(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】抽出システム
(51)【国際特許分類】
B01D 11/04 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
B01D11/04 B
(21)【出願番号】P 2020167650
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】野一色 公二
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0241028(US,A1)
【文献】特開2012-153546(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042136(WO,A1)
【文献】特開2016-019939(JP,A)
【文献】特開2000-176438(JP,A)
【文献】特開2011-074410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00-12/00
H01M 4/00-4/62
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを含む水溶液である原料液から抽出液により前記金属イオンを抽出させる抽出システムであって、
前記原料液を貯留する原料液槽と、
前記抽出液を貯留する抽出液槽と、
前記原料液槽から前記原料液が導入されるように前記原料液槽と接続されるとともに前記抽出液槽から前記抽出液が導入されるように前記抽出液槽と接続され、前記原料液槽から導入された前記原料液と前記抽出液槽から導入された前記抽出液とを互いに接触させることにより前記原料液から前記金属イオンを抽出して前記抽出液中へ移動させる抽出処理を行う抽出器と、
前記抽出処理後の前記原料液と前記抽出液との混合液を前記抽出器から受けるように前記抽出器に接続され、受け入れた前記混合液を前記原料液と前記抽出液とに分離させる分離器と、
前記分離器で分離された前記原料液を前記分離器から前記原料液槽へ導くように前記分離器と前記原料液槽とを繋ぐ原料液戻し路と、
前記分離器で分離された前記抽出液を前記分離器から前記抽出液槽へ導くように前記分離器と前記抽出液槽とを繋ぐ抽出液戻し路と、
前記原料液槽と前記原料液戻し路のいずれか一方である原料液pH調整対象部に接続され、前記抽出処理により低下した前記原料液のpHを上昇させる原料液pH調整剤を前記原料液pH調整対象部内の前記原料液に添加する原料液pH調整剤添加装置と、を備える、抽出システム
であって、
前記原料液pH調整剤添加装置は、前記原料液pH調整剤を貯留する原料液pH調整剤貯留部と、当該原料液pH調整剤貯留部から前記原料液pH調整対象部内の前記原料液に添加される前記原料液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節可能な原料液pH調整剤添加量調節部と、を含み、
前記抽出システムは、
前記原料液槽内の前記原料液及び前記原料液戻し路内の前記原料液のいずれか一方のpHを検出する原料液pHセンサと、
前記原料液pHセンサにより検出される前記原料液のpHである原料液pH検出値が予め設定された原料液pH最適値に近づくように前記原料液pH調整剤添加量調節部に前記原料液pH調整剤の添加量を調節させる制御部と、をさらに備える、抽出システム。
【請求項2】
前記原料液pH調整剤貯留部から前記原料液pH調整対象部内の前記原料液に添加される前記原料液pH調整剤の添加量の指標値である原料液pH調整剤指標値を検出する原料液pH調整剤指標値検出器をさらに備え、
前記制御部は、前記原料液pH検出値を前記原料液pH最適値に一致させるために前記原料液に添加する必要がある前記原料液pH調整剤の添加量である原料液必要添加量を算出し、前記原料液pH調整剤指標値検出器により検出される前記原料液pH調整剤指標値に対応する前記原料液pH調整剤の添加量が前記原料液必要添加量に一致するように前記原料液pH調整剤添加量調節部に前記原料液pH調整剤の添加量を調節させる、請求項
1に記載の抽出システム。
【請求項3】
前記原料液pHセンサは、前記原料液戻し路内の前記原料液のpHを検出する、請求項
1又は
2に記載の抽出システム。
【請求項4】
前記原料液戻し路は、前記原料液pH調整剤添加装置が接続されてその原料液pH調整剤添加装置により当該原料液戻し路内の前記原料液に前記原料液pH調整剤が添加される箇所である原料液pH調整剤添加箇所を有し、
前記原料液pHセンサは、前記原料液戻し路のうち当該原料液戻し路における前記原料液の流れ方向において前記原料液pH調整剤添加箇所よりも上流側の箇所で前記原料液のpHを検出する、請求項
3に記載の抽出システム。
【請求項5】
前記原料液戻し路は、前記原料液pH調整剤添加装置が接続されてその原料液pH調整剤添加装置により当該原料液戻し路内の前記原料液に前記原料液pH調整剤が添加される箇所である原料液pH調整剤添加箇所を有し、
前記原料液pHセンサは、前記原料液戻し路のうち当該原料液戻し路における前記原料液の流れ方向において前記原料液pH調整剤添加箇所よりも下流側の箇所で前記原料液のpHを検出する、請求項
3に記載の抽出システム。
【請求項6】
作動することにより前記原料液槽から前記原料液を導出して前記抽出器へ送る原料液送りポンプと、
作動することにより前記抽出液槽から前記抽出液を導出して前記抽出器へ送る抽出液送りポンプと、
前記原料液pH調整剤添加装置から前記原料液pH調整剤が添加された後、前記抽出器において抽出処理される前の前記原料液のpHを検出する抽出前pHセンサと、
前記抽出器において抽出処理された後、前記原料液pH調整剤添加装置から前記原料液pH調整剤が添加される前の前記原料液のpHを検出する抽出後pHセンサと、
前記原料液送りポンプ及び前記抽出液送りポンプの作動を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記抽出前pHセンサにより検出された前記原料液のpHから前記抽出後pHセンサにより検出された前記原料液のpHを減算することによって得られるそれらのpHの差である抽出前後pH差が予め設定された原料液pH差規定値よりも大きい場合には前記原料液送りポンプ及び前記抽出液送りポンプの作動を継続させ、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値以下である場合には前記原料液送りポンプ及び前記抽出液送りポンプの作動を停止させる、請求項1に記載の抽出システム。
【請求項7】
前記抽出液槽に接続され、前記抽出処理によって前記原料液から抽出された前記金属イオンを含む前記抽出液である抽出後抽出液を前記抽出液槽から導出させてその抽出後抽出液を逆抽出液と接触させることにより前記抽出後抽出液から前記金属イオンを抽出して前記逆抽出液中へ移動させる逆抽出処理を行い、その逆抽出処理後の前記抽出後抽出液である逆抽出後抽出液を前記抽出液槽へ戻す逆抽出装置をさらに備える、請求項1~
6のいずれか1項に記載の抽出システム。
【請求項8】
前記逆抽出装置は、
前記逆抽出液を貯留する逆抽出液槽と、
前記抽出液槽から前記抽出後抽出液が導入されるように前記抽出液槽と接続されるとともに前記逆抽出液槽から前記逆抽出液が導入されるように前記逆抽出液槽と接続され、前記抽出液槽から導入された前記抽出後抽出液と前記逆抽出液槽から導入された前記逆抽出液とを互いに接触させることにより前記逆抽出処理を行う逆抽出器と、
前記逆抽出器において前記逆抽出処理が行われた後の前記逆抽出後抽出液と前記逆抽出液との混合液である逆抽出後混合液を前記逆抽出器から受けるように前記逆抽出器に接続され、受け入れた前記逆抽出後混合液を前記逆抽出後抽出液と前記逆抽出液とに分離させる逆抽出後分離器と、
前記逆抽出後分離器で分離された前記逆抽出後抽出液を前記逆抽出後分離器から前記抽出液槽へ導くように前記逆抽出後分離器と前記抽出液槽とを繋ぐ逆抽出後抽出液戻し路と、
前記逆抽出後分離器で分離された前記逆抽出液を前記逆抽出後分離器から前記逆抽出液槽へ導くように前記逆抽出後分離器と前記逆抽出液槽とを繋ぐ逆抽出液戻し路と、
前記逆抽出液槽と前記逆抽出液戻し路のいずれか一方である逆抽出液pH調整対象部に接続され、前記逆抽出処理により上昇した前記逆抽出液のpHを低下させる逆抽出液pH調整剤を前記逆抽出液pH調整対象部内の前記逆抽出液に添加する逆抽出液pH調整剤添加装置と、を含む、請求項
7に記載の抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属イオンを含む水溶液である原料液から抽出液により金属イオンを抽出する抽出システムが知られている。下記特許文献1には、このような抽出システムの一例としての抽出装置が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された抽出装置は、抽出液による原料液からの金属イオンの抽出がそれぞれ行われる複数段の抽出器を備えている。複数段の抽出器は、原料液が順次流れるように直列に接続されている。具体的に、前記複数段の抽出器は、それぞれ、抽出器本体と排出ヘッダとを有する。抽出器本体は、原料液と抽出液とを互いに接触した状態で流通させてその過程で原料液から金属イオンを抽出して抽出液中へ移動させる抽出処理を行う流路を内部に有する。排出ヘッダは、前記流路の出口から当該排出ヘッダ内の空間に抽出処理後の原料液と抽出液との混合液が排出されるように抽出器本体に取り付けられている。前記流路の出口から排出された前記混合液は、排出ヘッダ内の空間で比重差により原料液と抽出剤とに分離するようになっている。複数段の抽出器のうち原料液の流れ方向において上流側の抽出器の排出ヘッダは、当該抽出器の下流側に隣り合う抽出器に接続配管を介して接続されており、上流側の抽出器の排出ヘッダ内の空間で分離した原料液が前記接続配管を通じて下流側の抽出器に流れるようになっている。
【0004】
また、この抽出装置では、抽出器の流路における前記抽出処理に伴って原料液のpHが低下して良好な抽出率が得られる最適pHから乖離し、その結果、複数段の抽出器のうち原料液の流れ方向において下流側の抽出器へ行くに従って金属イオンの抽出率が低下するのを防ぐために、前記接続配管において原料液にpH調整剤が添加される。このpH調整剤は、前記抽出処理により原料液に生じるpHの変化と逆向きのpHの変化を原料液に生じさせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の抽出装置では、当該抽出装置の大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、原料液のpHがその原料液中の特定の金属イオンを良好な抽出率で抽出可能な最適pHに近い状態での抽出時間を増やすとともに、当該抽出システムに供給される抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液からの金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定することが困難であるという一面がある。
【0007】
具体的に、前記従来の抽出装置では、上流側の抽出器とその下流側の抽出器との間の接続配管を流れる原料液にpH調整剤を添加して上流側の抽出器における抽出処理により低下した原料液のpHを最適pHに近づけるようになっているが、そのpH調整剤の添加により調整された原料液のpHが維持された状態での抽出処理が行われるのは、下流側の抽出器の流路での抽出処理の開始当初だけであり、抽出装置全体において原料液のpHが最適pHに近い状態での抽出時間を増やすためには、抽出器の段数を増やしてその各抽出器に原料液を流入させる各接続配管にpH調整剤を供給するようにせざるを得ない。この場合には、抽出装置が大型化するとともにその構成が複雑化する虞がある。
【0008】
また、前記従来の抽出装置では、その抽出装置全体での抽出時間は当該抽出装置が有する抽出器の段数に依存するため、当該抽出装置の最上流の抽出器に供給される抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度が変化した場合に、その原料液の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液からの金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定できるように改善する余地がある。
【0009】
本発明の目的は、大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、原料液のpHが最適pHに近い状態での抽出時間を増やして抽出効率を向上するとともに、抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液中の金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定することが可能な抽出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により提供される抽出システムは、金属イオンを含む水溶液である原料液から抽出液により前記金属イオンを抽出させる抽出システムである。この抽出システムは、前記原料液を貯留する原料液槽と、前記抽出液を貯留する抽出液槽と、前記原料液槽から前記原料液が導入されるように前記原料液槽と接続されるとともに前記抽出液槽から前記抽出液が導入されるように前記抽出液槽と接続され、前記原料液槽から導入された前記原料液と前記抽出液槽から導入された前記抽出液とを互いに接触させることにより前記原料液から前記金属イオンを抽出して前記抽出液中へ移動させる抽出処理を行う抽出器と、前記抽出処理後の前記原料液と前記抽出液との混合液を前記抽出器から受けるように前記抽出器に接続され、受け入れた前記混合液を前記原料液と前記抽出液とに分離させる分離器と、前記分離器で分離された前記原料液を前記分離器から前記原料液槽へ導くように前記分離器と前記原料液槽とを繋ぐ原料液戻し路と、前記分離器で分離された前記抽出液を前記分離器から前記抽出液槽へ導くように前記分離器と前記抽出液槽とを繋ぐ抽出液戻し路と、前記原料液槽と前記原料液戻し路のいずれか一方である原料液pH調整対象部に接続され、前記抽出処理により低下した前記原料液のpHを上昇させる原料液pH調整剤を前記原料液pH調整対象部内の前記原料液に添加する原料液pH調整剤添加装置と、を備える。
【0011】
この抽出システムでは、原料液と抽出液を循環させながら単一の抽出器で繰り返し原料液からの金属イオンの抽出処理を行うことができるとともにその循環のたびに原料液に原料液pH調整剤を添加して原料液のpHを最適pHに近づけることができるため、抽出器の段数の増加による抽出システムの大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、原料液のpHが最適pHに近い状態での抽出時間を増やして抽出効率を向上でき、さらに、原料液と抽出液の循環回数を適宜変更することで抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液中の金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定することができる。
【0012】
具体的に、この抽出システムでは、抽出器が原料液槽から原料液が導入されるようにその原料液槽と接続されるとともに抽出液槽から抽出液が導入されるように抽出液槽と接続され、分離器がその抽出器において抽出処理された後の原料液と抽出処理を行った後の抽出液との混合液を当該抽出器から受けるようにその抽出器に接続され、原料液戻し路が分離器で分離された原料液を分離器から原料液槽へ導くように分離器と原料液槽とを繋ぎ、抽出液戻し路が分離器で分離された抽出液を分離器から抽出液槽へ導くように分離器と抽出液槽とを繋いでいるので、原料液が原料液槽から抽出器と分離器を経て原料液槽へ戻るように当該原料液を循環させるとともに抽出液が抽出液槽から抽出器と分離器を経て抽出液槽へ戻るように当該抽出液を循環させながら、単一の抽出器で繰り返し原料液からの金属イオンの抽出処理を行うことができる。しかも、この抽出システムは、抽出器での抽出処理により低下した原料液のpHを上昇させる原料液pH調整剤を原料液槽と原料液戻し路のいずれか一方である原料液pH調整対象部内の原料液に添加する原料液pH調整剤添加装置を備えるため、原料液が原料液槽から抽出器と分離器を経て原料液槽へ戻るように循環するたびに原料液pH調整剤添加装置から原料液pH調整剤を原料液pH調整対象部内の原料液に添加して原料液のpHを最適pHに近づけることができる。よって、この抽出システムでは、抽出器の段数の増加による大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、抽出システム全体において原料液のpHが最適pHに近い状態での抽出時間を増やして抽出効率を向上できる。
【0013】
また、この抽出システムでは、抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度が高い場合には、原料液と抽出液の循環回数を増やして抽出器における抽出処理の回数を増やし、それによって当該抽出システムにおける合計の抽出時間を金属イオンの濃度が高い原料液中の金属イオンの抽出が完了する適切な抽出時間に設定でき、抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度が低い場合には、原料液と抽出液の循環回数を減らして抽出器における抽出処理の回数を減らし、それによって当該抽出システムにおける合計の抽出時間を金属イオンの濃度が低い原料液中の金属イオンの抽出が完了する適切な抽出時間に設定できる。よって、この抽出システムでは、原料液と抽出液の循環回数を適宜変更することで抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液中の金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定することができる。
【0014】
