(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ディスプレイおよび当該ディスプレイを備えた電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/32 20160101AFI20231201BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231201BHJP
G09G 3/30 20060101ALI20231201BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20231201BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20231201BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09G3/20 611A
G09G3/20 624B
G09G3/20 641A
G09G3/30 J
G09G3/30 K
H01L33/00 H
H01L33/32
(21)【出願番号】P 2019561383
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 IB2018059848
(87)【国際公開番号】W WO2019130138
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2017247227
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018029746
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】楠 紘慈
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川島 進
(72)【発明者】
【氏名】豊高 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202778(JP,A)
【文献】国際公開第03/038795(WO,A1)
【文献】特開2017-120412(JP,A)
【文献】国際公開第03/052728(WO,A1)
【文献】特開2016-213441(JP,A)
【文献】特開2002-111786(JP,A)
【文献】特開2006-351503(JP,A)
【文献】国際公開第2008/006756(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101276528(CN,A)
【文献】特表2003-504797(JP,A)
【文献】特表2008-535208(JP,A)
【文献】特開2015-126454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00-3/08
3/12-3/16
3/19-3/26
3/30-3/34
3/38-5/42
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、
前記画素は、第1の表示素子乃至第3の表示素子と、マイクロコントローラと、を有し、
前記第1の表示素子は、第1のマイクロ発光ダイオードを有し、
前記第2の表示素子は、第2のマイクロ発光ダイオードを有し、
前記第3の表示素子は、第3のマイクロ発光ダイオードを有し、
前記マイクロコントローラは、第1のトランジスタ乃至第3のトランジスタと、三角波生成回路と、第1のコンパレータ乃至第3のコンパレータと、第1のスイッチ乃至第3のスイッチと、第1の定電流回路乃至第3の定電流回路と、を有し、
前記第1の定電流回路乃至前記第3の定電流回路の各々は、チャネル形成領域に酸化物半導体を含む第4のトランジスタ及び第5のトランジスタと、チャネル形成領域にシリコンを含む第6のトランジスタ及び第7のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、オフ状態とすることで前記画素に書き込まれる第1の画像データに応じた第1の電位を保持する機能を有し、
前記第2のトランジスタは、オフ状態とすることで前記画素に書き込まれる第2の画像データに応じた第2の電位を保持する機能を有し、
前記第3のトランジスタは、オフ状態とすることで前記画素に書き込まれる第3の画像データに応じた第3の電位を保持する機能を有し、
前記三角波生成回路は、三角波の信号を生成する機能を有し、
前記第1のコンパレータは、前記第1の電位と、前記三角波の信号とに応じた第1の出力信号を生成する機能を有し、
前記第2のコンパレータは、前記第2の電位と、前記三角波の信号とに応じた第2の出力信号を生成する機能を有し、
前記第3のコンパレータは、前記第3の電位と、前記三角波の信号とに応じた第3の出力信号を生成する機能を有し、
前記第1のスイッチは、前記第1の出力信号に応じて前記第1の定電流回路を流れる電流を前記第1の表示素子に流すか否かを制御する機能を有し、
前記第2のスイッチは、前記第2の出力信号に応じて前記第2の定電流回路を流れる電流を前記第2の表示素子に流すか否かを制御する機能を有し、
前記第3のスイッチは、前記第3の出力信号に応じて前記第3の定電流回路を流れる電流を前記第3の表示素子に流すか否かを制御する機能を有し、
前記第1の定電流回路乃至前記第3の定電流回路の各々において、
前記第4のトランジスタは、ソースまたはドレインの一方が、前記第6のトランジスタのソースまたはドレインの一方、前記第6のトランジスタのゲート、及び前記第5のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタは、ソースまたはドレインの他方が前記第7のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第5のトランジスタは、ゲートが前記第4のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第6のトランジスタは、ソースまたはドレインの他方が電源電圧の与えられる配線と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタは、ソースまたはドレインの一方が前記配線と電気的に接続され、
前記第1の定電流回路において、前記第7のトランジスタは、前記第1のスイッチを介して前記電流を前記第1の表示素子に供給する機能を有し、
前記第2の定電流回路において、前記第7のトランジスタは、前記第2のスイッチを介して前記電流を前記第2の表示素子に供給する機能を有し、
前記第3の定電流回路において、前記第7のトランジスタは、前記第3のスイッチを介して前記電流を前記第3の表示素子に供給する機能を有するディスプレイ。
【請求項2】
請求項
1において、
前記第1のトランジスタは、チャネル形成領域を有する第1の半導体層を有し、
前記第1の半導体層は、酸化物半導体を含むディスプレイ。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2において、
前記
第1のコンパレータおよび前記
第1のスイッチは、第6のトランジスタを有し、
前記第6のトランジスタは、チャネル形成領域を有する第2の半導体層を有し、
前記第2の半導体層は、シリコンを含むディスプレイ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一において、
前記
第1のマイクロ発光ダイオードは、ガリウム窒化物、およびインジウム・窒化ガリウム化合物を含む活性層およびクラッド層を備えた素子であるディスプレイ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載のディスプレイを備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、ディスプレイおよび当該ディスプレイを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ発光ダイオード(以下、マイクロLED(LED:Light Emitting Diode))を備えたディスプレイ、照明装置が提案されている(例えば特許文献1)。マイクロLEDを備えたディスプレイは、高輝度化が可能であるため、壁や机に映像を投射して視認すること、屋外での視認性が向上すること、などの利点があり、次世代のディスプレイとして研究開発が活発である。
【0003】
マイクロLEDは、電流密度に比例して輝度が変化する。マイクロLEDは、電流密度に対して色度が多少変化する。特許文献2では、マイクロLEDに対してパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御を行う構成について開示している。PWM制御を行って駆動することで、良好な色度及び所望の輝度を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2014/0367705号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0102752号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロLEDに対してPWM制御で輝度の制御を行う構成は、良好な色度による表示を行う上で有効である。しかしながら、静止画等の表示を行う場合であっても駆動回路を動作し続ける必要がある。
【0006】
本発明の一態様は、新規なディスプレイおよび当該ディスプレイを備えた電子機器を提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、静止画表示時において、消費電力の低減のために駆動回路の動作を停止しても、電流密度に対してマイクロ発光ダイオードの色度変化が小さいディスプレイの提供することを課題の一とする。
【0007】
なお、本発明の一態様は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一の課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、複数の画素を有し、画素は、表示素子と、マイクロコントローラと、を有し、表示素子は、マイクロ発光ダイオードを有し、マイクロコントローラは、第1のトランジスタと、三角波生成回路と、コンパレータと、スイッチと、定電流回路と、を有し、第1のトランジスタは、オフ状態とすることで画素に書き込まれるデータに応じた電位を保持する機能を有し、三角波生成回路は、三角波の信号を生成する機能を有し、コンパレータは、電位と、三角波の信号とに応じた出力信号を生成する機能を有し、スイッチは、出力信号に応じて定電流回路を流れる電流を表示素子に流すか否かを制御する機能を有するディスプレイである。
【0009】
