(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】煎じカゴの機械式復帰システムを有するカゴの移動装置を備えた煎じ飲物の調製器具
(51)【国際特許分類】
A47J 31/20 20060101AFI20231201BHJP
A47J 31/44 20060101ALI20231201BHJP
A47J 31/48 20060101ALI20231201BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A47J31/20
A47J31/44 180
A47J31/48
A47J31/06 160
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020054555
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-01-20
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルル マンソー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ドゥモー
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0274246(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0055901(US,A1)
【文献】特表2010-507411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/20
A47J 31/44
A47J 31/48
A47J 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を受けるための本体(2)と、煎じカゴ(17)とを備える煎じ飲物の調製器具(1)であって、前記煎じカゴが湯の中に浸漬される低い煎じ位置と、前記煎じカゴの位置が水位より上になる高い湯切り位置との間で、前記本体内で前記煎じカゴを移動させる装置(19)を備え、前記移動装置(19)は、前記本体(2)の上部開口(6)を通る可撓伝動要素(20)であって、前記煎じカゴ(17)につながれた第1の端部(20d)と、前記本体(2)の外側に設けられた第2の端部(20e)とを備える伝動要素(20)を備える器具(1)において、前記移動装置(19)は、前記可撓伝動要素(20)に張力を与えるために、前記第2の端部(20e)の駆動用動力システム(21)と、低い煎じ位置への前記煎じカゴ(17)の機械式復帰システム(22)とを備えることを特徴とする器具(1)。
【請求項2】
低い煎じ位置への前記煎じカゴ(17)の前記機械式復帰システム(22)は、少なくとも1つのばね(46)を備える請求項1に記載の器具(1)。
【請求項3】
低い煎じ位置への前記煎じカゴ(17)の前記機械式復帰システム(22)は、前記煎じカゴを平行移動させる少なくとも1つのガイドカラム(36)を備えており、前記少なくとも1つのガイドカラムは、前記少なくとも1つのばね(46)を受ける収納部を備える請求項2に記載の器具(1)。
【請求項4】
前記可撓伝動要素(20)の前記第1の端部(20d)は、前記少なくとも1つのガイドカラム(36)と協働する移動台(37)に連結され、前記煎じカゴ(17)は前記移動台上に設けられる請求項3に記載の器具(1)。
【請求項5】
前記煎じカゴ(17)は、前記移動台(37)に脱着可能に設けられる請求項4に記載の器具(1)。
【請求項6】
前記本体(2)は、ハンドル(16)を有する外周壁(4)を備え、前記可撓伝動要素(20)の前記第2の端部(20e)の前記駆動用動力システム(21)は、前記ハンドルの中に設けられる請求項1~5のいずれか一項に記載の器具(1)。
【請求項7】
前記駆動用動力システム(21)は、原動機(25)によって回転駆動されるねじ(26)と、前記ねじに取り付けたナット(29)とを備え、前記可撓伝動要素(20)の前記第2の端部(20e)が前記ナットにつながれる請求項1~6のいずれか一項に記載の器具(1)。
【請求項8】
前記可撓伝動要素(20)はリボンタイプのものであり、平たい長方形の断面を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の器具(1)。
