(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ゲート駆動用電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20231201BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20231201BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231201BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H02M3/28 W
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2020195264
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】中村 優太
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 吉則
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和成
(72)【発明者】
【氏名】植野 修吾
(72)【発明者】
【氏名】田井 慎太郎
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083179(JP,A)
【文献】特開2015-065726(JP,A)
【文献】特開2002-199743(JP,A)
【文献】特開2015-091180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0365001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アーム用スイッチング素子と下アーム用スイッチング素子とを複数備える変換回路を複数備える電力変換装置の前記上アーム用スイッチング素子及び前記下アーム用スイッチング素子ごとに設けられた複数のゲート駆動回路に直流電源を各々供給するゲート駆動用電源装置であって、
前記変換回路の少なくとも1つが直交電力変換あるいは交直電力変換を行う多相変換回路であり、
前記多相変換回路の複数の下アーム用スイッチング素子のうちいずれかあるいは前記多相変換回路の複数の上アーム用スイッチング素子のうちいずれかに設けられた前記ゲート駆動回路と、他の前記変換回路の上アーム用スイッチング素子あるいは下アーム用スイッチング素子に設けられた前記ゲート駆動回路とに直流電源を共通に供給する共通電源ユニットを備える
ことを特徴とするゲート駆動用電源装置。
【請求項2】
前記共通電源ユニットが、前記多相変換回路の前記下アーム用スイッチング素子に設けられた前記ゲート駆動回路に前記直流電源を供給し、
前記共通電源ユニットと別に、前記多相変換回路の前記上アーム用スイッチング素子に設けられた前記ゲート駆動回路の各々に対して備えられて直流電源を供給する複数の個別電源ユニットを備える
ことを特徴とする請求項1記載のゲート駆動用電源装置。
【請求項3】
前記多相変換回路が3つ以上の前記下アーム用スイッチング素子を有し、
前記共通電源ユニットから直流電源が供給されない前記ゲート駆動回路が設けられた前記下アーム用スイッチング素子に設けられた前記ゲート駆動回路の複数に直流電源を共通に供給する多相変換回路内共通電源ユニットを備えることを特徴とする請求項2記載のゲート駆動用電源装置。
【請求項4】
前記変換回路として、
前記多相変換回路からなる力行用インバータと、
前記力行用インバータに昇圧電力を供給する昇降圧コンバータと
が備えられている
ことを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のゲート駆動用電源装置。
【請求項5】
前記共通電源ユニットは、
前記力行用インバータの複数の下アーム用スイッチング素子のうちいずれかあるいは前記力行用インバータの複数の上アーム用スイッチング素子のうちいずれかに設けられた前記ゲート駆動回路と、
前記昇降圧コンバータの上アーム用スイッチング素子あるいは下アーム用スイッチング素子に設けられた前記ゲート駆動回路と
に直流電源を共通に供給する
ことを特徴とする請求項4記載のゲート駆動用電源装置。
【請求項6】
複数の前記ゲート駆動回路が単一のプリント基板に実装されており、
前記共通電源ユニットは、前記プリント基板上で隣接配置された2つの前記ゲート駆動回路に直流電源を共通に供給する
ことを特徴とする請求項1~5いずれか一項に記載のゲート駆動用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、インバータ回路の各アームのスイッチング素子を駆動するゲート駆動回路と、当該ゲート駆動回路のうち、上段側アームの各ゲート駆動回路(上段側ゲート駆動回路)及び下段側アームの各ゲート駆動回路(下段側ゲート駆動回路)に個別に電力を供給する電力供給回路を備えるモータの制御装置が開示されている。このモータの制御装置における電力供給回路は、ゲート駆動回路の個数(6個)分のトランスを備え、各トランスの出力を整流することにより、各ゲート駆動回路に個別に電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記電力供給回路は、トランスと整流回路とからなる電源生成回路をゲート駆動回路毎に備えるゲート駆動用電源装置であり、実装面積(実装体積)が比較的大きいという問題がある。例えば、複数のインバータ回路を駆動する複数のゲート駆動回路を1枚のプリント基板に実装しようとした場合、電源生成回路がインバータ回路の相数にインバータ回路の個数に乗じた数だけ必要になるので、プリント基板が大型化すると共にコストアップを招くという問題が生じる。このため、複数のゲート駆動回路に対して1つの電源生成回路(電源ユニット)から共通に直流電源を供給することが考えられる。
【0005】
