(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】包装シート、及び包装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20231201BHJP
A61F 13/551 20060101ALI20231201BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/551 200
A61F13/56 100
(21)【出願番号】P 2020039793
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼平 明良
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-511993(JP,A)
【文献】国際公開第84/000486(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/071511(WO,A1)
【文献】特開2019-115586(JP,A)
【文献】特開2014-195540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/551
A61F 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品を包装するための細長形状の包装シートであって、
長手方向の一端に設けられた挿入片と、
前記挿入片を挿入可能な挿入片受容部とを有し、
前記挿入片受容部が、前記長手方向に離間して複数設けられている、
包装シート。
【請求項2】
吸収性物品を包装するための細長形状の包装シートであって、
長手方向の一端に設けられた挿入片と、
前記挿入片を挿入可能な挿入片受容部とを有し、
前記挿入片受容部が、前記包装シートの短手方向に沿ったスリット又はスリットを形成可能な易破断部を有し、
前記挿入片受容部が、前記スリット又は前記易破断部に接続する、前記長手方向に沿った補助スリット又は補助スリットを形成可能な補助易破断部をさらに有する、
包装シート。
【請求項3】
前記挿入片が、前記包装シートの本体から延長された延長部である、請求項1又は2に記載の包装シート。
【請求項4】
前記挿入片に、前記包装シートの
短手方向に沿った切込みが形成されている、請求項
1から3のいずれか一項に記載の包装シート。
【請求項5】
JIS L1096:2010、8.21に記載の45°カンチレバー法に準拠して測定された剛軟度が100mmより大きい、請求項1から
4のいずれか一項に記載の包装シート。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを含む包装吸収性物品であって、
前記包装シートが前記長手方向に折り畳まれ、短手方向の両縁がシールされている、包装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装シート、及び包装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドといった吸収性物品は、衛生的に保管可能である等の理由から、包装シートによって個別に包装された状態で提供されている。このような包装された吸収性物品(包装吸収性物品又は個装吸収性物品)は通常、包装シートを吸収性物品とともに三つ折り以上に折り畳み、両縁部をシールし、包装シートの端部を粘着テープによって止めたものが多い。
【0003】
包装シートの本来の機能は、使用前の吸収性物品を包装することであるが、包装シートは、吸収性物品の交換時に使用済みの吸収性物品を廃棄するためにも使用され得る。その際、使用者の多くは、丸めた使用済み吸収性物品を包装シートで巻くようにして包んだ後、包装シートの端部に設けられている止着テープを再使用して包装シートの端部を止め、巻いた状態を保持するようにしている(例えば特許文献1の
図1(f)、特許文献2の
図5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-87306号公報
【文献】特開2013-135827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一旦剥がした止着テープの粘着力は低下していることがあり、使用済み吸収性物品の廃棄時での再使用が難しいことがある。例えば包装シートが繊維を含む材料からなっている場合等には、繊維が止着テープの粘着面に付着するため、粘着力は低下しやすい。一方、廃棄時の止着テープの再使用を考慮して、止着テープの粘着力を予め強力にしておくことも考えられるが、開封時に止着テープが包装シートから剥がれにくかったり、包装シートが破けたりすることがある。よって、止着テープに頼らずに、使用済み吸収性物品を包んだ状態を保持し、衛生的に廃棄できる構成が求められている。
