(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】流量計測システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/075 20060101AFI20231201BHJP
G01F 1/08 20060101ALI20231201BHJP
G01F 1/002 20220101ALI20231201BHJP
【FI】
G01F1/075
G01F1/08
G01F1/002
(21)【出願番号】P 2020009429
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨山 貴光
(72)【発明者】
【氏名】林 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】関 和市
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-048126(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を流れる水の流量を計測する流量計測システムであって、
前記水路の水流によって回転可能に形成されたブレード部と、前記ブレード部が接続された回転軸と、前記回転軸の回転によって発電する発電部と、を有する水流発電装置と、
前記水流発電装置によって発電された電力と、前記水路における水位と、に基づいて、前記水路を流れる水の流量を算出する制御装置と、を備え、
前記水流発電装置において、前記ブレード部および前記回転軸が、前記水流発電装置が前記水路に設置されたときに、前記ブレード部における前記水路を流れる水と接触する部分の面積が前記水路における水位に応じて変化するように形成されている流量計測システム。
【請求項2】
前記水流発電装置において、
前記回転軸が、前記水流発電装置が前記水路に設けられたときに、前記水路における高さ方向に延びるように形成されており、且つ、
前記ブレード部が、前記回転軸の軸方向に延びた形状を有する、
請求項1に記載の流量計測システム。
【請求項3】
前記水流発電装置において、
前記回転軸における上方側の端部のみが回転可能に支持されている、
請求項2に記載の流量計測システム。
【請求項4】
前記水流発電装置において、
前記ブレード部が、横断面形状が翼型形状であり、且つ、略コの字形の形状を有しており、その両端部のうちの少なくとも一端が前記回転軸に接続されている、
請求項2または3に記載の流量計測システム。
【請求項5】
前記制御装置が、
前記水流発電装置によって発電された電力と、前記水路における水位と、に基づいて、前記ブレード部が受ける水流の流速を算出し、
前記水路における水位と、前記ブレード部が受ける水流の流速と、に基づいて、前記水路を流れる水の流量を算出する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の流量計測システム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記水路に設けられた水位計から前記水路における水位を取得する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の流量計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路を流れる水の流量を計測する流量計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吐水と止水とを切り換える水栓装置に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の水栓装置は、発電ユニット、浄水ユニット、およびコントローラを備えている。発電ユニットは、通水路における水の流れにより回転する水車によって電力を発生させる。浄水ユニットは、通水路を流れる水を浄化する。そして、コントローラは、浄水ユニットを通過した通水に関する流量情報を、発電ユニットで発電された電力に基づいて算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用水路または排水路のような水路においては、上記の特許文献1に記載の水栓装置の通水路(パイプ状の水路)とは異なり、流れる水の水位が変化する。水路において水位が変化すると、流れる水の断面積(流水断面積)が変化することになる。そのため、水位が変化する水路における水の流量を、流水断面積が一定である水栓装置の通水路における水量の計測方法と同様の方法で正確に計測することは困難である。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、水位が変化する水路における水の流量を計測することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流量計測システムは、
水路を流れる水の流量を計測する流量計測システムであって、
前記水路の水流によって回転可能に形成されたブレード部と、前記ブレード部が接続された回転軸と、前記回転軸の回転によって発電する発電部と、を有する水流発電装置と、
