(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】信号処理装置、及び、信号処理方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/12 20060101AFI20231201BHJP
H04S 7/00 20060101ALI20231201BHJP
G10L 21/0364 20130101ALI20231201BHJP
【FI】
H04R3/12 Z
H04S7/00 300
G10L21/0364
(21)【出願番号】P 2019127330
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-07-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 平成31年2月5日、販売した場所 アマゾンジャパン合同会社(東京都目黒区下目黒1丁目8-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】521423924
【氏名又は名称】オンキヨーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 圭亮
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-210599(JP,A)
【文献】特開2010-212760(JP,A)
【文献】特開2008-219881(JP,A)
【文献】特開2010-118977(JP,A)
【文献】特表2003-524906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/12
H04S 7/00
G10L 21/0364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力する信号処理部を備え
、
前記フロントスピーカーは、フロントレフトスピーカーと、フロントライトスピーカーと、を含み、
前記信号処理部は、
前記フロントレフトスピーカー用のフロントレフトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第1相関係数と、
前記フロントライトスピーカー用のフロントライトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第2相関係数と、を算出し、
算出した前記第1相関係数、及び、前記第2相関係数に基づいて、前記センターチャンネル音声信号の、前記フロントレフトチャンネル音声信号、及び、前記フロントライトチャンネル音声信号への加算量を決定する
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記センターチャンネル音声信号を、前記フロントスピーカー用のフロントチャンネル音声信号に加算することで、前記センターチャンネル音声信号を、前記フロントスピーカーに出力することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、レベルを調整した前記センターチャンネル音声信号を、レベルを調整した前記フロントチャンネル音声信号に加算することを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
ボリューム調整部をさらに備え、
前記ボリューム調整部は、前記信号処理部により加算された音声信号のレベルを調整することを特徴とする請求項2又は3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
ボリューム調整部をさらに備え、
前記ボリューム調整部は、前記センタースピーカーに出力される前記センターチャンネル音声信号のレベルを調整することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記ボリューム調整部がレベルを調整した音声信号を増幅して前記フロントスピーカーに出力する増幅部をさらに備える請求項4又は5に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、前記第2相関係数よりも前記第1相関係数の値が大きい場合、前記フロントレフトチャンネル音声信号に、前記フロントライトチャンネル音声信号よりも、前記センターチャンネル音声信号を多く加算することを特徴とする請求項
1又は6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記信号処理部は、前記第1相関係数よりも前記第2相関係数の値が大きい場合、前記フロントライトチャンネル音声信号に、前記フロントレフトチャンネル音声信号よりも、前記センターチャンネル音声信号を多く加算することを特徴とする請求項
1又は
6に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、
前記フロントレフトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、前記フロントライトチャンネル音声信号と、に対して、所定周波数帯域成分を抽出するバンドパスフィルター処理を行い、
前記バンドパスフィルター処理を行った音声信号に基づいて、前記第1相関係数、及び、前記第2相関係数を算出することを特徴とする請求項
1、6、7、及び8のいずれか1項に
記載の信号処理装置。
【請求項10】
センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力する信号処理方法
であって、
前記フロントレフトスピーカー用のフロントレフトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第1相関係数と、
前記フロントライトスピーカー用のフロントライトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第2相関係数と、を算出し、
算出した前記第1相関係数、及び、前記第2相関係数に基づいて、前記センターチャンネル音声信号の、前記フロントレフトチャンネル音声信号、及び、前記フロントライトチャンネル音声信号への加算量を決定する
