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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20231201BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C15/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020007631
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2020132140
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019025238
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】名塩 博史
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 健介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037088(JP,A)
【文献】特開2016-078749(JP,A)
【文献】特開平11-020424(JP,A)
【文献】特開平07-228110(JP,A)
【文献】特開2015-174515(JP,A)
【文献】特開2005-007961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置されるビードコアと、
前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向かって配置される一対のビードフィラーと、
前記ビードコアに掛け渡されるカーカス本体部、及び、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側から前記ビードフィラーを超えてタイヤ径方向外側にそれぞれ延びるカーカス巻上部を有するカーカスと、
前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部の間に配置されたゴム層と
を備え、
前記ゴム層は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部とが重なった領域の前記タイヤ径方向外側の端部までの間の領域の子午線方向の長さのうち、少なくとも50%を占有し、
前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記ゴム層のタイヤ径方向外側端は、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向外側に向かう子午線方向の長さが10mm、タイヤ径方向内側に向かう子午線方向の長さが30mmの範囲に位置する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置されるビードコアと、
前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向かって配置される一対のビードフィラーと、
前記ビードコアに掛け渡されるカーカス本体部、及び、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側から前記ビードフィラーを超えてタイヤ径方向外側にそれぞれ延びるカーカス巻上部を有するカーカスと、
前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部の間に配置されたゴム層と
を備え、
前記ゴム層は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部とが重なった領域の前記タイヤ径方向外側の端部までの間の領域の子午線方向の長さのうち、少なくとも50%を占有し、
前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記ゴム層のタイヤ径方向内側端は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向外側に向かう子午線方向の長さが30mm、タイヤ径方向内側に向かう子午線方向の長さが10mmの範囲に位置する、空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置されるビードコアと、
前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向かって配置される一対のビードフィラーと、
前記ビードコアに掛け渡されるカーカス本体部、及び、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側から前記ビードフィラーを超えてタイヤ径方向外側にそれぞれ延びるカーカス巻上部を有するカーカスと、
前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部の間に配置されたゴム層と
