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特許7394545非破壊検査システム、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法、および学習用データの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】非破壊検査システム、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法、および学習用データの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20231201BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20231201BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20231201BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20231201BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231201BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N21/88 Z
G01N23/04
G01N23/046
G06N20/00 130
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019114729
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021001774
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英久
(72)【発明者】
【氏名】二宮 悠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達志
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲雄
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270659(JP,A)
【文献】米国特許第07849747(US,B2)
【文献】特開2001-201465(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102892(WO,A1)
【文献】特開2012-088273(JP,A)
【文献】特開平09-171006(JP,A)
【文献】特開平08-096136(JP,A)
【文献】特開平10-062357(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108362772(CN,A)
【文献】丸山 宏,機械学習工学に向けて,日本ソフトウェア科学会第34回大会講演論文集,日本,日本ソフトウェア科学会,2017年,< URL:http://jssst.or.jp/files/user/taikai/2017/GENERAL/general6-1.pdf >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 21/88
G01N 23/04-23/046
F01N 11/00
F01N 3/021-3/023
G06N 20/00-20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス処理フィルタの非破壊検査システムであって、
使用後の前記排ガス処理フィルタを非破壊試験するための非破壊試験装置と、
前記非破壊試験が行なわれた使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を判定するための学習済み排ガス処理フィルタ検査モデルを有する、コンピュータとを備え、
前記学習済み排ガス処理フィルタ検査モデルは、学習用データセットを用いた学習処理により生成され、前記学習用データセットは、前記非破壊試験装置による使用後の前記排ガス処理フィルタの前記非破壊試験の結果を表す試験結果データに対して、前記非破壊試験が行なわれた使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を判定した使用可否判定結果データをラベル付けした学習用データを複数含み、
前記コンピュータは、前記試験結果データを取得し、前記学習済み排ガス処理フィルタ検査モデルを用いて前記試験結果データから使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を推定した使用可否推定結果を出力する、非破壊検査システム。
【請求項2】
前記学習済み排ガス処理フィルタ検査モデルは、前記試験結果データが入力されると、前記試験結果データから前記使用可否推定結果を出力するように、学習用データセットを用いた学習処理がなされている、請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項3】
前記非破壊試験は、超音波探傷試験を含む、請求項1または2に記載の非破壊検査システム。
【請求項4】
前記非破壊試験は、X線透過試験と、X線コンピュータ断層撮影試験との少なくともいずれか1つをさらに含む、請求項3に記載の非破壊検査システム。
【請求項5】
前記排ガス処理フィルタは、前記排ガス処理フィルタに排ガスが流入する入口端と、前記排ガス処理フィルタから前記排ガスが流出する出口端とを有し、
前記非破壊試験は、前記入口端を撮像した入口画像と前記出口端を撮像した出口画像とを解析する画像解析をさらに含む、請求項3または4に記載の非破壊検査システム。
【請求項6】
学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法であって、
使用後の排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データと、前記非破壊試験が行なわれた使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を判定した使用可否判定結果データと、の組み合わせを含む学習用データを取得することと、
取得した複数の前記学習用データに基づき、前記試験結果データを入力とし、使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否に関する値を出力とする、前記排ガス処理フィルタ検査モデルを生成することと、を備える、製造方法。
【請求項7】
前記排ガス処理フィルタ検査モデルを生成することは、
前記排ガス処理フィルタ検査モデルに、前記試験結果データを入力して、使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を推定した使用可否推定結果の出力を得ることと、
前記排ガス処理フィルタ検査モデルに入力された前記試験結果データに対応する前記使用可否判定結果データと、前記使用可否推定結果と、を比較した比較結果を求めることと、
前記比較結果に基づいて前記排ガス処理フィルタ検査モデルを更新することと、を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
検査対象の使用後の排ガス処理フィルタが再生使用可能か否かを判定する排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させるための学習用データの生成方法であって、
使用後の前記排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データを取得することと、
前記非破壊試験が行なわれた使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を判定した使用可否判定結果データを取得することと、を備える、学習用データの生成方法。
【請求項9】
前記非破壊試験は、超音波探傷試験を含み、
前記試験結果データを取得することは、前記超音波探傷試験の結果を表す超音波探傷試験結果データを取得することを含む、請求項8に記載の学習用データの生成方法。
【請求項10】
前記試験結果データを取得することは、前記排ガス処理フィルタの長さを横軸とし、エコーレベルを縦軸として、前記超音波探傷試験結果データをプロットしたグラフを作成することを含む、請求項9に記載の学習用データの生成方法。
【請求項11】
前記試験結果データを取得することは、前記グラフの一部を着色することを含む、請求項10に記載の学習用データの生成方法。