本発明の一態様は、複数の画素と、三角波生成回路と、を有し、画素は、表示素子と、マイクロコントローラと、を有し、三角波生成回路は、三角波の信号を生成する機能と、画素に三角波の信号を出力する機能を有し、表示素子は、マイクロ発光ダイオードを有し、マイクロコントローラは、第1のトランジスタと、コンパレータと、スイッチと、定電流回路と、を有し、第1のトランジスタは、オフ状態とすることで画素に書き込まれるデータに応じた電位を保持する機能を有し、コンパレータは、電位と、三角波の信号とに応じた出力信号を生成する機能を有し、スイッチは、出力信号に応じて定電流回路を流れる電流を表示素子に流すか否かを制御する機能を有するディスプレイである。
【0010】
本発明の一態様において、第1のトランジスタは、チャネル形成領域を有する第1の半導体層を有し、第1の半導体層は、酸化物半導体を有するディスプレイが好ましい。
【0011】
本発明の一態様において、コンパレータおよびスイッチは、第2のトランジスタを有し、第2のトランジスタは、チャネル形成領域を有する第2の半導体層を有し、第2の半導体層は、シリコンを有するディスプレイが好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、定電流回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、を有し、第3のトランジスタは、チャネル形成領域を有する第3の半導体層を有し、第3の半導体層は、酸化物半導体を有し、第4のトランジスタは、チャネル形成領域を有する第4の半導体層を有し、第4の半導体層は、シリコンを有するディスプレイが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、マイクロ発光ダイオードは、ガリウム窒化物、およびインジウム・窒化ガリウム化合物を有する活性層およびクラッド層を備えた素子であるディスプレイが好ましい。
【0014】
本発明の一態様は、上記ディスプレイを備えた電子機器である。
【0015】
なおその他の本発明の一態様については、以下で述べる実施の形態における説明、及び図面に記載されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様とすることで、新規なディスプレイおよび当該ディスプレイを備えた電子機器を提供することができる。又は、本発明の一態様とすることで、静止画表示時において、消費電力の低減のために駆動回路の動作を停止しても、電流密度に対してマイクロ発光ダイオードの色度変化が小さいディスプレイの提供することができる。
【0017】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。これら以外の効果は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ディスプレイの構成例を説明するブロック図および回路図。
【
図3】ディスプレイの構成例を説明するブロック図および回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
なお本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0021】
なお図面において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るディスプレイの構成例について説明する。
【0023】
図1(A)は、本発明の一態様のディスプレイのブロック図である。
図1(A)に示すディスプレイ10は、ゲートドライバ13、ソースドライバ14、電源回路15および表示部11を有する。表示部11は、複数の画素20を有する。
【0024】
ゲートドライバ13は、画素20を駆動するための信号、例えば走査信号を配線GLに出力する機能を有する。ソースドライバ14は、画素20を駆動するための信号、例えば画素データ(画像データ、ビデオデータともいう)を配線SLに出力する機能を有する。電源回路15は、画素20を駆動するための電源電圧、例えば電圧VDDを配線VLに出力する機能を有する。
【0025】
図1(B)は、
図1(A)に示す画素20の構成を説明するための図である。画素20は、マイクロコントローラ30および表示素子90を有する。
【0026】
マイクロコントローラ30は、配線SL、配線GLおよび配線VLに接続される。配線SLは、画像データを画素20に伝える機能を有する配線である。配線GLは、画素データを画素に書き込む又は保持させるための走査信号を伝える機能を有する配線である。配線VLは、電源電圧VDDを画素20に伝える機能を有する配線である。
【0027】
表示素子90は、マイクロLEDである。マイクロLEDは、例えば、1辺が10μm乃至100μmほどの発光ダイオードである。表示素子90が有する発光ダイオードは、無機材料、例えばガリウム窒化物、およびインジウム・窒化ガリウム化合物を用いることができる。当該構成とすることで、有機材料を用いた表示素子と比べて長寿命化を図ることができる。表示素子90が有する発光ダイオードは、自発光素子であり優れた黒表示を実現可能であるため、コントラスト比が良好なディスプレイとすることができる。また、表示素子90は、赤、緑、青といった異なる波長の光を射出可能であるため、カラーフィルタや偏光板を不要としたカラー表示が低消費電力で実現できる。
【0028】
また表示素子90は、出力電流に対する高速応答が可能であるため、画素に定電流回路を設けてデューティ駆動を行う時間階調方式採用することができる。そのため、表示素子90に対してパルス幅変調制御を行って駆動することができ、良好な色度で且つ所望の輝度を得ることができる。
【0029】
また表示素子90は、有機材料を用いた表示素子と比べて発光効率の高いため、屋外での視認性が良好なディスプレイとすることができる。また表示素子90は、輝度を極めて高くすることができるため、照明として利用することが可能である。
【0030】
マイクロコントローラ30は、表示素子90に対して、入力される画素データに応じたPWM制御による階調表示を行う機能を有する。マイクロコントローラ30は、画素データを保持する機能を有する。マイクロコントローラ30が画素データを保持する機能を有することで、画素データを出力する機能を有する回路、例えばソースドライバ14を、マイクロコントローラ30で画素データを保持している期間に、機能を間欠的に停止させることが可能となる。
【0031】
マイクロコントローラ30は、画素データに応じてデューティ比の異なる信号を生成するための回路を有する。マイクロコントローラ30は、スイッチおよび定電流回路を有する。マイクロコントローラ30は、内部で生成した信号に応じてスイッチのオンまたはオフを制御する機能を有する。マイクロコントローラ30はスイッチを間欠的にオンにすることで、定電流回路で生成した電流(Iled)を表示素子90に流す機能を有する。当該構成とすることで、発光素子LEDごとに異なるPWM制御を行うことができるため、良好な色度及び所望の輝度を得ることができる。
【0032】
本発明の一態様の構成とすることで、静止画表示時など繰り返しの画素データの書き込みの必要のない期間において、ソースドライバ14の動作を停止させて消費電力の低減を図ることができるとともに、発光ダイオードである表示素子90に対してPWM制御を行うことが可能となるため、色度変化が小さいディスプレイとすることができる。
【0033】
図1(C)は、
図1(B)に示すマイクロコントローラ30の構成例を説明するための図である。マイクロコントローラ30は、トランジスタ31、容量素子32、三角波生成回路33、コンパレータ34、定電流回路35、およびスイッチ36を有する。
【0034】
トランジスタ31のソース又はドレインの一方は、配線SLに接続される。トランジスタ31のゲートは、配線GLに接続される。トランジスタ31のソース又はドレインの他方は、コンパレータ34の非反転入力端子に接続される。
図1(C)に図示するように、トランジスタ31のソース又はドレインの他方とコンパレータ34の非反転入力端子とが接続されるノードをノードV
Sという。ノードV
Sには、容量素子32が接続される。容量素子32は、ノードV
Sでの電荷保持特性を高めるためのものであり、省略することが可能である。
【0035】
トランジスタ31は、オフ時にソースとドレインの間を流れる電流(オフ電流)が低いことが好適である。極めてオフ電流の低いトランジスタを用いることで、ノードVSの電位、つまり画素20に書き込まれた画素データに応じた電位を長時間保持することができる。そのため、トランジスタ31をサンプル&ホールド回路として機能させることができる。当該トランジスタ31には、例えば、金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタ)を用いることができる。金属酸化物としては、Inと、Znと、M(MはAl、Ti、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)と、を有する。OSトランジスタについては、後の実施の形態で詳述する。
【0036】
三角波生成回路33は、PWM制御を行うための、三角波を出力する機能を有する。三角波生成回路33は、コンパレータ34の反転入力端子に接続される。
図1(C)に図示するように、三角波生成回路33とコンパレータ34の反転入力端子とが接続されるノードをノードV
Tという。
【0037】
コンパレータ34は、比較回路として機能する。非反転入力端子は、トランジスタ31のソース又はドレインの一方、つまりノードVSと接続され、ノードVSの電位が与えられる。反転入力端子は、三角波生成回路33の三角波を与える配線、つまりノードVTと接続され、ノードVTの電位が与えられる。出力端子は、ノードVSの電位とノードVTの電位との大小関係を変化する電位VPWMが出力される。つまりコンパレータ34は、マイクロコントローラ30に保持した画素データに応じた電位と、三角波の信号と、に応じた出力信号を生成する。
【0038】
定電流回路35は、定電流源として機能する回路である。定電流回路35は配線VLに接続される。定電流回路35はスイッチ36と直列に接続される。定電流回路35は、外部から定電流を流すためのデータを書き込んで保持させた状態として定電流を流す構成としてもよいし、内部で電位を生成して該電位に応じた定電流を流す構成としてもよい。
【0039】
スイッチ36は、定電流回路35の流す電流を表示素子90に流す電流Iledとして流すか否かをオンまたはオフで制御するスイッチとして機能する。スイッチ36のオンまたはオフは、コンパレータ34の出力端子の信号によって制御される。
【0040】
三角波生成回路33、コンパレータ34、スイッチ36および定電流回路35を構成するトランジスタは、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタ(Siトランジスタ)を用いることが好適である。Siトランジスタとしては、単結晶シリコンを半導体層に有するトランジスタを挙げることができる。Siトランジスタは、OSトランジスタと比べてオン時にソースとドレインの間を流れる電流(オン電流)が大きい。Siトランジスタは、PWM制御のように高速での動作の切り替えを要するスイッチ36等の回路への適用が好適である。ただし、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、三角波生成回路33、コンパレータ34、スイッチ36および定電流回路35を構成するトランジスタを、OSトランジスタとしても良い。
