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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】機械装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/04 20060101AFI20231201BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G01S15/04
B25J19/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020081695
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021177127
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】結城 興仁
(72)【発明者】
【氏名】湯山 まゆみ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-200188(JP,A)
【文献】特開2011-133247(JP,A)
【文献】特開平10-216127(JP,A)
【文献】米国特許第4014207(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム部と、
前記アーム部の先端面において、当該アーム部の先端側において主な振動が生じると想定される方向とは垂直な方向に、直線状に配列された複数の超音波素子を有する送受信部と、
前記送受信部による送受信結果に基づいて、物体の有無を検出する物体検出部とを備え、
前記送受信部は、前記超音波素子が超音波を放射することで、前記主な振動が生じると想定される方向を含む面において2次元円形波を形成する
ことを特徴とする機械装置。
【請求項2】
前記超音波素子は、MUTである
ことを特徴とする請求項1記載の機械装置。
【請求項3】
前記送受信部による送受信結果に基づいて、前記超音波素子が放射する超音波の駆動周波数以外の周波数の信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部により検出された信号に基づいて、前記アーム部における振動の有無を推定する振動有無推定部とを備えた
ことを特徴とする請求項2記載の機械装置。
【請求項4】
前記送受信部による送受信結果に基づいて、前記超音波素子が放射する超音波の駆動周波数以外の周波数の信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部により検出された信号を監視することで、前記アーム部の劣化を推定する劣化推定部とを備えた
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体の有無を検出する機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の有無の検出には、光電スイッチが広く用いられている(例えば特許文献1参照)。この光電スイッチがロボットアームにおけるアーム部の先端に取付けられることで、ロボットアームは、前方に存在する物体を検出可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-154450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光電スイッチは、光の照射範囲(光路範囲)が狭いため、物体を検出可能な範囲も狭い。よって、従来のロボットアームでは、アーム部の振動により、物体の検出ミスが発生し易く、改善が求められている。
【0005】
なお、この課題は、上記のようなロボットアームのみに存在する課題ではなく、光電スイッチが取付けられたアーム部を有するその他の機械装置(例えば搬送装置)についても同様に存在する課題である。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来構成に対し、物体の検出ミスを低減可能な機械装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る機械装置は、アーム部と、アーム部の先端面において、当該アーム部の先端側において主な振動が生じると想定される方向とは垂直な方向に、直線状に配列された複数の超音波素子を有する送受信部と、送受信部による送受信結果に基づいて、物体の有無を検出する物体検出部とを備え、送受信部は、超音波素子が超音波を放射することで、主な振動が生じると想定される方向を含む面において2次元円形波を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、従来構成に対し、物体の検出ミスを低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るロボットアームの構成例を示す図である。
図2】実施の形態1における超音波センサの構成例を示す図である。
図3図3A図3Bは、実施の形態1における超音波素子(PMUT)の構成例を示す図であり、図3Aは上面図であり、図3BはA-A線断面図である。
図4】実施の形態1における超音波センサの動作例を示すフローチャートである。
図5図5A図5Bは、実施の形態1における超音波センサにより送信される超音波の一例を示す図であり、図5AはXZ平面図であり、図5BはYZ平面図である。
図6図6A図6Bは、実施の形態1に係るロボットアームの効果を説明する図であり、図6Aは従来のロボットアームにおける物体の検出可能範囲の一例を示す図であり、図6Bは実施の形態1に係るロボットアームにおける物体の検出可能範囲の一例を示す図である。
図7図7A図7Bは、実施の形態1における超音波センサにより送信される超音波の別例を示す図であり、図7AはXZ平面図であり、図7BはYZ平面図である。
図8】実施の形態2における超音波センサの構成例を示す図である。
図9】実施の形態3における超音波センサの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るロボットアームの構成例を示す図である。
ロボットアーム(機械装置)は、図1に示すように、アーム部1及び超音波センサ2を備えている。図1では、超音波センサ2が有する構成のうちの後述する超音波素子211のみを図示している。