【請求項9】
前記可撓伝動要素(20)はプラスチック素材で製作される請求項8に記載の器具(1)。
【請求項10】
前記移動装置(19)は、前記本体(2)の上縁(4c)に設けられた、前記可撓伝動要素(20)のガイド部品(24)を備える請求項1~9のいずれか一項に記載の器具(1)。
【請求項11】
前記本体(2)内に入れた水の加熱手段(8、10)と、前記加熱手段および前記可撓伝動要素(20)の前記第2の端部(20e)の前記駆動用動力システム(21)の制御回路(11)とを備える請求項1~10のいずれか一項に記載の器具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煎じ物、特に茶をその中に入れることができる煎じカゴであって、湯から引き揚げられて湯切りをする位置から湯の中に浸漬されて煎じ物が煎じられる位置へ、またその逆に煎じカゴを移動させる装置によって湯の中を移動させられて煎じ物を煎じることができるカゴを備える煎じ飲物の調製器具に関する。
【0002】
本発明はとりわけ煎じカゴの移動装置の設計に関する。
【背景技術】
【0003】
当業者には煎じ飲物の調製装置は既知である。このような装置は水を入れるための本体を備える。この水は、一部のタイプの装置にあっては、あらかじめ加熱した後、本体に注ぎ入れることができる。別のタイプの装置では、本体内に配設された湯沸し装置を備えることができ、冷水が本体内に注がれた後、その中で直接加熱される。
【0004】
煎じ飲物は煎じ物、例えば茶によって調製されるものであり、この煎じ物は煎じカゴの中に入れられ、煎じカゴはその煎じ物に適した時間だけ湯の中に浸漬される。煎じカゴは湯をカゴの中に入り込ませる漉し壁を備えており、煎じ物がその湯に浸かることでその煎じ物の煎じが得られ、煎じ液はその漉し壁を通り抜けることができて器具の本体内にある残りの湯と混じり合う。
【0005】
器具によっては、湯に浸漬するために器具本体の上部開口を通して手で挿入する必要のある煎じカゴを備えるものがある。煎じカゴは煎じ時間が経過したところで本体の上部開口から取り出さなければならないが、そのためには、煎じカゴを本体から完全に引き揚げる前に上部開口レベルで煎じ液上に煎じカゴを吊り下げた状態で一定時間保持することで、煎じカゴ内の煎じ殻に多少なりとも湯切りのための時間を与えることが必要となる。次いで、煎じカゴは、小鉢や小皿などの容器の中に置いて、煎じカゴ内の煎じ殻からの湯が器具を置いたテーブルや調理面に滴ることなく終えられるようにする。
【0006】
煎じ殻の湯切りの際に煎じカゴをこのように操作したり、その湯切りの後に煎じカゴを受ける追加の容器を使ったりせずに済ませるため、器具によっては、煎じカゴを保持すること、および煎じカゴが湯の中に浸漬される低い煎じ位置と、煎じカゴの位置が煎じ液の水位より上になる高い湯切り位置の2つの位置の間で煎じカゴを移動させることが可能な煎じカゴの移動装置を備えている。こうした器具は、特に公開されている特許出願および特許において示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
【0007】
移動装置は、器具本体の上部開口を通る可撓伝動ストラップであって、本体内に納められた煎じカゴにつながれた第1の端部と、本体外側に、本体に取り付けられたハンドル上に設けられた第2の端部であって、ハンドルの外からアクセスすることのできる操作具に従属しており(assujetti a)、そのハンドルに沿って高さ方向に手動で移動可能な第2の端部とを備える伝動ストラップを備える(例えば、特許文献1参照)。操作具をハンドルの上方に移動させると、これがストラップの第2の端部を押すことができ、それによって煎じカゴを下降させて低い煎じ位置に沈み込ませることができる。反対に、操作具をハンドルの下方に移動させると、これがストラップの第2の端部を引くことができ、それによって煎じカゴを上昇させて煎じ液から高い湯切り位置に引き揚げることができる。煎じカゴは、低い煎じ位置から高い湯切り位置へ、またその逆に移動する間、ハンドルに近接した本体の内壁に沿ってガイドされる。
【0008】
