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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20231201BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20231201BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20231201BHJP
   F16C 35/08 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16H1/32 A
F16C35/063
F16C35/067
F16C35/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020185157
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074799
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-20352(JP,A)
【文献】特開2019-56459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16C 35/063
F16C 35/067
F16C 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸受と、第2軸受と、前記第1軸受及び前記第2軸受を支持し樹脂から構成された第1軸受支持部材と、を備えた減速装置であって、
前記第1軸受の内輪及び外輪の一方と前記第2軸受の内輪及び外輪の一方とがインサート成形により前記第1軸受支持部材に固定されている、
減速装置。
【請求項2】
前記第1軸受が支持する軸と、前記第2軸受が支持する軸の回転速度が異なる、
請求項1記載の減速装置。
【請求項3】
前記第1軸受は入力軸を支持し、
前記第2軸受は減速された回転が伝達される出力軸を支持する、
請求項2記載の減速装置。
【請求項4】
前記第1軸受支持部材は、内歯歯車の内歯を有する歯車部材である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項5】
前記第1軸受支持部材の内周に前記第1軸受の外輪がインサート成形により固定され、
前記第1軸受支持部材の外周に前記第2軸受の内輪がインサート成形により固定されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項6】
前記第1軸受支持部材の内周に前記第1軸受の外輪がインサート成形により固定され、
前記第1軸受支持部材の内周に前記第2軸受の外輪がインサート成形により固定されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項7】
第3軸受と、前記第2軸受の内輪及び外輪のうち前記一方とは反対の他方を支持する第2軸受支持部材と、前記第3軸受の内輪及び外輪の一方を支持する第3軸受支持部材と、を更に備え、
前記第2軸受支持部材と前記第3軸受支持部材とは別体に構成されている、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項8】
前記第2軸受支持部材は樹脂から構成され、
前記第2軸受の内輪又は外輪の前記他方がインサート成形により前記第2軸受支持部材に固定されている、
請求項7記載の減速装置。
【請求項9】
前記第3軸受支持部材は樹脂から構成され、
前記第3軸受の内輪又は外輪の前記一方がインサート成形により前記第3軸受支持部材に固定されている、
請求項7又は請求項8に記載の減速装置。
【請求項10】
第3軸受と、第4軸受と、前記第3軸受及び前記第4軸受を支持し樹脂から構成された第4軸受支持部材と、を更に備え、
前記第1軸受と前記第3軸受は入力軸を支持し、
前記第2軸受と前記第4軸受は減速された回転が伝達される部材を支持し、
前記第3軸受の内輪及び外輪の一方と前記第4軸受の内輪及び外輪の一方とがインサート成形により前記第4軸受支持部材に固定されている、
請求項1記載の減速装置。
【請求項11】
前記第2軸受を支持する第5軸受支持部材を更に備え、
前記第2軸受の外輪の外周の第1部位がインサート成形により前記第1軸受支持部材に固定され、
前記第2軸受の外輪の前記第1部位と異なる外周の第2部位が前記第5軸受支持部材と嵌合している、
請求項1又は請求項10に記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減速装置は、一般に、複数の軸受と、軸受に嵌合されて回転する回転部材と、軸受を支持する支持部材とを備える。特許文献1には、軸受を介して回転される回転部材、あるいは、軸受を介して回転部材を支える支持部材が、樹脂から形成されている減速装置が示されている。当該減速装置においては、軸受(の内輪や外輪)の組み込み性を考慮し、樹脂製の回転部材及び樹脂製の支持部材が、複数のパーツに分かれ、当該複数のパーツがボルトで連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製の回転部材あるいは樹脂製の支持部材が、複数のパーツに分割されていると、分割されることで各パーツに厚みの少ない部分が生じるため、各パーツの剛性が低くなる。このようなことから、樹脂製の部材を用いた減速装置では、装置全体の剛性(捩じり剛性等)を高くすることが難しいという課題が生じる。
【0005】
本発明は、樹脂製の部材を有しつつ装置全体の剛性を高くすることのできる減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
第1軸受と、第2軸受と、前記第1軸受及び前記第2軸受を支持し樹脂から構成された第1軸受支持部材と、を備えた減速装置であって、
前記第1軸受の内輪及び外輪の一方と前記第2軸受の内輪及び外輪の一方とがインサート成形により前記第1軸受支持部材に固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製の部材を有しつつ減速装置全体の剛性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る減速装置を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態2に係る減速装置を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態3に係る減速装置を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態4に係る減速装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る減速装置を示す断面図である。本明細書では、入力される回転運動の回転軸O1に沿った方向を軸方向、回転軸O1を中心とする回転方向を周方向、回転軸O1に直交する方向を径方向と呼ぶ。また、軸方向において減速された回転運動が出力される第2歯車部材22の配置側を出力側、その反対側を反出力側と呼ぶ。
【0011】
