(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】3次元積層電子デバイスの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/10 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
H05K3/10 D
H05K3/10 C
(21)【出願番号】P 2019559982
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2017046125
(87)【国際公開番号】W WO2019123629
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-03-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】須原 宏光
【審判官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041189(WO,A1)
【文献】特開2006-108129(JP,A)
【文献】特開2015-187946(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125275(WO,A1)
【文献】特開2007-158352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の上に、導電性粒子、紫外線硬化樹脂、及び有機溶剤が混ぜ合わされた導電性ペーストを吐出することによって、回路配線単層を形成する形成処理と、前記回路配線単層に紫外線を照射して前記回路配線単層を硬化させる硬化処理とを有し、前記形成処理と前記硬化処理で前記絶縁層に前記回路配線単層を積層することで積層体を造形し、さらに複数の前記積層体を積層することによって、前記複数の積層体が積層された3次元積層造形物を造形する積層造形工程と、
前記積層造形工程が終了した後で前記複数の積層体が積層された3次元積層造形物を
80度で加熱することによって3次元積層電子デバイスを製造する加熱工程とを備え、
前記導電性ペーストの導電性は、前記硬化処理における紫外線の照射によって発現し、前記加熱工程における加熱によって向上する3次元積層電子デバイスの製造方法
であって、
前記3次元積層造形物は、前記3次元積層造形物の最下部にあって、前記3次元積層造形物を支えるサポート材を備え、
前記サポート材は、前記加熱工程で溶解する融点を有する材料により成形され、
前記加熱工程は、前記3次元積層造形物を加熱して前記導電性ペーストの導電性を向上させるとともに、前記サポート材も加熱して前記サポート材を溶解させる3次元積層電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の製造方法によって3次元積層電子デバイスを製造する製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元積層造形を用いた3次元積層電子デバイスの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、3次元積層造形に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の配線基板の製造方法は、絶縁基材上に配線パターンに沿って導電パターンと絶縁パターンを少なくとも1層形成する方法であって、前記絶縁基材と絶縁パターンの少なくとも一つは、半硬化状態でその上部に前記導電パターンを形成し積層体を得て、該積層体を熱処理して前記半硬化状態の絶縁基材または/及び絶縁パターンを完全硬化し、導電パターンは焼成することを含んで成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の配線基板の製造方法によれば、半硬化された絶縁層上に導電パターンを形成し、また半硬化絶縁層と導電パターンの同時熱処理によって、半硬化状態の絶縁層は硬化され、導電パターンは焼成されるため、配線基板に対する熱負荷の低減や生産時間の短縮ができる。しかしながら、更に好適に、熱負荷の低減や生産時間の短縮が望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、熱負荷の低減や生産時間の短縮が可能な3次元積層電子デバイスの製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、絶縁層の上に、導電性粒子、紫外線硬化樹脂、及び有機溶剤が混ぜ合わされた導電性ペーストを吐出することによって、回路配線単層を形成する形成処理と、前記回路配線単層に紫外線を照射して前記回路配線単層を硬化させる硬化処理とを有し、前記形成処理と前記硬化処理で前記絶縁層に前記回路配線単層を積層することで積層体を造形し、さらに複数の前記積層体を積層することによって、前記複数の積層体が積層された3次元積層造形物を造形する積層造形工程と、前記積層造形工程が終了した後で前記複数の積層体が積層された3次元積層造形物を80度で加熱することによって3次元積層電子デバイスを製造する加熱工程とを備え、前記導電性ペーストの導電性は、前記硬化処理における紫外線の照射によって発現し、前記加熱工程における加熱によって向上する3次元積層電子デバイスの製造方法であって、前記3次元積層造形物は、前記3次元積層造形物の最下部にあって、前記3次元積層造形物を支えるサポート材を備え、前記サポート材は、前記加熱工程で溶解する融点を有する材料により成形され、前記加熱工程は、前記3次元積層造形物を加熱して前記導電性ペーストの導電性を向上させるとともに、前記サポート材も加熱して前記サポート材を溶解させる3次元積層電子デバイスの製造方法を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、3次元積層電子デバイスの製造方法は、熱負荷の低減や生産時間の短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】3次元積層電子デバイス製造装置を示す図である。
