IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】全固体リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20231201BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20231201BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231201BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231201BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20231201BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20231201BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20231201BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231201BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20231201BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/70 A
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0585
C08L23/10
C08K3/24
C08K3/04
C08K3/08
C08K3/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019193247
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2020087918
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2018215323
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-170832(JP,A)
【文献】特開2017-152383(JP,A)
【文献】特開2010-092606(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031689(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/005116(WO,A1)
【文献】特開2007-213930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 10/05-10/0587
C08L 23/10
C08K 3/24
C08K 3/04
C08K 3/08
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質と正極と負極とを備え、
前記正極が正極用樹脂集電体を備え、前記負極が負極用樹脂集電体を備える全固体リチウムイオン二次電池であって、
前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体が、高分子材料と導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物からなり、
前記正極用樹脂集電体に用いられる前記高分子材料が、ポリオレフィン樹脂であり、
前記負極用樹脂集電体に用いられる前記高分子材料が、ポリプロピレンであり、
前記ポリプロピレンが、第1のポリプロピレンと第2のポリプロピレンとの混合物であり、
前記第1のポリプロピレンは、ブロックポリプロピレンであり、
前記第2のポリプロピレンは、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記正極用樹脂集電体が、前記導電性フィラーとして導電性炭素フィラーを含有し、
前記負極用樹脂集電体が、前記導電性フィラーとしてニッケル粒子を含有し、
前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体の厚みが40μmを超え100μm以下である全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
記正極用樹脂集電体1gに含まれる前記導電性炭素フィラーのBET比表面積の合計である総表面積が7.0~10.5mである請求項1記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記負極用樹脂集電体に用いられる前記導電性樹脂組成物が、温度180℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法で測定されるメルトマスフローレートが70~200g/10minである請求項1又は2に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
温度230℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法で測定される前記第1のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR1)よりも、前記の条件と方法によって測定される前記第2のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR2)が大きい請求項1又は2に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記第1のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR1)と前記第2のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR2)との差が10g/10minを超える請求項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
【0003】
なかでも、有機溶媒が揮発する可能性がなく、充放電時の副反応である有機溶媒の分解反応が進行することよって電池内部にガスが発生して電池を膨脹させる問題のない電池として、液体状態の電解質を用いない全固体リチウムイオン二次電池が検討されている。
