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特許7394560空気調和制御装置、空気調和制御方法及び空気調和制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】空気調和制御装置、空気調和制御方法及び空気調和制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20231201BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20231201BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20231201BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20231201BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20231201BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20231201BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20231201BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20231201BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20231201BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20231201BHJP
   F24F 110/22 20180101ALN20231201BHJP
   F24F 120/10 20180101ALN20231201BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/88
F24F11/64
F24F11/63
F24F7/007 B
F24F11/70
F24F11/65
F24F110:10
F24F110:12
F24F110:20
F24F110:22
F24F120:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019158434
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038855
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 夏美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
(72)【発明者】
【氏名】百田 真史
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/041896(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/125650(WO,A1)
【文献】特開2002-286260(JP,A)
【文献】特開2001-141281(JP,A)
【文献】特開2014-070827(JP,A)
【文献】特開2015-145764(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189790(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0206278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00-7/007
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被空気調和空間の比エンタルピである内気の比エンタルピと、外気の比エンタルピとを算出し、前記内気の比エンタルピと前記外気の比エンタルピとを比較し、前記内気の比エンタルピが前記外気の比エンタルピよりも大きい場合に、外気温度、外気絶対湿度及び前記外気の比エンタルピである外気パラメータの各々が各々の上限値と下限値との範囲内にあるか否かを判定し、前記外気パラメータのいずれかが上限値と下限値との範囲内にない場合と、前記内気の比エンタルピが前記外気の比エンタルピよりも大きくない場合とにおいて、前記外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給することによる前記被空気調和空間の空気調和である第2の空気調和は行わずに、空気調和機による前記被空気調和空間の空気調和である第1の空気調和を行うことを決定し、更に、前記外気を温度調節して前記被空気調和空間に供給して前記被空気調和空間の換気を行うことを決定する決定部と、