一方で、例えば三相インバータではいずれかのスイッチング素子が設けられたチップに短絡故障が発生した場合に、短絡故障したチップのみに大電流が流れることを防止するために、他のスイッチング素子を強制的に導通可能とする三相短絡制御を行うことが好ましい。このとき、三相インバータの例えば下アームの全てが単一の電源ユニットから電力を供給されていると、この電源ユニットがチップの短絡故障と同時に故障した場合に、他の下アームのスイッチング素子を強制的に導通可能とすることができなくなり、短絡故障したチップのみに大きな電流が流れることになる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電源ユニットの共通化によるゲート駆動用電源装置の小型化を可能にしつつ、電力変換装置が備える多相変換回路に短絡故障が生じた場合であっても単一のチップに局所的に大電流が流れることを防止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、上アーム用スイッチング素子と下アーム用スイッチング素子とを複数備える変換回路を複数備える電力変換装置の上記上アーム用スイッチング素子及び上記下アーム用スイッチング素子ごとに設けられた複数のゲート駆動回路に直流電源を各々供給するゲート駆動用電源装置であって、上記変換回路の少なくとも1つが直流電力あるいは交流電力に電力変換を行う多相変換回路であり、上記多相変換回路の複数の下アーム用スイッチング素子のうちいずれかあるいは上記多相変換回路の複数の上アーム用スイッチング素子のうちいずれかに設けられた上記ゲート駆動回路と、他の上記変換回路の上アーム用スイッチング素子あるいは下アーム用スイッチング素子に設けられた上記ゲート駆動回路とに直流電源を共通に供給する共通電源ユニットを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記共通電源ユニットが、上記多相変換回路の上記下アーム用スイッチング素子に設けられた上記ゲート駆動回路に上記直流電源を供給し、上記共通電源ユニットと別に、上記多相変換回路の上記上アーム用スイッチング素子に設けられた上記ゲート駆動回路の各々に対して備えられて直流電源を供給する複数の個別電源ユニットを備えるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記多相変換回路が3つ以上の上記下アーム用スイッチング素子を有し、上記共通電源ユニットから直流電源が供給されない上記ゲート駆動回路が設けられた上記下アーム用スイッチング素子に設けられた上記ゲート駆動回路の複数に直流電源を共通に供給する多相変換回路内共通電源ユニットを備えるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記変換回路として、上記多相変換回路からなる力行用インバータと、上記力行用インバータに昇圧電力を供給する昇降圧コンバータとが備えられているという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記共通電源ユニットが、上記力行用インバータの複数の下アーム用スイッチング素子のうちいずれかあるいは上記力行用インバータの複数の上アーム用スイッチング素子のうちいずれかに設けられた上記ゲート駆動回路と、上記昇降圧コンバータの上アーム用スイッチング素子あるいは下アーム用スイッチング素子に設けられた上記ゲート駆動回路とに直流電源を共通に供給するという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、複数の上記ゲート駆動回路が単一のプリント基板に実装されており、上記共通電源ユニットが、上記プリント基板上で隣接配置された2つの上記ゲート駆動回路に直流電源を共通に供給するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、多相変換回路の複数の下アーム用スイッチング素子のうちいずれかあるいは多相変換回路の複数の上アーム用スイッチング素子のうちいずれかに設けられたゲート駆動回路と、他の変換回路の上アーム用スイッチング素子あるいは下アーム用スイッチング素子に設けられたゲート駆動回路とに直流電源を共通に供給する共通電源ユニットを備えている。つまり、本発明においては、全ての上アーム用スイッチング素子に設けられたゲート駆動回路と、全ての下アーム用スイッチング素子に設けられたゲート駆動回路との各々に電源ユニットを設置する場合と比較すると、電源ユニットの設置数を減少させることができ、ゲート駆動用電源装置を小型化することが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、共通電源ユニットが多相変換回路の複数の下アーム用スイッチング素子のうちいずれかあるいは多相変換回路の複数の上アーム用スイッチング素子のうちいずれかに設けられたゲート駆動回路に直流電源を供給する。このため、多相変換回路の共通電源ユニットから直流電源を供給されない下アーム用スイッチング素子及び上アーム用スイッチング素子に設けられたゲート駆動回路には、他の電源ユニットから直流電源が供給される。このため、多相変換回路においてスイッチング素子が設けられたチップに短絡故障が生じ、このチップに直流電源を供給する電源ユニットが同時に故障した場合であっても、他の電源ユニット(共通電源ユニットを含む)から、短絡故障が生じていないチップに直流電源を供給することが可能となり、短絡故障が生じていないチップに設けられたスイッチング素子を強制的に導通可能とすることができる。したがって、短絡故障が生じたチップのみに大電流が局所的に流れることを防止することができる。
【0016】
よって、本発明によれば、電源ユニットの共通化によるゲート駆動用電源装置の小型化を可能にしつつ、電力変換装置が備える多相変換回路に短絡故障が生じた場合であっても単一のチップに局所的に大電流が流れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るゲート駆動用電源装置の構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における基板レイアウトを示す模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るゲート駆動用電源装置の構成を示す模式図及び第1実施形態における電力変換回路の回路図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例における基板レイアウトを示す模式図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における基板レイアウトを示す模式図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るゲート駆動用電源装置の構成を示す模式図及び第1実施形態における電力変換回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るゲート駆動用電源装置の一実施形態について説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るゲート駆動用電源装置の構成を示す回路図である。第1実施形態に係るゲート駆動用電源装置は、
