IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許-薄肉容器 図1
  • 特許-薄肉容器 図2
  • 特許-薄肉容器 図3
  • 特許-薄肉容器 図4
  • 特許-薄肉容器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】薄肉容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
B65D1/02 242
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020063722
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160758
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】津田 直毅
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0240673(US,A1)
【文献】特開2019-011116(JP,A)
【文献】特開昭51-142887(JP,A)
【文献】特開平11-105930(JP,A)
【文献】特開平08-072843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の口部と、
前記口部の下方に連設された肩部と、
前記肩部の下方に変形可能に連設され、内容物の収容空間を形成する胴部と、
前記胴部の下方に連設された底部と、
を備え、
前記胴部は、上下方向から見た平面視において、前記胴部の軸線上で互いに交差する長軸と短軸とを有する扁平形状を呈するとともに、
前記短軸に沿う短軸方向に互いに対向し、各々が湾曲した外周面を有する正面壁部および背面壁部と、
前記正面壁部と前記背面壁部とを前記長軸に沿う長軸方向の両端同士でそれぞれ連結する屈曲部と、を有し、
前記肩部は、前記長軸方向に沿って前記軸線から離れるに従って下方に向けて延びる肩部傾斜面を有するとともに、前記長軸方向から見て、前記正面壁部の外周面と前記肩部傾斜面とが接する第1接続部と、前記背面壁部の外周面と前記肩部傾斜面とが接する第2接続部と、の前記短軸方向における間隔が、上方から下方に向かって漸次短くなる形状を有し、
前記短軸方向から見て、前記肩部傾斜面の中央部が下方に凸形状に湾曲している、薄肉容器。
【請求項2】
前記正面壁部および前記背面壁部のそれぞれは、前記肩部傾斜面の下端と略同じ高さにおいて、前記外周面に沿って前記長軸方向に延びる上側折曲溝部を有する、請求項1に記載の薄肉容器。
【請求項3】
前記底部は、前記長軸方向に沿って前記軸線から離れるに従って上方に向けて延びる底部傾斜面を有するとともに、前記長軸方向から見て、前記正面壁部の外周面と前記底部傾斜面とが接する第3接続部と、前記背面壁部の外周面と前記底部傾斜面とが接する第4接続部と、の前記短軸方向における間隔が、下方から上方に向かって漸次短くなる形状を有する、請求項1または請求項2に記載の薄肉容器。
【請求項4】
前記正面壁部および前記背面壁部のそれぞれは、前記底部傾斜面の上端と略同じ高さにおいて、前記外周面に沿って前記長軸方向に延びる下側折曲溝部を有する、請求項3に記載の薄肉容器。
【請求項5】
前記胴部の平均肉厚に対する前記肩部の平均肉厚の比率が、150%以上、300%以下である、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の薄肉容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、化粧料、薬品等の種々の内容物を収容するための容器として、筒状の口部と、口部に連設され、内容物の収容空間を形成する胴部と、を備えた薄肉容器が、従来から知られている。