(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】圧縮成形型、樹脂成形装置、樹脂成形システムおよび樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20231201BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20231201BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20231201BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/12
B29C43/18
B29C43/34
(21)【出願番号】P 2020187831
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋平
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-83438(JP,A)
【文献】特開2012-61728(JP,A)
【文献】特開2005-150350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/36
B29C 33/12
B29C 43/18
B29C 43/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1型と、
前記第1型に向かい合って前記第1型よりも上方に配置された第2型と、を備える、圧縮成形型であって、
前記第1型は、側面部材と、底面部材と、を備え、
前記側面部材は、前記底面部材の周囲を取り囲むように配置されており、
前記側面部材は、前記側面部材の前記底面部材側に
位置する内周面に段差を備えており、
前記段差は、前記側面部材の第1面と、前記第1面から前記底面部材に向かって延在する第2面と、前記第2面から下方に延在する第3面とを備え、
前記底面部材は、樹脂材料を配置可能な上面と、前記上面から下方に延在して前記側面部材の前記第3面に対して摺動可能な摺動面と、を備え、
前記樹脂材料の供給時に前記側面部材の前記第3面が露出していない、圧縮成形型。
【請求項2】
前記側面部材の前記第3面にシール材をさらに備える、請求項1に記載の圧縮成形型。
【請求項3】
前記側面部材の前記第1面および前記第2面と、前記底面部材の前記摺動面との間に配置された消耗材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の圧縮成形型。
【請求項4】
前記側面部材の前記第1面は、前記第2面に対して垂直である、または前記第2面に対して傾斜している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧縮成形型。
【請求項5】
前記底面部材の前記上面に窪みが設けられてなる、請求項1から請求項4のいずれか項に記載の圧縮成形型。
【請求項6】
前記窪みは、底面と、前記底面から上方に延在する内周面とを備え、
前記内周面は、前記底面に対して垂直である、または前記底面に対して傾斜している、
請求項5に記載の圧縮成形型。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の圧縮成形型を備える、樹脂成形装置。
【請求項8】
前記第1型を昇降可能な駆動機構をさらに備え、
前記駆動機構は、前記側面部材および前記底面部材の一方を他方に対して独立して昇降可能である、請求項7に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の樹脂成形装置を備える、樹脂成形システム。
【請求項10】
圧縮成形型を準備する工程を含む樹脂成形品の製造方法であって、
前記圧縮成形型は、
第1型と、
前記第1型に向かい合って前記第1型よりも上方に配置された第2型と、を備え、
前記第1型は、側面部材と、底面部材と、を備え、
前記側面部材は、前記底面部材の周囲を取り囲むように配置されており、
前記側面部材は、前記側面部材の前記底面部材側に
位置する内周面に段差を備えており、
前記段差は、前記側面部材の第1面と、前記第1面から前記底面部材に向かって延在する第2面と、前記第2面から下方に延在する第3面とを備え、
前記底面部材は、樹脂材料を配置可能な上面と、前記
上面から下方に延在して前記側面部材の前記第3面に対して摺動可能な摺動面と、を備え、
前記樹脂成形品の製造方法は、さらに、
前記第2型に成形対象物を設置する工程と、
前記側面部材の前記第3面が露出していない状態で樹脂材料を供給する工程と、