【請求項12】
前記試験結果データを取得することは、前記超音波探傷試験結果データから前記排ガス処理フィルタの長さ方向の一部のデータを抽出した抽出データを生成することを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の学習用データの生成方法。
【請求項13】
前記排ガス処理フィルタは、前記排ガス処理フィルタに排ガスが流入する入口端と、前記排ガス処理フィルタから前記排ガスが流出する出口端とを有し、
前記非破壊試験は、前記入口端を撮像した入口画像と前記出口端を撮像した出口画像とを解析する画像解析をさらに含み、
前記試験結果データを取得することは、前記入口画像を取得することと、前記出口画像を取得することと、を含む、請求項9に記載の学習用データの生成方法。
【請求項14】
前記試験結果データを取得することは、前記入口画像の一部をトリミングした部分入口画像を生成することと、前記出口画像の一部をトリミングした部分出口画像を生成することとを含む、請求項13に記載の学習用データの生成方法。
【請求項15】
前記非破壊試験は、X線コンピュータ断層撮影試験を含み、
前記試験結果データを取得することは、前記X線コンピュータ断層撮影試験の結果を表す断面像データを取得することを含む、請求項9に記載の学習用データの生成方法。
【請求項16】
前記試験結果データを取得することは、前記断面像データの一部をトリミングした部分断面像データを取得することを含む、請求項15に記載の学習用データの生成方法。
【請求項17】
使用後の排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データを取得することと、
学習済みの第1の排ガス処理フィルタ検査モデルに、前記試験結果データを入力して、使用後の前記排ガス処理フィルタの再生使用可否を推定した使用可否推定結果の出力を得ることと、
前記試験結果データと、前記使用可否推定結果とを含む学習用データにより、第2の排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させることと、を備える、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非破壊検査システム、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法、および学習用データの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米国特許第7849747号明細書(特許文献1)には、ディーゼル微粒子捕集フィルタに用いられるセラミックモノリスを超音波探傷する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7849747号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、一般的に動力源としてディーゼルエンジンを使用している。ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(Particulate Matter;PM)は、普通自動車と同様に、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(Diesel Particulate Filter;DPF)などで排ガスから除去されている。除去された粒子状物質は主に燃焼で生成された煤であるため、DPF内で燃焼処理されている。
【0005】
PMには主成分の煤以外に不燃物が含まれているため、不燃物がDPF内に蓄積する。そのためDPFは、使用開始から所定時間経過後に交換される。普通自動車では新品のDPFに交換されるが、作業機械では使用後に洗滌処理した再生品のDPFが普及している。使用後のDPFは、洗滌処理の前に、超音波探傷などの非破壊検査により、割れ等の欠陥がないか検査されている。
【0006】
超音波探傷試験の出力データは、超音波が被検体に発信されてからの経過時間と反射されて戻ってきた超音波の強さとのチャートで示される。試験員は、このチャートを見て、フィルタの欠陥の有無を判断するが、人により誤判定の頻度が高い。そのため、再生使用可否の判定基準を過剰に厳しくして不良品の再生を防いでおり、実際には再生使用可能な製品を廃棄している可能性が高い。
【0007】
本開示では、排ガス処理フィルタの使用可否を判定する精度を向上するための、非破壊検査システム、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法、および学習用データの生成方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従うと、排ガス処理フィルタの非破壊検査システムが提供される。非破壊検査システムは、排ガス処理フィルタを非破壊試験するための非破壊試験装置と、コンピュータとを備えている。コンピュータは、非破壊試験が行なわれた排ガス処理フィルタの使用可否を判定するための、学習済み排ガス処理フィルタ検査モデルを有している。コンピュータは、非破壊試験装置による排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データを取得し、学習済み排ガス処理フィルタ検査モデルを用いて試験結果データから排ガス処理フィルタの使用可否を推定した使用可否推定結果を出力する。
【0009】
本開示のある局面に従うと、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法が提供される。製造方法は、以下の処理を含んでいる。第1の処理は、排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データと、非破壊試験が行なわれた排ガス処理フィルタの使用可否を判定した使用可否判定結果データと、の組み合わせを含む学習用データを取得することである。第2の処理は、取得した複数の学習用データに基づき、試験結果データを入力とし、排ガス処理フィルタの使用可否に関する値を出力とする、排ガス処理フィルタ検査モデルを生成することである。
【0010】
本開示のある局面に従うと、検査対象の排ガス処理フィルタが使用可能か否かを判定する排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させるための、学習用データの生成方法が提供される。生成方法は、以下の処理を備えている。第1の処理は、排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データを取得することである。第2の処理は、非破壊試験が行なわれた排ガス処理フィルタの使用可否を判定した使用可否判定結果データを取得することである。
【0011】
本開示のある局面に従うと、学習済みの排ガス処理フィルタ検査モデルの製造方法が提供される。製造方法は、以下の処理を備えている。第1の処理は、排ガス処理フィルタの非破壊試験の結果を表す試験結果データを取得することである。第2の処理は、学習済みの第1の排ガス処理フィルタ検査モデルに、試験結果データを入力して、排ガス処理フィルタの使用可否を推定した使用可否推定結果の出力を得ることである。第3の処理は、試験結果データと、使用可否推定結果とを含む学習用データにより、第2の排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させることである。
【発明の効果】
【0012】
本開示に従えば、排ガス処理フィルタの使用可否を判定する精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】排ガス後処理装置の概略構成を示す模式図である。
図2】コンピュータの構成の一例を示すブロック図である。
図3】学習用コンピュータの構成の一例を示すブロック図である。
図4】学習用コンピュータの機能的構成を説明するための機能ブロック図である。
図5】学習用コンピュータにおける学習処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6】排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させるための処理を示す概略図である。
図7】超音波探傷試験機で取得された試験結果のデータに対する前処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8】点群データの一例を示すグラフである。
図9】抽出データの一例を示すグラフである。
図10】不合格品の抽出データの一例を示すグラフである。
