IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ロッドの製造方法および陰極部材 図1
  • 特許-ロッドの製造方法および陰極部材 図2
  • 特許-ロッドの製造方法および陰極部材 図3
  • 特許-ロッドの製造方法および陰極部材 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ロッドの製造方法および陰極部材
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/10 20060101AFI20231201BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20231201BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C25D17/10 B
C25D5/02 D
C25D7/00 C
C25D17/00 C
C25D7/00 V
C25D17/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020056501
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155800
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻見 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】大貫 巧真
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山森 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大脇 孝之
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-193979(JP,A)
【文献】特開2019-077941(JP,A)
【文献】特開2015-001006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/10
C25D 17/00
C25D 7/00
C25D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ鍔部と、を有するロッドの前記大径部にめっきを施すロッドの製造方法であって、
前記小径部に係合する係合穴と、
前記係合穴よりも該係合穴の径方向における外側に広がって前記鍔部に当接する当接部と、
前記当接部とは反対側の端部に設けられ、前記当接部とは反対側ほど外径が小径となる先細形状の先細先端部と、
を有する陰極部材を前記ロッドに取り付け、
前記陰極部材に向けめっき液を流すことを特徴とするロッドの製造方法。
【請求項2】
前記陰極部材は、
前記係合穴と前記当接部とを含む金属製の陰極部材本体と、
前記先細先端部を形成する合成樹脂製の先端部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載のロッドの製造方法。
【請求項3】
前記ロッドを前記陰極部材が下方に位置する状態として、前記陰極部材に向け下からめっき液を流すことを特徴とする請求項1または2記載のロッドの製造方法。
【請求項4】
大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ鍔部と、を有するロッドの前記大径部にめっきを施す際に用いられる陰極部材であって、
前記小径部に係合する係合穴と、
前記係合穴よりも該係合穴の径方向における外側に広がって前記鍔部に当接する当接部と、
前記当接部とは反対側の端部に設けられ、前記当接部とは反対側ほど外径が小径となる先細形状の先細先端部と、
を有することを特徴とする陰極部材。
【請求項5】
前記係合穴と前記当接部とを含む金属製の陰極部材本体と、
前記先細先端部を形成する合成樹脂製の先端部材と、
を有することを特徴とする請求項4記載の陰極部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドの製造方法および陰極部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークのサイズに応じて高さ調整を行うことができるめっき用ハンガがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-40774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロッドのめっき品質を向上させることが要望されている。
【0005】