前記樹脂材料を用いて前記成形対象物を樹脂成形する工程と、を含む、樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成形する工程では、前記底面部材の前記上面を前記側面部材の前記第2面よりも上方に位置するように押し上げた状態で前記成形対象物を樹脂成形する、請求項10に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
少なくとも前記樹脂材料を供給する工程の前に、前記側面部材の前記第3面にシール材を設置する工程をさらに含む、請求項10または請求項11に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
少なくとも前記樹脂材料を設置する工程の前に、前記側面部材の前記第1面および前記第2面と、前記底面部材の前記摺動面との間に消耗材を設置する工程をさらに含む、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂成形された前記成形対象物から不要部分を除去する工程をさらに含む、請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮成形型、樹脂成形装置、樹脂成形システムおよび樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上下両型からなる圧縮成形型を備えた樹脂成形装置を用いて圧縮成形することにより、基板上に搭載された半導体チップ等の電子部品を樹脂封止することが行なわれている。
【0003】
たとえば特許文献1には、相対峙する金型内で被成形品を樹脂で封止する被成形品の樹脂封止方法において、被成形品の樹脂封止されていない部分を金型から離反させ、樹脂のみが金型のうちの特定の金型に接している状態とする第1の手順と、この状態で、樹脂が成形収縮するのを待つ第2の手順と、を含む被成形品の樹脂封止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の樹脂封止方法によれば、金型から被成形品を離反させるための離型フィルムを用いる必要がない。
【0006】
しかしながら、特許文献1の記載の樹脂封止方法においては、上型と下型とによる被成形品を圧縮成形する際の下型の枠状金型に対する圧縮金型の摺動時に下型の枠状金型と圧縮金型との間に加熱溶融後の液状樹脂が入り込んでしまうことがあった。これらの金型の間に液状樹脂が入り込んでしまった場合には、液状樹脂の一部が金型に戻り、硬化後に型汚れの原因となる樹脂カスおよび樹脂成形品に入り込んで不良品の原因となる樹脂バリを引き起こしていた。そのため、頻繁に下型を解体して樹脂カスを取り出すための清掃をする必要があった。
【0007】
また、枠状金型と圧縮金型との間に液状樹脂が入り込むのを防止するために、枠状金型に離型フィルムを設置する方法も考えられる。
【0008】
しかしながら、圧縮金型に対して枠状金型の枠の高さが高い場合には、離型フィルムが伸び切らない、または離型フィルムが破断することがあった。また、仮に、離型フィルムを伸ばせたとしても、上型と下型とを型締めした際に、伸びた離型フィルムの一部がシワとなって、樹脂成形品の樹脂中に入り込んでしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで開示された実施形態によれば、第1型と、第1型に向かい合って第1型よりも上方に配置された第2型と、を備える、圧縮成形型であって、第1型は、側面部材と、底面部材と、を備え、側面部材は、側面部材の底面部材側に段差を備えており、段差は、側面部材の第1面と、第1面から底面部材に向かって延在する第2面と、第2面から下方に延在する第3面とを備え、底面部材は、樹脂材料を配置可能な上面と、上面から下方に延在して側面部材の第3面に対して摺動可能な摺動面と、を備え、樹脂材料の供給時に側面部材の第3面が露出していない、圧縮成形型を提供することができる。
【0010】
ここで開示された実施形態によれば、上記の圧縮成形型を備える樹脂成形装置を提供することができる。
【0011】
ここで開示された実施形態によれば、上記の樹脂成形装置を備える樹脂成形システムを提供することができる。
【0012】
