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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】デミスタユニット
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20231201BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20231201BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20231201BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20231201BHJP
【FI】
F02M26/35 D
B01D45/08 Z
F02M26/06
F02M26/50 321
F02M26/35 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019216792
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085392
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔也
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144431(JP,A)
【文献】特開2015-165103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0368308(US,A1)
【文献】特開2004-197624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00 - 26/74
B01D 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジンのエンジン本体から排出された排ガスの一部であるEGRガスをスクラバ水で洗浄するスクラバユニットと通じるデミスタ入口部と、洗浄後の前記EGRガスを前記エンジン本体側へ流出させるためのデミスタ出口部とを有し、前記スクラバユニットから前記デミスタ入口部を介して流入した気液混合流体を洗浄後の前記EGRガスと前記スクラバ水とに分離するための流路が内部に形成されるデミスタ箱と、
前記気液混合流体のうち洗浄後の前記EGRガスを通過させるとともに前記スクラバ水を捕捉して除去するように板状に構成され、前記流路の一部をなすように前記デミスタ箱の内部に配置される水分除去部と、
前記水分除去部よりも前記流路の上流側に位置するように前記デミスタ箱の内部に配置され、前記気液混合流体に抵抗を与えて前記気液混合流体を分散させるとともに、前記気液混合流体の流れを前記水分除去部へ向かう方向の流れに整流する整流板と、
を備え
前記整流板は、前記水分除去部よりも前記流路の上流側であって前記水分除去部の面直方向に位置する、
ことを特徴とするデミスタユニット。
【請求項2】
前記デミスタ箱の天井部には、前記デミスタ出口部が設けられ、
前記デミスタ箱の底部には、前記水分除去部によって除去された前記スクラバ水を排水するための排水口が設けられ、
前記水分除去部は、前記デミスタ箱の底部と天井部との対向方向に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載のデミスタユニット。
【請求項3】
前記デミスタ箱の天井部は、
前記デミスタ出口部が設けられている第1の天井部と、
前記第1の天井部に比べて低く、前記デミスタ入口部が設けられている第2の天井部と、
によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のデミスタユニット。
【請求項4】
前記整流板は、多孔板または網状板によって構成される、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載のデミスタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスから水分を除去するデミスタユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンの分野においては、舶用ディーゼルエンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減する一手法として、排ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)システム、すなわちEGRシステムが提案されている。一般に、EGRシステムは、舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスの一部(以下、EGRガスという)を水で洗浄するためのスクラバユニットと、洗浄後のEGRガスから水分を除去するためのデミスタユニットとを備えている。
【0003】
スクラバユニットは、EGRガスに対して水を噴射し、これにより、EGRガス中の硫黄酸化物(SOx)や煤塵等の微粒子(PM)といった異物を除去して、EGRガスを洗浄する。スクラバユニットでEGRガスの洗浄に使用される水(以下、スクラバ水という)は、EGRガスを洗浄すべくスクラバユニットの管内に噴射された後、ミスト状のまま、洗浄後のEGRガスとともにスクラバユニットからデミスタユニットへ流れ込む。一方、デミスタユニットは、洗浄後のEGRガスとスクラバ水等の水分とを分離するための流路が内部に形成されたデミスタ箱を備えている(例えば特許文献1参照)。デミスタユニットでは、スクラバユニットによる洗浄後のEGRガスおよびスクラバ水が、デミスタ箱内に流入し、このデミスタ箱内の流路に沿って流れる。これにより、洗浄後のEGRガスからスクラバ水が分離除去される。
【0004】
上記のような洗浄後のEGRガスは、スクラバ水の除去後、デミスタ箱から流出して外部からの空気(新気)と混合し、燃焼用ガスとして舶用ディーゼルエンジンへ再循環する。この結果、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室内の燃焼時の酸素濃度が低下することから、燃料の燃焼によるNOxの生成が抑制され、排ガス中のNOxの含有量(すなわちNOxの排出量)が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-144431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、デミスタ箱の外壁部には、スクラバユニットの管とデミスタ箱の内部とを連通させる流入口が設けられている。デミスタ箱内の流路には、EGRガスを通過させることによって当該EGRガスから水分を除去するためのエレメント(例えば特許文献1に記載のデミスタ本体)が設けられている。当該エレメントの水分除去能力は、通過させるEGRガスの流速が過度に速い場合に低下することから、デミスタ箱内では、EGRガスがデミスタ箱の流入口からエレメントに至るまでに、当該EGRガスの流速を十分低下させる必要がある。このために、従来、デミスタ箱内には、流入口や内壁面と対向する板等の隔壁が設けられ、これにより、EGRガスを屈曲または迂回させる各種流路を形成して、デミスタ箱の流入口からエレメントに至るまでのEGRガスの流路長が長くなっている。EGRガスの流速は、このようなデミスタ箱内の流路に沿って流通する過程で十分に低下し得る。
【0007】
