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特許7394596断線判別装置、断線判別方法およびプログラム。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】断線判別装置、断線判別方法およびプログラム。
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20231201BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20231201BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20231201BHJP
【FI】
G01R31/58
F03D80/30
F03D17/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019208751
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021081305
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 直人
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029351(JP,A)
【文献】特開2008-122323(JP,A)
【文献】特開2006-023105(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077970(WO,A1)
【文献】特開昭56-168173(JP,A)
【文献】特開2019-128215(JP,A)
【文献】特開2009-175092(JP,A)
【文献】特開2017-150324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
F03D 80/30
F03D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車翼に設けられた避雷導線の断線を判別する断線判別装置であって、
前記避雷導線の一端から他端に向けて発信された電気信号が前記他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部と、
前記避雷導線の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部と、
前記基準情報と前記計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部と、
前記差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、前記避雷導線が断線しているか否かの判別を行う断線判別部と、
を備え、
前記避雷導線は、前記風車翼の基端側から先端側に向かって延びるように配置された主線路と、当該主線路から分岐して前記主線路とは異なる方向に延びるように配置された分岐線路と、を有し、
前記断線判別部は、前記差分情報において所定の第1の閾値以上となるものが存在する場合、前記主線路に断線が生じていると判別し、
前記差分情報において前記第1の閾値以上となるものが存在せず、かつ、所定の閾値であって前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上となるものが存在する場合、前記分岐線路に断線が生じていると判別する、
断線判別装置。
【請求項2】
前記差分情報に基づいて、前記電気信号が発信されてから前記基準情報と前記計測情報との電圧値又は電流値の差が前記閾値以上となるまでの経過時間である断線反射時間を特定する反射時間算出部と、
前記断線反射時間に前記電気信号の伝搬速度を乗算して、前記避雷導線の断線が生じた位置を特定する位置特定部と、
を備える請求項1に記載の断線判別装置。
【請求項3】
前記避雷導線は、前記風車翼の一端から伸びる幹導線と、前記幹導線の他端側の端部である大分岐点から前記風車翼の他端に向けて伸びる第1避雷導線と第2避雷導線とを備え、
前記避雷導線の一部が解線された状態である部分解線状態毎に対応付けられた前記基準情報を予め記憶する記憶部を備え、
前記基準情報取得部は、前記計測情報取得部が計測情報を取得するときの前記部分解線状態に対応付けられた前記基準情報を前記記憶部から取得する
請求項1又は請求項2に記載の断線判別装置。
【請求項4】
実測により特定した断線が生じた位置と、前記位置特定部が特定された当該断線が生じた位置と、を照らし合わせて算出した値である補正値を用いて、前記位置特定部で特定した断線が生じた位置を補正する補正部と、
を備える請求項2に記載の断線判別装置。
【請求項5】
風車翼に設けられた避雷導線の断線を判別する断線判別方法であって、
前記避雷導線の一端から他端に向けて発信された電気信号が前記他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得するステップと、
前記避雷導線の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得するステップと、
前記基準情報と前記計測情報との差分に係る差分情報を算出するステップと、
前記差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、前記避雷導線が断線しているか否かの判別を行うステップと、
を有し、
前記避雷導線は、前記風車翼の基端側から先端側に向かって延びるように配置された主線路と、当該主線路から分岐して前記主線路とは異なる方向に延びるように配置された分岐線路と、を有し、
前記判別を行うステップでは、前記差分情報において所定の第1の閾値以上となるものが存在する場合、前記主線路に断線が生じていると判別し、
前記差分情報において前記第1の閾値以上となるものが存在せず、かつ、所定の閾値であって前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上となるものが存在する場合、前記分岐線路に断線が生じていると判別する、
断線判別方法。
【請求項6】
風車翼に設けられた避雷導線の断線を判別するプログラムであって、
コンピュータを、
前記避雷導線の一端から他端に向けて発信された電気信号が前記他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部、
前記避雷導線の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部、
前記基準情報と前記計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部、
前記差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、前記避雷導線が断線しているか否かの判別を行う断線判別部、
として機能させるプログラムであって、
前記避雷導線は、前記風車翼の基端側から先端側に向かって延びるように配置された主線路と、当該主線路から分岐して前記主線路とは異なる方向に延びるように配置された分岐線路と、を有し、
前記断線判別部は、前記差分情報において所定の第1の閾値以上となるものが存在する場合、前記主線路に断線が生じていると判別し、