【0004】
全固体電池に用いる集電体としては金属箔が一般的である。しかし、活物質層と集電体との間に微小な隙間が生じることを免れることができず、そのため電子伝導性が劣り、さらに電池の充放電に伴う積層体の膨張収縮に伴い金属箔が剥離しやすく、サイクル特性が良好な電池を長期にわたり維持することができないという問題があった。
このような問題を解決する方法として、集電体に樹脂フィルムを用いる検討がなされている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-329004号公報
【文献】特開2009-181874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの検討では、集電体として使用される樹脂フィルム膜厚が薄いほど活物質層との接触抵抗が下がり電池のサイクル特性が向上するとされている。一方で、全固体電池の充放電時には加圧すること(50~400気圧またはそれ以上の圧力で電池を拘束すること)が必要であり、そのような条件下では薄いフィルムは容易に破断してしまい電池として機能しなくなる事例が多いという課題があった。
【0007】
本発明は、サイクル特性と電池の安定性を両立した全固体リチウムイオン二次電池である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記発明である。
固体電解質と正極と負極とを備え、前記正極が正極用樹脂集電体を備え、前記負極が負極用樹脂集電体を備える全固体リチウムイオン二次電池であって、前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体が、高分子材料と導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物からなり、前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体の厚みが40μmを超え100μm以下である全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、サイクル特性と電池の安定性を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、固体電解質と正極と負極とを備え、前記正極が正極用樹脂集電体を備え、前記負極が負極用樹脂集電体を備える全固体リチウムイオン二次電池であって、前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体が、高分子材料と導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物からなり、前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体の厚みが40μmを超え100μm以下である全固体リチウムイオン二次電池である。
【0011】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、非水系有機溶剤と電解質塩との混合物であるリチウムイオン電池用電解液を含まないリチウムイオン二次電池である。
【0012】
本発明における固体電解質には特に制限はなく公知の固体電解質を用いることができ、日本国特許公開第2018-170184号公報、日本国特許公開第2018-116812号公報、日本国特許公開第2012-243743号公報等に記載のもの等を用いることができる。
【0013】
本発明における正極及び負極は樹脂集電体を備えること以外に特に制限はなく、樹脂集電体とともに正極及び負極を構成する電極活物質層は公知の正極活物質及び負極活物質を用いることができる。
【0014】
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0015】
負極活物質としては、炭素系材料[例えば黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭化ケイ素及び炭素繊維等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物、リチウム・チタン酸化物及びケイ素酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。これらの他に金属リチウム箔を負極活物質層として用いることができる。
上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0016】
電極活物質は、表面の一部又は全部に被覆用樹脂である高分子化合物を含む電極被覆層を有する被覆電極活物質であってもよい。
電極被覆層は、被覆用樹脂である高分子化合物を含んでなる。また、必要に応じて、さらに、後述する導電助剤を含んでいてもよい。
電極被覆層を構成する高分子化合物としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、国際公開第2015/005117号に記載のリチウムイオン電池活物質被覆用樹脂等が挙げられる。
【0017】
導電助剤としては、導電性を有する材料から選択され、具体的には、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、カーボンファイバー(PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維等)、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]等を用いることができる。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。グラフェンを練り込んだポリプロピレン樹脂も導電助剤として好ましい。
【0018】
正極活物質層及び負極活物質層は、電極活物質と導電助剤とを含む電極活物質成形体であってもよい。
前記電極活物質成形体は、電極活物質と導電助剤とを一括又は段階的に万能混合機等の公知の粉体混合装置等に入れ、公知の方法で混合した後に成形する方法、電極活物質と導電助剤と溶剤との混合物を基材上に塗布した後に溶剤を蒸発留去する方法等で得ることができる。
【0019】
