(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、無線基地局、通信制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/44 20180101AFI20231201BHJP
H04W 28/16 20090101ALI20231201BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20231201BHJP
【FI】
H04W4/44
H04W28/16
H04W48/16 131
(21)【出願番号】P 2020026523
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 優
(72)【発明者】
【氏名】玉那覇 隆介
(72)【発明者】
【氏名】大井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】飯島 賢大
(72)【発明者】
【氏名】今井 直子
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204232(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0310293(US,A1)
【文献】特開2011-130252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される通信装置であって、
第1アクセスポイントが提供する第1通信方式の通信、又は第2アクセスポイントが提供する前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信する通信部と、
前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとのそれぞれに対して前記通信部に送信させる通信制御部とを備え、
前記通信制御部は、前記通信部に、
前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第1通信方式で、又は前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第2通信方式で、前記外部装置と通信させ、
前記通信部の通信が前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって前記通信部に通信させ、
前記通信部の通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信
優先度によって前記通信部に通信させる、
通信装置。
【請求項2】
前記第1通信方式は、セルラー方式であり、
前記第1アクセスポイントは、セルラー方式の通信をする基地局である、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第2通信方式は、Wi-Fiであり、
前記第2アクセスポイントは、Wi-Fiの通信をするアクセスポイントである、
請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
移動体に搭載される一以上の車載機器から前記移動体に係る移動体情報を取得する取得部を更に備え、
前記決定部は、前記取得部によって取得された前記移動体情報に基づいて、前記通信優先度を決定し、
前記通信制御部は、前記取得部によって取得された前記移動体情報を前記通信部に通信させる、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記移動体情報には、前記移動体の走行状況を示すステータス情報が含まれ、
前記決定部は、前記ステータス情報に基づいて、前記通信優先度を決定する、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイントは、前記通信優先度として前記通信部と通信する通信帯域を割り当て、
前記通信部は、前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイントによって割り当てられた前記通信帯域によって前記外部装置と前記移動体情報について通信する、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信制御部は、前記通信部の通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度を示す情報を記憶部に記憶させる、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信制御部は、前記通信部の通信が前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度を示す情報を記憶部に記憶させる、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれかに記載の通信装置と、
前記第1アクセスポイントと、
前記第2アクセスポイントと
を備える通信システム。
【請求項10】
移動体から通信優先度を示す移動体情報を取得する取得部と、
移動体の移動に関する情報を取得し、前記通信優先度の引継ぎ先の他の基地局を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記通信優先度を、前記取得部によって取得された前記移動体情報の応答として前記移動体に出力し、前記決定部により決定された前記通信優先度を前記他の基地局に出力する出力部と、
を備える無線基地局。
【請求項11】
前記取得部は、前記出力部により出力された前記通信優先度に係る前記他の基地局の応答を取得し、
前記決定部は、前記取得部により取得された前記応答が、前記通信優先度による通信が可能であることを示さない場合、先に決定した前記通信優先度よりも低い通信優先度を更に決定し、
前記出力部は、前記決定部により更に決定された前記通信優先度を、前記移動体に出力し、又は前記他の基地局に出力する、
請求項10に記載の無線基地局。
【請求項12】
移動体に搭載される通信装置を実現するコンピュータが、
第1アクセスポイントが提供する第1通信方式の通信、又は第2アクセスポイントが提供する前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信し、
前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定し、
決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとのそれぞれに対して送信させ、
前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第1通信方式で、又は前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第2通信方式で、前記外部装置と通信させ、
前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって通信させ、
通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信
優先度によって通信させる、
通信制御方法。
【請求項13】
移動体に搭載される通信装置を実現するコンピュータに、
第1アクセスポイントが提供する第1通信方式の通信、又は第2アクセスポイントが提供する前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信させ、
前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定させ、
決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとのそれぞれに対して送信させ、
前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第1通信方式で、又は前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第2通信方式で、前記外部装置と通信させ、
通信が前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって通信させ、
通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信
優先度によって通信させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システム、無線基地局、通信制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ通信サービスの利用状況に応じて、通信優先度を決定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、車両を自動的に制御することについて研究が進められている。車両を自動的に制御するには、車両の制御に係る大容量の情報を、継続して高速、且つ低遅延の通信によって優先的に送受信することが求められる。また、車両は、データ通信サービスが提供するネットワークの範囲内を移動するため、車両は、車両の位置において利用可能なネットワーク毎に通信優先度を決定して、優先的に通信することが求められる。しかしながら、従来の技術では、車両が用いる通信に応じた通信優先度を都度決定することが困難であった。
【0005】
本発明の態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、車両が用いる通信に応じた通信優先度を決定することができる通信装置、通信システム、無線基地局、通信制御方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る通信装置、通信システム、無線基地局、通信制御方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1)この発明の一態様の通信装置は、移動体に搭載される通信装置であって、第1アクセスポイントが提供する第1通信方式の通信、又は第2アクセスポイントが提供する前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信する通信部と、前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定する決定部と、前記決定部により決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとのそれぞれに対して前記通信部に送信させる通信制御部とを備え、前記通信制御部は、前記通信部に、前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第1通信方式で、又は前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第2通信方式で、前記外部装置と通信させ、前記通信部の通信が前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって前記通信部に通信させ、前記通信部の通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信方式によって前記通信部に通信させるものである。
