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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
E06B5/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020144636
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039546
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 龍大
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136928(JP,A)
【文献】実開昭54-159729(JP,U)
【文献】特開昭52-008637(JP,A)
【文献】特開2014-129662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪部材と横部材と補強材を有し、竪部材は、補強材呑み込み溝に樹脂ピースが配設されており、横部材は、内部に補強材が長手方向に配置してあり、横部材端面が樹脂ピースに当接した状態で竪部材の見込面に締結材で固定されており、補強材は、横部材端部から突出して補強材呑み込み部に呑み込まれていることを特徴とする建具。
【請求項2】
竪部材と横部材と補強材を有し、竪部材は、補強材呑み込み溝に樹脂ピースが配設されており、横部材は、内部に補強材が長手方向に配置してあり、横部材端面が樹脂ピースに当接した状態で竪部材の見込面に締結材で固定されており、補強材は、横部材と略同じ長さであり、横部材内部に配置されていることを特徴とする建具。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建具には、例えば、防火サッシが知られており、このような防火サッシにより火災時の延焼を防ぐようにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、より高い防火性能を有し、火災時における延焼防止機能を高めた防火サッシの開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するために請求項1記載による建具は、竪部材と横部材と補強材を有し、竪部材は、補強材呑み込み溝に樹脂ピースが配設されており、横部材は、内部に補強材が長手方向に配置してあり、横部材端面が樹脂ピースに当接した状態で竪部材の見込面に締結材で固定されており、補強材は、横部材端部から突出して補強材呑み込み部に呑み込まれていることを特徴とする。
【0005】
また、請求項2記載による建具は、竪部材と横部材と補強材を有し、竪部材は、補強材呑み込み溝に樹脂ピースが配設されており、横部材は、内部に補強材が長手方向に配置してあり、横部材端面が樹脂ピースに当接した状態で竪部材の見込面に締結材で固定されており、補強材は、横部材と略同じ長さであり、横部材内部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上の構成により、高い防火性能を有し、火災時における延焼防止機能を高めた防火サッシ(建具)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る実施形態の建具の正面図である。
図2図1の(2)-(2)線断面図である。
図3図1の(3)-(3)線断面図である。
図4】第1実施形態の中桟の取付け構成を示し、(a)は、図1の室内側から見た要部拡大図、(b)は(a)の(b)-(b)線断面図、(c)は(a)の(c)-(c)線断面図、(d)は(a)の(d)-(d)線断面図である。
図5図4(a)の分解図である。
図6】第1実施形態の中桟の取付け構成で用いられる樹脂ピースを示す斜視図である。
図7】第1実施形態の中桟の取付け構成による作用図である。
図8】第2実施形態の中桟の取付け構成を示し、(a)は、室内側から見た要部拡大図、(b)は(a)の(b)-(b)線断面図、(c)は(a)の(c)-(c)線断面図である。
図9図8(a)の分解図である。
図10】第2実施形態の中桟の取付け構成で用いられる樹脂ピースを示す斜視図である。
図11図3の要部拡大図である。
図12図11の(12)-(12)線断面図である。
