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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】静電噴出装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20231201BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20231201BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20231201BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B05B5/025 A ZBP
A61M35/00 Z
A45D34/04 550
A45D29/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019208703
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021079331
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 博勝
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0153623(US,A1)
【文献】特開2013-237002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0125619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0015594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/025
A61M 35/00
A45D 34/04
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持可能なハンドヘルドタイプの静電噴出装置であって、
液体を対象物に向けて噴出させるチューブノズルと、
前記チューブノズルの周囲を囲うノズル外筒と、
前記チューブノズルの外側に配され、高電圧が印加される外側電極部と
を備え、
前記チューブノズルは、高電圧が印加される導電性の部位と、該導電性の部位よりも前記対象物側に配置された非導電性の部位とを備え、
前記ノズル外筒は、前記チューブノズルの周面との間に中空領域を形成可能で、かつ、前記対象物側の端部に前記中空領域に連通する開口を有し、
前記外側電極部は、前記チューブノズルの前記導電性の部位と電気的に接続されており、前記チューブノズルの延在方向に面している
静電噴出装置。
【請求項2】
前記導電性の部位は、導電性のチューブ状電極であり、
前記非導電性の部位は、一端が前記チューブ状電極に連結され、他端が前記チューブ状電極よりも前記対象物側に配置された非導電性チューブ部材である
請求項1に記載の静電噴出装置。
【請求項3】
前記ノズル外筒は、非導電性の合成樹脂により形成されている
請求項1又は2に記載の静電噴出装置。
【請求項4】
前記チューブノズルの先端は、前記ノズル外筒の先端と同一平面上又は前記ノズル外筒の先端よりも該ノズル外筒の内部側に位置している
請求項1~3のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項5】
前記チューブノズルと前記ノズル外筒との間に配されたリング電極を更に備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項6】
前記高電圧は、3kV以上30kV以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項7】
前記非導電性の部位の先端から前記導電性の部位の先端までの長さと、前記高電圧との関係は、前記長さをY(mm)とし、前記高電圧をX(kV)とした場合におけるY(mm)/X(kV)が0.3以上1.2以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項8】
前記噴出する液体は、水溶性高分子化合物または水不溶性高分子化合物が溶媒に溶解した溶液である請求項1~7のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項9】
前記噴する液体が収容されたカートリッジを内蔵可能に形成されている請求項1~8のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項10】
前記カートリッジは、静電噴出装置に対して着脱自在に装着される請求項9に記載の静電噴出装置。
【請求項11】
前記外側電極部は、静電噴出装置に対して取り外し可能となっている請求項1~10のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項12】
静電スプレー法によって対象物の表面に繊維の堆積物を形成する静電紡糸装置である請求項1~11のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電した液体を対象物に向けて噴射する静電噴出装置が知られている。例えば特許文献1には、使用者が把持することが可能なハンドヘルドタイプ(手持ち式)の静電噴霧装置であって、高圧電源供給部に電気的に接続される高圧電極により高電圧が印加された液体を、ノズルから使用者の皮膚等へ向けて噴出する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-518278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンドヘルドタイプの静電噴出装置は、小型であり、使用者と高圧電極との距離が近くなりやすいことから、使用者が感電しないよう安全性を確保する必要がある。特許文献1の静電噴霧装置は、このような安全性を確保する観点から、高圧電極をノズル先端から離れた内部位置に配置し、ノズル先端から最大限離れた位置で液体を帯電させる構成を採用している。しかしながら、このような特許文献1の静電噴霧装置では、ノズル先端から噴出させた液体を対象物に向けて安定して直進させるという直進性の観点において、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、安全性を担保しつつ、噴出された液体の直進性を向上させることが可能な静電噴出装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用者が把持可能なハンドヘルドタイプの静電噴出装置であって、液体を対象物に向けて噴出させるチューブノズルと、前記チューブノズルの周囲を囲うノズル外筒と、前記チューブノズルの外側に配され、高電圧が印加される外側電極部とを備え、前記チューブノズルは、高電圧が印加される導電性の部位と、該導電性の部位よりも前記対象物側に配置された非導電性の部位とを備え、前記ノズル外筒は、前記チューブノズルの周面との間に中空領域を形成可能で、かつ、前記対象物側の端部に前記中空領域に連通する開口を有し、前記外側電極部は、前記チューブノズルの前記導電性の部位と電気的に接続されており、前記チューブノズルの延在方向に面している静電噴出装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の静電噴出装置によれば、安全性を担保しつつ、噴出された液体の直進性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る静電噴出システムを示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る静電噴出システムの略図である。
図3】第1実施形態に係る静電噴出装置を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る静電噴出装置の分解図である。
図5】第1実施形態に係る静電噴出装置の本体部の断面図である。
図6】第1実施形態に係る静電噴出装置の先端部分を拡大して示す部分断面図である。
図7】第1実施形態に係る静電噴出装置にノズルキャップを装着させた状態を示す部分斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る静電噴出装置の先端部分を拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
