(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】微細突起具
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61M37/00 512
A61M37/00 505
(21)【出願番号】P 2019182552
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018233653
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 智史
(72)【発明者】
【氏名】新津 貴利
(72)【発明者】
【氏名】東城 武彦
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-236865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0021373(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0042589(US,A1)
【文献】特開2010-184102(JP,A)
【文献】特開2016-073890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔を有する微細突起が形成された第1シートと、皮膚に注入する剤の収容部と、第2シートとを備えた微細突起具であって、
前記収容部は、第1シートと第2シートとの間に形成されており、
前記微細突起は、第1シートにおける前記収容部側とは反対側に突出して
おり、
第1シートの前記微細突起が形成されている領域と対向する第2シート側の部分に、デュロメータ硬さがA60以上である高剛性部位が形成されている、微細突起具。
【請求項2】
第2シート側の押圧により、前記皮膚に注入する剤を、前記開孔から押し出し可能になされている、請求項1に記載の微細突起具。
【請求項3】
第1シートと第2シートとが、前記収容部と重なる部位より外方に位置する環状周辺部において互いに接合されており、
前記収容部は、第1シートが第2シート側とは反対側に窪んで形成された凹部及び第2シートが第1シート側とは反対側に窪んで形成された凹部のうちの何れか一方又は両方を有している、請求項1又は2に記載の微細突起具。
【請求項4】
第2シートの第1シート側とは反対側の面における前記収容部と重なる部位に粘着層を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項5】
第1シート側の面における、前記収容部と重なる部位より外方に位置する環状周辺部に、前記微細突起具を皮膚に固定するための粘着部を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項6】
前記粘着部は、第2シートにおける第1シート側とは反対側の面側に、該第2シートの外周縁から延出するように配された粘着剤により形成されている、請求項5に記載の微細突起具。
【請求項7】
前記粘着部は、第1シートの前記微細突起が突出している下面側における、第1シートの周縁部に配された粘着剤により形成されている、請求項5に記載の微細突起具。
【請求項8】
前記皮膚に注入する剤は、保持シートに含浸された状態で前記収容部に収容されている、請求項1~7の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項9】
前記微細突起の先端部の形状が錐体形状である、請求項1~8の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項10】
前記開孔は、前記微細突起の突出方向における中央位置が、前記微細突起の先端から20μm以内に位置している、請求項1~9の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項11】
第1シートの前記収容部と重なる部位における前記微細突起が存在しない部分に第2の開孔が形成されている、請求項1~10の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項12】
第2シートが第1シートよりも柔軟である、請求項1~11の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項13】
前記高剛性部位を押し下げたときに、該高剛性部位の外周部が当接してそれ以上の押し下げを規制するスペーサー部材が、第1シートと第2シートとの間に配されている、請求項
1~12の何れか1項に記載の微細突起具。
【請求項14】
請求項1~
13の何れか1項に記載の微細突起具と、該微細突起具を気密に内包する保護容器とを備えた、容器入り微細突起具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開孔を有する微細突起具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、注射器による剤の供給と同様の性能が期待できるにも拘わらず、皮膚を傷めず痛みが少ない理由から、マイクロニードルを備えた微細突起具による剤の皮膚への供給が注目されている。そのような微細突起具としては、例えば特許文献1~3に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、表面に溝を有するマイクロニードルが突出している基材と該基材の表面に配されたカバーとを備えたマイクロニードル装置が記載されている。また、特許文献2には、基板上に設けられた突起部を備えた針状体が記載されている。また、特許文献3には、表面に溝を有するマイクロニードルと該マイクロニードルが突出している支持体とを備えたマイクロニードルアセンブリーが記載されており、そのマイクロニードルアセンブリーにおいては、支持体が開口を有し、その開口とマイクロニードルが有する溝とが連接して、流体の薬物化合物を送達するための流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2005-514179号公報
【文献】特開2008-228958号公報
【文献】特表2014-519385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2の微細突起具は、マイクロニードルによって供給される剤を収容する収容部を有しておらず、微細突起具とは別に、剤を保持するためのシリンジ等の部品が必要である。また使用時にマイクロニードルの開孔から剤を吐出するために、シリンジ等から剤を押し出すという手間が生じてしまう。特許文献3にマイクロニードルアセンブリーは、薬物化合物をマイクロニードルから吐出させるためには、支持体の開口を封止している解放部材を取り外す必要があり、使用時に手間のかかる作業を要するものである。
【0006】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る開孔を有する微細突起具に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、開孔を有する微細突起が形成された第1シートと、皮膚に注入する剤の収容部と、第2シートとを備えた微細突起具であって、前記収容部は、第1シートと第2シートとの間に形成されており、前記微細突起は、第1シートにおける前記収容部側とは反対側に突出している、微細突起具を提供するものである。
【0008】
本発明は、上述した微細突起具と、該微細突起具を気密に内包する保護容器とを備えた、容器入り微細突起具を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微細突起具によれば、簡易な操作により、皮膚に剤を注入することができる。
本発明の容器入り微細突起具によれば、微細突起具の収容部に収容された、皮膚に注入する剤の蒸発を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい第1実施形態に係る微細突起具の厚み方向に沿う断面図である。
