(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20231201BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20231201BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20231201BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H03K17/00 B
B60Q1/14 Z
B60Q1/04 E
H02J1/00 304E
(21)【出願番号】P 2019169386
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 望
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094193(JP,A)
【文献】特開2002-073263(JP,A)
【文献】特表2019-520760(JP,A)
【文献】特開2007-335930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
B60Q 1/14
B60Q 1/04
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービームと、
ハイビームと、
第1負荷として接続される前記ロービームの点消灯を制御する第1スイッチ装置と、
第2負荷として接続される前記ハイビームの点消灯を制御する第2スイッチ装置と、
を有するシステムであって、
前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置は、それぞれ、
負荷接続端子に接続されるスイッチ素子と、
入力信号に応じて前記スイッチ素子をオン/オフする制御部と、
前記負荷接続端子のオープン異常若しくはショート異常、又は、前記スイッチ素子の温度異常を検出してフラグ検出信号を生成する検出部と、
を有し、
前記フラグ検出信号は、単一の信号線を介して前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置それぞれで共有されており、
前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置は、いずれも、前記入力信号がスイッチオフ時の論理レベルであっても、前記フラグ検出信号が異常時の論理レベルであるときには、前記スイッチ素子をオンする、システム。
【請求項2】
前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置は、いずれも、前記入力信号がスイッチオン時の論理レベルであっても、前記フラグ検出信号が前記異常時の論理レベルであるときには、前記スイッチ素子をオフする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置は、いずれも、さらに、フェイルセーフ機能信号の入力を受け付けており、前記フェイルセーフ機能信号がディセーブル時の論理レベルであるときには、前記入力信号が前記スイッチオフ時の論理レベルであって、かつ、前記フラグ検出信号が前記異常時の論理レベルであっても、前記スイッチ素子をオンしない、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置は、それぞれ、
個別のパッケージである、請求項1~
3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記
第1スイッチ装置
及び前記第2スイッチ装置は、それぞれ、
個別のチップであり、単一のパッケージに封止されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記
第1スイッチ装置は
、電源と
前記ロービームとの間に接続される
第1ハイサイドスイッチICであ
り、前記第2スイッチ装置は、前記電源と前記ハイビームとの間に接続される第2ハイサイドスイッチICである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記
第1スイッチ装置は
、前記ロービームとグラウンドとの間に接続される
第1ローサイドスイッチICであ
り、前記第2スイッチ装置は、前記ハイビームと前記グラウンドとの間に接続される第2ローサイドスイッチICである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、自動二輪車であ