移動装置は、本体の上部開口を通り抜ける逆U字形の剛性伝動要素であって、煎じカゴにつながれた第1の端部と、本体外側に設けられた第2の端部とを備える伝動要素を備える(例えば、特許文献2参照)。この第2の端部は、2つの弁によって上昇および下降を操作できるピストンに従属しており、そのピストンの操作によって煎じカゴを逆U字形の剛性伝動要素を介して本体内で低い煎じ位置と高い湯切り位置との間で移動させることができる。
【0009】
器具はハンドルを有する本体と、その本体の上部開口を閉じることができる蓋とを備え、蓋はハンドルの上端レベルで本体と連節される(例えば、特許文献3参照)。この蓋は、それに合わせて構成された煎じカゴを受けることができる内部区画を備えており、その内部区画は蓋が閉じた位置で本体の上部開口と連通する。移動装置は、ハンドルの中および蓋の中を通るケーブルを備えており、そのケーブルは、蓋の中に配置され煎じカゴにつながれた第1の端部と、ハンドルの中に配置されハンドルの中に納められた駆動用動力システムにつながれた第2の端部とを備える。この駆動用動力システムはハンドル内でハンドルの高さの向きに延びる送りねじと、送りねじに取り付けてケーブルの第2の端部につながれたナットとを備えており、ねじが一方また他方の向きに回転することによってナットを送りねじに沿って上から下へ、またその逆に移動させることができる。ナットが上に移動すると、これがケーブルの第2の端部を上昇させ、それによってケーブルにたるみが与えられることで煎じカゴを重力によって本体の上部開口を通して本体内に下降させることができ、それによって煎じカゴは低い煎じ位置へと移動することができる。反対に、ナットが下に移動すると、これがケーブルの第2の端部を引き、それによってケーブルが煎じカゴを引き寄せることでカゴを煎じ液から引き揚げ、高い湯切り位置である蓋の内部区画に移す。
【0010】
器具はハンドルを有する本体と、その本体の上部開口を閉じることができる蓋とを備え、蓋はハンドルの上端レベルに設けられた蝶番によって本体と連節される(例えば、特許文献4参照)。この蓋は煎じカゴを本体の上部開口レベルに蓋の閉位置で保持することを可能にする。移動装置は蓋の中に収められたケーブルを備え、そのケーブルは、煎じカゴにつながれた第1の端部と、蓋の中に納められた駆動用動力システムにつながれた第2の端部とを備える。この駆動用動力システムはケーブルの第2の端部につながれた回転駆動軸を備え、軸が一方また他方の向きに回転することによってケーブルを軸の周りに巻き取り、また逆に繰り出すことができる。ケーブルが繰り出されると、それにたるみが与えられて煎じカゴを重力によって本体の上部開口を通して本体内に下降させることができ、それによって煎じカゴは低い煎じ位置へと移動することができる。反対に、ケーブルが巻き取られると、煎じカゴを引き寄せて煎じカゴを煎じ液から高い湯切り位置に引き揚げ、それによって煎じカゴは蓋の停止位置へと至ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5609092号明細書
【文献】米国特許第6915733号明細書
【文献】国際公開第2008/137133号パンフレット
【文献】欧州特許第3076830号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
可撓伝動ストラップまたはケーブルによるこうした実装には、煎じカゴのその低い煎じ位置までの下降を完璧にコントロールできないことなど、幾つかの不都合がある(例えば、特許文献1、特許文献3および特許文献4参照)。実際、本体に含まれる湯への煎じカゴの下降の当初には、煎じカゴの漉し壁を通して湯が浸入し煎じ物に染み込む必要があることから、特に操作具(例えば、特許文献1参照)や動力システム(例えば、特許文献3および特許文献4参照)の操作が急すぎる場合には、煎じカゴが一定時間浮く可能性がある。操作具(例えば、特許文献1参照)および動力システム(例えば、特許文献3参照)の場合、可撓伝動ストラップまたはケーブルの第2の端部にかかる押力は、煎じカゴが浮きがちであるか、またはあまりすばやく湯の中に入らないという場合には、伝動ストラップまたはケーブルを折り曲げることになる。その結果、可撓伝動ストラップまたはケーブルが本来の軌道から外れることになり、そのために移動装置の部品または器具の他の部品に引っ掛かる可能性がある。