【0007】
(2)の態様は、上記(1)の態様に係る通信装置において、前記第1通信方式は、セルラー方式であり、前記第1アクセスポイントは、セルラー方式の通信をする基地局であるものである。
【0008】
(3)の態様は、上記(1)または(2)の態様に係る通信装置において、前記第2通信方式は、Wi-Fiであり、前記第2アクセスポイントは、Wi-Fiの通信をするアクセスポイントであるものである。
【0009】
(4)の態様は、上記(1)から(3)のいずれかの態様に係る通信装置が、移動体に搭載される一以上の車載機器から前記移動体に係る移動体情報を取得する取得部を更に備え、前記決定部は、前記取得部によって取得された前記移動体情報に基づいて、前記通信優先度を決定し、前記通信制御部は、前記取得部によって取得された前記移動体情報を前記通信部に通信させるものである。
【0010】
(5)の態様は、上記(1)から(4)のいずれかの態様に係る通信装置において、前記移動体情報には、前記移動体の走行状況を示すステータス情報が含まれ、前記決定部は、前記ステータス情報に基づいて、前記通信優先度を決定するものである。
【0011】
(6)の態様は、上記(1)から(5)のいずれかの態様に係る通信装置において、前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイントは、前記通信優先度として前記通信部と通信する通信帯域を割り当て、前記通信部は、前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイントによって割り当てられた前記通信帯域によって前記外部装置と前記移動体情報について通信するものである。
【0012】
(7)の態様は、上記(1)から(6)のいずれかの態様に係る通信装置において、前記通信制御部は、前記通信部の通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度を示す情報を記憶部に記憶させるものである。
【0013】
(8)の態様は、上記(1)から(7)のいずれかの態様に係る通信装置において、前記通信制御部は、前記通信部の通信が前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度を示す情報を記憶部に記憶させるものである。
【0014】
(9)この発明の他の態様の通信システムは、第1から第8の何れかの態様に係る通信装置と、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとを備えるものである。
【0015】
(10)この発明の他の態様の無線基地局は、移動体から通信優先度を示す移動体情報を取得する取得部と、移動体の移動に関する情報を取得し、前記通信優先度の引継ぎ先の他の基地局を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記通信優先度を、前記取得部によって取得された前記移動体情報の応答として前記移動体に出力し、前記決定部により決定された前記通信優先度を前記他の基地局に出力する出力部と、を備えるものである。
【0016】
(11)の態様は、上記(10)の態様に係る無線基地局において、前記取得部は、前記出力部により出力された前記通信優先度に係る前記他の基地局の応答を取得し、前記決定部は、前記取得部により取得された前記応答が、前記通信優先度による通信が可能であることを示さない場合、先に決定した前記通信優先度よりも低い通信優先度を更に決定し、前記出力部は、前記決定部により更に決定された前記通信優先度を、前記移動体に出力し、又は前記他の基地局に出力するものである。
【0017】
(12)この発明の他の態様の通信制御方法は、移動体に搭載される通信装置を実現するコンピュータが、第1アクセスポイントが提供する第1通信方式の通信、又は第2アクセスポイントが提供する前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信し、前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定し、決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとのそれぞれに対して送信させ、前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第1通信方式で、又は前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第2通信方式で、前記外部装置と通信させ、前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって通信させ、通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信方式によって通信させるものである。
【0018】
(13)この発明の他の態様のプログラムは、移動体に搭載される通信装置を実現するコンピュータに、第1アクセスポイントが提供する第1通信方式の通信、又は第2アクセスポイントが提供する前記第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信を用いて外部装置と通信させ、前記第1アクセスポイントおよび/または前記第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定させ、決定された前記通信優先度を示す情報と前記移動体に関する移動体情報とを含めた情報を、前記第1アクセスポイントと、前記第2アクセスポイントとのそれぞれに対して送信させ、前記第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第1通信方式で、又は前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により前記第2通信方式で、前記外部装置と通信させ、通信が前記第1アクセスポイントの通信から、前記第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって通信させ、通信が前記第2アクセスポイントの通信から、前記第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、前記第1アクセスポイントにより決定された通信方式によって通信させるものである。
【発明の効果】
【0019】
(1)~(13)の態様によれば、車両が用いる通信に応じた通信優先度を決定することができる。
【0020】
(5)の態様によれば、車両の状況に応じて優先的に通信しやすくすることができる。
【0021】
(6)の態様によれば、車両に係る情報を帯域保証のある帯域によって通信しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の通信装置を備えた車両を含む通信システム1の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の無線基地局10の構成図である。
【
図5】第1実施形態の通信装置100を含む車両Mの構成図である。
【
図6】履歴情報262の内容の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態における通信システム1により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態における通信システム1により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】第1決定部32が通信帯域を決定する場合に用いられる参照情報52aの内容の一例を示す図である。
【
図10】第2実施形態における通信システム1により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の通信装置、通信システム、無線基地局、通信制御方法、及びプログラムの第1実施形態について説明する。以下では、通信装置が搭載された車両を含む通信システムについて説明するものとする。車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の通信装置を備えた車両を含む通信システム1の一例を示す図である。通信システム1は、例えば、一以上の無線基地局10と、車両Mに搭載された通信装置100とを備える。以下、通信システム1が一つの無線基地局10を備える場合について説明する。
【0025】
無線基地局10は、無線通信により所定の通信範囲A1に存在する車両Mや、その他の通信端末装置と通信を行う。所定の通信範囲A1は、例えば、通信規格等により設定され、無線基地局10を中心として数百[m]~数キロ[m]程度の範囲である。無線基地局10が通信範囲A1において提供する通信網は、例えば、セルラー網である。セルラー網は、例えば、第三世代移動体通信網(3G)、第四世代移動体通信網(以下、4G、Long term evolution:LTE(登録商標))、第五世代移動体通信網(以下、5G)、又は第六世代以降の移動体通信網等であってもよい。以下、無線基地局10が通信範囲A1において提供する通信網が、4Gと5Gとの2種類の移動体通信網であるものとする。4Gには、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)が含まれてよい。
【0026】
また、無線基地局10は、通信範囲A1内に存在する複数のアクセスポイントAPと有線CAで接続されている。
図1の例では、通信範囲A1内には、三つのアクセスポイントAP-1~AP-3が存在し、それぞれが有線CA-1~CA-3で無線基地局10と接続されているものとする。符号の末尾のハイフン以下数字は、いずれのアクセスポイントAPに係る構成を区別するための識別子であるものとする。いずれのアクセスポイントAPに係る構成であるかを区別しない場合、符号の末尾のハイフン以下数字を省略する。有線CA-1~CA-3は、例えば、無線通信よりも高速な通信が可能な光ファイバケーブル等である。なお、無線基地局10とアクセスポイントAP-1~AP-3とは、少なくとも一部の区間が無線通信で接続されていてもよい。
【0027】
アクセスポイントAP-1~AP-3のそれぞれは、例えば、送受信用のアンテナ(不図示)や通信制御装置(不図示)等を備える。無線基地局10の通信範囲A1よりも狭い通信範囲A2-1~A2-3において、エリア内の車両Mや、その他の通信端末と通信を行う。また、通信範囲A2-1~A2-3のそれぞれは、Sセル(Small Cell)の一例である。Sセルでは、U-plane信号が送受信され、特に音声データ以外のユーザデータが送受信される。Sセルは、Pセル内に複数設置されてよい。車両Mは、複数のSセルと接続することができる。また、Sセルの通信範囲は、他のSセルの通信範囲と重なることもある。通信範囲が重なる場合には、各Sセルの周波数帯域を異ならせることで、各Sセルから送信される電波の干渉を抑制することができる。