[静電噴出システムの全体構成]
本実施形態に係る静電噴出システム100は、図1及び図2に示すように、ベースステーション200と、静電噴出装置300と、ベースステーション200及び静電噴出装置300を接続する接続ケーブル400とを備えている。
【0011】
[ベースステーション]
ベースステーション200は、図1に示すように、平滑面上に載置可能に構成された筐体201と、該筐体201の表面に設けられたコントロールパネル202及び装置収容部208と、電源ケーブル230と、該電源ケーブル230を収容可能なケーブル収容部220と、電源のON/OFFを切り替え可能な電源スイッチ(図示せず)とを備えている。また、ベースステーション200は、図2に示すように、筐体201の内部に、制御部204と、電源206とを備えている。さらに、ベースステーション200は、電源206、コントロールパネル202及び静電噴出装置300を制御するための設定及びプログラムコード等が格納された記憶部(図示せず)を備えても良い。
【0012】
コントロールパネル202は、図1に示すように、情報を表示するディスプレイ210と、設定を入力するための操作部212とを備えている。
【0013】
ディスプレイ210は、液晶画面やLED画面等からなり、好適にはタッチパネルを採用することが可能である。ディスプレイ210は、静電噴出装置300やベースステーション200に関する種々の情報を表示可能に構成されており、例えば、静電噴出装置300から噴出される液体の流量、静電噴出装置300により液体に印加される電圧量、静電噴出装置300のステータス及び電源206のON/OFF状態等の情報を表示可能に構成されている。なお、これらの情報はあくまでも一例であり、これらの情報の全てを表示可能である必要はなく、また、これらの情報以外の情報を表示可能であっても良い。
【0014】
操作部212は、静電噴出装置300を制御するための入力を受け付け可能に構成されている。例えば、操作部212は、複数(図示の例では4つ)の操作ボタンを有しており、該操作ボタンを介して使用者からの入力を受け付けるよう構成されている。具体的には、操作部212は、例えばメニューボタン、上選択ボタン、下選択ボタン及びセットボタン等の種々のボタンを有し、これらのボタンの操作により、例えば静電噴出装置300の後述するアクチュエータ320の前進及び後退の操作、静電噴出装置300から噴出される液体の流量設定、ディスプレイ210に表示する言語の設定、並びに、後述する距離センサ326の補正等の各種指示を受け付けるよう構成されている。ベースステーション200は、操作部212を介して入力された一又は複数の情報に基づいて、静電噴出装置300に対して制御信号を出力する。
【0015】
装置収容部208は、図1に示すように、静電噴出装置300を挿入可能な凹状に形成されており、静電噴出装置300を物理的に保持又は収容することが可能に構成されている。ケーブル収容部220は、筐体201の周方向に沿って形成された凹部であり、電源ケーブル230を巻回させることで収容可能に構成されている。
【0016】
電源206は、コントロールパネル202及び制御部204に対して比較的低い直流電圧(例えばDC5V程度)を供給可能に構成されると共に、接続ケーブル400を介して静電噴出装置300に対して直流の高電圧を供給可能に構成されている。この高電圧は、好ましくは3kV以上30kV以下、より好ましくは4kV以上20kV以下、さらに好ましくは10kV以上20kV以下である。この高電圧は、コントロールパネル202によって任意に調整可能であっても良い。電源206は、これらの電圧に降圧又は昇圧するための任意のAC/DCコンバータやDC/DCコンバータ等を備えても良い。なお、上記高電圧は、装置として設計された電圧である。また、後述するチューブノズル341について、非導電性の部位(非導電性チューブ部材341b)の先端から、該非導電性の部位(非導電性チューブ部材341b)内における導電性の部位(チューブ状電極341a)の先端までの長さと高電圧との関係は、十分なクリアランスを有しつつ、紡糸性を向上する観点から、該長さをY(図6図8参照)とし、該高電圧をXとした場合におけるY(mm)/X(kV)が、0.3以上1.2以下であることが好ましい。
【0017】
[接続ケーブル]
接続ケーブル400は、複数の伝送線を有する有線ケーブルであり、ベースステーション200と静電噴出装置300とを接続している。接続ケーブル400は、ベースステーション200及び/又は静電噴出装置300に対して取り外し可能であっても良い。接続ケーブル400を構成する複数の伝送線のうちの一部は、ベースステーション200から静電噴出装置300に対して高電圧を伝送することが可能に構成されており、他の伝送線は、例えば、ベースステーション200から静電噴出装置300に対する低電圧の伝送、制御信号の伝送及び接地の提供等をすることが可能に構成されている。なお、制御信号の伝送は、無線通信によりベースステーション200から静電噴出装置300に対して送信する構成としても良い。
【0018】
[第1実施形態に係る静電噴出装置]
第1実施形態に係る静電噴出装置300は、使用者が把持する(手で握る)ことが可能な形状、大きさ及び重量を有するハンドヘルドタイプ(手持ち式)の装置であり、静電スプレー法により、液体(液体組成物)を対象物に向けて噴出する。静電スプレー法とは、液体(例えば、高分子化合物を揮発性の溶媒に溶解した溶液)に、高電圧(例えば、数kVから数十kV)を印加して液体を帯電させ、帯電した液体と対象物との電位差に基づく静電気力によって、液体を対象物に向けて噴出する方法である。静電スプレー法により噴出された液体は、極細の糸状になって対象物に向かって送り出される。噴出された液体は、噴出されてから対象物に向かって送り出されている過程、及び、対象物に付着した後に、揮発性物質である溶媒が乾燥することで、対象物の表面に被膜を形成することができる。
【0019】
静電噴出装置300は、医療用途や使用者の個人的な用途等に使用可能であり、帯電させた液体を対象物、例えば使用者自身または他人の皮膚または爪に向けて噴射可能である。液体は、静電紡糸用の原料を含む溶液(すなわち紡糸用液)であってもよい。すなわち、静電噴出装置300は、静電スプレー法によって対象物の表面に繊維の堆積物を形成する、静電紡糸装置であってよい。
【0020】
静電噴出装置300から噴出される液体の流量は、0.01ml/分以上であることが好ましく、0.02ml/分以上であることがより好ましく、0.03ml/分以上であることがさらに好ましく、また、1.5ml/分以下であることが好ましく、0.5ml/分以下であることがより好ましく、0.3ml/分以下であることがさらに好ましい。具体的には、該流量は、約0.17ml/分とすることができる。該流量は、電場を生成するために供給される電流及び電圧や噴出される液体等に基づいて、適宜設定することが可能である。なお、該流量は、分子量、種類及び伝導率等の液体の特性や、気温及び湿度等の環境的要因や、ノズルの構造等の機械的要因等の影響も受けるため、これらの要因を考慮して設定することが好ましい。
【0021】
以下、静電噴出装置300の具体的な構成について説明する。
静電噴出装置300は、図3及び図4に示すように、使用者の手によって把持される本体部310と、本体部310に対して着脱自在に装着されるノズル部330と、噴射する液体が収容されたカートリッジ350とを備える。つまり、静電噴出装置300は、カートリッジ350を内蔵可能に形成されている。カートリッジ350は、静電噴出装置300に対して着脱自在に装着され、取り換え可能となっている。また、静電噴出装置300は、ノズル部330の後述するチューブノズル341を覆うノズルキャップ305(図7参照)や、ノズル部330の略全域を覆うオーバーキャップ(図示せず)等を更に備えても良い。
【0022】
また、静電噴出装置300は、ノズル外筒334の先端335と堆積面との距離を測定可能な距離センサ326と、該距離センサ326により検出された距離が所定の許容範囲を超えている場合又は下回っている場合に液体の噴出を一時的に停止させる制御回路とを更に備えても良い。この場合において、所定の許容範囲は、例えば上限値を150mm、好ましくは120mmに設定することができ、また、下限値を30mm、好ましくは50mmに設定することができる。