本発明の正極は正極用樹脂集電体を備え、負極は負極用樹脂集電体を備える。前記正極用樹脂集電体及び前記負極用樹脂集電体は、高分子材料と導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物からなる。
【0020】
本発明の正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体に用いられる高分子材料としては、オレフィン樹脂[ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)、炭素数4~30のα-オレフィン(1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン、1-デセン及び1-ドデセン等)を必須構成単量体とする重合体等]、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0021】
本発明の正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体に用いられる導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択され、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料[黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)及びカーボンナノチューブ等]及び金属[アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなど]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材又は金属酸化物が用いられてもよい。耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、ニッケル、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0022】
本発明の正極用樹脂集電体は、正極用樹脂集電体の導電性と樹脂強度の観点から、高分子材料としてポリオレフィン樹脂を含み、導電性フィラーとして導電性炭素フィラーを含む樹脂集電体であることが好ましい。
【0023】
本発明の正極用樹脂集電体に用いられるポリオレフィン樹脂として好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
例えば、以下のものが市場から入手できる。
PE:商品名「ノバテックLL UE320」、「ノバテックLL UJ960」[いずれも日本ポリエチレン(株)製]
PP:商品名「サンアロマーPM854X」、「サンアロマーPC684S」、「サンアロマーPL500A」、「サンアロマーPC630S」、「サンアロマーPC630A」、「サンアロマーPB522M」[いずれもサンアロマー(株)製]、商品名「プライムポリマーJ-2000GP」[(株)プライムポリマー製]、商品名「ウィンテックWFX4T」[日本ポリプロ(株)製]、商品名「ユーメックス1001」[三洋化成工業(株)製]
PMP:商品名「TPX」[三井化学(株)製]
【0024】
本発明の正極用樹脂集電体に用いられる導電性炭素フィラーとしては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
本発明の正極用樹脂集電体は、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が7.0~10.5mであることが好ましい。樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が前記範囲であることで、導電性炭素フィラーの表面で副反応(分解反応)が生じにくく、分解反応に伴う分解電流が小さくなることによりサイクル特性を改善することができ、また樹脂集電体への電解液含浸量を適量となることで電解液の滲みが発生を抑制され、樹脂集電体の耐久性を高めることができる。
導電性炭素フィラーの比表面積は、「JIS Z8830 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて、BET比表面積として測定した値である。
【0026】
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積は、以下の式で算出される。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積(m
=樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)×導電性炭素フィラーのBET比表面積(m/g)
【0027】
なお、樹脂集電体が、導電性炭素フィラーとして2種以上の導電性炭素フィラーを含む場合は、導電性炭素フィラーのBET比表面積はそれぞれ分離して測定される。
導電性炭素フィラーを2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーのBET比表面積を掛けて得られる値を合計することにより、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を計算することとする。
【0028】
本発明の正極用樹脂集電体の樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を前記範囲に調製する方法としては、比表面積の小さい導電性炭素フィラーと、比表面積が大きく、導電性の高い導電性炭素フィラーを混合して使用する態様等が挙げられる。
【0029】
本発明の負極用樹脂集電体は、耐溶剤性の観点から、高分子材料としてポリオレフィン樹脂を用いることが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは4.5重量%以下)のエチレン単位を含有する共重合体である。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンとしては、特開2001-253910号公報等に記載されたポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基を導入したポリプロピレンであり、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応する等の公知の方法で反応して得ることができる。
【0030】
