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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20231201BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20231201BHJP
【FI】
F24C3/12 J
F24C3/02 H
F24C3/12 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020092035
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188777
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034173(JP,A)
【文献】特開2012-058945(JP,A)
【文献】特開2015-230144(JP,A)
【文献】特開2017-116193(JP,A)
【文献】特開平10-019275(JP,A)
【文献】特開2019-086187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0130190(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させて被加熱物を加熱するガスバーナと、
前記ガスバーナの中央に設けられ、赤外線を検知する赤外線センサと、
前記ガスバーナを制御するとともに、前記赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を行う制御部と、を備えた加熱調理器であって、
前記赤外線センサを上から覆い、光を透過する透光部と、
前記赤外線センサを囲むとともに、上端に前記透光部が固定されて前記透光部を露出させる枠部と、をさらに備え、
前記ガスバーナは、前記赤外線センサ、前記透光部及び前記枠部を囲む環状のバーナキャップと、
前記バーナキャップの外周側に設けられ、前記バーナキャップの周方向に並ぶ複数の炎口と、を有し、
前記バーナキャップの上部には、金属材料からなる金属光沢面によって赤外線を反射する反射面が形成され
前記反射面は、前記透光部を露出させるとともに、前記被加熱物の底面と対向することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記反射面は、前記赤外線センサを囲むステンレス板によって構成されている請求項1記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の加熱調理器の一例が開示されている。この加熱調理器は、ガスバーナ、赤外線センサ及び制御部を備えている。
【0003】
ガスバーナは、天板の加熱口の下方に設けられた内炎用ケーシング部材を有している。内炎用ケーシング部材の内周側には、内炎用ケーシング部材の周方向に並ぶ複数の炎口が形成されている。内炎用ケーシング部材の下方には、天板の加熱口を介して落下した煮零れを受けるための汁受皿が設けられている。ガスバーナは、燃料ガスを燃焼させて被加熱物を加熱する。
【0004】
赤外線センサは、汁受皿における切り欠きが設けられた部分に取り付けられており、赤外線を検知する。制御部は、ガスバーナを制御するとともに、赤外線センサの検知結果に基づいて、ガスバーナの燃焼による炎の有無を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-275364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の加熱調理器では、ガスバーナの炎から直接赤外線センサに到達する赤外線の他に、ガスバーナの炎から被加熱物の底面に向けて放射される赤外線があるが、その赤外線は被加熱物の底面によって反射し、その一部が赤外線センサに到達するだけである。そして、鍋やフライパン等、多種多様な被加熱物の底面の反射率が異なることにより、赤外線センサに到達する赤外線の強度が弱くなる場合がある。その結果、赤外線センサによる炎の有無の検知精度が低下するおそれがあり、場合によっては、炎が有るにもかかわらず、炎が無いと赤外線センサが誤検知してしまう。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、赤外線センサに到達する赤外線の強度が弱くなり難く、赤外線センサの誤検知を抑制でき、ひいては、制御部が赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を精度良く行うことができる加熱調理器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱調理器は、燃料ガスを燃焼させて被加熱物を加熱するガスバーナと、
前記ガスバーナの中央に設けられ、赤外線を検知する赤外線センサと、
前記ガスバーナを制御するとともに、前記赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を行う制御部と、を備えた加熱調理器であって、
前記赤外線センサを上から覆い、光を透過する透光部と、
前記赤外線センサを囲むとともに、上端に前記透光部が固定されて前記透光部を露出させる枠部と、をさらに備え、
前記ガスバーナは、前記赤外線センサ、前記透光部及び前記枠部を囲む環状のバーナキャップと、
前記バーナキャップの外周側に設けられ、前記バーナキャップの周方向に並ぶ複数の炎口と、を有し、
前記バーナキャップの上部には、金属材料からなる金属光沢面によって赤外線を反射する反射面が形成され
前記反射面は、前記透光部を露出させるとともに、前記被加熱物の底面と対向することを特徴とする。
【0009】