【0006】
上記に鑑みた本発明の一態様は、使用済み吸収性物品の廃棄時に、止着テープを用いずに、使用済み吸収性物品を包んだ状態を保持できる吸収性物品用包装シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、吸収性物品を包装するための細長形状の包装シートであって、長手方向の一端に設けられた挿入片と、前記挿入片を挿入可能な挿入片受容部とを有する。
【0008】
上記第一の態様によれば、包装シートを用いて使用済み吸収性物品を包んだ後、最後に包装シートの一端を被せる際、長手方向の一端に設けられた挿入片を挿入片受容部に挿入受容させることができる。これにより、挿入片と挿入片受容部とが接触するので、接触により生じる摩擦力によって、被せられた包装シートの一端を固定でき、使用済み吸収性物品を包んだ状態を保持できる。また、包装シートの一端を固定するためにテープを使用する必要がなく、テープを省くことができるので、コストも削減できる。
【0009】
本発明の第二の態様では、前記挿入片受容部が、前記長手方向に離間して複数設けられている。
【0010】
上記第二の態様によれば、複数の挿入片受容部が設けられていることで、使用者は、使用済み吸収性物品の大きさに応じて適切な位置にある挿入片受容部を選択し、挿入片を受容させることができる。
【0011】
本発明の第三の態様では、前記挿入片が、前記包装シートの本体から延長された延長部である。
【0012】
上記第三の態様によれば、包装シートの本体と挿入片とが一体的になっているので、挿入片が離脱するおそれを低減できる。また、包装シートに材料を追加することなく、挿入片を形成することができるので、コストも削減できる。
【0013】
本発明の第四の態様では、前記挿入片受容部が、前記包装シートの短手方向に沿ったスリット又はスリットを形成可能な易破断部を有する。
【0014】
上記第四の態様によれば、スリット又はスリットを形成可能な易破断部という簡単な構成によって、挿入片受容部を形成できる。また、挿入片受容部を易破断部とした場合には、包装シートが破断されていないため、包装シート内にゴミ等が侵入する可能性を低減できる。
【0015】
本発明の第五の態様では、前記挿入片受容部が、前記スリット又は前記易破断部に接続する、前記長手方向に沿った補助スリット又は補助スリットを形成可能な補助易破断部をさらに有する。
【0016】
上記第五の態様によれば、包装シートの短手方向に沿ったスリット又は易破断部に加え、長手方向に沿った補助スリット又は補助易破断部が設けられていることによって、挿入片を受容するための開口が大きくなるため、挿入片を挿入片受容部に挿入しやすくなる。また、挿入片と挿入片受容部との接触により生じる摩擦力は維持されるので、挿入片と挿入片受容部とによって得られる固定作用も損なわれない。
【0017】
本発明の第六の態様では、前記挿入片に、前記包装シートの短手方向に沿った切込みが形成されている。
【0018】
上記第六の態様によれば、挿入片を挿入片受容部に挿入受容させる際、挿入片の短手方向に沿った切込みを、スリットに噛み合わせることができる。すなわち、切込みによって形成された2つの部分で包装シートを挟むように、挿入片を短手方向にスライドさせることができる。これにより、挿入片を、挿入片受容部において確実に固定させることが可能となる。
【0019】
本発明の第七の態様では、JIS L1096:2010、8.21に記載の45°カンチレバー法に準拠して測定された剛軟度が100mmより大きい。
【0020】
上記第七の態様によれば、包装シートが所定の剛軟度を有するので、挿入片を挿入片受容部へ挿入受容させた状態を適切に保持することができ、包装シートの一端を固定する効果を向上させることができる。
【0021】
本発明の第八の態様は、上記第一から第七のいずれかの態様の包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを含む包装吸収性物品であって、前記包装シートが前記長手方向に折り畳まれ、短手方向の両縁がシールされている。
【0022】