したがって、本発明は、ロッドのめっき品質を向上させることができるロッドの製造方法および陰極部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るロッドの製造方法は、大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ鍔部と、を有するロッドの前記大径部にめっきを施すロッドの製造方法であって、前記小径部に係合する係合穴と、前記係合穴よりも該係合穴の径方向における外側に広がって前記鍔部に当接する当接部と、前記当接部とは反対側の端部に設けられる先細形状の先細先端部と、を有する陰極部材を前記ロッドに取り付け、前記陰極部材に向けめっき液を流す、構成とした。
【0007】
本発明に係る陰極部材は、大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ鍔部と、を有するロッドの前記大径部にめっきを施す際に用いられる陰極部材であって、前記小径部に係合する係合穴と、前記係合穴よりも該係合穴の径方向における外側に広がって前記鍔部に当接する当接部と、前記当接部とは反対側の端部に設けられる先細形状の先細先端部と、を有する、構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロッドのめっき品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る一実施形態のロッドの製造方法で製造されるロッドを含むシリンダ装置を示す断面図である。
図2】本発明に係る一実施形態のロッドの製造方法で用いられる陰極部材を示す分解正面図である。
図3】本発明に係る一実施形態のロッドの製造方法で用いられるめっき装置のめっき処理前の状態を示す正断面図である。
図4】本発明に係る一実施形態のロッドの製造方法で用いられるめっき装置のめっき処理時の状態を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る一実施形態のロッドの製造方法および陰極部材を図面を参照して以下に説明する。
【0011】
まず、本実施形態の製造方法で製造されるロッド10を含むシリンダ装置11を図1を参照して説明する。図1に示すシリンダ装置11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器であり、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。シリンダ装置11は、円筒状の内筒15と、内筒15よりも大径で内筒15の外周側に内筒15の外周部を覆って設けられる有底筒状の外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式(いわゆるツインチュープ式)の緩衝器である。外筒16と内筒15との間は、リザーバ室18となっている。
【0012】
外筒16は、金属製の一部材からなる一体成形品であり、円筒状の胴部21と、胴部21の軸方向の一端部側を閉塞する底部22と、胴部21の底部22とは反対側の開口23とを有している。内筒15は、金属製の一部材からなる一体成形品であり、円筒状をなしている。
【0013】
シリンダ装置11は、内筒15の軸方向の一端部に設けられる円環状のバルブボディ25と、内筒15および外筒16の軸方向の他端部に設けられる円環状のロッドガイド26と、を有している。バルブボディ25は、ボデーバルブ30を構成するものであり、外周部が、小径部分と、これよりも大径の大径部分とを有している。ロッドガイド26も、外周部が、小径部分と、これよりも大径の大径部分とを有している。
【0014】
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ25の外周部の小径部分に嵌合されており、このバルブボディ25を介して外筒16の底部22に係合している。また、内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド26の外周部の小径部分に嵌合されており、ロッドガイド26を介して外筒16の胴部21に係合している。この状態で、内筒15は、外筒16に対して径方向に位置決めされている。ここで、バルブボディ25と底部22との間は、バルブボディ25に形成された通路溝35を介して内筒15と外筒16との間に連通しており、内筒15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
【0015】
シリンダ装置11は、ロッドガイド26の底部22とは反対側に、円環状のシール部材41を有している。このシール部材41も、ロッドガイド26と同様に胴部21の内周部に嵌合されている。胴部21の底部22とは反対の端部には、胴部21をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて係止部43が形成されている。シール部材41は、この係止部43とロッドガイド26とに挟持されている。シール部材41は、外筒16の開口23を閉塞するものであり、具体的にはオイルシールである。なお、シール部材41をシールワッシャで構成しても良い。
【0016】