図13】外障子の召合わせ框を室内側から見た図である。
図14】クレセント部分における加熱発泡材による作用効果の説明図である。
図15図1の要部拡大図である。
図16図15の(16)-(16)線断面図である
図17図16の(17)-(17)線断面図である。
図18】下框部分および召し合わせ框部分における加熱発泡材による作用効果の説明図である。
図19】下框部分および召し合わせ框部分における加熱発泡材による作用効果の説明図である。
図20】下框部分における加熱発泡材による作用効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の建具Aを説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
[建具の構成]
本実施形態で示す建具Aは、図1図3に示すように躯体Bの開口B1に設けられる防火サッシであり、開口B1に配置された竪枠A1及び横枠A2の内周側に、間口方向(以下、左右という)に開閉自在に支持された外障子Cと内障子Dを有する。
外障子Cと内障子Dのそれぞれは、召し合わせ框(竪部材)c1、d1と、縦框c2、d2と、上框c3、d3と、下框c4、d4と、召し合わせ框(竪部材)c1、d1と縦框c2、d2とにわたる中桟(横部材)1と、召し合わせ框c1、d1、縦框c2、d2、上下框c3、d3、c4、d4、中桟1により支持されたガラスパネルc5、d5とを備えている。
中桟1は、図1図4(c)(d)、図5に示すように、中空形状であり、補強材2が内蔵されていると共に、召し合わせ框c1、d1に配設された樹脂ピース3を介して支持されている。
外障子Cの召し合わせ框c1には、図2及び図3に示すように、加熱発泡材e1、e2が配設され、外障子Cの下框c4には、加熱発泡材e4が配設されている。
【0010】
以下、中桟1の取付け構成を具体的に説明する。
この中桟1の取付け構成については、下記の通り第1実施形態及び第2実施形態を例示する。
【0011】
[中桟の取付け構成の第1実施形態]
先ず、中桟1の取付け構成の第1実施形態を図4及び図5を参照して説明する。
中桟1については、外障子Cの中桟1と内障子Dの中桟1とが同じ構成であるので、以下では、内障子D側の中桟1の構成を説明し、外障子C側の中桟1についての説明は、同符号を付すことで省略する。
【0012】
[中桟の構成]
中桟1は、アルミニウム製であり、図4(a)(b)に示すように、中桟1の長手方向の一端部10が召し合わせ框d1の補強材呑み込み溝d10の内周側の見込面にビス100により固定され、他端部11が縦框d2の内周側の補強材呑み込み溝d20の見込面にビス101により固定されている。
補強材呑み込み溝d10には、樹脂ピース3が配設されており、中桟1の一端部10が樹脂ピース3に当接した状態で固定され、一端部10が補強材呑み込み溝d10にわずかに呑み込まれている。
中桟1の他端部11は、縦框d2に凹設された補強材呑み込み溝d20の見込面に当接して呑み込まれた状態で固定されている。
補強材呑み込み溝d10、d20(c10、c20)は、ガラスパネルd5の左右の端部が嵌合されるパネル取付溝を兼ねている。
中桟1には、図4(c)(d)に示すように、上下にガラスパネルd5の上下方向の端部が嵌合されるパネル取付溝1a、1bを有し、パネル取付溝1a、1bの間に補強材2が嵌入される中空部1cが設けられている。
【0013】
[補強材の構成]
補強材2は、中桟1が加熱されたときの中桟1の変形を抑制して、熱で変形するガラスパネルd5の落下を防ぐものである
補強材2は、熱による伸びや変形が少ないスチールやステンレス等の金属製のものであり、図6に示すように、断面コ型に形成されている。
また、補強材2は、図5に示すように、中桟1の長手方向に沿う長さが中桟1よりも長いものであり、補強材2の召し合わせ框d1側の端部20が中桟1の召し合わせ框d1側の一端部10から突出するように配置されている。
補強材2の縦框d2側の端部21は、中桟1の他端部11から突出していない。
【0014】
このような補強材2は、図4(a)(b)に示すように、召し合わせ框d1側の他端部20が補強材呑み込み溝d10に呑み込まれていると共に、補強材呑み込み溝d10内の見込面に当接している。
また、縦框d2側の端部21が補強材呑み込み溝d20に呑み込まれていると共に、補強材呑み込み溝d20の見込面に当接している