を備え、
前記ゴム層は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部とが重なった領域の前記タイヤ径方向外側の端部までの間の領域の子午線方向の長さのうち、少なくとも50%を占有し、
前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に位置し、
前記ゴム層のタイヤ径方向外側端は、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向の外側及び内側に向かう子午線方向の長さがそれぞれ10mmの範囲に位置する、空気入りタイヤ。
【請求項4】
記ゴム層のタイヤ径方向内側端は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向の外側及び内側に向かう子午線方向の長さがそれぞれ10mmの範囲に位置する、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム層は、0.5mm以上3.0mm以下の厚さ寸法を有する、請求項1からのいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム層は、タイヤ径方向の位置に応じて厚さ寸法が相違している、請求項1からのいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム層は、前記ビードフィラーよりも硬度が小さい、請求項1からのいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーカスと、カーカスの巻上部とビードフィラーとの間に配設される補強層とを備えた空気入りタイヤが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、走行時のサイドウォール部の振動による騒音の発生について十分には考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-177067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、走行時のタイヤサイド部の振動による騒音の発生を抑制できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、前記課題を解決するための手段として、タイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置されるビードコアと、前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向かって配置される一対のビードフィラーと、前記ビードコアに掛け渡されるカーカス本体部、及び、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側から前記ビードフィラーを超えてタイヤ径方向外側にそれぞれ延びるカーカス巻上部を有するカーカスと、前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部の間に配置されたゴム層とを備え、前記ゴム層は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部とが重なった領域の前記タイヤ径方向外側の端部までの間の領域の子午線方向の長さのうち、少なくとも50%を占有し、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記ゴム層のタイヤ径方向外側端は、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向外側に向かう子午線方向の長さが10mm、タイヤ径方向内側に向かう子午線方向の長さが30mmの範囲に位置する、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、カーカス本体部とカーカス巻上部との間に、ゴム層が介在する隙間を形成できる。これにより、走行時にこの領域で振動が発生しにくくなり、騒音の発生を抑制可能となる。
【0009】
この構成により、振動の発生を十分に抑制できる。逆に、前記範囲を超えてゴム層が形成されていても、振動の発生抑制にはそれほど寄与しない。つまり、無駄なゴム層の形成による重量の増大を防止できる。
【0010】
