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特許7394692スラリー濃度取得装置、スラリー濃度取得方法および排煙脱硫設備の改造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】スラリー濃度取得装置、スラリー濃度取得方法および排煙脱硫設備の改造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20231201BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20231201BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20231201BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B01D53/50 245
B01D53/18 150
B01D53/78 ZAB
C01F11/46 102H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020070713
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021166955
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】筑網 圭治
(72)【発明者】
【氏名】太田 茂一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弾
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-066946(JP,A)
【文献】特開2000-346777(JP,A)
【文献】特開平04-359133(JP,A)
【文献】特開昭63-156522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
G01N 9/26
C01F 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するように構成されたスラリー濃度取得装置であって、
前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力又は大気圧を基準圧力としたときにおいて、前記排煙脱硫設備の内部に設けられた貯留部に貯留された前記吸収液の第1の高さ位置における前記基準圧力を基準とする第1圧力を取得するように構成された第1の圧力取得部と、
前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力又は大気圧を基準圧力としたときにおいて、前記第1の高さ位置とは異なる前記吸収液の第2の高さ位置における前記基準圧力を基準とする第2圧力を取得するように構成された第2の圧力取得部と、
前記第1の圧力取得部が取得した前記第1圧力と、前記第2の圧力取得部が取得した前記第2圧力とに基づいて、前記吸収液のスラリー濃度を推定するように構成されたスラリー濃度推定部と、を備える、
スラリー濃度取得装置。
【請求項2】
前記第1圧力および前記第2圧力は、前記排煙脱硫設備内の前記排ガスの圧力を前記基準圧力とする、
請求項1に記載のスラリー濃度取得装置。
【請求項3】
前記排煙脱硫設備は、
前記貯留部を含む内部空間を内部に画定する吸収塔本体と、
前記内部空間に前記排ガスを導入するための排ガス導入流路を内部に画定する排ガス導入部と、を含み、
前記第1圧力および前記第2圧力は、前記排ガス導入流路内の排ガスの圧力を前記基準圧力とする、
請求項2に記載のスラリー濃度取得装置。
【請求項4】
前記第1の圧力取得部および前記第2の圧力取得部の夫々に、前記排煙脱硫設備内の前記排ガスの圧力を伝達する少なくとも一つの導圧管を備える、
請求項2又は3に記載のスラリー濃度取得装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの導圧管は、前記排煙脱硫設備内の前記排ガスの圧力を導入する一方側から他方側に向かう途中において二つに分岐し、分岐した二つのうちの一方が前記第1の圧力取得部に接続され、前記分岐した二つのうちの他方が前記第2の圧力取得部に接続された、
請求項4に記載のスラリー濃度取得装置。
【請求項6】
排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するためのスラリー濃度取得方法であって、
前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力又は大気圧を基準圧力としたときにおいて、前記排煙脱硫設備の内部に設けられた貯留部に貯留された前記吸収液の第1の高さ位置における前記基準圧力を基準とする第1圧力を取得する第1圧力取得ステップと、
前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力又は大気圧を基準圧力としたときにおいて、前記第1の高さ位置とは異なる前記吸収液の第2の高さ位置における前記基準圧力を基準とする第2圧力を取得する第2圧力取得ステップと、
前記第1圧力取得ステップで取得した前記第1圧力と、前記第2圧力取得ステップで取得した前記第2圧力とに基づいて、前記吸収液のスラリー濃度を推定するスラリー濃度推定ステップと、を備える、
スラリー濃度取得方法。
【請求項7】
排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液の液面の高さ位置を取得するように構成された第1の差圧式レベル計が設置された前記排煙脱硫設備の改造方法であって、
前記第1の差圧式レベル計は、前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力又は大気圧を基準圧力としたときにおいて、前記排煙脱硫設備の内部に設けられた貯留部に貯留された前記吸収液の第1の高さ位置における前記基準圧力を基準とする第1圧力を取得するように構成され、
前記排煙脱硫設備の改造方法は、
前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力又は大気圧を基準圧力としたときにおいて、前記第1の高さ位置とは異なる前記吸収液の第2の高さ位置における前記基準圧力を基準とする第2圧力を取得するように構成された第2の差圧式レベル計を、前記排煙脱硫設備に新たに設置する差圧式レベル計追設ステップを備える、
排煙脱硫設備の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排煙脱硫設備の貯留部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するためのスラリー濃度取得装置、スラリー濃度取得方法および排煙脱硫設備の改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばボイラなどの燃焼設備から排出される排ガスには、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染物質が含まれるので、大気放出前に、排煙脱硫設備において排ガス中から硫黄酸化物が除去される。排煙脱硫設備としては、石灰石膏法を用いた湿式の排煙脱硫設備が広く知られている。湿式の排煙脱硫設備では、排ガスと吸収液(石灰石スラリー)とを接触させて、排ガス中の硫黄酸化物(例えば、亜硫酸ガス)を吸収液に吸収させることで、排ガス中から硫黄酸化物を除去している。
【0003】
吸収液に吸収された硫黄酸化物は、吸収液中のカルシウムと反応して亜硫酸カルシウムとなり、該亜硫酸カルシウムが吸収液中に供給される空気により酸化し、石膏となる。湿式の排煙脱硫設備では、石膏スラリー(石膏を含む吸収液)が副生される。石膏スラリーは、排煙脱硫設備から抜き出された後に固液分離機により脱水されて石膏となる。石膏の品質を確保するために、排煙脱硫設備内の吸収液のスラリー濃度を一定の濃度に保つ制御が行われている。また、排煙脱硫設備内の吸収液のスラリー濃度が高くなり過ぎると、その分だけ吸収液の比重が増すので、排煙脱硫設備の耐荷重強度を超える虞がある。このため、排煙脱硫設備の運転指標として吸収液のスラリー濃度が採用されており、排煙脱硫設備内の吸収液のスラリー濃度の過度な上昇が抑制されている。