ここで開示された実施形態によれば、圧縮成形型を準備する工程を含む樹脂成形品の製造方法であって、圧縮成形型は、第1型と、第1型に向かい合って第1型よりも上方に配置された第2型と、を備え、第1型は、側面部材と、底面部材と、を備え、側面部材は、側面部材の底面部材側に段差を備えており、段差は、側面部材の第1面と、第1面から底面部材に向かって延在する第2面と、第2面から下方に延在する第3面とを備え、底面部材は、樹脂材料を配置可能な上面と、上面から下方に延在して側面部材の第3面に対して摺動可能な摺動面と、を備え、樹脂成形品の製造方法は、さらに、第2型に成形対象物を設置する工程と、側面部材の前記第3面が露出していない状態で樹脂材料を供給する工程と、樹脂材料を用いて前記成形対象物を樹脂成形する工程と、を含む、樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
ここで開示された実施形態によれば、離型フィルムを用いることなく、圧縮成形型の構成部材間への樹脂の入り込みを抑制することが可能な圧縮成形型、樹脂成形装置、樹脂成形システムおよび樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の樹脂成形システムの一例の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態1の樹脂成形装置の一例の模式的な断面図である。
【
図3】実施形態1の樹脂成形品の製造方法の一例の工程の一部を説明するための模式的な断面図である。
【
図4】実施形態1の樹脂成形品の製造方法の一例の工程の他の一部を説明するための模式的な断面図である。
【
図5】実施形態1の樹脂成形品の製造方法の一例の工程のさらに他の一部を説明するための模式的な断面図である。
【
図6】実施形態1の樹脂成形品の製造方法の一例の工程のさらに他の一部を説明するための模式的な断面図である。
【
図7】実施形態1の樹脂成形された成形対象物の一例の模式的な断面図である。
【
図8】実施形態1の樹脂成形品の一例の模式的な断面図である。
【
図9】(a)は従来の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時の第1型の模式的な断面図であり、(b)は従来の樹脂成形装置の樹脂成形時の第1型の模式的な断面図である。
【
図10】
図9(a)および
図9(b)に示される第1型を備えた従来の樹脂成形装置における樹脂成形後の側面部材の内周面と底面部材の摺動面との間を撮影した写真である。
【
図11】
図9(a)および
図9(b)に示される第1型を備えた従来の樹脂成形装置を用いて樹脂成形された樹脂成形品を撮影した写真である。
【
図12】(a)は実施形態1の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時の第1型の模式的な断面図であり、(b)は実施形態1の樹脂成形装置の樹脂成形時の第1型の模式的な断面図である。
【
図13】実施形態1の樹脂成形装置における樹脂成形後の側面部材の内周面と底面部材の摺動面との間を撮影した写真である。
【
図14】実施形態1の樹脂成形装置を用いて樹脂成形された樹脂成形品を撮影した写真である。
【
図15】(a)は実施形態2の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型の模式的な断面図であり、(b)は実施形態2の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型の模式的な断面図である。
【
図16】
図15(b)に示される第1型の模式的な拡大断面図である。
【
図17】(a)は実施形態3の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型の模式的な断面図であり、(b)は実施形態3の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型の模式的な断面図である。
【
図18】(a)は実施形態4の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型の模式的な断面図であり、(b)は実施形態4の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型の模式的な断面図である。
【
図19】実施形態4の樹脂成形装置により樹脂成形された成形対象物の模式的な平面図である。
【
図20】実施形態4の樹脂成形装置により製造された樹脂成形品の模式的な平面図である。
【
図21】(a)は実施形態5の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型の模式的な断面図であり、(b)は実施形態5の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1の樹脂成形システムの一例の機能ブロック図を示す。