動力システム(例えば、特許文献4参照)の場合も同様で、煎じカゴが浮かぶか、またはあまりすばやく入らない場合には、ケーブルを繰り出していくときにやはり折れ曲がる可能性があり、そのときは同様にケーブルが緩んで本来の軌道から外れる可能性があり、駆動用動力システムの部品や蓋の部品に引っ掛かったままとなるリスクがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述の不都合に対処し、そのために、水を受けるための本体と、煎じ物を受けるのに適した煎じカゴとを備える煎じ飲物の調製器具を実装する。この煎じカゴは、煎じカゴに煎じ物が入ったまま、煎じカゴに湯を入り込ませ、また出させることができる漉し壁を備える。また、器具は、煎じカゴが湯の中に浸漬される低い煎じ位置と、煎じカゴの位置が水位より上になる高い湯切り位置との間で、本体内で煎じカゴを移動させる装置を備える。この移動装置は、本体の上部開口を通る可撓伝動要素であって、煎じカゴにつながれた第1の端部と、本体の外側に設けられた第2の端部とを備える伝動要素を備え、前記移動装置は、その可撓伝動要素に張力を与えるために、可撓伝動要素の第2の端部の駆動用動力システムと、低い煎じ位置への煎じカゴの機械式復帰システムとを備える。そのため、煎じカゴの機械式復帰システムが一切設けられていない実装(例えば、特許文献1参照)とも、さらには同様のもの(例えば、特許文献3参照)とも異なり、本発明による器具の移動装置は、駆動用動力システムによって可撓伝動要素にたるみが与えられると直ちに煎じカゴを下降させることができ、それによって可撓伝動要素が常に張られた状態を維持して、カゴが本体内を高い湯切り位置から低い煎じ位置に下降する間に本来の軌道から外れることがないようにすることができる。
【0014】
器具の一実施形態によれば、低い煎じ位置への煎じカゴの機械式復帰システムは、少なくとも1つのばねを備える。好ましくは、そのばねはカゴを低い煎じ位置に押すように圧縮作用するように設けられる。変形形態として、そのばねはカゴを低い煎じ位置に引くように引張作用するように設けられることもできよう。ばねに代えて他のあらゆる適合した弾性部品を用いるその他の変形形態も企図されてよい。
【0015】
器具のこの実施形態によれば、低い煎じ位置への煎じカゴの機械式復帰システムは、煎じカゴを平行移させる少なくとも1つのガイドカラムを備えており、その少なくとも1つのガイドカラムは、その少なくとも1つのばねを受ける収納部を備える。そのため、本体内における煎じカゴの移動はガイドカラムによって規定される軌道に沿って行われ、収納部は取り付けられた圧縮ばねの保持も果たす。
【0016】
好ましくは、可撓伝動要素の第1の端部は、その少なくとも1つのガイドカラムと協働する移動台に連結され、煎じカゴはその移動台上に設けられる。
【0017】
好ましくは、煎じカゴは、煎じ殻の取出し、煎じカゴの掃除および煎じカゴへの煎じ物の投入が容易になるように、移動台に脱着可能に設けられる。
【0018】
本発明の対象である器具によれば、本体は、ハンドルを有する壁を備える。また、可撓伝動要素の第2の端部の駆動用動力システムは、前記ハンドルの中に設けられている。
【0019】
本器具の一実施形態によれば、動力システムは、原動機によって回転駆動されるねじと、そのねじに取り付けたナットとを備え、可撓伝動要素の第2の端部がそのナットにつながれる。ねじの回転はねじに沿ってナットを、したがって可撓伝動要素の第2の端部も、移動させることができる。
【0020】
本器具の一実施形態によれば、可撓伝動要素はリボンタイプのものであり、平たい長方形の断面を有する。
【0021】
ケーブルなど、それ以外の可撓伝動要素も企図することができる。本発明でいうところの「可撓伝動要素」とは、伝動要素が折り曲げられたり、軌道を変えたりできるだけの柔軟性を有しているが、弾性は有しておらず、前記駆動用動力システムや前記機械式復帰システムの作用で生じる張力の影響を受けて変形することがないことをいう。
【0022】
可撓伝動要素はプラスチック素材で製作されることが好ましいが、それ以外の素材も企図することができる。
【0023】
本器具の一実施形態によれば、移動装置は、本体の上縁に設けられた、可撓伝動要素のガイド部品を備える。このガイド部品は、可撓伝動要素が駆動用動力システムによって上方に押されたときに可撓伝動要素が軌道を外れる万一のリスクに備えることを可能にする。
【0024】
