(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ドア枠と開口部枠材の固定構造及び方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20231201BHJP
E06B 1/60 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
E06B1/56 B
E06B1/60
(21)【出願番号】P 2020032368
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】持田 典之
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115463(JP,A)
【文献】実開昭59-173887(JP,U)
【文献】実開昭57-4587(JP,U)
【文献】実開昭58-121972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠と開口部枠材の固定構造であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片と前記第1見付面は、これらの間に少なくとも1つのバネ材を設けた状態で螺子で固定されており、
前記第2見付片と前記第2見付面は、螺子を用いて
、直接あるいは連結部材を介して固定されている、
ドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項2】
前記第2見付片は前記第1見付片に比べて短片であり、
前記第2見付片と前記第2見付面は、
前記連結部材を介して螺子で固定されている、
請求項1に記載のドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項3】
前記バネ材が最も潰れた状態において、前記第2見付片と前記第2見付面は略面一となるように構成されている、
請求項
2に記載のドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項4】
ドア枠を開口部枠材に固定する方法であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記ドア枠の前記第1見付片を、前記開口部枠材の前記第1見付面との間に少なくとも1つのバネ材を設けた状態で、前記第1見付面に第1螺子で固定すること、
前記ドア枠の前記第2見付片を、前記開口部枠材の前記第2見付面に螺子を用いて
、直接あるいは連結部材を介して固定すること、
を含む、固定方法。
【請求項5】
前記バネ材を押しつぶすように前記第1螺子を締めること、
前記第1螺子を緩めて前記第1見付片と前記第1見付面の間隔を調整すること、
を含む、請求項4に記載の固定方法。
【請求項6】
前記バネ材が最も潰れた状態において、前記第2見付片と前記第2見付面は略面一となるように構成されており、
前記第2見付片及び前記第2見付面の外側に
前記連結部材を当接させた状態で螺子で固定する、
請求項
5に記載の固定方法。
【請求項7】
前記ドア枠は、高さ方向に延びる長尺部材である縦枠と、開口幅方向に延びる長尺部材である上枠と、を備え、前記縦枠と前記上枠の前記第1見付片は長さ方向に延びており、
前記開口部枠材は、長尺部材であり、前記第1見付面は前記開口部枠材の長さ方向に延びており、
前記第1見付片あるいは前記第1見付面の長さ方向の所定部位には予め前記バネ材が固定されている、
請求項4~6いずれか1項に記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア枠と開口部枠材の固定構造及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドア枠は、現場において、建物躯体側の構造体に固定されることで、ドアによって開閉される開口部を形成する。また、ドア枠は、当該ドア枠の背面に設けた要素(アンカーと称する場合がある)を建物躯体側の構造体に溶接することで固定される場合が多い(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ドア枠を溶接によって固定するやり方は、火気作業ができない現場で採用することができず、また、溶接作業には熟練の技術が必要となるため、施工技術者の確保も問題となる。したがって、ドア枠を、溶接作業を用いずに、建物躯体側の構造体に固定したいというニーズがある。