例えば下記の特許文献1には、胴部の両側の幅方向端部に軸線方向に延びる屈曲部が設けられ、胴部を厚さ方向に押し潰した際に、屈曲部が、正面壁部および背面壁部の一方が他方に向けて反転変形する際の起点となるように構成された合成樹脂製容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-203296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の容器においては、容器を押し潰して廃棄する際に、場合によって様々な形状に潰されるおそれがあり、容器をコンパクトに廃棄することが難しいおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであり、廃棄時に安定した形状に押し潰しやすい薄肉容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の薄肉容器は、筒状の口部と、前記口部の下方に連設された肩部と、前記肩部の下方に変形可能に連設され、内容物の収容空間を形成する胴部と、前記胴部の下方に連設された底部と、を備え、前記胴部は、上下方向から見た平面視において、前記胴部の軸線上で互いに交差する長軸と短軸とを有する扁平形状を呈するとともに、前記短軸に沿う短軸方向に互いに対向し、各々が湾曲した外周面を有する正面壁部および背面壁部と、前記正面壁部と前記背面壁部とを前記長軸に沿う長軸方向の両端同士でそれぞれ連結する屈曲部と、を有し、前記肩部は、前記長軸方向に沿って前記軸線から離れるに従って下方に向けて延びる肩部傾斜面を有するとともに、前記長軸方向から見て、前記正面壁部の外周面と前記肩部傾斜面とが接する第1接続部と、前記背面壁部の外周面と前記肩部傾斜面とが接する第2接続部と、の前記短軸方向における間隔が、上方から下方に向かって漸次短くなる形状を有している。
【0007】
本発明の一つの態様においては、胴部が扁平形状を有しているため、正面壁部と背面壁部とが短軸方向に沿って接近する方向に胴部を押圧することにより、容器を押し潰すことができる。ここで、肩部は、長軸方向に沿って軸線から離れるに従って下方に延びる肩部傾斜面を有するとともに、長軸方向から見て、正面壁部の外周面と肩部傾斜面とが接する第1接続部と、背面壁部の外周面と肩部傾斜面とが接する第2接続部と、の短軸方向に沿う間隔が上方から下方に向かって漸次短くなる形状を有している。このような構成を有する肩部は、肩部から離れた位置での胴部の潰れを阻害しない一方、肩部の近傍では胴部の潰れに対する抗力を発現するため、短軸方向への大きな変形が生じることはない。すなわち、胴部に対して短軸方向に外力が加わった際、正面壁部と背面壁部とが大きく変形して胴部の高さ方向の中央部が押し潰される一方、肩部自体は、胴部の潰れに伴って変位しつつ、外力印加前の形状を概ね維持することができる。これにより、廃棄時に安定した形状に押し潰しやすい薄肉容器を提供することができる。
【0008】
また、本発明の一つの態様の薄肉容器によれば、内容物の残量が少なくなった際に肩部を支持した状態で内容物を吐出させる操作が行いやすくなり、内容物の残量を減らすことができる。また、肩部が所定の剛性を有するため、例えば容器を倒立状態で吐出させる場合等に、肩部によって容器を支持することも可能になる。
【0009】
本発明の一つの態様の薄肉容器において、前記正面壁部および前記背面壁部のそれぞれは、前記短軸方向から見て、前記肩部傾斜面の下端と略同じ高さにおいて前記外周面に沿って前記長軸方向に延びる上側折曲溝部を有していてもよい。
【0010】
この構成によれば、容器の胴部を上側折曲溝部の形成位置で安定して折り曲げることができる。これにより、容器を押し潰した際の全体形状を略一定に保つことができる。
【0011】
本発明の一つの態様の薄肉容器において、前記底部は、前記長軸方向に沿って前記軸線から離れるに従って上方に向けて延びる底部傾斜面を有するとともに、前記長軸方向から見て、前記正面壁部の外周面と前記底部傾斜面とが接する第3接続部と、前記背面壁部の外周面と前記底部傾斜面とが接する第4接続部と、の前記短軸方向における間隔が、下方から上方に向かって漸次短くなる形状を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、上述した肩部と同様、底部についても、胴部の潰れを阻害しない一方、底部の底部傾斜面が胴部の潰れに対する抗力を発現し、短軸方向への大きな変形が生じることはない。すなわち、胴部に対して短軸方向に外力が加わった際、正面壁部と背面壁部とが大きく変形して胴部の高さ方向の中央部が潰れる一方、底部自体は、胴部の潰れに伴って変位しつつ、外力印加前の形状を概ね維持することができる。これにより、廃棄時に安定した形状に押し潰しやすい容器を提供することができる。
【0013】
本発明の一つの態様の薄肉容器において、前記正面壁部および前記背面壁部のそれぞれは、前記短軸方向から見て、前記底部傾斜面の上端と略同じ高さにおいて前記外周面に沿って前記長軸方向に延びる下側折曲溝部を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、容器の胴部を下側折曲溝部の形成位置で安定して折り曲げることができる。これにより、容器を押し潰した際の全体形状を略一定に保つことができる。