る、請求項1~
7のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、以前より、車載IPD[intelligent power device]などのスイッチ装置に関して、数多くの新技術を提案している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、スイッチ装置の一従来例を示す図である。本従来例のスイッチ装置100は、バッテリ200と負荷300との間に接続されたスイッチ素子(NMOSFETなど)をオン/オフすることにより、バッテリ200から負荷300への電力供給経路を導通/遮断するハイサイドスイッチICである。
【0005】
なお、スイッチ装置100は、種々の異常保護回路(負荷300のオープン/ショート保護回路、温度保護回路、ないしは、減電圧誤動作防止回路など)を備えており、異常時にはスイッチ素子を強制的にオフすることが一般的である。
【0006】
図8は、従来のスイッチ装置100を複数個(2個)用いたシステムの一例を示す図である。例えば、本従来例のシステムを自動二輪車とし、ヘッドライトのロービームを負荷300(1)とし、ハイビーム(または他のランプ)を負荷300(2)とする。
【0007】
この場合、ロービーム点灯時には、バッテリ200と負荷300(1)との間に接続されたスイッチ装置100(1)がオンされて、バッテリ200と負荷300(2)との間に接続されたスイッチ装置100(2)がオフされる。逆に、ハイビーム点灯時には、スイッチ装置100(1)がオフされて、スイッチ装置100(2)がオンされる。
【0008】
ここで、例えば、ロービームを点灯して夜間走行を行っているときに、スイッチ装置100(1)で異常が検出された場合、単にスイッチ装置100(1)を強制オフすると、ロービームが消灯して運転者の前方視界が損なわれるので、極めて危険である。
【0009】
そのため、スイッチ装置100(1)が故障等により強制的にオフされたときには、スイッチ装置100(2)をオンさせて、ハイビームを代替的に点灯させるなどのフェイルセーフ機能が必要となる。
【0010】
なお、このようなフェイルセーフ機能を実現するためには、例えば、スイッチ装置100(1)及び100(2)それぞれの異常検出状態をマイコンなどで監視し、一方の異常時には他方をイネーブルとすることが考えられる。しかしながら、コストに制約のある安価なシステム(自動二輪車など)では、マイコンレスの対応が必要となる。
【0011】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、マイコンレスでフェイルセーフ機能を実現することのできるスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書中に開示されているスイッチ装置は、負荷接続端子に接続されるスイッチ素子と、入力信号に応じて前記スイッチ素子をオン/オフする制御部と、異常状態を検出してフラグ検出信号を生成する検出部と、を有し、前記制御部は、他のスイッチ装置と前記フラグ検出信号を共有しており、前記入力信号がスイッチオフ時の論理レベルであっても、前記フラグ検出信号が異常時の論理レベルであるときには、前記スイッチ素子をオンする構成(第1の構成)とされている。
【0013】
なお、第1の構成から成るスイッチ装置において、前記制御部は、前記入力信号がスイッチオン時の論理レベルであっても、前記フラグ検出信号が前記異常時の論理レベルであるときには、前記スイッチ素子をオフする構成(第2の構成)にするとよい。
【0014】
また、第1または第2の構成から成るスイッチ装置において、前記制御部は、さらに、フェイルセーフ機能信号の入力を受け付けており、前記フェイルセーフ機能信号がディセーブル時の論理レベルであるときには、前記入力信号が前記スイッチオフ時の論理レベルであって、かつ、前記フラグ検出信号が前記異常時の論理レベルであっても、前記スイッチ素子をオンしない構成(第3の構成)にするとよい。
【0015】
また、第1~第3いずれかの構成から成るスイッチ装置において、前記異常状態は、前記負荷接続端子のオープン異常またはショート異常、若しくは、前記スイッチ素子の温度異常である構成(第4の構成)にするとよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されているシステムは、上記第1~第4いずれかの構成から成る複数のスイッチ装置と、前記複数のスイッチ装置にそれぞれ接続される複数の負荷と、を有する構成(第5の構成)とされている。