前記差分情報において前記第1の閾値以上となるものが存在せず、かつ、所定の閾値であって前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上となるものが存在する場合、前記分岐線路に断線が生じていると判別する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断線判別装置、断線判別方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風車ブレードに内蔵された避雷導線の一端から他端に向けてステップ波形状の検査信号を注入し、電流波形又は電圧波形を検出することにより、当該避雷導線の断線を簡単に検出できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-029351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すように、避雷導線の断線を検出には、避雷導線の一端から信号を発信し、反射波の電流波形又は電圧波形により、避雷導線の断線を検出する。しかし、避雷導線が分岐を有する場合、反射波の波形は分岐した複数の端部からの反射波が合成されることで複雑になるため、断線の検出が困難である。
【0005】
本開示の目的は、上述した課題を解決する断線判別方法及び断線判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る断線判別装置は、風車翼に設けられた避雷導線の断線を判別する断線判別装置であって、避雷導線の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部と、避雷導線の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部と、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部と、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線が断線しているか否かの判別を行う断線判別部と、を備える。
【0007】
本開示に係る断線判別方法は、風車翼に設けられた避雷導線の断線を判別する断線判別方法であって、避雷導線の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得するステップと、避雷導線の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得するステップと、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出するステップと、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線が断線しているか否かの判別を行うステップと、を有する。
【0008】
本開示に係るプログラムは、風車翼に設けられた避雷導線の断線を判別するプログラムであって、コンピュータを、避雷導線の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部、避雷導線の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部、基準情報と前記計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線が断線しているか否かの判別を行う断線判別部、として機能させるプログラム。
【発明の効果】
【0009】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、避雷導線に断線が生じていない状態での基本情報と、計測情報とを照らし合わせて、避雷導線の断線を検出するため、分岐を有する避雷導線であっても、断線を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る断線判別装置の一例を示す図である。
図2】一実施形態に係る断線判別装置の信号装置の構成を示す概略ブロック図である。
図3】一実施形態に係る断線判別装置の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】一実施形態に係る断線判別装置の基本情報を取得する動作の一例を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る断線判別装置の断線を判別する動作の一例を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係る断線判別装置の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図7】一実施形態に係る断線判別装置の部分情報を取得する動作の一例を示すフローチャートである。
図8】一実施形態に係る断線判別装置の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図9】一実施形態に係る断線判別装置の補正に係る動作の一例を示すフローチャートである。
図10】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1の実施形態〉
《断線判別装置の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。図1は、第1の実施形態に係る断線判別装置100の一例を示す図である。
【0012】
断線判別装置100は、風車翼20の避雷導線31の断線を検出する装置である。断線判別装置100は、信号装置50と、制御装置60と、表示部80と、を備える。
【0013】
風車翼20は、風力発電などに用いられる風車の翼である。風力発電とは、風の力でタービンを回して発電する自然エネルギーの一種である。風力発電に用いられる風車には、風車翼20が複数設けられる。図1の一例における風車翼20の形状は、プロペラ型であるが、風車翼20は、オランダ型、多翼型、セイル型など、異なる形状からなるものであっても良い。
【0014】
風車翼20は、レセプタ40を備える。レセプタ40は、風車翼20に設けられ、当該風車翼20への落雷した雷を受雷し、避雷導線31へ流す物である。図1における一例では、レセプタ40はディスクタイプであるが、チップタイプやロッドタイプのものであっても良い。
【0015】
レセプタ40は、避雷導線31の他端に接続される。図1の一例においては、風車翼20が1つのレセプタ40を備え、第1避雷導線31Aに接続されているが、他の実施形態においては、風車翼20が複数のレセプタ40を備え、複数の避雷導線の先端がそれぞれレセプタ40に接続されても良い。すなわち、図1の一例においては、第2避雷導線31Bの先端にもレセプタ40が接続されても良い。
【0016】
避雷導線31は、落雷の際に雷を導線に呼び込み地面へと電流を逃がすことで当該導線が設けられている風車本体への被害を防ぐ導線である。避雷導線31は、風車翼20に内蔵される。避雷導線31は、第1避雷導線31Aと、第2避雷導線31Bと、共通避雷導線31Cと、分岐点33Aと、小分岐点33と、を備える。
【0017】
共通避雷導線31Cは、風車翼20の基端(風車のハブに接続される端)から風車翼20の先端へ向かって伸びる導線である。分岐点33Aは、第1避雷導線31Aの基端、第2避雷導線31Bの基端、および共通避雷導線31Cの先端を接続する。
【0018】
分岐点33Aには、第1避雷導線31Aと共通避雷導線31Cと連結し、電気的に接続するための第1ボルトと、第2避雷導線31Bと共通避雷導線31Cとを連結し、電気的に接続するための第2ボルトとが設けられる。
【0019】
なお、他の実施形態においては、分岐点33Aにおいて、第1ボルトおよび第2ボルトに代えて、第1避雷導線31Aの解線および結線を切り替える第1スイッチと、第2避雷導線31Bの解線および結線を切り替える第2スイッチと、を設けてもよい。この場合、第1スイッチまたは第2スイッチの操作により、第1避雷導線31Aまたは第2避雷導線31Bの解線および結線の状態を容易に切り替えることができる。