本発明の加熱調理器では、制御部が赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を行う際、ガスバーナの炎から放射される赤外線が被加熱物の底面によって反射するだけでなく、バーナキャップの反射面によっても反射し、その反射した赤外線が被加熱物の底面によって反射して赤外線センサに到達する。これにより、多種多様な被加熱物の底面の反射率が低くても、ガスバーナの炎から放射される赤外線が赤外線センサに到達し易くなるので、赤外線センサに到達する赤外線の強度が弱くなり難い。その結果、赤外線センサによる炎の有無の検知精度が低下することを抑制できる。
【0010】
したがって、本発明の加熱調理器では、赤外線センサに到達する赤外線の強度が弱くなり難く、赤外線センサの誤検知を抑制でき、ひいては、制御部が赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を精度良く行うことができる。
【0011】
さらに、この加熱調理器では、内炎用ケーシング部材の内周側に設けられた複数の炎口と赤外線センサとが近い上記従来の加熱調理器と比較して、バーナキャップの外周側に設けられた複数の炎口から赤外線センサが離れている。そして、この加熱調理器では、双方の間に配置された反射面によって、炎から放射される赤外線が赤外線センサの周囲に照射されることを抑制できる。その結果、この加熱調理器では、ガスバーナの炎や炎から放射される赤外線によって赤外線センサの周囲が過度に加熱されることを抑制できるので、赤外線センサの耐久性の向上を実現できる。
【0012】
反射面は、赤外線センサを囲むステンレス板によって構成されていることが望ましい。この場合、ガスバーナの炎から放射される赤外線がステンレス板によって構成された反射面で確実性高く反射して赤外線センサに一層到達し易くなるので、赤外線センサに到達する赤外線の強度が一層弱くなり難い。その結果、制御部が赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を一層精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加熱調理器によれば、赤外線センサに到達する赤外線の強度が弱くなり難く、赤外線センサの誤検知を抑制でき、ひいては、制御部が赤外線センサの検知結果に基づく判断処理を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例の加熱調理器の斜視図である。
図2図2は、実施例の加熱調理器のブロック図である。
図3図3は、実施例の加熱調理器の要部を示す一部切欠斜視図である。
図4図4は、実施例の加熱調理器の要部を示す部分断面図である。
図5図5は、図4における第1、2赤外線センサとそれらの周辺とを拡大して示す部分断面図である。
図6図6は、点火処理プログラムのフローチャートである。
図7図7は、レンジフードの光源から照射されて第1透光部に到達する光の分光分布と、窓を介して照射されて第1透光部に到達する太陽光の分光分布とを示すグラフである。
図8図8は、炎の有無及びガスバーナの反射面の有無による4つの場合において、第1透光部に到達する光の分光分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(実施例)
図1に示すように、実施例の加熱調理器1は、本発明の加熱調理器の一例であり、台所等に設置される所謂ビルトイン式のガスコンロである。なお、図1では、加熱調理器1の前面パネル8P側を前方と規定し、天板9側を上方と規定して、前後方向及び上下方向を表示する。また、前面パネル8Pに対面する状態で加熱調理器1を見たときに左に来る側を左方と規定して、左右方向を表示する。
【0017】
加熱調理器1は、調理器本体8及び天板9を備えている。調理器本体8は略箱状体であり、その前面に前面パネル8Pが配置されている。天板9は、調理器本体8の上面を覆うように配置された略矩形平板である。加熱調理器1の天板9の上方には、レンジフード90が配置されている。
【0018】
また、加熱調理器1は、図2に示す制御部50と、図1図4に示す燃焼部57と、図1図5に示す検知部51と、図1及び図2に示す操作部54とを有している。
【0019】
<制御部>
図2に簡略して示すように、制御部50は、CPU、ROM、RAM等を含んで構成された周知の制御回路であり、演算部及び記憶部を含んでいる。制御部50は、燃焼部57を制御するとともに、操作部54がユーザから受ける操作の情報を取得する。
【0020】
また、制御部50は、図6に示す点火処理プログラムを含む各種の制御プログラムを記憶している。後で詳しく説明するように、制御部50は、操作部54がユーザから点火操作を受けたときに、図6に示す点火処理プログラムを実行するようになっている。
【0021】
<燃焼部>
図1に示すように、燃焼部57は、天板9上に設けられた複数のガスバーナ7を有している。本実施例では、2つのガスバーナ7が天板9上の右部分と左部分とに設けられている。左右のガスバーナ7のそれぞれに付帯する部品等の構成は、同じである。
【0022】
天板9上には、ガスバーナ7を囲む五徳7Gが設けられている。五徳7Gには、鍋やフライパン等である調理容器5が載置される。調理容器5は、本発明の「被加熱物」の一例である。
【0023】
図3及び図4に示すように、ガスバーナ7は、バーナボディ71及びバーナキャップ70を有している。バーナボディ71は、混合管7Pの下流端から上向きに延び、天板9に貫設されたバーナ用開口9Hに下から挿通されている。バーナキャップ70は略円環状であり、バーナボディ71上に載置されている。
【0024】
バーナボディ71は、内筒71Aと外筒71Bとで中空の略円環状に形成されている。外筒71Bの上端部には、内曲げフランジ71B1が形成されている。また、外筒71Bには、円盤状のカバーリング7Cが外挿されている。