【0017】
なお、上記第5の構成から成るシステムにおいて、前記複数のスイッチ装置は、それぞれ、複数のパッケージである構成(第6の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第5の構成から成るシステムにおいて、前記複数のスイッチ装置は、それぞれ、複数のチップであり、単一のパッケージに封止されている構成(第7の構成)にしてもよい。
【0019】
また、上記第5~第7いずれかの構成から成るシステムにおいて、前記複数のスイッチ装置は、それぞれ、電源と前記複数の負荷との間に接続されるハイサイドスイッチICである構成(第8の構成)にするとよい。
【0020】
また、上記第5~第7いずれかの構成から成るシステムにおいて、前記複数のスイッチ装置は、それぞれ、前記複数の負荷とグラウンドとの間に接続されるローサイドスイッチICである構成(第9の構成)にしてもよい。
【0021】
また、上記第5~第9いずれかの構成から成るシステムは、自動二輪車であり、前記複数の負荷は、ロービームとハイビームを含む構成(第10の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0022】
本明細書中に開示されている発明によれば、マイコンレスでフェイルセーフ機能を実現することのできるスイッチ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】第1実施形態のスイッチ装置を複数用いたシステムの一例を示す図
【
図4】システム全体におけるスイッチ駆動制御の論理値表を示す図
【
図8】従来のスイッチ装置を複数用いたシステムの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1は、スイッチ装置の第1実施形態を示す図である。第1実施形態のスイッチ装置1は、電源と負荷との間を導通/遮断するためのハイサイドスイッチICであり、スイッチ素子10と、制御部20と、検出部30と、電源部40と、を有する。また、スイッチ装置1は、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、複数本の外部端子(VBBピン、GNDピン、INピン、FLSピン、STピン、OUTピン)を有する。
【0025】
VBBピンは、電源端子である。GNDピンは、接地端子である。INピンは、入力信号INの入力端子である。入力信号INは、スイッチオン時にハイレベルとなり、スイッチオフ時にローレベルとなる。FLSピンは、フェイルセーフ機能信号FLSの入力端子である。フェイルセーフ機能信号FLSは、代替オン機能(詳細は後述)のイネーブル時にハイレベルとなり、ディセーブル時にローレベルとなる。STピンは、フラグ検出信号STの入出力端子である。フラグ検出信号STは、異常時にハイレベルとなり、正常時にローレベルとなる。OUTピンは、負荷接続端子(出力端子)である。
【0026】
スイッチ素子10は、VBBピンとOUTピンとの間に内部接続されており、VBBピンに外部接続される不図示の電源(バッテリなど)からOUTピンに外部接続される不図示の負荷(LED[light emitting diode]など)への電力供給経路を導通/遮断するスイッチ素子である。例えば、スイッチ素子10としてNMOSFETが用いられている場合には、スイッチ素子10のドレインがVBBピンに接続されて、ソースがOUTピンに接続される。なお、スイッチ素子10は、制御部20からゲートに入力されるゲート駆動信号G0に応じてオン/オフされる。より具体的に述べると、スイッチ素子10は、G0=HであるときにオンしてG0=Lであるときにオフする。
【0027】
制御部20は、基本的に、入力信号INに応じてスイッチ素子10をオン/オフする。より具体的に述べると、制御部20は、基本的に、IN=Hであるときにスイッチ素子10をオンして、IN=Lであるときにスイッチ素子10をオフする。
【0028】
ただし、制御部20は、検出部30ないしはSTピンからフラグ検出信号STの入力を受け付けており、IN=H(スイッチオン時の論理レベル)であっても、ST=H(異常時の論理レベル)であるときには、スイッチ素子10を強制的にオフする機能(=異常保護機能)を備えている。
【0029】
また、制御部20は、他のスイッチ装置とフラグ検出信号STを共有しており、IN=L(スイッチオフ時の論理レベル)であっても、ST=H(異常時の論理レベル)であるときには、スイッチ素子10を代替的にオンする機能(=代替オン機能)を備えている。