実施形態1の減速装置1は、樹脂のパーツを含むことで軽量化された減速装置であり、人と協働して作業を行う協働ロボットの関節部に搭載される。軽量化により減速装置1は協働ロボットの部品として好適である。なお、減速装置1の用途は上記の例に限定されず、様々な機器に組み込まれてもよい。
【0012】
減速装置1は、撓み噛合い式歯車装置であり、起振体軸10、起振体軸受11、外歯歯車15、内歯歯車21gを含んだ第1歯車部材21、内歯歯車22gを含んだ第2歯車部材22、軸受26、27、主軸受28、並びに、ストッパーリング16、17を備える。
【0013】
上記構成要素のうち、起振体軸10は本発明に係る入力軸の一例に相当する。第2歯車部材22は本発明に係る出力軸の一例に相当する。第1歯車部材21は、軸受26を第1軸受、主軸受28を第2軸受と見なしたときに、これらを支持する本発明に係る第1軸受支持部材の一例に相当する。第2歯車部材22は、軸受27を第1軸受、主軸受28を第2軸受と見なしたときに、これらを支持する本発明に係る第1軸受支持部材の一例に相当する。
【0014】
起振体軸10は、回転軸O1を中心に回転する中空筒状の軸であり、回転軸O1に垂直な断面の外形が非円形(例えば楕円状)の起振体10Aと、起振体10Aの軸方向の両側に設けられた軸部10B、10Cとを有する。楕円状は、幾何学的に厳密な楕円である必要はなく、略楕円を含む。軸部10B、10Cは、回転軸O1に垂直な断面の外形が円形の軸である。起振体軸10は、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0015】
外歯歯車15は、可撓性を有する円筒状の部材であり、外周に歯が設けられている。外歯歯車15は、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0016】
2つの内歯歯車21g、22gは、軸方向に並んで外歯歯車15と噛合う。一方の内歯歯車21gは、第1歯車部材21の内周の一部に歯が設けられて構成される。もう一方の内歯歯車22gは、第2歯車部材22の内周の一部に歯が設けられて構成される。
【0017】
起振体軸受11は、例えばコロ軸受であり、起振体10Aと外歯歯車15との間に配置される。起振体軸受11は、専用の外輪及び内輪を有さず、外歯歯車15の内周部が起振体軸受11の外輪を兼ね、起振体10Aの外周部が起振体軸受11の内輪を兼ねている。なお、起振体軸受11は、別途、外輪と内輪とを有していてもよい。起振体10Aと外歯歯車15とは、起振体軸受11を介して相対的に回転可能である。起振体軸受11の転動体は金属から構成される。
【0018】
ストッパーリング16、17は、外歯歯車15及び起振体軸受11の軸方向の両側に配置され、外歯歯車15及び起振体軸受11の軸方向の移動を規制する。ストッパーリング16、17は、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0019】
第1歯車部材21は、軸受26の径方向外側から主軸受28の径方向外側位置にかけて延在し、かつ、周方向に連なった環状の部材である。第1歯車部材21は、前述した内歯歯車21gに加え、軸受26を支持する第1軸受支持部21aと、主軸受28を支持する第2軸受支持部21bと、装置外部の支持部材に連結されるための連結部21cとを有する。第1軸受支持部21aは、軸受26の径方向外側で、内歯歯車21gの歯部よりも反出力側に位置する。第2軸受支持部21bは、主軸受28の径方向外側で軸方向において内歯歯車21gの歯部よりも出力側に位置する。連結部21cは、第1歯車部材21の外周部に位置する。連結部21cにはボルト等の連結部材と係合する係合部(例えば共締め用の貫通孔)h1が設けられている。
【0020】
第1歯車部材21は、内歯歯車21g、22gと外歯歯車15との噛合箇所を反出力側と径方向外側から覆い、かつ、装置外部の部材に連結されて当該部材に支持されるケーシングとしても機能する。
【0021】
第2歯車部材22は、軸受27の径方向外側から主軸受28の径方向内側にかけて延在し、かつ、周方向に連なった環状の部材である。第2歯車部材22は、前述の内歯歯車22gに加え、軸受27を支持する第1軸受支持部22aと、主軸受28を支持する第2軸受支持部22bと、装置外部の部材と連結するための連結部22cとを有する。第1軸受支持部22aは、軸受27の径方向外側で、内歯歯車22gの歯部よりも出力側に位置する。第2軸受支持部22bは、軸受26の径方向内側で、内歯歯車22gの歯部の径方向外方に位置する。連結部22cは、第2歯車部材22の出力側で第1軸受支持部22aの径方向外方の肉厚部に位置する。連結部22cには、ボルト等の連結部材と係合する係合部(例えばネジ穴)h2が設けられている。減速装置1は、連結部22cに連結された外部の部材(被駆動部材)に減速された回転運動を出力する。
【0022】
第2歯車部材22は、内歯歯車21g、22gと外歯歯車15との噛合箇所の一部を出力側から覆うカバーとしても機能する。
【0023】
軸受26は、第1歯車部材21と起振体軸10との間に介在し、これらを相対的に回転可能にする。軸受27は、第2歯車部材22と起振体軸10との間に介在し、これらを相対的に回転可能にする。主軸受28は、第1歯車部材21と第2歯車部材22との間に介在し、これらを相対的に回転可能にする。なお、部材Aと部材Bとが相対的に回転可能なように軸受が部材Aと部材Bとの間に介在している構成においては、部材Aが軸受を支持していると見なすことも、軸受が部材Aを回転可能に支持していると見なすこともできる。また、部材Bが軸受を支持していると見なすことも、軸受が部材Bを回転可能に支持していると見なすこともできる。また、部材Aが軸受を介して部材Bを回転可能に支持していると見なすこともできるし、部材Bが軸受を介して部材Aを回転可能に支持していると見なすこともできる。
【0024】
軸受26は、内輪26i、外輪26o及び複数の転動体26rを有する。複数の転動体26rは、内輪26iと外輪26oとの間で転動する。軸受26は、転動体26rが球状の玉軸受であるが、転動体の種類は特に限定されず、例えば転動体26rがローラ状のコロ軸受、転動体26rがテーパを有するローラ状のテーパローラ軸受であってもよい。内輪26i、外輪26o及び複数の転動体26rは、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0025】
軸受27は、内輪27i、外輪27o及び複数の転動体27rを有する。複数の転動体27rは、内輪27iと外輪27oとの間で転動する。軸受27は、転動体27rが球状の玉軸受であるが、転動体の種類は特に限定されず、例えば転動体27rがローラ状のコロ軸受、転動体27rがテーパを有するローラ状のテーパローラ軸受であってもよい。内輪27i、外輪27o及び複数の転動体27rは、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0026】
主軸受28、内輪28i、外輪28o及び複数の転動体28rを有する。複数の転動体28rは、内輪28iと外輪28oとの間で転動する。主軸受28は、クロスローラ軸受であり、外輪28oの周方向における一部に転動体28rを径方向外方から挿入可能な挿入口が設けられている。挿入口に対応する第1歯車部材21の部位にも転動体28rを挿入可能な貫通孔が設けられている。上記の挿入口及び貫通孔は開閉可能に構成される。内輪28i、外輪28o及び複数の転動体28rは、鉄鋼素材等の金属から構成される。なお、主軸受28は、クロスローラ軸受に限定されるものではなく、各種軸受を使用可能であり、例えば玉軸受でもよい。