図1に示すように11個の第1~第11電源ユニットP1~P11及び単一の電源駆動回路Dを備える。なお、電源ユニットP1~P11の各々に対して電源駆動回路を備える構成であっても良い。11個の第1~第11電源ユニットP1~P11は、
図2に示す合計16の第1~第16ゲート駆動回路G1~G16に直流電源を供給する直流電源回路であり、
図1に示すように入力側が電源駆動回路Dの出力端と回路電源Vcc(直流電源)との間に並列接続されている。
【0020】
図1では便宜的に第1ゲート駆動回路G1に直流電源を供給する第1電源ユニットP1の詳細構成のみを示しているが、合計11個の第1~第11電源ユニットP1~P11は、全て同一の構成を備えている。
図2は、本発明の第1実施形態における基板レイアウトを示す模式図である。この図に示すように、第1電源ユニットP1は第1ゲート駆動回路G1に直流電源を供給する。
【0021】
一方、第2電源ユニットP2は、
図2に示すように、3つのゲート駆動回路に直流電源を供給する。つまり、第2電源ユニットP2は、第2ゲート駆動回路G2、第4ゲート駆動回路G4及び第6ゲート駆動回路G6に直流電源を供給する。また、第3電源ユニットP3は、第3ゲート駆動回路G3に直流電源を供給する。第4電源ユニットP4は、第5ゲート駆動回路G5に直流電源を供給する。第5電源ユニットP5は、第7ゲート駆動回路G7に直流電源を供給する。
【0022】
また、第6電源ユニットP6は、第9ゲート駆動回路G9に直流電源を供給する。第7電源ユニットP7は、3つのゲート駆動回路に直流電源を供給する。つまり、第7電源ユニットP7は、第8ゲート駆動回路G8、第10ゲート駆動回路G10及び第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給する。さらに、第8電源ユニットP8は、第11ゲート駆動回路G11に直流電源を供給する。第9電源ユニットP9は、第13ゲート駆動回路G13に直流電源を供給する。
【0023】
また、第10電源ユニットP10は、第15ゲート駆動回路G15に直流電源を供給する。第11電源ユニットP11は、2つのゲート駆動回路に直流電源を供給する。つまり、第11電源ユニットP11は、第14ゲート駆動回路G14及び第16ゲート駆動回路G16に直流電源を供給する。
【0024】
すなわち、合計11個の第1~第11電源ユニットP1~P11のうち、第1電源ユニットP1、第3電源ユニットP3、第4電源ユニットP4、第5電源ユニットP5、第6電源ユニットP6、第8電源ユニットP8、第9電源ユニットP9及び第10電源ユニットP10は、単一のゲート駆動回路に直流電源を供給するが、第2電源ユニットP2は3つのゲート駆動回路に直流電源を供給し、第7電源ユニットP7は3つのゲート駆動回路に直流電源を供給し、第11電源ユニットP11は2つのゲート駆動回路に直流電源を供給する。第1、第3、第4、第5、第6、第8、第9、第10電源ユニットP1,P3,P4,P6,P8,P9,P10は、本発明の個別電源ユニットに相当する。第7電源ユニットP7は、本発明の共通電源ユニットに相当する。第2電源ユニットP2、第11電源ユニットP11は、本発明の多相変換回路内共通電源ユニットに相当する。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態に係るゲート駆動用電源装置の構成を示す模式図及び第1実施形態における電力変換回路の回路図である。ここで、合計16のゲート駆動回路G1~G16は、
図3に示す電力変換装置を駆動する駆動回路である。この電力変換装置は、例えば車両に搭載されるPCU(パワーコントロールユニット)であり、昇降圧コンバータE1、発電用コンバータE2及び走行用インバータE3(力行用インバータ)から構成されている。なお、昇降圧コンバータE1、発電用コンバータE2及び走行用インバータE3は、本発明の変換回路に相当する。また、走行用インバータE3は、本発明の多相変換回路に相当する。
【0026】
このような電力変換装置について、上述した第1~第6ゲート駆動回路G1~G6は、発電用コンバータE2を駆動する。また第7~第10ゲート駆動回路G7~G10は、昇降圧コンバータE1を駆動する。また第11~第16ゲート駆動回路G11~G16は、走行用インバータE3を駆動する。
【0027】
昇降圧コンバータE1は、双方向の昇降圧回路であり、
図3に示すように第1平滑コンデンサ1、第1リアクトル2、第2リアクトル3、上アーム用スイッチング素子4,6(上アーム用スイッチング素子)及び下アーム用スイッチング素子5,7(下アーム用スイッチング素子)を備える。
【0028】
この昇降圧コンバータE1は、外部から入出力端a1,a2に入力される第1直流電力を昇圧し、第2直流電力(昇圧電力)として走行用インバータE3に出力する昇圧機能と、発電用コンバータE2あるいは/及び走行用インバータE3から入力される第2直流電力を降圧し、第1直流電力として入出力端a1,a2に出力する降圧機能とを有する。なお、例えば入出力端a1は高電位とされ、入出力端a2は低電位とされる。なお、上アーム用スイッチング素子4,6及び下アーム用スイッチング素子5,7は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、例えば各々がチップ化されている。
【0029】
このような昇降圧コンバータE1において、第1平滑コンデンサ1は、外部から入出力端a1,a2に入力される第1直流電力の電圧を平滑する平滑コンデンサである。第1リアクトル2と第2リアクトル3とは、互いに磁気結合されている。第1リアクトル2は、一端が第1平滑コンデンサ1の一端と接続されており、他端が上アーム用スイッチング素子4と下アーム用スイッチング素子5との接続点と接続されている。第2リアクトル3は、一端が第1平滑コンデンサ1の一端と接続されており、他端が上アーム用スイッチング素子6と下アーム用スイッチング素子7との接続点と接続されている。また、上アーム用スイッチング素子4と下アーム用スイッチング素子5とが接続され、上アーム用スイッチング素子6と下アーム用スイッチング素子7とが接続されている。
【0030】
上アーム用スイッチング素子4は、第5電源ユニットP5から電源供給を受ける第7ゲート駆動回路G7によって駆動される。また、下アーム用スイッチング素子5は、第7電源ユニットP7から電源供給を受ける第8ゲート駆動回路G8によって駆動される。
【0031】
また、上アーム用スイッチング素子6は、第6電源ユニットP6から電源供給を受ける第9ゲート駆動回路G9によって駆動される。また、下アーム用スイッチング素子7は、第7電源ユニットP7から電源供給を受ける第10ゲート駆動回路G10によって駆動される。
