(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】温度制御方法およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2020044272
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 佑也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 果穂
(72)【発明者】
【氏名】坂井 隼人
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120924(JP,A)
【文献】特開2010-10397(JP,A)
【文献】特開2013-102041(JP,A)
【文献】特開2017-11169(JP,A)
【文献】特開2016-81158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
H05H 1/46
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の処理容器内に配置され、基板を載置する載置台の内部に設けられた流路に供給される熱媒体を、前記基板に対するエッチング処理を行う場合に第1温度制御部から供給される第1の温度の前記熱媒体から、前記基板を前記処理容器から搬出した後に、前記載置台の上部に設けられた静電チャックに付着した反応生成物を除去するクリーニング処理を行う場合に第2温度制御部から供給される第2の温度の前記熱媒体に切り替える切り替え工程と、
前記処理容器内にクリーニングガスの供給を開始し、プラズマを着火する着火工程と、
前記流路の出口側における前記熱媒体の温度に基づいて、前記熱媒体の温度変化の傾きを算出する傾き算出工程と、
前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が、予め定めた設定値よりも低い第3の温度に安定するまで、前記第2温度制御部を制御する第1制御工程と、
前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が前記設定値となるように、前記第2温度制御部を制御する第2制御工程と、
を有する温度制御方法。
【請求項2】
前記第1制御工程は、前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が、前記設定値を超えた場合に、前記流路への前記熱媒体の供給元を前記第1温度制御部に切り替える、
請求項1に記載の温度制御方法。
【請求項3】
前記第1制御工程は、所定時間経過後に、前記流路への前記熱媒体の供給元を前記第2温度制御部に切り替える、
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項4】
前記第1制御工程は、前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が、前記設定値未満となった場合に、前記流路への前記熱媒体の供給元を前記第2温度制御部に切り替える、
請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項5】
前記傾き算出工程は、算出した前記温度変化の傾きが閾値以上である場合、前記第2の温度を下げるように前記第2温度制御部を制御する、
請求項1~4のいずれか1つに記載の温度制御方法。
【請求項6】
前記切り替え工程は、前回の前記第2制御工程において、前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が、前記設定値となった場合の前記第2温度制御部の設定温度を、前記第2の温度に設定する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の温度制御方法。
【請求項7】
前記設定値は、前記熱媒体の気化温度未満の温度である、
請求項1~6のいずれか1つに記載の温度制御方法。
【請求項8】
プラズマ処理装置であって、
処理容器と、
前記処理容器内に配置され、基板を載置する載置台と、
前記載置台の内部に設けられた流路に第1の温度の熱媒体を供給する第1温度制御部と、
前記流路に第2の温度の前記熱媒体を供給する第2温度制御部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記流路に供給される前記熱媒体を、前記基板に対するエッチング処理を行う場合に供給される前記第1の温度の前記熱媒体から、前記基板を前記処理容器から搬出した後に、前記載置台の上部に設けられた静電チャックに付着した反応生成物を除去するクリーニング処理を行う場合に供給される前記第2の温度の前記熱媒体に切り替えるよう前記プラズマ処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記処理容器内にクリーニングガスの供給を開始し、プラズマを着火するよう前記プラズマ処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記流路の出口側における前記熱媒体の温度に基づいて、前記熱媒体の温度変化の傾きを算出するよう前記プラズマ処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が、予め定めた設定値よりも低い第3の温度に安定するまで、前記第2温度制御部を制御するよう前記プラズマ処理装置を制御するように構成され、
前記制御部は、前記流路の出口側における前記熱媒体の温度が前記設定値となるように、前記第2温度制御部を制御するよう前記プラズマ処理装置を制御するように構成される、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度制御方法およびプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置において、半導体ウエハ等の基板に対してプラズマエッチングを行うことが知られている。基板に対するエッチング処理が行われると、反応生成物が基板の周縁部や、基板を載置する載置台の載置面の周縁部に付着することがある。載置面の周縁部に付着した反応生成物(以下、デポともいう。)は、載置面と基板との間の吸着を阻害する要因となる場合がある。これに対し、O2ガスとフッ素含有ガスとの混合ガスから生成されたプラズマを載置台に照射することでデポを除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、クリーニング時間を短縮することができる温度制御方法およびプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による温度制御方法は、切り替え工程と、着火工程と、算出工程と、第1制御工程と、第2制御工程とを有する。