(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】腫瘍溶解性ウイルスおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20231201BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20231201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231201BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231201BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231201BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231201BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231201BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231201BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20231201BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K35/761
A61P35/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P3/04
A61P37/02
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/11 Z
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2019566331
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2018064524
(87)【国際公開番号】W WO2018220207
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515023121
【氏名又は名称】アカミス バイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャンピオン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ブロムリー,アリス,クレアー,ノエル
(72)【発明者】
【氏名】ベニュー,マシュー
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174200(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/059303(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/023875(WO,A1)
【文献】特表2003-506083(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030489(WO,A2)
【文献】Cancer Gene Therapy,2002年,Vol.9,pp.762-770
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする導入遺伝子カセットを含む腫瘍溶解性群Bアデノウイルスであって、導入遺伝子カセットが、配列番号12に示される塩基配列を含む、腫瘍溶解性群Bアデノウイルス。
【請求項2】
Enadenotucirevである請求項1に記載の腫瘍溶解性群Bアデノウイルス。
【請求項3】
配列番号1またはそれに対して少なくとも95%同一の塩基配列を含む、請求項1又は2に記載の腫瘍溶解性群Bアデノウイルス。
【請求項4】
配列番号1からなる
塩基配列を含む、請求項3に記載の腫瘍溶解性群Bアデノウイルス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性群Bアデノウイルス、および医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項6】
処置における使用のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性群Bアデノウイルスまたは請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
癌、インスリン抵抗性、肥満および/または免疫不全の処置における使用のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスまたは請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記腫瘍溶解性群Bアデノウイルスまたは組成物が、癌の処置のためである、請求項1~4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスまたは請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性群Bアデノウイルスまたは請求項5に記載の組成物およびさらなる抗癌剤を含む、併用剤。
【請求項10】
前記さらなる抗癌剤が、化学療法剤である、請求項9に記載の併用剤。
【請求項11】
前記さらなる抗癌剤が、チェックポイント阻害剤である、請求項9に記載の併用剤。
【請求項12】
前記抗癌剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3(CD276)阻害剤、B7-H4(B7S1)阻害剤、B7H7(HHLA2)阻害剤、CD96阻害剤、VISTA阻害剤およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、請求項11に記載の併用剤。
【請求項13】
前記阻害剤が、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項12に記載の併用剤。
【請求項14】
前記さらなる抗癌剤が、同時刺激経路アゴニストである、請求項9~13のいずれか1項に記載の併用剤。
【請求項15】
前記さらなる抗癌剤が、CD27アゴニスト、CD28アゴニスト、ICOSアゴニスト、TMIGD2(IGPR-1/CD28H)アゴニスト、CD226アゴニスト、OX40アゴニスト、4-1BBアゴニスト、およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、請求項1
4に記載の併用剤。
【請求項16】
前記抗癌剤が、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項15に記載の併用剤。
【請求項17】
前記さらなる抗癌剤が、免疫応答を活性化するか、または免疫応答の抑制を逆転させる、請求項9~16のいずれか1項に記載の併用剤。
【請求項18】
前記さらなる抗癌剤が、腫瘍溶解性ウイルスである、請求項
9に記載の併用剤。
【請求項19】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、群Bアデノウイルスである、請求項18記載の併用剤。
【請求項20】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、RNAi配列、抗体またはその抗原結合フラグメント、ケモカイン、サイトカイン、免疫調節物質および酵素からなる群から選択される物質をコードする治療遺伝子をコードする、請求項18または19に記載の併用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アデノウイルスのような、腫瘍溶解性ウイルス、本開示の腫瘍溶解性ウイルスを含む組成物、当該腫瘍溶解性ウイルスおよび組成物を調製する方法ならびに処置における、特に、癌の処置における腫瘍溶解性ウイルスまたは組成物の使用に関する。本開示による療法を用いた、CD40を発現している癌、特に、CD40を過剰発現している癌を有すると特徴付けられた患者集団の処置がまた提供される。
【背景技術】
【0002】
CD40は、BおよびT細胞の活性化因子であり、例えば、抗原提示細胞上のCD40は、T細胞上のCD40L(CD154としても知られる)に結合して、それを活性化する。CD40はまた、多数の腫瘍細胞上に存在し、それらは、CD40を使用して、周囲の細胞からサイトカインおよび成長因子を得て、癌の成長および拡大をサポートする。
【0003】
アゴニスト抗CD40抗体は、インビボで、免疫細胞上での作用に起因して抗腫瘍免疫応答を刺激することができ得る。これは、CD40は、例えば、マクロファージを活性化して、および樹状細胞を「プレコンディショニングして」、それらが有効な細胞傷害性T細胞応答に備えることを可能にすることができるためである。
【0004】
現在、免疫腫瘍療法および/または腫瘍関連マクロファージ(TAM)に向けた療法における意味のある関心が存在する。これらの腫瘍関連マクロファージは、腫瘍を囲み、腫瘍成長および発生に寛容である微小環境の生成に関与する。この微小環境は、しばしば低酸素であり、腫瘍に接着し、除去するために送られた免疫細胞を無効化することができる。従って、微小環境は、腫瘍を物理的に保護する。さらに、これは、エネルギーおよび栄養素を供給して、腫瘍成長をサポートする。
【0005】
しかしながら、有効であるには、療法は、この環境を実際に標的化して、免疫細胞、例えば、微小環境に既にトラップされた免疫細胞を再度活気付け、自由にし、動員し、再度活性化することを必要とする。時に、腫瘍は、治療を腫瘍環境の外側に移す活性な輸送機序のような、保護のための機序の発生を有するので、微小環境のこの標的化を行うのは容易ではない。これは、例えば、抵抗性に関与する機序の1つである。
【0006】
腫瘍細胞に向かい、癌細胞に選択的に感染し得る群B腫瘍溶解性アデノウイルスのような、腫瘍溶解性ウイルスを使用して、抗CD40抗体が腫瘍の微小環境にデリバリーされ得る。腫瘍溶解性ウイルスは、抗癌特性を有し、それが、癌細胞の死および当該細胞の内容物の放出をもたらす。細胞の内容物は、腫瘍溶解性ウイルスにより作製された抗CD40抗体を含む。従って、癌細胞の死は、抗体を腫瘍の微小環境に放出する。驚くべきことに、本発明者らは、抗CD40抗体が、抗CD40抗体をコードする導入遺伝子をかかるウイルスに取り込ませることにより、例えば、ウイルスを本開示の導入遺伝子カセットを用いて形質導入することにより、様々な異なる腫瘍溶解性ウイルスにより効率的にデリバリーされ得ることを見出した。
【0007】
加えて、腫瘍は、保護のための複数の機序を発生させるので、将来的に最も有効な癌療法は、2つ以上の生物学的機序を介して癌を攻撃することを必要とすることが、今後考えられる。
【0008】
アゴニスト抗CD40抗体の利用は、抗体が、適当な濃度で腫瘍微小環境内にあると、それは、CD40発現癌細胞と競合して、CD40Lに結合し得るというさらなる利点を有し得る。これは、結局、癌細胞がT細胞上のCD40Lに結合する機会がほとんどないことを意味する。同様に、これは、腫瘍が利用可能なエネルギーおよび栄養素の量が、低減され得ることを意味し得る。
【0009】
本発明者らは、安定なウイルスを作製するために使用することができる抗CD40抗体またはその結合フラグメントをコードする導入遺伝子カセットを設計した。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、以下を提供する。
1.抗CD40抗体またはその結合フラグメントをコードする導入遺伝子カセットを含む腫瘍溶解性ウイルス(例えば、複製可能なウイルス)であって、導入遺伝子カセットが、配列番号12において付与されるアミノ酸配列またはそれに対して、特に、配列番号12のカセットに対して少なくとも95%同一(例えば、それに対して、特に、配列の全長に渡り96、97、98または99%同一)の配列を含む、腫瘍溶解性ウイルス。(代替の)項1:抗CD40抗体またはその結合フラグメントをコードする腫瘍溶解性アデノウイルス(例えば、複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルス)であって、アデノウイルスが、配列番号1またはそれに対して少なくとも95%同一(例えば、それに対して96、97、98または99%同一)の配列を含む、腫瘍溶解性アデノウイルス。
2.アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、セネカバレーウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ECHOエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、およびワクシニアウイルス、特に、アデノウイルスから選択される、項1に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
3.Enadenotucirev、タリモジーンラハーパレプベック、RIGVIR、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、Cavatak(商標)、CG0070、DNX-2401、G207、HF10、Imlygic(登録商標)、JX-594、MG1-MA3、MV-NIS、OBP-301、Reolysin(登録商標)、Toca 511、特に、Enadenotucirevからなる群から選択される、項1または2に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
4.配列番号1を含む、項1~3のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
5.配列番号1からなる、項4に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
6.項1~5のいずれか1項に記載のウイルス、および医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む、医薬組成物。
7.処置における使用のための、請求項1~5のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスまたは項6に記載の医薬組成物。
8.癌、インスリン抵抗性、肥満および/または免疫不全の処置における使用のための、項1~5のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスまたは項6に記載の医薬組成物。
9.ウイルスまたは組成物が、癌の処置における使用のため、例えば、CD40を発現している癌(例えば、アップレギュレーションされた発現のCD40を伴う癌)の処置のためである、項6に記載の使用。
10.項1~5のいずれか1項に記載のウイルスまたは項6に記載の組成物およびさらなる抗癌療法を含む、併用療法(例えば、癌の処置における使用のため)。
11.さらなる抗癌療法が、化学療法である、項10に記載の併用療法。
12.さらなる抗癌療法が、チェックポイント阻害剤である、項10または11に記載の併用療法。
13.抗癌療法が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3(CD276)阻害剤、B7-H4(B7S1)阻害剤、B7H7(HHLA2)阻害剤、CD96阻害剤、VISTA阻害剤およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、項12に記載の併用療法。
14.阻害剤が、抗体またはその結合フラグメントである、項13に記載の併用療法。
15.さらなる抗癌療法が、同時刺激経路アゴニストである、項10~14のいずれか1項に記載の併用療法。
16.さらなる抗癌療法が、CD27アゴニスト、CD28アゴニスト、ICOSアゴニスト、TMIGD2(IGPR-1/CD28H)アゴニスト、CD226アゴニスト、OX40アゴニスト、4-1BBアゴニスト、およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、項15に記載の併用療法。
17.療法が、抗体またはその結合フラグメントである、項16に記載の併用療法。
18.さらなる抗癌療法が、免疫応答を活性化するか、または免疫応答の抑制、例えば、IL-10、TGFβ、IDO阻害剤、およびその2つ以上の組み合わせから選択される免疫応答の抑制を逆転させる、項10~17のいずれか1項に記載の併用療法。
19.さらなる癌療法が、腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)、例えば、アデノウイルス、特に、群Bアデノウイルスのような、複製可能な腫瘍溶解性ウイルスである、項10~18のいずれか1項に記載の併用療法。
20.腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)が、RNAi配列、抗体またはその結合フラグメント、ケモカイン、サイトカイン、免疫調節物質および酵素からなる群から選択される物質をコードする治療遺伝子をコードする、項19に記載の併用療法。
21.抗体またはその結合フラグメントが、OX40、OX40リガンド、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40リガンド、CD70、CD137、GITR、4-1BB、ICOS、ICOSリガンド、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、VISTA、B7-H3、B7-H4、HVEM、ILT-2、ILT-3、ILT-4、TIM-3、LAG-3、BTLA、LIGHT、CD160、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、CD40、CD40リガンドおよびその2つ以上の組み合わせに特異的である、項20に記載の併用療法。
22.サイトカインが、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-9、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-33、IL-35、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-15、IL-21、IL-25、IL-1RA、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TGFβ、リンホトキシンα(LTA)およびGM-CSF、例えば、IL-12、IL-18、IL-22、IL-7、IL-15、IL-21、IFNγ、TNFα、TGFβおよびリンホトキシンα(LTA)ならびにその2つ以上の組み合わせを含む群から独立して選択される、項20または21に記載の併用療法。
23.ケモカインが、IL-8、CCL3、CCL5、CCL17、CCL20、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CXCR3、CXCR4、CXCR5およびCRTH2、例えば、CCL5、CXCL9、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4およびCXCR4、そのいずれか1つの受容体、およびその2つ以上の組み合わせを含む群から独立して選択される、項20~22のいずれか1項に記載の併用療法。
24.腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)が、B7タンパク質、例えば、B7-1またはB7-2の膜貫通型アンカード形態をコードする、項19~23のいずれか1項に記載の併用療法。
25.腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3(CD276)阻害剤、B7-H4(B7S1)阻害剤、B7H7(HHLA2)阻害剤、CD96阻害剤、VISTA阻害剤およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択されるチェックポイント阻害剤をコードする、項19~24のいずれか1項に記載の併用療法。
26.阻害剤が、抗体またはその結合フラグメントである、項25に記載の併用療法。
27.腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)が、同時刺激経路アゴニストをコードする、項19~26のいずれか1項に記載の併用療法。
28.腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)が、CD27アゴニスト、CD28アゴニスト、ICOSアゴニスト、TMIGD2(IGPR-1/CD28H)アゴニスト、CD226アゴニスト、OX40アゴニスト、4-1BBアゴニストおよびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される同時刺激経路アゴニストをコードする、項27に記載の併用療法。
29.腫瘍溶解性ウイルス(さらなる腫瘍溶解性ウイルス)が、免疫応答を活性化するか、または免疫応答の抑制、例えば、IL-10、TGFβ、IDO阻害剤およびその2つ以上の組み合わせから選択される免疫応答の抑制を逆転させる分子をコードする、項19~28のいずれか1項に記載の併用療法。
30.項1~5のいずれか1項において定義される腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、請求項19~29のいずれか1項において定義されるさらなる腫瘍溶解性ウイルスを含む、医薬製剤。
31.処置における使用のための、項19~29のいずれか1項において定義される併用療法または請求項30において定義される医薬組成物。
32.癌、インスリン抵抗性、肥満、および/または免疫不全の処置のための医薬の製造における使用のための、項1~5のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスまたは請求項6または30に記載の医薬組成物。
33.アデノウイルスまたは組成物が、癌の処置のための医薬の製造における使用のためである、項32に記載の使用。
34.処置の標的患者集団が、CD40が、癌においてアップレギュレーションされている集団のような、CD40を発現する癌を有する、項33に記載の使用。
35.項1~5のいずれか1項に記載のウイルスまたは項6または30に記載の組成物およびさらなる抗癌療法を含む、癌の処置のための医薬の製造における使用のための併用療法であって、例えば、処置の標的患者集団が、CD40が、癌においてアップレギュレーションされている集団のような、CD40を発現する癌を有する、併用療法。
36.さらなる抗癌療法が、化学療法である、項35に記載の併用療法。
37.さらなる抗癌療法が、チェックポイント阻害剤である、項35または36に記載の併用療法。
38.抗癌療法が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3(CD276)阻害剤、B7-H4(B7S1)阻害剤、B7H7(HHLA2)阻害剤、CD96阻害剤、VISTA阻害剤およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、項37に記載の併用療法。
39.さらなる癌療法が、腫瘍溶解性ウイルス、例えば、請求項19~29のいずれか1項において定義されるような、複製可能な腫瘍溶解性ウイルスである、項35~38のいずれか1項に記載の併用療法。
40.治療上有効量の項1~5のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスまたは項6または30に記載の医薬組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む、処置方法。
41.癌、インスリン抵抗性、肥満、および/または免疫不全の処置のための、項40に記載の方法。
42.癌、例えば、CD40を発現している癌(例えば、アップレギュレーションされたCD40発現を有する癌)の処置のための、項41に記載の方法。
43.処置が、追加の抗癌療法をさらに含む、項37~42のいずれか1項に記載の方法。
44.さらなる抗癌療法が、化学療法である、項43に記載の併用療法。
45.さらなる抗癌療法が、チェックポイント阻害剤である、項42または44に記載の併用療法。
46.抗癌療法が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3(CD276)阻害剤、B7-H4(B7S1)阻害剤、B7H7(HHLA2)阻害剤、CD96阻害剤、VISTA阻害剤およびその2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、項45に記載の併用療法。
47.さらなる癌療法が、腫瘍溶解性ウイルス、例えば、複製可能な腫瘍溶解性ウイルス、例えば、請求項19~29のいずれか1項において定義されるウイルスである、項42~46のいずれか1項に記載の併用療法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は抗CD40導入遺伝子カセットの図を示す。