【0032】
発電用コンバータE2は、発電用モータM1を電力供給源とする三相コンバータであり、3つの上アーム用スイッチング素子8,10,12及び3つの下アーム用スイッチング素子9,11,13を備える。この発電用コンバータE2は、発電用モータM1から入力される交流電力を直流電力に交直電力変換して昇降圧コンバータE1に出力する。なお、発電用モータM1は、交流発電機として機能するモータである。
【0033】
この発電用コンバータE2において、上アーム用スイッチング素子8及び下アーム用スイッチング素子9は、第1スイッチングレグを構成している。また、上アーム用スイッチング素子10及び下アーム用スイッチング素子11は、第2スイッチングレグを構成している。さらに、上アーム用スイッチング素子12及び下アーム用スイッチング素子13は、第3スイッチングレグを構成している。
【0034】
このような発電用コンバータE2において、上アーム用スイッチング素子8は第1電源ユニットP1から電源供給を受ける第1ゲート駆動回路G1によって駆動される。下アーム用スイッチング素子9は、第2電源ユニットP2から電源供給を受ける第2ゲート駆動回路G2によって駆動される。
【0035】
また、上アーム用スイッチング素子10は、第3電源ユニットP3から電源供給を受ける第3ゲート駆動回路G3によって駆動される。下アーム用スイッチング素子11は、第2電源ユニットP2から電源供給を受ける第4ゲート駆動回路G4によって駆動される。
【0036】
さらに、上アーム用スイッチング素子12は、第4電源ユニットP4から電源供給を受ける第5ゲート駆動回路G5によって駆動される。下アーム用スイッチング素子13は、第2電源ユニットP2から電源供給を受ける第6ゲート駆動回路G6によって駆動される。なお、上記上アーム用スイッチング素子8,10,12及び下アーム用スイッチング素子9,11,13は、例えばIGBTであり、例えば各々がチップ化されている。
【0037】
走行用インバータE3は、走行用モータM2を負荷として駆動する三相インバータ(多相変換回路)であり、3つの上アーム用スイッチング素子14,16,18及び3つの下アーム用スイッチング素子15,17,19を備える。この発電用コンバータE2は、昇降圧コンバータE1から入力される第2直流電力を第2交流電力に直交電力変換して走行用モータM2に出力する。なお、上記走行用モータM2は、車輪を駆動するモータである。
【0038】
この走行用インバータE3において、上アーム用スイッチング素子14及び下アーム用スイッチング素子15は、第4スイッチングレグを構成している。また、上アーム用スイッチング素子16及び下アーム用スイッチング素子17は、第5スイッチングレグを構成している。さらに、上アーム用スイッチング素子18及び下アーム用スイッチング素子19は、第6スイッチングレグを構成している。
【0039】
このような走行用インバータE3において、上アーム用スイッチング素子14は、第8電源ユニットP8から電源供給を受ける第11ゲート駆動回路G11によって駆動される。下アーム用スイッチング素子15は、第7電源ユニットP7から電源供給を受ける第12ゲート駆動回路G12によって駆動される。
【0040】
また、上アーム用スイッチング素子16は、第9電源ユニットP9から電源供給を受ける第13ゲート駆動回路G13によって駆動される。下アーム用スイッチング素子17は、第11電源ユニットP11から電源供給を受ける第14ゲート駆動回路G14によって駆動される。
【0041】
さらに、上アーム用スイッチング素子18は、第10電源ユニットP10から電源供給を受ける第15ゲート駆動回路G15によって駆動される。下アーム用スイッチング素子19は、第11電源ユニットP11から電源供給を受ける第16ゲート駆動回路G16によって駆動される。なお、上記上アーム用スイッチング素子14,16,18及び下アーム用スイッチング素子15,17,19は、例えばIGBTであり、例えば各々がチップ化されている。
【0042】
なお、このような電力変換装置は、第2直流電力の出力用に第2平滑コンデンサ20を備えている。すなわち、この第2平滑コンデンサ20は、一端が昇降圧コンバータE1における一方の出力端に接続され、他端が昇降圧コンバータE1における他方の出力端に接続されており、昇降圧コンバータE1の出力を平滑化する。
【0043】
電源駆動回路Dは、パルス発生回路Sと駆動トランジスタTrとを備える。パルス発生回路Sは、所定周期かつ所定デューティ比のパルス信号を発生し、駆動トランジスタTrのベース端子に出力する。駆動トランジスタTrは、ベース端子がパルス発生回路Sの出力端に接続され、エミッタ端子が接地され、またコレクタ端子が上記トランスT1における一次巻線の一端に接続されている。このような電源駆動回路Dは、第1~第11電源ユニットP1~P11の入力側、つまり互いに直列接続された第1~第11電源ユニットP1~P11の各トランスの一次巻線にパルス状の電力(パルス電力)を印加させる。
【0044】
第1電源ユニットP1は、このような電源駆動回路DによってトランスT1の一次巻線に印加されるパルス電力をトランスT1で変圧かつ整流回路で整流することにより所定電圧の直流電力を生成し、整流コンデンサC1の両端からゲート駆動回路G1に出力する。
また、他の第2~第11電源ユニットP2~P11も、第1電源ユニットP1と同様に電源駆動回路DによってトランスT1の一次巻線に印加されるパルス電力をトランスで変圧かつ整流回路で整流することにより所定電圧の直流電力を生成し、整流コンデンサの両端から第2~第16ゲート駆動回路G2~G16に出力する。
【0045】
ここで、上述した合計16のゲート駆動回路G1~G16は、
図2に示す制御回路CTによって統一的に制御される。第1~第11電源ユニットP1~P11と第1~第16ゲート駆動回路G1~G16との直流電力の受給電関係は上述した通りであるが、第1~第11電源ユニットP1~P11、第1~第16ゲート駆動回路G1~G16及び制御回路CTは、
図2に示すように単一のプリント基板K上に実装されている。また、第1~第16ゲート駆動回路G1~G16及び制御回路CTは、第1~第11電源ユニットP1~P11と別の基板に実装することもできる。この場合には、例えば制御回路CTの位置に電源駆動回路Dが設置される。
【0046】
