(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20231201BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
(21)【出願番号】P 2020061376
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-126272(JP,A)
【文献】特開昭64-035134(JP,A)
【文献】特開平11-141181(JP,A)
【文献】実開昭59-058109(JP,U)
【文献】国際公開第2015/030690(WO,A2)
【文献】特開平09-079321(JP,A)
【文献】特開昭64-029539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体は、前記積層構造体の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側に向かうにつれて、前記積層構造体の外径が徐々に減少
し、
前記積層構造体は、各前記硬質材料層及び各前記軟質材料層の外周側の表面を覆う被覆層を有しており、
前記被覆層を構成する材料は、各前記軟質材料層を構成する軟質材料と同じであり、
各前記軟質材料層の厚さは、互いに同じである、免震装置。
【請求項2】
前記積層構造体は、前記積層構造体の軸線方向の全長にわたって、上側に向かうにつれて、前記積層構造体の外径が徐々に減少する、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記積層構造体の外表面は、軸線方向断面において曲線状に延在する湾曲部を有する、請求項1又は2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記積層構造体の外表面は、軸線方向断面において軸線方向に対し傾斜する方向に直線状に延在する傾斜部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の免震装置は、一般的に、硬質材料層及び軟質材料層が鉛直方向に交互に積層されてなるものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の免震装置においては、免震装置の水平方向変形時において、座屈するおそれがあった。
【0005】
この発明は、耐座屈性能を向上できる免震装置を提供することを、目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震装置は、
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体は、前記積層構造体の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側に向かうにつれて、前記積層構造体の外径が徐々に減少する。
本発明の免震装置によれば、耐座屈性能を向上できる。
【0007】
本発明の免震装置においては、
前記積層構造体は、前記積層構造体の軸線方向の全長にわたって、上側に向かうにつれて、前記積層構造体の外径が徐々に減少すると、好適である。
これにより、免震装置の製造性を向上でき、また、免震装置1の設置作業がし易くなる。
【0008】
本発明の免震装置においては、
前記積層構造体の外表面は、軸線方向断面において曲線状に延在する湾曲部を有してもよい。
【0009】
本発明の免震装置においては、
前記積層構造体の外表面は、軸線方向断面において軸線方向に対し傾斜する方向に直線状に延在する傾斜部を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、耐座屈性能を向上できる免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る免震装置の実施形態を例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。
図2は、本発明の第2実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。
図1~
図2は、それぞれ、免震装置1を、水平方向変形が生じていない状態で示している。
以下では、説明の便宜のため、
図1~
図2の各実施形態の免震装置1について併せて説明する。
図1に示すように、免震装置1は、上下一対のフランジプレート21、22(以下、それぞれ「上側フランジプレート21」、「下側フランジプレート22」ともいう。)と、積層構造体3と、を備えている。
【0014】
本明細書において、免震装置1の「中心軸線O」(以下、単に「中心軸線O」ともいう。)は、積層構造体3の中心軸線である。免震装置1の中心軸線Oは、鉛直方向に延在するように指向される。本明細書において、免震装置1の「軸線方向」とは、免震装置1の中心軸線Oに平行な方向である。免震装置1の「軸線方向内側」とは、積層構造体3の軸線方向中心に近い側を指しており、免震装置1の「軸線方向外側」とは、積層構造体3の軸線方向中心から遠い側(フランジプレート21、22に近い側)を指している。また、免震装置1の「軸直方向」とは、免震装置1の軸線方向に垂直な方向である。また、免震装置1の「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」とは、免震装置1の中心軸線Oを中心としたときの「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」をそれぞれ指す。また、「上」、「下」とは、鉛直方向における「上」、「下」をそれぞれ指す。
【0015】
上側フランジプレート21は、上側フランジプレート21の上に構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)の上部構造(建物本体等)が載せられた状態で、当該上部構造に連結されるように、構成されている。下側フランジプレート22は、上側フランジプレート21よりも下側に配置され、構造物の下部構造(基礎等)に連結されるように構成されている。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、金属から構成されると好適であり、鋼から構成されるとより好適である。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、軸直方向断面において、円形又は多角形状(四角形等)等、任意の外縁形状を有してよい。
【0016】