しかしながら、上述したようにデミスタ箱内にEGRガスの屈曲または迂回の流路を形成する場合、デミスタ箱内のエレメントよりも上流側の空間を複数の流路に区画しなければならず、この結果、デミスタ箱の内部構造が複雑化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、EGRガスから水分を除去する能力を確保しながら、デミスタ箱の内部構造を簡易に構成することができるデミスタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るデミスタユニットは、舶用ディーゼルエンジンのエンジン本体から排出された排ガスの一部であるEGRガスをスクラバ水で洗浄するスクラバユニットと通じるデミスタ入口部と、洗浄後の前記EGRガスを前記エンジン本体側へ流出させるためのデミスタ出口部とを有し、前記スクラバユニットから前記デミスタ入口部を介して流入した気液混合流体を洗浄後の前記EGRガスと前記スクラバ水とに分離するための流路が内部に形成されるデミスタ箱と、前記気液混合流体のうち洗浄後の前記EGRガスを通過させるとともに前記スクラバ水を捕捉して除去するように板状に構成され、前記流路の一部をなすように前記デミスタ箱の内部に配置される水分除去部と、前記水分除去部よりも前記流路の上流側に位置するように前記デミスタ箱の内部に配置され、前記気液混合流体に抵抗を与えて前記気液混合流体を分散させるとともに、前記気液混合流体の流れを前記水分除去部へ向かう方向の流れに整流する整流板と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るデミスタユニットは、上記の発明において、前記デミスタ箱の天井部には、前記デミスタ出口部が設けられ、前記デミスタ箱の底部には、前記水分除去部によって除去された前記スクラバ水を排水するための排水口が設けられ、前記水分除去部は、前記デミスタ箱の底部と天井部との対向方向に対して傾斜している、ことを特徴とする。
【0011】
また、上記の発明において、本発明に係るデミスタユニットの前記整流板は、前記水分除去部よりも前記流路の上流側であって前記水分除去部の面直方向に位置する、ことを特徴とする。
【0012】
また、上記の発明において、本発明に係るデミスタユニットの前記デミスタ箱の天井部は、前記デミスタ出口部が設けられている第1の天井部と、前記第1の天井部に比べて低く、前記デミスタ入口部が設けられている第2の天井部と、によって構成されることを特徴とする。
【0013】
また、上記の発明において、本発明に係るデミスタユニットの前記整流板は、多孔板または網状板によって構成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、EGRガスから水分を除去する能力を確保しながら、デミスタ箱の内部構造を簡易に構成することが可能なデミスタユニットを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットが適用された舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットが適用されたEGRシステムの一構成例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットのデミスタ箱の一構成例を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットの内部構造の一構成例を模式的に示す側視図である。
図5図5は、本発明の実施形態1におけるデミスタ箱内の気液混合流体の流れを説明するための模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態2に係るデミスタユニットの一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係るデミスタユニットの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0017】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンについて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットが適用された舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。図1に示すように、この舶用ディーゼルエンジン11は、エンジン本体1と、エンジン本体1に対する燃焼用ガスの過給を行う過給機7と、過給機7による圧縮後の燃焼用ガスを冷却する冷却器10と、エンジン本体1に対する排ガスの再循環を行うEGRシステム15とを備える。また、舶用ディーゼルエンジン11は、燃焼用ガスとして外部から空気を取り込むための吸気部8と、エンジン本体1からの排ガスを船舶の煙道12へ排出する排ガス出口管としての異形管9とを備える。EGRシステム15は、スクラバユニット16と、本発明の実施形態1に係るデミスタユニット17と、EGRブロア18と、EGR入口管19と、EGR出口管20とを備える。
【0018】
エンジン本体1は、図示しないが、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラを駆動回転させる推進用の機関(主機関)である。このエンジン本体1は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド式ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンである。具体的には、図1に示すように、エンジン本体1は、エンジン本体1の高さ方向D1の下側に位置する台板2と、台板2上に設けられる架構3と、架構3上に設けられるシリンダジャケット4とを備える。これらの台板2と架構3とシリンダジャケット4とは、高さ方向D1に延在する複数のタイボルト(図示せず)およびナット(図示せず)等の連結部材により、一体に締結されて固定されている。
【0019】
台板2は、クランクケースを構成する。図示しないが、台板2には、推進用プロペラを駆動回転させるプロペラ軸およびクランクシャフト等が設けられている。クランクシャフトは、軸受によって回転自在に支持されている。このクランクシャフトには、クランクを介して連接棒(図示せず)の下端部が回動自在に連結されている。
【0020】
架構3には、上述した連接棒と、ピストン棒(図示せず)と、これらピストン棒と連接棒とを回動自在に連結するクロスヘッド(図示せず)とが設けられている。詳細には、ピストン棒の下端部および連接棒の上端部が、クロスヘッドに接続されている。クロスヘッドは、架構3に固定された一対のガイド板(図示せず)の間に配置され、この一対のガイド板に沿って摺動自在に支持されている。
【0021】
シリンダジャケット4には、図示しないが、シリンダジャケット4の内部から上部に延在するようにシリンダライナが設けられおり、このシリンダライナの上端部にはシリンダカバーが設けられている。これらのシリンダライナおよびシリンダカバー等によって、エンジン本体1のシリンダが形成される。本実施形態1において、エンジン本体1には、複数のシリンダが形成されている。これら複数のシリンダの各々には、燃料噴射ポンプ(図示せず)から燃料が供給される。一方、シリンダの内部空間には、ピストン(図示せず)がシリンダ内壁に沿って往復動自在に設けられている。このピストンの下端部には、上述したピストン棒の上端部が取り付けられている。
【0022】
また、エンジン本体1は、掃気トランク5および排気マニホールド6を備える。掃気トランク5は、図1に示すように、シリンダジャケット4に設けられ、エンジン本体1の掃気ポート(図示せず)を介して各シリンダ内の燃焼室と連通している。掃気トランク5は、配管等を通じて燃焼用ガスを受け入れ、受け入れた燃焼用ガスを各シリンダ内の燃焼室へ送り込む。排気マニホールド6は、図1に示すように、シリンダジャケット4の上方に設けられ、エンジン本体1の排気ポート(図示せず)を介して各シリンダ内の燃焼室と連通している。排気マニホールド6は、燃料の燃焼によって発生した排ガスを各シリンダ内の燃焼室から受け入れて一時貯留し、これにより、この排ガスの動圧を静圧に変える。
【0023】
上述したような構成を有するエンジン本体1は、各シリンダ内の燃焼室において、掃気トランク5から送り込まれた燃焼用ガスとともに燃料を燃焼させることにより、ピストンを往復運動させる。エンジン本体1は、この往復運動をプロペラ軸またはクランクシャフト等の出力軸の回転運動に変換することにより、この出力軸から船舶の推進力を出力する。この際、エンジン本体1は、各シリンダ内の吸排気の流れを下方から上方への一方向として、排気の残留を無くすようにしている。具体的には、掃気トランク5から各シリンダ内の燃焼室へ燃焼用ガスが給気され、燃焼後の排ガスが各シリンダ内の燃焼室から排気マニホールド6へ排出される。
【0024】
