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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】被膜形成方法、及び被覆材
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/00 20060101AFI20231201BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231201BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20231201BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231201BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231201BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20231201BHJP
【FI】
B05D7/00 M
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
E02D27/01 A
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020181223
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2021074714
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2019200989
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五呂 遼典
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013899(JP,A)
【文献】特開2004-092382(JP,A)
【文献】特開2006-152231(JP,A)
【文献】特開2006-152782(JP,A)
【文献】特開2004-027147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-10/00
101/00-201/10
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎立ち上がり部に、被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法であって、
上記被覆材は、樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、骨材(B)100~2000重量部を含み、
上記骨材(B)が、鱗片状着色骨材(b1)、粒状半透明骨材(b2)、及び粒状着色骨材(b3)からなり
上記鱗片状着色骨材(b1)は、長径0.5mm以上3.8mm以下、短径と長径の比(短径/長径)が0.3~1であり、かつ長径と厚みの比(長径/厚み)>2を満たすものであり、
上記粒状半透明骨材(b2)は、光透過率が10%以上50%以下、平均粒子径1μm以上1mm以下であり、
上記粒状着色骨材(b3)は、光透過率が3%未満、平均粒子径5μm以上1mm以下であり、
上記鱗片状着色骨材(b1)及び上記粒状半透明骨材(b2)の重量比(b2)/(b1)が、5/1~180/1であることを特徴とする被膜形成方法。
なお、上記光透過率は、濁度計による全光透過率の値であり、この測定では、上記粒状半透明骨材(b2)、または上記粒状着色骨材(b3)を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【請求項2】
上記鱗片状着色骨材(b1)及び上記粒状着色骨材(b3)の重量比(b3)/(b1)が、10/1~200/1であることであることを特徴とする請求項1に記載の被膜形成方法。
【請求項3】
上記粒状半透明骨材(b2)は、光透過率が10%以上50%以下、平均粒子径1μm以上150μm未満の粒状半透明骨材(b2’)を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被膜形成方法。
【請求項4】
樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、骨材(B)100~2000重量部を含み、
上記骨材(B)が、鱗片状着色骨材(b1)、粒状半透明骨材(b2)、及び粒状着色骨材(b3)からなり
上記鱗片状着色骨材(b1)は、長径0.5mm以上3.8mm以下、短径と長径の比(短径/長径)が0.3~1であり、かつ長径と厚みの比(長径/厚み)>2を満たすものであり、
上記粒状半透明骨材(b2)は、光透過率が10%以上50%以下、平均粒子径1μm以上1mm以下であり、
上記粒状着色骨材(b3)は、光透過率が3%未満、平均粒子径5μm以上1mm以下であり、
上記鱗片状着色骨材(b1)及び上記粒状半透明骨材(b2)の重量比(b2)/(b1)が、5/1~180/1であることを特徴とする基礎立ち上がり部用の被覆材。