図11】条件付き合格品の抽出データの一例を示すグラフである。
図12】撮像装置で取得された画像データに対する前処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13】入口画像の一例を示す図である。
図14】出口画像の一例を示す図である。
図15】X線撮像装置で取得されたX線像データに対する前処理の処理手順を示すフローチャートである。
図16】合格品の透過像データの一例を示す図である。
図17】条件付き合格品の透過像データの一例を示す図である。
図18】不合格品の断面像データの一例を示す図である。
図19】判定用コンピュータの機能的構成を説明するための機能ブロック図である。
図20】判定用コンピュータにおける推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図21】排ガス処理フィルタ検査モデルによる排ガス処理フィルタの使用可否を推定するための処理を示す概略図である。
図22】蒸留モデルを生成するための処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0015】
[排ガス後処理装置1の構成]
図1は、排ガス後処理装置1の概略構成を示す模式図である。排ガス後処理装置1は、ディーゼルエンジン(以下「エンジン」と記す)10の排ガス中に含まれる残留物質の処理を行なって、排ガスを浄化する装置である。この残留物質は、たとえば、粒子状物質(Particulate Matter;PM)、窒素酸化物(NOx)などである。排ガス後処理装置1は、PMの捕集、NOxの還元などの処理を行なって、排ガスを浄化する。
【0016】
排ガス後処理装置1は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(Diesel particulate filter;DPF)装置2と、選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction;SCR)装置3とを備えている。DPF装置2と、SCR装置3とは、エンジン10の排ガスが流れる排気管11に連結されている。DPF装置2とSCR装置3とは、図1中に矢印で示される排ガスの流れる方向において、この順に配置されている。SCR装置3は、排ガスの流れ方向において、DPF装置2の下流側に配置されている。
【0017】
DPF装置2は、ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst;DOC)21と、触媒化スートフィルタ(Catalyzed Soot Filter;CSF)22とを備えている。
【0018】
DOC21は、排ガス中に必要に応じて供給されるドージング燃料を酸化、発熱させて、排ガス温度を所定の高温域まで上昇させる触媒である。この温度上昇した排ガスを利用することで、後述するCSF22に堆積したPMを自己燃焼させて焼却除去し、CSF22を再生させる。
【0019】
ドージング燃料は、内燃機関がディーゼルエンジンの場合、たとえばエンジン燃料と同じ軽油である。ドージング燃料は、たとえば、排気管11に設けられたドージング用の燃料噴射装置(図示略)により排ガス中に供給され、排ガスと共にDPF装置2内に流入する。
【0020】
CSF22は、排ガス中のPMを捕集するフィルターである。CSF22は、CSF22に排ガスが流入する入口端22Aと、CSF22から排ガスが流出する出口端22Bとを有している。CSF22は、実施形態における排ガス処理フィルタに相当する。
【0021】
CSF22は、詳細な図示を省略するが、多数の小孔を有するハニカム構造を有している。CSF22の小孔は、入口端22Aから出口端22Bに向かって延びている。CSF22の小孔の断面は、多角形状(たとえば四角形状、六角形状など)に形成されている。
【0022】
CSF22の小孔は、入口端22Aで開口して出口端22Bで閉塞されたものと、入口端22Aで閉塞されて出口端22Bで開口したものとが交互に配置されている。入口端22Aで開口した小孔から、排ガスがCSF22に流入する。排ガスは、隣り合う小孔を隔てる境界壁を通過して、出口端22Bで開口した小孔へ流れ、出口端22BでCSF22から流出する。そして、その境界壁でPMが捕集される。
【0023】
CSF22の材質は、たとえば、コージェライトや炭化珪素などのセラミックスであり、用途に応じて適宜決定される。CSF22の入口側に、DOC21とは材質の異なる酸化触媒がウォッシュコート等によりコーティングされていてもよい。
【0024】
SCR装置3は、脱硝触媒31と、アンモニア酸化触媒32とを備えている。
脱硝触媒31は、還元剤供給装置から排気管11中に噴射される尿素水の分解で得られるアンモニアを還元剤とすることで、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元除去する触媒である。
【0025】
脱硝触媒31の下流側に配置されるアンモニア酸化触媒32は、脱硝触媒31での還元反応に使用されなかったアンモニアを酸化処理して無害化する触媒であり、排ガス中の有害成分をより低減する。
【0026】
[コンピュータ100の構成]
次に、排ガス処理フィルタ(CSF22)を非破壊検査するための実施形態の非破壊検査システムに含まれる、コンピュータ100の構成について説明する。図2は、コンピュータ100の構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
図2に示されるように、コンピュータ100は、主要なハードウェア要素として、ディスプレイ102と、プロセッサ104と、メモリ106と、ネットワークコントローラ108と、ストレージ110と、光学ドライブ122と、入力装置126とを含む。入力装置126は、キーボード127と、マウス128とを含む。入力装置126はタッチパネルを備えていてもよい。
【0028】
ディスプレイ102は、コンピュータ100での処理に必要な情報を表示する。ディスプレイ102は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどで構成される。
【0029】
プロセッサ104は、各種プログラムを実行することで、コンピュータ100の実現に必要な処理を実行する演算主体である。プロセッサ104としては、たとえば、1または複数のCPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。複数のコアを有するCPUまたはGPUを用いてもよい。
【0030】
メモリ106は、プロセッサ104がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ106としては、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
【0031】
ネットワークコントローラ108は、後述する非破壊試験装置200および学習用コンピュータ300を含む、任意の外部の装置との間でデータを送受信する。ネットワークコントローラ108は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応するようにしてもよい。
【0032】
ストレージ110は、プロセッサ104で実行されるOS(Operating System)112、所定の機能構成を実現するためのアプリケーションプログラム114、学習済モデル116などを格納する。ストレージ110としては、たとえば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
【0033】
アプリケーションプログラム114をプロセッサ104で実行する際に必要となるライブラリや機能モジュールの一部を、OS112が標準で提供するライブラリまたは機能モジュールを用いるようにしてもよい。この場合には、アプリケーションプログラム114単体では、対応する機能を実現するために必要なプログラムモジュールのすべてを含むものにはならないが、OS112の実行環境下にインストールされることで、所定の機能構成を実現できることになる。そのため、このような一部のライブラリまたは機能モジュールを含まないプログラムであっても、本発明の技術的範囲に含まれ得る。
【0034】
光学ドライブ122は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)などの光学ディスク124に格納されている、プログラムなどの情報を読み出す。光学ディスク124は、非一過的(non-transitory)な記録媒体の一例であり、任意のプログラムを不揮発的に格納した状態で流通する。光学ドライブ122が光学ディスク124からプログラムを読み出して、ストレージ110にインストールすることで、本実施形態に従うコンピュータ100を構成できる。したがって、本発明の主題は、ストレージ110などにインストールされたプログラム自体、または、本実施形態に従う機能や処理を実現するためのプログラムを格納した光学ディスク124などの記録媒体でもあり得る。