【0025】
バーナキャップ70の内周側には、シール筒部70Aが形成されている。シール筒部70Aは、下向きに円筒状に延びて、バーナボディ71の内筒71Aに嵌入している。バーナキャップ70の外周側には、環状壁部70Bが形成されている。環状壁部70Bは、シール筒部70Aの上部分を囲む円環状であり、その下端がバーナボディ71の内曲げフランジ71B1に上から当接している。
【0026】
環状壁部70Bには、複数の炎口70Fが形成されている。各炎口70Fは、バーナキャップ70の周方向に間隔を有して並び、かつ環状壁部70Bの下端からそれぞれ上向きに凹む溝からなる。混合管7Pからの混合気、すなわち燃料ガスと一次空気との混合ガスは、各炎口70Fからバーナキャップ70の径外方向に噴出するようになっている。
【0027】
ガスバーナ7には、複数の炎口70Fの一部と対向するように点火プラグ7Eが設けられている。点火プラグ7Eは、図示しないイグナイタによって高電圧が印加されることにより、ガスバーナ7を点火する。
【0028】
調理器本体8内には、ガスバーナ7に燃料ガスを供給する図示しない燃料制御弁が設けられている。図示しない燃料制御弁は、ガスバーナ7の点火時に開いて混合管7Pを経由してガスバーナ7に燃料ガスを供給し、消火時に閉じる主弁や、ガスバーナ7の火力調整に応じて開度調整されて燃料ガスの供給量を調整する火力調整弁等の複数の制御弁が組み合わされてなる。
【0029】
点火プラグ7E、図示しないイグナイタ及び図示しない燃料制御弁も、燃焼部57の一部を構成している。
【0030】
燃焼部57は、ガスバーナ7、点火プラグ7E、図示しないイグナイタ及び図示しない燃料制御弁の連携動作によって、調理容器5を加熱し、調理容器5に収容され、又は載置された被調理物の調理を行うようになっている。
【0031】
また、燃焼部57は、調理器本体8の内部中央に設けられた加熱庫57Gを有している。前面パネル8Pの中央には、グリル扉57Hが配置されている。加熱庫57Gは、グリル扉57Hによって閉鎖されているとともに、グリル扉57Hに連結された図示しないグリルトレーを収容している。そして、グリル扉57Hを引く操作によって図示しないグリルトレーを加熱庫57Gから引き出すことが可能となっている。
【0032】
図示は省略するが、加熱庫57G内には、複数のガスバーナと、ガスバーナに燃料ガスを供給する燃料制御弁と、ガスバーナを点火する点火プラグ及びイグナイタとが設けられており、これらも燃焼部57を構成している。
【0033】
加熱庫57Gは、図示しないグリルトレー上に載置された調理容器等をガス燃焼により加熱して、その調理容器等に収容され、又は載置された被調理物のグリル調理やオーブン調理を行うようになっている。
【0034】
<検知部の概略>
図3図5に示すように、検知部51は、ガスバーナ7の中央であってシール筒部70Aの内周面によって囲まれた空洞部7S内に設けられている。検知部51の第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20は、円環状のバーナキャップ70によって囲まれている。
【0035】
図2に示すように、検知部51は、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の検知結果を制御部50に伝達する。制御部50は、それらの検知結果に基づいて、ガスバーナ7の燃焼による炎の有無の判断処理や、調理容器5の底面の温度の判断処理を実行可能となっている。検知部51の具体的構成については、後で詳しく説明する。
【0036】
<操作部>
図1に示すように、操作部54は、加熱調理器1の電源のオン及びオフを切り替えるための電源スイッチ54Aを有している。電源スイッチ54Aは、前面パネル8Pにおけるグリル扉57Hよりも右側に位置する領域の右上部分に配置されている。
【0037】
また、操作部54は、左右のガスバーナ7及び加熱庫57Gのそれぞれについて、点火、消火及び火力調整を操作するための3つの点火スイッチ54Bを有している。左右のガスバーナ7用の2つの点火スイッチ54Bは、前面パネル8Pにおけるグリル扉57Hよりも右側に位置する領域に配置されている。加熱庫57G用の1つの点火スイッチ54Bは、前面パネル8Pにおけるグリル扉57Hよりも左側に位置する領域に配置されている。
【0038】
<レンジフード>
図1及び図2に示すように、レンジフード90は、換気部91、光源99、操作部94及び第2通信部95を有している。
【0039】
図1に示すように、換気部91は、図示しない電動モータ及び送風ファンにより加熱調理器1の周辺の空気をレンジフード90の底面に設けられた導入口90Hから吸い上げ、図示しない換気ダクトを経由して屋外に排出する。
【0040】
光源99は、レンジフード90の底面を構成しつつ前向きに庇状に延出する延出部90Aの前端に設けられている。光源99は、鉛直方向において天板9よりも上方に、より詳しくは、上面視したときに天板9に重なる位置に配置されている。光源99は、本実施例では白熱灯である。光源99は、点灯することにより下方の加熱調理器1の天板9及びその周辺が明るくなるように光を照射する。
【0041】
操作部94及び第2通信部95も、レンジフード90の延出部90Aの前端に設けられている。操作部94は、レンジフード90の電源のオン及びオフを切り替えるための電源スイッチ94Aを有している。電源スイッチ94Aが操作されてレンジフード90の電源がオンに切り替わると、換気部91及び光源99に給電可能となるとともに、第2通信部95に給電されて、第2通信部95が常時作動する。
【0042】
また、操作部94は、換気部操作スイッチ94B、94C、94D及び照明スイッチ94Eを有している。換気部操作スイッチ94B、94C、94Dは、レンジフード90の電源がオンの状態で、ユーザの選択操作によって風量の強弱を段階的に切り替えて換気部91を作動させる。照明スイッチ94Eは、レンジフード90の電源がオンの状態で、ユーザの操作によって光源99を点灯と消灯とに交互に反転させる。