【0028】
アクセスポイントAP-1~AP-3の通信は、例えば、Wi-Fi(登録商標)に準拠した通信方式の通信である。アクセスポイントAP-1~AP-3のそれぞれは、通信制御装置の制御により、例えば、Wi-Fiに準拠した通信方式を用いて車両Mと通信を行う。Wi-Fi網は、例えば、各個人または各企業等が自身のネットワークを自由に使用することができる電波通信網である。Wi-Fiに準拠した通信方式での通信規格は、電波の到達範囲が非常に狭く、Wi-Fiのアンテナ位置から約10~100[m]程度での利用に限定される。また、Wi-Fi網では、所定の周波数帯域(例えば、5[GHz]帯、2.4[GHz]帯)で通信が行われる。
【0029】
車両Mに搭載された通信装置100は、無線基地局10の通信範囲A1内に存在する場合、又はアクセスポイントAPの通信範囲A2内に存在する場合に、通信範囲内に存在する無線基地局10およびアクセスポイントAPとの通信状況を取得する。そして、通信装置100は、取得した通信状況に基づいて通信先を決定して通信を行う。
【0030】
また、通信装置100は、複数のアクセスポイントAPの通信範囲内に存在する場合には、それぞれのアクセスポイント及び無線基地局10と接続することで、異なる周波数帯の電波を用いたCA(Carrier Aggregation)制御を行う。これにより、通信装置100は、帯域幅の拡張を行い、スループットの向上を図ることができる。セルラー網等の移動体通信網の通信をする無線基地局10は、「第1アクセスポイント」の一例であり、アクセスポイントAPは、「第2アクセスポイント」の一例であり、移動体通信網を介したセルラー方式の通信は、「第1通信方式の通信」の一例であり、Wi-Fi網を介した通信は、「第2通信方式の通信」の一例である。
【0031】
図1に示す通信システムにおいて、アクセスポイントAP-1~AP-3は、同一の無線基地局10と接続されているが、他の基地局とも接続して複数の基地局でアクセスポイントが管理されてもよい。このようなDC(Dual Connectivity)機能にて複数の基地局を経由してデータの送受信を行うことができる。
【0032】
通信装置100は、通信対象の外部装置TAと車両情報に係る通信に際し、無線基地局10またはアクセスポイントAPと通信を行う。通信装置100はこの無線基地局10またはアクセスポイントAPに当該通信に関する通信優先度を要求する。通信装置100が要求した通信優先度に基づいて、通信優先度を決定される。通信装置100は、無線基地局10やアクセスポイントAPによって要求した通信優先度による外部装置TAとの通信が受け入れられた場合、当該通信優先度によって外部装置TAと少なくとも無線基地局10またはアクセスポイントAPの少なくとも一方を用いて車両情報に係る通信を行う。例えば、外部装置TAは、通信装置100から車両情報を取得して車両Mへ情報を送信するアプリケーションサーバである。具体的には、外部装置TAは、一以上の車両Mから車両情報を受信して、車両Mの走行支援に関する情報を生成し車両Mへ送信する運転支援システムを構成する装置である。外部装置TAは、有線接続によってコアネットワークcNWに接続されている。また、外部装置TAは、車両Mの外部に設けられる。
【0033】
車両情報は、例えば、車両Mに搭載された各種車両センサの検出結果や、車両Mに搭載されたカメラが車両Mの周囲環境を撮像し、生成した画像データや、車両Mに搭載されたコンテンツ再生装置等において再生されるコンテンツ情報、車両Mの乗員の状態に関する情報(特に生体情報)等である。なお、これらの車両情報は、一例であって、これに限られず、車両でやりとりされる情報であって車両外部の外部装置TAとやりとりされる情報であればよい。車両情報は、「移動体情報」の一例である。
【0034】
ここで、車両Mは、通信範囲A1内を走行した後、通信範囲A2内を走行したりする。
図1において、車両Mは、通信範囲A1内の経路RTを走行する場合、位置P1において通信範囲A2-1から通信範囲A1に移動し、位置P2において通信範囲A1から通信範囲A2-2に移動し、位置P3において通信範囲A2-2から通信範囲A1に移動し、位置P4において通信範囲A1から通信範囲A2-3に移動し、位置P5において通信範囲A2-3から通信範囲A1に移動する。このように、車両Mが通信範囲A1や通信範囲A2を移動すると、通信装置100は、移動先の通信範囲において通信優先度を決定する処理、及び決定した通信優先度を無線基地局10やアクセスポイントAPに要求する処理を、都度行うこととなり、手間である。特に車両Mが外部装置TAと車両の走行制御に関する情報を送受信していた場合に、走行中に優先度が接続され通信相手(無線基地局10、アクセスポイントAP)ごとに変わることは好ましくない。
【0035】
通信装置100は、車両Mが存在する通信範囲が変化しても、簡便に無線基地局10やアクセスポイントAPによって受け入れられた通信優先度によって外部装置TAと車両情報に係る通信を行う。通信装置100の処理の詳細については、後述する。
【0036】
次に、無線基地局10の構成と、通信装置100が搭載された車両Mの構成とについて具体的に説明する。
【0037】
[無線基地局]
図2は、第1実施形態の無線基地局10の構成図である。無線基地局10は、例えばeNodeBやgNodeBなどの通信事業者が提供する無線通信基地局である。無線基地局10は、例えば、第1通信部20と、通信品質測定部30と、第1決定部32と、第1通信制御部34と、記憶部50とを備える。なお、これらの機能部を全て無線基地局10が備える構成に限られず、これらの一部、又は全部(第1通信部20を除く)は、無線基地局10を管理する装置(不図示)が備えていてもよい。
【0038】
第1決定部32と第1通信制御部34とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部50に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶部50にインストールされてもよい。
【0039】
記憶部50は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部50には、例えば、参照情報52と、経路情報54と、プロセッサによって読み出されて実行されるプログラム、その他各種情報等が格納される。
【0040】
図3は、参照情報52の内容の一例を示す図である。参照情報52は、第1決定部32が、送信データの通信優先度を決定する際に用いられる情報である。参照情報52は、例えば、送信データの送信元機器を識別可能な識別情報と、送信元機器の種別を示す情報と、送信元機器が送信する送信データの種別を示す情報と、送信データの通信優先度を示す情報とが互いに対応付けられた情報である。送信元機器を識別可能な識別情報は、例えば、無線基地局10が提供する無線通信を利用する際に用いられるSIM(Subscriber Identity Module)カードに記録される識別情報や、Wi-Fi網の無線通信を利用する際に用いられる端末ID等である。以下、識別情報が、SIMカードに記録される識別情報と、端末IDとの両方である場合について説明する。参照情報52は、例えば、通信システム1を提供する事業者によって予め定められている。
【0041】
図3において、送信元機器の種別とは、例えば、車両Mや車両Mに搭載される車載機器や通信装置100、スマートフォン、ゲーム機器等である。送信元機器が車両Mや車両Mに搭載される車載機器や通信装置100である場合、送信元機器が送信する送信データとは、例えば、車両情報である。送信元機器がスマートフォンである場合、送信元機器が送信する送信データとは、例えば、通話の音声を示す通話情報やスマートフォンにおいて再生されるコンテンツ情報である。送信元機器がゲーム機器である場合、送信元機器が送信する送信データとは、例えば、ゲームに用いられる各種データ等のゲーム情報である。
【0042】
また、
図3において、送信データにはそれぞれ通信優先度が対応付けられている。通信優先度は、例えば、無線通信のチャネルに係るQoS(Quality of Service)において用いられる通信優先度であって、MAC(Media Access Control)フレームのVLAN(Virtual LAN)タグ内の3ビットのデータによって表されるCoS(Class of Service)や、ISL(Inter-Switch Link)ヘッダ内の「ユーザ定義」フィールドの下位3ビットの情報を使用して8段階によって表されるISL方式のCoSや、IP(Internet Protocol)ヘッダ内の「ToS(Type of Service)」フィールドの3ビットの情報(IP Precedence)を使用して8段階によって表されるToSや、IPヘッダ内の「ToS」フィールドを「DS(DiffServ)」フィールドとして再定義した際の、6ビットの情報を使用し、64段階によって表されるDSCP(DiffServ Code Point)等によって実現される。
【0043】
以降の説明では、通信優先度が「1」~「9」の値によって示されるものとする。通信優先度の値が大きいほど、他の通信に比して優先的に通信が行われる。例えば、車両Mの制御に用いられる車両情報には、他の車両情報に比して、高い通信優先度(この場合「8」)が対応付けられ、車両Mの制御には用いられないものの、コンテンツ情報ではない車両情報には、車両Mの制御に用いられる車両情報に比して低く、且つコンテンツ情報よりは高い通信優先度(この場合「6」)が対応付けられ、車両情報のうちコンテンツ情報には、他の車両情報に比して低い通信優先度が(この場合「3」)が対応付けられる。
【0044】
また、通話情報には、通信優先度「8」が対応付けられ、スマートフォンにおいて再生されるコンテンツ情報には、通信優先度「4」が対応付けられ、ゲーム情報には、通信優先度「2」が対応付けられる。なお、これらの通信優先度は一例であって、これに限られない。
【0045】
なお、上述では、移動体通信網を用いた通信、又はWi-Fi網を用いた通信の通信優先度を決定する際に、同一の参照情報52が用いられるものとして説明したが、これに限られない。参照情報52は、例えば、通信網毎に定められていてもよい。例えば、移動体通信網に係る参照情報52と、Wi-Fi網に係る参照情報52とでは、同一(同種)の情報に、互いに異なる通信優先度が付されていてもよい。移動体通信網についての参照情報52は、例えば、移動体通信網を提供する事業者によって予め定められ、Wi-Fi網についての参照情報52は、例えば、Wi-Fi網を提供する事業者によって予め定められる。以降の説明では、第1決定部32が、同一の参照情報52に基づいて、送信データ毎に通信優先度が定められる場合について説明する。
【0046】
図4は、経路情報54の内容の一例を示す図である。経路情報54は、第1決定部32が、無線基地局10が通信範囲A1において提供する移動体通信網(この場合、4G、及び5G)のうち、いずれの移動体通信網によって送信データを通信させるかを決定する際に用いられる情報である。経路情報54は、例えば、無線基地局10が提供する移動体通信網を示す情報と、通信優先度を示す情報とが互いに対応付けられた情報である。
