(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ロック装置、及び、該ロック装置を備えた扉体落下防止装置。
(51)【国際特許分類】
E06B 9/84 20060101AFI20231201BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
E06B9/84 A
E06B9/02 A
(21)【出願番号】P 2020061837
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】安部 能貢
(72)【発明者】
【氏名】高村 裕紀
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285959(JP,A)
【文献】実公平4-46069(JP,Y2)
【文献】特開2006-241807(JP,A)
【文献】特表2005-524008(JP,A)
【文献】特開2008-138357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0069585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に複数の被係止部を備え、シャフトと一体で回転するホイールと、
前記被係止部に係止可能な回動ロック部材と、
を備え、
前記回動ロック部材が前記被係止部に係止して、前記シャフトの第1の方向の回転を規制するロック装置において、
前記ホイールの外周には、凸部と凹部が周方向に交互に連続状に形成されており、各凸部の側方部位が前記複数の被係止部となっており、
前記回動ロック部材は、先端が前記被係止部に係止する面部を備えており、前記面部には、前記凸部が侵入可能な開口が形成されており、
前記凸部が前記開口に侵入した状態において、前記ホイールの第1の方向の回転は許容され、第2の方向の回転は規制される、
ロック装置。
【請求項2】
前記回動ロック部材の前記被係止部への係止時の反動で前記ホイールが逆回転した場合には、前記回動ロック部材の前記開口に前記凸部が侵入し、前記被係止部に前記開口の縁部が係止して、前記ホイールの第2の方向の回転を規制する、
請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記ホイールの第1の方向の回転時に、前記回動ロック部材の前記開口に前記凸部が侵入した場合には、前記ホイールがさらに第1の方向に回転することで前記回動ロック部材の前記面部の先端が前記被係止部に係止して、前記ホイールの第1の方向の回転を規制する、
請求項1、2いずれか1項に記載のロック装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載のロック装置を備えた扉体の落下防止装置であって、
前記シャフトの第1の方向の回転によって扉体が下降し、第2の方向の回転によって扉体が上昇するようになっており、
前記シャフトには、扉体の自重によって当該シャフトを第1の方向に回転させる力が作用するようになっており、
前記シャフトは、当該シャフトの第1の方向の回転によって巻き締められて蓄勢し、第2の方向の回転時に解放されるスプリングを備えており、
前記スプリングが切断した緊急時には、扉体の自重によって前記シャフトが第1の方向に回転しようとするが、前記スプリング切断に応じて瞬時に前記回動ロック部材が前記被係止部に係止して、前記シャフトの第1の方向の回転を規制する、
扉体の落下防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトのバランススプリングが切断した際の扉体の落下を防止する扉体落下防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーバーヘッドドアは、倉庫やガレージ等の建物の屋外と屋内とを連通する開口部に設置する建具として知られている。オーバーヘッドドアの扉体は、複数枚のパネルを上下方向に互いに回動可能に連結することで構成されており、最下位のパネルの幅方向左右両端には、ワイヤが連結されており、開口部の上方には、ワイヤの巻取機構が設けてある。開口部全閉状態から、ワイヤの巻取機構によって、左右のワイヤを引き上げることで、各パネルが垂直姿勢からほぼ水平姿勢まで引き上げられて、開口部全開状態となる。巻取機構は、いわゆるバランススプリングを備えており、扉体の下降時に、バランススプリングに作用する扉体の荷重によって、当該バランススプリングが捩じられて力を蓄えていき、開口部開放時には、蓄えられた力の戻り力がワイヤを巻き上げる力として作用し、扉体の上昇動作をアシストするようになっている。
【0003】
オーバーヘッドドアにおいて、バランススプリングの切断時に、パネルが自重で落下することを防止する扉体落下防止装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。扉体落下防止装置は、スプリング切断時に、シャフトと一体で回転するホイールの外周のロック歯にロック部材の係止爪が係止することで、シャフトの回転を規制する。特許文献1、2では、ラチェット構造の爪歯車を採用しているが、ロック歯に左右勝手が発生することから、現場において、爪歯車の取付ミスが発生するおそれがあり、動作不良を招くおそれがある。
【0004】
これに対して、左右勝手が生じないような凸状の歯を備えた爪歯車を用いることが考えられる(
図22の左側の図参照)。ここで、凸状の歯を周方向に密に形成することによって、ロック部材を瞬時にロック歯に係止させてシャフトの回転規制を瞬時に行うことが考えられるが、特に、爪歯車(シャフト)の回転速度が速くなった時に、ロック部材が凸状の歯に接触した後、凹部に入り込むことができず、直近の凸状の歯に係止せずに乗り上げてしまうという歯飛びが生じ得ることがわかった(
図22の左側の図参照)。
【0005】
ロック部材が、スプリング切断によって回転する爪歯車に係止する際に、ロック時の衝撃で爪歯車が逆回転して、ロック状態が解除され、再正転時に爪歯車の回転がさらに加速されて動作不良(例えば、歯飛び)の要因となり得る。特許文献1、2に開示されたラチェット構造の爪歯車では、爪歯車の逆回転を防止することはできない。また、凸状の歯を備えた爪歯車においても、ロック時の衝撃で爪歯車が逆回転すると、ロック状態が解除されてしまうことになる(
図24の左図参照)。したがって、このようなロック装置ないし当該ロック装置を備えた扉体落下防止装置において、ロック装置のロック時の衝撃で爪歯車が逆回転することを防止する必要がある。
【文献】特開2008-285959
【文献】実公平4-46069
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、回動ロック部材が、ホイール外周の被係止部に係止することで、シャフトと一体で回転するホイールの回転を規制するロック装置において、ロック時の衝撃によるホイールの逆回転を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術手段は、
外周に複数の被係止部を備え、シャフトと一体で回転するホイールと、
前記被係止部に係止可能な回動ロック部材と、
を備え、
前記回動ロック部材が前記被係止部に係止して、前記シャフトの第1の方向の回転を規制するロック装置において、
前記ホイールの外周には、凸部と凹部が周方向に交互に連続状に形成されており、各凸部の側方部位が前記複数の被係止部となっており、
前記回動ロック部材は、先端が前記被係止部に係止する面部を備えており、前記面部には、前記凸部が侵入可能な開口が形成されており、
前記凸部が前記開口に侵入した状態において、前記ホイールの第1の方向の回転は許容され、第2の方向の回転は規制される、
ロック装置、である。
【0008】
1つの態様では、前記回動ロック部材は、前記面部と、前記面部の幅方向両側から立ち上がる左右の側面部と、を備え、
前記面部の先端が係止部となっており、
前記面部及び前記開口の幅は、前記ホイールの外周の厚さよりも大きい。
1つの態様では、前記面部はフラット板状部であり、前記内面もフラット面(平面)である。
1つの態様では、各凹部の周方向の寸法は、各凸部の周方向の寸法よりも大きい。
1つの態様では、前記凸部は、上面と、上面の周方向の両端に位置する側面と、からなり、前記凹部は、底面と、底面の周方向の両端に位置する側面と、からなり、凸部の側面と凹部の側面は共通である。
被係止部を形成する凸部の側方部位は、凸部の側面を含むが、凸部の側面に限定されるものではなく、例えば、側面の下端と凹部の底面との接続部位を含む。
1つの態様では、前記凸部の側面(前記凹部の側面でもある)は、前記凹部の底面に対して略垂直に立ち上がっている。
1つの態様では、凸部の側面と凹部の底面の角部は、連続状の湾曲面から形成されており、この湾曲面と底面との接続部が被係止部を形成する。
1つの態様では、係止部となる先端面のエッジの1つが凸部の側面に係止し、他のエッジが、湾曲面と底面との接続部に係止する。
【0009】
1つの態様では、前記回動ロック部材の前記被係止部への係止時の反動で前記ホイールが逆回転した場合には、前記回動ロック部材の前記開口に前記凸部が侵入し、前記被係止部に前記開口の縁部が係止して、前記ホイールの第2の方向の回転を規制する。