上述のように、ポリオレフィン樹脂は、2種以上の混合物であってもよく、例えば、2種以上のポリプロピレンの混合物等が挙げられる。中でも、第1のポリプロピレンと第2のポリプロピレンとの混合物としては、フィラーの分散性の観点から、第1のポリプロピレンがブロックポリプロピレンであり、第2のポリプロピレンがホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である混合物が好ましい。
【0031】
ブロックポリプロピレンとして市場から入手できるものとしては、商品名「サンアロマーPM854X」、「サンアロマーPM671A」、「サンアロマーPC684S」、「クオリアCM688A」、「クオリアCM986A」、「クオリアCMA70V」[サンアロマー(株)製]等が挙げられる。
ホモポリプロピレンとして市場から入手できるものとしては、商品名「サンアロマーPHA03A」、「サンアロマーPL500A」、「サンアロマーPLA03A」、「サンアロマーPM900A」「サンアロマーPM600A」[サンアロマー(株)製]等が挙げられる。
ランダムポリプロピレンとして市場から入手できるものとしては、商品名「サンアロマーPC630A」、「サンアロマーPC630S」[サンアロマー(株)製]等が挙げられる。
長鎖構造を有するポリプロピレンとして市場から入手できるものとしては、商品名「ウェイマックスMFX3」[日本ポリプロ(株)製]等が挙げられる。
酸変性ポリプロピレンとして市場から入手できるものとしては、商品名「ユーメックス1001」、「ユーメックスCA620」[三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0032】
ポリオレフィン樹脂が上述した第1のポリプロピレンと第2のポリプロピレンとの混合物である場合、第1のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR1)よりも第2のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR2)が大きいことが好ましく、第1のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR1)と第2のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR2)との差が10g/10minを超えることがより好ましい。MFRの異なる2種以上のポリプロピレンの混合物を用いると、貫通抵抗値が低くなるため好ましい。
なお、第1のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR1)及び第2のポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR2)とは、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法でそれぞれ測定される。第1のポリプロピレン又は第2のポリプロピレンが2種以上のポリプロピレンからなる場合、MFR1又はMFR2はそれぞれを構成するポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR)の加重平均値として計算して得ることができる。
【0033】
また、ポリオレフィンが上述した第1のポリプロピレンと第2のポリプロピレンとの混合物である場合、第1のポリプロピレンと第2のポリプロピレンとの重量比は、30:70~50:50であることが好ましく、30:70~40:60であることがより好ましい。
【0034】
本発明の負極用樹脂集電体に用いられる導電性フィラーとしては、電気的安定性の観点から、ニッケル粒子が好ましい。
前記ニッケル粒子のメジアン径は特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、1~20μmであることが好ましく、また、メジアン径の異なる2種以上のニッケル粒子からなることが好ましい。
なお、メジアン径とは、体積分布に基づくメジアン径であり、レーザー式粒度分布測定装置(LA-920:堀場製作所製等)によって測定される。
【0035】
ニッケル粒子として、市場から入手できるものとしては、商品名「Type123」、「Type255」、「4SP-10」、「HCA-1」[いずれもVale社製]等が挙げられる。
【0036】
集電体の強度と導電性とのバランスの観点から、負極用樹脂集電体に用いられる導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂とニッケル粒子との重量比は、ポリオレフィン樹脂:ニッケル粒子=25:75~40:60であることが好ましく、30:70~35:65であることがより好ましい。
【0037】
本発明の負極用樹脂集電体に用いられる導電性樹脂組成物は、薄膜成形性の観点から、温度180℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法で測定されるメルトマスフローレートが70~200g/10minであることが好ましく、70~150g/10minであることがより好ましく、70~120g/10minであることが更に好ましい。なお、メルトマスフローレート(MFR)は、溶融状態にある樹脂の流動性を示す指標であり、MFRの値が大きいほど流動性が高い。
【0038】
本発明の正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体は、高分子材料と、導電性フィラーとの他に、さらに必要に応じ、その他の成分[導電材料用分散剤(界面活性剤等)、着色剤、紫外線吸収剤、架橋促進剤、架橋剤、汎用の可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)]等を適宜含んでいてもよい。その他の成分の合計添加量は、電気的安定性の観点から、正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体100重量部中0.001~5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001~3重量部である。
【0039】
本発明の正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体は、日本国特許公開第2012-150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の方法で作製することができ、好ましくは、以下の方法で製造することができる。