【0041】
三角波生成回路33、コンパレータ34、スイッチ36および定電流回路35を構成するトランジスタをSiトランジスタとすることで、トランジスタ31を構成するOSトランジスタを積層させる構成とすることができる。当該構成とすることで、マイクロコントローラ30を構成する回路の配置面積を縮小することができる。
【0042】
なお上述した定電流回路35は、外部から定電流を流すためのデータを書き込んで保持させるためにオフ電流が低いOSトランジスタを用いる構成が好適である。当該構成とすることで、SiトランジスタとOSトランジスタとを積層させることによる回路の配置面積を縮小することが図れる他、トランジスタ数を削減することができるため、好ましい。
【0043】
図2は、
図1(A)乃至(C)で説明した本発明の一態様のディスプレイの動作を説明するための波形図である。
図2では、
図1(C)で図示した配線SL、配線GL、ノードV
S、ノードV
T、コンパレータ34の出力端子の電位V
PWMの各波形を図示している。
【0044】
図2に図示するように配線SLには、各行の画素に供給する画素データに相当する電位が与えられる。ノードV
Sには、画素データに相当する電位が保持される。ノードV
Sに保持された電位は、配線GLをLレベルとすることで保持され続ける。ノードV
Tは、一定の振幅電圧および周波数の三角波による電位が与えられる。ノードV
SおよびノードV
Tにおける電位の大小関係によって、電位V
PWMの変化による、パルス幅(デューティ)が決まる。ノードV
Sに保持された電位は、配線GLをHレベルとすることで更新される。ノードV
Sに保持される電位が更新されることで電位V
PWMが変化する。電位V
PWMが変化し、設定した間隔で周期的に電流I
ledが流れることで所望の階調に切り替えることができる。
【0045】
本発明の一態様の構成とすることで、静止画表示時など繰り返しの画素データの書き込みの必要のない期間において、ソースドライバ14の動作を停止させても画素20でのPWM制御に応じた階調表示を行うことができる。そのため、消費電力の低減を図ることができるとともに、色度変化が小さいディスプレイとすることができる。
【0046】
なお本発明の一態様は、
図1(A)乃至(C)で説明した構成に限らない。別の構成として、
図3(A)乃至(C)の構成とすることもできる。
【0047】
図3(A)に示すディスプレイ10Aは、ゲートドライバ13、ソースドライバ14、電源回路15、表示部11、三角波生成回路16を有する。つまり、
図3(A)は、
図1(A)乃至(C)で説明した三角波生成回路33を表示部11の外に配置して、三角波生成回路16とする構成に相当する。表示部11は、複数の画素20Aを有する。
【0048】
図3(B)は、
図3(A)に示す画素20Aの構成を説明するための図である。画素20Aは、マイクロコントローラ30Aおよび表示素子90を有する。マイクロコントローラ30Aは、配線SL、配線GL、配線VL、配線TLに接続される。配線TLは、三角波生成回路33Dが生成する三角波を伝える機能を有する配線である。
【0049】
図3(C)は、
図3(B)に示すマイクロコントローラ30Aの構成例を説明するための図である。マイクロコントローラ30Aは、トランジスタ31、容量素子32、コンパレータ34、定電流回路35、およびスイッチ36を有する。つまり、
図3(C)は、
図1(C)で説明した三角波生成回路33が削減された構成に相当する。マイクロコントローラ30Aにおいて、三角波は配線TLを介して与えられる。
【0050】
なお本発明の一態様は、
図3(A)乃至
図3(C)で説明した構成に限らない。別の構成として、
図4(A)及び(B)の構成とすることもできる。
【0051】
図4(A)に示すディスプレイの画素20Bの構成を説明するための図では、ひとつのマイクロコントローラ30Bで3つの表示素子90_R、90_G、90_Bのそれぞれに供給する電流I
led_R、I
led_G、I
led_Bを制御する構成を図示している。マイクロコントローラ30Bは、配線SL、配線GL_R、配線GL_G、配線GL_B、配線VLに接続される。配線GL_R、配線GL_G、配線GL_Bは、配線SLに与えられる画素データを異なるタイミングでマイクロコントローラ30Bに書き込むための信号が与えられる配線である。
【0052】
図4(B)は、
図4(A)に示すマイクロコントローラ30Bの構成例を説明するための図である。マイクロコントローラ30Bは、
図1(C)で説明した各構成要素、三角波生成回路33の他、トランジスタ31_R、31_G、31_B、容量素子32、コンパレータ34、定電流回路35、およびスイッチ36を有する。トランジスタ31_R、31_G、31_Bは、配線GL_R、配線GL_G、配線GL_Bによって、異なるタイミングで画素データを書き込むための信号が与えられる。そして、マイクロコントローラ30Bの内の別々のノードV
S_R、V
S_G、V
S_Bに画素データを保持することで、各色に応じた表示素子90に別々のPWM制御(V
PWM_R、V
PWM_G、V
PWM_B)を施すことができる。
【0053】
なお本発明の一態様は、
図4(A)及び(B)で説明した構成に限らない。別の構成として、
図5(A)及び(B)の構成とすることもできる。
【0054】
図5(A)に示すディスプレイの画素20Cの構成を説明するための図では、ひとつのマイクロコントローラ30Cで3つの表示素子90_R、90_G、90_Bのそれぞれに供給する電流I
led_R、I
led_G、I
led_Bを制御する構成を図示している。マイクロコントローラ30Cは、配線GL、配線SL_R、配線SL_G、配線SL_B、配線VLに接続される。配線SL_R、配線SL_G、配線SL_Bは、配線GLをHレベルとするタイミングで別々の画素データをマイクロコントローラ30Cに書き込むための配線である。
【0055】
図5(B)は、
図5(A)に示すマイクロコントローラ30Cの構成例を説明するための図である。マイクロコントローラ30Cは、
図1(C)で説明した各構成要素、三角波生成回路33の他、複数のトランジスタ31_R、31_G、31_B、容量素子32、コンパレータ34、定電流回路35、およびスイッチ36を有する。トランジスタ31_R、31_G、31_Bは、配線GLによって、同じタイミングで配線SL_R、配線SL_G、配線SL_Bから画素データを書き込むため信号が与えられる。そして、マイクロコントローラ30Cの内の別々のノードV
S_R、V
S_G、V
S_Bに画素データを保持することで、各色に応じた表示素子90に別々のPWM制御(V
PWM_R、V
PWM_G、V
PWM_B)を施すことができる。
【0056】
次いで
図1(C)等で説明した定電流回路35の構成例について、
図6(A)、(B)および
図7(A)、(B)を用いて説明する。
【0057】
図6(A)では、OSトランジスタを用いた定電流回路35Aの構成例を示す。
図6(A)では、OSトランジスタで構成されるトランジスタ41、Siトランジスタで構成されるpチャネル型のトランジスタ42、および容量素子43を図示している。配線GLPはトランジスタ41のオンまたはオフを制御する信号が与えられる。配線SLPはノードMNに保持するための信号が与えられる。ノードMNは、保持する信号の電位に応じてトランジスタ42を流れるI
ledを生成する。容量素子43は、ノードMNに与えられる電荷を保持する。トランジスタ41をオフ電流が低いOSトランジスタとすることで、ノードMNのリーク電流による電位の変動を抑制することができる。
【0058】
図6(B)では、OSトランジスタを用いた定電流回路35Bの構成例を示す。
図6(B)では、OSトランジスタで構成されるトランジスタ44およびトランジスタ45、Siトランジスタで構成されるpチャネル型のトランジスタ46およびトランジスタ47、および容量素子48を図示している。配線GLPはトランジスタ44およびトランジスタ45のオンまたはオフを制御する信号が与えられる。配線SLPはノードMNに保持するための信号が与えられる。ノードMNは、保持する信号の電位に応じてトランジスタ46を流れるI
ledを生成する。容量素子48は、ノードMNに与えられる電荷を保持する。トランジスタ44およびトランジスタ45をオフ電流が低いOSトランジスタとすることで、ノードMNのリーク電流による電位の変動を抑制することができる。なお
図6(B)の構成で、トランジスタ46およびトランジスタ47はカレントミラーを構成する。そのため、電流プログラミング方式によるデータの書き込みを行うことができ、画素ごとのトランジスタ特性のばらつきの影響を受けにくくすることができる。
【0059】
図7(A)、(B)では、Siトランジスタを用いた定電流回路の構成例を示す。
図7(A)に図示する定電流回路35Cでは、Siトランジスタで構成される複数のトランジスタでバンドギャップリファレンス回路51およびオペアンプ52等を構成する。バンドギャップリファレンス回路51によって内部で電位Vcを生成して電流I
ledを生成する。
図7(A)の構成は、外部から電位Vcを与える構成とすることで、
図7(B)に図示する定電流回路35Dのようにバンドギャップリファレンス回路51を省略することができる。
【0060】
次いで
図1(C)等で説明したトランジスタ31の別の構成例について、
図8(A)、(B)を用いて説明する。
【0061】
図8(A)に図示するマイクロコントローラ30が有するトランジスタ31_DGは、トランジスタにバックゲートを設けた構成を有する。当該バックゲートはフロントゲートと電気的に接続されており、オン電流を高める効果を有する。なお
図8(B)に図示するマイクロコントローラ30が有するトランジスタ31_BGのようにバックゲートにフロントゲートと異なる定電位(VBG)を供給できる構成としてもよい。当該構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。また、トランジスタがバックゲートを有する構成は、本実施の形態における他の回路、例えば定電流回路にも有効である。
【0062】
本実施の形態は、他の実施の形態等に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0063】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したOSトランジスタの詳細について説明する。
【0064】
OSトランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む酸化物半導体等であり、例えば、後述するCAAC-OS又はCAC-OS等を用いることができる。CAAC-OSは結晶を構成する原子が安定であり、信頼性を重視するトランジスタ等に適する。また、CAC-OSは、高移動度特性を示すため、高速駆動を行うトランジスタ等に適する。