前記凸部が前記回動ロック部材の前記開口に入り込んだ状態で、前記ホイールが第2の方向に回転しようとすると、前記回動ロック部材の前記開口の先端側の縁部(被係止部となる)に前記凸部の側方部位が係止して、前記ホイールの第2の方向の回転を規制する。
【0010】
1つの態様では、前記ホイールの第1の方向の回転時に、前記回動ロック部材の前記開口に前記凸部が侵入した場合には、前記ホイールがさらに第1の方向に回転することで前記回動ロック部材の前記面部の先端が前記被係止部に係止して、前記ホイールの第1の方向の回転を規制する。
前記ホイールの第1の方向の回転時に、前記回動ロック部材の前記開口に前記凸部が侵入した場合には、前記回動ロック部材の先端側が前記ホイールの凹部に対して落ち込むような姿勢となり、より確実に、第1凸部の側方部位に係止するようになっている。
より具体的な態様では、第1方向に順に隣接する第1凸部、第1凹部、第2凸部において、前記ホイールの第1の方向の回転時に、ロック方向に回動する前記回動ロック部材の面部の内面が前記第2凸部の上面に乗り上げるように変位するとすぐに、第1の方向に回転する前記ホイールの第2凸部が前記回動ロック部材の面部の開口に入り込んで、前記面部の内面の先端側が前記第1凹部の底側に接触ないし近接し、次いで、第1の方向に回転する前記ホイールの第2凸部が前記回動ロック部材の面部の開口から抜け出でいき、前記回動ロック部材の前記先端が前記第1凸部の側方部位に係止する。
【0011】
本発明が採用した技術手段は、上記ロック装置を備えた扉体の落下防止装置であって、
前記シャフトの第1の方向の回転によって扉体が下降し、第2の方向の回転によって扉体が上昇するようになっており、
前記シャフトには、扉体の自重によって当該シャフトを第1の方向に回転させる力が作用するようになっており、
前記シャフトは、当該シャフトの第1の方向の回転によって巻き締められて蓄勢し、第2の方向の回転時に解放されるスプリングを備えており、
前記スプリングが切断した緊急時には、扉体の自重によって前記シャフトが第1の方向に回転しようとするが、前記スプリング切断に応じて瞬時に前記回動ロック部材が前記被係止部に係止して、前記シャフトの第1の方向の回転を規制する。
【0012】
1つの態様では、ブラケットの第1側には、前記スプリングの一端側が取り付けられた筒状体が位置し、
前記ブラケットの第2側に位置して、スプリングの切断に連動して変位する作動体が設けてあり、
前記筒状体は前記作動体と固定され、前記筒状体及び前記作動体は、前記ブラケットに対して回動可能に取り付けられており、
前記ロック装置は、前記ブラケットの第2側に位置して設けてあり、
前記回動ロック部材は、非係止位置と係止位置との間で回動可能であり、先端側が前方に回動して前記被係止部に係止する方向に付勢されており、
前記作動体は、非係止位置にある回動ロック部材に当接した状態で、前記スプリングの付勢力で前記回動ロック部材を非係止位置に保持しており、
スプリング切断時には、前記回動ロック部材を非係止位置に保持する力が喪失し、前記回動ロック部材が前記被係止部に係止して、前記シャフトの第1の方向の回転を規制する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、回動ロック部材が、ホイール外周の被係止部に係止することで、シャフトと一体で回転するホイールの回転を規制するロック装置において、前記ホイールの外周には、凸部と凹部が周方向に交互に連続状に形成されており、各凸部の側方部位が前記複数の被係止部となっており、前記回動ロック部材は、先端が前記被係止部に係止する面部を備えており、前記面部には、前記凸部が侵入可能な開口が形成されており、前記凸部が前記開口に侵入した状態において、前記ホイールの第1の方向の回転は許容され、第2の方向の回転は規制されるようにしたので、ロック時の衝撃によってホイールが逆回転(第2の方向の回転)した時には、前記凸部が前記回動ロック部材の面部の前記開口に入り込むことで、さらなる第2の方向の回転を規制し、ホイールが再正転(第1の方向の回転)することで、前記凸部が前記回動ロック部材の面部の前記開口から抜け出て、前記回動ロック部材が前記凸部に係止することができ、もって、ホイールの逆回転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアを室内側から見た正面図である。
【
図2】全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの側面図である。
【
図3】本実施形態に係るオーバーヘッドドアの巻取機構の平面図及び正面図である。
【
図4】本実施形態に係る扉体落下防止装置の分解斜視図(シャフトは省略されている)である。
【
図5】本実施形態に係る扉体落下防止装置の平面図である。
【
図6】シャフトを回転自在に支持し、かつ、バランススプリングが取り付けられるブラケットの側面図である。
【
図7】シャフトを回転自在に支持し、かつ、バランススプリングが取り付けられるブラケットの平面図である。
【
図8】シャフトを回転自在に支持し、かつ、バランススプリングが取り付けられるブラケットの正面図である。
【
図9】ブラケットを構成する取付台の平面図、正面図、側面図である。
【
図10】ブラケットを構成するブラケット本体の平面図、平面図、正面図、側面図である。
【
図12】回動ロック部材の側面図、平面図、正面図である。
【
図13A】他の実施形態に係るボスを備えたホイールの側面図及び断面図である。
【
図14】ホイールを構成する板状要素の側面図及び断面図である。
【
図15】ホイールを構成するボスの側面図及び断面図である。
【
図15A】他の実施形態に係るボスの側面図及び断面図である。
【
図16】他の実施形態に係るホイールの側面図及び断面図である。
【
図17】他の実施形態に係るホイールを構成する板状要素の側面図及び断面図である。
【
図18】落下防止装置の側面図であって、落下防止装置及びスプリング切れ検知装置の非作動状態を示す。
【
図19】落下防止装置の側面図であって、落下防止装置及びスプリング切れ検知装置の作動状態を示す。
【
図20】落下防止装置(非作動状態)の側面図であって、作動体及びスペーサを強調して示す図である。
【
図21】落下防止装置(非作動状態)の断面図であって、作動体及びスペーサを強調して示す図である。
【
図22】左図は、比較例に係るロック装置の回動ロック部材が非ロック状態からロック状態となるまでの挙動を示す図であり、右図は、本実施形態に係るロック装置の回動ロック部材が非ロック状態からロック状態となるまでの挙動を示す図である。
【
図23】左図は、第1実施形態に係る回動ロック部材が非ロック状態からロック状態となるまでの挙動を示す図であり、右図は、第2実施形態に係る回動ロック部材が非ロック状態からロック状態となるまでの挙動を示す図である。
【
図24】第2実施形態に係る回動ロック部材による逆転防止機構を説明する図である。
【
図26】検知スイッチ組立体を構成する検知スイッチ本体を示す図である。
【
図27】検知スイッチ組立体を構成する取付プレートを示す図である。
【
図28】ブラケットに対する検知スイッチ組立体の取り付けを説明する図である。
【
図29】ブラケットに対する検知スイッチ組立体の取付位置調整を説明する図である。
【
図30】巻取機構の取付工程を説明する平面図である。
【
図31】巻取機構の取付工程を説明する正面図である。
【
図32】躯体に固定された取付台を示す平面図、正面図、側面図である。
【
図33】取付台に取り付けられたブラケット本体(取付台に対して最も深く挿入された態様)を示す平面図、正面図、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[A]オーバーヘッドドアの全体構成
図1は、全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアを室内側から見た正面図であり、
図2はオーバーヘッドドアの側面図である。オーバーヘッドドアの扉体は、横長方形状の複数枚のパネルPを上下方向に互いに回動可能に連結することで構成されている。
【0016】
各パネルPの幅方向左右両端には、ローラブラケットが設けてあり、扉体は、各パネルPの左右両端のローラブラケットのガイドローラが開口部の幅方向左右に設けたガイドレールGに案内されながら上昇、下降することで開口部を開閉する。
【0017】
図2に示すように、ガイドレールGは、開口部の高さ方向に延びる第1部位G
1と、第1部位G
1の上方から室内側に向かって後方に延びる湾曲状の第2部位G
2と、第2部位G
2の後方から天井に沿って後方に延びる第3部位G
3と、からなる。第1部位G
1は、下方から上方に向かって室内側へ緩やかに傾斜している。第3部位G
3は、室内側に向かって上方に緩やかに傾斜している。
【0018】