【0027】
第1歯車部材21及び第2歯車部材22は、樹脂材料から構成される。樹脂材料としては、例えば、合成樹脂などの単純樹脂、FRP(Fiber-Reinforced Plastic)又はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)などの繊維強化樹脂、紙ベーク材又は布ベーク材などの様々な樹脂材料を適用できる。本実施形態においては、第1歯車部材21及び第2歯車部材22は、炭素繊維を含有するPEEK(Polyetheretherketone)により構成されている。
【0028】
第1歯車部材21は、軸受26の外輪26o、並びに、主軸受28の外輪28oと、インサート成形により一体化されている。すなわち、インサート成形により外輪26o、28oがそれぞれ第1歯車部材21の第1軸受支持部21aと第2軸受支持部21bとに固定されている。外輪26o、28oは、それぞれ第1軸受支持部21aと第2軸受支持部21bの内周に固定されている。
【0029】
第2歯車部材22は、軸受27の外輪27o、並びに、主軸受28の内輪28iと、インサート成形により一体化されている。すなわち、インサート成形により外輪27o及び内輪28iがそれぞれ第2歯車部材22の第1軸受支持部22a及び第2軸受支持部22bに固定されている。外輪27oは第1軸受支持部22aの内周に固定され、内輪28iは第2軸受支持部22bの外周に固定されている。
【0030】
インサート成形によって、樹脂部品(第1歯車部材21又は第2歯車部材22)と金属部品(内輪28i、外輪26o、27o、28o)との高い密着性が得られ、樹脂部品と金属部品との接合強度が向上する。また、インサート成形によって、樹脂部品と金属部品とが分離できないように樹脂部品が金属部品の一部を囲む形状、あるいは、樹脂部品が金属部品の一部に食い込んだ形状を持つことが可能であり、第1歯車部材21が外輪26o、28oの一方又は両方に対してこのような形状を有していてもよい。また、第2歯車部材22が外輪27o及び内輪28iの一方又は両方に対して上記のような形状を有していてもよい。
【0031】
<組立工程>
続いて、実施形態1の減速装置1の組み立て方法の一例について説明する。組み立て前の段階では、軸受26、27と主軸受28とは、内輪26i、27i、28iと、外輪26o、27o、28oと、個々の転動体26r、27r、28rとに分離している。さらに、インサート成形により、外輪26o、28oは第1歯車部材21と一体化され、外輪27o及び内輪28iは第2歯車部材22と一体化されている。
【0032】
この状態で、まず、作業員は、第1歯車部材21と一体化された外輪26oに、内輪26iと複数の転動体26rとを組み込んで軸受26を組み上げる。軸受26を組み立てる際には、まず、作業員は、内輪26iを外輪26oの内側に配置した後、一旦、内輪26iの一部を外輪26o側に寄せ、寄せた部分の反対側において内輪26iと外輪26oとの間隔を大きくする。そして、作業員は、この間隔から複数の転動体26rを内輪26iと外輪26oとの間に挿入し、その後、内輪26iの寄せを戻す。そして、作業員は、複数の転動体26rを内輪26iと外輪26oとの間の転送路において分散させ、リテーナを挿入して複数の転動体26rが分散した配置を保持させる。このような手順で軸受26が組み上がる。なお、軸受26(軸受27や主軸受28など、他の軸受も同様)の組み立て方法は、これに限定されるものではなく、組み立て可能な種々の方法を採用可能である。例えば、リテーナに複数の転動体を支持させた後に、当該リテーナを内輪26iと外輪26oの間に組み込んでもよい。
【0033】
同様に、作業員は、第2歯車部材22と一体化された外輪27oに、内輪27iと複数の転動体27rとを組み込んで軸受27を組み上げる。
【0034】
次に、作業員は、第1歯車部材21と一体化された軸受26(その内輪26i)に、起振体軸10の軸部10Bを出力側から嵌入する。さらに、作業員は、起振体軸10の起振体10Aに、起振体軸受11と外歯歯車15とを出力側から嵌入する。軸受26に起振体軸10の軸部10Bを嵌入する際には、作業員は、予め、軸受26と起振体10Aとの間にストッパーリング16を挿入しておく。また、外歯歯車15を嵌入する際には、作業員は、外歯歯車15の外歯を内歯歯車21gの内歯と噛合するように互いの回転方向の位置を調整する。
【0035】
続いて、作業員は、上記のように組み込まれた起振体軸10の出力側の軸部10Cに対して、出力側から軸受27(の外輪27o)を嵌入する。軸受27は、第2歯車部材22と一体化されているので、軸受27の嵌入により、第2歯車部材22も、軸方向において第1歯車部材21の一部と重なる位置まで挿入される。軸受27を起振体軸10の軸部10Cに嵌入する際、作業員は、予め、軸受27と起振体10Aとの間にストッパーリング17を挿入しておく。また、軸受27を起振体軸10の軸部10Cに嵌入する際、作業員は、外歯歯車15の外歯と内歯歯車22gの内歯とを噛合させる。
【0036】
この状態で、主軸受28の内輪28iと外輪28oとは対向した配置関係にある。作業員は、この状態で、前述した第1歯車部材21の貫通孔及び外輪28oの挿入口を介して、複数の転動体28rを内輪28iと外輪28oとの間に1つずつ挿入する。そして、全ての転動体28rを挿入したら、挿入口及び貫通孔を閉じることで、主軸受28及び減速装置1が組み上がる。
【0037】
<減速動作>
実施形態1の減速装置1は、次のように動作する。起振体軸10を介して回転運動が入力されると、起振体10Aの回転運動が外歯歯車15に伝わる。このとき、外歯歯車15は、起振体10Aの外周面に沿った形状に規制され、軸方向から見て、長軸部分と短軸部分とを有する楕円形状に撓んでいる。さらに、外歯歯車15は、固定された第1歯車部材21の内歯歯車21gと長軸部分で噛合っている。このため、外歯歯車15は起振体10Aと同じ回転速度で回転することはなく、外歯歯車15の内側で起振体10Aが相対的に回転する。そして、この相対的な回転に伴って、外歯歯車15は長軸位置と短軸位置とが周方向に移動するように撓み変形する。この変形の周期は、起振体軸10の回転周期に比例する。
【0038】
外歯歯車15が撓み変形する際、その長軸位置が移動することで、外歯歯車15と内歯歯車21gとの噛合う位置が回転方向に変化する。ここで、外歯歯車15の歯数が100で、内歯歯車21gの歯数が102だとすると、噛合う位置が一周するごとに、外歯歯車15と内歯歯車21gとの噛合う歯がずれていき、これにより外歯歯車15が回転(自転)する。上記の歯数であれば、起振体軸10の回転運動は減速比100:2で減速されて外歯歯車15に伝達される。
【0039】