【0020】
第1避雷導線31Aは、分岐点33Aから風車翼20の先端まで伸び、レセプタ40に接続される導線である。また、第2避雷導線31Bは、分岐点33Aから風車翼20の先端まで伸び、レセプタ40に接続されない導線である。
【0021】
第1避雷導線31Aおよび第2避雷導線31B(主線路)には、複数の小分岐点33B~33Gが設けられ、それぞれから分岐線路が分岐する。小分岐点33には、主線路と分岐線路とを連結し、電気的に接続するためのボルトが設けられる。小分岐点33のボルトが外されることにより、当該小分岐点33に接続される分岐線路を主線路から解線できるようになっている。なお、分岐点33Aだけボルトが設けられ、小分岐点33B~33Gには、ボルトを設けずに解線できないように構成されても良い。
【0022】
また、分岐点33Aにおいて、上記第1ボルトおよび第2ボルトに代えて小分岐点33、分岐線路の解線および結線を切り替えるスイッチを設けてもよい。この場合、スイッチの操作により、分岐線路の解線および結線の状態を容易に切り替えることができる。
【0023】
図1に示す一例では、1個の分岐点33Aと、10個の小分岐点33が存在するが、異なる数の分岐点33Aと、小分岐点33と、を有する構成であっても良い。
【0024】
信号装置50は、避雷導線31の基端に接続され、共通避雷導線31Cの基端から電気信号の信号を発信する。上記電気信号の例としては、電圧と、電流のステップ信号と、正弦波スイープ信号などが挙げられる。また、信号装置50は、発信した電気信号の反射波に係る計測情報を取得する。計測情報とは、反射波の電圧値の時系列情報である。上記計測情報において、電圧値の代わりに電流値が用いられても良い。
【0025】
信号装置50の例としては、ネットワークアナライザと、オシロスコープと、デジタルシグナルアナライザと、パルス発生器と、が挙げられる。信号装置50は、信号発信部51と、計測情報取得部52と、を備える。図2は、信号装置50の構成を示す概略ブロック図である。
【0026】
図1に示す一例では、信号装置50は、共通避雷導線31Cの基端に接続されているが、他の実施形態においては、信号装置50は、第1避雷導線31Aの基端又は第2避雷導線31Bの基端に接続されても良い。
【0027】
信号発信部51は、避雷導線31の基端から電気信号の信号を発信する。上記信号の例としては、パルス信号が挙げられる。図1における一例では、信号発信部51が発信した信号は、第1避雷導線31Aの先端と、第2避雷導線31Bの先端、および各分岐線路の先端で反射する。
【0028】
計測情報取得部52は、計測情報を取得する。すなわち、計測情報取得部52は、共通避雷導線31Cの基端で計測された信号発信部51が発信した信号の反射波の電圧値の時系列を取得する。
【0029】
避雷導線31に、断線が生ずると、当該断線の箇所でも反射が生じ、当該反射に係る信号が共通避雷導線31Cの基端で計測される反射波に合成されることになる。
【0030】
制御装置60は、基本情報を記憶部67に記録する。基本情報とは、避雷導線31の断線が生じていない状態の反射波の電圧値の時系列である。基本情報は、基準情報の一例である。また、制御装置60は、基本情報と計測情報との差分を算出し、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う。また、制御装置60は、上記差分に係る経過時間を特定し、断線が生じた位置を特定する。図1に示す一例では、制御装置60は、信号装置50に取り付けられているが、信号装置50に取り付けられず、有線又は無線で信号装置50に接続するようにしても良い。
【0031】
制御装置60は、入力部61と、基準情報取得部62と、差分算出部63と、断線判別部64と、反射時間算出部65と、位置特定部66と、記憶部67とを備える。図3は、制御装置60の構成を示す概略ブロック図である。
【0032】
入力部61は、断線判別装置100のユーザからの入力を受け入れる。入力部61が受け入れる入力の例としては、基本情報取得指示と、断線判別指示と、が挙げられる。
【0033】
基準情報取得部62は、避雷導線31の断線が生じていない状態の計測情報である基本情報を記憶部67に記録する。基準情報取得部62の動作の一例は以下に説明する。
【0034】
まず、断線判別装置100のユーザは、第1避雷導線31Aと、第2避雷導線31Bと、共通避雷導線31Cに断線が生じていない状態であることを確認する。その後、断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に基本情報取得指示を入力すると、入力部61が、基本情報取得指示の入力を受け入れる。
入力部61が基本情報取得の入力を受け入れると、基準情報取得部62は、信号装置50に反射波の計測指示を出力する。信号発信部51は、制御装置60から計測指示を受け付けると、電気信号の信号を避雷導線31の基端から発信する。そして、計測情報取得部52は、避雷導線31の基端において反射波の電圧値を計測し、電圧値の時系列を計測情報取得部52計測情報として取得する。計測情報取得部52は、取得された計測情報を制御装置60に出力する。
基準情報取得部62は、計測情報取得部52信号装置50の計測情報取得部52から計測情報を受け入れて、当該計測情報を基本情報として記憶部67に記録する。
【0035】
差分算出部63は、入力部61が断線判別装置100のユーザから、断線判別指示の入力を受け入れたときに、信号装置50に反射波の計測指示を出力し、差分算出部63記憶部67が記憶している基本情報と、計測指示に従って信号装置50計測情報取得部52が取得した計測情報と、を照らし合わせて、基本情報と、計測情報との差分を算出する。
【0036】
避雷導線31に断線が生じていない場合、信号の反射が生じる箇所が基本情報の取得時と同じであるため、基本情報の電圧値と、計測情報の電圧値との差分は0の値若しくは小さい値となる。一方で、避雷導線31に断線が生じている場合、信号の反射が生じる箇所が基本情報の取得時と異なる。すなわち、断線時には、断線箇所で信号の反射が生じる一方で、断線箇所より先の端では信号の反射が生じない。これにより、断線が生じた箇所に対応するタイミングにおいて、基本情報の電圧値と計測情報の電圧値との差分が大きくなる。
【0037】
断線判別部64は、差分算出部63が算出した差分と記憶部67が記憶している閾値とを照らし合わせて、当該差分が当該閾値以上であるか否かで、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う。上記で説明しているとおり、断線が生じていない状態では、差分が小さい値となる。断線が生じている状態では、差分が大きい値となる。すなわち、断線が生じていない状態では、記憶部67が記憶している閾値以上の差分は生じることはなく、断線が生じている状態では、記憶部67が記憶している閾値以上の差分が生じることとなる。断線判別部64は、差分、すなわち電圧値の差の時系列において、その値が、記憶部67が記憶する閾値以上となる部分があるか否かで、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う。
【0038】
また、断線判別部64は、判別の内容を表示部80に出力して表示させる。
【0039】
反射時間算出部65は、差分算出部63が算出した差分において、電圧値の差が、記憶部67が記憶している閾値以上となるタイミングを特定する。すなわち、反射時間算出部65は、電気信号の信号を発信した時刻から、計測情報に係る電圧値と基本情報に係る電圧値との差が閾値以上となる時刻までの経過時間を特定する。
【0040】
