(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61B3/15
(21)【出願番号】P 2020047158
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019176431
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 賢治
(72)【発明者】
【氏名】月原 浩一
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-280612(JP,A)
【文献】特開2010-259599(JP,A)
【文献】特開2018-029864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被検眼の情報を取得する測定部と、
前記被検者の顔を支持し前記測定部に対して移動自在に設けられ
前記被検者の顎を支持する顎受け部を少なくとも有する顔支持部と、
前記顔支持部の移動を制御する制御部と、
前記被検者の
前記顎と前記顎受け部とが含まれる被検者像を取得する撮像部と、を備え
、
前記制御部は、前記被検者像に基づいて前記顎と前記顎受け部との上下方向の距離を算出し、算出した前記上下方向の距離に基づいて前記顔支持部の移動を制御することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記撮像部で前記被検者像を取得する際に、
前記顎受け部近傍を照明する光源を設けたことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記顔支持部に対する前記顔の移動指示及び移動方向を表示する表示部、及び/又は前記移動指示及び前記移動方向を音声で出力する音発生部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被検者像に基づいて
算出された前記顎と前記顎受け部との前記上下方向の距離に基づいて、前記測定部の移動許容範囲内に前記被検眼が位置するように、前記顔支持部の移動を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記被検者像が表示される表示部と、検者からの操作入力を受け付ける操作部と、を備え、前記制御部は、前記被検者像を前記表示部に表示するとともに前記操作部からの前記操作入力に応じて、前記顔支持部の移動を制御することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記制御部と通信ネットワークを介して接続され、表示部及び検者からの操作入力を受け付ける操作部を有するコントローラを備え、前記制御部は、前記撮像部で取得した前記被検者像を前記表示部に表示し、前記操作部からの前記操作入力に基づいて、前記顔支持部の移動を制御すること特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記制御部の制御により、
前記顎受け部を移動させる顔支持部移動機構を備え
、前記制御部は、前記顎と前記顎受け部との前記上下方向の距離に基づいて前記顎受け部の移動方向、移動距離及び移動速度の何れかを含む移動情報を算出し、前記移動情報に基づいて、前記顔支持部移動機構を駆動制御することを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記撮像部が、前記測定部に備えられて被検眼像を取得する撮像部であり、前記被検眼像を取得する際と、前記被検者像を取得する際とで、撮影条件を切り替え可能に構成されたことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記撮像部が、前記被検者を異なる方向から撮影する2以上のカメラを含むことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記被検者像が表示される表示部を備え、前記制御部は、前記撮像部で撮影された前記被検者像を前記表示部にリアルタイムで表示するとともに、前記被検者像に基づいて算出した前記顎と前記顎受け部との前記上下方向の距離を、前記被検者像に重畳して前記表示部に表示することを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記顔支持部に前記顔が支持されているか否かを検出する検出部を備えたことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記測定部及び前記顔支持部が載置されて昇降自在に設けられた光学テーブルを備え、前記制御部は、前記測定部の測定許容範囲内に前記被検眼が位置するように所定の移動状態で前記光学テーブルの移動を制御し、前記光学テーブルの移動状態に応じて前記顔支持部の移動を制御することを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記被検眼が前記測定部の移動許容範囲内に位置したときに、前記測定部のアライメントを開始することを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項14】
前記撮像部は、前記顔と前記顔支持部との位置関係を把握可能であって、かつ左右の前記被検眼の少なくとも一方を含む被検者像を取得することを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記被検者像に基づいて前記被検眼の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて、前記被検眼と対峙する位置に移動するように前記測定部の移動を制御することを特徴とする請求項14に記載の眼科装置。
【請求項16】
前記被検者像が表示される表示部と、前記被検者像における検者からの前記被検眼の選択の操作入力を受け付ける操作部と、を備えたことを特徴とする請求項14又は15に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の特性を測定する測定部と、被検者の顔を支持する顔支持部(顎受け部及び額当て部)と、を備え、被検眼に対して測定部をXYZ方向に移動してアライメントを行う眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の眼科装置での測定の際には、被検者を椅子等に座らせ、顔を顔支持部に載置させた後に、顔支持部を所定方向に移動させることで、被検眼と測定部との高さ調整を行う。その後、測定部をXYZ方向に移動させて、被検眼に対して適切な位置に測定部を配置し、アライメントを行った上で、測定部によって被検眼の特性を測定する。
【0004】
しかしながら、被検者の身長や年齢等によって顔の大きさが異なることから、顎から被検眼までの高さも異なるため、顔支持部を上下移動させて高さ調整するのは煩雑で手間がかかっていた。また、被検者が眼科装置と対峙した状態では、被検者の身体や眼科装置に遮られて被検者の顔を視認しにくく、被検者の顔が顔支持部によって確実に支持されているか否かを確認しにくかった。
【0005】
このため、被検者の顔と顔支持部との位置関係が把握でき、顔支持部によって顔を確実に支持した状態で、測定部の移動許容範囲内に被検眼が位置するように、顔支持部を移動することができる技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、被検者の顔と顔支持部との位置関係を容易かつ適切に把握することが可能な眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の眼科装置は、被検者の被検眼の情報を取得する測定部と、前記被検者の顔を支持し前記測定部に対して移動自在に設けられた顔支持部と、前記顔支持部の移動を制御する制御部と、前記被検者の前記顔と前記顔支持部との位置関係を把握可能な被検者像を取得する撮像部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成されることで、撮像部が撮影した被検者像により、被検者の顔と顔支持部との位置関係を容易かつ適切に把握可能となる。このため、被検者の顔が顔支持部によって支持されているかを適切に把握できる。被検者の顔が顔支持部に支持されていない場合は、顔が顔支持部によって支持される位置まで顔支持部を移動できる。この結果、顔支持部によって被検者の顔を確実に支持することができる。また、被検者像に基づいて顔を支持した状態で顔支持部を移動させることで、測定部の移動許容範囲内に被検眼を位置させることができる。このため、被検眼に対する測定部の位置合わせを適切に行うことができる。この結果、眼科装置での測定精度及び測定効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る眼科装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る眼科装置の外観を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る眼科装置のブロック構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る眼科装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係る眼科装置の表示面に表示される被検眼像と操作ボタンと被検者像等との一例を示す説明図であって、アライメント完了前の被検眼像の状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る眼科装置の表示面に表示される被検眼像と操作ボタン等との一例を示す説明図であって、アライメント完了後の測定実行時の状態を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係る眼科装置の外観を示す正面図である。
【
図8】第3実施形態に係る眼科装置のステレオカメラの概要を示す平面図である。
【
図9】第3実施形態に係る眼科装置の表示面に表示される被検眼像と操作ボタンと被検者像等との一例を示す説明図であって、アライメント完了前の被検眼像の状態を示す図である。
【
図10】第4実施形態に係る眼科装置の表示面に表示される被検眼像と操作ボタンと被検者像等との一例を示す説明図であって、アライメント完了前の被検眼像の状態を示す図である。
【
図11】第4実施形態に係る眼科装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る眼科装置を、図面に基づいて説明する。まず
図1~
図3に基づいて、第1実施形態に係る眼科装置1の構成を説明する。
図1は第1実施形態に係る眼科装置1の外観を示す斜視図であり、
図2はその側面図である。
図3は第1実施形態に係る眼科装置1のブロック構成を示す図である。
【0012】
なお、本明細書を通じて各図に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、
図1における左右方向(X軸正方向が右方向、負方向が左方向)、前後方向(Z軸正方向が後方向、負方向が前方向)及び上下方向(Y軸正方向が上方向、Y軸負方向が下方向、高さ方向ということもある)を基準として明細書中の説明を行う。また、被検者P側(Z軸負方向)を眼科装置1の正面、被検者Pと対峙する側(Z軸正方向)を眼科装置1の背面、被検者Pの右側(X軸正方向)を眼科装置1の右側、被検者Pの左側(X軸負方向)を眼科装置1の左側と定義する。
【0013】
