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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】操作具収納容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A45D33/00 610G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020094651
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186254
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩通
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-095398(JP,U)
【文献】登録実用新案第3115036(JP,U)
【文献】特開2009-125117(JP,A)
【文献】特開平10-094423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00~33/38
B65D 5/38
B65D 88/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部材と、
前記上部材の下方に配置された下部材と、
を備え、
前記下部材には、上方に向けて開口し、操作具を収納するための操作具収納部が設けられ、
前記上部材と前記下部材とは、前記操作具収納部の開口が前記上部材によって閉塞される閉位置と、前記操作具収納部の開口が前記上部材から解放される開位置と、の間を、上下方向に交差する方向に沿って相対的にスライド移動可能とされ、
前記操作具収納部に、前記操作具を支持する支持部材が設けられ、
前記上部材に、下方に向けて突出する係止壁部が設けられ、
前記支持部材における前記閉位置から前記開位置に向かうスライド方向の後端部には、上方に向けて突出し、前記開位置において前記上部材の前記係止壁部に当接する当接壁部が設けられ、
前記操作具収納部の底面に、前記支持部材における前記スライド方向の後端部に当接し、前記開位置において前記当接壁部が前記係止壁部に当接した際に、前記支持部材の前記スライド方向の後方への移動を規制する移動規制部が設けられ
前記支持部材における前記スライド方向の後端部に、前記スライド方向の後方に向けて突出し、前記開位置において前記当接壁部が前記係止壁部に当接し、前記操作具収納部の底面に対して前記支持部材が傾動する際に、所定の傾斜角度を超える前記支持部材の傾動を規制する傾動規制片が設けられた、操作具収納容器。
【請求項2】
前記上部材は、
上方に向けて開口し、内容物を収容するための内容物収容部と、
前記内容物収容部に対して開閉可能に連結された上蓋と、
を有する、請求項1に記載の操作具収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作具収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料とともにブラシ、パフ等の塗布具を収納することができるコンパクト容器が、従来から知られている。例えば下記の特許文献1に、化粧料を収容するボトル容器と、塗布具を保持するとともに、ボトル容器の底部に重ね合わされた保持部と、保持部をボトル容器に旋回可能に連結する回動軸を有するヒンジ手段と、を備えるボトル容器構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-125117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のボトル容器構造においては、回動軸を中心としてボトル容器と保持部とを相対的に旋回させることによって、保持部の上部を解放させ、保持部に収納された塗布具を取り出すことができる。