【
図2】
図2(a)は、第1実施形態の微細中空突起具を皮膚に刺す前の状態を示す要部拡大断面図であり、
図2(b)は、第1実施形態の微細中空突起具を皮膚に刺した後の状態を示す要部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、微細突起の先端径及び先端角度の測定方法を示す説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の微細突起具の製造方法を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態の微細突起具の断面図であり、
図1相当図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の微細突起具の使用方法を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の微細突起具の製造方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態の微細突起具の断面図であり、
図1相当図である。
【
図9】
図9(a)乃至
図9(c)は、本発明の微細突起具が有する収容部の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の微細突起具が有する粘着層の変形例を示す断面図であり、
図1相当図である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の第4実施形態の微細突起具の断面図であり、
図1相当図である。
図11(b)は、
図11(a)に示す微細突起具の高剛性部位を押し下げた状態を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の容器入り微細突起具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の好ましい第1実施形態の微細突起具1Aの断面図が示されている。微細突起具1Aは、
図1に示すように、第1シート11、皮膚に注入する剤6の収容部4及び第2シート12を備えている。収容部4は、第1シート11と第2シート12との間に形成されている。第1シート11には、開孔3を有する微細突起2が形成されており、その微細突起2は、第1シート11における収容部4側とは反対側に突出している。
【0012】
微細突起具1Aでは、
図1に示すように、第1シート11における収容部4と重なる部位に微細突起2が設けられている。第1シート11は、収容部4と重なる部分に、微細突起2を形成している部分と、微細突起2を形成していない平坦な基盤部11aとを有しており、微細突起2は、基盤部11aの下面から突出している。
微細突起具1Aは、複数の微細突起2を備えており、微細突起具1Aを、第1シート11側から見たときに、複数の微細突起2が間隔を開けて直列した突起列が、相互間に間隔を開けて一列又は複数列形成されている。微細突起2の配置は、例えば突起列の数や突起列を構成する微細突起の本数は任意に設定できる。突起列の数は、例えば1列以上50列以下、より好ましくは1列以上20列以下、更に好ましくは2列以上10列以下であり、個々の突起列を構成する微細突起の単位長さ10mmあたりの本数は、例えば3本以上30本以下、より好ましくは3本以上20本以下、更に好ましくは3本以上10本以下である。隣り合う突起列どうしで突起の位置が半ピッチ分ずれていても良い。
【0013】
個々の微細突起2は、その全体の形状が円錐形状となっており、その先端部付近に開孔3を有している。微細突起2は内部が中空であり、微細突起2の内部空間は、微細突起2の突出方向Zの基端側において、第1シート11の微細突起2が存在しない部分と第2シート12との間に位置する空間と連通して収容部4の一部を構成している。使用前の微細突起具1Aにおける微細突起2の内部空間には、皮膚に注入する剤6の一部が入り込んでいても良いし、入り込んでいなくても良い。
【0014】
微細突起具1Aは、その平面視において収容部4の周囲に該収容部4を環状に囲む環状周辺部13を有し、その環状周辺部13において、第1シート11と第2シート12とが接合されている。より具体的には、第1シート11と第2シート12とが、環状周辺部13に位置する、それぞれの周縁部において接合されている。他方、第1シート11と第2シート12とはその周縁部より内側の部分では接合されておらず、第1シート11と第2シート12との間に、前述した皮膚に注入する剤6の収容部4が形成されている。本実施形態の微細突起具1Aにおける収容部4は、第1シート11と第2シート12とで囲まれて密封された部分である。なお、第1シート11と第2シート12とは、環状周辺部13の全域が接合されていても良いし、環状周辺部13の幅の一部、例えば収容部4寄りの一部のみが全周に亘って接合されていても良い。
【0015】
第2シート12は、第1シート11における微細突起2が突出している面側とは反対側に配されている。また微細突起具1Aにおいては、第2シート12は第1シート11側とは反対側に窪んで形成された凹部5を有している。凹部5は、厚み方向Zに沿う断面形状が台形状であり、全体として円錐台形状を有している。凹部5の上面5aは、指等により微細突起具1Aを第2シート12側から押圧し易くする観点から、平坦面とされているか、第1シート11側に窪んだ凹曲面であるか、又は第1シート11側とは反対側に窪んだ凹曲面を有することが好ましい。
【0016】
第1シート11は、熱可塑性樹脂を含んでいる。第1シート11は、好ましくは熱可塑性樹脂を主体とするもの、即ち熱可塑性樹脂を50質量%以上含むものであり、熱可塑性樹脂を90質量%以上含むものであることが更に好ましい。
第2シート12は、第1シート11と同一の材料により形成されていてもよいし、第1シート11とは異なる材料により形成されていてもよい。第1シート11と第2シート12との接合に、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等の簡便な接合方法を採用し得る点や、第2シート12に凹部5を形成する場合の加工の容易等の観点から、第2シート12も、熱可塑性樹脂を含んでいることが好ましく、第2シート12も、熱可塑性樹脂を50質量%以上含むものが好ましく90質量%以上含むものが更に好ましい。
【0017】
第1シート11及び第2シート12の一方又は双方を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリ脂肪酸エステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート類、ポリ塩化ビニル、ナイロン樹脂、アクリル樹脂等又はこれらの組み合わせが挙げられ、ポリ脂肪酸エステル等の生分解性の樹脂も好ましく用いられる。ポリ脂肪酸エステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0018】
微細突起具1Aを第2シート12側から押圧したときに、第1シート11よりも第2シート12の方が変形し易くし、収容部4に収容された剤6を開孔3から吐出し易くする観点から、第2シート12は第1シート11よりも柔軟な材料により形成されていることが好ましい。
第2シート12が第1シート11よりも柔軟な材料により形成されているか否かは、以下の方法により判定することができる。
まず、第1シート11及び第2シート12のそれぞれを形成する材料を用いて、同じ厚みの板状の試験体を作成する。そして、作成した試験体それぞれについて、JIS K 7215:1986 プラスチックのデュロメータ硬さ試験によって、デュロメータ硬さを測定する。測定結果を比較し、第2シートを形成する材料を用いて作製された試験体の方が、第1シートを形成する材料を用いて作製された試験体よりも柔らかければ、第2シート12が第1シート11よりも柔軟な材料により形成されていると判定する。