【0043】
第2通信部95は、赤外線用フォトダイオード、赤外線用フォトトランジスタ等の受光素子によって、赤外線信号の受信のみを行うようになっている。第2通信部95は、光源99の点灯を指示する赤外線信号を受信した場合には、光源99を点灯させる。その一方、第2通信部95は、光源99の消灯を指示する赤外線信号を受信した場合には、光源99を消灯させる。
【0044】
<加熱調理器の第1通信部及び報知部>
加熱調理器1は、図1及び図2に示す第1通信部55及び報知部58を有している。
【0045】
図1に示すように、第1通信部55は、前面パネル8Pにおけるグリル扉57Hよりも右側に位置する領域の左上部分に配置されている。第1通信部55は、赤外線発光ダイオード等の発光素子によって、赤外線信号の発信のみを行うようになっている。
【0046】
制御部50は、レンジフード90の光源99を点灯させる場合、光源99の点灯を指示する赤外線信号を第1通信部55から発信させる。その一方、制御部50は、光源99を消灯させる場合、光源99の消灯を指示する赤外線信号を第1通信部55から発信させる。第1通信部55から発信された赤外線信号は、加熱調理器1を使用するユーザや、加熱調理器1の前面パネル8Pに対向する壁面等によって反射してレンジフード90の第2通信部95に受信される。
【0047】
報知部58は、前面パネル8Pにおけるグリル扉57Hよりも右側に位置する領域の下部分に配置されている。報知部58は、報知灯58A及び表示部58Bを含んでいる。報知灯58Aは、制御部50に制御されて赤色光等の点滅を行う。表示部58Bは、制御部50に制御されてエラーメッセージやエラーコード等を表示する。
【0048】
<検知部の具体的構成>
図3図5に示すように、検知部51は、直管51P及び筐体51Cを有している。直管51Pは、ガスバーナ7の空洞部7Sの中心に配置されている。直管51Pは、バーナキャップ70のシール筒部70Aよりも下方の位置から上向きに延びている。筐体51Cは、空洞部7Sの上部分に配置され、その底面が直管51Pの上端に接続されている。筐体51Cの内部空間と直管51Pの内部空間とは、連通している。
【0049】
筐体51Cの上面には、第1枠部51C1及び第2枠部51C2が設けられている。第1枠部51C1は、空洞部7Sの中心に位置して上向きに円筒状に突出し、その上端に内曲げフランジが形成されている。第2枠部51C2は、バーナキャップ70の径方向において第1枠部51C1とシール筒部70Aの内周面との間に位置して上向きに円筒状に突出し、その上端に内曲げフランジが形成されている。
【0050】
図5に示すように、筐体51C内における第1枠部51C1及び第2枠部51C2よりも下方には、カバー板51D、第1基部51E1及び第2基部51E2が配置されている。カバー板51Dは、略水平に延在し、その周縁が筐体51Cに挟持されている。第1基部51E1は、第1枠部51C1の真下でカバー板51Dの上面に固定されている。第2基部51E2は、第2枠部51C2の真下でカバー板51Dの上面に固定されている。
【0051】
また、検知部51は、第1透光部31、第2透光部32、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20を有している。第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20はそれぞれ、本発明の「赤外線センサ」の一例である。
【0052】
第1透光部31は、第1枠部51C1の内曲げフランジに下から固定されることにより、ガスバーナ7の中央で、より詳しくは空洞部7Sの中心で露出している。第2透光部32は、第2枠部51C2の内曲げフランジに下から固定されることにより、ガスバーナ7の中央で、より詳しくはバーナキャップ70の径方向において第1透光部31とシール筒部70Aの内周面との間で露出している。
【0053】
つまり、第1透光部31及び第2透光部32はそれぞれ、天板9上で露出するように設けられている。
【0054】
第1透光部31は、光のうちの赤外線を選択的に透過する光学フィルタである。第1透光部31の下面には、薄膜状の遮光膜31Aが設けられている。遮光膜31Aは、第1透光部31を透過する赤外線のうち、ガスバーナ7に加熱された調理容器5の底面から放射される赤外線を遮る一方、ガスバーナ7の炎から放射される赤外線は遮らないように大きさや厚みが設定されている。
【0055】
第2透光部32は、ガスバーナ7の炎から放射される赤外線を選択的に遮断し、その他の赤外線、例えばガスバーナ7に加熱された調理容器5の底面から放射される赤外線を透過する光学フィルタである。
【0056】
第1赤外線センサ10は、第1基部51E1の上面に設けられて、第1透光部31に上から覆われている。第1赤外線センサ10はいわゆるサーモパイルであり、第1プラス電極11、第1マイナス電極12及び第1受光素子13を含んでいる。
【0057】
第1プラス電極11及び第1マイナス電極12はそれぞれ、上下方向に延びて第1基部51E1を貫通している。第1プラス電極11及び第1マイナス電極12のそれぞれの下端には、第1リード線15の一端が接続されている。第1リード線15は、下向きに延びて直管51P内を通過し、その他端が制御部50に接続されている。
【0058】
第1受光素子13は、多数の熱電対が直列に配置されてなる。第1受光素子13は、受光面が略水平な姿勢で上を向くように配置されている。第1受光素子13の一端は、第1プラス電極11の上端に接続されている。第1受光素子13の他端は、第1マイナス電極12の上端と絶縁状態で対向している。
【0059】
第1赤外線センサ10は、第1透光部31を透過して第1受光素子13の受光面に到達する赤外線を検知する。