本実施形態の眼科装置1は、例えば、自覚検査として、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査などを実行可能であり、他覚測定として、他覚屈折測定、角膜形状測定などを実行可能な眼科装置(オートレフケラトメータ)とすることができる。
【0014】
なお、眼科装置1がオートレフケラトメータに限定されるものではない。他の異なる実施形態として、眼科装置が視標表示装置、レフラクターヘッド、視標表示装置やレフラクターヘッドを備えた検眼装置、その他の自覚検査装置、他覚屈折測定装置、角膜形状測定装置、眼底撮影装置、眼軸長測定装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、内皮細胞測定装置、スリットランプ、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)装置、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)等であってもよい。
【0015】
図1~
図3に示すように、第1実施形態に係る眼科装置1は、本体部10及び顔支持部20を有する眼科装置本体2と、眼科装置本体2が載置され昇降自在な光学テーブル30と、被検者Pが着座し昇降自在な昇降椅子50と、被検者Pの画像(被検者像M)を取得する撮像部としてのカメラ60と、眼科装置本体2、光学テーブル30及びカメラ60の動作を制御する制御部としての主制御部17と、を主に備えて構成される。また、眼科装置1は、この他にも、検者が眼科装置1に対してデータを入力したり、操作指示を与えたりするための操作部19を備える。
【0016】
本体部10は、ベース部11と測定部としての測定ヘッド12とを備えており、カバー部材13によって被覆されている。測定ヘッド12の頂部には、
図1、
図2等に示すように、表示部及び操作部としてのモニタ部14が設けられている。この他にも、遠隔操作時に検者が被検者Pに指示を与えるためのスピーカ(音発生部)や、被検者Pの応答等を検者に伝えるためのマイク等を本体部10に、又は本体部10と別個に設けてもよい。
【0017】
本体部10のベース部11と測定ヘッド12とモニタ部14とは、電気的に接続されている。また本体部10と、顔支持部20及び光学テーブル30も電気的に接続されている。このため、ベース部11と測定ヘッド12とモニタ部14との間、さらには本体部10と顔支持部20と光学テーブル30との間で、データや操作指示の通信などが可能となる。また、例えばベース部11に設けられた電力供給部から、測定ヘッド12、モニタ部14及び顔支持部20、さらには光学テーブル30に電力を供給する構成とすることもできる。なお、光学テーブル30の電力供給部は、眼科装置本体2とは別個に設けた構成とすることもできる。
【0018】
測定ヘッド12の内部には、
図2、
図3に示すように、公知の観察・撮影用の測定光学系15や測定光学系15を制御する制御回路等が設けられている。測定光学系15は、光学レンズ、撮像素子等を含み、この測定光学系15により、被検者Pの被検眼Eの前眼部、角膜、眼底等が観察及び撮影可能である。測定ヘッド12の正面には、前眼部の照明用及び膜形状を測定する測定用の光源が輪環状に配置されている。
【0019】
ベース部11には、
図2、
図3に示すように、測定ヘッド12をXYZ方向へ駆動する移動機構として、公知のXYZ駆動機構・駆動回路16が設けられている。XYZ駆動機構・駆動回路16は、駆動機構として、例えばステッピングモータが用いられる。
【0020】
測定ヘッド12は、XYZ駆動機構・駆動回路16によりベース部11に対して水平方向つまり前後左右方向(X軸方向及びZ軸方向)、及びこれに垂直な垂直方向つまり上下方向(Y軸方向)に駆動される。これにより、測定ヘッド12はベース部11に対して水平方向及び垂直方向にそれぞれ移動自在に支持されている。測定ヘッド12の駆動は、モニタ部14のタッチパネル式の表示面40を操作することで行える。すなわち、表示面40は操作部19として機能する。
【0021】
モニタ部14は、液晶ディスプレイからなり、被検眼像と操作ボタン等が表示されるタッチパネル式の表示面40を有している。モニタ部14は、カバー部材14aによって被覆されている。カバー部材14aには、制御回路ユニット等が内蔵されている。モニタ部14は、測定ヘッド12の頂部の一縁に固定された支持部12aに、水平軸回り(X軸又はZ軸回り)及び垂直軸周り(Y軸周り)に回動自在に取付けられている。この構成により、モニタ部14の表示面40を、検者の位置、姿勢、目線の高さなどに応じて、所望の角度や方向に配置できる。例えば、
図2に示すように本体部10の背面方向に表示面40を向けることや、
図1に示すように本体部10の正面方向に表示面40を向けることができる。また、モニタ部14を本体部10の右側又は左側に配置し、表示面40を右側又は左側に向けることもできる。
【0022】
制御回路ユニットは、ハードウェア的には、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等を含んで構成される。制御回路ユニットは、
図3に示す主制御部17と、内部メモリ17aと、記憶部18として機能する。主制御部17は、主にマイクロプロセッサからなり、内部メモリ17aはRAM等からなり、記憶部18はROM、EEPROM、フラッシュメモリ等からなる。
【0023】
主制御部17には、
図3に示すように、測定光学系15、XYZ駆動機構・駆動回路16、モニタ部14、記憶部18、操作部19、カメラ60、顔支持部20の駆動機構25、光学テーブル30のテーブル制御部33等が接続されている。主制御部17は、記憶部18又は内部メモリ17aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開し、適宜操作部19やからの操作入力信号に応じて、これら眼科装置1の各部を統括的に制御する。
【0024】
また、主制御部17は、カメラ60で撮影した被検者像Mを画像解析し、被検者Pの顔と顔支持部20との位置関係を検出する。位置関係の検出の一例として、本実施形態では、被検者Pの顎Cと顎受け部22との距離(距離情報)の推定値を算出する。この距離により、被検者Pの顎Cが顎受け部22に載置されているか否かを把握できる。具体的には、距離がほぼ0であれば、顎Cが顎受け部22に載置されていると判断できる。距離が0でない場合は、顎Cと顎受け部22とが離れていると判断でき、この距場合は顎Cと顎受け部22とを接触させるべく、距離に基づいて顎受け部22の移動方向、移動距離、移動速度等の移動情報を算出する。本明細書では、移動速度等、移動に関わる態様、数値、その他の条件を、「移動情報」という。また、このような移動情報に従って各部が移動している状態を、「移動状態」という。
【0025】
例えば、顎受け部22が顎Cよりも下方に位置する場合は、主制御部17は距離としてプラス値を算出し(距離>0)、この距離を移動距離とし、移動方向を上方向と決定する。この移動距離分、顎受け部22を上昇させることで、顎受け部22に顎Cを載せることができる。これに対して、顎受け部22が顎Cより高い位置にあって、顎Cを載置できない場合もある。この場合は、距離としてマイナス値を算出し(距離<0)、この絶対値を移動距離とし、移動方向を下方向と決定する。この移動距離分、顎受け部22を下降させることで、顎Cを顎受け部22に載置可能となる。その後、被写体像に基づいて再度顎Cと顎受け部22との距離を算出し、顎Cに対する顎受け部22の位置調整を行うことで、顎受け部22によって顎Cを確実かつ安定よく支持できる。顎受け部22の移動は、主制御部17の制御の下、自動で行うこともできるし、検者が手動(マニュアル)で行うこともできる。
【0026】
また、主制御部17は、モニタ部14の表示面40に、操作や確認のための各種画像を表示する。表示面40に表示される画面(操作画面、結果画面等)の例を、
図5、
図6を参照して説明するが、表示面40に表示される画面がこの例に限定されることはない。
図5、
図6に示すように、矩形状の表示面40には、被検眼像等表示領域40aと、操作ボタン表示領域40b~40dと、被検者像表示領域40gとが設けられている。被検眼像等表示領域40aには、その画面中央に矩形状の目標エリアマーク40eと最小瞳孔径判定マーク40fとが表示されている。最小瞳孔径判定マーク40fは、この最小瞳孔径判定マーク40f以下の瞳孔径の場合、測定を中止するのに用いられる。被検者像表示領域40gには、カメラ60で撮影される被検者像Mがリアルタイムで表示される。さらに本実施形態では、この被検者像Mに基づいて算出した顎Cと顎受け部22との距離(推定値)が、被検者像Mに重畳して表示される。
【0027】
このように、被検者像表示領域40gに被検者像M及び顎Cと顎受け部22との距離が表示されることで、検者はこれらの画像を視認しながら、顎受け上下動ボタンB3を操作して、顎受け部22の移動を手動(マニュアル)で適切に行える。また、画像の視認により、顎Cが適切に顎受け部22に支持されていないと判断した場合は、検者が被検者Pに対して、「顎を上げて(又は顎を下げて)顎受け部に顎を載せてください。」等のように、声がけによって移動指示及び移動方向を通知することもできる。この通知は、検者が被検者Pの近傍にいるときは、直接行ってもよいし、遠隔操作の場合は、マイクやスピーカを通じて行ってもよい。この通知により、被検者Pの姿勢を適切に是正できる。
【0028】
操作ボタン表示領域40b,40c,40dは、表示面40に向かってその被検眼像等表示領域40aを挟んでその左右両辺部と、下辺部にそれぞれ設けられている。左辺部の操作ボタン表示領域40bには、患者のIDを入力するためのIDボタンB1、右眼を選択するためのRボタンB2、顔支持部20に設けた顎受け部22を上下動させるための顎受け上下動ボタンB3、眼科装置1全体の設定をリセットするためのリセットボタンB4、レフ(眼屈折力)、ケラト(角膜形状)、レフ/ケラト等の測定モードを切り替えるための測定モードボタンB5が配置されている。また、顎受け上下動ボタンB3の近傍には、測定ヘッド12、顎受け部22、光学テーブル30の位置調整を自動で行うためモード(以下、「自動調整モード」という)へ切り替えるための自動調整ボタンB12が配置されている。この他にも、光学テーブル30を上下動させるためのテーブル上下動ボタン(昇降椅子50の上下動も制御する場合には、さらに椅子上下動ボタン)、測定ヘッド12を上下左右前後に移動させるための測定ヘッド移動ボタン等を設け、光学テーブル30(さらには昇降椅子50)、測定ヘッド12も表示面40の操作によって手動(マニュアル)で位置調整できるようにしてもよい。
【0029】
本実施形態では、自動調整ボタンB12によって位置調整の自動化を眼科装置1に設定しているが、これに限定されることはない。例えばセットアップ画面で設定する構成、本体部10に別個に設けた物理的な操作スイッチやボタンによって設定する構成とすることもできる。また、遠隔操作や無人化での自動化を行う場合は、これらのボタンを設ける必要はなく、例えば電源ボタンの投入によって自動調整モードとなる構成とすることができる。
【0030】
右辺部の操作ボタン表示領域40cには、セットアップ画面を表示するためのセットアップボタンB6、左眼を選択するためのLボタンB7、測定ヘッド12を前後方向に移動させるための測定ヘッド前後ボタン(Z方向ボタン)B8、マニュアルモード(「通常モード」ともいう。)時にカメラ60での撮影や測定ヘッド12での測定を開始させるためのスタートボタンB9、マニュアル・オート切り替えボタンB10が配置されている。
【0031】