前記原料液pH調整剤添加装置は、前記原料液pH調整剤を貯留する原料液pH調整剤貯留部と、当該原料液pH調整剤貯留部から前記原料液pH調整対象部内の前記原料液に添加される前記原料液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節可能な原料液pH調整剤添加量調節部と、を含み、前記抽出システムは、前記原料液槽内の前記原料液及び前記原料液戻し路内の前記原料液のいずれか一方のpHを検出する原料液pHセンサと、前記原料液pHセンサにより検出される前記原料液のpHである原料液pH検出値が予め設定された原料液pH最適値に近づくように前記原料液pH調整剤添加量調節部に前記原料液pH調整剤の添加量を調節させる制御部と、をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、原料液pHセンサにより検出される原料液槽内の原料液及び原料液戻し路内の原料液のいずれか一方のpHである原料液pH検出値が予め設定された原料液pH最適値に近づくように原料液pH調整剤貯留部から原料液pH調整対象部内の原料液に添加される原料液pH調整剤の添加量を調節することができる。そのため、原料液pH最適値を前記最適pHに対応した値に設定することにより原料液槽内の原料液及び原料液戻し路内の原料液のいずれか一方のpHを前記最適pHに近づけるように調整でき、その結果、前記のように循環して抽出器に供給される原料液のpHを前記最適pHに近づけることができる。
【0016】
前記抽出システムは、前記原料液pH調整剤貯留部から前記原料液pH調整対象部内の前記原料液に添加される前記原料液pH調整剤の添加量の指標値である原料液pH調整剤指標値を検出する原料液pH調整剤指標値検出器をさらに備え、前記制御部は、前記原料液pH検出値を前記原料液pH最適値に一致させるために前記原料液に添加する必要がある前記原料液pH調整剤の添加量である原料液必要添加量を算出し、前記原料液pH調整剤指標値検出器により検出される前記原料液pH調整剤指標値に対応する前記原料液pH調整剤の添加量が前記原料液必要添加量に一致するように前記原料液pH調整剤添加量調節部に前記原料液pH調整剤の添加量を調節させることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、原料液pH調整剤貯留部から原料液pH調整対象部内の原料液に添加される原料液pH調整剤の実際の添加量を前記原料液必要添加量に一致させることができる。そのため、原料液pH調整剤貯留部から原料液pH調整対象部内の原料液に添加される原料液pH調整剤によって原料液のpHを最適pHに近づけるための原料液のpH調整の正確性を向上することができる。
【0018】
前記原料液pHセンサは、前記原料液戻し路内の前記原料液のpHを検出することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、抽出器での抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより迅速に最適pHに近づけることができる。具体的には、仮に、原料液pHセンサが原料液槽内の原料液のpHを検出する場合には、原料液槽内に元々貯留されていた原料液に抽出器での抽出処理後、原料液戻し路を通って戻ってきた原料液が混ざった後のその原料液槽内全体の原料液のpHが原料液pHセンサによって検出される。この原料液pHセンサによって検出される原料液槽内全体の原料液のpHの検出値は、抽出器での抽出処理に伴う原料液のpHの低下がダイレクトに反映されたものではないため、制御部がこのpHの検出値に基づいて原料液pH調整剤添加量調節部に原料液pH調整剤の添加量を調節させると、抽出器での抽出処理に伴って低下した原料液のpHが最適pHに近づくのが遅れる。これに対し、本構成では、原料液pHセンサが原料液戻し路内の原料液のpHを検出することから、原料液槽内の原料液のpHを検出する場合に比べて、抽出器での抽出処理に伴う原料液のpHの低下がよりダイレクトに反映された原料液のpHが原料液pHセンサによって検出される。このため、制御部が抽出器での抽出処理に伴う原料液のpHの低下がよりダイレクトに反映された原料液pH検出値に基づいて原料液pH調整剤添加量調節部に原料液pH調整剤の添加量を調節させることができ、前記抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより迅速に最適pHに近づけることができる。
【0020】
前記原料液戻し路は、前記原料液pH調整剤添加装置が接続されてその原料液pH調整剤添加装置により当該原料液戻し路内の前記原料液に前記原料液pH調整剤が添加される箇所である原料液pH調整剤添加箇所を有し、前記原料液pHセンサは、前記原料液戻し路のうち当該原料液戻し路における前記原料液の流れ方向において前記原料液pH調整剤添加箇所よりも上流側の箇所で前記原料液のpHを検出してもよい。
【0021】
この構成によれば、抽出器での抽出処理に伴って低下した原料液のpHの最適pHへの調整の迅速性をより向上できる。具体的に、この構成では、原料液pHセンサが原料液戻し路のうちその原料液戻し路における原料液の流れ方向において原料液pH調整剤添加箇所よりも上流側の箇所で原料液のpHを検出する。すなわち、原料液pHセンサは、抽出器での抽出処理に伴ってpHが低下した後、まだ原料液pH調整剤が添加されておらず、低下したpHが回復していない状態の原料液のpHを検出する。このため、当該構成では、制御部がその原料液pHセンサにより検出された原料液のpHである原料液pH検出値に基づいて原料液pH調整剤添加量調節部に原料液への原料液pH調整剤の添加量を調節させることにより、原料液pH調整剤が添加された後の原料液のpHの検出値に基づいて原料液pH調整剤添加量調節部に原料液への原料液pH調整剤の添加量を調節させる場合に比べて多くの原料液pH調整剤を原料液に添加して抽出器での抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより迅速に回復させることができる。このため、抽出器での抽出処理に伴って低下した原料液のpHの最適pHへの調整の迅速性をより向上できる。
【0022】
また、前記原料液戻し路は、前記原料液pH調整剤添加装置が接続されてその原料液pH調整剤添加装置により当該原料液戻し路内の前記原料液に前記原料液pH調整剤が添加される箇所である原料液pH調整剤添加箇所を有し、前記原料液pHセンサは、前記原料液戻し路のうち当該原料液戻し路における前記原料液の流れ方向において前記原料液pH調整剤添加箇所よりも下流側の箇所で前記原料液のpHを検出してもよい。
【0023】
この構成によれば、制御部が、原料液戻し路の原料液pH調整剤添加箇所において原料液pH調整剤が添加された後の原料液のpHの検出値に基づいて原料液pH調整剤添加量調節部に原料液pH調整剤の添加量を調節させることになるため、前記抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより正確に最適pHに調整できる。
【0024】
前記抽出システムは、作動することにより前記原料液槽から前記原料液を導出して前記抽出器へ送る原料液送りポンプと、作動することにより前記抽出液槽から前記抽出液を導出して前記抽出器へ送る抽出液送りポンプと、前記原料液pH調整剤添加装置から前記原料液pH調整剤が添加された後、前記抽出器において抽出処理される前の前記原料液のpHを検出する抽出前pHセンサと、前記抽出器において抽出処理された後、前記原料液pH調整剤添加装置から前記原料液pH調整剤が添加される前の前記原料液のpHを検出する抽出後pHセンサと、前記原料液送りポンプ及び前記抽出液送りポンプの作動を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記抽出前pHセンサにより検出された前記原料液のpHから前記抽出後pHセンサにより検出された前記原料液のpHを減算することによって得られるそれらのpHの差である抽出前後pH差が予め設定された原料液pH差規定値よりも大きい場合には前記原料液送りポンプ及び前記抽出液送りポンプの作動を継続させ、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値以下である場合には前記原料液送りポンプ及び前記抽出液送りポンプの作動を停止させることが好ましい。
【0025】
原料液からの金属イオンの抽出が完了するまでは、抽出器での抽出処理後の原料液のpHは抽出器での抽出処理前の原料液のpHから低下するが、原料液からの金属イオンの抽出が完了すると、抽出器での抽出処理後の原料液のpHはその抽出器での抽出処理前の原料液のpHからほぼ変化しなくなるため、当該構成では、前記原料液pH差規定値を0付近の所定の値に設定することにより、制御部が、前記抽出前後pH差と前記原料液pH差規定値との大小関係に基づいて原料液からの金属イオンの抽出が完了したか否かを判断できるとともに、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値よりも大きい場合には原料液からの金属イオンの抽出がまだ完了していないと判断して原料液送りポンプ及び抽出液送りポンプの作動を継続させて抽出システムにおける抽出処理を継続させることができ、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値以下である場合には原料液からの金属イオンの抽出が完了したと判断して原料液送りポンプ及び抽出液送りポンプの作動を停止させて抽出システムにおける抽出処理を終了させることができる。
【0026】
前記抽出システムは、前記抽出液槽に接続され、前記抽出処理によって前記原料液から抽出された前記金属イオンを含む前記抽出液である抽出後抽出液を前記抽出液槽から導出させてその抽出後抽出液を逆抽出液と接触させることにより前記抽出後抽出液から前記金属イオンを抽出して前記逆抽出液中へ移動させる逆抽出処理を行い、その逆抽出処理後の前記抽出後抽出液である逆抽出後抽出液を前記抽出液槽へ戻す逆抽出装置をさらに備えることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、抽出器で抽出処理を繰り返し行った結果、金属イオンの含有量が増加して抽出能力が低下した抽出後抽出液を逆抽出装置による逆抽出処理によりその抽出後抽出液の金属イオンの含有量を減少させて抽出能力を回復させることができ、その抽出能力が回復した抽出後抽出液である逆抽出後抽出液を逆抽出装置から抽出液槽へ戻すことができる。よって、この構成によれば、抽出器で抽出処理を繰り返し行って抽出液の抽出能力が低下した場合であっても、その抽出液の抽出能力を回復させて再び良好な抽出率で抽出器での抽出処理を行うことができる。
【0028】
前記逆抽出装置は、前記逆抽出液を貯留する逆抽出液槽と、前記抽出液槽から前記抽出後抽出液が導入されるように前記抽出液槽と接続されるとともに前記逆抽出液槽から前記逆抽出液が導入されるように前記逆抽出液槽と接続され、前記抽出液槽から導入された前記抽出後抽出液と前記逆抽出液槽から導入された前記逆抽出液とを互いに接触させることにより前記逆抽出処理を行う逆抽出器と、前記逆抽出器において前記逆抽出処理が行われた後の前記逆抽出後抽出液と前記逆抽出液との混合液である逆抽出後混合液を前記逆抽出器から受けるように前記逆抽出器に接続され、受け入れた前記逆抽出後混合液を前記逆抽出後抽出液と前記逆抽出液とに分離させる逆抽出後分離器と、前記逆抽出後分離器で分離された前記逆抽出後抽出液を前記逆抽出後分離器から前記抽出液槽へ導くように前記逆抽出後分離器と前記抽出液槽とを繋ぐ逆抽出後抽出液戻し路と、前記逆抽出後分離器で分離された前記逆抽出液を前記逆抽出後分離器から前記逆抽出液槽へ導くように前記逆抽出後分離器と前記逆抽出液槽とを繋ぐ逆抽出液戻し路と、前記逆抽出液槽と前記逆抽出液戻し路のいずれか一方である逆抽出液pH調整対象部に接続され、前記逆抽出処理により上昇した前記逆抽出液のpHを低下させる逆抽出液pH調整剤を前記逆抽出液pH調整対象部内の前記逆抽出液に添加する逆抽出液pH調整剤添加装置と、を含むことが好ましい。
【0029】
この構成によれば、抽出後抽出液と逆抽出液を循環させながら単一の逆抽出器で繰り返し抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出処理を行うことができるとともにその循環のたびに逆抽出液に逆抽出液pH調整剤を添加して逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHに近づけることができるため、逆抽出装置が逆抽出処理を行うための複数段の抽出器を有する場合に比べて抽出システムの大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、逆抽出液のpHが逆抽出処理に最適なpHに近い状態での逆抽出処理の時間を増やして逆抽出処理の効率を向上でき、さらに、抽出後抽出液と逆抽出液の循環回数を適宜変更することで抽出後抽出液の金属イオンの含有量の変化に柔軟に対応してその抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出を完了させるための逆抽出処理の時間を適切に設定することができる。
【0030】
前記逆抽出液pH調整剤添加装置は、前記逆抽出液pH調整剤を貯留する逆抽出液pH調整剤貯留部と、当該逆抽出液pH調整剤貯留部から前記逆抽出液pH調整対象部内の前記逆抽出液に添加される前記逆抽出液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節可能な逆抽出液pH調整剤添加量調節部と、を含み、前記逆抽出装置は、前記逆抽出液槽内の前記逆抽出液及び前記逆抽出液戻し路内の前記逆抽出液のいずれか一方のpHを検出する逆抽出液pHセンサと、前記逆抽出液pHセンサにより検出される前記逆抽出液のpHである逆抽出液pH検出値が予め設定された逆抽出液pH最適値に近づくように前記逆抽出液pH調整剤添加量調節部に前記逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させる逆抽出装置制御部と、をさらに含むことが好ましい。
【0031】
この構成によれば、逆抽出液pHセンサにより検出される逆抽出液槽内の逆抽出液及び逆抽出液戻し路内の逆抽出液のいずれか一方のpHである逆抽出液pH検出値が予め設定された逆抽出液pH最適値に近づくように逆抽出液pH調整剤貯留部から逆抽出液pH調整対象部内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤の添加量を調節することができる。そのため、逆抽出液pH最適値を前記逆抽出処理に最適なpHに対応した値に設定することにより逆抽出液槽内の逆抽出液及び逆抽出液戻し路内の逆抽出液のいずれか一方のpHを前記逆抽出処理に最適なpHに近づけるように調整でき、その結果、逆抽出器に供給される逆抽出液のpHをその逆抽出器での逆抽出処理に最適なpHに近づけることができる。
【0032】
前記逆抽出装置は、前記逆抽出液pH調整剤貯留部から前記逆抽出液pH調整対象部内の前記逆抽出液に添加される前記逆抽出液pH調整剤の添加量の指標値である逆抽出液pH調整剤指標値を検出する逆抽出液pH調整剤指標値検出器をさらに含み、前記逆抽出装置制御部は、前記逆抽出液pH検出値を前記逆抽出液pH最適値に一致させるために前記原料液に添加する必要がある前記逆抽出液pH調整剤の添加量である逆抽出液必要添加量を算出し、前記逆抽出液pH調整剤指標値検出器により検出される前記逆抽出液pH調整剤指標値に対応する前記逆抽出液pH調整剤の添加量が前記逆抽出液必要添加量に一致するように前記逆抽出液pH調整剤添加量調節部に前記逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、逆抽出液pH調整剤貯留部から逆抽出液pH調整対象部内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤の実際の添加量を前記逆抽出液必要添加量に一致させることができる。そのため、逆抽出液pH調整剤貯留部から逆抽出液pH調整対象部内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤によって逆抽出液のpHを前記逆抽出処理に最適なpHに近づけるための逆抽出液のpH調整の正確性を向上することができる。
【0034】
前記逆抽出液pHセンサは、前記逆抽出液戻し路内の前記逆抽出液のpHを検出することが好ましい。
【0035】
この構成によれば、逆抽出器での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHにより迅速に近づけることができる。具体的には、仮に、逆抽出液pHセンサが逆抽出液槽内の逆抽出液のpHを検出する場合には、逆抽出液槽内に元々貯留されていた逆抽出液に逆抽出器での逆抽出処理後、逆抽出液戻し路を通って戻ってきた逆抽出液が混ざった後のその逆抽出液槽内全体の逆抽出液のpHが逆抽出液pHセンサによって検出される。この逆抽出液pHセンサによって検出される逆抽出液槽内全体の逆抽出液のpHの検出値は、逆抽出器での逆抽出処理に伴う逆抽出液のpHの上昇がダイレクトに反映されたものではないため、逆抽出装置制御部がこのpHの検出値に基づいて逆抽出液pH調整剤添加量調節部に逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させると、逆抽出器での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHに近づけるのが遅れる。これに対し、本構成では、逆抽出液pHセンサが逆抽出液戻し路内の逆抽出液のpHを検出することから、逆抽出液槽内の逆抽出液のpHを検出する場合に比べて、逆抽出器での逆抽出処理に伴う逆抽出液のpHの上昇がよりダイレクトに反映された逆抽出液のpHが逆抽出液pHセンサによって検出される。このため、逆抽出装置制御部が逆抽出器での逆抽出処理に伴う逆抽出液のpHの上昇がよりダイレクトに反映された逆抽出液pH検出値に基づいて逆抽出液pH調整剤添加量調節部に逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させることができ、前記逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHにより迅速に近づけることができる。
【0036】
前記逆抽出液戻し路は、前記逆抽出液pH調整剤添加装置が接続されてその逆抽出液pH調整剤添加装置により当該逆抽出液戻し路内の前記逆抽出液に前記逆抽出液pH調整剤が添加される箇所である逆抽出液pH調整剤添加箇所を有し、前記逆抽出液pHセンサは、前記逆抽出液戻し路のうち当該逆抽出液戻し路における前記逆抽出液の流れ方向において前記逆抽出液pH調整剤添加箇所よりも上流側の箇所で前記逆抽出液のpHを検出してもよい。
【0037】