まず、高分子材料、導電性フィラー及び必要に応じてその他の成分を混合することにより、導電性樹脂組成物を得る。
混合の方法としては、マスターバッチの製造方法、及び、熱可塑性樹脂組成物(分散剤とフィラーと熱可塑性樹脂とからなる組成物、又は、マスターバッチと熱可塑性樹脂とからなる組成物)の製造方法等において公知の混合方法が用いられ、ペレット状又は粉体状の成分を適切な混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いて加熱溶融混合して混合することができる。
【0040】
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。得られた混合物は、さらにペレタイザーなどによりペレット化又は粉末化してもよい。
【0041】
得られた導電性樹脂組成物を、例えばフィルム状に成形することにより、本発明の正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体が得られる。フィルム状に成形する方法としては、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。
【0042】
本発明の正極用樹脂集電体及び負極用樹脂集電体の厚み(膜厚)は40μmを超え、100μm以下である。全固体リチウムイオン電池は充放電時に大きな加圧(100気圧~400気圧またはそれ以上の拘束)が必要であり、樹脂集電体の厚みが40μm以下であると充放電時に破断し電気の短絡が起こり電池として機能しなくなる恐れが高くなり、100μmより大きいと単電池の厚みに対する樹脂集電体の比率が大きくなり、高エネルギー密度にならない。樹脂集電体の厚みは、マイクロメーターで測定される値を用いる。
【0043】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、樹脂集電体を備える正極と固体電解質と樹脂集電体を備える負極とを電池外装容器(ラミネート容器等)内に積層し、樹脂集電体に接続した電流取り出し用端子を容器の外側に出した状態で電池外装容器を封止する方法等で得ることができる。
【0044】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池において、固体電解質を膜状に成形して用いても良い。
なお、全固体リチウムイオン二次電池において正極と負極との間に配置される固体電解質膜をセパレータという場合もある。
【0045】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、1個を単独で用いることも可能であるが、複数個の全固体リチウムイオン二次電池の正極と負極を直列に接続した構成とした組電池からなる電池パックとして用いることにより出力を高めることができる。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池を複数個直列に接続する方法としては、全固体リチウムイオン二次電池を、隣接するひとつの全固体リチウムイオン二次電池の正極端子と他の全固体リチウムイオン二次電池負極端子とが接触するように接続して積層する方法等が挙げられる。また、全固体リチウムイオン二次電池の正極端子及び負極端子がそれぞれ電池外装容器の上部及び下部に露出している場合には、各全固体リチウムイオン二次電池内における蓄電素子の向きが一致するように積層する方法により直列に接続することができる。正極端子及び負極端子がそれぞれ電池外装容器の上部及び下部に露出した状態の全固体リチウムイオン二次電池は、電池外装容器として用いるラミネート容器の樹脂層を剥離して金属層を露出させて封止すること等により得ることが出来る。
【0046】
樹脂集電体に接続した電流取り出し用端子を電池外装容器の上部及び下部に露出した状態で封止した全固体リチウムイオン二次電池を用いた場合、全固体リチウムイオン二次電池を積層するだけで正極端子と負極端子とを接続することができ、特別な部材を必要とせずに容易に全固体リチウムイオン二次電池同士を直列接続して電池パックとすることができる。また特別な部材を使用することなく、積層することにより形成されているので、全固体リチウムイオン二次電池のひとつに不良品があった場合でも、全固体リチウムイオン二次電池間の配線をやり直すことなく不良品を取り換えるだけで、後の良品をそのまま使用できるため、メンテナンス性と経済性に優れる。
【0047】
電池パックの出力を向上する観点から、例えば、全固体リチウムイオン二次電池を5個以上直列に接続した構成であることが好ましく、7個以上直列に接続した構成であることがより好ましい。
また、全固体リチウムイオン二次電池は、正極として機能する露出面と負極として機能する露出面とが平滑であるため、全固体リチウムイオン二次電池同士を直列接続しても電気的接続が良好である。
【実施例
【0048】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0049】
<製造例1:正極用樹脂集電体(C-1)の製造>
2軸押出機にて、高分子材料としてポリプロピレン樹脂(PP)[商品名「サンアロマーPC630S」、サンアロマー(株)製]69.7部、導電性フィラーとしてアセチレンブラック[商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]25.0部、分散剤[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]5.0部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して正極用樹脂集電体に用いる導電性樹脂組成物(以下、正極用導電性樹脂組成物と記載する)を得た。得られた正極用導電性樹脂組成物をTダイ押出しフィルム成形機に通して、その後熱プレス機により複数回圧延することで、膜厚42μmの正極用樹脂集電体(C-1)を得た。
【0050】
<製造例2:正極用樹脂集電体(C-2)の製造>