ことを特徴とする信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号に信号処理を行う信号処理装置、及び、信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声信号に含まれるセリフを強調する手段として、音声信号にイコライザーを施すことが行われていた。特許文献1には、センターチャンネル信号のセリフを明瞭とするための発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、セリフを強調するために、音声信号にイコライザーを施すと、フィルタリング処理を行うことから、位相ずれが生じるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、位相ずれが生じることなく、セリフを強調することが可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の信号処理装置は、センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力する信号処理部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、信号処理部は、センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力する。これにより、セリフを強調するために、音声信号にイコライザーを施す必要がないため、位相ずれが生じることがない。また、センターチャンネル音声信号に基づく音声が、フロントスピーカーから出力されるため、セリフを強調することができる。このように、本発明によれば、位相ずれが生じることなく、セリフを強調することができる。
【0008】
第2の発明の信号処理装置は、第1の発明の信号処理装置において、前記信号処理部は、前記センターチャンネル音声信号を、前記フロントスピーカー用のフロントチャンネル音声信号に加算することで、前記センターチャンネル音声信号を、前記フロントスピーカーに出力することを特徴とする。
【0009】
第3の発明の信号処理装置は、第2の発明の信号処理装置において、前記信号処理部は、レベルを調整した前記センターチャンネル音声信号を、レベルを調整した前記フロントチャンネル音声信号に加算することを特徴とする。
【0010】
第4の発明の信号処理装置は、第2又は第3の発明の信号処理装置において、ボリューム調整部をさらに備え、前記ボリューム調整部は、前記信号処理部により加算された音声信号のレベルを調整することを特徴とする。
【0011】
第5の発明の信号処理装置は、第1~第3のいずれかの発明の信号処理装置において、ボリューム調整部をさらに備え、前記ボリューム調整部は、前記センタースピーカーに出力される前記センターチャンネル音声信号のレベルを調整することを特徴とする。
【0012】
例えば、フロントスピーカーとセンタースピーカーとで、異なるスピーカーが使用されている場合、センターチャンネル音声信号が、フロントスピーカーに出力されると、定位が上方向へリフトアップしてしまい、聴こえ方が不自然となるという問題がある。本発明では、ボリューム調整部により、センタースピーカーに出力されるセンターチャンネル音声信号のレベルが調整される(下げられる)。このため、センタースピーカーから出力されるセンター成分よりも、フロントスピーカーから出力されるセンター成分が大きくなることで、ファントム音像が優勢となり、上記の問題を解決することができる。
【0013】
第6の発明の信号処理装置は、第1の発明の信号処理装置において、前記フロントスピーカーは、フロントレフトスピーカーと、フロントライトスピーカーと、を含み、前記信号処理部は、前記フロントレフトスピーカー用のフロントレフトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第1相関係数と、前記フロントライトスピーカー用のフロントライトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第2相関係数と、を算出し、算出した前記第1相関係数、及び、前記第2相関係数に基づいて、前記センターチャンネル音声信号の、前記フロントレフトチャンネル音声信号、及び、前記フロントライトチャンネル音声信号への加算量を決定することを特徴とする。
【0014】
本発明では、信号処理部は、フロントレフトチャンネル音声信号と、センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第1相関係数と、フロントライトスピーカー用のフロントライトチャンネル音声信号と、センターチャンネル音声信号と、の相関係数である第2相関係数と、を算出する。そして、信号処理部は、算出した第1相関係数、及び、第2相関係数に基づいて、センターチャンネル音声信号の、フロントレフトチャンネル音声信号、及び、フロントライトチャンネル音声信号への加算量を決定する。例えば、算出した相関係数に基づいて、センターチャンネル音声信号とより相関が高いフロントチャンネル音声信号に対して、センターチャンネル音声信号を多く加算することで、左右方向に移動するようなシーンが含まれる音声信号の場合であっても、移動感(定位)を損なうことなく、セリフを明瞭とすることができる。
【0015】
第7の発明の信号処理装置は、第6の発明の信号処理装置において、前記信号処理部は、前記第2相関係数よりも前記第1相関係数の値が大きい場合、前記フロントレフトチャンネル音声信号に、前記フロントライトチャンネル音声信号よりも、前記センターチャンネル音声信号を多く加算することを特徴とする。
【0016】
第8の発明の信号処理装置は、第6又は第7の発明の信号処理装置において、前記信号処理部は、前記第1相関係数よりも前記第2相関係数の値が大きい場合、前記フロントライトチャンネル音声信号に、前記フロントレフトチャンネル音声信号よりも、前記センターチャンネル音声信号を多く加算することを特徴とする。
【0017】
第9の発明の信号処理装置は、第6~第8のいずれかの発明の信号処理装置において、前記信号処理部は、前記フロントレフトチャンネル音声信号と、前記センターチャンネル音声信号と、前記フロントライトチャンネル音声信号と、に対して、所定周波数帯域成分を抽出するバンドパスフィルター処理を行い、前記バンドパスフィルター処理を行った音声信号に基づいて、前記第1相関係数、及び、前記第2相関係数を算出することを特徴とする。
【0018】
第10の発明の信号処理方法は、センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、位相ずれが生じることなく、セリフを強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は、DSP等における信号処理を示す図である。(b)は、DSP等における信号処理のパラメータ等を示す図である。