上記第八の態様によれば、上記第一から第七のいずれかの態様に記載の効果を奏する包装吸収性物品を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、使用済み吸収性物品の廃棄時に、止着テープを用いずに、使用済み吸収性物品を包んだ状態を保持できる吸収性物品用包装シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一形態による包装シートの平面図である。
【
図2】
図1に示す包装シートに吸収性物品を載置した状態を示す図である。
【
図3】本発明の一形態による包装シートと、包装シートによって包装された吸収性物品とを含む包装吸収性物品の平面図を示す。
【
図4】本発明の一形態による包装シートによる、使用済み吸収性物品の包み方の例を説明するための図である。
【
図5】本発明の一形態による包装シートの変形例を示す。
【
図6】本発明の一形態による包装シートの変形例を示す。
【
図7】折り曲げ反発試験について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0026】
本発明の一実施形態は、吸収性物品用の包装シート、すなわち、吸収性物品を包むための包装シートである。本形態の包装シートによって包装される吸収性物品は、扁平状の物品であってよく、具体的には、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。
【0027】
(吸収性物品)
吸収性物品は、液不透過性の裏面シート、吸収体、及び液透過性の表面シートがこの順に積層されてなる構造を有していてよい。裏面シートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0028】
表面シートとしては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
吸収体は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。
【0030】
吸収体の厚みは、0.5~25mmの範囲内とすることができ、1.5~15mmの範囲であると好ましい。吸収体は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。
【0031】
上記吸収体は、表面シート及び裏面シートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、裏面シートと表面シートとの外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収体の側方の外方においては、幅方向両端部に長手方向に沿ってサイド不織布が設けられていてもよい。サイド不織布としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【0032】
吸収性物品は全体として細長形状であってよい。吸収性物品の全長は、140~420mmとすることができ、吸収性物品1の幅は50~110mmとすることができる。
【0033】
(包装シート及び包装吸収性物品)
図1に、一形態による包装シート10の平面図を示す。本形態による包装シートは全体として、長手方向D1及び短手方向D2を有する細長の平面視形状を有していてよい。
図1に示す形態では、包装シート10の平面視形状は全体として略長方形であるが、他の形状、例えば略長楕円形状等を有していてもよい。
【0034】
包装シート10は、包装シート本体11と、長手方向D1の一方の端に形成された挿入片12(後に詳述)とを有していてよい。
図1に示す形態では、包装シート本体11は、包装シート10の90%以上の面積を占める部分であり、平面視細長形状を有する。
【0035】
包装シート10の本体11の寸法は、包装する吸収性物品の大きさや形状によるが、例えば、包装シート10を広げた状態で、長手方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、長手方向D1に直交する短手方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。
【0036】
包装シート10の本来の機能は、使用前の吸収性物品を包装し、使用時まで衛生的に保管できるようにすることである。よって、まず包装シート10による吸収性物品の包装について説明する。
図2に、吸収性物品の包装に際し、包装シート10に吸収性物品1が重ねられた状態を示す。また、
図2は、吸収性物品が包装シート10によって包装されてなる包装吸収性物品を展開した状態を示す図でもある。
【0037】
吸収性物品1を包装する場合、