下辺部の操作ボタン表示領域40dには、白内障等の被検眼を測定する際に用いる白内障ボタン、測定結果のプリントアウトボタン、測定値クリアボタン等、各種ファンクションボタンB11が配置されている。
【0032】
被検眼像等表示領域40aには、観察中の前眼部像Gfの他、測定結果やその他検査に関連する文字、記号、符号等の他、図形等の画像が適宜表示される。
図6には、被検眼Eの前眼部像Gfと測定結果S,C,Aが表示される。
図5、
図6において、Gf’は虹彩像、Gf”は瞳孔像である。また、P1は角膜輝点像、P2はアライメント指標像である。
【0033】
例えば、前眼部像Gfの観察モードのときに、
図5に示すように、検者が指等で被検眼像等表示領域40aの前眼部像Gfの瞳孔付近をタッチする。主制御部17は、このタッチ操作による操作入力信号を受け付けて、タッチ箇所tpに対応する画像部位が画面中心G0に位置するように、測定ヘッド12を上下左右に移動する。これにより、被検眼像の瞳孔像Gf”が画面中央に位置するように制御され、アライメントが行われる。
【0034】
このとき、主制御部17は、例えば、画面中心G0からタッチ箇所tpまでの画面上での距離Lを演算し、この距離Lに基づいてXYZ駆動機構・駆動回路16の駆動部を駆動制御する。この駆動制御により、被検眼に対して測定ヘッド12を上下左右方向(Y軸方向及びX軸方向)に移動させる。
【0035】
また、主制御部17は、目標エリアマーク40eの近傍に瞳孔中心PDOが位置して、角膜輝点像P1が検出されると、角膜輝点像P1の検出位置と画面中心G0との距離に基づいてXYZ駆動機構・駆動回路16の駆動部を駆動制御し、測定ヘッド12を上下左右方向(Y軸方向及びX軸方向)に駆動するとともに、角膜輝点像P1のピントが合焦するように、測定ヘッド12を前後方向(Z軸方向)に駆動する。そして、角膜輝点像P1が目標エリアマーク40e内に入り、かつ角膜輝点像P1の出力値が所定値を超えると、主制御部17による測定光学系15の制御により、測定が自動的に実行される。
【0036】
前述したように、モニタ部14のタッチパネルは操作部19に含まれ、その表示面40に表示された操作ボタンやキーボード等に対する操作入力を受け付け、この操作入力信号を主制御部17に送出する。また、操作部19は、本本体部10の電源ボタン、後述の光学テーブル30の電源ボタン34及び昇降レバー35等も含み、これらに対する操作入力を受け付け、この操作入力信号を主制御部17、テーブル制御部33に送出する。また、眼科装置1に検者又は被検者が操作可能なコントロールレバーや操作ボタンが備えられたり、検者用又は被検者用コントローラが備えられたりしている場合、これらも操作部19に含まれ、これらに対する操作入力を受け付け、この操作入力信号を主制御部17に送出する。
【0037】
顔支持部20は、本体部10のベース部11の前方(正面)に連結して設けられている。なお、顔支持部20が、本体部10に連結された構成に限定されるものではなく、顔支持部20が本体部10と分離し、光学テーブル30上に設置された構成でもよい。
【0038】
顔支持部20は、ベース部11に連結固定された基部21と、基部21に上下動自在に設けられた顎受け部22と、基部21の左右両側に突出して設けられた一対の支柱23と、この一対の支柱23の上端に設けられた額当て部24と、顎受け部22を上下方向に移動させる顔支持部移動機構としての駆動機構25と、等を主に備えて構成される。また、前後方向や左右方向の位置の調整を可能とするため、顔支持部20は、駆動機構25によって前後方向や左右方向に移動自在に設けられていてもよい。
【0039】
被検者Pは、例えば眼科装置本体2の前方(正面)に置かれた昇降椅子50等に着座した状態で眼科装置本体2と対峙し、顎受け部22に顎を置き、額当て部24に額Hを突き当てた状態で眼特性の測定等を受ける。なお、子供等、背が低い被検者Pの場合は、昇降椅子50に座らずに、立った状態で顔支持部20に顔を当てて測定を行ってもよい。車椅子に乗った被検者Pの場合は、車椅子に乗った状態で顔支持部20に顔を当てて測定を行ってもよい。
【0040】
顎受け部22は、被検者Pの顎が載置される部材である。本実施形態では、この顎受け部22を基部21に対して上下動自在に設けることで、顎受け部22を本体部10に対して上下動自在としているが、他の異なる実施形態として、顔支持部20全体を本体部10に対して上下動自在に構成してもよい。
【0041】
駆動機構25は、例えば、ステッピングモータを含む駆動機構、DCモータとポテンショセンサを含む駆動機構等、公知の駆動機構によって構成される。駆動機構25は主制御部17の制御により駆動して、顎受け部22を上方向又は下方向の所定の移動方向に、所定の移動量(移動距離)で、所定の移動速度により移動させる。この移動量等は、ステッピングモータのステップ数、ポテンショセンサの数値等によって検出することができ、これらの数値に基づいて容易かつ高精度に顎受け部22の移動を制御できる。
【0042】
額当て部24は、被検者Pの額Hが突き当てられる部材である。本実施形態では、額当て部24は一対の支柱23に固定されているが、他の異なる実施形態として、額当て部24が前後方向の位置を調整自在となっていてもよい。この調整も、適宜の駆動機構(顔支持部移動機構)によって行う構成とすることで、自動化による調整や操作部からの操作が可能となる。さらに手動でも行える構成としてもよい。
【0043】
また、顔支持部20は、被検眼Eの眼特性の測定中に、被検者Pの顔(頭部)が不測に移動することのないよう、被検者Pの顔を安定して支持できるものであれば、何れの構成であってもよい。他の異なる実施形態として、例えば顔支持部20が、顎受け部22及び額当て部24の一方のみを有する構成であってもよい。なお、額当て部24のみを有する場合は、この額当て部24(又は顔支持部20全体)を所定の駆動機構によって上下方向等に移動自在とすることができる。
【0044】
駆動機構25は、主制御部17によって制御される。具体的には、主制御部17は、カメラ60で撮影した被検者像Mに基づいて算出された被検者Pの顎Cと顎受け部22との距離を算出する。この距離に基づいて、主制御部17は顎受け部22の移動距離、移動方向等の移動情報を算出し、この移動情報に従って駆動機構25を制御し、顎受け部22を移動させる。また、主制御部17は、顎受け上下動ボタンB3の操作入力を受けて駆動機構25を制御し、顎受け部22を移動させる。
【0045】
なお、本実施形態では、主制御部17が顔支持部制御部として機能しているが、これに限定されることはなく、主制御部17とは別個に顔支持部制御部を設けてもよい。この場合、主制御部17からの指示信号に応じて、顔支持部制御部が駆動機構25を駆動制御して顎受け部22を移動させる。
【0046】
光学テーブル30は、眼科装置本体2が載置される天板31と、この天板31を昇降させるテーブル移動機構としての昇降機構32と、昇降機構32の駆動を制御するテーブル制御部33と、電源ボタン34と、昇降機構32を手動で作動させるための昇降レバー35と、昇降機構32が取り付けられたキャスターベース36と、を備えて構成される。なお、本実施形態では被検者Pが昇降椅子50に座った状態(座位)で測定を行う眼科装置1であるため、光学テーブル30の高さも座位での測定に対応した高さとしている。これに対して、被検者Pが立った状態(立位)で測定を行う眼科装置1とすることもできる。この場合、昇降椅子50は備える必要がなく、光学テーブル30は、立位での測定に対応した高さのものを使用する。
【0047】
昇降機構32は、テーブル制御部33の制御の下、天板31を昇降させる。これにより、被検者Pの身長や顎Cの位置に応じて、天板31の高さを調整できる。このように、昇降機構32によって実際には天板31が昇降するが、本明細書では、天板31の昇降と同等の意味で、「光学テーブル30が昇降する。」ということがある。
【0048】
昇降機構32は、天板31を支持する昇降杆32aと、この昇降杆32aを上下動自在に支持する支持杆32bと、昇降杆32aを上下動させる駆動部32cと、を備えている。この昇降杆32aの移動情報(移動方向、移動距離、移動速度等)は、ロータリーエンコーダ等によって検出され、テーブル制御部33に送出される。
【0049】
駆動部32cは、例えば、電動アクチュエータ等から構成される電動式としているが、この構成に限定されることはない。駆動部32cとして、油圧式、空圧式、ネジ式、リンク式、その他の公知の昇降機構を用いることができる。
【0050】
キャスターベース36は、光学テーブル30全体を支持する。キャスターベース36には、ロック機構付きのキャスター36aが設けられている。よって、検者等が眼科装置1を所望の設置場所へ容易に移動でき、かつ、設置場所では、キャスター36aをロックすることで、不測に移動しないように眼科装置1を安定して設置できる。
【0051】
テーブル制御部33は、マイクロプロセッサと、RAM、ROM、フラッシュメモリ等からなる内部メモリ33aと、等を有して構成される。テーブル制御部33は、昇降機構32、電源ボタン34及び昇降レバー35と電気的に接続されている。電源ボタン34は、ON/OFFの操作入力信号をテーブル制御部33に送出する。昇降レバー35は、押し上げ操作と押し下げ操作が自在であり、これらの操作がされると、上昇又は下降の操作入力信号をテーブル制御部33に送出する。
【0052】
テーブル制御部33は、昇降レバー35からの上昇又は下降の操作入力信号を受け付けて、昇降機構32の駆動部32cを制御して駆動させ、天板31(光学テーブル30)を上下方向に移動させる。また、自動調整モードの場合には、テーブル制御部33は、主制御部17からの入力信号に基づいて駆動部32cを制御して、天板31を上下方向に移動させる。
【0053】
昇降椅子50は、座面51の高さ調整が可能な公知の椅子を用いることができる。例えば、ガス圧式のものであってもよいし、電動式のものであってもよい。本実施形態では、昇降椅子50は眼科装置本体2や光学テーブル30と連動することなく、単独で座面51の高さを調整可能なものとしているが、これに限定されることはない。例えば、表示面40に表示された操作ボタンの操作に従って、座面51を上下方向等に移動する構成とすることもできる。また、主制御部17の制御によって、顎受け部22と光学テーブル30と昇降椅子50とを、各々適切な配置となるように移動制御する構成とすることもできる。
【0054】
カメラ60は、被検者Pの顔と顔支持部20との位置関係を把握可能な被検者像Mを取得し、その画像信号を主制御部17へ送出する。本実施形態では、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握可能な被検者像Mを取得する。被検者像Mとしては、特に限定されることはなく、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握できる画像であればよく、本実施形態では、顎Cと顎受け部22とが含まれる画像を取得している。
【0055】
本実施形態では、
図1に示すように、カメラ60を本体部10のベース部11の下方に被検者Pの顔に向けて設置し、被検者Pの顔面の下方斜め方向から被写体像を取得している。
【0056】
カメラ60による撮影は、人感センサや顔認証機能によって、被検者Pの顔が顔支持部20の近傍に位置したことを検知して、自動で行ってもよい。また、検者が操作部19(例えば、スタートボタンB9)等を操作して、カメラ60に撮影指示を与えることによって行ってもよい。
【0057】
