(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】透析用カセット及びそのポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61M1/28 110
(21)【出願番号】P 2020048531
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】栗本 亮太
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182254(JP,A)
【文献】特表2019-501772(JP,A)
【文献】実開平06-039001(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液の送液を行うポンプと、透析液を加温する加温チューブと、前記ポンプの接続先の流路を切り換える流路切換部と、を有する透析用カセットであって、
前記ポンプは、
凹状のポンプチャンバを有するポンプ本体と、
前記ポンプチャンバを覆うポンプ膜と、
前記ポンプ膜の周縁部を押圧する押圧部を有するポンプ蓋と、
前記ポンプ膜と当接して前記押圧部との間に前記ポンプ膜を挟持し、前記ポンプチャンバの前記ポンプ膜の下側の空間を液密に封止する第1シール部と、
前記ポンプ本体から前記ポンプ蓋に向けて突出した環状突起部と、前記ポンプ蓋から突出して前記環状突起部と気密に嵌合する環状リブ構造と、を有する第2シール部と、を備え
、
前記第2シール部は前記第1シール部の外周側に設けられ、
前記ポンプ蓋の前記環状リブ構造は、前記環状突起部の内周側に当接して前記環状突起部を外周側に押圧する内周リブと、前記環状突起部の外周側に当接して外周側に押圧された前記環状突起部の荷重を受ける外周リブと、を有する、透析用カセット。
【請求項2】
請求項
1記載の透析用カセットであって、前記内周リブの外径は、前記環状突起部の内径よりも大きく形成されている、透析用カセット。
【請求項3】
請求項
2記載の透析用カセットであって、前記内周リブの突出高さは前記外周リブの突出高さよりも高い、透析用カセット。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の透析用カセットであって、前記ポンプは、前記ポンプ膜と前記押圧部との間に配置され、前記ポンプ膜の撓みを阻止する膜リングを備え、前記押圧部は前記膜リングを介して前記ポンプ膜を前記第1シール部に向けて押圧する、透析用カセット。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の透析用カセットであって、前記ポンプ蓋は、前記ポンプ本体の外周側に設けられたネジ構造により前記ポンプ本体に螺合されている、透析用カセット。
【請求項6】
透析液の送液を行うポンプと、透析液を加温する加温チューブと、前記ポンプの接続先の流路を切り換える流路切換部と、が一体的に形成された透析用カセットのポンプであって、
凹状のポンプチャンバを有するポンプ本体と、
前記ポンプチャンバを覆うポンプ膜と、
前記ポンプ膜の周縁部を押圧する押圧部を有するポンプ蓋と、
前記ポンプ膜と当接して前記押圧部との間に前記ポンプ膜を挟持し、前記ポンプチャンバの前記ポンプ膜の下側の空間を液密に封止する第1シール部と、
前記ポンプ本体から前記ポンプ蓋に向けて突出した環状突起部と、前記ポンプ蓋から突出して前記環状突起部と気密に嵌合する環状リブ構造と、を有する第2シール部と、を備
え、
前記第2シール部は前記第1シール部の外周側に設けられ、
前記ポンプ蓋の前記環状リブ構造は、前記環状突起部の内周側に当接して前記環状突起部を外周側に押圧する内周リブと、前記環状突起部の外周側に当接して外周側に押圧された前記環状突起部の荷重を受ける外周リブと、を有する、ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析装置に装着される透析用カセット及びそのポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
自宅等で患者自身が腹膜透析を行える腹膜透析装置が普及している。腹膜透析装置は、腹膜内への透析液の排出及び透析液の送液を自動で行う機能を有している。透析液の送液を行うダイアフラムポンプと、透析液を加温する加温チューブと、流路を切り換える流路切換ユニットとは、一体的に形成された透析用カセットとして提供される。使用者は、腹膜透析装置の使用開始の際に、腹膜透析装置に透析用カセットをセットして腹膜透析を行う(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透析用カセットは、腹膜透析装置の使用毎に使い捨てで用いられるため、より一層の低コスト化が求められる。
