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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】電子写真用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20231201BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G03G9/097 368
G03G9/087 331
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019212284
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085908
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 省伍
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-093630(JP,A)
【文献】特開2018-002695(JP,A)
【文献】特開2001-072527(JP,A)
【文献】特開2011-033852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及びメタ珪酸アルミン酸マグネシウムを含有する電子写真用トナーであって、前記メタ珪酸アルミン酸マグネシウムがトナー粒子中に内添されている、電子写真用トナー
【請求項2】
メタ珪酸アルミン酸マグネシウムの含有量が、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下である、請求項1記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
メタ珪酸アルミン酸マグネシウムの個数平均粒径が0.005μm以上0.2μm以下である、請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含有する、請求項1~3いずれか記載の電子写真用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
画像の高画質化に対する要求に伴い、細線再現性の向上を課題とするトナーが検討されている。
【0003】
特許文献1には、少なくとも結着樹脂、着色剤、帯電制御剤及び軟化剤を含む着色樹脂粒子を含有する負帯電性トナーにおいて、前記帯電制御剤は、ビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリレートとスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドとを共重合して得られ、且つスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドの共重合割合が0.8~4.0質量%である共重合体であり、前記軟化剤が、モノエステル化合物及びポリグリセリンエステル化合物の少なくともいずれか一方であることを特徴とする負帯電性トナーが開示されている。
【0004】
特許文献2には、結着樹脂、着色剤、及び荷電制御剤を含有する電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が、アルコール成分と、脂肪族ジカルボン酸系化合物を60モル%以上含有するカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂Aを50質量%以上含有し、前記着色剤が、結着樹脂100質量部に対して、5質量部以上のC.I.Pigment Red 188を含有し、前記荷電制御剤がベンジル酸化合物の金属化合物を含有する、電子写真用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-70835号公報
【文献】特開2019-95575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非磁性一成分現像方式で細線再現性を向上させるためには、トナー粒子が現像機の撹拌によって、円滑に流動し、均一に帯電されることが重要である。無機微粒子はその物理特性及び電気特性から、トナー粒子に外添して使用されることが多いが、トナーに外添すると、現像機の撹拌によって遊離又は埋没することで効果を発揮できず、トナー粒子間で凝集が発生し、細線再現性を悪化させてしまうことがある。
【0007】
本発明は、画像の細線再現性に優れた電子写真用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、結着樹脂及びメタ珪酸アルミン酸マグネシウムを含有する電子写真用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子写真用トナーは、画像の細線再現性において優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂とメタ珪酸アルミン酸マグネシウムを含有し、画像の細線再現性(以下、単に「細線再現性」ともいう)において優れた効果を奏するものである。
通常、無機粒子をトナー粒子に内添すると、無機粒子は容易にはトナー中に分散し難く、結果として、トナー粒子間で無機粒子の量に依存する帯電性能差が生じ、細線再現性を悪化させてしまう。
これに対し、本発明では、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムが電気的に中性であるため、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムを多く含む粒子が存在していても、帯電特性に悪影響を与えることなく、むしろ、トナー粒子間で巨大スペーサー粒子の如く作用し、トナー粒子間の凝集を防ぐことで、細線再現性を向上させることができる。
【0011】
メタ珪酸アルミン酸マグネシウムは、制酸作用や抗潰瘍作用を有し、胃腸薬製剤等の原料として使用されている。
【0012】
メタ珪酸アルミン酸マグネシウムの個数平均粒径は、トナー中へ導入する観点から、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、そして、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0013】
メタ珪酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0014】
結着樹脂としては、特に限定されず、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられるが、本発明では、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0015】
本発明におけるポリエステル樹脂は、非晶質であっても結晶性であってもよく、また、結着樹脂は、複合樹脂の一部として、ポリエステル樹脂を含有していてもよい。
従って、本発明において好適な、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂、非晶質複合樹脂と結晶性ポリエステル樹脂、非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂等が挙げられるが、これらの中では、非晶質ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の組み合わせ、及び非晶質複合樹脂と結晶性ポリエステルの組み合わせが好ましく、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の組み合わせ及び非晶質複合樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の組み合わせがより好ましい。
【0016】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0017】
非晶質ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
【0018】
アルコール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等が挙げられる。脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0021】
アルコール成分としては、細線再現性の観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0022】
カルボン酸成分において、2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数が1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸成分は、細線再現性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
【0024】
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数7以上15以下、さらに好ましくは炭素数8以上12以下、さらに好ましくは炭素数9以上10以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0025】
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、ポリエステル樹脂の分子量を調整する観点から、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
【0026】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0027】
ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
【0028】
非晶質ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0029】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0030】
非晶質複合樹脂としては、前記非晶質ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂が好ましい。
【0031】
スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合体である。
【0032】
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0033】