カメラ60としては、特に限定されることはなく、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、CCD等公知のカメラが挙げられる。暗室等での測定の場合は、赤外線カメラ等を用いてもよい。また、撮影する画像の種類としては、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。
【0058】
また、本実施形態ではカメラ60を一台設置しているが、これに限定されることはなく、2台以上設けてもよい。複数の被検者像Mに基づいて、より適切に顎Cと顎受け部22との位置関係を把握でき、顎Cと顎受け部22との距離もより精度よく算出できる。
【0059】
上述のような構成の第1実施形態に係る眼科装置1の動作の一例を、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
図4に示すフローチャートの動作は、眼科装置1の電源が投入されたときに開始される。以下では、検者が被検者Pの傍らにいて、被検者Pを補助しながら、モニタ部14の表示面40を操作して眼科装置1に操作指示を与える場合を想定して説明する。
【0060】
まず、被検者Pの被検眼Eの特性を測定するに際して、検者は眼科装置1(眼科装置本体2及び光学テーブル30)の電源を投入する。これにより、眼科装置1が起動し、主制御部17が内部メモリ17aに格納されたプログラムを実行し、各部の初期設定を行う。
【0061】
この初期設定の際に、主制御部17は、駆動機構25を制御して駆動させ、顔支持部20の顎受け部22を初期位置に移動させるリセット動作を実行する。さらに、主制御部17は、XYZ駆動機構・駆動回路16、昇降機構32を制御して駆動させ、測定ヘッド12及び光学テーブル30(さらには昇降椅子50)のリセット動作を実行してもよい。または、表示面40のリセットボタンB4の操作を受け付けて、このようなリセット動作を行ってもよい。また、主制御部17の制御により、モニタ部14の表示面40には、各種操作ボタンが表示された画面が表示される。
【0062】
顎受け部22等の高さ調整を自動で行う場合は、自動調整モードに切り替えるべく、検者は自動調整ボタンB12を操作する。これに対して、検者自身が高さ調整を手動で行う場合は、自動調整ボタンB12の操作を行わず、通常モードのままとする。
【0063】
次に、座位で測定する場合は被検者Pを昇降椅子50に座らせ、眼科装置本体2と対峙させる。また、本実施形態のように昇降可能な光学テーブル30や昇降椅子50を備える場合は、必要に応じて光学テーブル30や昇降椅子50の高さ調整を行う。立位で測定する場合は、立位状態で被検者Pを眼科装置本体2と対峙させる。そして、検者は被検者Pに、顎Cを顎受け部22に載置し、額Hを額当て部24に突き当てるように指示する。被検者Pは、背中を丸めたりすることなく、自然な姿勢を保った状態で、額Hを額当て部24に突き当て、顎Cを顎受け部22に載置する。このとき、顎受け部22に顎Cが載置できない場合でも、次の工程で顎受け部22の高さ調整を行うため、被検者Pが無理に顎受け部22に顎Cを載置する必要はない。
【0064】
被検者Pが顔支持部20で顔を支持されたことを確認したら(または支持はされていないが支持可能な状態であると判断したら)、検者は表示面40で、例えば、スタートボタンB9を操作することで、眼科装置1に被検者像Mの撮影指示を与える。
【0065】
この撮影指示入力を受けて、ステップS1で、カメラ60が被検者Pの被検者像Mを撮影する。なお、人感センサや顔認証機能によって被検者Pの顔を所定距離で認識したときに、カメラ60が自動で撮影を開始してもよい。カメラ60は撮影した被検者像Mの画像信号を主制御部17へ送出する。この画像信号を受け付けた主制御部17は、ステップS2で、被検者像Mの表示面40の被検者像表示領域40gへの表示を開始する。よって、検者は表示面40で被検者像Mを視認しながら、操作ボタン等の操作を行える。このとき、測定光学系15の撮像素子で取得された画像(被検眼Eの前眼部像が取得できたときは前眼部像)も被検眼像等表示領域40aに表示される。
【0066】
次にステップS3で、主制御部17は、自動調整モードであるか判定し、自動調整モードの場合は(YES)ステップS4へ進む。一方、ステップS4の判定がNO、つまり通常モードの場合は高さ調整を検者が手動で行うため、ステップS17へ進む。
【0067】
まず、ステップS4以降の自動調整モードでの処理について説明する。このステップS4へ進むと、主制御部17は、被検者像Mを解析して顎Cと顎受け部22との距離を算出し、この距離に基づいて、顎受け部22の移動方向、移動距離等の移動情報を算出する。また、
図5に示すように、算出した距離の数値(推定値)を被検者像Mに重畳して表示する。
【0068】
次に、ステップS5へ進み、主制御部17は移動情報に基づいて駆動機構25を駆動制御し、顎受け部22を上下方向に移動させ、高さ調整を行う。これにより、被検者Pの顎Cを顎受け部22で安定して支持できる。また、被検者Pも自然な姿勢で眼科装置本体2と対峙できる。また、本実施形態の眼科装置1は、片眼ずつ測定を行う装置であるため、まず右の被検眼Eを測定する際には、検者が表示面40でRボタンB2を操作し、測定ヘッド12を左右方向に移動させ、右の被検眼Eに対峙させておく。その後、プログラムはステップS6へ進む。
【0069】
ステップS6では、主制御部17は、測定光学系15で撮影した画像を解析し、前眼部像Gfが適切に検出されたか否かを判定する。検出された場合(YES)は、被検眼Eが測定光学系15での測定許容範囲内(測定光学系15で被検眼Eの眼特性の測定が可能な位置)にあるか、又は測定光学系15の移動許容範囲内にあってアライメント可能な位置にあるとして、アライメントの指示入力を受け入れるべく、ステップS9へ進む。
【0070】
これに対して、前眼部像Gfが検出されない場合(NO)、ステップS7へ進み、主制御部17が駆動機構25を駆動制御し、測定光学系15で前眼部像Gfが取得できるまで、顎受け部22を上下に移動させて位置調整を行う。このとき、顎受け部22のみを上下方向に移動させると、被検者Pの顔も上下に動くため、被検者Pの姿勢が悪くなったり、被検者Pが不快に感じたり、顎受け部22から顎Cが離れてしまったりする場合がある。
【0071】
このような不具合を防止するため、本実施形態では、主制御部17により光学テーブル30の昇降を制御可能とし、ステップS8で、主制御部17は、顎受け部22の移動状態に対応させて、光学テーブル30の位置調整を行う。また、昇降椅子50を自動で上下動可能としたときは、必要に応じて昇降椅子50の位置調整を行う(ステップS12も同様)。つまり、主制御部17は、テーブル制御部33を介して昇降機構32を駆動制御し、顎受け部22の移動距離と同じ移動距離及び同じ移動速度で、顎受け部22の移動方向とは反対方向に光学テーブル30移動させる。より具体的には、顎受け部22を上昇させるときは、光学テーブル30を同じ移動距離及び同じ移動速度で下降させ、顎受け部22を下降させるときは、光学テーブル30を同じ移動距離及び同じ移動速度で上昇させる。この制御により、被検者Pが顎Cの位置や姿勢を保ったまま、被検者Pに違和感を与えることなく、被検眼Eが測定光学系15に対峙するように、眼科装置1の各部の位置調整を適切に行える。以上のステップS5~S8で行われる各部の位置調整を、アライメント及び測定前の測定準備のための位置調整(高さ調整)という。これに対して、測定のための位置調整が、アライメントである。測定準備のための位置調整が完了すると、ステップS9へ進むことができる。
【0072】
ステップS9以降の処理は、検者による表示面40でのアライメント指示入力を受け付けたときに実行される。この表示面40には、
図5に示すように、各種操作ボタンB1~B17と、測定光学系15により取得された被検眼Eの前眼部像Gfが表示されている。検者は、表示面40上で、前眼部像Gfの瞳孔付近をタッチ操作することで、アライメントの指示入力の操作を行う。この操作によってタッチパネルからアライメントの操作入力信号が主制御部17に送出される。
【0073】
ステップS9で、この指示入力を主制御部17が受け付けるとステップS10へ進む。ステップS10では、主制御部17は、前眼部像Gfに基づいて、画面中心G0からタッチ箇所tpまでの画面上での距離Lを演算し、この距離Lに基づいて、測定ヘッド12の上下左右方向(Y軸方向及びX軸方向)の移動方向、移動距離等の移動情報を算出する。
【0074】
次のステップS11で、主制御部17は、上下方向への移動距離が測定ヘッド12の上下方向の移動距離の閾値(移動許容範囲)を超えたか否かを判定する。閾値を超えた(YES)と判定された場合は、光学テーブル30と顎受け部22とを移動して被検眼Eと測定ヘッド12との高さ調整を行うべく、ステップS12へ進む。これに対して、閾値以下(NO)であると判定された場合は、被検眼Eが測定光学系15の測定許容範囲内にあるか、被検眼Eと測定光学系15との位置関係が測定ヘッド12の移動許容範囲内(測定ヘッド12の移動で、被検眼Eを測定許容範囲内に配置可能な位置)にあるため、ステップS12~S13をスキップしてステップS14へと進む。
【0075】
ステップS12では、主制御部17が、画面中心G0からタッチ箇所tpまでの画面上での距離L及び閾値に基づいて、光学テーブル30の移動方向、移動距離、移動速度等の移動情報を算出する。移動方向は、例えば、測定ヘッド12が上方向の移動の閾値に達していたときは、上方向を設定し、下方向の移動の閾値に達していたときは、下方向を設定する。移動距離は、例えば、前眼部像Gfを画像解析して、瞳孔中心を画面中心G0に位置させることができる距離とする。また、移動速度は、予め決められた一定の速度でもよいが、例えば、移動距離が所定距離よりも長い場合は速度を速くし、所定距離に達した後は速度を遅くすれば、光学テーブル30の上下方向への移動をより効率的、かつ精度よく行える。
【0076】
さらに、この光学テーブル30の移動情報に基づいて、顎受け部22の移動情報を決定する。具体的には、光学テーブル30の上昇時は、この上昇距離分、顎受け部22を下降させ、光学テーブル30の下降時には、この下降距離分、顎受け部22を上昇させる。光学テーブル30と顎受け部22の移動速度は等速とすることが好ましく、被検者Pの違和感を低減できる。光学テーブル30の移動情報は、主制御部17からテーブル制御部33に送出される。
【0077】
そして、ステップS13で、各々の移動情報に応じて、テーブル制御部33が昇降機構32を駆動制御し、天板31を上昇又は下降させ、光学テーブル30の高さ調整を行う。この上昇又は下降と同時に、主制御部17が移動情報に応じて駆動機構25を制御し、顎受け部22を下降又は上昇させ、顎受け部22の高さ調整を行う。
【0078】
以上の処理により、光学テーブル30とともに測定ヘッド12が昇降し、これらと反対方向に等量かつ等速で顎受け部22が移動するため、顎受け部22の被検者Pの顔に対する相対的な位置が変化しない。そのため、被検者Pの顔を上下方向に移動させることなく、顎受け部22で安定して支持しつつ、被検者Pの被検眼Eに合わせて測定ヘッド12の高さ調整を精度よくできる。
【0079】
光学テーブル30及び顎受け部22の移動により、高さ調整を適切に行ったら、ステップS14へ進む。ステップS14では、主制御部17は、ステップS10で算出した移動情報に従って、又はステップS12、S13での位置調整したときは前眼部像Gfに基づき改めて算出した移動情報に従って、XYZ駆動機構・駆動回路16を駆動制御してアライメントを実行する。
【0080】