【0035】
図2には、非一過的な記録媒体の一例として、光学ディスク124などの光学記録媒体を示すが、これに限らず、フラッシュメモリなどの半導体記録媒体、ハードディスクまたはストレージテープなどの磁気記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)などの光磁気記録媒体を用いてもよい。
【0036】
または、コンピュータ100を実現するためのプログラムは、上述したような任意の記録媒体に格納されて流通するだけでなく、インターネットまたはイントラネットを介してサーバ装置などからダウンロードすることで配布されてもよい。
【0037】
図2には、汎用コンピュータ(プロセッサ104)がアプリケーションプログラム114を実行することでコンピュータ100を実現する構成例を示すが、コンピュータ100を実現するために必要な機能の全部または一部を、集積回路などのハードワイヤード回路(hard-wired circuit)を用いて実現してもよい。たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などを用いて実現してもよい。
【0038】
[学習用コンピュータ300の構成]
次に、検査対象の排ガス処理フィルタ(CSF22)が再生使用可能か否かを判定する排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させるための、学習用コンピュータ300の構成について説明する。図3は、学習用コンピュータ300の構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
図3に示されているように、学習用コンピュータ300は、主要なハードウェア要素として、ディスプレイ302と、プロセッサ304と、メモリ306と、ネットワークコントローラ308と、ストレージ310と、入力装置330とを含む。
【0040】
ディスプレイ302は、学習用コンピュータ300での処理に必要な情報を表示する。ディスプレイ302は、たとえば、LCDや有機ELディスプレイなどで構成される。
【0041】
プロセッサ304は、各種プログラムを実行することで、学習用コンピュータ300の実現に必要な処理を実行する演算主体である。プロセッサ304としては、たとえば、1または複数のCPUまたはGPUなどで構成される。複数のコアを有するCPUまたはGPUを用いてもよい。学習用コンピュータ300においては、学習済モデルを生成するための学習処理に適したGPUなどを採用することが好ましい。
【0042】
メモリ306は、プロセッサ304がプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ306としては、たとえば、DRAMまたはSRAMなどの揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
【0043】
ネットワークコントローラ308は、コンピュータ100および非破壊試験装置200を含む任意の外部の装置との間でデータを送受信する。ネットワークコントローラ308は、たとえば、イーサネット、無線LAN、Bluetoothなどの任意の通信方式に対応するようにしてもよい。
【0044】
ストレージ310は、プロセッサ304にて実行されるOS312、所定の機能構成を実現するためのアプリケーションプログラム314、非破壊試験結果データ320および使用可否判定結果データ322から学習用データセット324を生成するための前処理プログラム316、ならびに、学習用データセット324を用いて学習済モデル326を生成するための学習用プログラム318などを格納する。
【0045】
なお、説明の便宜上、コンピュータ100に格納されている学習済モデルと、学習用コンピュータ300が生成する学習済モデルとに対しては、互いに異なる参照符号(116,326)を付している。しかしながら、コンピュータ100に格納されている学習済モデル116は学習用コンピュータ300から送信(配布)された学習済モデルであるため、2つの学習済モデル116,326は実質的に同一である。詳しくは、学習済モデル116と学習済モデル326とは、ネットワーク構造と学習済パラメータとが実質的に同一である。
【0046】
学習用データセット324は、非破壊試験結果データ320に使用可否判定結果データ322をラベル(または、タグ)として付与した訓練データセットである。また、学習済モデル326は、学習用データセット324を用いて学習処理を実行することで得られる推定モデルである。
【0047】
ストレージ310としては、たとえば、ハードディスク、SSDなどの不揮発性メモリデバイスを用いてもよい。
【0048】
アプリケーションプログラム314、前処理プログラム316および学習用プログラム318をプロセッサ304で実行する際に必要となるライブラリや機能モジュールの一部を、OS312が標準で提供するライブラリまたは機能モジュールを用いるようにしてもよい。この場合には、アプリケーションプログラム314、前処理プログラム316および学習用プログラム318の各単体では、対応する機能を実現するために必要なプログラムモジュールのすべてを含むものにはならないが、OS312の実行環境下にインストールされることで、所定の機能構成を実現できることになる。そのため、このような一部のライブラリまたは機能モジュールを含まないプログラムであっても、本発明の技術的範囲に含まれ得る。
【0049】
アプリケーションプログラム314と、前処理プログラム316と、学習用プログラム318とは、光学ディスクなどの光学記録媒体、フラッシュメモリなどの半導体記録媒体、ハードディスクまたはストレージテープなどの磁気記録媒体、ならびにMOなどの光磁気記録媒体といった非一過的な記録媒体に格納されて流通し、ストレージ310にインストールされてもよい。したがって、本発明の主題は、ストレージ310などにインストールされたプログラム自体、または、本実施の形態に従う機能や処理を実現するためのプログラムを格納した記録媒体でもあり得る。
【0050】
または、学習用コンピュータ300を実現するためのプログラムは、上述したような任意の記録媒体に格納されて流通するだけでなく、インターネットまたはイントラネットを介してサーバ装置などからダウンロードすることで配布されてもよい。
【0051】
入力装置330は、各種の入力操作を受け付ける。入力装置330としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを用いてもよい。
【0052】
図3には、汎用コンピュータ(プロセッサ304)がアプリケーションプログラム314、前処理プログラム316および学習用プログラム318を実行することで学習用コンピュータ300を実現する構成例を示すが、学習用コンピュータ300を実現するために必要な機能の全部または一部を、集積回路などのハードワイヤード回路を用いて実現してもよい。たとえば、ASICやFPGAなどを用いて実現してもよい。
【0053】
[学習処理]
学習用コンピュータ300によって実行される学習処理について説明する。具体的には、学習済モデル326の製造方法について説明する。図4は、学習用コンピュータ300の機能的構成を説明するための機能ブロック図である。
【0054】
図4に示されるように、学習用コンピュータ300は、入力受付部350と、制御部360と、通信IF(Interface)部370とを備える。制御部360は、学習部362を備える。学習部362は、学習用のモデル366と、学習用プログラム368とを備える。学習用のモデル366は、ネットワーク構造366Nとパラメータ366Pとで構成される。ネットワーク構造366Nは予め構築され、学習用コンピュータ300に格納されている。
【0055】
入力受付部350は、学習用データセット324の入力を受け付ける。学習用データセット324は、学習用の非破壊試験結果データと、教師データとしての使用可否判定結果データとを含む。詳しくは、学習用データセット324は、複数のデータの組(学習用データ)を含み、各組(各学習用データ)が、学習用の非破壊試験結果データと教師データとしての使用可否判定結果データとを含む。なお、学習用データセットの複数のデータの組のうちの一部の組を、学習済モデルの精度を評価するために用いてもよい。
【0056】