しかしながら、この構成では、塗布具を取り出しにくい場合があり、塗布具を取り出す際の操作性を改善する余地があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、例えば塗布具等を含む操作具を取り出す際の操作性に優れた操作具収納容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の操作具収納容器は、上部材と、前記上部材の下方に配置された下部材と、を備え、前記下部材には、上方に向けて開口し、操作具を収納するための操作具収納部が設けられ、前記上部材と前記下部材とは、前記操作具収納部の開口が前記上部材によって閉塞される閉位置と、前記操作具収納部の開口が前記上部材から解放される開位置と、の間を、上下方向に交差する方向に沿って相対的にスライド移動可能とされ、前記操作具収納部に、前記操作具を支持する支持部材が設けられ、前記上部材に、下方に向けて突出する係止壁部が設けられ、前記支持部材における前記閉位置から前記開位置に向かうスライド方向の後端部には、上方に向けて突出し、前記開位置において前記上部材の前記係止壁部に当接する当接壁部が設けられ、前記操作具収納部の底面に、前記支持部材における前記スライド方向の後端部に当接し、前記開位置において前記当接壁部が前記係止壁部に当接した際に、前記支持部材の前記スライド方向の後方への移動を規制する移動規制部が設けられている。
【0007】
本発明の一つの態様の操作具収納容器においては、上部材と下部材とを上下方向に交差する方向に沿って閉位置から開位置まで相対的にスライド移動させ、操作具収納部の開口を上部材から解放させることによって、操作具収納部に収納された操作具を取り出すことができる。このとき、支持部材のスライド方向の後端部に設けられた当接壁部が上部材の係止壁部に当接するとともに、操作具収納部の底面に設けられた移動規制部が支持部材のスライド方向の後方への移動を規制する。そのため、支持部材は、スライド方向の前端側が操作具収納部の底面から上昇する方向に傾動する。これにより、本発明の一つの態様の操作具収納容器によれば、操作具を取り出し易くなり、操作具を取り出す際の操作性を向上することができる。
【0008】
本発明の一つの態様の操作具収納容器において、前記上部材は、上方に向けて開口し、内容物を収容するための内容物収容部と、前記内容物収容部に対して開閉可能に連結された上蓋と、を有していてもよい。
【0009】
この構成によれば、操作具が例えばブラシ等の化粧具である場合、内容物として、化粧具を用いて塗布を行う化粧料を内容物収容部内に収容することができる。これにより、内容物と操作具との双方を一つの容器内に収容することができる。
【0010】
本発明の一つの態様の操作具収納容器において、前記支持部材における前記スライド方向の後端部に、前記スライド方向の後方に向けて突出し、前記開位置において前記当接壁部が前記係止壁部に当接し、前記操作具収納部の底面に対して前記支持部材が傾動する際に、所定の傾斜角度を超える前記支持部材の傾動を規制する傾動規制片が設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、開位置において支持部材が傾動する際に傾動規制片が所定の傾斜角度を超える支持部材の傾動を規制するため、支持部材の傾斜角度が大きくなり過ぎることがなく、支持部材が安定した姿勢を維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、操作具を取り出す際の操作性に優れた操作具収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のコンパクト容器の閉位置における平面図である。
図2】コンパクト容器の閉位置における正面図である。
図3図1のIII-III線に沿うコンパクト容器の縦断面図である。
図4】コンパクト容器の開位置における平面図である。
図5図4のV-V線に沿うコンパクト容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る操作具収納容器について、図1図5を用いて説明する。本実施形態では、操作具収納容器の一つの形態として、化粧料と操作具との双方を収容するコンパクト容器を例に挙げて説明する。また、操作具として、化粧料を塗布するためのブラシを例に挙げて説明する。
【0015】
なお、構成および動作については後で詳しく説明するが、本実施形態のコンパクト容器は、化粧料を使用するために容器本体が開閉可能とされるとともに、操作具を出し入れするために下部材の操作具収納部が開閉可能とされている。ただし、本明細書で用いる閉蓋状態または開蓋状態との表現は、下部材の操作具収納部が閉じた状態または開いた状態を意味しており、容器本体の開閉状態を意味していない。また、操作具収納部の開口が上部材によって閉塞される位置を閉位置と称し、操作具収納部の開口が上部材から解放される位置を開位置と称する。
