(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20231201BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 C
B60C11/03 300B
B60C11/12 C
B60C11/12 B
(21)【出願番号】P 2019225868
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000575(JP,A)
【文献】特開2018-176930(JP,A)
【文献】特開2015-202836(JP,A)
【文献】特開2019-142446(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084325(WO,A1)
【文献】特開平11-020413(JP,A)
【文献】特開2015-016837(JP,A)
【文献】特開2000-038012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に形成されており、タイヤ周方向に向かって、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線側から接地端側へ傾斜した方向に延びており、タイヤ周方向に間隔を開けて形成された、複数の傾斜溝と、
前記トレッド部に形成されており、タイヤ周方向に延びて、タイヤ周方向に隣り合う一対の前記傾斜溝の間を連通する、複数の周方向溝と、
前記複数の傾斜溝と前記複数の周方向溝とによって区画された、陸部と、
前記陸部に形成されており、当該陸部を構成する前記傾斜溝及び前記周方向溝の少なくとも一方に対して傾斜した方向に延びる、サイプと
を備え、
前記サイプは、傾斜した方向に延びる前記少なくとも一方の前記傾斜溝及び前記周方向溝に対して、略直角で連通するサイプ直交部を有して
おり、
前記サイプは、前記傾斜溝と前記周方向溝との間を延びており、前記傾斜溝及び前記周方向溝のうち浅い溝側に位置する一端部が前記サイプ直交部として構成され、深い溝側に位置する端部が前記陸部で終端する閉塞端部として構成されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記サイプは複数形成されており、
前記サイプ直交部は、複数の前記サイプのうち、タイヤ周方向における最も踏み込み側に位置するサイプ及び/又は最も蹴り出し側に位置するサイプに、含まれている、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイプ直交部は、前記サイプのうち、前記周方向溝との連通部に含まれている、
請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記サイプは、前記サイプ直交部を除く部分が、接地形状に沿って延びている、
請求項1~
3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレッド部に、タイヤ周方向に向かってタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線側から接地端側へ傾斜した方向に延びる傾斜溝と、タイヤ周方向に延びる周方向溝とによって、区画された陸部を備え、陸部に傾斜溝及び周方向溝に対して傾斜した方向に延びるサイプが形成された、空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、陸部は、サイプと傾斜溝及び/又は周方向溝との連通部が鋭角状に区画されるため、該鋭角状に区画された部分において局所的な剛性低下が生じ、耐摩耗性が悪化しやすい。
【0005】
本発明は、傾斜溝及び周方向溝によって区画された陸部に傾斜溝及び/又は周方向溝に対して傾斜した方向に延びるサイプが形成された空気入りタイヤにおいて、耐摩耗性の悪化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
トレッド部に形成されており、タイヤ周方向に向かって、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線側から接地端側へ傾斜した方向に延びており、タイヤ周方向に間隔を開けて形成された、複数の傾斜溝と、