一実施形態によれば、本器具は本体内に入れた水の加熱手段と、その加熱手段および可撓伝動要素の第2の端部の駆動用動力システムの制御回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の特徴および利点は図面に基づいた以下の説明を読むことによって明らかとなろう。
【
図1】本発明による煎じ飲物の調製器具の全体図である。
【
図2】器具本体内の低い煎じ位置にある煎じカゴを示した断面図である。
【
図3】器具本体内の高い湯切り位置にある煎じカゴを示した断面図である。
【
図4】煎じカゴが低い煎じ位置にある状態での、機械式復帰システムおよび駆動用動力システムなどを示した断面図である。
【
図5】煎じカゴが高い湯切り位置にある状態での、機械式復帰システムおよび駆動用動力システムなどを示した断面図である。
【
図6】煎じカゴを受ける移動台のガイドカラムおよび可撓伝動要素のガイド部品を一部断面で示した図である。
【
図7】煎じカゴが低い煎じ位置にある駆動用動力システムの図である。
【
図8】煎じカゴが高い湯切り位置にある駆動用動力システムの図である。
【
図9】駆動用動力システムのナットと煎じカゴを受ける移動台との間に設けられた可撓伝動要素をさらに詳しく示した図である。
【
図10】煎じカゴを脱着可能に受けるための移動台の図である。
【
図11】
図10の移動台に脱着可能に取り付けるための煎じカゴの図である。
【
図12】駆動用動力システムの送りねじなどを示した図である。
【
図13】本体内部における煎じカゴの脱着可能な磁石式の組立て装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
明細書の以下の部分では、器具という用語は煎じ飲物の調製器具を指すものとして使用し、ストラップという用語は可撓伝動要素を指すものとして使用し、カゴという用語は煎じカゴを指すものとして使用する。また、説明中に指示がある場合を除き、器具に関して同一または等価である特徴を示す場合には同じ符号を使用する。
【0027】
図1~3では、器具1は、水を入れることができるチャンバ3を画定する本体2を備えた電気ポットの形をなしている。本体2は、上部4aに注ぎ口5を備える外周壁4を備える。本体2は、チャンバ3と連通する上部開口6を備える。器具1は本体2の上部開口6を閉ざすことができる蓋7を備え、器具1の可能な2つの変形形態によれば、その蓋7は、本体2からは独立したものとして完全に外せるものであることも、または逆に常に本体上に保たれるように本体2に対して連節されて、本体2の上部開口へのアクセスのみ行えるようにするものであることもできる。器具1は、チャンバ3の底をなす加熱プレート8を備え、その加熱プレート8は、本体2の外周壁4の下部4bに取り付けられたケース9によって本体2に対して防水性が確保されるように取り付けられる。このケース9は、加熱プレート8の裏側に固定された加熱抵抗器10と、制御回路11と、同じく加熱プレート8の裏側に固定された温度センサ12とをその中に納めることなどができる。このケース9は底13を備え、その底13のレベルには制御回路11に接続されたメスコネクタ14が設けられており、そのメスコネクタ14と相補的なオスコネクタ(図示せず)を備えるベース15との電気接続を可能にする。このベース15は、電気プラグ(図示せず)を介して外部電源と電気的に接続することができる。器具1は、注ぎ口5と反対側に本体2の外周壁4に沿って延びるハンドル16をさらに備える。当業者であれば、上述の技術的特徴を実装するに当たって既存の電気ポットから想を得ることができよう。
【0028】
器具1はカゴ17を備え、そのカゴ17は、
図2および4に示す低い煎じ位置であって、その位置では加熱プレート8であらかじめ沸かしたチャンバ3内の湯の中にカゴ17が沈められることになる低位置と、
図3および5に示す高い湯切り位置であって、カゴ17がチャンバ3内の煎じ液のレベルより上に来る高位置との間で本体2のチャンバ3内を移動することができる。煎じ飲物の調製時にカゴ17が正しく湯の中に沈み、その後、湯切りのために正しく煎じ液から出るようにするため、本体2の外周壁4は、チャンバ3内に注ぐべき最低および最高の水量を推奨することができる目盛システム18(
図1に示すもの)を備えることが好ましい。チャンバ3内におけるカゴ17の移動は、