この構成によれば、逆抽出器での逆抽出処理に伴って上昇した原料液のpHを逆抽出処理に最適なpHへ調整するときの迅速性をより向上できる。具体的に、この構成では、逆抽出液pHセンサが逆抽出液戻し路のうちその逆抽出液戻し路における逆抽出液の流れ方向において逆抽出液pH調整剤添加箇所よりも上流側の箇所で逆抽出液のpHを検出する。すなわち、逆抽出液pHセンサは、逆抽出器での逆抽出処理に伴ってpHが上昇した後、まだ逆抽出液pH調整剤が添加されておらず、上昇したpHが回復していない状態の逆抽出液のpHを検出する。このため、当該構成では、逆抽出装置制御部がその逆抽出液pHセンサにより検出された逆抽出液のpHである逆抽出液pH検出値に基づいて逆抽出液pH調整剤添加量調節部に逆抽出液への逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させることにより、逆抽出液pH調整剤が添加された後の逆抽出液のpHの検出値に基づいて逆抽出液pH調整剤添加量調節部に逆抽出液への逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させる場合に比べて多くの逆抽出液pH調整剤を逆抽出液に添加して逆抽出器での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHをより迅速に回復させることができる。このため、逆抽出器での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHへ調整するときの迅速性をより向上できる。
【0038】
前記逆抽出液戻し路は、前記逆抽出液pH調整剤添加装置が接続されてその逆抽出液pH調整剤添加装置により当該逆抽出液戻し路内の前記逆抽出液に前記逆抽出液pH調整剤が添加される箇所である逆抽出液pH調整剤添加箇所を有し、前記逆抽出液pHセンサは、前記逆抽出液戻し路のうち当該逆抽出液戻し路における前記逆抽出液の流れ方向において前記逆抽出液pH調整剤添加箇所よりも下流側の箇所で前記逆抽出液のpHを検出してもよい。
【0039】
この構成によれば、逆抽出装置制御部が、逆抽出液戻し路の逆抽出液pH調整剤添加箇所において逆抽出液pH調整剤が添加された後の逆抽出液のpHの検出値に基づいて逆抽出液pH調整剤添加量調節部に逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させることになるため、前記逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHをより正確に逆抽出処理に最適なpHに調整できる。
【0040】
前記逆抽出装置は、作動することにより前記抽出液槽から前記抽出後抽出液を導出して前記逆抽出器へ送る抽出後抽出液送りポンプと、作動することにより前記逆抽出液槽から前記逆抽出液を導出して前記逆抽出器へ送る逆抽出液送りポンプと、前記逆抽出液pH調整剤添加装置から前記逆抽出液pH調整剤が添加された後、前記逆抽出器において前記逆抽出処理が行われる前の前記逆抽出液のpHを検出する逆抽出前pHセンサと、前記逆抽出器において前記逆抽出処理が行われた後、前記逆抽出液pH調整剤添加装置から前記逆抽出液pH調整剤が添加される前の前記逆抽出液のpHを検出する逆抽出後pHセンサと、前記抽出後抽出液送りポンプ及び前記逆抽出液送りポンプの作動を制御する逆抽出装置制御部と、をさらに含み、前記逆抽出装置制御部は、前記逆抽出後pHセンサにより検出された前記逆抽出液のpHから前記逆抽出前pHセンサにより検出された前記逆抽出液のpHを減算することによって得られるそれらのpHの差である逆抽出前後pH差が予め設定された逆抽出液pH差規定値よりも大きい場合には前記抽出後抽出液送りポンプ及び前記逆抽出液送りポンプの作動を継続させ、前記逆抽出前後pH差が前記逆抽出液pH差規定値以下である場合には前記抽出後抽出液送りポンプ及び前記逆抽出液送りポンプの作動を停止させることが好ましい。
【0041】
抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了するまでは、逆抽出器での逆抽出処理後の逆抽出液のpHはその逆抽出器での逆抽出処理前の逆抽出液のpHから上昇するが、抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了すると、逆抽出器での逆抽出処理後の逆抽出液のpHはその逆抽出器での逆抽出処理前の逆抽出液のpHからほぼ変化しなくなるため、当該構成では、前記逆抽出液pH差規定値を0付近の所定の値に設定することにより、逆抽出装置制御部が、前記逆抽出前後pH差と前記逆抽出液pH差規定値との大小関係に基づいて抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したか否かを判断できるとともに、前記逆抽出前後pH差が前記逆抽出液pH差規定値よりも大きい場合には抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出がまだ完了していないと判断して抽出後抽出液送りポンプ及び逆抽出液送りポンプの作動を継続させて逆抽出装置における逆抽出処理を継続させることができ、前記逆抽出前後pH差が前記逆抽出液pH差規定値以下である場合には抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したと判断して抽出後抽出液送りポンプ及び逆抽出液送りポンプの作動を停止させて逆抽出装置における逆抽出処理を終了させることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上のように、本発明によれば、大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、原料液のpHが最適pHに近い状態での抽出時間を増やして抽出効率を向上できるとともに、抽出処理前の原料液の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液中の金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定することが可能な抽出システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第1実施形態による抽出システムの模式図である。
【
図2】本発明の第2実施形態による抽出システムの模式図である。
【
図3】本発明の第3実施形態による抽出システムの模式図である。
【
図4】本発明の第4実施形態による抽出システムの模式図である。
【
図5】本発明の第5実施形態による抽出システムの模式図である。
【
図6】本発明の第6実施形態による抽出システムの模式図である。
【
図7】本発明による効果を調べるために原料液から金属イオンを抽出する抽出処理のシミュレーションで用いた比較例による抽出システムの模式図である。
【
図8】前記シミュレーションにより本発明に対応する実施例で得られた抽出処理の回数と原料液のpHとの相関関係及び抽出処理の回数と抽出率との相関関係を示す図である。
【
図9】前記シミュレーションにより比較例で得られた抽出処理の回数と原料液のpHとの相関関係及び抽出処理の回数と抽出率との相関関係を示す図である。
【
図10】本発明の第1変形例による抽出システムの模式図である。
【
図11】本発明の第2変形例による抽出システムの模式図である。
【
図12】本発明の第3変形例による抽出システムの模式図である。
【
図13】本発明の第4変形例による抽出システムの模式図である。
【
図14】本発明の第5変形例による抽出システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0045】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態による抽出システム1の全体構成が示されている。この第1実施形態による抽出システム1は、複数種類の金属イオンを含む水溶液である原料液から抽出液により特定の金属イオンを抽出する抽出処理を行うものである。抽出液は、原料液に対して非相溶性の液体であり、有機相である。この抽出液は、原料液の比重よりも小さい比重を有する。抽出処理により抽出される前記特定の金属イオンの例としては様々なものがあり、抽出処理に用いられる抽出液は、その抽出対象の特定の金属イオンを抽出するのに適切なものが選択される。例えば、原料液に含まれる抽出対象の特定の金属イオンがニッケルイオンもしくはコバルトイオンである場合には、抽出液として、例えば大八化学工業株式会社製のPC88Aをケロシンで希釈した液が用いられる。
【0046】
当該第1実施形態による抽出システム1は、抽出液槽2と、原料液槽4と、抽出器6と、抽出液供給配管8と、抽出液送りポンプ9と、原料液供給配管10と、原料液送りポンプ11と、分離器14と、接続配管15と、抽出液戻し配管16と、原料液戻し配管18と、原料液pH調整剤添加装置19と、原料液pHセンサ28と、制御部30と、を備える。
【0047】
抽出液槽2は、抽出液を貯留するものである。この抽出液槽2は、抽出処理の開始前(抽出システム1の稼働前)には抽出処理に未使用の抽出液である未使用抽出液を貯留し、抽出処理が開始された後(抽出システム1の稼働後)は、後述のように抽出器6において抽出処理を行った後、分離器14で原料液に対して分離された抽出液である抽出後抽出液が導入されてその抽出後抽出液を貯留する。
【0048】
原料液槽4は、原料液を貯留するものである。この原料液槽4は、抽出処理の開始前には抽出処理されていない原料液である未処理原料液を貯留し、抽出処理が開始された後は、後述のように抽出器6において抽出処理された後、分離器14で抽出液に対して分離された原料液が導入されてその原料液を貯留する。当該第1実施形態では、この原料液槽4が本発明における原料液pH調整対象部に相当する。
【0049】
抽出器6は、原料液槽4から原料液が導入されるように原料液供給配管10を介して原料液槽4と接続されるとともに、抽出液槽2から抽出液が導入されるように抽出液供給配管8を介して抽出液槽2と接続されている。この抽出器6は、原料液槽4から導入された原料液と抽出液槽2から導入された抽出液とを互いに接触させ、それによって原料液から金属イオンを抽出して抽出液中へ移動させる抽出処理を行う。
【0050】
具体的に、抽出器6は、その内部に多数の処理流路32を有する。各処理流路32は、原料液と抽出液とが互いに接触して原料液から金属イオンが抽出されて抽出液中へ移動するようにその原料液と抽出液とを流通させる。なお、
図1において、抽出器6内の多数の処理流路32は簡素化して1つの流路で表されており、その流路形状も単純化して表されている。従って、抽出器6内に設けられる処理流路32の数及び配置、各処理流路32の形状については、抽出処理の条件に応じて任意に設定される。
【0051】
各処理流路32は、いわゆるマイクロチャネルである。各処理流路32は、抽出液が導入される抽出液導入路33と、原料液が導入される原料液導入路34と、抽出液導入路33から抽出液が流れ込むとともに原料液導入路34から原料液が流れ込むようにそれらの抽出液導入路33及び原料液導入路34の下流側の端部に繋がり、抽出液導入路33から流れ込んだ抽出液と原料液導入路34から流れ込んだ原料液とが互いに接触した状態で流れて前記抽出処理が行われる処理流路部35と、を有する。
【0052】
また、抽出器6は、当該抽出器6内に設けられた全ての処理流路32の抽出液導入路33と繋がる抽出液入口36と、前記全ての処理流路32の原料液導入路34と繋がる原料液入口38と、前記全ての処理流路32の処理流路部35の下流側の端部と繋がる出口40とを有する。抽出液入口36は、抽出液槽2から供給される抽出液を受け入れる部分であり、当該抽出液入口36を通った抽出液が各抽出液導入路33へ分配されて流れるようになっている。原料液入口38は、原料液槽4から供給される原料液を受け入れる部分であり、当該原料液入口38を通った原料液が各原料液導入路34へ分配されて流れるようになっている。また、出口40は、各処理流路32の処理流路部35を流れた抽出処理後の抽出液と原料液との混合液を抽出器6の外部へ流出させる部分である。
【0053】
抽出液供給配管8は、抽出液槽2に貯留された抽出液を抽出器6の抽出液入口36へ導くように抽出液槽2と抽出液入口36とを繋いでいる。
【0054】
抽出液送りポンプ9は、抽出液供給配管8に設けられている。この抽出液送りポンプ9は、作動することにより抽出液槽2から抽出液を導出して、その抽出液を、抽出液供給配管8を通じて抽出液入口36へ送る。
【0055】
原料液供給配管10は、原料液槽4に貯留された原料液を抽出器6の原料液入口38へ導くように原料液槽4と原料液入口38とを繋いでいる。
【0056】
原料液送りポンプ11は、原料液供給配管10に設けられている。この原料液送りポンプ11は、作動することにより原料液槽4から原料液を導出して、その原料液を、原料液供給配管10を通じて原料液入口38へ送る。
【0057】
分離器14は、抽出器6の各処理流路32の処理流路部35で抽出処理された後の原料液とその処理流路部35で抽出処理を行った後の抽出液との混合液を原料液と抽出液とに分離させる容器である。具体的に、分離器14は、抽出器6の出口40に接続配管15を介して接続され、その抽出器6の出口40から排出される前記混合液を、接続配管15を通じて受け入れる。分離器14は、受け入れた混合液を一時的に滞留させ、その混合液を比重差により抽出液(軽液)と原料液(重液)とに上下に相分離させる。分離した原料液(重液)は分離器14内の底に溜まり、その溜まった原料液の上に分離した抽出液(軽液)が溜まる。
【0058】
抽出液戻し配管16は、分離器14で分離された抽出液を分離器14から抽出液槽2へ導くように、分離器14のうち分離した抽出液が溜まる領域と抽出液槽2とを繋いでいる。この抽出液戻し配管16は、本発明における抽出液戻し路の一例である。
【0059】
原料液戻し配管18は、分離器14で分離された原料液を分離器14から原料液槽4へ導くように、分離器14のうち分離した原料液が溜まる領域と原料液槽4とを繋いでいる。この原料液戻し配管18は、本発明における原料液戻し路の一例である。
【0060】
原料液pH調整剤添加装置19は、原料液槽4に接続され、抽出器6での前記抽出処理により低下した原料液のpHを上昇させる原料液pH調整剤を原料液槽4内の原料液に添加する装置である。原料液pH調整剤は、当該第1実施形態では液体であり、原料液のpHを上昇させるアルカリ性の水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液である。この原料液pH調整剤添加装置19は、原料液pH調整剤貯留部20と、原料液pH調整剤供給配管22と、原料液pH調整剤供給ポンプ24と、原料液pH調整剤流量調整弁26と、を有する。
【0061】
原料液pH調整剤貯留部20は、液体であるpH調整剤を貯留するタンクである。以下、原料液pH調整剤貯留部20のことを簡略化のため単に貯留部20と称する。
【0062】
原料液pH調整剤供給配管22は、貯留部20に貯留された原料液pH調整剤を原料液槽4へ導くようにその貯留部20と原料液槽4とを繋いでいる。以下、原料液pH調整剤供給配管22のことを簡略化のためpH調整剤供給配管22と称する。
【0063】
原料液pH調整剤供給ポンプ24は、pH調整剤供給配管22に設けられている。以下、原料液pH調整剤供給ポンプ24のことを簡略化のためpH調整剤供給ポンプ24と称する。このpH調整剤供給ポンプ24は、貯留部20に貯留された原料液pH調整剤をその貯留部20からpH調整剤供給配管22を通じて原料液槽4へ送る。
【0064】
原料液pH調整剤流量調整弁26は、pH調整剤供給配管22のうち当該pH調整剤供給配管22における原料液pH調整剤の流れ方向においてpH調整剤供給ポンプ24の下流側に設けられている。以下、原料液pH調整剤流量調整弁26のことを簡略化のため単に流量調整弁26と称する。流量調整弁26は、本発明における原料液pH調整剤添加量調節部の一例であり、貯留部20から原料液槽4内の原料液に添加される原料液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節可能である。具体的には、流量調整弁26は、その開度が変更可能となっており、貯留部20からpH調整剤供給配管22を通って原料液槽4へ流れるpH調整剤の流量をその開度に応じた流量に規制し、それによって原料液槽4内の原料液に添加されるpH調整剤の添加量を任意の添加量に調節する。
【0065】
原料液pHセンサ28は、原料液槽4に接続されている。原料液pHセンサ28は、原料液槽4内の原料液のpHを逐次検出し、その検出したpHの検出値である原料液pH検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0066】
制御部30は、原料液pHセンサ28から逐次送信される原料液pH検出値のデータを取得し、その取得した原料液pH検出値に基づいて流量調整弁26に貯留部20からpH調整剤供給配管22を通って原料液槽4へ流れる原料液pH調整剤の流量を調節させる。具体的には、制御部30は、取得した原料液pH検出値が予め設定された原料液pH最適値に近づくように流量調整弁26の開度を調節し、それによって流量調整弁26に原料液pH調整剤の流量を調節させる。前記原料液pH最適値は、抽出器6における原料液からの金属イオンの抽出処理に最適な原料液のpHである原料液最適pHに対応する値である。原料液最適pHは、原料液中の複数種類の金属イオンのうちの抽出対象の特定の金属イオンの抽出率が高く且つその特定の金属イオン以外の金属イオンの抽出率が低くなるpH、すなわち特定の金属イオンの高抽出率及び高選択率が得られるpHである。制御部30は、以上のような流量調整弁26の制御に加えて、抽出液送りポンプ9、原料液送りポンプ11及びpH調整剤供給ポンプ24の作動の制御を行う。制御部30により行われる制御の具体的な内容は、以下の抽出方法についての説明中にて述べられる。
【0067】
次に、当該第1実施形態の抽出システム1による抽出方法について説明する。
【0068】
まず、抽出システム1における抽出処理の開始前(抽出システム1の稼働前)に、未使用抽出液を抽出液槽2に充填するとともに、未処理原料液を原料液槽4に充填する。また、貯留部20に原料液pH調整剤を充填する。
【0069】
その後、抽出システム1における抽出処理が開始される。具体的には、制御部30が抽出液送りポンプ9を作動させ、その抽出液送りポンプ9により抽出液槽2から抽出液供給配管8を通じて抽出器6の抽出液入口36へ未使用抽出液が送られる。また、同時に、制御部30が原料液送りポンプ11を作動させ、その原料液送りポンプ11により原料液槽4から原料液供給配管10を通じて抽出器6の原料液入口38へ未処理原料液が送られる。