図2に示すように、包装シート10の内面に吸収性物品1を重ねた後、包装シート10を吸収性物品1とともに折り畳む。より具体的には、包装シート10の長手方向D1の一方の端部側の領域を第1折り線L1にて、長手方向D1の他方の端部側の領域を第2折り線L2にて、吸収性物品1が配置されている側に折り返す。その際、本形態では、先に第1折り線L1で折り返しても、或いは先に第2折り線L2で折り返してもよい。これにより、
図3に示すような巻き三つ折りされた状態となる。
【0038】
吸収性物品1及び包装シート10が折り畳まれた後、両側部(短手方向D2の両縁部)がシールされ、シール部18、18が形成され、包装吸収性物品100が得られる。シール部18、18は使用者の通常の力によって剥離可能である。シール部18、18によって、吸収性物品1が外部に対して露出することを防止し、また包装吸収性物品100の内側にゴミ等が侵入することも防止できる。シール部18、18は、例えばヒートシール、超音波シール、接着剤、或いは機械的手法によって形成されていてよい。機械的手法は、例えば、エンボス加工等によって包装シートの表面に変形を加え、包装シート同士を係合させる方法である。
【0039】
(挿入片及び挿入片受容部)
包装シート10は、長手方向D1の一方の端部に形成された挿入片12を備えている。
図1に示す例では、挿入片12は、包装シート10の長手方向D1の一方の端部から突出した延長部分となっている。別言すれば、挿入片12は包装シート本体11と同材料からなり、且つ本体11と一体化されている。しかし、挿入片12と本体11とを別部材として形成しておき、両者を結合させてもよい。その場合、挿入片12は、本体11と同じ材料で形成してもよいし、本体11とは別の材料で形成することもできる。
【0040】
挿入片12は、挿入片受容部14に挿入可能であり、且つ挿入後、挿入された状態を維持できるのであれば、その寸法、形状は特に限定されない。挿入片12の寸法は挿入片を構成する材料、挿入片受容部14の構成にもよるが、挿入片12の長手方向D1の長さLは、5~15mmであると好ましく、短手方向D1の長さ(幅)Wは、10~30mmであると好ましい(
図1)。
【0041】
さらに、包装シート10は、挿入片12を挿入可能な挿入片受容部14を備えている。挿入片受容部14は、スリットでもよいし、破断によってスリットを形成可能な易破断部であってもよい。易破断部は、使用者が通常の力で破断可能な線であればよく、例えば
図1に示す例のように、タイ部(シートが切れていない部分)とカット部(シートが切れている部分)とが交互に並んだミシン目であってよい。また、包装シート10の厚みを薄くしたり、包装シート10を脆弱化する薬剤を塗布したりすることによって形成された線状部であってもよい。さらに、挿入片受容部14は、スリット又は易破断部に限らず、追加的なシート片を包装シート10の外面に貼着し、挿入片12が挿入可能なポケットとして形成してもよい。
【0042】
挿入片受容部14の寸法及び形状は、挿入片12を挿入可能であれば、特に限定されない。挿入片受容部14がスリット又は易破断部である場合、挿入片受容部14の短手方向D2の幅wは、挿入片12の幅W(挿入片12の幅が場所によって異なっている場合には、挿入片12の最大幅)以上であると好ましく、挿入片12の幅Wより大きいとより好ましい。また、挿入片12及び/又は包装シート本体11の材料によっては、挿入片受容部14の幅wは挿入片12の幅Wより1~3mmほど大きいことが好ましい。
【0043】
図1に示すように、挿入片受容部14は、長手方向D1に離間して複数設けられていると好ましい。これにより、使用者は、使用済み吸収性物品の大きさ(太さ)に応じて、挿入片12を挿入すべき挿入片受容部14を選択することができる。よって、使用済み吸収性物品の大きさ、丸め方に関わらず、使用済み吸収性物品を包装シート10でコンパクトに巻き、その巻かれた状態を保持することができる。
【0044】
挿入片受容部14が複数設けられている場合、挿入片受容部14が設けられている間隔dは5~30mmであると好ましく、10~15mmであると好ましい。間隔dを上記範囲とすることにより、挿入片12を挿入して固定する位置を使用者がより自由に選択できるとともに、挿入片受容部14が過度に密集して、包装シート10が脆弱化して破れやすくなる等の不都合を防ぐことができる。
【0045】
挿入片受容部14が設けられている位置は、挿入片受容部14の数に関わらず、包装シート本体11の長手方向D1の、挿入片12が設けられている端部から、包装シート本体11の長さの2/5~4/5であると好ましい。
【0046】