【0005】
そこで、一実施形態は、部品点数及び組立工数を削減することで製造コストを抑制できる透析用カセット及びそのポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の開示の一観点は、透析液の送液を行うポンプと、透析液を加温する加温チューブと、前記ポンプの接続先の流路を切り換える流路切換部と、を有する透析用カセットであって、前記ポンプは、凹状のポンプチャンバを有するポンプ本体と、前記ポンプチャンバを覆うポンプ膜と、前記ポンプ膜の周縁部を押圧する押圧部を有するポンプ蓋と、前記ポンプ膜と当接して前記押圧部との間に前記ポンプ膜を挟持し、前記ポンプチャンバの前記ポンプ膜の下側の空間を液密に封止する第1シール部と、前記ポンプ本体から前記ポンプ蓋に向けて突出した環状突起部と、前記ポンプ蓋から突出して前記環状突起部と気密に嵌合する環状リブ構造と、を有する第2シール部と、を備えた透析用カセットにある。
【0007】
別の一観点は、透析液の送液を行うポンプと、透析液を加温する加温チューブと、前記ポンプの接続先の流路を切り換える流路切換部と、が一体的に形成された透析用カセットのポンプであって、凹状のポンプチャンバを有するポンプ本体と、前記ポンプチャンバを覆うポンプ膜と、前記ポンプ膜の周縁部を押圧する押圧部を有するポンプ蓋と、前記ポンプ膜と当接して前記押圧部との間に前記ポンプ膜を挟持し、前記ポンプチャンバの前記ポンプ膜の下側の空間を液密に封止する第1シール部と、前記ポンプ本体から前記ポンプ蓋に向けて突出した環状突起部と、前記ポンプ蓋から突出して前記環状突起部と気密に嵌合する環状リブ構造と、を有する第2シール部と、を備えたポンプにある。
【発明の効果】
【0008】
上記観点の透析用カセット及びそのポンプによれば、ポンプ膜によって仕切られたポンプチャンバの上側の空間を気密に封止する第2シール部に関してOリングが不要となるため、材料費及びOリングを装着する工程が不要となり、製造コストが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る腹膜透析装置及び透析用カセットの外観斜視図である。
【
図3】
図2の透析液の回路構成を示す概要図である。
【
図4】
図2の透析用カセットのポンプの斜視図である。
【
図6】
図4のポンプのVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】
図4のポンプの第1、第2シール部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、透析用カセット10及びそのダイアフラムポンプ12(ポンプ)について好適な実施形態を挙げて説明する。
【0011】
腹膜透析は、腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入する治療法である。腹腔内に透析液を一定時間入れておくと、腹膜を介して血液中の老廃物や塩分、余分な水分等が腹腔内の透析液側に移動する。老廃物や水分等が透析液に十分に移行した時点で透析液を体外に取り出すといった処置を行うことで、血液を浄化することができ、腎臓の機能を補うことができる。
【0012】
腹膜透析には、連続携行式腹膜透析(CAPD:Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis)と自動腹膜透析(APD:Automated Peritoneal Dialysis)がある。
図1の上段は、連続携行式腹膜透析の治療例を示している。連続携行式腹膜透析は、図中の上向き矢印のタイミングで、透析液の交換を1日に3~5回程度行う。透析液の交換の際には、患者又は介助者が腹腔内に留置された透析用カテーテル112に、排液バッグ109及び透析液バッグ110を接続し、腹腔内からの透析液の排出と、新しい透析液の注入といった操作を順に行う。
【0013】
一方、自動腹膜透析(APD)は、自動腹膜透析装置(サイクラーとも呼ばれる。以下、腹膜透析装置100と呼ぶ。)を用いて透析液交換を自動的に行う方法である。
図1の下段は、自動腹膜透析の治療例を示している。自動腹膜透析では、主に寝ている時間を利用して透析液の交換を自動的に行う。自動腹膜透析は、日中の自由時間を多く確保できるため、広く普及している。