【0023】
さらに、静電噴出装置300は、カートリッジ350内の液体の残量を検出可能な充填量センサ(図示せず)や、本体部310、ノズル部330及びカートリッジ350の装着不良を検出可能な装着センサ(図示せず)等の種々の任意の検出手段をさらに備えても良い。
【0024】
なお、以下の説明において、液体が噴出される対象物の吹付面のことを「堆積面」といい、人体に対して液体を噴出させる場合には、例えば皮膚が堆積面となる。また、以下の説明において、「液体の噴出方向」とは、後述するチューブノズル341から液体が噴出される方向をいい、具体的には、チューブノズル341の中心軸に沿う方向をいう。
【0025】
さらに、以下の説明において、「非導電性」又は「絶縁性」とは、電気抵抗が高く、電気が流れにくい性質のことをいい、具体的には、体積固有抵抗率(ASTM D257, JIS K6911)が例えば10Ωcm以上、好ましくは10Ωcm以上であることをいう。非導電性材料(絶縁性材料)としては、合成樹脂等の有機材料や、ガラス又はセラミック等の無機材料等が例示される。非導電性の合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、その他汎用の樹脂等を用いることができる。
【0026】
一方、以下の説明において、「導電性」とは、電気抵抗が低く、電気が流れ易い性質のことをいい、本デバイスが形成する回路において、電気を容易に供給できる抵抗を有する。具体的には、体積固有抵抗率(ASTM D257, JIS K6911)が例えば10Ωcm以下、好ましくは10Ωcm以下であることをいい、導電性材料としては、炭素繊維(カーボン)が配合された導電性の樹脂や、金属材料等が例示される。導電性の樹脂としては、例えば、ナイロンに炭素繊維を含有させた樹脂等を用いることができる。
【0027】
[静電噴出装置の本体部]
本体部310は、図3図6に示すように、本体部310とノズル部330との連結部を構成するカラー312と、カートリッジ350のコンテナ352内の液体をノズル部330の電極340に向けて送出するよう構成された駆動機構318と、ノズル部330の電極340に対して高電圧を印加する高電圧ライン314と、使用者の操作に応じて、駆動機構318の制御及び電極340に対する高電圧の供給のON/OFFを切り替える操作部313とを備えている。本体部310は、カラー312を含む外殻が、合成樹脂等の非導電性材料から形成されることが好ましい。また、本体部310は、使用時に使用者が把持する部分に、後述する接地手段の一部を構成する導電性部分311(図1参照)を備えても良い。
【0028】
カラー312は、ノズル部330を挿入可能な径を有する筒状に形成されており、本体部310の先端部に設けられている。カラー312は、本体部310の軸を中心とした周方向に所定量だけ回転可能となっており、該カラー312の回転動作により、ノズル部330との係合状態(ロック状態)と非係合状態(ロック解除状態)とを切り替え可能に構成されている。
【0029】
例えば、カラー312は、その内部にノズル部330を挿入した後、カラー312を一方の方向(例えば時計回り)に回転されることでノズル部330と強固に連結され、ノズル部330の抜け出しを防止するよう構成されると共に、このロック状態からカラー312を反対方向(例えば反時計回り)に回転されることでノズル部330との連結が解除され、ノズル部330との分離が可能となるよう構成されている。このような構成は、例えばカラー312の内面に形成された溝(図示せず)と、ノズル部330の周面に形成された突起(図示せず)とを係合させる構成により実現することが可能であるが、これに限定されるものではない。なお、カラー312の回転量は、例えば10度以上60度以下であることが好ましく、約45度であることがより好ましい。
【0030】
なお、カラー312には、ノズル部330との位置決めを行うための目印(図示せず)が設けられても良い。該目印は、例えば、カラー312の周面に設けられた矢印等のマークであっても良いし、カラー312の開口から延出する一対の突起間の間隙等の物理的な構造であっても良い。このような目印を有するカラー312によれば、例えば、該目印とノズル部330の周壁331に形成された切欠き等の目印との位置を合せることにより、本体部310に対してノズル部330を適正に装着することが容易となる。
【0031】
操作部313は、例えばトリガボタンやトグルスイッチ等のスイッチであり、使用者によってON/OFFを切り替え可能に構成されている。操作部313は、使用者の親指等によって操作可能となっており、使用者の操作により、ノズル部330から液体を噴出させるために駆動機構318を駆動させると共に、電場を形成させるために電極340に高電圧を供給するよう構成されている。操作部313は、高電圧ライン314から離れた位置に配置されている。
【0032】
高電圧ライン314は、本体部310にノズル部330が装着された際に、ノズル部330の電極340と電気的に接続されるよう構成されている。具体的には、高電圧ライン314は、図5及び図6に示すように、導電性ロッド315と、電極スプリング316と、接点317とを備えている。導電性ロッド315及び電極スプリング316は、本体部310にノズル部330が装着された際にのみ、電源206からの高電圧を接点317を介してノズル部330の電極340に対して供給するよう構成されている。電極スプリング316は、本体部310に対してノズル部330を装着させる際の緩衝材としても機能する。これら導電性ロッド315、電極スプリング316及び接点317は、本体部310の絶縁部321及びノズル部330の絶縁部336によって囲われている。
【0033】
駆動機構318は、図5に示すように、モータ319と、アクチュエータ320とを備えている。モータ319は、例えばステッピングモータであり、アクチュエータ320は、例えば、モータ319の駆動力によって直進移動する直動機構である。モータ319及びアクチュエータ320は、操作部313を介して入力された使用者の操作に基づいて制御される。アクチュエータ320は、カートリッジ350の後述するコンテナ352内に挿入可能なボス部(図示せず)を有しており、該ボス部によってカートリッジ350の後述するプランジャ354をコンテナ352内に向けて押し込むことにより、カートリッジ350のコンテナ352内の液体をノズル部330のチューブノズル341に向けて送出するよう構成されている。なお、駆動機構318は、予め定められたプログラムに基づいて動作するよう構成されても良い。
【0034】
[静電噴出装置のノズル部]
ノズル部330は、図6に示すように、本体部310のカラー312内に挿入可能な周壁331と、カートリッジ350を保持可能なカートリッジハウジング332と、本体部310の高電圧ライン314からの高電圧が印加される電極340と、カートリッジ350内の液体を堆積面に向けて噴出させるチューブノズル341と、チューブノズル341の周囲を囲うノズル外筒334とを備えている。電極340は、ノズル部330から取り外し可能とされており、電極340に支持されているチューブノズル341もノズル部330から取り外し可能とされており、電極340及びチューブノズル341は静電噴出装置300に対して取り替え可能となっている。
【0035】
周壁331は、本体部310のカラー312内に挿入可能な径からなる筒状に形成されている。周壁331の周面には、本体部310のカラー312の内面に形成された溝等と係合可能な突起(図示せず)等が設けられており、本体部310に対して装着可能に構成されている。また、周壁331の周面には、電極340の後述するアーム343が挿通可能な切欠き(図示せず)が軸方向に沿って形成されている。周壁331は、合成樹脂等の非導電性材料から形成されることが好ましい。
【0036】
なお、周壁331の周面に形成された切欠きは、既述のとおり、本体部310のカラー312に対する適正な装着位置を示す目印としても利用することが可能である。また、該切欠きは、カートリッジハウジング332に対する適正な装着位置を示す目印としても利用することが可能である。なお、該切欠きを適正な装着位置を示す目印とする構成に代えて又はこれと共に、周壁331の周面に矢印等のマークを付与し、これを目印とする構成としても良い。
【0037】