また、スチレン系樹脂は、原料モノマーとしてアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
【0034】
炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0035】
スチレン系樹脂の原料モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
【0036】
スチレン系樹脂の原料モノマーには、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の原料モノマー、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
【0037】
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
【0038】
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
【0039】
本発明において、複合樹脂は、粉砕性の観点から、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを介して非晶質ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が化学結合した樹脂が好ましい。
【0040】
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーである。
【0041】
また、両反応性モノマーは、アルキル基の炭素数が6以下であるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれた1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステルは、エステル交換に対する反応性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキル基は、水酸基等の置換基を有していてもよい。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。なお、「(イソ又はターシャリー)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。
【0044】
本発明において、アクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるアクリル酸アルキルエステル、より好ましくはアクリル酸ブチルであり、メタクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるメタクリル酸アルキルエステル、より好ましくはメタクリル酸ブチルである。
【0045】
両反応性モノマーの使用量は、非晶質ポリエステル樹脂のアルコール成分の合計100モルに対して、スチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、スチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計には重合開始剤を含める。
【0046】
両反応性モノマーを用いて得られる複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
【0047】
(i) 非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加することが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応すると共に非晶質ポリエステル樹脂とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー等を反応系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
【0048】
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
【0049】
(iii) 非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
【0050】
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した非晶質ポリエステル樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する際には、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
【0051】
上記(i)~(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
【0052】
複合樹脂におけるスチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂の質量比(スチレン系樹脂/非晶質ポリエステル樹脂)は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは7/93以上、さらに好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに好ましくは30/70以下、さらに好ましくは25/75以下である。なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂の質量は、用いられるポリエステル樹脂の原料モノマーと両反応性モノマーの合計量である。また、スチレン系樹脂の量は、スチレン系樹脂の原料モノマーと重合開始剤の合計量である。
【0053】
非晶質ポリエステル樹脂又は非晶質複合樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0054】
非晶質ポリエステル樹脂又は非晶質複合樹脂のガラス転移温度は、耐久性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
【0055】
非晶質ポリエステル樹脂又は非晶質複合樹脂の酸価は、耐久性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、さらに好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
【0056】
結晶性ポリエステル樹脂としては、脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
【0057】
脂肪族ジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられ、特に複合樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、α,ω-直鎖アルカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールから選ばれた1種又は2種がより好ましく、1,10-デカンジオールがさらに好ましい。
【0058】
結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分に含まれる脂肪族ジオールの炭素数は、耐熱保存性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
【0059】
脂肪族ジオールの含有量は、樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
【0060】
アルコール成分には、脂肪族ジオール以外の多価アルコールが含有されていてもよく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,4-ソルビタン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
【0061】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、炭素数が1以上30以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸等が挙げられ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、セバシン酸及びドデカン二酸から選ばれた1種又は2種が好ましく、セバシン酸がより好ましい。なお、ジカルボン酸系化合物とは、ジカルボン酸、その無水物及びその炭素数が1以上3以下のアルキルエステルを指すが、これらの中では、ジカルボン酸が好ましい。また、後述の脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数とは、ジカルボン酸部分を含む炭素数であり、アルキルエステル部は含めない。
【0062】
カルボン酸成分に含まれる脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下であり、10が特に好ましい。
【0063】
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
【0064】
カルボン酸成分には、脂肪族ジカルボン酸系化合物以外の多価カルボン酸系化合物が含有されていてもよく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0065】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0066】
結晶性ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、複合樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.85以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーの重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上230℃以下の温度で行うことができる。
【0068】
結晶性複合樹脂としては、前記結晶性ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂が好ましい。
【0069】
スチレン系樹脂の原料モノマーについては、非晶質複合樹脂と同様の原料モノマーが挙げられる。
【0070】
両反応性モノマーや結晶性複合樹脂の製造方法についても、非晶質複合樹脂と同様である。
【0071】
結晶性ポリエステル樹脂又は結晶性複合樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは85℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
【0072】