なお、上記光透過率は、濁度計による全光透過率の値であり、この測定では、上記粒状半透明骨材(b2)、または上記粒状着色骨材(b3)を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被膜形成方法に関するものであり、特に、戸建住宅等建築物の基礎立ち上がり部に好適な被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅等の建築物においては、地面にコンクリート製の建築物用基礎を打設し、これを土台として家屋等が建てられるものが多い。この基礎部分は、主にフーチング部と基礎立ち上がり部からなる。このうち、基礎立ち上がり部は建築物完成後において人目に触れるものであり、近年、このような基礎立ち上がり部に対し、塗装によって様々な色彩や意匠性を付与することが望まれている。
【0003】
しかしながら、この基礎立ち上がり部は、一般にコンクリート製であり、施工直後においては水分を多く含む高含水率の状態となっている。この水分は、基礎立ち上がり部表面からの蒸発により経時的に減少するが、降雨等の後では、基礎が地面に含まれる水分を吸い上げるために、含水率が再び上昇する。吸い上げられた水分は、基礎立ち上がり部表面からの蒸発によって徐々に放出されるが、降雨等があれば基礎立ち上がり部の含水率は再び上昇する。このように、基礎立ち上がり部では常に含水率が変動し、その表面から繰り返し水分が蒸発しているような状態が続いている。従って、このような基礎立ち上がり部に塗装を行うことは、蒸発しようとする水分が局所的に被膜を押し上げるため、被膜が膨れや剥離を生じやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-219846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題に対し、例えば、特許文献1(特開2006-219846号公報)には、基礎立ち上がり部に、特定の水蒸気透過性を有するポリマーセメント系組成物材を塗付する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1のようなポリマーセメント系組成物材は、セメント色等の単一の色を付与するのみである。これに対して、近年、高級感、重厚感等の高意匠性を付与することが望まれており、まだ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、基礎立ち上がり部に被膜を形成する被膜形成方法において、樹脂成分、及び骨材を特定重量比率で含む被覆材を採用することより、基礎立ち上がり部における被膜の膨れや剥離等の問題を解決することができるとともに、高級感、重厚感、奥行き感等の美観性に優れた仕上がりを得ることに想到し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1. 基礎立ち上がり部に、被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法であって、
上記被覆材は、樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、骨材(B)100~2000重量部を含み、
上記骨材(B)が、鱗片状着色骨材(b1)、粒状半透明骨材(b2)、及び粒状着色骨材(b3)からなり
上記鱗片状着色骨材(b1)は、長径0.5mm以上3.8mm以下、短径と長径の比(短径/長径)が0.3~1であり、かつ長径と厚みの比(長径/厚み)>2を満たすものであり、
上記粒状半透明骨材(b2)は、光透過率が10%以上50%以下、平均粒子径1μm以上1mm以下であり、
上記粒状着色骨材(b3)は、光透過率が3%未満、平均粒子径5μm以上1mm以下であり、
上記鱗片状着色骨材(b1)及び上記粒状半透明骨材(b2)の重量比(b2)/(b1)が、5/1~180/1であることを特徴とする被膜形成方法。
なお、上記光透過率は、濁度計による全光透過率の値であり、この測定では、上記粒状半透明骨材(b2)、または上記粒状着色骨材(b3)を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
2.上記鱗片状着色骨材(b1)及び上記粒状着色骨材(b3)の重量比(b3)/(b1)が、10/1~200/1であることであることを特徴とする1.に記載の被膜形成方法。
3.上記粒状半透明骨材(b2)は、光透過率が10%以上50%以下、平均粒子径1μm以上150μm未満の粒状半透明骨材(b2’)を含むことを特徴とする1.または2.に記載の被膜形成方法。
4.樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、骨材(B)100~2000重量部を含み、
上記骨材(B)が、鱗片状着色骨材(b1)、粒状半透明骨材(b2)、及び粒状着色骨材(b3)からなり
上記鱗片状着色骨材(b1)は、長径0.5mm以上3.8mm以下、短径と長径の比(短径/長径)が0.3~1であり、かつ長径と厚みの比(長径/厚み)>2を満たすものであり、
上記粒状半透明骨材(b2)は、光透過率が10%以上50%以下、平均粒子径1μm以上1mm以下であり、
上記粒状着色骨材(b3)は、光透過率が3%未満、平均粒子径5μm以上1mm以下であり、