積層構造体3は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22どうしの間に配置されている。積層構造体3は、複数の硬質材料層4と、複数の軟質材料層5と、被覆層6と、を有している。硬質材料層4と軟質材料層5とは、鉛直方向に交互に積層されている。各硬質材料層4と各軟質材料層5とは、同軸上に配置されており、すなわち、各硬質材料層4と各軟質材料層5とのそれぞれの中心軸線は、免震装置1の中心軸線O上に位置している。積層構造体3の上下両端には、軟質材料層5が配置されている。積層構造体3の上下両端に配置された一対の軟質材料層5は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22にそれぞれ固定されている。
【0017】
硬質材料層4は、硬質材料から構成されている。硬質材料層4を構成する硬質材料としては、金属が好適であり、鋼がより好適である。
図1~
図2の各例のように、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、均一(一定)であると、好適であるが、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、不均一(非一定)であってもよい。ここで、「硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔」とは、互いに隣り合う一対の硬質材料層4の軸線方向中心どうしの間の軸線方向距離を指す。また、
図1~
図2の各例のように、各硬質材料層4の厚さは、互いに同じであると、好適であるが、各硬質材料層4の厚さは、互いに異なっていてもよい。
軟質材料層5は、硬質材料層4よりも硬さの低い(柔らかい)、軟質材料から構成されている。軟質材料層5を構成する軟質材料としては、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。軟質材料層5を構成し得るゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴム(高減衰ゴム等)が好適である。
図1~
図2の各例のように、各軟質材料層5の厚さは、互いに同じであると、好適であるが、各軟質材料層5の厚さは、互いに異なっていてもよい。
【0018】
被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面を覆っている。被覆層6を構成する材料は、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。被覆層6を構成する材料は、軟質材料層5を構成する軟質材料と同じでもよいし、軟質材料層5を構成する軟質材料とは異なっていてもよい。
被覆層6は、軟質材料層5と一体に構成されている。
図1~
図2の各例において、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の全体を覆っていており、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の全体を構成している。ただし、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の一部のみを覆っていてもよく、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の一部のみを構成していてもよい。また、被覆層6は、設けられていなくてもよく、その場合、積層構造体3の外周側の表面は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面のみから構成される。
【0019】
本実施形態において、積層構造体3、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6は、それぞれ、軸直方向断面において、円形又は多角形状(四角形等)等の任意の外縁形状を有してよい。
なお、本明細書において、積層構造体3、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6のそれぞれの「外径」とは、これらが軸直方向断面において非円形の外縁形状を有している場合、軸直方向断面におけるこれらの外接円の外径を指す。
【0020】
図1~
図2の各実施形態において、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側に向かうにつれて、積層構造体3の外径が徐々に減少している。
本明細書において、「徐々に減少」とは、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に減少する場合に限られず、一部分で一定に維持される場合(例えば、複数段階で段階的に減少する場合)も含む。
より具体的に、
図1~
図2の各実施形態において、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側に向かうにつれて、積層構造体3の外径が、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に減少している。
積層構造体3の外表面は、積層構造体3の中心軸線Oの周りに回転対称に構成されていると、好適である。
【0021】
以下、
図1~
図2の各実施形態の免震装置1の作用効果について説明する。
まず、
図1~
図2の各実施形態の免震装置1は、上述のとおり、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側(各図の例では上側)に向かうにつれて、積層構造体3の外径が徐々に減少している。
これにより、仮に、積層構造体3の軸線方向の各位置における積層構造体3の外径が、
図1~
図2の各例での積層構造体3における上側及び下側のうち上記一方側(各図の例では上側)の端における積層構造体3の外径と同じである場合に比べて、免震装置1の水平変形時において、積層構造体3がよりしっかりと軸線方向に支えられるので、免震装置1が座屈しにくくなる(言い換えれば、免震装置1の耐座屈性能を向上できる)。
また、
図1~
図2の各実施形態の免震装置1によれば、仮に、積層構造体3の軸線方向の各位置における積層構造体3の外径が、
図1~
図2の各例での積層構造体3における上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)の端における積層構造体3の外径と同じである場合に比べて、免震装置1を柔らかくすることができるので、構造物の長周期化が可能となり(言い換えれば、構造物がよりゆっくりと揺れるようになり)、ひいては、免震装置1の免震性能を向上できる。
また、
図1~
図2の各実施形態の免震装置1によれば、仮に、積層構造体3の上側及び下側の両方の端部側において、それぞれ軸線方向外側に向かうにつれて積層構造体3の外径が徐々に増大している場合に比べて、免震装置1の製造時において、積層構造体3を構成する各硬質材料層4及び各軟質材料層5の積層作業等がしやすくなるので、免震装置1の製造性を向上できる。