【0014】
自動腹膜透析には、
図2に示す腹膜透析装置100が用いられる。腹膜透析装置100は、透析装置本体101と、透析用カセット10とを備える。透析装置本体101の正面下側には、透析用カセット10を前面から装着するための開口部102a及び蓋部材102bを有するカセット装着部102が設けられている。蓋部材102bは、回動することで、開口部102aを塞ぐ閉状態と、開口部102aを露出させる開状態とに変位する。
【0015】
透析装置本体101の上部には、治療の開始操作を行うための開始ボタン104aと、治療の停止操作を行うための停止ボタン104bとが設けられている。開始ボタン104a及び停止ボタン104bの間には、表示部106が設けられている。表示部106は、液晶表示パネルを備えたタッチパネルで構成される。表示部106は、タッチパネルを押圧操作することで、透析に必要となる各種設定情報を入力することができる。また、透析装置本体101には、スピーカー108が設けられている。スピーカー108は、操作指示の内容や操作案内等の情報を音声で出力する。
【0016】
図3に示すように、透析用カセット10は、透析液の送液を行うダイアフラムポンプ12(ポンプ)と、透析液を加温する加温チューブ14と、ダイアフラムポンプ12の接続先のチューブを切り換える流路切換部16と、流路切換部16から延びる接続ポート18とを備える。これらの部材は、硬質の樹脂材料よりなる筐体10a内に収容されることで、一体化されている。
【0017】
ダイアフラムポンプ12は、透析装置本体101からの作動用エアの給排に応じて、ポンプ膜24が膨張及び収縮することで、透析液を送液するポンプとして機能する。なお、ダイアフラムポンプ12の詳細については、後述する。
【0018】
加温チューブ14は、患者の内腔に注入される透析液を加温する機能を有している。加温チューブ14は、蛇行した流路と、その流路を上下方向から挟み込むように配置されたシート状の加温ヒータとを備えている。
【0019】
流路切換部16は、ダイアフラムポンプ12と加温チューブ14と接続ポート18に連通する複数のチューブの接続先を切り換える機能を有する。流路切換部16は、複数の分岐部を介してダイアフラムポンプ12と加温チューブ14と接続ポート18に連通する複数のチューブを接続する流体回路を備えている。流体回路に含まれるチューブの1又は複数個所をクランプするべく、複数のクランプ部16aが設けられている。クランプ部16aは、透析装置本体101のクランプ部材によって閉塞される。流路切換部16は、患者の腹腔内への透析液の注液処理と、腹腔内の透析液の排出処理とを切り換える。
【0020】
透析液の注入処理では、流路切換部16は、透析液バッグ110、ダイアフラムポンプ12、加温チューブ14、透析用カテーテル112の順に連通する流路を形成する。また、透析液の排出処理では、流路切換部16は、透析用カテーテル112、流路切換部16、排液タンク114の順に通じる流路を形成する。
【0021】
また、流路切換部16は、加温チューブ14に接続される流路を開通又は遮断する。透析液の注入処理や、加温チューブ14への透析液を充填するプライミング処理において、流路切換部16は、加温チューブ14への流路を開通させ、それ以外の期間は加温チューブ14への流路を遮断する。
【0022】
加温チューブ14及び流路切換部16を含む、透析用カセット10に張り巡らされた流路は、柔軟な樹脂材料によって構成される。
【0023】
透析用カセット10の一端には、4つの接続ポート18が設けられている。第1接続ポート18aには、配管部材111を介して、透析用カテーテル112が接続される。第2接続ポート18bには、1又は複数の透析液バッグ110が接続される。第3接続ポート18cには、透析液バッグ110の透析液とは異なる成分の透析液を収容した追加透析液バッグ116が接続される。第4接続ポート18dには、排液タンク114が接続される。
【0024】
以下、透析用カセット10のダイアフラムポンプ12(ポンプ)について説明する。
【0025】
図5に示すように、ダイアフラムポンプ12は、ポンプ本体20と、Oリング22(環状シール部材)と、ポンプ膜24と、膜リング26と、ポンプ蓋28とを備えている。
【0026】
図4に示すように、ダイアフラムポンプ12は、円柱状の形状に形成されており、下端側のポンプ本体20の上に、円形のポンプ蓋28を取り付けて構成されている。ポンプ蓋28の外方には、取付片30が周方向の複数個所に設けられており、ダイアフラムポンプ12は取付片30を介して透析用カセット10の筐体10aに取り付けられる。