すなわち、上アーム用スイッチング素子4,6,8,10,12,14,16,18を駆動する第1、第3、第5、第7、第9、第11、第13、G15ゲート駆動回路G1、G3,G5,G7,G9,G11,G13,G15に直流電源を供給する第1、第3、第4、第5、第6、第8、第9、第11電源ユニットP1,P3,P4,P5,P6,P8,P9,P11と、下アーム用スイッチング素子9,11,13を駆動する第2、第4、第6ゲート駆動回路G2、G4,G6に直流電源を供給する第2電源ユニットP2、下アーム用スイッチング素子5,7,15を駆動する第8、第10、第12ゲート駆動回路G8、G10,G12に直流電源を供給する第7電源ユニットP7、及び下アーム用スイッチング素子17,19を駆動する第14、第19ゲート駆動回路G14,G19に直流電源を供給する第11電源ユニットP11とで制御回路CT(または、電源駆動回路D)を挟むように配置(レイアウト)されている。
【0047】
より詳細には、長方形のプリント基板Kに対して、制御回路CT(または、電源駆動回路D)は長辺に沿って中央部に長尺状に配置される。この制御回路CT(または、電源駆動回路D)の端部には、外部と電源及び信号の授受を行うためのコネクタCNが配置される。また、ゲート駆動回路G1~G16と制御回路CTを単一の基板で構成する場合は、制御回路CTにおいて、コネクタCNの近傍には制御回路CT用の電源を生成する電源回路Pcが実装される。
【0048】
第1、第3、第4、第5、第6、第8、第9、第10電源ユニットP1,P3,P4,P5,P6,P8,P9,P10は、このような制御回路CT(または、電源駆動回路D)の一方側にプリント基板Kの長辺に沿って一列に配置される。さらに、第2電源ユニットP2、第7電源ユニットP7及び第11電源ユニットP11は、制御回路CT(または、電源駆動回路D)の他方側にプリント基板Kの長辺に沿って一列に配置される。すなわち、第1、第3、第4電源ユニットP1,P3,P4は、制御回路CT(または、電源駆動回路D)を挟んで第2電源ユニットP2とプリント基板Kの短辺方向に対峙した状態に配置される。また第5、第6、第8電源ユニットP5,P6,P8は、制御回路CT(または、電源駆動回路D)を挟んで第7電源ユニットP7とプリント基板Kの短辺方向に対峙した状態に配置される。また第9、第10電源ユニットP9,P10は、制御回路CT(または、電源駆動回路D)を挟んで第11電源ユニットP11とプリント基板Kの短辺方向に対峙した状態に配置される。
【0049】
また、上記プリント基板Kは、少なくとも両面にパターン配線が形成された多層プリント基板である。第1~第16ゲート駆動回路G1~G16は、プリント基板Kの一方の表面に実装される。第1~第11電源ユニットP1~P11は、プリント基板Kの他方の表面に実装される。すなわち、第1~第16ゲート駆動回路G1~G16と、当該第1~第16ゲート駆動回路G1~G16に直流電源を供給する第1~第11電源ユニットP1~P11とは、プリント基板Kにおいて裏表の位置関係で実装されている。
【0050】
より具体的には、
図2に示すように、第1ゲート駆動回路G1と第1電源ユニットP1とは、裏表の位置関係で実装されている。第2、第4、第6ゲート駆動回路G2,G4,G6と第2電源ユニットP2とは、裏表の位置関係で実装されている。また、第3ゲート駆動回路G3と第3電源ユニットP3とは、裏表の位置関係で実装されている。第5ゲート駆動回路G5と第4電源ユニットP4とは、裏表の位置関係で実装されている。第7ゲート駆動回路G7と第5電源ユニットP5とは裏表の位置関係で実装されている。
【0051】
また、第9ゲート駆動回路G9と第6電源ユニットP6とは、裏表の位置関係で実装されている。第8、第10、第12ゲート駆動回路G8,G10,G12と第7電源ユニットP7とは、裏表の位置関係で実装されている。さらに、第11ゲート駆動回路G11と第8電源ユニットP8とは裏表の位置関係で実装されている。第13ゲート駆動回路G13と第9電源ユニットP9とは裏表の位置関係で実装されている。第15ゲート駆動回路G15と第10電源ユニットP10とは表裏の位置関係で実装されている。第14、第16駆動回路G14,G16と第11電源ユニットP11とは表裏の位置関係で実装されている。
【0052】
続いて、第1~第11電源ユニットP1~P11の詳細要素について、
図1を参照して説明する。ただし、第1~第11電源ユニットP1~P11は全て同一の構成備えているので、以下では第1電源ユニットP1の詳細構成を代表として説明する。
【0053】
第1電源ユニットP1は、トランスT1、一対のダイオードD11,D12及び整流コンデンサC1を備えている。トランスT1は、一次巻線と二次巻線とを備える変圧器である。このトランスT1は、一次巻線の一端が電源駆動回路Dの出力端に接続され、一次巻線の他端が第2電源ユニットP2の一方の入力端つまり第2電源ユニットP2のトランス(図示略)における一次巻線の一端に接続されている。
【0054】
また、このトランスT1は、二次巻線の一端が一方のダイオードD11のアノード端子に接続され、二次巻線の他端が他方のダイオードD12のアノード端子に接続されている。さらに、このトランスT1は、二次巻線の中間タップが整流コンデンサC1の他端に接続されている。
【0055】
一対のダイオードD11,D12のうち、一方のダイオードD11は、アノード端子がトランスT1の二次巻線の一端に接続され、カソード端子が他方のダイオードD12のカソード端子及び整流コンデンサC1の一端に接続されている。他方のダイオードD12は、アノード端子がトランスT1の二次巻線の他端に接続され、カソード端子が一方のダイオードD11のカソード端子及び整流コンデンサC1の一端に接続されている。
【0056】
整流コンデンサC1は、一端が一対のダイオードD11,D12の各カソード端子に接続され、他端がトランスT1における二次巻線の中間タップに接続されている。このような一対のダイオードD11,D12及び整流コンデンサC1は、トランスT1の二次巻線から入力されるパルス電力(パルス電圧)を整流して直流電力(直流電圧)に変換する整流回路を構成している。
【0057】
このゲート駆動用電源装置では、
図2及び
図3に示すように、走行用インバータE3の複数の下アーム用スイッチング素子15,17,19のうち下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12と、昇降圧コンバータE1の下アーム用スイッチング素子5,7に設けられた第8、第10ゲート駆動回路G8,G10とに直流電源を共通に供給する第7電源ユニットP7を備えている。
【0058】