【0047】
図4に示す経路情報54に基づいて、無線基地局10は、4Gの移動体通信網において、「1」~「4」の通信優先度が対応付けられた送信データに係る通信を行わせる。また、無線基地局10は、4Gの移動体通信網のうち、帯域幅が狭い通信帯域では、「1」~「2」の通信優先度が対応付けられた送信データに係る通信を行わせ、帯域幅が広い通信帯域では、「3」~「4」の通信優先度が対応付けられた送信データに係る通信を行わせる。無線基地局10は、5Gの移動体通信網において、「5」~「8」の通信優先度が対応付けられた送信データに係る通信を行わせる。また、無線基地局10は、5Gの移動体通信網のうち、帯域幅が広い通信帯域では、「5」~「6」の通信優先度が対応付けられた送信データに係る通信を行わせ、帯域幅が狭い通信帯域では、「7」~「8」の通信優先度が対応付けられた送信データに係る通信を行わせる。
【0048】
なお、
図4の経路情報54では、各移動体通信網に割り当てられる通信優先度が一意に定められている場合について説明したが、これに限られない。各移動体通信網に割り当てられる通信優先度は、例えば、閾値等によって範囲が定められるものであってもよい。また、経路情報54は、無線基地局10毎に異なる情報であってもよい。また、無線基地局10が通信範囲A1において提供する移動体通信網が一意(例えば、4G、又は5Gのいずれか)に定まる場合、第1決定部32は、当該一意に定まる移動体通信網によって送信データを通信させると決定し、記憶部50には経路情報54が記憶されていなくてもよい。
【0049】
図2に戻り、第1通信部20は、第1セルラー通信部22と、第1狭範囲通信部24とを備える。第1セルラー通信部22は、第1通信制御部34の制御に基づいて、無線基地局10のアンテナANTを介して通信範囲A1内に存在する車両M(通信装置100)と無線通信を行う。第1狭範囲通信部24は、第1通信制御部34の制御に基づいて、有線CAによって接続されるアクセスポイントAPを介して通信範囲A2内に存在する車両M(通信装置100)と無線通信を行う。ここで、狭範囲とは第1セルラー通信部22が提供する範囲よりも必ずしも小さい範囲である必要はない。第1狭範囲通信部24はアクセスポイントAPとして、セルラー通信のスモールセルを制御してもよく、またはアクセスポイントAPとしてWi-Fiを制御してもよい。以降の説明では第1狭範囲通信部24がアクセスポイントAPとしてWi-Fi網を制御する場合を説明する。
【0050】
通信品質測定部30は、無線基地局10が通信範囲A1において提供する移動体通信網の通信品質を測定する。また、通信品質測定部30は、アクセスポイントAPが通信範囲A2において提供するWi-Fi網の通信品質をそれぞれ測定する。通信品質には、例えば、通信のレイテンシに関する情報が含まれる。レイテンシとは、データ通信における指標の一つである。レイテンシには、例えば、通信の遅延時間が含まれる。また、通信品質は、スループット、通信速度、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数等であってもよい。
【0051】
第1決定部32は、通信品質測定部30によって測定された移動体通信網の通信品質を示す情報と、Wi-Fi網の通信品質を示す情報とに基づいて、移動体通信網と、Wi-Fi網とのうち、いずれの通信網によって送信データを通信させるかを決定する。第1決定部32は、例えば、通信範囲A1よりも通信範囲A2の通信品質の方が良い場合、車両Mが通信範囲A2内に存在するものとみなし、Wi-Fi網によって通信すると決定する。また、第1決定部32は、通信範囲A2よりも通信範囲A1の通信品質の方が良い場合、車両Mが通信範囲A1内に存在するものとみなし、移動体通信網によって通信すると決定する。
【0052】
なお、第1決定部32は、通信装置100の要求する通信網を用いて通信すると決定してもよい。以下、第1決定部32が、通信装置100の要求する通信網を用いて通信するものとして説明する。
【0053】
また、第1決定部32は、送信元機器が送信した送信データと、参照情報52と、通信すると決定した通信網の通信品質を示す情報とに基づいて、送信データに付される通信優先度を決定する。第1決定部32は、通信すると決定した通信網が移動体通信網である場合、決定した通信優先度と、経路情報54とに基づいて、当該送信データに係る通信を4G、又は5Gの移動体通信網のうち、いずれの移動体通信網によって行わせるかを決定する。
【0054】
ここで、後述する通信装置100は、参照情報52において予め定められた通信優先度とは異なる通信優先度によって、外部装置TAと送信データについて通信することを無線基地局10に要求する場合がある。異なる通信優先度とは、例えば、参照情報52において予め定められた当該送信データに係る通信優先度よりも高い通信優先度である。第1決定部32は、通信品質を示す情報に基づいて、通信装置100が要求する通信優先度によって送信データについて通信を行った場合に、通信網における他の通信に影響を及ぼさない場合には、第2通信部110の要求に応じた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定する。また、第1決定部32は、通信網における他の通信に影響を及ぼす場合には、参照情報52において予め定められた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定する。
【0055】
他の通信に影響を及ぼさないことには、例えば、当該送信データについて通信装置100と外部装置TAとが通信を行う場合に、レイテンシ、スループット、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数等が所定の閾値以下であることや、通信速度等が所定の閾値以上であることが含まれる。他の通信に影響を及ぼすことには、例えば、当該送信データについて通信装置100と外部装置TAとが通信を行う場合に、レイテンシ、トラフィック量、エラーパケットの数、帯域使用率等が所定の閾値より大きいことや、通信速度等が所定の閾値未満であることが含まれる。
【0056】
なお、レイテンシ、スループット、通信速度、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数等には、それぞれ、所定の閾値が設定されており、第1決定部32は、通信品質測定部30の測定結果と、それぞれの所定の閾値とを比較して、他の通信に影響を及ぼすか否かを判定してもよい。この場合、第1決定部32は、通信品質測定部30の測定結果のうち、レイテンシ、スループット、通信速度、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数の、いずれか一つについて他の通信に影響を及ぼすと判定した場合に、参照情報52において予め定められた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定してもよく、これらのうち、所定の数以上の測定結果について他の通信に影響を及ぼすと判定した場合に、参照情報52において予め定められた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定してもよい。
【0057】
また、第1決定部32は、通信品質測定部30の測定結果であるレイテンシ、スループット、通信速度、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数のうち、予め定められた組合せ(例えば、スループットとエラーパケットの数等)について、他の通信に影響を及ぼすと判定した場合に、参照情報52において予め定められた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定してもよい。
【0058】
第1通信制御部34は、第1決定部32の決定に基づく移動体通信網を用いた通信によって送信元機器が送信した送信データに係る通信を第1通信部20に行わせる。具体的には、第1通信制御部34は、移動体通信網を用いた通信で、第1決定部32の決定に基づく通信優先度のQoSの優先制御を行い、送信元機器と対象機器とを通信させることを示す決定結果を含めた情報を、第1セルラー通信部22によって送信元機器に送信させる。または、第1通信制御部34は、Wi-Fi網を用いた通信で、第1決定部32の決定に基づく通信優先度のQoSの優先度制御を行い、送信元機器と対象機器とを通信させることを示す決定結果を含めた情報を、第1狭範囲通信部24によって送信元機器に送信させる。
【0059】
そして、第1通信制御部34は、送信元機器が無線基地局10、又はアクセスポイントAPの応答に応じて送信データに付した通信優先度に基づいて、絶対優先方式や、重み付きラウンドロビン方式や、遅延保証ラウンドロビン方式や、シェービング等によって送信データに係る通信を第1通信部20に行わせる。絶対優先方式は、通信優先度が高い送信データは、通信優先度が低い送信データよりも絶対的に優先されるQoSの優先制御方式である。重み付きラウンドロビン方式は、それぞれの通信優先度に設定されている送信データ数の比率又は最大送信データ数に従って送信データを送信するQoSの優先制御方式である。遅延保証ラウンドロビン方式は、それぞれの通信優先度に設定されている最大送信遅延時間に従って送信データを送信するQoSの優先制御方式である。
【0060】
なお、第1通信制御部34は、車両Mから外部装置TAまでの通信経路のうち、少なくとも一部において、第1決定部32が決定した通信優先度によって送信データに係る通信を行うものであってもよい。
【0061】
[車載装置]
次に、通信装置100を含む車両Mについて説明する。
図5は、第1実施形態の通信装置100を含む車両Mの構成図である。
図5の例では、主に第1実施形態の通信システム1で実行される処理で用いられる車両Mの構成部分を中心として説明する。車両Mは、例えば、通信装置100と、車載装置200と、記憶部260とを備える。
【0062】
車載装置200は、例えば、車両センサ210と、駆動制御装置220と、運転制御装置230と、ナビゲーション装置240とを備える。車両センサ210と、駆動制御装置220と、運転制御装置230と、ナビゲーション装置240とは、「車載機器」の一例である。
【0063】
車両センサ210は、例えば、アクセル開度センサ、車速センサ、ブレーキ踏量センサ等を含む。アクセル開度センサは、車両Mの運転者による加速指示を受け付けるアクセルペダル(操作子の一例)に取り付けられ、アクセルペダルの操作量を検出し、アクセル開度として駆動制御装置220に出力する。車速センサは、例えば、各車輪に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して車両Mの速度(車速)を導出し、導出した車速を駆動制御装置220に出力する。ブレーキ踏量センサは、運転者による減速または停止指示を受け付けるブレーキペダル(操作子の一例)に取り付けられ、ブレーキペダルの操作量を検出し、ブレーキ踏量として駆動制御装置220に出力する。