切り替え工程は、プラズマ処理装置の処理容器内に配置され、基板を載置する載置台の内部に設けられた流路に供給される熱媒体を、基板に対するエッチング処理を行う場合に第1温度制御部から供給される第1の温度の熱媒体から、基板を処理容器から搬出した後に、載置台の上部に設けられた静電チャックに付着した反応生成物を除去するクリーニング処理を行う場合に第2温度制御部から供給される第2の温度の熱媒体に切り替える。着火工程は、処理容器内にクリーニングガスの供給を開始し、プラズマを着火する。傾き算出工程は、流路の出口側における熱媒体の温度に基づいて、熱媒体の温度変化の傾きを算出する。第1制御工程は、流路の出口側における熱媒体の温度が、予め定めた設定値よりも低い第3の温度に安定するまで、第2温度制御部を制御する。第2制御工程は、流路の出口側における熱媒体の温度が設定値となるように、第2温度制御部を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、クリーニング時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、デポが付着する場所の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、有機膜のエッチングレートの温度依存性の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、熱媒体の使用温度範囲の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における温度制御装置の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1温度制御部から熱媒体を供給する状態の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2温度制御部から熱媒体を供給する状態の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態における熱媒体の温度が設定値以下であった場合の温度制御グラフの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態における熱媒体の温度が設定値を超えた場合の温度制御グラフの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態における温度制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本実施形態における傾き算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、本実施形態における第1制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、本実施形態における第2制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、変形例における温度制御装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する温度制御方法およびプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
基板(以下、単にウエハともいう。)上に形成されたSiOとSiNの積層膜(以下、ON積層膜という。)をエッチングする場合、載置台の内部に設けられた流路に冷却された液状の熱媒体を供給し、ウエハの温度を極低温、例えば、-40℃~-80℃程度にすることで、エッチングレートおよびマスク選択比の向上を図っている。この様なエッチングでは、エッチング中にCF系ポリマーなどの有機系デポ(反応生成物)が載置台の載置面に設けられた静電チャックの肩部やエッジリングに付着してしまう。このため、基板のエッチング処理の合間に、O2ガスを用いたWLDC(Wafer Less Dry Cleaning)にて付着したデポの除去を行っている。ところが、ウエハの温度を極低温にすると、付着するデポ量が多くなり、またWLDCによる除去レートが極端に遅くなるため、WLDCに掛かる時間が極端に長くなり、スループット悪化の要因となっている。このため、WLDCを行う場合に載置台の温度を高温にすることで除去レートを向上させることが提案されている。しかしながら、載置台の内部に設けられた流路を流れる熱媒体は、温度を上げすぎると液状から気化してしまい、熱伝達効率が低下してしまう。また、気化した熱媒体は体積膨張し、流路内の圧力が上昇してしまうため、構造的に装置が故障する虞がある。一方、熱媒体の気化温度まで余裕がある場合には、その分温度が低いため、WLDCの時間が長くなる。そこで、熱媒体を気化させることなく、なるべく高温となるように制御することで、クリーニング時間を短縮することが期待されている。
【0010】
[プラズマ処理装置1の構成]
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。プラズマ処理装置1は、例えば平行平板の電極を備えるプラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置1は、装置本体10および制御装置11を備える。装置本体10は、例えばアルミニウム等の材料により構成され、例えば略円筒形状の形状を有する処理容器12を有する。処理容器12は、内壁面に陽極酸化処理が施されている。また、処理容器12は、保安接地されている。
【0011】
処理容器12の底部上には、例えば石英等の絶縁材料により構成された略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に(例えば上部電極30の方向に向けて)延在している。
【0012】
処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。載置台PDは、載置台PDの上面においてウエハWを保持する。ウエハWは、温度制御対象物の一例である。載置台PDは、静電チャックESCおよび下部電極LEを有する。下部電極LEは、例えばアルミニウム等の金属材料により構成され、略円盤形状の形状を有する。静電チャックESCは、下部電極LE上に配置されている。下部電極LEは、温度制御対象物と熱交換を行う熱交換部材の一例である。
【0013】
静電チャックESCは、導電膜である電極ELを、一対の絶縁層の間または一対の絶縁シートの間に配置した構造を有する。電極ELには、スイッチSWを介して直流電源17が電気的に接続されている。静電チャックESCは、直流電源17から供給された直流電圧により生じるクーロン力等の静電力により静電チャックESCの上面にウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
【0014】
静電チャックESCには、配管19を介して、例えばHeガス等の伝熱ガスが供給される。配管19を介して供給された伝熱ガスは、静電チャックESCとウエハWとの間に供給される。静電チャックESCとウエハWとの間に供給される伝熱ガスの圧力を調整することにより、静電チャックESCとウエハWとの間の熱伝導率を調整することができる。
【0015】