位置特定部66は、反射時間算出部65が特定した経過時間に基づいて、避雷導線31の断線が生じた場所を特定する。具体的には、位置特定部66は、反射時間算出部65が特定した経過時間に、記憶部67が記憶している信号の伝搬速度を乗算する。このような乗算により、長さが算出される。当該長さは、差分が閾値以上に生じた位置すなわち断線が生じた位置を、基端からの距離で表した値である。位置特定部66は、当該長さに基づいて避雷導線31において断線が生じた位置を特定する。
【0041】
位置特定部66は、特定した場所を表示部80に出力して、表示する。
【0042】
記憶部67は、基本情報を記憶する装置である。
【0043】
表示部80は、断線判別部64が判別した内容を表示し、位置特定部66が特定した、断線した場所を表示する。表示部80の例としては、ディスプレイ装置が挙げられる。図1の一例においては、表示部80は、制御装置60に取り付けられているが、制御装置60に取り付けられず、有線又は無線で制御装置60に接続されても良い。
【0044】
《基本情報を取得する動作》
以下、断線判別装置100の基本情報を取得する動作について説明する。図4は、第1の実施形態に係る断線判別装置100の基本情報を取得する動作の一例を示すフローチャートである。
【0045】
避雷導線31である第1避雷導線31Aと、第2避雷導線31Bと、共通避雷導線31Cに断線が生じていない状態であることを、断線判別装置100のユーザが確認する(ステップS1)。断線が生じている場合は、基本情報を取得する動作を実施できないため、断線判別装置100のユーザは、当該避雷導線31を取り換えて、再度、断線が生じていない状態であることを確認する。
【0046】
避雷導線31に断線が生じていない場合、断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に基本情報取得指示を入力する。入力部61は、断線判別装置100のユーザから基本情報取得指示の入力を受け入れる(ステップS2)。
【0047】
ステップS2により、断線判別装置100の基準情報取得部62は、信号装置50に反射波の計測指示を出力する。信号発信部51は、計測指示を受け付けると、電気信号の信号を避雷導線31の基端から発信する(ステップS3)。
【0048】
ステップS3の後、計測情報取得部52は、避雷導線31の基端において反射波を計測し、反射波の電圧値の時系列である計測情報を取得する(ステップS4)。計測情報取得部52は、計測情報を断線判別装置100に出力する。
【0049】
断線判別装置100の基準情報取得部62は、ステップS4で計測情報取得部52が取得した計測情報を受け入れて、当該計測情報を基本情報として記憶部67に記録する(ステップS5)。
【0050】
上記の動作により、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を取得することができる。
【0051】
《断線を判別する動作》
以下、断線判別装置100の断線を判別する動作について説明する。図5は、第1の実施形態に係る断線判別装置100の断線を判別する動作の一例を示すフローチャートである。
【0052】
断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に、断線判別指示を入力する。入力部61は、断線判別装置100のユーザから断線判別指示の入力を受け入れる(ステップS11)。
【0053】
ステップS11により、断線判別装置100の差分算出部63は、信号装置50に反射波の計測指示を出力する。信号発信部51は、計測指示を受け付けると、電気信号の信号を避雷導線31の基端から発信する(ステップS12)。
【0054】
ステップS12の後、計測情報取得部52は、避雷導線31の基端において反射波を計測し、反射波の電圧値の時系列である計測情報を取得する(ステップS13)。計測情報取得部52は、計測情報を制御装置60に出力する。
【0055】
断線判別装置100の差分算出部63は、記憶部67が記憶している基本情報と、計測情報取得部52がステップS13で取得した計測情報とを照らし合わせて、基本情報と、計測情報の差分を算出する(ステップS14)。なお、他の実施形態においては、断線判別装置100に差分算出部63を設けず、断線判別装置100のユーザが基本情報と計測情報とを照らし合わせて、手作業で差分を算出しても良い。
【0056】
断線判別部64は、差分算出部63がステップS14で算出した差分と記憶部67が記憶している閾値とを照らし合わせて、当該差分に係る電圧値の差の時系列において、電圧値の差が閾値以上となる部分が存在するか否かで、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う(ステップS15)。なお、他の実施形態においては、断線判別装置100に断線判別部64を設けず、断線判別装置100のユーザが差分と閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行っても良い。また、他の実施形態では、断線判別装置100に差分算出部63と、断線判別部64とを設けず、断線判別装置100のユーザが、計測情報の波形を基本情報の波形を照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かを判別しても良い。
【0057】
断線判別部64が、避雷導線31が断線していないと判別した場合(ステップS15:NO)、断線判別部64が、避雷導線31が断線していない旨を表示部80に出力し、表示部80が当該旨を表示する(ステップS16)。
【0058】
断線判別部64が、避雷導線31が断線していると判別した場合(ステップS15:YES)、反射時間算出部65は、差分算出部63がステップS14で算出した差分のうち、電圧値の差が、記憶部67が記憶している閾値以上となる経過時間を特定する(ステップS17)。
【0059】
位置特定部66は、ステップS17で反射時間算出部65が特定した経過時間に基づいて、避雷導線31の断線が生じた位置を特定する(ステップS18)。すなわち、位置特定部66は、反射時間算出部65が特定した経過時間に、記憶部67が記憶している信号の伝搬速度を乗算することで、避雷導線31の基端部から断線が生じた位置までの長さを算出する。位置特定部66これにより、位置特定部66は、第1避雷導線と第2避雷導線との何れか一方のみに断線が生じている場合にも、断線位置を特定することができる。
【0060】
位置特定部66は、特定した位置を表示部80に出力し、表示部80が当該場所を表示する(ステップS19)。
【0061】
上記の動作により、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、断線が生じている場所を特定することができる。
【0062】
《作用・効果》
本開示に係る断線判別装置100は、風車翼に設けられた避雷導線31の断線を判別する断線判別装置100であって、避雷導線31の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部52と、避雷導線31の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部62と、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部63と、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う断線判別部64と、を備える。
【0063】
これにより、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、断線判別装置100のユーザは、風車翼20の基端に信号装置50を接続することで、避雷導線31の断線の有無を判別することができる。したがって、断線判別装置100のユーザは、風車のロータヘッドまたはナセルの近傍における作業によって、すなわち風車翼20の先端などのアクセスが困難な箇所で作業を行うことなく、断線の有無を判別することができる。