なお、本実施形態1において、エンジン本体1の高さ方向D1は、上下方向であり、例えば、ピストンの往復動の方向に対して平行である。エンジン本体1の軸方向D2は、図1に示す出力軸方向C1に対して平行である。出力軸方向C1は、エンジン本体1の出力軸の長手方向である。エンジン本体1の幅方向D3は、高さ方向D1および軸方向D2に対して垂直な方向である。すなわち、これらの高さ方向D1、軸方向D2および幅方向D3は、互いに垂直な方向である。なお、高さ方向D1、軸方向D2および幅方向D3は、エンジン本体1については勿論、エンジン本体1を構成する各構成部、エンジン本体1に設けられる過給機7およびEGRシステム15についても同様である。また、単に「排ガス」といえば、エンジン本体1から排出された排ガスを意味する。
【0025】
過給機7は、エンジン本体1からの排ガスを利用して、エンジン本体1へ給気される燃焼用ガスを加圧圧縮するものである。図1に示すように、過給機7は、タービン部7aと、コンプレッサ部7bと、排ガス部7cとを備え、エンジン本体1の上段部に設けられている。タービン部7aは、タービン(羽根車)と、このタービンを回転自在に収容するケーシングとを備え、エンジン本体1からの排ガスを利用してタービンが回転するように構成される。具体的には、タービン部7aのケーシングのガス入口部は、配管を介して排気マニホールド6と連通している。コンプレッサ部7bは、羽根車と、この羽根車を回転自在に収容するケーシングとを備える。図示しないが、タービン部7aのタービンとコンプレッサ部7bの羽根車とは、回転軸によって互いに連結され、この回転軸を中心軸にして一体に回転するように構成されている。排ガス部7cは、タービン部7aのケーシングのガス出口部に設けられる。排ガス部7cのガス出口部は、煙道12に通じる異形管9と連通している。排ガス部7cは、タービン部7aから流出した排ガスを異形管9へ流し込む。
【0026】
また、図1に示すように、コンプレッサ部7bのケーシングのガス入口部には、外部からの新たな空気(新気ともいう)等のガスを吸入する吸気部8が設けられている。吸気部8は、サイレンサおよびフィルタ等によって構成される。この吸気部8には、EGR出口管20が接続されている。これにより、コンプレッサ部7bは、吸気部8を介して外部からの空気とEGR出口管20からのEGRガスとが給気され得るように構成されている。コンプレッサ部7bは、上述したタービン部7aのタービンの回転に伴い回転して、燃焼用ガスを加圧圧縮する。なお、この燃焼用ガスは、EGRシステム15が運転中であれば、新気とEGRガスとの混合ガスであり、EGRシステム15が停止中であれば、新気だけとなる。コンプレッサ部7bによる加圧圧縮後の燃焼用ガスは、配管等を通じて冷却器10へ給気される。
【0027】
異形管9は、船舶の煙道12と連通するようにエンジン本体1に設けられている排ガス出口管の一例である。図1に示すように、異形管9は、互いに開口部の形状が異なる排ガス部7cと煙道12とを連通させ、エンジン本体1から排ガス部7cを介して排出された排ガスを煙道12へ送り込む。煙道12は、造船時に船舶の煙突と連通するように設けられる配管(すなわち船舶側の配管)であり、船舶に搭載された舶用ディーゼルエンジン11の異形管9と接続される。また、図1に示すように、異形管9の中途部には、EGR入口管19が接続されている。これにより、異形管9を介して煙道12へ流れ込む排ガスのうち一部が、EGRシステム15の運転中に異形管9からEGR入口管19へ流れ込むようになっている。
【0028】
冷却器10は、過給機7による加圧圧縮後の燃焼用ガスを冷却するためのものである。図1に示すように、冷却器10は、配管等を介してコンプレッサ部7bと連通している。また、冷却器10は、配管等を介して掃気トランク5と連通している。冷却器10は、加圧圧縮後の燃焼用ガスをコンプレッサ部7bから配管等を通じて受け入れ、受け入れた燃焼用ガスを、例えば冷却水との熱交換等によって冷却する。冷却器10による冷却後の燃焼用ガスは、配管等を介してエンジン本体1の掃気トランク5へ給気される。
【0029】
EGRシステム15は、舶用ディーゼルエンジン11のエンジン本体1から排出された排ガスの一部であるEGRガスを、燃焼用ガスとしてエンジン本体1へ再循環させるシステムである。図1に示すように、EGRシステム15は、スクラバユニット16と、デミスタユニット17と、EGRブロア18と、EGR入口管19と、EGR出口管20とを備え、エンジン本体1に設けられている。また、EGR入口管19にはEGR入口弁19aが設けられ、EGR出口管20にはEGR出口弁20aが設けられている。
【0030】
図2は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットが適用されたEGRシステムの一構成例を模式的に示す斜視図である。以下、図1、2を参照しつつ、このEGRシステム15について詳細に説明する。
【0031】
スクラバユニット16は、EGRガスを燃焼用ガスとして使用し得るように洗浄するものである。詳細には、図2に示すように、スクラバユニット16は、EGRガスを上方から受け入れて下方へ導くスクラバ管の一例として、ベンチュリ管116を有する。ベンチュリ管116は、高さ方向D1に延在するように構成され、上端部に流入口を有し且つ下端部に流出口を有する。ベンチュリ管116の流入口は、EGR入口管19の出口部と接合される。ベンチュリ管116の流出口は、デミスタユニット17の入口部(図2に示すデミスタ入口部117i)と接合される。また、スクラバユニット16は、図示しないが、ベンチュリ管116の管上部116aに水噴射部を備える。この水噴射部は、ベンチュリ管116内のEGRガスを洗浄すべく、当該EGRガスに対してスクラバ水を噴射する。
【0032】
このような構成を有するスクラバユニット16は、EGR入口管19から流入口を通ってベンチュリ管116に流入したEGRガスをスクラバ水で洗浄するとともに、洗浄後のEGRガスとスクラバ水との気液混合流体をベンチュリ管116から流下させる。スクラバユニット16は、EGR入口管19からベンチュリ管116にEGRガスが流入する都度、上述したスクラバ水の噴射によるEGRガスの洗浄を繰り返す。
【0033】
デミスタユニット17は、スクラバ管を通じて流入した気液混合流体を、スクラバユニット16による洗浄後のEGRガスとスクラバ水とに分離するものである。図2に示すように、デミスタユニット17は、洗浄後のEGRガスからスクラバ水を分離、除去するための内部構造を有するデミスタ箱17bを備える。また、デミスタ箱17bには、図2に示すように、スクラバユニット16と通じるデミスタ入口部117iと、EGRブロア18に通じるデミスタ出口部117jとが設けられている。なお、デミスタユニット17の内部構造等の構成については、後述で詳細に説明する。
【0034】
EGRブロア18は、エンジン本体1に対するEGRガスの再循環の流れを発生させるものである。本実施形態1において、EGRブロア18は、図2に示すように、デミスタ出口部117jを介してデミスタ箱17bと連通するように、デミスタ箱17bの天井部上に設けられる。また、図2に示すように、EGRブロア18の出口部には、EGR出口管20が接合されている。EGRブロア18は、デミスタ箱17bの内部からEGRガスを吸入し、吸入したEGRガスをEGR出口管20へ送り込む。
【0035】
EGR入口管19は、エンジン本体1から排出された排ガスの一部をEGRガスとしてスクラバユニット16へ導くための配管である。図2に示すように、EGR入口管19の入口端は、異形管9の中途部と接合されている。EGR入口管19の出口端は、スクラバユニット16のベンチュリ管116の流入口と接合されている。上述したように、異形管9は、船舶の煙道12(図1参照)と連通するようにエンジン本体1に設けられている。EGR入口管19は、この異形管9から分岐し、煙道12を介さずにベンチュリ管116の流入口と連通するように配管されている。舶用ディーゼルエンジン11の小型化という観点から、EGR入口管19は、図1に示すように、排気マニホールド6の上端部に比べて高さ方向D1の下側に配管されることが好ましい。
【0036】
また、EGR入口管19には、図1、2に示すように、EGR入口弁19aが設けられている。EGR入口弁19aは、駆動部の動作によって開閉する駆動弁によって構成される。EGR入口弁19aは、EGRシステム15の運転時に開状態に制御される。この場合、EGR入口管19は、EGRブロア18の吸引作用により、異形管9の内部から排ガスの一部をEGRガスとしてベンチュリ管116へ流通させる。一方、EGR入口弁19aは、EGRシステム15の運転停止時に閉状態に制御される。この場合、EGR入口管19からベンチュリ管116へのEGRガスの流通は停止される。なお、EGR入口弁19aの開閉駆動は、例えば、エンジン本体1の制御部(図示せず)により、エンジン本体1の負荷(エンジン負荷)等に応じて制御される。また、異形管9内の排ガスのうち、EGR入口管19を介してスクラバユニット16へ抽気されない残りの排ガスは、煙道12等を通じて煙突から船外へ排出される。