開口部全閉状態では各パネルPはガイドレールGの第1部位G1に位置することで複数枚のパネルPが垂直姿勢となって開口部を閉鎖する。最下位のパネルPの幅方向左右両端には、ワイヤWが連結されており、開口部の上方には、ワイヤWの巻取機構1が設けてある。開口部全閉状態から、ワイヤWの巻取機構1によって、左右のワイヤWを同時に引き上げることで、各パネルPが垂直姿勢から第3部位G3に位置するほぼ水平姿勢まで引き上げられて、開口部全開状態となる。巻取機構1は、いわゆるバランススプリング(後述する第1スプリング6A、第2スプリング6B)を備えており、扉体の下降時に、バランススプリングに作用する扉体の荷重によって、当該バランススプリングが捩じられて力を蓄えていき、開口部開放時には、蓄えられた力の戻り力がワイヤWを巻き上げる力として作用し、扉体の上昇動作をアシストするようになっている。オーバーヘッドドアは、手動式、電動式を問わないが、本実施形態では電動式である。
【0019】
[B]ワイヤ巻取機構
ワイヤ巻取機構1は、開口幅方向両端の上方に位置する左右の巻取ドラム1A、1Bと、左右の巻取ドラム1A、1Bを一体で同期して回転可能とする回転機構を備えている。
図3に示すように、本実施形態に係る回転機構は、開口幅方向に直列に接続された2本の第1シャフト2A、第2シャフト2Bを備え、第1シャフト2A、第2シャフト2Bの一方の端部同士がジョイント20を介して一体で回転可能に連結されており、第1シャフト2A、第2シャフト2Bの他方の端部が、それぞれ左右の巻取ドラム1A、1Bに一体で回転可能に連結されている。本実施形態では回転機構は2本のシャフトを備えているが、シャフトの本数は、開口幅寸法や扉体の重量等に応じて、1本でもよく、あるいは3本以上のシャフトを一体で回転するように連結したものであってもよい。
【0020】
第1シャフト2Aの長さ方向の一端側は、ブラケット3Aに回転自在に支持されており、他端側はブラケット4Aに回転自在に支持されている。第2シャフト2Bの長さ方向の一端側は、ブラケット3Bに回転自在に支持されており、他端側はブラケット4Bに回転自在に支持されている。ブラケット3A、3B、4A、4Bは、それぞれ開口幅方向に所定の間隔を存して躯体に対して持ち出し状に固定されており、ブラケット3A、4Aが第1シャフト2Aの長さ方向両端部位をそれぞれ回転自在(ベアリングによって)に支持しており、ブラケット3B、4Bが第2シャフト2Bの長さ方向両端部位をそれぞれ回転自在(ベアリングによって)に支持している。図示の態様では、ブラケット4A、4Bは平面視L形状であるが、ブラケット4A、4Bの形状は限定されない。ブラケット3A、3Bの構成については後述する。
【0021】
開口部両端部位の上方には、ブラケット5A、5Bがそれぞれ躯体に対して持ち出し状に固定されている。第1巻取ドラム1Aは、ブラケット4Aとブラケット5Aの間に回転自在(ベアリングによって)に支持されている。第2巻取ドラム1Bは、ブラケット4Bとブラケット5Bの間に回転自在(ベアリングによって)に支持されている。図示の態様では、ブラケット5A、5Bは平面視L形状であるが、ブラケット5A、5Bの形状は限定されない。
【0022】
第1シャフト2Aには第1コイルスプリング6Aが外装されており、第1コイルスプリング6Aの一端は、ブラケット3Aに連結された第1筒状体60の外面に巻き付けて接続されており、第1コイルスプリング6Aの他端は第1シャフト2Aと一体で回転する第2筒状体61の外面に巻き付けて接続されており、第2シャフト2Bには第2コイルスプリング6Bが外装されており、第2コイルスプリング6Bの一端は、ブラケット3Bに連結された第1筒状体60の外面に巻き付けて接続されており、第2コイルスプリング6Bの他端は第2シャフト2Bと一体で回転する第2筒状体61の外面に巻き付けて接続されている。
【0023】
扉体の下降時に、扉体の自重がワイヤWに作用することで、第1巻取ドラム1A、第2巻取ドラム1Bの回転によって、第1シャフト2A、第2シャフト2Bが第1の方向に回転するが、この時、第1シャフト2Aの第1の方向への回転に伴って第1コイルスプリング6Aが捩じられて巻き締められることで蓄勢力を蓄えていき、第2シャフト2Bの第1の方向への回転に伴って第2コイルスプリング6Bが捩じられて巻き締められることで蓄勢力を蓄えていく。開口部開放時には、巻き締められて蓄勢された第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bが解放され、スプリングの戻り力が、第1シャフト2A、第2シャフト2Bを第2の方向へ回転させてワイヤWを巻き上げるように作用し、扉体の上昇動作をアシストするようになっている。
【0024】
[C]扉体落下防止装置
[C-1]背景
本実施形態では、2本の第1シャフト2A、第2シャフト2Bのそれぞれに対応して第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bが設けられるが、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bのバネ力は、両者を合わせて扉体の自重をバランスするように設定されているため、扉体の昇降動作時に、第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6Bの少なくとも一方が切断すると、扉体の自重とバネ力とのバランスが崩れて(合計のバネ力に対する自重の力が相対的に大きくなって)、扉体がワイヤWを引き出しながら落下(急降下)することになる。本実施形態に係るオーバーヘッドドアは、いわゆるバランススプリングが切断した場合に扉体の急降下を防止する扉体落下防止装置、及び、バランススプリングが切断したことを検知するスプリング切れ検知装置を備えている(
図4、
図5、
図18、
図19等参照)。
【0025】
扉体落下防止装置及びスプリング切れ検知装置は、各シャフト及び各バランススプリング、すなわち、第1シャフト2A及び第1コイルスプリング6A、第2シャフト2B及び第2コイルスプリング6Bに対応して設けられる。すなわち、本実施形態に係るオーバーヘッドドアは、2つの扉体落下防止装置、2つのスプリング切れ検知装置を備えている。本実施形態において、第1シャフト2A及び第1コイルスプリング6Aに対応する扉体落下防止装置及びスプリング切れ検知装置は、ブラケット3Aに設けてあり、第2シャフト2B及び第2コイルスプリング6Bに対応する扉体落下防止装置及びスプリング切れ検知装置は、ブラケット3Bに設けてある(
図3、
図30、
図31参照)。ブラケット3A、3Bは、扉体の落下防止装置、及び、スプリング切れ検知装置の構成要素の一部でもある。本明細書では、主として、第1シャフト2A及び第1コイルスプリング6Aに対応する扉体落下防止装置及びスプリング切れ検知装置について説明するが、これらの説明は、第2シャフト2B及び第2コイルスプリング6Bに対応する扉体落下防止装置及びスプリング切れ検知装置に援用することができる。
【0026】
[C-2]ブラケットの構成
第1シャフト2Aの一端側を回転自在に支持するブラケット3A、第2シャフト2Bの一端側を回転自在に支持するブラケット3Bは、共に、躯体13に固定される取付台30と、取付台30に対して固定されるブラケット本体31とからなる。
図4~
図8には、ブラケット3Aが示されている。ブラケット3A、3Bは、ブラケット本体31が勝手違いに取り付けられている点を除いて、実質的な構成は同じである。ブラケット3Aのブラケット本体31を上下左右反転させることで、ブラケット3Bのブラケット本体31となる。したがって、取付台30及びブラケット本体31に関する以下の説明は、両ブラケットに共通するものである。また、第1シャフト2Aを参照した説明については、第1シャフト2Aを第2シャフト2Bに置き換えることで、その記載をブラケット3Bの記載として援用することができる。
【0027】
図9に示すように、取付台30は、後面部300と、後面部300の幅方向両端から前方に立ち上がるように形成された左右の側面部301、302とから平面視コ字形状を備えており、後面部300が躯体への取付面、左右の側面部301、302がブラケット本体31の取付面となっている。後面部300は縦長方形状であり、高さ方向に間隔を存して2つの取付孔(縦長孔)3000が形成されており、後面部300及び左右の側面部301、302を垂直姿勢として、後面部300を躯体13に当接させて取付孔3000を通る止着部材(本実施形態では、アンカーボルト305)で躯体13に固定される(
図30~
図32参照)。
【0028】
左右の側面部301、302の間の空間が、ブラケット本体31の後面側部位の挿入空間となっており、この空間にブラケット本体31を挿入して、ブラケット本体31を左右の側面部301、302に固定するようになっている。側面部301の高さ方向の上側、下側には取付孔(横長孔)3010、3010が形成されている。側面部302の高さ方向の上側、下側には取付孔(横長孔)3020、3020が形成されている。
図9に示す態様では、取付孔3010、3020は、側面部301、302の前側(後面部300から離間する側)に設けてあるが、左右の側面部301、302の幅寸法(立ち上がり寸法)が小さい場合には、取付孔3010、3020は、左右の側面部301、302の略全幅に亘って延びている(
図32参照)。
【0029】