【0004】
排煙脱硫設備では、しばしば吸収液が発泡することがある。例えば、排煙脱硫設備内の吸収液を貯留する貯留部に貯留された吸収液は、排ガスと接触し滞留部に落下した際に排ガスを巻き込み、気泡が発生する。また、貯留部に貯留された吸収液は、排ガスから捕集されて吸収液中に分散している微粒ばいじんに含まれる成分(未燃カーボン、有機性化合物等)や吸収剤(石灰石)、補給水(工水等)に含まれる有機性化合物等の作用により、吸収液の粘性が高くなることで発生した気泡の表面張力が高くなり破泡しにくくなることがある。このため、吸収塔滞留部に気泡が滞留することとなる。また、貯留部に貯留された吸収液は、吸収液に供給される酸化用の空気により、気泡が生じる。このため、スラリー濃度計の計測部に空気が巻き込まれる虞がある。
【0005】
吸収塔循環ポンプの吐出配管や吸収液抜き出しポンプの吐出配管において、吸収液のスラリー濃度を計測する。吸収塔循環ポンプの吐出配管は、排煙脱硫設備から抜き出した吸収液を排煙脱硫設備内の排ガスに噴霧する噴霧装置に送るための吸収塔循環配管において、吸収塔循環ポンプよりも下流側に接続される配管である。また、吸収液抜き出しポンプの吐出配管は、排煙脱硫設備から抜き出した吸収液を上記固液分離機に送るための吸収液抜き出し配管において、吸収液抜き出しポンプよりも下流側に接続される配管である。これらの配管にスラリー濃度計が設けられていた。
【0006】
スラリー濃度計には、コリオリ式のスラリー濃度計と、差圧式のスラリー濃度計があるが、コリオリ式のスラリー濃度計は、その計測部に微細な空気を巻き込む環境下では、スラリー濃度の計測において誤差が大きく、制御に用いることが困難となる。このため、吸収液のスラリー濃度の測定には、巻き込まれた微細空気の影響が小さい差圧式のスラリー濃度計が採用されていた。
【0007】
特許文献1に記載のスラリーの密度の測定方法は、被計測流体である吸収液をタンクから抜き出して水平部および垂直部からなる配管中を流通させ、上記水平部における一定間隔間の差圧と、上記垂直部における上記一定間隔間の差圧と、を検出している。そして、水平部における差圧と垂直部における差圧との差を、上記一定間隔の長さで除することにより、吸収液の密度を算出している。吸収液のスラリー濃度は、吸収液のスラリー密度との間に相関関係があるため、算出した吸収液の密度から求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭61-66946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、吸収塔循環ポンプは、吸収液抜き出しポンプに比べて揚程が低いので、スラリー濃度計の計測部の手前において圧力を下げる手間がかからない。しかしながら、吸収塔循環ポンプは、例えば、SO濃度や発電出力(燃焼設備から排出される排ガス量)などにより表されるプラントの負荷に応じて、その運転台数を変化させる台数制御が行われることがある。台数が増減すると、吸収塔循環ポンプの吐出配管内を流れる吸収液の流速が増減するため、スラリー濃度計が動圧の影響を受けてしまい、正確なスラリー濃度を計測できない虞があった。また、排煙脱硫設備の運転指標としては、排煙脱硫設備から吸収液を抜き出した配管内の吸収液のスラリー濃度よりも、排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度の方が実情に即しているので好ましい。
【0010】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を精度良く取得できるスラリー濃度取得装置、スラリー濃度測定方法、および排煙脱硫設備の改造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示にかかるスラリー濃度取得装置は、
排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するように構成されたスラリー濃度取得装置であって、
前記排煙脱硫設備内の圧力又は大気圧を基準圧力としたときに、前記排煙脱硫設備の内部に設けられた貯留部に貯留された前記吸収液の、互いに異なる高さ位置における前記基準圧力を基準とする圧力を取得するように構成された一対の圧力取得部と、
前記一対の圧力取得部が取得した前記圧力に基づいて、前記吸収液のスラリー濃度を推定するように構成されたスラリー濃度推定部と、を備える。
【0012】
本開示にかかるスラリー濃度取得方法は、
排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するためのスラリー濃度取得方法であって、
前記排煙脱硫設備内の圧力又は大気圧を基準圧力としたときに、前記排煙脱硫設備の内部に設けられた貯留部に貯留された前記吸収液の、互いに異なる高さ位置における前記基準圧力を基準とする圧力を取得する圧力取得ステップと、
前記圧力取得ステップで取得された前記圧力に基づいて、前記吸収液のスラリー濃度を推定するスラリー濃度推定ステップと、を備える。
【0013】
本開示にかかる排煙脱硫設備の改造方法は、
排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液の液面の高さ位置を取得するように構成された第1のレベル計が設置された前記排煙脱硫設備の改造方法であって、
前記排煙脱硫設備内の圧力又は大気圧を基準圧力としたときに、前記第1のレベル計は、前記排煙脱硫設備の内部に設けられた貯留部に貯留された前記吸収液の所定の高さ位置における前記基準圧力を基準とする圧力を取得するように構成され、
前記排煙脱硫設備の改造方法は、
前記貯留部に貯留された前記吸収液の前記所定の高さ位置とは異なる高さ位置における前記基準圧力を基準とする圧力を取得するように構成された第2のレベル計を、前記排煙脱硫設備に新たに設置するレベル計新設ステップを備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、排煙脱硫設備の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を精度良く取得できるスラリー濃度取得装置、スラリー濃度測定方法、および排煙脱硫設備の改造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態にかかるスラリー濃度取得装置が搭載される排煙脱硫設備の構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
図2】本開示の一実施形態にかかるスラリー濃度取得装置が搭載された排煙脱硫設備の概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態における洗浄装置を説明するための排煙脱硫設備の概略断面図である。
図4】本開示の一実施形態にかかるスラリー濃度測定方法の一例を示すフロー図である。
図5】本開示の一実施形態にかかる排煙脱硫設備の改造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0017】
(排煙脱硫設備、吸収塔)
図1は、本開示の一実施形態にかかるスラリー濃度取得装置が搭載される排煙脱硫設備の構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
図1に示されるように、排煙脱硫設備1は、例えばエンジンやボイラなどの燃焼設備11から排出された排ガスを排出するための排ガス排出ライン12に設けられる。湿式の排煙脱硫設備1は、燃焼設備11から排出される排ガスと吸収液とを接触させて、排ガス中の硫黄酸化物(例えば、亜硫酸ガス)を吸収液に吸収させることで、排ガス中から硫黄酸化物を除去するように構成された吸収塔1Aを含む。
【0018】
石灰石膏法を用いた吸収塔1Aでは、例えば、石灰石を溶解(分散)させた石灰石スラリーなどのアルカリ成分を含むスラリーを上記吸収液とし、石膏スラリー(石膏を含む吸収液)が副生される。なお、スラリーは、厳密には液体ではないが、本明細書では便宜的に液体として扱うものとする。
【0019】