【0065】
OSトランジスタはエネルギーギャップが大きいため、極めて低いオフ電流特性を示す。また、OSトランジスタは、インパクトイオン化、アバランシェ降伏、及び短チャネル効果等が生じない等Siトランジスタとは異なる特徴を有し、信頼性の高い回路を形成することができる。
【0066】
OSトランジスタが有する半導体層は、例えばインジウム、亜鉛及びM(アルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジム又はハフニウム等の金属)を含むIn-M-Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。
【0067】
半導体層を構成する酸化物半導体がIn-M-Zn系酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8等が好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0068】
半導体層としては、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いる。例えば、半導体層は、キャリア密度が1×1017/cm3以下、好ましくは1×1015/cm3以下、さらに好ましくは1×1013/cm3以下、より好ましくは1×1011/cm3以下、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体を用いることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性又は実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。当該酸化物半導体は欠陥準位密度が低く、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0069】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0070】
半導体層を構成する酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、半導体層におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0071】
また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、半導体層におけるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0072】
また、半導体層を構成する酸化物半導体に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じてキャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため半導体層における窒素濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
【0073】
また、半導体層は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、c軸に配向した結晶を有するCAAC-OS(C-Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、又は非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0074】
非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。又は、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0075】
なお、半導体層が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のうち、二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば上述した領域のうち、いずれか二種以上の領域を含む単層構造、又は積層構造を有する場合がある。
【0076】
以下では、非単結晶の半導体層の一態様であるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0077】
CAC-OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、又はパッチ状ともいう。
【0078】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種が含まれていてもよい。
【0079】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OS(CAC-OSの中でもIn-Ga-Zn酸化物を、特にCAC-IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、又はインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、及びZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、又はガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4OZ4(X4、Y4、及びZ4は0よりも大きい実数)とする。)等と、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、又はInX2ZnY2OZ2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0080】
つまり、CAC-OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0081】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、及びOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、又はIn(1+x0)Ga(1-x0)O3(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0082】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、又はCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0083】
一方、CAC-OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC-OSとは、In、Ga、Zn、及びOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。したがって、CAC-OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0084】
なお、CAC-OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0085】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0086】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種が含まれている場合、CAC-OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0087】
CAC-OSは、例えば基板を加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つ又は複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0088】
CAC-OSは、X線回折(XRD:X-ray diffraction)測定法のひとつであるOut-of-plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折測定から、測定領域のa-b面方向、及びc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0089】
また、CAC-OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域と、該リング領域に複数の輝点が観測される。したがって、電子線回折パターンから、CAC-OSの結晶構造が、平面方向、及び断面方向において、配向性を有さないnc(nano-crystal)構造を有することがわかる。
【0090】
また、例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0091】
CAC-OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-OSは、GaOX3等が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0092】
ここで、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域は、GaOX3等が主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。したがって、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0093】
一方、GaOX3等が主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3等が主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0094】
したがって、CAC-OSを半導体素子に用いた場合、GaOX3等に起因する絶縁性と、InX2ZnY2OZ2、又はInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、及び高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0095】
また、CAC-OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。したがって、CAC-OSは、様々な半導体装置の構成材料として適している。
【0096】
本実施の形態は、他の実施の形態等に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0097】
(実施の形態3)
本実施の形態では、SiトランジスタとOSトランジスタの積層構造を有するマイクロコントローラ30に適用可能な半導体装置900の断面構成例について図面を用いて説明する。なお本実施の形態で説明する断面構成例は、上記実施の形態で説明した定電流回路にも適用可能である。