また、静電チャックESCの内部には、加熱素子であるヒータHTが設けられている。ヒータHTには、ヒータ電源HPが接続されている。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることにより、静電チャックESCを介して静電チャックESC上のウエハWを加熱することができる。下部電極LEおよびヒータHTによって、静電チャックESC上に載置されたウエハWの温度が調整される。なお、ヒータHTは、静電チャックESCと下部電極LEの間に配置されていてもよい。
【0016】
静電チャックESCの周囲には、ウエハWのエッジおよび静電チャックESCを囲むようにエッジリングERが配置されている。エッジリングERは、フォーカスリングと呼ばれることもある。エッジリングERにより、ウエハWに対する処理の面内均一性を向上させることができる。エッジリングERは、例えば石英等、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料により構成される。
【0017】
下部電極LEの内部には、ガルデン(登録商標)等の絶縁性の流体である熱媒体が流れる流路15が形成されている。なお、熱媒体は、ブラインと表現する場合がある。流路15には、配管16aおよび配管16bを介して温度制御装置20が接続されている。温度制御装置20は、下部電極LEの流路15内を流れる熱媒体の温度を制御する。温度制御装置20によって温度制御された熱媒体は、配管16aを介して下部電極LEの流路15内に供給される。流路15内を流れた熱媒体は、配管16bを介して温度制御装置20に戻される。
【0018】
温度制御装置20は、第1の温度の熱媒体および第2の温度の熱媒体を切り替えて、下部電極LEの流路15内に供給する。第1の温度の熱媒体および第2の温度の熱媒体が切り替えられて下部電極LEの流路15内に供給されることにより、下部電極LEの温度が第1の温度および第2の温度に切り替えられる。第1の温度は、例えば0℃以下の温度であり、第2の温度は、例えば室温以上の温度である。以下では、第1の温度の熱媒体を第1の熱媒体と記載し、第2の温度の熱媒体を第2の熱媒体と記載する。第1の熱媒体および第2の熱媒体は、温度が異なるが同じ材料の流体である。温度制御装置20および制御装置11は、熱媒体制御装置の一例である。
【0019】
下部電極LEの下面には、下部電極LEに高周波電力を供給するための給電管69が電気的に接続されている。給電管69は、金属で構成されている。また、
図1では図示が省略されているが、下部電極LEと処理容器12の底部との間の空間内には、静電チャックESC上のウエハWの受け渡しを行うためのリフターピンやその駆動機構等が配置される。
【0020】
給電管69には、整合器68を介して第1の高周波電源64が接続されている。第1の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための高周波電力、すなわち高周波バイアス電力を発生する電源であり、例えば400kHz~40.68MHzの周波数、一例においては13.56MHzの周波数の高周波バイアス電力を発生する。整合器68は、第1の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷(下部電極LE)側の入力インピーダンスとを整合させるための回路である。第1の高周波電源64によって発生した高周波バイアス電力は、整合器68および給電管69を介して下部電極LEに供給される。
【0021】
載置台PDの上方であって、載置台PDと対向する位置には、上部電極30が設けられている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行となるように配置されている。上部電極30と下部電極LEとの間の空間では、プラズマが生成され、生成されたプラズマにより、静電チャックESCの上面に保持されたウエハWに対してエッチング等のプラズマ処理が行われる。上部電極30と下部電極LEとの間の空間は、処理空間PSである。
【0022】
上部電極30は、例えば石英等により構成された絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34および電極支持体36を有する。電極板34は、下面が処理空間PSに面している。電極板34には複数のガス吐出口34aが形成されている。電極板34は、例えばシリコンを含む材料により構成される。
【0023】
電極支持体36は、例えばアルミニウム等の導電性材料により構成され、電極板34を上方から着脱自在に支持する。電極支持体36は、図示しない水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、拡散室36aが形成されている。拡散室36aからは、電極板34のガス吐出口34aに連通する複数のガス流通口36bが下方に(載置台PDに向けて)延びている。電極支持体36には、拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが設けられており、ガス導入口36cには、配管38が接続されている。
【0024】
配管38には、バルブ群42および流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを有している。バルブ群42には複数のバルブが含まれ、流量制御器群44にはマスフローコントローラ等の複数の流量制御器が含まれる。ガスソース群40のそれぞれは、バルブ群42の中の対応するバルブおよび流量制御器群44の中の対応する流量制御器を介して、配管38に接続されている。
【0025】
これにより、装置本体10は、ガスソース群40の中で選択された一または複数のガスソースからの処理ガスを、個別に調整された流量で、電極支持体36内の拡散室36aに供給することができる。拡散室36aに供給された処理ガスは、拡散室36a内を拡散し、それぞれのガス流通口36bおよびガス吐出口34aを介して処理空間PS内にシャワー状に供給される。
【0026】
電極支持体36には、整合器66を介して第2の高周波電源62が接続されている。第2の高周波電源62は、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源であり、例えば27~100MHzの周波数、一例においては60MHzの周波数の高周波電力を発生する。整合器66は、第2の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷(上部電極30)側の入力インピーダンスとを整合させるための回路である。第2の高周波電源62によって発生した高周波電力は、整合器66を介して上部電極30に供給される。なお、第2の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されてもよい。
【0027】
処理容器12の内壁面および支持部14の外側面には、表面がY2O3や石英等でコーティングされたアルミニウム等により構成されたデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46により、処理容器12および支持部14にエッチング副生成物(デポ)が付着することを防止することができる。