【
図2】
図2AおよびBはトータルの粒子産生に関するNG-350ウイルス活性(A)および細胞上清におけるウイルス粒子産生(B)を示す。
図2CはELISAを使用して測定された分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を示す。
【
図3】
図3は組み合わせEcoRv/NheI(A)または個々の酵素NcoIもしくはFspI(B)を使用した、対照対NG-350DNAの制限酵素切断の結果を示す。
【
図4】
図4はプライマーが結合するNG-350導入遺伝子カセットにおける場所を示す。
【
図5】
図5はゲル電気泳動を使用した、PCR産物の分離を示す。
【
図6】
図6はプライマーセットD(A)およびプライマーセットK(B)を使用したPCR産物の分離を示す。
【
図7】
図7AはEnAdおよびNG-350A(配列番号1のウイルス)についての様々な感染密度での%細胞生存の定量を示す。
【
図8】
図7および8はNG-350AおよびEnAdについての1個の細胞当たりの検出されたウイルスゲノムの数の定量を示す。
【
図9】
図9AおよびBはプレートリーダー(BioTek)を使用して測定されたプレートのそれぞれのウェルにおける450nmでの吸光度および分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を示す。
図9CはEnAd、NG-350Aおよび陽性対照(
図4C)についての450nmにおける吸光度ならびにNG-350A感染細胞の上清に存在する分泌された抗CD40抗体によるCD40への特異的結合を示す。
【
図10】
図10はNG-350A、EnAdまたはNG-165感染細胞についての、プレートリーダーを使用したそれぞれの試料について測定された620nmにおける吸光度を示す。
【
図11A】
図11AおよびBはプレートリーダー(BioTek)を使用して測定されたプレートのそれぞれのウェルにおける450nmでの吸光度および分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を示す。
【
図12】
図12はELISAを使用して測定された分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を示す。
【
図13】
図13はCD86(A)、CD54(B)およびHLA-DR(C)活性化マーカーを発現しているmoDCのパーセンテージを示す。
【
図14】
図14はEnAdウイルス、またはEnAdウイルスのみの存在下または不存在下でNG-350A感染腫瘍細胞により産生された精製された抗CD40抗体と共に培養されたmoDCによるIL12p40の分泌を示す。
【
図15-1】
図15はCD86(A)、CD54(B)、MFI HLA-DR(C)およびCD80(D)を発現しているCD19+細胞のパーセンテージを示す。
【
図16】
図16は抗体またはウイルス処置単独と比較した、NG-350A感染腫瘍細胞とEnAdウイルス一緒により産生された精製された抗CD40抗体を用いた処置後の分裂しているB細胞のパーセンテージを示す。
【
図17】
図17はNG-350A感染腫瘍細胞により産生されたウイルスを枯渇させた抗体調製物が、ヒトMoDCの表面上のCD40に結合することを示す。
【
図18A】
図18は例としてのヒトMoDC上の細胞表面マーカーアップレギュレーションに対するNG-350A感染腫瘍細胞により産生されたウイルスを枯渇させた抗CD40Abの効果(A)および4人の異なるMoDCドナーについての24および48時間における用量応答(B~E)を示す。
【
図19A】
図19は4人の異なるMoDCドナーについての24および48時間における用量応答としてのヒトMoDCによるサイトカイン分泌に対するNG-350A感染腫瘍細胞により産生されたウイルスを枯渇させた抗CD40Abの効果を示す(B~D)。
【
図20】
図20はウイルスを枯渇させていない、NG-350A感染腫瘍細胞により産生された抗体調製が、ヒトMoDCの表面上のCD40に結合することを示す。
【
図21A】
図21は2人の異なるドナー由来のヒトMoDC上の24および48時間における細胞表面マーカーアップレギュレーションに対する、ウイルスを枯渇させていない、NG-350A感染腫瘍細胞により産生された抗CD40Abの効果を示す。
【
図22A】
図22は2人の異なるドナーについての24および48時間における用量応答としてのヒトMoDCによるサイトカイン分泌に対する、ウイルスを枯渇させていない、NG-350A感染腫瘍細胞により産生された抗CD40Abの効果を示す。
【
図23A】
図23は3人の異なるB細胞ドナーについての24および48時間における用量応答としてのヒトB細胞上での細胞表面マーカーアップレギュレーションに対するNG-350A感染腫瘍細胞により産生されたウイルスを枯渇させた抗CD40Abの効果を示す。
【
図24A】
図24は3人の異なるドナー由来のヒトB細胞上の24および48時間における細胞表面マーカーアップレギュレーションに対する、ウイルスを枯渇させていない、NG-350A感染腫瘍細胞により産生された抗CD40Abの効果を示す。
【
図25A】
図25はEnAdについてのものと比較して、NG-350Aを感染させた10の異なる腫瘍細胞株によるウイルスゲノム複製(qPCR)の時間経過を示す。
【
図26A】
図26はEnAdについてのものと比較して、NG-350Aを感染させた4つの例の腫瘍細胞株におけるウイルスにより誘導された腫瘍退縮(xCELLigenceアッセイ)の時間経過を示す。
【
図27-1】
図27はNG-350Aを感染させた10の異なる腫瘍細胞株による抗CD40抗体mRNA発現の時間経過を示す。
【
図28】
図28は異なる腫瘍細胞株によるIgG2ELISAによる抗CD40導入遺伝子タンパク質発現の検出を示す。
【
図29-1】
図29はEnAdのものと比較したNG-350A粒子を用いたIV投与後の実際の血漿サイトカイン応答の時間経過;MCP-1(A)、IL-6(B)およびTNFα(C)を示す。
【
図30】
図30はEnAdまたはNG-350Aの単回静脈内投与後の血漿におけるアラニントランスアミナーゼ(ALT)濃度の時間経過を示す。
【
図31A】
図31はEnAdのものと比較した、NG-350A粒子を用いた繰り返しIV投与計画の第1および第3の投与後の実際の血漿サイトカイン応答;MCP-1(A)、IL-6(B)を示す。
【
図32】
図32はEnAdまたはNG-350Aの3回の静脈内投与のそれぞれの後の末梢血におけるウイルス薬物動態を示す。
【
図33】
図33はNG-350Aウイルス粒子の単回静脈内投与後のマウス組織由来の生ウイルスの回復を示す。
【
図34】
図34はNG-350AまたはEnAdの3回のIV注射または単回の分画IT投与後の皮下A549(AおよびB)ならびにHCT116(CおよびD)腫瘍におけるウイルスゲノム複製を示す。
【
図35】
図35はNG-350AまたはEnAdの3回のIV注射または単回の分画IT投与後の皮下A549(AおよびB)またはHCT-116(CおよびD)腫瘍におけるウイルスE3mRNA発現を示す。
【
図36】
図36はNG-350AまたはEnAdの3回のIV注射または単回の分画IT投与後の皮下A549(AおよびB)ならびにHCT-116(CおよびD)腫瘍における抗CD40アゴニスト抗体導入遺伝子mRNA発現を示す。
【
図37】
図37はNG-350AまたはEnAdの3回のIV注射または単回の分画IT投与後の皮下A549腫瘍における抗CD40抗体タンパク質を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
CD40は、例えば、抗原提示細胞上で見られる同時刺激タンパク質である。CD40はまた、Bp50、CDW40、TNFRSF5、p50、CD40タンパク質、CD40分子としても知られている。ヒトタンパク質は、UniProt番号P25942を有する。マウスタンパク質は、UniProt番号P27512を有する。
【0013】
本明細書において利用される、癌細胞についての選択性を有する腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、ウイルスが、癌細胞に優先的に感染し、および/またはウイルスライフサイクルが、癌細胞において脱制御されている、例えば、過剰発現されているp53のような、遺伝子に依存するため、癌細胞を優先的に殺傷するウイルスを指す。1つの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞に優先的に感染し、そのゲノムを継続して複製し、カプシドタンパク質を産生して、新たなウイルス粒子、例えば、EnAd自体を生み出す。
【0014】
癌細胞についての選択性(治療指数)は、参照により取り込まれる国際公開第2005/118825号において記載される通り、試験することができる。
【0015】
1つの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、セネカバレーウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ECHOエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、およびワクシニアウイルス、特に、アデノウイルスから選択される、ウイルスである。
【0016】
1つの実施形態において、アデノウイルスは、Enadenotucirev、タリモジーンラハーパレプベック、RIGVIR、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、Cavatak(商標)、CG0070、DNX-2401、G207、HF10、Imlygic(登録商標)、JX-594、MG1-MA3、MV-NIS、OBP-301、Reolysin(登録商標)、Toca 511、特に、Enadenotucirevからなる群から選択される。
【0017】
1つの実施形態において、本開示の併用療法において利用される腫瘍溶解性アデノウイルスは、複製可能である。
【0018】
1つの実施形態において、本開示の組み合わせにおいて利用される腫瘍溶解性アデノウイルスは、複製欠損である。
【0019】
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、併用療法において利用される。
【0020】
1つの実施形態において、本開示においてまたは本開示の併用療法における第2の成分として利用される腫瘍溶解性アデノウイルスは、例えば、式(I):
5’ITR-B1-BA-B2-BX-BB-BY-B3-3’ITR (I)
(式中、
B1は、結合であるか、または:E1A、E1BまたはE1A-E1B(特に、E1A、E1BもしくはE1A-E1B)を含み;
BAは、E2B-L1-L2-L3-E2A-L4であり;
B2は、結合であるか、またはE3または導入遺伝子を、例えば、内在性または外来プロモーター下に含み;
BXは、結合、または制限酵素部位、1つもしくは複数の導入遺伝子または両方を含むDNA配列であり;
BBは、L5を含み;
BYは、治療タンパク質またはその活性なフラグメント(特に、配列番号12を含む)をコードする導入遺伝子カセットを含み;
B3は、結合であるか、またはE4を含む)
を有する。
1つの実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、式(Ia):
5’ITR-B1-BA-B2-BB-BY-B3-3’ITR (Ia)
(式中、
B1は、結合であるか、または:E1A、E1BまたはE1A-E1B(特に、E1A、E1BもしくはE1A-E1B)を含み;
BAは、E2B-L1-L2-L3-E2A-L4であり;
B2は、結合であるか、またはE3を含み;
BBは、L5を含み;
BYは、治療タンパク質またはその活性なフラグメント(特に、配列番号12を含む)をコードする導入遺伝子カセットを含み;
B3は、結合であるか、またはE4を含む)
を有する。
【0021】
1つの実施形態において、式(I)および/または(Ia)のコンストラクトにおけるウイルスゲノムは、Ad11またはEnAd、特に、EnAd由来である。
【0022】
1つの実施形態において、導入遺伝子カセットは、内在性プロモーター、例えば、主要後期プロモーターの制御下である。
【0023】
治療タンパク質は、抗体または結合フラグメント(例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、VISTA、B7-H3、B7-H4、HVEM、ILT-2、ILT-3、ILT-4、TIM-3、LAG-3、BTLA、LIGHTまたはCD160、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1および/またはPD-L2に特異的な抗体またはフラグメントを含む群から選択される)、B-7タンパク質(例えば、B7-1および/またはB7-2)、サイトカイン(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-9、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-33、IL-35、インターロイキン-2(IL-2)、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-15、IL-21、IL-25、IL-1RA、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TGFβ、リンホトキシンα(LTA)およびGM-CSF)、ならびにケモカイン(例えば、IL-8、CCL3、CCL5、CCL17、CCL20、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL12、CCL2、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CXCR3、CXCR4、CXCR5および/またはCRTH2から選択される)、ならびにその2つ以上の組み合わせを含む。
【0024】
本開示の療法は、2種以上の腫瘍溶解性ウイルスを含んでもよい。
【0025】
調節エレメント
1つの実施形態において、BYは、本開示による導入遺伝子カセットを含み、当該カセットは、チェックポイント阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体、抗PD-1、および抗PD-L1抗体またはそのいずれか1つの結合フラグメントならびに調節エレメントの組み合わせのような、調節エレメントをコードする導入遺伝子をさらに含む。
【0026】
1つの実施形態において、調節エレメントは、スプライスアクセプター配列である。
【0027】
1つの実施形態において、調節エレメントは、コザック配列である。
【0028】
1つの実施形態において、例えば、導入遺伝子が、ポリシストロニックRNA分子をコードする場合、調節エレメントは、IRES配列である。
【0029】
1つの実施形態において、調節配列は、P2A、T2A、F2A、E2Aのような高い効率の自己切断可能なペプチド配列である。
【0030】
1つの実施形態において、調節配列は、ポリAテールである。
【0031】
1つの実施形態において、少なくとも2つの調節配列、例えば、スプライスアクセプターおよびコザック配列またはスプライスアクセプターおよびポリAテール、またはスプライスアクセプターおよびIRES配列、またはスプライスアクセプターおよびP2A配列が存在する。
【0032】
1つの実施形態において、少なくとも3つの制御因子配列、例えば、スプライスアクセプター配列、コザック配列およびポリAテール、またはスプライスアクセプター配列およびIRESもしくは2A配列およびポリAテール;またはスプライスアクセプター配列、コザック配列およびIRESもしくは2A配列が存在する。
【0033】
1つの実施形態において、少なくとも4つの調節配列、例えば、スプライスアクセプター配列、コザック配列、IRESまたは2A配列およびポリAテール、特に、スプライスアクセプター配列、コザック配列、IRESまたは2A配列およびポリAテールの順でL5とE4の間に位置するスプライスアクセプター配列、コザック配列、IRESまたは2A配列およびポリAテールが存在する。
【0034】
1つの実施形態において、導入遺伝子は、IRESと2A調節配列の両方を含むポリシストロニックRNA分子をコードする。
【0035】
1つの実施形態において、細胞膜発現のための導入遺伝子カセットにおいてコードされるタンパク質または複数のタンパク質はまた、膜貫通型ドメインまたはGPIアンカーと細胞外リガンド結合ドメインの間にペプチドリンカーまたはスペーサーを含んでもよい。かかるリンカーまたはスペーサーは、タンパク質が、例えば、隣接細胞上のその標的分子と相互作用する能力を増強する細胞表面発現タンパク質に可動性を加えてもよい。かかるリンカーまたはスペーサーはまた、ジスルフィド結合形成またはタンパク質とタンパク質の相互作用を介して、細胞表面におけるタンパク質の二量体形成または三量体形成を促進するよう設計されるか、または選択されてもよい。例えば、免疫グロブリン分子またはCD8のヒンジ領域を利用して、可動性と二量体形成の両方を増強してもよい。
【0036】
1つの実施形態において、導入遺伝子カセットにおいてコードされるタンパク質または複数のタンパク質はまた、ペプチドタグを含んでもよい。
【0037】
ペプチドタグは、c-myc、ポリ-ヒスチジン、V5またはFLAGタグを含んでもよく、例えば、細胞内または細胞外で、ポリペプチドのN末端またはC末端に位置することができるか、またはタンパク質、例えば、細胞外ループ内または膜貫通型ドメインと細胞外ドメインの間にコードされてもよい。ペプチドタグは、異なるタンパク質ドメイン、例えば、膜貫通型ドメインと細胞外ドメインの間のスペーサーまたはリンカーとして使用することができ、タンパク質、またはタンパク質を発現している細胞の検出または精製または検出のため使用することができる。
【0038】
1つの実施形態において、例えば、式(I)または(Ia)のウイルスにおける1つまたは複数の追加の導入遺伝子は、外来または内在性プロモーター、例えば、内在性プロモーターの制御下にある。1つの実施形態において、E3領域(B2)における導入遺伝子は、外来プロモーターの制御下にある。
【0039】
1つの実施形態において、1つまたは複数の追加の導入遺伝子の遺伝子は、アデノウイルスゲノムにおいてE3領域とファイバーL5の間、例えば、式(I)の構築物における位置BX、特に、外来プロモーターの制御下にある。従って、1つの実施形態において、BXにおける導入遺伝子は、外来プロモーターの制御下にある。
【0040】
1つの実施形態において、1つまたは複数の追加の導入遺伝子の遺伝子は、アデノウイルスゲノムにおいてE4領域とファイバーL5の間、例えば、式(I)または(Ia)の構築物における位置BY、特に、主要後期プロモーターのような、内在性プロモーターの制御下にある。これは、領域BYにおいてコードされる治療タンパク質またはその活性なフラグメントに加えてであってもよい。
【0041】
本明細書において利用される、導入遺伝子は、アデノウイルスのゲノム配列に挿入された遺伝子であって、遺伝子が、ウイルスにとって天然でない(外来)か、またはウイルスにおけるその特定の場所において通常見られない、遺伝子を指す。導入遺伝子の例は、本明細書において付与される。本明細書において利用される、導入遺伝子はまた、挿入されたとき、全長遺伝子の機能または機能の大部分、例えば、機能の50%以上を遂行するのに適当である遺伝子の一部である、遺伝子の機能的フラグメントを含む。
【0042】
導入遺伝子およびコード配列は、文脈が別段示さない限り、ウイルスゲノムへの挿入物の文脈において本明細書において互換的に使用される。本明細書において利用される、コード配列は、例えば、機能的RNA、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするDNA配列を意味する。典型的には、コード配列は、対象となる機能的RNA、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする導入遺伝子についてのcDNAである。対象となる機能的RNA、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、以下で記載される。
【0043】
1つの実施形態において、本明細書において利用される、導入遺伝子は、異なる生物、すなわち、本開示のウイルスに導入される、1種の生物から単離された遺伝子またはcDNA配列を含有するDNAのセグメントを指す。1つの実施形態において、DNAのこの非天然のセグメントは、一般に、機能的RNA、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を産生する能力を保持する。利用される導入遺伝子は、例えば、単一のタンパク質もしくはその活性なフラグメント、キメラタンパク質または融合タンパク質をコードしてもよい。
【0044】
明らかに、ウイルスゲノムは、DNAのコード配列を含有する。ウイルスのゲノム配列における内在性(天然に存在する遺伝子)は、その後、それらは、それらが非天然の場所にあるか、または非天然の環境にあることのような、組換え技術により修飾されない限り、本明細書の文脈において、導入遺伝子とみなされない。
【0045】
従って、1つの実施形態において、挿入される導入遺伝子(複数可)は、ヒトもしくはヒト化タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする。導入遺伝子(複数可)は、導入遺伝子カセットなどに位置してもよい。
【0046】
本明細書において利用される、GPIアンカーは、翻訳後修飾中にタンパク質のC末端に結合され得る糖脂質を指す。それは、成熟タンパク質のC末端アミノ酸に、炭水化物含有リンカー(イノシトール残基にグリコシド結合したグルコサミンおよびマンノース)を通じてならびにエタノールアミンリン酸塩(EtNP)への架橋を介して結合したホスファチジルイノシトール基を含む。疎水性ホスファチジル-イノシトール基内の2つの脂肪酸は、タンパク質を細胞膜に固定する。
【0047】
GPIアンカー化された(Glypiated)(GPIが結合した)タンパク質は、一般に、シグナルペプチドを含有し、これにより、小胞体(ER)内に誘導される。C末端は、ER膜に挿入されて留まる疎水性アミノ酸を含む。次に、疎水性末端が切断され、GPIアンカーによって置き換えられる。タンパク質が分泌経路を進むにつれ、それは、小胞を介してゴルジ体に、最終的に、細胞外空間に移され、そこで、それは、細胞膜の外膜に付着して留まる。GPIアンカー化(glypiation)は、かかるタンパク質の膜への付着の唯一の手段であるので、ホスホリパーゼによる基の切断は、膜からのタンパク質の制御された解離をもたらす。後者の機序は、インビトロで使用される、すなわち、酵素アッセイにおいて膜から解離された膜タンパク質は、GPIアンカー化されたタンパク質である。
【0048】
ホスホリパーゼC(PLC)は、GPIにより固定されたタンパク質においてみられるホスホ-グリセロール結合を切断することが知られている酵素である。PLCを用いた処理は、外側の細胞膜からのGPI結合したタンパク質の解離を引き起こす。T細胞マーカーであるThy-1およびアセチルコリンエステラーゼ、ならびに腸と胎盤のアルカリホスファターゼの両方が、GPI結合していることが知られており、PLCを用いた処理により解離される。GPI結合したタンパク質は、脂質ラフトに優先的に位置すると考えられており、これは、細胞膜マイクロドメイン内での高レベルの組織化を示唆している。
【0049】
Ferguson、KinoshitaおよびHartにより書かれたGPIアンカーの総説が、Essentials of Glycobiology、第2編の第11章において入手可能である。
【0050】
ウイルス
本明細書の文脈における複製可能は、インビトロおよびインビボの細胞において、すなわち、パッケージング細胞株の補助なしで、複製するのに必要な機構全てを有するウイルスを指す。ウイルスベクター、例えば、少なくともE1A領域が欠損し、補完的なパッケージング細胞株において複製する能力があるウイルスは、本文脈における複製可能なウイルスではない。
【0051】
ウイルスベクターは、複製するのにパッケージング細胞株(補完的な導入遺伝子を含む)を必要とする、複製欠損ウイルスである。
【0052】
本明細書において利用される、複製する能力があるウイルスは、複製可能なウイルスまたは複製が癌細胞における因子、例えば、p53または類似のもののような、アップレギュレーションされた因子に依存するウイルスを指す。
【0053】
1つの実施形態において、アデノウイルスは、ヒトアデノウイルスである。本明細書において利用される、「アデノウイルス」、「血清型」または「アデノウイルス血清型」は、A~F亜群に分類される、50を超える現在公知のアデノウイルス血清型のいずれかに割り振られ得る任意のアデノウイルスを指し、さらに、未だ同定されていないか、または分類されていないアデノウイルス血清型まで及ぶ。例えば、以下に示される、The Adenoviruses、Ginsberg、ea.、Plenum Press、New York、NY、451~596頁(1984年)におけるStrauss、「Adenovirus infections in humans」およびFields Virology、第2巻、第4編、Knipe、35ea.、Lippincott Williams & Wilkins、2265~2267頁(2001年)におけるShenk、「Adenoviridae:The Viruses and Their Replication」を参照されたい。