図1に示される樹脂成形システム1000は、樹脂材料を供給することが可能な樹脂供給モジュール1001と、成形対象物を圧縮成形することによって樹脂成形品を製造することが可能な樹脂成形モジュール1002と、成形前の成形対象物を供給可能であるとともに圧縮成形後の樹脂成形品を収納可能な供給収納モジュール1003と、制御部1004とを備えている。制御部1004は、樹脂供給モジュール1001と、樹脂成形モジュール1002と、供給収納モジュール1003とを制御可能に構成されている。
【0017】
樹脂供給モジュール1001と、樹脂成形モジュール1002と、供給収納モジュール1003とは、互いに着脱可能であるとともに交換可能でもある。
【0018】
樹脂供給モジュール1001は、樹脂成形モジュール1002に樹脂材料を供給可能な樹脂材料供給装置を備えている。
【0019】
樹脂成形モジュール1002は、実施形態の樹脂成形装置を備えている。実施形態の樹脂成形装置1の詳細については後述する。樹脂成形モジュール1002は複数設けられていてもよい。
【0020】
供給収納モジュール1003は、樹脂成形される前の成形対象物を供給可能な供給装置と、圧縮成形後の樹脂成形品を収納可能な収納装置とを備えている。
【0021】
樹脂成形装置によって圧縮樹脂成形された樹脂成形品は、供給収納モジュール1003に収納される。
【0022】
図2に、実施形態の樹脂成形装置の一例である実施形態1の樹脂成形装置の模式的な断面図を示す。
図2に示すように、実施形態1の樹脂成形装置1は、圧縮成形型10を備えている。圧縮成形型10は第1型110と、第1型110に向かい合って第1型110よりも上方に配置された第2型120とを備えている。
【0023】
第1型110は、側面部材111と、底面部材112とを備えている。側面部材111は、底面部材112の周囲を取り囲むように配置されている。側面部材111は、側面部材111の底面部材112側に位置する内周面が段差113を備えている。段差113は、側面部材111の第1面111aと、第1面111aから底面部材112に向かって延在する第2面111bと、第2面111bから下方に向かって延在する第3面111cとを備えている。第1面111aおよび第3面111cのそれぞれは、第2面111bに対して垂直である。
【0024】
底面部材112は、樹脂材料を配置可能な上面112aと、上面112aの周縁から下方に延在する摺動面112bとを備えている。摺動面112bは、側面部材111の第3面111cと接しており、側面部材111の第3面111cに対して摺動可能である。
【0025】
樹脂成形装置1は、上部固定盤121と、下部固定盤122と、可動盤115とをさらに備えている。上部固定盤121と下部固定盤122との間には、複数の支柱部116が鉛直方向に延在している。複数の支柱部116のそれぞれの一端が上部固定盤121に固定され、他端が下部固定盤122に固定されている。また、側面部材111と可動盤115との間には、弾性部材114が設けられている。
【0026】
樹脂成形装置1は、下部固定盤122における複数の支柱部116の間に、第1駆動機構117をさらに備えている。第1駆動機構117は、可動盤115を、上方および下方に移動可能とされている。上部固定盤121および下部固定盤122は固定されて移動不能とされている。そのため、可動盤115は、上部固定盤121および下部固定盤122に対して相対的に移動可能である。また、第1駆動機構117は、可動盤115を介して、側面部材111および底面部材112を、上方および下方に移動可能、すなわち昇降可能とされている。
【0027】
樹脂成形装置1は、可動盤115の内部に、第2駆動機構118をさらに備えている。第2駆動機構118は、底面部材112を、上方および下方に移動可能、すなわち昇降可能とされている。これにより、底面部材112は、側面部材111に対して相対的に移動可能である。
【0028】
以下、
図2~
図8の模式的断面図を参照して、実施形態の樹脂成形品の製造方法の一例である実施形態1の樹脂成形品の製造方法について説明する。まず、
図2に示すように、圧縮成形型10を準備する工程を行なう。圧縮成形型10を準備する工程は、たとえば、可動盤115に第1型110を設置するとともに、上部固定盤121に第2型120を設置することにより行なうことができる。
【0029】
次に、
図3に示すように、第2型120に成形対象物201を設置する工程を行なう。第2型120に成形対象物201を設置する工程は、たとえば、第2型120に成形対象物201を吸着保持することにより行なうことができる。成形対象物201は、たとえば、リードフレーム、サブストレート、半導体製基板(シリコンウェハ等)、金属製基板、ガラス製基板、セラミック製基板、または配線基板等である。