【0019】
第1シート11は、JIS K 7202-2:2001プラスチック-硬さの求め方-第2部によって測定したロックウェル硬さが、M94-101程度であることが好ましい。第2シート12は、JIS K 7215:1986 プラスチックのデュロメータ硬さ試験によって測定したデュロメータ硬さが、A20程度であることが好ましい。
【0020】
微細突起具1Aの収容部4は、皮膚に注入する剤が収容される部分である。
皮膚に注入する剤6としては、本発明の微細突起具を用いて皮膚に注入可能なものであれば特に制限されず、例えば(1)皮膚の状態を改善するための有効成分を含む液剤、(2)感染症の予防に用いるワクチンを含む薬剤が挙げられる。前記(1)としては、有効成分として、コラーゲン、ヒアルロン酸、ビタミンC、アミノ酸、ロイヤルゼリー、サリチル酸等から選択される一種又は二種以上を含む、水溶液又はエマルジョンである美容液、化粧液又は薬液等が挙げられ、前記(2)としては、有効成分としてBCGワクチン、風疹ワクチン、インフルエンザワクチンを含む薬剤等が挙げられる。また皮膚は、典型的にはヒトの皮膚であるが、犬や猫等のペットの皮膚、牛、豚、ヤギ等の家畜の皮膚であっても良い。また哺乳類以外の動物の皮膚、例えば蛇やカエル、蚕等の皮膚であっても良い。
【0021】
微細突起具1Aによれば、収容部4に、皮膚に注入する剤6が収容されている状態で、微細突起2が形成されている第1シート11側を、剤6を注入する対象のヒト等の皮膚に押し当てることにより、微細突起2を皮膚に突き刺すことができる。そして、微細突起2を皮膚に突き刺した状態で、微細突起具1Aを、第2シート12側から指等により押圧すると、収容部4の容積が減少して、収容部4に収容された剤6が、微細突起2の開孔3から押し出されて、皮膚内に注入される。
【0022】
微細突起具1Aによれば、このように、微細突起2が形成されている側を皮膚に押し付け、必要に応じて第2シート側を押圧するという簡易な操作により、所望の部位の皮膚に剤を注入することができる。
【0023】
微細突起具1Aは、
図1に示すように、全体として扁平な形状を有し、第1シート11と第2シート12とが相対向する方向又は微細突起2の突出方向を厚み方向Zとしたときに、微細突起具1Aの厚みTが、該厚み方向Zに直交する方向の最大寸法Wに対して好ましくは100%以下、好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である。
微細突起具1が、全体として偏平な形状を有していると、微細突起具1Aを皮膚に押し当てた状態が安定し、第2シート12側を押圧しての剤の注入操作を一層容易に行うことができる。また微細突起具1Aの厚みTは、収容部4内の容積の確保、第2シート12側の押圧による内容積の変化量の確保等の点から、厚み方向Zに直交する方向の最大寸法Wに対して、好ましくは5%以上50%以下、より好ましくは10%以上40%以下、更に好ましくは25%以上30%以下である。
図1及び
図5に示す微細突起具1Aは、平面視形状が円形であり、厚み方向Zに直交する方向の最大寸法Wは、平面視したときの円状の輪郭の直径である。
【0024】
本発明の微細突起具は、微細突起具1Aのように、第2シート側の押圧により、皮膚に注入する剤を、微細突起の開孔から押し出し可能であることが、注入を短時間で完了させることができる点等から好ましいが、使用時に第2シート側を押圧して変形させることは必須ではない。微細突起具を皮膚に押し付けて、皮膚に微細突起を突き刺した後、微細突起が突出する下面側に設けた粘着部や別に用意したネット包帯や粘着テープで皮膚上に固定し、加温による収容部内の圧力の上昇や重力の作用により、第2シート側から押圧することなく、皮膚に剤6が注入されるようにしても良い。
【0025】
微細突起具1Aは、前述したとおり、第1シート11と第2シート12とが、収容部4を囲む環状周辺部13において互いに接合されており、収容部4の画成する第1シート11及び第2シート12の一方又は両方が凹部5を有する。そのため、第1シート11と第2シート12の両方に凹部5を設けて、より大きな量の薬剤を収容部4に保持させることも可能である。
【0026】
ヒトの皮膚は、
図2に示すように、最も外側に表皮Sを有し、表皮Sよりも内側に真皮Rを有し、真皮Rよりも内側に皮下組織Qを有する。また表皮Sは、最も外側に位置する角層S1と、角層より内側に位置する表皮の下層部分S2とを有している。ただし、
図2は、説明容易の観点から誇張して記載されており、実際の皮膚における各層の厚みをかならずしも正確に示しているわけではない。表皮の下層部分S2は、顆粒層、有棘層、基底層等から構成される。
本発明の微細突起具で、剤6を注入する皮膚の部位は、表皮S、真皮R、真皮R近傍の皮下組織Qであっても良いが、剤を注入する皮膚の好ましい部位は、美容等の非医療目的とする場合には表皮Sであり、より好ましくは角層S1である。そのため、本発明の微細突起具は、表皮Sを剤の主たる注入部位とすることが好ましい。他方、微細突起の高さの制限という観点から、真皮は、剤の主たる注入部位としないことが好ましい。
【0027】
また微細突起具1Aでは、微細突起2は円錐形状となっているが、円錐形状以外に、円錐形状の形状以外に、円錐台形状、円柱形状、角柱形状、角錐形状、角錐台形状等であってもよい。また微細突起具1Aでは、微細突起2は、その全体の形状が円錐形状となっているが、先端部のみが錐体形状であり中腹部及び根本部が円柱形状等であってもよい。
微細突起2の少なくとも先端部が錐体形状であることにより、微細突起が皮膚に刺さりやすくなるという効果がある。
【0028】
微細突起具1Aを第2シート12側から押圧し微細突起2を皮膚に刺したときには、微細突起具1Aの周縁部及び微細突起2の先端部の一方又は両方が、微細突起2が刺入される皮膚をその周囲とともに押し下げるため、微細突起2の全体ではなく、微細突起2の先端部のみが皮膚の表皮Sに刺さる(
図2参照)。微細突起2は、先端部を表皮Sの角層S1に刺入することができるようにする観点から、その突出高さH2が、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、更に好ましくは200μm以上である。また、微細突起2が角層S1を貫き、その先端部が表皮の下層部分S2に大きく刺入しないようにする観点から、微細突起2の突出高さH2は、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは230μm以下である。剤6が注入される主たる部位が皮膚の角層S1となるようにする観点から、微細突起2の突出高さH2が、好ましくは100μm以上300μm以下、より好ましくは150μm以上250μm以下、更に好ましくは200μm以上230μm以下である。
【0029】
また、微細突起2を皮膚の表皮Sに刺したときに、開孔3から吐出される剤6を角層S1に注入し易くする観点から、開孔3は、微細突起2の突出方向における中央位置が、微細突起2の先端から20μm以内に位置していることが好ましい。また、微細突起2の外表面に開孔3が存在していると、皮膚に微細突起を刺した際に、開孔3が開孔を維持する観点から好ましい。すなわち微細突起2の先端から、開孔3の前記中央位置までの距離H3が、20μm以下であることが好ましい〔
図2(a)参照〕。同様の観点から、前記距離H3は、より好ましくは15μm以下であり、また好ましくは7μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは7μm以上20μm以下、より好ましくは10μm以上15μm以下である。ここでいう、開孔3の、微細突起2の突出方向における中央位置とは、開孔3の遠位端部3aと近位端部3bとの間を、該突出方向に2等分する位置である。また、開孔3の遠位端部3aとは、該開孔3における、微細突起2の外表面に開口する開口部の、微細突起2の突出方向の両端部のうち、微細突起2の先端から遠い方の端部であり、開孔3の近位端部3bとは、該開孔3における、微細突起2の外表面に開口する開口部の、微細突起2の突出方向の両端部のうち、微細突起2の先端に近い方の端部である。開孔3の孔径は、20μm以上80μm以下、より好ましくは40μm以上50μm以下である。第2の開孔の孔径も、好ましくは20μm以上80μm以下、より好ましくは40μm以上50μm以下である。