【0028】
支持部14の外側壁と処理容器12の内側壁との間であって、処理容器12の底部側(支持部14が設置されている側)には、表面がY2O3や石英等でコーティングされたアルミニウム等により構成された排気プレート48が設けられている。排気プレート48の下方には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。
【0029】
排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。処理容器12の側壁にはウエハWを搬入または搬出するための開口12gが設けられており、開口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0030】
制御装置11は、プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件等を含むレシピが格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して装置本体10の各部を制御することにより、ウエハWにエッチング等の所定の処理を実行する。制御装置11は、制御部の一例である。
【0031】
[デポの付着場所]
ここで、
図2を用いてデポが付着する場所について説明する。
図2は、デポが付着する場所の一例を示す図である。
図2に示すように、ウエハWが静電チャックESCの上面に吸着された状態でプラズマPによる処理が行われると、静電チャックESCとエッジリングERとの境界付近である静電チャックESCの肩部にデポ101が付着する。また、ウエハWの外周部とエッジリングERとの間では、エッジリングERの上面にデポ102が付着し、ウエハWの外周部の裏面には、バックサイドポリマー(BSP:Back Side Polymer)103が付着する。デポ101,102およびBSP103は、低温になるほど、またウエハWに対するプラズマ処理を行う時間が長くなるほど、付着量が多くなる。ウエハWを複数枚連続してプラズマ処理を行うと、BSP103は処理済みのウエハWと一緒に搬出されるが、デポ101,102は継続して付着して、さらに付着量が増加する。デポ101,102が増加すると、デポ101,102が次に搬送されたウエハWと干渉したり、デポ101,102が剥がれてしまい、静電チャックESCの上面に載ってしまったりすることによって、ウエハWの吸着不良の原因となる。なお、以下の説明では、デポ101,102を合わせて肩デポと表す場合がある。
【0032】
[除去レートの温度依存性]
次に、
図3を用いてデポの除去レートの温度依存性について説明する。
図3は、有機膜のエッチングレートの温度依存性の一例を示す図である。
図3では、肩デポの代わりに有機膜(フォトレジスト)を用いており、デポの除去レートに対応する有機膜のエッチングレートの温度依存性を示している。
図3のグラフ110に示すように、有機膜のエッチングレートは、温度が高くなるほどエッチングレートも高くなる関係である。このことからも、ON積層膜のエッチングを行う極低温の領域111では、肩デポの除去レートが非常に低くなってしまうことが言え、肩デポを除去するために、相当な時間が必要となってしまう。このため、低温エッチングのステップと高温WLDCのステップを繰り返すことで、肩デポの除去に掛かる時間を短縮させ、スループットを向上させることができる。この場合、低温のステップと高温のステップとの間で大きく温度を調整することになる。なお、以下の説明では、この様な温度調整をステップ間温調ともいう。また、低温エッチングのステップの後、ダミーウエハを用いた低温WWDC(Wafer With Dry Cleaning)および低温WLDCを組み合わせた低温クリーニングのステップを数回繰り返した後、高温WLDCのステップを行ってもよい。
【0033】
ステップ間温調では、調整する温度範囲が広いため、熱媒体の使用温度範囲を考慮することが求められる。
図4は、熱媒体の使用温度範囲の一例を示す図である。
図4に示すグラフ112は、各種の熱媒体H1~H5が推奨する使用温度範囲を表したものである。グラフ112に示すように、-80℃~-40℃といった極低温領域で使用可能な熱媒体H5は、気化温度も低くなる。低温エッチングの性能を発揮するためには、低温重視の熱媒体を用いることが好ましいため、高温側の温度調整時に気化しないように制御しつつ、肩デポの除去レートもなるべく向上させることが求められる。次に、この様な温度制御を行う温度制御装置20について詳細に説明する。
【0034】
[温度制御装置20の構成]
図5は、本実施形態における温度制御装置の一例を示す図である。温度制御装置20は、第1の切替部200、第2の切替部201、第1のバイパス弁204、第2のバイパス弁205、第1温度制御部206、および第2温度制御部207を有する。
【0035】
第1温度制御部206は、配管223および配管222を介して配管16aに接続されている。また、第1温度制御部206は、配管221および配管220を介して配管16bに接続されている。本実施形態において、第1温度制御部206は、低温側である第1の熱媒体の温度を制御する。第1温度制御部206は、配管223、配管222、および配管16aを介して、温度制御された第1の熱媒体を下部電極LEの流路15内に供給する。そして、下部電極LEの流路15内に供給された熱媒体は、配管16b、配管220、および配管221を介して、第1温度制御部206に戻される。配管223、配管222、および配管16aで構成される配管は、供給配管または第1の供給配管の一例である。また、配管16b、配管220、および配管221で構成される配管は、戻り配管または第1の戻り配管の一例である。
【0036】
第2温度制御部207は、配管226および配管225を介して、接続位置Aにおいて配管16aおよび配管222に接続されている。また、第2温度制御部207は、配管228および配管227を介して、接続位置Bにおいて配管16bおよび配管220に接続されている。本実施形態において、第2温度制御部207は、高温側である第2の熱媒体の温度を制御する。第2温度制御部207は、配管226、配管225、および配管16aを介して、温度制御された第2の熱媒体を下部電極LEの流路15内に供給する。そして、下部電極LEの流路15内に供給された熱媒体は、配管16b、配管227、および配管228を介して、第2温度制御部207に戻される。配管226および配管225で構成される配管は、第2の供給配管の一例である。また、配管227および配管228で構成される配管は、第2の戻り配管の一例である。
【0037】
第1温度制御部206と第2温度制御部207とは、配管208で接続されている。配管208は、第1の熱媒体を貯留する第1温度制御部206内のタンクの液面と、第2の熱媒体を貯留する第2温度制御部207内のタンクの液面とを調整する。これにより、熱媒体の漏洩が防止される。
【0038】