【
図3】(a)は、DSP等における信号処理を示す図である。(b)は、DSP等における信号処理のパラメータ等を示す図である。
【
図4】(a)は、DSP等における信号処理を示す図である。(b)は、DSP等における信号処理のパラメータ等を示す図である。
【
図5】(a)は、DSP等における信号処理を示す図である。(b)は、DSP等における信号処理のパラメータ等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るAVレシーバー1の構成を示すブロック図である。AVレシーバー1(信号処理装置)は、例えば、Blu-ray(登録商標) Disc(以下、「BD」という。)プレーヤー101から出力された音声信号に、増幅等の処理を行って、スピーカー201に出力する。
【0022】
図1に示すように、AVレシーバー1は、マイクロコンピューター2、記憶部3、表示部4、操作部5、デジタル信号入力端子6、DSP(Digital Signal Processor)8、D/Aコンバーター(以下、「DAC」という。)9、ボリューム調整部10、増幅部11、スピーカー端子12を備える。
【0023】
マイクロコンピューター2(制御部)は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアから構成されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムに従って、AVレシーバー1を構成する各部を制御する。RAMは、CPUの主メモリとして機能する。ROMは、プログラムを記憶する。
【0024】
表示部4は、設定画面等を表示するものであり、LCD(液晶ディスプレイ)や蛍光表示管等である。操作部5は、ユーザー操作を受け付けるためのものであり、AVレシーバー1の筐体に設けられた操作ボタンやリモートコントローラーである。ユーザーは、操作部5を操作することにより、例えば、音声信号のボリューム値をAVレシーバー1に指示することができる。
【0025】
デジタル信号入力端子6には、BDプレーヤー101が接続されている。デジタル信号入力端子6には、BDプレーヤー101からデジタル音声信号が入力される。DSP8(信号処理部)は、デジタル音声信号に、デコード、イコライザー処理等のデジタル信号処理を行う。デジタル信号処理が行われたデジタル音声信号は、DAC9に出力される。DAC9は、デジタル音声信号をアナログ音声信号にD/A変換する。D/A変換されたアナログ音声信号は、ボリューム調整部10に出力される。
【0026】
ボリューム調整部10は、アナログ音声信号のボリューム値を調整するボリュームICである。ボリューム値が調整されたアナログ音声信号は、増幅部11に出力される。増幅部11は、ボリューム値が調整されたアナログ音声信号を増幅する。増幅されたアナログ音声信号は、スピーカー端子12に出力される。スピーカー端子12には、スピーカー201が接続されている。スピーカー201は、アナログ音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0027】
(第1実施形態)
DSP8は、セリフを強調するため、センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカー(フロントレフトスピーカー、フロントライトスピーカー)に出力する。具体的には、DSP8は、センターチャンネル音声信号を、フロントスピーカー用のフロントチャンネル音声信号に加算することで、センターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力する
【0028】
図2(a)は、DSP8等における信号処理を示す図である。
図2(b)は、DSP8等における信号処理のパラメータ等を示す図である。音声信号は、フロントレレフトスピーカー用のフロントレフトチャンネル音声信号、センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号、フロントライトスピーカー用のフロントライトチャンネル音声信号を含む。なお、以下では、「フロントレフト音声信号」のように、「チャンネル」を省略する場合がある。スピーカー201は、フロントレフトスピーカー、センタースピーカー、フロントライトスピーカーを含み、音声信号は、フロントレフトスピーカー、センタースピーカー、フロントライトスピーカーに出力される。
【0029】
マイクロコンピューター2は、セリフを強調するための設定値として、操作部5を介して、「1」~「5」の設定値を受け付ける。このときの各パラメータは、
図2(b)に示すとおりである。
図2(a)に示すように、DSP8は、フロントレフト音声信号(L)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベルを調整したフロントレフト音声信号と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。また、
図2(a)に示すように、DSP8は、フロントライト音声信号(R)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベルを調整したフロントライト音声信号と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。
【0030】
ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントレフト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号と、が加算された音声信号のレベルを「ga」調整する。この音声信号(L’)は、フロントレフトスピーカーに出力される。フロントレフトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。また、ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントライト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号とが、加算された音声信号のレベルを「ga」調整する。この音声信号(R’)は、フロントライトスピーカーに出力される。フロントライトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。センター音声信号(C=C’)は、センタースピーカーに出力される。センタースピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0031】