したがって、全ての上アーム用スイッチング素子4,6,8,10,12,14,16,18に設けられた第1、第3、第5、第7、第9、第11、第13、第15ゲート駆動回路G1,G3,G5,G7,G9,G11,G13,G15と、全ての下アーム用スイッチング素子5,7,9,11,13,15,17,19に設けられた第2、第4、第6、第8、第10、第12、第14、第16ゲート駆動回路G2,G4,G6,G8,G10,G12,G14,G16との各々に電源ユニットを設置する場合と比較すると、電源ユニットの設置数を減少させることができ、ゲート駆動用電源装置を小型化することが可能となる。
【0059】
また、このゲート駆動用電源装置においては、第7電源ユニットP7が走行用インバータE3の複数の下アーム用スイッチング素子15,17,19のうち下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12と、昇降圧コンバータE1の下アーム用スイッチング素子5,7に設けられた第8、第10ゲート駆動回路G8,G10とに直流電源を共通に供給する。このため、走行用インバータE3の第7電源ユニットP7から直流電源を供給されない下アーム用スイッチング素子17,19に設けられた第14、第16ゲート駆動回路G14,G16には、他の電源ユニットである第11電源ユニットP11から直流電源が供給される。
【0060】
このため、例えば走行用インバータE3において下アーム用スイッチング素子15が設けられたチップ、下アーム用スイッチング素子17が設けられたチップ、下アーム用スイッチング素子19が設けられたチップのいずれかに短絡故障が生じ、短絡故障したチップに設けられた下アーム用スイッチング素子に対して設けられたゲート駆動回路に直流電源を供給する電源ユニットが同時に故障した場合であっても、他の電源ユニットの電力によって短絡故障が生じていないチップに設けられたスイッチング素子を強制的に導通可能とすることができる。したがって、短絡故障が生じたチップのみに大電流が局所的に流れることを防止することができる。
【0061】
例えば、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子17が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子17に設けられた第14ゲート駆動回路G14に直流電源を供給する第11電源ユニットP11が同時に故障したとする。この場合であっても、第7電源ユニットP7によって第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給することで、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の走行用モータM2からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子17が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0062】
また、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子19が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子19に設けられた第16ゲート駆動回路G16に直流電源を供給する第11電源ユニットP11が同時に故障したとする。この場合であっても、第7電源ユニットP7によって第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給することで、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の走行用モータM2からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子19が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0063】
さらに、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給する第7電源ユニットP7が同時に故障したとする。この場合であっても、第11電源ユニットP11によって第14、第16ゲート駆動回路G14,G16に直流電源を供給することで、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子17,19を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の走行用モータM2からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子15が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0064】
以上説明したように、ゲート駆動用電源装置によれば、電源ユニットの共通化による小型化を可能にしつつ、電力変換装置が備える走行用インバータE3に短絡故障が生じた場合であっても単一のチップに局所的に大電流が流れることを防止することができる。
【0065】
また、ゲート駆動用電源装置においては、上アーム用スイッチング素子4,6,8,10,12,14,16,18に設けられた第1、第3、第5、第7、第9、第11、第13、第15ゲート駆動回路G1,G3,G5,G7,G9,G11,G13,G15に対しては、個別の電源ユニットが設けられている。
【0066】
このため、上アーム用スイッチング素子4,6,8,10,12,14,16,18が設けられたチップのいずれかに短絡故障が生じた場合であっても、他の上アーム用スイッチング素子4,6,8,10,12,14,16,18を強制的に導通状態とすることが可能となる。
【0067】
また、ゲート駆動用電源装置においては、走行用インバータE3にて下アーム用スイッチング素子17,19に対して設けられた第14、第16ゲート駆動回路G14,G16に対して第11電源ユニットP11から共通に直流電源が供給される。このため、電源ユニットPの数をより削減し、ゲート駆動用電源装置をより小型化することが可能となる。
【0068】
また、ゲート駆動用電源装置においては、第7電源ユニットP7が走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12と、昇降圧コンバータE1の下アーム用スイッチング素子5,7に設けられた第8、第10ゲート駆動回路G8,G10とに直流電源を共通に供給している。これによって、本実施形態では、走行用インバータE3の複数の下アーム用スイッチング素子15,17,19を、複数の電源ユニットに分けて駆動可能とした。これは、車両において、発電能力の維持と走行能力の維持とを比較すると、走行能力の維持に対してより高い信頼性を求められるためである。