吸収塔1Aは、燃焼設備11から排出された排ガスが導入される内部空間21を内部に画定するように構成された吸収塔本体2と、内部空間21に排ガスを導入するための排ガス導入流路31を内部に画定する排ガス導入部3と、内部空間21から排ガスを排出するための排ガス排出流路41を内部に画定する排ガス排出部4と、を含む。排ガス導入流路31および排ガス排出流路41の夫々は、内部空間21と連通しており、内部空間21との間で排ガスが流通可能となっている。
【0020】
内部空間21は、排ガスと吸収液とを気液接触させるための気液接触部21Aと、気液接触部21Aよりも下方に位置するとともに、気液接触部21Aにおいて排ガス中の硫黄酸化物(例えば、亜硫酸ガス)を吸収した吸収液が貯留される貯留部21Bと、を含む。
【0021】
燃焼設備11から排出された排ガスは、排ガス導入流路31を通じて内部空間21に導かれる。内部空間21に導かれた排ガスは、内部空間21を流れて気液接触部21Aを通過する際に吸収液により洗浄され、排ガス中の硫黄酸化物などが除去される。気液接触部21Aにおいて洗浄後の排ガスは、排ガス排出流路41を通じて吸収塔1Aの外部に排出される。吸収塔1Aの外部に排出された浄化ガスは、吸収塔1Aよりも排ガス排出ライン12における排ガスの流れ方向の下流側に設けられた煙突13から大気中に放出される。なお、図1に示されるように、排ガスから水分を除去するように構成されるミストエリミネータ22を、吸収塔1Aにおける気液接触部21Aよりも排ガスの流れ方向の下流側に設けてもよい。内部空間21におけるミストエリミネータ22よりも上流側を上流側内部空間21Cとし、内部空間21におけるミストエリミネータ22よりも下流側を下流側内部空間21Dとする。
【0022】
吸収塔1Aは、気液接触部21Aに配置される噴霧装置23をさらに含む。噴霧装置23は、気液接触部21Aを通過する排ガスに対して吸収液(石灰石スラリー)を噴霧するように構成されている。噴霧装置23から噴霧された吸収液は、排ガスに接触して排ガス中に含まれる硫黄酸化物(例えば、亜硫酸ガス)を吸収除去する。
【0023】
噴霧装置23は、排ガスの流れ方向に交差する方向である水平方向に沿って延在する噴霧管231と、噴霧管231に設けられた複数の噴霧ノズル232と、を含む。噴霧ノズル232は、吸収液を噴霧する噴霧口233を有する。なお、図示される実施形態では、噴霧口233は、鉛直方向における上方、すなわち、排ガスの流れ方向における下流側に向かって、吸収液を噴霧しているが、幾つかの実施形態では、吸収液は、鉛直方向における下方に向かって噴霧される。
【0024】
噴霧口233から噴霧された吸収液は、気液接触部21Aにおいて排ガスに接触して、排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収除去した後に、貯留部21Bに落下して貯留される。貯留部21Bに貯留される吸収液には、排ガスから吸収した硫黄酸化物により生じた亜硫酸塩や、亜硫酸塩が酸化することで生成される石膏(硫酸カルシウム)が含まれることがある。
【0025】
吸収塔1Aは、吸収塔1Aの貯留部21Bに石灰石スラリー(吸収液)を供給するように構成された石灰石スラリー供給ライン14をさらに含む。図示される実施形態では、石灰石スラリー供給ライン14は、石灰石スラリー供給配管141と、石灰石スラリー供給配管141に設けられる弁142と、を含む。吸収塔本体2には、貯留部21Bよりも上方の壁面201に、石灰石スラリーを導入するための石灰石スラリー供給口24が開口している。石灰石スラリー供給配管141は、石灰石スラリーを貯留するように構成された石灰石スラリー貯留槽15に一端側が接続され、他端側が石灰石スラリー供給口24に接続されている。弁142は、開閉機構部を有し、該開閉機構部を開閉させることで、石灰石スラリー供給配管141の一端側から他端側に流れる石灰石スラリーの量を調整可能に構成されている。弁142を開くことで、石灰石スラリーが石灰石スラリー貯留槽15から抜き出されて、石灰石スラリー供給配管141を通じて、吸収塔1Aの貯留部21Bに送られる。
【0026】
吸収塔1Aは、貯留部21Bから抜き出された吸収液を噴霧装置23に送るように構成された吸収塔循環配管16をさらに含む。図示される実施形態では、吸収塔循環配管16に吸収塔循環ポンプ161が設けられている。吸収塔本体2には、貯留部21Bに貯留された吸収液の設計上の下限水位LWよりも下方の壁面202に、貯留部21Bに貯留される吸収液を外部に抜き出すための吸収液抜出口25が開口している。吸収塔循環配管16は、吸収液抜出口25に一端側が接続され、他端側が噴霧管231に接続されており、吸収塔循環ポンプ161は、吸収液を噴霧管231に送るように構成されている。
【0027】
吸収塔1Aは、貯留部21Bに貯留される吸収液に酸化用気体(例えば、空気)を散気するように構成された散気装置26をさらに含む。図示される実施形態では、散気装置26は、散気管261と、散気管261に設けられた散気用ポンプ262と、を含む。吸収塔本体2には、貯留部21Bに貯留された吸収液の設計上の下限水位よりも下方の壁面203に、貯留部21Bに貯留される吸収液に酸化用気体(例えば、空気)を散気するための散気口27が開口している。散気管261は、一端側が大気中に開放されており、他端側が散気口27に接続されている。散気用ポンプ262は、散気管261の一端側から他端側に酸化用気体を送るように構成されている。散気用ポンプ262を駆動させることで、大気中の空気(酸化用空気)が散気管261の一端側から散気管261内に導入され、散気管261の他端側に形成された散気供給口263から貯留部21Bに貯留される吸収液に散気される。これにより、貯留部21Bに貯留される吸収液中の亜硫酸塩を酸化させ、石膏を生じさせる。
【0028】
図1に示されるように、吸収塔本体2における排ガス導入部3が接続された側(図1中左側)を一方側とし、吸収塔本体2における排ガス導入部3が接続された側とは反対側(図中右側)を他方側とする。図示される実施形態では、上述した壁面203は、一方側に設けられ、上述した壁面201、202は、他方側に設けられている。
【0029】
吸収塔1Aは、噴霧装置23、貯留部21Bおよび吸収塔循環配管16の順に吸収液を循環させている。貯留部21Bに貯留される吸収液は、吸収塔1Aの内部空間21に流入した排ガス中の硫黄酸化物を吸収し中和しつつ循環している。吸収液による排ガス中の硫黄酸化物の吸収除去(pHが高い方が効率が良好)と、吸収液中の亜硫酸塩の酸化(pHが低い方が効率が良好)とを両立させるべく、吸収液のpHが5~7の範囲となるように、適宜、石灰石スラリー供給ライン14を介した吸収液中への石灰石スラリーの供給が行われる。なお、吸収塔1Aは、石灰石スラリー供給ライン14の代わりに、吸収液のpHを所定値に調整するための脱硫原料としての石灰石を、貯留部21Bに供給するように構成された石灰石供給ラインを含むようにしてもよい。
【0030】
なお、吸収塔1Aは、例えば工業用水などの水を貯留部21Bに供給するように構成された給水ラインを含むようにしてもよく、適宜、給水ラインを通じた給水が行われてもよい。
【0031】
吸収塔1Aは、貯留部21Bから抜き出された吸収液を固液分離装置(例えば、石膏脱水器)17に送るように構成された吸収液抜き出し配管18をさらに含む。図示される実施形態では、吸収液抜き出し配管18に吸収液抜き出しポンプ181が設けられている。吸収塔本体2には、貯留部21Bに貯留された吸収液の設計上の下限水位LWよりも下方の壁面202に、貯留部21Bに貯留される吸収液を外部に抜き出すための吸収液抜出口28が開口している。吸収液抜き出し配管18は、吸収液抜出口28に一端側が接続され、他端側が固液分離装置17に接続されている。吸収液抜き出しポンプ181は、吸収液を固液分離装置17に送るように構成されている。
【0032】
貯留部21Bに貯留される吸収液は、吸収塔1Aにおける排ガスの洗浄に繰り返し使用されるため、徐々に貯留部21Bに石膏が蓄積される。石膏スラリー(石膏を含む吸収液)を吸収液抜き出し配管18を通じて、固液分離装置17に送ることで、吸収液の循環系統(噴霧装置23、貯留部21B、吸収塔循環配管16)から石膏を抜き出している。吸収塔1Aは、貯留部21Bの石膏スラリー濃度を例えば15~30wt%と一定になるように、吸収液抜き出しポンプ181の開度調整などによって、吸収液の循環系統からの抜き出し量を調整してもよい。