【0004】
ドア枠は、建物躯体側の構造体に対して位置調整を行ってから当該構造体に固定される。この位置調整には、ドア枠と当該構造体との見付方向の位置調整が含まれる。特許文献2、3には、このような位置調整を、バネ材を用いて行う手法が開示されている。ここで、ドア枠の位置調整は、見付方向の位置調整に留まらない。例えば、ドア枠が取り付けられる躯体側の構造体が前後方向に傾いているような場合には、当該構造体に取り付けたドア枠も前後方向に傾いてしまうおそれがあり、ドア枠の姿勢調整(傾きないし倒れを調整して垂直姿勢とする)を行って固定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-240305
【文献】特開2006-307633
【文献】特開2012-154084
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ドア枠を開口部枠材に固定するにあたり、溶接作業を伴わない固定構造及び方法であって、ドア枠の前後方向の倒れの調整が可能なドア枠と開口部枠材の固定構造及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術手段は、
ドア枠と開口部枠材の固定構造であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片と前記第1見付面は、これらの間に少なくとも1つのバネ材を設けた状態で螺子で固定されており、
前記第2見付片と前記第2見付面は、螺子を用いて固定されている、
ドア枠と開口部枠材の固定構造、である。
【0008】
バネ材は、弾性変形によって、ドア枠の見込方向の厚さが可変となっており、第1見付片と第1見付面の間にバネ材を挟んだ状態において、螺子を締めることで、バネ材が潰れるように変形してバネ材の厚さが小さくなり、その状態から螺子を緩めると、バネ材の厚さが当該バネ材の復元力で大きくなる。
すなわち、バネ材の厚さによって、ドア枠の第1見付片と開口部枠材の第1見付面との間隔を調整することができ、第1見付片の長さ方向の所定の一箇所あるいは複数箇所においてバネ材の厚さを選択して前記間隔を調整することで、ドア枠の前後方向の姿勢を調整することができる。
1つの態様では、複数のバネ材が、前記第1見付片及び前記第1見付面の長さ方向に間隔を存して設けられている。
1つの態様では、前記バネ材が最も潰れた状態において、ドア枠の第2見付片と開口部枠材の第2見付面が略面一となるように構成されている。
【0009】
1つの態様では、前記ドア枠は、左右の縦枠と上枠とからなる三方枠である。
1つの態様では、前記ドア枠は、左右の縦枠と上枠と下枠とからなる四方枠(四周枠)である。
上記ドア枠と開口部枠材の固定構造は、ドア枠の全部あるいは一部の固定構造として採用され得る。
ドア枠の第2見付片と開口部枠材の第2見付面は、直接螺子で固定されていても、あるいは、他の要素を介して間接的に螺子で固定されていてもよい。
1つの態様では、ドア枠の第2見付片はドア枠の第1見付片に比べて短片であり、
ドア枠の第2見付片と開口部枠材の第2見付面は、連結部材を介して螺子で固定されている。
1つの態様では、ドア枠の第2見付片と前記連結部材との間にスペーサが設けられる。
【0010】
本発明が採用したドア枠を開口部枠材に固定する方法において、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記ドア枠の前記第1見付片を、前記開口部枠材の前記第1見付面との間に少なくとも1つのバネ材を設けた状態で、前記第1見付面に第1螺子で固定すること、
前記ドア枠の前記第2見付片を、前記開口部枠材の前記第2見付面に螺子を用いて固定すること、
を含む。
【0011】
1つの態様では、前記バネ材を押し潰すように前記第1螺子を締めること、
前記第1螺子を緩めて前記第1見付片と前記第1見付面の間隔を調整すること、
を含む。
1つの態様では、複数のバネ材が、前記第1見付片及び前記第1見付面の長さ方向に間隔を存して設けられており、先ず、全ての螺子を締め込んで全てのバネ材の厚さを小さくし、次いで、必要に応じて、第1見付片の長さ方向の所定の一箇所あるいは複数箇所において前記第1螺子を緩めて所定の位置のバネ材の厚さを大きくすることで、ドア枠の前後方向の姿勢を調整する。