本発明の第2の態様は、タイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置されるビードコアと、前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向かって配置される一対のビードフィラーと、前記ビードコアに掛け渡されるカーカス本体部、及び、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側から前記ビードフィラーを超えてタイヤ径方向外側にそれぞれ延びるカーカス巻上部を有するカーカスと、前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部の間に配置されたゴム層とを備え、前記ゴム層は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部とが重なった領域の前記タイヤ径方向外側の端部までの間の領域の子午線方向の長さのうち、少なくとも50%を占有し、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、前記ゴム層のタイヤ径方向内側端は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向外側に向かう子午線方向の長さが30mm、タイヤ径方向内側に向かう子午線方向の長さが10mmの範囲に位置する、空気入りタイヤを提供する
【0011】
この構成により、振動の発生を十分に抑制できる。逆に、前記範囲を超えてゴム層が形成されていても、振動の発生抑制にはそれほど寄与しない。つまり、無駄なゴム層の形成による重量の増大を防止できる。
【0012】
本発明の第3の態様は、タイヤ幅方向の両側にそれぞれ配置されるビードコアと、前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向かって配置される一対のビードフィラーと、前記ビードコアに掛け渡されるカーカス本体部、及び、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側から前記ビードフィラーを超えてタイヤ径方向外側にそれぞれ延びるカーカス巻上部を有するカーカスと、前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部の間に配置されたゴム層とを備え、前記ゴム層は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から前記カーカス本体部と前記カーカス巻上部とが重なった領域の前記タイヤ径方向外側の端部までの間の領域の子午線方向の長さのうち、少なくとも50%を占有し、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に位置し、前記ゴム層のタイヤ径方向外側端は、前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向の外側及び内側に向かう子午線方向の長さがそれぞれ10mmの範囲に位置する、空気入りタイヤを提供する
【0013】
この構成により、振動の発生を十分に抑制できる。逆に、前記範囲を超えてゴム層が形成されていても、振動の発生抑制にはそれほど寄与しない。つまり、無駄なゴム層の形成による重量の増大を防止できる。
【0014】
前記カーカス巻上部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に位置し、前記ゴム層のタイヤ径方向内側端は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端から、タイヤ径方向の内側及び内側に向かう子午線方向の長さがそれぞれ10mmの範囲に位置するのが好ましい。
【0015】
この構成により、振動の発生を十分に抑制できる。逆に、前記範囲を超えてゴム層が形成されていても、振動の発生抑制にはそれほど寄与しない。つまり、無駄なゴム層の形成による重量の増大を防止できる。
【0016】
前記ゴム層は、0.5mm以上3.0mm以下の厚さ寸法を有するのが好ましい。
【0017】
この構成により、ゴム層の重量を抑制しつつ振動の発生を効果的に防止できる。
【0018】
前記ゴム層は、タイヤ径方向の位置に応じて厚さ寸法が相違しているのが好ましい。
【0019】
この構成により、ゴム層を振動が発生しやすい箇所で厚くして、重量の増大を抑制しつつ振動の発生を効果的に防止できる。
【0020】
前記ゴム層は、前記ビードフィラーよりも硬度が小さいのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、走行時のタイヤサイド部の振動による騒音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図1に示すゴム層とカーカス巻上部との関係を示す部分拡大図である。
図4図1に示すゴム層とカーカス巻上部との関係を示す部分拡大図である。
図5図1に示すゴム層とカーカス巻上部との関係を示す部分拡大図である。
図6】第2実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図である。
図7図6の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単にタイヤと記載する。)の子午線断面図、図2はその部分拡大図である。タイヤは、トレッド部1と、一対のサイドウォール部2と、リング状の一対のビード部3とを備える。
【0025】
トレッド部1はタイヤ幅方向(図1において符号TWで示す。)に延びている。トレッド部1の表面、つまり踏面には溝1aが設けられている。
【0026】