シリンダ装置11は、シリンダ17内に設けられるピストン45を有している。ピストン45は、内筒15に摺動可能に嵌装されている。ピストン45は、内筒15内を第1室48と第2室49との2室に区画している。第1室48は、内筒15内のピストン45とロッドガイド26との間に設けられ、第2室49は、内筒15内のピストン45とバルブボディ25との間に設けられている。第2室49は、バルブボディ25によって、リザーバ室18と画成されている。第1室48および第2室49には作動流体としての油液Lが充填されており、リザーバ室18には作動流体としてのガスGと油液Lとが充填されている。
【0017】
シリンダ装置11は、一端がピストン45と接続され、他側がシリンダ17の外筒16から開口23を介して外部に延出されるロッド10を有している。ロッド10には、ピストン45がナット51によって連結されている。
【0018】
ロッド10は、金属製であり、円柱状の大径部55と、外径が大径部55の外径よりも小径の円柱状の小径部56と、大径部55と小径部56とを繋ぐ円環状の鍔部57と、大径部55の小径部56とは反対側に設けられたネジ軸部58と、を有している。大径部55と小径部56とネジ軸部58とは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。
【0019】
大径部55は、外周面55aが円筒面からなっている。鍔部57は、小径部56側に向く外面57aが円環状の平坦面からなっている。小径部56は、鍔部57側に、外周面61aが円筒面からなる小径軸部61を有しており、鍔部57とは反対側に、外周部がオネジ62aとされた小径ネジ軸部62を有している。外周面55aと外周面61aとオネジ62aとは中心軸線を一致させた同軸状に配置されており、外面57aは、この中心軸線に垂直に広がる平坦面となっている。ピストン45は小径軸部61に嵌合されている。ナット51は小径ネジ軸部62のオネジ62aに螺合されている。
【0020】
ロッド10は、大径部55においてロッドガイド26およびシール部材41を通って内筒15および外筒16から外部へと延出している。これにより、ロッド10は、一端側が外筒16および内筒15内に配置され他端側が外筒16および内筒15の外部に配置されている。ロッド10は、大径部55が外周面55aにおいてロッドガイド26に摺接することになり、ロッドガイド26で案内されて、内筒15および外筒16に対して、ピストン45と一体に軸方向に移動する。ロッド10は、大径部55が外周面55aにおいてシール部材41に摺接することになり、シール部材41は、外筒16とロッド10との間を閉塞して、内筒15内の作動液体と、リザーバ室18内の作動気体および作動液体とが外部に漏出するのを規制する。
【0021】
ピストン45には、軸方向に貫通する通路65および通路66が形成されている。通路65,66は、第1室48と第2室49とを連通可能となっている。シリンダ装置11は、ピストン45に当接することで通路65を閉塞可能な円環状のディスクバルブ67を、ピストン45の軸方向の底部22とは反対側に有している。また、シリンダ装置11は、ピストン45に当接することで通路66を閉塞可能な円環状のディスクバルブ68を、ピストン45の軸方向の底部22側に有している。ディスクバルブ67,68は、ピストン45とともにロッド10に連結されている。
【0022】
ディスクバルブ67は、ロッド10が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力が第1室48の圧力よりも所定値以上高くなると通路65を開いて第2室49の油液Lを第1室48に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。ディスクバルブ68は、ロッド10が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン45が第1室48を狭める方向に移動して第1室48の圧力が第2室49の圧力よりも所定値以上高くなると通路66を開いて第1室48の油液Lを第2室49に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。
【0023】
ピストン45およびディスクバルブ67のうちの少なくとも一方には、ディスクバルブ67が通路65を最も閉塞した状態でも通路65を介して第1室48と第2室49とを連通させる図示略の固定オリフィスが形成されている。また、ピストン45およびディスクバルブ68のうちの少なくとも一方にも、ディスクバルブ68が通路66を最も閉塞した状態でも通路66を介して第1室48と第2室49とを連通させる図示略の固定オリフィスが形成されている。
【0024】