【0098】
<半導体装置900の断面構成例>
図9に、半導体装置900の一部の断面を示す。
図9に示す半導体装置900は、基板231上に、層300および層301を積層している。
図9では、基板231として単結晶半導体基板(例えば、単結晶シリコン基板)を用いる場合を示している。層300に含まれるトランジスタは、ソース、ドレイン、およびチャネルが、基板231の一部に形成される。また、層301には薄膜トランジスタ(例えば、OSトランジスタ)が含まれる。
【0099】
〔層300〕
図9において、層300は、基板231上にトランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cを有する。
図9では、トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cのチャネル長方向の断面を示している。
【0100】
前述した通り、トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cのチャネルは、基板231の一部に形成される。集積回路に高速動作が求められる場合は、基板231として単結晶半導体基板を用いることが好ましい。
【0101】
トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cは、素子分離層232によってそれぞれ電気的に分離される。素子分離層の形成は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法や、STI(Shallow Trench Isolation)法などを用いることができる。
【0102】
また、トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233c上に絶縁層234、絶縁層235、絶縁層237が設けられ、絶縁層237中に電極238が埋設されている。電極238はコンタクトプラグ236を介してトランジスタ233aのソースまたはドレインの一方と電気的に接続されている。
【0103】
また、電極238および絶縁層237の上に、絶縁層239、絶縁層240、および絶縁層241が設けられ、絶縁層239、絶縁層240、および絶縁層241の中に電極242が埋設されている。電極242は、電極238と電気的に接続される。
【0104】
また、電極242および絶縁層241の上に、絶縁層243、および絶縁層244が設けられ、絶縁層243、および絶縁層244の中に電極245が埋設されている。電極245は、電極242と電気的に接続される。
【0105】
また、電極245および絶縁層244の上に、絶縁層246および絶縁層247が設けられ、絶縁層246および絶縁層247の中に電極249が埋設されている。電極249は、電極245と電気的に接続される。
【0106】
また、電極249および絶縁層247の上に、絶縁層248および絶縁層250が設けられ、絶縁層248および絶縁層250の中に電極251が埋設されている。電極251は、電極249と電気的に接続される。
【0107】
〔層301〕
層301は、層300上に設けられる。
図9において、層301は、トランジスタ368a、トランジスタ368b、容量素子369a、および容量素子369bを有する。
図9では、トランジスタ368aおよびトランジスタ368bのチャネル長方向の断面を示している。なお、トランジスタ368a、およびトランジスタ368bは、バックゲートを有するトランジスタである。
【0108】
トランジスタ368a、およびトランジスタ368bの半導体層に、金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いる。すなわち、トランジスタ368a、およびトランジスタ368bにOSトランジスタを用いる。
【0109】
トランジスタ368a、およびトランジスタ368bは、絶縁層361および絶縁層362上に設けられている。また、絶縁層362上に絶縁層363および絶縁層364が設けられている。トランジスタ368a、およびトランジスタ368bのバックゲートは、絶縁層363および絶縁層364中に埋設されている。絶縁層364上に、絶縁層365および絶縁層366が設けられている。また、電極367が、絶縁層361乃至絶縁層366中に埋設されている。電極367は、電極251と電気的に接続されている。
【0110】
また、トランジスタ368a、トランジスタ368b、容量素子369a、および容量素子369b上に、絶縁層371、絶縁層372、および絶縁層373が形成され、絶縁層373上に電極375が形成されている。電極375はコンタクトプラグ374を介して電極367と電気的に接続される。
【0111】
また、電極375上に、絶縁層376、絶縁層377、絶縁層378、および絶縁層379が設けられている。また、電極380が、絶縁層376乃至絶縁層379中に埋設されている。電極380は、電極375と電気的に接続されている。
【0112】
また、電極380および絶縁層379の上に、絶縁層381および絶縁層382が設けられている。絶縁層382の上に絶縁層383が設けられている。
【0113】
<構成材料について>
〔基板〕
基板として用いる材料に大きな制限はないが、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板としてシリコンや炭化シリコンなどを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどを材料とした化合物半導体基板等を用いることができる。また、SOI基板や、半導体基板上に歪トランジスタやFIN型トランジスタなどの半導体素子が設けられたものなどを用いることもできる。または、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)に適用可能なヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、ヒ化インジウムガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、シリコンゲルマニウムなどを用いてもよい。すなわち、基板は、単なる支持基板に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。
【0114】
また、基板として、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることもできる。なお、基板として、可撓性基板(フレキシブル基板)を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に、トランジスタや容量素子などを直接作製してもよいし、他の作製基板上にトランジスタや容量素子などを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板とトランジスタや容量素子などとの間に剥離層を設けるとよい。
【0115】
可撓性基板としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。基板に用いる可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。基板に用いる可撓性基板は、例えば、線膨張率が1×10-3/K以下、5×10-5/K以下、または1×10-5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板として好適である。
【0116】
〔絶縁層〕
絶縁層は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどから選ばれた材料を、単層でまたは積層して用いる。また、酸化物材料、窒化物材料、酸化窒化物材料、窒化酸化物材料のうち、複数の材料を混合した材料を用いてもよい。
【0117】
なお、本明細書等において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0118】
また、半導体層として金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いる場合は、半導体層中の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の水素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の水素濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。特に、半導体層と接する絶縁層の水素濃度を低減することが好ましい。
【0119】
また、半導体層中の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の窒素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の窒素濃度を、SIMSにおいて5×1019atoms/cm3以下、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0120】
また、絶縁層の少なくとも半導体層と接する領域は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE’センターが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダングリングボンドに起因する。例えば、絶縁層として、酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いる場合、E’センター起因のスピン密度が、3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いればよい。
【0121】
また、上述のシグナル以外に二酸化窒素(NO2)に起因するシグナルが観察される場合がある。当該シグナルは、Nの核スピンにより3つのシグナルに分裂しており、それぞれのg値が2.037以上2.039以下(第1のシグナルとする)、g値が2.001以上2.003以下(第2のシグナルとする)、及びg値が1.964以上1.966以下(第3のシグナルとする)に観察される。
【0122】
例えば、絶縁層として、二酸化窒素(NO2)に起因するシグナルのスピン密度が、1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未満である絶縁層を用いると好適である。
【0123】