第1の切替部200は、配管16aおよび配管225と、配管222との接続部分に設けられており、下部電極LEの流路15内を流れる熱媒体を第1の熱媒体または第2の熱媒体に切り替える。第1の切替部200は、第1の供給弁2000および第2の供給弁2001を有する。
【0039】
第2の切替部201は、配管16bおよび配管227と、配管220との接続部分に設けられており、下部電極LEの流路15内から流れ出た熱媒体の出力先を、第1温度制御部206または第2温度制御部207に切り替える。第2の切替部201は、第1の戻り弁2010および第2の戻り弁2011を有する。本実施形態において、第1の供給弁2000、第2の供給弁2001、第1の戻り弁2010、および第2の戻り弁2011は、いずれも二方弁である。
【0040】
配管220と配管221の接続位置Dと、配管222と配管223の接続位置Cとの間には、配管224が設けられている。配管224は、バイパス配管の一例である。配管224には、第1のバイパス弁204が設けられている。
【0041】
配管227と配管228の接続位置Fと、配管225と配管226の接続位置Eとの間には、配管229が設けられている。配管229は、バイパス配管の一例である。配管229には、第2のバイパス弁205が設けられている。
【0042】
温度制御装置20内の配管16aには、流路15の入口側の温度を計測する温度計210が設けられている。また、温度制御装置20内の配管16bには、流路15の出口側の温度を計測する温度計211が設けられている。なお、温度計210,211は、温度制御装置20の外部に設けてもよい。例えば、温度計210,211は、下部電極LEの直下、例えば配管16aと流路15の接続部および流路15と配管16bの接続部に設けるようにしてもよく、下部電極LEと温度制御装置20の中間地点に設けるようにしてもよい。
【0043】
第1の供給弁2000、第2の供給弁2001、第1の戻り弁2010、第2の戻り弁2011、第1のバイパス弁204、および第2のバイパス弁205の開閉は、制御装置11によってそれぞれ制御される。
【0044】
[温度制御装置20の動作]
図6は、第1温度制御部から熱媒体を供給する状態の一例を示す図である。
図6は、エッチング処理を行う場合に、第1温度制御部206から流路15に対して低温側である第1の熱媒体を供給する状態を示している。なお、以下の図では、各種の弁について、開である弁を白抜きで表現し、閉である弁を黒塗りで表現している。
【0045】
図6に示すように、第1温度制御部206は、第1の熱媒体を流量Q
Lで配管223に供給する。第1の熱媒体は、第1のバイパス弁204が閉じているので、接続位置Cを経由して配管222に流量Q
Lで流れる。第1の熱媒体は、第1の供給弁2000が閉、第2の供給弁2001が開であるので、第2の供給弁2001と接続位置Aを経由して入口側の配管16aに流量Q
Lで流れ、下部電極LE内の流路15に供給される。
【0046】
第1の熱媒体は、流路15を流れた後、出口側の配管16bを経由して接続位置Bに流量QLで流れる。第1の熱媒体は、第1の戻り弁2010が閉であるので、配管16bから接続位置Bと第2の戻り弁2011を経由して配管220に流量QLで流れる。第1の熱媒体は、第1のバイパス弁204が閉じているので、接続位置Dを経由して配管221に流量QLで流れ、第1温度制御部206に戻る。このとき、第1の熱媒体の温度は、温度計210の計測値に基づいて制御される。
【0047】
一方、第2温度制御部207から供給される高温側である第2の熱媒体は、配管226に流量QHで供給される。第2の熱媒体は、第1の供給弁2000、および、第1の戻り弁2010が閉であり、第2のバイパス弁205が開であるので、配管226、接続位置E、配管229、第2のバイパス弁205、接続位置Fおよび配管228を流量QHで流れ、第2温度制御部207に戻る。
【0048】
図7は、第2温度制御部から熱媒体を供給する状態の一例を示す図である。
図7は、クリーニング処理(WLDC)を行う場合に、第2温度制御部207から流路15に対して高温側である第2の熱媒体を供給する状態を示している。
【0049】
図7に示すように、第2温度制御部207は、第2の熱媒体を流量Q
Hで配管226に供給する。第2の熱媒体は、第2のバイパス弁205が閉じているので、接続位置Eを経由して配管225に流量Q
Hで流れる。第2の熱媒体は、第1の供給弁2000が開、第2の供給弁2001が閉であるので、第1の供給弁2000と接続位置Aを経由して入口側の配管16aに流量Q
Hで流れ、下部電極LE内の流路15に供給される。
【0050】
第2の熱媒体は、流路15を流れた後、出口側の配管16bを経由して接続位置Bに流量QHで流れる。第2の熱媒体は、第2の戻り弁2011が閉であるので、配管16bから接続位置Bと第1の戻り弁2010を経由して配管227に流量QHで流れる。第2の熱媒体は、第2のバイパス弁205が閉じているので、接続位置Fを経由して配管228に流量QHで流れ、第2温度制御部207に戻る。このとき、第2の熱媒体の温度は、温度計211の計測値に基づいて制御される。
【0051】
一方、第1温度制御部206から供給される低温側である第1の熱媒体は、配管223に流量QLで供給される。第1の熱媒体は、第2の供給弁2001、および、第2の戻り弁2011が閉であり、第1のバイパス弁204が開であるので、配管223、接続位置C、第1のバイパス弁204、配管224、接続位置Dおよび配管221を流量QLで流れ、第1温度制御部206に戻る。
【0052】
[熱媒体の切り替え]
制御装置11は、エッチング処理を完了してWLDCに移行する場合、載置台PDの温度を素早く切り替えるために、下部電極LE内の流路15に供給される熱媒体を
図6に示す状態から
図7に示す状態へと切り替える。つまり、制御装置11は、第1温度制御部206から供給される低温側の第1の熱媒体から、第2温度制御部207から供給される高温側の第2の熱媒体へと切り替える。なお、以下の説明では、低温側の第1の熱媒体の温度は、例えば、-50℃とし、高温側の第2の熱媒体は、例えば、50℃として説明する。
【0053】
この様な熱媒体の切り替え時における過渡状態について、
図8および
図9を用いて説明する。
図8は、本実施形態における熱媒体の温度が設定値以下であった場合の温度制御グラフの一例を示す図である。
図9は、本実施形態における熱媒体の温度が設定値を超えた場合の温度制御グラフの一例を示す図である。また、
図8に示すグラフ120、および、
図9に示すグラフ130は、流路15の出口側の温度計211の計測値、つまりリターン側温度T
rの過渡状態を示している。
【0054】
制御装置11は、グラフ120に示す、温度変化が急激である区間121、温度変化を安定化させる区間122、および、安定した温度を徐々に設定値まで上昇させる区間123において、それぞれ異なる制御を行う。同様に、制御装置11は、グラフ130に示す、温度変化が急激である区間131、温度変化を安定化させる区間132、および、安定した温度を徐々に設定値まで上昇させる区間133において、それぞれ異なる制御を行う。
【0055】