【0030】
制御部20は、さらに、フェイルセーフ機能信号FLSの入力を受け付けており、上記した代替オン機能のイネーブル/ディセーブルを切り替える機能も備えている。より具体的に述べると、制御部20は、FLS=L(ディセーブル時の論理レベル)であるときに
は、IN=LかつST=Hであっても、スイッチ素子10をオンしない。
【0031】
このように、制御部20は、3つの論理信号(入力信号IN、フェイルセーフ機能信号FLS、フラグ検出信号ST)に応じてスイッチ素子10をオン/オフする。なお、制御部20によるスイッチ駆動制御については、後ほど詳細に説明する。
【0032】
検出部30は、スイッチ装置1の異常状態を検出してフラグ検出信号STを生成する。スイッチ装置1の異常状態としては、OUTピンのオープン異常またはショート異常、若しくは、スイッチ素子10の温度異常を挙げることができる。なお、フラグ検出信号STは、制御部20に入力されるとともに、STピンを介して他のスイッチ装置(特にその制御部)と共有されている。
【0033】
電源部40は、VBBピンに入力される外部電源電圧V1から内部電源電圧V2を生成し、スイッチ装置10の各部(例えば制御部20など)に出力する。
【0034】
図2は、制御部20におけるスイッチ駆動制御の論理値表を示す図であり、紙面左側から順に、入力信号IN、フェイルセーフ機能信号FLS、フラグ検出信号ST、及び、ゲート駆動信号G0が列記されている。
【0035】
1行目で示したように、IN=L、FLS=L、ST=Lであるときには、G0=Lとなり、スイッチ素子10がオフする。このように、入力信号INがローレベル(=スイッチオフ時の論理レベル)であるときには、基本的にスイッチ素子10がオフされる。
【0036】
2行目で示したように、IN=L、FLS=L、ST=Hであるときには、G0=Lとなり、スイッチ素子10がオフする。このように、フェイルセーフ機能信号FLSがハイレベル(=イネーブル時の論理レベル)に立ち上げられていなければ、フラグ検出信号STがハイレベル(=異常時の論理レベル)であっても、入力信号INがローレベルである
ときにスイッチ素子10がオンされることはない。
【0037】
3行目で示したように、IN=L、FLS=H、ST=Lであるときには、G0=Lとなり、スイッチ素子10がオフする。このように、フェイルセーフ機能信号FLSがハイレベルに立ち上げられていても、フラグ検出信号STがハイレベルでなければ、入力信号INがローレベルであるときにスイッチ素子10がオンされることはない。
【0038】
4行目で示したように、IN=L、FLS=H、ST=Hであるときには、G0=Hとなり、スイッチ素子10がオンする。このように、フェイルセーフ機能信号FLSがハイレベルに立ち上げられており、かつ、フラグ検出信号STがハイレベルであるときには、入力信号INがローレベルであってもスイッチ素子10がオンされる。従って、フラグ検出信号STを共有する他のスイッチ装置で異常が検出されたとき(ST=H)には、マイコンレスでスイッチ素子10を代替的にオンすることができる(先述の代替オン機能)。
【0039】
5行目で示したように、IN=H、FLS=L、ST=Lであるときには、G0=Hとなり、スイッチ素子10がオンする。このように、入力信号INがハイレベル(=スイッチオン時の論理レベル)であるときには、フラグ検出信号STがハイレベルでない限り、スイッチ素子10がオンされる。
【0040】
6行目で示したように、IN=H、FLS=L、ST=Hであるときには、G0=Lとなり、スイッチ素子10がオフする。このように、入力信号INがハイレベルであってもフラグ検出信号STがハイレベルであるときには、スイッチ素子10がオフされる。従って、スイッチ装置1、若しくは、フラグ検出信号STを共有する他のスイッチ装置で異常
が検出されたとき(ST=H)には、スイッチ素子10を強制的にオフすることができる(先述の異常保護機能)。
【0041】
7行目で示したように、IN=H、FLS=H、ST=Lであるときには、G0=Hとなり、スイッチ素子10がオンする。5行目と同様、入力信号INがハイレベルであるときには、フラグ検出信号STがハイレベルでない限り、スイッチ素子10がオンされる。
【0042】
8行目で示したように、IN=H、FLS=H、ST=Hであるときには、G0=Lとなり、スイッチ素子10がオフする。6行目と同様、入力信号INがハイレベルであってもフラグ検出信号STがハイレベルであるときには、スイッチ素子10がオフされる。