また、補強材2は、中桟1の下側から中空部1cへ貫通するようにねじ込まれたビス102により固定されている。
【0015】
[樹脂ピースの構成]
樹脂ピース3は、火災による熱によって焼失する樹脂製のものであり、図6に示すように、中桟1の一端部10が当接する中桟当接板部30と、中桟1内、且つ補強材2の内側に挿入される挿入突起部31とを備えて一体形成されている。
中桟当接板部30は、図4図6に示すように、上下長さを中桟1の上下長さと略同じとすると共に、横幅を補強材呑み込み溝d10の溝深さよりも若干短い幅として形成されている。
このような中桟当接板部30は、中桟1の一端部10が補強材呑み込み溝d10にわずかに呑み込まれた状態で、中桟当接板部30の中桟1側の対面部30aに当接するようにされている。
挿入突起部31は、補強材2の長手方向に沿う向きに延設されており、補強材呑み込み溝d10から突出した部位が中桟1内、且つ補強材2の内側に挿入されている。
【0016】
中桟当接板部30と挿入突起部31の間には、図4(c)及び図6に示すように、補強材2の上面側の先端部2aが嵌合する嵌合溝32が形成されており、挿入突起部31が補強材2の内側に挿入されたときに嵌合溝32に補強材2の上面側の先端部2aが嵌合するようにされている。
【0017】
[中桟の作用]
次に、第1実施形態の構成で取り付けられた中桟1の作用について図7を参照して説明する。
火災時に発生する熱で建具Aが加熱されたときには、図7(a)~(c)に示すように、中桟1に長手方向への熱伸びや熱伸びによる熱変形が生じる。
このとき、図7(a)(b)に示すように、火災時に発生する熱で樹脂ピース3が焼失し、樹脂ピース3が配置されていた補強材呑み込み溝d10に空間が生じ、この空間が中桟1の熱伸び吸収代Lとして確保される。
【0018】
すなわち、中桟1の熱伸びを、補強材呑み込み溝d10に確保された熱伸び吸収代Lの範囲で吸収することができ、この熱伸びによる中桟1の変形量を抑制することができる。
また、中桟1の熱伸びが熱伸び吸収代Lで吸収されるため、熱伸びした中桟1が召し合わせ框d1及び縦框d2に対する押圧力を弱め、召し合わせ框d1及び縦框d2の変形を抑制することができる。
本実施形態の樹脂ピース3は、補強材呑み込み溝d10への中桟1の呑み込み量をわずかなものとしているため、焼失した際には、補強材呑み込み溝d10の深さの略全域に熱伸び吸収代Lを確保できる。
【0019】
中桟1の熱伸びによる変形は、図7(b)(c)に示すように、補強材2でも抑制されている。
すなわち、熱変形の少ない金属でなる補強材2が中桟1を内側から支えることで中桟1の変形を抑制することができる。
【0020】
以上のように、第1実施形態の取付け構成による中桟1は、熱伸びが熱伸び吸収代Lで吸収されることで変形を抑制できると共に、補強材2により中桟1の変形を抑制できる構成で建具Aに取付けられている。
すなわち、第1実施形態の取付け構成による中桟1が取付けられた建具Aは、火災時において中桟1の熱伸びによる召し合わせ框d1及び縦框d2の変形を抑制できると共に、これらの部材の変形によって生じる隙間を小さなものとすることができ、しかも、火災の熱により変形するガラスパネルd5の支持状態を確保することができる。
したがって、火災時の熱による隙間の発生が抑制できると共に、ガラスパネルd5の落下を防止できるため、高い防火性能を有し、火災時における延焼防止機能を高めることができる建具Aとなる。
【0021】
[中桟の取付け構成の第2実施形態]
次に、中桟1の取付け構成の第2実施形態を図8図10を参照して説明する。
第1実施形態と重複する構成については、同符号を付すことにより省略する。
【0022】
[中桟1の構成]
中桟1は、図8(a)(b)に示すように、補強材呑み込み溝d10に配設された本実施形態の樹脂ピース3に中桟1の一端部10が当接した状態で固定され、一端部10が補強材呑み込み溝d10に呑み込まれている。
【0023】
[補強材の構成]
補強材2は、中桟1の長手方向に沿う長さを中桟1の長手方向の長さと略同じ長さ(わずかに短い長さ)として形成され、補強材2の両端部20、21が中桟1の両端部10、11から突出せずに内蔵されている。
【0024】
[樹脂ピースの構成]