【0033】
固液分離装置17は、石膏スラリー(石膏を含む吸収液)を脱水し、石膏とろ液に分離するように構成されている。この固液分離装置17により、吸収塔1Aから送られた石膏スラリーから石膏が回収される。
【0034】
(スラリー濃度取得装置)
図2は、本開示の一実施形態にかかるスラリー濃度取得装置が搭載された排煙脱硫設備の概略断面図である。
なお、図2では、吸収液抜出口25、吸収塔循環配管16および吸収塔循環ポンプ161ならびに吸収液抜出口28、吸収液抜き出し配管18および吸収液抜き出しポンプ181は、図示が省略されている。
幾つかの実施形態にかかるスラリー濃度取得装置5は、図2に示されるように、排煙脱硫設備1(図示例では吸収塔1A)の内部に設けられた貯留部21Bに貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するように構成されたものである。スラリー濃度取得装置5は、図2に示されるように、第1の圧力取得部6と、第2の圧力取得部7と、スラリー濃度推定部8と、を備える。
【0035】
第1の圧力取得部6は、吸収塔1A内の排ガスの圧力PE又は大気圧PAを基準圧力P0としたときにおいて、貯留部21Bに貯留された吸収液の第1の高さ位置HP1における上記基準圧力P0を基準とする圧力である第1圧力P1を取得するように構成されている。第2の圧力取得部7は、貯留部21Bに貯留された吸収液の第1の高さ位置HP1とは異なる吸収塔の第2の高さ位置HP2における上記基準圧力P0を基準とする圧力である第2圧力P2を取得するように構成されている。図示例では、第2の高さ位置HP2は、第1の高さ位置HP1よりも下方に位置している。
【0036】
図示される実施形態では、第1の圧力取得部6は、上記第1圧力P1として、吸収液の第1の高さ位置HP1における圧力(液圧)と基準圧力P0との圧力差を検出するように構成された圧力差検出体61を少なくとも含む。また、第2の圧力取得部7は、上記第2圧力P2として、吸収液の第2の高さ位置HP2における圧力(液圧)と基準圧力P0との圧力差を検出するように構成された圧力差検出体71を少なくとも含む。この場合には、第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7における圧力検出方法に検出能に優れる差圧式を採用することで、圧力値(第1圧力P1、第2圧力P2)を精度良く取得できる。
【0037】
図示される実施形態では、第1の圧力取得部6は、図2に示されるように、吸収液の第1の高さ位置HP1における圧力を受けるように構成された受圧部(例えば、ダイアフラムシール)62と、受圧部62に吸収液を導くための内部空間64を画定する筒状体63と、受圧部62が受けた圧力を圧力差検出体61に伝達する液体側導圧管65と、をさらに含む。
【0038】
筒状体63は、水平方向に沿って延在し、一方側が吸収塔本体2の外壁面205に取り付けられている。筒状体63の他方側には、筒状体63の内部空間64に一面が面するように受圧部62が配置されている。受圧部62の上記一面とは反対側の面には、液体側導圧管65の一方側が接続されている。液体側導圧管65の他方側には、圧力差検出体61が接続されている。上記内部空間64は、吸収塔本体2の第1の高さ位置HP1における壁面202に形成された貫通孔206を通じて、貯留部21Bと連通しており、貯留部21B内の吸収液が流通するようになっている。受圧部62が吸収液から受けた圧力は、液体側導圧管65を介して、圧力差検出体71に伝達される。また、圧力差検出体61には、吸収塔1A内の排ガスの圧力PE又は大気圧PAの圧力が伝達される。
【0039】
図示される実施形態では、第2の圧力取得部7は、図2に示されるように、吸収液の第2の高さ位置HP2における圧力を受けるように構成された受圧部(例えば、ダイアフラムシール)72と、受圧部72に吸収液を導くための内部空間74を画定する筒状体73と、受圧部72が受けた圧力を圧力差検出体71に伝達する液体側導圧管75と、をさらに含む。
【0040】
筒状体73は、水平方向に沿って延在し、一方側が吸収塔本体2の外壁面205に取り付けられている。筒状体73の他方側には、筒状体73の内部空間74に一面が面するように受圧部72が配置されている。受圧部72の上記一面とは反対側の面には、液体側導圧管75の一方側が接続されている。液体側導圧管75の他方側には、圧力差検出体71が接続されている。上記内部空間74は、吸収塔本体2の第2の高さ位置HP2における壁面202に形成された貫通孔207を通じて、貯留部21Bと連通しており、貯留部21B内の吸収液が流通するようになっている。受圧部72が吸収液から受けた圧力は、液体側導圧管75を介して、圧力差検出体71に伝達される。また、圧力差検出体71には、吸収塔1A内の排ガスの圧力PE又は大気圧PAの圧力が伝達される。
【0041】
なお、他の幾つかの実施形態では、第1の圧力取得部6や第2の圧力取得部7は、吸収液の各々の高さ位置HP1、HP2における圧力(液圧)を検出するように構成された少なくとも一つの液体側圧力伝送器と、基準圧力P0を検出するように構成された少なくとも一つの気体側圧力伝送器と、液体側圧力伝送器および気体側圧力伝送器の検出結果から圧力差を算出する演算装置と、を含む構成にしてもよい。上述したように、吸収液の液圧と基準圧力P0との圧力差を直接検出する方が、液圧や基準圧力P0の測定結果から圧力差を算出するよりも、誤差をなくすことができるため、好ましい。
【0042】
スラリー濃度推定部8は、第1の圧力取得部6が取得した第1圧力P1と、第2の圧力取得部7が取得した第2圧力P2と、に基づいて、吸収液のスラリー濃度を推定するように構成されたものである。スラリー濃度推定部8は、図2に示されるように、データベース部81と、演算部82と、を備える。演算部82は、必要な情報をデータベース部81から取得するように構成されている。スラリー濃度推定部8は、第1の圧力取得部6から第1圧力P1を信号として有線又は無線の通信回線を通じて継続的に受信するように構成されている。また、スラリー濃度推定部8は、第2の圧力取得部7から第2圧力P2を信号として有線又は無線の通信回線を通じて継続的に受信するように構成されている。スラリー濃度推定部8が取得した第1圧力P1および第2圧力P2は、データベース部81に記憶される。
【0043】
スラリー濃度推定部8は、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置、I/Oインターフェース、通信インターフェースなどからなるマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。そして、例えば上記メモリの主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(例えばデータの演算など)することで、前述する演算部82を実現してもよい。
【0044】
図2に示されるような、吸収塔本体2の貯留部21Bを画定する底面204からの第1の高さ位置HP1の高さ、上記底面204からの第2の高さ位置HP2の高さ、および第1の高さ位置HP1と第2の高さ位置HP2との高さの差H12は、予め既知であり、データベース部81に記憶されている。
【0045】
貯留部21Bに貯留された吸収液の液面LSからの第1の高さ位置HP1の深さをH1、上記液面LSからの第2の高さ位置HP2の深さをH2とする。上記深さH2は、以下の関係を満たす。
H2=H1+H12・・・(E1)
【0046】
吸収液のスラリー密度をσ、重力加速度をgとしたときに、第1圧力P1や第2圧力P2は、以下のような、各々の圧力取得部の液面からの深さH1、H2および吸収液のスラリー密度σに比例する関係にある。
P1=σgH1+PC・・・(E2)
P2=σgH2+PC・・・(E3)
ここで、上記関係式E2およびE3におけるPCは、吸収塔1A内の排ガスの圧力PEと基準圧力P0との圧力差を補正するための補正値である。吸収塔1A内の排ガスの圧力PEを基準圧力P0とするときは、補正値PCをゼロとしもよい。大気圧PAを基準圧力P0としたときは、吸収塔1A内の排ガスの圧力PEと大気圧PAとの差圧を補正値PCとする。補正値PCは、予め設定された固定値であってもよいし、例えば、吸収塔1Aの運転状態に関する情報などに基づいて、スラリー濃度推定部8の演算部82により算出されてもよい。上記関係式E1~E3や上記固定値は、データベース部81に記憶されている。
