィン系ゴム、ポリエステル系ゴム等が好ましく挙げられる。
【0042】
シリコーン樹脂粉末としては、例えばポリシリコーン-22、ポリシリコーン-1クロスポリマー〔市販品として、例えばKSP-411、KSP-441)(いずれも信越化学工業社製)〕、((ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー〔市販品として、例えば「KSP-100」、「KSP-101」、「KSP-102」、「KSP-105」等(いずれも信越化学工業社製)〕、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー〔市販品として、例えば「トレフィルE-506S」、「トレフィルE-508」等(いずれも東レ・ダウコーニング社製)、「KM-9729」(信越化学工業社製〕等の架橋型シリコーン樹脂粉末や、ポリメチルシルセスキオキサン粉末〔市販品として、例えば「KMP-590」(信越化学工業社製)〕、オルガノポリシロキサンエラストマー粉末〔市販品として、例えば「トレフィルE-701」(東レ・ダウコーニグ・シリコーン社製)〕、真球状シリコーン樹脂微粒子〔市販品として、例えば、「トスパール120」、「トスパール145A」等(いずれも(株)タナック社製)〕などが挙げられる。また(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーの水分散体である「BY29-119」、「BY29-129」(いずれも東レ・ダウコーニング社製)等を用いることも可能である。
【0043】
ウレタン樹脂粉末としては、例えば「プラスティックパウダーD-400」(東色ピグメント社製)等が挙げられる。ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)としては、例えば「ナイロンSP-20」(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0044】
本発明の化粧料の形態は特に限定されず、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)等の基礎化粧品、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、ファンデーション、サンスクリーン等のメーキャップ化粧品、口腔化粧品、芳香化粧品、毛髪化粧品、ボディ化粧品等、従来油性化粧料に用いるものであればいずれの形態でも広く適用可能である。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0046】
(実施例1~3、比較例1~3)
表1に示す処方で、油分に、界面活性剤、ワックス、UV(ultraviolet)吸収剤、エラストマー、使用性粉末を入れて混合し、化粧料を調製した。
【0047】
(実施例4、比較例4)
表2に示す処方(エラストマーの種類を変更)で、化粧料を調製した。
【0048】
(実施例5~8)
表3に示す処方(ワックスの種類、エラストマーの量を変更)で、化粧料を調製した。
【0049】
調製した化粧料の粘度および硬度を以下のようにして求めた。また、調製した化粧料の使用感、UV吸収上昇率について以下の基準で評価した。結果を処方とともに下記表1~3に示した。また、実施例1、比較例1および比較例2の化粧料について測定した紫外線吸収スペクトルを図1に示した。
【0050】
(粘度)
調製した化粧料について、30℃において、BH粘度計(芝浦セムテック(株)製、ローター No.6、10rpm)を用いて測定した。
【0051】
(硬度)
調製した化粧料について、25℃においてカードメーター(アイテクノエンジニアリング(株)製、感圧軸11.3mmΦ/200g荷重値)を用いて測定した。
【0052】
(使用感)
調製した化粧料を専門パネラー10名により、化粧料を肌に塗布してもらい、使用感について、評価してもらった。
<評価点>
5点:コクがあり、油感がほとんどない
4点:コクがあり、油感が少ない
3点:コクは少し劣る、または油感を少し感じる
2点:コクが少なく、油感を感じる
1点:コクがなく、油感が強い
<評価基準>
A+:平均点が4.5点以上
A :平均点が4.0以上4.5未満
B :平均点が3.5点以上4.0点未満
C :平均点が2.5点以上3.5点未満
D :平均点が2.5点未満
【0053】
(UV吸収上昇率)
得られた化粧料をPMMA基板に塗布し、280-400nmの吸光度を測定して積算し、実施例1~3および実施例5~8は比較例2(ベースライン)の積算値を100とした相対値により、以下の基準で評価した。また、実施例4は比較例4(ベースライン)の積算値を100とした相対値により、以下の基準で評価した。
A+:UV吸収上昇率30%より高い
A :UV吸収上昇率20%より高く30%以下
B :UV吸収上昇率10%より高く20%以下
C :UV吸収上昇率0%より高く10%以下
D :UV吸収率がベースライン以下
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