一方、外歯歯車15はもう一方の内歯歯車22gとも噛合っているため、起振体軸10の回転によって外歯歯車15と内歯歯車22gとの噛合う位置も回転方向に変化する。一方、内歯歯車22gの歯数と外歯歯車15の歯数とは一致しているため、外歯歯車15と内歯歯車22gとは相対的に回転せず、外歯歯車15の回転運動が減速比1:1で内歯歯車22gへ伝達される。これらによって、起振体軸10の回転運動が減速比100:2で減速されて、第2歯車部材22へ伝達される。そして、この減速された回転運動が、第2歯車部材22に連結された相手部材に出力される。
【0040】
減速装置1の動作中、第2歯車部材22に連結された相手部材と、第1歯車部材21に連結された支持部材との間に捩じりモーメントが生じると、第1歯車部材21と第2歯車部材22とにも回転方向の捩じりモーメントが生じる。ここで、仮に第1歯車部材21が複数のパーツに分割されていた場合、分割されることで各パーツに厚みの少ない部分が生じるため、各パーツの剛性が低くなる。また、樹脂製のパーツがボルトで連結される構造では、樹脂は柔らかくボルトの締付トルクを高くできないことから、複数のパーツ間の連結の剛性が低くなる。一方、本実施形態の第1歯車部材21は、軸受26の外輪26oから主軸受28の外輪28oにかけて一体化され(同一の素材で一体的に形成され)、かつ、外輪26o、28oがインサート成形により固定されている。したがって、この部分が複数のパーツに分割されボルト等で連結された構成と比較して、樹脂製でありながら第1歯車部材21の高い剛性が得られる。同様に、第2歯車部材22も樹脂製でありながら高い剛性が得られる。したがって、上記の捩じりモーメントに対して減速装置1の高い剛性が得られる。
【0041】
以上のように、本実施形態の減速装置1によれば、軸受26の外輪26oと、主軸受28の外輪28oとが、インサート成形により樹脂製の第1歯車部材21に固定されている。したがって、第1歯車部材21の部分が軸受26側と主軸受28側とに分割され、ボルト等で連結されている場合と比較して、本実施形態の第1歯車部材21は、一体化されていることで、樹脂製でありながら高い剛性が得られる。同様に、軸受27の外輪27oと、主軸受28の内輪28iとが、インサート成形により第2歯車部材22に固定されているので、金属部品が固定されることで樹脂製でありながら第2歯車部材22の高い剛性が得られる。したがって、樹脂製の部品を含むことで軽量化でき、かつ、減速装置1の全体の剛性(捩じり剛性等)を向上できる。さらに、第1歯車部材21の部分が複数に分割されている構成、並びに、第2歯車部材22の部分が複数に分割されている構成と比較して、本実施形態の減速装置1は、ボルト等の連結用の部品を減らすことができ、部品コストを削減することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の減速装置1によれば、インサート成形により第1歯車部材21と一体化される2つの軸受(26、28)は異なる回転速度の軸(起振体軸10と第2歯車部材22)を支持する。同様に、インサート成形により第2歯車部材22と一体化される2つの軸受(27、28)は、異なる回転速度の軸を支持する。なお、第1歯車部材21と第2歯車部材22とは相対的に回転する部材なので、一方に対して他方を軸と見なすことができる。一般的な減速装置において、回転速度が異なる2つの軸を支持する部材は、異なる軸を支持することから、異なる軸間でモーメントを受ける状況が生じえる。したがって、このような状況にある第1歯車部材21が、一体的な部材からなり、かつ、2つの軸受(26、28)の外輪26o、28oがインサート成形により固定されることで、高い剛性を有するので、減速装置1の上記モーメントに対する剛性を向上できる。同様に、上記のモーメントを受ける状況にある第2歯車部材22が、一体的な部材からなり、かつ、2つの軸受(27、28)の外輪27oと内輪28iがインサート成形により固定されることで、高い剛性を有するので、減速装置1の上記モーメントに対する剛性を向上できる。
【0043】
より具体的には、第1歯車部材21は、軸受26及び主軸受28を介して、回転運動が入力される起振体軸10と、減速された回転運動が出力される第2歯車部材22とを支持する。したがって、出力軸である第2歯車部材22を介して外部から主軸受28にスラスト荷重やラジアル荷重が加わって、第1歯車部材21にモーメントが生じる場合がある。しかし、第1歯車部材21の高い剛性が得られることで、減速装置1の上記モーメントに対する剛性を向上できる。
【0044】
また、本実施形態の減速装置1においては、外輪26o、28oがインサート成形により固定される第1歯車部材21は、内歯歯車21gを有し、内歯歯車21gに回転方向の力が加わることで、捩じりモーメントが生じる。同様に、外輪27oと内輪28iがインサート成形により固定される第2歯車部材22は、内歯歯車22gを有し、内歯歯車22gに回転方向の力が加わることで、捩じりモーメントが生じる。本実施形態の減速装置1によれば、このように捩じりモーメントが生じる第1歯車部材21及び第2歯車部材22が上述したように高い剛性を有するため、減速装置1全体の捩じりモーメントに対する剛性を向上できる。
【0045】
また、本実施形態の減速装置1によれば、インサート成形により第1歯車部材21と一体化される外輪26o、28oは、第1歯車部材21の内周に固定される。また、インサート成形により第2歯車部材22と一体化される外輪27o及び内輪28iのうち、外輪27oは第2歯車部材22の内周に固定され、内輪28iは第2歯車部材22の外周に固定される。このようなインサート成形により、外輪26o、28oと第1歯車部材21との密着面積、並びに、外輪27o及び内輪28iと第2歯車部材22との密着面積を大きくすることができ、さらに、インサート成形時におけるインサート金属の保持が容易となる。
【0046】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2に係る減速装置の断面図である。実施形態2の減速装置1Aは、外輪又は内輪のインサート成形により2つの軸受と一体化される部材を第2歯車部材22のみとした例である。実施形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
減速装置1Aは、協働ロボットの関節部に搭載される撓み噛合い式歯車装置であり(用途は限定されない)、起振体軸10、起振体軸受11、外歯歯車15、内歯歯車21gを含んだ第1歯車部材21A1、カバー部材21A2、内歯歯車22gを含んだ第2歯車部材22、軸受26、27、主軸受28A、並びに、ストッパーリング16、17を備える。
【0048】
これらの構成要素のうち、起振体軸10は本発明に係る入力軸の一例に相当する。第2歯車部材22は本発明に係る出力軸の一例に相当する。また、第2歯車部材22は本発明に係る第1軸受支持部材の一例に相当し、第1歯車部材21A1は本発明に係る第2軸受支持部材の一例に相当し、カバー部材21A2は本発明に係る第3軸受支持部材の一例に相当する。軸受27、主軸受28A、軸受26は、それぞれ本発明に係る第1軸受、第2軸受、第3軸受の一例に相当する。
【0049】
主軸受28Aは、玉軸受であるが、コロ軸受又はテーパローラ軸受であってもよい。内輪28Ai、外輪28Ao及び複数の転動体28Arは、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0050】