アライメントが完了したら、ステップS15へ進み、被検眼Eの眼特性の測定を実行する。例えば、アライメントによって、角膜輝点像P1が目標エリアマーク40e内に入りかつ角膜輝点像P1の出力値が所定値を超えたことを検出したとき、又は検者によるスタートボタンB9の操作入力信号を受け付けたとき、主制御部17は測定光学系15を制御し、被検眼Eの眼特性の測定を実行させる。主制御部17は、測定結果を表示面40に表示し(
図6参照)、プリントアウトボタンの操作指示があったときは測定結果を印刷する。
【0081】
続けて左の被検眼Eの眼特性の測定を行う際には、自動で、又は検者のLボタンB7の操作により、主制御部17がXYZ駆動機構・駆動回路16を駆動して、左の被検眼Eに対峙するように測定ヘッド12を左右方向に移動させる。その後、ステップS6へと戻り、ステップS6~S15の処理を繰り返す。
【0082】
左右の被検眼Eの眼特性の測定が終了したら、プログラムはステップS16へ進む。このステップS16では、主制御部17が、被検眼Eの測定結果等をID等の被検者情報とともに記憶部18に記憶する。なお、測定結果等の記憶が不要であるとき、また、商業施設や特設会場等に眼科装置1を設置し、不特定多数の被検者Pが眼特性を測定し、測定結果や寸法情報を個人情報として破棄するときは、ステップS16をスキップして終了するようにプログラムを制御してもよい。
【0083】
次に、ステップS17以降の通常モードでの処理について説明する。通常モードでの測定準備のための位置調整は、検者が手動で行う。具体的には、検者が表示面40の被検者像表示領域40gに表示された被検者像Mを視認しながら、被検者Pの顎Cが顎受け部22に載置されるように、顎受け上下動ボタンB3を操作する。この操作指示信号が、表示面40から主制御部17へ送出される。この操作指示信号を主制御部17が受け付けると(ステップS17)、主制御部17は、操作状態(上方向又は下方向、操作時間等)に応じて駆動機構25を駆動制御し、顎受け部22を上下方向へ移動させて高さ調整を行う(ステップS18)。
【0084】
顎受け部22の高さ調整を行って、顎Cが顎受け部22に支持されたことを被検者像表示領域40gの被検者像Mで確認したら、検者は被検眼像等表示領域40aの画像を確認する。当該領域において被検眼Eの前眼部像Gfがアライメント可能な適切な位置に表示されていると判断した場合は、検者が前眼部像Gfの瞳孔付近をタッチ操作することで、アライメントの指示入力の操作を行う。ステップS19で、主制御部17はアライメントの指示入力があったか判定し、指示入力があった場合(YES)は、ステップS9へ進む。
【0085】
一方、検者が被検眼像等表示領域40aに被検眼Eの前眼部像Gfが表示されていないと判断した場合、又は前眼部像Gfがアライメントには不適切な位置に表示されていると判断した場合は測定光学系15に対する被検眼Eの位置調整を手動で行う。すなわち、検者は被検眼像等表示領域40aを視認しながら、前眼部像Gfが適切な位置に表示されるように、再度顎受け上下動ボタンB3を操作する。また、顎受け部22の移動だけでは調整が困難な場合は、光学テーブル30の高さ調整を行うべく、テーブル上下動ボタン等を操作する。これらの操作入力信号が主制御部17へ送出される。
【0086】
主制御部17では、アライメントの指示入力がない間(ステップS19の判定がNOの間)は、次のステップS20、S21の処理を繰り返す。ステップS20では、主制御部17は顎受け上下動ボタンB3からの操作指示信号及び/又はテーブル上下動ボタンからの操作指示信号を受け、ステップS20で、これらの操作指示信号に基づく操作状態(上方向又は下方向、操作時間等)に応じて、駆動機構25及び/又は昇降機構32を駆動制御し、顎受け部22及び/又は光学テーブル30を上下方向へ移動させて高さ調整を行う。
【0087】
なお、通常モードの場合でも、自動調整モードのステップS7、S8のように、顎受け部22と光学テーブル30とを協調して移動させてもよい。例えば、顎受け上下動ボタンB3からの指示入力の受け付け中に、主制御部17が被検者像Mを解析して、顎Cが顎受け部22に支持されていない間は、顎受け部22のみの移動を制御する。そして、顎Cが顎受け部22に支持されたことを検出した後は、顎受け上下動ボタンB3からの指示信号に応じて、顎受け部22を移動するとともに、この移動方向とは反対方向に、光学テーブル30を移動させる。これにより、検者が顎受け部22と光学テーブル30の双方の移動の操作を行う必要がない。また、被検者Pに不快感を与えることがない。以上の位置調整が終わったところで、検者が表示面40上で前眼部像Gfの瞳孔付近をタッチ操作してアライメントの指示入力の操作を行う。これにより、ステップS19の判定がYESとなり、プログラムはステップS9へ進む。
【0088】
通常モードでステップS9に進むと、主制御部17がアライメントの指示入力信号を受け付ける。その後、自動調整モードと同様に、ステップS10~S14の処理を実行し、アライメントを行う。次いで、ステップS15へ進んで被検眼Eの眼特性の測定を実行する。また、続けて左の被検眼Eの眼特性の測定を行う際には、自動で、又は検者のLボタンB7の操作により、測定ヘッド12を左右方向に移動させて、左の被検眼Eに対峙させる。その後、ステップS19へと戻り、ステップS19~S20、S9~S15の処理を繰り返す。最後に、必要に応じてステップS16へ進み、測定結果等を記憶部18に記憶する。
【0089】
以上説明したように、第1実施形態に係る眼科装置1は、被検者Pの被検眼Eの情報を取得する測定ヘッド12と、被検者Pの顔を支持し測定ヘッド12に対して移動自在に設けられた顔支持部20(顎受け部22)と、顔支持部20の移動を制御する主制御部17と、被検者Pの顔(顎C)と顔支持部20(顎受け部22)との位置関係を把握可能な被検者像Mを取得するカメラ60と、を備える。
【0090】
よって第1実施形態によれば、被検者Pの顔と顔支持部20との位置関係を容易かつ適切に把握可能となる。このため、被検者Pの顔が顔支持部によって支持されているかを適切に把握できる。被検者Pの顔が顔支持部に支持されていない場合は、顔が顔支持部20によって支持される位置まで顔支持部20を移動できる。この結果、顔支持部20によって被検者Pの顔を確実に支持することができる。また、被検者像Mに基づいて顔を支持した状態で顔支持部20を移動させることで、測定ヘッド12の移動許容範囲内に被検眼Eを位置させることができる。このため、被検眼Eに対する測定ヘッド12の位置合わせ(アライメント)を適切に行うことができる。この結果、測定精度及び測定効率を向上させることができる眼科装置1を提供できる。また、被検者Pが適切な姿勢で眼科装置1と対峙でき、被検者Pの負担も低減して、快適な測定が可能な眼科装置1を提供できる。
【0091】
また、第1実施形態では、被検者像Mが表示されるモニタ部14を備えている。この構成により、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を、検者が常時監視することができる。また、検者が身体を移動したり、姿勢を変えたりして、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握する必要もなくなる。したがって、より効率的かつより適切な測定が可能となる。
【0092】
また、第1実施形態において、主制御部17は、被検者像Mに基づいて、位置関係として顔と顔支持部20との距離を算出し、算出した距離に基づいて、測定ヘッド12の移動許容範囲内に被検眼Eが位置するように、顔支持部20の移動を制御している。この構成により、検者による移動の操作が必要でなくなり、顎受け部22の移動を自動かつ精度よく行うことができる。
【0093】
また、第1実施形態では、被検者像Mが表示されるモニタ部14と、検者からの操作入力を受け付ける操作部19(表示面40)と、を備えている。主制御部17は、被検者像Mをモニタ部14に表示するとともに操作部19からの操作入力に応じて、顔支持部の移動を制御している。したがって、カメラ60で撮影した被検者像Mを視認しながら、検者が手動(マニュアル)操作によって顎受け部22の移動を行うことができる。
【0094】
また、第1実施形態では、主制御部17の制御により、顔支持部20(顎受け部22)を移動させる顔支持部移動機構(駆動機構25)を備えている。したがって、主制御部17が顎Cと顎受け部22との距離に基づいて、駆動機構25を駆動することで、顎受け部22をより円滑かつ迅速に移動可能となる。
【0095】
また、顔支持部20が、被検者Pの顎Cを支持する顎受け部22、被検者Pの額Hを支持する額当て部24の少なくとも何れかを有していれば、被検者Pの顔を安定して支持できる。第1実施形態では、顔支持部20が顎受け部22と額当て部24の双方を有している。この構成により、被検者Pの顔(頭部)の支持安定性が向上し、測定効率、測定精度の向上が可能となるとともに、被検者Pの負担も低減して、快適な測定が可能となる。
【0096】
また、第1実施形態では、測定ヘッド12及び顔支持部20が載置されて昇降自在に設けられた光学テーブル30を備える。主制御部17は、測定ヘッド12の測定許容範囲内に被検眼Eが位置するように所定の移動状態で光学テーブル30の移動を制御し、この光学テーブル30の移動状態に応じて顔支持部20の移動を制御する。これにより、被検眼Eと測定ヘッド12との位置合わせに際して、被検者Pの顔が不測に移動するのを抑制でき、被検者Pが楽な姿勢を保つことができる。また、顔支持部20で被検者Pの顔を安定して支持できる。したがって、測定光学系15に対する被検眼Eの高さ調整を適切かつ迅速に行って、測定効率を向上させることができる。
【0097】
(変形例)
上記第1実施形態では、検者が被検者Pの傍らで、表示面40に表示された画面を操作しながら測定を行っている。また、自動調整モードでは、顎受け部22の位置調整と測定は自動で行っているが、アライメントは検者が指等で被検眼像等表示領域40aの前眼部像Gfの瞳孔付近をタッチして、手動で実行指示を入力している。
【0098】
これに対して、第1実施形態の変形例として、自動調整モードの場合は、顎受け部22の位置調整だけでなく、アライメントも自動で実行できるような眼科装置1とすることもできる。例えば、主制御部17の制御の下、被検者像Mに基づく顎受け部22の自動調整が完了し、前眼部像に基づく顎受け部22及び光学テーブル30の自動位置調整が完了して、被検眼像等表示領域40aの適切な位置に前眼部像Gfが表示されたことを主制御部17が検出する。この検出のタイミングで、主制御部17が前眼部像Gfを解析して瞳孔を検出し、瞳孔が被検眼像等表示領域40aの画面中心G0に位置するように、XYZ駆動機構・駆動回路16を制御して測定ヘッド12を上下左右に移動させ、アライメントを実行する。
【0099】
このような構成の眼科装置1では、検者を必要とすることない。また被検者P自身も何ら操作をすることなく、顔を顔支持部20に突き当てるだけで、自動で眼特性の測定が可能となる。よって、いわゆる無人での測定が可能となる。また、このように無人で使用可能な眼科装置1とする際には、
図5等に示すような操作用の画面は表示面40に表示せずに、測定の際の手順や注意事項、測定結果のみ表示するようにすることもできる。
【0100】