【表1】
【0054】
アデノウイルスは、それらのカプシドに基づきグループ化される。
【0055】
1つの実施形態において、アデノウイルスは、亜群B、例えば、Ad3、Ad7、Ad11、Ad14、Ad16、Ad21、Ad34およびAd51、例えば、Ad11、特に、Ad11p(Slobitski株)を含むか、またはからなる群から独立して選択されるB亜群である。1つの実施形態において、本発明のアデノウイルスは、Ad11、特に、Ad11pのような、B亜群アデノウイルスのヘキソンおよび/またはファイバーのようなカプシドを有する。1つの実施形態において、アデノウイルスは、Ad11であるか、またはAd11pのような、Ad11のファイバーおよび/またはヘキソンおよび/またはペントンを有する。
【0056】
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、A群ウイルスではない。
【0057】
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、アデノデスタンパク質(ADP)を含まない。
【0058】
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、C群ウイルスではない。
【0059】
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、Ad5ウイルスのもう1つのフラグメントを含まない。
【0060】
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、Ad5ではない。
【0061】
Enadenotucirev(EnAd)は、以前はColoAd1(国際公開第2005/118825号)として知られたキメラ腫瘍溶解性アデノウイルスであり、Ad11p由来のファイバー、ペントンおよびヘキソンを有することから、B亜群ウイルスである。それは、Ad11pおよびAd3由来のDNAを含む、キメラE2B領域を有する。E3領域のほぼ全ておよびE4領域の一部は、EnAdにおいて欠損している。それ故、それは、生存可能性を維持しながら、追加の遺伝子物質を収容するための重要なスペースをゲノム中に有する。さらに、EnAdは、B亜群アデノウイルスであるので、ヒトにおいて既に免疫が存在することは、例えば、Ad5よりあまり一般的でない。Ad11ファイバー、ペントンおよびヘキソンを有するキメラ腫瘍溶解性ウイルスの他の例は、OvAd1およびOvAd2を含む(国際公開第2006/060314号を参照)。
【0062】
EnAdは、腫瘍細胞に優先的に感染するように思われ、これらの細胞において容易に複製し、細胞溶解を引き起こす。これは、順に、炎症性免疫応答を生み出し、これにより、身体を刺激し癌とも戦うことができる。EnAdの成功の一部は、インビボでのウイルスの迅速な複製に関係すると仮定される。
【0063】
重要なことは、EnAdが、全身投与され(例えば、静脈内または腹腔内注射もしくは注入により)、次に、続いて選択的に感染し、腫瘍細胞内でタンパク質を発現し得ることが、臨床的に示されている。EnAdのこの特性は、Ad11pおよび他のB群アデノウイルス、特に、Ad11pのカプシドタンパク質を発現しているもの(例えば、本明細書において記載されるもの)に共通し得、腫瘍および/または腫瘍微小環境においてコードされるタンパク質を発現することを可能にする。
【0064】
EnAdは、腫瘍細胞を選択的に溶解すると同時に、さらなる有益な特性、例えば、ウイルスの治療活性を増大させること、あるいは細胞シグナル伝達タンパク質もしくは抗体をコードする導入遺伝子のような、導入遺伝子、または細胞シグナル伝達タンパク質(複数可)を刺激する実体をコードする導入遺伝子を用いて備えることにより、ウイルスの副作用を低減することを導入することが可能であり得る。
【0065】
癌細胞内部で発現され得るある特定のタンパク質をコードするDNAを用いてウイルスに有利に備えることは、例えば、細胞を免疫系により見えるようにすることにより、または治療遺伝子/タンパク質を標的腫瘍細胞に優先的にデリバリーすることにより、身体自体の防御が、腫瘍細胞とより有効に戦うために利用されることを可能にし得る。
【0066】
1つの実施形態において、本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスは、患者の免疫系を刺激して、例えば、免疫応答を抑制する癌の能力を低減することにより、腫瘍と戦う。
【0067】
1つの実施形態において、本開示のウイルスによりコードされる抗CD40抗体または結合フラグメントは、腫瘍微小環境において、および/または腫瘍の近傍において免疫細胞、例えば、T細胞を活性化する能力を有する。
【0068】
1つの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、ヌクレオチド位置が、Genbank ID217307399(受託番号GC689208)と比べて、後者のゲノム配列の位置30812~31789、18254~21100および13682~15367においてみられる、同じ血清型、例えば、Ad11、特に、Ad11p由来のファイバー、ヘキソンおよびペントンタンパク質を有する。
【0069】
1つの実施形態において、アデノウイルスは、enadenotucirev(EnAdとしておよび以前はColoAd1として知られていた)である。本明細書において利用される、Enadenotucirevは、国際公開第2016/174200号において開示され、参照により取り込まれる配列番号21のキメラアデノウイルスを指す。それは、野生型アデノウイルスと比較して、増強された治療特性を有する複製可能な腫瘍溶解性キメラアデノウイルスである(国際公開第2005/118825号を参照)。EnAdは、Ad11pおよびAd3由来のDNA、ならびにE3/E4における欠損を特徴とする、キメラE2B領域を有する。enadenotucirevにおける構造の変化は、Ad11pより小さいおよそ3.5kbであるゲノムをもたらし、これにより、導入遺伝子の挿入に追加の「空間」をもたらす。
【0070】
1つの実施形態において、本開示によるカセットは、B群アデノウイルスのようなアデノウイルスにおいてL5とE4領域の間、特に、主要後期プロモーターの制御下に位置する。
【0071】
1つの実施形態において、利用されるウイルスは、EnAdではない。
【0072】
本発明において利用され得る他のウイルスは、単純ヘルペスウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、セネカバレーウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、ECHOエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、およびワクシニアウイルス、特に、例えば、タリモジーンラハーパレプベック、RIGVIR、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、Cavatak(商標)、CG0070、DNX-2401、G207、HF10、Imlygic(登録商標)、JX-594、MG1-MA3、MV-NIS、OBP-301、Reolysin(登録商標)、Toca 511からなる群から選択されるアデノウイルスを含む。
【0073】
抗体または抗体フラグメント
1つの実施形態において、本開示のウイルスは、全長抗CD40抗体をコードする。
【0074】
本明細書において使用される用語、抗体は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する、少なくとも1つの抗原認識部位(本明細書において結合部位としても言及される)を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド、ペプチドなどのような、標的抗原に特異的に結合する能力がある免疫グロブリン分子を指す。
【0075】
本明細書において使用される、抗体分子は、抗体およびその結合フラグメント、ならびにその1つまたは複数を含む分子を含む。
【0076】
本明細書において利用される、抗原結合部位は、1対の可変領域、特に、標的抗原と特異的に相互作用する同族の対を含む、分子の一部を指す。
【0077】
本明細書において利用される、抗体結合フラグメントは、標的抗原に特異的に結合する能力が依然としてある、全体未満の抗体を指す。
【0078】
本明細書において利用される、特異的には、それが特異的である抗原、または特異的でない抗原への親和性と比較して、特異的である抗原に対して有意に高い結合親和性、例えば、5、6、7、8、9、10倍高い結合親和性を有する結合部位のみを認識する結合部位を指すことが意図される。
【0079】
利用される、抗体分子は、全長の重鎖および軽鎖を有する完全な抗体分子、全長抗体またはFab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VHもしくはVLもしくはVHH)、scFv、二価、三価もしくは四価抗体、ビス-scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを含むが、これらに限定されない、そのいずれか1つのフラグメントを含む二重特異性抗体フォーマットを含み得る(例えば、HolligerおよびHudson、2005年、Nature Biotech.23(9):1126~1136頁;AdairおよびLawson、2005年、Drug Design Reviews-Online、2(3)、209~217頁を参照)。これらの抗体フラグメントを作製する方法及び製造する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Vermaら、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165~181頁を参照)。本発明における使用のための他の抗体フラグメントは、国際特許出願公開第2005/003169号、公開第2005/003170号及び公開第2005/003171号において記載されるFab並びにFab’フラグメントを含む。多価の抗体は、複数の特異性、例えば、二重特異性であり得るか、又は単一特異性であり得る(例えば、国際公開第92/22853号、国際公開第05/113605号、国際公開第2009/040562号及び国際公開第2010/035012号を参照)。
【0080】
1つの実施形態において、本開示のウイルスにおいて利用される抗体分子は、ヒト化、キメラまたは非ヒトである。
【0081】
本明細書において利用される、ヒト化(CDRグラフト抗体を含む)は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する分子を指す(例えば、米国特許第5,585,089号;国際公開第91/09967号を参照)。CDR全体よりむしろCDRの特異性決定残基を移すことがただ必要であり得ることが、理解される(例えば、Kashmiriら、2005年、Methods、36、25~34頁を参照)。ヒト化抗体は、場合により、CDRがもたらされた非ヒト種からもたらされた1つ又は複数のフレームワーク残基を含み得んでもよい。
【0082】
CDR又は特異性決定残基が移植されるとき、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む、CDRがもたらされるドナー抗体のクラス/タイプに関して有する、任意の適当なアクセプター可変領域フレームワーク配列が、使用され得る。適当には、本開示によるヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域を含む可変ドメインならびに本明細書において提供されるCDRの1つまたは複数を含む。
【0083】
本開示において使用され得る、ヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOMである(Kabatら、上記)。例えば、KOL及びNEWMは、重鎖について使用することができ、REIは、軽鎖について使用することができ、EU、LAY及びPOMは、重鎖と軽鎖の両方について使用することができる。或いは、ヒト生殖系統配列が使用されてもよく;これらは、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/において入手可能である。
【0084】
本開示のヒト化抗体において、アクセプター重鎖および軽鎖は、必ずしも、同じ抗体からもたらされることを必要とせず、所望されるなら、異なる鎖からもたらされたフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0085】
フレームワーク領域は、アクセプター抗体のものと正確に同じ配列を有する必要はない。例えば、普通でない残基は、そのアクセプター鎖クラス又はタイプについてより頻繁に生じる残基に変えられてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域における選択された残基は、それらが、ドナー抗体において同じ位置にて見られる残基に対応するように変えられてもよい(Reichmannら、1998年、Nature、332、323~324頁を参照)。かかる変化は、ドナー抗体の親和性を回復させるための最小の必要性を維持すべきである。変えられるのを必要とし得るアクセプターフレームワーク領域における残基を選択するプロトコールは、国際公開第91/09967号において記載される。
【0086】
キメラ抗体は、一般に、非ヒト可変領域およびヒト定常領域を含有する。
【0087】
1つの実施形態において、本開示の抗体分子は、完全にヒトであり、特に、可変ドメインの1つまたは複数は、完全にヒトである。
【0088】
完全なヒト分子は、重鎖と軽鎖の両方の可変領域および定常領域(存在する場合)が、必ずしも同じ抗体由来ではなく、全てヒト起源であるか、またはヒト起源の配列と実質的に同一であるものである。完全なヒト抗体の例は、例えば、上記のファージディスプレイ方法により、産生される抗体、およびマウス免疫グロブリン可変および場合により、定常領域遺伝子が、例えば、欧州特許第0546073号、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,770,429号、欧州特許第0438474号および欧州特許第0463151号において一般的な用語で記載される通り、それらのヒト対応物により置き換えられた、マウスにより産生される抗体を含んでもよい。
【0089】
式(I)および(Ia)に関する定義
結合は、一方のDNA配列を別のDNA配列に結び付ける、例えば、ウイルスゲノムの一方のセクションを別のものに結び付ける共有結合を指す。従って、本明細書における式(I)および(Ia)における可変のものが、結合を表すとき、結合により表される特性またはエレメントは、存在しない、すなわち、欠失されている。
【0090】
アデノウイルスの構造は、一般に、類似するので、以下のエレメントは、構造エレメントおよび当業者に知られている、それらに言及する命名法に関して考察される。エレメントが、本明細書において言及されるとき、次に、本発明者らは、エレメントをコードするDNA配列またはアデノウイルスにおけるエレメントの同じ構造タンパク質をコードするDNA配列を指す。後者は、DNAコードの重複性のため、関連性がある。コドン利用についてのウイルスの優先度は、最適化された結果とみなされる必要があり得る。
【0091】
本開示のウイルスにおいて利用されるアデノウイルス由来の任意の構造エレメントは、天然の配列を含むか、またはからなってもよいか、または96%、97%、98%、99%または100%のような、少なくとも95%の所定の長さに渡り類似性を有してもよい。元の配列は、遺伝子物質の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%を除くよう変更されるか、または修飾されてもよい。しかしながら、1つの実施形態において、少なくとも95%類似または同一であるDNA配列は、同じ遺伝子産物、すなわち、RNAおよび/またはタンパク質をコードする。当業者は、変更するとき、ウイルスのリーディングフレームは、構造タンパク質の発現が破壊されるように、破壊され得ないことを認識する。本開示はまた、本明細書において開示される配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列まで拡大する。
【0092】
1つの実施形態において、所定のエレメントは、全長配列、すなわち、全長遺伝子である。本明細書において利用される、全長遺伝子は、少なくとも、遺伝子のコード配列の全体を指すが、特に、それらが遺伝子の機能と関連性があるなら、任意の関連する非コード領域を含んでもよい。
【0093】
1つの実施形態において、所定のエレメントは、全長配列に満たず、全長配列と同じまたは対応する機能を保持する。
【0094】
1つの実施形態において、本開示の構築物において任意である所定のエレメントについて、DNA配列は、全長に満たず、機能性を有さなくてもよく、例えば、E3領域は、全体的または部分的に欠損されていてもよい。しかしながら、本質的に全てのE3領域を欠損させることは、これが、導入遺伝子を挿入するのに利用可能な空間を最適化するので、有用であり得る。
【0095】
アデノウイルスの構造または機能的タンパク質をコードする構造遺伝子は、DNAの非コード領域により一般的に結合される。従って、本開示のウイルスに導入遺伝子を挿入する目的のため、対象となる構造エレメント(特に、その非コード領域における)のゲノム配列を「切断する」場所について幾分かの可動性が存在する。従って、本明細書の目的のため、エレメントは、目的に合致し、外来性の物質をコードしない限り、参照の構造エレメントとみなされる。従って、必要に応じて、遺伝子は、適当な非コード領域、例えば、ウイルスの天然の構造においてみられる適当な非コード領域を伴う。
【0096】
従って、1つの実施形態において、導入遺伝子をコードするDNAのような、挿入物は、イントロンまたは遺伝子間配列のような、ゲノムウイルスDNAの非コード領域に挿入される。そうは言っても、アデノウイルスのこのいくつかの非コード領域は、例えば、選択的スプライシング、転写調節または翻訳調節において機能を有し得、これを考慮に入れる必要があり得る。
【0097】
L5領域に付随する、本明細書において同定される部位は、複雑な実体、例えば、RNAi、サイトカイン、1本鎖または多量体タンパク質、例えば、抗体、特に、配列番号12の抗体をコードする様々なDNA配列を収容するのに適当である。
【0098】
本明細書において利用される、遺伝子は、それに付随するコードおよび任意の非コード配列、例えば、イントロンおよび付随するエクソンを指す。1つの実施形態において、遺伝子は、必須の構造成分、例えば、コード領域のみを含むか、またはからなる。
【0099】
以下で、アデノウイルスの特定の構造エレメントに関して考察する。
【0100】
逆方向末端反復(ITR)配列は、全ての公知のアデノウイルスに共通し(それらの対称性のためそのように呼ばれる)、ウイルス染色体の複製起点である。これらの配列の別の特性は、ヘアピンを形成するそれらの能力である。
【0101】
本明細書において利用される、5’ITRは、適当な場所においてアデノウイルスに取り込まれたとき、ITRの機能を保持する、アデノウイルスの5’末端由来のITRの一部または全てを指す。1つの実施形態において、5’ITRは、国際公開第2016/174200号の配列番号21の約1bp~138bpの配列(当該配列は、参照により取り込まれる)または全長に沿ってそれに対して90、95、96、97、98または99%同一の配列、特に、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の約1bp~138bpからなる配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を含むか、またはからなる。
【0102】
本明細書において利用される、3’ITRは、適当な場所においてアデノウイルスに取り込まれたとき、ITRの機能を保持する、アデノウイルスの3’末端由来のITRの一部または全てを指す。1つの実施形態において、3’ITRは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の約32189bp~32326bpの配列、または全長に沿ってそれに対して90、95、96、97、98または99%同一の配列、特に、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の約32189bp~32326bpの配列を含むか、またはからなる。
【0103】
本明細書において利用される、B1は、アデノウイルス由来のE1Aの一部または全て、アデノウイルスのE1B領域の一部または全て、ならびに独立して、アデノウイルスのE1AおよびE1B領域の一部または全てをコードするDNA配列を指す。
【0104】
B1が結合であるとき、次に、E1AおよびE1B配列は、ウイルスから覗かれる。1つの実施形態において、B1は、結合であり、故に、ウイルスは、ベクターである。
【0105】
1つの実施形態において、B1は、導入遺伝子をさらに含む。E1領域が、E1領域(すなわち、配列の「中間」における)に破壊的方法で挿入され得る導入遺伝子を収容し得るか、またはE1領域の一部または全てを欠損させて、遺伝子物質を収容するためのさらなる部屋をもたらし得ることは、当該技術分野において公知である。
【0106】
本明細書において利用される、E1Aは、アデノウイルスE1A領域の一部または全てをコードするDNA配列を指す。後者は、ここで、ポリペプチド/タンパク質E1Aを指している。それは、E1A遺伝子によりコードされるタンパク質が、野生型(すなわち、対応する非変異導入タンパク質)と同じ機能;野生型タンパク質と比較して増大した機能;野生型タンパク質と比較して、機能がないのような、減少した機能を有するか:または必要に応じて、野生型タンパク質と比較して、新たな機能またはその組み合わせを有するように、保存的あるいは非保存的アミノ酸変更(例えば、全長に渡り1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸変更、付加および/または欠損)を有するように、変異導入されてもよい。
【0107】
本明細書において利用される、E1Bは、アデノウイルスE1B領域の一部または全て(すなわち、ポリペプチドもしくはタンパク質)をコードするDNA配列を指し、それは、E1B遺伝子/領域によりコードされるタンパク質が、野生型(すなわち、対応する非変異導入タンパク質)と同じ機能;野生型タンパク質と比較して増大した機能;野生型タンパク質と比較して、機能がないのような、減少した機能を有するか:または必要に応じて、野生型タンパク質またはその組み合わせと比較して、新たな機能を有するように、保存的あるいは非保存的アミノ酸変更(例えば、全長に渡り1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸変更、付加および/または欠損)を有するように、変異導入されてもよい。
【0108】
従って、B1は、野生型E1Aおよび/またはE1Bのような、野生型E1領域に比べて、修飾され得るか、または修飾され得ない。当業者は、E1Aおよび/またはE1Bが、存在するか、または(一部)欠損されるか、もしくは変異導入されているかどうかを容易に同定することができる。
【0109】
本明細書において利用される、野生型は、公知のアデノウイルスまたは公知のアデノウイルス由来の配列を指す。公知のアデノウイルスは、配列情報が入手可能かどうかに関わらず、同定され、命名されたものである。
【0110】
1つの実施形態において、B1は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の139bp~3932bpの配列を有する。
【0111】
本明細書において利用される、BAは、必要に応じて、任意の非コード配列を含むE2B-L1-L2-L3-E2A-L4領域をコードするDNA配列を指す(特に、アデノウイルス由来の天然の配列に対応する)。一般に、この配列は、導入遺伝子を含まない。1つの実施形態において、配列は、公知のアデノウイルス、例えば、表1に示される血清型、特に、B群ウイルス、例えば、Ad3、Ad11またはその組み合わせのような、Ad3、Ad7、Ad11、Ad14、Ad16、Ad21、Ad34、Ad35、Ad51またはその組み合わせ由来の近接配列に実質的に類似または同一である。1つの実施形態において、E2B-L1-L2-L3-E2A-L4であるは、これらのエレメントおよび領域に付随する他の構造エレメントを含むことを指し、例えば、BAは、一般に、タンパク質IV2aをコードする配列、例えば、次の:IV2A IV2a-E2B-L1-L2-L3-E2A-L4を含む。