本実施形態の樹脂ピース3は、図10に示すように、中桟1の一端部10が当接する中桟当接板部33と、補強材2の召し合わせ框d1側の端部20が対面する補強材当接板部34と、中桟1内、且つ補強材2の内側に挿入される挿入突起部35とを備えて一体形成されている。
中桟当接板部33は、図8(a)、図9図10に示すように、上下長さを中桟1の上下長さと略同じとすると共に、横幅を補強材呑み込み溝d10の溝深さの略半分程度として形成されており、中桟1の一端部10が中桟当接板部33の中桟1側の対面部33aに当接するようにされている。
補強材当接板部34は、図8(a)(b)及び図10に示すように、中桟当接板部33の室外側の面に設けられており、中桟1側の面を補強材2の端部20が対面する対面部34aとして、ビス100部分を除いて中空部1cを覆う形状として形成されている。
挿入突起部35は、図8(a)(b)に示すように補強材当接板部33の対面部33aから中桟1側に突設されている。
【0025】
[中桟の作用(図示せず)]
第2実施形態の構成で取り付けられた中桟1の作用も第1実施形態の構成で取り付けられた中桟1と同じく、樹脂ピース3が焼失することで、樹脂ピース3が配置されていた補強材呑み込み溝d10に部分に空間が生じ、この空間が中桟1の熱伸び吸収代Lとして確保される。
また、熱変形の少ない金属でなる補強材2が中桟1を内側から支えることで中桟1の変形を抑制することができる。
すなわち、第2実施形態の取付け構成による中桟1が取付けられた建具Aは、
火災時において中桟1の熱伸びによる召し合わせ框d1及び縦框d2の変形を抑制できると共に、これらの部材の変形によって生じる隙間を小さなものとすることができ、しかも、火災の熱により変形するガラスパネルd5の支持状態を確保することができる。
したがって、火災時の熱による隙間の発生が抑制できると共に、ガラスパネルd5の落下を防止できるため、高い防火性能を有し、火災時における延焼防止機能を高めることができる建具Aとなる。
【0026】
[加熱発泡材の構成]
前述の建具Aには、図11図18に示すように、加熱発泡材e1~e6が配設されており、火災時の熱によって加熱発泡材e1~e6が発泡することによって、火災時の熱によって建具Aが変形したときに生じる隙間s~s3(図14図20参照)を塞いで延焼を防ぐようにされている。
加熱発泡材e1~e3は、図11図14に示すように、外障子Cの召し合わせ框c1における補強材呑み込み溝(パネル取付溝)c10内に配設されている。
加熱発泡材e4~e6は、図15図16に示すように、外障子D側に加熱発泡材e4、e5が配設され、内障子D側に加熱発泡材e6が配設されている。
【0027】
[加熱発泡材e1~e3の配設構成]
加熱発泡材e1は、外障子Cの召し合わせ框c1に設けられたクレセント受け6のうち、召し合わせ框c1内に位置する部位に配設されている。
ここでクレセント受け6は、右側の端部に補強材呑み込み溝(以下では「パネル取付溝」という)c10内の見込面と正対して固定される固定部60と、パネル取付け溝c10の外側にありクレセント5が係合する係合部61と、固定部60と係合部61を繋ぐ連結部62とを備えて構成されている。
連結部62は、パネル取付け溝c10側の端部がパネル取付け溝c10内で固定部60と一体に形成されていると共に、連結部62の係合部61側の端部が係合部61と一体に形成されており、固定部60から係合部61に向かってパネル取付け溝c10内から外側に突出し、固定部60と係合部61を連結するように延設されている。
【0028】
加熱発泡材e1は、図11図13に示すように、固定部60のねじ止め部分を除く面に、ガラスパネルc5の見込面と対向するように配設されている。
加熱発泡材e1の取付位置をパネル取付け溝c10内に位置する連結部62の室外側の面としてパネル取付け溝c10の室外側の内壁と対向するようにしてもよい。
加熱発泡材e2は、図11及び図13に示すように、パネル取付け溝c10の内周側、且つ室内側の見付面c1cに、連結部62を挟んで上下2か所に配設されている。
また、加熱発泡材e2は、長手方向をパネル取付け溝c10の上下方向に沿う方向とするものである。
本実施形態における加熱発泡材e2は、図13に示すように、パネル取付け溝c10の上下の範囲中の一部の範囲に相当する必要最低限の長さとして配置されている。
加熱発泡材e2の長手方向の長さに関しては、発泡時に、少なくとも隙間s1(図14参照)を塞ぐことができる長さであればよく、連結部62を除くパネル取付け溝c10の上下の範囲内であれば、例示した長さよりも長いものであってもよい。