図2~5などに示されるように、ストラップ20と、ストラップ20に作用する駆動用動力システム21と、カゴ17に作用して低い煎じ位置にカゴ17を戻す機械式復帰システム22とを備える移動装置19によって実現される。
図5および9などに見られるとおり、ストラップ20は平たい長方形の断面を有するリボンの形をなしており、好ましくはプラスチック素材で製作することで、駆動用動力システム21および機械式復帰システム22によって一方または他方の向きに働く引張力の作用で伸びるのを防ぎつつ、折れ曲がることができるだけの柔軟性がストラップに与えられる。
【0029】
図2および3を見ると、ハンドル16と本体2との間に設けられた通路23によってハンドル16の上部16aは本体2の上部開口6と連通している。この通路23は、ストラップ20を通路23に通すことで、ストラップ20の第1の部位20aをハンドル16内に納め、ストラップ20の第2の部位20bを本体2内に納めることを可能にする。ストラップ20の柔軟性はそれを逆U字形に曲げることを可能にし、その湾曲部位20cは
図4、5および6にさらに詳細に図示したガイド部品24によって支えられ、それにより、カゴ17が低い煎じ位置または高い湯切り位置に移動する際の通路23の一方の側から反対側への移動の際にストラップ20のガイドを行うことができる。ガイド部品24は逆U字形に曲げられており、ハンドル16に隣接する外周壁4の上縁4cによって支えられる。ストラップ20に使用されるポリアミドなどのプラスチック素材は移動中のストラップのガイド部品24に対する摩擦を低減する。
【0030】
とりわけ
図7~9を見ると、駆動用動力システム21は伝動ボックス27を介してねじ26を駆動する原動機25を備える。このねじ26の上端部位26aおよび下端部位26bは上部転がり軸受28aおよび下部転がり軸受28bの2つの転がり軸受を介してハンドル16内に軸Xの回転連結で取り付けられ、それによって、ねじ26はハンドル16沿いに多少なりとも垂直に延びるその軸Xの周りに回転することができる。このねじ26はナット29を受け、そのナット29はハンドル内部にねじ26の向きに長手方向に設けられた係止パネル30(
図2に示すもの)によって押支される平らな側面29aを有しており、その係止パネル30によってねじ26の軸Xの周りのナット29の回転が阻止されることで、ねじ26の回転を受けたときに軸X沿いのそのナット29の平行移動が可能になる。ねじ26が矢印31の向きに回転すると、ナット29は
図3、5および8に示すねじ26上の低位置に到達するところまでハンドル16内で下降することができる。反対に、ねじ26が矢印32の向きに回転すると、ナット29は
図2、4および7に示すねじ26上の高位置に到達するところまでハンドル16内で上昇することができる。
【0031】
図12を見ると、ねじ26は、上端部位33a、下端部位33bおよび上端部位33aと下端部位33bとの間に延びるねじ山34を含む長ねじ33を備える。言い方を変えれば、ねじ山34の上端34aおよび下端34bは長ねじ33の上端部位33aおよび下端部位33bのレベルで終わる。ナット29は、ねじ26沿いのナット29の移動時に長ねじ33のねじ山34と係合する(噛み合う)雌ねじ(図示せず)を備える。長ねじ33の上端部位33aおよび下端部位33bの直径はナット29の雌ねじ(図示せず)のねじ山の直径よりも小さく、そのため、ナット29は、ねじ山34の上端34aおよび下端34bに到達すると、長ねじ33の上端部位33aおよび下端部位33bで衝止されることなく、それらの部位で自由に位置を取ることができる。
図2、4および7に示すように、ナット29がねじ26上の高位置に到達すると、ナット29は長ねじ33の上端部位33aに到達し、その位置はナット29の雌ねじが長ねじ33のねじ山34の上端34aに対して係合離脱する(噛み合わなくなる)位置であり、それにより、矢印32の向きにねじ26が回転してもナット29の上方への移動は止まる。同様に、
図3、5および8に示すように、ナット29がねじ26上の低位置に到達すると、ナット29は長ねじ33の下端部位33bに到達し、その位置はナット29の雌ねじが長ねじ33のねじ山34の下端34bに対して係合離脱する(噛み合わなくなる)位置であり、それにより、矢印31の向きにねじ26が回転してもナット29の下方への移動は止まる。
【0032】
とりわけ
図7、8および12を見ると、ナット29の上にあたるねじ26の上端部位26aにはばね35が取り付けられ、上部転がり軸受28aに押支されている。