また、包装シート10を広げた状態で、複数の挿入片受容部14のうち最も挿入片12に近い挿入片受容部14の位置は、包装シート本体11の長手方向D1の、挿入片12が設けられている端部から距離a離れていることが好ましい。距離aは40~180mmであってよい。また、複数の挿入片受容部14のうち最も挿入片12から遠い挿入片受容部14の位置は、包装シート本体11の長手方向D1の、挿入片12が設けられている端部から距離b離れていることが好ましい。距離bは80~360mmであってよい。
【0047】
包装シート10は、使用前の吸収性物品を包装し衛生的に保管するという機能のみならず、吸収性物品の交換時に使用済みの吸収性物品を廃棄するために、使用済み吸収性物品を包むという機能も有する。従来の包装シートで使用済み吸収性物品を包む場合、まず使用済み吸収性物品を長手方向に丸め、丸めた使用済み吸収性物品に包装シートを巻き付け、最終的には包装シートに設けられている止着テープで包装シートの端部を止めることが一般的である。止着テープで止めることにより、使用済み吸収性物品がコンパクトに丸められて包まれた状態を保持できる。よって、使用済み吸収性物品の使用面が露出しないようにでき、またサニタリーボックス内の使用済み吸収性物品の体積を低減することができる。しかしながら、止着テープの粘着力が低下している場合、止着テープを再使用できず、使用済み吸収性物品が包まれた状態を保持できないことがあった。
【0048】
これに対し、本形態による包装シート10は、挿入片12及び挿入片受容部14によって、止着テープを用いずに、使用済み吸収性物品がコンパクトに包まれた状態を保持することができるものである。以下、挿入片12及び挿入片受容部14の機能を、
図4を参照して説明する。
【0049】
図4(a)は、新しい包装吸収性物品を開封した際に吸収性物品から剥がされて得られた包装シート10上に、使用済み吸収性物品1aを載せた状態を示す。そして、使用者は、包装シート10を使用済み吸収性物品1aに巻き付けていく(
図4(b))。ここで、包装シート10に挿入片受容部14が複数設けられている場合、使用者は、使用済み吸収性物品1aのサイズによって1つの挿入片受容部14を選択することができる。そして、挿入片受容部14が易破断部となっている場合、使用者は選択した易破断部14を破断してスリットを形成することができる。
【0050】
使用済み吸収性物品1aを包装シート10で巻いた後、最終的には包装シート10の長手方向D1の端部を被せるが、その際、端部に形成されている挿入片12を、挿入片受容部(上述のように形成したスリット)14に挿し込む(
図4(c))。挿入片受容部14に挿し込まれた挿入片12は、その全部又は一部が、包装シート10の内面側に配置されることになる。その際、挿入片12と挿入片受容部14の開口とが少なくとも線接触し、挿入角度によっては、挿入片12の外面と包装シート10の内面とが面接触する。このような接触により生じる摩擦によって、挿入片12が挿し込まれた状態で維持される。
【0051】
このように、本形態では、挿入片12を挿入片受容部14に挿し込むことによって包装シート10の端部を固定することができるので、使用済み吸収性物品を包むために、止着テープを用いる必要はない。また、挿入片受容部14がスリット又は易破断部から形成されている場合、挿入片12の挿入片受容部14への挿入は、包装シート10の内面及び外面のどちらから行ってもよい。よって、本形態によれば、使用済み吸収性物品を包装シート10の内面及び外面のどちらに載せて包んでもよい。
【0052】
図5に、挿入片12の変形例を示す。
図1~
図3に示す例では、挿入片12の幅は長手方向D1にわたってほぼ一定であるが、挿入片12の平面視形状は
図1~
図3に示すような長方形に限られず、
図5(a)~(c)に示すような様々な形状を有し得る。
【0053】
例えば、
図5(a)及び(b)に示すように、挿入片12の幅が長手方向D1の位置によって異なっていてもよい。
図5(a)の例では、挿入片12は、挿入片12の先端に近付くほど、或いは包装シート10の長手方向D1外方にいくほど幅が、狭くなっている。
図5(a)の形状によれば、挿入片12が挿入片受容部14に挿入しやすくなる。また、
図5(b)の例では、挿入片12は、挿入片12の先端に近付くほど、包装シート10の長手方向D1外方にいくほど、幅が広くなっている。
図5(b)の形状によれば、挿入片12の先端で面積がより大きくなるので、挿入片受容部14への挿入後に包装シート10との接触面積が増えるため、挿入片12が抜けにくくなる。
【0054】
さらに、挿入片12は、
図5(c)に示すように、先端が丸められた形状であってもよい。この形状では、挿入片12が短手方向D2の中央で最も突出するので、挿入片受容部14への挿入が容易となる。また、角部がないことで、挿入片12の材料の剛性が高い場合等には、手で触れた時に手を傷付ける可能性を低減できる。