第1歯車部材21A1は、外歯歯車15の反出力側の噛合部から主軸受28Aの径方向外方の位置まで延在し、かつ、周方向に連なった環状の部材である。第1歯車部材21A1は、内歯歯車21gと、主軸受28を支持する第2軸受支持部21bと、装置外部の支持部材に連結されるための連結部21cと、カバー部材21A2と連結されるカバー連結部21dとを有する。カバー連結部21dにはボルト等の連結部材B1と係合する係合部(例えばネジ穴)h11が設けられている。第1歯車部材21A1は、主軸受28A及び外歯歯車15と内歯歯車21gの噛合部を径方向外方から覆い、かつ、装置外部の部材に連結されて当該部材に支持されるケーシングとしても機能する。
【0051】
カバー部材21A2は、軸受26の外周部から径方向外方に延在し、かつ、周方向に連なった環状の部材であり、内歯歯車21gと外歯歯車15との噛合部を反出力側からカバーする。カバー部材21A2は、軸受26を支持する第1軸受支持部21aと、第1歯車部材21A1のカバー連結部21dに連結されるフランジ部21eとを有する。フランジ部21eには、ボルト等の連結部材B1と係合する係合部(例えば貫通孔)h12が設けられている。
【0052】
カバー部材21A2は、出力側の一部が周方向全周にわたって出力側に突出し、この突出した部分が第1歯車部材21A1の反出力側における内周縁部に嵌合(インロー嵌合)することで位置決めされている。
【0053】
第1歯車部材21A1は、実施形態1の第1歯車部材21と同様の樹脂材料により形成され、インサート成形により主軸受28Aの外輪28Aoと一体化されている。すなわち、インサート成形により外輪28Aoが第2軸受支持部21bの内周に固定されている。
【0054】
カバー部材21A2は、実施形態1の第1歯車部材21と同様の樹脂により形成され、インサート成形により軸受26の外輪26oと一体化されている。すなわち、インサート成形により外輪26oが第1軸受支持部21aの内周に固定されている。
【0055】
<組立工程>
実施形態2の減速装置1Aは、次のように組み立てられる。まず、作業員は、第2歯車部材22と一体化された外輪27oに、内輪27iと複数の転動体27rとを組み込んで軸受27を組み上げる。軸受27の転動体27rの組込方法は、実施形態1で説明した通りである。また、作業員は、カバー部材21A2と一体化された外輪26oに、同様に内輪26iと複数の転動体26rとを組み込んで軸受26を組み上げる。
【0056】
さらに、作業員は、第2歯車部材22と一体化されている内輪28Aiと、第1歯車部材21A1と一体化されている外輪28Aoとを対向配置し、その間に複数の転動体28Arを組み込んで、主軸受28Aを組み上げる。外輪28Ao及び内輪28Aiは、両方とも樹脂部品(第1歯車部材21A1と第2歯車部材22)と一体化されているが、起振体軸10、起振体軸受11及び外歯歯車15が組み込まれていないときには、樹脂部品の干渉が生じることなく、内輪28Aiを周方向の一部において外輪28Ao側へ寄せることができる。したがって、主軸受28Aについても軸受26、27と同様に複数の転動体28Arを組み込むことができる。主軸受28が組み上がることで、第1歯車部材21A1と第2歯車部材22との相対的な配置が決まる。
【0057】
次に、作業員は、上記のように相対的な配置が決まった第1歯車部材21A1と第2歯車部材22に、外歯歯車15、起振体軸受11及び起振体軸10を反出力側から嵌め込む。このとき、起振体軸10の軸部10Cが軸受27の内輪27iに嵌入され、外歯歯車15は内歯歯車21g、22gと噛合される。
【0058】
続いて、作業員は、軸受26と一体化されたカバー部材21A2を、反出力側から嵌め込む。このとき、軸受26の内輪26iが起振体軸10の軸部10Bに嵌入される。そして、作業員は、連結部材B1を締めてカバー部材21A2のフランジ部21eを第1歯車部材21A1のカバー連結部21dに連結し、減速装置1Aが組み上がる。
【0059】
以上のように、実施形態2の減速装置1Aによれば、第2歯車部材22が、第1軸受支持部22aから第2軸受支持部22bにかけて単一の樹脂部材により一体的に構成されており、かつ、インサート成形により軸受27の外輪27oと主軸受28Aの内輪28Aiと一体化されている。したがって、比較例として、軸受27を支持する部分と主軸受28Aを支持する部分とが分離され、ボルト等で連結される構成と比較して、第2歯車部材22の剛性が向上し、延いては、減速装置1Aの全体の剛性を高くすることができる。
【0060】
さらに、実施形態2の減速装置1Aによれば、軸受26を支持するカバー部材21A2と、主軸受28Aを支持する第1歯車部材21A1とが別体であり、組立工程において、これらを別々に組み付けることができる。したがって、減速装置1Aを組み立てる際の制約が減り、その分、中央の径が最も大きい起振体軸10を採用しても容易に組立可能であるなど、減速装置1Aの設計自由度を高くすることができる。
【0061】
なお、第1歯車部材21A1及びカバー部材21A2の一方又は両方が金属から構成されていてもよく、この場合でも、上記の効果が同様に得られる。また、第1歯車部材21A1及びカバー部材21A2の一方又は両方が主軸受28A又は軸受26とインサート成形により一体化されていない樹脂部材から構成されていてもよく、この場合でも、上記の効果が同様に得られる。
【0062】
実施形態2の減速装置1Aによれば、さらに、第1歯車部材21A1及びカバー部材21A2が樹脂から構成されるので、減速装置1Aをより軽量化できる。また、軸受26の外輪26oがインサート成形によりカバー部材21A2に固定され、主軸受28Aの外輪28Aoがインサート成形により第1歯車部材21A1に固定されることで、樹脂製の第1歯車部材21A1及び樹脂製のカバー部材21A2の剛性が向上し、延いては、減速装置1Aの全体の剛性を高くすることができる。
【0063】
(実施形態3)
図3は、本発明の実施形態3に係る減速装置の断面図である。実施形態3の減速装置1Bは、外輪又は内輪のインサート成形により2つの軸受と一体化される部材を第1歯車部材21のみとした例である。実施形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
減速装置1Bは、協働ロボットの関節部に搭載される撓み噛合い式歯車装置であり(用途は限定されない)、起振体軸10、起振体軸受11、外歯歯車15、内歯歯車21gを含んだ第1歯車部材21、内歯歯車22gを含んだ第2歯車部材22B1、カバー部材22B2、軸受26、27、主軸受28B、並びに、ストッパーリング16、17を備える。
【0065】
これらの構成要素のうち、起振体軸10は本発明に係る入力軸の一例に相当する。第2歯車部材22B1及びカバー部材22B2は本発明に係る出力軸の一例に相当する。また、第1歯車部材21は本発明に係る第1軸受支持部材の一例に相当し、第2歯車部材22B1は本発明に係る第2軸受支持部材の一例に相当し、カバー部材22B2は本発明に係る第3軸受支持部材の一例に相当する。軸受26、主軸受28B、軸受27は、それぞれ本発明に係る第1軸受、第2軸受、第3軸受の一例に相当する。
【0066】
主軸受28Bは、玉軸受であるが、コロ軸受又はテーパローラ軸受であってもよい。内輪28Bi、外輪28Bo及び複数の転動体28Brは、鉄鋼素材等の金属から構成される。
【0067】