【0016】
図1図3に示すように、本実施形態のコンパクト容器10は、上部材11と、上部材の下方に配置された下部材12と、上部材11と下部材12とを連結する連結部13と、を備えている。上部材11は、上方に向けて開口し、内容物を収容するための容器本体14と、容器本体14の開口を閉塞する上蓋15と、容器本体14に対して上蓋15を開閉可能に連結するヒンジ部16と、を有する。
本実施形態の容器本体14は、特許請求の範囲の内容物収容部に相当する。
【0017】
コンパクト容器10は、閉蓋状態において、平面視矩形状の容器である。なお、本実施形態のコンパクト容器10の平面形状は、長方形状であるが、正方形状であってもよい。また、コンパクト容器10の平面形状は、必ずしも矩形状でなくてもよく、例えば楕円形状等、他の形状であってもよい。上部材11と下部材12とは、同一の平面形状および同一の大きさを有しており、コンパクト容器10は、全体として直方体状の形状を有する。コンパクト容器10は、内容物Cを収容する上部材11と、操作具18を収納する下部材12と、が上下方向に積層された2段重ねの構成を有する。
【0018】
閉蓋状態のコンパクト容器10において、上部材11および下部材12は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oと称し、容器軸Oに沿う方向であって、上部材11が位置する側を上側と称し、下部材12が位置する側を下側と称する。また、容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向のうち、互いに直交し合う一方向を前後方向と称し、他方向を左右方向と称する。さらに、前後方向のうち、ヒンジ部16側を後方と称し、その反対側を前方と称する。
【0019】
また、上部材11と下部材12とは、連結部13を中心として回動し、閉位置と開位置との間を、上下方向に直交する方向、すなわち水平面内に沿って相対的にスライド移動可能とされている。したがって、使用者がコンパクト容器10を使用する際には、上部材11および下部材12のいずれか一方の向きを固定したまま、他方を回動させることも可能であるし、上部材11と下部材12とを互いに逆回りに回動させることも可能である。
【0020】
ただし、図4においては、図1に示す閉位置から、上部材11の向きを固定したまま、下部材12を反時計回りに90°回動させ、開位置とした例を図示する。本明細書では、図4に矢印Yで示すように、回動させる側の部材が閉位置から開位置に移動する方向をスライド方向と称し、矢印Yの先端が向かう側をスライド方向の前方と称し、矢印Yの後端側をスライド方向の後方と称する。したがって、本実施形態のスライド方向は、直線状ではなく、連結部13を中心とした円弧状となる。
【0021】
図3に示すように、容器本体14は、平板状の本体底壁部20と、本体底壁部20の外周に沿って延在し、上方に突出する本体周壁部21と、本体周壁部21の後方に形成され、ヒンジピン22を支持するピン受け部23と、本体周壁部21の外側に位置し、下方に向けて突出する係止壁部24と、を有する。容器本体14は、本体底壁部20、本体周壁部21、ピン受け部23、および係止壁部24が樹脂等の材料によって一体に形成されている。
【0022】
本体底壁部20と本体周壁部21とは、上方に向けて開口し、内容物Cを収容するための収容空間を有する箱状の内容物収容部26を構成する。内容物収容部26の収容空間には、例えばファンデーション等の化粧料が、内容物Cとして収容される。
【0023】
ピン受け部23は、本体底壁部20の外周に沿う本体周壁部21のうち、後側の本体周壁部212の後方に張り出して形成されている。ピン受け部23は、ヒンジピン22が挿通される孔23hを有し、孔23hに挿通されたヒンジピン22を支持する。
【0024】
係止壁部24は、本体周壁部21のうち、ピン受け部23が形成されていない部分の本体周壁部21、すなわち、右側、前側および左側の本体周壁部211の外側に位置し、上端が本体周壁部211に連結され、下端が下方に向けて延在した形状で形成されている。後述するように、係止壁部24は、開位置において支持トレイの当接壁部に当接する。そのため、係止壁部24の下端24bは、本体底壁部20の下面20bよりも下方に位置している。また、ピン受け部23の下面23bは、本体底壁部20の下面20bよりも下方に位置している。
【0025】