【0064】
また、断線判別装置100は、差分情報に基づいて、電気信号が発信されてから基準情報と計測情報との電圧値又は電流値の差が閾値以上となるまでの経過時間である断線反射時間を特定する反射時間算出部65と、断線反射時間に電気信号の伝搬速度を乗算して、避雷導線31の断線が生じた位置を特定する位置特定部66と、を備える。
【0065】
これにより、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基準情報を用いて、断線が生じている場所を特定することができる。
【0066】
本開示に係る断線判別方法は、風車翼20に設けられた避雷導線31の断線を判別する断線判別方法であって、避雷導線31の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得するステップと、避雷導線31の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得するステップと、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出するステップと、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行うステップと、を有する。
【0067】
これにより、断線判別方法のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、断線判別方法のユーザは、風車翼20の基端に信号装置50を接続することで、避雷導線31の断線の有無を判別することができる。したがって、断線判別方法のユーザは、風車のロータヘッドまたはナセルの近傍における作業によって、すなわち風車翼20の先端などのアクセスが困難な箇所で作業を行うことなく、断線の有無を判別することができる。
【0068】
本開示に係るプログラムは、風車翼20に設けられた避雷導線31の断線を判別するプログラムであって、コンピュータを、避雷導線31の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部52、避雷導線31の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部62、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部63、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う断線判別部64、として機能させる。
【0069】
これにより、プログラムは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、プログラムのユーザは、風車翼20の基端に信号装置50を接続することで、避雷導線31の断線の有無を判別することができる。したがって、プログラムのユーザは、風車のロータヘッドまたはナセルの近傍における作業によって、すなわち風車翼20の先端などのアクセスが困難な箇所で作業を行うことなく、断線の有無を判別することができる。
【0070】
〈第2の実施形態〉
《断線判別装置の構成》
以下、図面を参照しながら第2の実施形態に係る断線判別装置100について詳しく説明する。第2実施形態に係る断線判別装置100の制御装置60の構成は、第1実施形態に係る断線判別装置100の制御装置60の構成に、部分情報記録部68と、部分算出部69と、部分判別部70と、を加えて備える構成である。
【0071】
第2の実施形態によれば係る断線判別装置100のユーザは、避雷導線31において断線が生じた場合に、当該断線が生じた避雷導線31の一部を特定することができる。
【0072】
図6は、第2の実施形態に係る断線判別装置100の制御装置60の構成を示す概略ブロック図である。
【0073】
第2の実施形態における部分解線状態とは、避雷導線31の一部が解線された状態である。部分解線状態の例としては、大分岐点である分岐点33Aから第2避雷導線31Bを解線した状態と、小分岐点である分岐点33Bから分岐点33Fまでのそれぞれにおいて第1避雷導線31Aまたは第2避雷導線31Bと垂直につながっている避雷導線31を解線した状態と、分岐点33Bから分岐点33Fまでのそれぞれにおいて分岐点33Aとは反対側の避雷導線31を解線した状態と、が挙げられる。
【0074】
部分情報記録部68は、部分解線状態毎において、断線が生じていない状態で、信号装置50から計測情報を取得し、当該部分解線状態に対応する基準情報である部分情報として、記憶部67に記録する。例えば、部分情報記録部68は、第2避雷導線31Bを大分岐点である分岐点33Aから解線した状態である第2部分解線状態で、第1避雷導線31Aに断線が生じていない状態で、信号装置50から計測情報を取得し、第1部分情報として記憶部67に記録する。具体的には、部分情報記録部68は、以下の動作を行う。
【0075】
まず、断線判別装置100のユーザは、当該分岐点33Aに設けられたボルトを外すことにより、共通避雷導線31Cから第2避雷導線31Bを解線する。
その後、断線判別装置100のユーザは、第1避雷導線31Aと、共通避雷導線31Cに断線が生じていない状態であることを、確認する。当該確認の後に、断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に部分情報取得を入力すると、入力部61が、部分情報取得の入力を受け入れる。
【0076】
入力部61が部分情報取得の入力を受け入れると、部分情報記録部68は、信号装置50に反射波の計測指示を出力する。信号発信部51は、制御装置から計測指示を受け付けると、電気信号の信号を避雷導線31の基端から発信する。そして、計測情報取得部52は、避雷導線31の基端において反射波の電圧値を計測し、電圧値の時系列を計測情報取得部52計測情報として取得する。計測情報取得部52は、取得された計測情報を制御装置60に出力する。
【0077】
部分情報記録部68は、計測情報取得部52信号装置50の計測情報取得部52から計測情報を受け入れて、当該計測情報を部分情報として記憶部67に記録する。
【0078】
上記の説明では、部分情報記録部68が取得する部分情報の例を第2避雷導線31Bが解線した状態での計測情報としているが、第1避雷導線31Aが解線した状態での基準情報を部分情報として記録しても良い。この場合、部分情報記録部68は、第1避雷導線31Aを分岐点33Aから解線した状態である第1部分解線状態で、第2避雷導線31Bに断線が生じていない状態で、信号装置50から計測情報を取得し、第2部分情報として記憶部67に記録する。
【0079】
断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100を用いて断線を判別する前に、予め部分情報記録部68を用いて、部分解線状態毎に対応する基準情報である部分情報を取得させ、記憶部67に記録させる。
【0080】
部分算出部69は、入力部61が断線判別装置100のユーザから、部分断線判別の入力を受け入れたときに、信号装置50に反射波の計測指示を出力し、記憶部67が記憶している部分情報と、計測指示に従って信号装置50計測情報取得部52が取得した計測情報とを照らし合わせて、部分情報と、計測情報との差分を算出する。上記部分判別の入力には、部分解線状態を特定できる情報が含まれており、部分算出部69は、当該部分解線状態に対応する部分情報と、計測情報との差分を算出する。
【0081】