【0015】
本発明の一つの態様の薄肉容器において、胴部の平均肉厚に対する前記肩部の平均肉厚の比率が、150%以上、300%以下であってもよい。
【0016】
この構成によれば、例えば肩部の肉厚が胴部の肉厚と等しい場合に比べて、胴部の潰れに対する肩部の抗力をより大きくできるため、容器を押し潰した際の形状をより安定させることができる。また、内容物の残量が少なくなった際に肩部を支持して内容物を吐出させる操作がより行いやすくなり、内容物の残量をさらに減らすことができる。また、肩部の剛性がより大きくなるため、容器を倒立状態で吐出させる場合等に、肩部によって容器をさらに安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様によれば、廃棄時に安定した形状に押し潰しやすい薄肉容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の薄肉容器の正面図である。
図2】薄肉容器の側面図である。
図3】薄肉容器の平面図である。
図4】薄肉容器の底面図である。
図5】薄肉容器を押し潰した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1図5を用いて説明する。
なお、図3および図4における2点鎖線は、胴部を押し潰した際の外形を示している。
【0020】
図1図3に示すように、本実施形態の薄肉容器10は、筒状の口部11と、口部11の下方に連設された肩部12と、肩部12の下方に連設された胴部13と、胴部13の下方に連設された底部14と、を備えている。本実施形態の薄肉容器10は、薄肉に形成されているため、スクイズによって内容物を吐出することが可能である。
【0021】
薄肉容器10は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系合成樹脂、またはポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる筒状のパリソンを用いた押出ブロー成形によって製造することができる。したがって、上述した口部11、肩部12、胴部13、および底部14は、上記の合成樹脂材料によって各部の中心軸上に一体に形成されている。以下、口部11、肩部12、胴部13、および底部14が上方から下方に向かってこの順に連設された中心軸を軸線Cと称する。なお、薄肉容器10の製造方法は、上記の方法に限定されず、押出ブロー成形以外のブロー成形法を用いてもよいし、種々の製造方法が採用可能である。
【0022】
口部11は、円筒状に形成され、外周面11aには、図示しないキャップ等を装着するための雄ねじ16が設けられている。口部11の上端開口11bは、内容物を吐出させる吐出口として機能する。
【0023】
図3に示すように、胴部13は、上下方向、すなわち軸線Cに沿う軸線C方向から見た平面視において、軸線上で互いに交差する長軸L1と短軸L2とを有する扁平形状の筒状を呈する。胴部13は、弾性変形可能に形成されており、内容物の収容空間Sを内部に有する。以下、軸線Cに沿う方向を軸線C方向と称し、長軸L1に沿う方向を長軸L1方向と称し、短軸L2に沿う方向を短軸L2方向と称する。また、胴部13の長軸L1方向の寸法を幅と称し、胴部13の短軸L2方向の寸法を厚さと称することがある。
【0024】
図1および図2に示すように、胴部13は、正面壁部18と、背面壁部19と、屈曲部20と、を有している。正面壁部18と背面壁部19とは、短軸L2方向に互いに対向しており、各々が湾曲した外周面18a,19aを有している。屈曲部20は、正面壁部18と背面壁部19とを長軸L1方向の両端同士でそれぞれ連結し、軸線C方向に延びている。
【0025】
図3に示すように、胴部13は、正面壁部18と背面壁部19とが同一の形状を有するとともに互いに対向して配置され、軸線Cおよび長軸L1を通る平面に対して対称の形状を有している。また、胴部13は、軸線Cおよび短軸L2を通る平面に対しても対称の形状を有している。すなわち、胴部13は、軸線Cを中心として前後方向および左右方向に対称の形状を有している。これにより、胴部13を前後方向および左右方向に均等に押し潰しやすい。なお、胴部13は、前後方向および左右方向の少なくとも一方が非対称の形状を有していてもよい。
【0026】