制御部360は、学習用コンピュータ300の全体的な動作を制御する。
制御部360内の学習部362は、学習済モデル326を生成する。学習済モデル326の生成について説明すると、以下のとおりである。
【0057】
学習部362は、学習用データセット324を用いた機械学習により、学習用のモデル366のパラメータ366Pの値を更新する。具体的には、学習部362は、学習用プログラム368を用いることにより、パラメータ366Pの値を更新する。パラメータ366Pの更新は、学習に用いたデータの組(評価用のデータの組を除く)の数だけ、繰り返される。
【0058】
学習が終了すると、学習済モデル326が得られる。学習済モデル326は、ネットワーク構造366Nと、学習済パラメータとを有する。更新が完了したパラメータ366Pが、学習済パラメータに対応する。
【0059】
生成された学習済モデル326は、通信IF部370を介して、コンピュータ100に送信される。上述したように、コンピュータ100に送信された学習済モデル326を、説明の便宜上、「学習済モデル116」と称する。
【0060】
図5は、学習用コンピュータ300における学習処理の処理手順を示すフローチャートである。図5に示す各ステップは、典型的には、学習用コンピュータ300のプロセッサ304がOS312、アプリケーションプログラム314、前処理プログラム316、および学習用プログラム318(いずれも図3参照)を実行することで実現されてもよい。
【0061】
図5に示されるように、ステップS1において、学習用コンピュータ300は、非破壊試験結果データ320を取得する。
【0062】
図6は、排ガス処理フィルタ検査モデルを学習させるための処理を示す概略図である。図6に示されるように、非破壊検査システムは、非破壊試験装置200を備えている。非破壊試験装置200は、超音波探傷試験機210、撮像装置220、およびX線CT(computerized tomography)スキャナ230を含んでいる。非破壊試験装置200は、X線CTスキャナ230に替えて、またはこれに加えて、X線透過装置240を含んでもよい。
【0063】
超音波探傷試験機210は、探傷子を有する。探傷子は、超音波のパルスを発信し、かつ、反射エコーを受信する。CSF22の入口端22Aに配置された探傷子から超音波を発信する場合、欠陥に当たらなかった超音波は、出口端22Bで反射して戻って、CSF22の長さに相当する距離に反射エコーの波形が現れる。CSF22の内部に欠陥が存在する場合、欠陥で反射した反射エコーの波形の頂点が、CSF22の長さよりも距離の短い位置に現れる。このように、反射エコーの波形の頂点の位置に基づいて、CSF22内部の欠陥の存在と、欠陥の位置とが検知される。
【0064】
撮像装置220は、撮像対象の光学像を取得して、その撮像対象の外形を検出する。撮像装置は、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサのような撮像素子を含む。実施形態の撮像装置220は、CSF22、より特定的にはCSF22の入口端22Aおよび出口端22Bを撮像する。
【0065】
X線CTスキャナ230は、撮像対象のCSF22にX線を照射して、CSF22を透過したX線の検出信号を処理することで、CSF22の内部の断面像データを生成する。生成された断面像データから、CSF22の内部に割れまたは熔解などの欠陥が発生していたり、CSF22の小孔内に煤または不燃物が詰まって小孔が閉塞しているなどの、検査対象のCSF22をそのまま再生使用できない事態が発生していることが検知される。
【0066】
X線透過装置240は、撮像対象のCSF22にX線を照射して、CSF22を透過したX線の検出信号を処理することで、CSF22の内部全体の透過像データを生成する。生成された透過像データから、CSF22の内部に割れまたは熔解などの欠陥が発生していたり、CSF22の小孔内に煤または不燃物が詰まって小孔が閉塞しているなどの、検査対象のCSF22をそのまま再生使用できない事態が発生していることが検知される。
【0067】
非破壊試験装置200は、学習用コンピュータ300、具体的にはネットワークコントローラ308に、非破壊試験の結果を表す非破壊試験結果データ320を送信する。具体的には、超音波探傷試験機210は、学習用コンピュータ300に、超音波探傷試験結果データ320Aを送信する。撮像装置220は、学習用コンピュータ300に、出入口画像データ320Bを送信する。X線CTスキャナ230は、学習用コンピュータ300に、断面像データ320Cを送信する。X線透過装置240は、学習用コンピュータ300に、透過像データ320Dを送信する。
【0068】
超音波探傷試験結果データ320Aは、1つのCSF22に対する10のデータを含む。この10のデータは、1つのCSF22の入口端22Aの5箇所、典型的には入口端22Aの中央の1箇所と等間隔に離れた周辺の4箇所とに、探傷子を配置した5つのデータを含む。10のデータはまた、同じ1つのCSF22の出口端22Bの5箇所、典型的には出口端22Bの中央の1箇所と等間隔に離れた周辺の4箇所とに、探傷子を配置した5つのデータを含む。
【0069】
図3に示される前処理プログラム316は、超音波探傷試験機210から学習用コンピュータ300に入力された複数のデータの各々に対して、前処理を実行する。図7は、超音波探傷試験機210で取得された試験結果のデータに対する前処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
図7に示されるように、ステップS101において、学習用コンピュータ300は、超音波探傷試験機210から、1つの超音波探傷試験結果データ320Aを取得する。次にステップS102において、学習用コンピュータ300は、ステップS101で取得した超音波探傷試験結果データ320Aを直交座標平面上に描画した点群データを生成する。
【0071】
図8は、点群データの一例を示すグラフである。図8に示されるグラフの横軸は、CSF22の長さを示す。CSF22の両端のうち、探傷子の配置されている側の端部が、横軸の座標ゼロに相当する。図8に示されるグラフの縦軸は、探傷子が受信したエコーレベルを示す。学習用コンピュータ300は、図8に示される直交座標平面上に超音波探傷試験結果データ320Aをプロットしたグラフである、点群データを作成する。図8に描画されている各点のデータは、CSF22の長さ方向におけるある一点で反射した反射エコーの大きさを示している。
【0072】
図7に戻って、ステップS103において、学習用コンピュータ300は、図8に示される点群データの各点同士を結ぶ直線を描画した折れ線データを生成する。ステップS104において、学習用コンピュータ300は、生成した折れ線データの一部を着色する。ステップS105において、学習用コンピュータ300は、ステップS103で生成されステップS104で一部が着色された折れ線データから、CSF22の長さ方向の一部のデータを抽出した抽出データを生成する。
【0073】
図9は、抽出データの一例を示すグラフである。図9に示される抽出データは、図8に示される領域A1内のデータを抽出し、領域A1内に含まれる点群を結ぶ直線を描画して生成されている。横軸の座標ゼロ付近は不感帯でありデータの精度が低いので、不感帯のデータを取り除くことにより、CSF22の使用可否の判定において価値の高い箇所の分解能を上げることができ、これにより使用可否の判定の精度が向上する。
【0074】
図8に示される散布図と比較して、各プロットを直線で結んだ折れ線データを生成することにより、反射エコーの波形の頂点を容易に認識することが可能になる。これにより、使用可否の判定の精度が向上する。
【0075】
図9には、エコーレベルの閾値Tが示されている。閾値Tは、たとえば、超音波探傷試験結果データ320Aに含まれる各データのエコーレベルのうち、最大のエコーレベルの50%として、規定される。図9に示される抽出データは、エコーレベルが閾値T以上の範囲で、着色されている。このように着色することで、反射エコーの波形の頂点を正確に認識することが容易になるので、CSF22が内部に欠陥を有しているか否かをより正確に判定でき、したがってCSF22の使用可否の判定の精度が向上する。
【0076】
図9に示される抽出データでは、CSF22の長さに相当する位置に反射エコーの波形の頂点がある。CSF22の一方端(たとえば入口端22A)において探傷子から発信された超音波が、CSF22の他方端(たとえば出口端22B)にまで伝播して、他方端で反射して戻って、探傷子で受信されたことが示されている。この場合、CSF22の内部に割れまたは熔解などの欠陥は存在しておらず、合格品のCSF22であると判定される。
【0077】