ノズル外筒334は、周壁331の一方側の端部に一体的に設けられており、周壁331の端部から液体の噴出方向に延出するに連れて先細りとなる筒状に形成されている。ノズル外筒334は、周壁331側の基端から先端335にかけてその内部が中空となっていると共に、その先端335が開口している。すなわち、ノズル外筒334は、基端よりも先端335の径が小さい切頭円錐状の外形を有すると共に、基端から先端にかけて貫通する空洞が形成されている。ノズル外筒334は、合成樹脂等の非導電性材料から形成されることが好ましい。このようにノズル外筒334を非導電性材料で形成することにより、絶縁破壊による電撃を防止し、使用者の保護の万全を図ることが可能となる。
【0038】
ノズル外筒334は、図6に示すように、ノズル部330が組み立てられた状態において、チューブノズル341の周囲を取り囲み、かつ、チューブノズル341の周面とノズル外筒334の内面との間に中空領域Sを形成可能な大きさを有している。ノズル外筒334の内径は、挿入性向上や直進性向上の観点から、その最大値がチューブノズル341の外径の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましく、また、小型化の観点から、その最大値がチューブノズル341の外径の25倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることがさらに好ましい。
【0039】
また、ノズル外筒334は、その先端335(対象物側の端部)に、中空領域Sに連通する開口を有している。すなわち、ノズル外筒334は、図6に示すように、その先端335においても、チューブノズル341(後述する非導電性チューブ部材341b)の先端との間に所定の間隙Dが形成されるよう構成されている。この間隙Dは、直進性向上の観点から、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましく、また、小型化や指の入りにくさの観点から、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。また、間隙Dを上述した数値以上の間隔とすることにより、例えば静電噴出装置300を横置きした場合であっても、液体がチューブノズル341の先端から自重によって延伸してノズル外筒334の先端に至らないように、チューブノズル341の先端とノズル外筒334の先端との間に十分な距離を設けることが可能となるため、衛生性を確保することも可能となる。
【0040】
カートリッジハウジング332は、液体の噴出方向の先端側の端部が閉塞され、反対側の端部(基端部)が開放された有底筒状に形成されており、周壁331の径方向内側に設けられている。カートリッジハウジング332及び周壁331は、例えば一方に設けた突起(図示せず)と他方に設けた孔(図示せず)とを互いに係合又は離脱させる等の任意の手段により、互いに着脱可能となっている。カートリッジハウジング332は、合成樹脂等の非導電性材料から形成されることが好ましい。
【0041】
カートリッジハウジング332の閉塞側端部は、電極340の後述する導電性ベース342を載置可能に構成されており、開放側端部は、カートリッジハウジング332の内部にカートリッジ350を挿入可能に構成されている。また、カートリッジハウジング332は、その内部において、カートリッジ350を保持可能となっている。具体的には、カートリッジハウジング332は、カートリッジ350が挿入された状態において、図6に示すように、カートリッジ350の封止部356側の端部を含む所定領域を囲い、他方側の端部を含む所定領域を露出させるような軸方向の長さを有している。なお、カートリッジハウジング332の軸方向の長さは、図示の例に限定されるものではない。また、カートリッジハウジング332のサイズは、対象とするカートリッジ350の大きさ(容量)等に応じて任意に設定可能である。
【0042】
なお、カートリッジハウジング332には、周壁331との位置決めを行うための目印(図示せず)が設けられても良い。該目印は、例えば、カートリッジハウジング332の周面に設けられた矢印等のマークであっても良いし、カートリッジハウジング332の軸方向に沿って形成された切欠き等の物理的な構造であっても良い。このような目印を有するカートリッジハウジング332によれば、例えば、該目印と周壁331に形成された切欠き等の目印との位置を合せることにより、周壁331に対してカートリッジハウジング332を適正に装着することが容易となる。
【0043】
チューブノズル341は、高電圧が印加される導電性の部位(チューブ状電極341a)と、該導電性の部位よりも対象物側に配置された非導電性の部位(非導電性チューブ部材341b)とを備えており、液体の噴出方向に沿って延在している。チューブ状電極341aは、金属又は導電性樹脂等の導電性材料、好ましくは金属から形成されており、非導電性チューブ部材341bは、合成樹脂等の非導電性材料から形成されている。また、チューブ状電極341a及び非導電性チューブ部材341bは、液体に耐性を有する、詳細には水やアルコール等の溶媒に対して耐溶媒性を有する材料により形成されることが好ましい。なお、「耐溶媒性」とは、液体中の揮発性液剤の浸透及び揮発を抑制すること、また液体により膨潤、溶出、変形、軟化、硬化、又は変色等をしにくいことをいう。
【0044】
チューブ状電極341aは、基端がカートリッジハウジング332の内部に位置し、先端がノズル外筒334の内部に位置するよう、電極340の導電性ベース342に支持されている。チューブ状電極341aは、カートリッジハウジング332内にカートリッジ350が挿入された際に、基端がカートリッジ350のコンテナ352内に挿入されるよう構成されている。例えば、チューブ状電極341aの基端は、カートリッジ350の封止部356を貫通可能な尖鋭端であることが好ましい。
【0045】
チューブ状電極341aは、内部が中空(すなわち筒状)となっており、カートリッジ350のコンテナ352内の液体を非導電性チューブ部材341bに向けて流動させることが可能に構成されている。チューブ状電極341aは、電極340の導電性ベース342と電気的に接続されており、これにより、非導電性チューブ部材341bに向けて流動する液体に対して高電圧を印加し、液体を帯電させるよう構成されている。なお、チューブ状電極341aは、導電性を有すると共に、電極340の後述する導電性ベース342と電気的に接続されていることから、電極340の一部と解することも可能である。
【0046】
非導電性チューブ部材341bは、先端が堆積面(対象物)に向けて指向されるよう、基端がチューブ状電極341aの先端に連結されている。チューブ状電極341aと非導電性チューブ部材341bとの連結は、チューブ状電極341a及び非導電性チューブ部材341bの一方の端部を他方の端部内に圧入する方法、非導電性チューブ部材341b及びチューブ状電極341aに形成した段差等を互いに嵌め合わせることで連結する方法、並びに、チューブ状電極341a及び非導電性チューブ部材341bを任意の接着手段や連結手段により接着又は連結する方法等の種々の方法を採用することが可能である。
【0047】
非導電性チューブ部材341bは、内部が中空(すなわち筒状)となっており、チューブ状電極341aから流入する液体を先端に向けて流動させ、先端から堆積面に対して液体を噴出させることが可能に構成されている。非導電性チューブ部材341bの先端は、ノズル外筒334の先端335と同一平面上に位置しても良いし、ノズル外筒334の先端335よりも内部側に位置しても良い。また、非導電性チューブ部材341bの先端は、人をケガさせない範囲において、ノズル外筒334の先端335よりも堆積面側に突出していても良い。
【0048】
電極340は、図6に示すように、チューブノズル341のチューブ状電極341aが貫通する導電性ベース342及び保持スリーブ344と、該導電性ベース342から本体部310の高電圧ライン314に向けて延びるアーム343とを備えている。電極340は、例えば、カーボンが配合された導電性樹脂等の導電性材料から形成されている。
【0049】
導電性ベース342は、円盤状、板状又はフランジ状(鍔状)に形成されており、係合爪等の任意の係合手段(図示せず)により、カートリッジハウジング332の閉塞側端部に取り付け可能に構成されている。導電性ベース342は、チューブノズル341のチューブ状電極341aが貫通して取り付けられている。導電性ベース342におけるチューブ状電極341aの貫通位置は、任意の位置とすることが可能であり、例えば、導電性ベース342の中心とすることができる。