部分判別部70は、部分算出部69が算出した差分と記憶部67が記憶している閾値とを照らし合わせて、当該差分において、電圧値の差が当該閾値以上となる部分があるか否かで、第1避雷導線31Aが断線しているか否かの判別を行う。
【0082】
また、断線判別部64は、上記判別の内容を表示部80に出力して表示させる。
【0083】
反射時間算出部65は、差分算出部63が算出した差分及び部分算出部69が算出した差分のうち、記憶部67が記憶している閾値以上の当該差分に係る経過時間を特定する。
【0084】
位置特定部66は、反射時間算出部65が特定した経過時間に、信号の伝搬速度を乗算して、避雷導線31の断線が生じた場所を特定する。また、位置特定部66は、部分情報と計測情報との差分に基づいて、避雷導線31のうち、何れかの一部の避雷導線31に断線が生じたかを特定する。例えば、第2避雷導線31Bを解線した状態に対応する部分情報と計測情報との差分が生じ、第1避雷導線31Aを解線した状態に対応する部分状態と計測情報との差分が生じていない場合、位置特定部66は、差分が生じた場合に解線された第2避雷導線31B以外の位置で断線が生じていると特定する。
【0085】
位置特定部66は、特定した位置を表示部80に出力して、表示する。
【0086】
《部分情報を取得する動作》
以下、断線判別装置100の部分情報を取得する動作について説明する。図7は、第2の実施形態に係る断線判別装置100の部分情報を取得する動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作の一例は、部分情報のうち、第2避雷導線31Bを解線した状態である第2部分解線状態の基本情報に係る部分情報を取得する動作である。
【0087】
断線判別装置100のユーザは、分岐点33Aに設けられたボルトを外すことにより、第2避雷導線31Bを解線する(ステップS21)。
【0088】
避雷導線31である第1避雷導線31Aと、共通避雷導線31Cに断線が生じていない状態であることを、断線判別装置100のユーザが確認する(ステップS22)。断線が生じている場合は、部分情報を取得する動作を実施できないため、断線判別装置100のユーザは、当該第1避雷導線31A又は共通避雷導線31Cを取り換えて、再度、断線が生じていない状態であることを確認する。
【0089】
断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に部分情報取得を入力する。入力部61は、断線判別装置100のユーザから部分情報取得の入力を受け入れる(ステップS23)。
【0090】
ステップS23により、断線判別装置100の基準情報取得部62は、信号装置50に反射波の計測指示を出力する。信号発信部51は、計測指示を受け付けると、電気信号の信号を避雷導線31の基端から発信する(ステップS24)。
【0091】
ステップS24の後、計測情報取得部52は、避雷導線31の基端において反射波を計測し、反射波の電圧値の時系列である計測情報を取得する(ステップS25)。計測情報取得部52は、計測情報を断線判別装置100に出力する。
【0092】
断線判別装置100の部分情報記録部68は、ステップS24で計測情報取得部52が取得した計測情報を受け入れて、当該計測情報を部分情報として記憶部67に記録する(ステップS26)。断線判別装置100は、断線判別装置100のユーザから解線されていない避雷導線の種別の入力を受け入れて、部分情報記録部68が部分情報と、当該部分情報に係る避雷導線31の種別とを関連付けて記憶部67に記録するようにしても良い。
【0093】
上記の動作により、断線判別装置100のユーザは、第2避雷導線31Bが解線した状態で、第1避雷導線31Aに断線が生じていない状態での計測情報である部分情報を取得することができる。
【0094】
断線判別装置100のユーザは、第1の実施形態と同様の手順(図5を参照)で、避雷導線31の断線が生じているか否かを判別する。そして、避雷導線31の断線が生じていることが判明した場合、第2避雷導線31Bを解線した後に、図5と同様の手順により、部分情報と計測情報の差分から、第1避雷導線31Aに断線が生じているか否かを判別する。なお、第1避雷導線31Aに断線が生じていないことが判明した場合、第2避雷導線31Bに断線が生じていることが分かる。
【0095】
《作用・効果》
本開示に係る断線判別装置100の避雷導線31は、風車翼20の一端から伸びる幹導線と、幹導線の他端側の端部である大分岐点33Aから風車翼20の他端に向けて伸びる第1避雷導線31Aと第2避雷導線31Bとを備え、避雷導線31の一部が解線された状態である部分解線状態毎に対応付けられた基準情報を予め記憶する記憶部67を備え、基準情報取得部62は、計測情報取得部52が計測情報を取得するときの部分解線状態に対応付けられた基準情報を記憶部67から取得する。
【0096】
これにより、断線判別方法のユーザは、避雷導線31が途中で分岐した避雷導線31である場合、当該分岐点33に係る避雷導線31を解線することにより、分岐による複数の端部から反射される電圧による複雑な態様の波形を形成されることを防止し、より明確に避雷導線31の断線の判別と、断線の場所を判別できる。
【0097】
なお、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様の手順で、避雷導線31全体の断線の有無を判別し、その後、第2避雷導線31Bを解線して、第1避雷導線31Aと第2避雷導線31Bのいずれに断線が生じているかを判別する。他方、他の実施形態では、これに限られない。例えば、他の実施形態では、第1の実施形態に係る手順に基づく避雷導線31全体の断線の有無の判別を行わずに、第1避雷導線31Aを解線したときの計測情報と部分計測情報との比較を行い第2避雷導線Bにおける断線の有無を判定し、また第2避雷導線31Bを解線したときの計測情報と部分計測情報との比較を行い第1避雷導線Aにおける断線の有無を判定してもよい。
【0098】
〈第3の実施形態〉
以下、図面を参照しながら第3の実施形態に係る断線判別装置100について詳しく説明する。第3実施形態に係る断線判別装置100の制御装置60の構成は、第1実施形態に係る断線判別装置100の制御装置60の構成に、補正部71を加えた構成である。
【0099】
第1の実施形態においては、避雷導線の基端に電気信号を発してから、断線箇所での反射波が避雷導線の基端に到達するまでの時間に、信号の伝搬速度を乗算することで、断線位置を特定する。しかしながら、信号の伝搬速度に誤差が含まれる場合、特定された断線位置にもその誤差が含まれることとなる。これに対し、第3の実施形態に係る断線判別装置100によれば、伝搬速度の誤差や実長の誤差により、位置特定部66が特定した断線が生じた場所と実際断線が生じた場所との誤差を減らすことができる。
【0100】
図8は、第3の実施形態に係る断線判別装置100の制御装置60の構成を示す概略ブロック図である。
【0101】
補正部71は、過去の断線時の計測信号と断線判別装置100のユーザにより入力された断線位置を用いて、位置特定部66が特定した位置を補正する。具体的には、以下のような動作を行う。
【0102】
断線判別装置100のユーザは、実測により断線が生じた場所を特定する。その後、断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に断線判別指示を入力することで、位置特定部66が、断線が生じた場所の特定を行う。このとき、断線判別装置100によって計算された位置には、誤差が含まれ得る。断線判別装置100のユーザは、実測により特定した断線が生じた場所と、断線判別装置100の位置特定部66が特定した断線が生じた場所とを照らし合わせて、誤差を特定する。誤差を特定することを断線判別装置100のユーザが行わず、断線判別装置100の制御装置60に誤差を特定する誤差特定部を設け、断線判別装置100が誤差の特定を行っても良い。