なお、二酸化窒素(NO2)を含む窒素酸化物(NOx)は、絶縁層中に準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体層のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物(NOx)が、絶縁層と酸化物半導体層の界面に拡散すると、当該準位が絶縁層側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁層と酸化物半導体層の界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。したがって、絶縁層として窒素酸化物の含有量が少ない膜を用いると、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することができる。
【0124】
窒素酸化物(NOx)の放出量が少ない絶縁層としては、例えば、酸化窒化シリコン層を用いることができる。当該酸化窒化シリコン層は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物(NOx)の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下である。なお、上記のアンモニアの放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。
【0125】
窒素酸化物(NOx)は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応するため、アンモニアの放出量が多い絶縁層を用いることで窒素酸化物(NOx)が低減される。
【0126】
また、酸化物半導体層に接する絶縁層のうち少なくとも1つは、加熱により酸素が放出される絶縁層を用いて形成することが好ましい。具体的には、絶縁層の表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理で行われるTDSにて、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、1.0×1019atoms/cm3以上、または1.0×1020atoms/cm3以上である絶縁層を用いることが好ましい。なお、本明細書などにおいて、加熱により放出される酸素を「過剰酸素」ともいう。
【0127】
また、過剰酸素を含む絶縁層は、絶縁層に酸素を添加する処理を行って形成することもできる。酸素を添加する処理は、酸化性雰囲気下における熱処理やプラズマ処理などで行なうことができる。または、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いて酸素を添加してもよい。酸素を添加する処理に用いるガスとしては、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガス、またはオゾンガスなどの、酸素を含むガスが挙げられる。なお、本明細書では酸素を添加する処理を「酸素ドープ処理」ともいう。酸素ドープ処理は、基板を加熱して行なってもよい。
【0128】
また、絶縁層として、ポリイミド、アクリル系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0129】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi-O-Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0130】
絶縁層の形成方法は、特に限定されない。なお、絶縁層に用いる材料によっては焼成工程が必要な場合がある。この場合、絶縁層の焼成工程と他の熱処理工程を兼ねることで、効率よくトランジスタを作製することが可能となる。
【0131】
〔電極〕
電極を形成するための導電性材料としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0132】
また、前述した金属元素および酸素を含む導電性材料を用いてもよい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。
【0133】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、窒素を含む導電性材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0134】
なお、半導体層に酸化物半導体を用いて、ゲート電極として前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いる場合は、酸素を含む導電性材料を半導体層側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料を半導体層側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素が半導体層に供給されやすくなる。
【0135】
なお、電極としては、例えば、タングステン、ポリシリコン等の埋め込み性の高い導電性材料を用いればよい。また、埋め込み性の高い導電性材料と、チタン層、窒化チタン層、窒化タンタル層などのバリア層(拡散防止層)を組み合わせて用いてもよい。なお、電極を「コンタクトプラグ」という場合がある。
【0136】
特に、ゲート絶縁層と接する電極に不純物が透過しにくい導電性材料を用いることが好ましい。不純物が透過しにくい導電性材料として、例えば窒化タンタルが挙げられる。
【0137】
絶縁層に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用い、ゲート絶縁層と接する電極に不純物が透過しにくい導電性材料を用いることで、トランジスタへの不純物の拡散をさらに抑制することができる。よって、トランジスタの信頼性をさらに高めることができる。すなわち、半導体装置の信頼性をさらに高めることができる。
【0138】
〔半導体層〕
半導体層として、単結晶半導体、多結晶半導体、微結晶半導体、または非晶質半導体などを、単体でまたは組み合わせて用いることができる。半導体材料としては、例えば、シリコンや、ゲルマニウムなどを用いることができる。また、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、酸化物半導体、窒化物半導体などの化合物半導体や、有機半導体などを用いることができる。
【0139】
また、半導体層として有機半導体を用いる場合は、芳香環をもつ低分子有機材料やπ電子共役系導電性高分子などを用いることができる。例えば、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレンなどを用いることができる。
【0140】
なお、半導体層を積層してもよい。半導体層を積層する場合は、それぞれ異なる結晶状態を有する半導体を用いてもよいし、それぞれ異なる半導体材料を用いてもよい。
【0141】
また、酸化物半導体のバンドギャップは2eV以上あるため、半導体層に酸化物半導体を用いると、オフ電流が極めて少ないトランジスタを実現することができる。具体的には、ソースとドレイン間の電圧が3.5V、室温(代表的には25℃)下において、チャネル幅1μm当たりのオフ電流を1×10-20A未満、1×10-22A未満、あるいは1×10-24A未満とすることができる。すなわち、オンオフ比を20桁以上とすることもできる。また、半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタは、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。よって、信頼性の良好なトランジスタを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧なトランジスタを提供できる。また、信頼性の良好な半導体装置などを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧な半導体装置などを提供することができる。
【0142】
また、本明細書等において、チャネルが形成される半導体層に結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタを「結晶性Siトランジスタ」ともいう。
【0143】
結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタよりも比較的高い移動度を得やすい。一方で、結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタのように極めて少ないオフ電流の実現が困難である。よって、半導体層に用いる半導体材料は、目的や用途に応じて適宜使い分けることが肝要である。例えば、目的や用途に応じて、OSトランジスタと結晶性Siトランジスタなどを組み合わせて用いてもよい。
【0144】
半導体層として酸化物半導体層を用いる場合は、酸化物半導体層をスパッタリング法で形成することが好ましい。酸化物半導体層は、スパッタリング法で形成すると酸化物半導体層の密度を高められるため、好適である。スパッタリング法で酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリングガスには、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、または、希ガスおよび酸素の混合ガスを用いればよい。また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスや希ガスは、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下にまで高純度化したガスを用いる。高純度化されたスパッタリングガスを用いて成膜することで、酸化物半導体層に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0145】
また、スパッタリング法で酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリング装置が有する成膜室内の水分を可能な限り除去することが好ましい。例えば、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、成膜室内を高真空(5×10-7Paから1×10-4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、成膜室内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10-4Pa以下とすることが好ましく5×10-5Pa以下とすることがより好ましい。
【0146】
〔金属酸化物〕
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0147】
ここで、酸化物半導体が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有する場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素として、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0148】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0149】