ドア枠の前後方向の姿勢調整の必要が無い場合には、前記第1螺子を緩める工程を設けなくてもよい。
1つの態様では、ドア枠の第1見付片の長さ方向の所定部位には予め前記バネ材が固定されている。
あるいは、開口部枠材の第1見付面の長さ方向の所定部位に予め前記バネ材を固定してもよい。
特に、複数のバネ材を設ける場合に、前記第1見付片と前記第1見付面の対向面のいずれか一方にバネ材を固定しておけば、ドア枠の第1見付片を開口部枠材の第1見付面に固定する際の作業性が良好である。
【0012】
1つの態様では、ドア枠の第2見付片はドア枠の第1見付片に比べて短片であり、
ドア枠の第2見付片を開口部枠材の第2見付面に、連結部材を介して螺子で固定する。
前記第1見付片が前記第1見付面に固定された状態において、前記第2見付片は前記開口部枠材から離間しており、当該開口部枠材と干渉しないようになっている。よって、前記第1見付片が前記第1見付面に固定された状態において、前記第1螺子を緩めることで、前記開口部枠材に対するドア枠の位置を見込方向に調整可能となっている。
1つの態様では、前記バネ材が最も潰れた状態において、ドア枠の第2見付片と開口部枠材の第2見付面は略面一となるように構成されており、
前記第2見付片及び前記第2見付面の外側に連結部材を当接させた状態で螺子で固定する。
1つの態様では、前記第1螺子を緩めてバネ材の厚さを調整しない箇所においては、前記略面一となった前記第2見付片及び前記第2見付面の外側に連結部材を当接させた状態で螺子で固定する。
1つの態様では、前記第1螺子を緩めてバネ材の厚さを調整した箇所においては、前記第2見付片と前記第2見付面との間に段差が生じるが、前記第2見付片及び前記第2見付面の外側に連結部材を当接させた状態で螺子で固定する(螺子を締めた時には、前記連結部材は変形して前記第2見付片に当接し得る)。あるいは、前記第2見付片と前記連結部材の間にスペーサを設け、前記連結部材と前記第2見付片の間にスペーサを挟んだ状態で螺子で固定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ドア枠を開口部枠材に固定するにあたり、ドア枠の第1見付片と開口部枠材の第1見付面との間に少なくとも1つのバネ材を設けた状態で、該第1見付片と該第1見付面を螺子で固定するようにしたので、該螺子の締緩によってバネ材の厚さを調整することによって、ドア枠の第1見付片と開口部枠材の第1見付面との間隔を調整することができ、第1見付片の長さ方向の所定の一箇所あるいは複数箇所においてバネ材の厚さを選択して前記間隔を調整することで、ドア枠の前後方向の姿勢(倒れ)を調整することができる。
【0014】
ドア枠の第1見付片と開口部枠材の第1見付面を螺子で固定することに加えて、ドア枠の第2見付片と開口部枠材の第2見付面を螺子で固定するようにしたので、
ドア枠の固定作業において溶接を伴うことがなく、火気作業が出来ない現場にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】建物開口部に取り付けられたドア枠の正面図である(仕上げの壁パネルは省略されている)。
【
図2】建物開口部に取り付けられたドア枠の横断面図である。
【
図4】(A)~(C)は、開口部枠材に対するドア枠(縦枠)の固定の工程を示す図である。
【
図5】
図4(A)~(C)の工程によって固定されたドア枠(縦枠)を示す図である。
【
図6】本実施形態の固定構造における前後方向の調整を説明する図である。
【
図7】本実施形態の固定構造の構成要素であるバネ材を示す図である。
【
図9】ドア枠の見付方向の位置調整を説明する正面図である。
【
図10】ドア枠の見付方向の位置調整を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、建物開口部に取り付けられたドア枠の正面図であって、仕上げの壁パネルW(
図2参照)は省略されており、いわば、壁パネルWが取り付けられる前の状態を示している。本実施形態に係るドア枠は、上枠1と、左右の縦枠2と、からなる三方枠であり、三方枠であるドア枠と床面FLで囲まれた空間が建物開口部となっており、図示しないドアによって当該建物開口部が開閉されるようになっている。図示の態様のドア枠は、開き戸用であるが、ドアの種類は限定されない。
【0017】