【
図3】導電性ペーストの焼成時間と体積抵抗の変化率の関係を示す図である。
【
図4】3次元積層電子デバイスの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【
図5】基板上に造形された3次元積層造形物を示す斜視図である。
【
図6】基板上に造形された3次元積層造形物を示す斜視図である。
【
図7】基板上に造形された3次元積層造形物を示す斜視図である。
【
図8】基板上に造形された3次元積層造形物を示す斜視図である。
【
図9】3次元積層電子デバイスを示す斜視図である。
【
図10】基板上に造形された3次元積層造形物の変更例を示す断面図である。
【
図11】3次元積層電子デバイスの変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
(A)3次元積層電子デバイス製造装置の構成
図1に、3次元積層電子デバイス製造装置10を示す。3次元積層電子デバイス製造装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、装着ユニット26と、制御装置(
図2参照)27を備えている。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット24と装着ユニット26とは、3次元積層電子デバイス製造装置10のベース28の上に配置されている。さらに、3次元積層電子デバイス製造装置10は、加熱部200を備えている。加熱部200は、電気炉であり、ベース28と並んだ状態で配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0012】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ(
図2参照)38を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36がX軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール50の一端部が、X軸スライダ36に連結されている。そのため、Y軸スライドレール50は、X軸方向に移動可能とされている。そして、そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ(
図2参照)56を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0013】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基板が載せられる。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置された基板のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、基板が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向で昇降させる。
【0014】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載せられた基板(
図5参照)70の上に回路配線を造形するユニットであり、吐出部72と、第1硬化部74とを有している。吐出部72は、ディスペンスヘッド(
図2参照)76を有しており、基台60に載せられた基板70の上に導電性ペーストを吐出する。導電性ペーストは、紫外線の照射により硬化する樹脂(つまり、紫外線硬化樹脂)に、銀などの金属微粒子、有機溶剤、及び光開始剤等が混ぜ合わされたものである。なお、導電性ペーストの粘度は、下記絶縁層を構成する紫外線硬化樹脂と比較して、比較的高い。そのため、ディスペンスヘッド76は、下記インクジェットヘッド(
図2参照)88のノズルの径より大きな径の1個のノズルから導電性ペーストを吐出する。
【0015】
第1硬化部74は、照射装置(
図2参照)78を有している。照射装置78は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基板70の上に吐出された導電性ペーストに紫外線を照射する。これにより、基板70の上に吐出された導電性ペーストが硬化し、回路配線が形成される。
【0016】
また、第2造形ユニット24は、ステージ52の基台60に載せられた基板70の上に絶縁層を造形するユニットであり、印刷部84と、第2硬化部86とを有している。印刷部84は、インクジェットヘッド88(
図2参照)を有しており、基台60に載せられた基板70の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。なお、インクジェットヘッド88は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0017】