軸線C方向から見た平面視において、屈曲部20の頂点Pを基点とした正面壁部18に対する接線F1と、屈曲部20の頂点Pを基点とした背面壁部19に対する接線F2と、のなす角度θは、70°~140°の範囲であることが望ましい。接線F1と接線F2とのなす角度θが70°よりも小さくなると、剛性を保ちつつ肩部を形成することが困難になる。また、胴部13の扁平度は、1.2~1.8の範囲であることが望ましい。なお、胴部13の扁平度は、胴部13の最大厚さTに対する胴部13の最大幅Wの割合で示される値である。すなわち、扁平度は、W/Tで示される。上記の数値範囲を満たす場合、正面壁部18と背面壁部19とを短軸L2方向に支障なく押し潰しやすい。
【0027】
肩部12は、口部11と胴部13とに連設されている。図1に示すように、肩部12は、長軸L1方向に沿って軸線Cから離れるに従って下方に延びる肩部傾斜面22を有している。また、図2に示すように、長軸L1方向から見て、正面壁部18の外周面18aと肩部傾斜面22とが接する稜線からなる接続部を第1接続部R1と称し、背面壁部19の外周面19aと肩部傾斜面22とが接する稜線からなる接続部を第2接続部R2と称し、肩部12の上面12aと肩部傾斜面22とが接する稜線からなる接続部を上部接続部RAと称すると、第1接続部R1と第2接続部R2と上部接続部RAとに囲まれた肩部傾斜面22は、第1接続部R1および第2接続部R2のそれぞれが下方に僅かに膨出した略二等辺三角形状の形状をなしている。すなわち、第1接続部R1と第2接続部R2との短軸L2方向における間隔D1は、上方から下方に向かって漸次短くなる形状を有している。また、短軸L2方向から見て、肩部傾斜面22は、中央部が僅かに下方に凸の形状を有して湾曲している。
【0028】
正面壁部18および背面壁部19のそれぞれは、肩部傾斜面22の下端と略同じ高さにおいて、外周面18a,19aに沿って長軸L1方向に延びる上側折曲溝部24を有している。上側折曲溝部24は、各壁部18,19の外周面側から内周面側に凹んだ溝部によって構成されている。上側折曲溝部24の高さ方向の位置は、肩部傾斜面22の下端の高さ方向の位置と完全に一致していなくてもよく、多少ずれていてもよい。
【0029】
図1に示すように、底部14は、長軸L1方向に沿って軸線Cから離れるに従って上方に延びる底部傾斜面26を有している。また、図2に示すように、長軸L1方向から見て、正面壁部18の外周面18aと底部傾斜面26とが接する稜線からなる接続部を第3接続部R3と称し、背面壁部19の外周面19aと底部傾斜面26とが接する稜線からなる接続部を第4接続部R4と称し、接地面14bと底部傾斜面26とが接する稜線からなる接続部を下部接続部RBと称すると、第3接続部R3と第4接続部R4と下部接続部RBとに囲まれた底部傾斜面26は、第3接続部R3および第4接続部R4のそれぞれが上方に僅かに膨出した略二等辺三角形状の形状をなしている。すなわち、第3接続部R3と第4接続部R4との短軸L2方向における間隔D2は、下方から上方に向かって漸次短くなる形状を有している。また、底部傾斜面26は、肩部傾斜面22よりも小さい面積に形成されている。
【0030】
正面壁部18および背面壁部19のそれぞれは、底部傾斜面26の上端と略同じ高さにおいて、外周面18a,19aに沿って長軸L1方向に延びる下側折曲溝部28を有している。下側折曲溝部28は、各壁部18,19の外周面側から内周面側に凹んだ溝部によって構成されている。下側折曲溝部28の高さ方向の位置は、底部傾斜面26の上端の高さ方向の位置と完全に一致していなくてもよく、多少ずれていてもよい。
【0031】
図4に示すように、底部14は、接地面14bを有する接地部30と、接地部30の内側に凹んで形成された底上げ部31と、長軸方向に延びるリブ32と、を有している。
【0032】
本実施形態の場合、肩部12の平均肉厚は、胴部13の平均肉厚よりも厚い。具体的な数値の一例として、胴部13の肉厚を0.2mm以上、0.4mm以下とし、肩部12の肉厚を0.4mmよりも厚く、0.7mm以下とした上で、胴部13の平均肉厚に対する肩部12の平均肉厚の比率を150%以上、300%以下とすることが望ましい。胴部13の肉厚を上記の範囲とすることにより、容器の減容が容易になり、肩部12の肉厚を上記の範囲とすることにより、適切な剛性が得られる。また、胴部13の平均肉厚に対する肩部12の平均肉厚の比率を上記の範囲とすることにより、胴部13と肩部12との肉厚差を適切に保ち、安定した成形性が得られる。また、底部14の肉厚は、胴部13と同様、0.2mm以上、0.4mm以下とする。より具体的には、本実施形態では、肩部12の肉厚は0.42mmであり、胴部13の肉厚は0.23mmであり、底部14の肉厚は0.27mmである。胴部13の平均肉厚に対する肩部12の平均肉厚の比率は、182.6%である。