バルブボディ25には、軸方向に貫通する液通路71および液通路72が形成されている。液通路71,72は、第2室49とリザーバ室18とを連通可能となっている。ボデーバルブ30は、バルブボディ25の軸方向の底部22側に、バルブボディ25に当接することで液通路71を閉塞可能な円環状のディスクバルブ75を有している。また、ボデーバルブ30は、バルブボディ25の軸方向の底部22とは反対側に、バルブボディ25に当接することで液通路72を閉塞可能な円環状のディスクバルブ76を有している。ボデーバルブ30は、ピン78を有しており、このピン78によってディスクバルブ75,76がバルブボディ25に固定されている。バルブボディ25、ディスクバルブ75,76およびピン78等で構成されるボデーバルブ30は、シリンダ17を第2室49とリザーバ室18との2室に画成している。
【0025】
ボデーバルブ30は、ロッド10が縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力よりも所定値以上高くなると、ディスクバルブ75が液通路71を開くことになり、その際に減衰力を発生させる。ボデーバルブ30は、ロッド10が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力より低下すると、ディスクバルブ76が液通路72を開くことになる。ディスクバルブ76は、その際にリザーバ室18から第2室49内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブである。
【0026】
シリンダ装置11は、例えばロッド10が車両の車体側に連結され、シリンダ17が車両の車輪側に連結されて、車輪の車体に対する移動に対して減衰力を発生させる。
【0027】
次に、本実施形態のロッド10の製造方法について説明する。本実施形態のロッド10の製造方法では、ロッド10の大径部55にめっきを施す。具体的には、鋼鉄製のロッド10の大径部55の外周面55aにクロムめっきを施す。
【0028】
ロッド10は、大径部55が外周面55aにおいてロッドガイド26およびシール部材41に対し摺動することになる。また、ロッド10は、小径部56の小径軸部61にピストン45を嵌合させ、小径部56の小径ネジ軸部62にナット51を螺合させる。ロッド10は、めっきが施される被めっき物であり、ロッドガイド26およびシール部材41に対し摺動したり、シール部材41よりも外部に露出したりする大径部55にめっきが電着される。具体的には、大径部55の外周面55aにめっきが電着される。他方で、常に油液に満たされた内筒15の内部にある、鍔部57と、小径部56の小径軸部61および小径ネジ軸部62とについてはめっきの電着が抑制される。
【0029】
本実施形態のロッド10の製造方法は、上記したロッド10に対し、めっきを電着させたくない鍔部57と小径部56の小径軸部61および小径ネジ軸部62とを外部に対し遮蔽しつつ、大径部55の外周面55aにめっきを電着させる方法となっている。
【0030】
本実施形態のロッド10の製造方法では、図2に示す陰極部材81を用いる。
【0031】
陰極部材81は、金属製の陰極部材本体82と、合成樹脂製の先端部材83との2部品が連結されて構成されている。陰極部材本体82と先端部材83とは着脱可能となっている。
【0032】
陰極部材本体82は、継ぎ目のない一部材からなっており、円柱状の主体部91と、主体部91の軸方向の一端から突出する突出軸部92と、を有している。主体部91は、外周面91aが円筒面である。主体部91は、外径すなわち外周面91aの径が、図1に示すロッド10の大径部55の外径すなわち外周面55aの径と同等である。図2に示す主体部91は、軸方向の突出軸部92とは反対側の端部が当接部93となっている。当接部93は軸方向の突出軸部92とは反対側の端面93aが、主体部91の外周面91aの中心軸線に対し垂直に広がる平坦面となっている。主体部91は、軸方向の突出軸部92側の端部が接合部94となっている。接合部94は軸方向の突出軸部92側の端面94aが、主体部91の外周面91aの中心軸線に対し垂直に広がる平坦面となっている。当接部93の端面93aおよび接合部94の端面94aは、外周面91aの中心軸線を中心とする円形である。
【0033】
主体部91には、当接部93の端面93aから接合部94側に向けて凹む形状の係合穴101が形成されている。係合穴101は、端面93a側に、内周面102aが円筒面からなる口元穴部102を有しており、端面93aとは反対側に、内周部がメネジ103aとされたネジ穴部103を有している。口元穴部102の内周面102aおよびネジ穴部103のメネジ103aは、外周面91aと中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。当接部93は、この係合穴101よりも、係合穴101の径方向における外側に広がっている。
【0034】
突出軸部92は、外径が、主体部91の外径よりも小径となっている。突出軸部92は、外周部がオネジ92aとされている。主体部91の外周面91aと突出軸部92のオネジ92aとは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。
【0035】