【0030】
微細突起2の数は、特に制限されるものではないが、微細突起の数が多いほど薬剤をより広範囲に皮膚に注入できるという観点から、10mm四方あたりの本数は、好ましくは2本以上、より好ましくは5本以上、更に好ましくは10本以上であり、そして、好ましくは50本以下、より好ましくは20本以下、更に好ましくは15本以下であり、具体的には、好ましくは2本以上50本以下、より好ましくは5本以上20本以下、更に好ましくは10本以上15本以下である。
【0031】
微細突起具1Aが複数の微細突起2を有している場合は、微細突起2の中心間距離は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは3.0mm以上であり、そして、好ましくは10.0mm以下であり、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは4.0mm以下であり、具体的には、好ましくは1.5mm以上10.0mm以下、より好ましくは2.0mm以上5.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以上4.0mm以下である。
【0032】
微細突起2の先端径L(先端における外壁21、21どうしの間隔,
図3参照)は、その直径が、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、更に好ましくは10.0μm以上であり、また好ましくは20.0μm以下、より好ましくは15.0μm以下、更に好ましくは12.0μm以下であり、また好ましくは1.0μm以上20.0μm以下、より好ましくは5.0μm以上15.0μm以下、更に好ましくは10.0μm以上12.0μm以下である。
微細突起2の先端径Lは、微細突起2の先端における最も広い位置での長さである。微細突起2の先端径Lが上記範囲内であると、微細突起2を皮膚に刺し入れた際の痛みが殆どない。微細突起2の先端径Lは、以下のようにして測定する。
【0033】
〔微細突起具1Aの微細突起2の先端径Lの測定〕
微細突起2の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて、
図3に示すように所定倍率拡大した状態で観察する。次に、
図3に示すように、外壁21を形成する両側辺1a,1bの内の一側辺1aにおける直線部分に沿って仮想直線ILaを想定し、他側辺1bにおける直線部分に沿って仮想直線ILbを想定する。次に、先端側にて、一側辺1aが仮想直線ILaから離れる箇所を第1先端点1a1として求め、他側辺1bが仮想直線ILbから離れる箇所を第2先端点1b1として求める。このようにして求めた第1先端点1a1と第2先端点1b1とを結ぶ直線の長さLを、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて測定し、測定した該直線の長さを、微細突起2の先端径とする。
【0034】
微細突起2は、先端部が鋭角であるほど皮膚に穿刺しやすいという観点と、先端部が鈍角であるほど先端部の加工が容易という観点から、その先端角度α(
図3参照)が、好ましくは10度以上、より好ましくは15度以上、更に好ましくは20度以上であり、また好ましくは50度以下、より好ましくは40度以下、更に好ましくは30度以下であり、また好ましくは10度以上50度以下、より好ましくは15度以上40度以下、更に好ましくは20度以上30度以下である。微細突起2の先端角度αは、以下のようにして測定する。
【0035】
〔微細突起具1Aの微細突起2の先端角度αの測定〕
微細突起2の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて
図3に示すように所定倍率に拡大した状態で観察する。次に、
図3示すように、外壁21を形成する両側辺1a,1bの内の一側辺1aにおける直線部分に沿って仮想直線ILaを想定し、他側辺1bにおける直線部分に沿って仮想直線ILbを想定する。そして、仮想直線ILaと仮想直線ILbとのなす角を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定し、測定した該なす角を、微細突起2の先端角度αとする。
【0036】
第1実施形態の微細突起具1Aの製造方法の一例について
図4を参照しつつ説明する。
図4に示すように、先ず熱可塑性樹脂を含む帯状の第1シート11を原反ロール11Aから繰り出して搬送する。次いで、微細突起2に対応する凸部31を有する凸型部30を第1シート11の一面(下面)側に当接させる。そして、第1シート11における凸部31との当接部分を熱により軟化させながら、凸部31を第1シート11に刺してゆき、第1シート11の他面(上面)から突出する非貫通の微細突起2を形成する。このとき、凸部31を一面から刺し込んだ際に第1シート11が撓みにくくするため、
図4に示すように、支持部材32u,32dにより第1シート11を支持してもよい。そして、凸部31を第1シート11に刺したままの状態、或いは凸部31を第1シート11から抜いた状態で、レーザー照射装置33からレーザー光を照射し、微細突起2に開孔3を形成する。このようにして、開孔3を有する微細突起2が形成された第1シート11を製造する。
【0037】
第1シート11を製造する工程とは別に、凹部5を有する第2シート12を製造する工程を行う。具体的には、
図4に示すように、熱可塑性樹脂を含む帯状の第2シート12を原反ロール12Aから繰り出して搬送する。そして、例えばヒートプレス装置40により第2シート12を加熱するとともに窪ませ、凹部5を形成する。このようにして、凹部5を有する第2シート12を得る。次いで、タンク41から供給される皮膚に注入する剤6を第2シート12に形成された個々の凹部5に分注する。
【0038】
そして、第2シート12を、凹部5の窪みを第1シート11側とは反対側に向けた状態で、第1シート11における微細突起2が設けられた面側とは反対側の面側に配し、微細突起具前駆体10Aを形成する。次いで、微細突起具前駆体10Aの第2シート12側にアンビル42dを当接させるとともに、微細突起具前駆体10Aの第1シート11側にインパルスシーラ42uを当接させ、第1シート11と第2シート12との周縁部どうしを熱により融着する。そして、アンビル43dとトムソン刃43uとを用いて第1シート11と第2シート12とが融着した両シート11,12の周縁部を切断することで、微細突起具1Aが製造される。
【0039】
次に、本発明の微細突起具の第2実施形態について、
図5を参照しながら説明する。第2実施形態に係る微細突起具1Bについては、第1実施形態に係る微細突起具1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点については、第1実施形態に係る微細突起具1Aと同様であり、該微細突起具1Aの説明が適宜適用される。
【0040】
微細突起具1Bは、第2シート12の収容部4と重なる部位に粘着層7を有し、その粘着層7は、第2シート12における第1シート側とは反対側の面に設けられている。より具体的には、第2シート12の凹部5の上面5aに粘着剤が固定されて粘着層7が設けられている。粘着層7における第2シート12側の面とは反対側の面は、粘着層7に対して剥離可能に固定された保護層8で被覆されている。保護層8は、粘着層7の使用時に意図的に剥離されるまで粘着層7を被覆し、埃やゴミの付着、他の物との接触等による粘着層7の粘着力の低下を抑制する。保護層8としては、粘着層側の面がシリコーンコーティングされた剥離紙や粘着層側の面に剥離処理が施された樹脂製シート等が挙げられる。保護層8は、粘着層7を使用する際に手で引き剥がされる。
【0041】