【0033】
上記構成の薄肉容器10は扁平形状の胴部を有しているため、薄肉容器10を使用する際には、正面壁部18と背面壁部19とを短軸L2方向、すなわち、胴部13の前後方向から挟み込み、胴部13を厚さ方向に押し潰すことによって、口部11の上端開口11bから内容物を吐出させることができる。
【0034】
従来の薄肉容器において、本実施形態のような肩部傾斜面および底部傾斜面が設けられていなかった場合、廃棄時に薄肉容器を押し潰そうとしても、薄く整った形状に押し潰すことが難しく、押し潰し具合によって様々な形状に潰れるおそれがある。また、正面壁部と背面壁部とが略平坦になるように押し潰すことが難しく、内容物の残量が多くなるおそれがある。
【0035】
これに対し、本実施形態の薄肉容器10において、肩部12は、長軸L1方向に沿って軸線Cから離れるに従って下方に延びる肩部傾斜面22を有するとともに、長軸L1方向から見て、正面壁部18の外周面18aと肩部傾斜面22とが接する第1接続部R1と、背面壁部19の外周面19aと肩部傾斜面22とが接する第2接続部R2と、の短軸L2方向における間隔D1が上方から下方に向かって漸次短くなる形状を有している。このような構成を有する肩部12は、胴部13の厚さ方向の潰れを阻害しない一方、肩部12自体は胴部13の厚さ方向の潰れに対する抗力を発現するため、短軸L2方向への大きな変形が生じることはない。
【0036】
すなわち、胴部13に対して短軸L2方向に外力を加えることにより、図5に示すように、正面壁部18と背面壁部19とを大きく変形させ、胴部13の高さ方向の中央部から肩部12に近い上部にわたって、胴部13を略平坦になるように押し潰すことができる。さらに、本実施形態の場合、底部14も、肩部12と同様、長軸L1方向に沿って軸線Cから離れるに従って上方に延びる底部傾斜面26を有し、底部傾斜面26は、第3接続部R3と第4接続部R4との短軸L2方向における間隔D2が下方から上方に向かって漸次短くなる形状を有している。そのため、底部14についても、肩部12と同様の作用を奏し、胴部13の高さ方向の中央部から底部14に近い下部にわたって、胴部13を略平坦になるように押し潰すことができる。
【0037】
このように、本実施形態においては、胴部13の大部分を上部から下部にわたって略平坦に押し潰すことができる。そのため、薄い形状に安定して押し潰しやすい薄肉容器10を提供することができる。これにより、使用後の薄肉容器10を効率良くコンパクトに廃棄することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、肩部12がある程度の剛性を有するため、内容物の残量が少なくなった際に、例えば肩部12を人差し指で支持し、胴部13を親指で肩部12側に押し込んで、内容物を吐出させる操作が行いやすくなる。特に本実施形態の場合、短軸L2方向から見て、肩部傾斜面22の中央部が下方に凸形状に湾曲しているため、薄肉容器10を減容して内容物を減らす際に、下方に湾曲した部分に人差し指を当てて支持しやすくすることができる。これにより、内容物の残量を減らし、内容物を十分に使い切ることができる。また、肩部12の剛性が向上することにより、例えば薄肉容器10を倒立状態として内容物を吐出させたい場合等に、肩部12によって薄肉容器10を支持することも可能になる。
【0039】
ここで、胴部13を平坦に押し潰しやすい各部の寸法の関係について、以下説明する。
図3に示すように、胴部13を押し潰した状態における軸線Cから屈曲部20の頂点Pまでの寸法をf1とし、胴部13を押し潰した状態における胴部13の周長をf2とし、正面壁部18および背面壁部19を平面視した際の各壁部18,19と短軸L2とが交差した点Q(各壁部18,19の中心)から屈曲部20の頂点Pまでの円弧長をc1とし、軸線Cから口部11の外周面までの寸法をa1とし、口部11の外周面から胴部13を押し潰した状態における屈曲部20の頂点Pまでの寸法をa2とし、図2に示すように、第1接続部R1および第2接続部R2の長さをa3としたとき、下記の(1)式および(2)式を満足すれば、図5に示すように、長軸L1方向から見て、胴部13の上部を平坦に潰すことができる。
f1=c1=a1+a2 …(1)
f2=a3 …(2)
【0040】