【0069】
ただし、例えば、電源ユニットが4つのゲート駆動回路に対して給電が可能な性能を有している場合には、
図4に示すように、第7電源ユニットPによって、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子13に設けられた第6ゲート駆動回路G6に対して直流電源を供給するようにしても良い。
【0070】
このような場合には、例えば発電用コンバータE2において下アーム用スイッチング素子9が設けられたチップ、下アーム用スイッチング素子11が設けられたチップ、及び下アーム用スイッチング素子13のいずれかに短絡故障が生じ、短絡故障したチップに設けられた下アーム用スイッチング素子に対して設けられたゲート駆動回路に直流電源を供給する電源ユニットが同時に故障した場合であっても、他の電源ユニットの電力によって短絡故障が生じていないチップに設けられた下アーム用スイッチング素子を強制的に導通可能とすることができる。したがって、短絡故障が生じたチップのみに大電流が局所的に流れることを防止することができる。
【0071】
例えば、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子9が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子9に設けられた第2ゲート駆動回路G2に直流電源を供給する第2電源ユニットP2が同時に故障したとする。この場合であっても、第7電源ユニットP7によって第6ゲート駆動回路G6に直流電源を供給することで、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子13を強制的に導通状態とすることができる。したがって、発電用モータM1からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子9が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0072】
また、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子11が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子11に設けられた第4ゲート駆動回路G4に直流電源を供給する第2電源ユニットP2が同時に故障したとする。この場合であっても、第7電源ユニットP7によって第6ゲート駆動回路G6に直流電源を供給することで、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子13を強制的に導通状態とすることができる。したがって、発電用モータM1からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子11が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0073】
さらに、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子13が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子13に設けられた第6ゲート駆動回路G6に直流電源を供給する第7電源ユニットP7が同時に故障したとする。この場合であっても、第2電源ユニットP2によって第2、第4ゲート駆動回路G2,G4に直流電源を供給することで、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子9,11を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の発電用モータM1からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子13が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0074】
また、ゲート駆動用電源装置においては、プリント基板K上において、隣接配置されたゲート駆動回路同士に共通して1つの電源ユニットから直流電源を供給している。このため、複数のゲート駆動回路に共通して直流電源を供給する電源ユニット(本実施形態では、第2電源ユニットP2、第7電源ユニットP7及び第11電源ユニットP11)の大型化を抑制することができる。
【0075】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0076】
図5は、本発明の第2実施形態における基板レイアウトを示す模式図である。また、
図6は、本発明の第2実施形態に係るゲート駆動用電源装置の構成を示す模式図及び第2実施形態における電力変換回路の回路図である。
【0077】
図5及び
図6に示すように、本実施形態において電力変換回路には、昇降圧コンバータE1が設けられておらず、走行用インバータE3と発電用コンバータE2とが設けられている。これに伴って、本実施形態のゲート駆動用電源装置は、第5、第6、第7電源ユニットP5,P6,P7を備えていない。一方で、本実施形態のゲート駆動用電源装置では、第2電源ユニットP2が、第2ゲート駆動回路G2、第4ゲート駆動回路G4、第6ゲート駆動回路G6に加えて、第12ゲート駆動回路G12に直流電源を共通して供給する。本実施形態において、第2電源ユニットP2は、本発明の共通電源ユニットに相当する。
【0078】
このゲート駆動用電源装置では、
図5及び
図6に示すように、走行用インバータE3の複数の下アーム用スイッチング素子15,17,19のうち下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12と、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子9,11,13に設けられた第2、第4、第6ゲート駆動回路G2,G4,G11とに直流電源を共通に供給する第2電源ユニットP2を備えている。
【0079】
したがって、全ての上アーム用スイッチング素子8,10,12,14,16,18に設けられた第1、第3、第5、第11、第13、第15ゲート駆動回路G1,G3,G5,G11,G13,G15と、全ての下アーム用スイッチング素子9,11,13,15,17,19に設けられた第2、第4、第6、第12、第14、第16ゲート駆動回路G2,G4,G6,G12,G14,G16との各々に電源ユニットを設置する場合と比較すると、電源ユニットの設置数を減少させることができ、ゲート駆動用電源装置を小型化することが可能となる。