【0050】
導電性ベース342は、静電噴出装置300内に組み込まれた状態において、チューブノズル341のチューブ状電極341a(導電性の部位)と電気的に接続されるようチューブノズル341の外側に配された外側電極部340aを構成している。本実施形態において、外側電極部340aは、チューブノズル341の周囲(すなわち、チューブノズル341の軸に対して直交する径方向外側)に向けて拡がり、かつ、チューブノズル341の延在方向(すなわち、液体の噴出方向)に面する電極面の形態を有している。すなわち、導電性ベース342の外側電極部340aは、ディスク電極として機能する。導電性ベース342の外側電極部340aは、チューブノズル341の軸周り方向における全範囲で繋がった環状であることが好ましいが、これに限定されず、その少なくとも一部がチューブノズル341の軸周りに沿って配置されていれば良く、例えば一部が途切れた環状であっても良い。具体的には、直進性向上のため、外側電極部340aは、チューブノズル341の軸周りに対称に配置されることが好ましく、強度の面で、チューブノズル341の軸周り方向における20度以上の範囲に亘って左右それぞれに配置されることが好ましく、左右それぞれに45度以上の範囲に亘って配置されることがより好ましく、360度の範囲(全範囲)に亘って配置されることが更に好ましい。また、外側電極部340aは、ノズル外筒334の先端335の開口の投影面積内に配置されることが好ましい。
【0051】
外側電極部340aは、安全性の観点から、ノズル外筒334の先端335との距離が3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることが更に好ましく、また、液体の直進性の観点から、ノズル外筒334の先端335との距離が30mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、12mm以下であることが更に好ましい。
【0052】
アーム343は、導電性ベース342の周縁部から液体の噴出方向の反対側に向けて延びる延出部であり、本体部310に対してノズル部330が装着された状態において、高電圧ライン314の接点317と電気的に接続されるよう構成されている。
【0053】
保持スリーブ344は、導電性ベース342におけるチューブ状電極341aの貫通部位と整合する位置に設けられており、チューブ状電極341aが嵌入可能な径からなる筒状に形成されている。保持スリーブ344は、図6に示すように、導電性ベース342の外側電極部340aから液体の噴出方向に向けて延出する構成としても良いし、液体の噴出方向の反対側に向けて延出する構成としても良いし、これら両方向に向けて延出する構成としても良い。このような保持スリーブ344が設けられることにより、チューブ状電極341aをより強固に保持することが可能となる。ただし、電極340は、これに限定されず、保持スリーブ344を有さない構成であっても良い。
【0054】
導電性ベース342及び保持スリーブ344は、図6に示すように、本体部310に対してノズル部330が装着された状態において、アーム343を介して本体部310の高電圧ライン314と電気的に接続される。また、チューブノズル341のチューブ状電極341aは、導電性ベース342、保持スリーブ344及びアーム343を介して本体部310の高電圧ライン314と電気的に接続される。これにより、静電噴出装置300の動作時に高電圧ライン314から高電圧が供給されると、電極340(特に導電性ベース342の外側電極部340a)及びチューブ状電極341aは共に高電位となり、その周囲に電場を生成する。
【0055】
ここで、チューブ状電極341aにより生成される電場は、既述のとおり、チューブ状電極341aを流動する液体を帯電させる。一方、導電性ベース342の外側電極部340aにより生成される電場は、該電場における等電位面に対し直交する電気力線の方向、すなわち液体の噴出方向に沿って、液体を直進させる働きをすると考えられる。すなわち、導電性ベース342の外側電極部340aにより生成される電場は、チューブノズル341の非導電性チューブ部材341bの先端から噴出される液体の横方向への分散を減少させ、該液体の直進性を向上させることが可能である。なお、本実施形態では、導電性ベース342の面が、液体の直進性を向上させる外側電極部340aとして機能するものとして説明したが、これに限定されず、例えば後述する変形例に係る外側電極部340a´のように、導電性ベース342と電気的に接続された他の部位が外側電極部として機能する構成としても良い。
【0056】
[静電噴出装置のカートリッジ]
カートリッジ350は、ノズル部330に対して着脱自在な使い捨て部材であり、図6に示すように、筒状に形成されたコンテナ352と、コンテナ352の内部に設けられたプランジャ354と、コンテナ352の先端を閉塞する封止部356とを備えている。カートリッジ350は、コンテナ352の周壁、プランジャ354及び封止部356で囲まれた密封空間に液体を保持するよう構成されている。なお、カートリッジ350は、封止部356を保護するためのキャップ(図示せず)や、封止部356よりもコンテナ352側に設けられた導電性プラスチック部(図示せず)等を更に備えても良い。
【0057】
コンテナ352は、ガラス又はプラスチック製の筒状の容器であり、液体組成物を収容可能に構成されている。コンテナ352の容量(液体収量)は、例えば3mL以上、5mL以上又は10mL以上等の任意の容量とすることが可能である。
【0058】
封止部356は、例えば密閉フィルムやメンブレン等からなり、チューブ状電極341aの基端(尖鋭端)によって開口し、チューブ状電極341aの基端をコンテナ352内に挿入することが可能に構成されている。なお、封止部356は、チューブ状電極341aの基端が挿入された際にのみ開口状態となる逆止弁であっても良く、また、コンテナ352からチューブ状電極341aに対して送出する液体の量を調整可能な弁体としても良い。
【0059】
プランジャ354は、コンテナ352の基端側の開口を閉塞する弁体であり、本体部310のアクチュエータ320によって、コンテナ352の内部に向かって押し込み可能に構成されている。プランジャ354は、既述のとおり、本体部310のアクチュエータ320のボス部によってコンテナ352内に向けて押し込まれることにより、コンテナ352内の液体をノズル部330のチューブノズル341に向けて押し出すよう構成されている。
【0060】
[静電噴出装置のノズルキャップ]
ノズルキャップ305は、図7に示すように、チューブノズル341の非導電性チューブ部材341bに装着可能に構成されており、該非導電性チューブ部材341bの開口を閉塞することが可能な形状を有している。ノズルキャップ305は、非導電性チューブ部材341bの外周とノズル外筒334の内周との間の中空領域Sに挿入可能な大きさを有している。ノズルキャップ305は、不意に電源を入れてしまった場合等における感電を防止する観点から、合成樹脂等の非導電性材料から形成されることが好ましい。なお、ノズルキャップ305は、非導電性チューブ部材341bの開口を閉塞することが可能な構成であれば、図示の例に限定されず、種々の任意の形状及び構造を採用することが可能である。このようなノズルキャップ305を用いることにより、チューブノズル341の先端の衛生性を保つことが可能となるため、本実施形態に係る静電噴出システム100を医療分野へ応用することが容易となる。
【0061】
[医療分野への応用]
本実施形態に係る静電噴出システム100を医療分野へ応用する場合には、静電噴出装置300のノズル部330のうち、液体に接触する部分、例えばカートリッジハウジング332及びチューブノズル341は、使い捨て部材であることが好ましい。また、本実施形態では、チューブノズル341は電極340に取り付けられているため、電極340も同様に使い捨て部材であることが好ましい。さらに、ノズルキャップ305及びカートリッジ350も同様に、使い捨て部材であることが好ましい。一方、ノズル部330のうち、液体に接触しない部分、例えば周壁331及びノズル外筒334は、繰り返し使用することが可能である。
【0062】