【0047】
演算部82は、データベース部81に記憶された関係式E1~E3を参照し、第1圧力P1および第2圧力P2から、吸収液のスラリー密度σ、液面高さH1およびH2を算出する。吸収液のスラリー濃度は、吸収液のスラリー密度σとの間に相関関係があるので、データベース部81に記憶された吸収塔のスラリー濃度とスラリー密度σとの関係を示す情報を基に取得される。
【0048】
他の幾つかの実施形態では、スラリー濃度推定部8の演算部82は、データベース部81に記憶されている関連付け情報を基に、第1圧力P1および第2圧力P2から、吸収液のスラリー濃度を取得してもよい。関連付け情報は、第1圧力P1および第2圧力P2を入力情報とし、吸収液のスラリー濃度を出力情報として出力できる情報であればよく、入力情報と出力情報との対応関係を示すリストや表、マップ、関数、機械学習のモデルなどが含まれる。また、関連付け情報は、過去の実績値や実験値、数値解析結果などから求められる。なお、関連付け情報は、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧を入力情報としてもよく、また、吸収液のスラリー密度σを出力情報としてもよい。
【0049】
上述したように、幾つかの実施形態にかかるスラリー濃度取得装置5は、図2に示されるように、上述した第1の圧力取得部6と、上述した第2の圧力取得部7と、上述したスラリー濃度推定部8と、を少なくとも備える。
【0050】
上記の構成によれば、第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7により、吸収液の異なる二点の高さ位置HP1、HP2における圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)を取得できる。これらの圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)は、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEや大気圧PAを基準圧力P0にすることで、各高さ位置における圧力値(圧力の大きさ)を取得できる。例えば、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEを基準圧力P0とした場合には、第1圧力P1や第2圧力P2は、各々の高さ位置における吸収液の液圧を反映させたものとなる。また、大気圧PAを基準圧力P0とした場合には、第1圧力P1や第2圧力P2は、各々の高さ位置における吸収液の液圧に排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEを加えたものとなる。スラリー濃度推定部8は、各高さ位置における圧力値を取得することで、貯留部内の吸収液の圧力状態を具体的に把握できるため、吸収液のスラリー濃度を精度良く推定できる。
【0051】
また、上記の構成によれば、スラリー濃度取得装置5は、貯留部21Bに貯留された吸収液の密度などの性状を該吸収液から直接的に取得できるため、上記吸収液の性状を、排煙脱硫設備1の外部に抜き出した配管(例えば、吸収塔循環配管16や吸収液抜き出し配管18)から間接的に取得する場合に比べて、排煙脱硫設備1の内部に貯留された吸収液の実情に即したスラリー濃度を推定できる。
【0052】
幾つかの実施形態では、上述した第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7の夫々は、排煙脱硫設備1内の前記排ガスの圧力PEを基準圧力P0とするように構成された。上記の構成によれば、第1圧力P1および第2圧力P2は、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEを基準圧力P0とすることで、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEの影響を除外できる。これにより、第1圧力P1および第2圧力P2は、吸収液の各高さ位置(HP1、HP2)における液圧の実態を反映させたものとなるので、吸収液のスラリー濃度をより精度良く推定できる。
【0053】
幾つかの実施形態では、図2に示されるように、第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7の夫々に、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEを伝達する少なくとも一つの導圧管9を備える。図示される実施形態では、導圧管9の一方側91は、排煙脱硫設備1内の排ガスが流入可能に設けられ、導圧管9の他方側92には、第1の圧力取得部6や第2の圧力取得部7が接続されている。導圧管9を通じて、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEが第1の圧力取得部6や第2の圧力取得部7に伝達されている。
【0054】
上記の構成によれば、第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7の夫々は、導圧管9により伝達された排煙脱硫設備1内の前記排ガスの圧力PEを基準圧力P0とすることができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、図2に示されるように、上述した排煙脱硫設備1は、貯留部21Bを含む内部空間21を内部に画定する上述した吸収塔本体2と、内部空間21に排ガスを導入するための排ガス導入流路31を内部に画定する上述した排ガス導入部3と、を含む。上述した第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7の夫々は、排ガス導入流路31内の排ガスの圧力を基準圧力P0とするように構成された。
【0056】
図示される実施形態では、少なくとも一つの導圧管9は、上記一方側91が排ガス導入部3の天井面32に接続されている。図2に示される実施形態では、天井面32に形成された貫通孔35に導圧管9の一方側91が排ガス導入部3の外部から挿入されている。このため、一方側91に形成された開口911から、導圧管9の内部に排ガス導入流路31内の排ガスが流入するようになっている。なお、他の幾つかの実施形態では、導圧管9の一方側91は、排ガス導入部3の底面33や側面34に接続されていてもよい。排ガス導入部3は、燃焼処理により生じた排ガスを吸収塔本体2の内部空間21に案内するために、排ガスに含まれる煤塵が排ガス導入部3の底面33に堆積することがある。底面33に堆積した煤塵により導圧管9が詰まるのを抑制するために、導圧管9の一方側は、排ガス導入部3の天井面32や側面34に接続されることが好ましい。
【0057】
吸収塔本体2のミストエリミネータ22よりも上流側の内部空間(上流側内部空間21C)には、噴霧装置23により噴霧された吸収液のミストが充満している。このミスト化した吸収液により、第1の圧力取得部6や第2の圧力取得部7に排ガスの圧力を導入するための気体側導圧管が詰まり、第1の圧力取得部6や第2の圧力取得部7が正確な圧力を取得できなくなる虞があるため、上流側内部空間21Cを基準圧力P0とすることは好ましくはない。また、ミストエリミネータ22の目詰まりにより、吸収塔本体2のミストエリミネータ22よりも下流側の内部空間(下流側内部空間21D)と上流側内部空間21Cとの間に圧力差が生じる虞がある。このため、下流側内部空間21Dを基準圧力P0とすることも好ましくはない。上記の構成によれば、上流側内部空間21C内の圧力と同等の圧力である排ガス導入流路31内の圧力を基準圧力P0とすることで、第1の圧力取得部6や第2の圧力取得部7が長期間に亘り正確な圧力を取得できる。
【0058】
幾つかの実施形態では、図2に示されるように、上述した導圧管9は、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEを導入する一方側91から他方側92に向かう途中において二つに分岐し、二つのうちの一方92Aが第1の圧力取得部6(圧力差検出体61)に接続され、二つのうちの他方92Bが第2の圧力取得部7(圧力差検出体71)に接続された。