上記鱗片状着色骨材(b1)及び上記粒状半透明骨材(b2)の重量比(b2)/(b1)が、5/1~180/1であることを特徴とする基礎立ち上がり部用の被覆材。
なお、上記光透過率は、濁度計による全光透過率の値であり、この測定では、上記粒状半透明骨材(b2)、または上記粒状着色骨材(b3)を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、住宅等建築物の基礎立ち上がり部に、高級感、重厚感、奥行き感等の意匠性を付与し、その美観性を高めることができる。しかも、本発明の被膜形成方法によって形成された被膜は、基礎立ち上がり部の水分を効果的に外部に放出するとともに、降雨等による外部からの水の浸入を防ぐことができるものである。よって、本発明により得られる被膜では、膨れ、割れ等が生じ難く、初期の美観性を長期にわたり保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明は、基礎立ち上がり部に、特定の被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法に関するものである。
【0011】
<被覆材>
本発明の被膜形成方法における被覆材は、樹脂成分(A)、及び特定の骨材(B)を特定重量比で含むことを特徴とする。
【0012】
樹脂成分(A)(以下「(A)成分」という)としては、特に限定されないが、水溶性樹脂及び水分散性樹脂から選ばれる1種以上が好適である。樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、これら(A)成分は架橋反応性を有するものであってもよい。架橋反応性を有する(A)成分を使用した場合は、被膜の耐水性、耐候性、耐薬品性等を向上させることができる。
【0013】
骨材(B)(以下「(B)成分」という)は、優れた意匠性に寄与するものである。このような骨材としては、何らかの色彩効果を有する固体粒子であれば特に限定されず、その材質が無機質、有機質のいずれでも使用でき、天然品、人工品のいずれも使用することができる。具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、マイカ、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、貝殻、バライト粉、大理石、御影石、蛇紋石、花崗岩、蛍石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物、金属片、金属粉等の無機質粒子、樹脂ビーズ、樹脂粉砕物、ゴム類、プラスチック類、植物繊維、植物片等の有機質粒子が挙げられる。また、これらに着色を施したものも使用することもできる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することにより、種々の自然石調の色彩を表出することができる。
【0014】
(B)成分は、(A)成分の固形分100重量部に対し、100~2000重量部(好ましくは150~1500重量部、より好ましくは200~1000重量部)の比率で混合する。(B)成分をこのような比率で混合すれば、厚膜の被膜が形成しやすくなり、形成被膜の重厚感を高めることもできるとともに、水蒸気透過性を有する被膜を形成することができる。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0015】
本発明では、上記(B)成分として、鱗片状着色骨材(b1)、粒状半透明骨材(b2)、及び粒状着色骨材(b3)を特定比率で含むことを特徴とする。これにより、奥行き感、高級感、重厚感等の意匠性を付与し、その美観性を高めることができる。
【0016】
鱗片状着色骨材(b1)(以下「(b1)成分」という)は、形成被膜にアクセント意匠を付与し、意匠性を高めるものである。(b1)成分の大きさは、長径0.5mm以上(より好ましくは1mm以上)であり、短径と長径の比(短径/長径)が0.3~1であることが好ましい。(b1)成分の大きさが、上記範囲を満たす場合、その形状が視認されやすく、アクセント意匠として好適である。なお、(b1)成分の長径及び短径は、(b1)成分を水平面に安定に静置させ、上から顕微鏡を用いて観察して測定される値である。
【0017】
また、(b1)成分の厚みは、好ましくは50~500μm(より好ましくは60~450μm)である。このような場合(b1)成分が転写されやすく、被膜中に埋もれた場合であっても意匠性を付与することができる。本発明において、(b1)成分は、長径と厚みの比が(長径/厚み)>2(より好ましくは3、さらにこのましくは5)を満たすものが好ましい。なお、(b1)成分の厚みは、マイクロメータにより測定される値である。
【0018】
このような(b1)成分としては、例えば、鱗片状の基体粒子を着色処理したものが挙げられる。具体的に基体粒子としては、例えば、雲母、セリサイト、クレー、タルク、板状カオリン、硫酸バリウムフレーク、ガラスフレーク、アルミナフレーク、貝殻片、金属片等の無機質片、あるいはゴム片、プラスチック片、木片等が挙げられる。着色処理としては、特に限定されないが、顔料を含む着色剤を基体粒子表面に被覆する方法が好適である。(b1)成分は1種または2種以上(1色または2色以上)を組み合わせて使用することができ、種々の色彩を表出することができる。