2軸押出機にて、高分子材料としてポリプロピレン樹脂(PP)[商品名「サンアロマーPC684S」、サンアロマー(株)製]84.0部、導電性フィラーとしてアセチレンブラック[比表面積68m/g、商品名「エンサコ250G(粒状)」、Imerys製11.0部、分散剤[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]5.0部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して正極用導電性樹脂組成物を得た。得られた正極用導電性樹脂組成物をTダイ押出しフィルム成形機に通して、膜厚70μmの正極用樹脂集電体(C-2)を得た。
【0051】
<製造例3:正極用樹脂集電体(C-3)の製造>
製造例2で得られた正極用樹脂集電体(C-2)を、熱プレス機による圧延後、さらにロールプレスすることで、膜厚45μmの正極用樹脂集電体(C-3)を得た。
【0052】
<製造例3~8:正極用樹脂集電体(C-4)~(C-8)の製造>
表1に記載の高分子材料と導電性フィラーを用いる以外は製造例2と同様にして、正極用樹脂集電体(C-4)~(C-8)を得た。
【0053】
<比較製造例1:比較の正極用樹脂集電体(比C-1)の製造>
熱プレス機による圧延後、さらにロールプレスすることで、厚みを9μmに変更したことを除いて、製造例1と同様の方法で比較の正極樹脂集電体(比C-1)を得た。
【0054】
<比較製造例2:比較の正極用樹脂集電体(比C-2)の製造>
製造例2で得られた正極用樹脂集電体(C-2)を、熱プレス機による圧延後、さらにロールプレスすることで、膜厚30μmの比較の正極用樹脂集電体(比C-2)を得た。
【0055】
<比較製造例3:比較の正極用樹脂集電体(比C-3)の製造>
表1に記載の高分子材料と導電性フィラーを用いる以外は製造例2と同様にして、膜厚105μmの比較の正極用樹脂集電体(比C-3)を得た。
【0056】
<製造例9:負極用樹脂集電体(A-1)の製造>
2軸押出機にて、高分子材料としてホモポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部及び酸変性ポリプロピレン[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部と、導電性フィラーとしてニッケル粒子[商品名「Type255」、Vale社製]25部とを、200℃、200rpmの条件で溶融混練して負極用樹脂集電体に用いる導電性樹脂組成物(以下、負極用導電性樹脂組成物と記載する)(Z-1)を得た。
得られた負極用導電性樹脂組成物(Z-1)を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、その後熱プレス機により複数回圧延することで膜厚45μmの負極用樹脂集電フィルム原反(A-1-1)を得た。
この負極用樹脂集電フィルム原反の両主面に、真空蒸着法により銅の金属層を厚さ5nmでそれぞれ形成して、金属層を両面に設けた負極用樹脂集電体(A-1)を得た。
【0057】
<製造例10:負極用樹脂集電体(A-2)の製造>
2軸押出機にて、高分子材料としてブロックポリプロピレン樹脂[商品名「サンアロマーPM854X」、サンアロマー(株)製]50部、ホモポリプロピレン樹脂[商品名「サンアロマーPHA03A」、サンアロマー(株)製]25部及び酸変性ポリプロピレン樹脂[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]25部の混合物を30部と、導電性フィラーとしてニッケル粒子[商品名「Type255」、Vale社製]30部とを200℃、200rpmの条件で溶融混練して負極用導電性樹脂組成物(Z-2)を得た。
得られた負極用導電性樹脂組成物(Z-2)を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、膜厚80μmの負極用樹脂集電体(A-2)を得た。
【0058】
<製造例11~14:負極用樹脂集電体(A-3)~(A-6)の製造>
表2に記載の高分子材料及び導電性フィラーを用いる以外は製造例10と同様にして、負極用樹脂集電体(A-3)~(A-6)を得た。
【0059】
<製造例15:負極用樹脂集電体(A-7)の製造>
製造例14で得られた負極用樹脂集電体(A-6)を、熱プレス機による圧延後、さらにロールプレスすることで、膜厚50μmの負極用樹脂集電体(A-7)を得た。
【0060】
<製造例16:負極用樹脂集電体(A-8)の製造>
製造例15で得られた負極用樹脂集電体(A-7)を2枚重ねて熱プレス機で接着して、膜厚100μmの負極用樹脂集電体(A-8)を得た。
【0061】
<製造例17:負極用樹脂集電体(A-9)の製造>
製造例14で得られた負極用樹脂集電体(A-6)、製造例13で得られた負極用樹脂集電体(A-5)、負極用樹脂集電体(A-6)の順に重ねて熱プレス機で接着・圧延後、さらにロールプレスすることで、膜厚75μmの負極用樹脂集電体(A-9)を得た。
【0062】
<製造例18:負極用樹脂集電体(A-10)の製造>
製造例15で得られた負極用樹脂集電体(A-7)の両主面に、真空蒸着法により銅の金属層を厚さ5nmでそれぞれ形成して、金属層を両面に設けた負極用樹脂集電体(A-10)を得た。
【0063】
<比較製造例4:比較の負極用樹脂集電体(比A-1)の製造>
熱プレス機による圧延後、さらにロールプレスすることで、厚みを14μmに変更したことを除いて、製造例9と同様の方法で負極用樹脂集電体(比A-1)を得た。
【0064】
<比較製造例5:比較の負極用樹脂集電体(比A-2)の製造>
膜厚を35μmとする以外は製造例16と同様にして、比較の負極用樹脂集電体(比A-2)を得た。
【0065】
<比較製造例6:比較の負極用樹脂集電体(比A-3)の製造>
表2に記載の高分子材料及び導電性フィラーを用いること以外は製造例10と同様にして、膜厚が200μmの比較の負極用樹脂集電体(比A-3)を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
製造例1~18及び、比較製造例1~6で得られた樹脂集電体の組成、及び物性を表1~2に記載した。
なお、表1~2に記載の材料の種類を示す記号は下記の材料を意味する。
<高分子材料>