前記決定部により前記外気パラメータの全てが上限値と下限値との範囲内にあると判定された場合に、前記第1の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第1の運転効率と、前記第2の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第2の運転効率とを比較する比較部とを有し
前記決定部は、
前記第1の運転効率が前記第2の運転効率未満である場合に、前記第1の空気調和は行わずに前記第2の空気調和を行うことを決定し、前記第1の運転効率が前記第2の運転効率以上である場合に、前記第2の空気調和は行わずに前記第1の空気調和を行い、更に、前記外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給して前記被空気調和空間の換気を行うことを決定する空気調和制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、
前記被空気調和空間の所在人数に対応させた換気量にて前記被空気調和空間の換気を行うことを決定する請求項に記載の空気調和制御装置。
【請求項3】
前記比較部は、
前記第1の運転効率と、全熱交換器により前記第2の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第2の運転効率とを比較する請求項1に記載の空気調和制御装置。
【請求項4】
前記空気調和制御装置は、更に、
前記第1の運転効率と前記第2の運転効率とを算出する算出部を有し、
前記比較部は、
前記算出部により算出された前記第1の運転効率と前記第2の運転効率とを比較する請求項1に記載の空気調和制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、
外気温度から処理熱負荷を取得することができるテーブル及び数式を用いて処理熱負荷を取得し、取得した処理熱負荷を用いて前記第1の運転効率と前記第2の運転効率とを算出する請求項に記載の空気調和制御装置。
【請求項6】
コンピュータが、被空気調和空間の比エンタルピである内気の比エンタルピと、外気の比エンタルピとを算出し、前記内気の比エンタルピと前記外気の比エンタルピとを比較し、前記内気の比エンタルピが前記外気の比エンタルピよりも大きい場合に、外気温度、外気絶対湿度及び前記外気の比エンタルピである外気パラメータの各々が各々の上限値と下限値との範囲内にあるか否かを判定し、前記外気パラメータのいずれかが上限値と下限値との範囲内にない場合と、前記内気の比エンタルピが前記外気の比エンタルピよりも大きくない場合とにおいて、前記外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給することによる前記被空気調和空間の空気調和である第2の空気調和は行わずに、空気調和機による前記被空気調和空間の空気調和である第1の空気調和を行うことを決定し、更に、前記外気を温度調節して前記被空気調和空間に供給して前記被空気調和空間の換気を行うことを決定し、
前記外気パラメータの全てが上限値と下限値との範囲内にあると判定された場合に、前記コンピュータが、前記第1の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第1の運転効率と、前記第2の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第2の運転効率とを比較し、
前記第1の運転効率が前記第2の運転効率未満である場合に、前記コンピュータが、前記第1の空気調和は行わずに前記第2の空気調和を行うことを決定し、前記第1の運転効率が前記第2の運転効率以上である場合に、前記コンピュータが、前記第2の空気調和は行わずに前記第1の空気調和を行い、更に、前記外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給して前記被空気調和空間の換気を行うことを決定する空気調和制御方法。
【請求項7】
被空気調和空間の比エンタルピである内気の比エンタルピと、外気の比エンタルピとを算出し、前記内気の比エンタルピと前記外気の比エンタルピとを比較し、前記内気の比エンタルピが前記外気の比エンタルピよりも大きい場合に、外気温度、外気絶対湿度及び前記外気の比エンタルピである外気パラメータの各々が各々の上限値と下限値との範囲内にあるか否かを判定し、前記外気パラメータのいずれかが上限値と下限値との範囲内にない場合と、前記内気の比エンタルピが前記外気の比エンタルピよりも大きくない場合とにおいて、前記外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給することによる前記被空気調和空間の空気調和である第2の空気調和は行わずに、空気調和機による前記被空気調和空間の空気調和である第1の空気調和を行うことを決定し、更に、前記外気を温度調節して前記被空気調和空間に供給して前記被空気調和空間の換気を行うことを決定する決定処理と、
前記決定処理により前記外気パラメータの全てが上限値と下限値との範囲内にあると判定された場合に、前記第1の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第1の運転効率と、前記第2の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第2の運転効率とを比較する比較処理とをコンピュータに実行させる空気調和制御プログラムであって、