図3(a)は、DSP8等における信号処理を示す図である。
図3(b)は、DSP8等における信号処理のパラメータ等を示す図である。音声信号は、フロントレフト音声信号、センター音声信号、フロントライト音声信号を含む。スピーカー201は、フロントレフトスピーカー、フロントライトスピーカーを含み、音声信号は、フロントレフトスピーカー、フロントライトスピーカーに出力される。
【0032】
マイクロコンピューター2は、セリフを強調するための設定値として、操作部5を介して、「1」~「5」の設定値を受け付ける。このときの各パラメータは、
図3(b)に示すとおりである。
図3(a)に示すように、DSP8は、フロントレフト音声信号(L)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベル調整したフロントレフト音声信号と、レベル調整したセンター音声信号と、を加算する。また、
図3(a)に示すように、DSP8は、フロントライト音声信号(R)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベルを調整したフロントライト音声信号と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。
【0033】
ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントレフト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号と、が加算された音声信号のレベルを「ga」調整する。この音声信号(L’)は、フロントレフトスピーカーに出力される。フロントレフトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。また、ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントライト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号とが、加算された音声信号のレベルを「ga」調整する。この音声信号(R’)は、フロントライトスピーカーに出力される。フロントライトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0034】
図4(a)は、DSP8等における信号処理を示す図である。
図4(b)は、DSP8等における信号処理のパラメータ等を示す図である。音声信号は、フロントレフト音声信号、センター音声信号、フロントライト音声信号を含む。スピーカー201は、フロントレフトスピーカー、センタースピーカー、フロントライトスピーカーを含み、音声信号は、フロントレフトスピーカー、センタースピーカー、フロントライトスピーカーに出力される。
図4に示す信号処理は、
図2に示す信号処理と比べて、ボリューム調整部10により、音声信号が補正されている点が異なる。
【0035】
マイクロコンピューター2は、セリフを強調するための設定値として、操作部5を介して、「1」~「5」の設定値を受け付ける。このときの各パラメータは、
図4(b)に示すとおりである。
図4(a)に示すように、DSP8は、フロントレフト音声信号(L)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベルを調整したフロントレフト音声信号と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。また、
図4(a)に示すように、DSP8は、フロントライト音声信号(R)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベルを調整したフロントライト音声信号と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。
【0036】
ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントレフト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号と、が加算された音声信号のレベルを「ga」調整し、さらに、「gM」調整する。この音声信号(L’)は、フロントレフトスピーカーに出力される。フロントレフトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。また、ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントライト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号とが、加算された音声信号のレベルを「ga」調整し、さらに、「gM」調整する。この音声信号(R’)は、フロントライトスピーカーに出力される。フロントライトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。また、ボリューム調整部10は、センター音声信号(C)のレベルを「gC」調整し、さらに、「gM」調整する。この音声信号(C’)は、センタースピーカーに出力される。センタースピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。
と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。
【0037】
図5(a)は、DSP8等における信号処理を示す図である。
図5(b)は、DSP8等における信号処理のパラメータ等を示す図である。音声信号は、フロントレフト音声信号、センター音声信号、フロントライト音声信号を含む。スピーカー201は、フロントレフトスピーカー、フロントライトスピーカーを含み、音声信号は、フロントレフトスピーカー、フロントライトスピーカーに出力される。
図5に示す信号処理は、
図3に示す信号処理と比べて、ボリューム調整部10により、音声信号が補正されている点が異なる。
【0038】
マイクロコンピューター2は、セリフを強調するための設定値として、操作部5を介して、「1」~「5」の設定値を受け付ける。このときの各パラメータは、
図5(b)に示すとおりである。
図5(a)に示すように、DSP8は、フロントレフト音声信号(L)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベル調整したフロントレフト音声信号と、レベル調整したセンター音声信号と、を加算する。また、