加熱発泡材e3は、図11図13に示すように、パネル取付け溝c10の見込面c1bに、固定部60の室外側に固定部60と隣接するように、パネル取付け溝c10の上下方向の全域に配設されている。
【0029】
[加熱発泡材e1~e3の作用効果]
次に、このように配設された加熱発泡材e1~e3による作用効果を、図14(a)~(e)を参照して説明する。
図14(a)に示す室外側からの火災発生直後においては、ガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1に火災の熱による変形が発生する。
このとき、図14(b)に示すように、加熱発泡材e1、e2がない場合には、加熱発泡材e3が発泡し、ガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1の変形によって室外側で生じる隙間sを塞ごうとする。
しかしながら、図14(c)に示すように、発泡後も火災の熱によるガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1が変形するため、発泡した加熱発泡材e3とガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1との間に隙間が生じ、ガラスパネルc5と外障子Cの召し合わせ框c1との間の室外側の隙間sが、ガラスパネルc5と外障子Cの召し合わせ框c1との間の室内側の隙間s1と連通してしまい、炎が隙間sと隙間s1を通過して室外側から室内側に侵入してしまうおそれがあった。
【0030】
これに対して、加熱発泡材e1、e2がある場合には、図14(d)に示すように、最初に室外側の加熱発泡材e3が発泡し、ガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1の変形によって室外側で生じる隙間sを塞ごうとする。
このとき、前述のように発泡後も火災の熱によるガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1が変形するため、発泡した加熱発泡材e3とガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1との間に隙間が生じ、ガラスパネルc5と外障子Cの召し合わせ框c1との間の室外側の隙間sが、ガラスパネルc5と外障子Cの召し合わせ框c1との間の室内側の隙間s1と連通することになる。
この加熱発泡材e3の発泡後に、図14(e)に示すように、加熱発泡材e1、e2が発泡し、ガラスパネルc5と外障子Cの召し合わせ框c1との間の室内側の隙間s1を埋めることで、隙間sと隙間s1との連通を防ぐことができ、これによって、室外側から室内側への炎の侵入を防ぐことができる。
したがって、建具Aの防火機能が向上し、火災による延焼を抑制することができる。
【0031】
[加熱発泡材e4~e6の配設構成]
加熱発泡材e4は、図15図17に示すように、外障子Cの下框c4の室内側の見付面c40に、内障子Dの召し合わせ框(竪部材)d1の室外側の見付面70と向かいあうように配設されている。
外障子Cの下框c4は、外障子Cの召し合わせ框c1の内周側の見込面c1dに呑み込ませて連結してある。
召し合わせ框d1は、框本体7aと、框本体7aの外周側の見込面d1aに管状の竪材7bとを一体に有する構造のものであり、加熱発泡材e4が竪材7bの見付面70と向かい合うようにしている。
竪材7b内には、クレセント5をクレセント受け6に係合させたときに、外障子Cと内障子Dとを向かい合う方向に引き寄せて水密を確保するための引き寄せ機構等(図示せず)が内蔵されている。
加熱発泡材e5は、外障子Cの召し合わせ框c1の外周側、且つ室内側の見付面c41の全長にわたって配設されている。
加熱発泡材e6は、内障子Dの召し合わせ框d1の外周側、且つ室外側の見付面d40の全長にわたって配設されている。
なお、竪部材は、召し合わせ框d1以外に竪骨、方立等が含まれる。
【0032】
[加熱発泡材e4~e6の作用効果]
次に、このように配設された加熱発泡材e4~e6による作用効果を、図18図20を参照して説明する。
図18(a)(b)に示すように室外側からの火災発生直後においては、ガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1に火災の熱による変形や外障子Cの下框c4の室外側への転びが発生する。