三方枠であるドア枠は、工場において、左右の金属製(例えば、スチール製)の縦枠2の上端を金属製(例えば、スチール製)の上枠1の長さ方向両端にそれぞれ固定(溶接、螺子止め等)することで組み立てられる。すなわち、ドア枠は工場で組み立てられて、現場に搬入され、躯体側の構造体に固定される。本実施形態では、躯体側の構造体は、開口部枠材3と、開口部枠材3が固定されたスタッド4、ランナー4´から構成されており、ドア枠は開口部枠材3に取り付けられる。なお、三方枠のドア枠は例示であって、ドア枠は下枠(沓摺)を備えた四周枠であってもよい。
【0018】
ドア枠の構成について、主として縦枠2の構成に基づいて説明する。
図2に示すように、左右の縦枠2は、高さ方向(垂直方向)に延びる長尺部材であって、第1見付面20と、第2見付面21と、第1見付面20と第2見付面21の内側端を接続する内側見込部22と、第1見付面20の外側端から見込方向に延びる第1外側見込辺23と、第2見付面21の外側端から見込方向に延びる第2外側見込辺24と、第1外側見込辺23の先端から外側に延びる第1外側見付片25と、第2外側見込辺24の先端から外側に延びる第2外側見付片26と、からなる。
【0019】
縦枠2において、第1外側見込辺23と第2外側見込辺24は離間しており、第1外側見込辺23と第2外側見込辺24の間には、縦枠2の高さ方向に間隔を存して複数の接続要素27が固定(溶接、螺子止め等)されており、縦枠2の強度を向上させている。内側見込部22は、第1見付面20の内側端から見込方向に延びる第1内側見込面220と、第2見付面21の内側端から見込方向に延びる第2内側見込面221と、第1内側見込面220と第2内側見込面221の間に位置した凸状の中央見込部222と、からなる。縦枠2(特に、内側見込部22)の断面形状は限定されない。一方(戸尻側)の縦枠2の第1内側見込面220には、高さ方向に間隔を存して複数のヒンジ要素Hが設けてある。
【0020】
第1外側見付片25と第2外側見付片26は、縦枠2の背面に位置して離間対向して延びており、本実施形態では、第1外側見付片25が長片、第2外側見付片26が短片となっている。第1外側見付片25と第2外側見付片26は、縦枠2を躯体側の構造体に取り付けるための取付片を構成しており、縦枠2は、第1外側見付片25と第2外側見付片26を介して、高さ方向に延びる開口部枠材3に固定される。
【0021】
上枠1は、開口幅方向(水平方向)に延びる長尺部材であって、本実施形態では、縦枠2と同一の断面形状を備えている。すなわち、縦枠2を、内側見込部22が下面となり、第1外側見付片25と第2外側見付片26が上側に位置して離間対向して上方に延びるように向けた時の姿勢にしたがって上枠1を説明することができる。
【0022】
より具体的には、上枠1は、第1見付面10と、第2見付面と、第1見付面10と第2見付面の内側端(下端)を接続する内側見込部(下面部)12と、第1見付面10の外側端(上端)から見込方向に延びる第1外側(上側)見込辺と、第2見付面の外側端(上端)から見込方向に延びる第2外側(上側)見込辺と、第1外側見込辺の先端から外側(上方)に延びる第1外側(上側)見付片15と、第2外側見込辺の先端から外側(上方)に延びる第2外側(上側)見付片16と、からなる。なお、上枠1の断面形状は、縦枠2と同様に限定されない。
【0023】
第1外側見付片15と第2外側見付片16は、上枠1の背面(上方)に位置して離間対向して延びており(
図1、
図3、
図8参照)、本実施形態では、第1外側見付片15が長片、第2外側見付片16が短片となっている。第1外側見付片15と第2外側見付片16は、上枠1の取付片を構成しており、上枠1は、第1外側見付片15と第2外側見付片16を介して、開口幅方向に延びる開口部枠材3に固定される。
【0024】
本実施形態に係る躯体側の構造体は、ドア枠が固定される開口部枠材(補強枠材と称される場合もある)3と、開口部枠材3が固定されている下地枠材と、から構成されている。下地枠材は、垂直方向に延びる左右のスタッド4と、左右のスタッド4の高さ方向の上側の所定部位間を水平に連結するランナー4´と、左右のスタッド4の下端部位を水平に連結するランナー(図示せず)と、を含む。典型的には、開口部枠材3、スタッド4、ランナーは金属製(例えば、スチール製)である。
【0025】