【0030】
次に、
図3に示すように、側面部材111の第3面111cが露出していない状態で樹脂材料202を供給する工程を行なう。側面部材111の第3面111cが露出していない状態で樹脂材料202を供給する工程は、たとえば側面部材111の第3面111cと樹脂材料202とが接しないように、側面部材111の第1面111aおよび第2面111bならびに底面部材112の上面112aで構成されたキャビティ内に樹脂材料202を供給することにより行なうことができる。
【0031】
なお、本実施形態において、第2型120に成形対象物201を設置する工程と、側面部材111の第3面111cが露出していない状態で樹脂材料202を供給する工程との順序は特に限定されない。
【0032】
次に、
図4に示すように、第2型120側に第1型110を移動させる工程を行なう。第2型120側に第1型110を移動させる工程は、たとえば、第1駆動機構117によって、可動盤115を第2型120の方向に移動させることにより行なうことができる。
【0033】
次に、樹脂材料202を用いて成形対象物201を樹脂成形する工程を行なう。樹脂材料202を用いて成形対象物201を樹脂成形する工程は、たとえば、以下のように行なうことができる。
【0034】
まず、
図5に示すように、樹脂材料202を加熱することにより溶融して溶融樹脂202aにするとともに、第2駆動機構118によって底面部材112の上面112aを側面部材111の第2面111bよりも上方に位置するように押し上げる。このとき、第1型110の第2型120側への圧力によって側面部材111側に付勢された弾性部材114が収縮するように側面部材111が押し下げられるとともに、底面部材112が上方に押し上げられる。これにより、底面部材112の摺動面112bが側面部材111の第3面111cに対して摺動しながら、底面部材112が側面部材111に対して相対的に上方に移動する。
【0035】
次に、
図6に示すように、底面部材112の上面112aを側面部材111の第2面111bよりも上方に(第2型120側に)位置するように押し上げた状態で溶融樹脂202aの加熱をさらに進めて硬化させ、硬化樹脂202bとする。
【0036】
次に、たとえば
図7の模式的断面図に示されるように、圧縮成形型10から樹脂成形された成形対象物300を取り出す。樹脂成形された成形対象物300は、底面の周縁を取り囲むように下方に延在する環状部分220を有している。環状部分220は、側面部材111の第1面111aと第2面111bとの形状に対応した形状を有する。
【0037】
その後、
図7に示される環状部分220が不要部分である場合には、成形対象物300から不要な当該環状部分220を除去する工程を行なう。これにより、たとえば
図8の模式的断面図に示されるような、樹脂成形された成形対象物300から環状部分220が除去された樹脂成形品301を製造することもできる。
【0038】
実施形態1の樹脂成形装置1においては、樹脂材料202の供給時に側面部材111の第3面111cが露出していない。そのため、樹脂成形装置1によれば、離型フィルムを用いることなく、圧縮成形型の構成部材間への樹脂の入り込みを抑制することが可能となる。
【0039】
すなわち、従来の樹脂成形装置においては、たとえば
図9(a)の模式的断面図に示す第1型1100の側面部材1111の内周面1111aは、実施形態1の樹脂成形装置1のような段差113を有しておらず、鉛直方向(上下方向)に延在していた。そのため、このような構成の従来の第1型1100においては、樹脂材料202の供給時に、側面部材1111の内周面1111aに接触する樹脂202cが存在していた。
【0040】
その後、たとえば
図9(b)の模式的断面図に示すような樹脂成形時に、底面部材112の摺動面112bは、側面部材1111の内周面1111aに付着した樹脂202c上を摺動し、側面部材1111の内周面1111aと底面部材112の摺動面112bとの間に樹脂202cを引きずり込みながら移動する。
【0041】
そのため、従来の樹脂成形装置においては、側面部材1111の内周面1111aと底面部材112の摺動面112bとの間に引きずり込まれた樹脂202cが硬化した後に型汚れの原因となる樹脂カスおよび樹脂成形品に入り込んで不良品の原因となる樹脂バリを引き起こしていた。
【0042】
図10に、
図9(a)および
図9(b)に示される第1型1100を備えた従来の樹脂成形装置における樹脂成形後の側面部材1111の内周面1111aと底面部材112の摺動面112bとの間を撮影した写真を示す。
図10に示すように、従来の側面部材1111の内周面1111aと底面部材112の摺動面112bとの間には、樹脂カスに相当する黒い斑点を目視で確認することができた。