前記トレッド部に形成されており、タイヤ周方向に延びて、タイヤ周方向に隣り合う一対の前記傾斜溝の間を連通する、複数の周方向溝と、
前記複数の傾斜溝と前記複数の周方向溝とによって区画された、陸部と、
前記陸部に形成されており、当該陸部を区画する前記傾斜溝及び前記周方向溝の少なくとも一方に対して傾斜した方向に延びる、サイプと
を備え、
前記サイプは、傾斜した方向に延びる前記少なくとも一方の前記傾斜溝及び前記周方向溝に対して、略直角で連通するサイプ直交部を有しており、
前記サイプは、前記傾斜溝と前記周方向溝との間を延びており、前記傾斜溝及び前記周方向溝のうち浅い溝側に位置する一端部が前記サイプ直交部として構成され、深い溝側に位置する端部が前記陸部で終端する閉塞端部として構成されている、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本発明によれば、傾斜溝及び周方向溝によって区画された陸部に、当該陸部を区画する傾斜溝及び周方向溝の少なくとも一方に対して傾斜した方向に延びるサイプが、当該傾斜した関係にある傾斜溝及び/又は周方向溝に対して、サイプ直交部により略直角で連通している。これによって、陸部は、サイプ直交部が形成された部分において、鋭角状に区画されないので、陸部の局所的な剛性低下が抑制される。よって、陸部における耐摩耗性の悪化が抑制される。
また、陸部のうち、深い溝により区画されており相対的に剛性が低下しやすい端部においては、サイプが連通しておらず、浅い溝により区画される部分にサイプ直交部により連通している。これによって、深い溝により区画された端部における過度な剛性低下を抑制しつつ、浅い溝により区画された端部における剛性を適度に低下させることができ、陸部の接地面への追従性を確保しながら、陸部の過度な剛性低下が抑制される。
【0008】
好ましくは、前記サイプは複数形成されており、前記サイプ直交部は、複数の前記サイプのうち、タイヤ周方向における最も踏み込み側に位置するサイプ及び/又は最も蹴り出し側に位置するサイプに、含まれている。
【0009】
本構成によれば、サイプ直交部は、陸部のうち、接地時に相対的に動きが大きくなりやすい、踏み込み側の端部及び/又は蹴り出し側の端部に位置している。したがって、サイプ直交部によって踏み込み側の端部及び/又は蹴り出し側の端部における剛性低下が抑制されるので、接地時における端部の動きが効果的に抑制される。この結果、摩耗しやすい陸部の踏み込み側端部及び/又は蹴り出し側端部において、耐摩耗性の悪化が抑制される。
【0010】
また、好ましくは、前記サイプ直交部は、前記サイプのうち、前記周方向溝との連通部に含まれている。
【0011】
本構成によれば、サイプ直交部は、陸部のうち、接地時における空気入りタイヤの転動方向に一致するタイヤ周方向に荷重を受けるために相対的に動きが大きくなりやすい周方向溝との連通部、に位置している。したがって、接地時における端部の動きを効果的に抑制しやすく、陸部の局所的な剛性低下が効果的に抑制される。特に、陸部は、サイプを挟んで鋭角部と鈍角部がタイヤ周方向に並ぶことがないので、当該サイプを挟んだタイヤ周方向の両側における偏摩耗の増大が抑制される。
【0014】
また、好ましくは、前記サイプは、前記サイプ直交部を除く部分が、接地形状に沿って延びている。
【0015】
本構成によれば、サイプはサイプ直交部を除く部分が接地形状に沿って延びているので、接地形状におけるエッジ効果を好適に発揮させつつ、サイプ直交部によって、陸部の縁部における過度な剛性低下が抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、傾斜溝及び周方向溝によって区画された陸部に傾斜溝及び/又は周方向溝に対して傾斜した方向に延びるサイプが形成された空気入りタイヤにおいて、耐摩耗性の悪化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の展開図。
【
図5】変形例に係る第1メディエイトブロックを示す図。
【