スタッド4は、第1見付辺40、第2見付辺41、見込辺42とから断面視コ字形状を備え、高さ方向に延びる長尺部材であり、見込辺42を開口部側に位置させた垂直姿勢で設けてある。ランナー4´は、スタッド4と実質的に同じ断面形状を備え、水平方向に延びる長尺部材であり、見込辺を開口部側(下側)に位置させた向きで設けてある。
【0026】
開口部枠材3は、第1見付辺30、第2見付辺31、見込辺32とから断面視コ字形状を備えた長尺部材である。開口部枠材3は、見込辺32を開口部側に位置させた垂直姿勢でスタッド4に固定され、見込辺32を開口部側(下側)に位置させた水平姿勢でランナー4´に固定される。より具体的には、開口部枠材3の第1見付辺30、第2見付辺31の先端は内側に折り曲げて折り曲げ片300、310が形成されており、開口部枠材3は、折り曲げ片300、310をスタッド4の見込辺42、ランナー4´の見込辺に当接させて固定されている。開口部枠材3の固定手段としては溶接が例示される。開口部枠材3を取り付ける段階では、火気作業が問題となるような可燃物が現場に存在しないため、溶接を用いることによる不具合は生じない。なお、開口部枠材3を螺子を用いてスタッド4、ランナー4´に固定してもよい。
【0027】
このように、本実施形態では、建物躯体側の構造体は、開口部枠材3、スタッド4、ランナー4´から構成されており、ドア枠(上枠1と左右の縦枠2からなる三方枠)は、躯体側の構造体(開口部枠材3)に対して位置調整を行って位置決めした上で固定される。この位置調整には、開口部枠材3に対するドア枠の見付方向の位置調整が含まれる。ドア枠の見付方向の位置調整は、
図2、
図9、
図10におけるX方向、Z方向の位置調整である。
【0028】
図9、
図10を参照しつつ、ドア枠の見付方向の位置調整について説明する。
図9、
図10は専らドア枠の見付方向の位置調整を説明するための図であり、
図9、
図10に示すドア枠(上枠1´、左右の縦枠2´)と開口部枠材3との固定構造は、本実施形態に係るドア枠の固定構造と異なる点に留意されたい。躯体側の構造体である開口部枠材3によって囲まれる縦長方形状の空間の寸法は、ドア枠(上枠1´、左右の縦枠2´)の外形寸法よりも少し大きく、ドア枠の背面側の見込面(第1外側見込辺23、第2外側見込辺24)と開口部枠材3の見込辺32とは隙間を介して離間対向するようになっている。この隙間の寸法(X方向の寸法、Z方向)を調整することによって、開口部枠材3に対するドア枠の見付方向の位置調整を行う。なお、開口部枠材3に対するドア枠の見込方向(Y方向)のおおまかな位置調整を行ってもよい。
【0029】
具体的な調整手法としては、いわゆる楔Kを用いる手法を例示することができる。断面視直角三角形の楔Kを第1側及び第2側から見込方向に上記隙間に差し込み、2つの楔Kを傾斜面同士が重なるように組み合わせて(楔セット)、傾斜面の重なりの程度によって、楔セットの厚さが可変となっており、楔セットの厚さによってドア枠と開口部枠材との隙間を決定する。図示の楔Kは例示であって、楔の形状は断面視直角三角形に限定されず、また、隙間に挿入される楔の個数も限定されず、1個でも3個以上であってもよい。
【0030】
図9に示す例では、上枠1´の左右両端部位、左右の縦枠2´の上方部位及び下方部位、左右の縦枠2´の下端に楔セットを設けることで、ドア枠の見込方向の位置調整を行いつつ、ドア枠の位置(X方向の位置、Z方向の位置)を仮固定する。複数の楔セットを用いて仮固定されたドア枠を開口部枠材3に固定した後で、楔Kを取り外す。本実施形態においても、上枠1´の左右両端部位、左右の縦枠2´の上方部位及び下方部位に位置して、楔を挿入する楔挿入部K´が形成されており(
図1、
図3参照)、楔を用いてドア枠の見付方向の位置調整を行うことができる。
【0031】
ここで、ドア枠の位置調整は、見付方向の位置調整に留まらない。例えば、ドア枠が取り付けられる躯体側の構造体である開口部枠材3は必ずしも厳密に垂直姿勢であるとは限らない。例えば、開口部枠材3が前後方向(開口部の出入方向、すなわちY方向)に僅かに傾いているような場合(
図8参照)に、開口部枠材3に取り付けたドア枠も前後方向に傾いてしまうおそれがある。本実施形態では、必要時に、ドア枠の姿勢調整(傾きないし倒れを調整して垂直姿勢とする)を可能とするドア枠と開口部枠材の固定構造を提供する。
【0032】