側面部301の下端には、下側の取付孔3010の下方に位置して、水平状の折り曲げ片303が内側に向かって形成されている。折り曲げ片303は、側面部301、302間の空間(ブラケット本体31の後面側部位の挿入空間)の下方に位置して形成されている。
図9に示す態様では、折り曲げ片303は、側面部301の前側部位に形成されているが、
図32に示す態様では、折り曲げ片303は、側面部301の前側部位を含み略全幅に亘って形成されている。下端の折り曲げ片303は、ブラケット本体31(第1シャフト2A、ロック装置等を備えている)の取付時に支持片として機能するが、下端の折り曲げ片303の作用については、後述する。
【0030】
側面部302の上端には、上側の取付孔3020の上方に位置して、水平状の折り曲げ片304が内側に向かって形成されている。折り曲げ片304は、側面部301、302間の空間(ブラケット本体31の後面側部位の挿入空間)の上方に位置して形成されている。
図9に示す態様では、折り曲げ片304は、側面部302の前側部位に形成されているが、
図32に示す態様では、折り曲げ片304は、側面部302の前側部位を含み略全幅に亘って形成されている。上端の折り曲げ片304は、ブラケット本体31(第1シャフト2A、ロック装置等を備えている)の取付時に回動規制片として機能するが、上端の折り曲げ片304の作用については、後述する。
【0031】
取付台30は、
図9の態様から上下反転させて躯体に取り付けてもよく、この場合、折り曲げ片303が上端に位置し、折り曲げ片304が下端に位置することになる。また、側面部301、302の先端の縁部は凹状となっており、取付台30とブラケット本体31を固定した状態において、ブラケット本体31を挿通する第1シャフト2Aないし第2シャフト2Bに対する逃げを確保するようになっている。
【0032】
図10に示すように、ブラケット本体31は、後面部310と、後面部310の幅方向両端から前方に立ち上がるように形成された左右の立ち上がり状の側面部311、312とからなる。側面部311の立ち上がり寸法は、側面部312の立ち上がり寸法よりも大きい。側面部311の後端側部位と側面部312が対向している。ブラケット本体31(後面部310)の外幅寸法は、取付台30の側面部301、302間の内幅寸法と略同じであり、ブラケット本体31の後面部310及び左右の側面部311、312を垂直姿勢として、ブラケット本体31の後端側部位を、正面から取付台30の内部空間に挿入可能となっている。ブラケット本体31の高さ寸法は、取付台30の高さ寸法よりも僅かに小さく、ブラケット本体31を取付台30に挿入した状態において、ブラケット本体31の下端316は、取付台30の下側の折り曲げ片303の上方に位置し、ブラケット本体31の上端317は、取付台30の上側の折り曲げ片304の下方に位置する。側面部311の後端側部位には、上下に位置して取付孔3110、3110が形成されており、側面部312には、上下に位置して取付孔3120、3120が形成されている。側面部311の内面には取付孔3110、3110に対応してナット33が固定されており、側面部312の内面には取付孔3120、3120に対応してナット33が固定されている。
【0033】
取付台30とブラケット本体31は、取付台30の左右の側面部301、302間に、ブラケット本体31の後面側部位を挿入した状態で、取付台30の側面部301、302が、それぞれ、ブラケット本体31の側面部311、312に当接しており、また、取付孔3110と取付孔3010、取付孔3120と取付孔3020がそれぞれ一致しており、止着部材(本実施形態では、ボルト32をナット33に固定する)によって固定されている。取付台30に対するブラケット本体31の前後方向の位置は、横長孔である取付孔3010、3020の長さ内で前後方向に調整可能となっている。ブラケット本体31が取付台30に固定された状態で、ブラケット本体31の後面部310と取付台30の後面部300は離間対向している(
図7、
図33参照)。ブラケット本体31の後面部310には、取付台30の後面部300の取付孔3000に対向して円形状の開口3100が形成されている。
【0034】
ブラケット本体31の側面部311の立ち上がり寸法は、側面部312の立ち上がり寸法よりも大きく、対向する側面部312を越えて前方に延びる部分311´がシャフト2Aを回転自在に支持する部分となっており、部分311´には、ベアリング313´を備えた第1シャフト2Aの挿通部313が設けてある。第1シャフト2Aの一端側は、ブラケット本体31の側面部311の部分311´の挿通部313に回転自在に支持され、第1筒状体60及び第1コイルスプリング6Aの内部を挿通し、他端側がブラケット4Aに回転自在に支持される。
【0035】
第1コイルスプリング6Aの一端側が固定される第1筒状体60は、ブラケット本体31の側面部311の部分311´の外側に位置して取り付けられるが、第1筒状体60は、第1筒状体60と、ブラケット本体31の側面部311の部分311´の内側に位置する作動体7とでブラケット本体31の側面部311の部分311´を挟むようにしてボルト74で連結される。側面部311の部分311´には、第1シャフト2Aの挿通部313を挟むように上下に2つの開口314が形成されており、作動体7と第1筒状体60を連結するボルト74は、開口314を挿通している。
【0036】
[C-3]作動体
作動体7は、バランススプリング(第1コイルスプリング6A、第2コイルスプリング6B)が切断した時に作動する可動プレートであって、作動体7の作動に連動して、瞬時に、扉体の落下防止装置、及び、スプリング切れ検知装置が作動するようになっている。
【0037】
図11に示すように、作動体7は、第1傾斜辺700、第2傾斜辺701、第3傾斜辺702、第4傾斜辺703を備えた概ね菱形状のプレートである。より詳しくは、第1傾斜辺700と第2傾斜辺701との間には端縁704が形成されており、第3傾斜辺702と第4傾斜辺703との間には端縁705が形成されており、第1傾斜辺700と第3傾斜辺702との間には端縁706が形成されており、第2傾斜辺701と第4傾斜辺703との間には端縁707が形成されている。端縁704と端縁705は対向しており、端縁706と端縁707は対向しており、端縁706と端縁707間の寸法は、端縁704と端縁705の間の寸法よりも大きい。なお、作動体7の形状は図示のものに限定されない。
【0038】
作動体7の面部70の中央には第1シャフト2Aを挿通させる挿通孔71が形成されており、挿通孔71の両側には、長孔状の取付孔72、72が形成されている。挿通孔71は、ブラケット本体31の側面部311に設けたベアリング313´に干渉しないようにベアリング313´よりも大きい径を有している。第1傾斜辺700には、端縁706側に寄った位置に折り曲げ片73が形成されており、第2傾斜辺701には、端縁707側に寄った位置に折り曲げ片73が形成されている。折り曲げ片73は、通常時に、回動ロック部材8の回動を規制する回動規制片及びスプリング切れ検知スイッチ11のレバー111の回動規制片となっている(
図18参照)。
【0039】
本実施形態では、作動体7は、高さ方向に延びる姿勢(端縁706が上側、端縁707が下側)で取り付けてあり、面部70の幅寸法は、高さ方向中央部位が最も大きく、上下端部に向かって幅寸法が漸次小さくなっている。作動体7の面部70の高さ方向中央部位に挿通孔71が位置しており、上側の折り曲げ片73が回動規制片として機能する。本実施形態に係る作動体7は上下に折り曲げ片73を形成したことで、作動体7を左右勝手違いのブラケット3A、ブラケット3Bにそれぞれ設ける場合には、上下左右を反転させることで一種類の作動体7で対応することができる。
【0040】
ブラケット本体31の側面部311には、第1シャフト2Aが回転自在に支持されており、側面部311の外側には、第1コイルスプリング6Aの一端側が取り付けられた第1筒状体60が位置し、第1筒状体60は、側面部311の内側に位置する作動体7と固定されて一体化されており、第1シャフト2Aは、第1筒状体60の中空部及び作動体7の挿通孔71を回転自在に挿通している。第1筒状体60はブラケット本体31の側面部311に直接固定されているのではなく、作動体7に対して固定されており、また、一体化された第1筒状体60及び作動体7は、側面部311に対して可動(回動可能)な状態で取り付けられている。
【0041】
より具体的には、
図4に示すように、第1筒状体60の端面600には雌螺子75が形成されており、雌螺子75と、側面部311に形成された開口314と、作動体7の面部70に形成した取付孔72が一致しており、側面部311の内側から外側に向かって、取付孔72、開口314に螺子(ボルト)74を挿入して、螺子74を雌螺子75に固定することで、作動体7と第1筒状体60は連結されて一体化されている。
【0042】
本実施形態では、側面部311には、開口314内に位置して、リング状のスペーサ62が遊びを有した状態で設けてあり、第1筒状体60と作動体7を連結する螺子74の軸部はスペーサ62内を通っている(
図4、
図20、
図21)。