図6】更なる変形例に係る第1メディエイトブロックを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部1を示す展開図である。この空気入りタイヤは、図示しないが、一対のビードコア間にカーカスを掛け渡し、カーカスの中間部の外周側に巻き付けたベルトによって補強し、そのタイヤ外径側にトレッド部1を設けた構成である。
【0020】
以下の説明では、
図1において、左右方向をタイヤ幅方向TWと称し、右側をTW1側、左側をTW2側と称する。また、
図1において、上下方向をタイヤ周方向TCと称し、上側をTC1側、下側をTC2側と称する。なお、本実施形態に係る空気入りタイヤは、回転方向が指定されており、タイヤ周方向TC2側が踏み込み側であって、タイヤ周方向TC1側が蹴り出し側である。
【0021】
また、
図1には、接地形状GSが併せて図示されている。接地形状GSの輪郭形状は、タイヤ幅方向TWの両側においてタイヤ周方向TCに延びる一対の幅方向接地端GTと、タイヤ周方向TCの両側においてタイヤ幅方向TWに延びる一対の周方向接地端GLとを有している。周方向接地端GLは、接地形状GSがタイヤ赤道線Ceにおいてタイヤ周方向TCへ凸となる円弧状に延びている。
【0022】
なお、本明細書における接地形状GSは、新品(すなわち、摩耗していない)状態の空気入りタイヤを、正規リムにリム組みして正規内圧で空気を充填した状態で、前記正規内圧における最大負荷能力の90%の負荷を与えたときに、トレッド部1の頂面のうち平坦な路面に接地する接地形状を意味している。
【0023】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。
【0024】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。
【0025】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0026】
トレッド部1には、複数の溝部によってトレッドパターンが形成されている。溝部には、タイヤ赤道線Ceの近傍からタイヤ幅方向TW1側に向かって斜めに延びる第1傾斜溝11と、タイヤ赤道線Ce近傍からタイヤ幅方向TW2側に向かって斜めに延びる第2傾斜溝12とが含まれる。
【0027】
第1傾斜溝11の基端は、タイヤ赤道線Ceを挟んでタイヤ幅方向TW2側に位置し、第2傾斜溝12の途中に連通している。第1傾斜溝11は、基端からタイヤ周方向TC1側に向かってタイヤ幅方向TW1側へと徐々に幅寸法を増大させながら延びている。第1傾斜溝11は、タイヤ幅方向TW1側に向かってタイヤ周方向TC1側へ凸状に湾曲し、タイヤ幅方向TW1側に位置する幅方向接地端GTを超えて終端している。第1傾斜溝11は、タイヤ赤道線Ce側で、タイヤ幅方向TWに延びる直線に対する傾斜角度が大きく、タイヤ幅方向TW1側に向かうに従ってこの傾斜角度が徐々に小さくなっており、タイヤ幅方向TW1側の端部では、タイヤ幅方向TWに略沿って延びている。
【0028】
第1傾斜溝11は、タイヤ周方向TCに所定間隔あけて複数設けられている。タイヤ周方向TCに隣り合う第1傾斜溝11同士は、タイヤ周方向TCに延びる第1周方向溝21によって接続されている。第1周方向溝21は、タイヤ周方向TC2側に向かってタイヤ幅方向TW1側へ傾斜している。第1周方向溝21は、第1傾斜溝11に比して溝深さが浅い。
【0029】
第1周方向溝21の中間部分からは、第3傾斜溝13が延びている。第3傾斜溝13は、タイヤ周方向TCに隣り合う第1傾斜溝11の間に形成される陸部を2分する。第3傾斜溝13の終端位置は、第1傾斜溝11の終端位置よりもタイヤ赤道線Ce側である。
【0030】
第1傾斜溝11と第3傾斜溝13とは、タイヤ周方向に延びる第2周方向溝22によって接続されている。第2周方向溝22はタイヤ周方向TC2側に向かってタイヤ幅方向TW1側へ傾斜している。第2周方向溝22は、第1周方向溝21よりもタイヤ幅方向TW1側に位置しており、第1及び第3傾斜溝11、13に比して溝深さが浅い。タイヤ周方向TCに隣り合う第2周方向溝22同士は、タイヤ幅方向TWに位置がずれている。すなわち、第2周方向溝22は、タイヤ周方向TCに向かってタイヤ幅方向TW1側とタイヤ赤道線Ce側とに位置をずらせたものとが交互に設けられている。