先端部材83は、継ぎ目のない一体成形品であり、一端側ほど外径が小さくなる先細の略円錐形状をなしている。先端部材83は、軸方向一端側の端面83aおよび軸方向他端側の端面83bがともに円形である。軸方向一端側の端面83aは、外径が、軸方向他端側の端面83bの外径よりも小径となっている。先端部材83は、端面83aの外周縁部と端面83bの外周縁部とを結ぶ外周面83cを有している。外周面83cは、軸方向の端面83a側ほど小径となっている。
【0036】
外周面83cは、端面83aと端面83bとを結ぶ円錐面に対して径方向外方に膨出する流線形状をなしている。外周面83cは、径方向外側に膨らむR形状である。外周面83cは、回転中心軸線に対しその軸線方向の位置が異なり且つこの回転中心軸線からの距離が異なる2点を通り、この回転中心軸線から離れる方向に凸の円弧を、この回転中心軸線を中心に回転させた形状をなしている。
【0037】
端面83aおよび端面83bは、外周面83cの中心軸線に対して垂直に広がる平坦面となっている。端面83aおよび端面83bは、それぞれの中心が外周面83cの中心軸線を通る。端面83bは、外径が、陰極部材本体82の主体部91の外径すなわち外周面91aの径と同等になっている。また、端面83bは、外径が、接合部94の端面94aの外径と同等になっている。
【0038】
先端部材83には、端面83bから端面83a側に向けて凹む形状の接合穴115が形成されている。接合穴115は、内周部がメネジ115aとされている。メネジ115aは、外周面83cと中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。
【0039】
先端部材83の接合穴115に、陰極部材本体82の突出軸部92が挿入される。その際に、突出軸部92のオネジ92aが接合穴115のメネジ115aに螺合されることで、陰極部材本体82と先端部材83とが連結される。その際に、陰極部材本体82の接合部94の端面94aと、先端部材83の端面83bとが面接触で当接して密着する。すると、同径の端面94aと端面83bとが同軸状に配置される。その結果、陰極部材本体82の主体部91の外周面91aと先端部材83の外周面83cとが同軸状になり、段差なく連続する状態になる。このように陰極部材本体82と先端部材83とが連結され一体的になって陰極部材81が構成される。端面94aと端面83bとが面接触で当接して密着するため、先端部材83の接合穴115内は外部に対し密閉された状態になる。
【0040】
先端部材83は、陰極部材本体82と先端部材83とが連結されて構成された陰極部材81の当接部93とは反対側の端部に、先細形状の先細先端部121を形成する。陰極部材81は、軸方向の一端が当接部93となり、軸方向の当接部93とは反対側の端部に先細形状の先細先端部121が設けられたものとなる。陰極部材81は、係合穴101と当接部93とを含む金属製の陰極部材本体82と、先細先端部121を形成する合成樹脂製の先端部材83とを有する。
【0041】
そして、この陰極部材81の係合穴101に、図1に示すロッド10の小径部56が挿入されて収容されることになる。その際に、ロッド10は、小径ネジ軸部62がオネジ62aにおいてネジ穴部103のメネジ103aに螺合されることになり、当接部93の端面93aに鍔部57の外面57aが面接触で当接して密着する。このように、係合穴101に、ロッド10の小径部56が係合されることで、陰極部材81はロッド10に取り付けられる。
【0042】
すると、同径の端面93aと外面57aとが同軸状に配置される。その結果、図3に示すように、陰極部材81の主体部91の外周面91aとロッド10の大径部55の外周面55aとが同軸状になり、段差なく連続する状態になる。言い換えれば、陰極部材81の主体部91の円筒面からなる外周面91aとロッド10の大径部55の円筒面からなる外周面55aとが同一の円筒面に配置される。端面93aに外面57aが面接触で当接して密着するため、係合穴101内は外部に対し密閉された状態になる。このように陰極部材81をロッド10に装着してから、ロッド10の大径部55にめっきを施す。
【0043】
ロッド10の大径部55の所定の範囲にめっきを施すめっき処理装置131は、図3に示すように、陰極部材81が取り付けられた状態のロッド10を把持する搬送ロボットの把持部132を有している。把持部132は、ロッド10の大径部55における陰極部材81とは反対側の端部を把持する。把持部132は、ロッド10の大径部55に接触する爪部133が電極となっている。把持部132は、ロッド10を把持部132から鉛直下方に延出させた状態で把持する。把持部132は、上下に昇降可能となっている。把持部132で把持された状態のロッド10は鉛直方向に沿っており、大径部55よりも陰極部材81が下側に配置されている。
【0044】