【0112】
1つの実施形態において、E2B領域は、キメラである。すなわち、2つ以上の異なるアデノウイルス血清型由来、例えば、Ad3およびAd11pのようなAd11由来のDNA配列を含む。1つの実施形態において、E2B領域は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の5068bp~10355bpの配列、または全長に渡りそれに対して95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を有する。
【0113】
1つの実施形態において、成分BAにおけるE2Bは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号18において示される配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を含む。
【0114】
1つの実施形態において、BAは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号18の3933bp~27184bpの配列を有する。
【0115】
本明細書において利用される、E3は、アデノウイルスE3領域の一部または全て(すなわち、タンパク質/ポリペプチド)をコードするDNA配列を指し、それは、E3遺伝子/領域によりコードされるタンパク質が、野生型(すなわち、対応する非変異導入タンパク質)と同じ機能;野生型タンパク質と比較して増大した機能;野生型タンパク質と比較して、機能がないのような、減少した機能を有するか、または必要に応じて、野生型タンパク質またはその組み合わせと比較して、新たな機能を有するように、保存的あるいは非保存的アミノ酸変更(例えば、全長に渡り1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸変更、付加および/または欠損)を有するように、変異導入されてもよい。
【0116】
1つの実施形態において、E3領域は、表1において付与されるアデノウイルス血清型またはその組み合わせ、特に、B群血清型、例えば、Ad3、Ad7、Ad11(特に、Ad11p)、Ad14、Ad16、Ad21、Ad34、Ad35、Ad51またはその組み合わせ、例えば、Ad3、Ad11(特に、Ad11p)またはその組み合わせ由来である。
【0117】
1つの実施形態において、E3領域は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号19において示される配列を有する。
【0118】
1つの実施形態において、E3領域は、部分的に欠損され、例えば、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%欠損される。
【0119】
1つの実施形態において、B2は、結合であり、E3領域をコードするDNAは、存在しない。
【0120】
1つの実施形態において、E3領域をコードするDNAは、導入遺伝子により置換されるか、または中断され得る。本明細書において利用される、「導入遺伝子により置換されるE3領域」は、本明細書において利用される通り、導入遺伝子を用いて置換されているE3領域の一部または全てを含む。
【0121】
1つの実施形態において、B2領域は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号98の27185bp~28165bpの配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を含む。
【0122】
1つの実施形態において、B2は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号98の27185bp~28165bpの配列からなる。
【0123】
本明細書において利用される、BXは、BBにおけるL5遺伝子の5’末端の近傍におけるDNA配列を指す。本明細書において利用される、L5遺伝子の5’末端の近傍または近位においては、L5遺伝子の5’末端またはそれに本質的に付随する非コード領域に隣接(近接)、すなわち、L5遺伝子の5’主要末端またはそれに本質的に付随する非コード領域に隣接しているまたは近接することを指す。あるいは、近傍または近位においては、BX領域とL5遺伝子の5’末端の間にコード配列が存在しないように、近くのL5遺伝子であることを指してもよい。
【0124】
従って、1つの実施形態において、BXは、例えば、L5遺伝子のコード配列の開始を表す、L5の塩基に直接的に連結される。
【0125】
従って、1つの実施形態において、BXは、例えば、非コード配列の開始を表す、L5の塩基に直接的に連結されるか、またはL5に天然で付随する非コード領域に直接的に連結される。本明細書において利用される、L5に天然で付随する非コード領域は、L5遺伝子の一部であるか、またはそれと近接するが、別の遺伝子の一部でない、非コード領域の全ての一部を指す。
【0126】
1つの実施形態において、BXは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号98の配列を含む。この配列は、DNA配列、例えば、導入遺伝子(もしくは導入遺伝子カセット)、制限酵素部位またはその組み合わせを含むDNA配列が、そこに挿入され得る、人工非コード配列である。この配列は、ウイルス安定性および生存率に対する破壊的な作用を最小にしながら、導入遺伝子の正確な場所におけるいく分かの可動性を可能にするバッファーとして作用するので、有利である。
【0127】
挿入物(複数可)は、5’末端、3’末端からまたは塩基1~201の間、例えば、塩基対1/2、2/3、3/4、4/5、5/6、6/7、7/8、8/9、9/10、10/11、11/12、12/13、13/14、14/15、15/16、16/17、17/18、18/19、19/20、20/21、21/22、22/23、23/24、24/25、25/26、26/27、27/28、28/29、29/30、30/31、31/32、32/33、33/34、34/35、35/36、36/37、37/38、38/39、39/40、40/41、41/42、42/43、43/44、44/45、45/46、46/47、47/48、48/49、49/50、50/51、51/52、52/53、53/54、54/55、55/56、56/57、57/58、58/59、59/60、60/61、61/62、62/63、63/64、64/65、65/66、66/67、67/68、68/69、69/70、70/71、71/72、72/73、73/74、74/75、75/76、76/77、77/78、78/79、79/80、80/81、81/82、82/83、83/84、84/85、85/86、86/87、87/88、88/89、89/90、90/91、91/92、92/93、93/94、94/95、95/96、96/97、97/98、98/99、99/100、100/101、101/102、102/103、103/104、104/105、105/106、106/107、107/108、108/109、109/110、110/111、111/112、112/113、113/114、114/115、115/116、116/117、117/118、118/119、119/120、120/121、121/122、122/123、123/124、124/125、125/126、126/127、127/128、128/129、129/130、130/131、131/132、132/133、133/134、134/135、135/136、136/137、137/138、138/139、139/140、140/141、141/142、142/143、143/144、144/145、145/146、146/147、147/148、148/149、150/151、151/152、152/153、153/154、154/155、155/156、156/157、157/158、158/159、159/160、160/161、161/162、162/163、163/164、164/165、165/166、166/167、167/168、168/169、169/170、170/171、171/172、172/173、173/174、174/175、175/176、176/177、177/178、178/179、179/180、180/181、181/182、182/183、183/184、184/185、185/186、186/187、187/188、189/190、190/191、191/192、192/193、193/194、194/195、195/196、196/197、197/198、198/199、199/200もしくは200/201の間の任意の位置において、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号98内のいずれにおいてでも生じることができる。
【0128】
1つの実施形態において、BXは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号98を、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号98の塩基27~塩基28または位置28192bpと28193bpの間に対応する場所に挿入されたDNA配列と共に、含む。
【0129】
1つの実施形態において、BXは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号21の28166bp~28366bpの配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を有する。1つの実施形態において、BXは、結合である。
【0130】
本明細書において利用される、BBは、L5領域をコードするDNA配列を指す。本明細書において利用される、L5領域は、文脈において必要に応じて、ファイバーポリペプチド/タンパク質をコードする遺伝子を含有するDNA配列を指す。ファイバー遺伝子/領域は、アデノウイルスの主要なカプシド成分であるファイバータンパク質をコードする。ファイバーは、受容体認識において機能し、細胞に選択的に結合し、感染するアデノウイルスの能力に関与する。
【0131】
本開示のウイルスにおいて、ファイバーは、任意のアデノウイルス血清型由来であり、異なる血清型の1つについてのファイバーの変更の結果としてキメラであるアデノウイルスはまた、本開示を用いて予想される。1つの実施形態において、ファイバーは、B群ウイルス、特に、Ad11pのような、Ad11由来である。
【0132】
1つの実施形態において、BBは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の28367bp~29344bpの配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を有する。
【0133】
本明細書において利用される、BYに関連するDNA配列は、BBのL5遺伝子の3’末端の近傍におけるDNA配列を指す。本明細書において利用される、L5遺伝子の3’末端の近傍または近位においては、L5遺伝子の3’末端またはそれに本質的に付随する非コード領域に隣接(近接)、すなわち、L5遺伝子の3’主要末端またはそれに本質的に付随する非コード領域(すなわち、L5にとって内在性の非コード配列の全てもしくは一部)に隣接しているまたは近接することを指す。あるいは、近傍または近位においては、BY領域とL5遺伝子の3’末端の間にコード配列が存在しないように、近くのL5遺伝子であることを指してもよい。
【0134】
従って、1つの実施形態において、BYは、コード配列の「末端」を表すL5の塩基に直接的に連結される。
【0135】
従って、1つの実施形態において、BYは、非コード配列の「末端」を表すL5の塩基に直接的に連結されるか、またはL5に天然で付随する非コード領域に直接的に連結される。
【0136】
本質的におよび天然には、本明細書において互換的に使用される。1つの実施形態において、BYは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号99の配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を含む。この配列は、DNA配列、例えば、導入遺伝子(もしくは導入遺伝子カセット)、制限酵素部位またはその組み合わせを含むDNA配列が、挿入され得る、非コード配列である。この配列は、ウイルス安定性および生存率に対する破壊的な作用を最小にしながら、導入遺伝子の正確な場所におけるいく分かの可動性を可能にするバッファー作用するので、有利である。
【0137】
挿入物(複数可)は、5’末端、3’末端から、または塩基1~35の間、例えば、塩基対1/2、2/3、3/4、4/5、5/6、6/7、7/8、8/9、9/10、10/11、11/12、12/13、13/14、14/15、15/16、16/17、17/18、18/19、19/20、20/21、21/22、22/23、23/24、24/25、25/26、26/27、27/28、28/29、29/30、30/31、31/32、32/33、33/34、もしくは34/35の任意の位置において、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号18(当該配列は、参照により取り込まれる)内のいずれかにおいて生じることができる。
【0138】
1つの実施形態において、BYは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号99(当該配列は、参照により取り込まれる)を、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号1(当該配列は、参照により取り込まれる)における位置塩基12および13または29356bpおよび29357bpに対応する位置に挿入されたDNA配列と共に含む。1つの実施形態において、挿入物は、制限酵素部位の挿入物である。1つの実施形態において、制限酵素部位の挿入物は、1つまたは2つの制限酵素部位を含む。1つの実施形態において、制限酵素部位は、2つの制限酵素部位を含む19bpの制限酵素部位の挿入物である。1つの実施形態において、制限酵素部位の挿入物は、1つの制限酵素部位を含む9bpの制限酵素部位の挿入物である。1つの実施形態において、制限酵素部位の挿入物は、1つまたは2つの制限酵素部位および少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1つまたは2つの導入遺伝子のような、1つまたは2つたは3つの導入遺伝子を含む。1つの実施形態において、制限酵素部位は、2つの制限酵素部位および少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1つまたは2つの導入遺伝子を含む19bpの制限酵素部位の挿入物である。1つの実施形態において、制限酵素部位の挿入物は、1つの制限酵素部位および少なくとも1つの導入遺伝子、例えば、1つまたは2つの導入遺伝子を含む9bpの制限酵素部位の挿入物である。1つの実施形態において、2つの制限酵素部位は、2つのような、1つまたは複数の導入遺伝子(例えば、導入遺伝子カセット中)をサンドイッチする。1つの実施形態において、BYは、2つの制限酵素部位を含むとき、当該制限酵素部位は、互いに異なる。1つの実施形態において、BYにおける当該1つまたは複数の制限酵素部位は、それらが挿入されている特定のアデノウイルスゲノムにおいて非天然に存在する(例えば、固有である)。1つの実施形態において、BYにおける当該1つまたは複数の制限酵素部位は、アデノウイルスゲノムにおける他の場所に位置する他の制限酵素部位と異なり、天然に生じる制限酵素部位またはBXのような、ゲノムの他の部分に導入された制限酵素部位と異なる。従って、1つの実施形態において、制限酵素部位または複数の部位は、セクションにおけるDNAが、特異的に切断されることを可能にする。
【0139】
1つの実施形態において、BYは、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の29345bp~29379bpの配列を有する。1つの実施形態において、BYは、結合である。
【0140】
1つの実施形態において、挿入物は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号99における塩基12の後である。
【0141】
1つの実施形態において、挿入物は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17のおよそ位置29356bpにある。
【0142】
1つの実施形態において、挿入物は、1つまたは複数の導入遺伝子、例えば、1つまたは2つのような、1つ、2つまたは3つの導入遺伝子を含む導入遺伝子カセットである。
【0143】
本明細書において利用される、E4は、アデノウイルスE4領域の一部または全て(すなわち、タンパク質/ポリペプチド)をコードするDNA配列を指し、それは、E4遺伝子によりコードされるタンパク質が、保存的または非保存的アミノ酸変更(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸変更、付加および/または欠損)を有し、野生型(すなわち、対応する非変異導入タンパク質)と同じ機能;野生型タンパク質と比較して増大した機能;野生型タンパク質と比較して、機能がないのような、減少した機能を有するか、または必要に応じて、野生型タンパク質と比較して、新たな機能またはその組み合わせを有するように、変異導入されてもよい。
【0144】
1つの実施形態において、E4領域は、部分的に欠損され、例えば、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%欠損される。1つの実施形態において、E4領域は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の32188bp~29380bpの配列を有する。
【0145】
1つの実施形態において、欠損されているE4orf4領域を除き、E4は存在する。
【0146】
1つの実施形態において、B3は、結合である、すなわち、E4は、存在しない。
【0147】
1つの実施形態において、B3は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号17の32188bp~29380bpからなる配列を有する。
【0148】
本明細書において利用される、数値範囲は、端点を含む。
【0149】
当業者は、式(I)、(Ia)のような、本明細書における式におけるエレメントが、近接し、本明細書において述べられる非コードDNA配列ならびに遺伝子およびコードDNA配列(構造特性)を統合し得ることを理解する。1つまたは複数の実施形態において、本開示の製剤は、アデノウイルスゲノムにおける天然に存在する配列を記載することを試みる。この文脈において、製剤が、ゲノムの関連するセクションを特徴付ける主要エレメントを指し、DNAのゲノムストレッチの徹底的な記載であるとは意図されないことは、当業者に明らかである。
【0150】
本明細書において利用される、E1A、E1B、E3およびE4は、それぞれ独立して、本明細書において記載される、野生型およびその均等物、それぞれの領域の変異導入または部分的に欠損された形態、特に、公知のアデノウイルス由来の野生型配列を指す。
【0151】
本明細書において利用される、「挿入物」は、参照配列を中断するように、5’末端、3’末端においてまたは所定のDNA配列参照セグメント内のいずれかで取り込まれるDNA配列を指す。参照配列は、挿入物が位置するものと比べた参照ポイントとして利用した。本開示の文脈において、挿入物は、一般に、両方が国際公開第2016/174200号において開示される、配列番号98または配列番号99のいずれかにおいて生じる。挿入物は、一般に、導入遺伝子カセットを含有する。配列が中断されるとき、ウイルスは、依然として、元の配列を含むが、一般に、挿入物をサンドイッチする2つのフラグメントとしてである。
【0152】
1つの実施形態において、導入遺伝子または導入遺伝子カセットは、TN7トランスポゾンまたはその一部のような、非バイアス挿入トランスポゾンを含まない。本明細書において利用される、Tn7トランスポゾンは、国際公開第2008/080003号において記載される非バイアス挿入トランスポゾンを指す。
【0153】
1つの実施形態において、導入遺伝子または導入遺伝子カセットは、調節エレメントまたは配列をさらに含む。
【0154】
プロモーター
本明細書において利用される、プロモーターは、特定の遺伝子または複数の遺伝子の転写を開始するDNAの領域を意味する。プロモーターは、一般に、同じ鎖およびDNA上の上流(すなわち、5’)、それらが転写する遺伝子の近位に位置する。この文脈において利用される、近位は、プロモーターとして機能するのに十分に近いことを意味する。1つの実施形態において、プロモーターは、転写開始部位の100bp以内にある。従って、本明細書において利用される、内在性プロモーターは、導入遺伝子が挿入されている、アデノウイルス(または構築物)において天然に生じる(すなわち、それにとって天然である)プロモーターを指す。1つまたは複数の実施形態において、利用される内在性プロモーターは、ウイルスゲノムにおけるその元の場所におけるウイルスにおける天然に存在するプロモーターであり、特に、これは、導入遺伝子または複数の導入遺伝子の発現において利用される主要または唯一のプロモーターである。1つの実施形態において、導入遺伝子の翻訳および場合により、転写を促進するために使用される内在性プロモーターは、常在のものであり、すなわち、アデノウイルスのゲノムに組込まれ、組換え技術により既に導入されていないものである。
【0155】
本明細書において利用される、内在性プロモーターの制御下は、導入遺伝子/導入遺伝子カセットが、当該内在性プロモーターの制御下であるように適当な方向で挿入されている場所を指す。すなわち、プロモーターが、一般に、アンチセンス鎖にある場合、カセットは、例えば、アンチセンス方向で挿入される。
【0156】
そうは言っても、遺伝子は、二方向のうちの一方向で発現され得る。しかしながら、一般に、一方の方向が、所定の(特定の)導入遺伝子に、他の方向より増大したレベルの発現をもたらす。
【0157】
1つの実施形態において、カセットは、センス方向である。それは、5’から3’方向に転写される。1つの実施形態において、カセットは、アンチセンス方向である。それは、3’から5’方向に転写される。
【0158】
ウイルスにおける内在性プロモーターは、例えば、導入遺伝子およびスプライスアクセプター配列をコードする遺伝子を利用することにより、利用することができる。従って、1つの実施形態において、カセットは、内在性プロモーターを利用する導入遺伝子を促すスプライスアクセプター配列を含む。従って、1つの実施形態において、コード配列、例えば、抗体または抗体結合フラグメントをコードする配列は、スプライスアクセプター配列をさらに含む。
【0159】
1つの実施形態において、導入遺伝子、複数の導入遺伝子、または導入遺伝子カセットは、E4プロモーターまたは主要後期プロモーター(MLプロモーター)のような、主要後期プロモーターの制御下にある。
【0160】
本明細書において利用される、制御下は、特定のプロモーターが指示するとき、導入遺伝子が活性化される、すなわち、転写されることを意味する。
【0161】
本明細書において利用される、主要後期プロモーター(MLプロモーターまたはMLP)は、L5遺伝子のような、後期に発現される遺伝子の発現を制御するアデノウイルスプロモーターを指す。MLPは、「センス鎖」プロモーターである。すなわち、プロモーターは、5’から3’方向でプロモーターの下流にある遺伝子に影響する。本明細書において利用される、主要後期プロモーターは、ウイルスゲノムに位置する元の主要後期プロモーターを指す。
【0162】
本明細書において利用される、E4プロモーターは、E4領域のアデノウイルスプロモーターを指す。E4領域は、アンチセンス領域であり、それ故、プロモーターは、アンチセンスプロモーターである。すなわち、プロモーターは、3’から5’方向でE4領域の上流にある。それ故、E4プロモーターの制御下の任意の導入遺伝子カセットは、適当に方向付けられる必要がある。1つの実施形態において、E4プロモーターの制御下のカセットは、アンチセンス方向である。1つの実施形態において、カセットは、センス方向でE4プロモーターの制御下である。本明細書において利用される、E4プロモーターは、ウイルスゲノムに位置する元のE4プロモーターを指す。
【0163】
従って、1つの実施形態において、複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルス血清型11(例えば、Ad11p)またはそのウイルス誘導体が提供され、ファイバー、ヘキソンおよびカプシドは、血清型11(例えば、Ad11p)であり、ウイルスゲノムは、治療抗体または抗体結合フラグメントをコードするDNA配列を含み、E4および主要後期プロモーター(すなわち、E4プロモーターまたは主要後期プロモーター)からなるものから選択されるアデノウイルスにとって内在性のプロモーターの制御下の当該DNA配列は、導入遺伝子が、ウイルス複製と干渉しないように、例えば、ウイルスゲノムにおけるL5の後に位置するような、L5領域に付随する(すなわち、当該領域の前または後)。