【0022】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2の各実施形態のように、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側(各図の例では上側)に向かうにつれて、積層構造体3の軸直方向断面積が徐々に減少していると、好適である。
なお、本明細書において、「軸直方向断面積」とは、軸直方向断面における面積を指す。
これにより、仮に、積層構造体3の軸線方向の各位置における積層構造体3の軸直方向断面積が、
図1~
図2の各例での積層構造体3における上側及び下側のうち上記一方側(各図の例では上側)の端における積層構造体3の軸直方向断面積と同じである場合に比べて、免震装置1の水平変形時において、積層構造体3がよりしっかりと軸線方向に支えられるので、免震装置1が座屈しにくくなる(言い換えれば、免震装置1の耐座屈性能を向上できる)。
また、これにより、仮に、積層構造体3の軸線方向の各位置における積層構造体3の軸直方向断面積が、
図1~
図2の各例での積層構造体3における上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)の端における積層構造体3の軸直方向断面積と同じである場合に比べて、免震装置1を柔らかくすることができるので、構造物の長周期化が可能となり(言い換えれば、構造物がよりゆっくりと揺れるようになり)、ひいては、免震装置1の免震性能を向上できる。
また、これにより、仮に、積層構造体3の上側及び下側の両方の端部側において、それぞれ軸線方向外側に向かうにつれて積層構造体3の軸直方向断面積が徐々に増大している場合に比べて、免震装置1の製造時において、積層構造体3を構成する各硬質材料層4及び各軟質材料層5の積層作業等がしやすくなるので、免震装置1の製造性を向上できる。
【0023】
本明細書で説明する各例においては、
図1及び
図2の各実施形態のように、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側に向かうにつれて、積層構造体3の外径が徐々に減少すると、好適である。
これにより、仮に、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、下側に向かうにつれて、積層構造体3の外径が徐々に減少する場合に比べて、免震装置1の製造性を向上でき、また、免震装置1の設置作業がし易くなる。
【0024】
本明細書で説明する各例においては、
図1及び
図2の各実施形態のように、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側に向かうにつれて、積層構造体3の軸直方向断面積が徐々に減少すると、好適である。
これにより、仮に、積層構造体3は、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、下側に向かうにつれて、積層構造体3の軸直方向断面積が徐々に減少する場合に比べて、免震装置1の製造性を向上でき、また、免震装置1の設置作業がし易くなる。
【0025】
本明細書で説明する各例においては、
図1の実施形態のように、積層構造体3の外表面は、軸線方向断面において曲線状に延在する湾曲部3Cを、1つ又は複数有していてもよい。
湾曲部3Cは、上側及び下側のうちいずれか一方側(図の例では上側)に向かうにつれて、徐々に内周側へ延在している。
積層構造体3の外表面は、
図1の例のように、その全体が、湾曲部3Cのみからなってもよいし、あるいは、その全体が、湾曲部3Cと、軸線方向断面において軸線方向に平行に直線状に延在するストレート部及び後述の傾斜部3Sのうち少なくとも一方と、からなってもよい。積層構造体3の外表面は、
図1の実施形態のように、湾曲部3Cを1つのみ有してもよい。あるいは、積層構造体3の外表面は、湾曲部3Cを、軸線方向に沿って複数有してもよい。
【0026】
本明細書で説明する各例においては、
図2の実施形態のように、積層構造体3の外表面は、軸線方向断面において軸線方向に対し鋭角に傾斜する方向に直線状に延在する傾斜部3Sを、1つ又は複数有していてもよい。
傾斜部3Sは、上側及び下側のうちいずれか一方側(図の例では上側)に向かうにつれて、徐々に内周側へ延在している。
この場合、仮に、積層構造体3の外周面の全体が湾曲部3Cからなる場合に比べて、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3における上側及び下側のうち他方側(図の例では下側)における外周側部分での変形がより均一になるので、耐座屈性能を向上できる。また、この場合、仮に、積層構造体3の外周面の全体が湾曲部3Cからなる場合に比べて、免震装置1のめくれ上がりを抑制できる。また、この場合、仮に、積層構造体3の外周面の全体が湾曲部3Cからなる場合に比べて、免震装置1が製造し易くなる。
積層構造体3の外表面は、
図2の例のように、その全体が、傾斜部3Sのみからなってもよいし、あるいは、その全体が、傾斜部3Sと、上記ストレート部及び湾曲部3Cのうち少なくとも一方と、からなってもよい。積層構造体3の外表面は、
図2の実施形態のように、傾斜部3Sを1つのみ有してもよい。あるいは、積層構造体3の外表面は、傾斜部3Sを、軸線方向に沿って複数有してもよい。
【0027】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図2の例のように、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側(図の例では上側)に向かうにつれて、積層構造体3の外径が、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に減少していると、より好適である。
この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、より向上できる。
また、これによれば、仮に、積層構造体3の上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)の端部側において、積層構造体3の外径が一定である場合に比べて、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3の上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)における外周側部分が、フランジプレート21、22から離れるように軸線方向内側へ反り返ること(以下、「めくれ上がり」という。)を、抑制することができる。それにより、めくれ上がりに起因して積層構造体3の当該外周側部分において軟質材料層5が疲労したり損傷したりするおそれを、低減でき、ひいては、免震装置1の耐久性を向上できる。