【0043】
なお、5行目及び6行目(FLS=L)と、7行目及び8行目(FLS=H)とを対比すれば明らかなように、上記した異常保護機能の実施に際して、フェイルセーフ機能信号FLSは不問である。
【0044】
以下では、ハッチング付きで強調された4行目の代替オン機能について、スイッチ装置1を複数用いたシステムの具体例を挙げながら、その導入意義を詳細に説明する。
【0045】
<システム>
図3は、第1実施形態のスイッチ装置1を複数用いたシステム(例えば自動二輪車)の一例を示す図である。本構成例のシステムSは、スイッチ装置1(1)及び1(2)と、バッテリ2と、負荷3(1)及び3(2)と、レギュレータ4と、プルアップ抵抗5と、を有する。
【0046】
スイッチ装置1(1)及び1(2)は、それぞれ、先出のスイッチ装置1(
図1)に相当する半導体集積回路装置(ハイサイドスイッチIC)であり、別個独立した複数のパッケージに封止されている。
【0047】
スイッチ装置1(1)のVBBピンは、バッテリ2に接続されている。スイッチ装置1(1)のGNDピンは、接地端に接続されている。スイッチ装置1(1)のINピン及びFLSピンは、レギュレータ4の出力端に接続されている。スイッチ装置1(1)のSTピンは、スイッチ装置1(2)のSTピンに接続されている。スイッチ装置1(1)のOUTピンは、負荷3(1)に接続されている。
【0048】
スイッチ装置1(2)のVBBピンは、バッテリ2に接続されている。スイッチ装置1(2)のGNDピン及びINピンは、接地端に接続されている。スイッチ装置1(2)のFLSピンは、レギュレータ4の出力端に接続されている。スイッチ装置1(2)のSTピンは、スイッチ装置1(1)のSTピンに接続されている。スイッチ装置1(2)のOUTピンは、負荷3(2)に接続されている。
【0049】
以下では、スイッチ装置1(1)及び1(2)それぞれのINピンに入力される入力信号INを互いに区別するために、それぞれを入力信号IN1及びIN2と称する。
【0050】
例えば、本図のように接続されたシステムSでは、IN1=H(=Vreg)、IN2=L(=GND)となっている。この場合には、基本的に、バッテリ2と負荷3(1)との間に接続されたスイッチ装置1(1)がオンして、バッテリ2と負荷3(2)との間に接続されたスイッチ装置1(2)がオフする。
【0051】
逆に、スイッチ装置1(1)をオフして、スイッチ装置1(2)をオンしたければ、スイッチ装置1(1)のINピンを接地端に接続して、スイッチ装置1(2)のINピンを
レギュレータ4の出力端に接続することにより、IN1=L(=GND)、IN2=H(=Vreg)とすればよい。
【0052】
また、システムSでは、FLS=H(Vreg)となっている。従って、先述の代替オン機能がイネーブルとされている。
【0053】
また、以下では、スイッチ装置1(1)及び1(2)それぞれのVBBピンとOUTピンとの間に集積化されているスイッチ素子10を互いに区別するために、それぞれをスイッチ素子10(1)及び10(2)と称する。
【0054】
さらに、スイッチ素子10(1)及び10(2)それぞれのゲートに入力されるゲート信号G0を互いに区別するために、それぞれをゲート信号G1及びG2と称する。
【0055】
バッテリ2は、システムSの各部にバッテリ電圧Vbatを供給する。
【0056】
負荷3(1)は、スイッチ装置1(1)のOUTピンに接続されており、スイッチ素子10(1)がオンしているときにバッテリ電圧Vbatの供給を受けて動作する。
【0057】
負荷3(2)は、スイッチ装置1(2)のOUTピンに接続されており、スイッチ素子10(2)がオンしているときにバッテリ電圧Vbatの供給を受けて動作する。
【0058】
以下では、LEDヘッドランプモジュールに含まれるロービームLEDを負荷3(1)とし、ハイビームLEDを負荷3(2)とし、それぞれの電力供給経路にスイッチ装置1(1)及び1(2)が導入されているものとする。
【0059】
レギュレータ4は、バッテリ電圧Vbatから定電圧Vregを生成する。レギュレータ4としては、LDO[low drop out]レギュレータなどを好適に用いることができる。
【0060】
プルアップ抵抗5は、レギュレータ4の出力端(=定電圧Vregの印加端)と、スイッチ装置1(1)及び1(2)それぞれのSTピンとの間に接続されている。
【0061】