図8に示すようにばね35が休止状態にあるときは、ばねは長ねじ33の上端部位33aを覆う。ナット29が長ねじ33から係合離脱して長ねじの上端部位33aの高位置にあるとき(
図7)、ばね35は圧縮され、それによってナット29に対して下向きの押力がかかり、それにより、ねじ26の回転の向きが反転してねじが矢印31の向きに回転し始めたとき、ナット29の雌ねじが長ねじ33のねじ山34の上端34aに再び係合するように仕向け、ナット29を再び下降させることができる。反対に、ナット29が長ねじ33から係合離脱して長ねじの下端部位33bの低位置にあるとき(
図8)、機械式復帰システム22(この先で詳述)がカゴ17に作用してカゴが低い煎じ位置に戻るように仕向けるため、ストラップ20はナット29に対して上向きの引張力をかけることができ、そのため、ねじ26の回転の向きが反転してねじが矢印32の向きに回転し始めたときにナット29の雌ねじが長ねじ33のねじ山34の下端34bと再び係合するように仕向けることができて、それによってナット29を再び上昇させることが可能となる。
【0033】
図4~6および
図9~10を見ると、機械式復帰システム22は、ハンドル16内に納められたねじ26に近接してチャンバ3内で本体2の外周壁4に対して長手方向に延びるガイドカラム36(
図6により詳細に示したもの)を備える。このガイドカラム36は、ガイドカラム36の長さによって規定される軌道に沿って移動できる移動台37(
図9および10により詳細に示したもの)を摺動連結によって受ける。ガイドカラム36は、長手方向の切れ目40、41をそれぞれ有する2つの管38、39を備えており、その切れ目40、41が、移動台37に設けられた2つの平坦部42、43の通過を可能にする一方、管38、39は移動台37の2つの管状部分44、45を受ける。管38、39は、それぞれの上端38a、39aが閉じている一方で、下端38b、39bは開いており、それによって移動台37をガイドカラム36の中にはめ込むことができる。ガイドカラム36の管38と移動台37の管状部分44の中にはばね46(
図4および5に示すもの)が納められ、そのばね46は管38の上端38aの底47と移動台37の管状部分44の内側肩部48との間に圧縮されて取り付けられることで、移動台37が下方に押されるように付勢され、それによって
図4に示す低い煎じ位置の方へのカゴ17の復帰を果たすことができる。こうしたばね46は、ガイドカラム36の第2の管39と移動台37の第2の管状部分45との間に実装することで、それぞれの力をバランスさせ、それによってガイドカラム36沿いの移動台37の適切な平行移動が得られるようにすることができる。
【0034】
図2~5および
図9を見ると、ストラップ20の第1の端部20dは本体2のチャンバ3内に配設されて機械式復帰システム22の移動台37につながれており、ストラップ20の第2の端部20eはハンドル16内に配設されて駆動用動力システム21のナット29につながれている。
図5に示すようにカゴ17が高い湯切り位置にあるとき、ナット29は、すでに説明したようにねじ26の長ねじ33の下端部位33bで係合離脱しており、ガイドカラム36内のばね46は最大限圧縮された状態にあり、そのばねが移動台37を押し下げるように付勢する。移動台37に対するこの下向きの押力はストラップ20がナット29を上方に引くことを可能にするものであり、それによってナット29は、ねじ26が矢印32の向きに回転し始めたときにねじ26の長ねじ33と再び係合することができる。ナット29が再び係合すると、ナット29は矢印32の向きに回り続けるねじ26上を上方に移動し、それによってストラップ20の第2の端部20eの上昇が可能となり、ストラップ20にたるみを与え、それにより、ばね46は、カゴ17に固定された移動台37を、
図4に示す低い煎じ位置に到達するところまで下げることができ、その位置では、ナット29は、すでに説明したようにねじ26の長ねじ33の上端部位33aから係合離脱する。すでに説明したように、ねじ26上のばね35は、ねじ26が矢印31の向きに反対に回転し始めたときにナット29がねじ26の長ねじ33と再び係合することを可能にする。ナット29が再び係合すると、ナット29は矢印31の向きに回転し続けるねじ26上を下方に移動し、それによってナット29は移動台37につながれたストラップ20を引いて、移動台37は、