【0070】
抽出液入口36へ送られた抽出液は、各処理流路32の抽出液導入路33に流入する。また、原料液入口38へ送られた原料液は、各処理流路32の原料液導入路34に流入する。そして、各処理流路32において、抽出液が抽出液導入路33から処理流路部35へ流れ込むとともに原料液が原料液導入路34から処理流路部35へ流れ込み、その抽出液と原料液とが互いに接触した状態で処理流路部35を流れる。この抽出液と原料液とが処理流路部35を流れる過程で原料液から特定の金属イオンが抽出されて抽出液中に移動する抽出処理が行われる。そして、抽出処理後の抽出液と原料液との混合液が抽出器6の出口40から流れ出て接続配管15を通って分離器14内へ導入される。
【0071】
分離器14内に導入された混合液は、その分離器14内で滞留し、比重差によって抽出液(軽液)と原料液(重液)とに上下に相分離する。この分離器14内で分離した抽出液は、分離器14から抽出液戻し配管16を通って抽出液槽2へ流れてその抽出液槽2内に導入される。また、分離器14内で分離した原料液は、分離器14から原料液戻し配管18を通って原料液槽4へ流れてその原料液槽4内に導入される。そして、抽出液槽2内に導入された抽出液は当該抽出液槽2から再び抽出液供給配管8を通じて抽出器6の抽出液入口36へ送られ、原料液槽4内に導入された原料液は当該原料液槽4から再び原料液供給配管10を通じて抽出器6の原料液入口38へ送られる。このようにして、抽出液及び原料液が循環しながら、抽出器6内の各処理流路32の処理流路部35での抽出処理が繰り返し行われる。
【0072】
前記抽出処理による原料液からの特定の金属イオンの抽出に伴って原料液のpHが低下するため、当該第1実施形態による抽出システム1では、原料液pH調整剤添加装置19が原料液槽4内の原料液に原料液pH調整剤を添加し、それにより、特定の金属イオンの抽出に伴って低下した原料液のpHを上昇させて原料液最適pHに近づける。
【0073】
具体的に、制御部30がpH調整剤供給ポンプ24を作動させ、そのpH調整剤供給ポンプ24により貯留部20からpH調整剤供給配管22を通じて原料液槽4へ原料液pH調整剤が送られ、その原料液pH調整剤が原料液槽4内の原料液に添加される。この原料液槽4内の原料液への原料液pH調整剤の添加により、前記抽出に伴って低下した原料液のpHが上昇して原料液最適pHに近づく。
【0074】
そして、制御部30は、原料液pHセンサ28により検出される原料液槽4内の原料液のpHの検出値である原料液pH検出値に基づいて、流量調整弁26にpH調整剤供給配管22から原料液槽4内へのpH調整剤の流入量を調節させることにより、原料液槽4内の原料液に添加する原料液pH調整剤の添加量を調節する。
【0075】
具体的に、原料液pHセンサ28は、原料液槽4内の原料液のpHを逐次検出し、その検出したpHの検出値である原料液pH検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。制御部30は、原料液pHセンサ28から逐次送信される原料液pH検出値のデータを取得し、その取得した原料液pH検出値を原料液最適pHに対応する原料液pH最適値に一致させるために必要となる原料液槽4内の原料液への原料液pH調整剤の添加量の必要変化量、具体的にはpH調整剤供給配管22から原料液槽4内への原料液pH調整剤の流入量の必要変化量を算出する。より具体的に、制御部30は、まず、原料液pH最適値と取得した原料液pH検出値との差を算出する。制御部30は、予め導出された原料液槽4内への原料液pH調整剤の流入量の変化量と原料液槽4内の原料液のpHの変化量との相関関係を記憶しており、算出した原料液pH最適値と原料液pH検出値との差を前記pHの変化量としてその差に対応する原料液槽4内への原料液pH調整剤の流入量の変化量を前記相関関係に基づいて算出する。そして、制御部30は、算出した原料液槽4内への原料液pH調整剤の流入量の変化量が実現されるように流量調整弁26にその開度を変更させて原料液槽4内への原料液pH調整剤の流入量を調節させる。この制御部30が流量調整弁26に原料液槽4内への原料液pH調整剤の流入量を調節させる当該流量調整弁26の制御は、制御部30が原料液pHセンサ28から逐次取得する原料液pH検出値に基づいて逐次行われる。
【0076】
そして、抽出液と原料液とを循環させながら抽出器6内の処理流路32で繰り返し行われる抽出処理は循環している抽出液による原料液からの金属イオンの抽出が抽出平衡に達するまで継続され、その抽出が抽出平衡に達した時点で制御部30が抽出液送りポンプ9、原料液送りポンプ11、及びpH調整剤供給ポンプ24の作動を停止させる。抽出平衡に達する時点は、例えば、予め調べられた抽出処理の開始(抽出液及び原料液の循環開始)からの経過時間で設定される。制御部30が抽出液送りポンプ9、原料液送りポンプ11、及びpH調整剤供給ポンプ24の作動を停止させた後、抽出液槽2中の抽出平衡に達した抽出液を未使用抽出液に入れ替える。その入れ替え後、制御部30は、抽出液送りポンプ9、原料液送りポンプ11、及びpH調整剤供給ポンプ24の作動を再開させ、抽出システム1における抽出処理が再開される。そして、前記のような抽出平衡に達した抽出液の入れ替えを所望の回数行いながら、原料液からの金属イオンの抽出が完了するまで抽出処理が行われる。
【0077】
当該第1実施形態による抽出システム1では、原料液が原料液槽4から原料液供給配管10、抽出器6、接続配管15、分離器14、及び原料液戻し配管18を経て原料液槽4へ戻るように当該原料液を循環させるとともに、抽出液が抽出液槽2から抽出液供給配管8、抽出器6、接続配管15、分離器14、及び抽出液戻し配管16を経て抽出液槽2へ戻るように当該抽出液を循環させながら、単一の抽出器6で繰り返し原料液からの金属イオンの抽出処理を行うことができる。しかも、この抽出システム1では、原料液が前記のように原料液槽4へ戻るように循環するたびに原料液pH調整剤添加装置19によりその原料液槽4内の原料液に原料液pH調整剤を添加してその原料液のpHを原料液最適pHに近づけることができる。よって、当該第1実施形態による抽出システム1では、抽出器の段数の増加による大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、抽出システム1全体において原料液のpHが原料液最適pHに近い状態での抽出時間を増やして抽出効率を向上できる。
【0078】
また、当該第1実施形態による抽出システム1では、抽出処理前の原料液中の抽出対象である特定の金属イオンの濃度が高い場合には、原料液及び抽出液の循環回数を増やして抽出器6における抽出処理の回数を増やし、それによって当該抽出システム1における合計の抽出時間を原料液中の前記特定の金属イオンの抽出が完了する適切な抽出時間に設定でき、抽出処理前の原料液の前記特定の金属イオンの濃度が低い場合には、原料液及び抽出液の循環回数を減らして抽出器6における抽出処理の回数を減らし、それによって当該抽出システム1における合計の抽出時間を原料液中の前記特定の金属イオンの抽出が完了する適切な抽出時間に設定できる。よって、当該第1実施形態による抽出システム1では、原料液及び抽出液の循環回数を適宜変更することで抽出処理前の原料液の前記特定の金属イオンの濃度の変化に柔軟に対応してその原料液中の前記特定の金属イオンの抽出を完了させるための抽出時間を適切に設定することができる。
【0079】
(第2実施形態)
以下、
図2を参照して、本発明の第2実施形態による抽出システム1について説明する。
【0080】
当該第2実施形態による抽出システム1は、原料液pH調整剤添加装置19の構成のみが前記第1実施形態による抽出システム1と異なっており、この原料液pH調整剤添加装置19は、抽出器6での抽出処理により低下した原料液のpHを原料液最適pHに近づけるために固体の原料液pH調整剤を原料液槽4中の原料液に添加するようになっている。
【0081】
具体的に、当該第2実施形態による抽出システム1の原料液pH調整剤添加装置19は、原料液pH調整剤貯留部42と、原料液pH調整剤ガイド部43と、原料液pH調整剤添加量調節部44と、を有する。
【0082】
原料液pH調整剤貯留部42は、固体の原料液pH調整剤を貯留する容器である。以下、原料液pH調整剤貯留部42のことを簡略化のため単に貯留部42と称する。当該第2実施形態における固体の原料液pH調整剤は、金属イオンを含有する水溶液である原料液に溶解可能なアルカリ性の物質、例えば水酸化ナトリウムであり、固体とは、例えば顆粒状、粉末状、又はフレーク状である。貯留部42は、原料液槽4よりも上側に配設されている。また、貯留部42は、その底部に当該貯留部42内に貯留された原料液pH調整剤を放出するための図略の放出口を有する。貯留部42内に貯留された原料液pH調整剤は、その自重により当該貯留部42の放出口を通って降下することで放出されるようになっている。
【0083】
原料液pH調整剤ガイド部43は、貯留部42の放出口に接続され、その放出口から放出される原料液pH調整剤を原料液槽4内へ導くように原料液槽4に繋がっている。以下、原料液pH調整剤ガイド部43のことを簡略化のため単にガイド部43と称する。
【0084】
原料液pH調整剤添加量調節部44は、貯留部42から原料液槽4内の原料液に添加される固体の原料液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節するものである。以下、原料液pH調整剤添加量調節部44のことを簡略化のため単に添加量調節部44と称する。この添加量調節部44は、貯留部42の放出口の開口面積を変更し得るようにその放出口に取り付けられている。当該添加量調節部44は、貯留部42の放出口の開口面積を変更することで貯留部42内から放出口を通って原料液槽4内の原料液に添加される固体の原料液pH調整剤の添加量を調節する。
【0085】
そして、当該第2実施形態による抽出システム1では、制御部30は、原料液pHセンサ28から逐次送信される原料液pH検出値のデータを取得し、その取得した原料液pH検出値に基づいて添加量調節部44に貯留部42からその放出口を通って原料液槽4内に投入される固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。具体的には、制御部30は、取得した原料液pH検出値が予め設定された原料液pH最適値に近づくように添加量調節部44に貯留部42の放出口の開口面積を調節させ、それによって原料液槽4内への固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。
【0086】
当該第2実施形態による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第1実施形態による抽出システム1と同様である。
【0087】
次に、当該第2実施形態の抽出システム1による抽出方法について説明する。
【0088】
当該第2実施形態による抽出方法は、原料液pH調整剤添加装置19から原料液槽4内の原料液へ固体の原料液pH調整剤が添加されるとともに、制御部30がその固体の原料液pH調整剤の添加量を添加量調節部44に貯留部42の放出口の開口面積を調節させることによって調節させる点で前記第1実施形態による抽出方法と異なっている。
【0089】
具体的に、制御部30は、原料液pHセンサ28から逐次送信される原料液pH検出値のデータを取得し、その取得した原料液pH検出値を原料液最適pHに対応する原料液pH最適値に一致させるために必要となる原料液槽4内の原料液への固体の原料液pH調整剤の添加量、具体的には貯留部42から原料液槽4内へ投入される固体の原料液pH調整剤の投入量の変化量を逐次算出する。
【0090】
より具体的に、制御部30は、まず、原料液pH最適値と取得した原料液pH検出値との差を算出する。制御部30は、予め導出された原料液槽4内への固体の原料液pH調整剤の投入量(重量又は体積)の変化量と原料液槽4内の原料液のpHの変化量との相関関係を記憶しており、算出した原料液pH最適値と原料液pH検出値との差を前記pHの変化量として前記相関関係に基づいてその差に対応する原料液槽4内への固体の原料液pH調整剤の投入量の変化量を算出する。そして、制御部30は、算出した固体の原料液pH調整剤の投入量の変化量が実現されるように添加量調節部44に貯留部42の放出口の開口面積を変更させてその放出口を通って原料液槽4内に投入される固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。この制御部30による添加量調節部44の制御は、制御部30が原料液pHセンサ28から逐次取得する原料液pH検出値に基づいて逐次行われる。
【0091】
当該第2実施形態による抽出方法のこれ以外のプロセスは、前記第1実施形態による抽出方法と同様である。
【0092】
当該第2実施形態では、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができ、さらに、金属イオンの抽出が完了した後、廃液として廃棄される原料液の量を削減しつつ、抽出器6内の処理流路32で固体の原料液pH調整剤による閉塞が発生するのを防止できるという効果が得られる。
【0093】
具体的に、当該第2実施形態では、抽出器6での抽出処理によって低下した原料液のpHを上昇させて原料液最適pHに近づけるために原料液に固体の原料液pH調整剤が添加されるため、液体の原料液pH調整剤が原料液に添加される場合に比べて、原料液pH調整剤の添加による原料液の体積の増加を抑制できる。このため、金属イオンの抽出が完了した後、原料液が廃液として廃棄される場合に、当該第2実施形態では前記のように原料液pH調整剤の添加による原料液の体積の増加を抑制できることから、この廃液として廃棄される原料液の量を削減することができる。
【0094】
また、従来の多段式の抽出装置では、上流側の抽出器とその下流側の抽出器とを繋ぐ接続配管において原料液にpH調整剤が添加されるため、このpH調整剤が固体である場合には、当該pH調整剤が原料液に溶解する前に接続配管から下流側の抽出器の処理流路に流れ込み、その結果、当該下流側の抽出器の処理流路に固体のpH調整剤による閉塞が発生する虞がある。これに対し、当該第2実施形態では、原料液槽4内に貯留された原料液に原料液pH調整剤添加装置19から固体の原料液pH調整剤が添加されるため、この原料液pH調整剤は、原料液槽4内で原料液が滞留している期間内、もしくは、その後、原料液槽4から原料液供給配管10を通って抽出器6へ達するまでの期間に原料液に溶解する。このため、抽出器6内の処理流路32で固体の原料液pH調整剤による閉塞が発生するのを防止できる。
【0095】
(第3実施形態)
以下、
図3を参照して、本発明の第3実施形態による抽出システム1について説明する。
【0096】
当該第3実施形態による抽出システム1では、原料液pH調整剤添加装置19が、原料液戻し配管18に接続され、液体の原料液pH調整剤を原料液戻し配管18内の原料液に添加するようになっている。
【0097】
具体的に、当該第3実施形態による抽出システム1では、原料液pH調整剤添加装置19のpH調整剤供給配管22が貯留部20に貯留された液体の原料液pH調整剤を原料液戻し配管18へ導くように貯留部20と原料液戻し配管18とを繋いでおり、このpH調整剤供給配管22を通じて貯留部20から液体の原料液pH調整剤が原料液戻し配管18内の原料液に添加されるようになっている。原料液戻し配管18は、pH調整剤供給配管22が接続されて原料液pH調整剤添加装置19により当該原料液戻し配管18内の原料液に原料液pH調整剤が添加される箇所であるpH調整剤添加箇所18aを有する。
【0098】
また、当該第3実施形態による抽出システム1では、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18に接続され、その原料液戻し配管18内の原料液のpHを検出する。より具体的には、原料液pHセンサ28は、原料液戻し配管18のうちその原料液戻し配管18における原料液の流れ方向において前記pH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所、つまり原料液戻し配管18のうち前記pH調整剤添加箇所18aと原料液槽4との間の箇所に接続され、その箇所において原料液のpHを検出する。制御部30は、この原料液pHセンサ28により検出されるpH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所での原料液のpHの検出値に基づいて流量調整弁26にpH調整剤供給配管22からpH調整剤添加箇所18aへの液体の原料液pH調整剤の流入量を調節させる。
【0099】
当該第3実施形態による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第1実施形態による抽出システム1と同様である。
【0100】
次に、当該第3実施形態の抽出システム1による抽出方法について説明する。
【0101】
当該第3実施形態による抽出方法では、抽出器6において抽出処理された後、分離器14において抽出液に対して分離された原料液が分離器14から原料液戻し配管18を通って原料液槽4へ向かって流れている過程で、pH調整剤添加箇所18aにおいてその原料液に原料液pH調整剤添加装置19から液体の原料液pH調整剤が添加される。
【0102】
そして、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうちその原料液戻し配管18における原料液の流れ方向においてpH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所で、原料液のpHを逐次検出し、制御部30がその原料液pHセンサ28により検出される原料液のpHの検出値に基づいて流量調整弁26にpH調整剤供給配管22から原料液戻し配管18内への原料液pH調整剤の流入量を調節させる。
【0103】
この制御部30による流量調整弁26の制御において、制御部30は、原料液pHセンサ28により逐次検出されるpH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所における原料液のpHの検出値を原料液最適pHに対応する原料液pH最適値に一致させるために必要となる原料液戻し配管18内の原料液への原料液pH調整剤の添加量の必要変化量、すなわちpH調整剤供給配管22からpH調整剤添加箇所18aへの原料液pH調整剤の流入量の必要変化量を逐次算出する。