【0037】
EGR出口管20は、洗浄後のEGRガスを燃焼用ガスとしてエンジン本体1側へ導くための配管である。EGR出口管20の入口端は、EGRブロア18の出口部と接合されている。EGR出口管20の出口端は、図1、2に示すように、吸気部8と接合されている。EGR出口管20は、EGRブロア18と吸気部8とを連通させるように配管されている。
【0038】
また、EGR出口管20には、図1に示すように、EGR出口弁20aが設けられている。EGR出口弁20aは、駆動部の動作によって開閉する駆動弁によって構成される。EGR出口弁20aは、EGRシステム15の運転時に開状態に制御される。この場合、EGR出口管20は、EGRブロア18の圧送作用により、デミスタ箱17b側から吸気部8へ洗浄後のEGRガスを流通させる。吸気部8に流入したEGRガスは、外部から吸気部8へ吸入された空気とともにエンジン本体1の燃焼用ガスとして用いられる。一方、EGR出口弁20aは、EGRシステム15の運転停止時に閉状態に制御される。この場合、EGR出口管20から吸気部8へのEGRガスの流通は停止される。なお、EGR出口弁20aの開閉駆動は、上述したEGR入口弁19aと同様に、エンジン負荷等に応じて制御される。
【0039】
つぎに、本発明の実施形態1に係るデミスタユニット17の構成について詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットのデミスタ箱の一構成例を示す斜視図である。図4は、本発明の実施形態1に係るデミスタユニットの内部構造の一構成例を模式的に示す側視図である。図4には、このデミスタユニット17の内部構造を説明し易くするために、デミスタ箱17bの側壁部の一部を破断させた態様で、デミスタユニット17を軸方向D2から見た図が示されている。
【0040】
図3、4に示すように、デミスタユニット17は、洗浄後のEGRガスからスクラバ水を効率よく分離、除去するためのエレメント17aとデミスタ箱17bと整流板17cとを備える。また、デミスタユニット17は、デミスタ箱17bの天井部にデミスタ入口部117iとデミスタ出口部117jとを備え、デミスタ箱17bの底部117cに排水口117kを備える。また、デミスタユニット17は、デミスタ箱17bの内部に、スクラバ水の飛沫を抑制するための多孔板17dと、エレメント17aを支持するための支持部17eとを備える。
【0041】
エレメント17aは、スクラバユニット16による洗浄後のEGRガスに含まれる水分を除去する水分除去部の一例である。詳細には、エレメント17aは、スクラバユニット16からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入した気液混合流体のうち、洗浄後のEGRガスを通過させるとともにスクラバ水を捕捉して除去するように板状に構成される。例えば図4に示すように、エレメント17aは、EGRガスが通過し得るような複数回屈曲した流路を有する板状体である。エレメント17aは、その厚さ方向の両面のうち、一方の面(受入面)からEGRガスを受け入れ、この受け入れたEGRガスに自身の流路内を通過させながら、当該EGRガスから水分(ミスト状のスクラバ水)を分離し除去する。また、エレメント17aは、他方の面(放出面)から水分除去後のEGRガスを放出する。
【0042】
また、図4に示すように、エレメント17aは、デミスタ箱17b内の流路17fの一部をなすように、デミスタ箱17bの内部に配置される。この際、エレメント17aは、例えば、デミスタ箱17bの軸方向D2に対向する各側壁部117g、117hの内壁面間の全域に亘り、デミスタ箱17b内の流路17fを横切るように配置されている。また、エレメント17aは、図4に示すように、デミスタ箱17bの排水口117kを有する底部117cとデミスタ出口部117jを有する天井部(本実施形態1では第1の天井部117a)との対向方向D4に対して、所定の傾斜角θをなして傾斜している。例えば、エレメント17aは、この対向方向D4に対して、デミスタ箱17bにおけるエンジン本体1(図1参照)側の側壁部117fの方に傾斜角θをなして傾斜している。エレメント17aの傾斜角θは、板状に構成されているエレメント17aの受入面または放出面の面内方向(図4では放出面の面内方向)と対向方向D4とのなす角度である。この対向方向D4は、例えば、デミスタ箱17bの高さ方向D1に平行な方向であり、好ましくは鉛直方向である。エレメント17aは、エレメント17aの水分除去能力の向上およびデミスタ箱17bの小型化という観点から、鉛直方向および水平方向の双方に対して傾斜していることが好ましい。この際、エレメント17aの傾斜角θは、0°より大きく且つ45°以下であることが好ましい。エレメント17aは、デミスタ箱17b内での上述した配置状態が維持されるように、図4に示す支持部17eによって支持される。
【0043】
デミスタ箱17bは、スクラバユニット16による洗浄後のEGRガスからスクラバ水を分離除去するための中空構造体である。詳細には、図3、4に示すように、デミスタ箱17bは、天井部と、底部117cと、これらの天井部と底部117cとを連結する複数の側壁部117d、117e、117f、117g、117hとによって構成される。
【0044】
本実施形態1において、図3、4に示すように、デミスタ箱17bの天井部は、高さ方向D1に段差(高低差)のある第1の天井部117aおよび第2の天井部117bによって構成される。第1の天井部117aは、洗浄後のEGRガスをエンジン本体1側へ流出させるためのデミスタ出口部117jが設けられている天井部である。第2の天井部117bは、第1の天井部117aに比べて低く、スクラバユニット16のスクラバ管(例えば図2に示すベンチュリ管116)と通じるデミスタ入口部117iが設けられている天井部である。デミスタ箱17bの底部117cは、第1の天井部117aおよび第2の天井部117bと対向(例えば高さ方向D1に対向)している。この底部117cには、図4に示すように、エレメント17aによってEGRガスから除去されたスクラバ水を排水するための排水口117kが設けられている。
【0045】
また、本実施形態1において、デミスタ箱17bの第1の天井部117aには、EGRブロア18(図2参照)が設けられている。この際、第1の天井部117aのデミスタ出口部117jにはEGRブロア18の入口部が接合されており、これにより、デミスタ箱17bとEGRブロア18とがデミスタ出口部117jを介して連通する。一方、デミスタ箱17bの第2の天井部117bには、スクラバユニット16のベンチュリ管116(図2参照)が立設されている。この際、第2の天井部117bのデミスタ入口部117iにはベンチュリ管116の流出口が接合されており、これにより、デミスタ箱17bとベンチュリ管116とがデミスタ入口部117iを介して連通する。デミスタ箱17bの底部117cは、例えば高さ方向D1に、ベンチュリ管116の流出口と対向する。
【0046】
一方、図3、4に示すように、デミスタ箱17bの側壁部117dは、第1の天井部117aと第2の天井部117bとを連結する側壁部である。デミスタ箱17bの側壁部117eは、第2の天井部117bと底部117cとを連結する側壁部である。デミスタ箱17bの側壁部117fは、これらの側壁部117d、117eと幅方向D3に対向し、第1の天井部117aと底部117cとを連結する側壁部である。この側壁部117fは、デミスタ箱17bの他の側壁部117d、117e、117g、117hに比べて、図1に示すエンジン本体1側に位置する側壁部であり、例えば、上述した掃気トランク5に取り付けられている。デミスタ箱17bの側壁部117g、117hは、互いに軸方向D2に対向し、第1の天井部117aおよび第2の天井部117bと底部117cとを連結する側壁部である。
【0047】
上述した第1の天井部117aおよび第2の天井部117bと、底部117cと、側壁部117d、117e、117f、117g、117hとによって構成されるデミスタ箱17bは、図3、4に示すように、軸方向D2から見た側面視でL字形状をなしている。