【0060】
第2赤外線センサ20は、第2基部51E2の上面に設けられて、第2透光部32に上から覆われている。第2赤外線センサ20もいわゆるサーモパイルであり、第2プラス電極21、第2マイナス電極22及び第2受光素子23を含んでいる。
【0061】
第2プラス電極21及び第2マイナス電極22はそれぞれ、上下方向に延びて第2基部51E2を貫通している。第2プラス電極21及び第2マイナス電極22のそれぞれの下端には、第2リード線25の一端が接続されている。第2リード線25は、下向きに延びて直管51P内を通過し、その他端が制御部50に接続されている。
【0062】
第2受光素子23は、多数の熱電対が直列に配置されてなる。第2受光素子23は、受光面が略水平な姿勢で上を向くように配置されている。第2受光素子23の一端は、第2プラス電極21の上端に接続されている。第2受光素子23の他端は、第2マイナス電極22の上端と絶縁状態で対向している。
【0063】
第2赤外線センサ20は、第2透光部32を透過して第2受光素子23の受光面に到達する赤外線を検知する。
【0064】
<バーナキャップの反射面>
図3図5に示すように、バーナキャップ70の上部には、ステンレス板79が固定されている。ステンレス板79は、略水平に延在してバーナキャップ70の上面及び空洞部7Sを覆う円形の平板である。ステンレス板79の外径は、バーナキャップ70の上部の外径と略同一である。
【0065】
ステンレス板79には、第1開口79H1及び第2開口79H2が貫設されている。第1開口79H1は、第1枠部51C1を内挿させる丸穴である。第2開口79H2は、第2枠部51C2を内挿させる丸穴である。
【0066】
ステンレス板79は、第1開口79H1及び第2開口79H2により、第1透光部31及び第2透光部32を天板9上に露出させるとともに、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20を囲んでいる。
【0067】
ステンレス板79の上面は、鏡面加工されている。ステンレス板79の上面によって、バーナキャップ70の上部に反射面79Mが形成されている。反射面79Mは、金属材料からなる金属光沢面によって、高い反射率と、高い耐熱性とを発揮できる。反射面79Mは、バーナキャップ70の上部に到達した光を反射する。
【0068】
例えば、反射面79Mは、ガスバーナ7の炎から放射される赤外線、ガスバーナ7に加熱された調理容器5の底面から放射される赤外線、光源99から照射される光、窓から差し込む太陽光等を反射する。
【0069】
<第1透光部及び第2透光部に到達する光の分光分布>
図7に示すように、分光分布L11は、レンジフード90の光源99から照射されて第1透光部31に到達する光を測定したものである。分光分布L11は、光源99が白熱灯であることにより、900μm~2500μmの波長域において山状に盛り上がっている。
【0070】
分光分布L12は、窓を介して照射されて第1透光部31に到達する太陽光を測定したものである。分光分布L12は、大気を構成する水、酸素、二酸化炭素等によって太陽光が複数の波長域で吸収されることにより、900μm~2500μmの波長域のうちの複数個所で谷状に落ち込んでいる。
【0071】
レンジフード90の光源99から照射されて第1透光部31に到達する光と、窓を介して照射されて第1透光部31に到達する太陽光とはそれぞれ、五徳7G上に調理容器5が無ければ、直接第1透光部31に到達する一方、五徳7G上に調理容器5が有れば、天板9と、調理容器5の底面と、ガスバーナ7の反射面79Mとによって反射しながら、第1透光部31に到達する。このため、分光分布L11及び分光分布L12のそれぞれの傾向は、五徳7G上に調理容器5が有るか無いかによってそれ程影響を受けない。
【0072】
また、第2透光部32が第1透光部31の近傍にあることから、レンジフード90の光源99から照射されて第2透光部32に到達する光の分光分布は、分光分布L11とほぼ同じ傾向となり、窓を介して照射されて第2透光部32に到達する太陽光の分光分布は、分光分布L12とほぼ同じ傾向となる。
【0073】
分光分布L11から明らかなように、白熱灯である光源99は、特定周波数成分F1、F2を含む光を天板9に向けて照射可能である。特定周波数成分F1、F2は、太陽光のうちの大気に吸収される複数の周波数成分の一部と重なり、かつ第1赤外線センサ10の第1受光素子13及び第2赤外線センサ20の第2受光素子23がそれぞれ検知可能な周波数成分のことである。
【0074】
特定周波数成分F1は、太陽光のうちの大気に吸収される1350~1450μmの周波数成分と重なっている。特定周波数成分F2は、太陽光のうちの大気に吸収される1800~2000μmの周波数成分と重なっている。
【0075】
図8に示すように、分光分布L21は、光源99が消灯され、窓から差し込む太陽光もない状態において、ガスバーナ7の炎が有り、バーナキャップ70の温度が250℃、調理容器5の底面の温度が300℃、という測定条件下における第1透光部31に到達する光の分光分布である。
【0076】
分光分布L22は、分光分布L21の測定条件のうち、ガスバーナ7の炎を無しに変更した場合の分光分布である。
【0077】
分光分布L21における特定周波数成分F1、F2の強度は、分光分布L22における特定周波数成分F1、F2の強度よりも大幅に高くなっている。
【0078】
分光分布L31及び分光分布L32は、実施例に係るバーナキャップ70から反射面79Mを無くし、その代わりにバーナキャップ70の上面に黒塗装を施した比較例である。
【0079】
分光分布L31は、分光分布L21と同様に、光源99が消灯され、窓から差し込む太陽光もない状態において、ガスバーナ7の炎が有り、バーナキャップ70の温度が250℃、調理容器5の底面の温度が300℃、という測定条件下における第1透光部31に到達する光の分光分布である。