【0064】
また、車両センサ210は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0065】
また、車両センサ210は、例えば、カメラやレーダ装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、物体認識装置等を含んでいてもよい。これらは、車両Mの周辺情報を検出するための構成要素である。カメラは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラは、ステレオカメラであってもよい。カメラは、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラは、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラは、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。
【0066】
レーダ装置は、車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置は、例えば、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0067】
LIDARは、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDARは、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDARは、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0068】
物体認識装置は、上述したカメラ、レーダ装置、およびLIDARのうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、車両Mの周辺の物体の位置、種類、速度等を認識する。物体認識装置は、認識結果を運転制御装置230に出力する。また、物体認識装置は、カメラ、レーダ装置、およびLIDARの検出結果をそのまま運転制御装置230に出力してよい。この場合、車両Mから物体認識装置が省略されてよい。
【0069】
駆動制御装置220は、車両Mに駆動力等を与えて車両Mを走行させるための装置である。駆動制御装置220は、例えば、車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する走行駆動力出力装置と、所定の制動操作に応じたブレーキトルクを各車輪に出力させるブレーキ装置と、転舵輪の向きを変更させるステアリング装置とを含む。
【0070】
走行駆動力出力装置は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。運転制御装置230から入力される情報、或いは運転操作子(ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル等)から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。ブレーキ装置は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、運転制御装置230から入力される情報、或いは運転操作子から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置は、運転操作子に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置は、上記説明した構成に限らず、運転制御装置230から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0071】
ステアリング装置は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、運転制御装置230から入力される情報、或いは運転操作子から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0072】
運転制御装置230は、例えば、車両Mの自動運転(自律運転)制御や運転支援制御等を行う。自動運転制御とは、例えば、車両Mの乗員による運転操作に依らずに、車両Mの操舵または速度のうち一方または双方を制御することである。また、運転支援制御は、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control System)やLKAS(Lane Keeping Assistance System)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)等の乗員の運転操作を支援する運転制御である。例えば、運転制御装置230は、車両センサ210により検出された車両Mの周辺状況や、車両Mの挙動、乗員からの制御指示に対応する運転制御内容を生成し、生成した運転制御内容を駆動制御装置220に出力して各装置を駆動させる。ここで、運転制御装置230は、外部装置TAから指令に基づいて自動運転制御や運転支援制御等実行してもよく、外部装置TAから取得した情報を参照して自動運転制御や運転支援制御等を実行してもよい。
【0073】
ナビゲーション装置240は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機と、ナビHMI(Human Machine Interface)と、経路決定部とを備える。ナビゲーション装置240は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に地図情報を保持している。GNSS受信機は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両Mに搭載された車両センサ210の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ここで、ナビゲーション装置240は、外部装置TAから指令に基づいて実行してもよく、外部装置TAから取得した情報を参照して実行してもよい。
【0074】
ナビHMIは、ディスプレイ、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。ナビHMIは、画像や音声等を用いて乗員に目的地等を設定させたり、目的地までの走行経路を乗員に案内する。経路決定部は、例えば、GNSS受信機により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMIを用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、地図情報を参照して決定する。地図情報は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。地図情報は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。また、地図情報は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報、車線の種別の情報等を含んでもよい。また、地図情報には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等が含まれてよい。地図情報は、通信装置100が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。ナビゲーション装置240は、地図上経路に基づいて、表示部による地図画像表示やスピーカ(不図示)による音声出力によって、経路案内等を行う。
【0075】
なお、車載装置200には、上述した各装置に加えて、例えば、オーディオ装置、バッテリ管理装置、キーレスエントリシステム、サスペンションシステム、エアバッグ装置、ドアロック装置、ドア開閉装置、窓の開閉装置、シート位置の制御装置、ルームミラーの角度位置制御装置、車両内外の照明制御装置、ワイパーまたはデフォッガー用制御装置、方向指示灯用制御装置、および空調装置のうち少なくとも一つが含まれてよい。ここで、車載装置200は、外部装置TAから指令に基づいて実行してもよく、外部装置TAから取得した情報を参照してそれぞれの機能を実行してもよい。例えば、オーディオ装置は外部装置TAに楽曲や放送情報などを外部装置TAに要求し、外部装置TAから当該楽曲や放送情報などのコンテンツ情報を取得して出力してもよい。この場合、運転制御装置230は、他の外部装置TAと送受信する際の通信優先度と比較して相対的に小さい通信優先度を設定することが好ましい。
【0076】
通信装置100は、例えば、第2通信部110と、取得部120と、第2決定部130と、第2通信制御部140とを備える。通信装置100の各構成要素は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部を含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部260に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶部260にインストールされてもよい。通信装置100の構成要素の一部または全部は、TCU(Telematics Control Unit)の一例である。
【0077】
なお、通信装置100は、上述した機能部のうち、一部を備えるものであってもよい。例えば、第2通信部110は、通信装置100の外部にあるスマートフォン等の通信機能を備えた端末装置が備えるものであってもよい。この場合、第2通信制御部140は、信端末が備える第2通信部110の動作を制御する。
【0078】
記憶部260は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAM等により実現される。記憶部260には、例えば、履歴情報262や、プロセッサによって読み出されて実行されるプログラム、その他各種情報等が格納される。
【0079】
図6は、履歴情報262の内容の一例を示す図である。上述したように、通信装置100は、無線基地局10やアクセスポイントAPによって要求した通信優先度による外部装置TAとの通信が受け入れられた場合、当該通信優先度によって外部装置TAと車両情報に係る通信を行う。履歴情報262は、例えば、通信網の識別情報と、これまでに無線基地局10、又はアクセスポイントAPに受け入れられた通信優先度を示す情報とが互いに対応付けられた情報である。通信網の識別情報とは、例えば、無線基地局10が提供する移動体通信網を識別可能な情報や、Wi-Fi網を識別可能な情報(例えば、SSID(Service Set Identifier)等)である。
【0080】