【0031】
タイヤ周方向TCに隣り合う2つの第1傾斜溝11、第2傾斜溝12及び第1周方向溝21によって第1センターブロック2が区画されている。第1センターブロック2は、タイヤ幅方向TWに比べてタイヤ周方向TCに延びた縦長の菱形形状である。第1センターブロック2は、タイヤ周方向TCに並んで第1センターブロック列を構成している。
【0032】
第1傾斜溝11、第3傾斜溝13、第1周方向溝21及び第2周方向溝22によって第1メディエイトブロック3が区画されている。第1メディエイトブロック3は、タイヤ周方向TCに比べてタイヤ幅方向TWに延びた横長形状である。第1メディエイトブロック3は、タイヤ周方向TCに並んで第1メディエイトブロック列を構成している。第1メディエイトブロック列では、タイヤ周方向TCに隣り合う第1メディエイトブロック3の形状が若干相違している。
【0033】
すなわち、第1周方向溝21は、タイヤ周方向TC2側に向かってタイヤ幅方向TW1へ傾斜しているので、第1周方向溝21により区画される一対の第1メディエイトブロック3は、タイヤ幅方向TWの内側の端部の位置が相違している。さらに、第1周方向溝21の溝幅が第3傾斜溝13を挟んで上下で相違している。また、タイヤ周方向TCに隣り合う第2周方向溝22同士のタイヤ幅方向TWの位置がずれている。
【0034】
第1傾斜溝11、第3傾斜溝13及び第2周方向溝22によって第1ショルダーブロック4が区画されている。第1ショルダーブロック4は、第1メディエイトブロック3に比べてさらにタイヤ周方向TCよりもタイヤ幅方向TWに延びた横長形状である。第1ショルダーブロック4は、幅方向接地端GTを超えてタイヤ幅方向TWに延びている。第1ショルダーブロック4は、タイヤ周方向TCに並んで第1ショルダーブロック列を構成している。前述のように、第2周方向溝22がタイヤ周方向TCに向かって交互にタイヤ幅方向TWに位置がずれているため、各第1ショルダーブロック4の端部の位置も相違している。
【0035】
タイヤ周方向に隣り合う一対の第1傾斜溝11の間に、1つの第1センターブロック2と、2つの第1メディエイトブロック3と、2つの第1ショルダーブロック4とによって、1つのブロック集合体が構成されている。
【0036】
第2傾斜溝12の基端は、タイヤ赤道線Ceを挟んでタイヤ幅方向TW1側に位置し、第1傾斜溝11の途中に連通している。第2傾斜溝12は、基端からタイヤ周方向TC1側に向かってタイヤ幅方向TW2側へと徐々に幅寸法を増大させながら延びている。第2傾斜溝12は、タイヤ幅方向TW2側に向かってタイヤ周方向TC1側へ凸状に湾曲し、タイヤ幅方向TW2側に位置する幅方向接地端GTを超えて終端している。第2傾斜溝12は、タイヤ赤道線Ce側で、タイヤ幅方向TWに延びる直線に対する傾斜角度が大きく、タイヤ幅方向TW2側に向かうに従ってこの傾斜角度が徐々に小さくなっており、タイヤ幅方向TW2側の端部では、タイヤ幅方向TWに略沿って延びている。
【0037】
第2傾斜溝12は、タイヤ周方向TCに所定(第1傾斜溝11と同一)間隔で複数設けられている。タイヤ周方向TCに隣り合う第2傾斜溝12同士は、タイヤ周方向TCに延びる第3周方向溝23によって接続されている。第3周方向溝23の中間部分からは、第4傾斜溝14が延びている。第4傾斜溝14は、タイヤ周方向TCに隣り合う第2傾斜溝12の間に形成される陸部を2分する。第2傾斜溝12と第4傾斜溝14はタイヤ周方向TCに延びる第4周方向溝24によって接続されている。第3及び第4周方向溝23、24は、タイヤ周方向TC2側に向かってタイヤ幅方向TW2側へ傾斜している。
【0038】
タイヤ周方向TCに隣り合う2つの第2傾斜溝12、第1傾斜溝11及び第3周方向溝23によって第2センターブロック5が区画されている。第2センターブロック5は、タイヤ周方向TCに並んで第2センターブロック列を構成している。
【0039】
第2傾斜溝12、第4傾斜溝14、第3周方向溝23及び第4周方向溝24によって第2メディエイトブロック6が区画されている。第2メディエイトブロック6は、タイヤ周方向TCに並んで第2メディエイトブロック列を構成している。
【0040】