【0059】
上記の構成によれば、導圧管9の排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEを導入する一方側91を共有配管とすることで、導圧管9の他方側92に接続される第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7に伝達される上記圧力PEの差を小さくできる。この場合には、第1の圧力取得部6と第2の圧力取得部7とにおける基準圧力(P0、排ガスの圧力PE)の差を抑制することで、第1の圧力取得部6および第2の圧力取得部7が取得する圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)の精度を向上でき、ひいては吸収液のスラリー濃度を精度良く推定できる。
【0060】
図2に示される実施形態では、上述した第1の高さ位置HP1および上述した第2の高さ位置HP2の夫々は、貯留部21Bに貯留された吸収液の設計上の下限水位LWよりも下方、且つ貯留部21Bに沈殿する石膏の設計上の上限高さMHよりも上方に設定されている。この場合には、第1の高さ位置HP1および第2の高さ位置HP2の夫々は、吸収液の設計上の下限水位LWよりも下方、且つ石膏の設計上の上限高さMHよりも上方に設定されているので、貯留部21Bに貯留された吸収液の液位や貯留部21Bに沈殿する石膏の高さが変動しても、スラリー濃度取得装置5によりスラリー濃度を安定的に取得できる。
【0061】
図3は、本開示の一実施形態における洗浄装置を説明するための排煙脱硫設備の概略断面図である。
なお、図3では、吸収液抜出口25、吸収塔循環配管16および吸収塔循環ポンプ161ならびに吸収液抜出口28、吸収液抜き出し配管18および吸収液抜き出しポンプ181は、図示が省略されている。
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、吸収塔本体2の内部から第1の圧力取得部6の受圧部62に洗浄水を噴出可能な噴出ノズル94Aを有する洗浄装置93Aをさらに備える。噴出ノズル94Aは、ノズル開口95Aが形成された一方側に所定角度(例えば、120°以上)の先曲り形状部96Aを有する筒状体となっている。このため、吸収塔本体2の壁面202に形成された貫通孔208に吸収塔本体2の外部から噴出ノズル94Aの一方側が挿入された際に、ノズル開口95Aの軸線CL1を延長した仮想線VL1が受圧部62と交差している。
【0062】
洗浄装置93Aは、不図示の洗浄水貯留装置(例えば貯留タンク)から噴出ノズル94Aの他方側に洗浄水を供給する洗浄水供給ライン97Aをさらに備える。洗浄水供給ライン97Aを通じて、噴出ノズル94Aの他方側に供給された洗浄液は、ノズル開口95Aから受圧部62に向かって噴出され、受圧部62および内部空間64を洗浄する。上記の構成によれば、噴出ノズル94Aから受圧部62に洗浄水を噴出することで、受圧部62および内部空間64を洗浄することができるため、受圧部62の検出精度の低下を抑制できる。
【0063】
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、吸収塔本体2の内部から第2の圧力取得部7の受圧部72に洗浄水を噴出可能な噴出ノズル94Bを有する洗浄装置93Bをさらに備える。噴出ノズル94Bは、ノズル開口95Bが形成された一方側に所定角度(例えば、120°以上)の先曲り形状部96Bを有する筒状体となっている。このため、吸収塔本体2の壁面202に形成された貫通孔209に吸収塔本体2の外部から噴出ノズル94Bの一方側が挿入された際に、ノズル開口95Bの軸線CL2を延長した仮想線VL2が受圧部72と交差している。
【0064】
洗浄装置93Bは、不図示の洗浄水貯留装置(例えば貯留タンク)から噴出ノズル94Bの他方側に洗浄水を供給する洗浄水供給ライン97Bをさらに備える。洗浄水供給ライン97Bを通じて、噴出ノズル94Bの他方側に供給された洗浄液は、ノズル開口95Bから受圧部62に向かって噴出され、受圧部62および内部空間64を洗浄する。上記の構成によれば、噴出ノズル94Bから受圧部62に洗浄水を噴出することで、受圧部62および内部空間64を洗浄することができるため、受圧部62の検出精度の低下を抑制できる。
【0065】
噴出ノズル94Aおよび噴出ノズル94Bの夫々は、その他方側において軸線に交差する方向に沿って延在する鍔部98を含んでいてもよい。鍔部98の一方側の面を吸収塔本体2の外壁面205に当接させて不図示の締結手段(例えば、ボルト締結)などにより固定してもよい。つまり、噴出ノズル94Aおよび噴出ノズル94Bの夫々は、吸収塔本体2に着脱可能に構成されている。この場合には、受圧部62や受圧部72の洗浄を行う際に噴出ノズル94Aや噴出ノズル94Bを吸収塔本体2に装着すればよい。
【0066】
図4は、本開示の一実施形態にかかるスラリー濃度測定方法の一例を示すフロー図である。
幾つかの実施形態にかかるスラリー濃度取得方法100は、図4に示されるように、排煙脱硫設備1の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するための方法である。スラリー濃度取得方法100は、上述した第1圧力P1を取得する第1圧力取得ステップS101と、上述した第2圧力P2を取得する第2圧力取得ステップS102と、第1圧力取得ステップS101で取得した第1圧力P1と、第2圧力取得ステップS102で取得した第2圧力P2とに基づいて、吸収液のスラリー濃度を推定するスラリー濃度推定ステップS103と、を備える。なお、第2圧力取得ステップS102は、第1圧力取得ステップS101と同時に行われてもよい。また、スラリー濃度取得方法100における各ステップは、スラリー濃度取得装置5以外の装置や機器を用いてもよいし、手動により行うようにしてもよい。
【0067】
上記の方法によれば、第1圧力取得ステップS101および第2圧力取得ステップS102により、吸収液の異なる二点の高さ位置(HP1、HP2)における圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)を取得できる。これらの圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)は、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PEや大気圧PAを基準圧力P0にすることで、各高さ位置における圧力値(圧力の大きさ)を取得できる。スラリー濃度推定ステップS103では、各高さ位置における圧力値により、貯留部21B内の吸収液の圧力状態を具体的に把握できるため、吸収液のスラリー濃度を精度良く推定できる。
【0068】
また、上記の方法によれば、スラリー濃度推定ステップS103では、貯留部21Bに貯留された吸収液の密度などの性状を該吸収液から直接的に取得できるため、上記吸収液の性状を、排煙脱硫設備1の外部に抜き出した配管(例えば、吸収塔循環配管16や吸収液抜き出し配管18)から間接的に取得する場合に比べて、排煙脱硫設備1の内部に貯留された吸収液の実情に即したスラリー濃度を推定できる。
【0069】
図5は、本開示の一実施形態にかかる排煙脱硫設備の改造方法の一例を示すフロー図である。
幾つかの実施形態にかかる排煙脱硫設備の改造方法200は、図2に示されるように、排煙脱硫設備1の内部に貯留された吸収液の液面の高さ位置を取得するように構成された第1の差圧式レベル計6Aが設置された前記排煙脱硫設備の改造方法200である。第1の差圧式レベル計6Aは、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PE又は大気圧PAを基準圧力P0としたときにおいて、排煙脱硫設備1の内部に設けられた貯留部21Bに貯留された吸収液の第1の高さ位置HP1における基準圧力P0を基準とする第1圧力P1を取得するように構成されている。つまり、第1の差圧式レベル計6Aは、上述した第1の圧力取得部6に相当するものである。
【0070】