第2通信部110は、第2セルラー通信部112と、第2狭範囲通信部114とを備える。第2セルラー通信部112は、第2通信制御部140の制御に基づいて、セルラー網を利用して、無線基地局10や、車両Mの周辺に存在する他車両と通信する。セルラー網は、無線基地局10が通信範囲A1において提供する3G、4G、又は5G等の移動体通信網である。第2狭範囲通信部114は、第2通信制御部140の制御に基づいて、Wi-Fi網を利用して、アクセスポイントAPや、車両Mの周辺に存在する他車両と通信する。Wi-Fi網は、アクセスポイントAPが通信範囲A2において提供する通信網である。
【0081】
取得部120は、例えば、車載装置200が備える各車載機器から得られる情報を車両情報として取得する。車両情報には、例えば、車両センサ210により検出される情報や、駆動制御装置220による制御データ、運転制御装置230による制御データ、ナビゲーション装置240によるナビゲーション情報(例えば、目的地情報や目的地までの経路案内情報)等が含まれる。
【0082】
第2決定部130は、第2セルラー通信部112による移動体通信網を介した無線基地局10との通信結果と、第2狭範囲通信部114によるWi-Fi網を介したアクセスポイントAPとの通信結果と、履歴情報262とに基づいて、取得部120によって取得された車両情報に付す通信優先度を決定する。
【0083】
まず、第2決定部130は、移動体通信網の通信品質と、Wi-Fi網の通信品質とに基づいて、移動体通信網と、Wi-Fi網とのうち、いずれの通信網によって送信データを通信させるかを決定する。第2決定部130は、例えば、第2セルラー通信部112による移動体通信網を介した無線基地局10との通信結果により移動体通信網の通信品質を取得する。また、第2決定部130は、例えば、第2狭範囲通信部114によるWi-Fi網を介したアクセスポイントAPとの通信結果によりWi-Fi網の通信品質を取得する。この通信品質は、通信品質測定部30が測定した通信品質と同様の内容であるため、説明を省略する。第2決定部130は、例えば、通信品質が良い通信網によって車両情報を送信させると決定する。
【0084】
次に、第2決定部130は、履歴情報262に基づいて、決定した通信網とこれまでに通信し、当該通信に係る通信優先度が決定されたことがあるか否かを判定する。第2決定部130は、例えば、第2通信部110により、決定した通信網の識別情報を取得し、取得した識別情報を検索キーとして履歴情報262を検索する。第2決定部130は、検索した結果、当該識別情報に通信優先度が対応付けられていると判定する場合、決定した通信網とこれまでに通信したことがあるものとみなし、当該通信に係る通信優先度として検索結果の通信優先度を決定する。
【0085】
一方、第2決定部130は、検索した結果、検索キーとした識別情報に通信優先度が対応付けられていないと判定する場合、決定した通信網とこれまでに通信したことがないものとみなし、車両情報に応じた適当な通信優先度を決定する。第2決定部130は、例えば、最も高い通信優先度を車両情報に付すと決定してもよく、車両情報の種別毎に予め定められた通信優先度を車両情報に付す通信優先度として決定してもよい。第2決定部130が、車両情報に応じた適当な通信優先度を決定することは、「通信優先度を動的に決定する」ことの一例である。
【0086】
また、第2決定部130は、車両Mが用いる通信網が変化した場合、移動体通信網の通信品質と、Wi-Fi網の通信品質とに基づいて、移動体通信網と、Wi-Fi網とのうち、いずれの通信網によって送信データを通信させるかを決定する処理を行う。車両Mが存在する通信網が変化した場合とは、第2セルラー通信部112の通信結果により得られる通信品質と、第2狭範囲通信部114の通信結果により得られる通信品質とのいずれかに変化が生じた場合である。通信網を決定する処理以降は、上述した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
第2通信制御部140は、第2決定部130によって決定された通信優先度を示す情報と、取得部120によって取得された車両情報とを含む送信データを、無線基地局10に対して第2通信部110に送信させる。以降の説明において、第2通信制御部140が第2通信部110を制御して送信先に送信データを送信させることを、「第2通信制御部140が送信する」とも記載する。
【0088】
一般に、ネットワークにおいて一度に送信可能なデータ量(伝送単位)は、予め定められており、第2通信制御部140は、車両情報を、一度に送信可能なデータ量に分割し、無線基地局10やアクセスポイントAPに送信する。その場合、第2通信制御部140は、分割した送信データを送信開始する前に、まず始めに第2決定部130によって決定された通信優先度を示す情報を、無線基地局10にベアラー通信によって送信する、又はアクセスポイントAPにWi-Fi網を介した通信によって送信する。これにより、第2通信制御部140は、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10やアクセスポイントAPに要求する。
【0089】
第1決定部32は、第2通信制御部140によって送信された送信データに基づいて、当該送信データの通信に係る、移動体通信網の通信優先度、又はWi-Fi網の通信優先度を決定する。第1通信制御部34は、第1決定部32の決定結果を含めた情報を要求に対する応答として通信装置100に送信する。
【0090】
第2通信制御部140は、第1決定部32に決定された通信優先度に基づく通信によって、以降、分割した送信データを順に外部装置TAに送信する。
【0091】
[処理シーケンス]
図7は、第1実施形態における通信システム1により実行される処理の一例を示すフローチャートである。まず、通信装置100の取得部120は、車載装置200から車両情報を取得する(ステップS100)。第2通信部110は、車両Mの位置において通信可能な無線基地局10の通信範囲A1の通信品質と、アクセスポイントAPの通信範囲A2の通信品質とを取得する(ステップS102)。第2決定部130は、第2通信部110によって取得された移動体通信網の通信品質を示す情報と、Wi-Fi網の通信品質を示す情報とに基づいて、移動体通信網と、Wi-Fi網とのうち、いずれの通信網によって送信データを通信させるかを決定する(ステップS104)。第2決定部130は、例えば、通信品質の良い通信網によって通信すると決定する。
【0092】
次に、第2決定部130は、決定した通信網が移動体通信網であるか否かを判定する(ステップS106)。第2決定部130は、決定した通信網がWi-Fi網である場合、処理をステップS124に進める。
【0093】
第2決定部130は、履歴情報262に基づいて、決定した移動体通信網について通信優先度が既に決定しているか否かを判定する(ステップS108)。第2決定部130は、例えば、第2通信部110により、決定した移動体通信網の識別情報を取得し、取得した識別情報を検索キーとして履歴情報262を検索する。第2決定部130は、検索した結果、当該識別情報に通信優先度が対応付けられていると判定する場合、決定した移動体通信網について通信優先度が既に決定しているものとみなし、処理をステップS116に進める。第2決定部130は、検索した結果、当該識別情報に通信優先度が対応付けられていないと判定する場合、決定した移動体通信網とこれまでに通信したことがないものとみなし、車両情報に応じた適当な通信優先度を決定する(ステップS110)。
【0094】
第2通信制御部140は、まず始めに第2決定部130によって決定された通信優先度を示す情報を無線基地局10にベアラー通信によって送信する(ステップS112)。これにより、通信装置100は、第2決定部130によって決定した通信優先度による通信を無線基地局10に要求する。
【0095】
無線基地局10の第1決定部32は、送信元機器(この場合、通信装置100)が送信した送信データと、参照情報52と、通信網の通信品質を示す情報とに基づいて、送信データに付される通信優先度を決定する。具体的には、第1決定部32は、通信品質を示す情報に基づいて、通信装置100が要求する通信優先度によって、送信データについて通信を行った場合に、通信網における他の通信に影響を及ぼさない場合には、第2通信部110の要求に応じた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定する。また、第1決定部32は、通信網における他の通信に影響を及ぼす場合には、参照情報52において予め定められた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定する。
【0096】
第1通信制御部34は、第1決定部32の決定に基づく通信網を用いた通信で、且つ第1決定部32の決定に基づく通信優先度のQoSの優先制御を行い、送信元機器と対象機器とを通信させることを示す決定結果を含めた情報を、送信元機器(この場合、通信装置100)に送信する。
【0097】
第2通信制御部140は、無線基地局10が決定した通信優先度を示す情報と、無線基地局10が提供する移動体通信網の識別情報とを互いに対応付けたレコードを生成し、履歴情報262を生成(更新)する(ステップS114)。次に、第2通信制御部140は、無線基地局10が決定した通信優先度に基づく通信によって、以降、分割した送信データを順に外部装置TAに送信する(ステップS116)。
【0098】
第2決定部130は、所定の時間間隔毎に車両Mが通信する通信網(通信範囲A1、又は通信範囲A2)が変わったか否かを判定する(ステップS118)。第2決定部130は、例えば、第2セルラー通信部112の通信結果により得られる通信品質と、第2狭範囲通信部114の通信結果により得られる通信品質とのいずれかに変化が生じた場合に(例えば、
図1に示す位置P1~P5において)、車両Mが通信する通信網が変わったと判定する。
【0099】
第2決定部130は、車両Mが通信する通信網が変わっていないと判定する場合、処理をステップS116に進める。第2決定部130は、車両Mが通信する通信網が変わっていると判定する場合、移動体通信網の通信品質と、Wi-Fi網の通信品質とに基づいて、移動体通信網と、Wi-Fi網とのうち、いずれの通信網によって送信データを通信させるかを決定する(ステップS120)。
【0100】
第2決定部130は、ステップS120の決定に伴い、車両Mの通信が移動体通信網を用いる通信からWi-Fi網を用いる通信に変わったか否かを判定する(ステップS122)。第2決定部130は、車両Mの通信が引き続き移動体通信網を用いて行われると判定する場合、処理をステップS108に進める。また、第2決定部130は、車両Mの通信が移動体通信網を用いる通信からWi-Fi網を用いる通信に変更されたと判定する場合、処理をステップS124に進める。
【0101】
第2決定部130は、履歴情報262に基づいて、決定したWi-Fi網について通信優先度が既に決定しているか否かを判定する(ステップS124)。第2決定部130は、例えば、第2通信部110により、決定したWi-Fi網の識別情報を取得し、取得した識別情報を検索キーとして履歴情報262を検索する。第2決定部130は、検索した結果、当該識別情報に通信優先度が対応付けられていると判定する場合、決定したWi-Fi網について通信優先度が既に決定しているものとみなし、処理をステップS132に進める。第2決定部130は、検索した結果、当該識別情報に通信優先度が対応付けられていないと判定する場合、決定したWi-Fi網とこれまでに通信したことがないものとみなし、車両情報に応じた適当な通信優先度を決定する(ステップS126)。