【0043】
図11に、
図9(a)および
図9(b)に示される第1型1100を備えた従来の樹脂成形装置を用いて樹脂成形された樹脂成形品を撮影した写真を示す。
図11に示すように、従来の樹脂成形装置を用いて樹脂成形された樹脂成形品3010の周縁には、当該周縁から外側に突出する樹脂バリを目視で確認することができた。
【0044】
一方、実施形態1の樹脂成形装置1においては、たとえば
図12(a)の模式的断面図に示すように、樹脂材料202の供給時に、側面部材111の第3面111cが樹脂材料202と接触していない。
【0045】
したがって、たとえば
図12(b)の模式的断面図に示すような樹脂成形時に、底面部材112の摺動面112bが側面部材111の第3面111cを摺動しながら上方に移動した場合でも、側面部材111の第3面111cには樹脂が付着していないため、側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間に引きずり込まれる樹脂の量を、
図9(a)および
図9(b)に示される第1型1100を備えた従来の樹脂成形装置と比べて明らかに低減することができる。
【0046】
そのため、実施形態1の樹脂成形装置1によれば、離型フィルムを用いることなく、圧縮成形型の構成部材間への樹脂の入り込みを抑制することが可能となる。
【0047】
図13に、実施形態1の樹脂成形装置1における樹脂成形後の側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間を撮影した写真を示す。
図13に示すように、実施形態1の樹脂成形装置1の側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間には、樹脂カスに相当する黒い斑点を目視で確認することができなかった。
【0048】
したがって、
図10と
図13との対比からも明らかなように、実施形態1の樹脂成形装置1においては、上述の従来の樹脂成形装置と比べて樹脂カスの量を低減できていることがわかる。
【0049】
図14に、実施形態1の樹脂成形装置1を用いて樹脂成形された樹脂成形品を撮影した写真を示す。
図14に示すように、実施形態1の樹脂成形装置1を用いて樹脂成形された樹脂成形品301の周縁には、当該周縁から外側に突出する樹脂バリを目視で確認することができなかった。
【0050】
したがって、
図11と
図14との対比からも明らかなように、実施形態1の樹脂成形装置1においては、上述の従来の樹脂成形装置と比べて樹脂成形品301の周縁の樹脂バリを低減できていることがわかる。
【0051】
ここで、本実施形態において、側面部材111および底面部材112を可動盤115を介して昇降可能な第1駆動機構117と、底面部材112を昇降可能な第2駆動機構118との2つの駆動機構を設けたことについて説明を補足する。
【0052】
たとえば
図2の構成において、第2駆動機構118を設けることなく、第1駆動機構117のみで側面部材111および底面部材112を昇降可能としたプレス機構が知られている。たとえば厚さが2mm以下の比較的薄い製品(樹脂成形品)を製造する場合には、プレス機構がこのような駆動機構を1つのみ有する構成であっても樹脂成形可能である。しかしながら、たとえば厚さが2mmを超えるような比較的厚い製品(樹脂成形品)を製造する場合には、樹脂成形時に側面部材111および底面部材112が相対的に摺動する距離が長くなるため、側面部材111と可動盤115との間に介在する弾性部材114の伸縮だけでは適切な樹脂成形ができない場合がある。このような場合に、本実施形態のような2つの駆動機構(第1駆動機構117および第2駆動機構118)を設けることによって、側面部材111および底面部材112が相対的に樹脂成形時に摺動する距離が比較的長くなったとしても、適切な樹脂成形を行うことが可能となる。
【0053】
また、たとえば厚さが2mmを超えるような比較的厚い製品(樹脂成形品)を製造する場合には、成形型(たとえば第1型110)と樹脂成形品との接触面積が大きくなるため、成形型と樹脂成形品との密着力が大きくなり、離型(樹脂成形後に成形型から樹脂成形品を取り出すこと)が困難になる場合がある。このような場合に、側面部材111および底面部材112の少なくとも一方を独立して昇降させる駆動が可能な駆動機構を設けることにより、離型を容易とすることができる。
【0054】
この場合の一例を説明すれば、離型動作において、側面部材111のみを下降させて離型し、その後に側面部材111を上昇させて