本実施形態の場合、係止壁部24は、本体周壁部211の周囲を囲むように形成され、コンパクト容器10の外装筐体の一部として機能する。逆に言えば、本実施形態の場合、コンパクト容器10の外装筐体の一部が、係止壁部24として機能する。また、図2に示すように、前側の係止壁部24には、使用者が上蓋15を開く際に指を引っ掛けるための操作用凹部28が設けられている。
【0026】
図3に示すように、上蓋15は、平板状の天壁部30と、天壁部30の外周に沿って延在し、下方に突出する上蓋周壁部31と、天壁部30の後端側に設けられたピン受け部32と、を有する。上蓋15は、天壁部30、上蓋周壁部31、およびピン受け部32が樹脂等の材料によって一体に形成されている。上蓋15は、内容物収容部26の上部開口を閉塞する。ピン受け部32は、図示しない孔を有し、孔に挿通されたヒンジピン22を支持する。上蓋15は、ヒンジピン22の中心軸Eを中心として容器本体14に対して回動する。本実施形態では、図1に示すように、2本のヒンジピン22が用いられているが、ヒンジピン22の数、形態、材質等の具体的構成については、特に限定されない。また、天壁部30の下面には、鏡部材33が嵌め込まれている。
【0027】
下部材12は、平板状の下底壁部35と、下底壁部35の外周に沿って設けられ、上方に突出する下周壁部36と、下底壁部35の上面35aに形成された移動規制部37と、を有する。下底壁部35と下周壁部36とは、上方に向けて開口し、操作具18を収容するための操作具収納部38を構成する。本実施形態では、下底壁部35と下周壁部36とは、それぞれが樹脂等の材料によって別部材で構成されているが、一体に形成されていてもよい。
【0028】
操作具収納部38には、操作具18を支持する支持トレイ40が設けられている。本実施形態では、操作具18としてブラシを例示するが、例えばパフ等、他の操作具であってもよい。したがって、下部材12は、ブラシケースとして機能する。
本実施形態の支持トレイ40は、特許請求の範囲の支持部材に相当する。
【0029】
本実施形態の場合、下周壁部36のうち、後側の下周壁部362は、下底壁部35から上方に向けて延びる直立部363と、直立部363の上端に位置する支持部364と、支持部364と下底壁部35の端面35cとの間に位置する傾斜部365と、を有する。図5に示すように、開位置において、支持部364は、上部材11の係止壁部24の下端24bに当接した状態で上部材11を下方から支持する。
【0030】
移動規制部37は、下底壁部35の上面35aから上方に突出し、下底壁部35と一体に形成されている。図1に示すように、移動規制部37は、閉位置での平面視において、下底壁部35の左右方向の中央よりも左側、かつ、前後方向の中央よりも後側の位置に左右方向に延在する凸条として形成されている。換言すると、移動規制部37は、支持トレイ40におけるスライド方向の後方に形成されている。図3に示すように、移動規制部37は、下底壁部35の上面35aに対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部371と、下底壁部35の上面35aに対して平行な平坦面を有する平坦部372と、平坦部372の後方において上方に向けて突出する突出部373と、を有する。
【0031】
支持トレイ40は、操作具18を下方から支持する底板41と、底板41の上面41aから上方に延在する当接壁部42と、当接壁部42の上下方向中央部から後方に向けて突出する傾動規制片43と、を有する。図4に示すように、底板41は、開位置において、ブラシの柄の右辺の略中央部に対応する位置を中心とし、柄の右辺の略半分の長さを半径とする半円形に切り欠かれた切欠部41dが形成されている。切欠部41dは、操作具18を取り出す際に使用者が指を入れる個所となる。また、切欠部41dの両端には、R面取り加工部R1,R2が施されている。傾動規制片43と下周壁部362との間には、間隙K1が設けられている。
【0032】
支持トレイ40は、移動規制部37が当接壁部42の後面42bの下端に当接する状態で、下底壁部35上に載置されている。支持トレイ40の当接壁部42の上端42aは、下周壁部36の上端36aよりも上方に位置している。また、当接壁部42の上端42aは、容器本体14の本体底壁部20の下面20bには当接しておらず、当接壁部42と本体底壁部20との間には、僅かな間隙K2が設けられている。また、操作具18の上面18aは、下周壁部36の上端36aよりも下方に位置している。
【0033】