【0027】
ポンプ本体20は、
図5に示すように、中央部に凹状に形成されたポンプチャンバ32を有している。ポンプチャンバ32の表面は、放物面又は球面等の滑らかな曲面で形成されている。ポンプチャンバ32の底部(中央部)には、通液路34に連通する連通孔36が設けられている。
【0028】
図6に示すように、ポンプ本体20の内部には、透析液が流通する通液路34が中心部から外周側に向けて延びている。通液路34の内周側の端部は、連通孔36につながっている。また、通液路34の外周側の端部は、ポンプ本体20の側部に露出している。通液路34の外周側の端部には、透析用カセット10の流路切換部16から延びるチューブが接続される。
【0029】
ポンプ本体20のポンプチャンバ32の外側には外周部38が形成されている。外周部38には、ポンプチャンバ32の外側に隣接してポンプチャンバ32を囲むように設けられた環状溝40と、環状溝40の外方を囲むように設けられた環状突起部44とが形成されている。環状溝40は、Oリング22を収容可能な幅及び深さに形成されており、Oリング22が嵌装される。後述するように、環状溝40及びOリング22は、ポンプチャンバ32のポンプ膜24の下側の空間を液密にシールする第1シール部42を構成する。
【0030】
ポンプ本体20の環状突起部44は、外周部38からポンプ蓋28に向けて壁状に突出して形成されている。後述するように、環状突起部44は、ポンプチャンバ32のポンプ膜24よりも上側の空間を気密にシールする第2シール部62の一部を構成する。
【0031】
ポンプ本体20の外側部には、雄ネジ46が形成されている。この雄ネジ46には、ポンプ蓋28の雌ネジ48が螺合される。
図6に示すように、雄ネジ46及び雌ネジ48によりネジ構造50が構成されている。ポンプ蓋28は、ネジ構造50を通じてポンプ本体20側に押圧された状態で、ポンプ本体20に装着される。
【0032】
図5に示すように、ポンプ本体20及びOリング22の上には、ポンプ膜24が設けられている。ポンプ膜24は、シリコンーンゴム等の弾性材料よりなる薄いシート状の部材であり、円形に形成されている。ポンプ膜24は、ポンプ本体20のポンプチャンバ32を覆うように配置され、ポンプチャンバ32を通液路34に連通した下側の空間と、ポンプ蓋28の貫通孔28aに連通した上側の空間とに仕切る。ポンプ膜24の周縁部は、環状突起部44の内側に配置され、ポンプ膜24の下面はOリング22と当接する。Oリング22は、ポンプ膜24と密着することにより、ポンプチャンバ32の下側の空間を液密に封止する。
【0033】
ポンプ膜24の周縁部の上には、膜リング26が配置される。膜リング26は、ステンレス鋼等の金属材料又は硬質な樹脂材料によって形成された、円環状の板部材である。
図6に示すように、膜リング26は、ポンプ蓋28とポンプ膜24との間に配置されて、柔軟なポンプ膜24を支持する。膜リング26を設けることにより、ポンプ蓋28をポンプ本体20に締め込んだ際に、ポンプ膜24に皴が入るのを阻止して、第1シール部42のシール性を保つことができる。
【0034】
ポンプ蓋28は、ポンプ本体20の上部を覆うように装着されている。ポンプ蓋28は、ポンプ本体20の外周部38と対向する押圧部52と、押圧部52の外周側からポンプ本体20側(下側)に向けて延び出た側壁部54とを備えている。押圧部52の中央部には、ポンプチャンバ32と同程度の内径を有する貫通孔28aが形成されている。貫通孔28aからは、ポンプ膜24が露出している。押圧部52の上端面52aは、
図8に示すように、透析装置本体101のエアチャンバ118が接続される部分となっており、エアチャンバ118のシール部材118aとの密着性を発揮するべく、平滑面として形成されている。
【0035】
図7に示すように、押圧部52の下端面52bは、膜リング26と当接する。ポンプ蓋28をポンプ本体20に締め込んだ状態において、押圧部52は、膜リング26を介してポンプ膜24をOリング22に向けて押圧することで、第1シール部42のシール性を発揮させる。また、押圧部52の下端面52bには、環状突起部44に対向する部分に環状リブ構造60が設けられている。
【0036】
環状リブ構造60は、下端面52bからポンプ本体20に向けて下側に突出したリブであり、内周リブ56と外周リブ58とを備えている。内周リブ56及び外周リブ58とは、同心円状に形成されている。内周リブ56は、環状突起部44の内周側に当接するリブであり、その外径は、環状突起部44の内径よりも僅かに大きく形成されている。ポンプ蓋28をポンプ本体20に締め込むと、内周リブ56が環状突起部44を外周側に押圧する。