【0102】
第2通信制御部140は、まず始めに第2決定部130によって決定された通信優先度を示す情報をアクセスポイントAPに送信する(ステップS128)。これにより、通信装置100は、第2決定部130によって決定した通信優先度による通信をアクセスポイントAPが接続された無線基地局10に、アクセスポイントAPを介して要求する。無線基地局10において、Wi-Fi網を用いた通信の通信優先度を決定する処理は、無線基地局10において、移動体通信網を用いた通信の通信優先度を決定する処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0103】
第2通信制御部140は、アクセスポイントAPが決定した通信優先度を示す情報と、アクセスポイントAPが提供するWi-Fi網の識別情報とを互いに対応付けたレコードを生成し、履歴情報262を生成(更新)する(ステップS130)。次に、第2通信制御部140は、アクセスポイントAPが決定した通信優先度に基づく通信によって、以降、分割した送信データを順に外部装置TAに送信する(ステップS132)。
【0104】
第2決定部130は、所定の時間間隔毎に車両Mが通信する通信網(通信範囲A1、又は通信範囲A2)が変わったか否かを判定する(ステップS134)。第2決定部130は、例えば、第2セルラー通信部112の通信結果により得られる通信品質と、第2狭範囲通信部114の通信結果により得られる通信品質とのいずれかに変化が生じた場合に(例えば、
図1に示す位置P1~P5において)、車両Mが通信する通信網が変わったと判定する。
【0105】
第2決定部130は、車両Mが通信する通信網が変わっていないと判定する場合、処理をステップS132に進める。第2決定部130は、車両Mが通信する通信網が変わっていると判定する場合、第2セルラー通信部112による移動体通信網を介した無線基地局10との通信結果により得られる通信範囲A1の通信品質と、第2狭範囲通信部114によるWi-Fi網を介したアクセスポイントAPとの通信結果により得られる通信範囲A2の通信品質とに基づいて、移動体通信網と、Wi-Fi網とのうち、いずれの通信網によって送信データを通信させるかを決定する(ステップS136)。
【0106】
第2決定部130は、ステップS136の決定に伴い、車両Mの通信がWi-Fi網を用いる通信から移動体通信網を用いる通信に変わったか否かを判定する(ステップS138)。第2決定部130は、車両Mの通信が引き続きWi-Fi網を用いて行われると判定する場合、処理をステップS124に進める。また、第2決定部130は、車両Mの通信がWi-Fi網を用いる通信から移動体通信網を用いる通信に変更されたと判定する場合、処理をステップS108に進める。
【0107】
[帯域制御について]
なお、上述では、第1決定部32が、QoSの優先制御に用いられる通信優先度を決定する場合について説明したが、これに限られない。第1決定部32は、例えば、QoSの優先制御に用いられる通信優先度を決定する処理に代えて(或いは、加えて)、QoSの帯域制御に係る帯域を決定してもよい。
【0108】
図8は、第1決定部32が通信帯域を決定する場合に用いられる参照情報52aの内容の一例を示す図である。参照情報52aは、例えば、データの送信元の送信元機器を識別可能な識別情報と、送信元機器の種別を示す情報と、送信元機器が送信する送信データの種別を示す情報と、送信データの通信に用いられる通信網の通信帯域とを示す情報とが互いに対応付けられた情報である。
【0109】
第1決定部32は、送信元機器が送信した送信データと、参照情報52aと、通信品質測定部30によって測定された各通信網の通信品質を示す情報とに基づいて、送信データの通信に用いる通信網と、通信網における通信帯域とを決定する。
図8の参照情報52aでは、例えば、車両Mの制御に用いられる車両情報には、他の車両情報に比して、大容量の通信帯域が対応付けられ、車両Mの制御には用いられないものの、コンテンツ情報ではない車両情報には、車両Mの制御に用いられる車両情報に比して低容量の通信帯域が対応付けられ、車両情報のうちコンテンツ情報には、他の車両情報に比して低速、且つ低容量の通信帯域が対応付けられる。
【0110】
なお、参照情報52aは、帯域幅が狭い通信帯域を示す情報に代えて(或いは、加えて)、帯域保証がない、或いは帯域制限がない通信帯域を示す情報が含まれてもよく、帯域幅が広い通信帯域を示す情報に代えて(或いは、加えて)、帯域保証がある、或いは帯域制限がある通信帯域を示す情報が含まれていてもよい。また、参照情報52aには、移動体通信網のうち、4Gと、5Gとのどちらのセルラー網を用いるかが更に対応付けられていてもよい。この場合、記憶部50に経路情報54が記憶されていなくてもよい。
【0111】
また、第2決定部130は、例えば、QoSの優先制御に用いられる通信優先度を決定する処理に代えて(或いは、加えて)、QoSの帯域制御に係る帯域を決定してもよい。この場合、履歴情報262には、通信優先度に代えて(或いは、加えて)、送信データの通信に用いられる通信帯域を示す情報が含まれる。この履歴情報262に基づいて第2決定部130が通信網の通信帯域を決定する処理は、上述した、履歴情報262に基づいて、第2決定部130が通信網を決定する処理と同様の処理であるため、説明を省略する。これにより、第1決定部32は、車両情報を帯域保証のある帯域によって通信しやすくすることができる。
【0112】
[車両Mの走行情報に基づく通信優先度の決定]
なお、上述では、第2決定部130は、車両情報の種別に基づいて、通信優先度を決定する場合について説明したが、これに限られない。車両情報には、例えば、車両Mの走行状況を示すステータス情報が含まれており、第2決定部130は、ステータス情報に基づいて、車両情報の通信優先度を決定してもよい。第2決定部130は、例えば、ステータス情報が車両Mにおいて自動運転制御が行われていないことを示す場合、車両Mの制御に用いられる車両情報について、高い通信優先度を付さないと決定してもよい。また、第2決定部130は、車両Mが走行している周囲環境が悪天候(例えば、降雨、降雪、濃霧等)であることをステータス情報が示す場合、車両Mのカメラが適切に車両Mの周囲環境を撮像することができないため、カメラが撮像した画像データである車両情報について、高い通信優先度を付さないと決定してもよい。また、第2決定部130は、車両Mが高速道路を走行中であることをステータス情報が示す場合、車両Mが走行する周囲環境の変化(右左折や車線の合流等)が生じにくいため、車両情報のうち車両位置情報について、高い通信優先度を付さないと決定してもよい。これにより、第2決定部130は、車両Mの状況に応じて車両情報を他の情報に比して優先的に通信しやすくすることができる。
【0113】
[通信優先度の再要求]
また、上述では、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10、又はアクセスポイントAPに要求して、要求が受け入れられなかった場合、第2通信制御部140は、無線基地局10、又はアクセスポイントAPが決定した通信優先度に基づく通信によって、送信データを外部装置TAに送信する場合について説明したが、これに限られない。第2通信制御部140は、例えば、通信優先度の要求が受け入れられなかった場合、送信データの送信をキャンセルし、所定時間後、再度、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10、又はアクセスポイントAPに要求してもよい。
【0114】
第2通信制御部140は、所定時間後の要求が受け入れられた場合には、無線基地局10、又はアクセスポイントAPが決定した通信優先度に基づく通信によって、送信データを外部装置TAに送信する。第2通信制御部140は、要求が受け入れられなかった場合には、要求が受け入れられるまでの間、所定時間後に再度、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10、又はアクセスポイントAPに要求する処理を繰り返し行ってもよい。また、第2通信制御部140は、所定時間後に再度、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10、又はアクセスポイントAPに要求する処理を所定回数繰り返しても、通信優先度の要求が受け入れられなかった場合、無線基地局10、又はアクセスポイントAPが決定した通信優先度に基づく通信によって、送信データを外部装置TAに送信する。これにより、第2通信制御部140は、第2決定部130が決定した通信優先度によって送信データを送信しやすくすることができる。また、第2通信制御部140は、要求のリトライ回数に制限を設けることによって送信データがいつまでも送信されなくなることを抑制することができる。
【0115】
また、第2通信制御部140は、例えば、無線基地局10、又はアクセスポイントAPに通信優先度の要求が受け入れられなかった場合、送信データの送信をキャンセルし、通信品質が改善した後、再度、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10、又はアクセスポイントAPに要求してもよい。この場合、取得部120は、通信品質が改善したか否かを判定するため、通信品質測定部30によって測定された各通信網の通信品質を示す情報を取得してもよい。
【0116】
第2通信制御部140は、通信品質測定部30によって測定された各通信網の通信品質を示す情報に基づいて、要求する通信優先度によって送信データについて通信を行った場合において、他の通信に影響を及ぼさないと判定した場合、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10、又はアクセスポイントAPに要求する。第2通信制御部140は、例えば、レイテンシ、スループット、トラフィック量、帯域使用率、エラーパケットの数、ロスしたパケットの数等が所定の閾値以下であることや、通信速度等が所定の閾値以上である場合等に、他の通信に影響を及ぼさないと判定する。
【0117】
第2通信制御部140は、要求が受け入れられた場合には、無線基地局10、又はアクセスポイントAPが決定した通信優先度に基づく通信によって、送信データを外部装置TAに送信する。これにより、第2通信制御部140は、第2決定部130が決定した通信優先度によって送信データを送信しやすくすることができる。
【0118】
[アクセスポイントAPの他の構成について]
なお、上述では、アクセスポイントAPが提供するWi-Fi網についての、通信品質測定部30の処理、第1決定部32の処理、及び第1通信制御部34の処理を、無線基地局10が行う場合について説明したが、これに限られない。アクセスポイントAPは、例えば、通信制御装置を備え、通信制御装置は、通信品質測定部30と、第1決定部32と、第1通信制御部34とを備え、上述した、通信品質測定部30、第1決定部32、及び第1通信制御部34の処理のうち、Wi-Fi網に係る処理(つまり、移動体通信網に係る処理以外の処理)をアクセスポイントAPの通信制御装置が行ってもよい。この場合、無線基地局10が備える通信品質測定部30、第1決定部32、及び第1通信制御部34は、移動体通信網に係る処理(つまり、Wi-Fi網に係る処理以外の処理)を行うものであってもよい。これにより、通信システム1は、無線基地局10の処理負荷を低減することができる。