第2硬化部86は、平坦化装置(
図2参照)90と照射装置(
図2参照)92とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にさせる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、絶縁層が形成される。
【0018】
また、装着ユニット26は、ステージ52の基台60に載せられた基板70の上に電子部品(
図7参照)94を装着するユニットであり、供給部100と、装着部102とを有している。供給部100は、テーピング化された電子部品94を1つずつ送り出すテープフィーダ(
図2参照)110を複数有しており、供給位置において、電子部品94を供給する。なお、供給部100は、テープフィーダ110に限らず、トレイから電子部品94をピックアップして供給するトレイ型の供給装置でもよい。また、供給部100は、テープ型とトレイ型との両方、あるいはそれ以外の供給装置を備えた構成でもよい。
【0019】
装着部102は、装着ヘッド(
図2参照)112と、移動装置(
図2参照)114とを有している。装着ヘッド112は、電子部品94を吸着保持するための吸着ノズル(
図7参照)116を有している。吸着ノズル116は、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品94を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品94を離脱する。また、移動装置114は、テープフィーダ110による電子部品94の供給位置と、基台60に載せられた基板70との間で、装着ヘッド112を移動させる。これにより、装着部102では、テープフィーダ110から供給された電子部品94が、吸着ノズル116により保持され、その吸着ノズル116によって保持された電子部品94が、基板70の上に装着される。
【0020】
また、制御装置27は、
図2に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122とを備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、ディスペンスヘッド76、照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、テープフィーダ110、装着ヘッド112、移動装置114に接続されている。コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26の作動が、コントローラ120によって制御される。
【0021】
(B)導電性ペーストの導電性
次に、導電性ペーストの導電性について説明する。導電性ペーストは、上述したように、回路配線を形成するものであって、紫外線の照射により硬化する樹脂に、金属微粒子、有機溶剤、及び光開始剤等が混ぜ合わされたものである。導電性ペーストでは、紫外線の照射により樹脂が硬化し、収縮することで、金属微粒子が接触し、(回路配線の)導電性が発現する。さらに、導電性ペーストでは、加熱焼成により、金属微粒子間の接触面積が増加することで、(回路配線の)導電性が向上する。
【0022】
ここで、導電性の向上について、具体的に説明する。例えば、紫外線照射によって導電性が発現した導電性ペーストが80℃で加熱焼成される場合において、その加熱焼成前の導電性ペーストの体積抵抗率を100%とする。このような場合において、その加熱焼成の時間が約50分以上になると、
図3に示すように、導電性ペーストの体積抵抗率が約60%まで低下する。つまり、
図3によれば、導電性ペーストの導電性は、加熱焼成により、約1.6倍(=100%/60%)向上する。
【0023】
なお、導電性ペーストに含まれている有機溶剤は、導電ペーストが基板70の上に吐出された際に揮発して、導電性ペーストから大気に放出される。そのため、紫外線照射によって硬化した導電性ペーストが加熱焼成されても、導電ペーストの体積収縮や副生成物の発生が起きないため、剥がれやボイド等の不具合が(回路配線に)生じない。
【0024】
(C)3次元積層電子デバイスの製造方法
次に、3次元積層電子デバイスの製造方法について説明する。
図4に示すように、3次元積層電子デバイスの製造方法130は、積層造形工程P10と、加熱工程P12と、剥離工程P14とを備えている。積層造形工程P10では、上記3次元積層電子デバイス製造装置10によって、基台60に対してセットされた基板70の上に、3次元積層造形物202(
図5乃至
図8参照)が造形される。加熱工程P12では、3次元積層造形物202(
図8参照)が基板70ごと加熱されることによって、3次元積層電子デバイス204(
図8参照)が製造される。剥離工程P14では、基板70が3次元積層電子デバイス204から剥がされる。
【0025】
(C-1)積層造形工程
積層造形工程P10は、コントローラ120によって実行され、絶縁層処理S10と、導電性ペースト処理S20と、装着処理S30とを有している。なお、上記の各処理S10,S20,S30の実行順序は、3次元積層造形物202の積層構造等によって決定される。そのため、上記の各処理S10,S20,S30は、それらの表記順で繰り返されるものでない。以下の説明では、
図5乃至