図21に示すように、スペーサ62の厚さは、側面部311の厚さよりも僅かに大きく、スペーサ62の一方の面が作動体7の面部70に当接し、スペーサ62の他方の面が第1筒状体60の端面600に当接している。開口314は、傾斜辺3140、3140を備えた略等脚台形状である。上側の開口314と下側の開口314は上下対称状の形状を備えており、上側の開口314は逆台形状である。上下の開口314において、一方の傾斜辺が後側(後面部310に近い側)、他方の傾斜辺が前側(後面部310から遠い側)に位置している。傾斜辺3140間の距離は、スペーサ62の外形寸法よりも大きい。
図18に示す態様では、作動体7は第1姿勢にあり、上側のスペーサ62は、上側の開口314の後側の傾斜辺3140に当接しており、下側のスペーサ62は、下側の開口314の前側の傾斜辺3140に当接している。
図19に示す態様では、作動体7は第2姿勢にあり、上側のスペーサ62は、上側の開口314の前側の傾斜辺3140に当接しており、下側のスペーサ62は、下側の開口314の後側の傾斜辺3140に当接している。すなわち、スペーサ62は、作動体7の可動範囲(回動範囲)を規制することが可能である。
【0043】
作動体7と第1筒状体60は螺子74で連結されて一体化されており、第1筒状体60及び作動体7は、第1筒状体60外周面に固定された第1コイルスプリング6Aによって、回動ロック部材8を第2姿勢(ロック姿勢)から第1姿勢(非ロック姿勢)に回動させる方向(
図18の矢印方向)に付勢されている。第1コイルスプリング6Aが切断すると、回動ロック部材8を第2姿勢から第1姿勢に回動させる方向に作用する力が解除され、第1筒状体60及び作動体7が自由となって、捩じりバネ10の付勢力で、回動ロック部材8が第1姿勢から第2姿勢に瞬時に回動して(同時に、作動体7は第1姿勢から第2姿勢に回動する)、ホイール9の外周の被係止部に係止して、第1シャフト2A及び第2シャフト2Bの第1の方向への回転を規制する。
【0044】
[C-4]ロック装置
[C-4-1]概要
シャフトの第1の方向の回転によって扉体が下降し、第2の方向の回転によって扉体が上昇する扉装置において、扉体の落下(急降下)を防止する扉体落下防止装置は、スプリング切断時に、シャフトの第1の方向の回転を規制するロック装置を備えている。ブラケット3Aに設けられるロック装置は、第1コイルスプリング6Aの切断時に、作動体7の回動による回動規制状態が解除されてロック方向(係止方向)に回動する回動ロック部材8と、第1シャフト2Aと一体で回転し、外周に複数の被係止部を備えたホイール9とを備え、第1コイルスプリング6Aが切断した緊急時には、扉体の自重によって第1シャフト2A(及び第2シャフト2B)が第1の方向に回転しようとするが、スプリング切断に応じて瞬時に回動ロック部材8がホイール9の被係止部に係止して、第1シャフト2A(及び第2シャフト2B)の第1の方向の回転を規制する。
【0045】
[C-4-2]回動ロック部材
図12に示すように、本実施形態に係る回動ロック部材8は、面部80と、面部80の幅方向端部から立ち上がる側面部81、82と、面部80に形成した開口83と、を備えている。面部80の先端800が係止部となっており、側面部81、82の基端側は、面部80の後端801を越えて延びる回動基端部となっている。側面部81、82には対向状に挿通孔84が形成されている。
【0046】
ブラケット本体31の後面側部位(側面部311の後端側部位基端側と側面部312との間)には、回動ロック部材8の支軸315が設けてあり、回動ロック部材8の回動基端部が支軸315に対して回動可能に連結されている。回動ロック部材8の基端側には付勢手段としての捩じりバネ10が設けてあり、回動ロック部材8は、先端側が前方(後面部310から離間する方向)に突出するように付勢されている。図示の態様では、バネ10の巻線が支軸315に外装されており、一端が回動ロック部材8の面部80の基端部位に係止され、他端がブラケット本体31の後面部310の内面に当接している。
【0047】
図10に示すように、本実施形態に係る回動ロック部材8は、ブラケット本体31の側面視において、先端が上側、基端が下側で、先端が前側(後面部310から遠い側)、基端が後側(後面部310に近い側)の傾斜姿勢で、ブラケット本体31の後面側部位の支軸315に取り付けられている。回動ロック部材8の先端側部位は、側面部312の前端よりも前方に位置している。
【0048】
回動ロック部材8は、先端が相対的に後側(後面部310に近い側)に位置する第1姿勢すなわち非ロック姿勢(
図6、
図18参照)と、先端が相対的に前側(後面部310から遠い側)に位置する第2姿勢すなわちロック姿勢(
図19参照)との間で回動可能となっており、捩じりバネ10によって第1姿勢から第2姿勢に回動する方向に付勢されている。
図6では、回動ロック部材8は、第1姿勢時にストッパーとしてのピン85を挿入孔84に挿入することで、捩じりバネ10の付勢力に抗して回動を規制し、第1姿勢を維持している。このピン85は、扉体装置(オーバースライダ)の使用時以外で、必要な場合(点検時等)に用いられるものであり、使用時には、ピン85は用いられない。
【0049】
ロック装置の設置時には、作動体7の折り曲げ片(回動規制片)73が回動ロック部材8に当接して、捩じりバネ10の付勢力に抗して、回動ロック部材8の先端側を後面部310側に押し込むことで第1姿勢を維持するようにする。第1コイルスプリング6Aが切断すると、回動ロック部材8を第2姿勢から第1姿勢に回動させる方向(
図18の矢印方向)に作用する力が解除され、第1筒状体60及び作動体7が自由となって、捩じりバネ10の付勢力で、回動ロック部材8が第1姿勢から第2姿勢に瞬時に回動して、ホイール9の外周の被係止部に係止して、第1シャフト2A(及び第2シャフト2B)の第1の方向への回転を規制する。
【0050】
[C-4-3]ホイール
ホイール9は、ロック装置の回動ロック部材8が係止する被係止部を提供する(
図19、
図22~
図24参照)。ホイール9は第1シャフト2Aと一体で回転するようになっており、スプリング切断時に、第1姿勢にある回動ロック部材8が第2姿勢に回動してホイール9の被係止部に係止することで、第1シャフト2Aの第1の方向の回転を規制する。本実施形態に係るホイール9は、第1シャフト2Aを受け入れるボス90と、外周に凸部910、凹部911が周方向に交互に形成されており、ボス90を受け入れる開口912が形成された板状要素91と、からなり、シャフト2Aと一体で回転するようになっている。
図13~15は、第1実施形態に係るホイール9を示し、
図16、
図17は、第2実施形態に係るホイール9を示す。
【0051】
図13、
図14に示すように、第1実施形態に係るホイール9の板状要素91は、側面視略五角形状を有している。より具体的には、板状要素91の外周には、5つの凸部910、5つの凹部911が周方向に交互に連続状に形成されている。各凸部910は周方向の寸法L1を備えており、各凹部911は周方向の寸法L2を備えている。言い換えると、ホイール9の外周には、複数の凸部910が周方向に所定間隔(L2)を存して形成されており、周方向に隣り合う凸部910間に凹部911が形成されている。各凹部911の周方向の寸法L2は、各凸部910の周方向の寸法L1よりも大きい。
【0052】
図14に示すように、凸部910は、上面914と、周方向両側の側面915、915とを備えている。上面914は、僅かに膨出する湾曲面となっている。凹部911は、フラット状の底面916を備え、凸部910の側面915が、凹部の周方向両側の側面915、915を兼用している。各凸部910の側方部位(側面915、並びに、側面915の下端と底面916との接続部位を含む)が被係止部となっている。側面915、915は、底面916に対して略垂直に延びているが、本実施形態では、
図22Bに示すように、上面914と側面915の角部、底面916と側面915の角部は、連続状の湾曲面から形成されている。本実施形態では、
図22Bに示すように、この湾曲面と底面916との接続部も被係止部を形成している。
【0053】
図14に示すように、板状要素91は中央に開口912を備えており、開口912の内周面913の一部は平面913´となっている。板状要素91は、第1面91A、第2面91Bを備えている。
図15に示すように、ボス90の外周面900の一部は平面部900´となっている。ボス90の中空部901は、第1シャフト2Aが挿入されて固定されており、ボス90と第1シャフト2Aが一体で回転するようになっている。
【0054】
ボス90の外周面900と板状要素91の開口912の内周面913は、開口912にボス90を挿通可能であり、挿通状態において、ボス90の外周面900と板状要素91の開口912の内周面913は全周に亘って接触ないし近接している。この挿通状態において、ボス90の外周面900と板状要素91の開口912の内周面913は互いに周方向の力が伝達可能な形状(ボス90と板状要素91が一体で回転可能な形状)を有している。
【0055】
本実施形態では、ボス90の外周面900及び板状要素91の開口912の内周面913は、周面の一部に少なくとも1つの平面部900´、913´を備えた欠円形状であり(
図14、