【0104】
具体的には、制御部30は、予め導出された原料液戻し配管18内への液体の原料液pH調整剤の流入量の変化量と原料液戻し配管18内の原料液のpHの変化量との相関関係を記憶しており、原料液pH最適値と原料液pHセンサ28から取得した原料液pH検出値との差を算出するとともに、その算出した差を前記pHの変化量としてその差に対応する原料液戻し配管18内への液体の原料液pH調整剤の流入量の変化量を前記相関関係に基づいて算出する。そして、制御部30は、算出した液体のpH調整剤の流入量の変化量が実現されるように、流量調整弁26にその開度を変更させて原料液戻し配管18内への液体の原料液pH調整剤の流入量を調節させる。この制御部30が流量調整弁26に原料液戻し配管18内への原料液pH調整剤の流入量を調節させる流量調整弁26の制御は、制御部30が原料液pHセンサ28から逐次取得する原料液pH検出値に基づいて逐次行われる。
【0105】
当該第3実施形態による抽出方法のこれ以外のプロセスは、前記第1実施形態による抽出方法と同様である。
【0106】
当該第3実施形態では、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、さらに以下の効果を得ることができる。
【0107】
当該第3実施形態では、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18内の原料液のpHを検出することから、原料液槽4内の原料液のpHを検出する場合に比べて、抽出器6での抽出処理に伴う原料液のpHの低下がよりダイレクトに反映された原料液のpHが原料液pHセンサ28によって検出される。このため、制御部30は、抽出器6での抽出処理に伴う原料液のpHの低下がよりダイレクトに反映された原料液pH検出値に基づいて流量調整弁26に原料液戻し配管18内への原料液pH調整剤の流入量を調節させることができる。このため、前記抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより迅速に原料液最適pHに近づけることができる。
【0108】
また、当該第3実施形態では、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうちpH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所での原料液のpHを検出するため、制御部30が、pH調整剤添加箇所18aにおいて原料液pH調整剤が添加された後の原料液のpHの検出値に基づいて流量調整弁26に原料液戻し配管18内への原料液pH調整剤の流入量を調節させることになる。このため、制御部30が原料液pHセンサ28による原料液pH検出値に基づいて算出する原料液pH調整剤の添加量の必要変化量、すなわち原料液pH検出値を原料液pH最適値に一致させるために必要となる原料液戻し配管18内への原料液pH調整剤の流入量の必要変化量と、流量調整弁26により調節される原料液戻し配管18内への原料液pH調整剤の実際の流入量の変化量との間のずれを低減できる。そのため、抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより正確に原料液最適pHに調整できる。
【0109】
(第4実施形態)
以下、
図4を参照して、本発明の第4実施形態による抽出システム1について説明する。
【0110】
当該第4実施形態による抽出システム1は、原料液pH調整剤添加装置19の構成のみが前記第3実施形態による抽出システム1と異なっており、この原料液pH調整剤添加装置19は、抽出器6での抽出処理により低下した原料液のpHを原料液最適pHに近づけるために固体の原料液pH調整剤を原料液戻し配管18内を流れる原料液に添加するようになっている。この原料液pH調整剤添加装置19により添加される固体の原料液pH調整剤は、前記第2実施形態において原料液pH調整剤添加装置19により原料液槽4内の原料液に添加される固体の原料液pH調整剤と同様のものである。
【0111】
当該第4実施形態による抽出システム1の原料液pH調整剤添加装置19は、貯留部42と、ガイド部43と、添加量調節部44と、を有する。この貯留部42、ガイド部43及び添加量調節部44は、前記第2実施形態における原料液pH調整剤添加装置19の貯留部42、ガイド部43及び添加量調節部44と同様のものである。ただし、当該第4実施形態では、ガイド部43が原料液戻し配管18に接続されており、貯留部20の放出口から放出された固体の原料液pH調整剤がガイド部43を通って原料液戻し配管18内の原料液に添加されるようになっている。
【0112】
当該第4実施形態では、原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aは、原料液pH調整剤添加装置19のガイド部43が接続されてその原料液pH調整剤添加装置19により当該原料液戻し配管18内の原料液に固体の原料液pH調整剤が添加される箇所である。なお、
図4では、貯留部42がpH調整剤添加箇所18aの側方にあるように図示されているが、実際には、貯留部42の放出口からpH調整剤が自重によって降下してpH調整剤添加箇所18aへ供給されるように貯留部42はpH調整剤添加箇所18aよりも上側に配置されている。
【0113】
また、当該第4実施形態による抽出システム1では、制御部30が、原料液pHセンサ28により検出される原料液のpHの検出値に基づいて添加量調節部44に貯留部42から原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aに投入される固体の原料液pH調整剤の投入量、すなわち貯留部42の放出口を通って貯留部42内から放出される固体の原料液pH調整剤の放出量を調節させることにより、原料液戻し配管18内の原料液に添加する原料液pH調整剤の添加量を調節する。
【0114】
当該第4実施形態による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第3実施形態による抽出システム1と同様である。
【0115】
次に、当該第4実施形態の抽出システム1による抽出方法について説明する。
【0116】
当該第4実施形態による抽出方法では、抽出器6において抽出処理された後、分離器14において抽出液に対して分離された原料液が分離器14から原料液戻し配管18を通って原料液槽4へ向かって流れている過程でpH調整剤添加箇所18aにおいてその原料液に原料液pH調整剤添加装置19から固体の原料液pH調整剤が添加される。
【0117】
そして、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうちその原料液戻し配管18における原料液の流れ方向においてpH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所で、原料液のpHを逐次検出し、制御部30がその原料液pHセンサ28により検出される原料液のpHの検出値に基づいて添加量調節部44に貯留部42から原料液戻し配管18内への固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。
【0118】
この制御部30による添加量調節部44の制御において、制御部30は、原料液pHセンサ28により逐次検出されるpH調整剤添加箇所18aよりも下流側の箇所における原料液のpHの検出値を原料液最適pHに対応する原料液pH最適値に一致させるために必要となる原料液戻し配管18内の原料液への固体の原料液pH調整剤の添加量の必要変化量、具体的には貯留部42からpH調整剤添加箇所18aへの固体の原料液pH調整剤の投入量の必要変化量を逐次算出する。
【0119】
具体的には、制御部30は、予め導出された原料液戻し配管18内への固体の原料液pH調整剤の投入量の変化量と原料液戻し配管18内の原料液のpHの変化量との相関関係を記憶しており、原料液pH最適値と原料液pHセンサ28から取得した原料液pH検出値との差を算出するとともに、その算出した差を前記pHの変化量としてその差に対応する原料液戻し配管18内への固体の原料液pH調整剤の投入量の変化量を前記相関関係に基づいて算出する。そして、制御部30は、算出した固体の原料液pH調整剤の投入量の変化量が実現されるように、添加量調節部44に貯留部42の放出口の開口面積を変更させてその放出口を通って原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aに投入される固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。この制御部30による添加量調節部44の制御は、制御部30が原料液pHセンサ28から逐次取得する原料液pH検出値に基づいて逐次行われる。
【0120】
当該第4実施形態による抽出方法のこれ以外のプロセスは、前記第1実施形態及び前記第3実施形態による抽出方法と同様である。
【0121】
当該第4実施形態では、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHをより迅速に最適pHに近づけることができ且つその原料液のpHをより正確に最適pHに調整できるという前記第3実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0122】
さらに、当該第4実施形態では、金属イオンの抽出が完了した後、廃液として廃棄される原料液の量を削減しつつ、抽出器6内の処理流路32で固体の原料液pH調整剤による閉塞が発生するのを防止できるという前記第2実施形態と同様の効果が得られる。具体的には、当該第4実施形態では、抽出器6での抽出処理によって低下した原料液のpHを最適pHに近づけるために固体の原料液pH調整剤が原料液に添加されることから、液体の原料液pH調整剤が原料液に添加される場合に比べて、金属イオンの抽出が完了した時点の原料液の量(pH調整剤が加えられた総量)を削減でき、廃液として廃棄される原料液の量を削減できる。また、当該第4実施形態では、抽出システム1における原料液の循環経路のうち原料液の流れ方向において抽出器6から上流側に大きく離れたpH調整剤添加箇所18aにて原料液に固体の原料液pH調整剤が添加されるため、その原料液pH調整剤が添加された原料液が抽出器6に達するまでに固体の原料液pH調整剤は原料液に溶解する。このため、抽出器6内の処理流路32で固体の原料液pH調整剤による閉塞が発生するのを防止できる。
【0123】
(第5実施形態)
以下、
図5を参照して、本発明の第5実施形態による抽出システム1について説明する。
【0124】
当該第5実施形態による抽出システム1では、前記第3実施形態と同様に原料液pH調整剤添加装置19が液体の原料液pH調整剤を原料液戻し配管18内の原料液に添加するとともに、制御部30が原料液pH調整剤添加装置19の流量調整弁26に原料液戻し配管18内の原料液への原料液pH調整剤の添加量を調節させる。ただし、当該第5実施形態による抽出システム1では、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうち当該原料液戻し配管18における原料液の流れ方向においてpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所で原料液のpHを検出し、制御部30が、その原料液pHセンサ28により検出された原料液のpHの検出値と、流量計48により測定される原料液戻し配管18内の原料液への原料液pH調整剤の添加流量の測定値とに基づいて、流量調整弁26に原料液戻し配管18内の原料液への原料液pH調整剤の添加流量を調節させるようになっている。
【0125】
具体的に、当該第5実施形態による抽出システム1は、pH調整剤供給配管22をpH調整剤添加箇所18aへ向かって流れる原料液pH調整剤の流量を測定する流量計48を備える。前記原料液pH調整剤の流量は、貯留部42から原料液戻し配管18内の原料液に添加される原料液pH調整剤の添加量の指標値であり、本発明における原料液pH調整剤指標値の一例である。また、流量計48は、本発明における原料液pH調整剤指標値検出器の一例である。流量計48は、pH調整剤供給配管22のうち当該pH調整剤供給配管22における原料液pH調整剤の流れ方向においてpH調整剤供給ポンプ24の下流側の箇所に接続され、その箇所での原料液pH調整剤の流量を逐次測定する。流量計48は、その測定した原料液pH調整剤の流量の測定値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0126】
また、当該第5実施形態による抽出システム1では、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうち当該原料液戻し配管18における原料液の流れ方向においてpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所、つまり原料液戻し配管18のうち分離器14とpH調整剤添加箇所18aとの間の箇所に接続され、その箇所において原料液のpHを逐次検出するようになっている。
【0127】
制御部30は、原料液pHセンサ28により検出される原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所での原料液のpHの検出値と流量計48により測定される原料液pH調整剤の流量の測定値とに基づいて、流量調整弁26にpH調整剤供給配管22からpH調整剤添加箇所18aへの液体の原料液pH調整剤の流入量を調節させる。
【0128】
当該第5実施形態による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第3実施形態による抽出システム1と同様である。
【0129】
次に、当該第5実施形態の抽出システム1による抽出方法について説明する。
【0130】
当該第5実施形態による抽出方法では、抽出器6において抽出処理された後、分離器14において抽出液に対して分離された原料液が分離器14から原料液戻し配管18を通って原料液槽4へ向かって流れている過程でpH調整剤添加箇所18aにおいてその原料液に原料液pH調整剤添加装置19から液体の原料液pH調整剤が添加される。
【0131】
そして、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうちその原料液戻し配管18における原料液の流れ方向においてpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所で、原料液のpHを逐次検出するとともに、流量計48がpH調整剤供給配管22をpH調整剤添加箇所18aへ向かって流れる原料液pH調整剤の流量を逐次測定する。
【0132】
そして、制御部30は、原料液pHセンサ28により検出される原料液のpHの検出値を原料液最適pHに対応する原料液pH最適値に一致させるために、原料液戻し配管18内の原料液に添加する必要がある液体の原料液pH調整剤の添加量である原料液必要添加量を逐次算出する。具体的には、制御部30は、pH調整剤供給配管22から原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aへ流入させる必要がある液体の原料液pH調整剤の流入量を、この原料液必要添加量として算出する。そして、制御部30は、流量計48により測定される原料液pH調整剤の流量、すなわちpH調整剤添加箇所18aに実際に流入する原料液pH調整剤の流入量が、算出した前記原料液必要添加量としての流入量に一致するように、流量調整弁26にその開度を変更させて、原料液戻し配管18内への液体の原料液pH調整剤の流入量を調節させる。この制御部30による流量調整弁26の制御は、制御部30が原料液pHセンサ28から逐次取得する原料液pH検出値及び流量計48から逐次取得する原料液pH調整剤の流量の測定値に基づいて逐次行われる。
【0133】
当該第5実施形態による抽出方法の以上のプロセス以外のプロセスは、前記第1実施形態及び前記第3実施形態による抽出方法と同様である。
【0134】
当該第5実施形態では、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHを迅速に原料液最適pHに近づけることができるという前記第3実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0135】
さらに、当該第5実施形態では、抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHの原料液最適pHへの調整の迅速性及び正確性を向上できるという効果が得られる。
【0136】
具体的に、当該第5実施形態では、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のうちpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所での原料液のpH、すなわち、抽出器6での抽出処理に伴ってpHが低下した後、まだ原料液pH調整剤が添加されていない状態の原料液のpHを検出する。このため、制御部30が原料液pHセンサ28から取得した原料液pH検出値に基づいて算出する原料液pH調整剤の添加量の必要変化量、すなわちpH検出値を最適pHに対応するpH最適値に一致させるために必要となる原料液戻し配管18内へのpH調整剤の流入量の必要変化量は、pH調整剤が添加された後の原料液についてのpH検出値に基づいて算出される場合pH調整剤の添加量の必要変化量に比べて大きくなる。そのため、制御部30がその算出した必要変化量に基づいて流量調整弁26に原料液戻し配管18内へのpH調整剤の流入量を調節させることにより、抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHの最適pHへの調整の迅速性をより向上できる。
【0137】
また、当該第5実施形態では、制御部30が、原料液pHセンサ28により検出される原料液のpHの検出値を原料液pH最適値に一致させるために、原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aへ流入させる必要がある液体の原料液pH調整剤の流入量を逐次算出するとともに、流量計48により測定されるpH調整剤添加箇所18aへの原料液pH調整剤の実際の流入量が前記のように算出した原料液pH調整剤の流入量に一致するように、流量調整弁26にその開度を変更させて原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18a内への液体の原料液pH調整剤の流入量を調節させる。このため、原料液戻し配管18内の原料液のpH、すなわち抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHの原料液最適pHへの調整の正確性を向上することができる。