【0028】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図2の例のように、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、上側及び下側のうちいずれか一方側(図の例では上側)に向かうにつれて、積層構造体3の軸直方向断面積が、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に減少していると、より好適である。この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、向上できることに加えて、積層構造体3のめくれ上がりを抑制することができる。
【0029】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図1~
図2の各例のように、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、複数の(全ての)硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)に隣り合う他の硬質材料層4の外径以下の外径を有している(すなわち、複数の(全ての)硬質材料層4の外径が、上側及び下側のうちいずれか一方側(各図の例では上側)に向かうにつれて徐々に減少している)と、好適である。これにより、仮に、いずれかの硬質材料層4が、当該硬質材料層4に対し上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)に隣り合う他の硬質材料層4の外径よりも大きな外径を有している場合に比べて、免震装置1の耐座屈性能を向上でき、また、免震装置1の製造性を向上できる。
【0030】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図1~
図2の各例のように、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、複数の(全ての)硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)に隣り合う他の硬質材料層4の軸直方向断面積以下の軸直方向断面積を有している(すなわち、複数の(全ての)硬質材料層4の軸直方向断面積が、上側及び下側のうちいずれか一方側(各図の例では上側)に向かうにつれて徐々に減少している)と、好適である。これにより、仮に、いずれかの硬質材料層4が、当該硬質材料層4に対し上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)に隣り合う他の硬質材料層4の軸直方向断面積よりも大きな軸直方向断面積を有している場合に比べて、免震装置1の耐座屈性能を向上でき、また、免震装置1の製造性を向上できる。
【0031】
また、本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図2の例のように、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、複数の(全ての)硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)に隣り合う他の硬質材料層4の外径よりも小さな外径を有している(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、上側及び下側のうちいずれか一方側(各図の例では上側)に向かうにつれて、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に減少している)と、好適である。この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、より向上できる。また、仮に、積層構造体3の上側及び下側のうち他方側の端部側において、各硬質材料層4の外径が同じである場合に比べて、積層構造体3のめくれ上がりを抑制することができる。
【0032】
また、本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、
図2の例のように、積層構造体3の軸線方向の全長にわたって、複数の(全ての)硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し上側及び下側のうち他方側(各図の例では下側)に隣り合う他の硬質材料層4の軸直方向断面積よりも小さな軸直方向断面積を有している(すなわち、これら複数の硬質材料層4の軸直方向断面積が、上側及び下側のうちいずれか一方側(各図の例では上側)に向かうにつれて、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に減少している)と、好適である。この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、より向上できる。また、仮に、積層構造体3の上側及び下側のうち他方側の端部側において、各硬質材料層4の軸直方向断面積が同じである場合に比べて、積層構造体3のめくれ上がりを抑制することができる。
【0033】
積層構造体3は、
図1~
図2の各例においては、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状ではなく中実に構成されており、積層構造体3の中心軸線O上に硬質材料層4と軟質材料層5とが位置しているが、これに限られない。例えば、積層構造体3は、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状に構成されており、各硬質材料層4の中心穴と各軟質材料層5の中心穴とによって、積層構造体3は、その中心軸線O上に、軸線方向に延在する中心穴を有しており、当該中心穴に、柱状体が配置されていてもよい。柱状体は、塑性変形により振動エネルギーを吸収できるように構成されていると好適である。柱状体は、例えば、鉛、錫、錫合金、又は熱可塑性樹脂から構成されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
【符号の説明】
【0035】
1:免震装置、
21:上側フランジプレート(フランジプレート)、 22:下側フランジプレート(フランジプレート)、
3:積層構造体、 3C:湾曲部、 3S:傾斜部、
4:硬質材料層、
5:軟質材料層、
6:被覆層、
O:中心軸線