【0011】
アーム部1は、制御部(不図示)による制御に応じて移動する。なお図1では、ロボットアームが有するアーム部1のうちの先端部分のみを図示している。また、アーム部1の先端側は、移動等により振動が生じる。
【0012】
超音波センサ2は、アーム部1の前方に存在する物体を検出する。超音波センサ2は、図2に示すように、送受信部21及び物体検出部22を有する。
【0013】
送受信部21は、アーム部1の前方に対して超音波の送受信を行う。送受信部21は、図1に示すように、複数の超音波素子211を有する。複数の超音波素子211は、アーム部1の先端面において、直線状に配列されている。この際、複数の超音波素子211は、アーム部1の先端側において主な振動が生じると想定される方向とは垂直な方向に配列される。図1では、アーム部1の先端側においてY軸方向に主な振動が生じると想定された場合を示し、2つの超音波素子211(超音波素子211a,211b)がX軸方向に配列されている。
【0014】
この送受信部21は、複数の超音波素子211が超音波を放射することで、3次元空間における1つの面(アーム部1の先端側において主な振動が生じると想定される方向を含む面)において2次元円形波を形成する。図1では、送受信部21は、YZ平面において2次元円形波を形成する。
【0015】
超音波素子211としては、例えばMUT(Micromachined Ultrasonic Transducers)が用いられる。MUTは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の半導体製造技術によって構成された微小な超音波素子である。
MUTとしては、PMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducers)及びCMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducers)がある。図3に、超音波素子211の一例として、PMUTの構成例について示す。
【0016】
PMUTは、圧電型の超音波素子である。このPMUTは、図3に示すように、半導体基板2111、圧電素子(圧電膜)2112、電極2113及び電極2114を有している。
【0017】
半導体基板2111には、下面の一部に溝が設けられることで、薄膜であるダイヤフラム2115が形成されている。
圧電素子2112は、半導体基板2111におけるダイヤフラム2115上に積層されている。
電極2113は、圧電素子2112の上面(ダイヤフラム2115側とは反対側の面)に接続されている。
電極2114は、圧電素子2112の下面(ダイヤフラム2115側の面)に接続されている。
【0018】
このように構成されたPMUTは、電極2113及び電極2114により圧電素子2112に対して電圧が印可されることで圧電素子2112が伸縮し、これに伴ってダイヤフラム2115が振動し、このダイヤフラム2115の変位によって生じる圧力差により超音波が発信される。
また、PMUTは、外部から超音波が到来すると、この超音波によってダイヤフラム2115が振動し、これに伴って圧電素子2112の電極間に電位差が生じ、この電位差を検出することで超音波を受信する。
【0019】
一方、CMUTは、静電型の超音波素子である。このCMUTは、PMUTに対し、駆動方式として静電引力を用い、出力方式としてキャパシタを用いる点が異なるが、ダイヤフラムを用いた基本的な動作原理については同様である。
【0020】
物体検出部22は、送受信部21による送受信結果に基づいて、ロボットアームの前方における物体の有無を検出する。
また、物体検出部22は、上記の物体有無検出機能に加え、検出可能範囲内に物体が有る場合に、ロボットアーム(アーム部1の先端)から当該物体までの距離を検出する機能を有していてもよい。この場合、物体検出部22は、検出可能範囲内に物体が有ると判定した場合に、送受信部21が超音波を送信してから当該物体により反射された超音波を受信するまでの時間に基づいて、当該物体までの距離を検出する。
【0021】
なお、物体検出部22は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0022】
次に、図2に示す実施の形態1における超音波センサ2の動作例について、図4を参照しながら説明する。
図2に示す実施の形態1における超音波センサ2の動作例では、まず、送受信部21は、アーム部1の前方に対して超音波を送信する(ステップST401)。この際、送受信部21では、複数の超音波素子211が超音波を放射することで、3次元空間における1つの面(アーム部1の先端側において主な振動が生じると想定される方向を含む面)において2次元円形波を形成する。
【0023】
図5では、X軸上に2つの超音波素子211(超音波素子211a,211b)が配列され、2つの超音波素子211がZ軸方向に向けて同時に超音波(球面波)を放射した場合を示している。この場合、図5Aに示すように、XZ平面では、2つの超音波素子211の中心線上において超音波が干渉し、超音波ビームが形成される。一方、図5Bに示すように、YZ平面では、2次元円形波が形成される。図5において、符号501は超音波ビームを示し、符号502は2次元円形波を示している。
【0024】
次いで、送受信部21は、超音波の受信を行う(ステップST402)。
【0025】
次いで、物体検出部22は、送受信部21による送受信結果に基づいて、物体の有無を検出する(ステップST403)。また、物体検出部22は、検出可能範囲内に物体が有ると判定した場合、送受信部21が超音波を送信してから当該物体により反射された超音波を受信するまでの時間に基づいて、当該物体までの距離を検出してもよい。
【0026】
ここで、ロボットアームでは、アーム部1の形状及び弾性に起因して、アーム部1の先端における振動は避けられない。そして、このアーム部1の振動が、物体の検出ミスの要因の一つとなる。そこで、実施の形態1に係るロボットアームでは、2次元円形波を用いることで、従来構成に対し、アーム部1において主な振動が生じると想定される方向に対して検出可能範囲を拡張している(図6参照)。これにより、このロボットアームは、従来のロボットアームに対し、アーム部1の振動による物体の検出ミスを低減可能となる。なお図6において、符号601はロボットアームの前方に存在する物体を示し、符号602は光電スイッチを示し、符号603は従来のロボットアームにおける物体の検出可能範囲を示し、符号604は実施の形態1に係るロボットアームにおける物体の検出可能範囲を示している。