粘着層7を構成する粘着剤としては、例えば、エマルジョン系、水系、溶剤系の粘着剤が挙げられる。また、粘着層7は、粘着層7の形成工程の簡素化の点から、ホットメルト粘着剤等の粘着剤を塗布して形成することが好ましい。
粘着層7は、粘着剤を、第2シート12に直接塗工して形成しても良いし、保護層8に塗工した粘着剤を、第2シート12に押し付け転写させて形成しても良い。また一面に剤層を有し他面に粘着層を有する粘着シートの前記一面側を第2シート12に貼り付け、前記他面側の粘着層を粘着層7とすることもできる。
粘着剤としては、粘着力の経時的安定性等の観点から、天然ゴム類似の基本構造を有する合成ゴム系のブロック共重合体を用いることが好ましい。そのようなブロック共重合体としては、例えばスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。粘着剤は、これらのブロック共重合体から選択される一種又は二種以上のベースポリマーを10~65重量%、特に30~50重量%含むことが好ましい。
【0042】
粘着層7における粘着剤の坪量は、
図6に示すように、微細突起具1Bが粘着層7を介して確実に指や他の道具に貼付されるようにして、微細突起具1Bを任意の箇所に配し易くする観点から、好ましくは1g/m
2以上であり、より好ましくは5g/m
2以上であり、また好ましくは100g/m
2以下であり、より好ましくは50g/m
2以下であり、また好ましくは1g/m
2以上100g/m
2以下であり、より好ましくは5g/m
2以上50g/m
2以下である。
【0043】
また微細突起具1Bの収容部4には、皮膚に注入する剤6が、保持シート9に含浸された状態で収容されている。保持シート9は、皮膚に注入する剤6が含浸されているシートである。保持シート9としては、皮膚に注入する剤6を含浸させ得る任意のシート材を用いることができ、例えば、高吸液不織布等の、各種製法による不織布、スポンジ等の多孔体からなるシート、パルプ等を用いることができる。吸液性が高いほどより多くの薬剤を保持できるという観点から、保持シート9としては、高吸液不織布を用いることが好ましい。
【0044】
微細突起具1Bは、例えば
図6に示すように、保護層8を粘着層7から剥離し、粘着層7を露出させたあと、粘着層7を指等に貼付することで、微細突起具1Bを、皮膚に剤6を注入すべき所望の部位に容易に配置することができる。また微細突起具1Bを、粘着層7を介して指先等に付着させた状態で所望の部位に配置した後、微細突起具1Bを指先等に付着させた状態下に、第2シート12側を押圧しての剤の注入及び微細突起具1Bの皮膚上からの回収を行うこともできる。
微細突起具を用いた剤の注入作業の簡易化の観点から、本発明の微細突起具は、粘着層7を介して指等に付着させた状態で、所望の部位に配置することが可能であることが好ましく、粘着層7を介して指等に付着させた状態で、所望の部位への配置及び注入操作を行うことが可能であることが更に好ましく、粘着層7を介して指等に付着させた状態で、所望の部位への配置、注入操作及び皮膚上からの回収を行うことが可能であることが更に好ましい。
粘着層7を介して微細突起具1Bを付着させる対象は、好ましくはヒトの指であるが、ヒトの指以外であっても良く、例えば、手が届かない部位に微細突起具1Bを配置するための棒状体、押し付ける際の圧力を検知可能な圧力センサを設けた専用の押し付け器具等であっても良い。
【0045】
また微細突起具1B及び後述する微細突起具1Cにおいては、皮膚に注入する剤6が、保持シート9に含浸された状態で収容部4に収容されているため、指等で第2シート12を押圧しない限り、薬剤が開孔から出ることはなくなり、不用意な薬剤の吐出を防ぐことが出来る。
【0046】
第2実施形態の微細突起具1Bは、
図7に示すように、第2シート12として、凹部5に、積層シート70が貼着された第2シート12を製造し、その第2シート12の凹部5に保持シート9を配置した後、タンク41(
図4参照)から供給される皮膚に注入する剤6を、個々の凹部5内の保持シート9に供給する以外は、上述した第1実施形態の微細突起具1Aの製造方法の一例と同様にして製造することができる。
図7に示す工程について説明すると、原反ロール12Aから帯状の第2シート12を繰り出して、ヒートプレス装置40に導入し、ヒートプレス装置40において、第2シート12を加熱するとともに部分的に窪ませて、第2シート12に凹部5を形成する。また粘着層7と保護層8とが積層された構造を有する帯状の積層シート70を、原反ロールから繰り出し、その積層シート70を、粘着層7側を第2シート12側に向けて、第2シート12における凹部5の上面5aに対応する部位に貼付する。そして、凹部5の上面5a側とは反対側にアンビル51uを当接させた状態下に、凹部5の上面5a側からカッター刃51dを当接させて、帯状の積層シート70を切断し、個々の微細突起具1Bに設ける形状の積層シート70とする。
【0047】
また原反ロール9Aから帯状の保持シート9を繰り出し、アンビルロール61uとカッターロール61dとを備えた切断装置61に導入する。そして、カッターロール61dにより帯状の保持シート9を枚葉の保持シート9に切断する。カッターロール61dとしては、ロールの外周面に保持シート9の吸引及び吸引停止機構を有するものが好ましい。吸引及び吸引停止機構としては、例えばカッターロール61dの回転しない内部空間が減圧された区画と減圧されていない区画とに区分され、その内部空間の周囲を回転するロール外周部に設けられた貫通孔が、前記減圧された区画上を通過している間は、外部から内部へと空気を取り込む吸引孔として機能し、前記減圧されていない区画上を通過している間は、そのような吸引孔として機能しないように構成した機構等が挙げられる。保持シートの吸引及び吸引停止機構を備えるカッターロール61dを用いることで、切断した枚葉の保持シート9をカッターロール61dの表面に保持したまま、凹部5に対応する位置まで搬送することができ、該凹部5に対応する位置において吸引を停止して保持シート9を凹部5に収容することができる。
このようにして、積層シート70が貼着された第2シート12を製造し、その第2シート12の凹部5に保持シート9を収容した後、皮膚に注入する剤6を、保持シート9に供給して保持シート9に含浸させる。その後の工程を第1実施形態の前述した製造方法と同様の工程を行うことで、第2実施形態の微細突起具1Bを製造することができる。
【0048】
次に、本発明の微細突起具の第3実施形態について
図8を参照しながら説明する。第3実施形態に係る微細突起具1Cについては、第2実施形態に係る微細突起具1Bと異なる点について説明する。特に説明しない点については、第2実施形態に係る微細突起具1Bと同様であり、該微細突起具1Bの説明が適宜適用される。
【0049】
微細突起具1Cは、
図8に示すように、微細突起具1Cの第1シート11側の面における、収容部4と重なる部位より外方に位置する環状周辺部13に、微細突起具1Cを、皮膚に固定するための粘着部72を有する。微細突起具1Cでは、粘着部72は、第2シート12における第1シート11側とは反対側の面側に、第2シート12の外周縁から延出するように配された粘着剤により形成されている。
より具体的には、
図8に示すように、第2シート12に対して、基材シート7bの片面に粘着層7aを有する粘着シート71が、第2シート12の上面5a側の全体を覆い且つ第2シート12の外周縁から延出する部分を有するように貼り付けてあり、第2シート12の外周縁から延出する部分の粘着層7aが、前記粘着部72を形成している。また第2シート12の周縁部から延出する部分の粘着層7aの基材シート7b側とは反対側の面には、微細突起具1Bの保護層8と同様の構成を有する保護層8が配されている。
微細突起具1Cによれば、使用に際し、保護層8を剥離し、第2シート12の周縁部から延出する部分における粘着層7aからなる粘着部72を露出させることにより、粘着部72を介して顔、腕、胸等の所望の部位の皮膚に微細突起具1Cを貼付することができる。粘着層7aは、微細突起具1Bに係る粘着層7と同様に、粘着剤により構成することができる。