【0138】
(第6実施形態)
以下、
図6を参照して、本発明の第6実施形態による抽出システム1について説明する。
【0139】
当該第6実施形態による抽出システム1では、原料液pH調整剤添加装置19の構成が前記第5実施形態による抽出システム1と異なっており、この原料液pH調整剤添加装置19は、抽出器6での抽出処理により低下した原料液のpHを原料液最適pHに近づけるために固体の原料液pH調整剤を原料液戻し配管18内を流れる原料液に添加するようになっている。この第6実施形態における原料液pH調整剤添加装置19は、前記第4実施形態における原料液pH調整剤添加装置19と同様のものである。
【0140】
また、当該第6実施形態による抽出システム1は、貯留部42に取り付けられていてその貯留部42と当該貯留部42内に貯留された固体の原料液pH調整剤との総重量を測定する重量計49を備える。この重量計49により測定される前記総重量は、貯留部42から原料液戻し配管18内の原料液に添加される固体の原料液pH調整剤の添加量の指標値であり、本発明における原料液pH調整剤指標値の一例である。また、重量計49は、本発明における原料液pH調整剤指標値検出器の一例である。重量計49は、前記総重量を逐次測定し、その逐次測定される毎の総重量の減少分が原料液戻し配管18内の原料液への原料液pH調整剤の添加量に相当する。重量計49は、逐次測定した前記総重量のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0141】
また、当該第6実施形態による抽出システム1では、制御部30は、原料液pHセンサ28により検出される原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所での原料液のpHの検出値と重量計49により測定される前記総重量の測定値とに基づいて、添加量調節部44に貯留部42からpH調整剤添加箇所18aに投入される固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。
【0142】
当該第6実施形態による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第5実施形態による抽出システム1と同様である。
【0143】
次に、当該第6実施形態の抽出システム1による抽出方法について説明する。
【0144】
当該第6実施形態による抽出方法では、抽出器6において抽出処理された後、分離器14において抽出液に対して分離された原料液が分離器14から原料液戻し配管18を通って原料液槽4へ向かって流れている過程でpH調整剤添加箇所18aにおいてその原料液に原料液pH調整剤添加装置19から固体の原料液pH調整剤が添加される。
【0145】
そして、原料液pHセンサ28が原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aよりも上流側の箇所において原料液のpHを逐次検出するとともに、重量計49が貯留部42及びその内部に貯留された固体の原料液pH調整剤の総重量を逐次測定する。
【0146】
そして、制御部30は、原料液pHセンサ28により検出される原料液のpHの検出値を原料液最適pHに対応する原料液pH最適値に一致させるために、原料液戻し配管18内の原料液に添加する必要がある固体の原料液pH調整剤の添加量である原料液必要添加量を逐次算出する。具体的には、制御部30は、貯留部42から原料液戻し配管18のpH調整剤添加箇所18aへ投入する必要がある固体の原料液pH調整剤の投入量を、この原料液必要添加量として算出する。そして、制御部30は、重量計49により逐次測定される前記総重量の測定値からその測定値の減少量を逐次算出する。この減少量は、貯留部42からpH調整剤添加箇所18aへの固体の原料液pH調整剤の実際の投入量に相当し、制御部30は、その逐次算出する減少量が前記のように算出した原料液必要添加量としての投入量に一致するように、添加量調節部44に貯留部42の放出口の開口面積を調節させて貯留部42から原料液戻し配管18内への固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる。この制御部30による添加量調節部44の制御は、制御部30が原料液pHセンサ28から逐次取得する原料液pH検出値及び重量計49から逐次取得する前記総重量の測定値に基づいて逐次行われる。
【0147】
当該第6実施形態による抽出方法の以上のプロセス以外のプロセスは、前記第1実施形態及び前記第5実施形態による抽出方法と同様である。
【0148】
当該第6実施形態では、前記第1実施形態及び前記第4実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、抽出器6での抽出処理に伴って低下した原料液のpHの最適pHへの調整の迅速性をより向上できるという前記第5実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0149】
(本発明による抽出システムの効果を調べるためのシミュレーション)
次に、本発明による抽出システムによって得られる効果を調べるために行った原料液から金属イオンを抽出する抽出処理のシミュレーションについて説明する。
【0150】
このシミュレーションでは、抽出対象の金属イオンが3価の金属イオンM3+であり、原料液は、この金属イオンM3+を0.5mol/Lの濃度で含む水溶液であるものとする。また、この原料液の未処理の状態でのpH(初期pH)が1であるものとする。また、原料液pH調整剤として、水酸化ナトリウムが0.5mol/Lの濃度で溶解された水酸化ナトリウム水溶液を用いるものとする。
【0151】
また、この原料液の抽出処理において、以下の反応式で表される抽出反応が生じるものとする。なお、以下の反応式において、HRは、抽出液に含まれる抽出剤の分子を表す。
M3++3(HR)→MR3+3H+
【0152】
この反応式は、1molの金属イオン(M3+)が原料液から抽出されることにより、3molの水素イオン(H+)が生成することを表す。従って、原料液からの金属イオンの抽出が進行するにつれて原料液のpHが低下する。
【0153】
また、このシミュレーションでは、原料液からの金属イオンの抽出処理における抽出平衡のpH依存性を示す指標log10Dが以下のように設定される。なお、Dは、抽出平衡時の抽出液中の金属イオンM3+の濃度を抽出平衡時の原料液中の金属イオンM3+の濃度で除することによって得られる値である。
log10D=3pH-0.5
【0154】
本発明に対応する実施例として、前記第1実施形態の抽出システム1(
図1参照)を用いて原料液から金属イオンM
3+を抽出するものとする。そして、この実施例では、抽出システム1内で抽出液と原料液を循環させながら抽出器6での抽出処理を繰り返し行うとともに、原料液pH調整剤添加装置19から原料液槽4内の原料液に液体の原料液pH調整剤を添加して原料液pHセンサ28により検出される原料液槽4中の原料液のpHを0.5に維持するものとする。そして、循環する抽出液及び原料液が抽出平衡に達した時点で抽出液槽2に貯留されている抽出平衡に達した抽出液を抽出処理に未使用の抽出液に入れ替えるものとし、この抽出液を入れ替えるまでの抽出処理を1回の抽出処理として、その抽出処理を3回行うものとする。
【0155】
また、比較例として、
図7に示す抽出システム100、すなわち、それぞれ抽出処理を行う3段の抽出器106,122,132が直列に接続された構成を有する抽出システム100を用いて原料液から金属イオンM
3+を抽出するものとする。この比較例による抽出システム100は、抽出液槽102と、原料液槽104と、抽出液供給配管108と、抽出液送りポンプ109と、原料液供給配管110と、原料液送りポンプ111と、第1抽出器106と、第1分離器114と、第2抽出器122と、第2分離器126と、第3抽出器132と、第3分離器136と、pH調整剤添加装置137と、第1pHセンサ120と、第2pHセンサ130と、接続配管115,124,134と、配管118,128と、抽出液排出配管116と、原料液排出配管138とを有する。
【0156】
抽出液槽102は、抽出処理に未使用の抽出液を貯留するものであり、抽出液供給配管108を介して第1抽出器106、第2抽出器122、及び第3抽出器132のそれぞれの抽出液入口に繋がっている。この抽出液槽102に貯留された抽出液が抽出液供給配管108に設けられた抽出液送りポンプ109により第1抽出器106、第2抽出器122、及び第3抽出器132のそれぞれの抽出液入口へ送られる。
【0157】
原料液槽104は、未処理の原料液を貯留するものであり、原料液供給配管110を介して第1抽出器106の原料液入口に繋がっている。この原料液槽104に貯留された原料液が原料液供給配管110に設けられた原料液送りポンプ111により第1抽出器106の原料液入口へ送られる。
【0158】
第1抽出器106、第2抽出器122、及び第3抽出器132は、前記第1実施形態における抽出器6と同様のものである。第1抽出器106は内部に複数の処理流路146を有し、第2抽出器122は内部に複数の処理流路148を有し、第3抽出器132は内部に複数の処理流路150を有する。また、第1分離器114、第2分離器126、及び第3分離器136は、前記第1実施形態における分離器14と同様のものである。
【0159】
第1抽出器106内の処理流路146では、抽出液槽102から送られた抽出液と原料液槽104から送られた原料液とが接触して流れ、その原料液からの金属イオンの抽出処理が行われる。第1抽出器106の出口は接続配管115を介して第1分離器114に接続されており、第1抽出器106内の処理流路146で抽出処理された後の抽出液と原料液との混合液が接続配管115を通って第1分離器114内へ流入するようになっている。
【0160】
第1分離器114のうち分離した原料液が溜まる箇所は、配管118を介して第2抽出器122の原料液入口に接続されており、第1分離器114で分離した原料液は配管118を通って第2抽出器122の原料液入口へ送られるようになっている。
【0161】
第2抽出器122内の処理流路148では、抽出液槽102から送られた抽出液と第1分離器114から送られた原料液とが接触して流れ、その原料液からの金属イオンの抽出処理が行われる。第2抽出器122の出口は接続配管124を介して第2分離器126に接続されており、第2抽出器122内の処理流路148で抽出処理された後の抽出液と原料液との混合液が接続配管124を通って第2分離器126内へ流入するようになっている。
【0162】
第2分離器126のうち分離した原料液が溜まる箇所は、配管128を介して第3抽出器132の原料液入口に接続されており、第2分離器126で分離した原料液は配管128を通って第3抽出器132の原料液入口へ送られるようになっている。
【0163】
第3抽出器132内の処理流路150では、抽出液槽102から送られた抽出液と第2分離器126から送られた原料液とが接触して流れ、その原料液からの金属イオンの抽出処理が行われる。第3抽出器132の出口は接続配管134を介して第3分離器136に接続されており、第3抽出器132内の処理流路150で抽出処理された後の抽出液と原料液との混合液が接続配管134を通って第3分離器136内へ流入するようになっている。
【0164】
第3分離器136のうち分離した原料液が溜まる箇所には原料液排出配管138が接続されており、第3分離器136で分離した原料液は、この原料液排出配管138を通って排出される。
【0165】
また、第1、第2、及び第3分離器114,126,136の各々の分離した抽出液が溜まる箇所には抽出液排出配管116が接続されており、第1、第2、及び第3分離器114,126,136の各々で分離した抽出液は、この抽出液排出配管116を通って排出される。
【0166】
第1pHセンサ120は、前記配管118に接続されてその配管118を流れる原料液のpHを検出する。また、第2pHセンサ130は、前記配管128を流れる原料液のpHを検出する。
【0167】
pH調整剤添加装置137は、第1抽出器106で抽出処理された後、第1分離器114で分離されて配管118を通って第2抽出器122へ送られる原料液と、第2抽出器122で抽出処理された後、第2分離器126で分離されて配管128を通って第3抽出器132へ送られる原料液とにそれぞれ原料液pH調整剤を添加する。このpH調整剤添加装置137は、貯留部140と、pH調整剤供給配管142と、pH調整剤供給ポンプ144とを有する。pH調整剤供給配管142は、第1分離器114と第2抽出器122との間の配管118と貯留部140とを繋ぐとともに、第2分離器126と第3抽出器132との間の配管128とpH調整剤貯留部140とを繋いでいる。pH調整剤供給ポンプ144は、このpH調整剤供給配管142に設けられ、貯留部140から当該pH調整剤供給配管142を通じて前記各配管118,128へ原料液pH調整剤を送り、その各配管118,128内に流れる原料液に原料液pH調整剤を添加するようになっている。
【0168】
以上のように構成された抽出システム100を用いた比較例では、第1抽出器106で抽出処理された後、第1分離器114で分離されて第2抽出器122へ送られる原料液と、第2抽出器122で抽出処理された後、第2分離器126で分離されて第3抽出器132へ送られる原料液とにそれぞれ原料液pH調整剤が添加され、それによって、それらの原料液のpH、すなわち第1pHセンサ120及び第2pHセンサ130によってそれぞれ検出されるpHが0.5になるように調整されるものとする。
【0169】
前記の実施例で抽出処理を行った場合のシミュレーションの結果が
図8に示されているとともに、前記の比較例で抽出処理を行った場合のシミュレーションの結果が
図9に示されている。
【0170】
このシミュレーションの結果から、比較例では、3回の抽出処理後の原料液からの金属イオンの抽出率が89.4%になるのに対し、実施例では、3回の抽出処理後の原料液からの金属イオンの抽出率が99.3%になることが判った。すなわち、実施例では、比較例に比べて、高い抽出率が得られることが判った。これは、実施例では、比較例に比べて、原料液のpHが抽出処理に最適なpHである0.5に維持される時間が長いことによると考えられる。
【0171】
また、このシミュレーションでは、比較例で原料液に添加される原料液pH調整剤の総量が原料液の体積を100とすると104になるのに対し、実施例で原料液に添加される原料液pH調整剤の総量は原料液の体積を100とすると156になることが判った。すなわち、実施例では、比較例に比べて原料液への液体の原料液pH調整剤の添加量が多くなることが判った。液体の原料液pH調整剤の添加量が増大すると、金属イオンの抽出が完了した後、廃液として廃棄される原料液の量が増大する懸念があるが、例えば液体の原料液pH調整剤の代わりに固体の原料液pH調整剤を原料液に添加することで原料液pH調整剤の添加量(体積)を削減でき、その結果、金属イオンの抽出が完了した後、廃液として廃棄される原料液の量の増大を抑制することが可能である。
【0172】
(変形例)
本発明による抽出システムは、前記各実施形態のようなものに必ずしも限定されない。本発明による抽出システムには、例えば以下のような技術を採用することが可能である。
【0173】
(1)原料液pH調整剤が添加された後、抽出器で抽出処理される前の原料液、すなわち抽出器内の処理流路に導入される前の原料液のpHと、抽出器で抽出処理された後、pH調整剤が添加される前の原料液のpHとをそれぞれ検出し、それらの検出したpHに基づいて原料液からの金属イオンの抽出が完了したか否かを判別するようにしてもよい。
図10には、このような技術が適用された第1変形例による抽出システム1が示されている。
【0174】
この第1変形例による抽出システム1の基本的な構成は、前記第2実施形態による抽出システム1と同様であるが、当該第1変形例による抽出システム1は、抽出前pHセンサ28aと、抽出後pHセンサ28bとを備える。
【0175】
抽出前pHセンサ28aは、原料液pH調整剤添加装置19から原料液pH調整剤が添加された後、抽出器6で抽出処理される前の原料液のpHを検出するものである。具体的には、抽出前pHセンサ28aは、原料液槽4に接続されており、原料液pH調整剤添加装置19から原料液pH調整剤が添加された原料液槽4内の原料液のpHを検出する。抽出前pHセンサ28aは、原料液槽4内の原料液のpHを逐次検出して、そのpHの検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0176】
抽出後pHセンサ28bは、抽出器6で抽出処理された後、原料液pH調整剤添加装置19から原料液pH調整剤が添加される前の原料液のpHを検出するものである。具体的には、抽出後pHセンサ28bは、原料液戻し配管18に接続されており、抽出器6で抽出処理された後、分離器14で抽出液に対して分離され、その分離器14から流れ出て原料液戻し配管18内を流れる原料液のpHを検出する。抽出後pHセンサ28bは、原料液戻し配管18内の原料液のpHを逐次検出して、そのpHの検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0177】
制御部30は、抽出前pHセンサ28aにより検出された原料液のpHから抽出後pHセンサ28bにより検出された原料液のpHを減算することによって得られるそれらのpHの差である抽出前後pH差が原料液pH差規定値よりも大きい場合には、原料液送りポンプ11及び抽出液送りポンプ9の作動を継続させる一方、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値以下である場合には、原料液送りポンプ11及び抽出液送りポンプ9の作動を停止させる。前記原料液pH差規定値は、原料液からの金属イオンの抽出が完了したか否かを判断するための基準として予め設定された値であり、0付近の値である。
【0178】