なお、表1~表3に示す成分の詳細は以下のとおりである。
※1:信越化学工業社製、成分:ジメチコン約75.48%、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー約24%、ジプロピレングリコール約0.5%、トコフェロール約0.02%
※2:信越化学工業社製、成分:PEG-10ジメチコン約99.98%、トコフェロール約0.02%
※3:信越化学工業社製、成分:ジメチコン約100%
※4:信越化学工業社製、成分:ジメチコン約100%
※5:日本ユニカー社製、成分:カプリリルメチコン約99.95%、トコフェロール約0.05%
※6:信越化学工業社製、成分:ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン約100%
※7:丸善石油化学社製、成分:イソドデカン約100%
※8:東レ・ダウコーニング社製、成分:メチルポリシロキサン約100%
※9:東レ・ダウコーニング社製、成分:アルキル(C30-45)メチコン約54%、オレフィン(C30-45)約46%
※10:日興リカ社製、成分:マイクロクリスタリンワックス約99.99%、トコフェロール約0.01%
※11:日光理化工業社製ポリエチレン、成分:ポリエチレン約73.9991712%、マイクロクリスタリンワックス約25.9997088、ジブチルヒドロキシトルエン約0.0008%、トコフェロール約0.00032%
※12:日本精蝋社製、成分:合成ワックス約100%
※13:BASFジャパン社製、成分:メトキシケイヒ酸エチルヘキシル約99.93%、BHT約0.07%
※14:BASFジャパン社製、成分:オクトクリレン約100%
※15:BASFジャパン社製、成分:ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン約100%
※16:DSM社製、成分:ポリシリコーン-15約100%
※17:信越化学社製、成分:ポリシリコーン-22約100%
※18:信越化学社製、成分:(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー約100%
※19:東レ・ダウコーニング社製、成分:イソドデカン約83.5~86.5%、ジメチコンクロスポリマー約13.5~16.5%
※20:東レ・ダウコーニング社製、成分:ジメチコン約84.0%、ジメチコンクロスポリマー約16.0%
【0058】
表1および図1に示すように、実施例1の本発明の化粧料はUV吸収上昇率(SPFの増強効果)が良好で、使用感も良かった。一方、ワックスもエラストマーも含まない比較例1は使用感が悪く、ワックスを含む比較例2は使用感は良かったものの、エラストマーを含まないためUV吸収は低下した。実施例2および3はワックスの量を変更したものであるが、使用感、UV吸収上昇率においてともに満足できるものであった。一方、ワックスを含んでもその量が5.0質量%と多い比較例3では、使用感が悪くなり、UV吸収上昇率も低下した。
【0059】
表2の実施例4はエラストマーの種類を変更したものであるが、同じエラストマーを用いた比較例4に比べて、SPFの増強効果が見られた。
【0060】
表3の実施例5~7はワックスの種類を変更したものであるが、いずれも使用感、UV吸収上昇率においてともに満足できるものであった。実施例8はエラストマーの量を実施例1の半分に変更したものであるが(表中のエラストマー42.0質量%の実分は5.6~6.93質量%、エラストマー21.0質量%の実分は2.8~3.5質量%)、この場合であっても使用感、UV吸収上昇率においてともに満足できるものであった。
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目8]に記載する。
[項目1]
非乳化型シリコーンエラストマーと、
紫外線吸収剤と、
0.5~3質量%のワックスと、
を含む非乳化系油性化粧料。
[項目2]
前記非乳化型シリコーンエラストマーがジメチコンクロスポリマーである項目1記載の非乳化系油性化粧料。
[項目3]
硬度が1~25gである項目1または2記載の非乳化系油性化粧料。
[項目4]
前記ワックスの融点が60~95℃である項目1、2または3記載の非乳化系油性化粧料。
[項目5]
前記ワックスが炭化水素ワックスである項目1~4いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
[項目6]
前記非乳化型シリコーンエラストマーがイソドデカン希釈物である項目1~5いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
[項目7]
シリコーンエラストマー型界面活性剤をさらに含む項目1~6いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
[項目8]
前記非乳化型シリコーンエラストマーの含有量が化粧料全量に対して1~7質量%である項目1~7いずれか1項記載の非乳化系油性化粧料。
図1