本実施形態に係る静電噴出システム100を医療分野へ応用する場合には、少なくとも液体に接触する部分(例えばカートリッジハウジング332及びチューブノズル341)は、例えばガンマ線等の滅菌処理に耐え得る材質であることが好ましい。例えば、カートリッジハウジング332、電極340、チューブノズル341及びノズルキャップ305を医療向け部材とする場合には、これらの部材は、例えばガンマ線等の滅菌処理に耐え得る材質であることが好ましい。
【0063】
このような材質としては、ノズルキャップ305については、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリウレタン、PET、アクリル、ABS等の非導電性材料を採用することが好ましく、気密性や嵌合強度の観点から低密度ポリエチレン(LDPE)又は中密度ポリエチレン(MDPE)を採用することがより好ましい。
【0064】
チューブ状電極341aについては、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属、導電性のプラスチック等を採用することが好ましく、カートリッジ350の後述する封止部356に対する貫通性の観点からステンレス(特にSUS316)を採用することがより好ましい。
【0065】
非導電性チューブ部材341bについては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポリウレタン、PET、アクリル等を採用することが好ましく、成形の安定性・耐溶剤性の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)を採用することがより好ましい。
【0066】
電極340については、例えば、ナイロンに炭素繊維を含有させた樹脂や金属等を採用することが好ましく、生産性・汎用性の観点から、ナイロンに炭素繊維を含有させた樹脂を採用することがより好ましい。
【0067】
なお、周壁331及びノズル外筒334は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポリウレタン、PET等を採用することが好ましく、成形の安定性・耐溶剤性の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)を採用することがより好ましい。
【0068】
[接地手段]
既述のとおり、静電噴出装置300は、帯電した液体と対象物との電位差に基づく静電気力によって、液体を対象物に向けて噴出するものである。このため、帯電した液体と対象物との電位差を大きくし、液体の直進性を向上させる観点から、対象物(例えば使用者の皮膚等)を接地することが好ましい。そこで、静電噴出システム100は、図2に示すように、液体の噴出対象(例えば使用者の皮膚等)を接地させるための任意の接地手段を更に備えることができる。
【0069】
接地手段としては、例えば、図2に示すように、対象物(例えば使用者の腕)に装着可能な接地ストラップ501と、ベースステーション200に接続された接地線500とを介して、対象物を接地する手段が例示される。また、他の接地手段としては、例えば、図2に示すように、静電噴出装置300の把持領域(本体部310)に設けられた導電性部分311(図1参照)と、該導電性部分311に接続された接地線502とを介して、対象物を接地する手段が例示される。なお、接地手段は、これらの例に限定されるものではなく、種々の構成を採用可能である。
【0070】
[液体]
液体は、特に限定されるものではないが、例えば、静電紡糸装置において使用される紡糸用の液体組成物が例示される。また、そのような液体組成物としては、例えば、繊維形成の可能な高分子化合物が溶媒に溶解した溶液を用いることができる。そのような高分子化合物としては、水溶性高分子化合物または水不溶性高分子化合物のいずれも用いることができる。
【0071】
水不溶性高分子化合物を用いる場合、液体組成物は、次の成分(a)、(b)および(c)を含有し、成分(b)と成分(c)の質量比(b/c)が0.4以上50以下であることが好ましい。
(a)アルコールおよびケトンから選ばれる1種以上の揮発性物質
(b)繊維形成用水不溶性ポリマー
(c)水
【0072】
具体的には、水不溶性高分子化合物を用いる場合、液体組成物は、アルコール及びケトンから選ばれる揮発性液剤を50質量%以上含有する。揮発性液剤は、液体の状態において揮発性を有する物質である。揮発性液剤はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。
【0073】
揮発性液剤のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC1-C6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC4-C6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n-プロパノール、n-ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0074】
揮発性液剤のうち、ケトンとしてはジC1-C4アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
揮発性液剤は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種であり、形成される繊維の感触の観点から更に好ましくはエタノールを含有する揮発性液剤である。
【0076】
液体組成物における揮発性液剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。また、95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが更に好ましい。液体組成物における揮発性液剤の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上94質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上93質量%以下であることが更に好ましい。この割合で液体組成物中に揮発性液剤を含有させることで、静電スプレー法を行うときに液体組成物を十分に揮発させることができ、皮膚又は爪の表面に繊維を含む被膜を形成することができる。
【0077】
また、エタノールは、揮発性の高さと形成される繊維の感触の観点から、揮発性液剤の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが一層好ましい。また100質量%以下であることが好ましい。エタノールは揮発性液剤の全量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、65質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが一層好ましい。
【0078】
また、液体組成物は、繊維形成用水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。繊維形成用水不溶性ポリマーは、揮発性液剤に溶解することが可能な物質である。ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。
【0079】
繊維形成用水不溶性ポリマーとしては、揮発性物質に可溶で、水に対して不溶なポリマーである。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が溶解しない性質を有するもの、言い換えれば溶解量が0.5g未満の性質を有するものをいう。
【0080】
水不溶性である繊維形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリ乳酸(PLA)、ツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらの水不溶性ポリマーのうち、アルコール溶媒への分散性、繊維の感触の観点等から、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂がより好ましく、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂がさらに好ましい。皮膚又は爪の表面に繊維を含む被膜を安定して効率的に形成することができる点、被膜の耐久性、被膜の形成性、皮膚への追随性と耐久性との両立の点からポリビニルブチラール樹脂が殊更に好ましい。
【0081】