また、第1実施形態では、被検者像Mとして、顎Cと顎受け部22とが含まれる画像を取得しているが、これに限定されることはない。例えば、被検者Pの顎Cと顎受け部22だけでなく、被検眼Eが含まれる画像、さらには顔全体が含まれる被検者像Mであれば、顎Cと顎受け部22との位置関係をより詳細に把握できるとともに、被検者Pの表情等も把握できる。例えば、顔の表情が苦しそうな表情であれば、顎受け部22等の位置が適切ではなく、被検者Pの姿勢に無理があると推定でき、姿勢を是正すべく、顎受け部22等の再調整を行える。また、不快な表情であれば、測定に協力的でないことがわかり、測定を円滑に進めるための対策を講じることができる。特に、子供等の場合は有効である。また、検者の指示を聞いているか否かも表情で分かる。被検者Pの表情によって、測定の適不適も把握でき、適切であれば無駄な再測定を回避でき、不適であれば再測定することができ、測定効率を向上できる。また、被検者Pの顔と顔支持部20全体を含むように被検者像Mを取得すれば、顎Cと顎受け部22との位置関係だけでなく、額と額当て部24との位置関係等も把握できるし、表情もより詳細に把握できる。
【0101】
また、第1実施形態では、本体部10のベース部11の側面に、カメラ60を設置しているが、この位置に限定されることはない。例えば、ベース部11の中央前方に設けてもよいし、顔支持部20の側面等に設置することもできる。また、測定ヘッド12の上面や側面に設置してもよい。また、測定光学系15の最も被検者P側の光学レンズ(対物レンズ151)の近傍(特に側方)に設置すれば、被検者Pの正面画像により近い画像を取得でき、顔と顔支持部20との位置関係をより適切に把握できる。
【0102】
また、第1実施形態では、測定光学系15とは別個に被検者像Mを取得するカメラ60を設置しているが、この構成に限定されることはない。例えば、測定光学系15の撮像素子を、被検者像Mを取得するカメラ(撮像部)として共用することもできる。この場合、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握するための被検者像Mを取得する場合と、アライメントや測定のために被検眼Eの前眼部像を取得する場合とで、画角、倍率等の撮影条件を切り替える機構を搭載することで、実現可能となる。
【0103】
また、第1実施形態では、自動調整モードのときに、顎Cと顎受け部22との距離を算出し、表示面40に表示しているが、通常モードの際にも同様の処理を行ってもよい。これにより、検者が表示面40の被検者像表示領域40gに表示された被検者像Mに加え、顎Cと顎受け部22との距離を確認しながら、表示面40の顎受け上下動ボタンB3を操作できる。このため、顎受け部22の移動を迅速に行って、顎受け部22による顎Cの支持を適切に行える。
【0104】
また、第1実施形態では、顔支持部20に対する顔の移動指示及び移動方向を、検者が被検者Pに声がけによって通知している。この通知に際して、主制御部17が被検者像Mに基づいて、移動方向を検出し、顎Cの移動指示及び移動方向をモニタ部14に表示し、検者に通知指示を与えてもよい。また、主制御部17の制御の下、移動指示移動方向スピーカ等の音発生部によって通知している。また、主制御部17の制御の下、顎Cの移動示及び移動方向をスピーカから音声で通知してもよく、無人での測定の場合は特に有効である。
【0105】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の眼科装置1について説明する。第2実施形態に係る眼科装置1は、
図3に破線で示すように、顔支持部20に検出センサ26を設けたこと以外は、
図1等に示す第1実施形態の眼科装置1と同様の基本構成を備えている。そのため、以下では第1実施形態と同様の構成及び動作については詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について説明する。
【0106】
検出センサ26は、顎受け部22に設けられ、被検者Pの顎Cとの顎受け部22との接触状態を検出する検出部として機能する。この検出センサ26としては、具体的には、圧力センサ、フォトセンサ、磁気センサ、スイッチ等が挙げられる。検出センサ26での検出結果は、検出信号として主制御部17へ送出される。なお、検出センサ26の設置場所が顎受け部22に限定されることはなく、額当て部24等、顔支持部20の何れの箇所設けてもよい。
【0107】
このような検出センサ26を備えた第2実施形態の眼科装置1では、第1実施形態と同様に、カメラ60で撮影した被検者像Mに基づいて算出した被検者Pの顎Cと顎受け部22との距離に基づいて、顎Cが顎受け部22で支持されているか否かを把握できる。さらに検出センサ26からの検出信号によって、顎Cと顎受け部22との接触状態を把握できる。例えば、検出信号が閾値より高い場合は、顎Cと顎受け部22とが確実に接触しており、顎受け部22により顎Cが安定して支持されていることがわかる。これに対して、検出信号が閾値以下であれば、顎Cが顎受け部22から離れているか、又は十分な接触状態ではなく、安定した支持がされていないことがわかる。よって、被検者像Mの画像解析に加え、検出センサ26での検出結果に基づいて、顎受け部22の高さ調整をより高精度に行うことができ、顎受け部22による顎Cの支持安定性を向上できる。この結果、被検者Pの顔(頭部)の移動やブレを抑制して、測定効率、測定精度を向上できる。さらには、主制御部17の制御の下、検出センサ26によって被検者Pの顔面が顔支持部20によって適切に支持されたことを確認したら、アライメントや測定等を開始するようにすれば、アライメントや測定も無人化、自動化が可能となる。
【0108】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る眼科装置1Aについて、
図7~
図9を参照しながら説明する。
図7は3実施形態に係る眼科装置1の外観を示す正面図であり、
図8はステレオカメラの概要を示す平面図であり、
図9は表示面に表示される画面の一例を示す図である。
【0109】
第3実施形態に係る眼科装置1Aは、眼底撮影装置であり、測定光学系15Aの構成が異なること以外は、第1実施形態の眼科装置1と同様の基本構成を備えている。そのため、第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付し、構成及び動作については詳細な説明を省略する。以下では、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。
【0110】
図7に示すように、第3実施形態に係る眼科装置1Aは、本体部10及び顔支持部20を有する眼科装置本体2Aと、光学テーブル30と、昇降椅子50(
図1参照)と、主制御部17(
図3参照)と、を主に備えて構成される。
【0111】
本体部10は、ベース部11と測定ヘッド12とを有している。測定ヘッド12の頭部には、モニタ部14が設けられ、内部には、眼底及び前眼部像の観察・撮影用の測定光学系15Aや測定光学系15Aを制御する制御回路、測定ヘッド12をXYZ方向へ駆動するXYZ駆動機構・駆動回路16等が設けられている。測定光学系15Aは、被検者Pの被検眼Eの眼底等が観察及び撮影可能な光学レンズ、撮像素子等を含むとともに、
図7、
図8に示すように、アライメントのための被検眼Eの像(被検眼像)を取得するステレオカメラ60a,60b、及び被検眼Eの照明及び被検眼像の取得用の赤外光を出射する被検眼像用光源62を含んでいる。被検眼像用光源62は、各ステレオカメラ60a,60bの近傍に、1対ずつ(合計4個)設けられている。さらに、測定ヘッド12の前方には、顎受け部22近傍の照明及び被検眼像の取得用の赤外光を出射する被検者像用光源63が設けられている。
【0112】
主制御部17は、
図9に示すような画面をモニタ部14の表示面40に表示する。
図9に示すように、表示面40には、第1被検眼像等表示領域40a1と、第2被検眼像等表示領域40a2と、操作ボタン表示領域40b~40eと、被検者像表示領域40gと、等が設けられている。
【0113】
第1被検眼像等表示領域40a1には、測定光学系15Aの撮像素子で取得した前眼部像が表示される。また、第1被検眼像等表示領域40a1には、矩形状の第1目標エリアマーク40e1が表示されている。第2被検眼像等表示領域40a2には、ステレオカメラ60a,60bの一方で撮影した被検眼像、又は双方で撮影した画像を合成した被検眼像が表示される。また、第2被検眼像等表示領域40a2には、2本の平行線からなる第2目標エリアマークe2が表示される。被検者像表示領域40gには、ステレオカメラ60a,60bの一方で撮影した被検者像M、又は双方で撮影した2つの被検者像Mが表示される。
【0114】
操作ボタン表示領域40bには、メニューボタンB13が配置されている。操作ボタン表示領域40cには、左右の被検眼Eの測定や表示を指定するための各種ファンクションボタンB11が配置されている。操作ボタン表示領域40dには、顎受け上下動ボタンB3と、自動調整ボタンB12が配置されている。
【0115】
ステレオカメラ60a,60bは、
図7、
図8に示すように、測定光学系15Aの最も被検者P側にある対物レンズ151の両側に設置され、被検眼像用光源62から赤外光を照射された被検眼Eを異なる方向から撮影可能となっている。このステレオカメラ60a,60bで撮影した被検眼Eの前眼部像に基づいて、被検眼Eと本体部10との位置関係を三次元的に把握でき、測定ヘッド12のZ方向へのアライメントを高精度に行える。
【0116】
また、本実施形態では、このステレオカメラ60a,60bを、被検者Pの顔と顔支持部20との位置関係(顎Cと顎受け部との位置関係)を把握可能な被検者像Mを取得する撮像部として、測定光学系15Aと共用している。被検者像Mを取得する際には、被検者像用光源63から顎受け部22近傍に赤外光を照射する。
【0117】
本実施形態では、眼科装置1Aが暗室や暗幕下で使用される場合が多い眼底撮影装置であるため、被検眼像用光源62及び被検者像用光源63としてIR光源(赤外光源)を用いている。被検者像用光源63としては、被検眼像用光源62の赤外光の波長とは異なる特定の波長の赤外光を出射するIR光源を用いることが好ましい。これにより、被検者が眩しさを感じることなく、かつ被検眼像等の取得に影響を与えることなく、被検者像Mの取得が可能となる。
【0118】
他の異なる実施形態として、眼科装置が、明るい状態(可視光線下)で使用する検眼装置等の場合は、被検者像用光源としてLED光源等を用いることができる。ただし、この場合も被検者像用光源としてIR光源を用いれば、被検者Pが眩しさを感じることなく、かつ被検眼像等の取得に影響を与えることなく、被検者像Mの取得が可能となる。
【0119】
ステレオカメラ60a,60bには、被検者Pの顎Cと顎受け部22を含む被検者像Mを取得する場合と、アライメントや測定のための前眼部像を取得する場合とで、画角、倍率等の撮影条件を切り替えるための切替機構61a,61bが設けられている。
【0120】
このような切替機構61a,61bを用いれば、ステレオカメラ60a,60bと同じ開口を用いることができる。例えば、この切替機構61a,61bとして、広角レンズと光偏向素子(プリズム)を用いれば可能である。このような切替機構61a,61bを、ステレオカメラ60a,60bの前方に、挿脱自在に配置している。そして、前眼部像の取得の際には、ステレオカメラ60a,60bの前方から切替機構61a,61bを退避させる。被検者像Mの取得の際には、ステレオカメラ60a,60bの前方に切替機構61a,61bを配置する。或いは、他の異なる実施形態として、
図7に仮想線で示すように、本体部10にカメラ用の開口64を設け、切替機構としてミラー等の引き回し光学系を用いて開口64へ引き回せば可能である。被検者像Mの取得の際には、この引き回し光学系により、被検者Pの顎C及び顎受け部22付近からの光をステレオカメラ60a,60bの双方又はこれらの一方に導く。このような構成とすることで、被検者像Mを撮影するカメラを別個に取り付ける必要がなくなる。
【0121】