本実施形態に係るドア枠と開口部枠材3の固定構造及び方法について、縦枠2と開口部枠材3の固定構造及び方法に基づいて説明する。上枠1と左右の縦枠2からなる三方枠が工場で組み立てられ、現場に搬入される。現場における躯体側の構造体は、左側のスタッド4と右側のスタッド4間を連結するランナー4´からなる下地枠と、下地枠に固定された三方枠状の開口部枠材3と、からなる。ドア枠は、開口部枠材3に対して取り付けられる。
【0033】
ドア枠の縦枠2の背面には、第1外側見付片25と第2外側見付片26が離間対向して延びている。第1外側見付片25は、第2外側見付片26に対して長尺である。すなわち、第1外側見付片25は長片、第2外側見付片26は短片である。ドア枠の第1外側見付片25の内面と第2外側見付片26の内面間の寸法は、開口部枠材3の見込寸法(第1見付辺30の外面と第2見付辺31の外面間の寸法)よりも大きい。
【0034】
第1外側見付片25は、第2外側見付片26に対向する基端側部位と、対向する第2外側見付片26の先端を越えて延びる先端側部位と、を備え、先端側部位の内面には、高さ方向に間隔を存して複数のバネ材5が固定(接着剤や両面テープ等による接着等)されている。縦枠2の第1外側見付片25は、開口部枠材3の第1見付辺30との間に高さ方向に亘って複数のバネ材5を設けた状態で、螺子S1で第1見付辺30に固定される(
図4(A)、(B))。
【0035】
図7に示すように、本実施形態に係るバネ材5は、側面視波形の板バネであり、第1側に膨出する中央の膨出部50と、第2側に膨出する左右の膨出部51と、を備えている。中央の膨出部50には、螺子S1の挿通孔500が形成されている。バネ材5は、中央の膨出部50が縦枠2の第1外側見付片25の内面に当接し、左右の膨出部51が開口部枠材3の第1見付辺30の外面に当接するように設けられる。
【0036】
バネ材5は、弾性変形によって、縦枠2の見込方向(Y方向)の厚さが可変となっており、螺子S1を締めることで、外力が作用しない状態からバネ材5が潰れるように変形してバネ材の厚さが小さくなり、その状態から螺子S1を緩めると、バネ材5の厚さが当該バネ材5の復元力で大きくなる。すなわち、螺子S1の締緩によりバネ材5の厚さを調整することによって、縦枠2の第1外側見付片25と開口部枠材3の第1見付辺30との間隔を調整することができる。
【0037】
本実施形態では、縦枠2の第2外側見付片26を第1外側見付片25に比べて短尺としたことによって、第2外側見付片26が邪魔となることなく、第1外側見付片25を正面から開口部枠材3の第1見付辺30に対向させて、これらの間にバネ材5を設けた状態で螺子S1で固定することが可能となっている(
図4(A))。
【0038】
本実施形態では、螺子S1を締め込んでバネ材5が最も潰れた状態において、縦枠2の第2外側見付片26の外面と開口部枠材3の第2見付辺31の外面が略面一となるように構成されている(
図4(B))。この状態において、縦枠2の第2外側見付片26の先端は、開口部枠材3(第2見付辺31と見込辺32からなる角部)から離間している。
【0039】
螺子S1を締め込んで、縦枠2の第2外側見付片26の外面と開口部枠材3の第2見付辺31の外面とを面一とした状態で、面一であるこれらの外面に跨るように金属板(例えば、スチール製の板材)からなる連結部材6を当接させ、螺子S2で連結部材6と第2見付辺31を連結し、螺子S3で連結部材6と第2外側見付片26を連結する(
図4(C)、
図5)。連結部材6は、開口部枠材3の長さ方向に延びる長尺部材であっても、あるいは、複数の短尺部材を開口部枠材3の長さ方向に亘って間隔を存して設けるようにしてもよい。
【0040】
図5では、螺子S1を締め付けてバネ材5を潰した状態で第1外側見付片25を第1見付辺30に固定し、見込方向(Y方向)の位置調整を行うことなく、螺子S2、S3を用いて、連結部材6を介して、第2外側見付片26と第2見付辺31を固定してなる固定構造を示している。本実施形態では、全ての螺子S1を締めて全てのバネ材5の厚さを小さくした状態で第1外側見付片25を第1見付辺30に固定し、必要に応じて、第1外側見付片25の高さ方向の所定の一箇所あるいは複数箇所において螺子S1を緩めてバネ材5の厚さを大きくすることで、ドア枠(縦枠2)の前後方向の姿勢を調整する。
図2、
図5は、開口部枠材3に対する縦枠2の見込方向(Y方向)の位置調整が必要無かった箇所の固定構造を示している。開口部枠材3に対してドア枠が固定された後で、仕上げの壁パネルWが取り付けられ、ドア枠の開口部枠材3への固定構造は外部に露出することがない(
図2、