図5(a)に示すように、DSP8は、フロントライト音声信号(R)のレベルを「g0」調整する。また、DSP8は、センター信号(C)のレベルを「g1」調整する。DSP8は、レベルを調整したフロントライト音声信号と、レベルを調整したセンター音声信号と、を加算する。
【0039】
ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントレフト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号と、が加算された音声信号のレベルを「ga」調整し、さらに、「gM」調整する。この音声信号(L’)は、フロントレフトスピーカーに出力される。フロントレフトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。また、ボリューム調整部10は、レベルが調整されたフロントライト音声信号と、レベルが調整されたセンター音声信号とが、加算された音声信号のレベルを「ga」調整し、さらに、「gM」調整する。この音声信号(R’)は、フロントライトスピーカーに出力される。フロントライトスピーカーは、出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0040】
なお、
図2(b)~
図5(b)に示すパラメータにおいて、パラメータが「-(マイナス)」の場合、音声信号のレベルが減衰される。パラメータが「+(プラス)」の場合、音声信号のレベルが増加される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、DSP8は、センタースピーカー用のセンターチャンネル音声信号を、フロントスピーカーに出力する。これにより、セリフを強調するために、音声信号にイコライザーを施す必要がないため、位相ずれが生じることがない。また、センターチャンネル音声信号に基づく音声が、フロントスピーカーから出力されるため、セリフを強調することができる。このように、本実施形態によれば、位相ずれが生じることなく、セリフを強調することができる。
【0042】
また、例えば、フロントスピーカーとセンタースピーカーとで、異なるスピーカーが使用されている場合、センターチャンネル音声信号が、フロントスピーカーに出力されると、定位が上方向へリフトアップしてしまい、聴こえ方が不自然となるという問題がある。本実施形態では、ボリューム調整部10により、センタースピーカーに出力されるセンターチャンネル音声信号のレベルが調整される(下げられる)。このため、センタースピーカーから出力されるセンター成分よりも、フロントスピーカーから出力されるセンター成分が大きくなることで、ファントム音像が優勢となり、上記の問題を解決することができる。
【0043】
(第2実施形態)
第1実施形態では、センター音声信号が、フロントレフトスピーカー、フロントライトスピーカーに出力される(振り分けられる)ことで、音質の劣化を防ぎ、且つ、明確なセリフ強調効果を実現可能としている。第1実施形態によれば、単純に中央へ定位しているコンテンツ(音声信号)であれば問題なく、上記の効果を発揮することができる。しかしながら、例えば、右方向から左方向へ移動するようなシーンが含まれるコンテンツ(音声信号)の場合、センタースピーカーから出力されるべき信号が、単純に、フロントレフトスピーカーとフロントライトスピーカーとから出力されてしまうため、移動感(定位)が不明瞭となる。
【0044】
図6は、DSP8における信号処理を示す図である。
図6に示すように、DSP8は、デコード後のフロントレフト音声信号、センター音声信号、フロントライト信号に対して、所定周波数帯域成分を抽出するバンドパスフィルター(以下、「BPF」という。)処理を行う。次に、DSP8は、BPF処理を行ったフロントレフト音声信号(=L’)、センター音声信号(=C’)、フロントライト音声信号(=R’)に対して、後述する相関係数算出方法に基づき、L’とC’の相関係数r_lc(第1相関係数)と、R’とC’の相関係数r_rc(第2相関係数)と、を算出する。
【0045】
DSP8は、算出した相関係数r_lcとr_rcとの値を比較し、ボーカル処理(センター音声信号のフロント音声信号への加算処理)における、センター音声信号のフロント音声信号への加算量(振り分け量)を以下の条件に基づいて、決定する。相関係数の関係と処理内容とは、以下のとおりである。
r_lc=r_rc 第1実施形態と同様
|r_lc|>|r_rc| フロントレフト音声信号へ多くセンター音声信号を加算する(振り分ける)
|r_lc|<|r_rc| フロントライト音声信号へ多くセンター音声信号を加算する(振り分ける)
【0046】
すなわち、DSP8は、r_rcよりもr_lcの値が大きい場合、フロントレフトチャンネル音声信号に、フロントライトチャンネル音声信号よりも、センターチャンネル音声信号を多く加算する。また、DSP8は、r_lcよりもr_rcの値が大きい場合、フロントライトチャンネル音声信号に、フロントレフトチャンネル音声信号よりも、センターチャンネル音声信号を多く加算する。
【0047】
以下、相関係数算出方法について説明する。N個のデータをもつ変数xと変数yとにおける相関係数は、次の数式で表すことができる。
【数1】
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、DSP8は、フロントレフトチャンネル音声信号と、センターチャンネル音声信号と、の相関係数であるr_lc(第1相関係数)と、フロントライトスピーカー用のフロントライトチャンネル音声信号と、センターチャンネル音声信号と、の相関係数であるr_rc(第2相関係数)と、を算出する。そして、DSP8は、算出したr_lc、及び、r_rcに基づいて、センターチャンネル音声信号の、フロントレフトチャンネル音声信号、及び、フロントライトチャンネル音声信号への加算(振り分け)量を決定する。例えば、相関が高い音声信号に、センターチャンネル音声信号を多く加算することで、左右方向に移動するようなシーンが含まれる音声信号の場合であっても、移動感(定位)を明瞭とすることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、音声信号に信号処理を行う信号処理装置、及び、信号処理方法に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0051】
1 AVレシーバー(信号処理装置)
2 マイクロコンピューター(制御部)
8 DSP(信号処理部)
10 ボリューム調整部