【0019】
粒状半透明骨材(b2)(以下「(b2)成分」という)は、形成被膜に透明感を付与し、奥行き感等の意匠性を高めるものである。特に、本発明では(b2)成分を介して(透かして)上記(b1)成分のアクセント意匠を視認することができるため、いっそう奥行き感が高まり、美観性向上の点で好適である。
【0020】
(b2)成分としては、光透過率が3%以上(より好ましくは3%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上30%以下)であるものが好適である。このような場合、上記効果を十分に得ることができる。
なお、上記光透過率とは、濁度計による全光透過率の値である。この測定では、(b2)成分の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【0021】
このような(b2)成分としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、寒水石、長石、珪石等及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等が挙げられ、上記光透過率を満たすものであれば、無色、有色のいずれのタイプも使用できる。これらは1種または2種以上で使用できる。この中でも、本発明では特に、炭酸カルシウム、寒水石から選ばれる1種を含むことが好適である。
【0022】
(b2)成分の平均粒子径としては、好ましくは1μm以上1mm以下(より好ましくは2μm以上800μm以下、さらに好ましくは3μm以上600μm以下)である。このような範囲を満たす場合、形成被膜の奥行き感を高めることができる。
【0023】
上記(b2)成分は、上記(b1)成分との重量比(b2)/(b1)が、5/1~180/1(より好ましくは8/1~150/1、さらに好ましくは10/1~100/1)であることを特徴とする。このような範囲を満たす場合、(b2)成分を介して(透かして)上記(b1)成分のアクセント意匠を視認することができるため、奥行き感を付与することができ、よりいっそう美観性を高めることができる。
【0024】
さらに、本発明では、(b2)成分として、平均粒子径が1μm以上150μm未満(より好ましくは2μm以上100μm以下、さらに好ましくは3μm以上80μm以下)の粒状半透明骨材(b2’)を含むことが好適である。これにより、形成被膜のアクセント意匠がよりいっそう視認されやすくなり、奥行き感を高めることができる。このような(b2’)成分は、(b2)成分中に、好ましくは10~60重量%(より好ましくは15~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%)である。このような場合、被膜の表面付近において、上記(b1)成分の上に上記(b2’)が重なりあった部分が形成されやすく、アクセント意匠に奥行き感を付与することができるため、上記効果をよりいっそう高めることができる。なお、(b2)成分の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される平均値(測定条件は、分布基準:体積、屈折率:1.60-0.10i)である。
【0025】
粒状着色骨材(b3)(以下「(b3)成分」という)は、主に形成被膜に色彩を付与するものであり、不透明な粒状粒子である。このような(b3)成分としては、光透過率が3%未満の不透明なものが好適であり、光透過率が2%以下のものがより好適である。
なお、上記光透過率とは、濁度計による全光透過率の値である。この測定では、(b3)成分の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【0026】
(b3)成分としては、不透明なものであればよく、例えば、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することにより、種々の自然石調の色彩を表出することができる。
【0027】
(b3)成分の平均粒子径は、好ましくは5μm以上1mm以下(より好ましくは8μm以上800μm以下、さらに好ましくは10μm以上600μm以下)である。なお、(b3)成分の平均粒子径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。このような(b3)成分は、粒状と認識されるものであり、鱗片状着色骨材(b1)とは異なるものである。
【0028】
本発明では、上記(b3)成分は、上記(b1)成分との重量比(b3)/(b1)が、10/1~200/1(より好ましくは12/1~150/1、さらに好ましくは15/1~100/1)とすることが好適である。このような範囲を満たす場合、形成被膜においてアクセント意匠が視認されやすく、美観性をよりいっそう高めることができる。
【0029】
また、本発明では、上記(b3)成分は、上記(b2)成分との重量比(b3)/(b2)が、0.1/1~15/1(より好ましくは0.2/1~10/1、さらに好ましくは0.3/1~5/1)とすることが好適である。このような範囲を満たす場合、形成被膜に所望の色彩を付与することができるとともに、被膜全体の隠蔽性を確保することができる。また、アクセント意匠の視認性を高めることができる。