PP11:ブロックポリプロピレン[商品名「サンアロマーPC684S」(7.5g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP12:ブロックポリプロピレン[商品名「サンアロマーPM854X」(20g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP13:ブロックポリプロピレン[商品名「クオリアCMA70V」(48g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP14:ブロックポリプロピレン[商品名「クオリアCM986A」(30g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP21:ホモポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」(3g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP22:ホモポリプロピレン[商品名「サンアロマーPHA03A」(42g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP23:ホモポリプロピレン[商品名「サンアロマーPHA00A」(38g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP24:ホモポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL900A」(30g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP31:ランダムポリプロピレン[商品名「サンアロマーPC630S」(7g/10min)、サンアロマー(株)製]
PP41:酸変性ポリプロピレン[商品名「ユーメックス1001」(230g/10min)、三洋化成工業(株)製]
なお、商品名の後の括弧内に記載した値は、そのポリプロピレンの温度230℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法でそれぞれ測定されるメルトマスフローレート(MFR)である。
【0069】
<導電性フィラー>
B11:アセチレンブラック[比表面積69m/g、商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]
B12:アセチレンブラック[比表面積68m/g、商品名「エンサコ250G(粒状)」、Imerys製
B13:アセチレンブラック[比表面積39m/g、商品名「デンカブラックLi-400」、デンカ(株)製]
B21:黒鉛粒子[比表面積1.8m/g、商品名「SNG-WXA1」、JFEケミカル(株)製]
B22:黒鉛粒子[比表面積0.6m/g、商品名「SNG-P1A1」、JFEケミカル(株)製]
B23:黒鉛粒子[比表面積6.95m/g、商品名「CPB」、日本黒鉛工業(株)製]
B24:黒鉛粒子[比表面積11.3m/g、商品名「SG-BH8」、伊藤黒鉛工業(株)製]
B31:ニッケル粒子[商品名「Type255」、Vale社製、メジアン径:20μm]
B32:ニッケル粒子[商品名「4SP-10」(メジアン径:6.3μm):商品名「HCA-1」(メジアン径:15μm)=29:71(重量比)、いずれもVale社製]
【0070】
<リチウムイオン伝導性固体電解質の合成>
LiS(日本化学工業社製)とP(アルドリッチ社製)とを、モル比でLiS:P=3:1となるように秤量し、これらをメノウ乳鉢で5分間混合した。この混合物に、さらに脱水ヘプタン(関東化学工業社製)を加え、遊星型ボールミルを用い40時間メカニカルミリングすることにより、リチウムイオン伝導性固体電解質(LiPS)を得た。
【0071】
<正極合材の調製>
LiS(リチウム化合物)0.25g、アセチレンブラック(AB、導電助剤)0.25g、LiPS(固体電解質)0.50gを秤量し、これらをボールミルポット(容量:45mL、ZrO製)に入れた。このボールミルポットに、さらにZrOボール(φ5mm)160個を入れた。ボールミルポットをボールミルにセットし、370rpmで5時間混合した。ボールミル終了後、ボールミルポットから混合物を取り出し、これを正極合材とした。
【0072】
<実施例1:全固体リチウムイオン二次電池の作製>
セラミックス製の型(断面積:1cm)に前記リチウムイオン伝導性固体電解質(LiPS)100mgを加え、4ton/cmでプレスすることにより、固体電解質膜を形成した。固体電解質膜の片面に対し、上記正極合材10mgを加え、1ton/cmでプレスすることにより正極活物質層を形成した。固体電解質膜に対し正極活物質層とは反対側にリチウム金属箔(厚み500um)を設置し、1ton/cmでプレスした。
また、正極活物質層側に正極用樹脂集電体(C-1)を、リチウム金属箔側に負極用樹脂集電体(A-1)を、それぞれ配置し、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0073】
<実施例2~17及び比較例1~5:全固体リチウムイオン二次電池の作製>
正極用樹脂集電体(C-1)と負極用樹脂集電体(A-1)を表3に記載のものへ変更する以外は実施例1と同様にして、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
【0074】
実施例1~17及び比較例1~5で得られた全固体リチウムイオン二次電池は、アルゴン雰囲気下のグローブボックスに保管し、下記充放電試験を行った。
(充放電試験)
アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で、全固体リチウムイオン二次電池を1ton/cmの圧力で拘束し、以下の条件で20サイクルの充放電を行い、1サイクル目と5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目の放電容量の比率を計算した。
測定温度:25℃
電圧範囲:0.0Vから3.0Vまでの範囲
測定電流:0.100mA
充放電試験は、実施例及び比較例で得た全固体リチウムイオン二次電池を各10個ずつ用いて行い、得られた放電容量の比率の平均値をサイクル性能として表3に記載した。なお、充放電試験の加圧により集電体が破断して測定できなかったものが含まれる場合は、測定できたもので平均値を計算し表3に記載した。
【0075】
【表3】
【0076】
表3より、本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、充放電試験において集電体が破断することなく、十分なサイクル特性と電池の安定性を持つことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車に有用である。