第2傾斜溝12、第4傾斜溝14及び第4周方向溝24によって第2ショルダーブロック7が区画されている。第2ショルダーブロック7は、タイヤ周方向TCに並んで第2ショルダーブロック列を構成している。
【0041】
タイヤ周方向に隣り合う一対の第2傾斜溝12の間に、1つの第2センターブロック5と、2つの第2メディエイトブロック6と、2つの第2ショルダーブロック7とによって、1つのブロック集合体が構成されている。
【0042】
第1傾斜溝11の基端がタイヤ赤道線Ceを越えて左側の位置で第2傾斜溝12の途中に連通し、右斜め上方へと湾曲状態で延びている。そして、タイヤ周方向TCの隣の位置には、第2傾斜溝12の基端が、タイヤ赤道線Ceを越えて右側の位置で第1傾斜溝11の途中に連通し、左斜め上方へと湾曲状態で延びている。つまり、第1傾斜溝11と第2傾斜溝12がV字状を成し、その連通位置がタイヤ周方向TCに向かってタイヤ赤道線Ceを挟んで交互に左右に位置している。
【0043】
前記構成のトレッド部1では、各ブロックには複数の切込みによりサイプが形成されている。ここで言うサイプとは、接地時に溝が閉塞する程度の溝厚さ(溝の長手方向に直交する方向の寸法)を有するものを意味しており、例えば溝厚さが1.5mm以下に設定されており、本実施形態では0.5mmに設定されている。
【0044】
図2には、
図1のA部が拡大されて、第1センターブロック2及び第1メディエイトブロック3の周辺が示されている。
図2に示されるように、第1メディエイトブロック3には、第1メディエイトサイプ30が形成されている。第1メディエイトブロック3の最も踏み込み側(タイヤ周方向TC2側)に位置する角部3aと最も蹴り出し側(タイヤ周方向TC1側)に位置する角部3bとを結ぶ線を対角線3Lとして、第1メディエイトサイプ30は、対角線3L方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0045】
複数の第1メディエイトサイプ30には、最も角部3aに近接して位置する第1サイプ31と、最も角部3bに近接して位置する第2サイプ32と、これらの間に位置する複数の第3サイプ33とが含まれる。第1~第3サイプ31~33は、対角線3Lに対して略直交するように形成されている。また、第1~第3サイプ31~33は、接地形状GSのうち、蹴り出し側(すなわちタイヤ周方向TC1側)に位置する周方向接地端GLに概ね沿った方向に延びている。
【0046】
ここで、本明細書において、第1メディエイトサイプ30が周方向接地端GLに概ね沿った方向に延びているとは、第1メディエイトサイプ30が、同じタイヤ幅方向TW位置において周方向接地端GLが延びる方向と略同じ方向に延びていることを意味する。すなわち、第1メディエイトサイプ30は、当該サイプが形成されたタイヤ幅方向位置TWにおいて周方向接地端GLが延びているタイヤ幅方向TW1へ向かってタイヤ周方向TC1へ傾斜した方向、と同じ方向に傾斜して延びている。
【0047】
これによって、接地形状における蹴り出し側の領域において、第1~第3サイプ31~33によるエッジ効果を効果的に発揮させやすい。しかも、タイヤ周方向TCに沿った対角線3L方向に複数の第1メディエイトサイプ30を形成することによって、第1メディエイトサイプ30をタイヤ周方向TCよりもむしろタイヤ幅方向TWに近い方向に沿った方向に延びるように形成しつつ、その形成数を増大させやすい。
【0048】
第1サイプ31は、第1メディエイトブロック3のうち第1傾斜溝11により区画された縁部と第1周方向溝21により区画された縁部との間を、これらに対して筋交い状に傾斜した方向に延びている。具体的には、第1サイプ31は、対角線3Lに対して略直交しており直線状又は湾曲状に延びるサイプ線部31aと、サイプ線部31aから屈曲してタイヤ幅方向TW2側へ線状に延びて、第1周方向溝21に対して略直角に連通するサイプ直交部31bとを有する、屈曲サイプとして構成されている。サイプ線部31aは、第1傾斜溝11に対して間隔をあけた位置で終端しており、第1サイプ31は閉塞サイプとして構成されている。
【0049】
なお、本明細書において、第1メディエイトサイプ30が対角線3Lに対して略直交するとは、当該交差部における両者それぞれの延在方向の間の角度差が70°以上110°以下であることを意味している。また、本明細書において、サイプ直交部31bが第1周方向溝21に対して略直角に連通するとは、両者それぞれの延在方向の間の角度差が70°以上110°以下であることを意味している。