結晶性ポリエステル樹脂又は結晶性複合樹脂の融点は、低温定着性の観点から、好ましくは115℃、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは105℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下であり、耐久性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上である。
【0073】
結晶性樹脂を含む場合の、非晶質樹脂と結晶性樹脂の質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)は、耐久性の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは75/25以上、さらに好ましくは80/20以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは97/3以下、より好ましくは95/5以下である。
【0074】
結着樹脂の含有量は、トナー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0075】
本発明のトナーには、結着樹脂及びメタ珪酸アルミン酸マグネシウム以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が用いられていてもよい。
【0076】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0077】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0078】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0079】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0080】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0081】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0082】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0083】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0084】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0085】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂及びメタ珪酸アルミン酸マグネシウム、さらに必要に応じて、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0086】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0087】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0088】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0089】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0090】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0091】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができるが、非磁性一成分現像用トナーとして用いることにより、細線再現性の効果をより顕著に発揮することができる。
【実施例
【0092】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0093】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0094】
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
【0095】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0096】
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0097】
〔メタ珪酸アルミン酸マグネシウムの個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から100個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
【0098】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、DSC Q20)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し、そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最大ピーク温度を離型剤の融点とする。
【0099】
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
【0100】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0101】
非晶質樹脂の製造例1
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0102】
非晶質樹脂の製造例2
表1に示すトリメリット酸以外の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて12時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。
その後、160℃に降温し、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂の原料モノマーの除去を行った。
さらに、210℃にて、無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A2)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
結晶性樹脂の製造例1
表2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から200℃まで10時間かけて昇温を行い、200℃で8kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1、C2)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
実施例1~9及び比較例1、2
表4に示す結着樹脂及び無機粒子と、荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリヱント化学工業(株)製)0.5質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:3))4.0質量部、及び離型剤「WEP-9」(日油(株)製、エステルワックス、融点:72℃)2.5質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0107】
同方向回転二軸押出機PCM-30((株)池貝製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm2)を使用した。運転条件は、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)、混合物供給速度 10kg/h(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/h・cm2)であった。
【0108】
得られた樹脂混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン(株)製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、DS2型気流分級機(衝突板式、日本ニューマチック工業(株)製)を用いて体積中位粒径が7.0μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕を行った。得られた微粉砕物を、DSX2型気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて体積中位粒径が7.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、トナー粒子を得た。
【0109】
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:DMDS、個数平均粒径:16nm)0.5質量部、疎水性シリカ「RY-50」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、個数平均粒径:40nm)1.0質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)にて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0110】
実施例及び比較例で使用した無機粒子の詳細を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
試験例〔細線再現性〕
非磁性一成分現像装置「COREFIDO C530dn」(沖データ(株)製)にトナーを実装し、40℃、湿度85%の環境下で、5日間保管した。保管後に25℃、湿度50%の環境下で、2dot/3space/横線パターンを1枚印字し、2dotラインの再現性を目視で確認して、以下の評価基準に従って、細線再現性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:2dotライン(1本/cm)の途切れが8個以下である。
B:2dotライン(1本/cm)に9~16個の途切れが存在する。
C:2dotライン(1本/cm)に17~24個の途切れが存在する。
D:2dotライン(1本/cm)に25個以上の途切れが存在する。
【0113】
【表4】
【0114】
以上の結果より、無機粒子を使用していない比較例1及び無機粒子としてアルミナを使用した比較例2と対比して、実施例1~9のトナーは、細線再現性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の電子写真用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。