排煙脱硫設備の改造方法200は、図5に示されるように、排煙脱硫設備1内の排ガスの圧力PE又は大気圧PAを基準圧力P0としたときにおいて、第1の高さ位置HP1とは異なる吸収液の第2の高さ位置HP2における基準圧力P0を基準とする第2圧力P2を取得するように構成された第2の差圧式レベル計7Aを、排煙脱硫設備1に新たに設置する差圧式レベル計追設ステップS201を備える。つまり、差圧式レベル計追設ステップS201では、上述した第2の圧力取得部7に相当する第2の差圧式レベル計7Aが新たに設置される。
【0071】
図示される実施形態では、排煙脱硫設備の改造方法200は、図5に示されるように、排煙脱硫設備1において、第1の差圧式レベル計6Aおよび第2の差圧式レベル計7Aが取得した圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)に基づいて、吸収液のスラリー濃度を推定するように排煙脱硫設備1の改造が行われる(改造ステップS202)。改造ステップS202では、例えば、第1の差圧式レベル計6Aが接続される排煙脱硫設備1の既存の制御装置(不図示)が、上述したスラリー濃度推定部8の各部の動作を実行できるように改造することが行なわれる。また、改造ステップS202では、上記既存の制御装置とは別途に上述したスラリー濃度推定部8を新たに設置してもよい。
【0072】
上記の方法によれば、排煙脱硫設備1に予め設置された第1の差圧式レベル計6Aにより、第1圧力P1を取得できる。また、差圧式レベル計追設ステップS201において新たに設置された第2の差圧式レベル計7Aにより、第2圧力P2を取得できる。第1の差圧式レベル計6Aおよび第2の差圧式レベル計7Aが取得した圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)に基づいて、貯留部21Bに貯留された吸収液のスラリー濃度を推定することが可能となる。排煙脱硫設備1には多くの機器や配管などが取り付けられるため、排煙脱硫設備1の周りのスペースを有効活用する必要がある。第1の差圧式レベル計6Aを上述した第1の圧力取得部6として流用することで、スラリー濃度を取得するための装置の設置スペースを小さくできるため、排煙脱硫設備1の周りのスペースの有効活用が図れる。また、第1の差圧式レベル計6Aを上述した第1の圧力取得部6として流用することで、スラリー濃度を取得するための装置の設置費用を抑えることができる。
【0073】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0074】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0075】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかるスラリー濃度取得装置(5)は、
排煙脱硫設備(1、例えば吸収塔1A)の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するように構成されたスラリー濃度取得装置(5)であって、
前記排煙脱硫設備内の排ガスの圧力(PE)又は大気圧(PA)を基準圧力(P0)としたときにおいて、前記排煙脱硫設備(1)の内部に設けられた貯留部(21B)に貯留された前記吸収液の第1の高さ位置(HP1)における前記基準圧力(P0)を基準とする第1圧力(P1)を取得するように構成された第1の圧力取得部(6)と、
前記排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)又は大気圧(PA)を基準圧力(P0)としたときにおいて、前記第1の高さ位置(HP1)とは異なる前記吸収液の第2の高さ位置(HP2)における前記基準圧力(P0)を基準とする第2圧力(P2)を取得するように構成された第2の圧力取得部(7)と、
前記第1の圧力取得部(6)が取得した前記第1圧力(P1)と、前記第2の圧力取得部(7)が取得した前記第2圧力(P2)とに基づいて、前記吸収液のスラリー濃度を推定するように構成されたスラリー濃度推定部(8)と、を備える。
【0076】
上記1)の構成によれば、第1の圧力取得部(6)および第2の圧力取得部(7)により、吸収液の異なる二点の高さ位置(HP1、HP2)における圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)を取得できる。これらの圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)は、排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)や大気圧(PA)を基準圧力(P0)にすることで、各高さ位置における圧力値(圧力の大きさ)を取得できる。スラリー濃度推定部(8)は、各高さ位置における圧力値を取得することで、貯留部内の吸収液の圧力状態を具体的に把握できるため、吸収液のスラリー濃度を精度良く推定できる。
【0077】
また、上記1)の構成によれば、スラリー濃度取得装置(5)は、貯留部(21B)に貯留された吸収液の密度などの性状を該吸収液から直接的に取得できるため、上記吸収液の性状を、排煙脱硫設備(1)の外部に抜き出した配管(例えば、吸収塔循環配管16や吸収液抜き出し配管18)から間接的に取得する場合に比べて、排煙脱硫設備(1)の内部に貯留された吸収液の実情に即したスラリー濃度を推定できる。
【0078】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のスラリー濃度取得装置(5)であって、
前記第1圧力(P1)および前記第2圧力(P2)は、前記排煙脱硫設備(1)内の前記排ガスの圧力(PE)を前記基準圧力(P0)とする。
【0079】
上記2)の構成によれば、第1圧力(P1)および第2圧力(P2)は、排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)を基準圧力(P0)とすることで、排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)の影響を除外できる。これにより、第1圧力(P1)および第2圧力(P2)は、吸収液の各高さ位置(HP1、HP2)における液圧の実態を反映させたものとなるので、吸収液のスラリー濃度をより精度良く推定できる。
【0080】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のスラリー濃度取得装置(5)であって、
前記排煙脱硫設備(1)は、
前記貯留部(21B)を含む内部空間(21)を内部に画定する吸収塔本体(2)と、
前記内部空間(21)に前記排ガスを導入するための排ガス導入流路(31)を内部に画定する排ガス導入部(3)と、を含み、
前記第1の圧力(P1)および前記第2の圧力(P2)は、前記排ガス導入流路(31)内の排ガスの圧力を前記基準圧力(P0)とする。
【0081】
吸収塔本体(2)のミストエリミネータ(22)よりも上流側の内部空間(21C)には、噴霧装置(23)により噴霧された吸収液のミストが充満している。このミスト化した吸収液により、第1の圧力取得部(6)や第2の圧力取得部(7)に排ガスの圧力を導入するための気体側導圧管が詰まり、第1の圧力取得部(6)や第2の圧力取得部(7)が正確な圧力を取得できなくなる虞があるため、上流側の内部空間(21C)を基準圧力(P0)とすることは好ましくはない。また、ミストエリミネータ(22)の目詰まりにより、吸収塔本体(2)のミストエリミネータ(22)よりも下流側の内部空間(21D)と上流側の空間(21C)との間に圧力差が生じる虞がある。このため、下流側の内部空間(21D)を基準圧力(P0)とすることも好ましくはない。上記3)の構成によれば、排ガス導入流路(31)内の圧力を基準圧力(P0)とすることで、第1の圧力取得部(6)や第2の圧力取得部(7)が長期間に亘り正確な圧力を取得できる。
【0082】
4)幾つかの実施形態では、上記2)又は3)に記載のスラリー濃度取得装置(5)であって、
前記第1の圧力取得部(6)および前記第2の圧力取得部(7)の夫々に、前記排煙脱硫設備(1)内の前記排ガスの圧力(PE)を伝達する少なくとも一つの導圧管(9)を備える。
【0083】
上記4)の構成によれば、第1の圧力取得部(6)および第2の圧力取得部(7)の夫々は、導圧管(9)により伝達された排煙脱硫設備(1)内の前記排ガスの圧力(PE)を基準圧力(P0)とすることができる。