【0048】
また、本実施形態1において、デミスタ箱17bの内部には、図4に示すように、スクラバユニット16(図2参照)からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入した気液混合流体を洗浄後のEGRガスとスクラバ水とに分離するための流路17fが形成される。デミスタ箱17b内の流路17fは、図4に示すように、デミスタ入口部117iからデミスタ箱17bの底部117cに向かって進み、ついで、デミスタ箱17bの底部117c等の内壁面に沿って進み、整流板17cによって整流された後、エレメント17aを通過してデミスタ出口部117jに至るものとなっている。すなわち、この流路17fが形成されるデミスタ箱17bにおいて、底部117cは、スクラバユニット16のベンチュリ管116からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入した気液混合流体を衝突させ、これにより、当該気液混合流体からスクラバ水の大部分を分離するとともに、当該気液混合流体中のEGRガス(洗浄後のEGRガス)の流速を下げる邪魔板として機能する。なお、図4では、デミスタ箱17b内の流路17fを説明し易くするために、一点鎖線によって流路17fが示されているが、実際の流路17fは、デミスタ箱17bの内壁面等によって区画される三次元的な空間(体積)を有している。
【0049】
整流板17cは、デミスタ箱17bの内部における気液混合流体の流れを、洗浄後のEGRガスとスクラバ水との分離に適した流れに整流するものである。詳細には、整流板17cは、厚さ方向に貫通した複数の開口を有する板状体によって構成され、図4に示すように、エレメント17aよりも流路17fの上流側に位置するようにデミスタ箱17bの内部に配置される。整流板17cを構成する板状体としては、例えば、上記開口として複数の貫通孔を有する多孔板、または、上記開口として複数の網目を有する網状板が挙げられる。このような整流板17cは、金属製のものであってもよいし、非金属製のものであってもよい。
【0050】
より詳細には、図4に示すように、整流板17cは、エレメント17aよりも流路17fの上流側であって板状のエレメント17aの面直方向D5に位置するように、デミスタ箱17bの内部に配置される。以下、デミスタ箱17bの内部領域のうち、エレメント17aよりも流路17fの上流側であってエレメント17aの面直方向D5に位置する領域は、特定内部領域と称する。例えば、図4中の破線で示されるように、デミスタ箱17bの特定内部領域17gは、エレメント17aよりも流路17fの上流側に向かって面直方向D5にエレメント17aが投影されるデミスタ箱17b内の空間および内壁面を含む領域である。本実施形態1では、図4に示すように、整流板17cは、デミスタ箱17bの内壁面のうち特定内部領域17gに含まれる部位に設けられ、デミスタ箱17bの軸方向D2の全域に亘り、この内壁面の部位からエレメント17aに向かって延在している。例えば、整流板17cは、エレメント17aの面直方向(図4に示す面直方向D5の負側の方向)に延在することが好ましい。
【0051】
このような整流板17cの位置およびエレメント17a側への延在長は、デミスタ入口部117iからデミスタ箱17bに流入する気液混合流体中のEGRガスの流速を加味し、整流板17cの開口率に対応して設定することができる。例えば、整流板17cの位置は、デミスタ箱17bの特定内部領域17gにおいて、整流板17cの開口率が大きいほど高さ方向D1の下側であることが好ましく、整流板17cの開口率が小さいほど高さ方向D1の上側であることが好ましい。また、整流板17cの延在長は、整流板17cの開口率が大きいほど長いことが好ましく、整流板17cの開口率が小さいほど短いことが好ましい。なお、整流板17cの位置および延在長の設定において加味されるEGRガスの流速としては、EGRガスがとり得る最大の流速、具体的には、上述したエンジン本体1(図1参照)のエンジン負荷が最大(例えば100%)となる時のEGRガスの流速が挙げられる。
【0052】
上述したように構成される整流板17cは、デミスタ入口部117i側からデミスタ箱17b内の流路17fに沿って流れる気液混合流体に抵抗を与えて、この気液混合流体を分散させるとともに、この気液混合流体の流れをエレメント17aへ向かう流れに整流する。このようにして、整流板17cは、デミスタ入口部117i側からの気液混合流体の流速を下げながら、この気液混合流体がエレメント17aの受入面の全域に亘って均一に流れるように、この気液混合流体をエレメント17a側へ案内する。
【0053】
多孔板17dは、デミスタ箱17bの底部117cに溜まったスクラバ水の飛沫を抑制するためのものである。図4に示すように、多孔板17dは、底部117cと所定の間隔をあけて対向するように、デミスタ箱17bの内部に配置される。本実施形態1において、多孔板17dは、例えば図4に示すように、デミスタ箱17bの側壁部117eの内壁面に取り付けられ、軸方向D2の全域に亘り、デミスタ箱17bの互いに対向する第2の天井部117bと底部117cとの間に介在するように、デミスタ箱17bの内部に設けられる。多孔板17dは、デミスタ入口部117iからデミスタ箱17bに流入した気液混合流体を、その流速を下げながら通過させる。このようにして、多孔板17dは、デミスタ箱17bの底部117c上に溜まっているスクラバ水と衝突する当該気液混合流体の流れを弱め、これにより、当該気液混合流体との衝突による底部117c上のスクラバ水の飛沫を抑制する。この結果、飛沫したスクラバ水が当該気液混合流体中のEGRガスとともにエレメント17a側へ流れる事態を防止することができる。
【0054】
支持部17eは、デミスタ箱17bの内部においてエレメント17aを支持するものである。詳細には、図4に示すように、支持部17eは、デミスタ箱17bの底部117cと天井部(本実施形態1では第1の天井部117a)との対向方向D4に対して上述の傾斜角θをなして傾斜した態様で、デミスタ箱17bの内壁面に取り付けられる。支持部17eは、エレメント17aが上述した配置状態(例えば図4に示す配置状態)を維持するように、エレメント17aを支持(下支え)する。支持部17eは、エレメント17aを支持する部分が枠状体等によって構成されており、この部分の開口を介してエレメント17aの受入面を露出させている。
【0055】
例えば、支持部17eは、デミスタ箱17bの側壁部のうち、デミスタ出口部117j側の側壁部の方にエレメント17aの受入面が向くように、エレメント17aを支持する。デミスタ箱17bのデミスタ出口部117j側の側壁部は、デミスタ箱17bのデミスタ入口部117i側の側壁部と対向する側壁部である。具体的には、本実施形態1において、デミスタ箱17bのデミスタ入口部117i側の側壁部は、図4に示すように、デミスタ入口部117iが設けられている第2の天井部117bと底部117cとを連結する側壁部117eである。デミスタ箱17bのデミスタ出口部117j側の側壁部は、このデミスタ入口部117i側の側壁部117eと対向する側壁部117fである。この側壁部117fは、上述したように、エンジン本体1側の側壁部であり、図4に示すように、デミスタ出口部117jが設けられている第1の天井部117aと底部117cとを連結するものである。
【0056】
排水口117kは、デミスタ箱17bの内部に溜まったスクラバ水をデミスタ箱17bから排出するためのものである。図4に示すように、排水口117kは、デミスタ箱17bの底部117c(例えばエレメント17aの下端部の下方の部位)に設けられている。デミスタ箱17bの内部において、洗浄後のEGRガスとともにデミスタ入口部117iから流入したスクラバ水は、デミスタ箱17bの底部117cとの衝突やエレメント17aによって当該EGRガスから分離され、その後、デミスタ箱17bの底部117cに溜まる。底部117cに溜まったスクラバ水は、排水口117kからデミスタ箱17bの外部に排出され、この排水口117kと配管等を介して連通するタンク等の設備(図示せず)に回収される。
【0057】