第2歯車部材22B1は、外歯歯車15の出力側の噛合部と主軸受28Bの内側との間に位置し、かつ、周方向に連なった環状の部材である。第2歯車部材22B1は、内歯歯車22gと、主軸受28Bを支持する第2軸受支持部22bと、装置外部の相手部材に連結されるための連結部22cと、カバー部材22B2を仮連結するためのカバー連結部22dとを有する。連結部22cにはボルト等の連結部材と係合する係合部(例えばネジ穴)h21が設けられている。相手部材には減速された回転運動が出力される。カバー連結部22dにはボルト等の連結部材B2と係合する係合部(例えばネジ穴)h22が設けられている。
【0068】
カバー部材22B2は、軸受27の外周部から径方向外方に延在し、かつ、周方向に連なった環状の部材であり、内歯歯車22gと外歯歯車15との噛合部を出力側からカバーする。カバー部材22B2は、軸受27を支持する第1軸受支持部22aと、第2歯車部材22B1に連結(共締め)される複数の連結部22eとを有する。複数の連結部22eのいずれかには、出力部材と連結するためにボルト等の図示略の連結部材と係合する係合部(例えば共締め用の貫通孔)h23が設けられ、複数の連結部22eの別のいずれかには、仮固定用の連結部材B2と係合する係合部(例えば貫通孔)h24が設けられている。
【0069】
カバー部材22B2は、反出力側の一部が周方向全周にわたって出力側に凹んだ段部を有し、この段部が第2歯車部材22B1の出力側の内周縁部に嵌合(インロー嵌合)することで位置決めされている。
【0070】
第2歯車部材22B1は、実施形態1の第2歯車部材22と同様の樹脂材料により形成され、インサート成形により主軸受28Bの内輪28Biと一体化されている。すなわち、インサート成形により内輪28Biが第2軸受支持部22bの外周に固定されている。
【0071】
カバー部材22B2は、実施形態1の第2歯車部材22と同様の樹脂により形成され、インサート成形により軸受27の外輪27oと一体化されている。すなわち、インサート成形により外輪27oが第1軸受支持部22aの内周に固定されている。
【0072】
<組立工程>
実施形態3の減速装置1Bは、次のように組み立てられる。まず、作業員は、第1歯車部材21と一体化された外輪26oに、内輪26iと複数の転動体26rとを組み込んで軸受26を組み上げる。軸受26の転動体26rの組込方法は、実施形態1で説明した通りである。また、作業員は、カバー部材22B2と一体化された外輪27oに、同様に内輪27iと複数の転動体27rとを組み込んで軸受27を組み上げる。
【0073】
さらに、作業員は、第1歯車部材21と一体化されている外輪28Boと、第2歯車部材22B1と一体化されている内輪28Biとを対向配置し、その間に複数の転動体28Brを組み込んで、主軸受28Bを組み上げる。外輪28Bo及び内輪28Biは、両方とも樹脂部品(第1歯車部材21と第2歯車部材22B1)と一体化されているが、起振体軸10、起振体軸受11及び外歯歯車15が組み込まれていないときには、樹脂部品に干渉が生じることなく、内輪28Biを周方向の一部において外輪28Bo側へ寄せることができる。したがって、主軸受28Bについても軸受26、27と同様に複数の転動体28Brを組み込むことができる。主軸受28Bが組み上がることで、第1歯車部材21と第2歯車部材22B1との相対的な配置が決まる。
【0074】
次に、作業員は、上記のように相対的な配置が決まった第1歯車部材21と第2歯車部材22B1に、外歯歯車15、起振体軸受11及び起振体軸10を出力側から嵌め込む。このとき、起振体軸10の軸部10Cが軸受26の内輪26iに嵌入され、外歯歯車15は内歯歯車21g、22gと噛合される。
【0075】
続いて、作業員は、軸受27と一体化されたカバー部材22B2を、反出力側から嵌め込む。このとき、軸受27の内輪27iが起振体軸10の軸部10Cに嵌入される。そして、作業員は、連結部材B2を締めてカバー部材22B2の連結部22eを第2歯車部材22B1のカバー連結部22dに連結し、減速装置1Bが組み上がる。
【0076】
以上のように、実施形態3の減速装置1Bによれば、第1歯車部材21が、第1軸受支持部21aから第2軸受支持部21bにかけて単一の樹脂部材により一体的に構成されており、かつ、インサート成形により軸受26の外輪26oと主軸受28Bの外輪28Boと一体化されている。したがって、比較例として、軸受26を支持する部分と主軸受28Bを支持する部分とが分離され、ボルト等で連結される構成と比較して、第1歯車部材21の剛性が向上し、延いては、減速装置1Bの全体の剛性を高くすることができる。
【0077】
さらに、実施形態3の減速装置1Bによれば、軸受27を支持するカバー部材22B2と、主軸受28Bを支持する第2歯車部材22B1とが別体であり、組立工程において、これらを別々に組み付けることができる。したがって、減速装置1Bを組み立てる際の制約が減り、その分、中央の径が最も大きい起振体軸10を採用しても容易に組立可能であるなど、減速装置1Bの設計自由度を高くすることができる。
【0078】
なお、第2歯車部材22B1及びカバー部材22B2の一方又は両方が金属から構成されていてもよく、この場合でも、上記の効果が同様に得られる。また、第2歯車部材22B1及びカバー部材22B2の一方又は両方が主軸受28B又は軸受27とインサート成形により一体化されていない樹脂部材から構成されていてもよく、この場合でも、上記の効果が同様に得られる。
【0079】
さらに、実施形態3の減速装置1Bによれば、第2歯車部材22B1及びカバー部材22B2が樹脂から構成されるので、減速装置1Bをより軽量化できる。さらに、軸受27の外輪27oがインサート成形によりカバー部材22B2に固定され、主軸受28Bの内輪28Biがインサート成形により第2歯車部材22B1に固定されることで、樹脂製の第2歯車部材22B1及び樹脂製のカバー部材22B2の剛性が向上し、延いては、減速装置1Bの全体の剛性を高くすることができる。
【0080】
(実施形態4)
図4は、本発明の実施形態4に係る減速装置1Cを示す断面図である。実施形態4では、軸方向において出力部材49の配置側を出力側、その反対の第1ケーシング46の配置側を反出力側と呼ぶ。なお、ここでは、第1ケーシング46及び第2ケーシング47が装置外部の支持部材に連結されることを想定し、このような場合には減速された回転運動が出力部材49に出力されるため、上記のように出力側及び反出力側と呼んでいる。しかし、実施形態4の減速装置1Cは、上記のような使用法に限定されず、キャリア体41が装置外部の支持部材に連結され、第1ケーシング46及び第2ケーシング47に減速された回転運動が出力されるように使用されてもよい。
【0081】
実施形態4の減速装置1Cは、樹脂のパーツを含むことで軽量化された減速装置であり、人と協働して作業を行う協働ロボットの関節部に搭載される。軽量化により減速装置1Cは協働ロボットの部品として好適である。なお、減速装置1Cの用途は上記の例に限定されず、様々な機器に組み込まれてもよい。
【0082】
減速装置1Cは、偏心揺動する外歯歯車34、36を有する偏心揺動型減速装置であり、第1偏心体32b及び第2偏心体32cを有する偏心体軸32、2つの外歯歯車34、36、内歯歯車38、偏心体軸受51、52、外歯歯車34、36に係合する複数の内ピン40、出力側で内ピン40を支持するキャリア体41、反出力側で内ピンを支持する支持部材42、キャリア体41と支持部材42とを連結するキャリアピン43、並びに、キャリア体41と連結される出力部材49を備える。