めっき処理装置131は、把持部132で把持され把持部132とともに下降するロッド10および陰極部材81が進入可能な挿入口135を上部に備える処理槽本体136を備えている。また、めっき処理装置131は、処理槽本体136内に、把持部132で把持され把持部132とともに下降するロッド10および陰極部材81が進入可能な挿入口141を上部に備える電極142を有している。処理槽本体136の挿入口135よりも電極142の挿入口141の方が下側に配置されている。電極142は円筒状であり、中心軸線を鉛直方向に沿わせている。電極142は、槽壁を兼ねており、ロッド10および陰極部材81の進入長さよりも長い。把持部132は、電極142内に、ロッド10および陰極部材81を、電極142と同軸をなすように配置する。
【0045】
本実施形態のロッド10の製造方法では、ロッド10にめっきを施す前に、ロッド10の小径部56に自動または手動にて陰極部材81を装着して、ロッド10と陰極部材81とからなる処理対象部品150の状態としておく。
【0046】
めっき処理装置131は、処理対象部品150のロッド10を把持部132で把持し、把持した処理対象部品150を陰極部材81を先頭にして、処理槽本体136の挿入口135に上から挿入し、さらに電極142の挿入口141に上から挿入する。そして、把持部132は、図3に示すように大径部55が所定長さ電極142内に挿入されるように処理対象部品150を下降させて停止する。このように把持部132で把持されて停止する処理対象部品150は、電極142と同軸状に配置される。この状態で、処理対象部品150は、陰極部材81がロッド10の下方に位置する状態となる。
【0047】
めっき処理装置131は、このように大径部55が所定長さ電極142内に挿入された状態で停止している処理対象部品150に向けて、図4に二点鎖線矢印で示すように、電極142内で下から上に向けてめっき液を流す。すると、めっき液は、電極142内で陰極部材81の下方から、陰極部材81に向けて流れ、陰極部材81に接触して陰極部材81と電極142との隙間を流れ、その後、大径部55と電極142との隙間を流れる。このとき、陰極部材81は、下端の先細先端部121によってめっき液の流れを整えることになる。言い換えれば、陰極部材81は、下端の先細先端部121がめっき液の流れに対して整流構造となっており、先細先端部121によってめっき液の乱流化を抑制する。よって、めっき液は、先細先端部121によって整流された状態で陰極部材本体82の主体部91の外周面91aの側方を流れ、続けて大径部55の外周面55aの側方を流れる。
【0048】
そして、上記のように電極142内でめっき液を流し続けた状態で、電極である爪部133の接点と電極142の接点との間に給電を行う。すると、絶縁性の合成樹脂材からなる先端部材83は、めっきの電着すなわちめっき層の形成はなく、金属製の陰極部材本体82の主体部91の外周面91aと、金属製のロッド10の大径部55の外周面55aとに、めっきが電着されめっき層が形成される。このとき、ロッド10の鍔部57が全周にわたって当接部93に当接して係合穴101を閉塞していて、係合穴101内へのめっき液の流入を抑制することから、小径部56へのめっき層の形成が抑制される。加えて、ロッド10の鍔部57の外周縁部が全周にわたって当接部93に当接しているため、鍔部57の外面57aと当接部93の端面93aとの間へのめっき液の流入をも抑制し、よって、鍔部57の外面57aもめっき層の形成が抑制される。
【0049】
ここで、ロッド10の大径部55の下側に陰極部材81の金属製の陰極部材本体82の主体部91が配置されているため、導電性の金属部分の下部に集中する電流を、ロッド10の下方に設けられた陰極部材本体82に集中させることができる。このことにより、大径部55の膜厚を均一化することができる。
【0050】
大径部55に所定厚さのめっき層が形成されると、めっき処理装置131は、電極142内で陰極部材81に向けて下から流れるめっき液を停止させる。その後、把持部132が、上昇してロッド10および陰極部材81からなる処理対象部品150を電極142および処理槽本体136から引き上げて、後工程に払い出し、次にめっき処理を行う処理対象部品150を把持する。
【0051】
めっき処理が行われたロッド10は、後工程において陰極部材81が取り外される。ロッド10から取り外された陰極部材81は、めっき処理時に付着した付着物が洗浄により除去されて、再度めっき処理に使用される。
【0052】
電極142の下端を、陰極部材81の下端よりも下方まで延ばす構成とすることにより、めっき液の整流作用が得られる。それに加えて、先細形状の陰極部材81があることで整流作用がさらに改善する。
【0053】
なお、本実施の形態では、ロッド10と電極142とを鉛直方向に延在するように配置しているが、これに限らず、いずれの方向に延在するように配置しても良い。例えば水平方向に延在するようにロッド10と電極142とを配置してもよい。そのような場合においても、めっき液が、陰極部材81の端面83aに対向する方向から陰極部材81に向けて流れるように構成する。
【0054】
上記した特許文献1には、ワークのサイズに応じて高さ調整を行うことができるめっき用ハンガが記載されている。ところで、ロッドにメッキ処理を行う際に、そのめっき品質を向上させることが要望されている。