このとき、図19(a)及び図20(a)に示すように、加熱発泡材e4がない場合には、加熱発泡材e5、e6が発泡し、外障子Cの召し合わせ框c1と内障子Dの召し合わせ框d1との間を塞ぐ。
しかしながら、ガラスパネルc5及び外障子Cの召し合わせ框c1の変形によって、補強材呑み込み溝c10とガラスパネルc5との間に、室外側と室内側とを連通する隙間s2が生じると共に、外障子Cの下框c4の室外側への転びによって、下框c4と召し合わせ框c1との間に隙間s3が生じ、隙間s2と隙間s3とが連通してしまい、炎が連通する隙間s2と隙間s3を通過して室外側から室内側に侵入するおそれがあった。
【0033】
これに対して、加熱発泡材e4がある場合には、図19(b)及び図20(b)に示すように、加熱発泡材e4~e6が発泡する。
加熱発泡材e4は、内障子Dの召し合わせ框d1に向かって発泡することで、外障子Cの下框c4の室外側への転びが発生したときに下框c4と召し合わせ框c1との間に生じる隙間s3を塞ぐ。
加熱発泡材e5、e6は、それぞれ外障子Cの召し合わせ框c1と内障子Dの召し合わせ框d1との間に発泡することで、外障子Cの召し合わせ框c1と内障子Dの召し合わせ框d1との間を塞ぐ。
すなわち、加熱発泡材e5、e6で塞ぐことができない隙間s3を加熱発泡材e4が埋めることで、隙間s2と隙間s3との連通を防ぐことができ、これによって、室外側から室内側への炎の侵入を防ぐことができる。
また、加熱発泡材e4は、内障子Dの召し合わせ框(竪部材)d1の室外側の見付面70と向かいあうように配設されているため、発泡した際に内障子Dの召し合わせ框(竪部材)d1が当てになり、下框c4と召し合わせ框c1との間の隙間s3を確実に塞ぐことができる。
したがって、建具Aの防火機能が向上し、火災による延焼を抑制することができる。
【0034】
以上の構成とする建具Aによると、火災時の熱による中桟1の変形を抑制すると共に、中桟1の伸びを吸収することで、召し合わせ框c1、d2及び縦框c2、d2の変形を抑制することができる。
召し合わせ框c1、d2及び縦框c2、d2の変形を抑制することで、各部位に生じる隙間s~s3を小さくすることができる。
また、隙間s~s3が生じても、加熱発泡材e1~e6によって隙間s~s3を塞ぐことで、炎の室内への侵入を防ぐことができる。
特に、加熱発泡材e1、e2、e4は、加熱発泡材e3、e5、e6では防げなかった部位の炎の室内への侵入を防ぐことができる。
したがって、防火機能が向上し、火災による延焼を抑制することができる建具Aを提供できる。
【0035】
以上、本発明に係る実施形態の建具を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
窓種は引違い窓に限定されるものではなく、内動片引き窓や外動片引き窓等にも適用できる。
【0036】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
A:建具
B:躯体
B1:開口
A1:竪枠
A2:横枠
C:外障子
D:内障子
c1:召し合わせ框(竪部材)
d1:召し合わせ框(竪部材)
c2:縦框
d2:縦框
c3:上框
d3:上框
c4:下框
d4:下框
c5:ガラスパネル
d5:ガラスパネル
1:中桟
1a:パネル取付溝
1b:パネル取付溝
1c:中空部
1d:見込面
10:一端部
11:他端部
c10:補強材呑み込み溝(パネル取付溝)
c1b:見込面
c1c:見付面
c1d:見込面
d10:補強材呑み込み溝(パネル取付溝)
d20:補強材呑み込み溝(パネル取付溝)
d1a:見込面
c41:見付面
d40:見付面
100:ビス(締結材)
101:ビス(締結材)
102:ビス
2:補強材
2a:先端部
20:端部
21:端部
3:樹脂ピース
30:中桟当接板部
31:挿入突起部
32:嵌合溝
33:中桟当接板部
34:補強材当接板部
35:挿入突起部
30a:対面部
33a:対面部
5:クレセント
6:クレセント受け
60:固定部
61:係合部
62:連結部
7a:框本体
7b:竪材
70:見付面
e1~e6:加熱発泡材
s~s3:隙間
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