制御装置11は、区間121,131において次の制御を行う。まず、制御装置11は、温度制御装置20の各弁を制御して、流路15に供給される熱媒体を、第1温度制御部206側の第1の熱媒体から、第2温度制御部207側の第2の熱媒体へと切り替える。このとき、制御装置11は、前回の区間123,133において、リターン側温度Trが設定値T3で安定したときの第2温度制御部207の設定温度を、今回の区間121,131の開始時点における第2温度制御部207の設定温度として反映させるようにしてもよい。
【0056】
制御装置11は、所定時間待機後、処理容器12内にクリーニングガスの供給を開始し、プラズマを着火する。なお、クリーニングガスとしては、O2ガスを用いることができる。グラフ120,130では、プラズマの着火時刻をt0とし、このときのリターン側温度TrをT0とする。T0は、例えば-50℃である。下部電極LEでは、プラズマによる入熱に加え、流路15内において第1の熱媒体が第2の熱媒体に押し出されることで、第2の熱媒体によっても温度が上昇する。また、リターン側温度Trも同様に上昇する。制御装置11は、時刻t0からt1の間の任意の時間に基づいて、温度変化の傾きを算出する。任意の時間は、例えば、熱媒体の切り替えから一定時間経過するまでの時間や、熱媒体の切り替えから所定温度に到達するまでの時間を用いることができる。なお、時刻t1のときのリターン側温度TrをT1とする。T1は、例えば30℃~40℃とすることができる。
【0057】
制御装置11は、算出した温度変化の傾きが閾値m1以上であるか否かを判定する。制御装置11は、温度変化の傾きが閾値m1以上であると判定した場合(つまり、グラフ130となる場合)には、第2温度制御部207の設定温度を下げる。制御装置11は、温度変化の傾きが閾値m1未満であると判定した場合(つまり、グラフ120となる場合)には、第2温度制御部207の設定温度は変更しない。制御装置11は、時刻t1になると、区間122,132の制御に移行する。なお、閾値m1は、予め実験等によって求めておくが、前回の温度制御処理の結果を反映するようにしてもよい。
【0058】
制御装置11は、区間122,132において次の制御を行う。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超えたか否かを判定する。なお、設定値T3は、第2の熱媒体の気化温度未満の温度であって、なるべく高い温度、例えば、気化温度T4-5℃といった温度である。例えば、気化温度T4を55℃とすると、設定値T3は50℃とすることができる。なお、設定値T3は、気化温度T4の直前の温度、例えば54.5℃といった値としてもよい。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超えていない場合には、リターン側温度Trの変化量mが閾値m2以上であるか否かを判定する。制御装置11は、リターン側温度Trの変化量mが閾値m2未満であると判定した場合には、第2の熱媒体の温度変化が安定したとして区間123,133の制御に移行する。一方、制御装置11は、リターン側温度Trの変化量mが閾値m2以上であると判定した場合には、リターン側温度Trが設定値T3を超えたか否かの判定に戻る。なお、閾値m2は、予め実験等によって求めておく値である。
【0059】
制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超えたと判定した場合(つまり、グラフ130となる場合)には、流路15に供給する熱媒体を第1温度制御部206側に切り替える。また、制御装置11は、第2温度制御部207の設定温度を下げる。すなわち、制御装置11は、応答速度が速い熱媒体の切り替えと、応答速度が遅い第2温度制御部207の設定温度の変更とを組み合わせて、流路15に供給する熱媒体の温度を制御する。制御装置11は、所定時間待機後、リターン側温度Trが気化温度T4以上であるか否かを判定する。制御装置11は、リターン側温度Trが気化温度T4以上であると判定した場合には、エラーを通知して温度制御処理およびクリーニング処理を中止する。
【0060】
制御装置11は、リターン側温度Trが気化温度T4未満であると判定した場合には、リターン側温度Trが設定値T3未満であるか否かを判定する。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3以上であると判定した場合には、所定時間待機後、リターン側温度Trが気化温度T4以上であるか否かの判定に戻る。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3未満であると判定した場合には、流路15に供給する熱媒体を第2温度制御部207側の第2の熱媒体に切り替え、リターン側温度Trが設定値T3を超えたか否かの判定に戻る。なお、制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3未満であるか否かの判定に代えて、所定時間経過後に、流路15に供給する熱媒体を第2温度制御部207側の第2の熱媒体に切り替えるようにしてもよい。
【0061】
ここで、区間122,132における温度変化について説明する。グラフ120に示すように、第2の熱媒体の温度が設定値T3を超えない場合、リターン側温度Trは、時刻t1における温度T1から安定状態の温度T2まで、オーバーシュートせずに上昇する。この場合、安定状態の温度T2は、例えば45℃であったとする。一方、グラフ130に示すように、第2の熱媒体の温度が設定値T3を超える場合、設定値T3を超えた時刻tAから設定値T3以下となる時刻tBまで、熱媒体を一旦低温側の第1の熱媒体に切り替える。すると、リターン側温度Trは、安定状態の温度T2をアンダーシュートした後に再度上昇に転じ、徐々に安定状態の温度T2まで上昇する。この場合、安定状態の温度T2は、例えば49℃であったとする。つまり、リターン側温度Trが安定状態の温度T2となる時刻t2は、第2の熱媒体の温度に応じて変動する。なお、安定状態の温度T2は、第3の温度の一例である。
【0062】
制御装置11は、区間123,133において次の制御を行う。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3となるように、第2温度制御部207の設定温度を調整する。制御装置11は、所定時間待機後、リターン側温度Trが設定値T3で安定したか否かを判定する。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3で安定していない場合には、引き続き、第2温度制御部207の設定温度を調整する。なお、制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超える場合には、区間122,132における制御と同様の制御を行ってもよい。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3で安定した場合には、WLDCが完了するまで、リターン側温度Trが設定値T3で安定するように維持する。WLDCは、設定値T3における肩デポの除去レートから推測される肩デポの除去が完了する時間が経過した時、もしくは、EPD(End-Point Detector)によって、肩デポの除去が完了したと判断された時に終了する。