前記決定処理において、
前記第1の運転効率が前記第2の運転効率未満である場合に、前記コンピュータに、
前記第1の空気調和は行わずに前記第2の空気調和を行うことを決定させ、前記第1の運転効率が前記第2の運転効率以上である場合に、前記コンピュータに、前記第2の空気調和は行わずに前記第1の空気調和を行い、更に、前記外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給して前記被空気調和空間の換気を行うことを決定させる空気調和制御プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
業務用建物の二酸化炭素排出量の削減の実現ためにZEB(Zero-Energy Building)に期待が寄せられている。ZEBは、エネルギー消費の削減及び再生可能エネルギーの利用により建物のエネルギー消費量をゼロに近づけるという考え方である。ZEBを実現するための技術として、外気冷房が注目されている。
外気冷房とは、外気を温度調節することなく被空気調和空間に供給して被空気調和空間を空気調和(冷房)する技術である。
外気冷房を用いた技術として特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-156148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、外気温度、外気湿度及び屋内外のエンタルピ差がそれぞれ条件を満たすと、被空気調和空間に外気を供給する。
特許文献1では、外気冷房の制御と空気調和機による通常冷房の制御とが独立して行われている。このため、外気冷房よりも空気調和機を用いた通常冷房の方が消費エネルギーを抑えることができる状況であっても、外気温度、外気湿度及びエンタルピ差の条件が満たされた場合は、空気調和機を用いた通常冷房ではなく外気冷房が行われる。例えば、エンタルピ差が少ないときは、外気冷房に用いられる換気装置のファンを稼働させるよりも、空気調和機のヒートポンプを稼動させる方が効率がよい場合がある。このような場合は、外気冷房よりも空気調和機を用いた通常冷房の方が消費エネルギーを抑えることができる。
このように、特許文献1の技術では、消費エネルギーの抑制に適した空気調和方法を効果的に選択できていないという課題がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決することを主な目的の一つとしている。より具体的には、消費エネルギーの抑制に適した空気調和方法を選択することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気調和制御装置は、
空気調和機による被空気調和空間の空気調和である第1の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第1の運転効率と、外気を温度調節せずに前記被空気調和空間に供給することによる前記被空気調和空間の空気調和である第2の空気調和のみが行われる場合の運転効率である第2の運転効率とを比較する比較部と、
前記比較部による前記1の運転効率と前記第2の運転効率との比較結果に基づき、前記第1の空気調和を行うか否か及び前記第2の空気調和を行うか否かを決定する決定部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消費エネルギーの抑制に適した空気調和方法を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る空気調和システムの構成例を示す図。
図2】実施の形態1に係る空気調和制御装置のハードウェア構成例を示す図。
図3】実施の形態1に係る空気調和制御装置の機能構成例を示す図。
図4】実施の形態1に係る空気調和制御装置の動作例を示すフローチャート。
図5】実施の形態1に係る空気調和制御装置の動作例を示すフローチャート。
図6】実施の形態2に係る空気調和制御装置の機能構成例を示す図。
図7】実施の形態1に係る業務用建物での空気調和システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。以下の実施の形態の説明及び図面において、同一の符号を付したものは、同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る空気調和システムの構成例を示す。
被空気調和空間500は、空気調和の対象となる空間である。被空気調和空間500は例えば執務室である。本実施の形態では、被空気調和空間500の空気調和の例として冷房による空気調和を説明する。被空気調和空間500は、室内機201による通常冷房又は換気装置202による外気冷房により空気調和される。なお、被空気調和空間500の内部を室内、被空気調和空間500の外部を室外ともいう。