【0164】
1つの実施形態において、内在性プロモーターは、組換え技術により、所望の場所においてウイルスゲノムに導入され、例えば、導入遺伝子カセットに導入される。しかしながら、本明細書の文脈において、この配置は、一般に、外来プロモーターに言及する。
【0165】
1つの実施形態において、導入遺伝子カセットは、外来プロモーターを含む。本明細書において利用される、外来プロモーターは、導入遺伝子が挿入されている、アデノウイルスにおいて天然に存在しないプロモーターを指す。典型的には、外来プロモーターは、他のウイルス由来であるか、または哺乳類プロモーターである。本明細書において利用される、外来プロモーターは、遺伝子の転写を調節する、対象となる遺伝子の上流に通常位置する、DNAエレメントを意味する。
【0166】
1つの実施形態において、遺伝子発現の制御因子は、外来プロモーター、例えば、CMVプロモーターのような、CMV(サイトメガロウイルスプロモーター)、CBA(トリベータアクチンプロモーター)またはPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター)である。
【0167】
1つの実施形態において、外来プロモーターは、誘導可能である。
【0168】
1つの実施形態において、複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルス血清型11(例えば、Ad11p)またはそのウイルス誘導体が提供され、ファイバー、ヘキソンおよびカプシドは、清型11(例えば、Ad11p)であり、ウイルスゲノムは、導入遺伝子が、ウイルス複製と干渉しないように、ウイルス複製サイクルにおいて後期に発現される、ウイルスゲノムの一部において位置する治療抗体または抗体結合フラグメントをコードするDNA配列を含み、当該DNA配列は、アデノウイルスにとって外来のプロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下である。1つの実施形態において、抗体またはフラグメントをコードするDNA配列は、本明細書における他の場所で記載されるL5領域に付随する。
【0169】
他の調節配列
本明細書において利用される、「遺伝子発現の制御因子」(または制御因子/調節エレメント)は、典型的には、転写または翻訳を開始させるか、または増強させることにより、遺伝子発現において役割を果たすプロモーター、エンハンサーまたはスプライスアクセプター配列のような、遺伝子エレメントを指す。
【0170】
本明細書において利用される、「スプライスアクセプター配列」、「スプライスアクセプター」または「スプライス部位」は、mRNA分子が、スプライソソーム複合体の小さい核内リボヌクレオタンパク質により認識されるときを決定する調節配列を指す。スプライソソームが会合したら、上流スプライスドナー部位へのmRNA分子のスプライスアクセプター部位間のスプライシングを触媒し、これにより、単一のポリペプチドまたはタンパク質を産生するよう翻訳され得る成熟mRNA分子を産生する。
【0171】
異なるサイズのスプライスアクセプター配列が、本発明において利用されてもよく、これらは、短いスプライスアクセプター(小)、スプライスアクセプター(中)および分岐スプライスアクセプター(大)として記載され得る。
【0172】
本明細書において利用される、SSAは、短いスプライスアクセプター、典型的には、ちょうどスプライス部位、例えば、4bpを含む、短いスプライスアクセプターを指す。本明細書において利用される、SAは、スプライスアクセプター、典型的には、短いスプライスアクセプターおよびポリピリミジントラクト、例えば、16bpを含む、スプライスアクセプターを指す。本明細書において利用される、bSAは、分岐スプライスアクセプター、典型的には、短いスプライスアクセプター、ポリピリミジントラクトおよび分岐ポイント、例えば、26bpを含む、分岐スプライスアクセプターを指す。
【0173】
1つの実施形態において、本開示の構築物において利用されるスプライスアクセプターは、CAGGまたは配列番号15もしくは16(両方とも、国際公開第2016/174200号において配列番号10および11として開示され、当該配列は、参照により取り込まれる)。1つの実施形態において、SSAは、CAGGのヌクレオチド配列を有する。1つの実施形態において、SAは、配列番号15のヌクレオチド配列を有する。1つの実施形態において、bSAは、caggのヌクレオチド配列を有する。1つの実施形態において、スプライスアクセプター配列は、tgctaatctt cctttctctc ttcagg(配列番号15)、tttctctctt cagg(配列番号16)、およびcaggを含む群から独立して選択される。
【0174】
1つの実施形態において、スプライス部位は、CCACCを含むコンセンサスコザック配列により直ちに処理される(すなわち、5’から3’方向で続く)。1つの実施形態において、スプライス部位およびコザック配列は、最大100以下のbpにより散在される(分けられる)。1つの実施形態において、コザック配列は、CCACCのヌクレオチド配列を有する。
【0175】
典型的には、内在性または外来プロモーター(例えば、内在性プロモーター)の制御下にあるとき、コード配列は、コザック配列により直ちに処理される。コード領域の開始は、開始コドン(AUG)により示され、例えば、配列(gcc)gccRccAUGg(配列番号8)の関係にあり、コード配列の開始の開始は、太字の塩基により示される。小文字は、この位置にある共通の塩基(それにも関わらず変動し得る)を示し、大文字は、高度に保存される塩基を示す、すなわち、「AUGG」配列は、仮に変更したとしても、一定または稀であり;「R」は、プリン(アデニンまたはグアニン)が、通常、この位置において見られることを示し、括弧内の配列(gcc)は、不確に重要なものである。従って、1つの実施形態において、開始コドンAUGは、コザック配列に取り込まれる。
【0176】
本明細書において利用される、内部リボソーム進入DNA配列は、内部リボソーム進入配列(IRES)をコードするDNA配列を指す。本明細書において利用される、IRESは、mRNA配列内で始まる開始を含む、メッセンジャーRNA(mRNA)配列の翻訳の開始を可能にするヌクレオチド配列を意味する。これは、カセットがポリシストロニックmRNAをコードするとき、特に有用である。IRESの使用は、複数の個々のタンパク質またはペプチドに翻訳されるポリシストロニックmRNAを生じる。1つの実施形態において、内部リボソーム進入DNA配列は、国際公開第2016/174200号において配列番号6として開示されるヌクレオチド配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を有する。1つの実施形態において、特定のIRESは、ゲノムにおいて1回だけ使用される。これは、ゲノムの安定性に関して利点を有し得る。
【0177】
本明細書において利用される、「高自己切断効率2Aペプチド」または「2Aペプチド」は、翻訳後に効率的に切断されるペプチドを指す。適当な2Aペプチドは、P2A、F2A、E2AおよびT2Aを含む。本発明者らは、所定の2Aペプチドをコードする特定のDNA配列が1回使用されると、同じ特定のDNA配列は、2回使用されない可能性があることに気付いた。しかしながら、DNAコードにおける重複性を使用して、同じ2Aペプチドに翻訳されるDNAを生み出し得る。2Aペプチドの使用は、カセットがポリシストロニックmRNAをコードするとき、特に有用である。2Aペプチドの使用は、翻訳されている単一のポリペプチド鎖を生じ、それが、翻訳後修飾されて、複数の個々のタンパク質またはペプチドを生み出す。
【0178】
1つの実施形態において、利用されるコードされるP2Aペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を有する。1つの実施形態において、利用されるコードされるF2Aペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を有する。1つの実施形態において、利用されるコードされるE2Aペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有する。1つの実施形態において、利用されるコードされるT2Aペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を有する。
【0179】
1つの実施形態において、導入遺伝子によりコードされるmRNAまたはそれぞれのmRNAは、ポリアデニル化シグナル配列であり、それを含み、例えば、典型的には、mRNA配列の末端において、例えば、配列番号10において示され通り、利用される。従って、1つの実施形態において、導入遺伝子または導入遺伝子カセットは、ポリアデニル化シグナル配列をコードする少なくとも1つの配列を含む。
【0180】
本明細書において利用される、「ポリA」、「ポリアデニル化シグナル」または「ポリアデニル化配列」は、転写されると、新生mRNA分子を切断し、ポリアデニル化する複数のタンパク質複合体により認識され得る、DNA配列、通常、AATAAA部位を含有するDNA配列を意味する。
【0181】
1つの実施形態において、ポリアデニル化配列は、国際公開第2016/174200号において開示される配列番号6のヌクレオチド配列(当該配列は、参照により取り込まれる)を有する。
【0182】
1つの実施形態において、構築物は、ポリアデニル化配列を含まない。1つの実施形態において、遺伝子発現の制御因子は、スプライスアクセプター配列である。
【0183】
1つの実施形態において、抗体または抗体結合フラグメントのような、タンパク質/ポリペプチド/ペプチドをコードする配列は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。
【0184】
製剤
本開示は、本明細書において記載される、ウイルスの医薬製剤に関し、またそれまで拡大する。
【0185】
1つの実施形態において、本開示による複製可能な腫瘍溶解性の液体非経口製剤、例えば、注入または注射のための液体非経口製剤が提供され、製剤は、1回投与容量当たり1×1010~1×1014個のウイルス粒子の範囲の投与をもたらす。
【0186】
非経口製剤は、GI管を介してデリバリーされないよう設計された製剤を意味する。典型的な非経口デリバリー経路は、注射、移植または注入を含む。1つの実施形態において、製剤は、ボーラスデリバリーのための形態で提供される。
【0187】
1つの実施形態において、非経口製剤は、注射の形態である。注射は、静脈内、皮下、腫瘍内または筋内注射を含む。本明細書において利用される、注射は、シリンジを介した身体への液体の挿入を意味する。1つの実施形態において、本開示の方法は、腫瘍内注射を含まない。
【0188】
1つの実施形態において、非経口製剤は、注入の形態である。
【0189】
本明細書において利用される、注入は、点滴、注入ポンプ、シリンジドライバーまたは同等の装置による、よりゆっくりした速度での液体の投与を意味する。1つの実施形態において、注入は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19 20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、65、80、85、90、95、100、105、110または115分のような、1.5分~120分の範囲の期間に渡り投与される。
【0190】
1つの実施形態において、製剤の1用量は、例えば、シリンジドライバーにより投与される、100ml未満、例えば、30mlである。
【0191】
1つの実施形態において、注射は、例えば、1.5~30分の期間に渡るゆっくりとした注射として投与される。
【0192】
1つの実施形態において、製剤は、静脈内(i.v.)投与用である。この経路は、器官および組織の大部分への迅速なアクセスを可能にするので、腫瘍溶解性ウイルスのデリバリーに特に有効であり、転移、例えば、確立した転移、特に、肝臓および肺のような高度に血管形成した領域に位置するものの処置に特に有用である。
【0193】
治療製剤は、典型的には、製造および保存の条件下で無菌かつ安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、またはヒトへの投与に適した他の非経口製剤として製剤することができ、シリンジまたはバイアルのような予め充填された装置として、特に、1回用量として製剤されてもよい。
【0194】
製剤は、一般に、医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば、ウイルスと適合する無毒性の等調な担体を含み、ウイルスは、必要な期間安定である。
【0195】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適当な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンまたはポリソルベート80または40のような非イオン性界面活性剤のような、分散剤または界面活性剤の使用により、維持され得る。分散系において、要求される粒子サイズの維持は、界面活性剤の存在により補助され得る。等調剤の例は、組成物において糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含む。
【0196】
1つの実施形態において、利用される非経口製剤は、次の緩衝液、例えば、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、リン酸緩衝液および/またはトリス緩衝液、糖、例えば、デキストロース、マンノース、スクロースまたは類似、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムまたは塩化カリウムのような塩、brij、PS-80、PS-40または類似のもののような非イオン性界面活性剤のような洗浄剤の1つまたは複数を含んでもよい。製剤はまた、可能性のある分解の1つまたは複数の経路を妨げると考えられる、EDTAもしくはエタノールまたはEDTAとエタノールの組み合わせのような保存剤を含んでもよい。
【0197】
1つの実施形態において、製剤は、本開示による精製された腫瘍溶解性ウイルス、例えば、1用量当たり1×1010~1×1012個のウイルス粒子のような、1用量当たり1×1010~1×1014個のウイルス粒子を含む。1つの実施形態において、製剤におけるウイルスの濃度は、2×1012個のウイルス粒子/mlのような、範囲2×108~2×1014個のウイルス粒子/mlにある。
【0198】
1つの実施形態において、非経口製剤は、グリセロールを含む。
【0199】
1つの実施形態において、製剤は、本明細書において記載される腫瘍溶解性アデノウイルス、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、グリセロールおよび緩衝液を含む。
【0200】
1つの実施形態において、非経口製剤は、開示のウイルス、HEPES、例えば、5mM HEPES、グリセロール、例えば、5~20%(v/v)グリセロール、塩酸、例えば、pHを範囲7~8に調整した塩酸および注射用水からなる。
【0201】
1つの実施形態において、本開示の濃度2×1012個のウイルス粒子/mLのウイルス0.7mLは、5mM HEPES、20%グリセロールにおいて、終pH7.8で製剤される。
【0202】
医薬的に許容される担体の完璧な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J.1991年)において入手可能である。
【0203】
1つの実施形態において、製剤は、吸入を含む局所投与用の製剤として提供される。
【0204】
適当な吸入可能な調製物は、吸入可能な粉末、推進ガスを含有する計測エアロゾルまたは推進ガスを含まない吸入可能な溶液を含む。本開示による吸入可能な粉末は、一般に、本明細書において記載されるウイルスを生理的に許容される賦形剤と共に含有する。
【0205】
これらの吸入可能な粉末は、単糖(例えば、グルコースもしくはアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、ショ糖、マルトース)、オリゴおよびポリサッカライド(例えば、デキストラン)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)または互いとのこれらの混合物を含んでもよい。特に、それらの水和物の形態のものに限らず、ラクトースまたはグルコースのような、単または二糖が、適当に使用される。
【0206】
肺における沈着用の粒子は、1~9ミクロン、例えば、0.1~5μm、特に、1~5μmのような、10ミクロン未満の粒子サイズを要求する。ウイルスを有する粒子のサイズは、主に重要なものであり、従って、1つの実施形態において、本開示によるウイルスは、所定のサイズのラクトース粒子のような、粒子に吸着されるか、または吸収されてもよい。
【0207】
吸入可能なエアロゾルを調製するために使用され得る推進ガスは、当該技術分野において公知である。適当な推進ガスは、n-プロパン、n-ブタンもしくはイソブタンのような炭化水素ならびにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンもしくはシクロブタンの塩素付加および/またはフッ素化誘導体のようなハロ炭化水素の中から選択される。上述の推進ガスは、それら自体またはその混合物において使用されてもよい。
【0208】
特に適当な推進ガスは、TG11、TG12、TG134aおよびTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上述のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)およびTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)ならびにその混合物が、特に適当である。
【0209】
推進ガスを含有する吸入可能なエアロゾルはまた、共溶媒、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、酸化防止剤、滑沢剤およびpHを調節するための手段のような、他の成分を含有してもよい。全てのこれらの成分は、当該技術分野において公知である。
【0210】
本発明による推進ガスを含有する吸入可能なエアロゾルは、最大5重量%の有効な物質を含有してもよい。本発明によるエアロゾルは、例えば、0.002~5重量%、0.01~3重量%、0.015~2重量%、0.1~2重量%、0.5~2重量%または0.5~1重量%の有効成分を含有する。
【0211】
あるいは、肺への局所投与は、例えば、噴霧器のような装置、例えば、圧縮機に接続された噴霧器(例えば、Pari Respiratory Equipment、Inc.、Richmond、Va.により製造されたPari Master(登録商標)圧縮機に接続されたPari LC-Jet Plus(登録商標)噴霧器)を利用する、液状の溶液または懸濁製剤の投与によるものであってもよい。
【0212】
例えば、非経口製剤について既に上で記載された通り、例えば、溶液または懸濁液の形態で、溶媒中に分散された、本発明のウイルスをデリバリーすることができる。それは、適当な生理学的溶液、例えば、食塩水または他の薬理学的に許容される溶媒もしくは緩衝溶液において懸濁することができる。当該技術分野において公知の緩衝溶液は、水1ml当たりエデト酸2ナトリウム0.05mg~0.15mg、NaCl8.0mg~9.0mg、ポリソルベート0.15mg~0.25mg、無水クエン酸0.25mg~0.30mg、およびクエン酸ナトリウム0.45mg~0.55mgを含有して、pH約4.0~5.0に至ってもよい。
【0213】
治療懸濁液または溶液製剤はまた、1つまたは複数の賦形剤を含有することができる。賦形剤は、当該技術分野において周知であり、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液及び炭酸水素緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールを含む。溶液または懸濁液は、リポソームまたは生分解性微粒子に封入することができる。製剤は、一般に、無菌製造プロセスを利用して、実質的に無菌の形態で提供される。
【0214】
これは、製剤のため使用される緩衝溶媒/溶媒の濾過による生産および無菌化、無菌の緩衝溶媒溶液における抗体の無菌の懸濁、ならびに当業者が慣れ親しんだ方法による無菌の容器への製剤の分散を含んでもよい。
【0215】
本開示による噴霧可能な製剤は、例えば、ホイル包装材料に梱包された1回用量単位(例えば、密封プラスチック容器またはバイアル)として提供されてもよい。それぞれのバイアルは、容量、例えば、2mLの溶媒/溶液緩衝液中の単位用量を含有する。
【0216】
本開示はまた、例えば、両方とも参照により取り込まれる、国際公開第2009/068877号および米国公開第2004/0153033号において開示される装置を利用する、鼻腔内デリバリーされる液体溶液または懸濁液まで拡大する。
【0217】
処置
さらなる態様において、本開示は、処置における使用のための、特に、癌の処置のための、本明細書において記載されるウイルスまたはその製剤まで拡大する。
【0218】
1つの実施形態において、処置の方法は、腫瘍の処置における使用のためである。
【0219】
本明細書において利用される、腫瘍は、新生物とも呼ばれる、制御されず、進行性である、過剰な細胞分裂から生じる組織の異常な塊を指すことが意図される。腫瘍は、良性(非癌性)または悪性のいずれかであってもよい。腫瘍は、癌および転移の全ての形態を包含する。1つの実施形態において、腫瘍は癌性である。
【0220】
1つの実施形態において、腫瘍は、固形腫瘍である。固形腫瘍は、局在性であっても、または転移性であってもよい。
【0221】
1つの実施形態において、腫瘍は、上皮起源のものである。
【0222】
1つの実施形態において、腫瘍は、結腸直腸癌、肝細胞癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、甲状腺癌、腎臓癌、膀胱癌、頭頚部癌または肺癌のような悪性腫瘍である。
【0223】
1つの実施形態において、腫瘍は、結腸直腸の悪性腫瘍である。
【0224】
本明細書において利用される、悪性腫瘍は、癌性細胞を指す。
【0225】
1つの実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、転移の処置または予防において利用される。
【0226】
1つの実施形態において、本明細書における方法または製剤は、薬物抵抗性の癌の処置において利用される。
【0227】
1つの実施形態において、ウイルスは、さらなる癌処置または療法の投与と組み合わせて投与される。
【0228】
1つの実施形態において、癌、例えば、上記の癌の処置のための医薬の製造における使用のための本開示によるウイルスまたは製剤が提供される。
【0229】
さらなる態様において、それを必要とする患者に、例えば、ヒト患者に治療上有効量の本開示によるウイルスまたは製剤を投与する工程を含む、癌を処置する方法が提供される。
【0230】
1つの実施形態において、本明細書における腫瘍溶解性ウイルスまたは製剤は、別の療法と組み合わせて投与される。
【0231】
本明細書において利用される、「組み合わせにおいて」は、腫瘍溶解性ウイルスが、癌処置または療法の前、同時および/または後に投与される場合を包含することが意図される。しかしながら、一般に、併用療法についての処置レジメンは、一般に、重複する。
【0232】
本明細書において利用される、「併用療法」は、例えば、キットとして、または特に、癌の処置における使用のため同時に製剤化された2つの薬物製品一緒を指す。
【0233】
癌療法は、外科手術、放射線療法、標的療法および/または化学療法を含む。
【0234】
本明細書において利用される、癌処置は、治療化合物または生物学的な剤、例えば、癌を処置することが意図された抗体を用いた処置、および/またはその管理療法を指す。
【0235】
1つの実施形態において、癌処置は、化学療法剤;抗体薬物複合体のような、標的化抗癌剤;放射線療法、放射性同位体療法またはその任意の組み合わせを含む任意の他の抗癌療法から選択される。
【0236】
1つの実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスのような本開示のウイルスを、外科手術(ネオアジュバント療法)のような、療法に対する前処置として使用して、例えば、腫瘍を縮小させて、例えば、転移を処置し、および/または転移もしくはさらなる転移を予防し得る。腫瘍溶解性アデノウイルスを、外科手術(アジュバント療法)のような、療法後に使用して、例えば、寛解にある癌を維持して、転移を処置し、および/または転移もしくはさらなる転移を処置し得る。
【0237】
1つの実施形態において、本開示のウイルスまたは製剤は、管理療法において利用される。
【0238】