【0050】
微細突起具1Cのように、微細突起2が突出する下面側に、剤6を注入する対象である皮膚に固定するための粘着部72を有すると、所望の部位に配置した微細突起具1Cが当該部位から意図せずにズレことが防止される。また粘着部72を介して任意の部位に仮固定した後、その位置が適切ではない場合、剥離して適切な部位に再度固定することもできる。このように、微細突起具が、剤6を注入する対象である皮膚に固定するための粘着部72を有すると、微細突起具を適切な部位に固定することが容易となるため、剤6を意図した適切な部位の皮膚に注入することが容易となる。また、微細突起具が、剤6を注入する対象である皮膚に固定するための粘着部72を有すると、微細突起具を、ネット包帯や粘着テープ等の別の固定材を使用しなくても、微細突起2が皮膚に突き刺さった状態を維持することが可能となり、例えば、剤6を時間をかけて徐々に皮膚に注入する方法も容易に行うことができる。
【0051】
皮膚に固定するための粘着部72を設ける部位は、微細突起具1Cのように、収容部4と重なる部位より外方の環状周辺部13であることが好ましい。収容部4と重ならない環状周辺部13に粘着部72を設けることにより、微細突起具を適切な部位に固定することが容易であるという効果が一層確実に奏される上に、長い時間をかけて微小な量の薬剤を皮膚に注入できるという効果が奏される。
【0052】
次に、本発明の微細突起具の第4実施形態について
図11を参照しながら説明する。第4実施形態に係る微細突起具1Dについては、第1実施形態に係る微細突起具1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点については、第1実施形態に係る微細突起具1Aと同様であり、該微細突起具1Aの説明が適宜適用される。
【0053】
微細突起具1Dは、
図11に示すように、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する第2シート12側の部分に、高剛性部位16が形成されている。高剛性部位16は、デュロメータ硬さが、A60以上である部分である。高剛性部位16のデュロメータ硬さは、好ましくはA70以上であり、より好ましくはA80以上である。デュロメータ硬さは、上述したデュロメータ硬さ試験によって測定することができる。高剛性部位16は、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する第2シート12側の部分の全域に形成されていてもよいし、該部分の一部に形成されていてもよいが、全域に形成されていることが好ましい。
【0054】
高剛性部位16は、第2シート12における、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部位の剛性を高くすることにより形成されたものであってもよいし、第2シートとは別体の部材を、第2シートにおける、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部分に配することにより形成されたものであってもよい。
【0055】
第2シート12における、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部位の剛性を高くする方法としては、例えば、第2シート12おける該部位に熱を加えることや、第2シート12における該部位の厚みを他の部分よりも厚くすること等が挙げられる。
【0056】
第2シートとは別体の部材を、第2シートにおける、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部分に配する場合、該別体の部材は、1つであってもよいし、複数であってもよい。第2シート12に別体の部材を配した部分全体のデュロメータ硬さがA60以上であればよく、別体の部材自体のデュロメータ硬さはA60未満であってもよい。前記の別体の部材を構成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等が挙げられる。
【0057】
微細突起具1Dは、高剛性部位16を有していることにより、該高剛性部位16を押し下げたときに、該高剛性部位16が変形せずに同じ形を保ちながら剤6を押し出すことができるため、該高剛性部位16を押し下げた量に応じた量の剤6を押し出すことができる。
【0058】
微細突起具1Dは、
図11に示すように、高剛性部位16を押し下げたときに、該高剛性部位16の外周部16aが当接してそれ以上の押し下げを規制するスペーサー部材15が、第1シートと第2シートとの間に配されていることが好ましい。スペーサー部材15は、環状の部材である。スペーサー部材15は、周方向に連続していてもよいし、不連続であってもよい。スペーサー部材15の平面視形状は特に制限されないが、収容部4の平面視形状と相似形状であることが好ましい。
【0059】
スペーサー部材15の厚みtは、該スペーサー部材15の形状を保つことができる剛性を維持する観点から、好ましくは0.5mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上であり、収容部4内の剤6を吐出する時に該剤6を定量的に放出し易くする観点から、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下であり、それらの両立の観点から、好ましくは0.5mm以上2mm以下であり、より好ましくは1mm以上1.5mm以下である(
図11参照)。
【0060】
スペーサー部材15の外径Dは、微細突起具1Dの厚み方向Zに直交する方向の最大寸法Wに対して、収容部4内の剤6を吐出する時に該剤6を定量的に放出し易くする観点から、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、環状周辺部13の幅を広くとり、第1シート11と第2シート12の接合不良が生じることを防ぐ観点から、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、それらの両立の観点から、好ましくは50%以上80%以下であり、より好ましくは60%以上70%以下である(
図11参照)。
【0061】
スペーサー部材15の内径dは、微細突起具1Dの厚み方向Zに直交する方向の最大寸法Wに対して、内径dが大きいほどスペーサー部材15の体積が小さくなり、収容部4により多くの剤6を保持できるという観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、内径dが小さいほどスペーサー部材15の剛性が大きくなるという観点から、好ましくは40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、それらの両立の観点から、好ましくは20%以上40%以下であり、より好ましくは30%以上35%以下である(
図11参照)。
【0062】
微細突起具1Dがスペーサー部材15を有していることにより、高剛性部位16を押し下げたときの押し下げ量Pを一定とすることができる。したがって、微細突起具1Dにおける剤6の吐出量を一定とすることができる。また、例えば、微細突起具1Dを、剤6を注入する対象のヒトの皮膚等に押し当て、高剛性部位16を押し下げたときに、該押し下げ力により、皮膚が凹んだり、傾いたりする場合がある。このように、微細突起具1Dを押し当てた面が不安定な場合であっても、スペーサー部材15を有していることにより、高剛性部位16を押し下げたときに、高剛性部位16の周縁部16aがスペーサー部材15に当接するため、一定量の剤6を安定して吐出させることができる。
【0063】
第4実施形態の微細突起具1Dは、第2シート12に高剛性部位16を形成する工程、及び第1シート11と第2シート12との間にスペーサー部材15を配する工程を行う以外は、上述した第1実施形態の微細突起具1Aの製造方法の一例と同様にして製造することができる。
【0064】