[金属酸化物の構成]
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0150】
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、およびCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0151】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(または正孔)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0152】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、および絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0153】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0154】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、および高い電界効果移動度を得ることができる。
【0155】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0156】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0157】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0158】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0159】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M、Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M、Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In、M、Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In、M)層と表すこともできる。
【0160】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0161】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0162】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0163】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0164】
[金属酸化物を有するトランジスタ]
続いて、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合について説明する。
【0165】
なお、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0166】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物膜のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。例えば、金属酸化物は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上とすればよい。
【0167】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0168】
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0169】
したがって、トランジスタの電気特性を安定にするためには、金属酸化物中の不純物濃度を低減することが有効である。また、金属酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0170】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0171】
金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、金属酸化物において欠陥準位が形成される。このため、金属酸化物におけるシリコンや炭素の濃度と、金属酸化物との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0172】
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0173】
また、金属酸化物において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、当該金属酸化物において、チャネル形成領域の窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、金属酸化物中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0174】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。したがって、水素が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0175】
不純物濃度が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0176】
<成膜方法について>
絶縁層を形成するための絶縁性材料、電極を形成するための導電性材料、または半導体層を形成するための半導体材料は、スパッタリング法、スピンコート法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法、高密度プラズマCVD(High density plasma CVD)法、LPCVD(low pressure CVD)法、APCVD(atmospheric pressure CVD)法等を含む)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、または、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、または、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、ディップ法、スプレー塗布法、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)を用いて形成することができる。
【0177】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。MOCVD法、ALD法、または熱CVD法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくい。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない成膜方法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0178】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0179】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0180】
なお、ALD法により成膜する場合は、材料ガスとして塩素を含まないガスを用いることが好ましい。
【0181】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0182】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様におけるマイクロコントローラおよび表示素子の実装方法の一例について図面を参照して説明する。
【0183】
本実施の形態のディスプレイは、表示素子としてマイクロLEDを用いる。なお、本実施の形態では、ダブルヘテロ接合を有するマイクロLEDについて説明する。ただし、本発明の一態様は、これに限定されず、量子井戸接合を有するマイクロLEDを用いてもよい。
【0184】
ディスプレイの表示素子としてマイクロLEDを用いることで、液晶素子や有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたディスプレイと比べて、輝度を高めることができる。ディスプレイの表示素子としてマイクロLEDを用いることで、液晶表示装置のように常時バックライトを点灯させるといった構成が不要となるため、消費電力を低減することができる。また、表示素子としてマイクロLEDを用いたディスプレイは、コントラストが高く視野角が広いため、表示品位を高めることができる。
【0185】
マイクロLEDの光を射出する領域の面積は、1mm2以下が好ましく、10000μm2以下がより好ましく、1000μm2以下がより好ましく、100μm2以下がさらに好ましい。
【0186】
なおマイクロLEDは、電極間において、クラッド層が活性層を挟み込む構造を有する。電極は、光を射出できるよう、可視光を透過する導電性材料を用いることが好ましい。活性層では、電子と正孔が結合して光を発する。つまり、活性層は、発光層ということができる。活性層を挟み込む一対のクラッド層の一方はn型のクラッド層であり、他方はp型のクラッド層である。クラッド層および活性層を含む積層構造は、赤色、黄色、緑色、または青色などの光を呈するように形成される。当該積層構造には、ガリウム・リン化合物、ガリウム・ヒ素化合物、ガリウム・アルミニウム・ヒ素化合物、アルミニウム・ガリウム・インジウム・リン化合物、ガリウム窒化物、インジウム・窒化ガリウム化合物、セレン・亜鉛化合物等を用いることができる。例えば、ガリウム窒化物、インジウム・窒化ガリウム化合物を用いることができる。
【0187】
マイクロLEDは、例えば、サファイアウェハ等のキャリア基板上に形成される。マイクロLEDは、当該キャリア基板からディスプレイの基板上に転置される。
【0188】
例えば
図10(A)に図示するように、マイクロLEDは、色(例えば赤、緑、青)ごとに異なるキャリア基板1001R、1001G、1001B上に形成される。そして、それぞれのマイクロLED(LEDチップ1002R、1002G、1002B)が基板1003上に転置される。基板1003は、マイクロコントローラが予め設けられたトランジスタ基板である。当該構成とすることで上記実施の形態で説明したディスプレイとすることができる。
【0189】
なおディスプレイへのマイクロコントローラおよび表示素子の実装方法は、
図10(A)に限らない。例えば