図4に示すような成形対象物201をクランプした状態とし、底面部材112のみを下降させて離型する。また、これとは逆に、先に底面部材112のみを下降させて離型し、その後に側面部材111のみを下降させて離型することもできる。
【0055】
なお、比較的厚い製品を製造する場合に、離型フィルムを用いるとシワが発生しやすくなり、樹脂成形品の外観不良等の成形不良の原因となる可能性があるため、本実施形態のような2つの駆動機構(第1駆動機構117および第2駆動機構118)を設けた構成が特に有効になる。しかし、比較的厚さが薄い製品(樹脂成形品)を製造する場合には、
図2の構成において、第2駆動機構118を設けることなく、第1駆動機構117のみで側面部材111および底面部材112を昇降可能とした樹脂成形装置の構成とすることもできる。
【0056】
また、本実施形態で説明した第1型110を昇降可能な駆動機構の構成では、底面部材112を側面部材111に対して独立して昇降可能な第2駆動機構118を第1駆動機構117とは別に設けたが、側面部材111を底面部材112に対して独立して昇降可能な駆動機構を第1駆動機構117とは別に設ける構成とすることもできる。
【0057】
なお、本明細書において「樹脂材料の供給時に側面部材の第3面が露出していない」とは、樹脂材料を供給することが想定される時点よりも少なくとも前の時点において、樹脂成形装置の側面部材の第3面の上端が底面部材の摺動面の上端と同じ高さに位置しているか、または底面部材の摺動面よりも下方に位置していることを意味する。
【0058】
<実施形態2>
図15(a)に、実施形態の樹脂成形装置の他の一例である実施形態2の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型10の模式的な断面図を示す。
図15(b)に、実施形態2の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型10の模式的な断面図を示す。実施形態2の樹脂成形装置は、側面部材111の第3面111cにシール材130をさらに備えることを特徴としている。シール材130としては、たとえば、パッキン、ガスケットまたは樹脂リング等を用いることができる。なお、シール材130は、底面部材112に取り付けられてもよい。
【0059】
図16に、
図15(b)に示される第1型10の模式的な拡大断面図を示す。
図16に示すように、実施形態2の樹脂成形装置においては、シール材130により側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間を塞ぐことができるとともに、矢印401方向の成形圧力による溶融樹脂202aの側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間への樹脂漏れを抑制することができる。
【0060】
なお、実施形態2の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する場合には、上述した実施形態の樹脂成形品の製造方法の一例は、少なくとも上述の樹脂材料202を供給する工程の前に、側面部材111の第3面111cにシール材130を設置する工程を含んでいればよい。
【0061】
実施形態2における上記以外の説明は、実施形態1と同様であるため、その説明については省略する。
【0062】
<実施形態3>
図17(a)に、実施形態の樹脂成形装置のさらに他の一例である実施形態3の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型10の模式的な断面図を示す。
図17(b)に実施形態3の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型10の模式的な断面図を示す。実施形態3の樹脂成形装置は、側面部材111の第1面111aおよび第2面111bと、底面部材112の摺動面112bとの間に配置された消耗材140をさらに備えることを特徴としている。消耗材140としては、たとえば、紙またはゴム等を用いることができる。
【0063】
実施形態3の樹脂成形装置においては、消耗材140により側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間の上面を塞ぐことにより、成形圧力による側面部材111の第3面111cと底面部材112の摺動面112bとの間への溶融樹脂202aの樹脂漏れを抑制することができる。
【0064】
なお、実施形態3の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する場合には、上述した実施形態の樹脂成形品の製造方法の一例は、少なくとも上述の樹脂材料202を供給する工程の前に、側面部材111の第1面111aおよび第2面111bと、底面部材112の摺動面112bとの間に消耗材140を設置する工程を含んでいればよい。