図4は、システムS全体におけるスイッチ駆動制御の論理値表を示す図であり、紙面左側から順に、入力信号IN1及びIN2、フェイルセーフ機能信号FLS、フラグ検出信号ST、及び、ゲート駆動信号G1及びG2が列記されている。なお、先出の
図3(IN1=H、IN2=L、FLS=H)は、本図の11行目または12行目に相当する。
【0062】
1行目で示したように、IN1=L、IN2=L、FLS=L、ST=Lであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0063】
2行目で示したように、IN1=L、IN2=L、FLS=L、ST=Hであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0064】
3行目で示したように、IN1=L、IN2=L、FLS=H、ST=Lであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0065】
4行目で示したように、IN1=L、IN2=L、FLS=H、ST=Hであるときには、G1=H、G2=Hとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオンする。
【0066】
5行目で示したように、IN1=L、IN2=H、FLS=L、ST=Lであるときには、G1=L、G2=Hとなり、スイッチ素子10(1)がオフして、スイッチ素子10
(2)がオンする。
【0067】
6行目で示したように、IN1=L、IN2=H、FLS=L、ST=Hであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0068】
7行目で示したように、IN1=L、IN2=H、FLS=H、ST=Lであるときには、G1=L、G2=Hとなり、スイッチ素子10(1)がオフして、スイッチ素子10(2)がオンする。
【0069】
8行目で示したように、IN1=L、IN2=H、FLS=H、ST=Hであるときには、G1=H、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)がオンして、スイッチ素子10(2)がオフする。
【0070】
9行目で示したように、IN1=H、IN2=L、FLS=L、ST=Lであるときには、G1=H、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)がオンして、スイッチ素子10(2)がオフする。
【0071】
10行目で示したように、IN1=H、IN2=L、FLS=L、ST=Hであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0072】
11行目で示したように、IN1=H、IN2=L、FLS=H、ST=Lであるときには、G1=H、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)がオンして、スイッチ素子10(2)がオフする。
【0073】
12行目で示したように、IN1=H、IN2=L、FLS=H、ST=Hであるときには、G1=L、G2=Hとなり、スイッチ素子10(1)がオフして、スイッチ素子10(2)がオンする。
【0074】
13行目で示したように、IN1=H、IN2=H、FLS=L、ST=Lであるときには、G1=H、G2=Hとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオンする。
【0075】
14行目で示したように、IN1=H、IN2=H、FLS=L、ST=Hであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0076】
15行目で示したように、IN1=H、IN2=H、FLS=H、ST=Lであるときには、G1=H、G2=Hとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオンする。
【0077】
16行目で示したように、IN1=H、IN2=H、FLS=H、ST=Hであるときには、G1=L、G2=Lとなり、スイッチ素子10(1)及び10(2)がオフする。
【0078】
以下では、ハッチング付きで強調された4行目、8行目、及び、12行目を中心に参照しながら、先述した代替オン機能の導入意義を説明する。
【0079】
まず、9行目~12行目(IN1=H、IN2=L)に着目する。この場合、本来であれば、スイッチ素子10(1)がオンされてスイッチ素子10(2)がオフされた状態、すなわち、ロービームLEDが点灯された状態となる(9行目または11行目を参照)。