【0050】
第1サイプ31は、角部3aから少なくとも長さL1離れた位置に形成されている。長さL1は、例えば4mmである。長さL1が4mm未満であると、第1メディエイトブロック3のうち第1サイプ31によって角部3a側に区画される部分が過度に小さくなってしまうため、該部分の剛性が過度に低下し耐摩耗性が悪化しやすい。また、サイプ直交部31bは、少なくとも長さL2を有するように形成されている。長さL2は、例えば1.5mmである。長さL2が1.5mm未満であると、サイプ直交部31bにより角部3a側に区画される部分が鋭角状に近い形状となってしまうため、当該部分の剛性が過度に低下しやすい。
【0051】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図であり、第1メディエイトブロック3の第1サイプ31に沿った断面図が示されている。
図3に示されるように、第1サイプ31は、第1傾斜溝11及び第1周方向溝21のうち、相対的に浅い第1周方向溝21に対してはサイプ直交部31bで連通しており、相対的に深い第1傾斜溝11に対しては連通しないように構成されている。第1サイプ31は、サイプ直交部31bにおいて、第1周方向溝21に向かって溝深さが漸減するように構成されている。
【0052】
第2サイプ32は、第1サイプ31と同様に構成されている。
図2に示されるように、第2サイプ32は、第1メディエイトブロック3のうち、第1傾斜溝11により区画された縁部と第2周方向溝22により区画された縁部との間を、これらに対して筋交い状に傾斜した方向に延びている。具体的には、第2サイプ32は、対角線3Lに対して略直交した方向に直線状又は湾曲状に延びるサイプ線部32aと、サイプ線部32aから屈曲してタイヤ幅方向TW1側へ直線状に延びて、第2周方向溝22に対して略直角に連通するサイプ直交部32bとを有している。サイプ線部32aは、第1傾斜溝11に対して間隔をあけた位置で終端しており、第2サイプ32は閉塞サイプとして構成されている。
【0053】
図示は省略するが、第2サイプ32は、第1傾斜溝11及び第2周方向溝22のうち、相対的に浅い第2周方向溝22に対してはサイプ直交部32bで連通しており、相対的に深い第1傾斜溝11に対しては連通しないように構成されている。また、第2サイプ32は、サイプ直交部32bにおいて、第2周方向溝22に向かって溝深さが漸減するように構成されている。
【0054】
複数の第3サイプ33はそれぞれ、長手方向における中央部に対角線3L方向に振幅を有するサイプ波形部を有している。複数の第3サイプ33は、対角線3L方向における中央部に位置するものが、サイプ波形部が長く構成され、対角線3Lの両側に向かって、サイプ波形部の長さが漸減するように構成されている。
【0055】
図4は、
図2のIV-IV線における断面図であり、第1メディエイトブロック3の第3サイプ33に沿った断面図が示されている。
図4に示されるように、第3サイプ33は、第1傾斜溝11及び第1周方向溝21の両方に連通している。第3サイプ33は、長手方向の中央部における深さに比して、両端部(すなわち、第1傾斜溝11、第1周方向溝21、及び第2周方向溝22への連通部)において溝深さが浅く構成されている。これによって、相対的に剛性が低下しやすい第1メディエイトブロックの端部において、第3サイプ33の深さが浅いので、過度な剛性低下が抑制される。
【0056】
図2に示されるように、第1センターブロック2には、第1センターサイプ40が形成されている。第1センターサイプ40は、第1メディエイトサイプ30と同様に、第1センターブロック2のうち、最も踏み込み側に位置する角部4aと最も蹴り出し側に位置する角部4bとの間を結ぶ対角線4Lの方向に間隔を開けて複数形成されており、それぞれ対角線4Lに対して略直交している。
【0057】
第1センターサイプ40には、最も角部4aに近接して位置する第1サイプ41と、最も角部4bに近接して位置する第2サイプ42と、これらの間に位置する複数の第3サイプ43とが含まれる。
【0058】