第2シート12に高剛性部位16を形成する工程においては、例えば、第2シート12における、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部位に熱を加えることにより高剛性部位16を形成してもよいし、第2シート12における、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部位の厚みを他の部分よりも厚くすることにより高剛性部位16を形成してもよいし、第2シートとは別体の部材を、第2シートにおける、第1シート11の微細突起2が形成されている領域と対向する部分に配することにより高剛性部位16を形成してもよい。
【0065】
第1シート11と第2シート12との間にスペーサー部材15を配する工程は、第1シート11と第2シート12とを融着させる前に行うことが好ましい。第4実施形態の微細突起具1Dを製造する場合、第2シート12に凹部5を形成した後に、該凹部5にスペーサー部材15を配することが好ましい。
【0066】
次に、本発明の容器入り微細突起具について説明する。本発明の容器入り微細突起具の好ましい一実施形態の容器入り微細突起具10を
図12に示す。容器入り微細突起具10は、微細突起具1Aと、該微細突起具1Aを気密に内包する保護容器18とを備えている。容器入り微細突起具10において、微細突起具1Aは、第2シート12側の部分が保護容器18に剥離可能に接着しており、微細突起2の先端が保護容器18の内面に接しないようになっている。
【0067】
保護容器18は、容器本体18aと蓋部18bとを有している。容器本体18aは、内部に微細突起具1Aが収容される突起具収容部19を有している。容器本体18aと蓋部18bとは、互いの周縁部において、手により剥離可能に固定されている。容器本体18aと蓋部18bとが固定されることにより、突起具収容部19は気密に密閉される。蓋部18bにおける、微細突起具1A側の面には、微細突起具1Aにおける第2シート12側の部分、より具体的には、第2シート12における第1シート11側とは反対側の面が、接着剤等を介して剥離可能に接着している。接着剤は、蓋部18bから微細突起具1Aを剥離したときに、蓋部18b側及び微細突起具1Aの第2シート12側の部分の何れに残るようになっていてもよいが、該接着剤を粘着層7として使用することができるようにする観点から、微細突起具1Aの第2シート12側の部分に残るようになっていることが好ましい。本実施形態の容器入り微細突起具10においては、
図12に示すように、蓋部18bにおける微細突起具1A側の面に、第2シート12における第1シート11側とは反対側の面が粘着層7を介して剥離可能に接着している。
【0068】
容器入り微細突起具10は、微細突起具1Aが保護容器18に気密に内包されるため、微細突起具1Aの収容部に収容された剤6の蒸発を防ぐことができるようになっている。また、容器入り微細突起具10は、微細突起具1Aの微細突起2の先端が保護容器18の内面と接触しないようになっているため、例えば、微細突起2の先端が保護容器18の内面と接触し、微細突起2の先端が潰れてしまうことを防ぐことができるようになっている。
【0069】
容器本体18aの突起具収容部19は、その内径が、微細突起具1Aの厚み方向Zに直交する方向の最大寸法W以上であることが好ましい。また突起具収容部19は、その深さが、微細突起具1Aの厚みT以上であることが好ましい。
【0070】
容器本体18a及び蓋部18bを構成する材料としては、熱可塑性樹脂等の合成樹脂、熱硬化性樹脂の合成樹脂、金属等が挙げられる。容器本体18aを構成する材料と蓋部18bを構成する材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、容器本体18aと蓋部18bとは、別体であってもよいし、一体として形成されていてもよい。
【0071】
本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず適宜変更可能である。例えば、第1実施形態の微細突起具1Aでは、凹部5は台形形状の横断面形状を有しており、全体として円錐台形状を有しているが、凹部5は、
図9(a)に示すように、階段状に張り出す段部5bを有していてもよい。
凹部5が段部5bを有している場合、凹部5に、皮膚に注入する剤6を分注する際に、段部5bの高さ位置や、段部5bまで注入した剤の量を、個々の凹部5に対する注入量を制御する基準等として用いることができる。例えば剤6の分注量を段部5bの高さまでとすることで、第1シート11及び第2シート12の周縁部において、第1シート11と第2シート12との間に剤6が侵入し第1シート11と第2シート12との接合不良が生じることを防ぐことができる。また凹部5の形状は、円錐台形状以外に、角錐台形状等の他の形状であってもよい。
【0072】
また第1乃至第4実施形態の微細突起具1A~1Dでは、凹部5は第2シート12が第1シート11側とは反対側に窪んで形成されているが、凹部5は、
図9(b)に示すように、第1シート11が第2シート12側に窪んで形成されていてもよい。更に凹部5は、
図9(c)に示すように、第1シート11及び第2シート12の両方に形成されていてもよい。具体的には、第2シート12が第1シート11側とは反対側に窪んで、第2シート12に凹部5が形成されているとともに、第1シート11が第2シート12側に窪んで、第1シート11に凹部5が形成されていてもよい。収容部4は、第1シート11に形成された凹部5及び第2シート12に形成された凹部5の何れか一方のみを有していてもよいし、両方を有していてもよい。また
図9(a)~
図9(c)に示す形態の収容部4に、保持シート9に含浸された状態の剤を収容しても良い。
【0073】
また、微細突起2の配置及び微細突起2の形状には特に制限はない。例えば、第1ないし第4実施形態の微細突起具1A~1Dでは、微細突起2はアレイ状(単数又は複数の列状)に配されているが、アレイ状以外に、複数の微細突起2が円形、星形等の任意の形状をなすように並んだ配置等、任意の配置であってもよい。
【0074】
また、第1ないし第4実施形態の微細突起具1A~1Dでは、開孔3は微細突起2の先端部に位置しているが、先端部以外に、微細突起2の中腹部又は根本部に位置していてもよい。更に、1つの微細突起2が有する開孔3の数にも特に制限はなく、1つの微細突起2が複数の開孔3を有していてもよい。また、本発明の微細突起具に複数の微細突起2が設けられている場合、複数の微細突起2のうち少なくとも1つが開孔3を有していればよく、開孔3を有しない微細突起2が設けられていてもよい。本発明の微細突起具が有する開孔3の数と本発明の微細突起具が有する微細突起2の数とは一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
また、第1シート11における微細突起2が突出していない部分に、微細突起2が有する開孔3とは別の、第2の開孔が設けられていてもよい。第1シート11における微細突起2が突出していない部分に第2の開孔が設けられていることにより、皮膚の内部のみならず、皮膚の表面にも、皮膚に注入する剤6を塗布することが可能となる。第2の開孔は、収容部4と重なる部位に設けることが好ましく、第1シート11側から見たときに、全ての微細突起を囲む突起領域内に形成されていても良いし、微細突起が形成された突起領域より外側の領域に形成されていてもよい。
【0076】
また、第1実施形態の微細突起具1Aでは、粘着シート71は第2シート12の全体を覆うように配されているとともに、第2シート12の周縁部から延出する部分を有しているが、微細突起2が突出する下面側に設ける粘着部72、好ましくは収容部4と重なる部位より外方に位置する環状周辺部13に設ける粘着部72は、
図10に示す粘着部72ように、第1シート11の周縁部に粘着剤を配して形成されていても良い。
図10に示す実施形態では、第1シート11の微細突起2が突出している下面側における、第1シート11の周縁部に粘着剤が配されて粘着部72が形成されており、該粘着部72は、第3実施形態における保護層8と同様の構成を有する保護層8で被覆保護されている。