【0037】
外周リブ58は、内周リブ56の外周側に形成されたリブであり、内周リブ56から、環状突起部44の径方向の寸法と同じ距離離間した位置に形成されている。外周リブ58の突出高さは、内周リブ56の突出さよりも低くなっている。また、外周リブ58は、内側面及び外側面が傾斜した面で構成され、断面が三角形状に先細りに形成されている。外周リブ58は、内周リブ56を介して外周側に押圧された環状突起部44と当接し、環状突起部44に作用する押圧力を受け止める。
【0038】
このように、環状リブ構造60は、内周リブ56から環状突起部44に外周に向けた押圧力が作用する状態で、環状突起部44と嵌合することで、ポンプ蓋28とポンプ本体20との隙間を気密に封止する第2シール部62を構成する。
【0039】
ポンプ蓋28の側壁部54は、ポンプ本体20の外径よりも大きな内径に形成されており、その内周面にはポンプ本体20の雄ネジ46に螺合する雌ネジ48が形成されている。ポンプ蓋28の雌ネジ48をポンプ本体20の雄ネジ46に締め込むことにより、第1シール部42及び第2シール部62のシール性が発揮される。
【0040】
本実施形態の透析用カセット10及びダイアフラムポンプ12は、以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0041】
図5に示すように、ダイアフラムポンプ12の組立は、まずポンプ本体20を用意し、ポンプ本体20の環状溝40にOリング22を嵌装する工程を行う。その後、ポンプ本体20の環状突起部44の内側に、ポンプ膜24及び膜リング26を配置する工程を行う。その後、ポンプ蓋28を用意し、ポンプ蓋28の側壁部54の雌ネジ48を、ポンプ本体20の雄ネジ46に螺合させて、ポンプ蓋28を装着する工程を行う。
【0042】
ポンプ蓋28をポンプ本体20に締め込むにしたがって、内周リブ56がポンプ本体20の外周部38に押し付けられてゆく。内周リブ56によって、ポンプ膜24及び膜リング26が内周側の所定位置に収まるように位置決めされる。そして、ポンプ蓋28の押圧部52の下端面52bにより、膜リング26及びポンプ膜24がOリング22に押圧されて、第1シール部42が液密に封止される。
【0043】
また、ポンプ蓋28を締め込むことで、環状リブ構造60の内周リブ56と外周リブ58との間に環状突起部44が嵌合し、第2シール部62が密着する。このように、本実施形態のダイアフラムポンプ12では、第1シール部42にのみOリング22を装着するだけで済み、部品のコストを抑制でき、Oリング22を嵌装する工程が少なくて済むため、製造コストも抑制できる。
【0044】
図2に示すように、透析用カセット10は、透析装置本体101にセットして使用される。この場合には、
図8に示すように、透析装置本体101側のエアチャンバ118がダイアフラムポンプ12のポンプ蓋28の上面(押圧部52の上端面52a)に押し当てられて気密に接続される。そして、エアチャンバ118を介して、作動用エアの給排が行われる。
【0045】
作動用エアは、ポンプ蓋28の貫通孔28aを通じてポンプチャンバ32のポンプ膜24の上側の空間に供給される。そして、作動用エアの圧力によって、ポンプ膜24が上下に移動して、ポンプチャンバ32のポンプ膜24の下側の空間の容積が増減する。このような動作により、ダイアフラムポンプ12による透析液の送液が行われる。透析装置本体101は、ダイアフラムポンプ12に供給する作動用エアの容量(圧力)に基づいて、透析液の送液量を管理する。そのため、ダイアフラムポンプ12は、透析液の漏洩を生じないシール性に加えて、作動用エアが外部に漏洩しないシール性が求められる。
【0046】
本実施形態のダイアフラムポンプ12では、Oリング22がポンプ膜24の下側から密着する第1シール部42によって、ポンプチャンバ32のポンプ膜24の下側の空間が液密に封止されることで、透析液の漏洩が防止される。また、第1シール部42の外周側に設けられた第2シール部62において、ポンプ本体20の環状突起部44がポンプ蓋28の環状リブ構造60に嵌合することにより、ポンプ本体20とポンプ蓋28との隙間が気密に封止される。これにより、ダイアフラムポンプ12に供給される作動用エアがダイアフラムポンプ12の外部への漏洩を防ぐことができ、透析液の送液量を精密に管理することができる。
【0047】
本実施形態の透析用カセット10及びダイアフラムポンプ12は、以下の効果を奏する。
【0048】