【0080】
分光分布L32は、分光分布L31の測定条件のうち、ガスバーナ7の炎を無しに変更した場合の分光分布である。
【0081】
分光分布L31における特定周波数成分F1、F2の強度は、分光分布L32における特定周波数成分F1、F2の強度よりも高くなっているが、反射面79Mが無いことにより、分光分布L21における特定周波数成分F1、F2の強度よりも大幅に低くなっている。
【0082】
また、第2透光部32についても、第1透光部31の近傍にあることにより、分光分布L21、L22、L31、L32とほぼ同じ傾向となる。
【0083】
<点火処理>
ユーザは、ガスバーナ7を点火して調理容器5を加熱するときに、ガスバーナ7の点火スイッチ54Bに対して点火操作を行う。制御部50は、その点火操作を検知すると、図6に示す点火処理プログラムS101~S119を実行する。
【0084】
ステップS101~S109は、ガスバーナ7の点火前において、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の検知結果に基づいて第1透光部31及び第2透光部32がそれぞれ汚れているか否かを判断する処理である。ステップS113~S116は、第1赤外線センサ10の検知結果に基づいて、ガスバーナ7の燃焼による炎の有無を判断する処理である。
【0085】
初めに、制御部50は、ステップS101において、光源99の消灯を指示する赤外線信号を第1通信部55から発信させ、レンジフート90の第2通信部95にその赤外線信号を受信させる。第2通信部95は、光源99が点灯していれば光源99を消灯させ、光源99が消灯していればその状態を維持する。
【0086】
次に、制御部50は、ステップS102に移行して、第1赤外線センサ10の出力値V11を取得するとともに、第2赤外線センサ20の出力値V21を取得する。
【0087】
次に、制御部50は、ステップS103に移行して、光源99の点灯を指示する赤外線信号を第1通信部55から発信させ、レンジフート90の第2通信部95にその赤外線信号を受信させる。第2通信部95は、消灯していた光源99を点灯させる。
【0088】
次に、制御部50は、ステップS104に移行して、第1赤外線センサ10の出力値V12を取得するとともに、第2赤外線センサ20の出力値V22を取得する。この際、光源99から照射される光が反射面79Mによっても反射し、その反射した光が調理容器5の底面によって反射して第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20に到達するので、出力値V12及び出力値V22を大きくすることができる。
【0089】
次に、制御部50は、ステップS105に移行して、光源99が点灯しているときの第1赤外線センサ10の出力値V12と、光源99が消灯しているときの第1赤外線センサ10の出力値V11との差が所定値G1以下であるか否かを判断する。
【0090】
「出力値V12-出力値V11」は、第1赤外線センサ10の検知結果に含まれる特定周波数成分F1、F2の照射時と照射前とにおける強度の差である。
【0091】
ステップS105において「No」の場合、制御部50は、第1透光部31が汚れていないと判断し、ステップS106に移行する。その一方、ステップS105において「Yes」の場合、制御部50は、第1透光部31が汚れていると判断し、ステップS107に移行する。
【0092】
ステップS105からステップS106に移行すると、制御部50は、光源99が点灯しているときの第2赤外線センサ20の出力値V22と、光源99が消灯しているときの第2赤外線センサ20の出力値V21との差が所定値G2以下であるか否かを判断する。
【0093】
「出力値V22-出力値V21」は、第2赤外線センサ20の検知結果に含まれる特定周波数成分F1、F2の照射時と照射前とにおける強度の差である。
【0094】
ステップS106において「No」の場合、制御部50は、第2透光部32が汚れていないと判断し、ステップS111に移行する。その一方、ステップS106において「Yes」の場合、制御部50は、第2透光部32が汚れていると判断し、ステップS109に移行する。
【0095】
遡って、ステップS105からステップS107に移行すると、制御部50は、ガスバーナ7の点火や燃焼の制御を正常に行うことが難しいと判断する。そして、制御部50は、報知部58を制御して、第1透光部31が汚れていることを報知し、ユーザに清掃等の対処を促す。具体的には、報知灯58Aを点滅させたり、表示部58Bにその旨のエラーメッセージ等を表示したりする。その後、ステップS108に移行する。ステップS108の判断内容は、ステップS106と同一である。
【0096】
ステップS108において「No」の場合、制御部50は、第2透光部32が汚れていないと判断する。そして、ガスバーナ7の点火を中止し、この点火処理プログラムを終了する。その一方、ステップS108において「Yes」の場合、制御部50は、第2透光部32が汚れていると判断し、ステップS109に移行する。
【0097】
ステップS106又はステップS108からステップS109に移行すると、制御部50は、ガスバーナ7の点火や燃焼の制御を正常に行うことが難しいと判断する。そして、制御部50は、報知部58を制御して、第2透光部32が汚れていることを報知し、ユーザに清掃等の対処を促す。具体的には、報知灯58Aを点滅させたり、表示部58Bにその旨のエラーメッセージ等を表示したりする。そして、ガスバーナ7の点火を中止し、この点火処理プログラムを終了する。
【0098】
ステップS106からステップS111に移行すると、制御部50は、ガスバーナ7の点火や燃焼の制御を正常に行うことができると判断する。そして、制御部50は、燃料制御弁を開状態に切り替えて、ガスバーナ7への燃料ガスの供給を開始する。