被空気調和空間500には、例えば、発熱源として、利用者501、照明502及びPC(Personal Computer)503が存在する。また、被空気調和空間500には、窓504が存在する。
更に、被空気調和空間500には、室内センサ401が存在する。室内センサ401は、被空気調和空間500内の温度、湿度等を計測する。
なお、室外には室外センサ402が存在する。室外センサ402は、室外の温度、湿度等を計測する。
【0011】
室内機201は、例えば被空気調和空間500の天井裏に配置される。室内機201は、室外にある室外機300と接続されている。
室内機201は空気調和機の例である。
また、室内機201による通常冷房は第1の空気調和ともいう。
【0012】
図1では、換気装置202は被空気調和空間500の天井裏に配置されているが、換気装置202は被空気調和空間500内に配置されてもよい。また、換気装置202は被空気調和空間500から離れて配置されてもよい。
換気装置202は例えば全熱交換器である。
【0013】
図7は、業務用建物における空気調和システムの構成例を示す。
図7は、換気装置202が全熱交換器である例を示す。
換気装置202が全熱交換器であれば、図7に示すように、換気装置202は被空気調和空間500ごとに配置される。
また、図7では、図の簡明化のため、空気調和制御装置100、室内機201及び換気装置202以外の要素の図示は省略している。また、図7では、空気調和制御装置100と室内機201及び換気装置202との接続線は一部を除き図示を省略している。
以降は図1の構成を用いて説明を進める。
【0014】
換気装置202は、外気を温度調節して被空気調和空間500に供給する方法と、外気を温度調節せずに被空気調和空間500に供給する方法とに対応している。後者の方法が外気冷房に該当する。また、換気装置202による外気冷房を第2の空気調和ともいう。
なお、図1のSAは給気、すなわち、室内機201又は換気装置202から被空気調和空間500に供給する空気である。RAは還気、すなわち、被空気調和空間500から室内機201又は換気装置202に戻す空気である。OAは外気、すなわち、外部から室外機300又は換気装置202に供給される空気である。EAは排気、すなわち室外機300又は換気装置202から外部に排出する空気である。
図1に示すように、換気装置202からは、OAが温度調節されて得られたSA、OAが温度調節されずに得られたSAのいずれかが供給される。以下、OAが温度調節されて得られたSAを温度調節SAともいう。また、OAが温度調節されずに得られたSAを非温度調節SAともいう。
【0015】
室内機201及び換気装置202は、空気調和制御装置100に接続される。空気調和制御装置100は、室内センサ401と室外センサ402に接続されている。空気調和制御装置100は、室内センサ401から被空気調和空間500内の温度等の計測値を取得する。また、空気調和制御装置100は、室外センサ402から室外の温度等の計測値を取得する。
空気調和制御装置100は、室内センサ401及び室外センサ402から取得した値を用いて、室内機201による第1の空気調和(通常冷房)のみが行われる場合の運転効率(以下、第1の運転効率という)と、換気装置202による第2の空気調和(外気冷房)のみが行われる場合の運転効率(以下、第2の運転効率という)とを算出する。そして、空気調和制御装置100は、第1の運転効率と第2の運転効率とを比較し、運転効率がよい冷房方法を選択する。この結果、空気調和制御装置100は、消費エネルギーが少ない冷房方法を選択することができる。なお、本実施の形態では、空気調和制御装置100は、第1の運転効率及び第2の運転効率として、COP(Coefficient Of Performance)を算出するものとする。
なお、空気調和制御装置100の動作手順は、空気調和制御方法に相当する。また、空気調和制御装置100の動作を実現するプログラムは、空気調和制御プログラムに相当する。
【0016】
室内センサ401には、温度センサ、湿度センサ、赤外線センサ、人数を検知可能なセンサが含まれる。温度センサは、被空気調和空間500内の気温を計測する。湿度センサは被空気調和空間500内の湿度を計測する。赤外線センサは、被空気調和空間500内の発熱源の個数を検知する。人数を検知可能なセンサは、被空気調和空間500内の所在人数を検知する。
【0017】
室外センサ402には、温度センサ、湿度センサが含まれる。温度センサは、室外の気温を計測する。湿度センサは室外の湿度を計測する。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る空気調和制御装置100のハードウェア構成例を示す。
空気調和制御装置100は、ハードウェアとして、プロセッサ151、主記憶装置152、補助記憶装置153、通信装置154及びバス155を備える。プロセッサ151、主記憶装置152、補助記憶装置153及び通信装置154はバス155に接続されている。
補助記憶装置153には、OS(Operating System)156、プログラム157及びファイル158が格納されている。