また、さらに異なる実施形態として、ステレオカメラ60a,60bの光学レンズを液体レンズとし、この液体レンズを切替機構61a,61bとすることができる。電圧を加えて液体レンズの屈折力を切り替えることで、被検者像M及び前眼部画像の双方をステレオカメラ60a,60bで取得可能とすることができる。また、ステレオカメラ60a,60bの一方のみに切替機構61a,61bを設け、一方のステレオカメラ60a,60bで被検者像Mを撮影するものであってもよい。
【0122】
また、ステレオカメラ60a,60bの他の異なる実施形態として、焦点距離を調整可能なズームレンズユニットを備えたカメラを使用してもよい。被験者画像を撮影する際には広角端とし、前眼部像を撮影する際には望遠端とすることで、それぞれの画像を適切に取得できる。
【0123】
また、ステレオカメラ60a,60bのさらに異なる実施形態として、ステレオカメラ60a,60bをそれぞれ2つのカメラで構成してもよい。各ステレオカメラ60a,60bの一方に、被検者像Mを取得可能な撮影条件(例えば、広角レンズや魚眼レンズ使用)に設定されたカメラを使用し、他方に前眼部像を取得可能な撮影条件(例えば、狭角レンズ使用)に設定されたカメラを使用し、撮影する画像に応じてカメラを切り替えて使用する。このため、例えば、被検者像取得用のステレオカメラを顎Cに近い下方に設置し、前眼部像取得用のステレオカメラを被検眼Eに近い上方に設置する等、それぞれの画像の取得に最適なレイアウトでのステレオカメラの設置が可能となる。
【0124】
なお、上記ではステレオカメラ60a,60bの双方に切替機構61a,61bを設けた構成、又は双方の撮影条件を切り替え可能な構成としているが、これらの構成に限定されることはない。例えば、ステレオカメラ60a,60bの何れか一方のみに切替機構を設けた構成、又は一方の撮影条件を切り替え可能な構成とすることもできる。この構成でも、ステレオカメラ60a,60bで前眼部像を取得し、切替機構を切り替えるか、又は撮影条件を切り替えた一方のステレオカメラ60a,60bで被検者像Mを取得することができる。
【0125】
上記構成の第3実施形態に係る眼科装置1Aでも、
図4のフローチャートに示すような第1実施形態と同様の動作で、測定準備のための位置調整、アライメント、測定を実行できる。測定準備のための位置調整では、顎受け部22の位置調整を自動で又は手動で行うことができる。例えば、主制御部17の制御により、被検者像用光源63を点灯して顎受け部22に向けて赤外光を出射し、切替機構61a,61bをステレオカメラ60a,60bの前方に配置し、被検者像Mを取得する。自動調整モードの際には、この被検者像Mに基づいて、主制御部17が顎Cと顎受け部との距離を算出し、算出した距離に基づいて算出した移動情報に応じて、顎受け部22を自動で上下方向に移動させる。
【0126】
一方、通常モードの際には、主制御部17が表示面40の被検者像表示領域40gに被検者像Mと被検者像Mに基づいて算出した距離とを表示する。検者は、この被検者像M及び距離を視認しつつ、顎受け上下動ボタンB3を操作して、顎受け部22を上下方向に移動させることができる。これにより、検者は被検者Pと表示面40とを見比べながら操作する必要がなく、集中して操作ができる。また、被検者Pの後方等であっても、顎Cと顎受け部との位置関係を明確に把握でき、効率的な操作が可能となる。また、表示面40の被検者像表示領域40gに被検者像Mが表示されることで、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を、検者が常時監視することができる。また、検者が身体を移動したり、姿勢を変えたりして、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握する必要もなくなる。よって、より効率的かつより適切な測定が可能となる。
【0127】
そして、顎受け部22の位置調整が完了したら、第1被検眼像等表示領域40a1に表示された前眼部像及び第2被検眼像等表示領域40a2に表示された被検眼像を視認しつつ、検者が手動で顎受け上下動ボタンB3を操作して、測定光学系15Aと被検眼Eとの位置合わせを行う。又は前眼部像及び被検眼像に基づいて、主制御部17が自動でこれらの位置合わせを行うこともできる。何れの場合でも前眼部像の光彩が矩形状の第1目標エリアマーク40e1内に位置し、被検眼像の光彩が2本の平行線からなる第2目標エリアマークe2内に位置するように、顎受け部22の高さ調整を行う。このとき、顎受け部22の移動方向とは反対方向に、同じ移動距離及び同じ移動速度で光学テーブル30を移動することで、被検者Pの顔が上下移動することのない、快適な高さ調整が可能となる。
【0128】
そして、前眼部像の光彩が第1目標エリアマーク40e1内の適切な位置に配置されたとき、又は被検眼像の光彩が第2目標エリアマークe2内の適切な位置に配置されたとき、自動で、又は操作ボタンの操作によって、アライメントを実行する。アライメントが完了したら、自動で、又は操作ボタンの操作によって、測定光学系15Aによって被検眼Eの眼特性の取得(眼底画像の取得等)を実行する。
【0129】
以上、第3実施形態でも第1実施形態と同様に、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握でき、顎受け部22によって顎Cを確実に支持することができ、かつ被検眼Eに対する測定ヘッド12の位置合わせを適切に行うことが可能な眼科装置1Aを提供できる。
【0130】
さらに、第3実施形態では、測定光学系15Aのステレオカメラ60a,60bを、被検者像Mを取得するカメラとして共用している。この構成により、眼科装置1Aに別個にカメラを設ける必要がなくなり、製品コストの増加を抑制できる。
【0131】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の眼科装置1Bについて、
図1、
図2、
図10、
図11を参照しながら説明する。第4実施形態に係る眼科装置1Bは、カメラ60に代えて、顎受け部22と顎Cとの位置関係を把握可能であって、被検者Pの左右の被検眼Eを含む被検者像Mを取得可能な広角タイプのカメラ60cを設けたこと以外は、
図1等に示す第1実施形態の眼科装置1と同様の基本構成を備えている。そのため、以下では第1実施形態と同様の構成及び動作については詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について説明する。
【0132】
本実施形態で使用するカメラ60cは、被検者Pの顔と顔支持部20との位置関係を把握可能であって、さらに、左右の被検眼を含む被検者像Mを取得する。このため、本実施形態のカメラ60cは、顎受け部22と、顎Cと、左右の被検眼Eを含む被検者像Mを取得できるようなスペックを備えている。例えば焦点距離が1.25mm以下のカメラ60cを用いれば、このような被検者像Mを取得できる。このカメラ60cを、
図1、
図2に仮想線で示すように、測定ヘッド12の前方に、被検者Pに向けて設置している。なお、カメラ60cは、Y方向において測定光学系15の光軸と顎受け部22の上面(例えば、最大限下降させたときの顎受け部22の上面)との略中間に設置すれば、顎受け部22から被検眼E、さらには額当て部24までを含む被検者像Mを取得できる。また、カメラ60cの位置が、
図1に示す位置に限定されることはなく、測定ヘッド12の何れの位置に設けてもよい。また、設置場所が測定ヘッド12に限定されることもなく、カメラ60cをベース部11の上部又は基部に設けてもよいし、本体部10の他の部位等、所望の部位に設けることができる。
【0133】
主制御部17は、カメラ60cで撮影された被検者像Mを画像解析することで、顎Cと顎受け部22の距離に加え、被検眼の位置情報として、被検者Pの顎Cと被検眼EのY軸方向の距離(顎Cから被検眼Eまでの高さ情報)、顎Cと左右の被検眼EとのX軸方向の距離、瞳孔間距離(PD)を算出する。顎Cと被検眼EとのY軸方向の距離は、測定ヘッド12の高さ調整に用いられる。顎Cと左右の被検眼EそれぞれとのX軸方向の距離は、測定ヘッド12の左右方向の位置調整に用いられる。瞳孔間距離は、一方の被検眼Eの対峙位置から他方の被検眼Eの対峙位置への測定ヘッド12の左右方向の位置調整に用いられる。
【0134】
なお、第4実施形態では、左右の被検眼を含む被検者像Mを取得しているが、これに限定されることはなく、左右の一方の被検眼Eを含む被検者像Mであってもよい。このような被検者像Mでも、顎Cから被検眼EまでのY軸方向及びX軸方向の距離を取得できる。瞳孔間距離は、例えば、顎Cや顔の中心と一方の被検眼Eとの位置関係に基づいて算出したり、平均値や標準値を用いたりすることができる。
【0135】
主制御部17は、第1実施形態等と同様に、顎Cと顎受け部22とのY軸方向の距離に基づいて、顎受け部22の位置を調整し、さらに、顎Cと被検眼EのY軸方向及びX軸方向の距離に基づいて、一方の被検眼Eに対峙する位置に測定ヘッド12を移動して自動でアライメントを実行すべく、XYZ駆動機構・駆動回路16を制御する。さらに、一方の被検眼Eの測定終了後に、瞳孔間距離に基づいて、他方の被検眼Eに対峙する位置に測定ヘッド12を移動してアライメントを実行すべく、XYZ駆動機構・駆動回路16を制御する。
【0136】
また、主制御部17は、モニタ部14の表示面40に、
図10に示す画面を表示する。この
図10に示すように、表示面40には、被検眼像等表示領域40aと、操作ボタン表示領域40b~40dと、被検者像表示領域40gとが設けられている。各々の表示領域には、第1実施形態と同様の画像が表示される。被検者像表示領域40gには、カメラ60Bc撮影される、顎受け部22と顎Cと左右の被検眼Eを含む被検者像Mがリアルタイムで表示される。さらに、この被検者像Mに基づいて算出した顎Cと顎受け部22との距離(推定値)が、被検者像Mに重畳して表示される。これに加えて、顎Cと被検眼Eの距離等、他の距離情報を表示してもよい。
【0137】
また、主制御部17は、被検者像表示領域40gにおける、検者からの被検眼Eの選択の操作入力(本実施形態では、タッチパネルのタッチ操作)を受け付ける。この入力を受け付けることで、主制御部17は、タッチ操作された位置を被検眼Eの位置と判定して、その位置座標を算出し、カメラ60cの位置、測定ヘッド12の位置等に基づいて、被検眼Eとの位置情報(例えば、被検眼Eと測定ヘッド12との相対的な位置情報)を算出する。算出した位置情報に基づいて、光学テーブル30及び顎受け部22の移動、測定ヘッド12の移動を制御して、測定ヘッド12を被検眼Eに適切に対峙する位置に配置する。
【0138】
以下、第4実施形態に係る眼科装置1の動作の一例を、
図11のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、検者がおらず、無人で測定等を行う自動調整モードについて主に説明するが、第4実施形態に係る眼科装置1を用いて、手動による通常モードの処理を行うこともできる。
【0139】
ステップS31で、カメラ60cが被検者Pの被検者像Mの撮影を開始する。また、測定光学系15による画像の取得も開始する。無人で行う自動調整モードの場合には、人感センサや顔認証機能によって被検者Pの顔を所定距離で認識したときに、主制御部17の制御により、又はカメラ60c等が自動で撮影を開始する。
【0140】
ステップS32で、主制御部17がモニタ部14を制御し、カメラ60cから取得した被検者像Mを被検者像表示領域40gに、測定光学系15の撮像素子で取得した画像を被検眼像等表示領域40aに表示させる。
【0141】