【0080】
また、このゲート駆動用電源装置においては、第2電源ユニットP2が走行用インバータE3の複数の下アーム用スイッチング素子15,17,19のうち下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12と、発電用コンバータE2の下アーム用スイッチング素子9,11,13に設けられた第2、第4、第6ゲート駆動回路G2,G4,G6とに直流電源を共通に供給する。
【0081】
このため、走行用インバータE3の第2電源ユニットP2から直流電源を供給されない下アーム用スイッチング素子17,19に設けられた第14、第16ゲート駆動回路G14,G16には、他の電源ユニットである第11電源ユニットP11から直流電源が供給される。
【0082】
このため、例えば走行用インバータE3において下アーム用スイッチング素子15が設けられたチップ、下アーム用スイッチング素子17が設けられたチップ、下アーム用スイッチング素子19が設けられたチップのいずれかに短絡故障が生じ、短絡故障したチップに設けられた下アーム用スイッチング素子に対して設けられたゲート駆動回路に直流電源を供給する電源ユニットが同時に故障した場合であっても、他の電源ユニットの電力によって短絡故障が生じていないチップに設けられたスイッチング素子を強制的に導通可能とすることができる。したがって、短絡故障が生じたチップのみに大電流が局所的に流れることを防止することができる。
【0083】
例えば、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子17が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子17に設けられた第14ゲート駆動回路G14に直流電源を供給する第11電源ユニットP11が同時に故障したとする。この場合であっても、第2電源ユニットP2によって第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給することで、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の走行用モータM2からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子17が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0084】
また、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子19が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子19に設けられた第16ゲート駆動回路G16に直流電源を供給する第11電源ユニットP11が同時に故障したとする。この場合であっても、第2電源ユニットP2によって第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給することで、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の走行用モータM2からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子19が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0085】
さらに、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子15が設けられたチップに短絡故障が発生し、下アーム用スイッチング素子15に設けられた第12ゲート駆動回路G12に直流電源を供給する第2電源ユニットP2が同時に故障したとする。この場合であっても、第11電源ユニットP11によって第14、第16ゲート駆動回路G14,G16に直流電源を供給することで、走行用インバータE3の下アーム用スイッチング素子17,19を強制的に導通状態とすることができる。したがって、回転中の走行用モータM2からで生じる電流が短絡故障した下アーム用スイッチング素子15が設けられたチップのみに流れることを防止することができる。
【0086】
以上説明したように、ゲート駆動用電源装置によれば、電源ユニットの共通化による小型化を可能にしつつ、電力変換装置が備える走行用インバータE3に短絡故障が生じた場合であっても単一のチップに局所的に大電流が流れることを防止することができる。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態においては、下アーム用スイッチング素子に設けられたゲート駆動回路に直流電源を供給する電源ユニットが共通化された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。上アーム用スイッチング素子に設けられたゲート駆動回路に直流電源を供給する電源ユニットが共通化された構成を採用することも可能である。
【0089】
また、発電用モータM1に代えて走行アシスト用モータが設置され、発電用コンバータE2に代えて走行アシスト用コンバータが設けられた構成に本発明を適用することも可能である。さらに、上記実施形態では変換回路の数は2つまたは3つである構成について説明したが、変換回路を4つ以上備える構成に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0090】
E1 昇降圧コンバータ(変換回路)
E2 発電用コンバータ
E3 走行用インバータ(多相変換回路)
G1 第1ゲート駆動回路
G2 第2ゲート駆動回路
G3 第3ゲート駆動回路
G4 第4ゲート駆動回路
G5 第5ゲート駆動回路
G6 第6ゲート駆動回路
G7 第7ゲート駆動回路
G8 第8ゲート駆動回路
G9 第9ゲート駆動回路
G10 第10ゲート駆動回路
G11 第11ゲート駆動回路
G12 第12ゲート駆動回路
G13 第13ゲート駆動回路
G14 第14ゲート駆動回路
G15 第15ゲート駆動回路
G16 第16ゲート駆動回路
K プリント基板
M1 発電用モータ
M2 走行用モータ
P1 第1電源ユニット
P2 第2電源ユニット
P3 第3電源ユニット
P4 第4電源ユニット
P5 第5電源ユニット
P6 第6電源ユニット
P7 第7電源ユニット
P8 第8電源ユニット
P9 第9電源ユニット
P10 第10電源ユニット
P11 第11電源ユニット
4,6,8,10,12,14,16,18 上アーム用スイッチング素子
5,7,9,11,13,15,17,19 下アーム用スイッチング素子