プログラム157は、後述する室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104、比較部105及び決定部106の機能を実現するプログラムである。
プログラム157は、補助記憶装置153から主記憶装置152にロードされる。そして、プロセッサ151がプログラム157を実行して、室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104、比較部105及び決定部106を動作する
図2では、プロセッサ151がプログラム157を実行している状態、すなわち、プロセッサ151が室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104、比較部105及び決定部106として動作している状態を模式的に表している。
通信装置154は、室内機201、換気装置202、室内センサ401及び室外センサ402との通信に用いられる。
【0019】
図3は、本実施の形態に係る空気調和制御装置100の機能構成例を示す。
【0020】
室内センサ値取得部101は、通信装置154を介して、室内センサ401から、室内センサ401の温度、湿度等の計測値を取得する。室内センサ値取得部101は、取得した計測値をセンサ値記憶部103に格納する。以下では、室内センサ401の計測値を室内センサ値ともいう。
室外センサ値取得部102は、通信装置154を介して、室外センサ402から、室外センサ402の温度、湿度等の計測値を取得する。室外センサ値取得部102は、取得した計測値をセンサ値記憶部103に格納する。以下では、室外センサ402の計測値を室外センサ値ともいう。
【0021】
センサ値記憶部103は、室内センサ値取得部101が取得した室内センサ値及び室外センサ値取得部102が取得した室外センサ値を記憶する。
センサ値記憶部103は、図2に示す主記憶装置152又は補助記憶装置153により実現される。
【0022】
算出部104は、センサ値記憶部103から室内センサ値及び室外センサ値を読み出す。そして、算出部104は、室内センサ値及び室外センサ値を用いて、第1の運転効率及び第2の運転効率を算出する。
第1の運転効率は、前述したように、室内機201による第1の空気調和(通常冷房)のみが行われる場合の運転効率である。第2の運転効率は、換気装置202による第2の空気調和(外気冷房)のみが行われる場合の運転効率である。
算出部104は、算出した第1の運転効率及び第2の運転効率を比較部105に通知する。
【0023】
比較部105は、算出部104により算出された第1の運転効率と第2の運転効率とを比較する。比較部105は比較結果を決定部106に通知する。
なお、比較部105により行われる処理は比較処理に相当する。
【0024】
決定部106は、比較部105の比較結果に基づき、第1の空気調和(室内機201による通常冷房)を行うか否か及び第2の空気調和(換気装置202による外気冷房)を行うか否かを決定する。
より具体的には、決定部106は、第2の空気調和を行うための条件が成立するか否かを判定する。ここで、第2の空気調和を行うための条件は、内気の比エンタルピが外気の比エンタルピよりも大きいこと、外気パラメータが条件を満たすこと、である。そして、第2の空気調和を行うための条件が成立し、第1の運転効率が第2の運転効率未満である場合に、決定部106は、第1の空気調和は行わずに第2の空気調和を行うことを決定する。一方、第1の運転効率が第2の運転効率以上である場合は、決定部106は、第2の空気調和は行わずに第1の空気調和を行うことを決定する。また、この場合は、決定部106は、外気を温度調節せずに被空気調和空間500に供給して被空気調和空間500の換気を行うことを決定する。つまり、決定部106は非温度調節SAを被空気調和空間500に供給することを決定する。第2の空気調和(外気冷房)と非温度調節SAを用いる換気との違いは、給気量である。第2の空気調和(外気冷房)では、被空気調和空間500の設定温度を達成できる空気量の外気をそのまま被空気調和空間500に供給する。非温度調節SAを用いる換気では、必要換気量分だけ外気をそのまま被空気調和空間500に供給する。必要換気量は、被空気調和空間500の所在人数に対応する最低換気量である。効果最大化のため、このような外気導入量制御を行うことが望ましい。なお、必要換気量を超える換気を行ってもよい。また、第2の空気調和で被空気調和空間500の設定温度を達成できない場合に、室内機201でも冷却するような制御を追加してもよい。
【0025】
また、第2の空気調和を行うための条件が成立しない場合は、決定部106は、第2の空気調和は行わずに第1の空気調和を行うことを決定し、更に、決定部106は、外気を温度調節して被空気調和空間500に供給して被空気調和空間500の換気を行うことを決定する。第2の空気調和を行うための条件が成立しない場合は外気をそのまま被空気調和空間500に供給することは望ましくない。この場合は、全熱交換器において外気を室内温度に近づけた上で、外気による換気を行う。また、この時、必要換気量分だけ被空気調和空間500に供給する。必要換気量は、被空気調和空間500の所在人数に対応する最低換気量である。効果最大化のため、このような外気導入量制御を行うことが望ましい。なお、必要換気量を超える換気を行ってもよい。