【0055】
また、
図5(d)に示すように、挿入片12には、短手方向D2に延びる切込み12Cが形成されていてもよい。この例では、挿入片受容部14に挿し込んだ際に切込み12Cの位置と挿入片受容部(スリット)14の位置とを合わせ、切込み12Cによって形成されている2つの部分で包装シート10を挟むように、挿入片12を短手方向D2にスライドさせることができる。すなわち切込み12Cの終端と、挿入片受容部(スリット)14の端部とを合せるように、切込み12Cと挿入片受容部(スリット)14とを噛み合わせることができる。これにより、挿入片受容部14に一旦挿入された挿入片12が抜けにくくなる。挿入片12及び包装シート本体11の材質によっては、挿入片受容部14に挿入された挿入片12と包装シート10との間での摩擦が小さい場合もあるが、本例によれば、挿入片12及び包装シート本体11の材質に関わらず、挿入片12が挿入された状態を維持できる。
【0056】
図5(e)に示す例では、挿入片12が包装シート10の端部からの延在部分ではなく、包装シート10内の一部を切断することによって形成される。
図5(e)の例では、包装シート10の長手方向D1の一方の端部に、長手方向D1内方に凸の形状を有する易破断部(ミシン目等)が形成されている。使用者は、易破断部で包装シート10を破断させて形成された凸部を持ち上げることで、挿入片12を形成することができる。なお、包装シート10には、易破断部ではなく、凸形状の切込みを形成しておくこともできる。
【0057】
また、
図5(f)に示すように、挿入片12は、複数設けられていてもよい。挿入片12が複数である場合、その数は特に限定されないが2~5であると好ましい。複数の挿入片12を有する場合、それぞれ挿入受容できる挿入片受容部14を複数形成することができる。挿入片12と挿入受容部14との複数の組合せによって、包装シート10の端部を複数の箇所で固定することができるため、使用済み吸収性物品を包んだ状態をより確実に維持することができる。
【0058】
さらに、挿入片12の先端を、包装シート10の内面側(吸収性物品が配置されている側)に折り返してもよい。これにより、挿入片12を挿入片受容部14に挿入した後、折り返し部分を挿入片受容部14の開口に引っかけることができ、固定作用を向上させることができる。折り返される部分は、挿入片12の最先端から1~5mm程度の長さであってよい。
【0059】
図6に、挿入片受容部14の変形例を示す。
図6に示す挿入片受容部14は、スリットを形成可能な易破断線(ミシン目)からなっているが、短手方向D2に沿って延びる主易破断線14aに加え、長手方向D1に沿って延びる補助易破断線14bを有している。補助易破断線14bは、1本であってもよいし、複数形成されていてもよい。そして、補助易破断線14bは、主易破断線14aと接続されていることが好ましい。
【0060】
補助易破断線14bは、例えば
図6(a)に示すように、主易破断線14aから、挿入片12に近付く方向に向かって(図面の上側に向かって)延在するよう形成されていてよい。或いは、
図6(b)に示すように、主易破断線14aから、挿入片12から離れる方向に向かって(図面の下側に向かって)延在するように形成されていてよい。
【0061】
補助易破断線14bは、主易破断線14aの短手方向D2の任意の位置から延びていてよい。但し、補助易破断線14bが1本である場合には、主易破断線14aの短手方向D2の中央から延びていると、破断により形成される受容部を大きくできるので、挿入片12を挿入しやすくなり好ましい。
【0062】
また、補助易破断線14bが2本である場合には、主易破断線14aの短手方向D2の端部から延在していて、易破断線14全体として凸形状となっていることが好ましい。この構成では、破断によって、包装シート10に凸形状の自由片を形成することができる。挿入片12を挿入した際、挿入片12の面と包装シート10の自由片の面とが互いに追随するように接触できるので、両者の間で摩擦力を維持することができ、挿入片12を固定する作用を高めることができる。
【0063】
挿入片受容部14が複数設けられている場合、複数の挿入片受容部14の構成は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、挿入片受容部14が短手方向D2に沿って延びるスリット又は易破断部である場合、その長さは、長手方向D1の挿入片12が設けられている側に近付くほど長くなっていてよい。包装シートで使用済み吸収性物品をよりきつく巻いた場合には、長手方向D1の挿入片12が設けられている側により近い挿入片受容部14を使用することになるが、きつく巻いた場合には挿し込みに手間取る場合があるので、スリット又は易破断部の長さを長くしておくことで、挿入片12を差し込みやすくなる。