底部14については、図4に示すように、軸線Cから長軸L1方向における接地面14bの端部までの寸法をb1とし、長軸L1方向における接地面14bの端部から胴部13を押し潰した状態における屈曲部20の頂点までの寸法をb2とし、正面壁部18および背面壁部19を平面視した際の各壁部18,19と短軸L2とが交差した点Q(各壁部18,19の中心)から接地面14bの端部までの円弧長をb4とし、図2に示すように、第3接続部R3および第4接続部R4の長さをb3としたとき、下記の(3)式および(4)式を満足すれば、図5に示すように、長軸L1方向から見て、胴部13の下部を平坦に潰すことができる。
f1=c1=b1+b2 …(3)
f2=b3+b4 …(4)
【0041】
本実施形態においては、正面壁部18および背面壁部19のそれぞれに、肩部傾斜面22の下端と略同じ高さにおいて外周面18a,19aに沿って長軸L1方向に延びる上側折曲溝部24が設けられているため、図5に示すように、上側折曲溝部24の形成位置で胴部13を安定して折り曲げることができる。さらに、正面壁部18および背面壁部19のそれぞれに、底部傾斜面26の上端と略同じ高さにおいて外周面18a,19aに沿って長軸L1方向に延びる下側折曲溝部28が設けられているため、下側折曲溝部28の形成位置で胴部13を安定して折り曲げることができる。これにより、薄肉容器10を押し潰した際の形状を常に略一定に保つことができる。
【0042】
また、本実施形態においては、胴部13の平均肉厚に対する肩部12の平均肉厚の比率が、150%以上、300%以下であるため、肩部12の肉厚が胴部13の肉厚と等しい場合に比べて、肩部12の剛性がより向上し、胴部13の潰れに対する肩部12の抗力をより大きくできる。そのため、薄肉容器10を押し潰した際の形状をより安定させることができる。また、肩部12の剛性がより向上することにより、内容物の残量が少なくなった際の胴部13を押し込む上記の操作がさらに行いやすくなる。これにより、内容物の残量を減らし、内容物を十分に使い切ることができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態では、スクイズによって内容物を吐出させる薄肉容器10の例を挙げたが、本発明は、この種の容器に限らず、ポンプ等のディスペンサー等によって内容物を吐出させる容器に適用してもよい。口部にポンプが配設され、例えば容器を倒立状態で吐出する形態の容器に適用してもよい。この種のポンプを備えた容器の場合には、残量を減らすために最後はポンプを取り外し、容器を減容しながら内容物を吐出させることもできる。
【0044】
また、本発明の容器を倒立状態で支持して使用してもよい。倒立状態で支持して使用する場合、例えば平行に延びる2本の棒状支持部によって口部を棒状支持部から下方に突出させた状態で支持する形態を採用してもよいし、親指と人差し指との間の部分(第1指間みずかき)で支持する形態を採用してもよい。容器を親指と人差し指との間で支持する場合、例えばポンプを使用しながら内容物を吐出する構成としてもよい。ポンプとしては、簡易的なポンプを使用することもできる。本発明の場合、肩部12の剛性が向上することにより、上記のように容器を倒立状態で使用したい場合に、肩部によって容器をより安定して支持することが可能になる。
【0045】
例えば上記実施形態では、肩部傾斜面22、底部傾斜面26、上側折曲溝部24、および下側折曲溝部28を全て備えた薄肉容器10を例示したが、これらの構成要素のうち、底部傾斜面26、上側折曲溝部24、および下側折曲溝部28は必ずしも設けられていなくてもよい。また、上側折曲溝部24および下側折曲溝部28は、上記実施形態のように、必ずしも連続した1本の溝部で構成されていなくてもよく、途中で途切れた複数の溝部または複数の凹部で構成されていてもよい。
【0046】
その他、容器の各種構成要素の寸法、肉厚、形状、配置等については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 薄肉容器
11 口部
12 肩部
13 胴部
14 底部
18 正面壁部
18a 外周面
19 背面壁部
19a 外周面
20 屈曲部
22 肩部傾斜面
24 上側折曲溝部
26 底部傾斜面
28 下側折曲溝部
C 軸線
D1 間隔
D2 間隔
L1 長軸
L2 短軸
R1 第1稜線
R2 第2稜線
R3 第3稜線
R4 第4稜線
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5