【0063】
[温度制御方法]
次に、本実施形態に係る温度制御方法について説明する。
図10は、本実施形態における温度制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0064】
制御装置11は、まず、熱媒体を低温側から高温側へ切り替えた際の温度変化の傾きを算出する傾き算出処理を実行する(ステップS1)。
【0065】
ここで、
図11を用いて傾き算出処理について説明する。
図11は、本実施形態における傾き算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0066】
制御装置11は、温度制御装置20の各弁を制御して、流路15に供給される熱媒体を、第2温度制御部207側の第2の熱媒体に切り替える(ステップS11)。このとき、制御装置11は、温度に関する入力値を温度計210の計測値から温度計211の計測値に切り替える。制御装置11は、所定時間待機し(ステップS12)、処理容器12内にクリーニングガスの供給を開始してプラズマを着火する(ステップS13)。制御装置11は、時刻t0からt1の間の任意の時間に基づいて、温度変化の傾きを算出する(ステップS14)。
【0067】
制御装置11は、算出した温度変化の傾きが閾値m1以上であるか否かを判定する(ステップS15)。制御装置11は、温度変化の傾きが閾値m1以上であると判定した場合(ステップS15:Yes)、第2温度制御部207の設定温度を下げて(ステップS16)、傾き算出処理を終了し、温度制御処理に戻る。制御装置11は、温度変化の傾きが閾値m1未満であると判定した場合(ステップS15:No)、第2温度制御部207の設定温度は変更せず、傾き算出処理を終了し、温度制御処理に戻る。これにより、制御装置11は、温度変化の傾きを算出することができる。
【0068】
次に、制御装置11は、第2の熱媒体の温度変化が安定するまで制御する第1制御処理を実行する(ステップS2)。
【0069】
ここで、
図12を用いて第1制御処理について説明する。
図12は、本実施形態における第1制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0070】
制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超えたか否かを判定する(ステップS21)。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超えていない場合(ステップS21:No)、リターン側温度Trの変化量mが閾値m2以上であるか否かを判定する(ステップS22)。制御装置11は、リターン側温度Trの変化量mが閾値m2未満であると判定した場合(ステップS22:No)、リターン側温度Trが安定状態の温度T2であるとして第1制御処理を終了し、温度制御処理に戻る。一方、制御装置11は、リターン側温度Trの変化量mが閾値m2以上であると判定した場合(ステップS22:Yes)、ステップS21に戻る。
【0071】
制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3を超えたと判定した場合(ステップS21:Yes)、第1温度制御部206側の第1の熱媒体に切り替える(ステップS23)。また、制御装置11は、第2温度制御部207の設定温度を下げる(ステップS24)。制御装置11は、所定時間待機し(ステップS25)、リターン側温度Trが気化温度T4以上であるか否かを判定する(ステップS26)。制御装置11は、リターン側温度Trが気化温度T4以上であると判定した場合(ステップS26:Yes)、エラーを通知して温度制御処理およびWLDCを中止する。
【0072】
制御装置11は、リターン側温度Trが気化温度T4未満であると判定した場合(ステップS26:No)、リターン側温度Trが設定値T3未満であるか否かを判定する(ステップS27)。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3以上であると判定した場合(ステップS27:No)、ステップS25に戻る。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3未満であると判定した場合(ステップS27:Yes)、第2温度制御部207側の第2の熱媒体に切り替え(ステップS28)、ステップS21に戻る。これにより、制御装置11は、リターン側温度Trを安定させることができる。
【0073】
制御装置11は、第1制御処理が完了すると、安定した温度を徐々に設定値まで上昇させる第2制御処理を実行する(ステップS3)。
【0074】
ここで、
図13を用いて第2制御処理について説明する。
図13は、本実施形態における第2制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0075】
制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3となるように、第2温度制御部207の設定温度を調整する(ステップS31)。制御装置11は、所定時間待機し(ステップS32)、リターン側温度Trが設定値T3で安定したか否かを判定する(ステップS33)。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3で安定していない場合(ステップS33:No)、ステップS31に戻る。制御装置11は、リターン側温度Trが設定値T3で安定した場合(ステップS33:Yes)、第2制御処理を終了し、温度制御処理に戻るとともに、温度制御処理を終了する。これにより、制御装置11は、リターン側温度Trを設定値T3で安定させることができる。すなわち、低温エッチングからWLDCへ遷移する際に、熱媒体を気化させることなく、なるべく高温となるように制御することで、肩デポの除去レートを向上させ、クリーニング時間を短縮することができる。また、肩デポに起因したウエハの吸着不良を抑制できるので、プラズマ処理装置1を安定運用させることができる。さらに、クリーニング時間を短縮できるので、ウエハの生産性を向上させることができる。また、配管長に起因する装置間のクリーニング時間の差を解消することができる。
【0076】
[変形例]
上記の実施形態では、第1の切替部200が二方弁である第1の供給弁2000および第2の供給弁2001により実現され、第2の切替部201が二方弁である第1の戻り弁2010および第2の戻り弁2011により実現された。これに対し、第1の切替部200および第2の切替部201が、それぞれ三方弁で実現されるようにしてもよい。
図14は、変形例における温度制御装置の一例を示す図である。