本明細書において利用される、同時は、腫瘍溶解性アデノウイルス製剤と同時またはほぼ同時の追加の癌処理の投与である。処置は、同じ製剤内に含有されるか、または別個の製剤として投与されてもよい。
【0239】
1つの実施形態において、ウイルスは、化学療法剤の投与との組み合わせで投与される。
【0240】
本明細書において利用される、化学療法剤は、悪性細胞および組織にとって選択的に破壊的である特定の抗悪性新生物の化学剤または薬物を指すことが意図される。例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、および他の抗腫瘍剤。特定の化学療法剤の例は、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル(5-FU)、パクリタキセル、カペシタビン、イリノテカン、ならびにシスプラチンおよびオキサリプラチンのようなプラチンを含む。用量は、処置されている癌の性質に基づき、開業医により選択されてもよい。
【0241】
1つの実施形態において、治療剤は、免疫応答および/または腫瘍血管新生の制御において補助し得る、ガンシクロビルである。
【0242】
1つの実施形態において、本明細書における方法において利用される1つまたは複数の療法は、低用量の抗癌薬物を用いた継続的または頻繁な処置であり、しばしば他の療法と併用される、メトロノミックである。
【0243】
B亜群腫瘍溶解性アデノウイルス、特に、Ad11およびEnAdのようなそれらからもたらされるものは、アポトーシス、主として壊死性機序による癌細胞の殺傷にほぼ独立した作用機序を有すると思われるので、特に、化学療法剤と相乗的であり得る。さらに、化学療法中に生じる免疫抑制は、腫瘍溶解性ウイルスが、より効率的に機能することを可能にし得る。
【0244】
本明細書において利用される、治療用量は、適当な処置レジメンにおいて利用されるとき、意図される治療効果、例えば、疾患の症状または状態の改善、特に、用量規制副作用を誘発することない改善を達成するのに適当である腫瘍溶解性アデノウイルスのような、ウイルスの量を指す。ウイルス粒子が、次の:腫瘍または転移性成長が、遅延されるか、または停止される、または腫瘍または転移のサイズが縮小することが見出され、および/または患者の寿命が延長される、をもたらすのに十分であるとき、用量は、癌または転移の処置における治療用量とみなされ得る。適当な治療用量は、一般に、治療効果と許容できる毒性の間のバランスであり、例えば、副作用および毒性が、療法により達成される利点を考え、許容できる場合である。
【0245】
1つの実施形態において、1回の処置サイクルにおける本開示による腫瘍溶解性アデノウイルスの非経口製剤の複数回用量の全身投与が提供され、例えば、それぞれの投与において付与されるトータルの用量は、1回用量当たり1×1010~1×1014個のウイルス粒子の範囲にある。
【0246】
1つの実施形態において、ウイルス粒子デリバリーの速度が、1分当たり2×1010個の粒子~1分当たり2×1012個の粒子の範囲にあるように、1つまたは複数の用量(例えば、それぞれの用量)のウイルスまたはそれを含む組成物が、投与される。
【0247】
1つの実施形態において、本開示によるウイルスまたは治療構築物(それを含む製剤を含む)は、毎週投与され、例えば、1週目に1回用量が、1、3、5日目に、続いて、それぞれの続く週に1回用量が投与される。
【0248】
1つの実施形態において、本開示によるウイルスまたは治療構築物(それを含む製剤を含む)は、2週間に1回または3週間に1回投与され、例えば、1週目において、1、3および5日目に1回、および2または3週目に、その1、3および5日目にも投与される。この投与レジメンは、必要に応じた回数繰り返され得る。
【0249】
1つの実施形態において、本開示によるウイルスまたは治療構築物(それを含む製剤を含む)は、毎月、例えば、処置サイクルにおいて、または管理療法として投与される。
【0250】
1つの実施形態において、本開示のウイルスおよび構築物は、組換え技術により調製される。当業者は、目的のアデノウイルスゲノムが、ゲノムまたはゲノムの一部もしくは全てを含むプラスミドの完全な合成を含む、他の技術的手段により、製造することができることを理解する。当業者は、ゲノムの合成現象において、挿入の領域は、制限酵素部位のヌクレオチドを、後者はクローニング方法を使用した遺伝子の挿入後のアーチファクトであるので、含まなくてもよいことを理解する。
【0251】
1つの実施形態において、目的のアデノウイルスゲノムは、完全に合成で製造される。
【0252】
本明細書における開示は、導入遺伝子または導入遺伝子カセットの挿入から得られた、または得られ得る、式(I)またはそのサブの式のアデノウイルスまでさらに拡大する。
【0253】
本明細書において利用される、「である」は、含むことを意味する。
【0254】
本明細書の文脈において、「含むこと(comprising)」は、「含むこと(including)」として解釈されるべきである。
【0255】
ある種の特性/エレメントを含む本発明の実施形態はまた、関連するエレメント/特性から「なる」または「本質的になる」代替の実施形態まで拡大することが意図される。
【0256】
技術的に適当な場合、本発明の実施形態は、組合わされてもよい。
【0257】
特許および出願のような技術的参考文献は、参照により取り込まれる
【0258】
本明細書において具体的および明確に引用される任意の実施形態は、単独または1つもしくは複数のさらなる実施形態との組み合わせのいずれかで排除の基礎を形成してもよい。
【0259】
本明細書において見出しを利用して、文書を節に分け、それは、本明細書において提供される開示の意味を解釈するために使用されることは意図されない。
【0260】
本開示はまた、本明細書における任意のウイルス配列またはカセット配列の具体的開示、当該ウイルスを含む組成物、ウイルスを生み出すための当該カセットの使用、および療法、特に、癌療法における開示によるウイルスの使用まで拡大する。
【0261】
本出願は、両者とも2017年6月1日に出願された英国特許出願第1708779.2号および英国特許出願第1708778.4号に基づく優先権を主張する。それぞれの開示は、参照により本明細書に取り込まれ、特に、そこで開示されるアミノ酸およびポリヌクレオチド配列が取り込まれる。優先権の書類は、本明細書の補正のための基礎として利用され得る。
【0262】
本発明は、以下の実施例において説明のみの目的でさらに記載される。
【実施例】
【0263】
実施例1:抗CD40モノクローナル抗体(NG-350)発現EnAdウイルスの産生
抗CD40モノクローナル抗体をコードする生成した第1のenadenotucirevウイルスゲノムを、NG-350(配列番号13)と命名した。
【0264】
NG-350ゲノムプラスミドを産生するために、プラスミドpEnAd2.4への、5’短いスプライスアクセプター配列(CAGG、配列番号2);重鎖リーダー配列(配列番号3)、抗CD40VH鎖(配列番号4)、抗体重鎖定常領域(配列番号5)、P2A高い効率の自己切断可能なペプチド(配列番号6)、軽鎖リーダー配列(配列番号7)、抗CD40VL鎖(配列番号8)、抗体軽鎖定常領域(配列番号9)およびSV40ポリ(A)テール(配列番号10)をコードするカセットの直接的挿入により、pNG-350を生成した。導入遺伝子カセット(配列番号11)の図を、
図1において示す。
【0265】
ウイルス産生および特徴決定
プラスミドpNG-350を、酵素AscIを用いた制限酵素切断により直線化して、ウイルスゲノムNG-350(配列番号13)を産生した。ウイルスNG-350を増幅させ、以下で与える方法に従い、精製した。
【0266】
切断したDNAを、フェノール/クロロホルム抽出により精製し、16時間、-20℃、95%より高い分子生物学的グレードのエタノール300μlおよび3M酢酸ナトリウム10μlにおいて沈殿させた。沈殿したDNAを、14000rpmにおいて、5分遠心分離することにより、ペレット化し、70%エタノール500μlにおいて洗浄後、14000rpmにおいて、5分再度遠心分離した。きれいなDNAペレットを空気乾燥させ、リポフェクタミン遺伝子導入試薬15μlを含有するOptiMEM500μlに再懸濁し、30分間、RTでインキュベーションした。次に、遺伝子導入混合物を、70%の集密度まで成長させた293細胞を含有するT-25フラスコに滴下した。細胞を遺伝子導入混合物と2時間37℃、5%CO2においてインキュベーションした後、細胞培地(2%FBSを添加したグルタミンを含むDMEM高グルコース)4mlを細胞に加え、フラスコを、37℃、5%CO2でインキュベーションした。
【0267】
遺伝子導入した293細胞を、24時間毎にモニターし、48~72時間毎に追加の培地を添加した。細胞単層における有意な細胞変性効果(CPE)の観察により、ウイルスの産生をモニターした。大規模なCPEを観察したら、3回の凍結融解サイクルにより、ウイルスを293細胞から回収した。回収したウイルスを使用して、293細胞に再感染させ、ウイルスストックを増やした。増幅中の生存可能なウイルスの産生を、細胞単層における有意なCPEの観察により、確認した。CPEを観察したら、3回の凍結融解サイクルにより、ウイルスを293細胞から回収した。増やしたストックを、さらなる増幅のため使用し、その後、ウイルスを、二重塩化セシウムバンディングにより精製して、NG-350ウイルスストックを産生した。
【0268】
実施例2:NG-350ウイルス活性および抗CD40抗体産生
粒子収量に関するNG-350ウイルス活性および分泌された抗CD40抗体産生を、HEK293懸濁培養細胞株において評価した。HEK293細胞を、振盪フラスコにおいて1×106個のウイルス粒子/mLの密度で播種し、細胞1個当たり50個のNG-350ウイルス粒子(ppc)を感染させた。HEK293細胞をまた、NG-350親ウイルス、対照としてenadenotucirev(EnAd)を感染させた(50ppc)。感染の48および72時間後に、細胞上清を、5分間、1200rpm遠心分離することにより、収集した。試料の清透化した上清を、HPLCによりウイルス粒子濃度またはヒトIgG2ELISAにより抗CD40抗体濃度を評価するため使用した。
【0269】
HPLC解析
Resource Q(陰イオン交換)カラムを使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、上清中のウイルス粒子濃度を定量した。ウイルス溶出を260nmにおいて検出し、260nmのシグナルピークを積分し、enadenotucirev標準曲線から濃度を計算することにより、ウイルス濃度を決定した。Ng-350およびenadenotucirev細胞からのウイルス産生の比較は、トータルの粒子産生に関するNG-350ウイルス活性および細胞上清におけるウイルス粒子産生が、enadenotucirevより有意に少ないことを示した(
図2Aおよび2B)。
【0270】
IgG2 ELISA
清透化した上清を、PBS10%BSAに2分の1希釈した。標準曲線および陰性対照試料を、製造元のプロトコール(IgG2ヒトSimpleStep ELISAキット、ab202402、Abcam)に従い調製した。試料および標準をELISAプレートに加え、製造元のプロトコールに従い、アッセイを行った。プレートのそれぞれのウェルにおける450nmでの吸光度を、プレートリーダー(BioTek)を使用して測定し、分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を、標準曲線から書き入れることにより、決定した(
図2C)。NG-350から、抗CD40を産生させ、分泌させたが、enadenotucirevが感染した細胞ではなかった。
【0271】
これらのデータの統合により、NG-350は、抗CD40抗体を産生することができたが、この改変されたウイルスのウイルス活性は、有意に損なわれたことを示した。そのため、NG-350ウイルス粒子のさらなる特徴決定を行った(実施例3)。
【0272】
実施例3:NG-350ウイルス同一性試験およびゲノム解析
制限酵素解析
NG-350ウイルスストック物質の同一性を、制限酵素解析を介してゲノム同一性を解析することにより、まず調べた。NG-350またはenadenotucirevウイルス粒子(3.5×10
11個のウイルス粒子)を、PBSにおいて終容積200μLまで希釈した。製造元のプロトコールに従い、QIAgen Mineluteウイルススピンキットを使用して、ウイルスからDNAを抽出した。酵素AscIを用いて、2時間、37℃でpNG-350プラスミドを直線化し、次に、アガロースゲル電気泳動およびQiaQuick Gel抽出キット(Qiagen)を用いたゲル抽出により、精製することにより、アッセイのための対照DNAを調製した。制限酵素EcoRv/NheIの組み合わせ(
図3A)または個々の制限酵素NcoIもしくはFspI(
図3B)を使用して、精製した対照またはNG-350DNAを制限酵素切断した。切断したDNAを、アガロースゲル電気泳動により分離し、UVトランスイルミネーターを使用して、可視化した。FspIまたはEcoRV/NheIを用いた切断は、予測していなかった、NG-350ウイルスゲノム物質における追加のバンドを示した(
図3、赤色の矢印)。
【0273】
PCR解析
表1に示す、8種の異なるプライマープローブセットを使用したウイルスゲノムのPCR解析により、ゲノム同一性をさらに評価した。
【表2】
【0274】
1種より多くのゲノム種が、NG-350ウイルスストックに存在するかどうか、この種が、抗CD40抗体導入遺伝子カセットを含有したかを決定するために、これらのPCRを設計した。NG-350またはenadenotucirevウイルス粒子(2×10
10個のウイルス粒子)を、PBSにおいて終容積200μLまで希釈した。製造元のプロトコールに従い、QIAgen Mineluteウイルススピンキットを使用して、ウイルスからDNAを抽出した。制限酵素解析に関して、対照DNAを調製した。フォワードおよびリバースプライマー(2μM)およびPhusion高フィデリティーマスターミックス(NEB)を含有する反応容積50μL中DNA(100ng/μL)1μLを使用して、PCR反応を設定した。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動により分離し、UVトランスイルミネーターを使用して、可視化した(
図5Aおよび5B)。プライマーセットDを用いた解析により、陽性対照DNAおよびNG-350試験試料における2920bpの予想バンドサイズを明らかになった。しかしながら、NG-350試験試料は、NG-350ウイルスを生み出すために使用されたpNG-350-PSI-01プラスミドDNAを用いては見られなかった、約800bpのPCR産物を追加で含有した。プライマーセット1~6を用いた解析はまた、プライマーセット5および6を使用したとき、追加のコンタミしたバンドを示した。これらのデータは、2つのウイルス種が、NG-350ウイルスストックに存在し、1つが、全長抗CD40導入遺伝子カセットを含有し、1つが、切断バージョンのカセットを含有することを示した。コンタミしたPCR産物の配列決定により、この切断を確認した。
【0275】
導入遺伝子カセット最適化
ウイルス増幅中に生じる切断についての説明は、導入遺伝子カセットにおける予測できない不安定性であり、これが、VH領域とSV40ポリAの間の組換えをもたらし、それ故、抗体コード領域の大部分の喪失をもたらす。それ故、導入遺伝子カセットDNA配列は、この問題を克服するために修飾されることを必要とする。それ故、DNA配列を変更して、他のカセットおよびウイルス配列との相同性を低減し、少数の直接および逆方向反復を取り除いた(Oxford Genetics、UKが行った)。最適化したカセット配列を使用して、実施例4による新規プラスミドpNG-350Aを生み出した。
【0276】
実施例4:抗CD40モノクローナル抗体(NG-350A)発現EnAdウイルスの産生
NG-350Aゲノムプラスミドを産生するために、プラスミドpEnAd2.4への、5’短いスプライスアクセプター配列(CAGG、配列番号2);重鎖リーダー配列(配列番号3)、抗CD40VH鎖(配列番号4)、抗体定常重鎖(配列番号5)、P2A高い効率の自己切断可能なペプチド(配列番号6)、軽鎖リーダー配列(配列番号7)、抗CD40VL鎖(配列番号8)、抗体定常軽鎖(配列番号9)およびSV40ポリ(A)テール(配列番号10)をコードするカセットの直接的挿入により、pNG-350を生成した。抗CD40抗体をコードするNG-350Aのアミノ酸配列は、NG-350ウイルスにおいてコードされるものと同一であり、カセット構造は同じであった(
図1)。しかしながら、導入遺伝子カセットの核酸配列を修飾し、それは、NG-350のもの(配列番号11)と有意に異なった。
【0277】
ウイルス産生および特徴決定
プラスミドpNG-350Aを、酵素AscIを用いた制限酵素切断により直線化して、ウイルスゲノムNG-350(配列番号1)を産生した。ウイルスNG-350Aを増幅させ、実施例1において記載した方法に従い、精製した。
【0278】
実施例5:PCRによるNG-350Aウイルス同一性試験
導入遺伝子カセットにまたがる産物を生み出す、2種のプライマープローブセット(表2;DおよびK)を使用したPCR解析により、NG-350Aゲノム同一性を確認した。実施例3に詳述した方法に従い、NG-350A DNAおよび対照DNAを調製した。実施例3において詳述した方法に従い、プライマーセットDおよびKを使用して、PCR解析を行った。PCR産物の可視化により、予想したサイズの単一の産物を示した(
図6)。いずれのプライマーセットを用いても、コンタミしている産物を検出しなかった。
表2 同一性PCRプライマーセット
【表3】
【0279】
実施例6:大腸癌腫細胞におけるNG-350Aウイルスの複製および腫瘍溶解性活性
ウイルス腫瘍溶解能
HT-29大腸癌腫細胞を、96ウェルプレートにおいて2.5e4細胞/ウェルの細胞密度において播種した。プレートを、4時間、37℃、5%CO
2でインキュベーションし、その後、細胞に、1個の細胞当たり100~0.39個の粒子(ppc)の感染密度範囲で、EnAdまたはNG-350Aウイルス粒子のいずれかを感染させた。感染の72時間後、細胞タイター96MTS試薬(Promega:G3581)を使用して、HT-29細胞生存率を評価した。それぞれの感染密度における%細胞生存の定量により、EnAdに類似の、NG-350Aが、HT-29細胞に対する強力な腫瘍溶解性活性を示すことを示した(
図7A)。
【0280】
ウイルス複製
肺癌腫細胞(A549)または大腸癌腫細胞(HCT-116)に、100ppcのNG-350AもしくはNG-350A親ウイルス、enadenotucirevを24、48、72または96時間感染させるか、または感染させないままにした。大腸癌腫細胞(HT-29)または膀胱癌腫細胞(HTB-5、HT-1197およびHT-1376)に、100ppcのNG-350Aもしくはenadenotucirevを24、48、72、144および168時間感染させるか、または感染させないままにした。それぞれの時間ポイントにおいて、細胞上清を収集し、5分間、1200rpmで遠心分離することにより、清透化させた。製造元のプロトコールに従い、DNeasy血液および組織キット(Qiagen)を使用して、上清10μL(HT-29、A549もしくはHCT-116)または50μL(HTB-5、HT-1197およびHT-1376)からDNAを抽出した。EnAdウイルス粒子(2.5e10~2.5e5ウイルス粒子)を使用した標準曲線をまた、調製し、DNeasy血液および組織キット(Qiagen)を使用して抽出した。enadenotucirevE3遺伝子に特異的なプライマーとプローブセットを使用したqPCRにより、それぞれの抽出した試料または標準を解析した。
【0281】
1個の細胞当たりの検出したウイルスゲノムの数の定量により、ウイルス複製のNG-350Aおよびenadenotucirev動態が、試験した全ての細胞株において、かつ解析した全ての時間ポイントにおいて比較可能であることを示した(
図7および
図8)。感染させていない細胞において検出することができたウイルスゲノムはなかった(データは示していない)。
【0282】
実施例7:NG-350A感染大腸癌腫細胞株における抗CD40抗体発現
IgG2 ELISA
100ppcのEnAd、2つの異なるバッチのNG-350A(NG-350A B1もしくはNG-350A B2)を24、48または72時間感染させた、または感染させないままの、A549細胞を、IgG2 ELISA(IgG2ヒトSimpleStep ELISAキット、ab202402、Abcam)による抗CD40抗体発現の解析のため使用した。培養上清をそれぞれのウェルから取り出し、5分間、1200rpmで遠心分離して、細胞デブリを取り除いた。清透化した上清を、PBS10%BSAに2分の1希釈した。標準曲線および陰性対照試料を、製造元のプロトコールに従い調製した。試料および標準をELISAプレートに加え、製造元のプロトコールに従い、アッセイを行った。プレートのそれぞれのウェルにおける450nmでの吸光度を、プレートリーダー(BioTek)を使用して測定し、分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を、標準曲線の記入形態により、決定した(
図9Aおよび9B)。
【0283】
CD40結合ELISA
100ppcのEnAd、2つの異なるバッチのNG-350A(NG-350A B1もしくはNG-350A B2)を24、48または72時間感染させた、または感染させないままの、A549細胞を、CD40結合ELISAによる抗CD40抗体発現の解析のため使用した。
【0284】
培養上清をそれぞれのウェルから取り出し、5分間、1200rpmで遠心分離して、細胞デブリを取り除いた。炭酸/炭酸水素緩衝液中のヒトCD40(100μg/mL、R and D Systems、1493-CD)を用いて一晩、4℃においてコーティングすることにより、ELISAプレート(Nunc Immuno MaxiSorp96ウェルマイクロプレート)を調製した。全ての続く結合工程の間で、PBS0.05%Tween20を用いて、プレートを洗浄した。プレートを、1時間、室温において、PBS5%BSAを用いてブロッキングした。
【0285】
清透化した感染上清を、PBS5%BSAにおいて希釈した(2分の1、10分の1および100分の1)。このアッセイにおいて、抗CD40抗体(BioLegend、334308)を、ELISAプレートへのヒトCD40結合についての陽性対照として使用した。それを、PBS5%BSA中、濃度30ng/mLで調製した。全ての試料を、CD40でコーティングしたプレートに加え、1時間、室温でインキュベーションした。次に、ウイルス上清について、検出抗体HRP結合抗ヒトIgG2-Fc(Abcam、ab97225)または陽性対照抗体のため抗マウスIgG抗体(HRP)(Abcam、ab6728)を、1時間、室温にて全てのウェルに適用した。HRP基質溶液3.3.5.5’-テトラメチルエチレンジアミン(TMB、Thermo-Fisher)を用いて、HRP検出を行った。反応を停止するため、1M HClを使用し、発生した色を、プレートリーダー上450nmにおいて測定した。450nmにおける吸光度を、EnAd、NG-350Aおよび陽性対照についてプロットし(
図9C)、NG-350A感染細胞の上清に存在する分泌された抗CD40抗体によるCD40への特異的結合を示した。
【0286】
実施例8:CD40機能的シグナル伝達レポーターアッセイ
10ppcのEnAd、NG-350Aを用いて24もしくは48時間またはNG-165(対照抗体[抗VEGF]を発現するウイルス)を用いて48時間のいずれかで感染させた、あるいは感染させていないままのA549細胞を、それらの膜で発現したCD40分子を介した活性化に対して応答してアルカリホスファターゼ(Invivogen)を分泌するCD40+HEK-Blueレポーター細胞を使用した、抗CD40抗体機能活性の解析のため使用した。感染後、A549細胞由来の培養上清をそれぞれのウェルから取り出し、5分間、1500rpmで遠心分離して、細胞デブリを取り除いた。
【0287】
培養上清20μLを、培地180μLにおいて希釈し、Hek-BlueCD40細胞に20時間適用した。濃度10ng/mLのCD40Lを、培地において陽性対照として調製した。次に、上清をHEK-BlueCD40細胞から収集し、遠心分離することにより、清透化した。1時間、37℃にてQuanti-Blue試薬160μLとインキュベーションすることにより、清透化した上清40μLを、アルカリホスファターゼ活性についてアッセイした。
【0288】
プレートリーダーを使用して、それぞれの試料について、620nmにおける吸光度を測定し、EnAdまたはNG-165感染細胞ではなく、NG-350A由来の上清が、HEK-Blueレポーター細胞を発現するCD40からのSEAP産生の引き金を引くことを示した(
図10)。
【0289】
実施例9:癌腫細胞株におけるNG-350Aウイルスの選択的活性