前記水流発電装置によって発電された電力と、前記水路における水位と、に基づいて、前記水路を流れる水の流量を算出する制御装置と、を備え、
前記水流発電装置において、前記ブレード部および前記回転軸が、前記水流発電装置が前記水路に設置されたときに、前記ブレード部における前記水路を流れる水と接触する部分の面積が前記水路における水位に応じて変化するように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水位が変化する水路における水の流量を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】流量計測システムが水路に設置されたときの様子を示す図である。
【
図2】流量計測システムにおけるブレード部近傍部分を拡大して示した図である。
【
図3】ブレード部と水路における水位との関係について説明するための図である。
【
図4】発電電力と、水流の流速と、水路における水位との相関関係を示す図である。
【
図5】水路を流れる水の流量を算出するときの算出フローである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る流量計測システムは水流発電装置と制御装置とを備えている。水流発電装置は、ブレード部、回転軸、および発電部を有している。ブレード部は、水路の水流によって回転可能に形成されている。そのため、水流発電装置が水路に設置され、該水路の水流をブレード部が受ける状態となると、該ブレード部が水流によって回転する。また、ブレード部には回転軸が接続されている。ブレード部は、この回転軸周りに回転する。そして、ブレード部が回転すると回転軸も該ブレード部とともに回転する。また、発電部は、回転軸の回転駆動力によって電力を生成する。
【0010】
ここで、水流発電装置では、上記のように、水路の水流を受けることでブレード部が回転し、それによって、発電部で発電するための回転駆動力が得られる。そのため、水流発電装置によって発電される電力は、ブレード部が受ける水流の流速と相関がある。つまり、ブレード部が受ける水流の流速が高いほど、水流発電装置によって発電される電力が大きくなる。また、ブレード部が受ける水流の流速が同一であっても、ブレード部における水路を流れる水と接触する部分の面積が変化すると、水流から得られるエネルギーが変化する。つまり、ブレード部における水路を流れる水と接触する部分の面積が大きくなるほど、水流から得られるエネルギーが増加する。その結果、水流発電装置によって発電される電力が大きくなる。
【0011】
そこで、本発明に係る水流発電装置においては、ブレード部および回転軸が、該水流発電装置が水路に設置されたときに、ブレード部における水路を流れる水と接触する部分の面積が水路における水位に応じて変化するように形成されている。これにより、水路における水位が高くなるほど、ブレード部における水路を流れる水と接触する部分の面積が大きくなる。したがって、ブレード部が受ける水流の流速が同一であっても、水路における水位が高いほど、水流発電装置によって発電される電力が大きくなる。つまり、ブレード部および回転軸が上記のように形成されることで、水流発電装置によって発電される電力が、ブレード部が受ける水流の流速および水路における水位と相関がある値となる。
【0012】
そして、制御装置は、水流発電装置によって発電された電力と、水路における水位と、に基づいて、水路を流れる水の流量を算出する。上記のように、水流発電装置によって発電される電力は、ブレード部が受ける水流の流速および水路における水位と相関がある。そのため、水流発電装置によって発電された電力と、水路における水位と、に基づいて、ブレード部が受ける水流の流速を求めることができる。そして、この水流の流速と、水路における水位とに基づいて、水路を流れる水の流量を求めることができる。
【0013】
したがって、本発明に係る流量計測システムよれば、水位が変化する水路における水の流量を計測することができる。
【0014】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、および、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
<実施形態>
(概略構成)
本実施形態に係る流量計測システムは、用水路または排水路のような、水位が変化する水路における水の流量を計測するシステムである。以下、本実施形態に係る流量計測システムの概略構成について、
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、流量計測システムが水路に設置されたときの様子を示す図である。
図2は、流量計測システムにおけるブレード部近傍部分を拡大して示した図である。なお、
図1および
図2において、白抜き矢
印は水路における水流の方向を表している。
【0016】
流量計測システム1は、水流発電装置10と制御装置20とを備えている。水流発電装置10は、水路200の水流を用いて発電する装置である。また、制御装置20は、水流発電装置10によって発電された電力に基づいて、水路200を流れる水Wの流量を算出するための装置である。
【0017】