【0027】
なお、実施の形態1に係るロボットアームでは、物体の検出可能範囲を拡張するために2次元円形波を用いているが、2次元円形波の精度は、各超音波素子211の設置場所の精度に影響する。これに対し、MUTでは、フォトリソグラフィーにより精度よく各超音波素子211を配置可能である。よって、実施の形態1に係るロボットアームが有する超音波素子211としてMUTを用いることで、精度の高い2次元円形波を送信可能となる。
【0028】
なお図5では、超音波素子211の数を最少の2つとした場合を示しているが、これに限らず、超音波素子211の数は3つ以上でもよい。図7では、X軸上に4つの超音波素子211(超音波素子211a~211d)が配列され、4つの超音波素子211がZ軸方向に向けて同時に超音波(球面波)を放射した場合を示している。なお図7では、4つの超音波素子211が同時に超音波を放射した場合を示したが、これに限らず、例えば、まず外側の2つの超音波素子211(超音波素子211a,211d)が同時に超音波を放射し、その後に内側の2つの超音波素子211(超音波素子211b,211c)が同時に超音波を放射してもよい。この場合、図7Aに示すように、XZ平面では、4つの超音波素子211の中心線上において超音波が干渉し、超音波ビームが形成される。一方、図7Bに示すように、YZ平面では、2次元円形波が形成される。なお、一般に、超音波素子211の数を増やすと超音波の振幅が上がるため、S/Nが向上する。図7において、符号701は超音波ビームを示し、符号702は2次元円形波を示している。
【0029】
以上のように、この実施の形態1によれば、ロボットアームは、アーム部1と、アーム部1の先端面において、当該アーム部1の先端側において主な振動が生じると想定される方向とは垂直な方向に、直線状に配列された複数の超音波素子211を有する送受信部21と、送受信部21による送受信結果に基づいて、物体の有無を検出する物体検出部22とを備え、送受信部21は、超音波素子211が超音波を放射することで、主な振動が生じると想定される方向を含む面において2次元円形波を形成する。これにより、実施の形態1に係るロボットアームは、従来構成に対し、物体の検出ミスを低減可能となる。
【0030】
実施の形態2.
図8は実施の形態2における超音波センサ2の構成例を示す図である。この図8に示す実施の形態2における超音波センサ2は、図2に示す実施の形態1における超音波センサ2に対し、信号検出部23及び振動有無推定部24を追加している。その他の構成は実施の形態1に係るロボットアームと同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。なお、超音波素子211はMUTである。
【0031】
信号検出部23は、送受信部21による送受信結果に基づいて、超音波素子211が放射する超音波の駆動周波数以外の周波数の信号を検出する。なお、超音波の駆動周波数は、超音波素子211の共振周波数であり、例えば500kHzである。
振動有無推定部24は、信号検出部23により検出された信号に基づいて、アーム部1における振動の有無を推定する。
【0032】
ここで、MUTは、その構造上、ダイヤフラムを有している。そのため、MUTは、このダイヤフラムにより、超音波だけではなく、超音波の駆動周波数以外の信号も微弱ながら受信可能である。すなわち、超音波素子211としてMUTを用いた場合、超音波素子211はアーム部1で生じた振動による信号を受信可能である。
よって、超音波素子211がMUTである場合、信号検出部23は、超音波の駆動周波数以外の周波数の信号を検出可能であり、振動有無推定部24は、この信号の有無からアーム部1における振動の有無の可能性を検出可能である。
【0033】
実施の形態3.
図9は実施の形態3における超音波センサ2の構成例を示す図である。この図9に示す実施の形態3における超音波センサ2は、図2に示す実施の形態1における超音波センサ2に対し、信号検出部23及び劣化推定部25を追加している。その他の構成は実施の形態1に係るロボットアームと同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。なお、超音波素子211はMUTである。
【0034】
信号検出部23は、送受信部21による送受信結果に基づいて、超音波素子211が放射する超音波の駆動周波数以外の周波数の信号を検出する。この信号検出部23は、実施の形態2における信号検出部23と同一である。
劣化推定部25は、信号検出部23により検出された信号を監視することで、アーム部1の劣化を推定する。この際、劣化推定部25は、例えば、過去のデータを利用した機械学習を用いて、劣化を推定する。
【0035】
ここで、アーム部1は、新品の状態と劣化した状態とで振動の仕方が異なる。よって、劣化推定部25は、信号検出部23により検出された信号に基づくアーム部1の振動を機械学習等によって解析することで、アーム部1の劣化状態の診断が可能となる。
【0036】
なお上記では、図2に示す実施の形態1における超音波センサ2に対し、信号検出部23及び劣化推定部25を追加した場合を示した。しかしながら、これに限らず、図8に示す実施の形態2における超音波センサ2に対し、劣化推定部25を追加してもよい。
【0037】
また、実施の形態1~3では、機械装置がロボットアームである場合を示した。しかしながら、これに限らず、機械装置は、超音波センサ2が取付けられたアーム部1を有する装置であればよく、例えば搬送装置でもよい。
【0038】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 アーム部
2 超音波センサ
21 送受信部
22 物体検出部
23 信号検出部
24 振動有無推定部
25 劣化推定部
211 超音波素子
2111 半導体基板
2112 圧電素子
2113 電極
2114 電極
2115 ダイヤフラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9