図15)、板状要素91の開口912にボス90を受け入れた状態において、平面部900´と平面部913´が当接ないし近接しており、ボス90と板状要素91が一体で回転するようになっている。ボス90の外周面900の形状、及び、板状要素91の開口912の内周面913の形状は、欠円形状に限定されるものではなく、正円以外の形状、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形、・・・)、楕円形、あるいは、正円の一部に凹部を形成したもの(ボス90の内周面のような形状)、であってもよい。
【0056】
ボス90が板状要素91の開口912に挿通された状態において、ボス90の外周面900と板状要素91の第1面91Aで第1隅部が形成されており、ボス90の外周面900と板状要素91の第2面91Bで第2隅部が形成されている。本実施形態では、第1隅部のみが隅肉溶接92されている。本実施形態では、ボス90の外周面900と板状要素91の開口912の内周面913の形状の選択(互いに周方向の力が伝達可能な形状ないしボス90と板状要素91が一体で回転可能な形状)と、片側の隅肉溶接92と、の組み合わせによって、回動ロック部材8がホイール9の被係止部に係止した時の衝撃に十分に耐え得る強度を確保している。
【0057】
図15Aに、他の実施形態に係るボス90´を示し、
図13Aに、
図15Aに示すボス90´を備えたホイール9を示す。
図13Aにおける板状要素91は、
図13、
図14に係る板状要素91と同一であり、
図13、
図14に係る板状要素91の説明を援用することができる。
図15Aに示すボス90´の外周面は、第1の外径を備えた第1部分900Aと、第1の外径よりも大きな第2の外径を備えた第2部分900Bと、からなり、第1部分900Aと第2部分900Bとの間の段差部には、立ち上がり面900Cが形成されている。ボス90´の外周面の第1部分900Aの一部は平面部900A´となっており、第2部分900Bの一部は平面部900B´となっている。ボス90´の外周面の第1部分900Aと板状要素91の開口912の内周面913は、開口912にボス90´を挿通可能であり、挿通状態において、ボス90´の立ち上がり面900Cと板状要素91の第2面91Bとが当接することで、ボス90´に対する板状要素91の取付位置が決定される。挿通状態において、ボス90´の外周面の第1部分900Aと板状要素91の開口912の内周面913は全周に亘って接触ないし近接しており、ボス90´の外周面の第1部分900Aと板状要素91の開口912の内周面913は互いに周方向の力が伝達可能な形状(ボス90´と板状要素91が一体で回転可能な形状)を有している。ボス90´に対して板状要素91を位置決めした状態において、ボス90´の外周面の第1部分900Aと板状要素91の第1面91Aで第1隅部が形成されており、ボス90´の外周面の第2部分900Bと板状要素91の第2面91Bで第2隅部が形成されており、本実施形態では、第1隅部のみが隅肉溶接92されている。
図13A、
図15Aに示す実施形態では、板状要素91の開口912にボス90を受け入れた時に、ボス90´の外周面に形成した立ち上がり面900Cと板状要素91の第2面91Bとが当接することで、ボス90´に対する板状要素91の取付位置が決定され、位置決めされた状態で溶接作業を行えばよく、ホイール9の組立作業性(位置決め、溶接)を向上させることができる。ボス90´は、板状要素91の第2面91Bが当接することで、ボス90´に対する板状要素91の位置決めを可能とする当接面(立ち上がり面900C)を備えている点に特徴があり、このような当接面を有するものであれば、外周の第2部分900Bの形状は限定されず、例えば、平面部900B´を備えていなくてもよい。また、図示の態様では、外径の異なる第1部分900Aと第2部分900Bの段差部が当接面となっているが、外周面の第1部分と第2部分を同じ外径とし、第1部分と第2部分の間に当接面を備えたフランジないしリング状の凸部を突設してもよい。また、当接面は、外周方向に連続状に形成するものに限定されず、外周方向の間隔を存して複数突設したものでもよい。
【0058】
図16、
図17に示すように、第2実施形態に係るホイール9の板状要素91は、側面視略四角形状を有している。より具体的には、板状要素91の外周には、4つの凸部910、4つの凹部911が周方向に交互に連続状に形成されている。
図17に示すように、凸部910は、上面914と、周方向両側の側面915、915とを備え、各凸部910の側面915から被係止部が形成されている。上面914は、僅かに膨出する湾曲面となっている。凹部911は、フラット状の底面916を備え、凸部910の側面915が、凹部の周方向両側の側面915、915を兼用している。側面915、915は、底面916に対して略垂直に延びている。各凹部911の周方向の寸法L2´は、各凸部910の周方向の寸法L1´よりも大きい。第1実施形態に係るホイール9と第2実施形態に係るホイール9は、凸部910及び凹部911の個数及び周方向の寸法が異なる点を除いて実質的に同じであり、第1実施形態に係るホイール9の記載を援用することができる。
【0059】
[C-4-4]ロック装置の動作
図22~
図24を参照しつつ、非ロック状態(非係止位置)にある回動ロック部材8がホイール9の被係止部に係止するロック状態(係止位置)となるまでの回動ロック部材8の挙動について説明する。
図22の左側の(A-1)~(A-4)は、比較例に係るホイール9´に対する回動ロック部材8の挙動を示す。
図22の右側の(B-1)~(B-3)は、第1実施形態に係るホイール9に対する回動ロック部材8の挙動を示す。左側の態様と右側の態様は、ホイール9、ホイール9´の構成のみにおいて異なり、回動ロック部材8は共通である。なお、回動ロック部材8の面部80には開口83は設けられていない点に留意されたい。
【0060】
図22の左側の態様では、ホイール9´は、6つの凸部910´と6つの凹部911´が周方向に交互に形成されており、各凸部910´の周方向の寸法と各凹部911´の周方向の寸法は略同じである。
図22の左側の態様において、スプリング切断時には、ホイール9´は矢視方向に回転を開始し、回動ロック部材8は回動規制が解除されて、矢視方向に回動を開始する。(A-1)に示すように、回動ロック部材8の回動開始時において、回動ロック部材8の面部80の先端と最も近い凸部910´との距離が比較的近いため、(A-2)に示すように、回動ロック部材8が上記凸部910´に係止することなく、面部80の内面が上記凸部910´に乗り上げてしまう事象(いわゆる歯飛び)が生じるおそれがある。この場合、(A-3)、(A-4)に示すように、次の凸部910´に係止するまでホイール9´が回転を継続するため、その分シャフトが第1の方向に回転して扉体が落下することになる。
【0061】
図22の右側の態様では、左側の態様に対して、凸部及び凹部の数を減らすと共に、各凹部911の周方向の寸法を、各凸部910の周方向の寸法よりも大きくすることで、凸部910の強度を維持しつつ、凹部911の周方向の寸法を大きくしている。右側の態様において、スプリング切断時には、ホイール9は矢視方向に回転を開始し、回動ロック部材8は回動規制が解除されて、矢視方向に回動を開始する。(B-1)に示すように、回動ロック部材8の回動開始時において、回動ロック部材8の面部80の先端と最も近い凸部910との距離が比較的離れており、(B-2)に示すように、回動ロック部材8の先端側がホイール9の凹部911内に落ち込むような姿勢となり、さらにホイール9が第1の方向に回転すると、(B-3)に示すように、上記凸部910の側方部位(側面915)に回動ロック部材8の先端が当接して係止状態となる。
図22Aに、
図22(B-2)の部分拡大図を示す。α方向に回転するホイール9に対して、ホイール9の凸部910の上面914(側面915に近い側)に、矢視方向に回動しようとする回動ロック部材8の面部80の内面802が乗り上げると、回動ロック部材8の先端側が凹部911に落ち込むような姿勢となる。この姿勢において、先端800の内側のエッジ800Aが凹部911の底面916に当接する。この時、回動ロック部材8は、捩じりバネ10によって、エッジ800Aを底面916に押し付ける方向に力が作用しているが、この時の底面916と面部80の内面(フラット面)802が成す角度は小さいため抵抗は極めて小さく、ホイール9がα方向に回転することで、エッジ800Aが底面916に摺接しながら凸部910の側方部位に係止する。なお、タイミングによっては、先端800の内側のエッジ800Aが底面916に摺接することなく、凸部910の側方部位に直接係止する場合もあり得る。
図22Bは、
図22(B-3)の部分拡大図であって、回動ロック部材8の係止部とホイール9の被係止部との係止状態(ロック状態)を示しており、ホイール9のα方向の回転が規制されている。図示の態様では、回動ロック部材8の面部80の先端800の内側のエッジ800Aが、凸部910の側面915と凹部911の底面916の接続部位に係止しており、先端800の外側のエッジ800Bが、凸部910の側方部位に係止している。
【0062】
図23の左側の(A-1)~(A-4)は、ホイール9に対する第1実施形態に係る回動ロック部材8の挙動を示す。