【0080】
ただし、スイッチ装置1(1)の異常保護機能(ST=H)が働くと、スイッチ素子10(1)が強制的にオフされる。従って、スイッチ装置1(2)の代替オン機能がディセーブル(FLS=L)である場合には、スイッチ素子10(1)及び10(2)がいずれ
もオフとなるので、LEDヘッドランプモジュールが完全消灯する(10行目を参照)。
【0081】
一方、スイッチ装置1(2)に代替オン機能がイネーブル(FLS=H)である場合には、入力信号IN2がローレベルであっても、フラグ検出信号STのハイレベル遷移を受けて、スイッチ素子10(2)が代替的にオンされる(12行目を参照)。すなわち、スイッチ装置1(1)の異常検出によりロービームLEDが消灯されたときには、スイッチ装置1(2)を用いてハイビームLEDが代替的に点灯される。
【0082】
次に、5行目~8行目(IN1=L、IN2=H)に着目する。この場合、本来であれば、スイッチ素子10(1)がオフされてスイッチ素子10(2)がオンされた状態、すなわち、ハイビームLEDが点灯された状態となる(5行目または7行目を参照)。
【0083】
ただし、スイッチ装置1(2)の異常保護機能(ST=H)が働くと、スイッチ素子10(2)が強制的にオフされる。従って、スイッチ装置1(1)の代替オン機能がディセーブル(FLS=L)である場合には、スイッチ素子10(1)及び10(2)がいずれもオフとなるので、LEDヘッドランプモジュールが完全消灯する(6行目を参照)。
【0084】
一方、スイッチ装置1(1)の代替オン機能がイネーブル(FLS=H)である場合には、入力信号IN1がローレベルであっても、フラグ検出信号STのハイレベル遷移を受けて、スイッチ素子10(1)が代替的にオンされる(8行目を参照)。すなわち、スイッチ装置1(2)の異常検出によりハイビームLEDが消灯されたときには、スイッチ装置1(1)を用いてロービームLEDが代替的に点灯される。
【0085】
次に、1行目~4行目(IN1=L、IN2=L)に着目する。この場合、本来であれば、スイッチ素子10(1)及び10(2)がいずれもオフされた状態、すなわち、LEDヘッドランプモジュールが完全消灯された状態となる(1行目または3行目を参照)。
【0086】
ただし、スイッチ装置1(1)及び1(2)それぞれの代替オン機能がイネーブル(FLS=H)である場合、何らかの原因でフラグ検出信号STがハイレベルに立ち上がったときにスイッチ素子10(1)及び10(2)がいずれもオンされる(4行目を参照)。すなわち、スイッチ装置1(1)または1(2)の異常検出により、ロービームLEDとハイビームLEDが同時に点灯されることになる。このような同時点灯は、通常起こり得ない挙動なので、例えば、異常報知動作として有用である。
【0087】
最後に、13行目~15行目(IN1=H、IN2=H)について、補足的に述べる。基本的にはあり得ないが、仮にこのような入力論理状態が成立した場合には、スイッチ素子10(1)及び10(2)がいずれもオンされた状態、すなわち、ロービームLEDとハイビームLEDが同時点灯された状態となる(13行目または15行目を参照)。
【0088】
ただし、スイッチ装置1(1)または1(2)の異常保護機能(ST=H)が働くと、スイッチ素子10(1)及び10(2)がいずれもオフされる(14行目または16行目を参照)。すなわち、スイッチ装置1(1)または1(2)いずれかの異常検出により、LEDヘッドランプモジュールが完全消灯された状態となる。
【0089】
このような異常保護機能は、LEDドライバICなどに導入されているプロテクトバス機能(=共通のプロテクトバスに接続された複数のICのうち、いずれかのICで異常が生じたときに、システム全体の安全確保を優先すべく、全てのICを強制的にオフする機能)に近いものであると言える。
【0090】
一方、これまでに説明してきた代替オン機能(ハッチング付きで強調された4行目、8
行目、及び、12行目を参照)は、フラグ検出信号STを共有する複数のスイッチ装置1(1)及び1(2)のうち、一方が異常保護動作で強制的にオフしたときに他方が代替的にオンする機能であり、既存のプロテクトバス機能とは本質的に異なる。
【0091】
なお、フェイルセーフ機能信号FLSをローレベルとすれば、上記した代替オン機能をディセーブルとすることもできる。従って、スイッチ装置1(1)及び1(2)が適用されるシステムSに応じて、スイッチ装置1(1)及び1(2)を従前通りに各個独立して動作させることも任意である。
【0092】
<第2実施形態>