【0083】
さらに、減速装置1Cは、反出力側に位置する第1ケーシング46と、装置の径方向外側に位置する第2ケーシング47と、偏心体軸32を支持する複数の高速軸受53、54と、減速された回転体(キャリア体41及び支持部材42)を支持する複数の主軸受55、56とを備える。
【0084】
上記の構成要素のうち、偏心体軸32が本発明に係る入力軸の一例に相当し、キャリア体41及び出力部材49が本発明に係る出力軸の一例に相当する。また、高速軸受53、主軸受55、高速軸受54、主軸受56が、それぞれ本発明に係る第1軸受、第2軸受、第3軸受、第4軸受の一例に相当する。また、第1ケーシング46が第1軸受支持部材の一例、キャリア体41が本発明の第4軸受支持部材の一例、第2ケーシング47が本発明の第5軸受支持部材の一例に、それぞれ相当する。
【0085】
偏心体軸32は、回転軸O1が中心軸線と重なる軸部32a、32dと、回転軸O1から偏心して設けられた第1偏心体32b及び第2偏心体32cとを有する。第1偏心体32b及び第2偏心体32cは、回転軸O1に垂直な断面が円形であり、偏心体軸32が回転することで互いに異なる位相で偏心回転する。
【0086】
一方の外歯歯車34は、第1偏心体32bに偏心体軸受51を介して組み込まれ、偏心体軸32が回転することで揺動する。もう一方の外歯歯車36は、第2偏心体32cに偏心体軸受52を介して組み込まれ、偏心体軸32が回転することで、外歯歯車34と異なる位相で揺動する。外歯歯車34には、複数の内ピン40をそれぞれ通す複数の内ピン孔34hが周方向に並んで設けられている。同様に、外歯歯車36には、複数の内ピン40をそれぞれ通す複数の内ピン孔36hが周方向に並んで設けられている。
【0087】
内歯歯車38は、複数の内歯を有し、外歯歯車34、36と噛合する。内歯歯車38は、第2ケーシング47の内周に歯が設けられて構成される。なお、内歯歯車38は、上記の構成に限られず、例えば、第2ケーシング47の内周に設けられた複数の溝、並びに、当該複数の溝に保持された複数のピン(外ピン)を有する構成であってもよい。この場合、複数の溝は、軸方向に延在しかつ周方向に並んで設けられる。
【0088】
複数の内ピン40は、一方の外歯歯車34の内ピン孔34hと、もう一方の外歯歯車36の内ピン孔36hとに通される。複数の内ピン40は、内ピン孔34h、36hの内周面に接触し、外歯歯車34、36の運動(自転運動)と同期して運動(静止を含む)する。
【0089】
キャリア体41と支持部材42とは、2つの外歯歯車34、36を挟んで出力側と反出力側とに配置され、複数の内ピン40を出力側と反出力側とからそれぞれ支える。キャリア体41と支持部材42とは、キャリアピン43を介して連結されている。キャリアピン43は、外歯歯車34、36に設けられたキャリアピン孔34h2、36h2に通される。キャリア体41及び支持部材42は、内ピン40を介して外歯歯車34、36の運動(自転運動)と同期して運動(静止を含む)する。
【0090】
偏心体軸受51、52、高速軸受53、54及び主軸受55、56は、玉軸受であるが、コロ軸受又はテーパローラ軸受であってもよい。また、高速軸受53、54と、主軸受55、56とが異なる種類の軸受であってもよい。
【0091】
出力部材49は、ボルト等の連結部材B0を介してキャリア体41に連結され、減速装置1Cの外部へ減速された回転運動を出力する。
【0092】
第1ケーシング46及び第2ケーシング47は、減速装置1Cの内部構成を覆いかつ内部構成を回転可能に支持する。具体的には、第1ケーシング46は、外歯歯車34及び支持部材42の反出力側を覆い、装置の径方向外側まで延在する。第1ケーシング46は、主軸受55を介して支持部材42を回転可能に支持し、かつ、高速軸受53を介して偏心体軸32の反出力側の軸部32aを回転可能に支持する。第2ケーシング47は、外歯歯車34、36及びキャリア体41の径方向外方を覆い、主軸受55、56を介して支持部材42及びキャリア体41をそれぞれ回転可能に支持する。偏心体軸32の出力側の軸部32dは、キャリア体41に高速軸受54を介して回転可能に支持される。
【0093】
第1ケーシング46及び第2ケーシング47には、装置外部の支持部材に連結されるための係合部(連通する貫通孔等)h31が設けられている。また、第1ケーシング46及び第2ケーシング47には、互いを連結するための係合部(貫通孔とネジ穴など)h41、h42を有し、ボルト等の連結部材B3を介して連結されている。
【0094】
上記の構成要素のうち、第1ケーシング46、第2ケーシング47、キャリア体41、支持部材42及び外歯歯車34、36は、樹脂材料から構成される。樹脂材料としては、例えば、合成樹脂などの単純樹脂、FRP又はCFRPなどの繊維強化樹脂、紙ベーク材又は布ベーク材などの様々な樹脂材料を適用できる。また、偏心体軸32、出力部材49、高速軸受53、54の内輪53i、54i、外輪53o、54o及び転動体53r、54r、主軸受55、56の内輪55i、56i、外輪55o、56o及び転動体55r、56r、偏心体軸受51、52の内輪51i、52i、外輪51o、52o及び転動体51r、52rは、鉄鋼素材等の金属から構成される。なお、出力部材49は、樹脂材料から構成されてもよい。
【0095】
第1ケーシング46は、インサート成形により高速軸受53の外輪53o並びに主軸受55の外輪55oと一体化されている。すなわち、外輪53o、55oはインサート成形により第1ケーシング46の複数箇所の内周に固定されている。主軸受55の外輪55oは、外周部の軸方向における一部の範囲がインサート成形により第1ケーシング46に固定され、外周部の軸方向における残りの部分が第2ケーシング47と嵌合している。
【0096】
キャリア体41は、インサート成形により高速軸受54の外輪54o並びに主軸受56の内輪56iと一体化されている。すなわち、外輪54o及び内輪56iはそれぞれインサート成形によりキャリア体41の内周と外周とに固定されている。
【0097】
第2ケーシング47は、インサート成形により主軸受56の外輪56oと一体化されている。支持部材42は、インサート成形により主軸受55の内輪55iと一体化されている。
【0098】
<組立工程>
実施形態4の減速装置1Cは、一例として、次のように組み立てることができる。すなわち、作業員は、まず、第1ケーシング46と一体化されている外輪53oに、内輪53iと複数の転動体53rとを組み込んで高速軸受53を組み上げる。さらに、作業員は、第1ケーシング46と一体化されている外輪55oに、支持部材42と一体化されている内輪55iと複数の転動体55rとを組み込んで、主軸受55を組み上げる。高速軸受53の組み立て及び主軸受55の組み立ては、実施形態1の軸受26、27の組み立てと同様に行うことができる。
【0099】