図23の右側の(B-1)~(B-4)は、ホイール9に対する第2実施形態に係る回動ロック部材8の挙動を示す。左側の態様と右側の態様は、回動ロック部材8の構成のみにおいて異なる。右側の態様における回動ロック部材8は、
図12に示す回動ロック部材8であり、面部80に開口83が形成されている。左側の態様における回動ロック部材8は、回動ロック部材8の面部80には開口83は設けられていない。
図23の(A-1)、(A-3)、(A-4)は、
図22の(B-1)、(B-2)、(B-3)に対応している。
【0063】
図12に示すように、右側の態様に回動ロック部材8の面部80には、ホイール9の凸部910が侵入可能な開口83が形成されている。開口83の横幅は、ホイール9(すなち、凸部910)の厚さよりも大きく、開口83の縦幅(先端側の縁部830と基端側の縁部831間の寸法)は、凸部910の周方向の寸法よりも小さい。ホイール9の凸部910が開口83に侵入した状態において、ホイール9の第1の方向の回転は許容され、第2の方向の回転は規制される。
【0064】
左側の態様では、回動ロック部材8の面部80に開口83が形成されておらず、(A-2)に示すように、面部80の内面が凸部910に乗り上げることで、係止方向への回動が一旦規制され、その後、(A-3)に示すように、回動ロック部材8の先端側が凹部911に落ち込んで、さらにホイール9が第1の方向に回転すると、(A-4)に示すように、上記凸部910の側方部位に回動ロック部材8の先端が当接して係止状態となる。
【0065】
右側の態様では、回動ロック部材8の面部80に開口83が形成されており、(B-2)に示すように、面部80の開口83に凸部910が入り込み、回動ロック部材8の先端側が凹部911に速やかに落ち込むようになっている。この時、凸部910の上面914は開口83の基端側の縁部831に近接ないし接触するが、凸部910が開口83に入り込んだ状態であっても、ホイール9の第1の方向の回転は許容されており、(B-3)に示すように、回動ロック部材8は、先端が凹部911に落ち込んだ姿勢を維持しつつ、ホイール9が第1の方向に回転することで、凸部911が開口83から抜け出ていき、さらにホイール9が第1の方向に回転すると、(B-4)に示すように、上記凸部910の側方部位に回動ロック部材8の先端が当接して係止状態となる。
図23Aに、
図23(B-2)の部分拡大図を示す。α方向に回転するホイール9に対して、ホイール9の凸部910の上面914(側面915に近い側)に、矢視方向に回動しようとする回動ロック部材8の面部80の内面802が乗り上げると、直ぐに凸部910が面部に形成した開口83に入り込むことで、回動ロック部材8の先端側が凹部911に落ち込むような姿勢となる。この姿勢において、先端800の内側のエッジ800Aが凹部911の底面916に当接する。この時、回動ロック部材8は、捩じりバネ10によって、エッジ800Aを底面916に押し付ける方向に力が作用しているが、この時の底面916と面部80の内面(フラット面)802が成す角度は小さいため抵抗は極めて小さく、ホイール9がα方向に回転することで、エッジ800Aが底面916に摺接しながら凸部910の側方部位に係止する。
【0066】
図24を参照しつつ、ロック装置が作動した時のホイール9の逆回転防止について説明する。ロック装置は、スプリング切断時、回動ロック部材8がホイール9の被係止部に係止することで、扉体の自重で第1の方向の回転しようとするシャフトの回転を規制するが、ロック時の反動でホイール9が逆転する場合がある。
図24(A-1)、(A-2)に示すように、ロック時にホイール9が逆転すると、回動ロック部材8の先端と被係止部が離間し、隣接する凸部910に回動ロック部材8の面部80が乗り上げてロック状態(係止状態)が解除されてしまうおそれがある。また、再正転時にホイール9の回転が加速されて、動作不良(例えば、歯飛び)の要因となり得る。
【0067】
本実施形態では、面部80に開口83を備えた回動ロック部材8を採用することで、この不具合を解決することができる。
図24(B-1)のロック状態から、ホイール9が第2の方向に回転すると、回動ロック部材8の面部80の開口83に隣接する凸部910が入り込み、(B-2)の状態となる。この時、隣接する凸部910の側面(被係止部)915に開口83の先端側の縁部830が係止し、ホイール9の第2の方向の回転を規制する。正転時には、
図23(B-3)に示すように、ホイール9が第1の方向に回転することで、凸部911が開口83から抜け出ていき、さらにホイール9が第1の方向に回転すると、凸部910の側方部位に回動ロック部材8の先端が当接して、
図24(B-1)の係止状態に復帰する。
図24Aは、
図24(B-2)の部分拡大図である。係止状態(ロック状態)から、ホイール9がβ方向に回転すると、回動ロック部材8の面部80の先端800から凸部910の側面915が離間していき、回動ロック部材8の面部80の開口83に、隣の凸部910(上面914と側面915で形成される角部)が入り込み、開口83の縁部830に、側面915が対向するように当接して係止し、ホイール9のβ方向の回転が規制される。
【0068】
[C-5]スプリング切れ検知装置
スプリング切れ検知装置は、バランススプリングの切断を検知する装置である。例えば、オーバーヘッドドアが電動で昇降させる場合には、スプリング切れ検知装置の検知信号が開閉機の制御部に送信され、開閉機のモータの駆動を停止するようになっている。スプリング切れ検知装置は、スプリングの切断を検知する検知スイッチ11を備え、検知スイッチ11は、ブラケット本体31の側面部311の内面に取り付けられている。本実施形態に係る検知スイッチ11は、ブラケット本体31の側面部311の内面に位置調整可能に取り付けられる。
【0069】
図26に示すように、検知スイッチ11は、スイッチ本体110と、スイッチ本体110に対して回動可能に取り付けられたレバー111と、を備え、スイッチ本体110には、レバー111が接触可能な被接触部112を備えており、スイッチ本体110から配線113が延びている。スイッチ本体110は平面視長方形状の直方体であり、対角に位置する角部には、厚さ方向を貫通する挿通孔114、114が形成されている。検知スイッチ11は、レバー111が被接触部112と接触状態にある時にはON状態、レバー111が被接触部112から離れた非接触状態にある時にはOFF状態にあり、レバー111は、非接触状態を保持する方向に付勢されている。
【0070】
本実施形態では、検知スイッチ11は、ブラケット本体31の側面部311の内面の上方部位に傾斜姿勢で取り付けられている。検知スイッチ11は、作動体7の折り曲げ片73の可動範囲にレバー111の先端部位が位置するように位置決め固定されている。通常時には、作動体7の折り曲げ片73がレバー111が被接触部112との接触状態を維持するように押し込んでおり、検知スイッチ11はON状態にある(
図18)。スプリング切断時に、回動ロック部材8の捩じりバネ10の付勢力で回動ロック部材8が第1姿勢から第2姿勢に回動することによって、作動体7が押されて、第1の姿勢から第2の姿勢に回動し、作動体7の折り曲げ片73とレバー111の先端側が離間することで、レバー111が回動して、接触状態から非接触状態に変位し、ON状態からOFF状態と切り替わったことを検知することでスプリング切れを検知する(
図19)。
なお、第1姿勢から第2姿勢に回転した作動体7が反動で第1姿勢に戻る方向に回転したとしても、ホイール9の被係止部に係止した回動ロック部材8に作動体7の折り曲げ片73が当接するようになっており、検知スイッチがON状態となる位置までレバー111が戻ることはない。
【0071】
本実施形態に係る検知スイッチ11は、取付プレート12を介して、螺子123によってブラケット本体31の側面部311の内面に位置調整可能に固定される。
図27に示すように、取付プレート12は、所定の厚さの板状体であり、検知スイッチ11のスイッチ本体110が固定される第1部分12Aと、ブラケット本体31の側面部311に固定される第2部分12Bと、からなる。取付プレート12の第1部分12Aには、2つの挿通孔120、120が形成されており、第1部分12Aに検知スイッチ11を重ねた時に、検知スイッチ11の挿通孔114と取付プレート12の挿通孔120が一致するようになっている。取付プレート12の第2部分12Bには、2つの挿通孔121、121が形成されている。
【0072】
取付プレート12の一方の面に検知スイッチ11のスイッチ本体110をあてがって、挿通孔114、120を通る螺子(ボルト)115と雌螺子(ナット)116で、検知スイッチ11と取付プレート12を固定して一体化する。検知スイッチ11と取付プレート12からなる検知スイッチ組立体を
図25に示す。検知スイッチ11は、検知スイッチ組立体として用意され、検知スイッチ組立体がブラケット本体31の側面部311に固定される。
【0073】
ブラケット本体31の側面部311の内面の上方部位には、2つの雌螺子122が形成されており、雌螺子122は、側面部311の内面の上方部位に検知スイッチ組立体をあてがった時に、取付プレート12の挿通孔121と一致するようになっている(