決定部106は、決定内容に応じて、通信装置154を介して、室内機201又は換気装置202を制御する。例えば、室内機201が停止しており、換気装置202が稼動している状態で、第2の空気調和を行わず第1の空気調和を行う旨の決定を行った場合は、決定部106は、室内機201の運転を開始させる。
【0026】
なお、決定部106により行われる処理は決定処理に相当する。
【0027】
***動作の説明***
図4及び図5は、本実施の形態に係る空気調和制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0028】
図4は、室内センサ値及び室外センサ値の取得手順を示す。図4の手順は一定周期で繰り返し行われる。
【0029】
ステップS401において、室内センサ値取得部101が室内センサ401から室内センサ値を取得する。
次に、ステップS402において、室内センサ値取得部101が、取得した室内センサ値をセンサ値記憶部103に格納する。
【0030】
次に、ステップS403において、室外センサ値取得部102が室外センサ402から室外センサ値を取得する。
次に、ステップS404において、室外センサ値取得部102が、取得した室外センサ値をセンサ値記憶部103に格納する。
【0031】
図4では、室内センサ値が室外センサ値よりも前に取得される例を示す。しかし、室外センサ値が室内センサ値よりも前に取得されてもよい。また、室内センサ値と室外センサ値とが並行して取得されてもよい。
また、ある周期では室内センサ値のみが取得され、別の周期では室外センサのみが取得されるといった運用でもよい。
【0032】
図5は、冷房方法の選択手順を示す。図5の手順は一定周期で繰り返し行われる。
ステップS502~ステップS503は、室内外の環境が第2の空気調和(外気冷房)に適しているか否かを判定する処理である。ステップS505は、室内外の環境が第2の空気調和(外気冷房)に適している場合に、第1の空気調和(通常冷房)及び第2の空気調和(外気冷房)のいずれがより消費エネルギーを抑えることができるかを判定する処理である。
【0033】
ステップS502では、決定部106は内気の比エンタルピが外気の比エンタルピよりも大きいか否かを判定する。
比エンタルピは、0℃の単位空気質量あたりのエンタルピとの差である。
決定部106は、内気(室内)の比エンタルピを算出する。また、決定部106は、外気(室外)の比エンタルピを算出する。
そして、決定部106は、算出した内気の比エンタルピと外気の比エンタルピとを比較する。
内気の比エンタルピが外気の比エンタルピよりも大きい場合(ステップS502でYES)は、処理がステップS503に進む。一方、内気の比エンタルピが外気の比エンタルピよりも大きくない場合(ステップS502でNO)は、処理がステップS508に進む。
【0034】
ステップS503では、決定部106は、外気パラメータが条件を満たすか否かを判定する。
外気パラメータとは、例えば、以下である。
外気温度
外気絶対湿度
外気比エンタルピ
また、外気パラメータの条件は、例えば、以下である。
外気温度の上限値、下限値の範囲内
外気絶対湿度の上限値、下限値の範囲内
外気比エンタルピの上限値、下限値の範囲内
現在の外気パラメータが各々の条件を満たす場合(ステップS503でYES)は、処理がステップS504に進む。一方、現在の外気パラメータが条件を満たさない場合(ステップS503でNO)は、処理がステップS508に進む。
【0035】
ステップS504では、決定部106が算出部104に運転効率の算出を要求し、算出部104が第1の運手効率と第2の運転効率を算出する。
前述したように、算出部104は、第1の運転効率及び第2の運転効率として、COPを算出する。
算出部104は、先ず、処理熱負荷を算出する。処理熱負荷は冷房で処理するべき熱負荷(W)である。処理負荷熱は、外気温度、外気湿度、室内の所在人数、発熱源の数等を用いて一般的な計算方法で算出される。
また、算出部104は、通常冷房の場合の消費電力量を算出する。更に、算出部104は、外気冷房の場合の消費電力量を算出する。消費電力量の計算は一般的な計算方法によるものとする。
そして、算出部104は、以下にて、第1の運転効率に相当するCOP(以下、第1のCOPという)を得る。また、算出部104は、以下にて、第2の運転効率に相当するCOP(以下、第2のCOPという)を得る。
第1のCOP=処理熱負荷/通常冷房の消費電力量
第2のCOP=処理熱負荷/外気冷房の消費電力量
そして、算出部104は、第1のCOPと第2のCOPを比較部105に通知する。
【0036】
ステップS505において、比較部105は、算出部104から通知された第1のCOPと第2のCOPとを比較し、比較結果を決定部106に通知する。
比較結果に応じて、処理がステップS506又はステップS507に移行する。
【0037】