【0064】
(包装シートの材料)
包装シート10を構成する材料は、特に限定されず、紙、不織布、樹脂製フィルム等であってよい。
【0065】
包装シート10が紙からなる場合、廃棄の際の環境負担が少なく、天然素材の自然な風合いを付与できるという点で好ましい。なお、本明細書において、紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着剤で膠着させて平板状にしたものを指すことができる。特に、植物繊維(パルプ)を主原料としたもの、例えば含有繊維のうち植物繊維が50%以上であるもの、好ましくは80%以上であるものを指すことができる。紙に含まれるパルプの種類としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプが含まれていてよく、これらは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。紙には、添加剤が添加されていてもよい。さらに、包装シート10に用いられる具体的な紙の例としては、洋紙、和紙、加工紙、合成紙等の様々な種類の紙を挙げることができる。また、従来他の用途で使用されている紙、例えば、新聞用紙、印刷用紙(上質紙を含む)、筆記用紙、図画用紙、包装用紙、薄葉紙、雑種紙等と呼ばれる紙を未加工で又は加工して用いることもできる。
【0066】
包装シート10の材料として紙を用いた場合には、吸収性物品を包装する際に折り畳みやすく、包装された後の状態を維持しやすくするために、目付の低い薄葉紙とすることができる。薄葉紙は、薄口模造紙、インディアンペーパー、ライスペーパー(タバコ用巻紙等として使用)、グラシン紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ろ紙等であってもよい。また、抄紙後に加工が施された紙であってもよい。上記加工とは、例えば、クレープ加工、エンボス加工、カレンダー加工、撥水加工(後述のコーティング層の形成を含む)、スリット加工、プライ加工、印刷加工等が挙げられる。クレープ加工やエンボス加工を行うことにより、強度及び柔軟性をともに向上させることができる。また、包装シート10を撥水加工する場合、例えば、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素樹脂等を含む撥水剤を、包装シート10の外面(吸収性物品が包装された状態で外部に露出する側)及び外面と反対側の内面の少なくとも一方に塗布することができる。
【0067】
包装シート10の材料として紙を用いた場合、その目付は、50~100g/m2であってよい。また、紙の厚みは、好ましくは40~200μm、より好ましくは100~200μmとすることができる。
【0068】
包装シート10に不織布を用いた場合、風合いやソフト感等を向上させることができ、好ましい。用いられる不織布としては、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布等が好ましく、これらの不織布の層を組み合わせ複数積層させたものを用いることもできる。また、不織布を構成する繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン等のポリアミド等であってよい。
【0069】
包装シート10に樹脂製フィルムを用いた場合、用いられる樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。樹脂製フィルムとしては、延伸加工されたものが好ましい。また、樹脂製フィルムは、非通気性フィルムであってもよいし、通気性フィルムであってもよい。樹脂製フィルムを用いた場合、印刷の輪郭が明瞭になり、着色剤の発色も良好になるので、包装シートのデザイン性を向上させることができる。
【0070】
包装シート10の材料は、1枚のシートが、上述の材料からなる単層のシートであってもよいし、1枚のシートが、異なる材料からなる複数の層を積層させてなる積層シートであってもよい。よって、例えば、上述の紙製のシートに、樹脂フィルムをラミネートさせて構成したものであってもよい。さらに、包装シート10は、紙又は不織布にアルミシートが積層されたアルミラミネートフィルムであってもよい。アルミラミネートフィルムを用いることで、包装シート10の剛性を特に高めることができる。