【0030】
さらに、本発明では、上記(b2)成分及び上記(b3)成分は、上記(b1)成分との重量比[(b3)+(b2)]/(b1)が、15/1~380/1(より好ましくは20/1~300/1、さらに好ましくは25/1~200/1)とすることが好適である。このような範囲を満たす場合、形成被膜は、上記(b2)成分及び上記(b3)成分のような粒状骨材中に、上記(b1)成分のような鱗片状骨材が適度に存在した被膜構造となり、基礎立ち上がり部における被膜の膨れや剥離等の抑制効果がいっそう高まり、美観性に優れた被膜を長期にわたり保持することができる。
【0031】
本発明では、上記(B)成分は、上記(b1)成分、上記(b2)成分、及び上記(b3)成分に加えて、例えば、平均粒子径が1mm超10mm以下の粒状着色骨材(b4)、無着色の鱗片状粒子(b5)等を本発明の効果を著しく阻害しない限りで含んでもよい。
【0032】
本発明の被覆材は、上記成分を公知の方法によって均一に混合することで製造することができるが、必要に応じて、通常被覆材に使用可能なその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、繊維、造膜助剤、増粘剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。
【0033】
本発明では、増粘剤として、会合型増粘剤を含むことが好ましく、中でも末端に疎水基を含有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン会合型増粘剤が好ましい。これにより、被覆材を塗付して模様被膜を形成する際、上記(b1)成分の転写性を高め、意匠性を高めるとともに、作業性を向上することができる。増粘剤の混合比率は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.5~10重量部である。
【0034】
被覆材の塗付時における粘度(希釈する場合は、希釈後の粘度)は、好ましくは20~200Pa・s(より好ましくは50~150Pa・s)に、チクソトロピーインデックスを、好ましくは2.0~6.0(より好ましくは3.0~5.0)に調製する。本発明では、被覆材の粘性特性をこのような条件に設定することで、塗付時における上記(b1)成分の転写性が高まり、塗装作業性、仕上り性向上の点で好適である。
なお、本発明における粘度は、BH型粘度計による2rpmにおける粘度(2回転目の指針値)を測定することにより求められる値である。チクソトロピーインデックス(TI)は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0035】
<被膜形成方法>
本発明は、基礎立ち上がり部に、上記被覆材を塗付し被膜を形成することを特徴とするものである。上記被覆材は、刷毛、鏝、ローラー、スプレー等を用いて塗付することにより被膜を形成することができる。基礎立ち上がり部は、低所や狭所作業となることが多く、塗装作業性の点においてローラー、鏝等を用いることが好適である。中でも、本発明の被覆材は、ローラーを用いて凹凸被膜を形成することにより、水蒸気透過性に優れた被膜を形成することができる。
【0036】
使用するローラーとしては、特に限定されないが、本発明では、多孔質ローラーを好適に使用することができる。多孔質ローラーは、筒状の芯材の外表面に多孔質層が備わったものであり、筒状の芯材は、軸を備えたハンドルを装着できるように空洞となっており、該空洞にハンドル軸を装着して使用することができるものである。
筒状の芯材としては、特に限定されず、例えば、プラスチック製、木製、紙製、金属製等の芯材を用いることができ、また、ハンドル軸と芯材との密着性を高めるために、ハンドル軸と芯材の間に、例えば、プラスチック製、ゴム製、ガラス製、金属製、繊維製等の補強材を用いることもできる。
【0037】
本発明で用いる多孔質ローラーとしては、その表面(多孔質層の外周の表面)において、大きさ3mm以上の孔が50%以上、(好ましくは3mm以上8mm以下の孔が50%以上、より好ましくは3mm以上8mm以下の孔が60%以上、さらに好ましくは3mm以上8mm以下の孔が70%以上)を占めるものが好適である。本発明において、孔の大きさは、各孔の重心からの最大距離×2で算出すればよい。また、大きさ3mm以上の孔が占める割合は、(多孔質層の表面に現れる大きさ3mm以上の孔の数)/(多孔質層の表面に現れる孔の総数)×100(%)で算出される値である。
【0038】
このような多孔質層としては、連通孔を有する多孔質層、または、独立孔を有する多孔質層等が挙げられるが、本発明では連通孔を有する多孔質層が好ましい。その材質としては特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、エチレン樹脂等が挙げられ、これら樹脂をスポンジ状に多孔化したものが好ましい。
【0039】