図10は、不合格品の抽出データの一例を示すグラフである。図10に示される抽出データでは、CSF22の長さ方向における途中の位置に反射エコーの波形の頂点がある。CSF22の一方端(たとえば入口端22A)において探傷子から発信された超音波が、CSF22の他方端(たとえば出口端22B)までは伝播せずに、途中の位置で反射して戻って、探傷子で受信されたことが示されている。この場合、その途中の位置で超音波の伝播が遮られており、その途中の位置には割れなどの欠陥が有りCSF22がつながっていないということになる。したがって、内部に欠陥が存在している不合格品のCSF22であると判定される。
【0078】
図11は、条件付き合格品の抽出データの一例を示すグラフである。図11に示される抽出データでは、反射エコーの波形に明確な頂点がない。CSF22の小孔内に詰まった不燃焼成分が固まって固形状になり、超音波の散乱減衰量が大きくなったことで反射エコーの波形の頂点が取られなかったということになる。この場合、小孔内の詰まりを洗滌で解消できればCSF22を再生使用可能であるため、条件付き合格品のCSF22であると判定される。
【0079】
洗滌は、不燃焼成分を溶かすために適切な溶液を用いて行なわれてもよく、エアブローで不燃焼成分を飛ばすことで行なわれてもよい。洗滌に加えて、または洗滌に替えて、CSF22に熱を加えることで不燃焼成分を燃焼させて小孔内の詰まりを解消する処理を行なってもよい。
【0080】
このようにして前処理が実行された超音波探傷試験結果データ320Aが、ストレージ310に格納され、非破壊試験結果データ320を構成する。
【0081】
図12は、撮像装置220で取得された画像データに対する前処理の処理手順を示すフローチャートである。図12に示されるように、ステップS111において、学習用コンピュータ300は、撮像装置220から、撮像画像を取得する。具体的には、学習用コンピュータ300は、CSF22の入口端22Aを撮像した入口画像と、CSF22の出口端22Bを撮像した出口画像とを取得する。
【0082】
図13は、入口画像の一例を示す図である。図13には、CSF22の入口端22Aを撮像した静止画像が示されている。CSF22はステンレス製の保持管28によって保持されており、保持管28内に収容されている。そのため図13に示される入口画像において、CSF22の周囲には、保持管28が写り込んでいる。図14は、出口画像の一例を示す図である。図14には、CSF22の出口端22Bを撮像した静止画像が示されている。
【0083】
図12に戻って、次にステップS112において、入口画像および出口画像のトリミングが実行される。図13,14に示されるCSF22の画像には、保持管28および撮影者の足などの、CSF22以外の物体も写り込んでいる。そのため、入口画像および出口画像をトリミングして、図13,14に示される領域A2の外側の部分を切り取って、領域A2内のCSF22のみが写っている部分を残す。入口画像および出口画像からCSF22以外の物体を取り除くことにより、CSF22の使用可否の判定において価値の高い箇所の分解能を上げることができ、これにより使用可否の判定の精度が向上する。
【0084】
このようにして前処理が実行された出入口画像データ320Bが、ストレージ310に格納され、非破壊試験結果データ320を構成する。
【0085】
図15は、X線撮像装置で取得されたX線像データに対する前処理の処理手順を示すフローチャートである。X線撮像装置がX線CTスキャナ230であれば、X線像データは断面像データ320Cである。X線撮像装置がX線透過装置240であれば、X線像データは透過像データ320Dである。図15に示されるように、ステップS121において、学習用コンピュータ300は、X線撮像装置から、X線像データを取得する。
【0086】
図16は、X線像データの一例としての、合格品の透過像データの一例を示す図である。図16には、CSF22の1つの透過像データが示されている。図16に示される透過像データには、入口端22Aと出口端22Bとが含まれている。
【0087】
図15に戻って、次にステップS122において、X線像データのトリミングが実行される。図16に示される透過像データには、CSF22以外も含まれている。そのため、透過像データをトリミングして、図16に示される領域A3の外側の部分を切り取って、領域A3内のCSF22のみが写っている部分を残す。透過像データからCSF22以外の物体を取り除くことにより、CSF22の使用可否の判定において価値の高い箇所の分解能を上げることができ、これにより使用可否の判定の精度が向上する。
【0088】
図16に示される透過像データでは、入口端22Aから出口端22Bに至るまでCSF22の内部に割れまたは熔解などの欠陥は存在しておらず、合格品のCSF22であると判定される。
【0089】
図17は、条件付き合格品の透過像データの一例を示す図である。図17に示される透過像データでは、出口端22B側の領域A4内に不燃物が詰まっている状態が示されている。このCSF22は、不燃物の洗滌によりCSF22が再生利用可能と、条件付きの合格品と判定される。
【0090】
図18は、不合格品の断面像データの一例を示す図である。図18に示される断面像データでは、CSF22の途中に熔解した部分が存在しており、また出口端22B付近に割れが存在している。したがって、内部に欠陥が存在している不合格品のCSF22であると判定される。
【0091】
このようにして前処理が実行されたX線像データ(断面像データ320Cおよび透過像データ320D)が、ストレージ310に格納され、非破壊試験結果データ320を構成する。
【0092】
図5,6に戻って、次にステップS2において、学習用コンピュータ300は、使用可否判定結果データ322を取得する。使用可否判定結果データ322は、非破壊試験された各々のCSF22が、そのまま再生使用可能であるか、洗滌すれば再生使用可能であるか、または、再生使用不可能であり廃棄されるべきであるか、判定された結果を含んでいる。
【0093】
教師データとしての使用可否判定結果データ322は、たとえば、X線CTスキャナ230で取得される断面像データ320Cを検査することで、得ることができる。また、CSF22の入口端22A(または出口端22B)の開口からピンを小孔内に挿し、閉塞している出口端22B(または入口端22A)にまでピンの先端が到達するか否かを確認する、目詰まり確認試験結果に基づいて、使用可否判定結果データ322を得ることができる。
【0094】
また、学習用の非破壊試験結果データ320を生成するために非破壊試験されたCSF22を、切断して内部を目視することで、使用可否判定結果データ322を得ることができる。
【0095】
次にステップS3において、学習用コンピュータ300は、非破壊試験結果データ320と、使用可否判定結果データ322とを対応付けることで、学習用データセット324を生成する。ステップS4において、学習用コンピュータ300は、生成した学習用データセット324のうち、1つのデータの組(学習用データ)を選択する。
【0096】
次にステップS5において、学習用コンピュータ300は、ステップS4において選択した学習用データを学習用のモデル366に入力して、使用可否推定結果の出力を得る。
【0097】
図4を参照して説明した通り、学習用のモデル366は、ネットワーク構造366Nを有している。ネットワーク構造366Nは、図6に示されるニューラルネットワークを含んでいる。
【0098】
ネットワーク構造366Nは、たとえば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのディープニューラルネットワークを含んでいる。ニューラルネットワークは、入力層366Naと、中間層(隠れ層)366Nbと、出力層366Ncとを含んでいる。中間層366Nbは多層化されている。入力層366Na、中間層366Nbおよび出力層366Ncは、1または複数のユニット(ニューロン)を有している。入力層366Na、中間層366Nbおよび出力層366Ncのユニットの数は、適宜設定することができる。
【0099】
隣り合う層のユニット同士は結合されており、各結合には重みが設定されている。各ユニットにはバイアスが設定されている。各ユニットには閾値が設定されている。各ユニットへの入力値と重みとの積の総和にバイアスを加算した値が閾値を超えているか否かによって、各ユニットの出力値が決定される。
【0100】
学習用のモデル366は、CSF22の非破壊試験結果データ320から、非破壊試験が行なわれたCSF22の再生使用可否を判定するように学習される。学習用のモデル366は、学習によって得られたパラメータ366Pを含んでいる。パラメータ366Pは、たとえば、ニューラルネットワークの層数、各層におけるユニットの個数、ユニット同士の結合関係、各ユニット間の結合の重み、各ユニットに紐付けられているバイアス、および各ユニットの閾値を含んでいる。