原料液からの金属イオンの抽出が完了するまでは、抽出器6での抽出処理後の原料液のpHは抽出器6での抽出処理前の原料液のpHから低下するが、原料液からの金属イオンの抽出が完了すると、抽出器6での抽出処理後の原料液のpHはその抽出器6での抽出処理前の原料液のpHからほぼ変化しなくなる。このため、当該第1変形例では、前記原料液pH差規定値が0付近の値に設定され、制御部30が、前記抽出前後pH差と前記原料液pH差規定値との大小関係に基づいて、原料液からの金属イオンの抽出が完了したか否かを判断する。そして、制御部30は、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値よりも大きい場合には、原料液からの金属イオンの抽出がまだ完了していないと判断して原料液送りポンプ11及び抽出液送りポンプ9の作動を継続させて抽出システム1における抽出処理を継続させる。一方、制御部30は、前記抽出前後pH差が前記原料液pH差規定値以下である場合には、原料液からの金属イオンの抽出が完了したと判断して原料液送りポンプ11及び抽出液送りポンプ9の作動を停止させて抽出システム1における抽出処理を終了させる。
【0179】
当該第1変形例では、抽出前pHセンサ28aは、制御部30が添加量調節部44に貯留部42から原料液槽4内への固体の原料液pH調整剤の投入量を調節させる制御を行う基準となる原料液槽4内の原料液のpHを検出する原料液pHセンサとして兼用されている。なお、当該第1変形例による抽出システム1において、添加量調節部44の制御の基準となる原料液のpHを検出するpHセンサと、抽出前pHセンサとが別々に設けられていてもよい。
【0180】
(2)本発明による抽出システムは、抽出処理によって原料液から抽出された金属イオンを含む抽出液である抽出後抽出液を抽出液槽から導出させて、その抽出後抽出液を逆抽出液と接触させることにより抽出後抽出液から金属イオンを抽出して逆抽出液中へ移動させる逆抽出処理を行い、その逆抽出処理後の抽出後抽出液である逆抽出後抽出液を抽出液槽へ戻す逆抽出装置を備えていてもよい。
図11には、そのような技術が適用された第2変形例による抽出システム1が示されている。
【0181】
この第2変形例による抽出システム1は、抽出液と原料液とを循環させながら抽出処理を行う抽出装置51と、その抽出装置51で抽出処理された後の抽出後抽出液について逆抽出処理を行う逆抽出装置52とを備えている。
【0182】
抽出装置51の構成は、前記第1実施形態による抽出システム1の構成と同様であり、抽出液槽2と、原料液槽4と、抽出器6と、抽出液供給配管8と、抽出液送りポンプ9と、原料液供給配管10と、原料液送りポンプ11と、分離器14と、接続配管15と、抽出液戻し配管16と、原料液戻し配管18と、原料液pH調整剤添加装置19と、原料液pHセンサ28と、制御部30と、を備える。
【0183】
逆抽出装置52は、抽出装置51の抽出液槽2に接続されている。具体的に、逆抽出装置52は、逆抽出液槽54と、逆抽出器56と、抽出後抽出液導出配管58と、抽出後抽出液送りポンプ59と、逆抽出液供給配管60と、逆抽出液送りポンプ61と、逆抽出後分離器64と、逆抽出後抽出液戻し配管66と、逆抽出液戻し配管68と、逆抽出液pH調整剤添加装置69と、逆抽出液pHセンサ78と、を有する。
【0184】
逆抽出液槽54は、抽出後抽出液から金属イオンを逆抽出するための逆抽出液を貯留するものである。逆抽出液は、抽出後抽出液に対して非相溶性の液体であり、例えば水である。この逆抽出液は、抽出後抽出液の比重よりも大きい比重を有する。逆抽出液槽54は、逆抽出処理の開始前には逆抽出処理に未使用の逆抽出液である未使用逆抽出液を貯留し、逆抽出処理が開始された後は、後述のように逆抽出器56において逆抽出処理を行った後、逆抽出後分離器64で逆抽出後抽出液に対して分離された逆抽出液である逆抽出後逆抽出液が導入されてその逆抽出後逆抽出液を貯留する。
【0185】
逆抽出器56は、抽出液槽2から抽出後抽出液が導入されるように抽出後抽出液導出配管58(以下、単に導出配管58と称する)を介して抽出液槽2と接続されているとともに、逆抽出液槽54から逆抽出液が導入されるように、逆抽出液供給配管60を介して逆抽出液槽54と接続されている。この逆抽出器56は、抽出液槽2から導入された抽出後抽出液と逆抽出液槽54から導入された逆抽出液とを互いに接触させ、それによって抽出後抽出液から金属イオンを抽出して逆抽出液中に移動させる逆抽出処理を行う。この逆抽出器56は、抽出器6と同様に構成されており、その内部に多数の処理流路82を有する。
【0186】
各処理流路82には、抽出液槽2から導出配管58を通じて抽出後抽出液が導入されるとともに、逆抽出液槽54から逆抽出液供給配管60を通じて逆抽出液が導入される。各処理流路82は、その導入された抽出後抽出液と逆抽出液とが互いに接触して抽出後抽出液から金属イオンが抽出されて逆抽出液中へ移動するように、その抽出後抽出液と逆抽出液とを流通させる。この処理流路82の構成は、抽出器6内の処理流路32の構成と同様である。
【0187】
抽出後抽出液送りポンプ59は、導出配管58に設けられている。抽出後抽出液送りポンプ59は、抽出液槽2から導出配管58に抽出後抽出液を導出させてその抽出後抽出液を、導出配管58を通じて逆抽出器56へ送る。
【0188】
逆抽出液送りポンプ61は、逆抽出液供給配管60に設けられている。逆抽出液送りポンプ61は、逆抽出液槽54に貯留された逆抽出液を、その逆抽出液槽54から逆抽出液供給配管60を通じて逆抽出器56へ送る。
【0189】
逆抽出後分離器64は、逆抽出器56の各処理流路82で逆抽出処理された後の前記逆抽出後抽出液と前記逆抽出後逆抽出液との混合液である逆抽出後混合液を、逆抽出後抽出液と逆抽出後逆抽出液とに分離させる容器である。この逆抽出後分離器64は、抽出装置51の分離器14と同様のものであり、逆抽出器56の出口に接続配管65を介して接続され、その逆抽出器56の出口から排出される前記逆抽出後混合液を、接続配管65を通じて受け入れる。逆抽出後分離器64は、受け入れた逆抽出後混合液を一時的に滞留させ、その逆抽出後混合液を比重差により逆抽出後抽出液(軽液)と逆抽出後逆抽出液(重液)とに上下に相分離させる。分離した逆抽出後逆抽出液(重液)は逆抽出後分離器64内の底に溜まり、その溜まった逆抽出後逆抽出液の上に分離した逆抽出後抽出液(軽液)が溜まる。以下、逆抽出後分離器64のことを簡略化のため単に分離器64と称する。
【0190】
逆抽出後抽出液戻し配管66は、分離器64で分離された逆抽出後抽出液を分離器64から抽出液槽2へ導くように、分離器64のうち分離した逆抽出後抽出液が溜まる領域と抽出液槽2とを繋いでいる。この逆抽出後抽出液戻し配管66は、本発明における逆抽出後抽出液戻し路の一例である。
【0191】
逆抽出液戻し配管68は、分離器64で分離された逆抽出後逆抽出液を分離器64から逆抽出液槽54へ導くように分離器64のうち分離した逆抽出後逆抽出液が溜まる領域と逆抽出液槽54とを繋いでいる。この逆抽出液戻し配管68は、本発明における逆抽出液戻し路の一例である。
【0192】
逆抽出液pH調整剤添加装置69は、逆抽出液槽54に接続され、逆抽出器56での逆抽出処理により上昇した逆抽出液(逆抽出後逆抽出液)のpHを低下させる逆抽出液pH調整剤を逆抽出液槽54内の逆抽出液に添加する装置である。また、逆抽出液pH調整剤は、当該第2変形例では液体であり、逆抽出後逆抽出液のpHを低下させる酸性の水溶液、例えば、塩酸の水溶液、もしくは、硝酸の水溶液、もしくは、硫酸の水溶液である。逆抽出液pH調整剤添加装置69は、逆抽出液pH調整剤貯留部70と、逆抽出液pH調整剤供給配管72と、逆抽出液pH調整剤供給ポンプ74と、逆抽出液pH調整剤流量調整弁76と、を有する。
【0193】
逆抽出液pH調整剤貯留部70は、液体である逆抽出液pH調整剤を貯留するタンクである。以下、逆抽出液pH調整剤貯留部70のことを簡略化のため単に貯留部70と称する。
【0194】
逆抽出液pH調整剤供給配管72は、貯留部70に貯留された逆抽出液pH調整剤を逆抽出液槽54へ導くように貯留部70と逆抽出液槽54とを繋いでいる。以下、逆抽出液pH調整剤供給配管72のことを簡略化のため単にpH調整剤供給配管72と称する。
【0195】
逆抽出液pH調整剤供給ポンプ74は、逆抽出液pH調整剤供給配管72に設けられている。以下、逆抽出液pH調整剤供給ポンプ74のことを、簡略化のため単にpH調整剤供給ポンプ74と称する。このpH調整剤供給ポンプ74は、貯留部70に貯留された逆抽出液pH調整剤を貯留部70からpH調整剤供給配管72を通じて逆抽出液槽54へ送る。
【0196】
逆抽出液pH調整剤流量調整弁76は、pH調整剤供給配管72のうち当該pH調整剤供給配管72における逆抽出液pH調整剤の流れ方向において、pH調整剤供給ポンプ74の下流側に設けられている。以下、逆抽出液pH調整剤流量調整弁76のことを簡略化のため単に流量調整弁76と称する。この流量調整弁76は、本発明における逆抽出液pH調整剤添加量調節部の一例であり、貯留部70から逆抽出液槽54内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節可能である。具体的には、流量調整弁76は、その開度が変更可能となっており、貯留部70からpH調整剤供給配管72を通って逆抽出液槽54へ流れる逆抽出液pH調整剤の流量をその開度に応じた流量に規制し、それによって逆抽出液槽54内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節する。
【0197】
逆抽出液pHセンサ78は、逆抽出液槽54に接続されている。逆抽出液pHセンサ78は、逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを逐次検出し、その検出したpHの検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0198】
制御部30は、逆抽出液pHセンサ78から逐次送信されるpHの検出値のデータを取得し、その取得したpHの検出値に基づいて流量調整弁76に貯留部70からpH調整剤供給配管72を通って逆抽出液槽54へ流れる逆抽出液pH調整剤の流量を調節させる。具体的には、制御部30は、取得したpHの検出値が予め設定された逆抽出液pH最適値に近づくように、流量調整弁76にその開度を調節させて逆抽出液pH調整剤の流量を調節させる。逆抽出液pH最適値は、逆抽出器56での抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出処理に最適な逆抽出液のpHに対応する値である。逆抽出処理に最適な逆抽出液のpHは、抽出後抽出液からの金属イオンの抽出率が高くなるpHである。制御部30は、本発明における逆抽出装置制御部の一例である。すなわち、当該第2変形例では、制御部30が本発明における制御部と逆抽出装置制御部とを兼ねている。なお、本発明における制御部と逆抽出制御部とにそれぞれ対応する制御部が別々に設けられていてもよい。
【0199】
当該第2変形例による抽出システム1では、抽出装置51において前記第1実施形態による抽出システム1と同様に抽出液と原料液とを循環させながら抽出器6の処理流路32における原料液からの金属イオンの抽出処理が繰り返し行われる。そして、この抽出装置51における抽出液と原料液とを循環させながらの抽出処理と並行して、逆抽出装置52において抽出後抽出液と逆抽出液とを循環させながら逆抽出器56の処理流路82における抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出処理が繰り返し行われる。
【0200】
具体的に、制御部30は、逆抽出液送りポンプ61を作動させてその逆抽出液送りポンプ61に逆抽出液槽54から逆抽出液供給配管60を通じて逆抽出器56へ未使用の逆抽出液を送らせるとともに、抽出後抽出液送りポンプ59を作動させてその抽出後抽出液送りポンプ59に抽出液槽2から導出配管58を通じて逆抽出器56へ抽出後抽出液を送らせる。
【0201】
逆抽出器56へ送られた逆抽出液と抽出後抽出液とは、逆抽出器56内の各処理流路82において合流して互いに接触した状態で流れ、その状態で抽出後抽出液から金属イオンが抽出されて逆抽出液中に移動する逆抽出処理が行われる。そして、この逆抽出処理後の逆抽出液である逆抽出後逆抽出液と逆抽出処理後の抽出後抽出液である逆抽出後抽出液との混合液が各処理流路82から排出されて接続配管65を通って分離器64内へ導入される。
【0202】
分離器64内に導入された混合液は、その分離器64内で滞留し、比重差によって逆抽出後抽出液(軽液)と逆抽出後逆抽出液(重液)とに上下に相分離する。この分離器64内で分離した逆抽出後抽出液は、分離器64から逆抽出後抽出液戻し配管66を通って抽出液槽2へ流れてその抽出液槽2内に導入される。また、分離器64内で分離した逆抽出後逆抽出液は、分離器64から逆抽出液戻し配管68を通って逆抽出液槽54へ流れてその逆抽出液槽54内に導入される。以上のように、逆抽出液が逆抽出液槽54から逆抽出器56の処理流路82と分離器64とを経て逆抽出液槽54へ戻るとともに、抽出後抽出液が抽出液槽2から逆抽出器56の処理流路82及び分離器64を経て抽出液槽2に戻るように、逆抽出液及び抽出後抽出液が循環しながら、逆抽出器56内の処理流路82での逆抽出処理が繰り返し行われる。抽出装置51の抽出器6において原料液からの金属イオンの抽出を行って金属イオンの濃度が増加した抽出後抽出液は抽出能力が低下するが、この逆抽出装置52による逆抽出処理によって逆抽出後抽出液の金属イオンの濃度が低下し、その抽出能力が回復する。その抽出能力が回復した逆抽出後抽出液は、抽出装置51において抽出処理に用いられる。
【0203】
一方、逆抽出液は、逆抽出処理により金属イオンの濃度が増加し、それに伴って当該逆抽出液のpHが逆抽出処理に最適なpHから上昇し、その結果、逆抽出処理における抽出率が低下する。そのため、pH調整剤添加装置69が逆抽出液槽54内の逆抽出後逆抽出液に逆抽出液pH調整剤を添加し、それにより、逆抽出処理によって上昇した逆抽出後抽出液のpHを低下させて逆抽出処理に最適なpHに近づける。
【0204】
具体的に、制御部30がpH調整剤供給ポンプ74を作動させてそのpH調整剤供給ポンプ74に貯留部70からpH調整剤供給配管72を通じて逆抽出液槽54へ逆抽出液pH調整剤を送らせる。この逆抽出液槽54に送られた逆抽出液pH調整剤が逆抽出液槽54内の逆抽出液に添加され、その結果、逆抽出後逆抽出液のpHが低下して逆抽出処理に最適なpHに近づく。
【0205】
そして、制御部30は、逆抽出液pHセンサ78により検出される逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHの検出値に基づいて、流量調整弁76にpH調整剤供給配管72から逆抽出液槽54内への逆抽出液pH調整剤の流入量を調節させることにより、逆抽出液槽54内の逆抽出液に添加する逆抽出液pH調整剤の添加量を調節する。
【0206】
具体的に、逆抽出液pHセンサ78は、逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを逐次検出し、その検出したpH検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。制御部30は、逆抽出液pHセンサ78から逐次送信されるpH検出値のデータを取得し、その取得したpH検出値を逆抽出処理に最適なpHに対応する逆抽出液pH最適値に一致させるために必要となる逆抽出液槽54内の逆抽出液への逆抽出液pH調整剤の添加量の必要変化量、具体的にはpH調整剤供給配管72から逆抽出液槽54内への逆抽出液pH調整剤の流入量の必要変化量を算出する。より具体的に、制御部30は、まず、逆抽出液pH最適値と取得したpH検出値との差を算出する。制御部30は、予め導出された逆抽出液槽54内への逆抽出液pH調整剤の流入量の変化量と逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHの変化量との相関関係を記憶しており、算出した逆抽出液pH最適値とpH検出値との差を前記pHの変化量としてその差に対応する逆抽出液槽54内への逆抽出液pH調整剤の流入量の変化量を前記相関関係に基づいて算出する。そして、制御部30は、算出した逆抽出液槽54内への逆抽出液pH調整剤の流入量の変化量が実現されるように流量調整弁76の開度を変更させてその流量調整弁76に逆抽出液槽54内への逆抽出液pH調整剤の流入量を調節させる。この流量調整弁76の制御は、制御部30が逆抽出液pHセンサ78から逐次取得するpH検出値に基づいて逐次行われる。
【0207】
当該第2変形例による抽出システム1では、抽出器6で抽出処理を繰り返し行った結果、金属イオンの含有量が増加して抽出能力が低下した抽出後抽出液を逆抽出装置52による逆抽出処理によりその抽出後抽出液の金属イオンの含有量を減少させて抽出能力を回復させることができ、その抽出能力が回復した抽出後抽出液である逆抽出後抽出液を逆抽出装置52から抽出液槽2へ戻すことができる。よって、当該第2変形例による抽出システム1によれば、抽出器6で抽出処理を繰り返し行って抽出液の抽出能力が低下した場合であっても、その抽出液の抽出能力を回復させて再び良好な抽出率で抽出器6での抽出処理を行うことができる。また、当該第2変形例による抽出システム1では、抽出液槽2内の抽出能力が低下した抽出後抽出液を入れ替える必要がないため、作業者等の手間を削減できるとともに、その入れ替えにかかる時間を削減できる。
【0208】
また、当該第2変形例による抽出システム1では、逆抽出装置52において抽出後抽出液と逆抽出液を循環させながら単一の逆抽出器56で繰り返し抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出処理を行うことができるとともにその循環のたびに逆抽出液に逆抽出液pH調整剤を添加して逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHに近づけることができる。このため、逆抽出装置52が逆抽出処理を行うための複数段の逆抽出器を有する場合に比べて抽出システム1の大型化及び構成の複雑化を抑制しつつ、逆抽出液のpHが逆抽出処理に最適なpHに近い状態での逆抽出処理の時間を増やすことができ、さらに、抽出後抽出液と逆抽出液の循環回数を適宜変更することで抽出液槽2に貯留された抽出後抽出液の金属イオンの含有量の変化に柔軟に対応してその抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出を完了させるための逆抽出処理の時間を適切に設定することができる。
【0209】