多孔質層の厚みは、好ましくは3mm以上50mm以下、より好ましくは5mm以上30mm以下である。このような厚みでは、被覆材の塗付効率が良く、作業性により優れる。また、多孔質ローラーの幅(長さ)は、特に限定されないが好ましくは80mm以上250mm以下程度、多孔質ローラーの直径(筒径)(多孔質層含む)は、好ましくは30mm以上100mm以下程度である。
【0040】
本発明の被覆材の塗付け量は、特に限定されないが、好ましくは0.5~6kg/m、より好ましくは1~5kg/mである。塗付時には、本発明被覆材を水で希釈することもできる。希釈割合は、好ましくは0~10重量%である。このような場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0041】
本発明の被覆材(形成被膜)の乾燥膜厚は、好ましくは0.1~5mm(より好ましくは0.3~3mm)である。形成被膜が凹凸を有する場合、凹部と凸部の膜厚が上記範囲を満たすものであればよい。このような場合、本発明に十分な水蒸気透過性を有することができる。
【0042】
本発明の被覆材によって形成される形成被膜は、水蒸気透過性を有するものが好ましく、乾燥膜厚0.8mmにおける水蒸気透過度が、好ましくは5g/m・24h以上(より好ましくは10g/m・24h以上)のものである。このような範囲の場合、基礎立ち上がり部(コンクリート)中の水分による水蒸気を十分に拡散することができ、被膜の膨れ、剥離等を抑制することができる。なお、本発明における水蒸気透過度は、JIS K 5400-1990 8.17「水蒸気透過度」に準じて測定されるものである。
【実施例
【0043】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0044】
(被覆材1~11)
表1に示す配合に基づき、各原料を定法により混合し、粘度(BH型粘度計、2rpm)が80Pa・sとなるように水を混合して被覆材1~10を製造した。また、希釈後のTI値を表1に示す。
【0045】
なお、各成分は以下のものを使用した。
(A)アクリルシリコン樹脂エマルション(固形分50重量%、媒体:水)
(B)骨材
(b1)鱗片状着色粒子(黒色マイカ片、長径:1.4~3.8mm、短径:1.2~3.1mm、厚み:0.1~0.4mm、短径/長径(平均値):0.92、長径/厚み(平均値):11.4)
(b2)粒状半透明骨材(寒水石、平均粒子径:200μm、光透過率:16%)
(b2’) 粒状半透明骨材(寒水石、平均粒子径:20μm、光透過率:16%)
(b3-1)粒状着色骨材(白色系珪砂とベージュ系珪砂の混合物、平均粒子径:180μm、光透過率1%以下)
(b3-2)粒状着色骨材(ベージュ系珪砂とブラウン系珪砂の混合物、平均粒子径;350μm、光透過率1%以下)
・着色顔料(酸化チタン)
・増粘剤1(ウレタン会合型増粘剤)
・増粘剤2(セルロース系増粘剤)
・添加剤(消泡剤、等)
【0046】
(実施例1~7、比較例1~4)
コンクリートを打設し、型枠を取り外して作製した基礎立ち上がり部に、多孔質ローラーと被覆材を用いて、被覆材を塗付け量2kg/mで塗装し、23℃で24時間乾燥、硬化させ、模様被膜を形成したものを試験体とした。
なお、使用した多孔質ローラーは、直径(筒径)70mm、ローラー幅200mm、紙製芯材、ウレタン樹脂をスポンジ状に多孔化(連通孔)した厚み15mm多孔質層を有するものであり、その多孔質層の表面に大きさ3mm以上8mm以下の孔が82%を占めるものである。
【0047】
<評価>
以下の評価を実施し、結果を表4に示す。
・奥行き感
奥行き感に優れるものを「AA」、劣るものを「D」とし、AA>A>B>C>Dの5段階で評価した。
・耐膨れ性
試験体に対し、塗膜面より40cmの距離から赤外線ランプ(出力250W)を8時間連続して照射した後、その外観変化を目視にて観察した。評価は、異常が認められなかったものを「AA」、膨れや割れを生じたものを「D」とし、AA>A>B>C>Dの5段階で評価した。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1~7は、粒状半透明骨材と粒状着色骨材によって形成された薄いベージュ系の被膜中に、黒色マイカ片によるアクセント意匠を有する美観性に優れた自然石調の被膜が形成された。
さらに、実施例1~3では、黒色マイカ片の表面には、粒状半透明骨材が重なりあった部分が存在しており、粒状半透明骨材透かして黒色マイカ片を視認することができ、奥行き感にも優れた被膜が形成された。特に、実施例1は、黒色マイカ片の奥行き感がよりいっそう際立つものであった。
また、実施例4、5は、黒色マイカ片によるアクセント意匠がやや強く、実施例6、7では、黒色マイカ片によるアクセント意匠がやや不足しており、実施例1~3と比較すると、奥行き感がやや劣る被膜が形成された。
一方、耐膨れ性評価においては、実施例1~7において、異常はほぼ認められず、美観性に優れた自然石調の被膜を保持することができた。特に、実施例1~3においては、異常は全く認められなかった。
比較例1は、アクセント意匠が不十分であり、奥行き感に劣る被膜が形成された。比較例2は、黒色マイカ片によるアクセント意匠がやや強く、奥行き感に劣る被膜が形成された。比較例3は、アクセント意匠がなく、意匠性に劣る被膜が形成され、耐膨れ性評価においてもわずかに膨れを生じた。比較例4では、奥行き感に劣る被膜が形成され、耐膨れ性評価において膨れを生じた。