図10に示す微細突起具によっても、第3実施形態の微細突起具と同様の作用効果が奏される。
【0077】
本発明の微細突起具の用途は、美容等の非医療目的の用途に限られず、医療機器としての使用であってもよい。本発明の微細突起具で、医療機器としての効果を期待する場合、剤6を注入する皮膚の部位は、真皮R又は真皮R近傍の皮下組織Qが好ましい(
図2参照)。
【0078】
本発明の微細突起具を医療機器として使用する場合、先端部を真皮Rに刺入することができるようにする観点から、微細突起2の突出高さH2は、好ましくは500μm以上、より好ましくは1000μm以上である。また、微細突起2が真皮Rを貫き、その先端部が皮下組織Qに大きく刺入しないようにする観点から、微細突起2の突出高さH2は、好ましくは2500μm以下、より好ましくは2000μm以下である。また、真皮Rに液体を注液する観点から、微細突起2の突出高さH2は、好ましくは500μm以上2500μm以下、より好ましくは1000μm以上2000μm以下である。
【0079】
本発明の微細突起具を医療機器として使用する場合、微細突起2の先端から開孔3の前記中央位置までの距離H3は、微細突起2の先端が表皮Sを貫き真皮Rまで到達する観点から、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上である。また、前記距離H3は、微細突起2の先端部の強度を担保する観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは500μm以下である。また、前記距離H3は、表皮Sを貫き真皮Rまで微細突起2の先端が到達しなければならず、微細突起2の先端部の強度を担保する必要があるという観点から、好ましくは200μm以上800μm以下であり、より好ましくは300μm以上500μm以下である。
【0080】
本発明は更に以下の付記(微細突起具)を開示する。
<1>
開孔を有する微細突起が形成された第1シートと、皮膚に注入する剤の収容部と、第2シートとを備えた微細突起具であって、
前記収容部は、第1シートと第2シートとの間に形成されており、
前記微細突起は、第1シートにおける前記収容部側とは反対側に突出している、微細突起具。
<2>
前記微細突起は内部が中空である、前記<1>に記載の微細突起具。
<3>
前記微細突起の内部の空間は、該微細突起の突出方向の基端側において、第1シートの該微細突起が存在しない部分と第2シートとの間に位置する空間と連通して前記収容部の一部を構成している、前記<2>に記載の微細突起具。
<4>
前記微細突起は、その突出高さが、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、更に好ましくは200μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは230μm以下である、前記<1>~前記<3>の何れか1に記載の微細突起具。
<5>
第2シート側の押圧により、前記皮膚に注入する剤を、前記開孔から押し出し可能になされている、前記<1>~前記<4>の何れか1に記載の微細突起具。
【0081】
<6>
第1シートと第2シートとが、前記収容部と重なる部位より外方に位置する環状周辺部において互いに接合されており、
前記収容部は、第1シートが第2シート側とは反対側に窪んで形成された凹部及び第2シートが第1シート側とは反対側に窪んで形成された凹部のうちの何れか一方又は両方を有している、前記<1>~前記<5>の何れか1に記載の微細突起具。
<7>
第1シートと第2シートとは、前記環状周辺部の幅の一部が全周に亘って接合されている、前記<6>に記載の微細突起具。
<8>
第2シートの第1シート側とは反対側の面における前記収容部と重なる部位に粘着層を有する、前記<1>~前記<7>の何れか1に記載の微細突起具。
【0082】
<9>
第1シート側の面における、前記収容部と重なる部位より外方に位置する環状周辺部に、前記微細突起具を、皮膚に固定するための粘着部を有する、前記<1>~前記<8>の何れか1に記載の微細突起具。
<10>
前記粘着部は、第2シートにおける第1シート側とは反対側の面側に、該第2シートの外周縁から延出するように配された粘着剤により形成されている、前記<9>に記載の微細突起具。
<11>
前記粘着部は、第1シートの前記微細突起が突出している下面側における、第1シートの周縁部に配された粘着剤により形成されている、前記<9>に記載の微細突起具。
<12>
前記粘着部は、前記微細突起具を任意の部位に仮固定した後、該微細突起具を剥離して適切な部位に再度固定することができるようになっている、前記<1>~前記<11>の何れか1に記載の微細突起具。
【0083】
<13>
前記皮膚に注入する剤は、保持シートに含浸された状態で前記収容部に収容されている、前記<1>~前記<12>の何れか1に記載の微細突起具。
<14>
前記微細突起の先端部の形状が錐体形状である、前記<1>~前記<13>の何れか1に記載の微細突起具。
<15>
前記開孔が、前記微細突起の先端から20μm以内に位置している、前記<1>~前記<14>の何れか1に記載の微細突起具。
<16>
第1シートの前記収容部と重なる部位における前記微細突起が存在しない部分に第2の開孔が形成されている、前記<1>~前記<15>の何れか1項に記載の微細突起具。
<17>
第2の開孔の孔径は、好ましくは20μm以上80μm以下、より好ましくは40μm以上50μm以下である、前記<16>に記載の微細突起具。
<18>
第2シートが第1シートよりも柔軟である、前記<1>~前記<17>の何れか1に記載の微細突起具。
<19>
全体として扁平な形状を有し、
第1シートと第2シートとが相対向する方向又は前記微細突起の突出方向を厚み方向としたときに、該微細突起具の厚みが、該厚み方向に直交する方向の最大寸法に対して好ましくは100%以下、好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である、前記<1>~前記<18>の何れか1に記載の微細突起具。
【0084】
<20>
第1シートの前記微細突起が形成されている領域と対向する第2シート側の部分に、デュロメータ硬さがA60以上である高剛性部位が形成されている、前記<1>~前記<19>の何れか1項に記載の微細突起具。
<21>
前記高剛性部位は、第2シートにおける、第1シートの微細突起が形成されている領域と対向する部位の剛性を高くすることにより形成されたものである、前記<20>に記載の微細突起具。
<22>
前記高剛性部位は、第2シートとは別体の部材を、第2シートにおける、第1シートの微細突起が形成されている領域と対向する部分に配することにより形成されたものである、前記<20>に記載の微細突起具。
<23>
前記高剛性部位を押し下げたときに、該高剛性部位の外周部が当接してそれ以上の押し下げを規制するスペーサー部材が、第1シートと第2シートとの間に配されている、前記<20>~前記<22>の何れか1に記載の微細突起具。
<24>
前記<1>~前記<23>の何れか1に記載の微細突起具と、該微細突起具を気密に内包する保護容器とを備えた、容器入り微細突起具。
<25>
前記微細突起具は、第2シート側の部分が前記保護容器に剥離可能に接着しており、得前記微細突起の先端が該保護容器の内面に接しないようになっている、前記<24>に記載の容器入り微細突起具。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B,1C,1D 微細突起具
11 第1シート
12 第2シート
13 環状周辺部
2 微細突起
3 開孔
4 収容部
5 凹部
6 皮膚に注入する剤
7 粘着層
8 保護層
9 保持シート
70 積層シート
71 粘着シート
7b 基材シート
7a 粘着層
72 粘着部(剤を注入する皮膚に固定するための粘着部)
10 容器入り微細突起具
18 保護容器
S 表皮
S1 角層
S2 表皮の下層部分
R 真皮
Q 皮下組織