第1のCOPが第2のCOP未満であれば(ステップS505でYES)、決定部106は、第1の空気調和(通常冷房)は行わず、第2の空気調和(外気冷房)を行うことを決定する。
つまり、決定部106は、室内機201による通常冷房は行わず、換気装置202による外気冷房を行うことを決定する。
現在、換気装置202による外気冷房が行われ、室内機201による通常冷房が行われていない場合は、決定部106は室内機201及び換気装置202に対する制御を行わない。つまり、決定部106は、そのまま換気装置202に外気冷房を継続させ、室内機201には運転停止状態を維持させる。
一方、現在、室内機201による通常冷房が行われ、換気装置202による外気冷房が行われていない場合は、決定部106は、室内機201に通常冷房を停止させ、換気装置202に外気冷房を開始させるための制御を行う。また、第2の空気調和で被空気調和空間500の設定温度を達成できない場合に、室内機201でも冷却するような制御を追加してもよい。
【0038】
一方、第1のCOPが第2のCOP以上であれば(ステップS505でNO)、決定部106は、第2の空気調和(外気冷房)は行わず、第1の空気調和(通常冷房)を行うことを決定する。また、この場合は、決定部106は、非温度調節SAによる換気を行うことを決定する。この場合は、第2の空気調和を行うための条件が成立しているため、外気を温度調節せずに外気をそのまま換気に用いることができる。
【0039】
ステップS502、ステップS503のいずれかでNOである場合は、ステップS508において、決定部106は、第2の空気調和(外気冷房)は行わず、第1の空気調和(通常冷房)を行うことを決定する。また、この場合は、決定部106は、温度調節SAによる換気を行うことを決定する。この場合は、第2の空気調和を行うための条件が成立していないため外気を温度調節し、温度調節後の外気を換気に用いることが望ましい。
【0040】
***実施の形態の効果の説明***
以上、本実施の形態では、第1の空気調和(通常冷房)の場合の運転効率(第1の運転効率)と第2の空気調和(外気冷房)の場合の運転効率(第2の運転効率)とを比較し、より運転効率のよい空気調和方法を選択する。
このため、本実施の形態によれば、消費エネルギーの抑制に適した空気調和方法を選択することができる。
また、本実施の形態では、第2の空気調和(外気冷房)を行わない場合(図5のステップS507)に、換気量を調整する(必要換気量だけ供給する)ので、処理熱負荷を軽減し、消費エネルギーを抑制することができる。
【0041】
なお、以上では、算出部104は、既定の式を用いて処理熱負荷を算出することとした。これに代えて、算出部104は、数式による計算と同じ処理熱負荷の値が得られるテーブルを参照して、処理熱負荷の値を得るようにしてもよい。当該テーブルには、例えば、外気温度、外気湿度、室内の所在人数、発熱源の数等の組合せに応じた処理熱負荷の値が記述されている。算出部104は、外気温度、外気湿度、室内の所在人数、発熱源の数等の組合せに対応する処理熱負荷の値を当該テーブルから抽出する。なお、当該テーブルは、例えば、予め空気調和制御装置100の管理者により設定される。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1で説明したように、COPの計算のもとになる処理熱負荷は、温度、湿度、室内の所在人数、発熱源の数等のパラメータを用いて算出される。このため、処理熱負荷の計算は複雑であり、多くの計算リソースを要する。
本実施の形態では、計算負荷を軽減する構成を説明する。より具体的には、本実施の形態では、処理熱負荷に最も影響がある外気温度から近似的に処理熱負荷を得る構成を説明する。
本実施の形態では、主に実施の形態1との差異を説明する。
なお、以下で説明していない事項は、実施の形態1と同様である。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る空気調和制御装置100の機能構成例を示す。
図6では、図3と比較して、簡易計算テーブル記憶部107が追加されている。簡易計算テーブル記憶部107は、簡易計算テーブルを記憶する。簡易計算テーブル記憶部107は、主記憶装置152又は補助記憶装置153により実現される。
簡易計算テーブルは、外気温度から近似的に処理熱負荷を得るためのテーブルである。簡易計算テーブルは、例えば、予め空気調和制御装置100の管理者により設定される。
簡易計算テーブルには、複数の外気温度が示され、外気温度ごとに、対応する処理熱負荷が示される。簡易計算テーブルで示される処理熱負荷は、例えば、温度の実測値を回帰して構築した以下の式から得られる。
処理熱負荷=α×外気温度+β
なお、αとβは係数である。
【0044】
本実施の形態では、算出部104は、室外センサ値のうちの外気温度をセンサ値記憶部103から取得し、取得した外気温度に対応する処理熱負荷を簡易計算テーブルから抽出する。
そして、算出部104は、簡易計算テーブルから抽出した処理熱負荷を通常冷房の場合の消費電力量で除算して第1のCOPを得る。また、算出部104は、簡易計算テーブルから抽出した処理熱負荷を外気冷房の場合の消費電力量で除算して第2のCOPを得る。