つぎに、図3を参照しつつ、デミスタ箱17bにおけるデミスタ入口部117iおよびデミスタ出口部117jの配置について説明する。本実施形態1において、デミスタ入口部117iおよびデミスタ出口部117jは、例えば図3に示すように、デミスタ箱17bの軸方向D2および幅方向D3について互い違いに配置されている。具体的には、図3に示すように、デミスタ入口部117iは、デミスタ箱17bの軸方向D2の中心位置CPを境にして、デミスタ箱17bの軸方向D2に対向する各側壁部117g、117hのうち、上述した異形管9(図1、2参照)に近い側壁部117gの方に片寄って配置されている。一方、デミスタ出口部117jは、上記中心位置CPを境にして、上記デミスタ箱17bの各側壁部117g、117hのうち、上述した異形管9から遠い側壁部117hの方に片寄って配置されている。
【0058】
上述したようにデミスタ入口部117iおよびデミスタ出口部117jを互い違いに配置することにより、デミスタ入口部117iからデミスタ出口部117jに至るデミスタ箱17b内の流路17fをより長くすることができる。この結果、エレメント17aを通過する際のEGRガスの流速を低くし易くなるから、エレメント17aによるEGRガスからの水分除去の効率化に貢献することができる。また、デミスタ入口部117iを異形管9に近い方へ片寄って配置することにより、デミスタ入口部117iの上に立設されるベンチュリ管116を異形管9に近付けることができる。この結果、異形管9とベンチュリ管116とを連通させるEGR入口管19の長さをより短くできるから、EGR入口管19の圧損を低減することができる。また、デミスタ出口部117jを異形管9から遠い方へ片寄って配置することにより、デミスタ出口部117jの上に設けられるEGRブロア18と上述した吸気部8との間隔をより長くすることができる。この結果、吸気部8とEGRブロア18とを連通させるEGR出口管20の中途部にEGR出口弁20a等の必要な設備を設けるための領域を容易に確保することができる。
【0059】
つぎに、図4を参照しつつ、デミスタ箱17bにおける第1の天井部117aおよび第2の天井部117bの各高さについて説明する。本実施形態1において、デミスタ箱17bの底部117cに対する第1の天井部117aおよび第2の天井部117bの各高さH1、H2は、例えば、デミスタ箱17b内に配置されるエレメント17aの大きさ、位置および傾きと、デミスタ箱17b内の流路17fとによって設定することができる。
【0060】
具体的には、デミスタ箱17bの内部に配置されるエレメント17aの水分除去能力は、通過させるEGRガスの流速が過度に速い場合に低下する。すなわち、エレメント17aによってEGRガスから水分を効率よく除去するためには、デミスタ箱17b内の流路17fに沿って流れるEGRガスの流速が、エレメント17aを通過する際に適度に下がっていることが好ましい。このようにEGRガスの流速を低下させるという観点から、デミスタ箱17b内の流路17fは、デミスタ入口部117i側からデミスタ出口部117j側へ向かうに伴って流路面積が徐々(連続的または段階的)に大きくなることが好ましい。なお、上記流路面積は、デミスタ箱17b内の流路17fを流れる流体の通過面積である。また、デミスタ箱17bの底部117cが上述した邪魔板として効率よく機能するためには、デミスタ入口部117iは、デミスタ箱17bの底部117cに近い方が好ましい。これらの事情を加味すると、第2の天井部117bの高さH2は、第1の天井部117aの高さH1の半分以下であることが好ましく、エレメント17aの下端部の高さH3(図4参照)以上であることが好ましい。
【0061】
つぎに、デミスタ箱17bの内部における洗浄後のEGRガスとスクラバ水との気液混合流体の流れについて説明する。図5は、本発明の実施形態1におけるデミスタ箱内の気液混合流体の流れを説明するための模式図である。本実施形態1において、上述したデミスタ箱17b内の流路17f(図4参照)は、図5に示す上流側流路G1と中間流路G2と整流流路G3と下流側流路G4とによって構成される。これらの上流側流路G1、中間流路G2、整流流路G3および下流側流路G4は、デミスタ箱17bの内部において、デミスタ入口部117iからデミスタ出口部117jまでの全域に亘って互いに連通している。なお、図5において、気液混合流体またはEGRガスの流れは、実線矢印によって模式的に示される。
【0062】
図5に示すように、スクラバユニット16による洗浄後のEGRガスとスクラバ水との気液混合流体は、ベンチュリ管116からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入し、まず、デミスタ箱17b内の上流側流路G1に沿って流れる。本実施形態1において、上流側流路G1は、図5に示すように、デミスタ箱17bの第2の天井部117bと底部117cと側壁部117e、117g、117hとによって形成される。上流側流路G1は、第2の天井部117bに設けられたデミスタ入口部117iを介してベンチュリ管116と通じている。また、上流側流路G1の内部には、図5に示すように、スクラバ水位の飛沫を抑制するための多孔板17dが設けられている。
【0063】
上流側流路G1に流入した気液混合流体は、デミスタ入口部117iからデミスタ箱17bの底部117cに向かって進み、多孔板17dを通過して底部117cと衝突する。この際、気液混合流体中のスクラバ水の一部は、この底部117cとの衝突により、ミストから液滴へ状態を変化させ、この気液混合流体から分離して底部117c上に溜まる。
底部117cに溜まったスクラバ水は、排水口117kを介してデミスタ箱17bの外部へ排出される。一方、上記のように一部のスクラバ水が除去された気液混合流体は、底部117cとの衝突により、デミスタ入口部117iと底部117cとの対向方向から底部117cに沿った方向に進行方向を変える。続いて、この気液混合流体は、底部117cに沿って広がりながら、デミスタ入口部117iおよび側壁部117eから徐々に離間するように上流側流路G1内を進み、中間流路G2に流入する。
【0064】
中間流路G2は、上流側流路G1と整流流路G3との間の流路である。例えば、図5に示すように、中間流路G2は、デミスタ箱17bの内部空間のうち、上流側流路G1の流出口からエレメント17aの下方を通って整流板17cに至るまでの領域に、デミスタ箱17bの底部117cと側壁部117g、117hとによって形成される。なお、上流側流路G1の流出口は、図5に示すように、デミスタ箱17bの側壁部117dの下端と底部117cとの間に形成される隙間(開口部)である。上流側流路G1の流出口から中間流路G2に流入した気液混合流体は、図5に示すように、デミスタ箱17bの底部117cおよび側壁部117g、117hに沿って、整流板17cに向かう方向(図5ではデミスタ箱17bの幅方向D3の正側)に進む。そして、この中間流路G2内の気液混合流体は、整流流路G3に流入して整流板17cに到達する。
【0065】
整流流路G3は、整流板17cによる気液混合流体の整流を行うための流路である。例えば、図5に示すように、整流流路G3は、エレメント17aと、デミスタ箱17bの底部117cおよび側壁部117f、117g、117hと、整流板17cとによって形成される。中間流路G2から整流流路G3に流入した気液混合流体は、図5に示すように、整流板17cに到達する。整流板17cは、整流流路G3に流入した気液混合流体に抵抗を与えて、この気液混合流体をエレメント17aの受入面に亘って分散させるとともに、この気液混合流体の流れをエレメント17aへ向かう流れに整流する。さらに、整流板17cは、エレメント17aに向かって流れる気液混合流体の流速を低下させる。
【0066】
具体的には、図5に示すように、整流板17cに到達した気液混合流体のうち、一部の気液混合流体(以下、第1の気液混合流体という)は、整流板17cの抵抗を受けながら整流板17cの開口を通過する。これにより、第1の気液混合流体は、その流速を低下させるとともに、エレメント17aの受入面に向かって方向転換(例えば旋回)しながら分散して進む。これに並行して、整流板17cに到達した気液混合流体のうち、上記第1の気液混合流体を除く残りの気液混合流体(以下、第2の気液混合流体という)は、整流板17cの抵抗を受けながら、整流板17cの開口を通過せずに整流板17cに沿って流れる。これにより、第2の気液混合流体は、その流速を低下させるとともに、エレメント17aの受入面に向かって方向転換(例えば屈曲)しながら分散して進む。上述したように流速を低下させながら分散した第1の気液混合流体および第2の気液混合流体は、整流流路G3からエレメント17aに到達して下流側流路G4に流入する。
【0067】