【0084】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のスラリー濃度取得装置(5)であって、
前記少なくとも一つの導圧管(9)は、前記排煙脱硫設備(1)内の前記排ガスの圧力(PE)を導入する一方側から他方側に向かう途中において二つに分岐し、二つのうちの一方が前記第1の圧力取得部(6)に接続され、前記二つのうちの他方が前記第2の圧力取得部(7)に接続された。
【0085】
上記5)の構成によれば、導圧管(9)の排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)を導入する一方側を共有配管とすることで、導圧管(9)の他方側に接続される第1の圧力取得部(6)および第2の圧力取得部(7)に伝達される上記圧力(PE)の差を小さくできる。この場合には、第1の圧力取得部(6)と第2の圧力取得部(7)とにおける基準圧力(P0、排ガスの圧力PE)の差を抑制することで、第1の圧力取得部(6)および第2の圧力取得部(7)が取得する圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)の精度を向上でき、ひいては吸収液のスラリー濃度を精度良く推定できる。
【0086】
6)本開示の少なくとも一実施形態にかかるスラリー濃度取得方法(100)は、
排煙脱硫設備(1)の内部に貯留された吸収液のスラリー濃度を取得するためのスラリー濃度取得方法(100)であって、
前記排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)又は大気圧(PA)を基準圧力(P0)としたときにおいて、前記排煙脱硫設備(1)の内部に設けられた貯留部(21B)に貯留された前記吸収液の第1の高さ位置(HP1)における前記基準圧力(P0)を基準とする第1圧力(P1)を取得する第1圧力取得ステップ(S101)と、
前記排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)又は大気圧(PA)を基準圧力(P0)としたときにおいて、前記第1の高さ位置(HP1)とは異なる前記吸収液の第2の高さ位置(HP2)における前記基準圧力(P0)を基準とする第2圧力(P2)を取得する第2圧力取得ステップ(S102)と、
前記第1圧力取得ステップ(S101)で取得した前記第1圧力(P1)と、前記第2圧力取得ステップ(S102)で取得した前記第2圧力(P2)とに基づいて、前記吸収液のスラリー濃度を推定するスラリー濃度推定ステップ(S103)と、を備える。
【0087】
上記6)の方法によれば、第1圧力取得ステップ(S101)および第2圧力取得ステップ(S102)により、吸収液の異なる二点の高さ位置(HP1、HP2)における圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)を取得できる。これらの圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)は、排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)や大気圧(PA)を基準圧力(P0)にすることで、各高さ位置における圧力値(圧力の大きさ)を取得できる。スラリー濃度推定ステップ(S103)では、各高さ位置における圧力値により、貯留部(21B)内の吸収液の圧力状態を具体的に把握できるため、吸収液のスラリー濃度を精度良く推定できる。
【0088】
また、上記6)の方法によれば、スラリー濃度推定ステップ(S103)では、貯留部(21B)に貯留された吸収液の密度などの性状を該吸収液から直接的に取得できるため、上記吸収液の性状を、排煙脱硫設備(1)の外部に抜き出した配管(例えば、吸収塔循環配管16や吸収液抜き出し配管18)から間接的に取得する場合に比べて、排煙脱硫設備(1)の内部に貯留された吸収液の実情に即したスラリー濃度を推定できる。
【0089】
7)本開示の少なくとも一実施形態にかかる排煙脱硫設備の改造方法(200)は、
排煙脱硫設備(1)の内部に貯留された吸収液の液面の高さ位置を取得するように構成された第1の差圧式レベル計(6A)が設置された前記排煙脱硫設備の改造方法(200)であって、
前記第1の差圧式レベル計(6A)は、前記排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)又は大気圧(PA)を基準圧力(P0)としたときにおいて、前記排煙脱硫設備(1)の内部に設けられた貯留部(21B)に貯留された前記吸収液の第1の高さ位置(HP1)における前記基準圧力(P0)を基準とする第1圧力(P1)を取得するように構成され、
前記排煙脱硫設備の改造方法(200)は、
前記排煙脱硫設備(1)内の排ガスの圧力(PE)又は大気圧(PA)を基準圧力(P0)としたときにおいて、前記第1の高さ位置(HP1)とは異なる前記吸収液の第2の高さ位置(HP2)における前記基準圧力(P0)を基準とする第2圧力(P2)を取得するように構成された第2の差圧式レベル計(7A)を、前記排煙脱硫設備(1)に新たに設置する差圧式レベル計追設ステップ(S201)を備える。
【0090】
上記7)の方法によれば、排煙脱硫設備(1)に予め設置された第1の差圧式レベル計(6A)により、第1圧力(P1)を取得できる。また、差圧式レベル計追設ステップ(S201)において新たに設置された第2の差圧式レベル計(7A)により、第2圧力(P2)を取得できる。第1の差圧式レベル計(6A)および第2の差圧式レベル計(7A)が取得した圧力(第1圧力P1、第2圧力P2)に基づいて、貯留部(21B)に貯留された吸収液のスラリー濃度を推定することが可能となる。排煙脱硫設備(1)には多くの機器や配管などが取り付けられるため、排煙脱硫設備(1)の周りのスペースを有効活用する必要がある。第1の差圧式レベル計(6A)を上述した第1の圧力取得部(6)として流用することで、スラリー濃度を取得するための装置の設置スペースを小さくできるため、排煙脱硫設備(1)の周りのスペースの有効活用が図れる。また、第1の差圧式レベル計(6A)を上述した第1の圧力取得部(6)として流用することで、スラリー濃度を取得するための装置の設置費用を抑えることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 排煙脱硫設備
1A 吸収塔
2 吸収塔本体
21 内部空間
21A 気液接触部
21B 貯留部
21C 上流側内部空間
21D 下流側内部空間
22 ミストエリミネータ
23 噴霧装置
231 噴霧管
232 噴霧ノズル
233 噴霧口
24 石灰石スラリー供給口
25,28 吸収液抜出口
26 散気装置
261 散気管
262 散気用ポンプ
263 散気供給口
27 散気口
3 排ガス導入部
31 排ガス導入流路
32 天井面
33 底面
34 側面
35 貫通孔
4 排ガス排出部
41 排ガス排出流路
5 スラリー濃度取得装置
6 第1の圧力取得部
6A 第1の差圧式レベル計
61 圧力差検出体
62 受圧部
63 筒状体
64 内部空間
65 液体側導圧管
7 第2の圧力取得部
7A 第2の差圧式レベル計
71 圧力差検出体
72 受圧部
73 筒状体
74 内部空間
75 液体側導圧管
8 スラリー濃度推定部
81 データベース部
82 演算部
9 導圧管
91 一方側
911 開口
92 他方側
93A,93B 洗浄装置
94A,94B 噴出ノズル
95A,95B ノズル開口
96A,96B 曲り形状部
97A,97B 洗浄水供給ライン
98 鍔部
11 燃焼設備
12 排ガス排出ライン
13 煙突
14 石灰石スラリー供給ライン
15 石灰石スラリー貯留槽
16 吸収塔循環配管
161 吸収塔循環ポンプ
17 固液分離装置
18 吸収液抜き出し配管
181 吸収液抜き出しポンプ
100 スラリー濃度取得方法
200 改造方法
CL1,CL2 軸線
HP1 第1の高さ位置
HP2 第2の高さ位置
LS 液面
LW 下限水位
MH 上限高さ
P0 基準圧力
PA 大気圧
PC 補正値
PE 排ガスの圧力
P1 第1圧力
P2 第2圧力
VL1,VL2 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5