図6参照)。
【0041】
開口部枠材3に対する縦枠2の見込方向(Y方向)の位置調整について説明する。螺子S2で連結部材6と第2見付辺31を連結し、螺子S3で連結部材6と第2外側見付片26を連結する前、あるいは、
図4(B)の状態(第2外側見付片26と第2見付辺31が全く連結されていない状態)において、見込方向(Y方向)の位置調整が必要な場合に、螺子S1を緩めると、バネ材5が弾性復元して厚くなり、第1外側見付片25が手前側(第1側)へ押し出されて、縦枠2が手前側(第1側)へ移動する。この時、縦枠2の第2外側見付片26の先端は、開口部枠材3(第2見付辺31と見込辺32からなる角部)から離間しているので、第2外側見付片26が開口部枠材3に干渉することがない。
【0042】
螺子S1を緩めてバネ材5が弾性復元して厚くなった状態を
図6に示す。縦枠2が第1側に移動することで、開口部枠材3の第2見付辺31の外面と、縦枠2の第2外側見付片26の外面との間に段差が生じる。
図6に示す態様では、連結部材6を、開口部枠材3の第2見付辺31の外面に当接させて螺子S2で固定する一方、連結部材6と縦枠2の第2外側見付片26との間にスペーサ7を設けることで段差を無くして、螺子S3で連結部材6とスペーサ7と第2外側見付片26を連結している。あるいは、スペーサ7を挿入せずに、連結部材6と第2外側見付片26を螺子S3で直接固定してもよい。金属板からなる連結部材6は弾性を備えているので、螺子S3を締め込むことで連結部材6が変形して第2外側見付片26に当接する。
【0043】
開口部枠材3に対する縦枠2の固定構造及び固定方法について説明したが、開口部枠材3に対する上枠1の固定構造も同じ構造を備えており、縦枠2の第1外側見付片25、第2外側見付片26を、上枠1の第1外側見付片15、第2外側見付片16に置き換えることで、上記固定構造及び固定方法の記載を援用することができる。すなわち、開口部枠材3に対する縦枠2の固定構造及び固定方法の記載は、開口部枠材3に対するドア枠(上枠1と左右の縦枠2からなる)の固定構造及び固定方法の記載として理解することができる。
【0044】
図示の態様では、
図1に示すように、左右の縦枠2の第1外側見付片25は、それぞれ、高さ方向に間隔を存して配置した5個のバネ材5を挟んで5本の螺子S1で開口部枠材3の第1見付辺30に固定されており、上枠1の第1外側見付片15は、それぞれ、開口幅方向に間隔を存して配置した3個のバネ材5を挟んで3本の螺子S1で開口部枠材3の第1見付辺30に固定されている。ドア枠は、全ての螺子S1を締めて全てのバネ材5を潰して厚さを小さくした状態で開口部枠材3に固定され、必要に応じて、第1外側見付片15、25の長さ方向の所定の一箇所あるいは複数箇所において螺子S1を緩めてバネ材5の厚さを大きくすることで、ドア枠の前後方向の姿勢を調整する。なお、図示のバネ材5の個数は例示であって、バネ材5の個数は限定されない。
【0045】
図8を参照しつつ、ドア枠の前後方向の姿勢調整、すなわち、傾きないし倒れを調整して垂直姿勢とする調整、について説明する。
図8では、開口部枠材3が前後方向(Y方向)に傾いている場合(具体的には、上方に向かうにしたがって、第1側から第2側に傾いている)を想定している。説明の便宜上、傾きは誇張されている点に留意されたい。仮に、ドア枠を開口部枠材3に沿って取り付けるとすると、ドア枠も第2側に倒れた状態で固定されることになる。
【0046】
本実施形態では、先ず、全ての螺子S1を締めて全てのバネ材5の厚さを小さくした状態で、ドア枠の第1外側見付片25、15を開口部枠材3の第1見付辺30に固定する。次いで、必要に応じて、左右の縦枠2の上側の螺子S1、及び、上枠1の螺子S1を緩めて、ドア枠の上方部位を第1側に押し出すことで、ドア枠を垂直姿勢とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 上枠
10 第1見付面
15 第1外側見付片(ドア枠の背面の第1見付片)
16 第2外側見付片(ドア枠の背面の第2見付片)
2 縦枠
20 第1見付面
21 第2見付面
25 第1外側見付片(ドア枠の背面の第1見付片)
26 第2外側見付片(ドア枠の背面の第2見付片)
3 開口部枠材
30 第1見付辺(第1見付面)
31 第2見付辺(第1見付面)
32 見込辺
4 スタッド
4´ ランナー
5 バネ材
6 連結部材
S1 螺子
S2 螺子
S3 螺子