EnAdウイルス活性に半寛容である、肺癌腫細胞(A549)、大腸癌腫細胞(HCT-116)または肺線維芽細胞細胞(MRC-5)を使用して、癌細胞についてのNG-350Aウイルスの選択性を示した。細胞株に72時間、100ppcのNG-350AもしくはNG-350A親ウイルス、enadenotucirevを感染させるか、または感染させないままにした。
【0290】
それぞれの時間ポイントにおいて、培養上清をそれぞれのウェルから取り出し、qPCRによるウイルスゲノム複製、またはELISAによる抗CD40抗体発現の解析のため使用した。RT-qPCRにより、ウイルス遺伝子E3および導入遺伝子の発現について、ウェルに残る細胞を解析した。
【0291】
ウイルス複製
細胞上清を収集し、5分間、1200rpmで遠心分離することにより、清透化させた。製造元のプロトコールに従い、Sigma Genelute DNA抽出キットを使用して、上清10μL(A549、HCT-116)または100μL(MRC-5)からDNAを抽出した。EnAdウイルス粒子(2.5e10~2.5e5ウイルス粒子)を使用した標準曲線をまた、調製し、Sigma Geneluteキットを使用して抽出した。enadenotucirevE3遺伝子に特異的なプライマーとプローブセットを使用したqPCRにより、それぞれの抽出した試料または標準を解析した。
【0292】
1個の細胞当たりの検出したウイルスゲノムの数の定量により、NG-350Aおよびenadenotucirevウイルス複製が、A549およびHCT-116細胞において比較可能なレベルで検出可能であったが、MRC-5における発現が、癌腫細胞株におけるものより有意に低いことを示した(
図11A)。感染させていない細胞において検出することができたウイルスゲノムはなかった(データは示していない)。
【0293】
IgG2抗体発現
IgG2 ELISA(IgG2ヒトSimpleStep ELISAキット、ab202402、Abcam)により、細胞上清にあった抗体発現を評価した。培養上清をそれぞれのウェルから取り出し、5分間、1200rpmで遠心分離して、細胞デブリを取り除いた。清透化した上清を、PBS10%BSAに2分の1希釈した。標準曲線および陰性対照試料を、製造元のプロトコールに従い調製した。試料および標準をELISAプレートに加え、製造元のプロトコールに従い、アッセイを行った。プレートのそれぞれのウェルにおける450nmでの吸光度を、プレートリーダー(BioTek)を使用して測定し、分泌されたIgG2抗CD40抗体の濃度を、標準曲線の記入形態により、決定した(
図11B)。
【0294】
実施例10:NG-350A感染細胞からの抗CD40抗体の精製
懸濁液HEK293細胞を、1×10
6個の細胞/mLにてエルレンマイヤーフラスコにおいて播種し、100ppcのNG-350Aを感染させた。72時間後、5%FBSおよびタンパク質分解酵素阻害剤カクテル(1:2000)を細胞に加え、懸濁液を15分間、4600rpmで遠心分離した。上清を注意深く取り出し、500kDaの分子量カットオフ中空ファイバー膜を通して濾過して、NG-350Aウイルス粒子を抗CD40抗体から分けた。抗CD40抗体を含有する、濾過工程由来の素通り画分を、30kDaの分子量カットオフを有する第2の中空ファイバー膜を通過させた。AKTAを使用したタンパク質Aカラム上での第2の濾過工程由来の残余分から、抗CD40抗体を精製した。精製した抗体を濾過滅菌し、-80℃において保存した。製造元のプロトコールに従い、IgG2ヒトSimpleStep ELISAキット、ab202402、Abcamを使用したIgG2 ELISAにより、精製した抗体の濃度を決定した(
図12)。
【0295】
実施例11:初代ヒト単球由来DCにおけるNG-350A由来抗CD40抗体活性およびウイルス活性との相乗効果
英国、オクスフォードにあるNHSの血液および移植ユニットから供給源されたNC24白血球コーンから、Ficoll-Paque勾配遠心分離により、PBMCを単離した。CD14マイクロビーズキット(MiltenyiBiotec)を使用して、CD14+単球を単離した。次に、単球をカウントし、遠心分離し(300×g)、GM-CSF(800U/mL)およびIL-4(500U/mL)を添加した10%RPMI培地中5×105個の細胞/mLにて再懸濁した。単球懸濁液40mLを、1つのT175フラスコに移した。
【0296】
72時間培養後、単球由来のDC(moDC)を、10%RPMI培地中24ウェルプレートにおけるウェル毎に1×106個の細胞密度で播種した。それらを、0.5μg/mL抗CD40抗体(実施例10に従い、ウイルス感染細胞から精製した)、EnAd(100ppc)、ヒトCD40Lを用いて処理するか、または無処理のままにした。並行して、moDCを、精製した抗CD40抗体(0.5μg/mL)とEnAd(100ppc)の両方で処理した。次に、プレートを、48時間インキュベーションし、その後、上清および細胞を回収した。
【0297】
上清および細胞を培養ウェルから取り出し、遠心分離した(300×g)。上清を、PBS5%BSAを用いて2分の1希釈し、ELISA解析のため保存した。細胞ペレットをPBS200μLにおいて洗浄し、遠心分離し、次に、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Near-IR(Life tech)を含有するPBS50μLにおいて15分間、RTにおいて再懸濁した。細胞をFAC緩衝液(1%FBS/PBS)において1回洗浄し、その後、直接結合抗体:BV421に結合した抗CD86;AF647に結合した抗CD54およびPeCy5に結合した抗HLA-DRのパネルを用いて染色した。それぞれの共培養条件由来の細胞試料を、関連するアイソタイプ対照抗体を用いて染色した。全ての染色を、FACs緩衝液中トータルの容積50μL/ウェルにおいて、15分間、4℃にて行った。次に、細胞をFACs緩衝液(200μL)を用いて2回洗浄し、その後、FACs緩衝液200μLにおいて再懸濁し、フローサイトメトリー(Attune)により、解析した。
【0298】
上清試料を融解し、製造元のプロトコールに従い、希釈し、アッセイを行うことによるELISA(IL-12 Quantikine ELISA、DP400、R&D systems)により解析した。
【0299】
ウイルス感染細胞から精製した抗CD40抗体を用いた処理は、CD86、CD54およびHLA-DR活性化マーカーを発現するmoDCのパーセンテージにおける増大、ならびにIL12p40の分泌を導いた(
図13および
図14)。有意には、抗CD40抗体とEnAdウイルスの両方を用いたmoDCの組み合わせ処置が、抗CD40抗体またはEnAdウイルス単独と比較して、より強力なmoDC活性化を生じた。
【0300】
実施例12:初代ヒトB細胞におけるNG-350A由来抗CD40抗体活性およびウイルス活性との相乗効果
英国、オクスフォードにあるNHSの血液および移植ユニットから供給源されたNC24白血球から、Ficoll-Paque勾配遠心分離により、PBMCを単離した。Pan B細胞単離キット(MiltenyiBiotec)を使用して、CD19+B細胞を単離した。次に、B細胞を、10%RPMI培地中24ウェルプレートにおけるウェル毎に1×106個の細胞密度で播種した。それらを、増大する濃度の精製した抗CD40導入遺伝子抗体、ヒトCD40Lで処理するか、または処理しないままにした。次に、プレートを、48時間インキュベーションし、その後、上清および細胞を回収した。
【0301】
上清および細胞を培養ウェルから取り出し、遠心分離した(300×g)。上清を、注意深く取り出し、PBS5%BSAを用いて2分の1希釈し、ELISA解析のため保存した。細胞ペレットをPBS200μLにおいて洗浄し、遠心分離し、次に、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Near-IR(Life tech)を含有するPBS50μLにおいて15分間、RTにおいて再懸濁した。細胞をFAC緩衝液において1回洗浄し、その後、直接結合抗体:BV421に結合した抗CD86;AF647に結合した抗CD54;PeCy5に結合した抗HLA-DRおよびBV605に結合した抗CD80のパネルを用いて染色した。それぞれの共培養条件由来の細胞試料を、関連するアイソタイプ対照抗体を用いて染色した。全ての染色を、FACs緩衝液中トータルの容積50μL/ウェルにおいて、15分間、4℃にて行った。次に、細胞をFACs緩衝液(200μL)を用いて2回洗浄し、その後、FACs緩衝液200μLにおいて再懸濁し、フローサイトメトリー(Attune)により、解析した。
【0302】
試験した全ての濃度の抗CD40抗体を用いたB細胞の処理は、未処理またはアイソタイプ対照処理B細胞と比較して、CD86、CD19およびCD80を発現するB細胞のパーセンテージにおける増大、ならびにCD19+細胞上でのHLA-DR MFIにおける増大を生じた(
図15)。抗CD40抗体を用いた処理はまた、増殖している細胞のパーセンテージに関するB細胞の活性化を生じた(
図16)。有意には、抗CD40抗体およびEnAdウイルスを用いたB細胞の併用処置は、抗体またはウイルス処置単独と比較して、増殖しているB細胞の%における増強を生じた(
図16)。
【0303】
実施例13:初代ヒト単球由来DC上のNG-350A由来抗CD40抗体活性
A549腫瘍細胞を、T175フラスコまたはHyperflaskにおいて、それぞれ、1個のフラスコ当たり10×106または50×106個の細胞の密度にて播種した。4時間後、細胞に、1個の細胞当たり10個のEnAdまたはNG-350Aウイルス粒子を感染させた。72時間後、上清を回収し、300kDaのカットオフ除外カラムを使用して、ウイルスを枯渇させた。50kDaのカットオフサイズ除外カラムを使用して、ウイルスを枯渇させた上清を、抗体について続いて濃縮した。これらのウイルスを枯渇させた抗体濃縮分画を、-80℃において保存した。IgG2 ELISAを使用して、抗CD40抗体タイターを決定し、実施例8において記載したHEK Blueレポーター細胞アッセイを使用して、機能性を確認した。
【0304】
さらなるセットの研究について実施例11において概説した通り、単球由来樹状細胞(MoDC)を本質的に調製した。英国、オクスフォードにあるNHSの血液および移植ユニットから供給源されたNC24白血球コーンから、Ficoll-Paque勾配遠心分離により、PBMC(ドナー177)を単離した。CD14マイクロビーズキット(MiltenyiBiotec)を使用して、CD14+単球を単離した。GM-CSFおよびIL-4との72時間培養後、10%RPMI培地中48ウェルプレートにおける1個のウェル当たり1.25×105個の細胞、または24ウェルプレートにおける1個のウェル当たり2.5×105個の細胞の密度にてMoDCを播種し、上の段落において記載したウイルス枯渇NG-350AまたはEnAd培養上清とインキュベーションした。フローサイトメトリー解析のため、細胞を染色した。サイトカインビーズアレイ(Legendplex、BioLegend)によるサイトカイン解析のため、上清を使用した。
【0305】
MoDCの表面上でのCD40への抗CD40抗体結合を示すために、細胞を、NG-350A感染細胞(異なる希釈液を使用して、異なる量の抗体をもたらした)由来の増大する濃度のウイルス枯渇抗CD40抗体濃縮上清を用いて、細胞を処理するか、または未処理(培地)のままにした。対照として、それらを、ウイルス枯渇EnAd上清(dEnAd)を用いて、容積の一致している、NG-350A抗CD40抗体を含有する試料のものを用いて処理した。24時間および48時間後、細胞を回収し、CD40への蛍光標識抗体を用いて染色し、その後、フローサイトメトリー解析を行った。細胞に、単一(FSC-H versus FSC-A)生細胞(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua negative)上にゲートを掛けた。
図17Aは、1000ng/mL抗体を用いた処置の24時間後に得られた代表的なフローサイトメトリー結果を示し、
図17Bは、異なる濃度のウイルス枯渇上清を用いた処理の24時間および48時間後のMoDC上でのCD40発現を示す。より高い抗体濃度において、CD40FACS染色は低減するか、または存在せず、これは、NG-350Aウイルス枯渇培養上清における抗CD40抗体の結合による遮断を反映している。
【0306】
次に、MoDC上での細胞表面マーカーアップレギュレーションに対する抗CD40TgAb処理(ウイルス枯渇上清を使用した)の効果を評価した。MoDCを、増大する濃度の精製した抗CD40Tg抗体を用いて処理したか、または未処理(培地)のままにした。それらを、ウイルス枯渇EnAd上清(dEnAd)を用いて、容積の一致している抗CD40抗体のものを用いて処理した。24時間および48時間後、細胞を回収し、CD54、CD83およびCD86表面マーカーに対する抗体を用いて染色し、その後、フローサイトメトリー解析を行った。細胞に、単一(FSC-H versus FSC-A)生細胞(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua negative)上にゲートを掛けた。ドナー177由来のPBMCを用いて調製したMoDCについて、1000ng/mL抗体を用いた処理の24時間後に得た代表的なフローサイトメトリー結果を、
図18Aにおいて示す。
図18Bは、処理の24時間および48時間後の4人の異なるドナー由来のMoDC上での活性化マーカー発現を示す。
【0307】
次に、MoDCサイトカイン産生に対する抗CD40Tg抗体の効果を評価した。4人の異なるドナー由来のMoDCを、増大する濃度の抗CD40抗体含有ウイルス枯渇上清を用いて処理するか、または処理しない(培地)ままにした。それらを、ウイルス枯渇EnAd上清(dEnAd)を用いて、容積の一致している抗CD40抗体のものを用いて処理した。24時間および48時間後、上清を回収し、LEGENDplex(商標)ビーズベースのイムノアッセイ(BioLegend)を使用して、炎症性サイトカイン分泌について解析した。
図19は、TNFα、IL-6およびIL-8の選択的誘導を示す。
【0308】
実施例14:初代ヒト単球由来DCの活性に対するNG-350Aウイルスおよび由来抗CD40抗体含有ウイルス腫瘍細胞上清の活性
実施例13において記載したものと類似の研究において、A549細胞を、T25フラスコにおいて密度4×106個の細胞において播種した。4時間後、細胞に、1個の細胞当たり10個のEnAdまたはNG-350Aウイルス粒子を感染させた。72時間後、上清を回収し、1600rpmにおいて5分間遠心分離した。この研究において、これらの清透化した上清を、ウイルスを除去するよりむしろ、使用(1時間以内)まで37℃において維持した。従って、上清は、ウイルスと抗CD40抗体導入遺伝子産物の両方を含む、NG-350A(またはEnAd対照)感染腫瘍細胞の産物を含有する。
【0309】
英国、オクスフォードにあるNHSの血液および移植ユニットから供給源されたNC24白血球コーンから、Ficoll-Paque勾配遠心分離により、PBMCを単離した。CD14マイクロビーズキット(MiltenyiBiotec)を使用して、CD14+単球を単離した。GM-CSFおよびIL-4との72時間の培養後、MoDCを、48ウェルプレートにおける1個のウェル当たり1.25×105個の細胞の密度にて播種し、異なる希釈のEnAdおよびNG-350Aウイルス上清を用いて処理した。次に、プレートを、24時間および48時間インキュベーションし、その後、上清および細胞を回収した。上清を遠心分離し、細胞ペレットを取り除き、-80℃において保存した。フローサイトメトリー解析のため、細胞を染色した。CBAによるサイトカイン解析のため、上清を使用した。
【0310】
MoDCの表面上でのCD40への抗CD40抗体結合を示すために、細胞を、NG-350AまたはEnAd感染細胞(異なる希釈液を使用して、異なる量の抗体をもたらした)由来の増大する濃度の上清を用いて、細胞を処理するか、または未処理(培地)のままにした。24時間および48時間後、細胞を回収し、CD40への蛍光標識抗体を用いて染色し、その後、フローサイトメトリー解析を行った。細胞に、単一(FSC-H versus FSC-A)生細胞(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua negative)上にゲートを掛けた。
図20は、異なる濃度の上清を用いた処理の24時間および48時間後のMoDC上でのCD40発現を示す。NG-350A(だが、EnAdでない)感染腫瘍細胞由来の1:2上清希釈液において、CD40FACS染色は低減するか、または存在せず、これは、NG-350Aウイルス処理培養上清における抗CD40抗体の結合による遮断を反映している。
【0311】
次に、2人のドナー(177および179)由来のMoDC上での細胞表面マーカーアップレギュレーションに対するNG-350Aウイルス処理腫瘍細胞上清の効果を評価した。MoDCを、希釈したEnAdまたはNG-350Aウイルス上清を用いて処理するか、または未処理(培地)のままにした。24時間および48時間後、細胞を回収し、CD86、CD54およびCD83に対する抗体を用いて染色し、その後、フローサイトメトリー解析を行った。細胞に、単一(FSC-H versus FSC-A)生細胞(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua negative)上にゲートを掛けた。
図21における結果は、NG-350Aにより選択的にアップレギュレーションした全3種のMoDC活性化マーカーを示す。
【0312】
次に、MoDCサイトカイン産生に対するNG-350Aウイルス上清の効果を評価した。2人のドナー(177および179)由来のMoDCを、希釈したEnAdまたはNG-350Aウイルス処理腫瘍細胞上清を用いて処理するか、または未処理(培地)のままにした。24時間および48時間後、上清を回収し、LEGENDplex(商標)ビーズベースのイムノアッセイ(BioLegend)を使用して、炎症性サイトカイン分泌について解析した。
図22における結果は、NG-350A処理細胞上清によるTNFα、IL-6、IL-8、IL-28およびIL-29の選択的アップレギュレーションを示す。
【0313】
実施例15:初代ヒトB細胞上のNG-350A由来抗CD40抗体活性
英国、オクスフォードにあるNHS血液および移植ユニットから供給源されたNC24白血球コーンから、Ficoll-Paque勾配遠心分離により、PBMCを単離した。Pan B細胞単離キット(MiltenyiBiotec)を使用して、B細胞を単離した。次に、細胞を、10%RPMI培地中48ウェルプレートにおける1個のウェル当たり1.25×10
5個の細胞密度で播種した。それらを、実施例13において記載したNG-350A感染細胞由来の異なる濃度のウイルス枯渇抗CD40抗体濃縮上清を用いて処理するか、または未処理(培地)のままにした。B細胞をまた、対照としてウイルス枯渇EnAdウイルス上清を用いて処理した。次に、プレートを、24時間および48時間インキュベーションし、その後、細胞を回収した。細胞を、CD23、CD54、CD86およびHLA-DRに対する抗体を用いて染色し、その後、フローサイトメトリー解析を行った。細胞に、単一(FSC-H versus FSC-A)生細胞(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua negative)上にゲートを掛けた。
図23は、ウイルス枯渇NG-350A抗CD40抗体含有上清による、3人の異なるドナー(177、178、179)由来のB細胞上での全4種の表面マーカー(CD23、CD54、CD86およびHLA-DR)の選択的アップレギュレーションを示す。
【0314】
実施例16:初代ヒトB細胞の活性に対するNG-350Aウイルスおよび由来抗CD40抗体含有ウイルス腫瘍細胞上清の活性
英国、オクスフォードにあるNHS血液および移植ユニットから供給源されたNC24白血球コーンから、Ficoll-Paque勾配遠心分離により、PBMCを単離した。Pan B細胞単離キット(MiltenyiBiotec)を使用して、B細胞を単離した。細胞を、48ウェルプレートにおける1個のウェル当たり1.25×10
5個の細胞の密度にて播種し、EnAdおよび実施例14において記載した同じNG-350Aウイルス上清の試料の異なる希釈液を用いて処理した。次に、プレートを24時間および48時間インキュベーションし、その後、細胞を回収し、CD23、CD54、CD86およびHLA-DRに対する抗体を用いて染色し、その後、フローサイトメトリー解析を行った。細胞に、単一(FSC-H versus FSC-A)生細胞(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua negative)上にゲートを掛けた。
図24は、ウイルスおよびNG-350A感染腫瘍細胞由来の抗CD40抗体含有上清による、3人の異なるドナー(177、178、179)由来のB細胞上での全4種のマーカー(CD23、CD54、CD86およびHLA-DR)の選択的アップレギュレーションを示す。
【0315】
実施例17:
別の研究において、NG-350Aの活性を、6種の癌指標に渡る広範な異なる腫瘍細胞株(結腸直腸、前立腺、膵臓、乳房、卵巣および膀胱)に対して評価した。細胞に、1個の細胞当たり1または100個の粒子(ppc)のenadenotucirev(EnAd)またはNG-350Aを感染させ、3~11日間培養し、これにより、NG-350A感染腫瘍細胞におけるウイルスゲノム複製、ウイルス介在性腫瘍退縮、ウイルス導入遺伝子発現(mRNAおよびタンパク質レベルにおける)ならびに機能的ウイルス導入遺伝子発現を評価した。全ての実験において、NG-350Aの活性を、EnAdのものと比較した。A549(非小細胞肺癌腫)細胞を陽性対照として、CT26(マウス大腸腫瘍)細胞を陰性対照として使用した。
【0316】
ウイルスゲノム複製
腫瘍細胞株を、175cm2のフラスコにおいて、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよび10%胎児ウシ血清(FBS)を添加した高グルコース(成長培地)において培養した。使用前、細胞を顕微鏡を使用して検査して、60~80%の集密度を確実にした。次に、PBSおよび0.25%トリプシン-EDTAを加えて、細胞を洗浄して、細胞をフラスコの底からはがした。細胞がはがれるまで、細胞を2~10分間、37℃、5%CO2においてインキュベーションし、その後、トリプシンを成長培地を使用して脱活性化した。細胞懸濁液を混合し、300gにて5分間スピンした。上清を捨て、細胞ペレットを、アッセイ培地;2%(10%の代わりに)FBSを添加した上記のDMEM培地10mLに再懸濁した。細胞をカウントして、細胞懸濁液を、アッセイ培地を使用して希釈して、濃度5×105個の細胞/mLにし、その100μLを、平底96ウェルプレートに播種した(それぞれの細胞株を、1種のウイルス当たり2つのウェルに播種し、時間ポイント毎に1枚のプレートを用いて、1枚のプレート当たり未感染の対照(UIC)2つのウェルを含めた)。EnAdおよびUICについての試料を、一方のセットのプレートに播種し(感染させ)、NG-350AおよびUICについての試料を、別のセットのプレートに播種した(感染させた)。プレートを、37℃、5%CO2においてインキュベーションし、その後、細胞播種の4~6時間後に接種した。
【0317】
この時間の後、EnAdおよびNG-350Aウイルスを、アッセイ培地において希釈して、濃度5×105個のウイルス粒子/mLにし、その100μLを、細胞のそれぞれの関連するウェルに加えた(それぞれのウイルスを、それぞれのプレート上のそれぞれの細胞株にデュプリケートで加えた)。これは、1ppcのEnAdまたは1ppcのNG-350Aの接種液を生じた。ウイルスの添加の代わりに、アッセイ培地100μLをまた、それぞれのプレート上のそれぞれの細胞株(UIC)のデュプリケートのウェルに加えた。
【0318】
接種の20時間後、培地を細胞から取り出し、新鮮アッセイ培地200μLと置き換えた。次に、プレートを、37℃、5%CO2において、接種後3、4、8または11日間インキュベーションした。8日以上、細胞をインキュベーションすべきであるなら、接種後4日間、アッセイ培地50μLを細胞に与えた。
【0319】
DNA回収:接種後、培地を細胞から取り出し、96ウェルV底プレートにおいて遠心分離した。次に、上清を新鮮96ウェル平底プレートに移し、-80℃において保存した。次に、1×レポーター溶解バッファー(RLB)200μLを、元のプレートの細胞に加え、-80℃において保存した。
【0320】
標準曲線の調整:ストックEnAdを、1.25×1011~1.25×106個のウイルス粒子/mLに希釈し、その後、製造元のプロトコールに従い、Qiagen DNeasy96キットを用いて、DNA抽出した(それぞれの標準曲線試料200μLを抽出し、精製したDNAを、容積200μLに溶出した)。次に、精製したDNAをアリコートに分け、それぞれのqPCRプレート上での使用まで-20℃において保存した。これらの標準曲線試料2μLを、1つのqPCRウェル毎に2.5×103~2.5×108のゲノムと等しい、それぞれのqPCR反応において使用した。