図5に示す高い湯切り位置にカゴ17が到達するところまでガイドカラム36を上昇し、その位置でナット29は再び長ねじ33の下端部位33bから改めて係合離脱する。
【0035】
器具1のケース9内の制御回路11は、カゴ17を高い湯切り位置から低い煎じ位置に、またはその逆に移動するために必要な時間T1よりも長い時間T2にわたって原動機25を作動させて、ねじ26の回転の向きが変わるときにナット29がねじ26への再係合のために多少時間をかける場合であっても、ねじ26の低位置と高位置との間のナット29の全行程が保証されるようにプログラムされる。この制御回路11は、ナット29がカゴ17の低い煎じ位置に相当する
図8の高位置にあるときに矢印31の向きにねじ26を回転駆動するために原動機25を時間T1よりも短い時間T3だけ回転させ、それによってナット29を送りねじ26に対して部分的に下降させることで本体2のチャンバ3内でカゴ17を湯の中に残しながらカゴ17を部分的に上昇させ、次いで原動機25を時間T3よりも長い時間T4だけ逆向きに回転させて、矢印32の向きにねじ26を回転駆動してナット29の高位置への復帰を保証することでカゴ17を低い煎じ位置に再び下降させるようにプログラムすることもできる。これにより、煎じ中にチャンバ3内の湯の中におけるカゴ17の撹拌を起こすことができる。
【0036】
図9~11を見ると、カゴ17は移動台37に脱着可能に取り付けられており、カゴ17の中に煎じ物を入れるため、または反対にカゴ17から煎じ殻を取り除いてカゴ17を掃除するために、カゴ17を器具1の本体2の外に取り出せるようになっている。移動台37は2つの長手方向溝49a、49bを有するスライダ49を備えており、カゴ17は、長手方向溝49a、49bに係合する2つの側方部50a、50bを有するT字形の部品50を備える。移動台37はスライダ49の背板49cに引込み式に設けられた小突起51を備えており、その小突起51は、
図10に示す突出位置に戻るようにばね(図示せず)上に復帰自在に取り付けられている。部品50はその平坦面50cに穴52を備えており、部品50がスライダ49に嵌合して
図9に示す位置となって小突起51が穴52にカチッとはまると平坦面50cはスライダ49の背板49cに隣接する。カゴ17に対して十分な力をかけて移動台37からカゴ17を取り外すためにカゴ17を引くなり、移動台37にカゴ17を取り付けるために押すなりすると、小突起51はスライダ49の背板49cの中に引っ込む。
【0037】
カゴ17を移動台37に脱着可能に取り付けるためにそれ以外の組立て装置を企図することもできる。例として、
図13に示すように、移動台37は第1の対の磁石M1を備え、カゴ17は第2の対の磁石M2を備え、それぞれの対の磁石M1、M2は逆の極性を持ち、それによって移動台37とカゴ17との間で磁気による吸引力が働くようにすることができる。それぞれの対の磁石M1、M2における2つの磁石の極性は
図13に示すもののように逆転させて、一意に決まる位置によって移動台37に対するカゴ17の組立てが可能となるようにすることもできよう。移動台37とカゴ17との間ではそれ以外の磁力手段を企図することができる。
【0038】
図11に示すように、カゴ17は、窓56a、56bを画定する底部54および外郭部55を有する容器53を備える。カゴ17は、容器53を閉じる蓋部57であって、同様に窓56cを画定する蓋部をさらに備える。当然のことながら、容器53および蓋部57は、煎じ物または煎じ殻をカゴ17内に収容するとともに、煎じの間も、カゴ17の湯切りの間も、煎じ湯でも湯だけでも通すことができる漉し壁(図示せず)によって覆われる。
【0039】
器具1の変形形態を本発明の枠内で企図することができる。例として、器具1は、ストラップ20の第2の端部20eの駆動用動力システム21について別の設計を用いることができる。ストラップ20は、ケーブルなど、異なる設計のものであることができようが、それは柔軟であると同時に非弾性のものである必要がある。器具1は、低い煎じ位置においてカゴ17の機械式復帰システム22に関して別の設計を備えることができ、例えば、すでに説明した実施形態の場合がそうであったように、低い煎じ位置の方にカゴ17を押すのではなく、カゴ17を引く形の機械式復帰システムを設けることができよう。