液体組成物中の繊維形成用水不溶性ポリマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。また、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが殊更に好ましい。液体組成物の繊維形成用水不溶性ポリマーの含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以上20質量%以下が一層好ましい。この割合で液体組成物中に繊維形成用水不溶性ポリマーを含有させることで、繊維状の被膜を安定して効率的に形成することができる。
【0082】
また、液体組成物は、水を含むことが好ましい。水は、エタノール等の電離しない溶媒に比べて電離し荷電するため、液体組成物に導電性を付与することができる。そのため、静電スプレーにより皮膚や爪の表面上に繊維状の被膜が安定して形成される。また、水は、静電スプレーにより形成される被膜の皮膚や爪への密着性の向上、耐久性の向上、外観に寄与する。これらの作用効果を得る点から、水は、液体組成物中に0.2質量%以上25質量%以下含有することが好ましく、0.3質量%以上20質量%以下がより好ましく、湿度の高い環境においても繊維状の被膜の形成性の観点から0.4質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0083】
液体組成物は、更に他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えばポリオール、20℃で液状油、繊維形成用水不溶性ポリマーの可塑剤、液体組成物の導電率制御剤、水溶性ポリマー、着色顔料、体質顔料等の粉体、染料、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。液体組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の含有割合は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。なお、液体組成物中の粉体又は粒状物の含有量は、噴出性の観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、含まれないことが殊更に好ましい。
【0084】
更に、液体組成物中にグリコールを含有することができる。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。静電スプレー法を行うときに揮発性液剤を十分に揮発させる観点、繊維形成性の観点、形成される繊維の感触の観点から、液体組成物中に10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が好ましく、実質含まないことが好ましい。
【0085】
液体組成物の粘度は、繊維状の被膜を安定して形成する点、静電スプレー時の紡糸性の観点、被膜の耐久性を向上する観点と、被膜の感触を向上する観点から、25℃で2mPa・s以上3000mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以上1500mPa・s以下がより好ましく、15mPa・s以上1000mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以上800mPa・s以下がよりさらに好ましい。液体組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される。E型粘度計としては例えば東京計器株式会社製のE型粘度計(VISCONICEMD)を用いることができる。その場合の測定条件は、25℃、コーンプレートのローターNo.43、回転数は粘度に応じた適切な回転数が選択され、500mPa・S以上の粘度は5rpm、150mPa・S以上500mPa・S未満の粘度は10rpm、150mPa・S未満の粘度は20rpmとする。
【0086】
[静電噴出装置の動作]
以上の構成を備える静電噴出装置300は、ノズル部330に対してカートリッジ350を装着させると共に、該ノズル部330を本体部310に対して装着させることにより組み立てられる。そして、この組み立て状態においてベースステーション200及び静電噴出装置300の操作部313を操作することで、接続ケーブル400及び高電圧ライン314等を介して、電極340(特に導電性ベース342の外側電極部340a)及びチューブ状電極341aに対して高電圧(例えば正の高電圧)が印加される。また、静電噴出装置300の駆動機構318により、カートリッジ350のコンテナ352内の液体がノズル部330のチューブノズル341に向けて送出される。
【0087】
この際、導電性ベース342の外側電極部340a及びチューブ状電極341a(正の電位)と、これらに対向する肌等の対象物(接地電位)との間には、高電位差の電場が生じる。そして、この電場における等電位面に対し直交する電気力線に沿って、例えば正に帯電した液体が対象物に向けて直進し、堆積面に到達する。この液体が紡糸用液である場合には、繊維状になった溶質が該電気力線に沿った方向に直進し、堆積面に到達する。
【0088】
[静電噴出装置の利点]
以上説明したとおり、第1実施形態に係る静電噴出装置では、チューブ状電極341aが、その内部を通って非導電性チューブ部材341bの噴射口へ向かう液体に接触し、該液体に電荷を付与して帯電させるための電極として機能する。チューブ状電極341aは、液体の噴出方向に沿って延びるよう配置されているため、液体を効率的に帯電させることができると共に、噴出される液体の直進性を得ることが可能となる。
【0089】
また、第1実施形態に係る静電噴出装置300では、既述のとおり、チューブノズル341の延在方向(すなわち、液体の噴出方向)に面する外側電極部340aを有し、かつ、チューブノズル341の周面とノズル外筒334の内面との間に中空領域Sが形成されると共に、ノズル外筒334の先端335に中空領域Sと連通する開口を有している。このため、外側電極部340aにより生成される電場の衰退を最小限に抑えることができ、これにより、この電場における等電位面に対し直交する電気力線に沿って、チューブノズル341の非導電性チューブ部材341bの先端から真っすぐ液体を噴出させることができる。すなわち、非導電性チューブ部材341bの先端から噴出された液体の横方向への分散を減少させ、該液体の直進性を向上させることができる。
【0090】
そして、このように液体の直進性が向上し、液体の広がる範囲が絞られることで、静電噴出装置300から堆積面までの距離が短いときは、堆積面における噴射範囲が小さくなり、密度が高くなる。特に、静電噴出装置300が静電紡糸装置である場合には、形成される被膜の密着性又は均一性が向上する。一方、静電噴出装置300から堆積面までの距離が長いときは、より遠くまで液体が届くようになる。特に、静電噴出装置300が静電紡糸装置である場合には、形成される繊維が対象物まで効率よく届くという利点がある。
【0091】
また、チューブ状電極341aの先端は、ノズル外筒334の先端335よりもノズル外筒334の内部側に位置し、該チューブ状電極341aの先端には非導電性チューブ部材341bが取り付けられている。これにより、チューブ状電極341aの先端が使用者に接触することを防止し、使用者の保護の万全を図ることができる。すなわち、第1実施形態に係る静電噴出装置300によれば、安全性を担保しつつ、噴出された液体の直進性を向上させることが可能となる。
【0092】
特に、第1実施形態に係る静電噴出装置300では、非導電性チューブ部材341bの先端が、ノズル外筒334の先端335と同一平面上に位置するか、ノズル外筒334の先端335よりも内部側に位置している。このため、非導電性チューブ部材341bの先端により怪我をする等のリスクを低減させることができる。
【0093】
さらに、第1実施形態に係る静電噴出装置300では、チューブ状電極341aと電気的に接続している導電性ベース342の外側電極部340a(ディスク電極)が、ノズル外筒334の先端335から十分な距離をおいて設けられている。このため、絶縁破壊による電撃を受けにくくなり、使用者の保護の万全を図ることができる。
【0094】
[第2実施形態に係る静電噴出装置]
次に、第2実施形態に係る静電噴出装置300´について、図8を用いて説明する。なお、第2実施形態に係る静電噴出装置300´において、第1実施形態に係る静電噴出装置300と異なる構成はノズル部330のみであり、他の構成は共通するため、同一符号を用いることで共通する構成についての説明を省略する。