【0045】
以上、本実施の形態では、外気温度のみから処理熱負荷を得るため、COP計算の計算負荷を軽減することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、簡易計算テーブルを用いて処理熱負荷を得る例を説明したが、算出部104は、上記の式「処理熱負荷=α×外気温度+β」を用いて処理熱負荷を算出するようにしてもよい。
【0047】
また、実施の形態1及び実施の形態2では、被空気調和空間500の空気調和として冷房を行う例を説明した。
「冷房」を「暖房」に読み替え、「低温」を「高温」に読み替え、「冷却」を「加熱」に読み替えることで、被空気調和空間500に対して暖房を行う場合にも実施の形態1及び実施の形態2を適用可能である。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これら2つの実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。
あるいは、これら2つの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。
あるいは、これら2つの実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0049】
***ハードウェア構成の説明***
最後に、空気調和制御装置100のハードウェア構成の補足説明を行う。
図2に示すプロセッサ151は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。
プロセッサ151は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。
図2に示す主記憶装置152は、RAM(Random Access Memory)である。
図2に示す補助記憶装置153は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等である。
図2に示す通信装置154は、データの通信処理を実行する電子回路である。
通信装置154は、例えば、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0050】
プロセッサ151はOS156の少なくとも一部を実行する。
プロセッサ151はOS156の少なくとも一部を実行しながら、室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104及び比較部105及び決定部106の機能を実現するプログラムを実行する。
プロセッサ151がOS156を実行することで、タスク管理、メモリ管理、ファイル管理、通信制御等が行われる。
また、室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104及び比較部105及び決定部106の処理の結果を示す情報、データ、信号値及び変数値の少なくともいずれかが、主記憶装置152、補助記憶装置153のファイル158、プロセッサ151内のレジスタ及びキャッシュメモリの少なくともいずれかに記憶される。
また、プログラム157は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等の可搬記録媒体に格納されていてもよい。そして、プログラム157が格納された可搬記録媒体を流通させてもよい。
【0051】
また、室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104及び比較部105及び決定部106の「部」を、「回路」又は「工程」又は「手順」又は「処理」に読み替えてもよい。
また、空気調和制御装置100は、処理回路により実現されてもよい。処理回路は、例えば、ロジックIC(Integrated Circuit)、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)である。
この場合は、室内センサ値取得部101、室外センサ値取得部102、算出部104及び比較部105及び決定部106は、それぞれ処理回路の一部として実現される。
なお、本明細書では、プロセッサと処理回路との上位概念を、「プロセッシングサーキットリー」という。
つまり、プロセッサと処理回路とは、それぞれ「プロセッシングサーキットリー」の具体例である。
【符号の説明】
【0052】
100 空気調和制御装置、101 室内センサ値取得部、102 室外センサ値取得部、103 センサ値記憶部、104 算出部、105 比較部、106 決定部、107 簡易計算テーブル記憶部、151 プロセッサ、152 主記憶装置、153 補助記憶装置、154 通信装置、155 バス、156 OS、157 プログラム、158 ファイル、201 室内機、202 換気装置、300 室外機、401 室内センサ、402 室外センサ、500 被空気調和空間、501 利用者、502 照明、503 PC、504 窓。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7