【0099】
次に、制御部50は、ステップS112に移行して、イグナイタをONにして点火プラグ7Eに高電圧を印加し、火花を発生させる。
【0100】
次に、制御部50は、ステップS113に移行して、点火タイマT1の計時を開始する。
【0101】
次に、制御部50は、ステップS114に移行して、第1赤外線センサ10の出力値V13を取得する。出力値V13は、ガスバーナ7の炎が有れば、その炎から放射されて調理容器5の底面で反射する赤外線の強度に対応する値となる一方、ガスバーナ7の炎が無ければ、炎が有る場合の値よりも大幅に小さい値となる。この際、ガスバーナ7の炎から放射される赤外線が反射面79Mによっても反射し、その反射した赤外線が調理容器5の底面によって反射して第1赤外線センサ10に到達するので、出力値V13を大きくすることができる。
【0102】
次に、制御部50は、ステップS115に移行して、イグナイタがONになった後の第1赤外線センサ10の出力値V13と、イグナイタがONになる前の第1赤外線センサ10の出力値V12との差が所定の閾値G3以上であるか否かを判断する。
【0103】
ステップS115において「No」の場合、制御部50は、ガスバーナ7の燃焼による炎が無く、まだ点火されていないと判断し、ステップS116に移行する。その一方、ステップS115において「Yes」の場合、制御部50は、ガスバーナ7の燃焼による炎が有り、正常に点火されたと判断し、ステップS117に移行する。そして、制御部50は、イグナイタをOFFにして、この点火処理プログラムを終了する。
【0104】
ステップS115からステップS116に移行すると、制御部50は、点火タイマT1が所定時間TG1以上になったか否かを判断する。所定時間TG1は、ガスバーナ7が正常に点火する場合の所要時間よりも長い時間であり、数秒~10秒程度に設定されている。
【0105】
ステップS116において「Yes」の場合、制御部50は、ガスバーナ7の燃焼による炎が無い状態が所定時間TG1以上継続し、点火に失敗したと判断し、ステップS118に移行する。その一方、ステップS116において「No」の場合、ステップS114に戻る。
【0106】
ステップS116からステップS118に移行すると、制御部50は、イグナイタをOFFにする。
【0107】
次に、制御部50は、ステップS119に移行して、報知部58を制御して、ガスバーナ7の点火に失敗したことを報知した後、この点火処理プログラムを終了する。
【0108】
<調理容器の底面の温度の判断処理>
制御部50は、以下に説明するように、ガスバーナ7の燃焼中において、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の検知結果に基づいて調理容器5の底面の温度の判断処理を実行する。
【0109】
制御部50の演算部には、ガスバーナ7の燃焼中において、第1赤外線センサ10の検知結果として、ガスバーナ7の炎から放射されて調理容器5の底面で反射する赤外線の強度に対応する出力値、すなわち反射赤外線強度が伝達される。
【0110】
また、制御部50の演算部には、ガスバーナ7の燃焼中において、第2赤外線センサ20の検知結果として、ガスバーナ7に加熱された調理容器5の底面から放射される赤外線の強度に対応する出力値、すなわち放射赤外線強度が伝達される。
【0111】
制御部50の記憶部には、反射赤外線強度と調理容器5の底面の放射率との相関関係が記憶されている。制御部50の演算部は、ガスバーナ7の燃焼中において、第1赤外線センサ10から伝達された反射赤外線強度と、記憶部に記憶された相関関係とに基づいて、調理容器5の底面の放射率を算出する。
【0112】
そして、制御部50の演算部は、算出した調理容器5の底面の放射率と、第2赤外線センサ20から伝達された放射赤外線強度とに基づいて、調理容器5の底面の温度を算出する。
【0113】
ここで、第1赤外線センサ10が出力する反射赤外線強度と、材質や色等に起因する調理容器5の底面の反射率との間には、線形の相関関係がある。このため、反射赤外線強度と、調理容器5の底面の放射率との間についても、線形の相関関係が成り立っている。この線形の相関関係を制御部50の記憶部が記憶している。
【0114】
ここで、反射率と放射率との関係は、次式(1)で示される。
放射率=1-反射率・・・(1)
【0115】
放射赤外線強度と温度との相関関係は、次式(2)で示される。
I=εσT4・・・(2)
(I:放射発散度(放射赤外線強度と同義)、ε:放射率、σ:ボルツマン定数、T:温度)
【0116】
したがって、加熱された調理容器5の底面から放射される赤外線を受光した第2赤外線センサ20が出力する放射赤外線強度Iを、制御部50の演算部において算出した調理容器5の底面の放射率εとボルツマン定数σとで除し、除した値の4乗根を取ることにより、調理容器5の底面の温度Tを精度良く算出できる。
【0117】
<作用効果>
実施例の加熱調理器1では、制御部50は、図6に示すステップS113~S116において、第1赤外線センサ10の検知結果に基づいて、ガスバーナ7の燃焼による炎の有無を判断する。
【0118】
この際、ガスバーナ7の炎から放射される赤外線が調理容器5の底面によって反射するだけでなく、バーナキャップ70の反射面79Mによっても反射し、その反射した赤外線が調理容器5の底面によって反射して第1赤外線センサ10に到達する。これにより、多種多様な調理容器5の底面の反射率が低くても、ガスバーナ7の炎から放射される赤外線が第1赤外線センサ10に到達し易くなるので、第1赤外線センサ10に到達する赤外線の強度が弱くなり難い。その結果、制御部50は、第1赤外線センサ10の検知結果に基づいて、ガスバーナ7の燃焼による炎の有無を精度良く判断できる。
【0119】