本実施形態の透析用カセット10は、透析液の送液を行うダイアフラムポンプ12(ポンプ)と、透析液を加温する加温チューブ14と、ダイアフラムポンプ12の接続先の流路を切り換える流路切換部16と、を有する透析用カセット10に関する。透析用カセット10のダイアフラムポンプ12は、凹状のポンプチャンバ32を有するポンプ本体20と、ポンプチャンバ32を覆うポンプ膜24と、ポンプ膜24の周縁部を押圧する押圧部52を有するポンプ蓋28と、ポンプ膜24と当接して押圧部52との間にポンプ膜24を挟持し、ポンプチャンバ32のポンプ膜24の下側の空間を液密に封止する第1シール部42と、ポンプ本体20からポンプ蓋28に向けて突出した環状突起部44と、ポンプ蓋28から突出して環状突起部44と気密に嵌合する環状リブ構造60とを有する第2シール部62と、を備える。
【0049】
上記の透析用カセット10によれば、ポンプ膜24によって仕切られたポンプチャンバ32の上側の空間を気密に封止する第2シール部62に関してOリング22が不要となるため、材料費及びOリング22を装着する工程が不要となり、製造コストが抑制される。
【0050】
上記の透析用カセット10において、第2シール部62を第1シール部42の外周側に設けてもよい。この構成によれば、第2シール部62にポンプ膜24が噛み込まないので、第2シール部62のシール性の確保が容易になる。
【0051】
上記の透析用カセット10において、ポンプ蓋28の環状リブ構造60は、環状突起部44の内周側に当接して環状突起部44を外周側に押圧する内周リブ56と、環状突起部44の外周側に当接して外周側に押圧された環状突起部44の荷重を受ける外周リブ58と、を備えてもよい。この構成によれば、Oリング22等の部品を用いることなく、簡素な構成で第2シール部62のシール性を発揮でき、製造コストを抑制できる。
【0052】
上記の透析用カセット10において、内周リブ56の外径は、環状突起部44の内径よりも大きく形成されてもよい。この構成によれば、内周リブ56により環状突起部44が確実に押圧され、第2シール部62の気密性が向上する。
【0053】
上記の透析用カセット10において、内周リブ56の突出高さは、外周リブ58の突出高さよりも高くてもよい。
【0054】
上記の透析用カセット10において、ダイアフラムポンプ12は、ポンプ膜24と押圧部52との間に配置され、ポンプ膜24の撓みを阻止する膜リング26を備えてもよく、押圧部52は膜リング26を介してポンプ膜24を第1シール部42に向けて押圧するように構成してもよい。この構成によれば、ポンプ膜24の皴の発生を防止でき、皴によるシール性の低下を防止できる。
【0055】
上記の透析用カセット10において、ポンプ蓋28は、ポンプ本体20の外周側に設けられたネジ構造50によりポンプ本体20に螺合されてもよい。これにより、簡素な構成で確実にポンプ蓋28がポンプ本体20に固定され、製造コストが抑制される。
【0056】
本実施形態は、透析液の送液を行うダイアフラムポンプ12と、透析液を加温する加温チューブ14と、ダイアフラムポンプ12の接続先の流路を切り換える流路切換部16と、が一体的に形成された透析用カセット10のダイアフラムポンプ12(ポンプ)であって、凹状のポンプチャンバ32を有するポンプ本体20と、ポンプチャンバ32を覆うポンプ膜24と、ポンプ膜24の周縁部を押圧する押圧部52を有するポンプ蓋28と、ポンプ膜24と当接して押圧部52との間にポンプ膜24を挟持し、ポンプチャンバ32のポンプ膜24の下側の空間を液密に封止する第1シール部42と、ポンプ本体20からポンプ蓋28に向けて突出した環状突起部44と、ポンプ蓋28から突出して環状突起部44と気密に嵌合する環状リブ構造60とを有する第2シール部62と、を備えている。
【0057】
上記のダイアフラムポンプ12(ポンプ)によれば、ポンプ膜24によって仕切られたポンプチャンバ32の上側の空間を気密に封止する第2シール部62に関してOリング22が不要となるため、材料費及びOリング22を装着する工程が不要となり、製造コストが抑制される。
【0058】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10…透析用カセット 14…加温チューブ
16…流路切換部 20…ポンプ本体
24…ポンプ膜 26…膜リング
28…ポンプ蓋 28a…貫通孔
32…ポンプチャンバ 38…外周部
42…第1シール部 44…環状突起部
50…ネジ構造 52…押圧部
56…内周リブ 58…外周リブ
60…環状リブ構造 62…第2シール部