図1に示すように、流量計測システム1においては、水流発電装置10が、支持部材100に支持された状態で水路200の上方に設置される。水流発電装置10は、3つのブレード部11、回転軸12、および発電部13を有している。水流発電装置10においては、発電部13が支持部材100によって支持されている。そして、回転軸12の一端が発電部13に回転可能に支持されている。また、回転軸12の他端側が発電部13から下方に延びている。つまり、回転軸12は、水流発電装置10が水路200に設置されたときに、該水路200における高さ方向に延びるように形成されている。ただし、回転軸12の他端は水路200の底面に接続されていはいない。つまり、水流発電装置10においては、回転軸12における上方側の端部のみが回転可能に支持されている。
【0018】
また、3つのブレード部11は回転軸12の他端側に接続されている。
図1および
図2に示すように、3つのブレード部11は、回転軸12において軸周りに略等角度間隔に配置されている。また、各ブレード部11は、略コの字形の形状を有している。そして、各ブレード部11の両端部が回転軸12に接続されている。つまり、各ブレード部11は、回転軸12の軸方向に延びた形状を有している。さらに、
図2(a)に示すように、各ブレード部11の横断面形状は翼型形状を有している。ブレード部11がこのような形状を有することにより、該ブレード部11が水路200において水流を受けると揚力が発生する。その結果、ブレード部11が回転し、それに伴って回転軸12が、
図2において矢印で示す方向に回転する。
【0019】
なお、回転軸12に接続されるブレード部11の数は3つに限られるものではない。また、必ずしも、略コの字形の形状を有するブレード部11の両端部が回転軸12に接続されている必要はない。例えば、回転軸12がブレード部11における上方側に位置する端部の位置までしか延びておらず、各ブレード部11における上方側に位置する端部のみが回転軸12の下端に接続された構成を採用することもできる。このような構成であっても、ブレード部11は、水路200において水流を受けると回転軸12の軸周りの方向に回転するため、回転軸12も
図2において矢印で示す方向と同様の方向に回転する。
【0020】
水路200の水流を受けて各ブレード部11が回転し、それに伴って回転軸12が回転すると、その回転駆動力によって発電部13が電力を生成する。ここで、発電部13において回転軸12の回転駆動力によって発電する機構としては、周知の機構を適用することができる。
【0021】
また、水流発電装置10の発電部13には、制御装置20が電気的に接続されている。そして、水流発電装置10によって発電された電力が制御装置20に供給される。そのため、制御装置20は、水流発電装置10によって発電された電力によって作動することができる。また、制御装置20には、水路200に設けられた水位計30が電気的に接続されている。水位計30は、水路200における水位を検出する装置である。そして、水位計30が検出した水位が制御装置20に出力される。
【0022】
(ブレード部と水位との関係)
ここで、水流発電装置10が水路200に設置された状態での、ブレード部11と水路200における水位との関係について
図3に基づいて説明する。
図3においては、一点鎖
線が水路200における水位を表している。ここでは、h1、h2、およびh3の3パターンの水位(h1>h2>h3)を示している。
【0023】
上述したように、水流発電装置10において、回転軸12は、該水流発電装置10が水路200に設置されたときに、該水路200における高さ方向に延びるように形成されている。また、各ブレード部11は、回転軸12の軸方向に延びた形状を有している。水流発電装置10がこのような構成を有することで、
図3に示すように、ブレード部11において水路200を流れる水Wと接触する部分の面積が、水路200における水位に応じて変化する。つまり、水路200における水位が高くなるほど、ブレード部11において水路200を流れる水Wと接触する部分の面積が大きくなる。
【0024】
(流量算出)
次に、制御装置20における、水路200を流れる水Wの流量の算出方法について説明する。水流発電装置10では、水路200の水流を受けることで各ブレード部11が回転し、それによって、発電部13で発電するための回転駆動力が得られる。そのため、水流発電装置10によって発電される電力(以下、単に「発電電力」と称する場合もある。)は、ブレード部11が受ける水流の流速(以下、単に「水流の流速」と称する場合もある。)と相関がある。つまり、水流の流速が高いほど発電電力が大きくなる。
【0025】
一方で、水路200の水位は常に一定ではなく変化する。そして、上述したとおり、ブレード部11において水路200を流れる水Wと接触する部分(以下、「水接触部」と称する場合もある。)の面積は、水路200における水位に応じて変化する。このとき、水流の流速が同一であっても、ブレード部11における水接触部の面積が変化すると、水流から得られるエネルギーが変化する。つまり、ブレード部11における水接触部の面積が大きくなるほど、水流から得られるエネルギーが増加する。その結果、発電電力が大きくなる。つまり、発電電力は、水流の流速のみならず、水路200における水位とも相関がある。
【0026】
図4は、発電電力と、水流の流速と、水路200における水位との相関関係を示す図である。