図8に示された3次元積層造形物202が造形される際の、積層造形工程P10について説明する。
【0026】
まず、絶縁層処理S10では、
図5に示すように、基板70の上に、3次元積層造形物202の1層目の絶縁層206が形成される。そのためには、樹脂積層体形成処理S12と樹脂積層体硬化処理S14とが実行される。樹脂積層体形成処理S12では、ステージ52が第2造形ユニット24の下方に移動される。これにより、ステージ52の基台60に対してセットされている基板70は、第2造形ユニット24の下方に移動される。さらに、印刷部84において、インクジェットヘッド88が、基板70の上面に対して紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、第2硬化部86において、平坦化装置90が、その吐出された紫外線硬化樹脂を、その膜厚が均一となるように平坦化する。その後、樹脂積層体硬化処理S14では、照射装置92が、その平坦化された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、紫外線硬化樹脂が硬化する。以後、樹脂積層体形成処理S12と樹脂積層体硬化処理S14とが繰り返されることによって、基板70の上では、3次元積層造形物202の1層目の絶縁層206が形成される。
【0027】
導電性ペースト処理S20では、基板70の上に、3次元積層造形物202の1層目の回路配線208が形成され、硬化される。そのためには、回路配線形成処理S22と回路配線硬化処理S24とが実行される。回路配線形成処理S22では、ステージ52が第1造形ユニット22の下方に移動される。さらに、吐出部72において、ディスペンスヘッド76が、3次元積層造形物202の絶縁層206の上面に対して、導電性ペーストを配線回路パターンに応じて線状に吐出する。これにより、3次元積層造形物202の絶縁層206の上面では、1層目の回路配線208が複数形成される。その後、回路配線硬化処理S24では、第1硬化部74において、照射装置78が、その線状に吐出された導電性ペーストに紫外線を照射する。これにより、導電性ペーストが硬化する。このようにして、3次元積層造形物202の絶縁層206の上面では、各回路配線208が硬化される。
【0028】
以上より、3次元積層造形物202の絶縁層206には、各回路配線208が積層される。さらに、各回路配線208では、それらの材料である導電性ペースト(つまり、各回路配線208)が紫外線で硬化することにより、上述したようにして、導電性が発現する。これらの点は、下記回路配線212,220,226においても、同様である。
【0029】
その後、上記絶縁層処理S10及び導電性ペースト処理S20が繰り返される。これにより、
図6に示すように、3次元積層造形物202では、2層目の絶縁層210が形成され、2層目の回路配線212が複数形成され、硬化される。
【0030】
但し、絶縁層処理S10では、樹脂積層体形成処理S12と樹脂積層体硬化処理S14とが繰り返される際において、インクジェットヘッド88が、1層目の各回路配線208の上面に対して、所定の部分が概して円形に露出するように、紫外線硬化樹脂を吐出する。これにより、2層目の絶縁層210では、複数のビアホール214が形成される。各ビアホール214は、2層目の絶縁層210の上面から1層目の回路配線208の上面に向かうに連れて先細りした形状である。さらに、インクジェットヘッド88が、1層目の絶縁層206の上面に対して、所定の部分が概して矩形に露出するように、紫外線硬化樹脂を吐出する。これにより、2層目の絶縁層210では、空間部216が形成される。
【0031】
また、導電性ペースト処理S20では、回路配線形成処理S22において、導電性ペーストが、2層目の絶縁層210の上面から、各ビアホール214の傾斜面を経由して、1層目の各回路配線208の上面に至るまで吐出される。従って、回路配線硬化処理S24が実行されると、2層目の回路配線212が、各ビアホール214の傾斜面を経由して、1層目の各回路配線208と電気的に接続される。
【0032】
その後、上記絶縁層処理S10及び導電性ペースト処理S20が繰り返される。これにより、
図7に示すように、3次元積層造形物202では、3層目の絶縁層218が形成され、3層目の回路配線220が複数形成され、硬化される。その際、2層目の絶縁層210にある各ビアホール214は、硬化した紫外線硬化樹脂で埋められる。さらに、3層目の絶縁層218では、2層目の絶縁層210に形成された各ビアホール214や空間部216と同様にして、複数のビアホール222や空間部224が形成される。これにより、3層目の回路配線220が、各ビアホール222の傾斜面を経由して、2層目の各回路配線212と電気的に接続される。また、3層目の絶縁層218に形成された空間部224は、2層目の絶縁層210にある空間部216と上下方向で連なった状態で設けられる。
【0033】
なお、
図7では、1層目の絶縁層206の上面にある各回路配線208と、2層目の絶縁層210に形成された各ビアホール214や空間部216は、省略している。これらの点は、
図8及び
図9でも同様である。
【0034】
続いて、装着処理S30が実行される。装着処理S30では、ステージ52が装着ユニット26の下方に移動される。装着ユニット26では、テープフィーダ110により供給された電子部品94が、