【0095】
第2実施形態に係るノズル部330´は、第1実施形態に係るノズル部330と同様に、周壁331と、カートリッジハウジング332と、電極340´と、チューブノズル341(チューブ状電極341a,非導電性チューブ部材341b)と、ノズル外筒334´とを備えている。一方、第2実施形態に係るノズル部330´は、第1実施形態に係るノズル部330とは異なり、チューブノズル341とノズル外筒334´との間に配されるリング電極346を更に備えている。
【0096】
ノズル外筒334´は、先端335の近傍が二重壁構造となっている点において第1実施形態に係るノズル外筒334と異なっており、他の点において第1実施形態に係るノズル外筒334と共通している。すなわち、ノズル外筒334´は、周壁331の端部から液体の噴出方向に延出するに連れて先細りとなる筒状に形成された外壁334aと、先端335からノズル外筒334´の内部に向けて延びる内壁334bとを備えている。
【0097】
内壁334bは、チューブノズル341の軸方向に沿って延びる筒状に形成されており、外壁334aとの間において、リング電極346を収容可能な収容空間を形成するよう構成されている。また、内壁334bは、チューブノズル341の周面との間に中空領域Sを形成可能な大きさを有している。内壁334bは、該収容空間を形成可能な延在方向の長さを有していれば良く、リング電極346の全体を覆う程の長さを有する必要は無い。内壁334bは、高電圧により絶縁破壊が生じない程度の厚みを持っており、0.5mm以上の厚みが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることが更に好ましい。
【0098】
外壁334a及び内壁334bは、いずれも、合成樹脂等の非導電性材料から形成されており、非導電性の先端335において一体的に連続している。すなわち、リング電極346の収容空間は、先端335側において閉塞されており、これにより、リング電極346による感電リスクを排除している。
【0099】
電極340´は、第1実施形態に係る電極340と同様に、導電性ベース342と、保持スリーブ344´と、アーム343とを備えている。
【0100】
保持スリーブ344´は、第1実施形態に係る保持スリーブ344と異なり、液体の噴出方向側の先端部が、チューブノズル341の径方向外側(チューブノズル341の軸に対して直交する方向)に向けて拡がる円盤状、板状又はフランジ状(鍔状)に形成されており、これにより、液体の噴出方向に面する外側電極部340a´を形成するよう構成されている。すなわち、第1実施形態に係る電極340においては、導電性ベース342が液体の噴出方向に面する外側電極部340aを形成していたが、第1実施形態に係る電極340´においては、保持スリーブ344´が液体の噴出方向に面する外側電極部340a´を形成している。保持スリーブ344´の外側電極部340a´には、液体の噴出方向に向けて延出する突起部345が形成されており、該突起部345がリング電極346と接触している。
【0101】
リング電極346は、図8に示すように、チューブノズル341の周囲を囲う筒状に形成されており、ノズル外筒334´の外壁334aと内壁334bとの間の収容空間に配置されている。リング電極346は、少なくとも非導電性チューブ部材341bの周囲を覆うことが可能な位置に配置されることが好ましい。リング電極346は、導電性樹脂や金属材料等の導電性材料により形成されており、保持スリーブ344´の外側電極部340a´と電気的に接続されている。すなわち、リング電極346は、本体部310に対してノズル部330´が装着された状態において、突起部345、保持スリーブ344´、導電性ベース342及びアーム343を介して本体部310の高電圧ライン314と電気的に接続されている。
【0102】
これにより、静電噴出装置300の動作時に高電圧ライン314から高電圧が供給されると、電極340´(特に保持スリーブ344´の外側電極部340a´)、チューブ状電極341a及びリング電極346は共に高電位となり、その周囲に電場を生成する。そして、既述のとおり、チューブ状電極341aは、液体を帯電させる機能を発揮し、外側電極部340a´は、液体の直進性を向上させる機能を発揮する。
【0103】
一方、リング電極346は、該リング電極346の内側における電場の状態を調整し、例えばコロナ放電を抑制するための電極として機能する。また、リング電極346が帯びる電荷の符号(正)は、チューブ状電極341aが帯びる電荷の符号(正)と同じであるため、チューブノズル341の非導電性チューブ部材341bの先端から噴出される液体の横方向への分散を抑制し、該液体の直進性を向上させることが可能である
【0104】
リング電極346は、第2実施形態では筒状のスプリングであるが、これに限定されず、筒状の壁等の種々の任意の構成を採用可能である。リング電極346がスプリングである場合には、保持スリーブ344´をリング電極346に当接させる際の衝撃を和らげることが可能となるため、組み立て時における破損のリスクを低減させることができると共に、保持スリーブ344´との電気的な接続を安定させることが可能となる。
【0105】
リング電極346は、チューブノズル341の軸周り方向における全範囲で繋がった環状であることが好ましいが、これに限定されず、その少なくとも一部がチューブノズル341の軸周りに沿って配置されていれば良く、例えば一部が途切れた環状であっても良い。具体的には、リング電極346は、チューブノズル341の軸周り軸周りに対称に配置されることが好ましく、強度の面で、チューブノズル341の軸周り方向における20度以上の範囲に亘って左右それぞれに配置されることが好ましく、左右それぞれに45度以上の範囲に亘って配置されることがより好ましく、360度の範囲(全範囲)に亘って配置されることが更に好ましい。
【0106】
以上説明した第2実施形態に係る静電噴出装置300´においても、第1実施形態に係る静電噴出装置300と同様の利点を有する。また、第2実施形態に係る静電噴出装置300´は、第1実施形態に係る静電噴出装置300の利点に加え、リング電極346により電場の状態を整え、より一層液体の直進性を向上させることが可能となるという利点を更に有する。
【0107】
以上、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0108】
例えば、上述した実施形態では、静電噴出システム100は、ベースステーション200及び接続ケーブル400を備えるものとしたが、これに限定されず、ベースステーション200の機能の一部又は全部を静電噴出装置300,300´に取り込むことにより、静電噴出装置300,300´のみで構成されるスタンドアローンタイプの静電噴出装置としても良い。
【0109】
また、上述した実施形態では、外側電極部340a,340a´が電極面の形態(平面状や曲面状)であるもののとして説明したが、これに限定されず、液体の直進性を向上させるという機能を阻害しない範囲において、外側電極部340a,340a´の形状は任意に変更可能である。例えば、外側電極部340a,340a´は、チューブノズル341の周面から径方向外側に直線的又は曲線的に延びる枝状の形態であっても良いし、チューブノズル341の中心軸に対して線対称に配置された突起等の形態であっても良い。
【0110】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0111】
100 :静電噴出システム
200 :ベースステーション
300,300´:静電噴出装置
305 :ノズルキャップ
310 :本体部
330,330´:ノズル部
331 :周壁
332 :カートリッジハウジング
334,334´:ノズル外筒
335 :先端
340,340´:電極
340a,340a´:外側電極部
341 :チューブノズル
341a :チューブ状電極(導電性の部位)
341b :非導電性チューブ部材(非導電性の部位)
342 :導電性ベース
343 :アーム
344,344´:保持スリーブ
346 :リング電極
350 :カートリッジ
400 :接続ケーブル
D :間隙
S :中空領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8