図1に示すように、連結部13は、上下方向に延在する軸体45と、軸体45を支持する軸受け部46と、を有する。連結部13は、上部材11と下部材12とを軸体45の中心軸Fを中心として相対的に回動可能に連結するものであればよく、具体的な構成は特に限定されない。例えば軸体45は、上部材11および下部材12のいずれか一方と一体に形成されていてもよいし、上部材11および下部材12とは別部材で構成されていてもよい。
【0034】
図1に示す閉位置において、下部材12の左辺に沿う下周壁部36の上面には、下方に凹む嵌合凹部36dが形成されている。また、容器本体14の本体底壁部20には、下方に向けて突出し、下周壁部36の嵌合凹部36dに嵌合する嵌合凸部20dが形成されている。嵌合凸部20dは、前端側が嵌合凹部36dに当接するとともに、後端側が嵌合凹部36dとの間に間隙を有するとともに、後方に向けて縮幅される形状を有する。この構成によって、図1に示す閉位置から、上部材11に対して下部材12が反時計回りに回動する方向(矢印Y方向)のスライド移動が許容されるとともに、上部材11に対して下部材12が時計回りに回動する方向(矢印Yとは逆方向)のスライド移動が規制される。
【0035】
以下、本実施形態のコンパクト容器10において、操作具18を取り出す際の手順について説明する。
図1に示す閉位置から図4に示す開位置に向けて、上部材11に対して下部材12を反時計回りに回動させる。このとき、操作具収納部38に配置された支持トレイ40の当接壁部42は、平面視において、上部材11の外側にはみ出すことなく、上部材11と重なる位置、すなわち上部材11の下方を通過して開位置に向けて移動する。このとき、容器本体14の本体底壁部20には、当接壁部42と干渉する部材が存在しないため、当接壁部42は、上部材11のどの部分とも接触することなく、開位置に向けて移動する。また、当接壁部42と本体底壁部20との間には間隙K2が設けられているため、当接壁部42が本体底壁部20の下面20bに接触することもなく、下部材12は支持トレイ40を伴って円滑に移動する。
【0036】
上部材11の係止壁部24の下端24bが当接壁部42の上端42aよりも下方に位置しているため、下部材12が開位置に到達した時点で当接壁部42が係止壁部24に当接し、当接壁部42は、係止壁部24からスライド方向後方に向かう圧力Pを受ける。このとき、仮に下部材12に移動規制部37が設けられていなかったとすると、係止壁部24からの圧力Pによって操作具収納部38内で支持トレイ40がスライド方向後方に移動してしまい、支持トレイ40が傾動することはない。
【0037】
ところが、本実施形態の場合、下部材12に移動規制部37が設けられているため、係止壁部24からの圧力Pを受けた際に、移動規制部37によって、支持トレイ40がスライド方向後方に移動することが規制される。また、移動規制部37が当接壁部42の下部のみに当接しており、当接壁部42の上部側の移動は規制されないため、係止壁部24からの圧力Pによって、支持トレイ40は、当接壁部42の下端と底板41との角部Gを支点として傾動する。この動きによって、支持トレイ40は、スライド方向前側が下底壁部35から上昇する方向に傾斜した姿勢となる。
【0038】
また、当接壁部42からスライド方向後方に突出する傾動規制片43が設けられているため、支持トレイ40が所定の傾斜角度θまで傾動した時点で傾動規制片43が下底壁部35に当接し、当該傾斜角度θを超える支持トレイ40の傾動が規制される。なお、傾斜角度θは、下底壁部35の上面35aと支持トレイ40の底板41の下面41bとのなす角度と定義する。支持トレイ40の傾斜角度θは、傾動規制片43の寸法や高さ方向の位置の設計によって適宜設定することができる。例えば所望の傾斜角度をθとし、支持トレイ40の下面41bから傾動規制片43までの高さをHとし、傾動規制片43の前後方向の寸法をWとしたとき、tanθ=H/Wを満たすように、各値を設定すればよい。
【0039】
本実施形態の場合、支持トレイ40の底板41に半円形の切欠部41dが設けられているため、支持トレイ40が傾斜した姿勢となった後、使用者は、支持トレイ40と操作具収納部38との間から切欠部41dに指を入れて操作具18を把持し、操作具18を容易に取り出すことができる。
【0040】