一対のサイドウォール部2は、トレッド部1の両端からタイヤ径方向(図1において符号TRで示す。)の内側にそれぞれ延びている。
【0027】
一対のビード部3は、一対のサイドウォール部2のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。個々のビード部3は、ビードコア4とビードフィラー5を備える。ビードコア4は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー5は、リング状で、トレッド部1及びサイドウォール部2を構成するゴムよりも硬度が大きいゴムからなる。ビードフィラー5は、ビードコア4のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端5aと、基端5aとは反対側の先端5bとを備え、基端5aから先端5bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。
【0028】
一対のビードコア4にはカーカス6が掛け渡されている。そして、ビードコア4に掛け渡されたカーカス6を覆うようにチェーファー7が巻き付けられている。カーカス6の内側、つまりタイヤの最内周面には、インナーライナ8が設けられている。カーカス6とトレッド部1の間には、無端状のベルト層9と補強層10が設けられている。ベルト層9は、2枚のベルト11A、11Bを備える。補強層10は1枚の補強ベルト12を備える。ベルト11A、11B及び補強ベルト12は、スチール製又は有機繊維製のベルトコードをゴム被覆して形成されている。下層のベルト11Aのタイヤ幅方向の寸法は、上層のベルト11Bのタイヤ幅方向の寸法よりも大きく、ベルト11Aの端部11aは、ベルト11Bの端部11bよりもタイヤ幅方向外側に位置している。
【0029】
カーカス6は、詳細については図示しないが、所定間隔で並設した複数本のカーカスコードをゴムで被覆した1枚のカーカスプライで構成されている。カーカスコードは、ナイロン繊維等の有機繊維で構成されている。カーカス6は、タイヤ径方向の内側に配置されるカーカス本体部13と、ビードコア4で折り返して巻き上げられるカーカス巻上部14とを備える。本実施形態では、カーカス巻上部14のタイヤ径方向外側端(以下、単にカーカス外側端と記載する。)14aは、タイヤ最大幅位置WMよりもタイヤ径方向外側に位置している(いわゆるハイターンアップ構造)。ここでは、カーカス外側端14aは、下層のベルト11Aの端部11aの近傍に位置している。
【0030】
カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間の領域にはゴム層15が配置されている。具体的には、ゴム層15は、ビードフィラー5の先端5bからカーカス本体部13とカーカス巻上部14とが重なった領域のタイヤ径方向TRの外側の端部、つまりカーカス外側端14aまでの間の領域の子午線方向の長さLのうち、少なくとも50%を占有するように配置されている。この長さLは、当該領域の後述するペリフェリ長さである。但し、図2では、長さLをタイヤ径方向の直線距離として図示している(この点は後述する第2実施形態に関する図4も同様である)。前記領域でのゴム層15の占有範囲が50%未満では、走行時にサイドウォール部2で発生する振動を十分に抑制できない虞がある。第1実施形態では、ゴム層15は、前記領域の全てすなわち100%を占有するように配置されている(この点は後述する第2実施形態も同様である。)。ゴム層15は、ビードフィラー5よりも硬度が小さいゴムからなる。ゴム層15は、単一のゴムシートで形成されていてもよいし、複数枚のゴムシートを重ね合わせた構成であってもよい。
【0031】
第1実施形態では、ゴム層15の両端部は、タイヤ径方向外側端(以下、単にゴム層外側端と記載する。)15a及びタイヤ径方向内側端(以下、単にゴム層内側端と記載する。)15b向かって徐々に薄くなるように形成されている。
【0032】
第1実施形態では、ゴム層外側端15aは、カーカス外側端14aに対して第1設定範囲A内に配置されている。第1設定範囲Aは、カーカス外側端14aから、タイヤ径方向外側の子午線方向に向かってカーカスコードが延伸する長さ(以下、単にペリフェリ長さと記載する。)がa1(10mm以内、好ましくは5mm以内)で、タイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さがa2(30mm以内、好ましくは5mm以内)の範囲であればよい。但し、図2では、長さa1、a2はタイヤ径方向の直線距離として図示している。なお、カーカス外側端14aからタイヤ径方向外側に向かうペリフェリ長さを10mm以内としたのは、カーカス外側端14aからゴム層15が大きくはみ出すことによる不要な質量増を抑制するためである。また、カーカス外側端14aとゴム層外端15aの間に適切な距離を確保することにより、ひずみの集中による故障の発生やタイヤ製造時のエア入り等の工程不良を防ぐためでもある。また、カーカス外側端14aからタイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さを30mm以内としたのは、カーカス外側端14aとゴム層外端15aの間に適切な距離を確保することにより、ひずみの集中による故障の発生やタイヤ製造時のエア入り等の工程不良を防ぐためである。