下流側流路G4は、気液混合流体からスクラバ水を除去するためのエレメント17aを含む流路であり、図5に示すように、デミスタ箱17bの第1の天井部117aおよび側壁部117d、117f、117g、117hとエレメント17aとによって形成される。下流側流路G4は、第1の天井部117aに設けられたデミスタ出口部117jを介してEGRブロア18と通じている。
【0068】
整流流路G3から下流側流路G4に流入した気液混合流体(本実施形態1では第1の気液混合流体および第2の気液混合流体)は、上述したように分散した状態でエレメント17aの受入面からエレメント17aに流入する。エレメント17aに流入した気液混合流体は、エレメント17a内の流路を通過する。これにより、当該気液混合流体中のスクラバ水がエレメント17aに捕捉され、この結果、当該気液混合流体がEGRガスとスクラバ水とに分離されるとともに、当該スクラバ水が除去される。エレメント17aによって除去されたスクラバ水は、エレメント17aからデミスタ箱17bの底部117cに流下して溜まり、その後、排水口117kを介してデミスタ箱17bの外部に排出される。一方、エレメント17aによってスクラバ水が除去された後のEGRガスは、上述したスクラバユニットによる洗浄後のEGRガスであり、図5に示すように、エレメント17aの放出面から流出する。エレメント17aから流出したEGRガスは、デミスタ箱17bの第1の天井部117aに設けられているデミスタ出口部117jに向かって進み、デミスタ出口部117jを介してEGRブロア18に流入する。
【0069】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係るデミスタユニット17では、スクラバユニット16と通じるデミスタ入口部117iと、洗浄後のEGRガスをエンジン本体1側へ流出させるためのデミスタ出口部117jとを有するデミスタ箱17bの内部に、スクラバユニット16からデミスタ入口部117iを介して流入した気液混合流体を洗浄後のEGRガスとスクラバ水とに分離するための流路17fを形成し、この流路17fの一部をなすように、上記気液混合流体中のEGRガスからスクラバ水を除去するエレメント17aを配置し、このエレメント17aよりも流路17fの上流側に位置するように整流板17cを配置し、この整流板17cにより、上記気液混合流体に抵抗を与えて上記気液混合流体を分散させるとともに、上記気液混合流体の流れをエレメント17aへ向かう方向の流れに整流している。
【0070】
上記の構成により、スクラバユニット16からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入した気液混合流体の流速を適度に低下させるとともに、上記気液混合流体の流れを、エレメント17aの受入面に亘って均一となるよう分散させながらエレメント17aの受入面に向かう流れに方向転換することができる。このため、デミスタ箱17bの内部に上記気液混合流体を迂回させる迂回流路を設けて上記気液混合流体がデミスタ入口部117iからエレメント17aに至るまでの流路を延長しなくとも、上記気液混合流体の流速をエレメント17aの水分除去能力にとって適した程度に減速させながら、上記気液混合流体をエレメント17aの受入面に向けて均一に案内することができる。この結果、デミスタ箱17bの内部に上記気液混合流体の迂回流路を設ける必要が無く、デミスタ入口部117iからエレメント17aまでに上記気液混合流体の流速を低下させる流路を、迂回流路の無い単純な構造の流路にすることができるから、上記気液混合流体中のEGRガスから水分を除去する能力を確保しながら、デミスタ箱17bの内部構造を簡易に構成することができる。
【0071】
上記に加え、エレメント17aに至るまでの上記気液混合流体の流速、進行方向および流れ分布を、整流板17cの開口率、開口サイズ、開口数、配置(固定位置)、延在長および配置角度等によって簡易に制御することができる。このため、たとえEGRブロア18に通じるデミスタ出口部117jがエレメント17aの上部近傍に位置していても、エレメント17aのうちEGRブロア18の吸引作用の影響が強く受ける上側のエレメント部分に片寄って上記気液混合流体が流れることを防止することができる。
【0072】
また、本発明の実施形態1に係るデミスタユニット17では、デミスタ出口部117jが設けられているデミスタ箱17bの天井部(具体的には第1の天井部117a)と排水口117kが設けられているデミスタ箱17bの底部117cとの対向方向D4に対して傾斜するように、エレメント17aをデミスタ箱17bの内部に配置している。このため、デミスタ箱17bの内部におけるエレメント17aの配置に要する高さ方向D1のサイズを抑えることができる。この結果、エレメント17aの高い水除去能力を確保しながら、エレメント17aを内包するデミスタ箱17bの小型化、延いてはデミスタユニット17の小型化を図ることができる。
【0073】
また、本発明の実施形態1に係るデミスタユニット17では、エレメント17aよりも気液混合流体の流路17fの上流側であってエレメント17aの面直方向に位置するように、整流板17cをデミスタ箱17bの内部に配置している。このため、整流板17cにより、上記気液混合流体の流れの方向、流速、流れ分布をエレメント17aの水分除去能力に適したものに容易に制御することができる。この結果、エレメント17aによる上記気液混合溶液のEGRガスとスクラバ水との分離(当該EGRガスからのスクラバ水の除去)を効率よく行うことができる。
【0074】
また、本発明の実施形態1に係るデミスタユニット17では、デミスタ箱17bの天井部を、第1の天井部117aと、この第1の天井部117aに比べて低い第2の天井部117bとによって構成し、洗浄後のEGRガスを流出させるためのデミスタ出口部(具体的にはEGRブロア18に通じるデミスタ出口部117j)を第1の天井部117aに設け、スクラバユニット16と通じるデミスタ入口部117iを第2の天井部117bに設けている。
【0075】
上記の構成により、スクラバユニット16の管(例えばベンチュリ管116)からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入した気液混合流体を洗浄後のEGRガスとスクラバ水とに分離するためのデミスタ箱17b内の流路17fを、デミスタ入口部117iからエレメント17aを通ってデミスタ出口部117jに至るデミスタ箱17bの内部領域に確保するとともに、スクラバユニット16を第2の天井部117b上に立設できることから、デミスタユニット17を備えるEGRシステム15の小型化を促進することができる。
【0076】
上記に加え、スクラバユニット16と通じるデミスタ入口部117iをデミスタ箱17bの底部117cに近付けることができる。これにより、スクラバユニット16からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱17bに流入した気液混合流体をデミスタ箱17bの底部117cに衝突させて、流路17fにおけるエレメント17aよりも上流側で気液混合流体からスクラバ水の大部分を除去するとともに、この気液混合流体の流速(洗浄後のEGRガスの流速)を下げることができる。この結果、上記気液混合流体をEGRガスとスクラバ水とに効率よく分離できるとともに、整流板17cによって上記気液混合流体の流速を一層容易に低下させることができるから、デミスタ箱17bの内部におけるエレメント17aおよび整流板17cの配置および構造の自由度が上がり、これにより、デミスタ箱17bの内部構造をより簡易に構成することができる。
【0077】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係るデミスタユニットについて説明する。図6は、本発明の実施形態2に係るデミスタユニットの一構成例を示す模式図である。図6に示すように、本実施形態2に係るデミスタユニット27は、上述した実施形態1に係るデミスタユニット17のデミスタ箱17bに代えてデミスタ箱27bを備える。また、本実施形態2に係るデミスタユニット27が適用されるEGRシステムにおいて、図6に示すように、スクラバユニット16のベンチュリ管116は、その流出口にエルボ管26が接合され、このエルボ管26を介してデミスタ箱27bのデミスタ入口部117iと連通している。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。なお、図6には、デミスタユニット27の内部構造を説明し易くするために、デミスタ箱27bの側壁部の一部を破断させた態様で、デミスタユニット27を軸方向D2から見た図が示されている。