【0103】
補正部71は、入力された誤差を補正値として記憶部に記録する。その後、補正部71は、記憶部67が記憶する補正値を用いて、位置特定部66が特定した断線が生じた場所を補正する。補正値としては、距離の差、または距離の比が挙げられる。例えば、補正値が距離の差を示す場合、補正部71は、位置特定部66が特定した長さに、当該補正値を加算することにより、断線位置を補正する。また、補正値が距離の比を示す場合、補正部71は、位置特定部66が特定した長さに、当該補正値を乗算することにより、断線位置を補正する。
【0104】
補正部71は、位置特定部66が特定した断線が生じた位置を補正した後、補正された位置を表示部80に出力して表示させる。これにより、断線判別装置100のユーザは、伝搬速度の誤差や実長の誤差により、位置特定部66が特定した断線が生じた場所と実際に断線が生じた場所との誤差を減らすことができ、より、明確に断線が生じた場所を特定することができる。なお、第3の実施形態では、補正値が距離の差と距離の比の何れか一方である場合について説明したが、他の実施形態では、補正値として距離の差と距離の比の両方を保持してもよい。この場合、補正部71は、複数回断線が生じたときに断線位置をそれぞれ実測し、計測情報と断線位置の実測値との複数の組み合わせに基づいて連立方程式を解くことで、距離の差と距離の比のそれぞれを算出することができる。
【0105】
《補正に係る動作》
以下、断線判別装置100の補正に係る動作について説明する。図9は、第3の実施形態に係る断線判別装置100の補正に係る動作の一例を示すフローチャートである。
【0106】
断線判別装置100のユーザは、実測により断線が生じた場所を特定する(ステップS31)。
【0107】
断線判別装置100のユーザは、断線判別装置100に断線判別を入力する(ステップS32)。
【0108】
ステップS32の後、信号発信部51は、電気信号の信号を一端から発信する(ステップS33)。
【0109】
ステップS33の後、計測情報取得部52は、信号発信部51の発信による反射波の電圧値と経過時間を関連付けて、計測情報を取得する(ステップS34)。
【0110】
差分算出部63は、記憶部67が記憶している基本情報と、計測情報取得部52がステップS13で取得した計測情報とを照らし合わせて、同一の経過時間における基本情報の電圧値と、当該計測情報の電圧値との差分を算出する(ステップS35)。
【0111】
断線判別部64は、差分算出部63がステップS35で算出した差分と記憶部67が記憶している閾値とを照らし合わせて、当該差分が当該閾値以上であるか否かで、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う(ステップS36)。
【0112】
ステップS31により、断線判別部64が、避雷導線31が断線していると判別する。反射時間算出部65は、差分算出部63がステップS35で算出した差分のうち、記憶部67が記憶している閾値以上の当該差分に係る経過時間を特定する(ステップS37)。
【0113】
位置特定部66は、ステップS37で反射時間算出部65が特定した経過時間に、信号の伝搬速度を乗算して、避雷導線31の断線が生じた場所を特定する(ステップS38)。
【0114】
断線判別装置100のユーザは、実測により特定した断線が生じた場所と、断線判別装置100の位置特定部66が特定した断線が生じた場所とを照らし合わせて、誤差を特定する(ステップS39)。誤差を特定することを断線判別装置100のユーザが行わず、断線判別装置100の制御装置60に誤差を特定する誤差特定部を設けて行っても良い。
【0115】
断線判別装置100のユーザは、ステップS39で特定した誤差を断線判別装置100に入力する。入力部61は、断線判別装置100のユーザから誤差の入力を受け入れる(ステップS40)。
【0116】
入力部61は、ステップS40で入力された誤差を補正値として記憶部67に記録する(ステップS41)。
【0117】
断線が生じた避雷導線31が修復されると、以降の判定において補正部71は、記憶部が記憶する補正値に基づいて、位置特定部66が特定した断線が生じた場所を補正する。
【0118】
上記の動作により、断線判別装置100のユーザは、伝搬速度の誤差や実長の誤差により、位置特定部66が特定した断線が生じた場所と実際断線が生じた場所との誤差を減らすことができ、より明確に避雷導線31において断線が生じた場所を特定できる。
【0119】
《作用・効果》
本開示に係る断線判別装置100は、実測により特定した断線が生じた位置と、位置特定部66が特定された当該断線が生じた位置と、を照らし合わせて算出した値である補正値を用いて、位置特定部66で特定した断線が生じた位置を補正する補正部71と、を備える。
【0120】
これにより、断線判別装置100のユーザは、伝搬速度の誤差や実長の誤差により、位置特定部66が特定した断線が生じた場所と実際断線が生じた場所との誤差を減らすことができ、より明確に避雷導線31において断線が生じた場所を特定できる。
【0121】
《第4の実施形態》
第1実施形態に係る断線判別装置100では、第1避雷導線31Aと第2避雷導線31Bの主線路における断線を検知するが、第4実施形態に係る断線判別装置100は、主線路の断線に加え、分岐線路の断線も検知する。第4の実施形態に係る断線判別装置100の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0122】
第4実施形態に係る断線判別装置100は、主線路の断線を検知するための第1の閾値と、分岐線路の断線を検知するための第2の閾値とを記憶部67に記憶する。第1の閾値は、第2の閾値より大きい。断線判別部64は、第1の閾値および第2の閾値と、差分を照らし合わして、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う。
【0123】
断線判別部64は、差分において、電圧値の差が第1の閾値以上となるものが存在する場合、主線路に断線が生じていると判別する。他方、断線判別部64は、差分において、電圧値の差が第1の閾値以上となるものが存在せず、かつ電圧値の差が第2の閾値以上となるものが存在する場合、分岐点33B~分岐点33Gである小分岐点により分岐された分岐線路に断線が生じていると判別する。
【0124】
なお、他の実施形態では、断線判別部64が第1の閾値のみに基づいて判別を行い、主線路の断線の有無を判別し、主線路の断線がないと判別された場合に、ユーザが第2の閾値に基づいて手作業で分岐線路に断線が生じているか否かを判別しても良い。
【0125】
断線判別部64の判別の内容は、第1実施形態に係る断線判別装置100と同じく、表示部80に出力して、断線判別装置100のユーザに表示する。これにより、断線判別装置100のユーザは、小分岐点から分岐した避雷導線31の断線をより明確に特定することができる。
【0126】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0127】
上記の実施形態に係る断線判別装置100は、1つの風車翼20に内蔵された避雷導線31に接続されているが、複数の風車翼20に内蔵された避雷導線31に接続されても良い。この場合、断線判別装置100は、断線判別装置100のユーザからどの風車翼20の断線を判別するかの入力を受け入れ、当該入力に係る風車翼20の断線を判別する。
【0128】
上記の実施形態に係る断線判別装置100は、断線判別装置100のユーザの入力を受け入れて避雷導線31の断線を判別するが、断線判別装置100を避雷導線31に常時繋げ、一定時間の間隔に避雷導線31の断線を判別しても良い。