また、当該第2変形例による抽出システム1では、逆抽出液pHセンサ78により検出される逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHの検出値が予め設定された逆抽出処理に最適なpHに対応する逆抽出処理のpH最適値に近づくように、制御部30が流量調整弁76の開度を調節して貯留部70から逆抽出液槽54内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤の添加量を調節することができる。そのため、逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHにづけるように調整でき、その結果、逆抽出器56に供給される逆抽出液のpHをその逆抽出器56での逆抽出処理に最適なpHに近づけることができる。
【0210】
なお、当該第2変形例では、抽出装置51における抽出処理と並行して逆抽出装置52における逆抽出処理を行うようにしたが、抽出装置51における抽出処理を所定期間行った後、逆抽出装置52における逆抽出処理を所定期間行い、その後、抽出装置51における抽出処理を再開するというように抽出装置51における抽出処理と逆抽出装置52における逆抽出処理とを交互に行ってもよい。
【0211】
この場合において、例えば、抽出装置51が前記第1変形例における抽出前pHセンサ28a及び抽出後pHセンサ28bと同様のものを有し、制御部30がその抽出前pHセンサ28aによるpHの検出値と抽出後pHセンサ28bによるpHの検出値との差に基づいて、抽出装置51における抽出処理による原料液からの金属イオンの抽出が完了したか否かを判断し、抽出が完了したと判断した場合には、抽出液送りポンプ9、原料液送りポンプ11、及びpH調整剤供給ポンプ24の作動を停止させるとともに、抽出後抽出液送りポンプ59、逆抽出液送りポンプ61、及びpH調整剤供給ポンプ74を作動させて逆抽出装置52における逆抽出処理を開始させるようにしてもよい。
【0212】
さらにこの場合、逆抽出装置52が、pH調整剤添加装置69から逆抽出液pH調整剤が添加された後、逆抽出器56において逆抽出処理を行う前の逆抽出液のpHを検出する逆抽出前pHセンサと、逆抽出器56において逆抽出処理を行った後、pH調整剤添加装置69から逆抽出液pH調整剤が添加される前の逆抽出液のpHを検出する逆抽出後pHセンサとを有し、制御部30が逆抽出前pHセンサによるpHの検出値と逆抽出後pHセンサによるpHの検出値との差に基づいて逆抽出装置52における逆抽出処理による抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したか否かを判断し、逆抽出が完了したと判断した場合には、抽出後抽出液送りポンプ59、逆抽出液送りポンプ61、及びpH調整剤供給ポンプ74の作動を停止させるとともに、抽出液送りポンプ9、原料液送りポンプ11、及びpH調整剤供給ポンプ24の作動を再開させて、抽出装置51における抽出処理を再開させるようにしてもよい。
【0213】
(3)また、逆抽出装置52において、pH調整剤添加装置69は逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液に逆抽出液pH調整剤を添加するようになっていてもよい。
図12には、そのような技術が適用された第3変形例による抽出システム1が示されている。
【0214】
当該第3変形例による抽出システム1では、pH調整剤添加装置69のpH調整剤供給配管72が逆抽出液戻し配管68に接続されており、貯留部70からpH調整剤供給配管72を通じて逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液に抽出用pH調整剤が添加されるようになっている。逆抽出液戻し配管68は、pH調整剤供給配管72が接続されて当該逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液に逆抽出液pH調整剤が添加される箇所であるpH調整剤添加箇所68aを有する。
【0215】
また、当該第3変形例による抽出システム1では、逆抽出液pHセンサ78が逆抽出液戻し配管68のうちその逆抽出液戻し配管68における逆抽出液の流れ方向において、pH調整剤添加箇所68aよりも下流側の箇所に接続されてその箇所での逆抽出液のpHを検出し、制御部30が、その逆抽出液pHセンサ78により検出されたpHの検出値に基づいて流量調整弁76に逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液への逆抽出液pH調整剤の添加流量を調節させるようになっている。この制御部30による流量調整弁76の制御は、前記第2変形例における制御部30による流量調整弁76の制御と同様である。
【0216】
また、当該第3変形例による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第2変形例による抽出システム1と同様である。
【0217】
当該第3変形例による抽出システム1では、逆抽出器56での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHにより迅速に近づけることができる。
【0218】
具体的には、逆抽出液pHセンサ78が逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを検出する場合には、逆抽出液槽54内に元々貯留されていた逆抽出液に逆抽出器56での逆抽出処理後、逆抽出液戻し配管68を通って戻ってきた逆抽出液が混ざった後のその逆抽出液槽54内全体の逆抽出液のpHが逆抽出液pHセンサ78によって検出される。この逆抽出液槽54内全体の逆抽出液のpHは、逆抽出器56での逆抽出処理に伴う逆抽出液のpHの上昇がダイレクトに反映されたものではないため、制御部30がこのpHの検出値に基づいて流量調整弁76に逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液への逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させると、逆抽出器56での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHが逆抽出処理に最適なpHに近づくのが遅れる。これに対し、当該第3変形例による抽出システム1では、逆抽出液pHセンサ78が逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液のpHを検出することから、逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを検出する場合に比べて、逆抽出器56での逆抽出処理に伴う逆抽出液のpHの上昇がよりダイレクトに反映された逆抽出液のpHが逆抽出液pHセンサ78によって検出される。このため、制御部30が、前記逆抽出処理に伴う逆抽出液のpHの上昇がよりダイレクトに反映されたpHの検出値に基づいて流量調整弁76に逆抽出液pH調整剤の添加量を調節させることができ、前記逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHにより迅速に近づけることができる。
【0219】
(4)また、pH調整剤添加装置69が逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液に逆抽出液pH調整剤を添加する構成において、逆抽出液pHセンサ78は、逆抽出液戻し配管68のうちその逆抽出液戻し配管68における逆抽出液の流れ方向において、pH調整剤添加箇所68aよりも上流側の箇所で逆抽出液のpHを検出してもよい。
図13には、そのような技術が適用された第4変形例による抽出システム1が示されている。
【0220】
当該第4変形例による抽出システム1では、逆抽出液pHセンサ78が逆抽出液戻し配管68のうちpH調整剤供給配管72が接続されたpH調整剤添加箇所68aよりも上流側の箇所に接続され、その箇所での逆抽出液のpHを検出するようになっている。
【0221】
また、当該第4変形例による抽出システム1では、逆抽出装置52が、pH調整剤供給配管72をpH調整剤添加箇所68aへ向かって流れる逆抽出液pH調整剤の流量を測定する流量計88を有する。前記逆抽出液pH調整剤の流量は、貯留部70から逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤の添加量の指標値であり、本発明における逆抽出液pH調整剤指標値の一例である。また、流量計88は、本発明における逆抽出液pH調整剤指標値検出器の一例である。流量計88は、pH調整剤供給配管72のうち当該pH調整剤供給配管72における逆抽出液pH調整剤の流れ方向においてpH調整剤供給ポンプ74の下流側の箇所に接続され、その箇所での逆抽出液pH調整剤の流量を逐次測定する。流量計88は、その測定した逆抽出液pH調整剤の流量の測定値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0222】
そして、当該第4変形例では、制御部30は、逆抽出液pHセンサ78により検出される逆抽出液戻し配管68のpH調整剤添加箇所68aよりも上流側の箇所での逆抽出液のpHの検出値と流量計88により測定される逆抽出液pH調整剤の流量の測定値とに基づいて、流量調整弁76にpH調整剤供給配管72からpH調整剤添加箇所68aへの逆抽出液pH調整剤の流入量を調節させる。この制御部30による流量調整弁76の制御は、前記第5実施形態において制御部30が原料液pHセンサ28による検出値と流量計48による測定値とに基づいて流量調整弁26にpH調整剤供給配管22からpH調整剤添加箇所18aへのpH調整剤の流入量を調節させる制御と同様に行われる。
【0223】
また、当該第4変形例では、抽出装置51が前記第5実施形態による抽出システム1と同様に構成されている。
【0224】
当該第4変形例による抽出システム1の以上の構成以外の構成は、前記第3変形例による抽出システム1と同様である。
【0225】
当該第4変形例による抽出システム1では、前記第3変形例による抽出システム1と同様に、逆抽出器56での逆抽出処理に伴って上昇した逆抽出液のpHを逆抽出処理に最適なpHにより迅速に近づけることができるという効果が得られる。
【0226】
(5)また、逆抽出装置において、逆抽出液pH調整剤が添加された後、逆抽出器で逆抽出処理を行う前の逆抽出液、すなわち逆抽出器内の処理流路に導入される前の逆抽出液のpHと、逆抽出器で逆抽出処理を行った後、逆抽出液pH調整剤が添加される前の逆抽出液のpHとをそれぞれ検出し、それらの検出したpHから抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したか否かを判別するようにしてもよい。
図14には、このような技術が適用された第5変形例による抽出システム1が示されている。
【0227】
この第5変形例による抽出システム1の基本的な構成は、前記第2変形例による抽出システム1と同様であるが、当該第5変形例による抽出システム1では、逆抽出装置52が逆抽出前pHセンサ78aと逆抽出後pHセンサ78bとを有する。
【0228】
逆抽出前pHセンサ78aは、pH調整剤添加装置69から逆抽出液pH調整剤が添加された後、逆抽出器56で逆抽出処理を行う前の逆抽出液のpHを検出するものである。具体的には、逆抽出前pHセンサ78aは、逆抽出液槽54に接続されており、pH調整剤添加装置69から逆抽出液pH調整剤が添加された逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを検出する。逆抽出前pHセンサ78aは、逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを逐次検出して、そのpHの検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0229】
逆抽出後pHセンサ78bは、逆抽出器56で逆抽出処理を行った後、pH調整剤添加装置69から逆抽出液pH調整剤が添加される前の逆抽出液のpHを検出するものである。具体的には、逆抽出後pHセンサ78bは、逆抽出液戻し配管68に接続されており、逆抽出器56で逆抽出処理を行った後、逆抽出後分離器64で逆抽出後抽出液に対して分離され、その逆抽出後分離器64から流れ出て逆抽出液戻し配管68内を流れる逆抽出液のpHを検出する。逆抽出後pHセンサ78bは、逆抽出液戻し配管68内の逆抽出液のpHを逐次検出して、そのpHの検出値のデータを制御部30へ逐次送信する。
【0230】
制御部30は、逆抽出後pHセンサ78bにより検出された逆抽出液のpHから逆抽出前pHセンサ78aにより検出された逆抽出液のpHを減算することによって得られるそれらのpHの差である逆抽出前後pH差が逆抽出液pH差規定値よりも大きい場合には、抽出後抽出液送りポンプ59及び逆抽出液送りポンプ61の作動を継続させる一方、前記逆抽出前後pH差が前記逆抽出液pH差規定値以下である場合には、抽出後抽出液送りポンプ59及び逆抽出液送りポンプ61の作動を停止させる。前記逆抽出液pH差規定値は、抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したか否かを判断するための基準として予め設定された値であり、0付近の値である。
【0231】
抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了するまでは、逆抽出器56での逆抽出処理後の逆抽出液のpHは、逆抽出器56での逆抽出処理前の逆抽出液のpHから上昇するが、抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了すると、逆抽出器56での逆抽出処理後の逆抽出液のpHは、その逆抽出器56での逆抽出処理前の逆抽出液のpHからほぼ変化しなくなる。このため、当該第5変形例では、前記逆抽出液pH差規定値が0付近の値に設定され、制御部30が、前記逆抽出前後pH差と前記逆抽出液pH差規定値との大小関係に基づいて抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したか否かを判断する。
【0232】
そして、制御部30は、前記逆抽出前後pH差が前記逆抽出液pH差規定値よりも大きい場合には抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出がまだ完了していないと判断して抽出後抽出液送りポンプ59及び逆抽出液送りポンプ61の作動を継続させて逆抽出装置52における逆抽出処理を継続させる。一方、制御部30は、前記逆抽出前後pH差が前記逆抽出液pH差規定値以下である場合には抽出後抽出液からの金属イオンの逆抽出が完了したと判断して抽出後抽出液送りポンプ59及び逆抽出液送りポンプ61の作動を停止させて逆抽出装置52における逆抽出処理を終了させる。
【0233】
当該第5変形例では、逆抽出前pHセンサ78aは、制御部30が流量調整弁76に逆抽出液槽54内への液体のpH調整剤の流入量を調節させる制御を行う基準となる逆抽出液槽54内の逆抽出液のpHを検出する逆抽出液pHセンサとして兼用されている。なお、当該第1変形例による抽出システム1において、逆抽出装置52が逆抽出液pHセンサと逆抽出前pHセンサを別々に有していてもよい。
【0234】
また、当該第5変形例では、抽出装置51が、抽出前pHセンサ28aと抽出後pHセンサ28bとを有する。当該第5変形例における抽出前pHセンサ28aは前記第1変形例における抽出前pHセンサ28aと同様のものであり、当該第5変形例における抽出後pHセンサ28bは前記第1変形例における抽出後pHセンサ28bと同様のものである。当該第5変形例では、前記第1変形例と同様に、制御部30が抽出前pHセンサ28aにより検出される原料液のpHと抽出後pHセンサ28bにより検出される原料液のpHとに基づいて原料液からの金属イオンの抽出が完了したか否かを判断して原料液送りポンプ11及び抽出液送りポンプ9の作動を制御する。
【0235】
(6)逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤は固体であってもよい。この場合、固体の逆抽出液pH調整剤は、逆抽出液に溶解可能な酸性の物質であり、固体とは、例えば顆粒状、粉末状、又はフレーク状である。また、この場合、固体の逆抽出液pH調整剤を逆抽出液に添加するための逆抽出液pH調整剤添加装置として、前記原料液pH調整剤添加装置19と同様の装置を採用すればよい。具体的には、逆抽出液pH調整剤添加装置として、前記貯留部42と同様のもので固体の逆抽出液pH調整剤を貯留する逆抽出液pH調整剤貯留部と、前記ガイド部43と同様のもので逆抽出液pH調整剤貯留部の放出口から放出される固体の逆抽出液pH調整剤を逆抽出液への逆抽出液pH調整剤の添加箇所へ導く逆抽出液pH調整剤ガイド部と、前記添加量調節部44と同様のもので逆抽出液pH調整剤貯留部から逆抽出液に添加される固体の逆抽出液pH調整剤の添加量を任意の添加量に調節する逆抽出液pH調整剤添加量調節部と、を有する装置を採用すればよい。
【0236】
(7)原料液に添加されるpH調整剤は気体であってもよい。また、逆抽出液に添加される逆抽出液pH調整剤は気体であってもよい。
【0237】
(8)また、原料液pH調整剤は、固体のアルカリからなる多数の粒子(粉末状、顆粒状もしくはフレーク状)を液体の分散媒中に分散させた分散系であってもよい。また、逆抽出液pH調整剤は、固体の酸からなる多数の粒子(粉末状、顆粒状もしくはフレーク状)を液体の分散媒中に分散させた分散系であってもよい。
【符号の説明】
【0238】
1 抽出システム
2 抽出液槽
4 原料液槽
6 抽出器
14 分離器
16 抽出液戻し配管(抽出液戻し路)
18 原料液戻し配管(原料液戻し路)
18a 原料液pH調整剤添加箇所
19 原料液pH調整剤添加装置
20 原料液pH調整剤貯留部
26 原料液pH調整剤流量調整弁
28 原料液pHセンサ
28a 抽出前pHセンサ(原料液pHセンサ)
28b 抽出後pHセンサ
30 制御部(逆抽出装置制御部)
42 原料液pH調整剤貯留部
48 流量計(原料液添加量指標値検出器)
49 重量計(原料液添加量指標値検出器)
52 逆抽出装置
54 逆抽出液槽
56 逆抽出器
64 逆抽出後分離器
66 逆抽出後抽出液戻し配管(逆抽出後抽出液戻し路)
68 逆抽出液戻し配管(逆抽出液戻し路)
68a 逆抽出液pH調整剤添加箇所
69 逆抽出液pH調整剤添加装置
70 逆抽出液pH調整剤貯留部
76 逆抽出液pH調整剤流量調整弁(逆抽出液pH調整剤添加量調節部)
78 逆抽出液pHセンサ
78a 逆抽出前pHセンサ
78b 逆抽出後pHセンサ