図14に示す温度制御装置20aは、上記の実施形態における温度制御装置20と比較して、第1の切替部200および第2の切替部201に代えて、第1の切替部200aおよび第2の切替部201aを有する。
【0077】
第1の切替部200aは、三方弁である供給弁2002により実現される。供給弁2002は、第1の切替部200における、第1の供給弁2000および第2の供給弁2001に対応する。第1の切替部200aは、第1の切替部200と同様に、下部電極LEの流路15内を流れる熱媒体を第1の熱媒体または第2の熱媒体に切り替える。
【0078】
第2の切替部201aは、三方弁である戻り弁2012により実現される。戻り弁2012は、第2の切替部201における第1の戻り弁2010および第2の戻り弁2011に対応する。第2の切替部201aは、第2の切替部201と同様に、下部電極LEの流路15内から流れ出た熱媒体の出力先を、第1温度制御部206または第2温度制御部207に切り替える。このように、二方弁に代えて三方弁を用いても、第1の熱媒体と第2の熱媒体とを切り替えることができる。
【0079】
以上、本実施形態によれば、制御装置11は、プラズマ処理装置1の処理容器12内に配置され、基板を載置する載置台PDの内部に設けられた流路15に供給される熱媒体を、基板に対するエッチング処理を行う場合に第1温度制御部206から供給される第1の温度の熱媒体から、基板を処理容器12から搬出した後に、載置台PDの上部に設けられた静電チャックESCに付着した反応生成物を除去するクリーニング処理を行う場合に第2温度制御部207から供給される第2の温度の熱媒体に切り替える。また、制御装置11は、処理容器12内にクリーニングガスの供給を開始し、プラズマを着火する。また、制御装置11は、流路15の出口側における熱媒体の温度に基づいて、熱媒体の温度変化の傾きを算出する。また、制御装置11は、流路15の出口側における熱媒体の温度(Tr)が、予め定めた設定値T3よりも低い第3の温度(T2)に安定するまで、第2温度制御部207を制御する。また、制御装置11は、流路15の出口側における熱媒体の温度(Tr)が設定値T3となるように、第2温度制御部207を制御する。その結果、低温エッチングからWLDCへ遷移する際に、熱媒体を気化させることなく、なるべく高温となるように制御することで、クリーニング時間を短縮することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、制御装置11は、流路15の出口側における熱媒体の温度(Tr)が、設定値T3を超えた場合に、流路15への熱媒体の供給元を第1温度制御部206に切り替える。その結果、熱媒体の温度(Tr)が気化温度T4に達するのを防止することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、制御装置11は、所定時間経過後に、流路15への熱媒体の供給元を第2温度制御部に切り替える。その結果、熱媒体の温度(Tr)が設定値T3から大幅に低下することを抑制できる。
【0082】
また、本実施形態によれば、制御装置11は、流路15の出口側における熱媒体の温度(Tr)が、設定値T3未満となった場合に、流路15への熱媒体の供給元を第2温度制御部207に切り替える。その結果、熱媒体の温度(Tr)が設定値T3から大幅に低下することを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、制御装置11は、算出した温度変化の傾きが閾値以上である場合、第2の温度を下げるように第2温度制御部207を制御する。その結果、熱媒体の温度(Tr)が気化温度T4に達するのを防止することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、制御装置11は、前回の第2制御工程(第2制御処理)において、流路15の出口側における熱媒体の温度が、設定値T3となった場合の第2温度制御部207の設定温度を、第2の温度(第2の熱媒体の温度)に設定する。その結果、WLDCにおける処理温度に、より速く到達して安定させることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、設定値T3は、熱媒体の気化温度T4未満の温度である。その結果、熱媒体の温度(Tr)が気化温度T4に達するのを防止することができる。
【0086】
なお、上記の実施形態では、クリーニングガスとしてO2ガスが用いられたが、開示の技術はこれに限られない。例えば、クリーニングガスは、COガス、CO2ガス、O3ガス等の他の酸素含有ガスであってもよい。
【0087】
また、上記の実施形態では、静電チャックの肩部やエッジリングに付着してしまうデポ(反応生成物)は、CF系ポリマーなどの有機系デポであるとしたが、開示の技術はこれに限られない。基板上の被エッチング膜の種類、エッチングに用いる条件によっては、CF系ポリマー以外にシリコン等の無機物や金属が含まれている場合がある。このような場合、クリーニングガスのO2ガスに、例えばハロゲン含有ガスが添加されてもよい。ハロゲン含有ガスは、例えば、CF4ガス、NF3ガス等のフッ素系のガスが挙げられる。また、ハロゲン含有ガスは、Cl2ガス等の塩素系ガス、HBrガス等の臭素系ガスであってもよい。なお、デポ(反応生成物)にシリコン等の無機物や金属が含まれている場合であっても、クリーニング時の載置台の温度を高温にすることで除去レートを向上させることができる。
【0088】
また、上記の実施形態では、プラズマ源の一例として容量結合型プラズマ(CCP)が用いられたが、開示の技術はこれに限られない。プラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECP)、またはヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が用いられてもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、プラズマ処理装置1として、プラズマエッチング処理装置を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。温度制御された熱媒体を用いて、ウエハW等の温度制御対象物の温度を制御する装置であれば、エッチング装置以外に、成膜装置、改質装置、または洗浄装置等に対しても、開示の技術を適用することができる。
【0090】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 プラズマ処理装置
10 装置本体
11 制御装置
12 処理容器
15 流路
16a 配管
16b 配管
20,20a 温度制御装置
101,102 デポ(反応生成物)
103 BSP(反応生成物)
200,200a 第1の切替部
2000 第1の供給弁
2001 第2の供給弁
2002 供給弁
2010 第1の戻り弁
2011 第2の戻り弁
2012 戻り弁
201,201a 第2の切替部
204 第1のバイパス弁
205 第2のバイパス弁
206 第1温度制御部
207 第2温度制御部
ESC 静電チャック
LE 下部電極
PD 載置台
W ウエハ