【0129】
〈コンピュータ構成〉
図10は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ1100は、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、インタフェース1140を備える。
【0130】
上述の制御装置60は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0131】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0132】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1140または通信回線を介してコンピュータに接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0133】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0134】
〈付記〉
各実施形態に記載の断線判別装置100は、例えば以下のように把握される。
【0135】
(1)本開示に係る断線判別装置100は、風車翼に設けられた避雷導線31の断線を判別する断線判別装置100であって、避雷導線31の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部52と、避雷導線31の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部62と、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部63と、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う断線判別部64と、を備える。
【0136】
これにより、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、断線判別装置100のユーザは、風車翼20の基端に信号装置50を接続することで、避雷導線31の断線の有無を判別することができる。したがって、断線判別装置100のユーザは、風車のロータヘッドまたはナセルの近傍における作業によって、すなわち風車翼20の先端などのアクセスが困難な箇所で作業を行うことなく、断線の有無を判別することができる。
【0137】
(2)また、断線判別装置100は、差分情報に基づいて、電気信号が発信されてから基準情報と計測情報との電圧値又は電流値の差が閾値以上となるまでの経過時間である断線反射時間を特定する反射時間算出部65と、断線反射時間に電気信号の伝搬速度を乗算して、避雷導線31の断線が生じた位置を特定する位置特定部66と、を備える。
【0138】
これにより、断線判別装置100のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基準情報を用いて、断線が生じている場所を特定することができる。
【0139】
(3)本開示に係る断線判別方法は、風車翼20に設けられた避雷導線31の断線を判別する断線判別方法であって、避雷導線31の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得するステップと、避雷導線31の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得するステップと、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出するステップと、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行うステップと、を有する。
【0140】
これにより、断線判別方法のユーザは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、断線判別方法のユーザは、風車翼20の基端に信号装置50を接続することで、避雷導線31の断線の有無を判別することができる。したがって、断線判別方法のユーザは、風車のロータヘッドまたはナセルの近傍における作業によって、すなわち風車翼20の先端などのアクセスが困難な箇所で作業を行うことなく、断線の有無を判別することができる。
【0141】
(4)本開示に係るプログラムは、風車翼20に設けられた避雷導線31の断線を判別するプログラムであって、コンピュータを、避雷導線31の一端から他端に向けて発信された電気信号が他端で反射された反射波の電圧値又は電流値の時系列である計測情報を取得する計測情報取得部52、避雷導線31の断線が生じていないときの反射波の電圧値又は電流値の時系列である基準情報を取得する基準情報取得部62、基準情報と計測情報との差分に係る差分情報を算出する差分算出部63、差分情報と所定の閾値とを照らし合わせて、避雷導線31が断線しているか否かの判別を行う断線判別部64、として機能させる。
【0142】
これにより、プログラムは、断線が生じていない状態での計測情報である基本情報を用いて、避雷導線31が断線しているか否かを判別することができる。また、プログラムのユーザは、風車翼20の基端に信号装置50を接続することで、避雷導線31の断線の有無を判別することができる。したがって、プログラムのユーザは、風車のロータヘッドまたはナセルの近傍における作業によって、すなわち風車翼20の先端などのアクセスが困難な箇所で作業を行うことなく、断線の有無を判別することができる。
【0143】
(5)本開示に係る断線判別装置100の避雷導線31は、風車翼20の一端から伸びる幹導線と、幹導線の他端側の端部である大分岐点33Aから風車翼20の他端に向けて伸びる第1避雷導線31Aと第2避雷導線31Bとを備え、避雷導線31の一部が解線された状態である部分解線状態毎に対応付けられた基準情報を予め記憶する記憶部67を備え、基準情報取得部62は、計測情報取得部52が計測情報を取得するときの部分解線状態に対応付けられた基準情報を記憶部67から取得する。
【0144】
これにより、断線判別方法のユーザは、避雷導線31が途中で分岐した避雷導線31である場合、当該分岐点33に係る避雷導線31を解線することにより、分岐による複数の端部から反射される電圧による複雑な態様の波形を形成されることを防止し、より明確に避雷導線31の断線の判別と、断線の場所を判別できる。
【0145】
(6)本開示に係る断線判別装置100は、実測により特定した断線が生じた位置と、位置特定部66が特定された当該断線が生じた位置と、を照らし合わせて算出した値である補正値を用いて、位置特定部66で特定した断線が生じた位置を補正する補正部71と、を備える。
【0146】
これにより、断線判別装置100のユーザは、伝搬速度の誤差や実長の誤差により、位置特定部66が特定した断線が生じた場所と実際断線が生じた場所との誤差を減らすことができ、より明確に避雷導線31において断線が生じた場所を特定できる。
【符号の説明】
【0147】
20 風車翼
31 避雷導線
33 分岐点
40 レセプタ
50 信号装置
51 信号発信部
52 計測情報取得部
60 制御装置
61 入力部
62 基準情報取得部
63 差分算出部
64 断線判別部
65 反射時間算出部
66 位置特定部
67 記憶部
68 部分情報記録部
69 部分算出部
70 部分判別部
71 補正部
80 表示部
100 断線判別装置
1100 コンピュータ
1110 プロセッサ
1120 メインメモリ
1130 ストレージ
1140 インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10