なお、支持トレイ40の傾斜角度θについては、傾斜角度θが小さすぎると、操作具18の取り出しが困難なままである。その一方、傾斜角度θが大きすぎると、支持トレイ40が傾動する際の勢いによって、例えば操作具18が支持トレイ40から落下する、操作具18に付着した内容物が飛散する等の問題が生じるおそれがある。そのため、傾斜角度θは、例えば操作具18の種類等に応じて、適切に設定されることが好ましい。例えば支持トレイ40が傾動した際に、支持トレイ40の下方に使用者の指が入り込む程度の隙間ができることが好ましい。また、傾斜角度θが比較的大きい場合には、支持トレイ40が傾動する際の勢いを小さくするため、上部材11と下部材12との摺動(スライド)時の勢いを適宜弱められるように、摺動抵抗を比較的大きくする等の調整を行ってもよい。なお、操作具18の種類によっては傾斜角度θがあまり大きくなくてもよく、例えば棒状の塗布具等を用いる場合には、必ずしも支持トレイ40の下方に使用者の指が入り込む程度の隙間ができるまで支持トレイ40を傾動させなくてもよい。
【0041】
例えば特許文献1に開示された従来の容器においては、操作具が収納された収納部を容器本体に対して回動させることによって収納部を解放させ、操作具を外部に露出させることができるが、場合によっては操作具を取り出しにくく、操作具を取り出す際の操作性に改善の余地があった。
【0042】
これに対して、本実施形態のコンパクト容器10においては、上述したように、上部材11と下部材12とを閉位置から開位置まで相対的にスライド移動させ、操作具収納部38の開口を上部材11から解放することによって、操作具収納部38に収納された操作具18を取り出すことができる。このとき、支持トレイ40の当接壁部42が上部材11の係止壁部24に当接するとともに、操作具収納部38に設けられた移動規制部37により支持トレイ40のスライド方向後方への移動が規制される。これにより、操作具18は、支持トレイ40とともに傾動し、スライド方向前側が操作具収納部38から上昇する姿勢となる。このように、本実施形態のコンパクト容器10によれば、操作具18を取り出し易く、操作具18を取り出す際の操作性を従来に比べて向上することができる。
【0043】
また、本実施形態のコンパクト容器10においては、上部材11が容器本体14と上蓋15とを有しているため、ファンデーション等の内容物Cを容器本体14内に収容することができる。これにより、内容物Cと操作具18との双方を一つの容器内に収容することができる。
【0044】
また、本実施形態のコンパクト容器10においては、支持トレイ40に傾動規制片43が設けられているため、開位置において支持トレイ40が傾動する際に所定の傾斜角度θを超える支持トレイ40の傾動が傾動規制片43によって規制される。これにより、支持トレイ40の傾斜角度θが大きくなり過ぎて、例えば支持トレイ40が倒れることが抑制され、支持トレイ40が安定した姿勢を維持することができる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、係止壁部24は、平面矩形状の上部材11の3辺に沿って設けられていたが、必ずしも3辺になくてもよく、少なくとも開位置において当接壁部42に当接する位置、上記実施形態であれば、図1の右辺手前側に設けられていればよい。また、上記実施形態では、係止壁部24が外装筐体を兼ねる構成を挙げたが、この構成に代えて、係止壁部24が外装筐体とは別に形成されていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態の上部材11と下部材12とは、連結部13を中心として円弧状に相対的にスライド移動可能であったが、例えば上部材11に対して下部材12を前方に引き出すというように、直線状に相対的にスライド移動可能とされていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態の上部材11は内容物Cを収容する容器本体14と上蓋15とを有していたが、この構成に代えて、上部材が蓋体のみで構成された容器に本発明を適用してもよい。この場合には、本発明の操作具収納容器は、操作具を収納するための専用容器として機能する。
【0048】
その他、操作具収納容器を構成する各部の形状、数、配置、構成材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 コンパクト容器(操作具収納容器)
11 上部材
12 下部材
14 容器本体(内容物収容部材)
15 上蓋
18 操作具
24 係止壁部
37 移動規制部
38 操作具収納部
40 支持トレイ(支持部材)
42 当接壁部
43 傾動規制片
C 内容物
図1
図2
図3
図4
図5