【0078】
デミスタ箱27bは、スクラバユニット16による洗浄後のEGRガスからスクラバ水を分離除去するための中空構造体である。詳細には、図6に示すように、デミスタ箱27bは、天井部127aと、底部127cと、これらの天井部127aと底部127cとを連結する複数の側壁部117f、127d、127g、127hとによって構成される。
【0079】
本実施形態2において、デミスタ箱27bの天井部127aおよび底部127cは、互いに高さ方向D1に対向する部分である。図6に示すように、天井部127aには、EGRブロア18に通じるデミスタ出口部117jが設けられている。底部127cには、上述した実施形態1と同様の排水口117kが設けられている。
【0080】
また、図6に示すように、デミスタ箱27bの側壁部127dは、天井部127aと底部127cとを連結する側壁部である。この側壁部127dには、例えば、デミスタ箱27b内のエレメント17aの下端部に比べて高さ方向D1の下側の位置に、実施形態1と同様のデミスタ入口部117iが設けられている。このデミスタ入口部117iには、図6に示すように、スクラバユニット16のベンチュリ管116と通じるエルボ管26の流出口が接合されている。また、デミスタ箱27bの側壁部117fは、上述した実施形態1と同様のものであり、天井部127aと底部127cとを連結し且つ上述の側壁部127dと幅方向D3に対向している。また、デミスタ箱27bの側壁部127g、127hは、互いに軸方向D2に対向し、天井部127aと底部127cとを連結する側壁部である。
【0081】
上述した天井部127aと、底部127cと、側壁部117f、127d、127g、127hとによって構成されるデミスタ箱27bは、図6に示すように、軸方向D2から見た側面視で矩形状をなしている。
【0082】
また、図6に示すように、デミスタ箱27bの内部には、スクラバユニット16からデミスタ入口部117iを介してデミスタ箱27bに流入した気液混合流体を洗浄後のEGRガスとスクラバ水とに分離するための流路17fが形成される。本実施形態2において、デミスタ箱27b内の流路17fは、デミスタ入口部117iからデミスタ箱27bの底部127cに沿って広がりながら側壁部117f側(幅方向D3の正側)へ進み、整流板17cによって整流された後、エレメント17aを通過してデミスタ出口部117jに至るものとなっている。このような流路17fが形成されるデミスタ箱27bにおいて、整流板17cは、上述した実施形態1と同様の整流機能を有するとともに、上記気液混合流体と衝突して上記気液混合流体中のスクラバ水の一部を除去する邪魔板としての機能を有する。また、本実施形態2においては、デミスタ入口部117iと幅方向D3に対向するデミスタ箱27bの側壁部117fが、上記邪魔板としての機能を有していてもよい。
【0083】
また、デミスタ箱27bの内部には、図6に示すように、エレメント17aと、整流板17cと、多孔板17dと、支持部17eとが設けられている。本実施形態2において、多孔板17dは、図6に示すように、デミスタ箱27bの側壁部127dの内壁面であってデミスタ入口部117iよりも高さ方向D1の下側の部位に固定され、この部位からデミスタ箱27bの軸方向D2の全域に亘って幅方向D3に延在するように設けられている。支持部17eは、デミスタ箱27bの底部127cと天井部127aとの対向方向に対して実施形態1と同様の傾斜角θ(図4参照)をなして傾斜した態様で、デミスタ箱27bの内壁面に取り付けられている。エレメント17aは、この支持部17eによって支持された状態で、デミスタ箱27bの内部に配置されている。すなわち、エレメント17aは、実施形態1と同様に、デミスタ箱27bの底部127cと天井部127aとの対向方向に対して傾斜角θをなして傾斜している。整流板17cは、図6に示すように、デミスタ箱27bの内壁面のうち特定内部領域17gに含まれる部位に設けられ、デミスタ箱27bの軸方向D2の全域に亘り、この内壁面の部位からエレメント17aに向かって延在している。これらエレメント17a、整流板17c、多孔板17dおよび支持部17eの構成および機能は、上述した実施形態1と同様である。
【0084】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係るデミスタユニット27では、デミスタ箱27bを、底部127cと対向する一つの天井部127aを有して側面視で矩形状をなす中空構造体とし、デミスタ箱27bの天井部127aにデミスタ出口部117jを設け、エルボ管26を介してスクラバユニット16と通じるデミスタ入口部117iを側壁部127dに設けるようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、デミスタ箱27bが、実施形態1における側面視でL字形状のデミスタ箱17bと異なり、側面視で矩形状をなす中空構造体であっても、実施形態1と同様の作用効果を享受するデミスタユニット27を実現することができる。
【0085】
なお、上述した実施形態1、2では、ベンチュリ管116を有するスクラバユニット16(すなわちベンチュリ式のスクラバユニット)を備えるEGRシステムを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、デミスタ箱と連通するスクラバユニットの管は、ベンチュリ管であってもよいし、ベンチュリ管以外の管であってもよい。
【0086】
また、上述した実施形態1、2では、デミスタ箱の内部に単一のエレメント17aが配置された場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、デミスタ箱の内部には、単一の水分除去部が配置されてもよいし、複数の水分除去部が配置されてもよい。
【0087】
また、上述した実施形態1では、デミスタ箱17bの軸方向D2および幅方向D3について互い違いにデミスタ入口部とデミスタ出口部とを配置していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、デミスタ入口部およびデミスタ出口部は、デミスタ箱の軸方向D2または幅方向D3に並んで配置されてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態1、2では、多孔板または網状板等、厚さ方向に貫通した複数の開口を有する板状体によって構成される整流板17cを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、整流板17cは、上記開口を有していない板状体(すなわち開口率=0の板状体)によって構成されてもよい。
【0089】
また、上述した実施形態1、2により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1、2に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 エンジン本体
2 台板
3 架構
4 シリンダジャケット
5 掃気トランク
6 排気マニホールド
7 過給機
7a タービン部
7b コンプレッサ部
7c 排ガス部
8 吸気部
9 異形管
10 冷却器
11 舶用ディーゼルエンジン
12 煙道
15 EGRシステム
16 スクラバユニット
17、27 デミスタユニット
17a エレメント
17b、27b デミスタ箱
17c 整流板
17d 多孔板
17e 支持部
17f 流路
17g 特定内部領域
18 EGRブロア
19 EGR入口管
19a EGR入口弁
20 EGR出口管
20a EGR出口弁
26 エルボ管
116 ベンチュリ管
116a 管上部
117a 第1の天井部
117b 第2の天井部
117c、127c 底部
127a 天井部
117i デミスタ入口部
117j デミスタ出口部
117k 排水口
117d、117e、117f、117g、117h、127d、127g、127h 側壁部
C1 出力軸方向
CP 中心位置
D1 高さ方向
D2 軸方向
D3 幅方向
D4 対向方向
D5 面直方向
G1 上流側流路
G2 中間流路
G3 整流流路
G4 下流側流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6