図5は、スイッチ装置の第2実施形態を示す図である。第2実施形態のスイッチ装置1(1)及び1(2)は、それぞれ、複数の半導体チップであり、単一のパッケージPKGに封止されている。このような構成とすることにより、第1実施形態(
図1、
図3)と比べて、システムSの部品点数(パッケージ数)を削減することができるので、システムSの小型化や低廉化を実現することが可能となる。
【0093】
なお、スイッチ装置1(1)及び1(2)を単一の半導体チップに集積化した構成(1チップ2チャンネル構成)を採用することも可能である。しかしながら、スイッチ素子10(1)及び10(2)の温度異常時における保護を鑑みると、本実施形態(
図5)、若しくは、先出の第1実施形態(
図1、
図3)を採用する方が望ましい。
【0094】
例えば、1チップ2チャンネル構成において、スイッチ素子10(1)が発熱すると、単一の半導体チップ上に形成されているスイッチ素子10(2)の温度も上昇する。そのため、スイッチ素子10(1)の温度保護が掛かったときには、スイッチ素子10(2)もかなりの高温となっていることが想定されるので、その代替オンにはリスクを伴う。
【0095】
これに対して、第1実施形態(
図1、
図3)や第2実施形態(
図5)であれば、スイッチ素子10(1)及び10(2)が別パッケージまたは別チップに形成されているので、基本的に相互間の熱伝播を考慮する必要はない。従って、一方の温度保護が掛かったときに他方を代替オンしても支障はない。
【0096】
<車両(自動二輪車)>
図6は、自動二輪車の外観を示す図である。本図の自動二輪車Xは、いわゆる中型二輪(=日本の道路交通法において、排気量50cc超400cc以下の車両区分に属する普通自動二輪車に相当)と呼ばれる車両の一種であり、LEDランプモジュールX1~X3(より具体的には、LEDヘッドランプモジュールX1、LEDリアランプモジュールX2、及び、LEDウィンカーランプモジュールX3)と、それらの電源となるバッテリX4と、を有する。ただし、本図におけるLEDランプモジュールX1~X3、及び、バッテリX4の搭載位置については、図示の便宜上、実際と異なる場合がある。
【0097】
なお、自動二輪車Xは、これまでに説明してきたシステムS(
図3または
図5を参照)の一例である。例えば、先の
図3に倣い、LEDヘッドランプモジュールX1に含まれるロービームLEDを負荷3(1)とし、ハイビームLEDを負荷3(2)とし、それぞれの電力供給経路にスイッチ装置1(1)及び1(2)を導入した場合を考える。
【0098】
この場合、スイッチ装置1(1)の異常検出によりロービームLEDが消灯されたときには、スイッチ装置1(2)を用いてハイビームLEDが代替的に点灯される。逆に、スイッチ装置1(2)の異常検出によりハイビームLEDが消灯されたときには、スイッチ装置1(1)を用いてロービームLEDが代替的に点灯される。
【0099】
従って、例えば、自動二輪車Xの夜間走行中にLEDヘッドランプモジュールX1が突然消灯するような事態を避けることができる。また、自動二輪車Xの運転者は、LEDヘッドランプモジュールX1の点灯状態(ハイビーム/ロービーム)が無操作で切り替わったことを受けて、故障の発生を認識し、速やかに修理等の対応を行うことができる。
【0100】
このように、スイッチ装置1(1)及び1(2)の相互連携によるフェイルセーフ機能により、マイコンレスで自動二輪車Xの安全性を高めることが可能となる。
【0101】
<その他の変形例>
なお、スイッチ装置は、自動二輪車以外のシステムにも広く適用することができる。また、スイッチ装置は、電源と負荷との間に接続されるハイサイドスイッチICに限らず、負荷とグラウンドとの間に接続されるローサイドスイッチICであってもよい。また、負荷は、LEDなどの発光素子に限定されるものではない。
【0102】
このように、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、高い安全性が求められる車載IPDに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1、1(1)、1(2) スイッチ装置
2 バッテリ
3(1)、3(2) 負荷
4 レギュレータ
5 プルアップ抵抗
10、10(1)、10(2) スイッチ素子(NMOSFET)
20 制御部
30 検出部
40 電源部
PKG パッケージ
S システム
X 自動二輪車(車両)
X1 LEDヘッドランプモジュール
X2 LEDリアランプモジュール
X3 LEDウィンカーランプモジュール