【0033】
ゴム層15の一端部(ゴム層外側端15aに向かって徐々に薄くなる部分)は、カーカス外側端14aに対して次のように構成できる。
【0034】
図3では、ゴム層15の一端部は、カーカス外側端14aを超えてタイヤ径方向外側に延びる部分で徐々に厚みが薄くなっている。この構成によれば、カーカス本体部13とカーカス巻上部14とを確実に離間させて配置でき、振動の抑制効果を高めることができるという利点がある。
【0035】
図4では、ゴム層15の一端部は、ゴム層外側端15aがカーカス外側端14aと合致するように徐々に厚みが薄くなっている。このため、カーカス巻上部14のタイヤ径方向外側部分が徐々にカーカス本体部13へと接近する。この構成によれば、ゴム層15の重量を抑えつつ、振動の抑制効果を得ることができるという利点がある。
【0036】
図5では、ゴム層15の一端部は、ゴム層外側端15aがカーカス外側端14aよりもタイヤ径方向内側に位置している。このため、カーカス巻上部14のタイヤ径方向外側部分がカーカス本体部13と接触する。この構成によれば、図4に比べてさらにゴム層15の重量を抑えることができるという利点がある。
【0037】
第1実施形態では、ゴム層内側端15bは、ビードフィラー5の先端5bに対して第2設定範囲B内に配置されている。第2設定範囲Bは、ビードフィラー5の先端5bから、タイヤ径方向外側に向かうペリフェリ長さがb1(30mm以内、好ましくは10mm以内)で、タイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さがb2(10mm以内、好ましくは5mm以内)の範囲であればよい。但し、図2では、長さb1、b2はタイヤ径方向の直線距離として図示している。なお、ビードフィラー5の先端5bからタイヤ径方向外側に向かって30mm以内としたのは、ビードフィラー5の先端5bとゴム層内側端15bの間に適切な距離を確保することにより、タイヤの縦剛性の過度な増大を防ぎ、乗り心地性能が悪化しないようにするためである。また、ビードフィラー5の先端5bからタイヤ径方向内側に向かって10mm以内としたのは、ビードフィラー5の先端5bとゴム層内側端15bの間に適切な距離を確保することにより、ひずみの集中による故障の発生やタイヤ製造時のエア入り等の工程不良を防ぐためである。
【0038】
第1実施形態では、ゴム層15の厚さ寸法は、0.5mm以上3.0mm以下に設定されている。また、ゴム層15の厚さ寸法の平均値は、0.5mm以上1.5mm以下に設定されている。ゴム層15の厚さ寸法の最小値を0.5mmとしたのは、現状で加工可能な最小値だからである。ゴム層15の厚さ寸法の最大値を3.0mmとしたのは、これ以上厚くなると、振動抑制効果に比べて重量が増大することによるマイナス面が大きくなるからである。
【0039】
前記第1実施形態に係るタイヤには次のような特徴がある。
【0040】
カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間にゴム層15が設けられ、両者が接触しないか、殆ど接触しないように構成されている。このため、前記構成のタイヤで路面を走行したとしても、サイドウォール部2の振動がゴム層15によって抑制され、騒音は発生しにくい。
【0041】
カーカス巻上部14がサイドウォール部2のほぼ全体に亘って配置されている。つまり、サイドウォール部2でカーカス6が2層設けられることになる。このため、サイドウォール部2に必要な耐カット性と剛性が確保される。
【0042】
ゴム層15は、カーカス外側端14aを超えた位置からタイヤ径方向外側に向かって徐々に薄く形成されている。またゴム層15は、ビードフィラー5の先端5bからタイヤ径方向内側に向かって徐々に薄く形成されている。つまり、ゴム層15のタイヤ径方向両端部分で徐々に厚みが薄くなっており、極端な形状変化がない。このため、走行時の応力集中による剥離等の不具合が発生しにくい。
【0043】
ゴム層外側端15aは、第1設定範囲A内に配置されている。つまり、ゴム層15は、第1設定範囲Aの上限値を超えてタイヤ径方向外側にペリフェリ長さが大きくならないように配置されている。このため、ゴム層外側端15a側でのゴム層15の重量が必要以上に増大することがない。また、ゴム層15は、第1設定範囲Aの下限値を下回ってペリフェリ長さが小さくならないように配置されている。このため、カーカス外側端15a側で、カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間に、ゴム層15によって必要最小限の間隔を確保できる。つまり、カーカス外側端15a側で、ゴム層15の重量を抑えつつ、サイドウォール部2に於ける振動の発生を抑制することが可能となる。
【0044】