図10(B)に図示するように、マイクロLEDは、色(例えば赤、緑、青)ごとに異なるキャリア基板1001R、1001G、1001B上に形成し、それぞれのマイクロLED(LEDチップ1002R、1002G、1002B)を一体化したLEDチップ1004として基板1003上に転置してもよい。基板1003は、マイクロコントローラが予め設けられたトランジスタ基板である。当該構成とすることで、マイクロコントローラが設けられたトランジスタ基板へのLEDチップの転置数を削減して、上記実施の形態で説明したディスプレイとすることができる。
【0190】
なおディスプレイへのマイクロコントローラおよび表示素子の実装方法は、
図10(A)、(B)に限らない。例えば
図10(C)に図示するように、マイクロLEDは、色(例えば赤、緑、青)ごとに異なるキャリア基板1001R、1001G、1001Bと、さらにマイクロコントローラを形成したキャリア基板1005と、から、それぞれのマイクロLED(LEDチップ1002R、1002G、1002B)とマイクロコントローラの回路構成を有する半導体チップ1006を用意する。そして、LEDチップ1002R、1002G、1002Bと、半導体チップ1006と、を一体化したLEDチップ1007として基板1008上に転置する構成でもよい。基板1008は、電極および配線が設けられた基板である。当該構成とすることで、マイクロコントローラとマイクロLEDとが予め電気的に接続されたチップを用いて、上記実施の形態で説明したディスプレイとすることができる。
【0191】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【0192】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で例示したディスプレイに適用可能な半導体装置について説明する。以下で例示する半導体装置は、記憶装置として機能することができる。
【0193】
本実施の形態では、酸化物半導体を用いた記憶装置の一例として、DOSRAM(登録商標)について説明する。なお、「DOSRAM」の名称は、Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memoryに由来する。DOSRAMとは、メモリセルが、1T1C(1トランジスタ1容量)型セルであり、かつ書込みトランジスタが、酸化物半導体が適用されたトランジスタである記憶装置のことである。
【0194】
図11を用いて、DOSRAM1000の積層構造例について説明する。DOSRAM1300は、データの読み出しを行うセンスアンプ部1302と、データを格納するセルアレイ部1303とが積層されている。
【0195】
図11に示すように、センスアンプ部1302には、ビット線BL、SiトランジスタTa10、Ta11が設けられている。SiトランジスタTa10、Ta11は、単結晶シリコンウエハに半導体層をもつ。SiトランジスタTa10、Ta11は、センスアンプを構成し、ビット線BLに電気的に接続されている。
【0196】
セルアレイ部1303は複数のメモリセル1301を有する。メモリセル1301は、トランジスタTw1及び容量素子C1を有する。セルアレイ部1303において、2個のトランジスタTw1は半導体層を共有する。半導体層とビット線BLとは図示しない導電体により電気的に接続されている。
【0197】
図11に示すような積層構造は、トランジスタ群を有する回路を複数積層して構成される様々な半導体装置に適用できる。
【0198】
図11中の金属酸化物、絶縁体、導電体等は、単層でも積層でもよい。これらの作製には、スパッタリング法、分子線エピタキシー法(MBE法)、パルスレーザアブレーション法(PLA法)、CVD法、原子層堆積法(ALD法)などの各種の成膜方法を用いることができる。なお、CVD法には、プラズマCVD法、熱CVD法、有機金属CVD法などがある。
【0199】
ここでは、トランジスタTw1の半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体)で構成されている。ここでは、半導体層が3層の金属酸化物層で構成されている例を示している。半導体層は、In、Ga、およびZnを含む金属酸化物で構成されることが好ましい。
【0200】
ここで、金属酸化物は、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素を添加されることで、キャリア密度が増大し、低抵抗化する場合がある。例えば、金属酸化物を用いた半導体層を選択的に低抵抗化することで、半導体層にソース領域またはドレイン領域を設けることができる。
【0201】
なお、金属酸化物を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)などを用いて測定することができる。
【0202】
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0203】
選択的に低抵抗化した半導体層を有するトランジスタは、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。具体的には、半導体層上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記半導体層を低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、半導体層が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、低抵抗化した領域が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0204】
導電体に用いられる導電材料には、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイド等のシリサイド、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属、または上述した金属を成分とする金属窒化物(窒化タンタル、窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タングステン)等がある。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を用いることができる。
【0205】
絶縁体に用いられる絶縁材料には、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどがある。なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、酸素の含有量が窒素よりも多い化合物であり、窒化酸化物とは、窒素の含有量が酸素よりも多い化合物のことをいう。
【0206】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様のディスプレイを備えた電子機器について、図面を参照して説明する。
【0207】
以下で例示する電子機器には、上記実施の形態で説明したディスプレイを搭載することができる。これにより、低消費電力化が可能でありながら、色度変化が小さく、および輝度の高い映像を表示可能な電子機器を提供することができる。
【0208】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、ウェアラブルディスプレイ、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0209】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0210】
図12(A)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置1100は、筐体1101にディスプレイ1102が組み込まれている。ここでは、スタンド1103により筐体1101を支持した構成を示している。
【0211】
ディスプレイ1102に、本発明の一態様のディスプレイを適用することができる。これにより、低消費電力化が可能でありながら、色度変化が小さく、輝度の高い映像を表示可能なテレビジョン装置を提供することができる。
【0212】
図12(B)に、携帯型電子機器1110を示す。携帯型電子機器1110は、筐体1111にディスプレイ1112が組み込まれている。また
図12(B)では、筐体1111に撮像装置1113を図示している。
【0213】
ディスプレイ1112に、本発明の一態様のディスプレイを適用することができる。これにより、低消費電力化が可能でありながら、色度変化が小さく、および輝度の高い映像を表示可能な携帯型電子機器1110を提供することができる。なおディスプレイ1112は輝度を高くすることが可能であるため、撮像装置1113を利用する際の光源として利用することが可能である。これにより、利便性に優れた携帯型電子機器1110を提供することができる。
【0214】
図12(C)に、投影型表示デバイス1120および投影される映像を示す。投影型表示デバイス1120は、筐体1121にディスプレイおよび投射レンズが組み込まれている。また
図12(C)では、投影型表示デバイス1120から投影される映像1122を映し出すためのスクリーン1123を図示している。
【0215】
筐体1121内のディスプレイに、本発明の一態様のディスプレイを適用することができる。これにより、低消費電力化が可能でありながら、色度変化が小さく、および輝度の高い映像をスクリーンに投影可能な投影型表示デバイス1120を提供することができる。
【0216】
また本発明の一態様のディスプレイは、輝度が高く、屋外での視認性に優れている。そのため、例えば、自動車のヘッドライトとして利用することが可能である。
【0217】
図13(A)に、自動車1200を示す。自動車1200は、光源として利用することが可能なディスプレイ1201がヘッドライトとして組み込まれている。
【0218】
ディスプレイ1201に、本発明の一態様のディスプレイを適用することができる。これにより、低消費電力化が可能でありながら、色度変化が小さく、および輝度の高い光を射出可能な自動車1200を提供することができる。なおディスプレイ1201は輝度の高い光を射出するほか、ディスプレイとして視認性の高い映像を表示することが可能であるため、コミュニケーション手段として利用可能である。また、
図13(B)に図示するように複数のディスプレイ1201_1、1201_2を備えることで、光の射出方向を拡散することができる他、色に応じて方向指示器の機能やブレーキランプの機能などを分けて表示させることも可能である。
【0219】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0220】
10:ディスプレイ、11:表示部、13:ゲートドライバ、14:ソースドライバ、15:電源回路、20:画素、30:マイクロコントローラ、90:表示素子、SL:配線、GL:配線、VL:配線、31:トランジスタ、32:容量素子、33:三角波生成回路、34:コンパレータ、35:定電流回路、36:スイッチ