【0101】
学習用コンピュータ300は、非破壊試験結果データ320を入力層366Naの入力として用いて、ネットワーク構造366Nのニューラルネットワークの順方向伝播の演算処理を行なう。これにより、学習用コンピュータ300は、ニューラルネットワークの出力層366Ncから出力される出力値として、CSF22の使用可否を推定した使用可否推定結果を得る。
【0102】
次にステップS6において、学習用コンピュータ300は、選択した学習用データの使用可否判定結果データと、ステップS5で得られた使用可否推定結果との誤差を算出する。
【0103】
次にステップS7において、学習用コンピュータ300は、学習用のモデル366(CSF検査モデル)を更新する。学習用コンピュータ300は、ステップS6で算出された使用可否判定結果データ322に対する使用可否推定結果の誤差に基づいて、各ユニット間の結合の重み、各ユニットのバイアス、および各ユニットの閾値などの、学習用のモデル366のパラメータ366Pを更新する。
【0104】
このように、学習用コンピュータ300は、非破壊試験結果データ320を学習用のモデル366に入力して出力される使用可否推定結果が、当該非破壊試験結果データ320にラベル付けされている使用可否判定結果データ322に近付くように、学習用のモデル366のパラメータ366Pを最適化する処理を実行する。そして、同じ非破壊試験結果データ320が入力層366Naに入力されたならば、使用可否判定結果データ322により近い出力値を出力できるようにする。
【0105】
次にステップS8において、学習用コンピュータ300は、ステップS3において生成した学習用データセット324のすべてを処理したか否かを判断する。学習用データセット324のすべてを処理していなければ(ステップS8においてNO)、ステップS4以下の処理が繰り返される。学習用データセット324のすべてを処理していれば(ステップS8においてYES)、ステップS9に進み、学習用コンピュータ300は、現在のパラメータ366Pを保存する。以上により、学習処理は完了する(エンド)。
【0106】
なお、学習用のモデル366のパラメータ366Pの初期値は、テンプレートにより与えられてもよい。またはパラメータ366Pの初期値は、人間の入力により手動で与えられてもよい。学習用のモデル366の再学習を行うときには、学習用コンピュータ300は、再学習を行う対象となる学習用のモデル366のパラメータ366Pとして保存されている値に基づいて、パラメータ366Pの初期値を用意してもよい。
【0107】
[学習用のモデルの利用]
以上のように学習処理が行なわれた、現在のパラメータ366Pにより規定される学習済モデル326は、コンピュータ100(判定用コンピュータ)に送信される。以下、コンピュータ100における学習済モデル116の利用について説明する。具体的には、コンピュータ100によって実行される、CSF22の使用可否を推定する処理について説明する。
【0108】
図19は、コンピュータ100(判定用コンピュータ)の機能的構成を説明するための機能ブロック図である。図19に示されているように、コンピュータ100は、入力受付部150と、制御部160と、表示部170とを備える。制御部160は、使用可否推定部161と、表示制御部162とを備える。使用可否推定部161は、学習済モデル116を備える。
【0109】
入力受付部150は、非破壊試験結果データ320の入力を受け付ける。
制御部160は、コンピュータ100の全体的な動作を制御する。
【0110】
制御部160内の使用可否推定部161は、学習済モデル116を有する。学習済モデル116は、ネットワーク構造116Nと学習済パラメータ116Pとで構成される。ネットワーク構造116Nは、ネットワーク構造366N(図4参照)と実質的に同一であり、入力層116Naと、中間層(隠れ層)116Nbと、出力層116Ncとを含んでいる(後述する図21参照)。
【0111】
使用可否推定部161は、学習済モデル116を用いて、非破壊試験結果データ320から、非破壊試験された排ガス処理フィルタ(CSF22)が再生使用可能であるか否かを推定する。使用可否推定部161は、使用可否推定結果を表示制御部162に送る。
【0112】
表示制御部162は、使用可否推定結果を表示部170に表示させる。表示部170は、ディスプレイ102(図2参照)に対応する。
【0113】
図20は、コンピュータ100(判定用コンピュータ)における推定処理の処理手順を示すフローチャートである。図20に示す各ステップは、典型的には、コンピュータ100のプロセッサ104がOS112およびアプリケーションプログラム114(いずれも図2参照)を実行することで実現されてもよい。図21は、排ガス処理フィルタ検査モデルによる排ガス処理フィルタの使用可否を推定するための処理を示す概略図である。
【0114】
図20に示されるように、ステップS201において、コンピュータ100は、非破壊試験結果データ320を取得する。非破壊試験装置200は、コンピュータ100、具体的には入力受付部150に、非破壊試験の結果を表す非破壊試験結果データ320を送信する。具体的には、超音波探傷試験機210は、コンピュータ100に、超音波探傷試験結果データ320Aを送信する。撮像装置220は、コンピュータ100に、出入口画像データ320Bを送信する。X線CTスキャナ230は、コンピュータ100に、断面像データ320Cを送信する。X線透過装置240は、コンピュータ100に、透過像データ320Dを送信する。
【0115】
次にステップS202において、コンピュータ100は、非破壊試験結果データ320を学習済モデル116に入力する。ステップS201で取得された非破壊試験結果データ320が、学習済モデル116のネットワーク構造116Nの入力層116Naへの入力データとして用いられる。使用可否推定部161は、非破壊試験結果データ320を、ネットワーク構造116Nの入力層116Naに含まれる各ユニットに入力する。
【0116】
ステップS203において、コンピュータ100は、使用可否推定結果120を出力する。使用可否推定部161は、学習済モデル116のネットワーク構造116Nの出力層116Ncから、非破壊試験が行なわれたCSF22の再生使用可否を推定した使用可否推定結果120を出力する。より具体的には、使用可否推定部161は、学習済モデル116を用いて、非破壊試験が行なわれたCSF22が、そのまま再生使用可能であるか、洗滌すれば再生使用可能であるか、または、再生使用不可能であり廃棄されるべきであるか、を推定した推定結果を生成する。
【0117】
最後にステップS204において、コンピュータ100は、使用可否推定結果120をディスプレイ102に表示する。そして、処理を終了する(エンド)。
【0118】
以上説明したように、実施形態に係る非破壊検査システムでは、コンピュータ100は、非破壊試験が行われた排ガス処理フィルタ(CSF22)の再生使用可否を判定するための、学習済モデル116を有している。図20,21に示されるように、コンピュータ100は、非破壊試験装置200によるCSF22の非破壊試験の結果を表す非破壊試験結果データ320を取得し、学習済モデル116を用いて、非破壊試験結果データ320からCSF22の再生使用可否を推定した使用可否推定結果120を出力するようにプログラムされている。
【0119】
したがって、CSF22の使用可否の推定に適した人工知能の学習済モデル116を利用して、CSF22の再生使用可否を推定することができる。これにより、人工知能を用いて、CSF22の使用可否をコンピュータ100によって容易に推定でき、かつ、使用可否を判定する精度を向上することができる。
【0120】
図5,6に示されるように、コンピュータ100は、学習用のモデル366を用いて非破壊試験結果データ320からCSF22の使用可否を推定した使用可否推定結果と、学習用データセット324に含まれるCSF22の使用可否判定結果データ322との誤差に基づいて、学習用のモデル366が更新されるようにプログラムされている。このようにすることで、事前に学習用のモデル366を十分に学習させて、精度の高いモデルを作成することができる。その学習用のモデル366をコンピュータ100に送信して学習済モデル116として用いることで、CSF22の使用可否を精度よく判定することができる。
【0121】