対角線4Lは、タイヤ周方向TCに略沿って延びているので、これに略直交する第1センターサイプ40はタイヤ幅方向TWに略沿って延びている。複数の第1センターサイプ40のうち、最も踏み込み側に位置する第1サイプ41及び最も蹴り出し側に位置する第2サイプ42は、それぞれ屈曲サイプとして構成されている。第1サイプ41は、角部4aを区画する第1傾斜溝11及び第2傾斜溝12のうち、よりタイヤ周方向TCに沿って延びている第2傾斜溝12に対して連通するようにサイプ直交部41bが位置している。
【0059】
第2サイプ42は、角部4bを区画する第1傾斜溝11及び第1周方向溝21のうち、溝深さが浅い第1周方向溝21に対して連通するようにサイプ直交部42bが位置している。
【0060】
第3サイプ43は、長手方向における中央部に対角線4L方向に振幅を有するサイプ波形部を有している。複数の第3サイプ43は、対角線4L方向における中央部に位置するものが、サイプ波形部が長く構成され、対角線4Lの両側に向かって、サイプ波形部の長さが漸減するように構成されている。
【0061】
図1に示されるように、第1ショルダーブロック4には、第1ショルダーサイプ50が形成されている。第1ショルダーサイプ50は、第1傾斜溝11及び第3傾斜溝13に略平行に形成されており、タイヤ周方向に間隔を開けて複数形成されている。第1ショルダーサイプ50は、この長手方向に沿って直線状又は湾曲状に延びるサイプ線部51と、タイヤ周方向に振幅を有するサイプ波形部52とを交互に有している。
【0062】
第2センターブロック5、第2メディエイトブロック6、及び第2ショルダーブロック7にも同様に、第2センターサイプ60、第2メディエイトサイプ70、及び第2ショルダーサイプ80がそれぞれ形成されている。第2センターサイプ60、第2メディエイトサイプ70、及び第2ショルダーサイプ80の構成は、第1センターサイプ40、第1メディエイトサイプ30、及び第1ショルダーサイプ50を、タイヤ赤道線Ceに対して略線対称に構成したものをタイヤ周方向に所定ピッチだけずらしたものであり、詳細な説明は省略する。
【0063】
上記説明した空気入りタイヤによれば、次のような効果が得られる。なお、以下の効果は、第1メディエイトブロック3について説明するが、第1センターブロック2、第2センターブロック5、及び第2メディエイトブロック6においても同様に得られる。
【0064】
(1)第1傾斜溝11及び第1及び第2周方向溝21、22によって区画された第1メディエイトブロック3にこの対角線3Lに略直交するように形成された複数の第1メディエイトサイプ30のうち第1及び第2サイプ31,32が、第1及び第2周方向溝21、22に対してサイプ直交部31b、32bによりそれぞれ略直角で連通している。
【0065】
これによって、第1メディエイトブロック3は、サイプ直交部31b、32bが形成された部分において、鋭角状に区画されないので、当該部分における局所的な剛性低下が抑制される。よって、第1メディエイトブロック3における耐摩耗性の悪化が抑制される。
【0066】
(2)サイプ直交部31b、32bは、第1メディエイトブロック3のうち、接地時に相対的に動きが大きくなりやすい、踏み込み側の端部及び/又は蹴り出し側の端部に位置している。したがって、サイプ直交部31b、32bによって踏み込み側の端部及び/又は蹴り出し側の端部における剛性低下が抑制されるので、接地時における端部の動きが効果的に抑制される。この結果、摩耗しやすい陸部の踏み込み側端部及び/又は蹴り出し側端部において、耐摩耗性の悪化が抑制される。
【0067】
(3)サイプ直交部31b、32bは、第1メディエイトブロック3のうち、接地時における空気入りタイヤの転動方向に一致するタイヤ周方向TCに荷重を受けるために相対的に動きが大きくなりやすい第1及び第2周方向溝21、22との連通部、に位置している。
【0068】
したがって、接地時における第1メディエイトブロック3のタイヤ幅方向TWにおける端部の動きを効果的に抑制しやすく、第1メディエイトブロック3の局所的な剛性低下が効果的に抑制される。特に、第1メディエイトブロック3は、第1及び第2サイプ31、32を挟んで鋭角部と鈍角部がタイヤ周方向に並ぶことがないので、第1及び第2サイプ31、32を挟んだタイヤ周方向TCの両側における偏摩耗の増大が抑制される。