図28)。検知スイッチ組立体は、取付プレート12の挿通孔121が上端に位置する姿勢において、挿通孔121から挿通させる螺子123の軸部を、側面部311の雌螺子122に螺合することで、ブラケット本体31に固定される。ブラケット本体31の側面部311に雌螺子122を形成することで、側面部311の外面においてナットを設ける必要がなく、取付作業性が向上する。
【0074】
取付プレート12に形成された挿通孔121の径は、雌螺子122の径、及び、螺子123の軸部124の径よりも大きい。したがって、検知スイッチ組立体は、螺子123の軸部124と挿通孔121との隙間の範囲で移動可能となっており、その移動範囲によって位置調整可能である。
【0075】
側面部311の内面の上方部位には、挿通孔121の下側に位置して、2つの円形状の開口117が形成されており、開口117は、側面部311の内面の上方部位に検知スイッチ組立体を重ねた時に、スイッチ本体110と取付プレート12を固定する螺子115の頭部の位置と一致して、当該頭部を受け入れるようになっている。開口117の径は螺子115の頭部の径よりも大きく、検知スイッチ組立体の位置調整を行う時に、螺子115の頭部が開口117で移動するようになっている。なお、
図10に示すように、ブラケット本体31の側面部311の上側部位、下側部位の両方に雌螺子122、開口117が形成されており、ブラケット3Aに用いたブラケット本体31を上下左右反転させることで、ブラケット3Bに用いることが可能となっている。
【0076】
図29を参照しつつ、検知スイッチ11の取付位置の調整について説明する。検知スイッチ11は、検知スイッチ組立体の取付プレート12の挿通孔121と検知スイッチ組立体を側面部311に取り付ける螺子123の軸部124とのクリアランス内で位置調整可能となっている。上図では、螺子123の軸部124に対して、挿通孔121が上側に寄った取付位置を示し、中図、下図に比べて検知スイッチ11が上側に位置していることがわかる。中図では、螺子123の軸部124に対して、挿通孔121が左側に寄った取付位置を示し、上図、下図に比べて検知スイッチ11が左側に位置していることがわかる。下図では、螺子123の軸部124に対して、挿通孔121が右側に寄った取付位置を示し、上図、中図に比べて検知スイッチ11が右側に位置していることがわかる。検知スイッチ11の取付位置を微調整することで、例えば、レバー111の先端側部位と作動体73の折り曲げ片73との相対的な位置関係を微調整することができる。
【0077】
[C-6]ワイヤ巻取機構の取付工程
図3に示すように、本実施形態に係るワイヤ巻取機構1は、躯体13の所定部位に幅方向に亘って設けたブラケット3A、3B、4A、4B、5A、5Bによって支持されている。ブラケット4A、4B、5A、5Bの立ち上がり面部には、前端から後方に向かってシャフト2A、2Bの挿入溝(図示せず)が形成されており、正面から巻取機構1のシャフト2A、2Bを受け入れて支持可能となっている。既述のように、ブラケット3A、3Bは、取付台30とブラケット本体31の2部材から構成される。取付台30は、後面部300と、後面部300の幅方向端部から前方に立ち上がる左右の側面部301、302と、を備え、後面部300を介して躯体13に固定される。ブラケット本体31は、後面部310と、後面部310の幅方向端部から前方に立ち上がる左右の側面部311、312と、を備え、正面から、取付台30の左右の側面部301、302間の空間に挿入して、後方側部位が空間に位置し、前方に持ち出し状に取付台30に取り付けられる。
【0078】
ブラケット3A、3Bの取付台30は、他のブラケット4A、4B、5A、5Bと同様に、躯体13に取り付けられる一方、ブラケット本体31は、ワイヤ巻取機構1の構成要素となっている。ブラケット本体31の側面部311の前側部位(部分311´)には第1シャフト2A、第2シャフト2Bが回転自在に支持されており、第1シャフト2A、第2シャフト2Bには、部分311´の内側に位置してロック装置を構成するホイール9が固定されている。また、部分311´には、扉体落下防止装置の構成要素(作動体7、ロック装置を構成する回動ロック部材8等)が支持されている。ブラケット本体31は、ワイヤ巻取機構1の他の構成要素と一体で、取付台30に取り付けられる。
【0079】
取付台30の側面部301の下端には、ブラケット本体31の後方側部位の挿入空間の下方に位置して水平状の折り曲げ片303が形成されており、ブラケット本体31の後方側部位を取付台30の側面部301、302間の空間に挿入した時に、ブラケット本体30を支持可能となっている。ブラケット本体31は、ワイヤ巻取機構1の構成要素として、取付台30に取り付けられるため、ブラケット本体31の下端316を取付台30の折り曲げ片303に載せて仮支持させることで、取付台30に対するブラケット本体31の固定作業の作業性を向上させている。
【0080】
取付台30の側面部302の上端には、ブラケット本体31の後方側部位の挿入空間の上方に位置して水平状の折り曲げ片304が形成されており、ブラケット本体31の後方側部位を取付台30の側面部301、302間の空間に挿入した時に、ブラケット本体30の前方側部位の下方への倒れを規制可能となっており、取付台30に対するブラケット本体31の固定作業の作業性を向上させている。
【0081】
図30、
図31を参照しつつ、ブラケット3A、3Bの取付工程及びワイヤ巻取機構1の取付工程を説明する。ブラケット3A、3Bの取付工程において、先ず、
図30(A)、
図31(A)に示すように、取付台30を、後面部300を介してアンカーボルト305で躯体13に固定し、躯体に固定された取付台30に対して、正面から、ブラケット本体31の後方側部位を、取付台30の左右の側面部301、302間の空間に挿入する。
【0082】
図30(A)、
図31(A)に示すように、ブラケット本体31を取付台の左右の側面部301、302間の空間に挿入した時に、下端の折り曲げ片303によってブラケット本体31(扉体落下防止装置が設けてある)の下端316を仮支持させる。この時、ブラケット本体31(扉体落下防止装置が設けてある)の上端317の直ぐ上には上端の折り曲げ片304が位置しており、ブラケット本体30の前方側部位の下方への倒れを規制している。仮支持した状態で、取付台30に対するブラケット本体30の取付位置を調整し、取付台30の左右の側面部301、302からボルト32を挿入して、ブラケット本体31の側面部311、312に設けたナット33に連結することで、取付台30に対するブラケット本体31の固定が完了する(
図30(C)、
図31(C))。
【0083】
図30、
図31では、ワイヤ巻取機構の一部についてのみ図示したが、本実施形態では、ブラケット本体31が単独で取付台30に固定されるのではなく、ワイヤ巻取機構が一体としてブラケット3Aの取付台30、ブラケット3Bの取付台30、ブラケット4A、4B、5A、5Bに支持され、固定される。ワイヤ巻取機構1の取付工程は、第1巻取ドラム1A、第1シャフト2A、第1コイルスプリング6A、ブラケット本体31、31、第2シャフト2B、第2コイルスプリング6B、第2巻取ドラム1Bを組み立てて巻取組立体を用意すること;躯体13の所定部位に複数のブラケット4A、4B、5A、5B、取付台30、30を固定すること;前記巻取組立体を、正面から複数のブラケット4A、4B、5A、5B、取付台30、30に支持させること;前記巻取組立体を複数のブラケット4A、4B、5A、5B、取付台30、30に固定すること;を備え、取付台30に対するブラケット本体31の取付工程は上記の記載を援用することができる。
【0084】
本実施形態では、取付台30は、アンカーボルト305によって躯体13に固定されるようになっており、躯体13から突出するアンカーボルト305の軸部が取付台30の後面部300の取付孔3000を挿通している。取付台30にブラケット本体31を取り付けた状態において、取付台30の後面部300とブラケット本体31の後面部310は離間対向しているが、ブラケット本体31の後面部310には、取付孔3000に対向して開口3100が形成されており、開口3100がアンカーボルト305を挿通可能な挿通孔となっている。したがって、
図33に示す態様のように、取付台30の後面部300とブラケット本体31の後面部310が接近している場合であっても、取付台30に対するブラケット本体31の取付時に開口3100がアンカーボルト305を受け入れて逃がすことが可能となっている。
【符号の説明】
【0085】
1 ワイヤ巻取機構
2A 第1シャフト
2B 第2シャフト
3A ブラケット
3B ブラケット
30 取付台
300 後面部
301 側面部
302 側面部
31 ブラケット本体
310 後面部
311 側面部
312 側面部
6A 第1コイルスプリング
6B 第2コイルスプリング
60 第1筒状体
62 スペーサ
7 作動体
8 回動ロック部材
80 面部
800 先端(係止部)
83 開口
9 ホイール
90 ボス
900 外周面
900´ 平面部
91 板状要素
91A 第1面
91B 第2面
910 凸部
915 側面(被係止部)
911 凹部
912 開口
913 開口の内周面
913´ 平面部
92 隅肉溶接
10 捩じりバネ
11 検知スイッチ
12 取付プレート
13 躯体