図4において、縦軸は発電電力Pを表しており、横軸は水流の流速Vfを表している。また、
図4における線L1~L3は、それぞれ、水路200の水位が異なる状態での水流の流速と発電電力との関係を示している。具体的には、
図4における線L1は、水路200の水位が
図3におけるh1であるときの水流の流速と発電電力との関係を示している。また、
図4における線L2は、水路200の水位が
図3におけるh2であるときの水流の流速と発電電力との関係を示している。
図4における線L3は、水路200の水位が
図3におけるh3であるときの水流の流速と発電電力との関係を示している。
【0027】
図4に示すように、水路200の水位が同一であれば、水流の流速が高いほど発電電力が大きくなる。また、
図4に示すように、水流の流速が同一であれば、水路200の水位が高いほど発電電力が大きくなる。この
図4に示すような、発電電力と、水流の流速と、水路200における水位との相関関係は、実験等に基づいて予め求めることができる。そして、流量計測システム1においては、予め求められたこれらの相関関係が関数またはマップとして制御装置20の記憶部に記憶されている。そして、制御装置20は、この記憶部に記憶された関数またはマップを用いて、水路200を流れる水Wの流量を算出する。
【0028】
図5は、制御装置20によって実行される、水路200を流れる水Wの流量を算出するときの算出フローである。本フローに示すように、制御装置20は、先ず水流発電装置10から供給される発電電力を取得する(S101)。次に、制御装置20は、水位計30から入力される水路200における水位を取得する(S102)。次に、制御装置20は、記憶部に記憶されている、発電電力と、水流の流速と、水路200における水位との相
関関係と、S101において取得された発電電力と、S102において取得された水路200における水位とに基づいて、水流の流速を算出する(S103)。次に、制御装置20は、S103において算出された水流の流速と、S102おいて取得された水路200における水位に基づいて、水路200を流れる水Wの流量を算出する(S104)。
【0029】
ここで、水路200における水位に応じて水路200における流水断面積は変化する。そこで、水路200における水位と、水路200における流水断面積との相関関係を実験等に基づいて予め求めておき、これらの相関関係を制御装置20の記憶部に記憶しておいてもよい。そして、S104においては、先ず、S102おいて取得された水路200における水位に基づいて水路200における流水断面積を算出してもよい。そして、S103において算出された水流の流速に流水断面積を乗算することで、水路200を流れる水Wの流量を算出してもよい。また、S103において算出された水流の流速に流水断面積を乗算した値に、予め定められた適切な係数をさらに乗算することで、水路200を流れる水Wの流量を算出してもよい。
【0030】
上記のように、本実施形態に係る流量計測システム1によれば、水流発電装置10によって発電された電力と、水路200における水位と、に基づいて、ブレード部11が受ける水流の流速を求めることができる。そして、この水流の流速と、水路200における水位とに基づいて、水路200を流れる水Wの流量を求めることができる。したがって、水位が変化する水路200における水Wの流量を計測することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、水流発電装置10においてブレード部11が、横断面形状が翼型形状であり、且つ、略コの字形の形状を有しているため、ブレード部11が水流に対して過度に大きな抵抗となることが抑制される。つまり、ブレード部11が水流の流速に与える影響を抑制することができる。したがって、水流発電装置10によって発電された電力に基づいて算出される水流の流速の算出精度を向上させることができる。その結果、水路200を流れる水Wの流量の算出精度も向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、上述したように、水流発電装置10において、回転軸12における上方側の端部のみが回転可能に支持されており、回転軸12の下端は水路200の底面に接続されてはいない。これによれば、回転軸12の下端が水路200の底面に接続されるまで回転軸が延びている場合に比べて、回転軸12が水流の流速に与える影響を抑制することができる。したがって、このような回転軸12の構成によっても、水流発電装置10によって発電された電力に基づいて算出される水流の流速の算出精度を向上させることができる。その結果、水路200を流れる水Wの流量の算出精度も向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る流量計測システム1では、上述したように、制御装置20は、水流発電装置10によって発電された電力によって作動することができる。そのため、水流発電装置10以外の電源を用いることなく、水路200を流れる水Wの流量を計測することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・流量計測システム、10・・・水流発電装置、11・・・ブレード部、12・・・回転軸、13・・・発電部、20・・・制御装置、30・・・水位計