図6および図7~11に示されるように、CSF22の非破壊試験は、超音波探傷試験を含んでいる。非破壊試験結果データ320は、超音波探傷試験の結果を表す超音波探傷試験結果データ320Aを含んでいる。これにより、超音波探傷試験の結果を学習用のモデル366の学習に用いることができ、かつ、超音波探傷試験の結果を用いてCSF22の使用可否を判定することができる。
【0122】
図8に示されるように、CSF22の長さを横軸とし、エコーレベルを縦軸として、超音波探傷試験の結果をプロットしたグラフが作成される。このグラフを用いて、超音波探傷試験がなされたCSF22の使用可否を判定することができる。
【0123】
図9,10に示されるように、グラフの一部が着色されている。グラフの着色された一部を認識することで、CSF22の使用可否を判定する精度を向上することができる。
【0124】
図9~11に示されるように、CSF22の長さ方向の一部のデータを抽出した抽出データが生成されている。不感帯などのデータとしての価値の低い箇所を取り除くことにより、CSF22の使用可否の判定において価値の高い箇所の分解能を上げることができるので、使用可否の判定の精度を向上することができる。
【0125】
図6および図12~14に示されるように、CSF22の非破壊試験は、CSF22の入口端22Aを撮像した入口画像と出口端22Bを撮像した出口画像との画像解析を含んでいる。非破壊試験結果データ320は、画像解析の結果を表す出入口画像データ320Bを含んでいる。これにより、入口画像と出口画像との画像解析の結果を学習用のモデル366の学習に用いることができ、かつ、画像解析の結果を用いることでCSF22の使用可否をより精度よく判定することができる。
【0126】
図13,14に示されるように、入口画像の一部がトリミングされ、また出口画像の一部がトリミングされる。入口画像および出口画像からCSF22以外の物体を取り除くことにより、CSF22の使用可否の判定において価値の高い箇所の分解能を上げることができるので、使用可否の判定の精度を向上することができる。
【0127】
図6および図18に示されるように、CSF22の非破壊試験は、X線コンピュータ断層撮影試験を含んでいる。非破壊試験結果データ320は、X線コンピュータ断層撮影試験の結果を表す断面像データ320Cを含んでいる。これにより、X線コンピュータ断層撮影試験の結果を学習用のモデル366の学習に用いることができ、かつ、X線コンピュータ断層撮影試験の結果を用いることでCSF22の使用可否をより精度よく判定することができる。
【0128】
図6および図16,17に示されるように、CSF22の非破壊試験は、X線コンピュータ断層撮影試験に替えて、またはこれに加えて、X線透過試験を含んでもよい。その場合、非破壊試験結果データ320は、X線透過試験の結果を示す透過像データ320Dを含んでいる。これにより、X線透過試験の結果を学習用のモデル366の学習に用いることができ、かつ、X線透過試験の結果を用いることでCSF22の使用可否をより精度よく判定することができる。
【0129】
図16に示されるように、透過像データ320Dの一部がトリミングされる。透過像データ320DからCSF22以外の物体を取り除くことにより、CSF22の使用可否の判定において価値の高い箇所の分解能を上げることができるので、使用可否の判定の精度を向上することができる。
【0130】
[蒸留モデルの製造方法]
上述した学習済モデル116は、学習用コンピュータ300が非破壊試験結果データ320を用いて機械学習により学習したモデルに限られず、当該学習したモデルを利用して生成されたモデルであってもよい。たとえば学習済モデル116は、学習済みのモデルにデータの入出力を繰り返すことで得られる結果を基に学習させた別のモデル(蒸留モデル)であってもよい。図22は、蒸留モデルを生成するための処理を示すフローチャートである。
【0131】
図22に示されるように、まずステップS301において、非破壊試験結果データを取得する。図5に示されるステップS1と同様に、学習用のコンピュータは、非破壊試験装置200から、排ガス処理フィルタ(CSF22)の非破壊試験の結果を表す非破壊試験結果データ320を取得する。
【0132】
次にステップS302において、学習用のコンピュータは、学習済みの第1の排ガス処理フィルタ(CSF22)検査モデルに、非破壊試験結果データ320を入力して、非破壊試験が行なわれたCSF22が再生使用可能であるかを推定する。ステップS303において、学習用のコンピュータは、使用可否推定結果を出力する。
【0133】
学習用のコンピュータは、ステップS301で取得された非破壊試験結果データ320を、学習済みの第1のCSF検査モデルの入力層に入力する。学習済みの第1のCSF検査モデルの出力層から、使用可否推定結果、具体的には、非破壊試験が行われたCSF22が、そのまま再生使用可能であるか、洗滌すれば再生使用可能であるか、または、再生使用不可能であり廃棄されるべきであるか、を推定した推定結果が、出力される。
【0134】
次にステップS304において、学習用のコンピュータは、ステップS301で取得した非破壊試験結果データ320と、ステップS303で出力した使用可否推定結果とを、学習データとして保存する。
【0135】
次にステップS305において、学習用のコンピュータは、第2の排ガス処理フィルタ(CSF22)検査モデルの学習を行う。学習用のコンピュータは、ステップS304で保存された非破壊試験結果データ320を、第2のCSF検査モデルの入力層に入力する。学習用のコンピュータは、第2のCSF検査モデルの出力層から、非破壊試験が行われたCSF22の使用可否推定結果を示す出力値を出力する。第2のCSF検査モデルから出力された使用可否推定結果と、ステップS303で出力した、第1のCSF検査モデルから出力された使用可否推定結果との誤差を求める。この誤差に基づいて、学習用のコンピュータは、第2のCSF検査モデルのパラメータを更新する。このようにして、第2のCSF検査モデルの学習が行われる。
【0136】
最後にステップS306において、更新された第2のCSF検査モデルのパラメータを、学習済みのパラメータとして保存する。そして、処理を終了する(エンド)。
【0137】
以上のように、非破壊試験結果データと、第1のCSF検査モデルを用いてCSF22の使用可否を推定した使用可否推定結果と、を学習用データとして、第2のCSF検査モデル(蒸留モデル)を学習させることで、学習用のコンピュータは、第1のCSF検査モデルおよびシンプルな第2のCSF検査モデルを用いて、非破壊検査が行われたCSFの再生使用可否を推定することができる。これにより、CSFの使用可否を推定するための判定用コンピュータの負荷を軽減することができる。
【0138】
上記実施形態では、学習済モデル116および学習用のモデル366は、ニューラルネットワークを含んでいる。これに限られず、学習済モデル116および学習用のモデル366は、たとえばサポートベクターマシン、決定木など、機械学習を用いて排ガス処理フィルタの非破壊検査結果からその排ガス処理フィルタが再生使用可能であるか否かを精度よく推定できるモデルであってもよい。
【0139】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0140】
1 排ガス後処理装置、2 DPF装置、3 SCR装置、10 エンジン、11 排気管、21 DOC、22 CSF、22A 入口端、22B 出口端、28 保持管、31 脱硝触媒、32 アンモニア酸化触媒、100 コンピュータ、102,302 ディスプレイ、104,304 プロセッサ、106,306 メモリ、108,308 ネットワークコントローラ、110,310 ストレージ、114,314 アプリケーションプログラム、116,326 学習済モデル、116N,366N ネットワーク構造、116Na,366Na 入力層、116Nb,366Nb 中間層、116Nc,366Nc 出力層、116P 学習済パラメータ、120 使用可否推定結果、122 光学ドライブ、124 光学ディスク、126,330 入力装置、127 キーボード、128 マウス、150,350 入力受付部、160,360 制御部、161 使用可否推定部、162 表示制御部、170 表示部、200 非破壊試験装置、210 超音波探傷試験機、220 撮像装置、230 X線CTスキャナ、300 学習用コンピュータ、316 前処理プログラム、318,368 学習用プログラム、320 非破壊試験結果データ、320A 超音波探傷試験結果データ、320B 出入口画像データ、320C 断面像データ、322 使用可否判定結果データ、324 学習用データセット、362 学習部、366 学習用のモデル、366P パラメータ、370 通信IF部。
図1
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