また、この加熱調理器1では、制御部50は、図6に示すステップS101~S109において、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の検知結果に基づいて第1透光部31及び第2透光部32がそれぞれ汚れているか否かを判断する。
【0120】
この際、光源99から照射される光がバーナキャップ70の反射面79Mによっても反射し、その反射した光が調理容器5の底面によって反射して第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20に到達する。これにより、多種多様な調理容器5の底面の反射率が低くても、光源99から照射される光に含まれる赤外線が第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20に到達し易くなるので、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20に到達する赤外線の強度が弱くなり難い。その結果、制御部50は、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の検知結果に基づいて第1透光部31及び第2透光部32がそれぞれ汚れているか否かを精度良く判断できる。
【0121】
したがって、実施例の加熱調理器1では、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20に到達する赤外線の強度が弱くなり難く、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の誤検知を抑制でき、ひいては、制御部50が第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の検知結果に基づく判断処理を精度良く行うことができる。
【0122】
さらに、この加熱調理器1では、内炎用ケーシング部材の内周側に設けられた複数の炎口と赤外線センサとが近い上記従来の加熱調理器と比較して、バーナキャップ70の外周側に設けられた複数の炎口70Fから第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20が離れている。そして、この加熱調理器1では、複数の炎口70Fと、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20との間に反射面79Mが配置されている。このような反射面79Mによって、炎から放射される赤外線が第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の周囲に照射されることを抑制できる。その結果、この加熱調理器1では、ガスバーナ7の炎や炎から放射される赤外線によって第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の周囲が過度に加熱されることを抑制できるので、第1赤外線センサ10及び第2赤外線センサ20の耐久性の向上を実現できる。
【0123】
また、この加熱調理器1では、ガスバーナ7の炎は、第1赤外線センサ10を囲むステンレス板79によって構成された反射面79Mで確実性高く反射して第1赤外線センサ10に一層到達し易くなっている。これにより、この加熱調理器1では、第1赤外線センサ10に到達する赤外線の強度が一層弱くなり難い。その結果、制御部50は、第1赤外線センサ10の検知結果に基づいて、ガスバーナ7の燃焼による炎の有無を一層精度良く判断できる。
【0124】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0125】
実施例の加熱調理器1について、第2透光部32及び第2赤外線センサ20を無くし、制御部50が第1赤外線センサ10の検知結果に基づいて炎の有無を判断するとともに、第1透光部31が汚れているか否かを判断するように変更した構成や、制御部50が第1赤外線センサ10の検知結果に基づいて炎の有無のみを判断するように変更した構成も、本発明に含まれる。
【0126】
実施例では、反射面79Mは、ステンレス板79の鏡面加工された上面によって形成されているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、反射面は、切削加工、鏡面よりも粗い研磨加工等された金属板の表面や、金属粉末が配合された耐熱塗料が塗布された面等であってもよい。
【0127】
実施例では、第1透光部31及び第2透光部32はそれぞれ、天板9上で露出するように設けられているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、透光部は、赤外線センサを上から覆うものであれば、天板と同じ高さとなる位置で露出していてもよいし、天板よりも下方の位置で露出していてもよい。
【0128】
実施例では、ガスバーナ7が天板9上に設けられているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、ガスバーナは、天板よりも下方に配置された複数の炎口を有し、燃焼による炎を各炎口から上向きに発生させるようになっていてもよい。
【0129】
被加熱物には、調理容器5の他、焼き網や、被調理食材そのもの等が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は例えば、住宅の台所や施設の厨房設備等に利用可能である。
【符号の説明】
【0131】
1…加熱調理器
9…天板
5…被加熱物(調理容器)
7…ガスバーナ
10、20…赤外線センサ(10…第1赤外線センサ、20…第2赤外線センサ)
50…制御部
70…バーナキャップ
70F…複数の炎口
79M…反射面
79…ステンレス板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8