【0069】
(4)第1メディエイトブロック3のうち、相対的に深い第1傾斜溝11により区画されており相対的に剛性が低下しやすい端部においては、第1及び第2サイプ31、32が連通しておらず、相対的に浅い第1及び第2周方向溝21、22により区画される部分に第1及び第2サイプ31、32のサイプ直交部31b、32bが位置している。
【0070】
これによって、第1メディエイトブロック3のうち、相対的に深い溝により区画された端部における過度な剛性低下を抑制しつつ、相対的に浅い溝により区画された端部における剛性を適度に低下させることができ、第1メディエイトブロック3の接地面への追従性を確保しながら、過度な剛性低下が抑制される。
【0071】
(5)第1及び第2サイプ31、32のサイプ線部31a、32a、及び第3サイプ33は、接地形状GSにおける周方向接地端GLに略沿って延びているので、接地形状GSにおけるエッジ効果を好適に発揮させつつ、サイプ直交部31b、32bによって、第1メディエイトブロック3の縁部における過度な剛性低下が抑制される。
【0072】
上記実施形態では、第1メディエイトブロック3のうち、第1及び第2サイプ31、32を屈曲サイプとして構成したが、
図5に示すように、第3サイプ33についても第1及び第2周方向溝21、22に連通する部分に、サイプ直交部33bを形成してもよい。
【0073】
さらにまた、第1メディエイトサイプ30のうち、第1及び第2周方向溝21、22のみならず、
図6に示すように、第1傾斜溝11に連通している部分全てにサイプ直交部33bを形成してもよい。これによって、第1メディエイトブロック3の端部における、第1メディエイトサイプ30を形成したことによる剛性低下がより一層抑制される。
【0074】
しかしながら、全ての連通部にサイプ直交部を形成する場合、接地形状GSにおける周方向接地端GLに沿う部分が減少するので、エッジ効果が減少してしまう。よって、第1メディエイトブロック3のうち、路面からの入力によって動きやすい、踏み込み側の端部及び蹴り出し側の端部にのみサイプ直交部を形成するのが、より効果的である。
【0075】
また、上記実施形態では、第1及び第2サイプ31、32を、サイプ線部31a、32aと、サイプ直交部31b、32bを有するように構成したが、サイプ線部31a、32aをサイプ波形部に置き換えてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第1及び第2サイプ31、32は、第1傾斜溝11と第1又は第2周方向溝21、22との両方に対して筋交い状に傾斜した方向に延びるように構成したが、これらのうち少なくとも一方に対して傾斜するように延びていればよい。この場合、サイプ直交部を、前記少なくとも一方の傾斜している方の溝との連通部に形成すればよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ブロックパターンにサイプを形成する場合を例にとって説明したが、リブパターンにサイプを形成する場合にも適用してもよい。すなわち、リブを区画する主溝に対して傾斜した方向に延びるサイプを形成する場合に、サイプに、主溝に連通する部分に当該主溝に直交するようにサイプ直交部を形成するようにしてもよい。特に主溝をジグザグ状に設ける場合であって当該主溝によって区画される角部にサイプを形成するときに、角部がサイプによって鋭角状に小さな領域に区画されることを防止できるので、サイプ形成による剛性低下が抑制される。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 トレッド部
2 第1センターブロック
3 第1メディエイトブロック
3L 対角線
4 第1ショルダーブロック
5 第2センターブロック
6 第2メディエイトブロック
7 第2ショルダーブロック
11~14 第1~第4傾斜溝
21~24 第1~第4周方向溝
30 第1メディエイトサイプ
31~33 第1~第3サイプ
31a、32a サイプ線部
31b、32b サイプ直交部
40 第1センターサイプ
50 第1ショルダーサイプ
60 第2センターサイプ
70 第2メディエイトサイプ
80 第2ショルダーサイプ