【0321】
DNA抽出:上清および溶解試験試料を融解し、その後、製造元のプロトコールに従い、Qiagen DNeasy96キットを使用して、DNAを抽出した(試験試料50μLを抽出し、精製したDNAを、容積200μLに溶出した)。1×RLBの抽出対照を、それぞれのプレート上で抽出した。
【0322】
実施例6において概説したE3プライマーとプローブのセットを使用した細胞溶解物および上清(S/N)のqPCRにより、ウイルスゲノム複製を評価した。10種の試験腫瘍細胞株、および陽性(A549)細胞由来の細胞溶解物と上清試料の両方についての時間経過を、
図25A~Fにおける腫瘍タイプ(大腸、HT-29およびHCT-116;前立腺DU145;膵臓BxPC-3;乳房MBA-MB-453;卵巣PA-1およびCaov-3;膀胱RT24、T24 および UM-UC-3)に従いプロットした。陰性対照細胞(マウスCT26)は陰性であり、プロットしなかった。EnAd感染細胞において検出したウイルスゲノムを、点線を用いて示し、NG-350A感染細胞において検出したウイルスゲノムを、実線を用いて示す。データは、NG-350Aが、広範囲の異なる癌腫細胞タイプに渡り、EnAd親ウイルスと比較可能に、そのゲノムDNAを複製することを示す。
【0323】
NG-350Aの腫瘍溶解性効果を評価するために、4種の腫瘍細胞株に100ppcのEnAd、100ppcのNG-350A、アッセイ培地単独(未感染対照)または4%tween(溶解)を接種した。ウイルスを接種した細胞の50%を超える溶解が生じるまで、xCELLigenceリアルタイム細胞分析器(RTCA)により、細胞の成長および生存率をモニターした。全ての時間ポイントに渡る細胞指数(CI)を、xIMTソフトウエアにより計算し、未感染、EnAd、NG-350Aおよび溶解したトリプリケートの平均およびSDを決定した;平均をグラフにプロットし、SDをエラーバーにより表した。未感染対照、EnAdおよびNG-350Aを接種した細胞、および溶解した細胞についてのxCELLigenceトレースを、
図26において示す。細胞を0時間において播種し、播種の24時間後(それぞれのグラフにより示す時間ポイントにおいて)に感染させた。腫瘍細胞株を、グラフ毎に1つの細胞株として示す:大腸(HT-29およびHCT-116)、前立腺(BxPC-3)ならびに乳房(MDA-MB-453)。NG-350Aは、EnAd親ウイルスに対して比較可能な腫瘍溶解性活性を示した。
【0324】
抗CD40導入遺伝子mRNA発現をまた、NG-350Aを感染させた腫瘍細胞株から異なる時間に採取した溶解物において評価した。この研究のゲノム複製部分について使用したのと同じ10種の試験腫瘍細胞株、ならびに陽性(A549)および陰性(CT26)対照細胞株に、1ppcのEnAd、1ppcのNG-350Aまたはアッセイ培地単独(未感染の対照)を感染させた。接種後の異なる時間(3、4、8および11日目)において、細胞溶解物を回収し、その後、RNA抽出およびDNase精製を行った。次に、One-Step RT-qPCRを、抗CD40特異的プライマー/プローブセットを使用して実行した。抗CD40のセンス鎖に対応する合成RNAオリゴヌクレオチドを使用して、試験試料のRNA量を計算した標準曲線を生成した。それぞれの未感染対照トリプリケートについての平均RNA量は、対応する個々のEnAdおよびNG-350A値から引いたバックグラウンドであった。次に、1個の細胞当たりの抗CD40mRNAコピーを計算し、2つのEnAdおよび2つのNG-350A RT-qPCRトリプリケートの平均を決定した。次に、これらのデュプリケートの平均およびSDを、それぞれの細胞株について、それぞれの時間ポイントにおいて計算した(n=2、n=1である、BxPC-3の8日目の試料を除く)。平均をプロットし、グラフを、
図27において示し、SDをエラーバーにより表した。EnAd接種細胞は、無視できる応答を生じ、これにより、生物学的デュプリケートから計算した1個の細胞当たりのゲノムは、全ての時間ポイントおよび細胞株に渡り0×100~6.26×100の範囲であった。従って、EnAdデータをプロットしなかった。未感染の対照試料について、生物学的デュプリケートから計算した1個の細胞当たりの平均抗CD40コピーは、0.00×100~9.09×100の範囲であった。グラフは、大腸(A)、前立腺、膵臓および乳房(B)、卵巣(C)ならびに膀胱(D)腫瘍細胞株における抗CD40導入遺伝子発現を描く。NG-350A感染は、全てのヒト腫瘍細胞株において抗CD40導入遺伝子mRNA発現を導き、異なる細胞について観察した動態における相違を伴った。
【0325】
導入遺伝子タンパク質IgG2発現を評価するために、NG-350Aを感染させた異なる腫瘍細胞株による、ヒトIgG2(NG-350Aによりコードされる抗CD40抗体重鎖のアイソタイプ)の産生を測定した。6種の試験腫瘍細胞株、ならびに陽性(A549)および陰性(CT26)対照細胞株に、1ppcのNG-350A、1ppcのEnAdまたはアッセイ培地単独(未感染の対照)を感染させた。接種後の異なる時間(3、4、8および11日目)において、上清を回収し、使用まで-80℃において保存した。NG-350A接種試験細胞株およびA549細胞由来の上清を、1:2、1:5、1:10、1:20、1:40および1:80希釈した。全ての未感染の対照試料、EnAd感染細胞、およびNG-350A感染CT26細胞由来の上清を、1:2希釈のみした。次に、製造元のプロトコールに従い、ヒトIgG2インビトロSimpleStep ELISA(Abcam)を行った。ヒトIgG2精製タンパク質(ELISAキットにより供給される)を使用して、標準曲線を生成し、試料中のIgG2タンパク質の濃度を決定した(ng/mL)。次に、1×10
6個の細胞当たりのIgG2タンパク質の量(ng/1×10
6個の細胞)を計算した。平均およびSDを、標準曲線内にあるELISAデュプリケートの平均から決定した。平均をプロットし、グラフを、
図28において示し、SDをエラーバーにより表した。未感染対照試料を使用したバックグラウンド減算を、それぞれの細胞株および時間ポイントに関して行い、これらの試料は、応答しなかった(0×100ng/1×10
6個の細胞)。EnAd接種細胞も応答せず、故に、EnAdデータをプロットしなかった。NG-350Aを感染させた全ての細胞株を用いて、IgG2抗体産生を検出した。
【0326】
実施例8において記載したHEK-BlueCD40シグナル伝達レポーターアッセイを使用して、NG-350Aを感染させた異なる腫瘍細胞株により産生された抗体の機能性を試験した。6種の試験腫瘍細胞株、ならびに陽性(A549)および陰性(CT26)対照細胞株に、1ppcのEnAd、1ppcのNG-348またはアッセイ培地単独(UIC)を感染させた。接種の8または11日後に、上清を回収した。次に、上清を、HEK-Blue細胞と20~24時間インキュベーションした。次に、上清を処理したHEK-Blue細胞から取り出し、Quanti-Blueに加え、1時間インキュベーションし、その後、620nmの吸光度を読み取るよう設定したSpectraMax i3x上で光学密度(OD)を読み取った。それぞれのUICアッセイデュプリケートについての平均光学密度を、対応する個々のEnAdおよびNG-350A値から引き、これにより、感染した腫瘍細胞の上清における抗体のCD40シグナル伝達活性を評価した。次に、UICバックグラウンドを減算したEnAdおよびNG-350Aアッセイデュプリケートの平均をとり、これにより、それぞれの播種および接種のデュプリケートに対応する、それぞれの細胞株について2つの値(条件毎)を得た。次に、これらの副生物の平均および標準偏差(SD)を決定し、表3において示す。
表3 NG-350A感染腫瘍細胞由来の上清における機能的抗CD40抗体活性(HEk-Blueレポーターアッセイ)
【表4】
【0327】
実施例18
さらなる一連の実験において、NG-350Aウイルスのインビボウイルス粒子介在性効果をモニターし、マウスにおける1回または複数回静脈内投与後のEnAdのものと比較した。メスCD-1マウスに、ビークル対照またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
10個の粒子をIV注射した。注射の6時間、24時間、48時間、または7日後に、マウスの心臓から採血し、血液を抗凝固剤チューブに収集し、処理して血漿を回収した。血漿試料をELISAアッセイにより試験して、ウイルス粒子に対する実際のサイトカイン応答を検出し、
図29において示すデータは、1群当たり3~6匹のマウスを表す。NG-350A投与による刺激されたMCP-1(
図29A)、IL-6(
図29B)およびTNFα(
図29C)レベルは、EnAdについてのものと類似した。黒色の実線は、平均を表す。ベースラインは、ビークル対照群の平均+3×SDを表す。
【0328】
血漿試料の他のアリコートを、実際の肝臓毒性の測定値としてアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルについて試験した。ALT比色分析エンドポイント酵素アッセイキットを使用して、血漿試料を解析した。
図30において示すデータは、1群当たり3~6匹のマウスを表す。黒色の実線は、平均を表す。ベースラインは、ビークル対照群の平均+3×SDを表す。ALTレベルは、異なるマウス間で変動したが、NG-350AおよびEnAdは、類似の応答特性を誘導した。
【0329】
さらなる群のメスCD-1マウスに、1日目にPBS、または1、3および5日目にEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
10個のウイルス粒子をIV注射した。投与の6時間後に、PBS処置マウスの心臓から血液採取した。第1の投与の6時間および24時間後に側尾静脈ならびに心穿刺(それぞれ)を介して、または6時間後に心穿刺を介してまたは第3の投与の24時間もしくは7日後に、ウイルス処置マウスから採血した。血漿試料をELISAアッセイにより試験して、ウイルス粒子に対する実際のサイトカイン応答を検出し、
図31において示すデータは、1群当たり3~6匹のマウスを表す。NG-350A投与による刺激されたMCP-1(
図31A)およびIL-6(
図31B)レベルは、EnAdについてのものと類似した。黒色の実線は、平均を表す。ベースラインは、ビークル対照群の平均+3×SDを表す。
【0330】
実施例19
免疫適格CD-1マウスにおける1、3および5日目での2.2×1010個のウイルス粒子の3回の静脈内(IV)投与のそれぞれの投与後、NG-350Aの血液薬物動態を、enadenotucirev(EnAd)と比較した。
【0331】
メスCD-1マウスに、1、3および5日目にEnAdまたはNG-350Aいずれかの2.2×10
10個のウイルス粒子をIV注射した。それぞれの投与後、それぞれのウイルスを用いて処置した4匹のマウスの群から、投与の1、2、3、5、7、10および60分後に血液採取した。DNAを抽出し、EnAdとNG-350Aの両方に共通するウイルスE3遺伝子を標的にするqPCRにより解析した。
図32において示すデータは、1群当たり4匹のマウス+SDを表す。値がアッセイの定量限界未満になった場合、それらを除外した。7分間を超えるデータは、アッセイの定量限界未満に一貫してなったので、プロットしなかった。NG-350Aは、EnAdのものと比較可能な薬物動態特性を示した。
【0332】
実施例20
1回の静脈内投与後に組織から生きたウイルスの回復を測定することにより、NG-350Aを用いたマウスの投与後のウイルス体内分布を評価した。メスCD-1マウスに、ビークル対照またはNG-350Aの2.2×10
10個の粒子をIV注射した。マウスの群を、投与の6時間、24時間、8日または28日後のいずれかにおいて安楽死させ、それらの肝臓、肺および脾臓を切除し、直ちにドライアイス上で凍結した。試料を後に融解し、タンパク質保存溶解バッファーにおいてホモジナイズし、溶解物を希釈し、陽性対照および陰性対照としてそれぞれの器官についてのNG-350A添加組織ホモジネートと共に、コンフルエントなA549単層に加えた。単層を96時間培養し、その後、固定し、抗アデノウイルスヘキソン抗体を使用した免疫染色アッセイの対象にした。
図33におけるそれぞれのウェルの試料写真により、データを表す。ヘキソン陽性細胞は、茶色に染まった(図において濃い灰色として示す)。24時間より後では、マウスの肝臓、肺または脾臓(マウスにおけるウイルス体内分布の主要部位)において、生きたウイルスを検出することはできなかった。
【0333】
実施例21
この一連の研究において、NG-350Aウイルス活性を、ヒト腫瘍異種移植片を生じる免疫不全マウスにおいてインビボで評価した。
【0334】
3回のIV注射または1回の分画腫瘍内(IT)投与後、皮下A549肺細胞株腫瘍において、ウイルス複製を評価した。
【0335】
メスSCIDマウスのそれらの側腹部に、A549腫瘍細胞を皮下移植し、腫瘍が少なくとも50mm
3に達したら、ウイルスまたは対照をITまたはIVいずれかで注射した。トータルの用量20μL/4.4×10
9個のウイルス粒子についての腫瘍の空間的に別の領域に、PBS、またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
9個のウイルス粒子の2回の10μL注射液を、IT投与マウスに注射した。トータルの用量300μL/6.6×10
9個のウイルス粒子について1、3および5日目に、PBS、またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
9個のウイルス粒子100μLを、IV投与マウスに注射した。投与の7または21日後のいずれかで、麻酔後、腫瘍をマウスから切除し、凍結した。腫瘍を後にホモジナイズし、DNAを抽出し、EnAdとNG-350Aの両方に共通するウイルスE3領域を標的にするプライマーおよびプローブを使用したqPCRにより解析した。
図34AおよびBにおいて示すデータは、1群当たり2~4匹のマウス+/-SDを表す。NG-350Aは、IT(
図34A)またはIV(
図34B)のいずれかの投与後、EnAdのものと比較可能な、A549腫瘍異種移植片における複製を示した。
【0336】
HCT-116大腸癌細胞株を使用した第2の腫瘍異種移植片モデルを使用して、この実験をまた繰り返した。メスSCIDマウスのそれらの側腹部に、HCT116腫瘍細胞を皮下移植し、腫瘍が少なくとも50mm
3に達したら、ウイルスまたは対照をITまたはIVいずれかで注射した。トータルの用量20μL/4.4×10
9個のウイルス粒子についての腫瘍の空間的に別の領域に、PBS、またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
9個のウイルス粒子の2回の10μL注射液を、IT投与マウスに注射した。トータルの用量300μL/6.6×10
9個のウイルス粒子について1、3および5日目に、PBS、またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
9個のウイルス粒子100μLを、IV投与マウスに注射した。投与の7または21日後のいずれかで、麻酔後、腫瘍をマウスから切除し、凍結した。腫瘍を後にホモジナイズし、DNAを抽出し、EnAdとNG-350Aの両方に共通するウイルスE3領域を標的にするプライマーおよびプローブを使用したqPCRにより解析した。
図34CおよびDにおいて示すデータは、1群当たり2~4匹のマウス+/-SDを表す。NG-350Aは、IT(
図34C)またはIV(
図34D)のいずれかの投与後、EnAdのものと比較可能な、HCT-116腫瘍異種移植片における複製を示した。
【0337】
SCIDマウスにおけるA549とHCT-116両方の皮下異種移植片腫瘍を用いた類似の実験において、腫瘍におけるウイルスRNA発現を測定した。メスSCIDマウスのそれらの側腹部に、A549またはHCT-116腫瘍細胞を皮下移植し、腫瘍が少なくとも50mm
3に達したら、ウイルスまたは対照をITまたはIVいずれかで注射した。トータルの用量20μL/4.4×10
9個のウイルス粒子についての腫瘍の空間的に別の領域に、PBS、またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
9個のウイルス粒子の2回の10μL注射液を、IT投与マウスに注射した。トータルの用量300μL/6.6×10
9個のウイルス粒子について1、3および5日目に、PBS、またはEnAdもしくはNG-350Aいずれかの2.2×10
9個のウイルス粒子100μLを、IV投与マウスに注射した。投与の7日後に、麻酔後、腫瘍をマウスから切除し、凍結した。腫瘍を後にホモジナイズし、RNAを抽出し、EnAdとNG-350Aの両方に共通するウイルスE3mRNAを標的にするプライマーおよびプローブを使用したRT-qPCRにより解析した。
図35において示すデータは、1群当たり3~4匹のマウスを表す。黒色の線は、平均を表す。A549IT(
図35A)、IV(
図35B)、HCT-116IT(
図35C)およびHCT-116IV(
図35D)は、NG-350AまたはEnAdいずれかの投与後に比較可能なウイルスE3mRNA発現を示す。
【0338】
抗CD40抗体導入遺伝子mRNA発現のレベルをまた、同じ皮下A549およびHCT-116異種移植片腫瘍RNA試料において測定した。αCD40抗体導入遺伝子mRNAを標的にするプライマーおよびプローブを使用したRT-qPCRにより、RNAを解析した。
図36において示すデータは、1群当たり3~4匹のマウスを表す。黒色の線は、平均を表す。唯一NG-350A処置腫瘍において、抗CD40抗体導入遺伝子mRNA発現を容易に検出した。A549IT(
図36A)、IV(
図36B)、HCT-116IT(
図36C)およびHCT-116IV(
図36D)。
【0339】
IgG2 ELISAを使用して、腫瘍溶解物とA549腫瘍を生じるマウスの血清の両方において、抗CD40抗体タンパク質のレベルをまた測定した。
図37において示したデータは、血中より腫瘍においてより高いレベルで、IT(A)またはIV(B)いずれかでのNG-350A投与後に、抗体の選択的な検出を示す。
【0340】
配列
配列番号4-抗CD40VH鎖アミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPDSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELNRLRSDDTAVYYCARDQPLGYCTNGVCSYFDYWGQGTLVTVSS
【0341】
配列番号5-抗体定常重鎖アミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0342】
配列番号8-抗CD40VL鎖アミノ酸配列
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIYSWLAWYQQKPGKAPNLLIYTASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANIFPLTFGGGTKVEIK
【0343】
配列番号9-定常軽鎖アミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0344】
配列番号12-NG-350A導入遺伝子カセット核酸配列
GCGATCGCCAGGCCCACCATGGACTGGACCTGGCGCATCCTGTTCTTGGTGGCAGCTGCTACGGGAGCTCATTCCCAGGTGCAGCTGGTGCAATCCGGCGCTGAGGTGAAGAAACCCGGGGCTTCAGTCAAAGTCAGCTGCAAGGCTAGCGGCTACACCTTTACTGGCTATTACATGCACTGGGTGAGGCAGGCTCCGGGACAGGGTCTGGAATGGATGGGATGGATCAATCCGGACAGCGGCGGGACCAATTACGCACAAAAGTTCCAAGGCCGCGTGACGATGACCCGGGACACTTCGATCTCAACCGCCTACATGGAGCTGAACCGCCTGAGGTCGGATGACACCGCTGTGTACTACTGCGCTCGCGACCAACCCCTGGGGTACTGCACCAACGGAGTGTGTTCATACTTCGACTACTGGGGCCAAGGCACGCTGGTCACTGTGTCATCGGCGTCCACTAAGGGCCCGTCGGTCTTCCCACTAGCTCCGTGCTCGCGGTCGACTTCGGAATCAACTGCGGCACTCGGATGCCTTGTCAAGGACTACTTCCCAGAACCCGTGACCGTCTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACGAGCGGTGTCCACACTTTCCCGGCGGTGCTGCAGTCATCGGGGCTATACAGCCTGAGCAGCGTGGTTACTGTGCCGTCATCAAACTTCGGGACCCAGACTTACACTTGCAATGTGGACCACAAGCCGTCAAATACCAAAGTGGACAAGACTGTGGAACGCAAATGTTGCGTGGAATGCCCTCCGTGCCCGGCCCCCCCAGTCGCTGGCCCATCCGTGTTCCTCTTCCCTCCGAAGCCAAAAGACACTCTGATGATTTCGAGAACTCCGGAGGTCACTTGCGTGGTGGTCGACGTGTCGCACGAGGATCCAGAGGTGCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGAGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCGCGCGAAGAACAATTCAACTCCACCTTTCGGGTCGTGTCCGTGCTGACCGTGGTACACCAAGACTGGCTGAACGGAAAGGAGTACAAATGCAAGGTGAGCAACAAGGGGCTGCCGGCTCCAATCGAAAAGACCATCTCAAAGACTAAGGGGCAACCTCGCGAGCCACAGGTGTATACCCTGCCTCCAAGCAGGGAGGAAATGACCAAAAACCAGGTGAGCCTGACCTGTCTGGTGAAGGGCTTTTACCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAAAGCAACGGACAACCCGAGAACAACTACAAGACCACTCCGCCCATGCTGGACTCCGACGGGTCATTTTTCCTGTACTCAAAGCTGACTGTGGACAAGTCCCGGTGGCAGCAAGGTAACGTGTTCTCCTGCTCGGTGATGCACGAAGCTTTGCACAACCACTACACTCAAAAGTCACTTTCCTTGTCACCGGGCAAGGGGTCGGGCGCCACTAACTTTTCCTTGCTCAAGCAGGCGGGCGATGTGGAGGAGAATCCGGGCCCGCGCCTCCCGGCGCAACTGCTGGGCCTCCTCCTCCTCTGGTTTCCCGGCTCCCGCTGTGACATCCAGATGACTCAGTCGCCCAGCTCCGTGTCCGCATCGGTGGGGGACAGAGTCACCATCACCTGCAGAGCTTCACAAGGGATCTATTCCTGGCTGGCGTGGTATCAGCAGAAGCCTGGAAAGGCCCCCAACCTCCTGATTTACACCGCATCGACTCTCCAGTCAGGCGTGCCATCCCGGTTCTCAGGGTCCGGCTCCGGAACCGACTTCACTCTGACTATCAGCTCCCTGCAACCAGAAGATTTCGCTACCTACTACTGCCAGCAGGCAAACATCTTTCCGCTAACTTTCGGCGGAGGCACGAAGGTGGAGATCAAGAGAACCGTGGCGGCCCCTTCCGTCTTCATCTTCCCACCGTCAGACGAACAACTCAAATCCGGTACCGCCTCCGTCGTGTGCCTGCTCAATAACTTCTATCCACGCGAGGCCAAGGTCCAGTGGAAAGTGGATAACGCCCTGCAGTCCGGAAACAGCCAGGAGTCAGTGACCGAACAGGATTCCAAGGACAGCACTTACTCGCTCTCAAGCACCCTCACCCTGTCGAAGGCGGATTACGAGAAGCACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTGACTCATCAAGGACTCTCATCACCGGTAACTAAGAGCTTCAATCGCGGAGAATGCTAGGCTAGCTTGACTGACTGAGATACAGCGTACCTTCAGCTCACAGACATGATAAGATACATTGATGAGTTTGGACAAACCACAACTAGAATGCAGTGAAAAAAATGCTTTATTTGTGAAATTTGTGATGCTATTGCTTTATTTGTAACCATTATAAGCTGCAATAAACAAGTTAACAACAACAATTGCATTCATTTTATGTTTCAGGTTCAGGGGGAGGTGTGGGAGGTTTTTTAAAGCAAGTAAAACCTCTACAAATGTGGTCCTGCAGG
【配列表】