【0055】
本実施形態は、ロッド10の小径部56に係合する係合穴101と、係合穴101よりも係合穴101の径方向における外側に広がってロッド10の鍔部57に当接する当接部93と、当接部93とは反対側の端部に設けられる先細形状の先細先端部121と、を有する陰極部材81をロッド10に取り付ける。そして、ロッド10を陰極部材81が下方に位置する状態として、陰極部材81に向け下からめっき液を流す。すると、高電流密度化しても、導電性部材の下端に集中するめっき電流を陰極部材81に逃がすことができ、よって、ロッド10を適正膜厚にすることができる。したがって、高電流密度化によるめっき膜厚分布の偏りを抑制することができる。よって、ロッド10のめっき品質を向上させることができる。
【0056】
また、陰極部材81は、下から向かってくるめっき液を先細先端部121で受けることになるが、先細先端部121が先細形状をなしているため、めっき液を整流することができる。したがって、めっき液の高速化により発生する膜質異常を抑制することができる。よって、ロッド10のめっき品質を向上させることができる。
【0057】
言い換えれば、高電流密度を印加してめっき処理を行っても、めっき膜厚分布の偏りを抑制することができ、また、めっき液の高速化を行っても外観の不具合(白化等)を抑制することができて、必要とする品質を確保することができる。したがって、ロッド10のめっき処理の高速化が図れる。
【0058】
陰極部材81は、係合穴101と当接部93とを含む金属製の陰極部材本体82と、先細先端部121を形成する合成樹脂製の先端部材83と、を有するため、陰極部材81の全体を金属製とする場合と比べて、コストを低減することができ、重量を低減することができる。また、陰極部材81においてめっき処理時に付着物が付着する表面積が減るため、めっき処理後の付着物の除去が容易となる。勿論、陰極部材81の全体を金属製とすることも可能である。その場合は、陰極部材81の全体を継ぎ目のない一つの金属部材とするのが良い。
【0059】
なお、実施形態における陰極部材81の金属部分である陰極部材本体82の材質は、チタン、鉄、ニッケル、ステンレスなど導電性を有する金属であれば何でも適用できる。しかしながら、めっき液と接液することを加味するとめっき液に対して耐性のあるチタン製とするのが好ましい。チタン製とすれば、めっき処理により付着した付着物も容易に除去することができ、繰り返しの使用が容易となる。
【0060】
また、先端部材83は、流線型等、めっき液噴流に対して抵抗の少ない先細先端部121を陰極部材81に形成する部分になるが、絶縁性を有する合成樹脂であれば何でも適用できる。しかしながら、陰極部材本体82と同様、めっき液に対して耐性の高いものが好ましい。先端部材83の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等を適用できる。
【0061】
以上に述べた実施形態の第1の態様は、大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ鍔部と、を有するロッドの前記大径部にめっきを施すロッドの製造方法であって、前記小径部に係合する係合穴と、前記係合穴よりも該係合穴の径方向における外側に広がって前記鍔部に当接する当接部と、前記当接部とは反対側の端部に設けられる先細形状の先細先端部と、を有する陰極部材を前記ロッドに取り付け、前記陰極部材に向けめっき液を流す。これにより、ロッドのめっき品質を向上させることができる。
【0062】
実施形態の第2の態様は、上記第1の態様において、前記陰極部材は、前記係合穴と前記当接部とを含む金属製の陰極部材本体と、前記先細先端部を形成する合成樹脂製の先端部材と、を有する。
【0063】
実施形態の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、前記ロッドを前記陰極部材が下方に位置する状態として、前記陰極部材に向け下からめっき液を流す。
【0064】
実施形態の第4の態様は、大径部と、前記大径部よりも小径の小径部と、前記大径部と前記小径部とを繋ぐ鍔部と、を有するロッドの前記大径部にめっきを施す際に用いられる陰極部材であって、前記小径部に係合する係合穴と、前記係合穴よりも該係合穴の径方向における外側に広がって前記鍔部に当接する当接部と、前記当接部とは反対側の端部に設けられる先細形状の先細先端部と、を有する。これにより、ロッドのめっき品質を向上させることができる。
【0065】
実施形態の第5の態様は、上記第4の態様において、前記係合穴と前記当接部とを含む金属製の陰極部材本体と、前記先細先端部を形成する合成樹脂製の先端部材と、を有する。
【符号の説明】
【0066】
10 ロッド
55 大径部
56 小径部
57 鍔部
82 陰極部材本体
83 先端部材
93 当接部
101 係合穴
121 先細先端部
図1
図2
図3
図4