ゴム層内側端15bは、第2設定範囲B内に配置されている。つまり、ゴム層15が、第2設定範囲Bの上限値を超えてタイヤ径方向内側にペリフェリ長さが大きくならないように配置されている。このため、ゴム層内側端15b側でのゴム層15の重量が必要以上に増大することがない。また、ゴム層内側端15bは、第2設定範囲Bの下限値を下回ってペリフェリ長さが小さくならないように配置されている。このため、ゴム層内側端15b側で、カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間に、ゴム層15によって必要最小限の間隔を確保できる。つまり、タイヤ径方向外側でゴム層15の重量を抑えつつ、サイドウォール部2に於ける振動の発生を抑制することが可能となる。特に、ハイターンアップ構造の場合、カーカス巻上部14は、ビードフィラー5の先端5bに対応する位置からカーカス外側端14aまでのペリフェリ長さが長い。このため、必ずしもその全ての領域にゴム層15を配置しなくても十分に振動を抑制できる。そこで、ゴム層15のペリフェリ長さa2及びb1を比較的長く設定することで、より効率的に振動を抑制できるようにしている。
【0045】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るタイヤの子午線断面図、図7はその部分拡大図である。このタイヤの基本的構成は、前記第1実施形態に係るタイヤと同様であり、同一部分には対応する符号を付してその説明を省略し、以下、相違する構成についてのみ説明する。
【0046】
カーカス外側端14aは、タイヤ最大幅位置WMよりもタイヤ径方向内側に位置している(いわゆるローターンアップ構造)。ここでは、カーカス外側端14aは、タイヤ最大幅位置WMの近傍に位置している。
【0047】
ゴム層外側端15aは、カーカス外側端14aに対して第3設定範囲C内に配置されている。第3設定範囲Cは、カーカス外側端14aから、タイヤ径方向外側に向かうペリフェリ長さがc1(10mm以内、好ましくは5mm以内)で、タイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さがc2(10mm以内、好ましくは5mm以内)の範囲であればよい。但し、図7では、長さc1、c2はタイヤ径方向の直線距離として図示しているが、実際にはタイヤ周方向に沿った距離である。なお、カーカス外側端14aからタイヤ径方向外側に向かうペリフェリ長さを10mm以内としたのは、カーカス外側端14aからゴム層15が大きくはみ出すことによる不要な質量増を抑制するためである。また、カーカス外側端14aとゴム層外端15aの間に適切な距離を確保することにより、ひずみの集中による故障の発生やタイヤ製造時のエア入り等の工程不良を防ぐためでもある。また、カーカス外側端14aからタイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さを10mm以内としたのは、カーカス外側端14aとゴム層外端15bの間に適切な距離を確保することにより、ひずみの集中による故障の発生やタイヤ製造時のエア入り等の工程不良を防ぐためである。図7では、ゴム層外側端15aは最大幅位置WMよりも若干タイヤ径方向外側に配置されている。
【0048】
ゴム層内側端15bは、ビードフィラー5の先端5bに対して第4設定範囲D内に配置されている。第4設定範囲Dは、ビードフィラー5の先端5bから、タイヤ径方向外側に向かうペリフェリ長さがd1(10mm以内、好ましくは5mm以内)で、タイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さがd2(10mm以内、好ましくは5mm以内)の範囲であればよい。但し、図7では、長さd1、d2はタイヤ径方向の直線距離として図示しているが、実際にはタイヤ周方向に沿った距離である。なお、ビードフィラー5の先端5bからタイヤ径方向外側に向かうペリフェリ長さを10mm以内としたのは、ビードフィラー5の先端5bとゴム層内側端15bの間に適切な距離を確保することにより、タイヤの縦剛性の過度な増大を防ぎ、乗り心地性能の悪化を防ぐためである。また、ビードフィラー5の先端5bからタイヤ径方向内側に向かうペリフェリ長さを10mm以内としたのは、ビードフィラー5の先端5bとゴム層内側端15bの間に適切な距離を確保することにより、ひずみの集中による故障の発生やタイヤ製造時のエア入り等の工程不良を防ぐためである。図7では、ゴム層内側端15bは、ビードフィラー5の先端5bからタイヤ径方向内側のペリフェリ長さd2の範囲に配置されている。
【0049】
前記第2実施形態に係るタイヤには次のような特徴がある。
【0050】
カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間にゴム層15が設けられているため、前記第1実施形態と同様に、サイドウォール部2の振動が抑制され、騒音が発生しにくくなる。
【0051】
サイドウォール部2のタイヤ最大幅寸法位置からタイヤ径方向外側にはゴム層15が形成されないので、ゴム層15の重量を抑制してタイヤの軽量化を図り、燃費の向上に寄与させることができる。
【0052】