【0071】
上述のように、挿入片12は、包装シート10の本体11から延長された延長部であってもよいし、包装シート10の本体11と別個に形成され本体11に接続されていてもよい。但し、図示の形態のように、挿入片12が包装シート10の延長部として形成され、本体11及び挿入片12が同じ材料で形成されていると、包装シート本体11と挿入片12との接続部が脆弱になることもなく、また包装シート10の製造コストも低減でき、好ましい。
【0072】
なお、包装シート10の材料が比較的剛性が低く、且つ挿入片12が包装シート10の延長部として構成されていた場合には、挿入片12に硬化処理を施して挿入片12の剛性を高めてもよい。挿入片12の剛性を高くすることで、挿入片12を挿入片受容部14へ挿入しやすくなり、挿し込まれた状態を保持する機能を高めることができる。硬化処理は、例えば、樹脂の溶液又はエマルションを塗布したり、剛性が高いシート片を挿入片12に貼り付けたりすることによって行うことができる。
【0073】
包装シート10の材料、より具体的には挿入片12及び/又は本体11の材料としては、例えば、JIS L1096:2010、8.21に記載の45°カンチレバー法に準拠して測定された剛軟度が、好ましくは100mmより大きい、より好ましくは110mmより大きい材料から形成できる。用いられる材料の剛軟度が100mm以上であることで剛性を高めることができ、挿入片を挿入片受容部へ挿入しやすく、また挿入された状態を良好に維持できる。また、挿入片12及び/又は本体11は、折り曲げ反発試験において測定される角度θが、好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下である材料から形成してもよい。用いられる材料の上記測定角度θが45°以下であることで、変形後の形状保持性を高めることができる。さらに、上記のJIS L1096:2010、8.21に記載の45°カンチレバー法に準拠して測定された剛軟度が100mmより大きく、且つ折り曲げ反発試験において測定される角度θが45°以下であると、さらに好ましい。
【0074】
上記の折り曲げ反発試験は、
図7(a)に示すような、上記45°カンチレバー法で使用されるものと同様の長さ150mm、幅20mmの試験片Sを準備し、水平面に置く。続いて、長さ60mmの位置に折り線FLが形成されるように所定時間にわたり所定の荷重をかけ、荷重を除いた後に自然に持ち上がった折り返し部分の角度を測定する。より具体的には、試験片Sの端部先端s
0と端部先端s
0から120mmの位置s
120とが合うように試験片Sを捲る(
図7(a))。続いて、試験片Sの上に、50mm×50mmの正方形状の底面を有する500gの重りWTを、折り線FL全体が重りWTの底面の領域に含まれるように静かに載せる(
図7(b))。10秒間放置した後、重りを外し、水平に置かれた試験片Sの主部と、持ち上がった試験片Sの折り返し部分とがなす角度θを測定する(
図7(c))。角度θが大きいほど、折り曲げ後の反発力が大きい。
【0075】
挿入片12が包装シート10の延長部である場合、使用前の吸収性物品を包装した状態で、挿入片12は外側に配置されていてもよい(
図3)。その場合、使用者は、開封時に挿入片12を持って、包装シート10を引っ張り、シール部18、18にて包装シート10を剥がすことができる。すなわち、挿入片12によって、開封時に使用者が把持できる把持部を形成することができる。
【0076】
また、包装吸収性物品100を形成する際に、第1折り線L1(
図2)での折り畳みを最初に行い、挿入片12が包装吸収性物品100の内部に配置されるように折り畳むこともできる。その場合には、挿入片12が外部に露出しないので、開封前に、使用者が誤って挿入片12に手を引っかけ意図せず開封してしまうことを防止することができる。
【0077】
なお、
図3に示すように挿入片12が外側に配置された包装吸収性物品100においては、挿入片12を包装シート10に、粘着剤等によって、剥離可能に弱く接合しておいてもよい。その場合、挿入片12の先端を折り返して、その折返し部分に粘着剤等を塗布して接合しておいてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 吸収性物品
10 包装シート
12 挿入片
12C 切込み
14 挿入片受容部
14a 主易破断線
14b 補助易破断線
a 最も近い挿入片受容部までの距離
b 最も離れた挿入片受容部までの距離
D1 第1方向
D2 第2方向
d スリット又は易破断部の間隔
L 挿入片の長さ
W 挿入片の幅
w スリット又は易破断部の幅