【0065】
実施形態3における上記以外の説明は、実施形態1~2と同様であるため、その説明については省略する。
【0066】
<実施形態4>
図18(a)に、実施形態の樹脂成形装置のさらに他の一例である実施形態4の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型10の模式的な断面図を示す。
図18(b)に、実施形態4の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型10の模式的な断面図を示す。実施形態4の樹脂成形装置においては、底面部材112の上面112aに窪み150が設けられていることを特徴としている。窪み150は、平坦な底面150aと、底面150aの周縁から斜め上方に延在する内周面150bとを備えている。
【0067】
図19に、実施形態4の樹脂成形装置により樹脂成形された成形対象物300の模式的な平面図を示す。
図19に示すように、樹脂成形された成形対象物300は、底面部材112の上面112aの窪み150の形状に対応する突起部500を備えている。
【0068】
図19に示すように、突起部500は、平坦な底面500aを備えている。したがって、実施形態4の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する場合には、
図20の模式的平面図に示すように、不要部分となる環状部分220を切断して除去する際に、突起部500の平坦な底面500aを安定して吸着しながら除去することができる。そのため、樹脂成形品301の製造効率を向上することができる。
【0069】
また、実施形態4の樹脂成形装置において、突起部500は、底面500aに対して傾斜している外周面500bを有しているため、圧縮成形型10からの樹脂成形品301の取り出しを容易にすることができる。
【0070】
なお、実施形態4においては、窪み150の内周面150bが底面150aに対して傾斜している場合について説明したが、窪み150の内周面150bは底面150aに対して垂直であってもよい。
【0071】
実施形態4における上記以外の説明は、実施形態1~3と同様であるため、その説明については省略する。
【0072】
<実施形態5>
図21(a)に、実施形態の樹脂成形装置のさらに他の一例である実施形態5の樹脂成形装置の樹脂材料の供給時における第1型10の模式的な断面図を示す。
図21(b)に実施形態5の樹脂成形装置の樹脂成形時における第1型10の模式的な断面図を示す。実施形態5の樹脂成形装置は、側面部材111の第1面111aが第2面111bに対して傾斜していることを特徴としている。
【0073】
実施形態5の樹脂成形装置は、側面部材111の第1面111aが第2面111bに対して傾斜しているため、側面部材111の第1面111aが第2面111bに対して垂直な実施形態1~4の樹脂成形装置と比べて、圧縮成形型10からの樹脂成形品301の取り出しを容易にすることができる。
【0074】
実施形態5における上記以外の説明は、実施形態1~4と同様であるため、その説明については省略する。
【0075】
以上のように実施形態について説明を行なったが、上述の各実施形態を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
ここで開示された実施形態によれば、圧縮成形型、樹脂成形装置、樹脂成形システムおよび樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 樹脂成形装置、10 圧縮成形型、110,1100 第1型、120 第2型、111,1111 側面部材、111a 第1面、111b 第2面、111c 第3面、112 底面部材、112a 上面、112b 摺動面、113 段差、114 弾性部材、115 可動盤、116 支柱部、117 第1駆動機構、118 第2駆動機構、121 上部固定盤、122 下部固定盤、130 シール材、140 消耗材、150 窪み、150a,500a 底面、150b,1111a 内周面、201 成形対象物、202 樹脂材料、202a 溶融樹脂、202b 硬化樹脂、202c 樹脂、220 環状部分、300 樹脂成形された成形対象物、301,3010 樹脂成形品、401 矢印、500 突起部、500b 外周面、1000 樹脂成形システム、1001 樹脂供給モジュール、1002 樹脂成形モジュール、1003 供給収納モジュール、1004 制御部。