ゴム層外側端15aが第3設定範囲C内に配置されている。つまり、ゴム層15は、第3設定範囲Cの上限値を超えてタイヤ径方向外側のペリフェリ長さが大きくならないように配置されている。このため、ゴム層外側端15a側でのゴム層15の重量が必要以上に増大することがない。また、ゴム層15は、第3設定範囲Cの下限値を下回ってペリフェリ長さが小さくならないように配置されている。このため、ゴム層外側端15a側で、カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間に、ゴム層15によって必要最小限の間隔を確保できる。つまり、タイヤ径方向外側でゴム層15の重量を抑えつつ、サイドウォール部2に於ける振動の発生を抑制することが可能となる。
【0053】
ゴム層内側端15bが第4設定範囲D内に配置されている。つまり、ゴム層15は、第4設定範囲Dの上限値を超えてタイヤ径方向内側へのペリフェリ長さが大きくならないように配置されている。このため、ゴム層内側端15b側で、ゴム層15の重量が必要以上に増大することがない。また、ゴム層15は、第4設定範囲Dの下限値を下回ってペリフェリ長さが小さくならないように配置されている。このため、タイヤ径方向内側で、カーカス本体部13とカーカス巻上部14との間に、ゴム層15によって必要最小限の間隔を確保できる。つまり、タイヤ径方向外側でゴム層15の重量を抑えつつ、サイドウォール部2に於ける振動の発生を抑制することが可能となる。特に、ローターンアップ構造の場合、カーカス巻上部14は、ビードフィラー5の先端5bに対応する位置からカーカス外側端14aまでのペリフェリ長さが短い。このため、その全ての領域にゴム層15を配置するのが振動を抑制するうえで好ましい。そこで、ゴム層15のペリフェリ長さを比較的小さな値とすることで、より効率的に振動を抑制できるようにしている。
【0054】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0055】
前記実施形態では、ゴム層15の厚みは両端部で徐々に薄くなるようにしたが、全体に均一となる平板状に形成してもよいし、両端部以外の中間部分で厚みが変化する等により不均一に形成してもよい。ゴム層15の厚みを不均一にする場合、機械加工を施してもよいが、次のように構成してもよい。すなわち、ゴム層15を複数枚のゴムシートを重ね合わせた構成とし、厚くしたい部分ではゴムシートを重ね合わせる枚数を多くし、逆に薄くしたい部分では少なくすればよい。これによれば、同一厚さのゴムシートを用意するだけでよく、重ね合わせる枚数を調整すれば、簡単に所望の厚みとすることができる。
【0056】
特に、ゴム層15の厚みを不均一にする場合、走行時にサイドウォール部2の各部位で発生する振動の大きさの違いに基づいて厚みを変化させるのが好ましい。例えば、タイヤを試験機にセットし、試験台上で荷重を負荷しながら回転させた状態で、側方よりサイドウォール部2にレーザを照射し、その反射光に基づいて照射位置での振動周波数を測定する。そして、得られた結果に基づいて、サイドウォール部2のタイヤ径方向の振動の大きい領域で、ゴム層15の厚みを大きくすればよい。
【0057】
前記実施形態では、サイドウォール部2を構成するサイドウォールゴムについては特に言及しなかったが、サイドウォール部2のうち、ゴム層15を設けた領域での厚さが大きくならないように、サイドウォールゴムの厚さを調整するのが好ましい。これによれば、サイドウォール部2での振動の発生を抑制しつつ、サイドウォール部2の重量を適正な範囲としつつ、所望の剛性を得ることができる。
【0058】
前記実施形態では、ゴム層15をタイヤ径方向につながった一部材で構成したが、タイヤ径方向に分離した2部材以上で構成してもよい。この場合、ゴム層15を設ける領域と設けない領域は、前述のように、サイドウォール部2の各部位での振動の違いに基づいて決定すればよい。すなわち、振動周波数が予め設定した閾値よりも大きい領域にゴム層15を設けるようにすればよい。この場合、閾値を複数段階で設定し、各段階に応じてゴム層15の厚さを変更してもよい。
【0059】
前記実施形態では、ゴム層15をタイヤ赤道面Eを中心として面対称となるように配置したが、非対称となるように配置してもよい。また、一方のサイドウォール部2のみにゴム層15を配置するようにしてもよい。この場合、ゴム層15を配置するのは、タイヤを車両に装着した状態で、車両の幅方向外側に位置する部分とすればよい。これによれば、車両旋回時等で、タイヤに対してタイヤ幅方向に力が作用する条件下で、ゴム層15にコーナリング性能を高める機能を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…トレッド部
2…サイドウォール部
3…ビード部
4…ビードコア
5…ビードフィラー
6…カーカス
7…チェーファー
8…インナーライナ
9…ベルト層
10…補強層
11A、11B…ベルト
12…補強ベルト
13…カーカス本体部
14…カーカス巻上部
15…ゴム層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7