図7に示すように、装着ヘッド112の吸着ノズル116に保持される。その保持された電子部品94は、装着ヘッド112が移動装置114で移動するに伴って、空間部224(及び空間部216)に装着される。その際、電子部品94の各電極96は、上方を向く。
【0035】
その後、上記絶縁層処理S10及び導電性ペースト処理S20が繰り返される。これにより、
図7に示すように、3層目の絶縁層218にある各ビアホール222は、硬化した紫外線硬化樹脂で埋められる。また、空間部224(及び空間部216)を区画する内壁面と電子部品94との間も、硬化した紫外線硬化樹脂で埋められる。さらに、4層目の回路配線226が、3層目の回路配線220の一部と電子部品94の各電極96とを繋ぐように形成され、硬化される。これにより、電子部品94は、各回路配線208,212,220,226と電気的に接続される。
【0036】
その後、上記絶縁層処理S10が実行される。これにより、
図8に示すように、4層目の絶縁層228が形成される。
【0037】
なお、
図8では、2層目の絶縁層210の上面にある各回路配線212と、3層目の絶縁層218に形成された各ビアホール222や空間部224は、省略している。これらの点は、
図9でも同様である。
【0038】
(C-2)加熱工程
加熱工程P12では、基板70が、その上面に3次元積層造形物202が造形された状態(つまり、付着した状態)のままで、基台60から取り外された後、加熱部200の電気炉内にセットされる。その電気炉では、3次元積層造形物202が基板70ごと80℃にて60分加熱される。
【0039】
これにより、3次元積層造形物202では、各回路配線208,212,220,226が加熱焼成されることにより、上述したようにして、各回路配線208,212,220,226の導電性が向上する。このようにして、基板70の上面では、3次元積層造形物202が3次元積層電子デバイス204となる。これにより、3次元積層電子デバイス204が製造される。
【0040】
(C-3)剥離工程
剥離工程P14では、基板70が、その上面に3次元積層電子デバイス204が製造された状態(つまり、付着した状態)のままで、加熱部200の電気炉から取り出される。その後、
図9に示すように、溶剤などによって、基板70から3次元積層電子デバイス204が分離される。
【0041】
(D)まとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の3次元積層電子デバイスの製造方法130では、加熱工程P12が積層造形工程P10の終了後に一度だけ実行されることから、3次元積層電子デバイス204に対する熱負荷の低減や生産時間の短縮が可能である。
【0042】
ちなみに、本実施形態において、導電性ペースの金属微粒子は、導電性粒子の一例である。3次元積層電子デバイス製造装置10は、製造装置の一例である。各回路配線208,212,220,226は、回路配線単層の一例である。回路配線形成処理S22は、形成処理の一例である。回路配線硬化処理S24は、硬化処理の一例である。
【0043】
(E)変更例
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、3次元積層造形物202には、合計で4層の回路配線208,212,220,226が含まれているが、4層以外の層数の回路配線が含まれていてもよい。このような場合でも、その回路配線(つまり、導電性ペースト)の導電性を紫外線で発現させ、その発現させた導電性を加熱焼成で向上させることは可能である。
【0044】
また、第1造形ユニット22では、転写装置が導電性ペーストを転写することなどによって、各回路配線208,212,220,226が形成されてもよい。
【0045】
また、基板70の上面には、
図10に示すように、サポート材230を含んだ3次元積層造形物232が造形されもよい。サポート材230は、加熱工程P12で溶解するワックス系の材料(例えば、融点が60℃のろう材)で作られたものであり、3次元積層造形物232の最下部において、基板70と3次元積層造形物232の絶縁層234の間に配置されることによって、絶縁層234を支えている。
【0046】
このような場合には、加熱工程P12が実行されると、
図11に示すように、基板70の上面において、3次元積層造形物232が3次元積層電子デバイス236になると共に、サポート材230が溶解する。その後に、剥離工程P14が実行されると、3次元積層電子デバイス236が基板70から分離する。
【0047】
3次元積層造形物232では、絶縁層234が複数の層で構成されている。さらに、3次元積層造形物232は、複数の層で構成された回路配線238と、複数のビアホール240と、複数の電子部品242,244等を有している。もっとも、3次元積層造形物232は、上記3次元積層造形物202と同様にして、3次元積層電子デバイスの製造方法130で造形されるので、3次元積層造形物232が有する、絶縁層234と、回路配線238と、ビアホール240と、電子部品242,244等の説明については、省略する。なお、回路配線238を構成する各層は、回路配線単層の一例である。
【符号の説明】
【0048】
10 3次元積層電子デバイス製造装置
130 3次元積層電子デバイスの製造方法
202,232 3次元積層造形物
204,236 3次元積層電子デバイス
206,210,218,234 絶縁層
208,212,220,226,238 回路配線
230 サポート材
P10 積層造形工程
P12 加熱工程
S22 回路配線形成処理
S24 回路配線硬化処理