次にステップS33で、主制御部17は、被検者像Mに基づいて顎Cと顎受け部22との距離、顎Cと被検眼EのY軸方向の距離、顎Cと左右の各被検眼EとのX軸方向の距離、左右の被検眼Eの瞳孔間距離を算出する。また、
図10に示すように、算出した距離の数値(推定値)を被検者像Mに重畳して表示する。顎受け部22が初期位置に復帰している状態、過度に下降又は上昇している状態であると、顎Cと顎受け部22とが離れる場合があり、この場合は顎Cと顎受け部22の距離が0以外の数値となる。この場合、顎受け部22の位置調整を行う必要がある。
【0142】
ステップS34で、主制御部17は、顎Cと顎受け部22との距離に基づいて、顎受け部22を顎Cに接触させるための顎受け部22の移動方向、移動距離等の移動情報を算出する。ステップS35で、主制御部17は、移動情報に応じて駆動機構25を駆動制御し、顎受け部22を上下方向に移動させる。これにより、顎Cが顎受け部22に支持される。
【0143】
次のステップS36で、主制御部17は、被検眼Eを測定ヘッド12に対峙させるべく、顎Cと被検眼EとのY軸方向の距離に基づいて、顎受け部22の移動方向、移動距離等の移動情報を算出する。ステップS37で、主制御部17は、移動情報に応じて駆動機構25を駆動制御し、顎受け部22を上下方向に移動させる。本実施形態のように昇降を制御可能な光学テーブル30を備えている場合は、この顎受け部22の移動に対応させて、主制御部17は、ステップS38で、顎受け部22の移動距離と同じ移動距離及び同じ移動速度で、顎受け部22の移動方向とは反対方向に光学テーブル30移動させる。これにより、被検者Pに違和感等を与えることなく、測定ヘッド12に対する被検眼Eの高さ調整を行える。
【0144】
顎受け部22の移動によっても被検眼Eに対する測定ヘッド12の高さ調整が不完全な場合は、次のステップS39で、主制御部17は、顎Cと被検眼EとのY軸方向の距離、顎受け部22の移動量(測定ヘッド12に対する相対位置)に基づいて、Y軸方向における測定ヘッド12の移動方向、移動距離等の移動情報を算出する。ステップS40で、主制御部17は、移動情報に応じてXYZ駆動機構・駆動回路16を駆動制御し、測定ヘッド12を上下方向に移動させ、被検眼Eと測定ヘッド12の高さ調整を行う。
【0145】
なお、顎受け部22の移動と測定ヘッド12の移動を行っても、被検眼Eと測定ヘッド12との高さ調整ができない場合、光学テーブル30の移動によって測定ヘッド12と被検眼Eとの高さ合わせをしてもよい。この場合、被検者像Mの被検眼Eの位置情報に基づいて、光学テーブル30の移動方向及び移動距離を算出し、この移動情報に基づいて、光学テーブル30を上下に移動する。このとき、光学テーブル30の移動に応じて、顎受け部22を移動させることで、被検者Pの頭部が不測に上下動することがない。
【0146】
次のステップS41では、測定ヘッド12の左右方向の位置合わせを行うべく、主制御部17は、顎Cと被検眼EとのX軸方向の距離に基づいて、測定ヘッド12のX軸方向での移動方向、移動量等の移動情報を算出する。ステップS42で、主制御部17は、移動情報に応じてXYZ駆動機構・駆動回路16を駆動制御し、測定ヘッド12を左右方向(X軸方向)に移動させ、左右方向の位置調整を行う。以上により、被検眼Eと測定ヘッド12の上下方向及び左右方向の大まかな位置調整(ラフアライメント)がされる。その後、ステップS43へと進む。
【0147】
ステップS43では、主制御部17は、測定光学系15の撮像部で取得した前眼部像Gfに基づいて、XYZ駆動機構・駆動回路16を駆動制御して精細なアライメントを実行する。このとき、測定ヘッド12のX軸方向及びY軸方向の大まかな位置調整が、被検者像Mに基づいて行われているため、精細なアライメントを迅速かつ高精度に行うことができ、効率化が図られる。なお、眼科装置1Bにステレオカメラを搭載した場合には、測定光学系15の撮像素子で取得した前眼部像Gfに代えて、このステレオカメラで撮影した被検眼像に基づいて精細なアライメントを行ってもよい。
【0148】
アライメントが完了したら、ステップS44へと進み、被検眼Eの眼特性の測定を実行する。測定が終わったら、ステップS45へと進み、次に測定すべき他方の被検眼Eがあるか判定し、他方の被検眼Eがある場合(YES)、ステップS46へと進む。これに対して、左右の被検眼Eの測定が完了した場合は、ステップS45の判定はNOとなり、ステップS47へと進む。
【0149】
ステップS46では、主制御部17は、瞳孔間距離に基づいて、測定ヘッド12のX軸方向における移動方向、移動量等の移動情報を算出する。その後、ステップS42へ戻ることで、主制御部17が、移動情報に応じてXYZ駆動機構・駆動回路16を駆動制御し、測定ヘッド12を左右方向(X軸方向)に移動させる。これにより、他方の被検眼Eと測定ヘッド12とが対峙する。次いで、ステップS43へと進み、他方の被検眼Eの詳細なアライメントを行い、ステップS44で眼特性の測定を行う。その後、ステップS45の判定でNOとなり、ステップS47へと進む。
【0150】
ステップS47では、主制御部17は、測定結果を表示面40に表示する。被検者P等からのプリントアウトボタンの操作指示があったときは、測定結果を印刷する。また、測定結果は、破棄してもよいし、記憶部18に記憶してもよい。以上により、第4実施形態の眼科装置1での動作が終了する。
【0151】
なお、ステップS36での顎受け部22の移動情報の算出は、顎Cと被検眼EとのY軸方向の距離に基づいて行っているが、これに限定されることはない。他の例として、被検者像Mから被検眼Eの位置情報(例えば、測定ヘッド12に対する相対位置)を取得し、この位置情報に基づいて顎受け部22の移動情報を算出できる。または、測定光学系15で前眼部画像を取得できるまで顎受け部22を上下動させることで、顎受け部22の高さ調整を行うこともできる。また、ステップS39では、顎Cと被検眼EのY軸方向の距離及び顎受け部22の移動量に基づいて測定ヘッド12のY軸方向への移動情報を算出しているが、これに限定されることはない。他の例として、顎受け部22の高さ調整後の被検者像Mに基づいて、被検眼Eと測定ヘッド12の位置関係を算出することで、この位置関係に基づいて測定ヘッド12の移動情報を算出できる。
【0152】
また、通常モードの場合は、ステップS32の処理の後に、
図4に示すステップS17~S21と同様の処理を実行した上で、ステップS39以降の処理を実行することで、アライメントや眼特性の測定を適切に行える。
【0153】
また、通常モード、又は検者がいる状態での自動モードにおいて、ステップS43の自動でのアライメントが適切に行えなかった場合、手動でアライメント指示することもできる。この場合、検者は被検者像表示領域40gに表示された被検者像Mの被検眼部分をタッチ操作する。このタッチ操作により、主制御部17は、被検眼Eの位置座標を算出し、カメラ60cの位置、測定ヘッド12の位置等に基づいて、被検眼Eの位置情報を算出する。算出した位置情報に基づいて、光学テーブル30及び顎受け部22の移動、測定ヘッド12の移動を制御する。これにより、測定ヘッド12を被検眼Eに対峙する位置に適切に配置でき、アライメントのやり直しを適切、かつ迅速に行える。よって、操作性に優れ、被検眼Eの測定性能にも優れる眼科装置1等を提供できる。また、第4実施形態の構成を、第3実施形態のような眼底撮影装置に適用することもできる。
【0154】
以上、第4実施形態でも上記各実施形態と同様に、被検者Pの顎Cと顎受け部22との位置関係を把握でき、顎受け部22によって顎Cを確実に支持することができる。さらに、被検眼Eを含む被検者像Mを取得することで、被検眼Eの位置情報として顎Cと被検眼Eの距離、瞳孔間距離等を適切に取得でき、被検眼Eに対する測定ヘッド12の位置合わせをより効率的かつより適切に行える。
【0155】
以上、本開示の実施形態を図面により詳述してきたが、上記各実施形態は本開示の例示にしか過ぎないものであり、本開示は上記各実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本開示に含まれることは勿論である。
【0156】
例えば、上記各実施形態では、測定ヘッド12をXYZ方向へ移動可能とし、更に光学テーブル30の昇降を主制御部17で制御可能としている。そして、主制御部17の制御の下、寸法情報に応じて測定ヘッド12、光学テーブル30及び顔支持部20を移動させているが、このような構成に限定されることなない。例えば、測定部が移動しない構成の眼科装置であっても、光学テーブル30と顔支持部20との位置調整によって、被検眼Eに対する測定部の位置合わせを適切に行える。
【0157】
また、上記各実施形態では、眼科装置本体2に取り付けられたモニタ部14の表示面40を操作部19としているが、他の異なる実施形態として、モニタ部14を着脱可能として、モニタ部14を検者が持って操作してもよい。また、モニタ部14とは別個に、表示部及びタッチパネルやキーボード等の操作部を備えたタブレット端末、スマートフォン等の情報端末、専用端末等のコントローラを備えていてもよい。このコントローラの表示部に、モニタ部14の表示面40に表示される画面と同様の画面(被検者像を含む)を表示してもよい。この場合、検者がモニタ部14やコントローラを保持して、所望の方向から被検者Pの状態を視認しながら操作ができる。このため、検者の位置の自由度を高めることができる。
【0158】
また、モニタ部14やコントローラと、Wi-fi(登録商標)等の近距離無線通信からなる通信ネットワークによって互いに通信可能に接続したり、インターネット等の通信ネットワークNを介して互いに通信可能に接続したりすれば、検者が被検者Pの傍らに居なくても、例えば、別室や受付、更には管理センター等の遠隔地でも、眼科装置1の操作が可能となる。いわゆる遠隔操作が可能な眼科装置を提供することができる。
【0159】
また、顔支持部20の少なくとも一部、具体的には顎受け部22の顎Cと接触する部位、額当て部24の額Hと接触する部位等を、透明又は半透明としてもよい。または、顎受け部22全体、額当て部24全体、さらには顔支持部20全体を透明又は半透明としてもよい。このような構成とすることで、被検者Pの顎Cや額Hの顔支持部20との接触部分の画像も、より明確に取得でき、被検者Pの顔と顔支持部20との位置関係をより明確に把握できる。
【0160】
また、第1~第3実施形態では、前眼部像Gfに基づいて測定ヘッド12を移動してアライメントを行っているが、他の例として、被検者像の顎Cの位置、及び顎Cと被検眼Eの距離の平均値等に基づいて、被検眼Eの位置情報を算出し、これに基づいてアライメントを行う構成とすることができる。また、第4実施形態と同様に、被検眼Eを含む被検者像Mを取得して、被検者像Mに基づいてアライメントを行う構成とすることもできる。また、
図5等では、前眼部像Gf等を表示面40に表示しているが、これに限定されることはない。例えば、検者が被検者Pの近くにも、遠隔地にもおらず、無人で測定する眼科装置1等とする場合は、表示面40に前眼部像Gf等を表示する必要はなく、被検者に対する注意事項や測定結果のみを表示する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0161】
1,1A 眼科装置 15,15A 測定光学系 19 操作部
20 顔支持部 22 顎受け部 24 額当て部
25 駆動機構(顔支持部移動機構) 26 検出センサ(検出部)
30 光学テーブル 60,60c カメラ(撮像部)
60a,60b ステレオカメラ(撮像部) C 顎 E 被検眼 H 額
M 被検者像 N 通信ネットワーク P 被検者