【0119】
[第1実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の通信装置100は、車両Mに搭載される通信装置であって、第1アクセスポイント(この一例では、無線基地局10)が提供する第1通信方式の通信(この一例では、移動体通信網を介した通信)、又は第2アクセスポイント(この一例では、アクセスポイントAP)が提供する第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信(この一例では、Wi-Fi網を介した通信)を用いて外部装置TAと通信する第2通信部110と第1アクセスポイントおよび/または第2アクセスポイント毎の自装置の通信優先度を動的に決定する第2決定部130と、第2決定部130により決定された通信優先度を示す情報と車両に関する車両情報とを含めた情報(この一例では、送信データ)を、第1アクセスポイントと、第2アクセスポイントとのそれぞれに対して通信部に送信させる第2通信制御部140とを備え、第2通信制御部140は、第2通信部110に、第1アクセスポイントにより決定された通信優先度により第1通信方式で、又は第2アクセスポイントにより決定された通信優先度により第2通信方式で、外部装置TAと通信させ、第2通信部110の通信が第1アクセスポイントの通信から、第2アクセスポイントの通信に切り替わる際、第2アクセスポイントにより決定された通信優先度によって第2通信部110に通信させ、第2通信部110の通信が第2アクセスポイントの通信から、第1アクセスポイントの通信に切り替わる際、第1アクセスポイントにより決定された通信優先度によって第2通信部110に通信させる。
【0120】
ここで、車両Mが、移動体通信網の通信範囲A1に移動する度に、又はWi-Fi網の通信範囲A2に移動する度に、第2決定部130が通信優先度を決定する処理行うと、処理が煩雑となる。また、移動体通信網の通信範囲A1と、Wi-Fi網の通信範囲A2の間を車両Mが短期間に行ったり来たりする場合、第2決定部130が先に決定した通信優先度と、移動に伴い決定した通信優先度との間には、変化がない場合がある。本実施形態の通信装置100によれば、第2決定部130は、履歴情報262に基づいて、以前に決定された通信優先度によって通信すると決定するため、車両が用いる通信に応じた通信優先度を簡便に決定することができる。
【0121】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、車両Mの移動に伴い通信範囲が変化する度に、車両Mの通信装置100が、通信優先度を決定し、無線基地局10やアクセスポイントAPに通信優先度による通信を要求する場合について説明した。第2実施形態では、無線基地局10が、車両Mが決定した通信優先度による通信を、車両Mに代わって、他の無線基地局10やアクセスポイントAPに要求する場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0122】
図10は、第2実施形態における通信システム1により実行される処理の一例を示すフローチャートである。まず、通信装置100の取得部120は、車載装置200から車両情報を取得する(ステップS200)。第2決定部130は、取得部120によって取得された車両情報に基づいて、車両情報に応じた適当な通信優先度を決定する(ステップS204)。第2決定部130は、例えば、参照情報52に基づいて、取得した送信データ(車両情報)の種別に応じた通信優先度を決定する。
【0123】
上述したように、一般に、ネットワークにおいて一度に送信可能なデータ量(伝送単位)は、予め定められており、第2通信制御部140は、車両情報を、一度に送信可能なデータ量に分割し、無線基地局10に送信する。その場合、第2通信制御部140は、分割した送信データを送信開始する前に、まず始めに第2決定部130によって決定された通信優先度を示す情報を無線基地局10にベアラー通信によって送信する(ステップS204)。これにより、第2通信制御部140は、第2決定部130が決定した通信優先度による通信を無線基地局10に要求する。
【0124】
第1通信部20は、車両Mの位置において通信可能な、無線基地局10の通信範囲A1の通信品質と、アクセスポイントAPの通信範囲A2の通信品質とを取得する(ステップS206)。第1決定部32は、第1通信部20によって取得された通信品質に基づいて、車両Mと通信する通信網を決定する(ステップS208)。第1決定部32は、例えば、通信範囲A1と、通信範囲A2とのうち、通信品質の良い通信網によって通信すると決定する。
【0125】
また、第1決定部32は、車両Mから要求された通信優先度と、ステップS208において決定した通信網の通信品質とに基づいて、通信優先度を決定する(ステップS210)。第1決定部32は、通信品質を示す情報に基づいて、通信装置100が要求する通信優先度によって、送信データについて通信を行った場合に、通信網における他の通信に影響を及ぼさない場合には、車両Mの要求に応じた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定する。また、第1決定部32は、通信網における他の通信に影響を及ぼす場合には、参照情報52において予め定められた通信優先度によって送信データについて通信を行うと決定する。
【0126】
第1通信制御部34は、第1決定部32の決定に基づく通信優先度による通信を、ステップS208において決定した通信網を提供するアクセスポイントAP、又は他の無線基地局10に要求する(ステップS212)。なお、第1通信制御部34は、他の無線基地局10に通信を要求する際に、コアネットワークcNWを介して、コアネットワークcNWに接続される他の無線基地局10(不図示)と通信する。次に、第1通信制御部34は、アクセスポイントAP、又は他の無線基地局10から、要求に対する応答を受信する(ステップS214)。
【0127】
第1決定部32は、応答が、要求した通信優先度による通信が可能なことを示すか否かを判定する(ステップS216)。第1決定部32は、応答が、要求した通信優先度による通信が不可能なことを示すと判定した場合、ステップS210において決定した通信優先度よりも低い通信優先度に決定し(つまり、通信優先度を下げて)(ステップS218)、処理をステップS212に進める。
【0128】
なお、第1決定部32は、ステップS208において決定した通信網が、自身(無線基地局10)が提供する通信範囲A1である場合、ステップS212~S218の処理を省略し、ステップS210の処理において、自身が実現可能な通信優先度を決定してもよい。
【0129】
第1通信制御部34は、第1決定部32によって、応答が、要求した通信優先度による通信が可能なことを示すと判定された場合、決定に基づく通信網を用いた通信で、且つ第1決定部32の決定に基づく通信優先度のQoSの優先制御を行い、送信元機器と対象機器とを通信させることを示す決定結果を含めた情報を、送信元機器(この場合、通信装置100)に送信(指示)する(ステップS220)。なお、第1通信制御部34は、無線基地局10が決定した通信優先度を示す情報と、無線基地局10が提供する移動体通信網の識別情報とを互いに対応付けたレコードを生成し、履歴情報262を生成(更新)するように、通信装置100(第2通信制御部140)に指示してもよい。
【0130】
第2通信制御部140は、無線基地局10により決定された通信優先度に基づく通信によって、以降、分割した送信データを順に外部装置TAに送信する(ステップS222)。次に、第2通信制御部140は、所定の時間間隔毎に車両Mが通信する通信網(通信範囲A1、又は通信範囲A2)が変わったか否かを判定する(ステップS224)。第2通信制御部140は、例えば、第2セルラー通信部112の通信結果により得られる通信品質と、第2狭範囲通信部114の通信結果により得られる通信品質とのいずれかに変化が生じた場合に(例えば、
図1に示す位置P1~P5において)、車両Mが通信する通信網が変わったと判定する。
【0131】
第2通信制御部140は、車両Mが通信する通信網が変わっていないと判定する場合、処理をステップS220に進める。第2通信制御部140は、車両Mが通信する通信網が変わったと判定する場合、ステップS202において決定した通信優先度を示す情報を、通信可能な無線基地局10にベアラー通信によって送信(要求)する(ステップS204)。例えば、第2通信制御部140は、車両Mが、
図1に示す無線基地局10が提供する通信範囲A1内において、移動する場合には、
図1に示す無線基地局10に通信優先度を示す情報を送信し、車両Mが、
図1に示す無線基地局10が提供する通信範囲A1を出て、他の無線基地局10が提供する他の通信範囲A1に移動する場合には、当該他の無線基地局10に通信優先度を示す情報を送信する。
【0132】
[第2実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の無線基地局10は、移動体(車両M)から通信優先度を示す移動体情報を取得する取得部(この場合、第1通信制御部34)と、移動体の移動に関する情報(この場合、通信品質を示す情報)を取得し、通信優先度の引継ぎ先の他の基地局を決定する第1決定部32と、第1決定部32により決定された通信優先度を、取得部によって取得された車両情報の応答として移動体に出力し、第1決定部32により決定された通信優先度を他の基地局に出力する出力部(この場合、第1通信制御部34)とを備える。
【0133】
本実施形態の無線基地局10によれば、アクセスポイントAPや他の無線基地局10に対して、車両Mが所望する通信優先度に係る通信を当該無線基地局10が行うことにより、車両Mの通信装置100の処理負荷を低減しつつ、車両Mが用いる通信に応じた通信優先度を簡便に決定することができる。
【0134】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0135】
1…通信システム、10…無線基地局、20…第1通信部、22…第1セルラー通信部、24…第1狭範囲通信部、30…通信品質測定部、32…第1決定部、34…第1通信制御部、50、260…記憶部、52、52a…参照情報、54…経路情報、100…通信装置、110…第2通信部、112…第2セルラー通信部、114…第2狭範囲通信部、120…取得部、130…第2決定部、140…第2通信制御部、200…車載装置、210…車両センサ、220…駆動制御装置、230…運転制御装置、240…ナビゲーション装置、262…履歴情報、A1、A2、A2-1、A2-2、A2-3…通信範囲、ANT…アンテナ、AP、AP-1、AP-2、AP-3…アクセスポイント、M…車両、TA…外部装置