また、作業員は、キャリア体41と一体化されている外輪54oに、内輪54iと複数の転動体54rとを組み込んで高速軸受54を組み上げる。さらに、作業員は、キャリア体41と一体化されている内輪56iと、第2ケーシング47と一体化されている外輪56oと、複数の転動体56rとを組み込んで、主軸受56を組み上げる。高速軸受54及び主軸受56の組み立ては、前述と同様に行うことができる。さらに、作業員は、キャリア体41に複数の内ピン40とキャリアピン43とを嵌め込む。
【0100】
また、作業員は、偏心体軸32に偏心体軸受51、52を介して外歯歯車34、36を組み込む。
【0101】
次に、作業員は、キャリア体41と一体化された高速軸受54及び主軸受56に、外歯歯車34、36等が組み込まれた偏心体軸32を嵌め込む。このとき、複数の内ピン40は外歯歯車34、36の内ピン孔34h、36hに通され、キャリアピン43は、外歯歯車34、36のキャリアピン孔34h2、36h2に通される。また、外歯歯車34、36と、第2ケーシング47に設けられた内歯歯車38が噛合される。
【0102】
次に、作業員は、偏心体軸32の反出力側の軸部32aに、第1ケーシング46と一体化された高速軸受53を嵌め込む。このとき、第2ケーシング47の反出力側の内周縁部に、第1ケーシング46に組み込まれた主軸受55の外輪55oの一部が嵌合し、複数の内ピン40及びキャリアピン43の反出力側の端部が支持部材42に嵌め込まれる。
【0103】
さらに、作業員は、連結部材B3を介して第1ケーシング46と第2ケーシング47とを連結し、また、連結部材B0を介して出力部材49をキャリア体41に連結する。そして、減速装置1Cが組み上がる。
【0104】
<動作説明>
実施形態4の減速装置1Cは、次のように動作する。すなわち、偏心体軸32が回転すると第1偏心体32b及び第2偏心体32cが偏心回転し、一方の外歯歯車34ともう一方の外歯歯車36とが180度の位相差で揺動される。2つの外歯歯車34、36があることで、伝達容量の増大及び強度の維持が図られ、さらに、減速装置1Cの回転バランスを保つことができる。外歯歯車34、36は、内歯歯車38に内接噛合しており、内歯歯車38は第2ケーシング47と一体化されている。このため、外歯歯車34、36は、偏心体軸32が1回転するごとに、内歯歯車38に対して歯数差分だけ相対回転(自転)する。外歯歯車34、36の自転成分は、内ピン40を介してキャリア体41及び支持部材42に伝達される。これらの結果、偏心体軸32の回転運動が、(内歯歯車38と外歯歯車34、36の歯数差)/(外歯歯車34及び外歯歯車36の共通の歯数)の減速比で減速されてキャリア体41及び出力部材49から出力される。
【0105】
以上のように、実施形態4の減速装置1Cによれば、第1ケーシング46が、樹脂から構成され、かつ、高速軸受53の外輪53oと主軸受55の外輪55oとインサート成形により一体化されている。したがって、比較例として、高速軸受53を支持する部分と、主軸受55を支持する部分とが分離され、ボルト等で連結される構成と比較して、第1ケーシング46の剛性が向上し、延いては、減速装置1Cの全体の剛性を高くすることができる。
【0106】
同様に、実施形態4の減速装置1Cによれば、キャリア体41が樹脂から構成され、かつ、高速軸受54の外輪54oと主軸受56の内輪56iとインサート成形により一体化されている。したがって、比較例として、高速軸受54を支持する部分と、主軸受56を支持する部分とが分離され、ボルト等で連結される構成と比較して、キャリア体41の剛性が向上し、延いては、減速装置1Cの全体の剛性を高くすることができる。
【0107】
さらに、高速軸受53、54は入力軸としての偏心体軸32を支持する一方、主軸受55、56は減速された回転運動が出力される支持部材42及びキャリア体41を支持する。したがって、高速軸受53及び主軸受55を支持する第1ケーシング46、並びに、高速軸受54及び主軸受56を支持するキャリア体41には、スラスト荷重やラジアル荷重によりモーメントが加わる場合がある。しかし、前述した第1ケーシング46及びキャリア体41の高い剛性によって、減速装置1Cの上記モーメントに対する剛性を向上できる。
【0108】
また、実施形態4の減速装置1Cによれば、2つの主軸受55、56を有し、主軸受55の外輪が第1ケーシング46とインサート成形により固定され、主軸受56の内輪56iがキャリア体41とインサート成形により固定される。したがって、2つの主軸受55、56を個別に組み立てた後に、これらの間に配置される外歯歯車34、36並びに偏心体軸32の第1偏心体32b及び第2偏心体32cを挟み込むように、第1ケーシング46とキャリア体41とを組み付けることができる。このように容易な組み立てが可能であることから、組み立てのために部材の形状に制約(例えば起振体軸を一方から最後に組み込めるように一方の軸部32aを最も太くするなど)が生じ難く、減速装置1Cの高い設計自由度が得られる。
【0109】
また、実施形態4の減速装置1Cによれば、主軸受55の外輪55oを支持する2つの部材(第1ケーシング46と第2ケーシング47)があり、第1ケーシング46が外輪55oの外周の一部とインサート成形により固定され、第2ケーシング47が外輪55oの外周の残りの部分に嵌合している。このように、第1ケーシング46と第2ケーシング47との連結箇所に金属の外輪55oが位置することで、第1ケーシング46と第2ケーシング47との連結箇所の剛性を高くすることができる。したがって、減速装置1Cの全体の剛性の向上に寄与できる。
【0110】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、減速装置が撓み噛合い式歯車装置と偏心揺動型減速装置の例を示したが、本発明は、例えば単純遊星歯車装置、又は、その他の形式の減速装置に適用されてもよい。また、カップ型やシルクハット型の撓み噛合い式歯車装置、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に複数の偏心体軸(入力軸)が設けられる振り分けタイプの偏心揺動型減速装置にも適用可能である。また、上記実施形態では、入力軸である起振体軸10又は偏心体軸32が金属である例を示したが、起振体軸10が樹脂から構成され、かつ、軸受26、27の内輪26i、27iがインサート成形により起振体軸10に固定された構成が採用されてもよい。同様に、偏心体軸32が樹脂から構成され、かつ、高速軸受53、54の内輪53i、54iがインサート成形により偏心体軸32に固定された構成が採用されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0111】
1、1A、1B、1C 減速装置
10 起振体軸(入力軸)
10A 起振体
11 起振体軸受
15 外歯歯車
16、17 ストッパーリング
21 第1歯車部材
21A1 第1歯車部材
21A2 カバー部材
22 第2歯車部材
22B1 第2歯車部材
22B2 カバー部材
21g、22g 内歯歯車
26、27 軸受
26i、27i 内輪
26o、27o 外輪
28、28A、28B 主軸受
28i、28Ai、28Bi 内輪
28o、28Ao、28Bo 外輪
32 偏心体軸(入力軸)
34、36 外歯歯車
38 内歯歯車
40 内ピン
41 キャリア体
42 支持部材
43 キャリアピン
46 第1ケーシング
47 第2ケーシング
49 出力部材
51、52 偏心体軸受
53、54 高速軸受
55、56 主軸受
図1
図2
図3
図4